(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】カーボンビーズの合成方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/05 20170101AFI20240329BHJP
C09C 1/44 20060101ALI20240329BHJP
B01J 13/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
C01B32/05
C09C1/44
B01J13/00 E
(21)【出願番号】P 2022550784
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(86)【国際出願番号】 US2021020366
(87)【国際公開番号】W WO2021178338
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-09-16
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522332858
【氏名又は名称】ミレニアル マテリアルズ アンド デバイセズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】パレンティ、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】シサラマン、バラジ
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-544309(JP,A)
【文献】国際公開第2005/095276(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104525070(CN,A)
【文献】特表2009-526902(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0086469(US,A1)
【文献】特表2004-525990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/05
B01J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散相として機能するように構成された非極性溶媒中の粘性スラリーを、バインダー、架橋剤分子、ラジカル重合開始剤、および炭素材料
を用いて調製し、
ここで、前記バインダーおよび前記架橋剤分子の各々は、複数の末端炭素二重結合基とスペーサー基とを有することを特徴とし、
1以上のハイドロコロイドを用いて、連続相として機能するように構成された粘性ゲルを調製し、
前記分散相と前記連続相をマイクロ流体液滴生成装置に通して、所定の大きさの球状液滴を取得し、
前記球状液滴を熱処理および紫外線照射のいずれかに供して、カーボンビーズの球状粒子を取得し、
前記カーボンビーズの球状粒子を乾燥させて、所定の寸法の前記カーボンビーズを取得する、
ことを含むカーボンビーズの合成方法。
【請求項2】
前記炭素材料は、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、活性炭、ナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、およびフラーレンからなる群より選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ラジカル重合開始剤は、過酸化ベンゾイル(BP)、2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオフェノン、およびジフェニルヨードニウムナイトレートの少なくとも1つを含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記粘性ゲルは、非極性溶媒で非混和性の極性媒体中で調製される請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記スペーサー基は、疎水性鎖、親水性鎖、両親媒性鎖またはそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを含む化合物である請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記カーボンビーズの前記所定の寸法は、サブミクロンサイズ、ミクロンサイズおよびミリサイズの少なくとも1つ含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記球状液滴の所定の大きさは、10mm~100nm、好ましくは10μm~90μmの範囲を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1以上のハイドロコロイドは、キサンタンガム、アラビアゴム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)またはそれらの誘導体もしくは組み合わせからなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記粘性スラリーに第1の添加剤を添加することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の添加剤は、1以上のラジカル促進剤、1以上のポロゲン、および1以上の原子および1以上の分子からなる群から選択されて、前記カーボンビーズの球状粒子の光学的特性、電気的特性、音響的特性、熱的特性および磁気的特性を調節させることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1以上のラジカル促進剤は、機械的特性を改善するためのメチルエチルケトンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、p-イソプロピルクミルヒドロペルオキシド、コバルトナフテネートおよびコバルトアセチルアセトネートからなる群から選択されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記1以上のポロゲンは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、1,4-ブタンジオール、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、および孔径と細孔率を調節するためのNaCl結晶からなる群から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記カーボンビーズの球状粒子の前記光学的特性を調節するために、前記1以上の原子および前記1以上の分子は、ナノチューブ、ナノダイヤモンド、シリカ、アルミニウム、銀、金、有機蛍光体、ランタノイドまたはそれらの誘導体または組み合わせからなる群から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記カーボンビーズの球状粒子の前記電気的特性を調節するために、前記1以上の原子および前記1以上の分子は、銅、金、銀、およびアルミニウムからなる群から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記カーボンビーズの球状粒子の前記音響的特性を調節するために、前記1以上の原子および前記1以上の分子は、六フッ化硫黄およびバリウムを含む群から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記カーボンビーズの球状粒子の前記熱的特性および前記磁気的特性の1つを調節するために、前記1以上の原子および前記1以上の分子は、鉄、ニッケル、コバルトおよびそれらの酸化物からなる群から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記球状液滴の大きさを制御するための第2の添加剤を前記粘性ゲルに添加することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の添加剤は、硫酸アンモニウムおよび塩化ナトリウムからなる群から選択される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記カーボンビーズの内部構造および外面の少なくとも1つを、共有結合および非共有結合の1つを介して、原子、分子、および高分子の少なくとも1つで官能化することをさらに含み、ここで、前記内部構造は、マイクロ孔、メゾ孔、およびマクロ孔の少なくとも1つ含む請求項1に記載の方法。
【請求項20】
分散相として粘性スラリーと、
連続相として0.05~5wt%の粘性ゲルと、
を含み、
前記粘性スラリーは、
0.1~20wt%の炭素材料と、
50~99wt%のバインダーまたは架橋剤分子と、
1~3wt%のラジカル重合開始剤と、
を含み、
前記バインダーおよび前記架橋剤分子の各々は、1以上の末端炭素二重結合基およびスペーサー基を含み、
前記ラジカル重合開始剤は、過酸化ベンゾイル(BP)、2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオフェノン、およびジフェニルヨードニウムナイトレートの少なくとも一つを含み、
前記粘性ゲルは、1以上のハイドロコロイドを含む、
カーボンビーズ合成用組成物。
【請求項21】
前記炭素材料は、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、フラーレン、ナノダイヤモンドまたはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記スペーサー基は、疎水性鎖、親水性鎖、両親媒性鎖またはそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを含む化合物である請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
前記粘性スラリーは、第1の添加剤をさらに含み、前記第1の添加剤は、1以上のラジカル促進剤、1以上のポロゲン、1以上の原子及び1以上の分子からなる群から選択される請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
前記粘性ゲルは、球状液滴の大きさを制御するための第2の添加剤をさらに含み、前記第2の添加剤は、硫酸アンモニウムおよび塩化ナトリウムからなる群から選択される請求項20に記載の組成物。
【請求項25】
前記1以上のハイドロコロイドは、キサンタンガム、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)又はそれらの誘導体若しくは組み合わせからなる群から選択される請求項20に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
最も早い優先日
本出願は、2020年03月02日に出願され、「A PROCESS FOR SYNTHESIZING CARBON BEADS AND PRODUCT THEREOF」(カーボンビーズの合成方法およびその製品)と題する特許出願番号62983863を有する米国で出願された仮特許出願の優先権を主張するものである。
【0002】
発明の属する分野
本発明の実施形態は、サブミクロン、ミクロおよびミリ(ミリスコピック)の微細な構造に関し、より詳細には、サブミクロン、ミクロンまたはミリサイズのカーボンビーズの合成方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
紡績ピッチを精製して得られる1~80ミクロン程度の球状の炭素粒子は、カーボンビーズとして知られている。カーボンビーズには、グリーン、カーボン化、グラファイト化粉末の3種類の純度がある。導電性、熱伝導性などの特性を生かし、新しい機能を持った複合材料として利用されている。カーボンビーズは、メゾカーボンマイクロビーズ、球状カーボン微粒子、球状カーボン粉末、カーボスフィア、球状カーボン粒子、球状ラウンドボールなどとも呼ばれる。
【0004】
従来、サブミクロン、ミクロン、ミリサイズのカーボンビーズ構造を有するカーボンビーズは、原始炭素材料(例えば、カーボンブラック、活性炭、熱分解または天然グラファイト、ダイヤモンド、グラフェン、単層または多層カーボンナノチューブ、フラーレンまたは金属内包フラーレン)または分子またはポリマーで官能化した炭素材料から選ばれた出発物質を用いて組み立てられる。
【0005】
過去40年にわたり、カーボンマイクロビーズを合成するための様々な方法(プロセス)が検討されてきた。米国特許US4263268Aは、カーボンマイクロビーズを合成するための方法(プロセス)を開示し、そこでは、犠牲的無機テンプレートに堆積させたカーボンリッチ高分子源を用いて多孔質グラファイト炭素組成物を合成し、続いてテンプレートを除去して熱分解することについて述べている。コールタール、重油残渣、ピッチなどの芳香族炭化水素は、液相炭化中にメゾフェーズカーボンビーズを形成することが示されている(参照:Lu, Y. et al. Preparation of mesocarbon microbeads from coal tar.Journal of Materials Science 34, 1999を参照)。熱分解グラファイトシェルは、火炎熱分解プロセスを介して合成されてきた。しかし、これらの方法はいずれも過酷な条件(例えば、高温)を伴い、ビーズサイズを調整するのに最適ではない、あるいは、全く制御できないものである。
【0006】
Lalwani et al. 2016年、学術誌Annals of Biomedical Engineeringに掲載された論文、Two- and three-dimensional all-carbon nanomaterial assemblies for tissue engineering and regenerative medicineにおいて、カーボンナノチューブとグラフェンを用いた3次元マイクロおよびミリスコピック構造の組み立てを開示、ここでは、「ボトムアップ」(化学蒸着など)あるいはトップダウン(毛細管誘導自己集合など)アプローチで3次元マイクロ・ミリスケール構造の組み立てに成功したことを紹介している。しかし、これらの構造体は脆く、高い機械的強度を必要とする用途や、動的な機械的負荷・除荷力を受ける用途に使用するには、構造的完全性が不十分である。このような条件は、生体内ではバイオメディカルインプラントが、生体外ではろ過や分離のための固定相材料が経験するものである。組織(骨など)や流体(クロマトグラフィーカラムなど)では、一定の負荷・負荷解除サイクルによる動的応力が疲労を引き起こし、3次元構造が緩んで、崩れたり断片化したりする。さらに、カーボンマイクロ構造体やミリスケール構造体の細孔率や孔径は、バッチごとに大きく異なることが指摘されている。しかし、これらの炭素材料-バインダー組成物を用いて、様々なサイズのマイクロスフィア(微小球)の形態のすべてのカーボンマイクロおよびミルスコピック構造体を制御された方法で合成することは、実証されていない。
【0007】
Choi, A. et al., 2017年の、recent advances in engineering microparticles and their nascent utilization in biomedical delivery and diagnostic applicationsは、マイクロスフィアの合成方法を開示しており、ここでは、手動または機械(超音波破砕機およびホモジナイザーを使用)撹拌による従来の乳化自由ラジカル重合を採用した不飽和ポリマーによるマイクロスフィアの合成について説明されている。特許出願番号WO2014070987A1は、上記の方法の適応と、ピッカリングエマルションとして知られる水/油球状液滴の安定化剤としてのカーボンブラック、カーボンナノチューブおよびグラフェンなどの炭素材料の使用を開示している。Shah, R. K. et al., 2008年の論文、Designer emulsions using microfluidics, the journal Materials Today 11により発行、は、多分散性、これらの従来の方法での再現性の低さなどの問題が開示されており、膜押出、粘弾性せん断、マイクロスレッド生成などの高度な乳化方法の開発につながった。気相(通常はゆっくりと動く空気)中に高速で液体を吐出する、または電気的または超音波的圧力を利用して液滴を生成するスプレー装置(アトマイザー、アプリケーター、噴霧器、またはノズルとしても知られている)が材料合成に用いられてきた(D'Addio et al., 2013, Taksima, T. et al., 2015による論文および米国特許出願番号US7131597B2において言及されている)。中国特許番号CN104525070Aは、霧化技術を採用し、カルボン酸官能化カーボンナノチューブおよび他の添加物の混合物を採用したマイクロビーズを開示している。しかし、これらの技術では、微小液滴の大きさを十分に制御することができない。
【0008】
材料合成のためのマイクロ流体ベースの再現性の高いミクロンサイズの液滴生成は、有望な技術として浮上している(Choi, A. et al., 2017およびShah, R. K. et al., 2008の論文で言及されている通り)。ここでは、材料(典型的にはラジカル重合を受けるモノマーまたはポリマー)を有機相または水性相に分散させる。これらの分散液の液滴は、ミリあるいはマイクロ流体チャネル内に生成され、液滴内に閉じ込められた材料は、その場でラジカル重合を受け、マイクロスフィアの形状になる。これらの方法は、従来の噴霧化技術と比較して、はるかに高い精度と再現性を実現することができる。
【0009】
マイクロ流体チャネル内に液滴を生成する方法として、受動的な方法と能動的な方法がある。受動的な液滴生成法は、2つの低粘度の非混和性液相の界面で形成される不安定性を利用して、設定した速度で特定の形状の液滴を生成する(Joanicot, M. et al. 2005の論文で言及されている)。相の界面境界の変形とそれに続く分解は、相が合流し、狭いチャネルを通過する際に、相そのものに含まれる力によって駆動されるものである。受動的な方法は、材料の本質的な特性(粘度、界面張力、チャネルの濡れ性、流体密度)を操作して液滴の分解を調整することも包含する(Zhu, P. et al., 2017による論文で言及)。通常、一方の流体は水(水相)であり、他方は有機溶媒(油相、例えばテトラデカンまたはヘキサデカン)である。チャネルの壁を優先的に濡らす流体相は連続相(外相)となり、チャネルの壁とあまり相互作用しない流体は液滴(内相)を形成する(Joanicot, M. et al., 2005の論文で言及されている)。外側の搬送流体を連続相と呼び、内側の液滴形成流体を分散相と呼ぶ。したがって、水が連続相であれば、油滴が形成される。オイルが連続相の場合は、水滴が形成される。能動的は方法は、電気的、磁気的、遠心的、光学的、熱的、機械的などのエネルギーを追加して、相不安定性を生成または強化する方法である。
【0010】
マイクロ流体ベースの液滴生成技術は、主に低粘性分散液に対して、球状のソフトゲルまたは疎水性ポリマー微粒子を生成するために検討されてきた(Choi, A. et al., 2017, Shah, R. K. et al., 2008, Chu, L.Y. et al., 2007 and Kim, D.Y. et al., 2018による論文で言及されている)。
【0011】
粘性のある原料を入力として使用し、出力として最終乾燥製品(組成、密度、サイズ、形状、または細孔率にカスタマイズ)を生成するエンドツーエンドのマイクロ流体ベースの製造ソリューションは、市場で利用できない。現在市販されている技術は、以下の理由により、硬いオールカーボンマイクロスフィアを生成できる炭素材料の粘性スラリーには適さないか、直接適応することができない。
【0012】
a) 粘性のあるカーボンスラリーを扱えるようなカスタマイズされたセットアップが必要である。市販のマイクロ流体システムの多くは、分散相に純水を使用し、連続相にはオイル(シリコーンやデカンなどの炭化水素系オイル)を使用している。これらのチップのマイクロ流体チャネルを製造するために使用される材料は疎水性である(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を使用して製造される)。外側のオイル連続相(疎水性)は、チップ表面を優先的に濡らし、適切な液滴形成を保証する。しかし、このチップは、炭素材料には不向きである。炭素材料は、特定の有機流体(例えば、酢酸エチル)によく分散する。したがって、液滴を生成する分散相は、カーボンスラリー(「オイル」と見なす)と共にあるこの有機流体である。連続相は、水(極性溶液)である。ガラスや石英のチャネルの表面は、親水性であり、極性水性連続相が液滴形成のためにチップ表面を優先的に濡らすことを保証している。そのため、ガラスのチャネルを用いたマイクロ流体のセットアップが必要である。
【0013】
市販のマイクロ流体セットアップは、低粘性の溶液で十分に機能する。これらのセットアップで使用される粘度値について少し考えてみると、水の粘度は0.89mPa・s、オイル、または一般的なマイクロ流体デバイスで使用される有機溶剤は1(例えば、デカン)~50(例えば、サフラワー油)mPa・sの間である。しかし、このような粘度範囲の炭素分散液を使用して、形成される液滴は、液滴あたりの炭素材料の量が不十分である。高粘性のカーボンスラリー(100mPa・s以上)が必要である。市販のマイクロ流体シリンジポンプで達成可能な流圧は、高粘性スラリー製剤をノズルから押し出すのに不十分である。高圧シリンジポンプは、シリンジサイズにもよるが、最大圧力が65~600psiとなり、粘性の高いカーボンスラリーで均一な流量を生成することができない。位相反転技術を採用した高粘度液滴生成(Man, J. et al., 2017、Chen, H. et al., 2017、およびLi, J. et al., 2018の論文で言及)は、特定のサイズに合わせた液滴を生成する能力をまだ実証していない。
【0014】
b) 生成した液滴を固体球体に加工する後処理のためのカスタマイズされたセットアップが必要である。低密度のカーボンスラリーの液滴は、いったん形成されると浮力を持つ。そのため、それらは連続相の中ですぐに上昇し、表面に到達して分解される。そのため、液滴内の炭素材料は、浮上するまでの時間内に球状になるように保持する必要がある。あるいは、球状になった炭素が浮上するまでの時間を長くして、球状コンフォメーションを維持するために結合する時間を十分に確保する必要がある。
【0015】
前述のように、滴を硬化させるために、紫外線活性化重合技術が採用されてきた。しかし、すべての紫外線活性化型架橋剤がカーボンスラリーに使用できるわけではない。上記のような時間的制約の中で、硬く硬化した液滴(液滴球の全容積を通じた全結合)を確保するためには、炭素材料とバインダーの適切な比率が必要である。他のハイブリッド球体に対して迅速な硬化をもたらすインスタントUVベースの架橋方法またはバインダーは、炭素材料では同様の方法または効率で機能しない(Kim, D. Y. et al., 2018による論文で言及されている)。この食い違いの理由は、以下の通りである。UV硬化に使用される光重合開始剤は、250 - 400 nmのスペクトル範囲に吸光度を見出す。ガラスは、紫外線源から放射される短波長のほとんどをフィルタリングする。最適な硬化条件には、ガラス管や格納容器に遮られることなく直接接触することが必要である。炭素材料のスラリーは黒色であるため、さらに困難が伴う。スラリーが不透明であるため、UV光が各液滴に浸透しにくく、完全な硬化を促進することができない。このように、カーボン、バインダー、その他の添加物の適切な組み合わせや組成を決定し、生成方法がもたらす制約の中で、塊りにならない機械的に安定したマイクロスフィアを得る必要がある。
【0016】
c) 球体の構造的(例えば、細孔率)または機能的(例えば、機械的特性)な変化をさらに行うために、スラリー調製および処理工程にさらなる変更を必要とする。例えば、細孔率の変化は、(Ma, P. X., 2001、およびHaugan, E. et al., 2011による論文で言及されているように)ポロゲンの浸出またはエッチング、または温度アニーリング(Striemer, C. C. et al.2007およびStriemer, C. C. et al.2006)に続く、ポロゲン(例えば、塩化ナトリウム、シリカ、またはポリスチレン粒子)を追加することにより達成され得る。化学的特性(例えば、疎水性)および/または物理的特性(例えば、電気的、熱的、または磁気的特性)の追加の変更には、炭素材料の官能化または炭素スラリーへの原子または分子の組み込み(例えば、導電性を調節するための銅または磁気的特性を調節するための鉄など)が必要であろう。このような変化による製造上の制約に対応するため、球体調製プロトコルをカスタマイズする必要がある。
【0017】
したがって、炭素マイクロビーズを合成するための改良されたプロセス、および炭素マイクロビーズの適切な組成が必要とされている。
【発明の概要】
【0018】
本発明の実施形態によれば、カーボンビーズの合成のためのプロセス(方法)が提供される。このプロセス(方法)は、分散相として機能するように構成された非極性溶媒中で粘性スラリーを調製することを含む。粘性スラリーは、バインダーまたは架橋剤分子またはラジカル重合開始剤と、少なくとも1つの炭素材料とを用いて調製される。バインダーと架橋剤分子の各々は、複数の末端炭素二重結合基及びスペーサー基を含む。このプロセスは、1以上のハイドロコロイドを用いて粘性ゲルを調製することも含み、粘性ゲルは、連続相として機能するように構成される。次の工程において、このプロセスは、分散相と連続相をマイクロ流体液滴生成装置に通して、所定の大きさの球状液滴を得ることを含む。このプロセスはさらに、球状液滴を熱処理または紫外線照射のいずれかに供して、カーボンビーズの球状粒子を得ることを含む。このプロセスは、カーボンビーズの球状粒子を乾燥させて、所定の寸法のカーボンビーズを得ることも含む。
【0019】
本発明の別の実施形態によれば、カーボンビーズの合成方法は、粘性スラリーに第1の添加剤を添加することをさらに含む。第1の添加剤は、光学的、電気的、音響的、熱的又は磁気的特性を調節させる、ラジカル促進剤、ポロゲン、1以上の原子、及び1以上の分子からなる群から選択される。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態によれば、カーボンビーズの合成方法は、球状液滴のサイズを制御するための第2の添加剤を粘性ゲルに添加することをさらに含む。第2の添加剤は、硫酸アンモニウム及び塩化ナトリウムからなる群から選択される。
【0021】
本発明の実施形態によれば、カーボンビーズの合成方法は、カーボンビーズの内部構造及び外面の少なくとも一方を、共有結合又は非共有結合を介して、原子又は分子又は高分子で官能化することをさらに含む。この内部構造は、マイクロ孔、メゾ孔、およびマクロ孔の少なくとも1つから構成される。
【0022】
本発明の別の実施形態によれば、カーボンビーズ合成用組成物が提供される。カーボンビーズ合成用組成物は、分散相として粘性スラリー、及び連続相として粘性ゲルを含む。粘性スラリーは、0.1~20wt%の炭素材料、50~99wt%のバインダーまたは架橋剤分子、および1~3wt%の適切なラジカル重合開始剤を含む。バインダーと架橋剤分子は、1以上の末端炭素二重結合基とスペーサー基から構成される。ラジカル重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル(BP)または2,2-アゾ-ビスイソブチロニトリル(AIBN)または2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオフェノンまたはジフェニルヨードニウムナイトレートまたはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。粘性ゲルは、組成物の約0.05~5wt%を形成する。粘性ゲルは、ハイドロコロイドを含む。
【0023】
本発明のさらに別の実施形態によれば、カーボンビーズ合成用組成物の粘性スラリーは、第1の添加剤をさらに含み、第1の添加剤は、ラジカル促進剤、ポロゲン、原子及び分子からなる群から選択される。
【0024】
本発明のさらに別の実施形態によれば、本発明のカーボンビーズ合成用組成物の粘性ゲルは、球状液滴の大きさを制御するための第2の添加剤をさらに含み、第2の添加剤は、硫酸アンモニウムおよび塩化ナトリウムからなる群から選択される。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、サブミクロンサイズ、ミクロンサイズ及びミリサイズの少なくとも1つを有するカーボンビーズの球状粒子を合成するためのマイクロ流体液滴生成装置が提供される。マイクロ流体液滴生成装置は、粘性ゲルを連続相として保持するように構成された連続相圧力タンクを含む。マイクロ流体液滴生成装置はまた、連続相圧力タンクに流体的に結合された(パルスソレノイドを有する又は有しない)連続相圧力調整器を含み、連続相圧力パルスソレノイドは、連続相の流量及びパターンを制御するように構成される。マイクロ流体液滴生成装置は、スラリーリザーバに流体的に接続された定量圧力ポンプをさらに含み、その定量圧力ポンプ(例えばシリンジポンプ)は、スラリーリザーバに装填される分散相として粘性スラリーの流れを制御するように構成される。マイクロ流体液滴生成装置は、パルスソレノイドを有する又は有しない連続相圧力調整器とスラリーリザーバとに流体的に接続された親水性共流ノズルを含む。親水性共流ノズルは、連続相と分散相の混合を可能にするように構成される。マイクロ流体液滴生成装置は、親水性共流ノズルに流体的に結合された親水性反応チャンバをさらに含み、親水性反応チャンバは、カーボンビーズの球形状粒子を合成するための親水性反応を行うように構成されている。
【0026】
本発明の利点および特徴をさらに明確にするために、添付の図に示されているその特定の実施形態を参照することによって、本発明のより詳細な説明を以下に行う。これらの図は、本発明の典型的な実施形態のみを描いており、したがって、その範囲を限定的に考慮するものではないことを理解されたい。本発明は、添付の図を用いて、さらに具体的かつ詳細に説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本開示は、添付の図により、さらに具体的かつ詳細に説明される。
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るカーボンビーズの合成方法に含まれるステップを表すフロー図である。
【
図2a】
図2aは、本発明の実施形態に係るマイクロ流体液滴生成装置の概略図である。
【
図2b】
図2bは、本発明の実施形態に係るマイクロ流体液滴生成装置の一部の拡大視を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る、様々な原始炭素材料と、バインダーとしてデカンジオールジアクリレートまたはブタンジオールジメタクリレートとを用いて作製した炭素マイクロビーズの明視野光学顕微鏡画像を表している。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る、酸化グラフェン及びポリエチレングリコール(PEG)ジアクリレートをバインダーとして用いて作製したカーボンマイクロビーズの明視野光学顕微鏡画像を表している。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る、様々な原始的なマイクログラファイト及びデカンジオールジメタクリレート又はブタンジオールジメタクリレートをバインダーとして用いて調製された、より小さい炭素マイクロビーズ(<10μm径)の明視野光学顕微鏡画像を表している。
【
図6】
図6は、本明の実施形態に係る、マイクログラファイト及びデカンジオールジメタクリレートを用いて調製された炭素マイクロビーズの解像度走査電子顕微鏡(SEM)画像を表している。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る、カーボンマイクロビーズが割れたときの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を表す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る、カーボンブラックを用いて調製されたカーボンマイクロビーズの高(上)及び低(下)分解能走査電子顕微鏡(SEM)画像を表す。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る、フラーレンを用いて調製されたカーボンマイクロビーズの高(上)低(下)分解能走査型電子顕微鏡(SEM)画像を表す図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係る、マイクログラファイトを用いて調製された高多孔性炭素マイクロビーズの低(上)及び高(下)分解能走査電子顕微鏡(SEM)画像を表す。
【
図11】
図11(a)、11(b)及び11(c)は、それぞれ、本発明の実施形態に係る、カーボンナノチューブ、活性炭、酸化グラフェンを用いて調製されたカーボンマイクロビーズの走査電子顕微鏡(SEM)画像を表す。
【0028】
さらに、当業者であれば、図中の要素は簡略化のために図示されており、必ずしも縮尺通りに描かれていない可能性があることを理解するであろう。さらに、装置の構造に関して、装置の1以上の構成要素は、従来の記号によって図に表されているかもしれず、図は、本明細書の説明の利益を有する当業者に容易に明らかになる詳細で図を不明瞭にしないように、本発明の実施形態の理解に関連するそれらの特定の詳細のみを示しているかもしれない。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示の原理の理解を促進する目的で、次に、図に示された実施形態を参照し、それらを説明するために特定の言語を使用することにする。それにもかかわらず、本開示の範囲のいかなる限定もそれによって意図されないことが理解されるであろう。当業者に通常生じるであろう、図示されたシステムにおけるそのような変更およびさらなる修正、ならびに本開示の原理のそのようなさらなる適用は、本開示の範囲内であると解釈されるであろう。
【0030】
用語「comprise」、「comprising」(含む、有する、備える)、またはその他の変形は、ステップのリストを構成するプロセスまたは方法がそれらのステップのみを含むのではなく、明示的にリストされていない他のステップまたはそのプロセスまたは方法に固有のステップを含むことができるように、非排他的な包含を対象とすることを意図している。同様に、"comprises... a "で先行する1以上の成分、化合物及び成分は、より多くの制約なしに、他の成分、化合物又は成分又は追加の成分の存在を排除するものではない。本明細書全体を通して、「ある実施形態において」、「別の実施形態において」および同様の文言の出現は、すべて同じ実施形態を指す可能性があるが、必ずしもそうではない。
【0031】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で提供されるシステム、方法、及び例は、例示に過ぎず、限定することを意図していない。
【0032】
以下の明細書および特許請求の範囲において、多くの用語が参照されるが、これらの用語は以下の意味を有するように定義されるものとする。単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈から明らかにそうでないと判断される場合を除き、複数形の言及を含む。
【0033】
本発明の実施形態は、カーボンビーズの合成方法およびカーボンビーズ組成物に関する。また、本発明は、サイズ、形態、細孔率および物理化学的特性が制御された球状構造のカーボンビーズを提供する。球状カーボンビーズの制御されたサイズには、サブミクロンサイズ、ミクロンサイズまたはミリサイズが含まれる。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係るカーボンビーズを合成するためのプロセス(方法)100に関わるステップを表すフロー図である。プロセス100は、従来のマイクロ流体システムとは異なり、主に粘性極性溶液を連続相とし、粘性非極性溶液を分散相としてマイクロ流体システムに使用する。
【0035】
カーボンビーズを合成するためのプロセス100は、ステップ102で分散相として機能するように構成された非極性溶媒中で粘性スラリーを調製することから始まる。粘性スラリーは、100mPa・s超を調製する。分散相は、内相として流れる。粘性スラリーは、バインダー、架橋剤分子、ラジカル重合開始剤、及び少なくとも1つの炭素材料のうちの1つを使用して調製される。バインダー及び架橋剤分子の各々は、複数の末端炭素二重結合基及びスペーサー基を含んでいる。実施形態において、1以上の末端炭素二重結合基は、メタクリレート、アクリレートなどの多官能性アクリル基、又はスチレンなどの芳香族基を含むが、これらに限定されない。実施形態において、スペーサー基は、疎水性鎖、親水性鎖、両親媒性鎖又はそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを含む化合物である。実施形態において、炭素材料は、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、活性炭、ナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、及びフラーレンからなる群から選択される。ラジカル重合開始剤は、過酸化ベンゾイル(BP)、2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオフェノン及びジフェニルヨードニウムナイトレートのいずれかを含む。
【0036】
粘性スラリーは、定量圧力ポンプを通過させるかまたは押し出すのに十分な流れを有する必要があり、粘性スラリーの粘度は、炭素材料の種類に依存する。例えば、グラファイト材料スラリー混合物では、206.5mPa・sの粘度が必要である。この値を超える粘度のものは半固形状であり、マイクロチャネルや定量圧力ポンプを通って押し出すのは困難である。バインダーや架橋剤は液状のものが理想とされ、ドデカンやヘキサンのような溶剤を10ml/mgまで加えて混合物を希釈し、流動状態を実現することができる。本明細書で使用する「分散相」という用語は、別の相に分散している粒子で構成されている相を意味する。本明細書における分散相は、不連続相である。実施形態において、定量圧力ポンプは、シリンジポンプを含んでもよい。
【0037】
本発明の代替実施形態では、ステップ102において、粘性スラリーを極性溶媒に調製する(
図1には示されていない)。極性溶媒中に調製された粘性スラリーは、分散相として機能するように構成され、分散相は内相として流れる。ここで用いられる極性溶媒は、水、メタノール、エタノール等から選択することができる。
【0038】
実施形態では、ステップ104で1以上のハイドロコロイドを使用して粘性ゲルを調製する。粘性ゲルは、連続相として機能するように構成される。連続相は、外相として流れる。粘性ゲルは、極性媒体中で調製され、これは、今度は非極性溶媒に非混和性である。1以上のハイドロコロイドは、キサンタンガム、アラビアゴム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体若しくは組み合わせからなる群から選択される。1以上のハイドロコロイドは、新たに形成された液滴を凝集及び合体から保護し、連続相の粘度を増加させるように構成されている。本明細書で使用される「連続相」という用語は、粒子が分散されている相を指す。
【0039】
本発明の代替実施形態では、粘性ゲルは、ステップ104において、極性溶媒に非混和性である非極性溶媒中で調製される(
図1には示されていない)。粘性ゲルは、連続相として機能するように構成されており、連続相は外相として流れる。
【0040】
実施形態では、ステップ106において、分散相及び連続相をマイクロ流体液滴生成装置に通過させ、所定の大きさの球状液滴を取得する。球状液滴の所定の大きさは、10mm~100nmの大きさの範囲を含む。好ましい実施形態では、球状液滴の所定の大きさは、10μm~90μmの範囲である。球状液滴の直径、ひいてはマイクロビーズのサイズは、相流速を調節し、内相スラリーリザーバのサイズを小さくすることによって制御(減少または増加)され得る。極性連続相中に非極性炭素スラリー液滴が形成されると、界面エネルギー最小の熱力学的原理により、自動的に球状コンフォメーションが形成される。球状液滴内の内容物は、必要な機械的安定性を得るために完全に結合する必要があり、高粘性連続相から分離し、洗浄・乾燥して使用可能な硬質ビーズを作成することができる。
【0041】
本発明において、球状液滴の半径の理論値rは、Thorsenらによって与えられた方程式を用いて形成され、以下の通りである。
実際の液滴サイズと予測される液滴サイズの間に2倍の差があることが確認された。
【0042】
本発明では、先行技術からの確たる指針がなく、予測不可能で変数の数が多いため、様々な実証実験が行われた。液滴形成の改良により、相速度パラメータを変化させることで球状液滴を達成できる可能性があることが示された。望ましい単分散の球状液滴を生成するためには、外相が内相よりもはるかに速く流れなければならないことが観察された。この結果は、相の流速を調節し、内相のスラリーリザーバーサイズを小さくすることによって、液滴径、ひいてはマイクロビーズサイズを制御(減少または増加)できることを示唆している。カーボンビーズの合成のために式1を用いた場合、予想される液滴径は776μmと計算されたが、実際に得られた液滴径は90μmであり、762%の誤差があった。
【0043】
実施形態では、ステップ108でカーボンビーズの球状粒子を得るために、球状液滴を熱処理または紫外線照射に供する。液滴に紫外線照射又は熱処理を施すことにより、捕捉容器に流入する際にスラリー混合物のその場で重合及び硬化が促進される。実施形態において、熱処理は、温度オーブンを使用して与えられた。
【0044】
さらに、ステップ110において、カーボンビーズの球状粒子を乾燥させ、所定の寸法のカーボンビーズを得る。カーボンビーズの所定の寸法は、サブミクロンサイズ、ミクロンサイズ及びミリサイズのうちの少なくとも1つを含む。カーボンビーズの球状粒子の合成後の処理は、その物理化学的な強化のために調節される。合成後の処理の例としては、極端なpHと高温に耐えるために粒子の導電性と機械的特性を高めるための温度アニーリング、およびカーボンビーズの孔径と細孔率を調節することが挙げられる。
【0045】
例示的な実施形態では、カーボンビーズの合成後の処理には、粒子の導電性および機械的特性を高め、pH1~pH14の極端な酸性および塩基性のpH範囲、ならびに室温から100℃の範囲の高温に耐えるための温度アニーリングが含まれる。
【0046】
カーボンビーズの合成のためのプロセス100のさらなる実施形態では、カーボンビーズの球状粒子の物理化学的特性を高めるために、粘性スラリーに第1の添加剤を添加することも含む。第1の添加剤は、カーボンビーズの球状粒子の光学的特性、電気的特性、音響的特性、熱的特性及び磁気的特性のうちの1つを操作し得る1以上のラジカル促進剤、1以上のポロゲン、並びに1以上の原子及び1以上の分子を含む。ラジカル促進剤、ポロゲン、原子または分子を粘性スラリーに添加することにより、カーボンビーズの球状粒子の孔径を0.1nm~500μM、細孔率範囲を1%~99%の間で調節することができる。
【0047】
一つ以上のラジカル促進剤は、球形状粒子のカーボンビーズの機械的特性を改善するために添加される。実施形態において、ラジカル促進剤は、メチルエチルケトンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、p-イソプロピルクミルヒドロペルオキシド、コバルトナフテネートおよびコバルトアセチルアセトネートからなる群から選択される。
【0048】
1以上のポロゲンは、球形状粒子のカーボンビーズの孔径および細孔率を調節するために添加される。実施形態において、ポロゲンは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、1,4-ブタンジオール、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、及びNaCl結晶からなる群から選択される。
【0049】
実施形態において、カーボンビーズの球状粒子の光学的特性を調節するために、1以上の原子及び1以上の分子は、ナノチューブ(例えば、バンタブラック)、ナノダイヤモンド、シリカ、アルミニウム、銀、金、有機蛍光体、ランタノイド又はそれらの誘導体又は組み合わせを含む群から選択されてもよい。
【0050】
別の実施形態では、カーボンビーズの球状粒子の電気的特性を調節するために、1以上の原子および1以上の分子は、銅、金、銀、およびアルミニウムを含む群から選択されてもよい。
【0051】
さらに別の実施形態では、カーボンビーズの球状粒子の音響的特性を調節するために、1以上の原子および1以上の分子は、六フッ化硫黄およびバリウムを含む群から選択されてもよい。
【0052】
実施形態において、カーボンビーズの球状粒子の熱的特性又は磁気的特性を調節するために、1以上の原子及び1以上の分子は、鉄、ニッケル、コバルト及びそれらの酸化物を含む群から選択されてもよい。
【0053】
カーボンビーズを合成するためのプロセス100のさらなる実施形態において、プロセス100は、球状液滴のサイズを制御するための第2の添加剤を粘性ゲルに添加することを含む。第2の添加剤は、硫酸アンモニウム及び塩化ナトリウムからなる群から選択される。硫酸アンモニウムおよび塩化ナトリウムは、疎水性スラリーの周囲に形成される極性媒体のカゴの順序(the order of cages)を増加させることによって、疎水性相互作用を強化するために添加される。
【0054】
カーボンビーズを合成するためのプロセス100のさらなる実施形態において、プロセス100は、カーボンビーズの内部構造及び/又は外面を、共有結合又は非共有結合を介して、原子、分子、及び高分子の少なくとも一つで官能化することも含む。かかる実施形態において、内部構造は、マイクロ孔、メゾ孔、及びマクロ孔のうちの少なくとも1つを含む。球状カーボンビーズの内面及び外面と、原子、分子、高分子との共有結合または非共有結合の官能化を調節することにより、疎水性、表面電荷、または特定の分析対象物への親和性を変化させることができる。
【0055】
本発明の別の実施形態では、カーボンビーズを合成するための組成物200が提供される。組成物200は、分散相としての粘性スラリー、及び連続相としての粘性ゲルを含む。粘性スラリーは、0.1~20wt%の炭素材料、50~99wt%のバインダー又は架橋剤分子、及び1~3wt%の適切なラジカル重合開始剤を含む。
【0056】
実施形態において、炭素材料は、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、フラーレン、ナノダイヤモンド又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0057】
別の実施形態では、バインダー及び架橋剤分子の各々は、1以上の末端炭素二重結合基及びスペーサー基を含む。1以上の末端炭素二重結合基は、メタクリレート、アクリレートなどの多官能性アクリル基、またはスチレンなどの芳香族基を含むが、これらに限定されるものではない。スペーサー基は、疎水性鎖、親水性鎖、両親媒性鎖、またはそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む化合物である。
【0058】
さらに別の実施形態では、ラジカル重合開始剤は、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオフェノン、およびジフェニルヨードニウムナイトレートのうちの1つを含む。ラジカル重合開始剤は、二重結合をその場で迅速に架橋させることができる。ラジカル重合開始剤は、紫外線光開始剤として機能する。UV硬化に使用される光開始剤は、250~400nmの波長域に吸光度を持つため、ガラス管や格納容器に遮られることなく直接照射してUV光重合を開始させる必要がある。
【0059】
一実施形態において、組成物200は、0.05~5wt%の粘性ゲルを含む。かかる実施形態において、粘性ゲルは、1以上のハイドロコロイドを含む。1以上のハイドロコロイドは、キサンタンガム、アラビアゴム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)又はそれらの誘導体若しくは組み合わせからなる群から選択される。1以上のハイドロコロイドは、新たに形成された液滴を凝集及び合体から保護し、連続相の粘度を増加させるように構成される。1以上のハイドロコロイドを用いた連続相粘度の増加は、生成された球状液滴をその材料含有量で「その場に」懸濁させること、表面張力の不均衡による破裂を防ぐために表面への移動を著しく遅らせること、合流する非混和性相間の界面境界においてより発達した変形につながるせん断力の増加により球状液滴を容易に形成すること、液滴のサイズを制御することなど3つの本質的機能を果たすと考えられる。ハイドロコロイドは、連続相、すなわち極性相または水性相に添加される。
【0060】
代替の実施形態では、電池電極用途の活物質などの用途で水分を含まないカーボンビーズを生成するために、1以上のハイドロコロイドをエタノール、エーテル、またはアセトンなどの他のプロトン性極性媒体(有機分散相において非混和性)に添加する。
【0061】
カーボンビーズ合成用組成物200の更なる実施形態では、粘性スラリーは、第1の添加剤も含む。第1の添加剤は、1以上のラジカル促進剤、1以上のポロゲン、1以上の原子及び1以上の分子からなる群から選択される。1以上のラジカル促進剤は、球形状粒子のカーボンビーズの機械的特性を向上させるために添加される。1以上のポロゲンは、球状粒子のカーボンビーズの孔径及び細孔率を調節するために添加される。1以上の原子または1以上の分子は、カーボンビーズの球状粒子の光学的、電気的、音響的、熱的または磁気的特性を操作するために添加される。ラジカル促進剤、ポロゲン、原子または分子を粘性スラリーに添加することにより、カーボンビーズの球状粒子の孔径を0.1nm~500μM、細孔率を1%~99%の範囲で調節することができる。
【0062】
カーボンビーズ合成用組成物200の更なる実施形態では、粘性ゲルは、球状液滴の大きさを制御するための第2の添加剤も含む。第2の添加剤は、硫酸アンモニウムおよび塩化ナトリウムからなる群から選択される。硫酸アンモニウムおよび塩化ナトリウムは、疎水性スラリーの周囲に作られる極性媒体のカゴの順序を増やすことによって、疎水性相互作用を強制するために添加される。第1の添加剤は、カーボンビーズの疎水性、表面電荷、および特定の分析対象物への親和性を変えるために、1以上の原子、1以上の分子、および1以上の高分子のうちの少なくとも1つでカーボンビーズの内部構造と外面を共有結合および非共有結合で官能化することが可能である。内部構造は、マイクロ孔、メゾ孔、マクロ孔から構成される。
【0063】
本発明のさらに別の実施形態において、サブミクロンサイズ、ミクロンサイズ及びミリサイズのうち少なくとも一つを有するカーボンビーズを合成するためのマイクロ流体液滴生成装置300が提供される。
図2aは、本発明の一実施形態に係るマイクロ流体液滴生成装置300の概略図である。
【0064】
本明細書において、「マイクロ流体液滴生成装置」という用語は、再現性の高い微小サイズの液滴を生成するための装置を意味する。マイクロ流体液滴生成装置300は、従来の方法と比較して、はるかに高い精度及び再現性で液滴を生成することを可能にする。マイクロ流体液滴生成装置300は、所望の大きさの液滴を要求される流量及び体積で提供する。
【0065】
一実施形態において、マイクロ流体液滴生成装置300は、粘性ゲルを連続相として保持するように構成された連続相圧力タンク305を含む。連続相圧力タンクは、粘性ゲルを装填した後、粘性ゲルの流動を可能にするために加圧される。連続相圧力タンク305は、連続相リザーバとも呼ばれる。
【0066】
一実施形態において、マイクロ流体液滴生成装置300は、連続相圧力タンク305に流体的に結合されたパルスソレノイドを有する又は有しない連続相圧力調整器315も含む。連続相圧力調整器315は、連続相の流量及びパターンを制御するように構成される。連続相圧力調整器315は、連続相圧力調整器としても参照される。
【0067】
一実施形態において、マイクロ流体液滴生成装置300は、粘性スラリーが充填されたスラリーリザーバ310に流体的に接続された定量圧力ポンプ320も含む。一実施形態において、定量圧力ポンプは、シリンジポンプを含んでもよい。定量圧力ポンプ320は、スラリーリザーバ310に装填された分散相としての粘性スラリーの流れを制御するように構成されている。一実施形態では、ポンプ320は、HPLCポンプを含む。HPLCポンプは、5000~7000psiの範囲内の高圧を提供することを可能にする。高圧は、均一な流量を生成する。一実施形態では、スラリーリザーバ340は、様々な内径すなわち300μM~<20μMで作製された液滴のスナップオフ(snap-off)を最適化するように構成される。
【0068】
図2bを参照すると、マイクロ流体液滴生成装置300は、連続相圧力調整器315及びスラリーリザーバ310を介して連続相圧力タンク305に流体的に接続された親水性共流ノズル330も含むことが示されている。親水性共流ノズル330は、収束部335で連続相と分散相を混合できるように構成されている。連続相と分散相は親水性共流ノズル330で出会い、流れる非混和性流体間のせん断力により、親水性容器として機能する複数のガラス毛細管によって形成される領域340で液滴のスナップオフが起こる。親水性ノズル325、330、および340の親水性表面化学、ならびに反応室345により、連続相が「外相」となり、疎水性分散相を親水性ノズル325、330、および340の中心部に分離した滴として保持することが保証される。マイクロ流体液滴生成装置300は、市販のノズルを置き換えることができ、個々の液滴の大きさを制御することができる。親水性共流ノズル330における液相間のせん断力の制御は、液滴のスナップオフを正確に制御し、それによって液滴量を設定することを可能にする。
【0069】
一実施形態において、マイクロ流体液滴生成装置300は、UVランプを含み、親水性共流ノズル330に流体的に結合された親水性反応チャンバ345を含む。かかる実施形態では、親水性反応チャンバ345は、軸350を基準として予め設計された傾斜角度θを有するように構成される。親水性反応チャンバ345は、カーボンビーズの球形状粒子を合成するための親水性反応を実行するように構成されている。例示的な実施形態において、マイクロ流体液滴生成装置によって得られる液滴は、90μmのサイズを有する。相流速を調節し、内相スラリーリザーバーサイズ(スラリーリザーバ310の内径)を小さくすることによって、液滴径、ひいてはカーボンビーズの球状粒子のサイズを制御(減少または増加)することができる。マイクロ流体液滴生成装置300は、従来のマイクロ流体システムとは異なり、主に極性溶液を連続相として用い、非極性溶液を分散相として用いる。
【0070】
カーボンビーズの球状粒子は、孔直径、細孔率、機械的特性などの特性について調べられた本発明が提供するプロセス100、組成物200、及びマイクロ流体液滴生成装置300を用いて合成されたマイクロサイズ(カーボンマイクロビーズともいう)を含むことができる。
【0071】
図3は、本発明の実施形態に従って、様々な原始炭素材料と、バインダーとしてデカンジオールジアクリレートまたはブタンジオールジメタクリレートとを用いて作製されたカーボンマイクロビーズの明視野光学顕微鏡画像を表している。第1画像は、カーボンブラックを用いて形成されたカーボンマイクロビーズを示す。第2画像は、カーボンブラックを用いて形成されたフラーレンを示す。第3画像は、マイクログラファイトを用いて形成されたカーボンマイクロビーズを示す。第4画像は、多層カーボンナノチューブを用いて形成されたカーボンマイクロビーズを示す。
【0072】
図4は、本発明の一実施形態に従って、酸化グラフェン及びポリエチレングリコール(PEG)ジアクリレートをバインダーとして用いて作製したカーボンマイクロビーズの明視野光学顕微鏡画像を表す。
【0073】
図5は、本発明の一実施形態に従って、様々な原始マイクログラファイト及びバインダーとしてのデカンブタンジオールジメタクリレートを用いて調製されたより小さいカーボンマイクロビーズ(<10μm径)の明視野光学顕微鏡画像を表す。
【0074】
図6は、本発明の一実施形態に従って、マイクログラファイト及びデカンジオールジメタクリレートを用いて調製したカーボンマイクロビーズの解像度走査電子顕微鏡(SEM)画像を表す。カーボンマイクロビーズは、サイズ面を強調するために、100μm及び10μmのスケールで示されている。
【0075】
図7は、本発明の一実施形態に従って、カーボンマイクロビーズが割れたときの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を表す。
【0076】
図8は、本発明の一実施形態に従って、カーボンブラックを用いて調製したカーボンマイクロビーズの高解像度(上)及び低解像度(下)の走査電子顕微鏡(SEM)画像を表す。
【0077】
図9は、本発明の一実施形態に従って、フラーレンを用いて調製したカーボンマイクロビーズの高解像度(上)及び低解像度(下)の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を表す。
【0078】
図10は、本発明の実施形態に従って、マイクログラファイトを用いて調製した高多孔性カーボンマイクロビーズの低解像度(上)及び高解像度(下)の走査電子顕微鏡(SEM)画像を表す。
【0079】
図11(a)、(b)及び(c)は、それぞれ、本発明の一実施形態に従って、カーボンナノチューブ、活性炭、酸化グラフェンを用いて調製したカーボンマイクロビーズの走査電子顕微鏡(SEM)画像を表す。
【0080】
表1は、合成したカーボンマイクロビーズの特性を示す。
【表1】
【0081】
実施例
本発明を以下の具体例でさらに説明するが、これらは例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【0082】
実施例1
2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンを1,10-デカンジオールジメタクリレートに2vol%で添加した。この溶液を30秒間ボルテックス混合した。グラファイト(粉砕<5 um)を5~20wt%添加し、2500rpmで2分間混合してスラリー1を得た(粘度206.5~400mPa・s)。次に、この溶液を入れたバイアルを30℃の水浴に熱平衡になるまで導入した。
【0083】
実施例2
2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンを1,4-ブタンジオールジメタクリレートに2vol%で添加した。この溶液を30秒間ボルテックス混合した。カーボンブラック(メソポーラス<500nm)を5~20wt%添加し、2500rpmで2分間混合し、スラリー2(粘度110~200mPa・s)を得た。次に、この溶液を入れたバイアルを30℃の水浴に熱平衡になるまで導入した。
【0084】
実施例3
水性相(粘度410mPa・s)の調製には、水性外相の調製が含まれ、水性外相は、スラリー1またはスラリー2の調製と対になり、マイクロ流体液滴生成装置で使用された。連続相の一部としてキサンタンガムを使用し、相粘度を高めて液滴を安定化させた。外相の粘度を上げると,相が合流する際の相間のせん断力が高まり、界面境界が変形して液滴のスナップオフが発生する。さらに、ガムは液滴が再び結合しないように安定化させるので、界面活性剤が不要になる。キサンタンガム/水溶液を2g/Lの濃度で調製した。
【0085】
実施例4
それぞれの1000mlのビーカーに液滴を含む400mlの連続相を採取し、架橋を行った。ビーカーを連続的な紫外線(330 nm)照射下に3時間置き,さらに1時間放置した。この時間スケールは、モノマーバインダーの重合を100%に近づけるために選択された。
【0086】
実施例5
ビーカーの内容物全体(連続相と光重合液滴)を450mlの円錐底型遠心管に移し、1200rpmで20分間遠心分離することによって光重合液滴の分離を達成した。その後、上澄み液を真空除去する。200mlのDI水を残りの硬化ビーズのペレットに加え、チューブ全体を振ってペレットをほぐし、洗浄ステップに入る。さらに、チューブは遠心分離機を使用して1200RPMでさらに20分間遠心分離し、この洗浄サイクルを3回繰り返す。
【0087】
実施例6
洗浄したペレットを別のガラスビーカーにピペットされ、静かに移し、110℃のオーブンで10分~2時間加熱して乾燥させ、乾燥カーボンビーズを得た。
【0088】
本発明は、サブミクロンサイズ、ミクロンサイズ、またはミリサイズのカーボンビーズの球状粒子を提供するものである。本発明は、改善された物理化学的特性を有するカーボンビーズの球状粒子の合成のための粘性スラリーの調節を提供する。このプロセスは、カーボンビーズの球状粒子の極端なpHおよび高温に耐える能力を向上させる。このプロセスおよび組成物は、カーボンビーズの球状粒子の孔径および細孔率を調節することも可能である。このプロセスおよび組成物は、高粘性スラリーを用いて特定のサイズの球状液滴を生成することを可能にする。材料、添加物、処理工程の組み合わせにより、カスタマイズ可能なカーボンビーズを合成する道が開かれ、分離、ろ過、精製、ワイヤとケーブル、電極、センサー、複合材料と添加物製造、医薬品送達用途に使用される可能性がある。また、本発明は、サブミクロンサイズ、ミクロンサイズ、ミリサイズの少なくとも1つを有するカーボンビーズの球状粒子を合成するように構成されたマイクロ流体液滴生成装置を提供する。
【0089】
本発明を説明するために特定の言語が使用されてきたが、それを理由に生じるいかなる制限も意図されない。当業者には明らかなように、本明細書で教示される発明概念を実施するために、本方法に様々な作業上の修正を加えることができる。
【0090】
図および前述の説明は、実施形態の例を示すものである。当業者であれば、説明した要素の1つまたは複数を組み合わせて、1つの機能要素にしてもよいことは十分に理解できるであろう。あるいは、特定の要素は、複数の機能要素に分割されてもよい。ある実施形態からの要素は、別の実施形態に追加されてもよい。例えば、本明細書に記載される処理の順序は変更されてもよく、本明細書に記載される方法に限定されない。さらに、任意のフロー図の行為は、示された順序で実施される必要はなく、また、すべての行為が必ずしも実施される必要はない。また、他の行為に依存しない行為については、他の行為と並行して実施することができる。実施形態の範囲は、これらの具体例によって決して限定されるものではない。