(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】浸透を用いて仕事を行う方法
(51)【国際特許分類】
F03G 7/00 20060101AFI20240329BHJP
B01D 61/00 20060101ALI20240329BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
F03G7/00 G
B01D61/00 500
B01D69/02
(21)【出願番号】P 2022556627
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(86)【国際出願番号】 EP2021056807
(87)【国際公開番号】W WO2021185900
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-11-02
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522369636
【氏名又は名称】ピーシュテルト, オリバー
【氏名又は名称原語表記】PIESTERT, OLIVER
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピーシュテルト, オリバー
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-528740(JP,A)
【文献】特開2014-101818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸透を用いて仕事を行う方法であって、
i)供給チャンバと、少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を含む圧力チャンバと、
液体に対して透過性であり、かつ少なくとも部分的に塩イオンに対して不透過性の膜とを備え、前記膜は前記供給チャンバと前記圧力チャンバとの間の
液体連通を可能にする、モータを提供するステップと、
ii)前記供給チャンバ内に低塩濃度
液体を供給するステップと、
iii)前記圧力チャンバの前記少なくとも1つの出口を閉鎖するステップと、
iv)高塩濃度
液体を前記圧力チャンバ内へと流すステップと、
v)
液体が前記膜を横断して前記圧力チャンバに入るにつれて前記圧力チャンバ内の圧力を増加させるステップと、
vi)前記圧力チャンバ内の前記増加した圧力を使用して仕事を行うステップと、
vii)前記圧力チャンバの前記少なくとも1つの出口を開放し、前記
液体を前記圧力チャンバから排出させ、前記圧力チャンバ内の圧力を減少させるステップと、
viii)ステップiii~viiを繰り返すステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの入口および前記少なくとも1つの出口は、ステップv)の間に閉鎖され
、前記圧力チャンバ内で達成される圧力は、少なくとも1MP
aである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記圧力チャンバ内の圧力は、ステップivにおいて前記圧力チャンバ内に高塩濃度
液体を流すためのより低い圧力と、仕事を行うためのより高い圧力との間で交互する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップivにおいて高塩濃度
液体を前記圧力チャンバ内へと流すステップは、前記圧力チャンバが1MPa(ゲージ)未
満の圧力である間に行われ、および/または、
ステップivにおいて高塩濃度
液体を前記圧力チャンバ内に流すステップは、前記圧力チャンバ内の圧力がステップvにおいて達成される最大圧力よりも少なくとも10%
低い間に行われる、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
ステップiiも繰り返し実行され、ステップiiにおいて前記供給チャンバ内に低塩濃度
液体を供給するステップは、前記圧力チャンバが空であるか、または1MPa(ゲージ)未
満の圧力である間に実行される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記圧力チャンバ内で達成される最大圧力は、前記システムの最大理論浸透圧よりも少なくとも10%
低い、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップiv)、v)、vi)は逐次的
に行われる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記圧力チャンバは固定容積を有し、前記モータはタービンをさらに備え、ステップviは、圧力の増大により前記圧力チャンバから
液体が流出し、前記タービンを動作させて仕事を行うことを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの出口は、
弁をさらに含み、前記弁は、ステップvにおいて前記圧力チャンバ内で生成された圧力の少なくとも一部を解放するために断続的に開かれ、前記弁から放出される
液体の断続的な流れが、前記タービンにおいて仕事を行うために使用される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記圧力チャンバは可変容積を有
する、請求項1~6のいずれかに1項に記載の方法。
【請求項11】
前記モータはアキュムレータをさらに備え、前記アキュムレータは前記圧力チャンバから断続的な流れを受ける、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記モータは、前記供給チャンバと前記圧力チャンバとの間の
液体の交換を可逆的に遮断するよう構成される浸透障壁をさらに備え、前記方法は、さらに、
前記供給チャンバと前記圧力チャンバとの間の
液体の流れが防止されるように、前記浸透障壁を前記膜の上に位置決めするステップと、
前記増加した圧力を使用して仕事を行った後に前記浸透障壁を除去するステップとを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記高塩濃度
液体は、前記低塩濃度
液体よりも少なくとも100倍高
い塩濃度を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記低塩濃度
液体は重力によって前記供給チャンバに流入し、および/または前記高塩濃度
液体は重力によって前記圧力チャンバに流入し、および/または前記
液体が重力によって前記圧力チャンバから排出される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
モータであって、
低塩濃度
液体の供給を受けるよう構成される供給チャンバと、
高塩濃度
液体の供給を受けるよう構成される圧力チャンバであって、封止可能な入口および封止可能な出口をさらに備える圧力チャンバと、
液体分子に対して透過性であり、塩イオンに対して少なくとも部分的に不透過性の膜であって、前記供給チャンバと前記圧力チャンバとの間の
液体連通を可能にする膜とを備え、
前記圧力チャンバは、前記出口が封止され、前記圧力チャンバ内に圧力が蓄積する閉鎖構成と、前記出口が開放され、前記圧力チャンバ内の圧力が減少する開放構成との間で交互するよう構成され、
前記モータは、前記圧力チャンバ内で生成される増加した圧力を使用して仕事を行うことに対して構成さ
れ、
高塩濃度液体を前記圧力チャンバ内へと流すことは、前記モータの動作中において、前記圧力チャンバ内の圧力が、前記閉鎖構成中の最大圧力蓄積よりも少なくとも10%低い間に、繰り返し行われる、モータ。
【請求項16】
前記入口は、前記閉鎖構成中に閉鎖される、請求項15に記載のモータ。
【請求項17】
高塩濃度
液体を前記圧力チャンバ内へと流すことは、前記モータの動作中において、前記圧力チャンバが1MPa(ゲージ)未
満の圧力にある間に、繰り返し行わ
れる、請求項15または16に記載のモータ。
【請求項18】
前記モータはアキュムレータをさらに備え、前記アキュムレータは前記圧力チャンバから断続的な流れを受ける、請求項15、16または17に記載のモータ。
【請求項19】
前記モータは、前記圧力チャンバと
液体連通するタービンをさらに備
える、請求項15~18のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項20】
前記圧力チャンバは可変容積を有
する、請求項15、16または17に記載のモータ。
【請求項21】
前記膜を通る前記供給チャンバと前記圧力チャンバとの間の
液体の交換を可逆的に遮断
するよう構成される浸透障壁をさらに備える、請求項15~20のいずれか1項に記載の
モータ。
【請求項22】
前記圧力チャンバは、前記圧力チャンバから
液体を放出するよう構成される弁をさらに備え
、前記弁は過圧弁である、請求項15~21のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項23】
前記膜は、32,000mg/LのNaClの試験塩濃度に、25°Cで5.5MPaの印加圧力で、および10%の回収率で、供された場合、少なくとも95
%の安定した脱塩率を提供する、請求項15~22のいずれか1項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本発明は、浸透を用いて仕事を行う方法および浸透モータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンなエネルギーの生産の需要が指数関数的に増大している。太陽エネルギーおよび風力エネルギーなどの多くの異なる再生可能エネルギー源は、経済的依存性を徐々に非再生可能エネルギー源から離れるようにシフトするように実現されつつある。別のタイプの再生可能エネルギー源、すなわち、浸透勾配からのエネルギー生成は、これまで、エネルギー転換の一部として十分に利用されてこなかった。
【0003】
浸透モータまたは浸透エネルギー生成の概念は既知であり、さまざまな構成で実現されてさえいる。浸透エネルギー生成のための戦略的な場所は、河川と塩水域との間の接続点、すなわち河川口である。そのような場所は、豊富かつ連続的に補充される淡水および塩水の両方の供給を提供する。したがって、河川口における塩水と淡水との自然混合は、連続的に行われる。しかしながら、この浸透混合プロセスは、まだ、充分に信頼性が高く強力なエネルギー供給がそこから生じるようには制御できない。
【0004】
太陽および風などの他のクリーンなエネルギー源とは対照的に、塩水と淡水との浸透混合は連続的に起こり、気象条件とはほとんど無関係である。したがって、浸透エネルギー生成は、他のクリーンエネルギー技術を補完することができる信頼性の高いエネルギーの定常流の利益を提供する。
【0005】
しかしながら、既知の方法の特定の制限は、浸透エネルギー生成の効率を高めることに対する課題を与え、従って、これまで、この有利な技術の利用不足につながっていた。
【0006】
例えば、US2018/0085708 A1、US 2014/0007564 A1、KR 101239440 B1およびWO 2011/064252 A1は、浸透エネルギー生成の特定の概念を示唆する。これらの概念は、圧力遅延浸透、すなわち、特定の高められた圧力条件を維持することに基づく。しかしながら、これらの概念は、正味のエネルギー生産の点で不利であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、浸透を用いて仕事を行うための方法を提供すること、およびこの技術の現在の限界に対処する浸透モータを提供することである。
【0008】
概要
この目的は、独立請求項の特徴によって達成される。従属請求項は、本発明の好ましい局面を指す。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の局面によれば、本発明は、浸透を用いて仕事を行う方法に関し、
i)供給チャンバと、少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を含む圧力チャンバと、流体、好ましくは水に対して透過性であり、かつ少なくとも部分的に塩イオンに対して不透過性の膜とを備え、膜は供給チャンバと圧力チャンバとの間の流体連通を可能にするモータを提供するステップと、
ii)供給チャンバ内に低塩濃度流体、好ましくは低塩濃度水を供給するステップと、
iii)圧力チャンバの少なくとも1つの出口を閉鎖するステップと、
iv)高塩濃度流体、好ましくは高塩濃度水を圧力チャンバ内へと流すステップと、
v)流体が膜を横断して圧力チャンバに入るにつれて圧力チャンバ内の圧力を増加させるステップと、
vi)圧力チャンバ内の増加した圧力を使用して仕事を行うステップと、
vii)圧力チャンバの少なくとも1つの出口を開放し、流体を圧力チャンバから排出させ、圧力チャンバ内の圧力を減少させるステップと、
viii)ステップiii~viiを繰り返すステップとを含む、方法である。
【0010】
好ましくは、少なくとも1つの出口は、ステップiii)において封止される。
好ましくは、ステップiv)、v)、vi)は、逐次的に、好ましくはこの順序で行われる。
【0011】
好ましくは、モータは、タービンをさらに備える。したがって、ステップviは、圧力の増加により流体を圧力チャンバから流出させ、流体がタービンを動作させて仕事を行わせることをさらに含んでもよい。タービンは、水力発電システムにおけるように、加圧された流れを電気に変換する直接的な方法を提供する。圧力チャンバは、この目的のために固定容積を有してもよい。
【0012】
代替として、圧力チャンバは、可変容積を有してもよく、好ましくは、圧力チャンバはさらに、ピストンを備える。このような構成では、例えばピストンの移動による圧力チャンバの膨張および収縮を用いて仕事を行うことができる。
【0013】
好ましくは、少なくとも1つの出口は弁を備え、本方法はさらに、弁を開いて、圧力チャンバ内の圧力の少なくとも一部を解放するステップを含み、弁から放出される流体の流れは、仕事を行うために使用される。弁を通る流れは、好ましくは断続的である。すなわち、圧力チャンバから断続的に流体を放出させて仕事を行ってもよい。
【0014】
言い換えれば、(例えば、発電機において電気エネルギーを生成するために)仕事を行うために圧力チャンバから放出される流体の流れは断続的であってもよい。
【0015】
より好ましくは、弁は逆止弁である。弁、特に過圧および/または逆止弁は、圧力チャンバへの逆流を防止するのを助けてもよい。弁は、所定の圧力に達すると、特に圧力チャンバ内で所定の圧力に達すると、開くように構成されてもよい。弁は、この目的のために完全に機械的であってもよい。代替的に、所定の圧力に達したかどうかを測定するために、1つ以上の圧力センサを設けることができ、所定の圧力に達すると、弁を(例えば、電気制御ユニットによって)開くことができる。
【0016】
モータは、少なくとも1つのアキュムレータ、特に少なくとも1つの油圧アキュムレータを備えてもよい。このような油圧アキュムレータは、例えば、圧力チャンバから流体を断続的に放出して仕事を行う場合に有用であってもよい。特に、そのようなアキュムレータは、圧力チャンバからの断続的な流体供給にもかかわらず、タービンに供給される圧力を所望の範囲内に維持することを可能にし得る。アキュムレータは、圧力チャンバとタービンとの間に介在してもよい。
【0017】
本方法はさらに、アキュムレータによって、圧力チャンバから生じる流出物において、あるレベルの圧力を蓄積および維持するステップを含んでもよい。言い換えれば、アキュムレータは、圧力チャンバからの流出物を受け取り、圧力を蓄積し、アキュムレータからの流出物において、あるレベルの圧力を維持してもよく、次いで、それは、(例えば、タービンを介して)仕事を行うために使用される。したがって、アキュムレータは、あるレベルの圧力を蓄積および維持するよう構成されてもよい。
【0018】
少なくとも1つの出口は、圧力チャンバの少なくとも1つの流出ポートによって提供されてもよい。
【0019】
圧力チャンバの少なくとも1つの出口は、少なくとも1つの第1の出口および少なくとも1つの第2の出口を含んでもよい。少なくとも1つの第1の出口は、圧力チャンバの少なくとも1つの第1の流出ポートとして形成されてもよく、少なくとも1つの第2の出口は、圧力チャンバの少なくとも1つの第2の流出ポートとして形成されてもよい。代替的に、少なくとも1つの第1の出口および少なくとも1つの第2の出口は、必要に応じて、共通の流出ポートを介して圧力チャンバに接続されてもよい。例えば、少なくとも1つの第1の出口および少なくとも1つの第2の出口は、少なくとも1つの入口および少なくとも2つの出口(例えば、デュアル出口弁または三方弁)を有する流体弁によって提供することもできる。いずれの場合も、少なくとも1つの第2の出口は、以下、「二次出口」または「二次出口ポート」とも呼ばれ得る。
【0020】
少なくとも1つの第1の出口および少なくとも1つの第2の出口が提供されるとき、仕事を行うために使用される圧力チャンバ内の増加した圧力は、少なくとも1つの第2の出口(例えば、少なくとも1つの二次出口ポート)を通して解放されてもよい。したがって、ステップvi)は、少なくとも1つの第2の出口を通る高圧流を利用して仕事を行うことを含んでもよい。したがって、浸透を用いて仕事を行う方法は、少なくとも1つの第2の出口を開放して、少なくとも1つの第2の出口を通して高圧流を放出して仕事を行うステップを含んでもよい。第2の出口は、ステップv)の間、閉鎖および/または封止されてもよい。
【0021】
少なくとも1つの第1の出口および少なくとも1つの第2の出口が提供されるとき、少なくとも1つの第1の出口は、圧力チャンバから流体を排出すること、例えば、仕事を行うために使用されることが意図されない流体を排出することを可能にしてもよい。言い換えると、少なくとも1つの第1の出口を介して圧力チャンバから排出する流体は、仕事収穫および発電を迂回してもよい。したがって、浸透を用いて仕事を行う方法は、少なくとも1つの第1の出口を開放し、それによって圧力チャンバから流体を排出するステップを含んでもよい。第1の出口は、ステップv)の間、閉鎖および/または封止されてもよい。第1の出口は、ステップvi)の間、閉鎖および/または封止されてもよい。
【0022】
少なくとも1つの第1の出口および少なくとも1つの第2の出口は各々、それぞれの閉鎖可能および/または封止可能な弁(例えば、過圧および/または逆止弁)を設けられてもよい。
【0023】
少なくとも1つの第1の出口および少なくとも1つの第2の出口は、各々、前述のように、それぞれの閉鎖可能および/または封止可能弁(例えば、過圧および/もしくは逆止弁、または電気作動弁)を設けられてもよい。したがって、それぞれの出口を閉鎖および/または封止することは、それぞれの弁を閉じることを含んでもよい。
【0024】
好ましくは、ステップiii~viiiは、少なくとも2回/時、より好ましくは少なくとも10回/時、より好ましくは少なくとも20回/時、さらにより好ましくは少なくとも60回/時繰り返される。これは、仕事を行うためにそのような弁を通る適切な断続的な流れおよび/またはそのようなピストンの適切な断続的な移動を提供することを可能にする。
【0025】
好ましくは、少なくとも1つの入口は少なくとも1つの流入ポートである。
好ましくは、モータは、供給チャンバと圧力チャンバとの間の流体の交換を可逆的に遮断するよう構成される浸透障壁をさらに備える。本方法はさらに、供給チャンバと圧力チャンバとの間の流体流動が防止されるように、膜の上に浸透障壁を位置付けるステップと、増加した圧力を使用して仕事を行った後に、浸透障壁を除去するステップとを含んでもよい。浸透障壁は、圧力チャンバ内の高塩濃度流体の補充と圧力チャンバ内の圧力の蓄積とを分離するのに役立ち得る。
【0026】
膜を横断する流体による圧力チャンバの充填(ステップv)中、圧力チャンバ内で達成される最大圧力は、大気圧に対して少なくとも0.3MPa(「ゲージ」とも呼ばれる)、より好ましくは少なくとも1.3MPa(ゲージ)、さらにより好ましくは少なくとも3MPa(ゲージ)または少なくとも4MPa(ゲージ)であることが好ましい。この圧力は、膜を通って流れる水の量が最大理論浸透圧から圧力チャンバ内の圧力を引いたものに比例するので、最大理論浸透圧より低くてもよい。エネルギー生成中の圧力チャンバ内の圧力は、システムの最大理論浸透圧よりも少なくとも10%低いことが好ましく、少なくとも25%低いことがより好ましく、少なくとも50%低いことが最も好ましい。
【0027】
また、低塩濃度流体の供給チャンバへの流入は、圧力チャンバが空であるか、または1MPa(ゲージ)未満、より好ましくは100kPa(ゲージ)未満、より好ましくは1.0kPa(ゲージ)未満、または大気圧でさえある圧力にある間に行われることが好ましい。
【0028】
ステップivにおける圧力チャンバ内への高塩濃度流体の流入中、圧力チャンバ内の圧力は、1MPa(ゲージ)未満、100kPa(ゲージ)未満、またはさらには1.0kPa(ゲージ)未満、またはさらには大気圧であることが好ましい。
【0029】
チャンバ充填のための低い圧力と仕事を実施するためのより高い圧力との間で交互することは、浸透モータシステムのより高い効率を達成するのに役立ち得る。ステップvの開始時に高塩濃度流体を圧力チャンバに導入し、および/または膜を通る流体の流れを改善することは、仕事をまったく必要としないか、または必要とする仕事がより少なくてもよく、なぜならば、チャンバ間の圧力差が小さいとき、膜を通る流れはより高くなる傾向があるからである。特に、モータは、圧力チャンバもしくは供給チャンバのいずれかまたは両方のチャンバにおいて、チャンバ充填のための、より低い圧力と、流体が膜を横断する、より高い圧力との間で、交互してもよい。圧力チャンバは、チャンバ充填のための、より低い圧力と、流体が膜を横断する、より高い圧力との間で、少なくとも2回/時、より好ましくは少なくとも10回/時、より好ましくは少なくとも20回/時、さらにより好ましくは少なくとも60回/時、交互してもよい。圧力チャンバ内のより高い圧力は、好ましくは、膜を横断することによって圧力チャンバに進入する流体に起因する。
【0030】
好ましくは、本方法は、高塩濃度流体を圧力チャンバ内に流入させた後に圧力チャンバの入口(例えば、流入ポート)を封止するステップをさらに含む。入口(例えば、流入ポート)を封止することは、圧力チャンバ内の圧力の確実かつ再現可能な蓄積を促進してもよい。
【0031】
好ましくは、低塩濃度流体は、5‰を下回る、より好ましくは1‰を下回る、さらにより好ましくは0.5‰を下回る塩濃度を有する。同様に、高塩濃度流体は、5‰を上回る、より好ましくは20‰を上回る、さらにより好ましくは30‰を上回る塩濃度を有することが好ましい。互いに関して、高塩濃度流体は、低塩濃度流体よりも少なくとも100倍高い、より好ましくは少なくとも500倍高い、さらにより好ましくは少なくとも1000倍高い塩濃度を有することが好ましい。膜の低塩濃度側と高塩濃度側との間の高い浸透勾配は、より多くの仕事が行われることを可能にする。
【0032】
傾斜および/または高さの差が、低塩濃度流体を供給チャンバ内へ、および/または高塩濃度流体を圧力チャンバ内へと流す流れおよび/または圧力を生成するために採用されてもよい。そのような流れまたは圧力は、好ましくは、電気エネルギーを使用せずに(例えば、ポンプを使用せずに)、および/または機械的エネルギーを使用せずに(例えば、モータによって生成される機械的エネルギーを使用せずに)、生成される。例えば、自然発生の流れまたは圧力が、低塩濃度流体を供給チャンバ内へ、および/または高塩濃度流体を圧力チャンバ内へと流すために使用される。例えば、低塩濃度流体は重力によって供給チャンバに流入し、および/または高塩濃度流体は重力によって圧力チャンバに流入することが好ましい。同様に、流体は重力によって圧力チャンバから排出されることが好ましい。浸透モータシステムを通って流体を流すために勾配または圧力を使用することは、必要とされるエネルギー入力の量を低減し、その結果、本方法の全体的な効率を高める。
【0033】
好ましくは、高塩濃度流体は、海水、廃水、またはブラインであり、ブラインは、好ましくは、逆浸透、蒸発プロセス、または凝縮プロセス等の脱塩プロセスから生じる。好ましくは、低塩濃度流体は河川からの淡水である。そのような流体源は、世界中で容易に見出され、浸透モータシステムの有用性を促進する。
【0034】
好ましくは、圧力チャンバ内の圧力は、圧力チャンバからの流体が排出されるにつれて減少する。好ましくは、圧力チャンバ内の圧力は、仕事が行われるにつれて減少する。
【0035】
供給チャンバは、ステップiii~viiの2回、5回、10回、20回、またはそれ以上の反復を通して充填されたままであってもよい。圧力チャンバの中へと横断する流体を補償するために、低塩濃度流体が、必要に応じて、供給チャンバに追加されてもよい。
【0036】
好ましくは、ステップv中に圧力チャンバ内に蓄積される圧力は、15分未満、より好ましくは10分未満、さらにより好ましくは5分以下で生じる。
【0037】
ステップiii~viiを繰り返すとき、ステップviiおよびiiiにおける新しい高塩濃度流体による圧力チャンバの補充は、3分未満、好ましくは2分未満、より好ましくは1分未満または0.5分未満で行われる。
【0038】
第2の局面によれば、本発明は、モータに関し、このモータは、
低塩濃度流体、好ましくは低塩濃度水の供給を受けるよう構成される供給チャンバと、
高塩濃度流体、好ましくは高塩濃度水の供給を受けるよう構成される圧力チャンバであって、少なくとも1つの入口および少なくとも1つの閉鎖可能な出口をさらに備える圧力チャンバと、
流体分子に対して透過性であり、塩イオンに対して少なくとも部分的に不透過性の膜であって、供給チャンバと圧力チャンバとの間の流体連通を可能にする膜とを備え、
圧力チャンバは、少なくとも1つの閉鎖可能な出口が閉鎖され、圧力チャンバ内に圧力が蓄積する閉鎖構成と、少なくとも1つの閉鎖可能な出口が開放され、圧力チャンバ内の圧力が減少する開放構成との間で交互するよう構成される。
【0039】
モータは、上述の方法において使用されてもよい。モータの特徴は、本方法の特徴に移行してもよく、逆もまた同様である。
【0040】
少なくとも1つの出口は、少なくとも1つの流出ポートであってもよい。少なくとも1つの出口は封止可能であってもよい。特に、少なくとも1つの流出ポートは、封止可能であってもよい。
【0041】
少なくとも1つの入口は、少なくとも1つの流入ポートであってもよい。
モータは、仕事を行うよう構成されてもよい。特に、モータは、仕事を行うために、圧力チャンバ内で生成された増加した圧力を使用するよう構成されてもよい。
【0042】
好ましくは、モータは、圧力チャンバと流体接続する発電機および/またはタービンをさらに備える。この場合、圧力チャンバの容積は一定であってもよい。
【0043】
別の構成では、圧力チャンバは可変容積を有することが好ましい。好ましくは、このような圧力チャンバは、圧力チャンバの容積を可逆的に増加させるよう構成される膨張部をさらに備える。より好ましくは、圧力チャンバの膨張部はピストンである。
【0044】
好ましくは、モータは、膜を通る供給チャンバと圧力チャンバとの間の流体の交換を可逆的に遮断するよう構成される浸透障壁をさらに備える。浸透障壁は、圧力チャンバ内の圧力の蓄積が制御され、場合によってはモータ仕事サイクルの特定の段階中にのみ起こることを可能にする。
【0045】
好ましくは、圧力チャンバは、圧力チャンバから流体を解放するよう構成される弁をさらに備える。より好ましくは、弁は、上述のように、過圧および/または逆止弁である。
【0046】
浸透膜は、32,000mg/LのNaClの試験塩濃度に、25°Cで5.5MPaの印加圧力で、および10%の回収率で、供された場合、少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%の安定した脱塩率を提供することが好ましい。膜の有効性は、圧力チャンバ内の圧力蓄積の速度および達成され得る圧力チャンバ内の全圧力に関係する。より高い脱塩率は、より速い速度および全体的により高い達成可能な圧力をもたらす。
【0047】
好ましくは、供給チャンバは、少なくとも1つの入口(例えば、少なくとも1つの入口ポート)および少なくとも1つの出口(例えば、少なくとも1つの出口ポート)をさらに備え、好ましくは、入口(例えば、入口ポート)および/または出口(例えば、出口ポート)は、封止可能である。供給チャンバ上の封止可能なポートは、供給チャンバが段階的および/または断続的に充填されるモータシステムを促進する。
【0048】
好ましくは、モータは、少なくとも100ワットのエネルギー、より好ましくは少なくとも1キロワットのエネルギー、さらにより好ましくは少なくとも1メガワットのエネルギーを提供するよう構成される。
【0049】
好ましくは、圧力チャンバの閉鎖構成において、圧力チャンバ内で達成される最大圧力は、少なくとも1MPa、より好ましくは少なくとも2MPa、さらにより好ましくは少なくとも2.3MPaである。より高い最大圧力は、より多くの量の仕事がモータによって行われることを可能にする。
【0050】
好ましくは、圧力チャンバの開放構成において、圧力チャンバ内で達成される最小圧力は、最大で1MPa、より好ましくは最大で100kPa、さらにより好ましくは最大で1.0kPaである。チャンバの充填中の低圧は、高塩濃度流体の、より迅速な充填および補充を可能にする。
【0051】
本発明はまた、上述のモータおよび電気エネルギーを生成するための発電機を含むシステムに関する。そのような発電機は、タービンを備えてもよい。モータは、上述の方法を実行するよう構成されてもよい。
【0052】
本発明によれば、モータまたはそのようなモータを備えるシステムはまた、複数の圧力チャンバを備えてもよい。すべての圧力チャンバは、1つ、複数、または対応する数の浸透膜を介して、単一の(すなわち、同じ)供給チャンバに接続されてもよい。代替的に、複数の圧力チャンバは、1つの浸透膜、複数または対応する数の浸透膜要素を介して、複数の供給チャンバ、例えば対応する数の供給チャンバに接続されてもよい。複数の圧力チャンバは、エネルギーが1つの圧力チャンバ内で生成されない時間中に、別の圧力チャンバがエネルギーを生成し得る、という利点を有する。さらに、1サイクル中に生成されるエネルギーの量は、淡水が圧力チャンバ内の塩水を希釈するにつれて減少している。1サイクルが数分かかる場合、複数の圧力チャンバは、数秒毎に新たなサイクルが始まる動作モードを可能にする。
【0053】
1つ以上の圧力チャンバは、1つ以上のタービン/発電機に接続されてもよい。したがって、上述のモータ/システムは、複数のタービンおよび/または発電機も備えてもよい。複数のタービンおよび/または発電機は、電流に対する様々な需要に対するシステムのより大きな適応性を可能にする。例えば、電流を生成するタービン/発電機の数は、電流の需要に応じて変えられてもよい。
【0054】
したがって、上述の方法は、複数の圧力チャンバを有するモータに適用されてもよい。例えば、本明細書で説明される方法ステップは、複数の圧力チャンバのいずれかに、単独で、または複数の圧力チャンバの他の圧力チャンバと並列に適用されてもよい。方法ステップがいくつかの圧力チャンバに適用される場合、1つの圧力チャンバに適用される方法ステップは、1つまたはいくつかまたはすべての他の圧力チャンバと比較して時間的にシフトされてもよい。
【0055】
いくつかのモータが並列に動作することも企図される。
本発明は、添付の図面に示される好ましい例示的な実施形態を参照して、以下の記載において、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1a】低圧構成における圧力チャンバを概略的に示す。
【
図1b】低圧構成において高塩濃度流体で満たされている圧力チャンバを概略的に示す。
【
図1c】高圧構成における圧力チャンバを概略的に描写し、膜を横断する流体の浸透輸送に起因して、圧力チャンバ内の圧力が蓄積し、その圧力を用いて、タービンを駆動することによって仕事を行う。
【
図1d】流体が圧力チャンバから排出されるときの低圧構成における圧力チャンバを概略的に示す。
【
図2a】圧力チャンバがピストンを備え、高塩濃度水が流入するときに圧力チャンバの入口が開放構成にある、モータの代替構成を概略的に示す。
【
図2b】膜を横切る流体の浸透輸送による圧力蓄積がピストンを動かす閉鎖構成にある
図2aの圧力チャンバを概略的に示す。
【
図3】モータが浸透障壁をさらに備え、供給チャンバが入口弁および出口弁を備える、モータの別の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
詳細な説明
本発明の方法およびモータの以下の説明において、「淡水」および「塩水」という文言は、単に便宜的に使用される。しかしながら、浸透圧、浸透勾配、および浸透モータの機能の原理は、淡水および塩水の特定の使用に依存しない。これらの文言は、低溶質濃度を含有する液体(淡水)および高溶質濃度を含有する液体(塩水)の略語として理解されるべきである。使用中の液体は任意の液体であってよく、使用中の溶質は、その液体をその溶質から分離することができる適切な膜を実現することができるという制約を考慮して、その液体に溶解可能な任意の物質であってよい。実際、淡水および塩水中の溶質の正確な濃度は、場所間で変動し得、淡水および塩水において暗示される溶質は、後により詳細に議論される多数の成分を含む。
【0058】
図1は、本発明による浸透勾配を用いて仕事を抽出するステップを概念的に示す図である。
図1aでは、浸透モータの簡略化された例が概説されている。モータ100は、供給チャンバ110と、少なくとも1つの入口130(ここでは流入ポートとして例示される)および少なくとも1つの出口を有する圧力チャンバ120と、浸透膜150とを含む。出口は、少なくとも1つの第1の出口140(ここでは、流出ポート140として例示される)と、任意選択的に、少なくとも1つの第2の出口144(ここでは、二次出口ポート144として例示される)とを含んでもよい。
【0059】
供給チャンバ110は、淡水などの低溶質濃度を有する液体供給を受けるように構成される。供給チャンバ110の範囲は、
図1aには完全には描かれておらず、モータの必要性に適合するようにサイズおよび形状を適合させることができる。
【0060】
供給チャンバ110に隣接して、塩水などの高溶質濃度を有する液体供給を受けるよう構成される圧力チャンバ120がある。この例において描写されるような圧力チャンバ120は、規定された容積を有し、この容積は、実行され得る仕事の量、すなわち、モータから抽出され得るエネルギーの量に関連する。
【0061】
圧力チャンバ120の片側には、入口130が位置決めされている。入口130は、圧力チャンバ120内への塩水の流入を可能にする。圧力チャンバ120は、流体が後で圧力チャンバ120から排出されることを可能にする少なくとも1つの第1の出口140をさらに備える。第1の出口140は、好ましくは入口130の下に、例えば圧力チャンバ120の、入口130とは別の側に、より好ましくは圧力チャンバ120の、入口130と反対側に位置決めされる。第1の出口140はさらに、圧力チャンバ120内に流体を保持し、それによって、圧力を蓄積させ、および/または圧力チャンバ120を排水し、圧力を低減させることに役立つように動作され得る、弁143を備えてもよい。したがって、弁143は、第1の圧力チャンバ出口弁とも呼ばれ得る。
【0062】
好ましくは、弁133が、入口130(例えば、入口ポート)を閉じるために設けられる。したがって、弁133は、圧力チャンバ入口弁とも呼ばれ得る。
【0063】
供給チャンバ110と圧力チャンバ120との間には、浸透膜150が位置決めされ、これは、供給チャンバ110内の液体に対して透過性であり、圧力チャンバ120内の溶質に対して少なくともいくらか不透過性である。膜150は、液体が横切ることができる、供給チャンバ110と圧力チャンバ120との間の接続を形成するべきである。膜において浸透が生じることを可能にするために、供給チャンバ110と圧力チャンバ120との間で流体を連通させるのに、そのような膜のない他のチャネルは存在しないことが好ましい。
【0064】
最初のステップとして、
図1aに示すように、供給チャンバ110内に淡水を供給する。このステップは、別個の充填ステップとして行われてもよく、または代替として、淡水が、供給チャンバ110を通して連続的に供給または流動されてもよい。淡水が別個のステップで供給される場合、圧力チャンバ120の少なくとも入口130は、例えば圧力チャンバ入口弁133を閉じることによって、閉鎖および/または封止されることが好ましい。好ましくは、出口140も、例えば、第1の圧力チャンバ出口弁143を閉じることによって、同様に閉鎖および/または封止される。
【0065】
充填時に発生する仕事を利用することになるので、まず圧力チャンバ120を充填し、圧力チャンバ入口弁133を閉じ、次いで供給チャンバ110を充填することが好ましい。供給チャンバ110を毎サイクル排水する必要がないので、供給チャンバ110が少なくとも部分的に充填(例えば、少なくとも50%充填)、または完全に充填される一方で、圧力チャンバ120を充填することも可能である。
【0066】
図1bに示されるように、圧力チャンバ120の出口140は、閉鎖および/または封止され、入口130は、塩水が圧力チャンバ120に流入するように開放される。与えられた図において、クロスハッチングの密度は、液体内の溶質の濃度を示すことを意図している(正確な縮尺ではない)。したがって、このときの圧力チャンバ120内の液体は、供給チャンバ110内の液体よりも溶質濃度が高いことがわかる。
【0067】
時間が経つにつれて、
図1bと
図1cとの間で移行が行われ、供給チャンバ110からの水が膜150を通過して圧力チャンバ120に入ることができ、それによって圧力チャンバ120内の溶質濃度が低減される。同時に、より多くの水が膜150を通過するにつれて、圧力チャンバ120内の圧力が上昇し始める。入口130(例えば、流入ポート)および出口140(例えば、流出ポート)の両方がこの段階で閉鎖されることが有利である。圧力チャンバ120内の上昇した圧力は、次いで、仕事を行うために使用されることができる。単なる例として、少なくとも1つの第2の出口144(ここでは二次出口ポート144によって例示される)が
図1a~
図1dに示されており、そこを通って液体は圧力チャンバ120を出ることができる。モータ内の高圧から仕事を抽出する1つの方法は、(例えば、二次出口ポート144において)少なくとも1つの第2の出口144を通る高圧流を利用して、
図1cに黒い矢印で示されるようにタービン160を回転させることである。モータから仕事を取り出すための代替的な方法も論じられる。
【0068】
図1dでは、出口140(例えば、流出ポート140)は開放されており、圧力チャンバ120内の流体が流出することを可能にする。圧力チャンバ120内の液体の望ましくない蓄積を防止するために、この時点で入口130(例えば、流入ポート130)を封止することも有利であってもよい。圧力チャンバ120内の圧力が許容可能に低いレベルに達し、圧力チャンバ120が実質的に空になると、出口140(例えば、流出ポート140)を再び封止することができ、次いでプロセスは
図1aのように再び開始する。
【0069】
好ましくは、圧力チャンバ120内の圧力の蓄積は、塩水による圧力チャンバ120の充填から明確に分離される。これは、その場合、圧力チャンバの充填が圧力チャンバ120内の流体の圧力に抗して生じないため、非常に有益である。概して、浸透モータは、タービンを連続的に回転させることなどによって連続的に仕事を行うために一定不変の充填および一定不変の圧力を使用して動作する。しかしながら、2ステップ充填および圧力蓄積プロセスの本構成は、仕事出力において、より高い効率を可能にする。
【0070】
言い換えれば、圧力チャンバ120の充填は(
図1b参照)、圧力チャンバ120内の圧力が圧力蓄積中に達成される圧力よりも低い間に行う(
図1c参照)ことが好ましい。好ましくは、圧力チャンバ120は、この目的のために少なくとも部分的に空にされる。例えば、圧力チャンバ120の充填は、圧力チャンバ120が、圧力蓄積中よりも少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも75%少ない量の高塩濃度流体を含むときに実行(例えば開始)されてもよい。圧力チャンバ120は、高塩濃度流体が実質的に空であってもよい(
図1a参照)。
【0071】
例えば、少なくとも部分的に空になった(
図1dを参照)後の圧力チャンバ120の充填中(
図1bを参照)、圧力は、1MPa以下、100kPa以下、またはさらには1.0kPa以下と低くてもよい。一方、膜を横断する流体による圧力蓄積中に圧力チャンバ120内で達成される最大圧力(
図1c参照)は、少なくとも0.3MPa、少なくとも1.3MPa、少なくとも3MPa、またはさらには少なくとも4MPaであってもよい。
【0072】
図1a~
図1dを通して示される圧力チャンバ120を充填および空にするサイクルは、モータ100による発電中に、少なくとも2回/時、より好ましくは少なくとも10回/時、より好ましくは少なくとも20回/時、さらにより好ましくは少なくとも60回/時で実行されてもよい。少なくとも1つの入口130は、圧力チャンバ120に新しい高塩濃度流体をそれが少なくとも部分的に空になった後(例えば、圧力蓄積中の高塩濃度流体の量と比較した場合、少なくとも30%、少なくとも50%、または少なくとも75%)、または完全に空になった後、迅速に、例えば3分未満、2分未満、1分未満、またはさらには0.5分未満以内に充分に補充されてもよいように構成されてもよい。
【0073】
図1a~
図1dにさらに示すように、少なくとも1つの第2の出口144は、弁145を備えてもよい。この弁145は、第2の圧力チャンバ出口弁とも呼ばれ得る。第2の圧力チャンバ出口弁145は、充分な圧力が蓄積されると、圧力チャンバ120から流体を放出および/または排出するように開かれてもよい。第2の圧力チャンバ出口弁145を通って圧力チャンバ120から放出される流れは、次いで、仕事を行うために(例えば、タービン160を介して)使用されてもよい(
図1c参照)。第2の圧力チャンバ出口弁145は、断続的に、例えば、圧力チャンバ120の各充填および排出サイクル中に少なくとも1回、開閉されてもよい。いくつかの例では、断続的な開閉は、弁145を各サイクル中に複数回、例えば最大10回またはさらには100回、開閉することを含んでもよい。
【0074】
第2の圧力チャンバ出口弁145は、圧力チャンバ120内の所定の圧力に達すると自動的に開くように構成されてもよい。弁は、この目的のために、完全に機械的であってもよい。代替的または追加的に、1つ以上の圧力センサ(図示せず)が、所定の圧力に達したかどうかを測定するために圧力チャンバ120内に提供され得、所定の圧力に達すると、弁が(例えば、電気制御ユニットによって)開かれてもよい。第2の圧力チャンバ出口弁145はさらに、例えばタービン160および/またはアキュムレータから圧力チャンバ120への逆流を防止するために、逆止弁として構成されてもよい。そのようなアキュムレータは、以下で
図4を参照してより詳細に論じられるが、当業者は、
図1a~
図1dおよび
図3に示される構成に関連して使用されてもよいことを理解するであろう。
【0075】
図1a~
図1dに示すように、第2の圧力チャンバ出口弁145は、圧力チャンバ120の充填中(
図1b参照)、および/または圧力チャンバ120を空にする間(
図1d参照)、閉じられてもよい。
【0076】
図1a~
図1dは、圧力チャンバ120の少なくとも1つの第1の出口140および少なくとも1つの第2の出口144が2つの異なる位置に設けられていることを示しているが、第1および第2の出口の両方が共通のダクトを介して(例えば、共通の流出ポートを介して)設けられてもよいことが理解されるであろう。そのような構成は、
図3に例示的に示されるが、
図1a~
図1dおよび
図3に示される構成に関連して使用されてもよい。
【0077】
図2は、方法およびモータの代替例を示す。モータ200は、供給チャンバ210と、圧力チャンバ220と、供給チャンバ210内の流体を圧力チャンバ220内の流体から分離するが、それらの間で少なくとも1つの溶質の交換を可能にするための膜250とを備える。圧力チャンバ220には、入口230(ここでは流入ポート230として例示する)と出口240(ここでは流入ポート240として例示する)とが設けられている。
【0078】
図2aでは、高塩濃度流体(例えば、塩水)は、入口230を通って(例えば、流入ポートを通って)圧力チャンバ220に流入される。出口240(例えば、流出ポート)は、閉鎖および/または封止される。図示の供給チャンバ210は、圧力チャンバ220を取り囲み、浸透膜250によって圧力チャンバ220から分離される。しかし、供給チャンバ210は、代替的に、圧力チャンバ220に単に隣接して配置されてもよい。
【0079】
この構成では、モータは、圧力チャンバ220内に位置付けられ、その中で摺動可能である、ピストン270も備える。
図2aに示されるモータ200の構成では、ピストン270は、ほんの少量の塩水が圧力チャンバ220内に提供されるため、入口230に近接している。
【0080】
図2bに示すように、入口230(例えば、流入ポート)および出口240(例えば、流出ポート)が流量容量において低減されるかまたは完全に封止されている間に、淡水が供給チャンバ210に流入する。膜250を横断する浸透勾配により、水が、浸透膜250を横断することによって、供給チャンバ210から圧力チャンバ220に流入する。より多くの水が圧力チャンバ220に入るにつれ、圧力チャンバ220内の圧力は上昇する。
図1に示される方法とは対照的に、圧力チャンバ220は、圧力チャンバ220内の容積を増加させるために、ピストン270が圧力チャンバ220内の液体によって動かされてもよいという点で、可変容積を有する。
【0081】
図1に描写されるステップと類似する後続ステップでは、圧力チャンバ220内の流体は、続いて、出口240(例えば、流出ポート)を通して排出され、ピストン270は、その初期位置に戻されることができる。ピストン270は、この状況において、圧力チャンバ220内の圧力の突然の降下によって引っ張られることによって、(例えば、ばねおよび/または重力によって)初期構成に向かって付勢されることによって、またはピストン270を再び前方に駆動する、ピストン270と関連する回転要素の運動量を通してのいずれかで、動かされてもよい。したがって、ピストン270の繰り返し運動を用いて仕事を行うことができる。
【0082】
この構成では、モータの圧力チャンバ220の充填段階と圧力蓄積段階との分離は、例えば、圧力チャンバ220が充填される前または充填される間に供給チャンバ210を排水することによって行われる。したがって、圧力チャンバ220の充填は、既存の圧力に抗して行われない。供給チャンバ210は、供給チャンバ210を充填および空にするための1つ以上の入口および/または1つ以上の出口を備えてもよい(図示せず)。1つ以上の供給チャンバ入口および/または1つ以上の供給チャンバ出口は各々、それぞれの弁(図示せず)を設けられてもよい。
【0083】
図1a~
図1dの実施形態について上述したように、圧力チャンバ220の充填は(
図2a参照)、圧力チャンバ内の圧力が圧力蓄積中に達成される圧力よりも低い間に行う(
図2b参照)ことが好ましい。好ましくは、圧力チャンバ220は、この目的のために、少なくとも部分的に空にされる。例えば、圧力チャンバ220の充填は、圧力チャンバ220が、圧力蓄積中よりも少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも75%少ない量の高塩濃度流体を含むときに実行(例えば開始)されてもよい。圧力チャンバ220は、高塩濃度流体が実質的に空であってもよい。
【0084】
例えば、少なくとも部分的に空になった後の圧力チャンバ220の充填中(
図2a参照)、圧力は、1MPa以下、100kPa以下、またはさらには1.0kPa以下と低くてもよい。一方、膜を横断する流体による圧力蓄積中に圧力チャンバ120内で達成される最大圧力(
図2b参照)は、少なくとも0.3MPa、少なくとも1.3MPa、少なくとも3MPa、またはさらには少なくとも4MPaであってもよい。
【0085】
さらに上述したように、圧力チャンバ220を充填および空にするサイクルは、モータ200の動作中(例えば発電中)に、少なくとも2回/時、より好ましくは少なくとも10回/時、より好ましくは少なくとも20回/時、さらにより好ましくは少なくとも60回/時で実行されてもよい。少なくとも1つの入口230は、圧力チャンバ220に新しい高塩濃度流体をそれが少なくとも部分的に空になった後(例えば、圧力蓄積中の高塩濃度流体の量と比較した場合、少なくとも30%、少なくとも50%、または少なくとも75%)、または完全に空になった後、迅速に、例えば3分未満、2分未満、1分未満、またはさらには0.5分未満以内に充分に補充されてもよいように構成されてもよい。
【0086】
図2aおよび
図2bに戻ると、入口230に圧力チャンバ入口弁231を設けてもよいことが示されている。圧力チャンバ入口弁231は、圧力チャンバ230を充填するために開かれてもよい(
図2a参照)。圧力チャンバ入口弁231は、圧力蓄積中に閉鎖および/または封止されてもよい(
図2b参照)。したがって、圧力チャンバ入口弁231は、モータ200による発電中に断続的に、例えば、少なくとも2回/時、より好ましくは少なくとも10回/時、より好ましくは少なくとも20回/時、さらにより好ましくは少なくとも60回/時、開閉してもよい。
【0087】
出口240には、圧力チャンバ出口弁241が設けられてもよい。圧力チャンバ出口弁241は、圧力チャンバ230の充填中に閉鎖および/または封止されてもよい(
図2a参照)。圧力チャンバ出口弁241は、圧力チャンバ230内の圧力蓄積中に閉鎖および/または封止されてもよい(
図2b参照)。圧力チャンバ出口弁241は、圧力チャンバ220を空にする間、開かれてもよい(図示せず)。したがって、圧力チャンバ出口弁241は、モータ200による発電中に断続的に、例えば、少なくとも2回/時、より好ましくは少なくとも10回/時、より好ましくは少なくとも20回/時、さらにより好ましくは少なくとも60回/時、開閉してもよい。圧力チャンバ出口弁241は、圧力チャンバ入口弁231が開かれるとき、特に圧力チャンバ220の充填中に、閉じられてもよい。
【0088】
図3は、供給チャンバ310と、圧力チャンバ320と、膜350とを有するモータ300の別の例示的な構成を示す。圧力チャンバ320には、入口330(ここでは流入ポート330として例示する)と出口344(ここでは流出ポート344として例示する)とが設けられている。
【0089】
図3に示されるように、供給チャンバ310は、入口360(流入ポート360として例示される)および出口370(流出ポート370として例示される)をさらに備えてもよい。前述のように、供給チャンバ310は、低塩濃度流体の供給が供給チャンバ310に連続的に流入する定流量容量で、または低塩濃度流体が流入し、圧力チャンバの圧力蓄積段階のために貯蔵され、次いで、別のサイクルのために補充される段階的態様のいずれかで動作してもよい。この概念は、前述の実施形態に等しく適用可能であることが理解されるであろう。したがって、供給チャンバ110および220にもそのような入口および/またはそのような出口が設けられてもよい。
【0090】
図3に示す構成では、モータ300は、供給チャンバ310と圧力チャンバ320との間に可逆的に位置決め可能な浸透障壁380も含む。浸透障壁380は、膜350のいずれの側でも、またはさらには膜350の部分内に、配置されてもよい。重要なことに、浸透障壁380は、供給チャンバ310から圧力チャンバ320への液体の流れを停止または実質的に低減する。この意味で、浸透障壁380は、低塩濃度流体の一定流が供給チャンバ310内に提供されるときに特に有利であってもよく、なぜならば、それによって、モータ300の非圧力蓄積ステップ中に膜350を横断する流体の望ましくない透過を防止するであろうからである。しかしながら、そのような浸透障壁380は、本明細書で議論されるモータのいずれにおいても、
図1、
図2および
図4を参照して説明されるものでも、提供されてもよい。
【0091】
図3にも示すように、出口ポート344は、過圧および/または逆止弁345と組み合わせられてもよく、および/またはそれを含んでもよい。過圧および/または逆止弁345は、それが開いて流体が通過して仕事を行うことを可能にする設定された圧力値を有する。この例では、タービン360が示されているが、任意の類似のシステムが仕事を行うために使用されてもよい。仕事を行うための任意のそのようなシステムはまた、以下で説明されるように、アキュムレータと組み合わせられてもよい。
【0092】
図3に示すように、出口344は、タービン360に向かう第1の出口346と、追加の出口として提供されてもよい第2の出口347とを提供してもよい。第2の出口347は、弁348または任意の等価物によって形成されてもよく、またはそれを提供されてもよい。第2の出口347は、仕事を行うために使用されるよう意図されない流体を圧力チャンバ320から排出することを可能にする。言い換えると、第2の出口347を介して圧力チャンバ320から排出する流体は、仕事収穫および発電を迂回する(例えば、タービン360を迂回する)。
【0093】
さらに、
図3には、淡水を排出することを可能にする出口370(ここでは流出ポート370によって例示される)が示されている。淡水は低濃度の塩を含有し得、水部分のみが膜を通って拡散しているので、塩濃度は、動作中に淡水中で上昇しており、したがって、水を時々排出することによって、供給チャンバ310内の淡水の塩含有量を低減させる必要があるかもしれない。
【0094】
図4は、浸透モータ400のさらなる例を示す。ここで、浸透膜要素および淡水供給チャンバは、1つのユニットとして形成されてもよく、それは、
図4において参照番号410で示される。このような市販のユニットの例は、適切なホルダと組み合わせたDuPont de Nemours, Inc.からのFilmTec(商標出願済み)SW30膜である。
【0095】
塩水リザーバとしても知られる圧力チャンバ450は、より高い塩濃度の水を保持する。次いで、それぞれの供給チャンバと圧力チャンバ450との間に位置する各浸透膜要素にわたって浸透が生じる。淡水は401で供給される。塩水は、402で供給される。塩水は、圧力チャンバ450内における塩水の瞬時補充のために塩水リザーバ420に供給されてもよい。塩水リザーバ420は、圧力チャンバ450の上方に位置してもよい。
【0096】
図4にさらに示すように、本明細書に記載のモータのいずれも、圧力チャンバ450と発電機460(例えば、タービン)との間の流路に配置されるアキュムレータ470をさらに含んでもよい。アキュムレータ470は、圧力チャンバ420からの流出物(すなわち、発電機460に供給される流れ)において、あるレベルの圧力を蓄積し維持するよう、供される。場合によっては、アキュムレータ470は、発電機460が圧力チャンバ450内の圧力蓄積段階間でさえも仕事を実行し続けることができるように、発電機460に適切な流れ圧力を提供するのを助けることができる。
【0097】
アキュムレータ470は、特に、少なくとも1つの油圧アキュムレータである。アキュムレータ470は、圧力チャンバ450とタービンおよび/または発電機460との間に介在する。
【0098】
本明細書で論じられるモータのいずれかの別の潜在的に有用な構成は、圧力チャンバ120、220、320、450を出る液体が重力によって流れ方向に補助されるように液体出口を提供することである。これにより、仕事を行う段階だけでなく、加えて、圧力チャンバ120,220,320,450の排水を、よりエネルギー効率良く行ってもよい。
【0099】
上述の例でのように、単一の圧力チャンバ120、220、320、450を有することに加えて、モータ/システムは、複数の圧力チャンバ120、220、320、450を備えてもよく、これらは、1つの浸透膜、またはいくつかの、もしくは対応する数の浸透膜要素を介して、1つ以上の供給チャンバに動作可能に接続されてもよい。
【0100】
例えば、複数の圧力チャンバは、数秒毎に新たなサイクルが開始される動作モードを可能にする。
【0101】
また、システムが複数のタービンおよび/または発電機460を備えることも、本発明の局面である。例えば、電流を生成するタービン/発電機460の数は、電流の需要に応じて変えられてもよい。
【0102】
上述の方法は、複数の圧力チャンバ120、220、320、450を有するモータに適合されてもよい。例えば、本明細書で説明される方法ステップは、複数の圧力チャンバ120、220、320、450のいずれかに、単独で、または複数の圧力チャンバ120、220、320、450のうちの他の圧力チャンバ120、220、320、450と並列に適用されてもよい。方法ステップがいくつかの圧力チャンバ120、220、320、450に適用される場合、1つの圧力チャンバ120、220、320、450に適用される方法ステップは、1つまたはいくつかまたはすべての他の圧力チャンバ120、220、320、450と比較して時間的にシフトされてもよい。
【0103】
広範囲の浸透膜が市販されているが、膜の選択は、本発明の浸透モータを提供する効率およびコストに影響を及ぼし得る。概して、少なくとも95%の安定した脱塩率を提供する浸透膜を提供することが有利である。より高い効率のために、少なくとも98%、またはさらにより好ましくは少なくとも99%の安定化した脱塩率が好ましい。安定した脱塩率の値は、浸透膜を、32,000mg/LのNaClの試験塩濃度に、25°Cで、印加圧力5.5MPaで、および10%の回収率で、供したときに、測定される。しかしながら、浸透膜の品質が高まるにつれて、より大きなコストがかかり得ることが認識されており、したがって、浸透膜の最終的な選択は、浸透モータの特定の要件に基づくことが予見される。
【0104】
説明される浸透モータのうちの1つを利用してエネルギーを提供することの別の重要な側面は、動作の異なる段階中に利用される相対圧力である。圧力が圧力チャンバ450内に蓄積される閉鎖構成では、圧力チャンバ450は、達成される圧力が少なくとも1MPa(ゲージ)、好ましくは少なくとも2MPa(ゲージ)、より好ましくは少なくとも2.3MPa(ゲージ)である状態で動作するよう構成されてもよい。この圧力は、システムによって達成される最大圧力と呼ばれてもよい。圧力チャンバ450内の、より高い最大圧力は、システムからの仕事のより大きな抽出を可能にする。
【0105】
対照的に、圧力チャンバ450内の圧力が低減され、圧力チャンバ450が排水されてもよい開放構成では、最大で1MPa(ゲージ)、好ましくは最大で100kPa(ゲージ)、より好ましくは最大で1.0kPa(ゲージ)の圧力チャンバ内の圧力を達成してもよい。この圧力は、システムによって達成される最小圧力と呼ぶことができる。動作の開放構成では、圧力チャンバ450内の圧力は、局所大気圧と実質的に等しくてもよいことも想定される。
【0106】
上記の浸透モータは、少なくとも100ワット、好ましくは少なくとも1キロワット、より好ましくは少なくとも1メガワットのエネルギーを提供することが想定される。設定が容易であり、淡水/塩水の混合する場所が豊富に利用可能であるので、複数の浸透モータシステムを、ともに配置し、並列または交互のいずれかで動作させてもよく、連続的なエネルギー生成が行われる。
【0107】
本発明を、図面および前述の説明において詳細に図示および説明したが、そのような図示および説明は、例示的かつ非限定的であると見なされるべきであり、本発明は開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する変形は、図面、本開示、および特許請求の範囲の研究から、記載された本発明を実施する当業者によって理解され実施されることができる。局面および特許請求の範囲において、「含む」という文言は、他の要素またはステップを排除せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数を排除せず、「少なくとも1つ」を意味し得る。
【0108】
本明細書において入口または出口の「閉鎖」または「封止」に言及される限り、流体密閉鎖が概して好ましい。しかしながら、それぞれの入口または出口を通る流れの充分な制限を提供する(部分的な)閉鎖が、場合によっては、そこに記載される効果を達成するために充分であってもよいことに留意されたい。したがって、部分的な封止または閉鎖も包含されてもよい。
【0109】
以下は、本発明の好ましい局面である。
1.浸透を用いて仕事を行う方法であって、
i)供給チャンバと、少なくとも1つの入口(例えば、流入ポート)および少なくとも1つの出口(例えば、流出ポート)を備える圧力チャンバと、流体、好ましくは水に対して透過性であり、塩イオンに対して少なくとも部分的に不透過性の膜であって、供給チャンバと圧力チャンバとの間の流体連通を可能にする膜とを備えるモータを提供するステップと、
ii)供給チャンバ内に低塩濃度流体、好ましくは低塩濃度水を供給するステップと、
iii)圧力チャンバの出口を閉鎖および/または封止するステップと、
iv)高塩濃度流体、好ましくは高塩濃度水を圧力チャンバ内へと流すステップと、
v)流体が膜を横断して圧力チャンバに入るにつれて圧力チャンバ内の圧力を増加させるステップと、
vi)圧力チャンバ内の増加した圧力を使用して仕事を行うステップと、
vii)圧力チャンバの出口を開放し、流体を圧力チャンバから排出させ、圧力チャンバ内の圧力を減少させるステップと、
viii)ステップiii~viiを繰り返すステップとを含む。
【0110】
2.圧力チャンバは固定容積を有し、モータはタービンをさらに含み、ステップviは、圧力の増加により圧力チャンバから流体が流出し、タービンを動作させて仕事を行うことを含む、局面1に従う方法。
【0111】
3.圧力チャンバは可変容積を有する、局面1に従う方法。
4.圧力チャンバはピストンをさらに備え、圧力チャンバ内の増加した圧力によるピストンの移動が仕事を行う、局面3に従う方法。
【0112】
5.出口は弁をさらに含み、本方法はさらに、
弁を開いて、圧力チャンバ内の圧力の少なくとも一部を解放するステップを含み、弁から放出される流体の流れは、仕事を行うために使用される、前述の局面のいずれか1つに従う方法。
【0113】
6.弁は、過圧弁および/または逆止弁である、局面5に従う方法。
7.モータは、供給チャンバと圧力チャンバとの間の流体の交換を可逆的に遮断するよう構成される浸透障壁をさらに備え、本方法は、さらに、
供給チャンバと圧力チャンバとの間の流体の流れが防止されるように、浸透障壁を膜の上に位置決めするステップと、
増加した圧力を使用して仕事を行った後に浸透障壁を除去するステップとを含む、前述の局面のいずれか1つによる方法。
【0114】
8.圧力チャンバの充填中に、圧力チャンバ内で達成される最大圧力は、少なくとも3MPa、好ましくは少なくとも5MPa、より好ましくは少なくとも7MPaである、前述の局面のいずれか1つに従う方法。
【0115】
9.低塩濃度流体を供給チャンバ内へと流すことは、圧力チャンバが空であるか、または1MPa未満、好ましくは100kPa未満、より好ましくは1.0kPa未満の圧力である間に行われる、前述の局面のいずれか1つに従う方法。
【0116】
10.高塩濃度流体を圧力チャンバ内に流した後、圧力チャンバの入口を封止するステップをさらに含む、前述の局面のいずれか1つに従う方法。
【0117】
11.低塩濃度流体は、5‰を下回る、好ましくは1‰を下回る、より好ましくは0.5‰を下回る塩濃度を有する、前述の局面のいずれか1つに従う方法。
【0118】
12.高塩濃度流体は、5‰を上回る、好ましくは20‰を上回る、より好ましくは30‰を上回る塩濃度を有する、前述の局面のいずれか1つに従う方法。
【0119】
13.高塩濃度流体は、低塩濃度流体よりも少なくとも100倍高い、好ましくは少なくとも500倍高い、より好ましくは少なくとも1000倍高い塩濃度を有する、前述の局面のいずれか1つに従う方法。
【0120】
14.自然発生の流れまたは圧力が、低塩濃度流体を供給チャンバの中へ、および/または高塩濃度流体を圧力チャンバの中へ流すために使用される、前述の局面のうちのいずれかに1つに従う方法。
【0121】
15.低塩濃度流体は重力によって供給チャンバに流入し、および/または高塩濃度流体は重力によって圧力チャンバに流入する、前述の局面のいずれか1つに従う方法。
【0122】
16.流体は重力によって圧力チャンバから排出される、前述の局面のいずれか1つに従う方法。
【0123】
17.高塩濃度流体は海水であり、好ましくは、モータは河川の河口に設置される、前述の局面のいずれか1つに従う方法。
【0124】
18.高塩濃度流体は廃水またはブラインであり、ブラインは好ましくは逆浸透などの脱塩プロセスまたは凝縮プロセスから生じる、前述の局面のいずれか1つに従う方法。
【0125】
19.低塩濃度流体は海水である、前述の局面のいずれか1つに従う方法。
20.圧力チャンバ内の圧力は、圧力チャンバからの流体が排出されるにつれて減少する、前述の局面のいずれか1つに従う方法。
【0126】
21.圧力チャンバ内の圧力は、仕事が行われるにつれて減少する、前述の局面のいずれか1つに従う方法。
【0127】
22.モータであって、
低塩濃度流体、好ましくは低塩濃度水の供給を受けるよう構成される供給チャンバと、
高塩濃度流体、好ましくは高塩濃度水の供給を受けるよう構成される圧力チャンバであって、入口(例えば、流入ポート)と、封止可能および/または閉鎖可能な出口(例えば、流出ポート)とをさらに備える圧力チャンバと、
流体分子に対して透過性であり、塩イオンに対して少なくとも部分的に不透過性の膜であって、供給チャンバと圧力チャンバとの間の流体連通を可能にする膜とを備え、
圧力チャンバは、出口が封止され、圧力チャンバ内に圧力が蓄積する閉鎖構成と、出口が開放され、圧力チャンバ内の圧力が減少する開放構成との間で交互するよう構成される。
【0128】
23.圧力チャンバは固定容積を有し、モータは、圧力チャンバと流体接続するタービンをさらに備える、局面22に従うモータ。
【0129】
24.圧力チャンバは可変容積を有し、好ましくは、圧力チャンバは、圧力チャンバの容積を可逆的に増加させるよう構成される膨張部をさらに備える、局面22に従うモータ。
【0130】
25.膨張部はピストンである、局面24に従うモータ。
26.膜を通る供給チャンバと圧力チャンバとの間の流体の交換を可逆的に遮断するよう構成される浸透障壁をさらに備える、局面22~25のいずれか1つに従うモータ。
【0131】
27.圧力チャンバは、圧力チャンバから流体を放出するよう構成される弁をさらに備え、好ましくは、弁は過圧弁である、局面22~26のいずれか1つに従うモータ。
【0132】
28.膜は、32,000mg/LのNaClの試験塩濃度に、25°Cで5.5MPaの印加圧力で、および10%の回収率で、供された場合、少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%の安定した脱塩率を提供する、局面22~27のいずれか1つに従うモータ。
【0133】
29.供給チャンバは、入口(例えば、入口ポート)および出口(例えば、出口ポート)をさらに備え、好ましくは、入口および/または出口は、閉鎖可能および/または封止可能である、局面22~28のいずれか1つに従うモータ。
【0134】
30.モータは、少なくとも0.1ワット、好ましくは少なくとも0.5ワット、より好ましくは少なくとも1ワットのエネルギーを提供するよう構成される、局面22~29のいずれか1つに従うモータ。
【0135】
31.閉鎖構成において、圧力チャンバ内で達成される最大圧力は、少なくとも1MPa、好ましくは少なくとも2MPa、より好ましくは少なくとも2.3MPaである、局面22~30のいずれか1つに従うモータ。
【0136】
32.開放構成において、圧力チャンバ内で達成される最小圧力は、最大1MPa、好ましくは最大100kPa、より好ましくは最大1.0kPaである、局面22~31のいずれか1つに従うモータ。