(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】プラズマ処理システム及びその多段式ファラデー遮蔽装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240329BHJP
H01J 37/32 20060101ALI20240329BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
H05H1/46 L
H01J37/32
H01L21/302 101C
(21)【出願番号】P 2023504635
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 CN2021100681
(87)【国際公開番号】W WO2022017089
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】202010725037.6
(32)【優先日】2020-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519453825
【氏名又は名称】江蘇魯▲もん▼儀器股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU LEUVEN INSTRUMENTS CO. LTD
【住所又は居所原語表記】Liaohe West Road 8, Pizhou Economic Development Zone Xuzhou, Jiangsu 221300, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】劉 海洋
(72)【発明者】
【氏名】劉 小波
(72)【発明者】
【氏名】胡 冬冬
(72)【発明者】
【氏名】李 娜
(72)【発明者】
【氏名】程 実然
(72)【発明者】
【氏名】郭 頌
(72)【発明者】
【氏名】呉 志浩
(72)【発明者】
【氏名】許 開東
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110491760(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111081524(CN,A)
【文献】特開2008-288437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00-1/54
H01J 37/32
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電リング(1)と、導電リング(1)の外周において放射相称に配置された複数の導電性花弁状アセンブリとを含む、プラズマ処理システムの多段式ファラデー遮蔽装置であって、前記複数の導電性花弁状アセンブリは、それぞれ、複数段の導電板(201)と、複数の接続コンデンサ(202)とを含んでおり、前記複数の導電性花弁状アセンブリにおいて、前記複数段の導電板(201)は、径方向に間隔をおいて並べられており、隣接する2段の導電板(201)の間に、接続コンデンサ(202)が設けられており、各接続コンデンサ(202)は、上部電極板(2021)と下部電極板(2022)とを含んでおり、前記上部電極板(2021)の下端面及び/又は前記下部電極板(2022)の上端面に絶縁コー
ティング層が設けられており、前記上部電極板(2021)及び前記下部電極板(2022)は、いずれも前記導電板201と平行であり、上部電極板(2021)の下端面と下部電極板(2022)の上端面は
前記絶縁コーティング層を介して互いに接しており、前記上部電極板(2021)は、隣接する2段の導電板(201)のうちの1段の導電板(201)に導電接続されており、前記下部電極板(2022)は、隣接する2段の導電板(201)のうちのもう1段の導電板(201)に導電接続されており、複数の前記導電板(201)は同一平面に位置していることを特徴とするプラズマ処理システムの多段式ファラデー遮蔽装置。
【請求項2】
前記上部電極板(2021)の上端面は導電板(201)の上端面よりも高くなく、前記下部電極板(2022)の下端面は導電板(201)の下端面よりも低くないことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理システムの多段式ファラデー遮蔽装置。
【請求項3】
前記上部電極板(2021)と前記下部電極板(2022)は、接着固定されていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理システムの多段式ファラデー遮蔽装置。
【請求項4】
前記上部電極板(2021)と前記下部電極板(2022)の側壁の外縁部は、コロイドで接着固定されていることを特徴とする請求項3に記載のプラズマ処理システムの多段式ファラデー遮蔽装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のファラデー遮蔽装置を含んでいることを特徴とするプラズマ処理システム。
【請求項6】
反応室(3)をさらに含んでおり、前記反応室(3)の上方に誘電体窓(301)が配置されており、前記ファラデー遮蔽装置は前記誘電体窓(301)に配置されている、ことを特徴とする請求項5に記載のプラズマ処理システム。
【請求項7】
無線周波数コイル(4)をさらに含んでおり、前記無線周波数コイル(4)は、前記ファラデー遮蔽装置に配置されている、ことを特徴とする請求項6に記載のプラズマ処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体エッチング技術分野に属し、特にプラズマ処理システム及びその多段式ファラデー遮蔽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許出願第CN110491760A号に、反応室3と無線周波数コイル4とを含むファラデー洗浄装置及びプラズマ処理システムが公開されている(
図11参照)。反応室3の上方に、誘電体窓301が配置されている。誘電体窓301の中部に、ノズルが配置されている。反応室3の内部に、ウェハ7を載せるための下部電極6が配置されている。プラズマ処理システムは、ファラデー遮蔽装置をさらに含む。さらに、ファラデー遮蔽装置は誘電体窓301に配置されている。無線周波数コイル4は、ファラデー遮蔽装置に配置されている。
【0003】
当該発明において、ファラデーはセクションに分割され、その間がコンデンサで接続される。これにより、誘電体窓全体における無線周波数の分布が均一になり、誘電体窓の底面全体が均一に洗浄される。一体型ファラデー板において、キャビティ頂部の結合窓における上部外縁領域が徹底的に洗浄されるが、中部領域が徹底的に洗浄されないという問題を解決する。
【0004】
しかし、コンデンサでの接続により、ファラデー構造が大きなスペースをとり、そして上面が平坦でないため、無線周波数コイルの取り付けが難しくなる。また、ファラデー板及びコンデンサの取り付けや位置決めの難易度が高い。また、コンデンサの誘電体層に必要とされる厚さは0.1mm未満レベルになり、製造コストが高い。
【発明の概要】
【0005】
上記の問題を解決するため、本発明は、加工コストが低く、取り付け及び位置決めが簡単であり、従来の多段式ファラデー遮蔽装置に比べて垂直方向のスペースをとらない、プラズマ処理システム及びその多段式ファラデー遮蔽装置を提供する。
【0006】
技術的解決手段:本発明は、導電リングと、導電リングの外周において放射相称に配置された複数の導電性花弁状アセンブリとを含む、プラズマ処理システムの多段式ファラデー遮蔽装置を提供する。前記複数の導電性花弁状アセンブリは、それぞれ、複数段の導電板と、複数の接続コンデンサとを含む。前記複数の導電性花弁状アセンブリのそれぞれにおいて、前記複数段の導電板は、径方向に間隔をおいて並べられている。隣接する2段の導電板の間に、接続コンデンサが配置されている。各接続コンデンサは、上部電極板と下部電極板とを含む。前記上部電極板の下端面及び/又は前記下部電極板の上端面に、絶縁コーティング層が設けられている。前記上部電極板及び下部電極板は、いずれも前記導電板と平行である。上部電極板の下端面と下部電極板の上端面は互いに接している。前記上部電極板は、隣接する2段の導電板のうちの1段の導電板に導電接続されている。前記下部電極板は、隣接する2段の導電板のうちのもう1段の導電板に導電接続されている。複数の前記導電板は、同一平面に位置している。
【0007】
さらに、前記上部電極板の上端面は導電板の上端面よりも高くなく、前記下部電極板の下端面は導電板の下端面よりも低くない。
【0008】
さらに、前記上部電極板と前記下部電極板は、接着固定されている。
【0009】
さらに、前記上部電極板と前記下部電極板の側壁の外縁部は、コロイドで接着固定されている。
【0010】
プラズマ処理システムは、前記ファラデー遮蔽装置を含む。
【0011】
さらに、前記プラズマ処理システムは、反応室を含む。前記反応室の上方に誘電体窓が配置されている。前記ファラデー遮蔽装置は前記誘電体窓に配置されている。
【0012】
さらに、前記プラズマ処理システムは、無線周波数コイルを含む。前記無線周波数コイルは、前記ファラデー遮蔽装置に配置されている。
【0013】
有益な効果:本発明において、接続コンデンサの上部電極板及び下部電極板は、いずれも導電板と一体的に加工され製造される。上部電極板及び下部電極板は、誘電体層とも一体的に加工されるため、従来の多段式ファラデー遮蔽装置に比較し、加工のコストが低い。ファラデー板と接続コンデンサの取り付けや位置決めが簡単であり、ファラデーの多段分割を簡単に実現できる。従来の多段式ファラデー遮蔽装置に比較し、垂直方向のスペースをとらない。そして、ファラデー遮蔽装置の上面は1つの平面上に位置しているので、段の位置及び数は、関連する無線周波数コイル及び誘電体窓によって制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明における2段の導電板と接続コンデンサの構造概略図である。
【
図2】本発明のファラデー遮蔽装置の平面図である。
【
図3】本発明における2段の導電板を備えたファラデー遮蔽装置の構造概略図である。
【
図4】本発明における2段の導電板を備えたファラデー遮蔽装置の電圧分布座標図である。
【
図5】本発明における3段の導電板を備えたファラデー遮蔽装置の構造概略図である。
【
図6】本発明における3段の導電板を備えたファラデー遮蔽装置の電圧分布座標図である。
【
図7】本発明における5段の導電板導電板を有するファラデー遮蔽装置の構造概略図である。
【
図8】本発明における5段の導電板を備えたファラデー遮蔽装置の電圧分布座標図である。
【
図9】従来の一体型ファラデー遮蔽装置の構造概略図である。
【
図10】従来の一体型ファラデー遮蔽装置の電圧分布座標図である。
【
図11】従来のプラズマ処理システムの構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び
図2に、導電リング1と、導電リング1の外周において放射相称に配置された複数の導電性花弁状アセンブリとを含む、本発明に係るプラズマ処理システムの多段式ファラデー遮蔽装置が示されている。各導電性花弁状アセンブリは、複数段の導電板201と複数の接続コンデンサ202とを含む。各導電性花弁状アセンブリにおいて、複数段の導電板201は、径方向に間隔をおいて並べられている。隣接する2段の導電板201の間に、接続コンデンサ202が設けられている。複数の導電板201は同一平面に位置している。
【0016】
各接続コンデンサ202は、上部電極板2021と下部電極板2022とを含む。上部電極板2021及び下部電極板2022は、いずれも導電板201と平行である。上部電極板2021の下端面と下部電極板2022の上端面は互いに接している。
【0017】
上部電極板2021は、隣接する2段の導電板201のうちの1段の導電板201に導電接続されている。下部電極板2022は、隣接する2段の導電板201のうちのもう1段の導電板201に導電接続されている。
【0018】
上部電極板2021と導電板201について、加工方法は以下のとおりである。フライス盤を用いて金属板の一部を元の厚さの半分又は半分よりわずかに薄くフライス加工し、薄くフライス加工された部分を上部電極板2021とし、残りの部分を導電板201とする。上記の加工方法で形成された上部電極板2021及び導電板201は一体的に接続しており、加工コストが低い。
【0019】
下部電極板2022と導電板201について、加工方法は同様である。
【0020】
上部電極板2021の下端面及び/又は下部電極板2022の上端面に、絶縁コーティング層が設けられている。具体的には、絶縁コーティング層は、PTFE、Y2O3などの材料を吹き付けて形成される。或いは、絶縁コーティング層は、陽極酸化や自然酸化により形成された酸化物層であってもよい。絶縁コーティング層は、上部電極板2021と下部電極板2022との間の誘電体層である。酸化物層の深さは制御可能であり、厚さは5um~200umとすることができる。
【0021】
上部電極板2021の下端面と下部電極板2022の上端面とが互いに接していることにより、上部電極板2021の上端面は導電板201の上端面よりも高くなく、下部電極板2022の下端面は導電板201の下端面よりも低くない。
【0022】
上部電極板2021と下部電極板2022の側壁の外縁部は、コロイドで接着固定されている。
【0023】
プラズマ処理システムは、反応室3と無線周波数コイル4とを含んでいる。反応室3の上方に、誘電体窓301が配置されている。誘電体窓301の中部に、ノズルが配置されている。反応室3の内部に、ウェハ7を載せるための下部電極6が配置されている。
【0024】
プラズマ処理システムは、上記のファラデー遮蔽装置をさらに含む。さらに、上記のファラデー遮蔽装置は誘電体窓301に配置されている。無線周波数コイル4は、上記のファラデー遮蔽装置に配置されている。
【0025】
図4は、本発明における2段の導電板を備えたファラデー遮蔽装置の電圧分布座標図である。
図6は、本発明における3段の導電板を備えたファラデー遮蔽装置の電圧分布座標図である。
図8は、本発明における5段の導電板を備えたファラデー遮蔽装置の電圧分布座標図である。
図10は、従来の一体型ファラデー遮蔽装置の電圧分布座標図である。遠点Oはファラデー遮蔽装置の中心であり、横軸は点Oからの距離であり、縦軸は対応する電圧値である。
【0026】
以上の図の比較から、一体式ファラデー遮蔽装置の電圧の誘電体窓301における分布は誘電体窓301の縁部に集中しており、導電板201の段数が増えるにつれて、電圧の分布が一致する傾向を呈することが分かる。このように、誘電体窓301の底面全体が均一に洗浄される。
【0027】
本発明において、接続コンデンサの上部電極板2021及び下部電極板2022は、いずれも導電板201と一体的に加工され製造される。上部電極板2021及び下部電極板2022は、誘電体層とも一体的に加工されるため、従来の多段式ファラデー遮蔽装置に比較し、加工のコストが低い。ファラデー板と接続コンデンサの取り付けや位置決めが簡単であり、ファラデーの多段分割を簡単に実現できる。従来の多段式ファラデー遮蔽装置に比較し、垂直方向のスペースをとらない。そして、ファラデー遮蔽装置の上面は1つの平面上に位置しているので、段の位置及び数は、関連する無線周波数コイル4及び誘電体窓301によって制限されない。