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特許7462380ソルダーレジスト樹脂組成物、樹脂シート、梱包体及び回路基板
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  • 特許-ソルダーレジスト樹脂組成物、樹脂シート、梱包体及び回路基板 図1
  • 特許-ソルダーレジスト樹脂組成物、樹脂シート、梱包体及び回路基板 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】ソルダーレジスト樹脂組成物、樹脂シート、梱包体及び回路基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20240329BHJP
   H01L 31/02 20060101ALN20240329BHJP
【FI】
H05K3/28 C
H01L31/02 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018239760
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2019121793
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2021-11-24
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2017251951
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】宮本 慎二
(72)【発明者】
【氏名】新井 政貴
【合議体】
【審判長】土居 仁士
【審判官】丸山 高政
【審判官】稲葉 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-34213(JP,A)
【文献】特開2012-43833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K
H01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、黒色顔料とを含むソルダーレジスト樹脂組成物であって、
前記ソルダーレジスト樹脂組成物中の前記黒色顔料の含有量が、前記ソルダーレジスト樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、2.0質量部以上10質量部以下であり、
下記条件1で測定される最大透過率Tmaxが30%以下であり、
下記条件2で測定されるピール強度が0.05kN/m以上0.50kN/m以下であり、かつ
下記条件3で測定されるピール強度が0.04kN/m以上0.50kN/m以下である、ソルダーレジスト樹脂組成物。
(条件1)
・キャリア基材上に、当該ソルダーレジスト樹脂組成物からなる硬化膜を形成して透過率を測定する。
・厚み15μmの前記硬化膜について、測定波長400nm以上1100nmにおける透過率の最大値を最大透過率Tmaxとする。
(条件2)
・キャリア基材上に、当該ソルダーレジスト樹脂組成物からなる樹脂層を形成する。次いで、前記キャリア基材から前記樹脂膜を剥離して、当該樹脂層と、表面粗さRaが1μmとなるように粗化した銅箔とを、温度200℃で真空プレスすることで積層し、当該ソルダーレジスト樹脂組成物の硬化膜と、前記銅箔との積層体を形成する。
・前記積層体について、前記硬化膜と、前記銅箔とを剥離する時の応力をピール強度とする。
(条件3)
キャリア基材上に、当該ソルダーレジスト樹脂組成物からなる樹脂膜を形成する。次いで、前記キャリア基材から前記樹脂膜を剥離して、当該樹脂膜と銅箔を、温度120℃、圧力1.5MPaで真空プレスして、Bステージ状態に硬化した樹脂膜と前記銅箔とが積層した積層体を得る。前記積層体から前記銅箔を剥離する時の応力をピール強度(kN/m)とする。
【請求項2】
請求項1に記載のソルダーレジスト樹脂組成物であって、
前記黒色顔料は、黒色酸化チタンTi2n-1(nは正の整数)を含む、ソルダーレジスト樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のソルダーレジスト樹脂組成物であって、
前記樹脂は熱硬化性樹脂であり、
前記熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂を含む、ソルダーレジスト樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3に記載のソルダーレジスト樹脂組成物であって、
硬化剤を更に含み、
前記硬化剤は、フェノール樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂及び活性エステル樹脂からなる群より選択される1種以上である、ソルダーレジスト樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載のソルダーレジスト樹脂組成物であって、
当該ソルダーレジスト樹脂組成物はソルダーレジストを形成するために用いられ、
前記ソルダーレジストは光デバイス用ソルダーレジストである、ソルダーレジスト樹脂組成物。
【請求項6】
キャリア基材と、
前記キャリア基材上に配置されていて、請求項1からのいずれか1項に記載のソルダーレジスト樹脂組成物からなる樹脂層と、を備える、樹脂シート。
【請求項7】
請求項に記載の樹脂シートが、ロール状に巻回された、または、シート状に複数積層された梱包体。
【請求項8】
表面に回路が形成された基板と、
前記基板の表面上に形成されたソルダーレジストと、を備える回路基板であって、
前記ソルダーレジストが、請求項1からのいずれか1項に記載のソルダーレジスト樹脂組成物からなる樹脂層の硬化物である、回路基板。
【請求項9】
請求項に記載の回路基板であって、
前記ソルダーレジストの厚みは1μm以上50μm以下である、回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はソルダーレジスト樹脂組成物、樹脂シート、梱包体及び回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ソルダーレジストインキ組成物の分野では様々な技術が開発されている。例えば、特許文献1には、カーボンブラックを含む充填材と、結合剤とを含有することによって、配線基板表面の放熱性を向上させ、電子部品の温度上昇を抑制できるソルダーレジストインキ組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-059222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、ソルダーレジストの光の透過率を低下するために、特許文献1のソルダーレジストインキ組成物を用いることを検討した。その結果、特許文献1のソルダーレジストインキ組成物を用いてソルダーレジストを作製した場合、400~1100nmといった波長における透過率を十分に低減できないことが判明した。例えば、ソルダーレジストを光デバイスに用いる際、該波長の光がソルダーレジストを透過すると、光デバイスが内部に備える電子素子が透過光をノイズとして誤認識してしまい、光デバイスの誤作動の原因となる。
【0005】
また、本発明者らが特許文献1のソルダーレジストインキ組成物を用いたソルダーレジストについて検討した結果、ガラス転移温度Tg、剛性、線膨張係数といった物性が十分でないことがあると判明した。
そこで、本発明は、硬化物としたときに高Tg、高剛性、低線膨張係数という物性を良好にしつつ、光の透過率を低減でき、ソルダーレジストとして光デバイスに用いた際、光デバイスの誤作動を抑制できるソルダーレジスト樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが、光デバイスの誤作動を抑制する方法について検討した結果、黒色顔料を含むことによって、厚み15μmの樹脂層を形成した時、波長400nm以上1100nm以下における最大透過率を特定の数値範囲内とすることが有効であることを知見した。これにより、本発明は完成した。
【0007】
本発明によれば、
樹脂と、黒色顔料とを含むソルダーレジスト樹脂組成物であって、
下記条件1で測定される最大透過率Tmaxが30%以下である、ソルダーレジスト樹脂組成物が提供される。
(条件1)
・キャリア基材上に、当該ソルダーレジスト樹脂組成物からなる硬化膜を形成して透過率を測定する。
・厚み15μmの前記硬化膜について、測定波長400nm以上1100nmにおける透過率の最大値を最大透過率Tmaxとする。
【0008】
また、本発明によれば、
キャリア基材と、
前記キャリア基材上に配置されていて、上記ソルダーレジスト樹脂組成物からなる樹脂層と、を備える、樹脂シートが提供される。
【0009】
また、本発明によれば、
上記樹脂シートが、ロール状に巻回された、または、シート状に複数積層された梱包体が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、
表面に回路が形成された基板と、
前記基板の表面上に形成されたソルダーレジストと、を備える回路基板であって、
前記ソルダーレジストが、上記ソルダーレジスト樹脂組成物からなる樹脂層の硬化物である、回路基板が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、硬化物としたときに高Tg、高剛性、低線膨張係数という物性を良好にしつつ、波長400~1100nmの光の透過率を低減でき、ソルダーレジストとして光デバイスに用いた際、光デバイスの誤作動を抑制できるソルダーレジスト樹脂組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る回路基板の一例を示す模式図である。
図2】本実施形態に係る半導体パッケージの断面の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、「A~B」はA以上B以下を示す。
【0014】
本実施形態に係るソルダーレジスト樹脂組成物は、樹脂と、黒色顔料とを含むソルダーレジスト樹脂組成物であって、下記条件1で測定される最大透過率Tmaxが30%以下である。
(条件1)
・キャリア基材上に、当該ソルダーレジスト樹脂組成物からなる硬化膜を形成して透過率を測定する。
・厚み15μmの上記硬化膜について、測定波長400nm以上1100nmにおける透過率の最大値を最大透過率Tmaxとする。
【0015】
本発明者らは、ソルダーレジストが薄くても光デバイスの誤作動を抑制するためには、測定波長400nm以上1100nm以下における最大透過率Tmaxを低減することが有効であることを知見した。
本発明者らが、最大透過率Tmaxを低減する方法について検討した結果、例えば、黒色顔料の種類、ソルダーレジスト樹脂組成物中の黒色顔料の含有量、及び、ソルダーレジスト樹脂組成物の製造方法を制御することによって、最大透過率Tmaxを所望の数値範囲内とできることを知見した。ここで、黒色顔料の種類としては、特定の黒色酸化チタンを含むことが重要である。また、ソルダーレジスト樹脂組成物の製造方法としては、黒色顔料を溶媒中に溶解、分散させた後、黒色顔料以外のソルダーレジスト樹脂組成物の原料成分を溶解、分散させることが重要である。これにより、従来のソルダーレジスト樹脂組成物と比べて、黒色顔料をソルダーレジスト樹脂組成物中に高度に分散させることができる。したがって、最大透過率Tmaxを所望の数値範囲内とすることができる。これにより、本実施形態に係る光デバイスは、ソルダーレジストが薄くても光デバイスの誤作動を抑制することができる。
なお、黒色顔料を溶媒に分散させる方法としては、例えば、超音波分散を用いることが好ましい。これにより、黒色顔料をソルダーレジスト樹脂組成物中にさらに高度に分散させることができる。
【0016】
また、本実施形態に係るソルダーレジスト樹脂組成物は、過剰に黒色顔料を添加することなく上記最大透過率Tmaxを所望の数値範囲とすることができる。これにより、ガラス転移温度Tg、剛性、線膨張係数といった物性の低下を抑制できる。また、ソルダーレジスト上に銅回路を配した時、ソルダーレジストと、銅回路との密着性を十分に維持できる観点でも好適である。
以上より、本実施形態に係るソルダーレジスト樹脂組成物は、硬化物としたときに高Tg、高剛性、低線膨張係数に関し良好な物性を達成しつつ、波長400~1100nmの光の透過率を低減でき、ソルダーレジストとして光デバイスに用いた際、光デバイスの誤作動を抑制できるものである。
【0017】
本実施形態のソルダーレジスト樹脂組成物について、以下詳細を説明する。
【0018】
(ソルダーレジスト樹脂組成物)
本実施形態のソルダーレジスト樹脂組成物は、ワニス状の樹脂組成物である。当該ソルダーレジスト樹脂組成物をフィルム状とすることにより、本実施形態の樹脂シートを得ることができる。かかる樹脂シートを硬化させることにより、ソルダーレジスト膜が得られる。また、ソルダーレジスト樹脂組成物の塗布膜を硬化させることにより、ソルダーレジスト膜を得てもよい。
【0019】
本実施形態に係るソルダーレジスト樹脂組成物は、厚さ15μmの硬化物としたときの、測定波長400nm以上1100nmにおける透過率の最大値である最大透過率Tmaxの上限値が、例えば、30%以下であり、25%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。これにより、ソルダーレジストを光デバイスに用いた時に、光デバイスの誤作動が生じることを抑制できる。
また、上記最大透過率Tmaxの下限値は、例えば、0%以上でもよく、0.01%以上でもよい。最大透過率Tmaxは小さいほど、光デバイスの誤作動を抑制できる観点で好適である。
なお、本実施形態において、最大透過率Tmaxの測定に用いる硬化物は、例えば、以下のように作製することができる。まず、ソルダーレジスト樹脂組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、温度120℃で2分間熱処理し、樹脂膜を得る。次いで、樹脂膜を温度200℃で1時間熱処理することで、硬化物を作製できる。
また、本実施形態において、透過率は、例えば、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光社製、V-670)を用いて測定することができる。
【0020】
本実施形態に係るソルダーレジスト樹脂組成物を厚さ15μmの硬化物として透過率を測定し、透過率-測定波長でプロットする場合、測定波長400nm以上600nm以下において、透過率が大きくなる方向に凸形状を示す。この凸形状のピークにおける透過率であるピーク透過率Tの上限値としては、例えば、21%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく18%以下であることが更に好ましく、15%以下であることが一層好ましく、12%以下であることが殊更好ましい。Tが上記上限値以下であることにより、ソルダーレジスト樹脂組成物中に黒色顔料が好適に分散し、凝集物を形成しない観点で好ましい。これにより、Tg、剛性、線膨張係数という諸物性を所望の数値範囲とすることができる。
また、ピーク透過率Tの下限値としては、例えば、0%以上でもよく、1%以上でもよい。基本的に、ピーク透過率Tは小さいほうが好ましい。
なお、ピーク透過率Tの測定に用いる硬化物は、上述した最大透過率Tmaxの測定に用いる硬化物と同様のものとすることができる。
【0021】
本実施形態に係るソルダーレジスト樹脂組成物を厚さ15μmの硬化物として透過率を測定したとき、測定波長600nm以上800nm以下における最大透過率と最小透過率との差Td1の上限値は、例えば、18%以下であることが好ましく、16%以下であることがより好ましく、14%以下であることが更に好ましく、12%以下であることが一層好ましく、9%以下であることが殊更好ましい。これにより、ソルダーレジスト樹脂組成物中に黒色顔料が好適に分散し、凝集物を形成しない観点で好ましい。これにより、Tg、剛性、線膨張係数という諸物性を所望の数値範囲とすることができる。
また、上記Td1の下限値としては、例えば、0%以上でもよく、1%以上でもよい。基本的に、Td1は小さいほうが好ましい。
なお、Td1の測定に用いる硬化物は、上述した最大透過率Tmaxの測定に用いる硬化物と同様のものとすることができる。
【0022】
本実施形態に係るソルダーレジスト樹脂組成物を厚さ15μmの硬化物として透過率を測定したとき、測定波長800nm以上1100nm以下における最大透過率と最小透過率との差Td2の上限値は、例えば、1%以下であることが好ましい。これにより、粗大な凝集物の形成を抑制できる観点で好ましい。したがって、Tg、剛性、線膨張係数という諸物性を所望の数値範囲とできる。
また、上記Td2の下限値は、例えば、0%以上とすることができる。基本的に、Td2は小さいほうが好ましい。
なお、Td2の測定に用いる硬化物は、上述した最大透過率Tmaxの測定に用いる硬化物と同様のものとすることができる。
【0023】
本実施形態に係るソルダーレジスト樹脂組成物は、樹脂と、黒色顔料とを含む。以下、ソルダーレジスト樹脂組成物が含有する原料成分について説明する。
【0024】
(樹脂)
樹脂としては、従来のソルダーレジスト樹脂組成物に用いられるものであれば限定されず、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂といった樹脂を用いることができる。樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。本実施形態に係るソルダーレジスト樹脂組成物は、光の透過率が低いが、熱硬化性樹脂であれば、加熱により均一に硬化を生じさせ、ソルダーレジスト膜を形成することができる。
【0025】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、具体的には、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、マレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。熱硬化性樹脂としては、上記具体例のうち例えば、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。これにより、ソルダーレジスト樹脂組成物中の黒色顔料の分散性を向上できる。
また、上述した熱硬化性樹脂に応じて、ソルダーレジスト樹脂組成物は、例えば、硬化剤を含んでもよい。
【0026】
上述したエポキシ樹脂としては、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
エポキシ樹脂としては、上記具体例のうち、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。また、ノボラックエポキシ樹脂としては、上記具体例のうち、例えば、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。これにより、黒色顔料を好適に分散させつつ、高ガラス転移温度Tg、高剛性、低線膨張係数といった物性を所望の数値範囲で実現することができる。
【0027】
本実施形態においては、以下の式(1)に示すエポキシ樹脂をエポキシ樹脂として含むことが、好ましい態様の一例として挙げられる。式(1)で表されるエポキシ樹脂の市販品としては、具体的には、DIC社製のEXA-7320などが挙げられる。
【0028】
【化1】
(式(1)中、nは0~10の整数であり、RおよびRは互いに独立して水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基である。)
【0029】
本実施形態のソルダーレジスト樹脂組成物中の熱硬化性樹脂の含有量の下限値は、例えば、ソルダーレジスト樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。これにより、ソルダーレジスト樹脂組成物を用いて形成されるソルダーレジスト膜の埋め込み性、平滑性を向上できる。
また、本実施形態のソルダーレジスト樹脂組成物中の熱硬化性樹脂の含有量の上限値は、例えば、ソルダーレジスト樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、40質量部以下であることが好ましく、35質量部以下であることがより好ましい。これにより、ソルダーレジスト膜の耐熱性を向上できる。
なお、本実施形態において、ソルダーレジスト樹脂組成物の全固形分とは、ソルダーレジスト樹脂組成物中に含まれる溶剤を除く成分全体を示す。
【0030】
(黒色顔料)
本実施形態に係るソルダーレジスト樹脂組成物は、着色剤である黒色顔料を含む。
黒色顔料としては、具体的には、黒色酸化チタンなどの無機酸化物;カーボンブラック、グラファイト、フラーレン、およびカーボンファイバーなどの炭素化合物などが挙げられる。黒色顔料としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。黒色顔料としては、上記具体例のうち例えば、無機酸化物を含むことが好ましい。また、無機酸化物としては黒色酸化チタンTi2n-1(nは正の整数)を含むことが好ましい。また、黒色酸化チタンTi2n-1(nは正の整数)としては、例えば、黒色酸化チタンTi2n-1(nは2以上6以下の整数)を含むことが好ましい。これにより、黒色顔料がソルダーレジスト樹脂組成物中に高分散することで、最大透過率Tmaxを所望の数値範囲とすることができる。
【0031】
黒色顔料の平均粒径の上限値は、例えば、2.0μm以下が好ましく、1.9μm以下がより好ましく、1.8μm以下がさらに好ましい。これにより、黒色酸化チタンの分散性を高めることができる。
また、黒色顔料の平均粒径の下限値は、例えば、0.1μm以上としてもよく、0.2μm以上としてもよい。
【0032】
ソルダーレジスト樹脂組成物中の黒色顔料の含有量の下限値としては、例えば、ソルダーレジスト樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、2.0質量部以上であることが好ましく、2.5質量部以上であることがより好ましく、3.0質量部以上であることが更に好ましく、3.5質量部以上であることが一層好ましく、4.0質量部以上であることが殊更好ましい。これにより、ソルダーレジスト膜の透過率をより低減することができる。
また、ソルダーレジスト樹脂組成物の黒色顔料の含有量の上限値としては、例えば、ソルダーレジスト樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、9質量部以下であることがより好ましく、8質量部以下であることが更に好ましい。これにより、黒色顔料が導電性を備える場合、導電パスが形成される不都合を抑制できる。
【0033】
(その他の成分)
本実施形態に係るソルダーレジスト樹脂組成物は、必要に応じて、硬化剤、溶媒、充填材、硬化促進剤、着色剤、カップリング剤、レベリング剤、感光剤、消泡剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、およびイオン捕捉剤などを含有してもよい。
以下、代表成分について記載する。
【0034】
(硬化剤)
上述した硬化剤としては、例えば、上記熱硬化性樹脂と反応して硬化反応するものを用いることができる。硬化剤としては、具体的には、フェノール樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、活性エステル樹脂などを用いることができる。硬化剤としては、例えば、シアネート樹脂を用いることが好ましい。これにより、黒色顔料を好適に分散させつつ、高ガラス転移温度Tg、高剛性、低線膨張係数といった物性を所望の数値範囲で実現することができる。
【0035】
上記フェノール樹脂としては、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を限定するものではない。フェノール樹脂としては、具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂などの多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂などの変性フェノール樹脂;フェニレン骨格および/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂などのアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール化合物などが挙げられる。フェノール樹脂としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、フェノール樹脂としては、室温25℃で液状である液状フェノール樹脂を含むことが好ましい。
【0036】
上記ベンゾオキサジン樹脂としては、具体的には、o-クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、m-クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、p-クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-メチルアミン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-シクロヘキシルアミン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-m-トルイジン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-3,5-ジメチルアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA-アミン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールF-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールS-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ジヒドロキシジフェニルスルホン-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ジヒドロキシジフェニルエーテル-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾフェノン型ベンゾオキサジン樹脂、ビフェニル型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールAF-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA-メチルアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-ジアミノジフェニルメタン型ベンゾオキサジン樹脂、トリフェニルメタン型ベンゾオキサジン樹脂、およびフェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂などが挙げられる。
また、ベンゾオキサジン樹脂の市販品としては、例えば、BF-BXZ、BS-BXZ、BA-BXZ(以上、小西化学工業社製)などを用いることができる。
【0037】
上記シアネート樹脂としては、シアネートエステル樹脂を用いることができる。
シアネートエステル樹脂としては、具体的には、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4'-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4'-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアネートフェニル)エーテルなどの2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ジシクロペンタジエン構造含有フェノール樹脂などから誘導される多官能シアネート樹脂;上記例示したシアネートエステル樹脂の一部がトリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。
ここで、シアネートエステル樹脂の市販品としては、例えば、ロンザジャパン社製のPT30、BA230、DT-4000、DT-7000などを用いることができる。
【0038】
上記活性エステル樹脂としては、具体的には、フェノールエステル化合物、チオフェノールエステル化合物、N-ヒドロキシアミンエステル化合物、複素環ヒドロキシ基がエステル化された化合物等の反応活性の高いエステル基を有し、エポキシ樹脂の硬化作用を有するものを用いることができる。
活性エステル樹脂としては、上記具体例のうち、例えば、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られるものを用いることが好ましい。ここで、ヒドロキシ化合物としては、具体的には、フェノール化合物、ナフトール化合物などが挙げられる。
上記カルボン酸化合物としては、具体的には、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸などが挙げられる。
また、上記フェノール化合物としては、具体的には、ヒドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックなどが挙げられる。
また、上記ナフトール化合物としては、具体的には、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレンなどが挙げられる。
【0039】
(溶媒)
本実施形態に係るソルダーレジスト樹脂組成物は、原料成分を溶媒に溶解、分散させることで、ワニス状として用いることができる。
溶媒としては、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、およびN-メチルピロリドンなどが挙げられる。溶媒としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
(充填材)
本実施形態に係るソルダーレジスト樹脂組成物は、充填材を含んでもよい。
充填材としては、具体的には、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラスなどのケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、シリカ、溶融シリカなどの酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素などの窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムなどのチタン酸塩などを挙げることができる。充填材としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。充填材としては、上記具体例のうち、シリカを用いることが好ましい。
充填材の粒径は、好ましくは10nm~10μmであり、より好ましくは、20nm~5μmである。充填性の観点から、粒径の異なる充填材を組み合わせて用いることが好ましい。
【0041】
(硬化促進剤)
上述した硬化促進剤としては、エポキシ樹脂と、硬化剤との反応を促進させるものを用いることができる。硬化促進剤としては、具体的には、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)などの有機金属塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの3級アミン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート(TPP-K)、テトラフェニルホスホニウム・テトラキス(4-メチルフェニル)ボレート(TPP-MK)、テトラフェニルホスホニウムのビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート付加物のような四級ホスホニウム系化合物、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-エチルイミダゾール、2-フェニル-4-エチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシイミダゾールなどのイミダゾール類、フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノールなどのフェノール化合物、酢酸、安息香酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸などの有機酸、およびオニウム塩化合物などが挙げられる。
【0042】
オニウム塩化合物は、とくに限定されないが、たとえば下記一般式(2)で表される化合物を用いることができる。
【0043】
【化2】
(式(2)中、Pはリン原子、R、R、RおよびRは、それぞれ、置換もしくは無置換の芳香環または複素環を有する有機基、あるいは置換もしくは無置換の脂肪族基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。Aは分子外に放出しうるプロトンを少なくとも1個以上分子内に有するn(n≧1)価のプロトン供与体のアニオン、またはその錯アニオンを示す)
【0044】
(着色剤)
本実施形態に係るソルダーレジスト樹脂組成物は、着色剤として、例えば、上記黒色顔料以外の黒色染料、黒色色素を含有してもよい。
黒色染料としては、具体的には、アゾ系等の金属錯塩黒色染料、または、アントラキノン系化合物等の有機黒色染料などが挙げられる。当該黒色染料としては、特に限定されないが、例えば、Kayaset Black A-N(日本化薬社製)、Kayaset Black G(日本化薬社製)等が挙げられる。本実施形態において、黒色染料は1種または2種以上用いてもよい。
【0045】
(カップリング剤)
上述したカップリング剤としては、具体的には、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤などのシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤などが挙げられる。カップリング剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
(ソルダーレジスト樹脂組成物の製造方法)
本実施形態のソルダーレジスト樹脂組成物は、上述した原料成分を、例えば、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転式分散方式などの各種混合機を用いて溶剤中に溶解、混合、撹拌することにより調製することができる。
ソルダーレジスト樹脂組成物の製造方法としては、黒色顔料を溶媒中に溶解、分散させた後、黒色顔料以外のソルダーレジスト樹脂組成物の原料成分を溶解、分散させることが重要である。これにより、従来のソルダーレジスト樹脂組成物と比べて、黒色顔料をソルダーレジスト樹脂組成物中に高度に分散させることができる。
黒色顔料を溶媒に溶解、分散させる方法としては、例えば、超音波分散を用いることが好ましい。これにより、黒色顔料をソルダーレジスト樹脂組成物中にさらに高度に分散させることができる。
なお、黒色顔料の分散性を向上する観点から、超音波分散させる時間は、例えば、30分間以上60分間以下とすることが好ましい。これにより、黒色顔料の含有量を低減しつつ、光の透過率を低減することができる。したがって、光の透過率を低減しつつ、ソルダーレジストの銅回路に対する密着強度を発揮できる観点で好ましい。
【0047】
(用途)
本実施形態に係るソルダーレジスト樹脂組成物は、ソルダーレジストを形成するために用いられる。また、光透過によるデバイスの誤作動を抑制できる観点から、本実施形態に係るソルダーレジストは、例えば、光デバイス用ソルダーレジストとして用いられることが好ましい。
以下、本実施形態に係る樹脂膜、樹脂シート、ソルダーレジストについて詳細を説明する。
【0048】
(樹脂膜)
本実施形態の樹脂膜は、ワニス状のソルダーレジスト樹脂組成物をフィルム化することにより得ることができる。また、下記樹脂シートを作製し、得られた樹脂層をキャリア基材から剥離することで樹脂膜として使用してもよい。
【0049】
本実施形態に係る樹脂膜と、粗化しない銅箔とのピール強度の下限値は、例えば、0.02kN/m以上であることが好ましく、0.03kN/m以上であることがより好ましく、0.04kN/m以上であることが更に好ましい。これにより、回路基板を作製する工程において、銅箔が樹脂膜から脱落するといった不都合が発生することを抑制できる。
また、本実施形態に係る樹脂膜と、表面粗さRaが1μmとなるように粗化した銅箔とのピール強度の下限値は、例えば、0.06kN/m以上であることが好ましく、0.07kN/m以上であることがより好ましく、0.08kN/m以上であることが更に好ましい。回路基板が備える導体回路パターンは、表面が粗化処理された銅によってなることが多い。したがって、ピール強度が上記下限値以上であることによって、実際に回路基板を形成した場合において、導体回路パターンと、樹脂膜の剥離といった不都合が発生することを抑制できる観点で都合がよい。
また、本実施形態に係る樹脂膜と、粗化しない銅箔または表面粗さRaが1μmとなるように粗化した面側の銅箔とのピール強度の上限値は、例えば、0.50kN/m以下であってもよく、0.30kN/m以下であってもよく、0.20kN/m以下であってもよい。
なお、本実施形態において、樹脂膜と、銅箔とのピール強度は、例えば、以下の方法で行うことができる。まず、銅箔と樹脂膜とを真空プレスを用いて120℃で積層して、積層体を作製する。次いで、該積層体の片面の中央に、幅方向と平行な切り込みを形成する。次いで、積層体の切り込みから銅箔を剥がし、剥がした銅箔の先端をつまみ具で掴む。次いで、積層体を支持具で固定し、銅箔を積層体の面内方向に対して垂直方向に引く引張試験を行う。ここで、引張試験の条件は、例えば、引張速度50mm/minとし、銅箔を20mm剥がすまで引張試験を行うものとする。このとき、引張試験の荷重の最低値を引きピール強度とすることができる。
【0050】
(樹脂シート)
本実施形態に係る樹脂シートについて説明する。
本実施形態に係る樹脂シートは、例えば、キャリア基材の上に、ソルダーレジスト樹脂組成物を塗工し、熱処理によって溶媒を除去することで作製することができる。これにより、本実施形態に係る樹脂シートは、キャリア基材と、キャリア基材の上に配置されている樹脂層とを備える。
【0051】
(梱包体)
本実施形態に係る樹脂シートは、例えば、ロール状に巻回、または、シート状に複数積層し、梱包することができる。すなわち、本実施形態に係る梱包体は、例えば、樹脂シートをロール状に巻回された、または、シート状に複数積層されたものとすることができる。
【0052】
ソルダーレジスト樹脂組成物から熱処理によって溶媒を除去する工程として、例えば、温度100℃以上150℃で1分間以上5分間以下の条件で熱処理してもよい。これにより、熱硬化性樹脂を含む樹脂膜の硬化が進行することを抑制しつつ、十分に溶媒を除去することが可能となる。なお、上記条件で熱処理を行った樹脂シートの樹脂膜の硬化状態は、例えば、Bステージの硬化状態である。
また、樹脂膜は、熱処理によって硬化させ、硬化膜(すなわち、硬化物)とすることができる。熱処理の温度条件の下限値としては、例えば、190℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、210℃以上がさらに好ましい。また、熱処理の温度条件の上限値としては、例えば、260℃以下とすることができ、240℃以下でもよく、220℃以下でもよい。これにより、樹脂膜を硬化させることで、Cステージの硬化状態である硬化物とすることができる。
【0053】
(ソルダーレジスト)
本実施形態に係るソルダーレジストは、上述した樹脂膜または樹脂層の硬化物である。すなわち、本実施形態に係る樹脂膜または樹脂層をCステージの硬化状態とすることで、ソルダーレジストが得られる。
【0054】
本実施形態に係るソルダーレジストと、粗化しない銅箔とのピール強度の下限値は、例えば、0.03kN/m以上であることが好ましく、0.04kN/m以上であることがより好ましく、0.05kN/m以上であることが更に好ましい。ソルダーレジスト樹脂組成物が、黒色顔料、充填材などを含有する場合、銅からなる導体回路パターン及びソルダーレジストの密着強度は低下してしまう。ソルダーレジストと、粗化しない銅箔とのピール強度が上記下限値以上であることによって、透過率を低減しつつ、導体回路パターン及びソルダーレジストの密着強度を向上できる観点で好適である。
また、本実施形態に係るソルダーレジストと、表面粗さRaが1μmとなるように粗化した面側の銅箔とのピール強度の下限値は、例えば、0.05kN/m以上であることが好ましく、0.07kN/m以上であることがより好ましく、0.09kN/m以上であることが更に好ましく、0.10kN/m以上であることが一層好ましい。回路基板が備える導体回路パターンは、表面が粗化処理された銅によってなることが多い。したがって、ピール強度が上記下限値以上であることによって、実際に回路基板を形成した場合における、導体回路パターンと、ソルダーレジストとの密着性を十分なものとすることができる観点で好適である。
また、本実施形態に係るソルダーレジストと、粗化しない銅箔または表面粗さRaが1μmとなるように粗化した面側の銅箔とのピール強度の上限値は、例えば、0.50kN/m以下であってもよく、0.30kN/m以下であってもよく、0.20kN/m以下であってもよい。
なお、本実施形態において、ソルダーレジストと、銅箔とのピール強度は、例えば、真空プレスの温度を200℃とする以外は上述した樹脂膜と、銅箔とのピール強度を測定する方法と同様の方法で行うことができる。
【0055】
(回路基板)
本実施形態に係る回路基板について説明する。
図1は、実施形態における回路基板20の構造の例を示す模式図である。
本実施形態の回路基板は、表面に回路(導体回路パターン24)などの電子素子が形成された基板22と、基板の表面上である最外層に形成されたソルダーレジスト10と、を備えることができる。当該ソルダーレジストは、本実施形態のソルダーレジスト樹脂組成物からなる樹脂膜の硬化物で構成されている。
【0056】
図2に示す半導体パッケージ102は、回路基板20、半導体素子60、および封止樹脂層40を備える。半導体素子60は回路基板20上に配設されている。封止樹脂層40は、回路基板20の少なくともひとつの面および半導体素子60を覆っている。回路基板20は、基板22、導体回路パターン24、およびソルダーレジスト10を備える。導体回路パターン24は基板22の少なくともひとつの最外面に設けられている。ソルダーレジスト10は、回路基板20の最外層であり、導体回路パターン24の周囲に設けられている。
【0057】
本実施形態に係る半導体パッケージ102では、上述した回路基板20の一方の面(以下では「上面」と呼ぶ)のソルダーレジスト10の上に、少なくとも1つの半導体素子60が配設されている。半導体パッケージ102において、回路基板20はたとえばインターポーザであり、半導体素子60はたとえば半導体ウエハから切り出されたLSIチップである。また、回路基板20の上面には半導体素子60に加えて、たとえば抵抗や容量として機能する電子部品などがさらに配設されていてもよい。半導体素子60はダイアタッチ材62を介してソルダーレジスト10の上に固定されている。
【0058】
半導体素子60にはその表面に電気的な接続パッド(不図示)が設けられており、接続パッドはたとえば半導体素子60の内部に作り込まれた回路に接続されている。回路基板20に設けられた導体回路パターン24は、例えば、ランド244及びライン242を含む。
ランド244は、ソルダーレジスト10の開口部28に設けられている。そして、ランド244と、半導体素子60の接続パッドとは、ボンディングワイヤ50によって接続されている。なお、本実施形態に係る半導体パッケージ102では、ランド244の上にめっき膜246がさらに設けられており、ランド244はめっき膜246を介してボンディングワイヤ50に接続されているが、これに限定されない。また、ボンディングワイヤ50で接続される代わりにリード線や半田により接続されていても良い。
また、ライン242は主に、ランド244同士を互いに電気的に接続する線状の部分である。
【0059】
封止樹脂層40は、回路基板20の上面の表面に露出したソルダーレジスト10と、基板22と、めっき膜246(めっき膜246を設けない場合はランド244)と、半導体素子60のうちダイアタッチ材62で回路基板20と接合された面以外の面と、ボンディングワイヤ50とを覆っている。なお、封止樹脂層40は回路基板20の半導体素子60が設けられた面の全面を覆っていても良いし、当該面の一部を露出させて覆っていても良い。
【0060】
半導体パッケージ102の回路基板20には、上面とは反対側の面(以下では「下面」と呼ぶ)にさらに複数の開口部28と、開口部28の内部のランド244が設けられている。そして、それぞれのランド244はめっき膜246に覆われ、さらにめっき膜246を覆う半田ボール30が設けられている。
ここでは、本実施形態に係る半導体パッケージ102としてフリップチップ接続のパッケージの例について説明したが、これに限定されず、ワイヤボンディングやTAB(Tape Automated Bonding)接続されるパッケージでもよい。
【0061】
本実施形態において、電子装置の封止樹脂層40と、実装面と反対側に配置された下層のソルダーレジスト10(本実施形態のソルダーレジスト)とを、同じ色とすることが可能である。例えば、それぞれ、同一または同程度の黒色とすることができる。上面および下面の最外層を、同じ黒色とすることにより、電子装置全体の美観性を高めることができる。なお、電子装置の下層のソルダーレジスト10の下面上には、外部接続電極(例えば、半田ボール30)を覆う黒色シールを貼り付けてもよい。
【0062】
また、封止樹脂層40の上面またはソルダーレジスト10の下面には、例えば、YAGレーザー等のレーザーによりマークが捺印される。このマークは、例えば、直線または曲線からなる文字、数字、または記号の少なくとも1種類以上により構成される。また、上記マークは、例えば、半導体パッケージの製品名、製品番号、ロット番号、またはメーカー名等を示すものである。また、上記マークは、例えば、YVO4レーザー、炭酸レーザー等により捺印されてもよい。
【0063】
本実施形態の電子装置としては、特に限定されないが、例えば、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)、SON(Small Outline Non-leaded Package)、LF-BGA(Lead Flame BGA)等が挙げられる。
【0064】
また、上記半導体素子としては、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
本実施形態におけるソルダーレジストの厚みの下限値としては、例えば、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることが更に好ましく、10μm以上であることが一層好ましい。これにより、光の透過を抑制し、光デバイスに用いた際の誤作動を十分に抑制できる。
また、近年の電子装置の高密度化に伴い、電子回路を薄膜化する要求はますます高まっている。電子回路を薄膜化する観点から、本実施形態におけるソルダーレジストの厚みの上限値としては、例えば、50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることが更に好ましく、20μm以下であることが一層好ましく、15μm以下であることが殊更好ましい。本実施形態に係るソルダーレジストは、厚みが上記上限値以下であっても最大透過率Tmaxを低減できる観点で都合がよい。
【0066】
(回路基板の製造方法)
次に、回路基板20の製造方法について説明する。
本実施形態に係る回路基板20の製造方法は、例えば、基板22を準備する工程と、樹脂膜を積層する工程と、開口部28を形成する工程と、およびデスミア処理する工程とをこの順に含む。
基板22を準備する工程では、少なくともひとつの最外面に電子素子である導体回路パターン24が配された基板22を準備する。樹脂膜を積層する工程では、基板22および導体回路パターン24上に最外層の樹脂膜を積層する。開口部28を形成する工程では、樹脂膜の所定の領域に導体回路パターン24の一部を露出させる。デスミア処理する工程では、樹脂膜の表面をデスミア処理する。開口部28を形成する工程は、樹脂膜のうち、開口部28とする領域にレーザー光を照射する工程を含む。
【0067】
まず、表裏の少なくとも一方の最外面に導体回路パターン24が配された基板22を準備する(基板を準備する工程)。次いで、基板22の導体回路パターン24上に樹脂膜を積層する(積層する工程)。本工程では、基板22の導体回路パターン24が配された面上に、樹脂膜が基板22と対向するよう樹脂シートを貼付する。樹脂シートの貼付は、たとえば樹脂シートの樹脂膜を導体回路パターン24上に積層した後、これを真空加熱加圧成形することにより行うことができる。本実施形態において、樹脂シートとしては、金属箔付き樹脂膜でもよいし、樹脂フィルム付き樹脂膜でもよい。次いで、キャリア基材を、樹脂膜から剥離する。これにより、基板22に、導体回路パターン24を覆うように、樹脂膜が形成されることとなる。
【0068】
次いで導体回路パターン24上の樹脂膜の所定の位置に開口部28を設ける(開口部を形成する工程)。開口部28は主に導体回路パターン24のランド244を露出させるように形成する。開口部28の形成方法としては特に限定されず、露光現像法やレーザー加工法、などの方法を用いることができる。
【0069】
開口部28の形成に露光現像法を用いる場合、ソルダーレジスト樹脂組成物は感光剤を含む必要がある。露光現像法ではまず、樹脂膜のうち開口部28を形成する領域、もしくは開口部28を形成しない領域のいずれか一方に選択的に光を照射する露光を行う。その後、アルカリ性水溶液などの現像液を用いた現像を行うことで開口部28を形成出来る。
【0070】
その後、Bステージ状態の樹脂膜を熱硬化させることにより、ソルダーレジスト10(樹脂膜の硬化物)を形成する。本実施形態において、硬化温度は特に限定されないが、例えば、160℃以上でもよく、180℃以上でもよく、200℃以上でもよい。これによりソルダーレジスト10(ソルダーレジスト)を形成する。ここで、露光にはたとえば、マスクパターンを密着させて紫外線を照射する方法や、レーザー光を所望の領域に直接照射する方法を用いることができる。
【0071】
プロセスの簡易化の観点から、開口部28を形成する工程では、樹脂膜のうち、開口部28とする領域にレーザー光を照射して(レーザー光を照射する工程)、開口を形成する方法が好ましく、中でもレーザー加工法がより好ましい。
【0072】
開口部28を形成した後には、必要に応じて、デスミア処理を行うことができる(デスミア処理する工程)。デスミア処理では、開口部28の形成などで生じたスミアを除去する。
【0073】
本実施形態に係る回路基板20の製造方法では、開口部28の形成、および必要に応じてデスミア処理を行った後、開口部28に露出した導体回路パターン24の上にめっき膜246を形成するめっき処理を行う。ただし、めっき膜246を形成せずに回路基板20としても良い。めっき膜246は、たとえば半田めっき膜や、錫めっき膜や、ニッケルめっき膜の上に金めっき膜を積層した2層構造のめっき膜とすることができる。めっき膜246は開口部28に露出した導体回路パターン24の導電部を覆うように形成される。また、めっき膜246の膜厚は、とくに限定されないが、たとえば2μm以上10μm以下とすることができる。これにより、ランド244部分を、回路基板20を用いた実装工程においてワイヤボンディング50や半田付けに適した接続部とすることができる。
【0074】
めっき処理の方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。たとえば、電解めっき法または無電解めっき法を用いることができる。たとえば無電解めっき法を用いる場合、次の様にめっき膜246を形成することが出来る。ここではニッケルと金の2層構造のめっき膜246を形成する例について説明するが、これに限定されない。まず、ニッケルめっき膜を形成する。無電解ニッケルめっきを行う場合、めっき液に導体回路パターン24やソルダーレジスト10を積層した基板22を浸漬する。このことで、開口部28に露出した導体回路パターン24の導電部の上に、ニッケルめっき膜を形成できる。めっき液は、ニッケル鉛、および還元剤としてたとえば次亜リン酸塩を含んだものを用いることができる。続いて、ニッケルめっき膜の上に無電解金めっきを行う。無電解金めっきの方法は特に限定されないが、たとえば金イオンと下地金属のイオンとの置換により行う置換金めっきで行うことができる。
なお、めっき処理の前に、必要に応じて、露出した導体回路パターン24の導電部を洗浄する工程や、粗化する工程を行っても良い。
【0075】
次いで、本実施形態に係る回路基板20の製造方法では、ソルダーレジスト10を形成した表面を、プラズマ処理してもよい。以上の様にして図1の様な本実施形態に係る回路基板20が得られる。
【0076】
(電子装置の製造方法)
次に、電子装置の製造方法について、半導体パッケージ102の製造方法を一例に説明する。
本実施形態の電子装置(半導体パッケージ102)の製造方法は、導電回路(導体回路パターン24)が一面に形成された基板(基板22)を準備する工程と、上記樹脂膜を基板上に配置する工程と、樹脂膜に開口部を形成して、導電回路を露出させる工程と、樹脂膜を加熱硬化することによりソルダーレジスト10を形成する工程と、電子素子を、開口部に露出している導電回路と電気的に接続する工程と、電子素子(半導体素子60)を封止する工程と、を含むことができる。
【0077】
すなわち、本実施形態に係る半導体パッケージ102の製造方法は、回路基板20を準備する工程、半導体素子60を配設する工程、および封止する工程をこの順に含む。回路基板20を準備する工程では、表面にソルダーレジスト10(ソルダーレジスト)が露出した回路基板20を準備する。半導体素子60を配設する工程では、ソルダーレジスト10上に半導体素子60を配設する。封止する工程では、露出したソルダーレジスト10および半導体素子60を封止樹脂で覆うよう封止する。回路基板20は、基板22、導体回路パターン24、およびソルダーレジスト10を備える。導体回路パターン24は基板22の少なくともひとつの最外面に設けられている。ソルダーレジスト10は回路基板20の最外層であり、導体回路パターン24上に設けられている。ソルダーレジスト10には、複数の開口部28が設けられている。少なくとも1つの開口部28内には、導体回路パターン24の導電部の一部が位置している。
【0078】
まず、上述の回路基板20を準備し(回路基板を準備する工程)、回路基板20の上に、半導体素子60を配設する(半導体素子を配設する工程)。このとき半導体素子60は、たとえばダイアタッチ材62を介して回路基板20上に搭載する。半導体素子60と回路基板20を接続するボンディングワイヤ50は、たとえば回路基板20の上面の開口部28に露出した導体回路パターン24へボンディングする。次いで、回路基板20の上面、半導体素子60、およびボンディングワイヤ50を封止樹脂層40によって封止する(封止する工程)。封止樹脂としてはたとえばエポキシ樹脂組成物を用いることができる。封止樹脂でモールドする方法としては、トランスファー成形法、射出成形法、転写法、塗布法などを用いることができる。封止樹脂層40をたとえば150℃以上200℃以下で加熱することにより硬化させる。
【0079】
また、回路基板20に外部接続端子である半田ボール30が設けられる例においては、たとえば下面側の開口部28に露出した導体回路パターン24上に、半田ボール30を形成する。なお、本実施形態に係る半導体パッケージ102としてフリップチップ接続のパッケージの例について説明したが、半導体パッケージ102はこれに限定されず、ワイヤボンディングやTAB接続されるパッケージでもよい。
【0080】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 樹脂と、黒色顔料とを含むソルダーレジスト樹脂組成物であって、
下記条件1で測定される最大透過率T max が30%以下である、ソルダーレジスト樹脂組成物。
(条件1)
・キャリア基材上に、当該ソルダーレジスト樹脂組成物からなる硬化膜を形成して透過率を測定する。
・厚み15μmの前記硬化膜について、測定波長400nm以上1100nmにおける透過率の最大値を最大透過率T max とする。
2. 1.に記載のソルダーレジスト樹脂組成物であって、
下記条件2で測定されるピール強度が0.05kN/m以上0.50kN/m以下である、ソルダーレジスト樹脂組成物。
(条件2)
・キャリア基材上に、当該ソルダーレジスト樹脂組成物からなる樹脂層を形成する。次いで、当該樹脂層と、表面粗さRaが1μmとなるように粗化した銅箔とを、温度200℃で真空プレスすることで積層し、当該ソルダーレジスト樹脂組成物の硬化膜と、前記銅箔との積層体を形成する。
・前記積層体について、前記硬化膜と、前記銅箔とを剥離する時の応力をピール強度とする。
3. 1.または2.に記載のソルダーレジスト樹脂組成物であって、
前記ソルダーレジスト樹脂組成物中の前記黒色顔料の含有量が、前記ソルダーレジスト樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、2.0質量部以上10質量部以下である、ソルダーレジスト樹脂組成物。
4. 1.から3.のいずれか1つに記載のソルダーレジスト樹脂組成物であって、
前記黒色顔料は、黒色酸化チタンTi 2n-1 (nは正の整数)を含む、ソルダーレジスト樹脂組成物。
5. 1.から4.のいずれか1つに記載のソルダーレジスト樹脂組成物であって、
前記樹脂は熱硬化性樹脂であり、
前記熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂を含む、ソルダーレジスト樹脂組成物。
6. 5.に記載のソルダーレジスト樹脂組成物であって、
硬化剤を更に含み、
前記硬化剤は、フェノール樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂及び活性エステル樹脂からなる群より選択される1種以上である、ソルダーレジスト樹脂組成物。
7. 1.から6.のいずれか1つに記載のソルダーレジスト樹脂組成物であって、
当該ソルダーレジスト樹脂組成物はソルダーレジストを形成するために用いられ、
前記ソルダーレジストは光デバイス用ソルダーレジストである、ソルダーレジスト樹脂組成物。
8. キャリア基材と、
前記キャリア基材上に配置されていて、1.から7.のいずれか1つに記載のソルダーレジスト樹脂組成物からなる樹脂層と、を備える、樹脂シート。
9. 8.に記載の樹脂シートが、ロール状に巻回された、または、シート状に複数積層された梱包体。
10. 表面に回路が形成された基板と、
前記基板の表面上に形成されたソルダーレジストと、を備える回路基板であって、
前記ソルダーレジストが、1.から7.のいずれか1つに記載のソルダーレジスト樹脂組成物からなる樹脂層の硬化物である、回路基板。
11. 10.に記載の回路基板であって、
前記ソルダーレジストの厚みは1μm以上50μm以下である、回路基板。
【実施例
【0081】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
まず、各実施例、各比較例で用いた成分の詳細について以下に示す。
【0082】
(熱硬化性樹脂)
・熱硬化性樹脂1:ナフタレン変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、EXA-7320)
・熱硬化性樹脂2:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC-3000)
・熱硬化性樹脂3:グリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、jER630)
【0083】
(硬化剤)
・硬化剤1:シアネート樹脂(LONZA社製、Primaset PT-30)
・硬化剤2:ナフタレン型活性エステル樹脂(DIC社製、HPC-8150-60T)
【0084】
(充填材)
・充填材1:シリカ(アドマテックス社製、SC4050-KNR、平均粒径1μm、粒径5μm以上の粒子カット)
・充填材2:ナノシリカ(アドマテックス社製、YA050C-HHA、平均粒径50nm)
【0085】
(着色剤)
・黒色顔料1:黒色酸化チタン(Ti2n-1、nは2以上6以下の整数、赤穂化成社製、Tilack D、平均粒径0.3μm)
・黒色染料1:アントラキノン系化合物を含む染料(日本化薬社製、Kayaset Black A-N)
【0086】
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:下記一般式(2)で表されるオニウム塩化合物のリン系触媒(住友ベークライト社製、C05-MB)(テトラフェニルホスホニウムのビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート付加物)
・硬化促進剤2:2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製、2P4MHZ-PW)
【0087】
【化3】
【0088】
(カップリング剤)
・カップリング剤1:エポキシシラン型カップリング剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、A-187)
【0089】
(レベリング剤)
・レベリング剤1:レベリング剤(ビックケミー・ジャパン社製、BYK-361N)
【0090】
(溶剤)
・メチルイソブチルケトン(山一化学工業社製)
・シクロヘキサノン(山一化学工業社製)
【0091】
(実施例1~7、比較例1)
実施例1~7、比較例1のソルダーレジスト樹脂組成物を作製した。詳細について説明する。
まず、表1に記載した配合量の黒色顔料を、高速撹拌装置を用いて、メチルイソブチルケトンと、シクロヘキサノンとの混合溶剤(メチルイソブチルケトン:シクロヘキサノン=26:9)に、溶解させ、次いで、30分間超音波分散させることでスラリーとした。次いで、表1に記載した配合量の黒色顔料以外の成分を、高速撹拌装置を用いて、スラリーに溶解、分散させ、実施例1~7、比較例1のソルダーレジスト樹脂組成物のワニスを得た。
【0092】
(樹脂シートの作製)
各実施例及び比較例1のソルダーレジスト樹脂組成物をキャリア基材であるポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、温度120℃で2分間熱処理することで、厚さ15μmの樹脂層を形成した。これにより、キャリア基材と、キャリア基材の上に直接積層された樹脂層とを備える樹脂シートを作製した。
【0093】
<評価>
各実施例及び比較例1のソルダーレジスト樹脂組成物を用いた樹脂シートの樹脂層及びその硬化物について、以下の方法で評価を行った。
【0094】
(透過率)
各実施例及び比較例1のソルダーレジスト樹脂組成物を用いた硬化物について透過率を評価した。以下に詳細を説明する。
まず、各実施例及び比較例1に係る樹脂シートから樹脂層を剥離し、次いで、温度200℃で1時間熱処理することで、各実施例及び比較例1に係る硬化物を測定サンプルとして得た。次いで、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、V-670)を用いて、当該測定サンプルの透過率を測定した。なお、測定波長は400nm~1100nmとした。
測定波長400nm~1100nmにおける透過率の最大値を最大透過率Tmaxとした。また、全ての実施例、比較例で、透過率-測定波長でプロットする場合、測定波長400nm~600nmにおいて、透過率が大きくなる方向に凸形状を示した。凸形状のピークにおける透過率をピーク透過率Tとした。さらに、測定波長600nm~800nmにおける最大透過率と最小透過率との差をTd1とした。また、測定波長800nm~1100nmにおける最大透過率と最小透過率との差をTd2とした。
評価結果を下記表1に示す。なお、最大透過率の単位は%である。
【0095】
(ピール強度)
各実施例及び比較例1のソルダーレジストについて、銅箔を積層したときのピール強度を評価した。以下に詳細を説明する。
まず、各実施例及び比較例1のソルダーレジスト樹脂組成物をキャリア基材であるポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、ソルダーレジスト樹脂膜を得た。次いで、支持体上にソルダーレジスト樹脂膜をラミネートし、キャリア基材であるポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離する。その後、表面を粗化しない銅箔(三井金属社製、MT18SD-H-T3-B)をソルダーレジスト樹脂膜の上に積層し、温度120℃、圧力1.5MPaで真空プレスした。これにより、Bステージ状態に硬化した樹脂層と、銅箔とが積層した積層体を得た。次いで、該積層体を長さ100mm×幅25mmに切り出した。次いで、該積層体の片面の中央に、幅方向と平行な10±0.1mmの切り込みを形成した。次いで、積層体の切り込みから銅箔を剥がし、剥がした銅箔の先端をつまみ具で掴んだ。次いで、積層体を支持具で固定し、銅箔を積層体の面内方向に対して垂直方向に引く引張試験を行った。ここで、引張速度50mm/minとし、銅箔を20mm剥がすまで引張試験を行った。この引張試験の荷重の最低値をピール強度として評価した。評価結果をBステージ(銅箔粗化なし)のものとして下記表1に示す。なお、単位はkN/mである。
また、上記Bステージ(銅箔粗化なし)のピール強度の測定に用いた銅箔に対して、薬液処理(CZ処理)を施し、表面粗さRaが1μmとなるように粗化した面側の銅箔を樹脂層側として積層した以外は、上記Bステージ(銅箔粗化なし)と同様の方法でピール強度を評価した。評価結果をBステージ(銅箔表面粗化あり)のものとして下記表1に示す。なお、単位はkN/mである。
また、上記Bステージ(銅箔粗化なし)のピール強度の測定に用いた積層体を作製する際に、真空プレスを温度200℃で行った。これにより、Cステージに硬化した硬化物と、銅箔とが積層した積層体を得た以外は、上記Bステージ(銅箔粗化なし)と同様の方法でピール強度を評価した。評価結果をCステージ(銅箔表面粗化なし)のものとして下記表1に示す。なお、単位はkN/mである。
また、上記Cステージ(銅箔粗化なし)のピール強度の測定に用いた銅箔に対して、薬液処理(CZ処理)を施し、表面粗さRaが1μmとなるように粗化した銅箔を用いた以外は、上記Cステージ(銅箔粗化なし)と同様の方法でピール強度を評価した。評価結果をCステージ(銅箔表面粗化あり)のものとして下記表1に示す。なお、単位はkN/mである。
なお、粗化ありの実施例は、ソルダーレジスト成形時において、銅回路を形成する時に、薬液を使用してパターンを作製する態様を模したものである。
ピール強度の評価より、各実施例のソルダーレジスト樹脂組成物によって形成された樹脂膜、ソルダーレジストは、銅箔と十分な密着性を発現することが確認された。
【0096】
(ガラス転移温度Tg、貯蔵弾性率E')
各実施例及び比較例1のソルダーレジスト樹脂組成物を用いた樹脂シートの樹脂層の硬化物について、ガラス転移温度Tg、貯蔵弾性率E'を評価した。以下に詳細を説明する。
まず、各実施例及び比較例1に係る樹脂シートから樹脂層を剥離した。次いで、樹脂層を温度200℃で1時間熱処理して硬化させ、Cステージに硬化した硬化物とし、これを測定サンプルとした。次いで、動的粘弾性測定装置(TAインスツルメンツ社製、Thermomechanical Analyzer:DMA)を用いて、当該測定サンプルを測定した。測定条件としては、測定周波数1Hz、昇温速度5℃/minとし、常温から温度300℃まで測定を行った。tanδのピーク温度からガラス転移温度Tgを評価した。また、温度30℃、260℃における貯蔵弾性率E'、E'を評価した。評価結果を下記表1に示す。なお、ガラス転移温度の単位は℃である。また、貯蔵弾性率の単位はGPaである。
【0097】
(線膨張係数α1)
各実施例及び比較例1のソルダーレジスト樹脂組成物を用いた樹脂シートの樹脂層の硬化物について、線膨張係数α1を評価した。以下に詳細を説明する。
まず、各実施例及び比較例1に係る樹脂シートから樹脂層を剥離した。次いで、樹脂層を温度200℃で1時間熱処理して硬化させ、Cステージに硬化した硬化物とし、これを測定サンプルとした。次いで、熱機械分析装置(TAインスツルメンツ社製、Thermomechanical Analyzer:TMA)を用いて、当該測定サンプルを測定した。測定の昇温速度10℃/minとし、常温から温度300℃まで測定を行った。これにより、温度50℃~100℃における線膨張係数の平均値を、Tg未満の線膨張係数α1として評価した。評価結果を下記表1に示す。なお、単位はppm/℃である。
【0098】
【表1】
【0099】
表1に示すように、各実施例のソルダーレジスト樹脂組成物は硬化物としたときに高Tg、高剛性、低線膨張係数という物性を達成しつつ、比較例1のソルダーレジスト樹脂組成物の硬化物と比べて400nm以上1100nm以下といった波長における透過率を低減できることが確認された。これにより、各実施例のソルダーレジスト樹脂組成物は、ソルダーレジストとして光デバイスに用いた際、ソルダーレジストが薄くても光デバイスの誤作動を抑制できる。
【符号の説明】
【0100】
10 ソルダーレジスト
20 回路基板
22 基板
24 導体回路パターン
28 開口部
30 半田ボール
40 封止樹脂層
50 ボンディングワイヤ
60 半導体素子
62 ダイアタッチ材
102 半導体パッケージ
242 ライン
244 ランド
246 めっき膜
図1
図2