(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】車両を運転するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20240329BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240329BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20240329BHJP
【FI】
G01C21/26 A
G08G1/16 C
B60W40/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019176493
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】10 2018 216 795.8
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・パスマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ローデ
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08521352(US,B1)
【文献】特開2018-063524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/26
G08G 1/16
B60W 40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を運転する方法(300)において
、
前記車両の周辺を表す周辺データ値を検出するステップ(310)であって、前記周辺が少なくとも1つの周辺特徴を含
み、前記周辺特徴が、少なくとも、建物、トンネル、橋、交通信号システム、標識、ガードレール、レーンマーキング、山、湖、河川、森林のいずれか一つを含むステップと
、 少なくとも1つの周辺特徴とマップとの間の整合の整合値を決定するステップ(320)であって、前記マップが少なくとも1つのマップ特徴を含み、前記少なくとも1つの周辺特徴が少なくとも1つのマップ特徴に対応するステップと
、
前記少なくとも1つの周辺特徴とマップとの間の整合の整合値の妥当性チェックを決定するステップ(325)と、
前記少なくとも1つの周辺特徴とマップとの間の整合の整合値と閾値を比較するステップであって、前記閾値は、少なくとも、周辺の気象状況、周辺の交通状況、周辺のインフラストラクチャ状態、車両の周辺認識センサ状態のいずれか一つに応じて形成されるステップと、
前記整合値と
前記閾値との比較、及び、前記妥当性に基づいて前記マップの最新性を決定するステップ(330)と、
前記マップの前記最新性に応じて前記車両を運転するステップ(340)と
、
を含む、車両を運転する方法(300)。
【請求項2】
請求項
1に記載の方法(300)において
、前記閾値を外部サーバによって要求および受信する方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法(300)において、
前記車両の移動方向に応じて、および/または、前記車両の移動方向の変化に応じて前記妥当性チェックを決定する方法(300)。
【請求項4】
請求項1に記載の方法(300)において、
マップ特徴の位置に基づいて車両の位置を決定することによって、または警告信号を発することによって、車両の運転(340)を行う方法(300)。
【請求項5】
請求項1
~4までのいずれか
一項に記載の方法(300)の全てのステップを実施するように構成されている装置。
【請求項6】
コンピュータによってコンピュータプログラムを実行する場合に、請求項1
~4までのいずれか
一項に記載の方法(300)をコンピュータに実施させるコマンドを含むコンピュータプログラム。
【請求項7】
請求項
6に記載のコンピュータプログラムが記憶された機械可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を運転するための方法および装置に関し、周辺データ値を検出するステップであって、周辺は、少なくとも1つの周辺特徴を含むステップと、少なくとも1つの周辺特徴とマップとの間の整合の整合値を決定するステップと、マップの最新性を決定するステップと、マップの最新性に応じて車両を運転するステップとを含む。
【発明の概要】
【0002】
本発明による車両を運転する方法は、車両の周辺を表す周辺データ値を検出するステップであって、周辺が少なくとも1つの周辺特徴を含むステップと、少なくとも1つの周辺特徴とマップとの間の整合の整合値を決定するステップとを含み、マップは少なくとも1つのマップ特徴を含み、少なくとも1つの周辺特徴は、少なくとも1つのマップ特徴に対応する。この方法は、整合値と閾値との比較に基づいてマップの最新性を決定するステップと、マップの最新性に応じて車両を運転するステップとをさらに含む。
【0003】
車両は、手動で運転する車両(SAEレベル0にしたがって形成される)か、または自動運転車(SAEレベル1~5のうちの1つにしたがって形成される)である(規定SAE J3016を参照のこと)。
【0004】
車両の周辺とは、例えば、車両の周辺認識センサシステムによって検出することができる少なくとも1つの領域である。
【0005】
周辺は、道路区間および/またはより大きい領域(区域、地域など)であってもよい。周辺特徴は、例えば、建築物(建物、トンネル、橋など)および/または交通標識(信号システム、標識など)および/またはインフラストラクチャ設備(ガードレール、レーンマーキングなど)および/または景観特徴(山、湖、河川、森林など)である。
【0006】
例えば、マップとは、記憶媒体上の(マップ)データ値として提供されているデジタルマップである。一例として、マップは、1つまたは複数のマップレイヤが含まれるように構成されており、マップレイヤは、例えば、鳥瞰図としてのマップ(道路、建物、景観の特徴などの特性および位置)を示す。これは、例えば、ナビゲーションシステムのマップに対応する。別のマップレイヤは、例えば、レーダマップを含み、レーダマップによって示される周辺特徴は、レーダシグネチャと共に保存されている。別のマップレイヤは、例えば、ライダーマップを含み、ライダーマップによって示される周辺特徴は、ライダーシグネチャと共に保存されている。
【0007】
特に、マップは、車両、特に自動運転車のナビゲーションに適するように構成されている。このために、個々のマップレイヤは、例えば、GPS位置を有する周辺特徴を含み、この位置は高精度により既知である。高精度の位置とは、所与の座標系、例えばGNSS座標内で、この位置が最大限に許容される不正確さを超えない正確な位置である。この場合、最大限の不正確さは、例えば、周辺、もしくは周辺特性の数および/または構成に依存する。さらに、最大限の不正確さは、例えば、自動運転車のSAEレベルに依存する場合もある。基本的には、最大限の不正確さは極めて小さく、特に自動運転車の安全な運転が保証されている。自動運転車の完全自動運転(SAEレベル5)の場合、最大限の不正確さは、例えば約10センチメートル程度である。
【0008】
マップの最新性とは、マップの少なくとも1つの部分的な領域またはマップレイヤの少なくとも1つの部分的な領域と車両の周辺の少なくとも1つの部分的な領域とが一致することである。整合値と閾値との比較に基づくこの一致が最小の一致条件を満たす場合には、マップは最新であるとみなされる。マップを更新することによって周辺の変化を検出しない場合にはマップは古くなる。この場合、マップは最新ではないと考えられ、マップベースのアプリケーションのセキュリティが損なわれる。例えば、マップの最新性は、周辺認識センサシステムに含まれるレーダセンサによって周辺のレーダデータ値を検出し、これらのレーダデータ値をマップのマップレイヤとして含まれるレーダマップと比較することによって判定される。具体的には、例えば、(例えば、対応する色勾配および/または形状および/またはパターンおよび/またはグレースケール等を有する)画像記録の形式のレーダデータ値を適切なコンピュータプログラムによってレーダマップの画像記録と重ね合わせ、続いて相違もしくは一致を決定することによって判定を行う。この場合、一致は、係数、例えば0.95として、最小の一致、例えば0.9と比較される。しがたって、この例ではマップは最新である。
【0009】
本発明による方法は、マップデータの信頼性および最新性をチェックし、マップデータに応じて、車両の信頼性のある、または安全な運転が保証されているかどうかを判定するという課題を有利に解決する。特に自動運転ではマップの重要性が増しており、自動運転が受け入れられるためには、乗員および車両の安全が確保されていることが極めて重要である。とりわけ、正確で常に最新のマップが重要な役割を果たしている。本発明による方法は、特許請求の範囲に記載された特徴によってこの課題を解決する。
【0010】
好ましくは、整合値の妥当性チェックを決定するステップが設けられており、マップの最新性の決定は、妥当性に応じて付加的に行われる。
【0011】
これは、特に、例えば、マップが最新ではないという結果につながる誤った整合を回避することによって方法の信頼性を有利に高める。このことは、例えば、周辺認識センサシステムの制約によって極端な整合値が決定される場合には特に重要である。
【0012】
好ましくは、閾値は整合値に応じて、および/または妥当性チェックに応じて、外部サーバによって要求され、受信される。
【0013】
まさに計算コストおよびリソースコストのかかる方法が車両の計算能力によってはほとんど対処できない場合に利点をもたらす。サーバもしくはクラウド(サーバーネットワークなど)では、これは問題ではない。さらに、例えば、車両の安全で信頼性のある運転を保証するために、例えば、環境、例えば、時刻および/または季節などに関して、的確で、方法の範囲で正しい閾値を決定するために必要および/または有用なさらなる情報に、サーバもしくはクラウドが容易にアクセスできることは利点である。まさに時刻および/または季節は、車両の周辺認識センサに影響を及ぼす極めて多様な照明条件に基づいて、整合値にも大きい影響を及ぼす。
【0014】
好ましくは、妥当性は、車両の移動方向に応じて、および/または車両の移動方向の変化に応じて決定される。
【0015】
例えば、周辺データ値を検出する場合に車両が一般的ではない移動方向に沿って移動した場合、および/または車両が一般的ではない動作変更を行った場合、および/またはセンサデータとマップとの間で決定された変換が不正確であると決定された場合には、整合値は高すぎるか、または低すぎる。反対に、周辺データ値を用いて、同時に車両に含まれる別の装置を用いて、例えば、以前の移動方向および/またはモデルによる仮定から著しく逸脱しており、検出された周辺データ値全体が許容できない動作変更および/または不正確な変換を検出することができる。
【0016】
これは、誤った整合値、もしくは誤った整合値に基づいて最新性を誤って決定することを回避することによって、方法の信頼性が増大するという利点を有する。
【0017】
一実施形態では、特に、検出された周辺データ値は、検出された周辺データ値が、この方法の範囲で使用可能であるか否かをチェックすることによって、妥当性についてチェックされる。
【0018】
好ましくは、閾値は、周辺の気象状況に応じて、および/または周辺の交通状況に応じて、および/または周辺のインフラストラクチャ状態に応じて、および/または車両の周辺認識センサの状態に応じて形成される。
【0019】
車両側で決定された閾値はクラウドシステムに送信され、そこで処理されて、車両フリート全体から統計が生成される。この統計は、有利なシステム実施形態において、個々の車両システムに提供される。車両側では、続いて適切な閾値の決定が行われる。
【0020】
周辺認識センサシステムは、少なくとも1つのビデオセンサおよび/または少なくとも1つのレーダセンサおよび/または少なくとも1つのライダセンサおよび/または少なくとも1つの超音波センサおよび/または少なくとも1つの別のセンサであり、周辺データ値として車両の周辺を検出するように構成されている。
【0021】
例えば、気象状況には、周辺認識センサの性能に悪影響を及ぼす状況(視界不良等)がある。例えば、交通状況は、周辺認識センサシステムの動作を制限し、周辺データ値の確実な検出が保証されていない車両の周辺の車両交通である。インフラストラクチャ状態とは、例えば、建設現場が存在していること、および/または交通標識が配置されていること、および/またはガードレールが壊れていることなどである。周辺認識センサの状態とは、例えば、周辺認識センサが完全に機能しているか、または制限されているか、または全く機能していないかである。
【0022】
これは、閾値が静的変数ではなく、むしろ状況に応じて、および/または実際の車両の周辺環境に応じて決定され、必要に応じて適合される動的変数であるという利点をもたらす。このことは、方法の信頼性および車両を運転する場合の安全性を高める。閾値を控えめに選択した場合には多くの正しい情報が廃棄され、マップに基づいたのシステムの性能が低下する。この方法の別の利点は、システム性能への影響が少ないことである。
【0023】
好ましくは、車両の運転は、マップ特徴の位置に基づいて車両の位置を決定することによって、または警告信号を発することによって行われる。
【0024】
車両が自動運転車として構成されている場合には、車両の運転は、例えば、車両の制御機能が位置の関数として実行されることを意味する。これは、例えば、車両が部分的に、高度に、または完全に自動運転されることを意味する。この場合、運転は、例えば、自動的な横方向および/または縦方向制御によって車両の経路を決定すること、および/または経路を進むこと、および/または安全関連の運転機能を実行することなどを含む。さらに、警告信号の発信は、例えば、車両の構成に応じて、警告信号が、視覚的および/または音響的および/または触覚的に車両の乗員(例えば、運転者)に表示され、および/または、運転者支援システムに送信され、例えば車両の自動停止がもたらされることなどを理解されたい。
【0025】
したがって、有利には、マップ(または少なくとも対応するマップ部分)が古くなった場合にはアクセスされないことが保証されている。これにより、車両運転時の安全性が向上する。
【0026】
本発明による装置、特に制御器は、方法のいずれか1つの請求項の記載の全てのステップを実施するように構成されている。
【0027】
装置は、計算ユニット(プロセッサ、メモリ、ハードディスク)と、いずれか1つの請求項に記載の方法を実施するための適切なソフトウェアとを備える。一実施形態では、装置は、特に外部サーバまたはクラウドとデータ値を交換するように構成された送信および/または受信ユニットを備える。別の実施形態では、装置は、車両に含まれる送信および/または受信ユニットによって、特に外部サーバまたはクラウドとデータ値を交換するように構成されたデータインターフェースを含む。装置は、車両の周辺センサシステムから周辺データ値を検出するように構成されたインタフェースをさらに含む。周辺データ値の検出は、例えば、周辺データ値が周辺認識センサシステムによって検出され、周辺認識センサシステムのインタフェースを介して受信されることと理解される。さらに、装置は、例えば、マップを表すマップデータ値を装置とナビゲーション装置との間で交換することができるようにナビゲーション装置に接続されたインタフェースを含む。一実施形態では、マップは、例えばハードディスクに記憶されることによって装置に含まれる。装置は、周囲認識センサシステムの状態を受信することができるインタフェースをさらに含み、この状態は、例えば、整合値の妥当性をチェックするために使用される。
【0028】
さらに、コンピュータによってコンピュータプログラムを実行する場合に、コンピュータプログラムに、いずれか1つの方法請求項に記載の方法をコンピュータに実施させるコマンドを含む、コンピュータプログラムが請求される。
【0029】
さらに、コンピュータプログラムが記憶された機械可読記憶媒体が請求される。
【0030】
本発明の有利な構成が従属請求項に記載され、明細書に列挙されている。
【0031】
本発明の実施形態を図面に示し、以下の説明においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明による方法の実施形態を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、車両を運転するための方法300の例示的な実施形態を示す。
【0034】
ステップ301において、方法300が開始する。
【0035】
ステップ310において、車両の周辺を表す周辺データ値が検出され、周辺は少なくとも1つの周辺特徴を含む。
【0036】
ステップ320において、少なくとも1つの周辺特徴とマップとの間の整合の整合値が決定され、マップは少なくとも1つのマップ特徴を含み、少なくとも1つの周辺特徴は少なくとも1つのマップ特徴に対応する。
【0037】
方法300の第1の実施形態A1では、ステップ330が続く。第2の実施形態A2では、ステップ325が続く。
【0038】
ステップ325において、整合値の妥当性が決定される。
【0039】
ステップ330では、整合値と閾値との比較に基づいて、マップの最新性が判定される。一実施形態では、閾値は外部サーバによって要求され、受信される。
【0040】
ステップ340において、車両は、マップの最新性に応じて運転される。
【0041】
ステップ350において、方法300は終了する。