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特許7462399ポリフェニレンエーテル含有プリント配線板
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  • 特許-ポリフェニレンエーテル含有プリント配線板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】ポリフェニレンエーテル含有プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20240329BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20240329BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240329BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20240329BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240329BHJP
   C08K 3/016 20180101ALI20240329BHJP
   C08G 65/48 20060101ALI20240329BHJP
   C08G 59/00 20060101ALI20240329BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240329BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240329BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240329BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20240329BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
H05K3/46 T
C08L71/12
C08L63/00 A
C08L53/02
C08K3/36
C08K3/016
C08G65/48
C08G59/00
H05K1/03 610H
B32B15/08 105A
B32B27/18 B
B32B27/26
B32B27/00 103
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019204167
(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公開番号】P2021077786
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中村 祥宇
(72)【発明者】
【氏名】長田 一人
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-172725(JP,A)
【文献】国際公開第2015/076288(WO,A1)
【文献】特開2014-067976(JP,A)
【文献】特開2015-044934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
C08L 71/12
C08L 63/00
C08L 53/02
C08K 3/36
C08K 3/016
C08G 65/48
C08G 59/00
H05K 1/03
B32B 15/08
B32B 27/18
B32B 27/26
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基により末端変性されたポリフェニレンエーテルと、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に有する架橋型硬化剤と、エポキシ樹脂と、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)とを含むプリント配線板用基板であって、該プリント配線板用基板を温度25℃で濃度12%の次亜塩素酸ナトリウムに15分間浸漬した際の樹脂減少量が、1.0%以上2.0%以下であり、
前記プリント配線板用基板が、樹脂組成物を含み、
該樹脂組成物が、前記ポリフェニレンエーテル、架橋剤、及び有機過酸化物を含み、
前記ポリフェニレンエーテルが、下記式(1):
【化1】
{式中、
Xは、a価の任意の連結基であり、aは2.5以上の数であり、
5 は、各々独立に任意の置換基であり、kは各々独立に1~4の整数であり、そしてk個あるR 5 のうちの少なくとも1つは、下記式(2):
【化2】
(式中、R 11 は、各々独立にC 1-8 のアルキル基であり、R 12 は、各々独立にC 1-8 のアルキレン基であり、bは各々独立に0又は1であり、R 13 は、水素原子、C 1-8 のアルキル基又はフェニル基のいずれかを示し、かつ前記アルキル基、アルキレン基、及びフェニル基は、C 1-8 の条件を満たす限度で置換基を含んでもよい)
で表される部分構造を含み、
Yは、各々独立に下記式(3):
【化3】
(式中、R 21 は、各々独立にC 1-6 の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、R 22 は、各々独立に水素原子又はC 1-6 の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、かつ前記飽和又は不飽和の炭化水素基はC 1-6 の条件を満たす限度で置換基を有していてもよい)
で表される構造を有する2価の連結基であり、nはYの繰り返し数を表し、各々独立に1~200の整数であり、
Lは、任意の2価の連結基又は単結合であり、かつ
Aは、各々独立に、炭素-炭素二重結合、及び/又はエポキシ結合を含有する置換基を示す}
で表される構造を含むポリフェニレンエーテル成分Aと、
主鎖末端に下記式(4A):
【化4】
{式中、nは0又は1の整数であり、R は、C 1-8 の飽和アルキル基又は不飽和アルキル基であり、そしてR は水素原子又はC 1-8 の飽和アルキル基若しくは不飽和アルキル基である}
で表される官能基を1分子中に平均1.5~2.5個有し、かつ、数平均分子量が1,000以上4,500以下であるポリフェニレンエーテル成分Bとを含み、
前記ポリフェニレンエーテルの総量100質量%を基準として、前記ポリフェニレンエーテル成分Aの含有量が2質量%以上40質量%未満であり、かつ前記ポリフェニレンエーテル成分Bの含有量が60質量%超え98質量%未満である、プリント配線板用基板。
【請求項2】
難燃剤と、シリカとをさらに含む、請求項1に記載のプリント配線板用基板。
【請求項3】
前記末端変性されたポリフェニレンエーテルが、2.5官能以上のアクリレート変性されたポリフェニレンエーテルである、請求項1又は2に記載のプリント配線板用基板。
【請求項4】
前記架橋剤が、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ポリブタジエン、及びエポキシ樹脂から成る群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のプリント配線板用基板。
【請求項5】
前記架橋剤が、炭素-炭素不飽和二重結合を1分子中に平均2個以上有し、
前記架橋剤の数平均分子量が4,000以下であり、かつ前記ポリフェニレンエーテル:前記架橋剤の質量比が、25:75~95:5である、請求項1~のいずれか1項に記載のプリント配線板用基板。
【請求項6】
前記有機過酸化物の1分間半減期温度が155℃以上185℃以下であり、
前記ポリフェニレンエーテルと前記架橋剤の合計質量100質量%を基準とし、前記有機過酸化物の含有量が、0.05質量%以上0.9質量%以下である、請求項のいずれか1項に記載のプリント配線板用基板。
【請求項7】
前記樹脂組成物が、熱可塑性樹脂を更に含み、
前記熱可塑性樹脂が、ビニル芳香族化合物とオレフィン系アルケン化合物とのブロック共重合体、及びその水素添加物、並びにビニル芳香族化合物の単独重合体から成る群より選択される少なくとも1種であり、
前記ブロック共重合体又はその水素添加物における、ビニル芳香族化合物に由来する単位の含有率が20質量%以上である、請求項のいずれか1項に記載のプリント配線板用基板。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量が、30,000~300,000である、請求項に記載のプリント配線板用基板。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂の含有量が、
前記ポリフェニレンエーテル及び前記架橋剤の合計100質量%を基準とし、2質量%以上20質量%以下である、請求項又はに記載のプリント配線板用基板。
【請求項10】
前記樹脂組成物が、難燃剤を更に含み、かつ該難燃剤が、前記樹脂組成物の硬化後に前記樹脂組成物中で他の含有成分と相溶しない、請求項のいずれか1項に記載のプリント配線板用基板。
【請求項11】
前記樹脂組成物で形成された電子回路基板材料を含む、請求項~1のいずれか1項に記載のプリント配線板用基板。
【請求項12】
前記樹脂組成物で形成された樹脂フィルムを含む、請求項~1のいずれか1項に記載のプリント配線板用基板。
【請求項13】
前記樹脂フィルムが、硬化している、請求項1に記載のプリント配線板用基板。
【請求項14】
基材と前記樹脂組成物との複合体であるプリプレグを含む、請求項~1のいずれか1項に記載のプリント配線板用基板。
【請求項15】
前記基材がガラスクロスである、請求項1に記載のプリント配線板用基板。
【請求項16】
前記プリプレグが、硬化している、請求項1又は1に記載のプリント配線板用基板。
【請求項17】
請求項1又は1に記載のプリント配線板用基板と金属箔との積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェニレンエーテル含有プリント配線板用基板、及びそれを含むプリント配線板等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報ネットワーク技術の著しい進歩又は情報ネットワークを活用したサービスの拡大に伴い、電子機器には情報量の大容量化、及び処理速度の高速化が求められている。これらの要求に応えるため、プリント配線板等の基板用材料には、従来から求められていた難燃性、耐熱性、銅箔とのピール強度等の特性に加え、低誘電率化・低誘電正接化が求められている。このため、プリント配線板等の基板用材料に用いられる樹脂組成物において、比較的低い誘電率及び比較的低い誘電正接を有するポリフェニレンエーテル(PPE)が使用されている。
【0003】
プリント配線板が多層型である場合には、その製造において、層間接続のためにスルーホール又はブラインドビア等の穴が、ドリル又はレーザ加工により開けられる。穴の内部に残留した樹脂(スミア)を除去するために、過マンガン酸カリウム等のデスミア液を用いて、スミアを除去するデスミア処理が行われることがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6215711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の樹脂組成物は、既知のPPEとスチレン-ブタジエンブロック共重合体を含み、プリント配線板用基板に使用されるが、デスミア処理物性について、例えば、デスミア液への溶解性、表面粗さ、ピール強度、ビア底部のスミア除去性などの全てについて要求に応えるという観点では、改良の余地があった。
【0006】
したがって、本発明は、デスミア処理物性を改良し得るプリント配線板用基板、及びそれを用いて形成される電子回路基板又は金属張積層板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ポリフェニレンエーテルを含むプリント配線板用基板について、デスミア液とは異なる液体に浸漬されたときの樹脂減少量を特定することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1) 炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基により末端変性されたポリフェニレンエーテルと、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に有する架橋型硬化剤と、エポキシ樹脂と、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)とを含むプリント配線板用基板であって、該プリント配線板用基板を温度25℃で濃度12%の次亜塩素酸ナトリウムに15分間浸漬した際の樹脂減少量が、1.0%以上2.0%以下であ
り、
前記プリント配線板用基板が、樹脂組成物を含み、
該樹脂組成物が、前記ポリフェニレンエーテル、架橋剤、及び有機過酸化物を含み、
前記ポリフェニレンエーテルが、下記式(1):
【化1】
{式中、
Xは、a価の任意の連結基であり、aは2.5以上の数であり、
5 は、各々独立に任意の置換基であり、kは各々独立に1~4の整数であり、そしてk個あるR 5 のうちの少なくとも1つは、下記式(2):
【化2】
(式中、R 11 は、各々独立にC 1-8 のアルキル基であり、R 12 は、各々独立にC 1-8 のアルキレン基であり、bは各々独立に0又は1であり、R 13 は、水素原子、C 1-8 のアルキル基又はフェニル基のいずれかを示し、かつ前記アルキル基、アルキレン基、及びフェニル基は、C 1-8 の条件を満たす限度で置換基を含んでもよい)
で表される部分構造を含み、
Yは、各々独立に下記式(3):
【化3】
(式中、R 21 は、各々独立にC 1-6 の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、R 22 は、各々独立に水素原子又はC 1-6 の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、かつ前記飽和又は不飽和の炭化水素基はC 1-6 の条件を満たす限度で置換基を有していてもよい)
で表される構造を有する2価の連結基であり、nはYの繰り返し数を表し、各々独立に1~200の整数であり、
Lは、任意の2価の連結基又は単結合であり、かつ
Aは、各々独立に、炭素-炭素二重結合、及び/又はエポキシ結合を含有する置換基を示す}
で表される構造を含むポリフェニレンエーテル成分Aと、
主鎖末端に下記式(4A):
【化4】
{式中、nは0又は1の整数であり、R は、C 1-8 の飽和アルキル基又は不飽和アルキル基であり、そしてR は水素原子又はC 1-8 の飽和アルキル基若しくは不飽和アルキル基である}
で表される官能基を1分子中に平均1.5~2.5個有し、かつ、数平均分子量が1,000以上4,500以下であるポリフェニレンエーテル成分Bとを含み、
前記ポリフェニレンエーテルの総量100質量%を基準として、前記ポリフェニレンエーテル成分Aの含有量が2質量%以上40質量%未満であり、かつ前記ポリフェニレンエーテル成分Bの含有量が60質量%超え98質量%未満である、プリント配線板用基板。
(2) 燃剤と、シリカとをさらに含む、項目1に記載のプリント配線板用基板。
(3) 前記末端変性されたポリフェニレンエーテルが、2.5官能以上のアクリレート変性されたポリフェニレンエーテルである、項目1又は2に記載のプリント配線板用基板。
) 前記架橋剤が、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ポリブタジエン、及びエポキシ樹脂から成る群より選択される少なくとも1種を含む、項目1~3のいずれか1項に記載のプリント配線板用基板。
) 前記架橋剤が、炭素-炭素不飽和二重結合を1分子中に平均2個以上有し、
前記架橋剤の数平均分子量が4,000以下であり、かつ前記ポリフェニレンエーテル:前記架橋剤の質量比が、25:75~95:5である、項目1~のいずれか1項に記載のプリント配線板用基板。
) 前記有機過酸化物の1分間半減期温度が155℃以上185℃以下であり、
前記ポリフェニレンエーテルと前記架橋剤の合計質量100質量%を基準とし、前記有機過酸化物の含有量が、0.05質量%以上0.9質量%以下である、項目のいずれか1項に記載のプリント配線板用基板。
) 前記樹脂組成物が、熱可塑性樹脂を更に含み、
前記熱可塑性樹脂が、ビニル芳香族化合物とオレフィン系アルケン化合物とのブロック共重合体、及びその水素添加物、並びにビニル芳香族化合物の単独重合体から成る群より選択される少なくとも1種であり、
前記ブロック共重合体又はその水素添加物における、ビニル芳香族化合物に由来する単位の含有率が20質量%以上である、項目のいずれか1項に記載のプリント配線板用基板。
) 前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量が、30,000~300,000である、項目に記載のプリント配線板用基板。
) 前記熱可塑性樹脂の含有量が、前記ポリフェニレンエーテル及び前記架橋剤の合計100質量%を基準とし、2質量%以上20質量%以下である、項目又はに記載のプリント配線板用基板。
(1) 前記樹脂組成物が、難燃剤を更に含み、かつ該難燃剤が、前記樹脂組成物の硬化後に前記樹脂組成物中で他の含有成分と相溶しない、項目のいずれか1項に記載のプリント配線板用基板。
(1) 前記樹脂組成物で形成された電子回路基板材料を含む、項目~1のいずれか1項に記載のプリント配線板用基板。
(1) 前記樹脂組成物で形成された樹脂フィルムを含む、項目~1のいずれか1項に記載のプリント配線板用基板。
(1) 前記樹脂フィルムが、硬化している、項目1に記載のプリント配線板用基板。
(1) 基材と前記樹脂組成物との複合体であるプリプレグを含む、項目~1のいずれか1項に記載のプリント配線板用基板。
(1) 前記基材がガラスクロスである、項目1に記載のプリント配線板用基板。
(1) 前記プリプレグが、硬化している、項目1又は1に記載のプリント配線板用基板。
(1) 項目1又は1に記載のプリント配線板用基板と金属箔との積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プリント配線板用基板について、デスミア液への溶解性、及びビア底部のスミア除去性などのデスミア処理物性を改良することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】製造例1で得られた変性ポリフェニレンエーテル1(変性PPE1)の1H-NMR測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について説明する。以下の実施形態は、本発明の一態様であるため、本発明は以下の実施形態のみに限定されない。従って、以下の実施形態は、本発明の要旨の範囲内で適宜変形して実施可能である。また、本明細書での「~」とは、特に断りがない場合、その両端の数値を上限値、及び下限値として含む意味である。本明細書において、数値範囲の上限値、及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0011】
[プリント配線板用基板]
本実施形態に係るプリント配線板用基板は、ポリフェニレンエーテル(PPE)を含み、かつプリント配線板に用いられる。一般に、プリント配線板とは、絶縁体から成る板の表面又は内部に導体配線パターンをプリント(印刷)することにより得られる基板をいい、コンデンサ等の電気部品を形成する前の状態を指す。本実施形態に係るプリント配線板用基板は、その少なくとも一部分に、PPE含有樹脂組成物又はその硬化物、絶縁体、導体又はその配線パターン、スルーホール又はブラインドビア等を有してよい。
【0012】
本実施形態に係るプリント配線板用基板を温度25℃で濃度12%の次亜塩素酸ナトリウムに15分間浸漬した際の樹脂減少量が、1.0%以上である。本技術分野では、通常、デスミア液は過マンガン酸カリウム等である。12%の次亜塩素酸ナトリウムは、プリント配線板用基板のデスミア処理時に使用されるデスミア液とは異なる液体であり、特に12%の次亜塩素酸ナトリウムは、デスミア液よりもスミア除去を加速し得る液体(以下、「加速液」ともいう)として見なすことができる。本発明によれば、デスミア液への溶解性とビア底スミア残り性を改良し得るプリント配線板用基板の構成が、デスミア液とは異なる加速液に浸漬された際の1.0%以上の樹脂減少量として見出された。
【0013】
プリント配線板用基板を温度25℃で濃度12%の次亜塩素酸ナトリウムに15分間浸漬すること、及びそれにより測定されるプリント配線板用基板の樹脂減少量は、実施例において詳細に説明される。次亜塩素酸ナトリウム(HClONa)は、次亜塩素酸のナトリウム塩であり、水により希釈されてアルカリ性を示し、例えば温度25℃で濃度12%の水溶液を形成することができる。
【0014】
上記で説明されたプリント配線板用基板の加速液に浸漬された際の樹脂減少量は、デスミア処理物性を向上させるという観点から、1.1%以上であることが好ましく、1.2%以上であることがより好ましい。樹脂減少量の上限値は、ピール強度または表面粗さの観点から、例えば、2.0%以下、又は1.6%以下であることができる。
【0015】
1.0%以上の樹脂減少量は、デスミア処理条件に応じて、例えば、PPEの構造、PPE以外の含有成分の種類又は配合比等を制御することにより調整されることができる。
【0016】
PPEは、1.0%以上の樹脂減少量の観点から、好ましくは炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基を有し、より好ましくは炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基により末端変性されており、さらに好ましくは2.5官能以上になるようにアクリレート末端変性されており、特に好ましくは3官能又は3官能以上になるようにアクリレート末端変性されている。炭素-炭素不飽和結合を有する置換基により末端変性されたPPEは、末端に水酸基を有するPPE(例えば、PPE製品名「SA90」、燃料電池用フェントン試薬など)に比べて、加速液に浸漬されたプリント配線板用基板の樹脂減少量を1.0%以上に制御し易い傾向にある。炭素-炭素不飽和結合を有する置換基により末端変性されたPPEの具体例は、製品名「SA9000」などである。2.5官能以上のアクリレート末端変性されたポリフェニレンエーテルの具体例は、後述されるポリフェニレンエーテル成分A(PPE-A)のうち(メタ)アクリレート末端基を有するものである。
【0017】
プリント配線板用基板は、1.0%以上の樹脂減少量の観点から、PPEに加えて、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に有する架橋型硬化剤と、エポキシ樹脂と、水添スチレン系熱可塑性樹脂(SEBS)と、難燃剤と、シリカとを含むことが好ましい。炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に有する架橋型硬化剤は、架橋剤の一種として後述される。エポキシ樹脂、SEBS、難燃剤及びシリカは、プリント配線板用基板を構成する樹脂組成物の追加成分として後述される。
【0018】
[樹脂組成物]
本実施形態に係るプリント配線板用基板は、PPE含有樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」ともいう)を含むか、又は樹脂組成物から調製されることが好ましい。樹脂組成物は、PPE、架橋剤、及び有機過酸化物を含み、そしてPPEは、特有の構造を有するポリフェニレンエーテル成分A(PPE-A)と、別の特有の構造を有すると共に数平均分子量(Mn)が1,000以上4,500以下のポリフェニレンエーテル成分B(PPE-B)とを含み、かつ、PPEの総量100質量%を基準として、PPE-Aの含有量が2質量%以上40質量%未満であり、かつPPE-Bの含有量が60質量%超え98質量%未満であることが好ましい。このようなPPE含有樹脂組成物によれば、プリント配線板用基板の樹脂減少量の調整(≧1.0%)、電気特性の向上、耐熱性の向上、及び靭性の向上のいずれも実現可能な硬化物を得ることができ、かつ基材への含浸性に優れることができる。
【0019】
なお、PPEの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定を行い、同条件で測定した標準ポリスチレン試料の分子量と溶出時間との関係式から、標準ポリスチレン換算で求められる。例えば、PPE-A、及びPPE-Bの各々について、数平均分子量の具体的な算出方法は、実施例に記載の方法を参照できる。
【0020】
樹脂組成物は、(a)PPE、(b)架橋剤、及び(c)有機過酸化物に加えて、所望により、(d)熱可塑性樹脂、(e)難燃剤、(f)シリカフィラー、及び(g)溶剤等を更に含むことができる。以下、樹脂組成物を構成可能な要素について説明する。
【0021】
[(a)PPE]
PPEは、フェニレンエーテル単位を繰り返し構造単位として含む。フェニレンエーテル単位中のフェニレン基は、置換基を有してもよく有していなくてもよい。本明細書において、用語「ポリフェニレンエーテル」は、ダイマー、トリマー、オリゴマー、及びポリマーを含む。PPEは、フェニレンエーテル単位以外のその他の構成単位も含んでもよい。その他の構造単位の量は、全単位構造の数に対して、典型的には、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下又は5%以下である。ただ、本発明の作用効果を阻害しない範囲内であれば、その他の構造単位の量は、全単位構造の数に対して、30%を超えてもよい。
【0022】
PPEは、好ましくは、下記式(3):
【化5】
{式中、R21、及びR22は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子)、置換基を有してもよいアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、及びtert-ブチル基等のC1-6の、直鎖状又は分岐状のアルキル基;シクロヘキシル基等のC6-10の環状アルキル基)、置換基を有してもよいアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、及びブトキシ基等のC1-6のアルコキシ基)、置換基を有してもよいアリール基(例えば、フェニル基、及びナフチル基)、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいニトロ基又は置換基を有してもよいカルボキシル基を表す。}で表される、繰り返し構造単位を含む。
【0023】
より具体的に、R21は、各々独立にC1-6の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、R22は、各々独立に水素原子又はC1-6の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、かつその飽和又は不飽和の炭化水素基はC1-6の条件を満たす限度で置換基を含んでいてもよい。
【0024】
PPEの具体例としては、例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル)、2,6-ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6-トリメチルフェノール、2-メチル-6-ブチルフェノール等)との共重合体、及び、2,6-ジメチルフェノールとビフェノール類又はビスフェノール類とをカップリングさせて得られるPPE共重合体、及びポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)等をビスフェノール類やトリスフェノール類のようなフェノール化合物と有機過酸化物の存在下でトルエン溶媒中で加熱し、再分配反応させて得られる、直鎖構造もしくは分岐構造を有するPPEである。
【0025】
[PPE-A]
PPE-Aは、下記式(1):
【化6】
で表される構造を含む。
【0026】
式(1)中、Xはa価の任意の連結基であり、aは、2.5以上の数であり、好ましくは3以上の整数、より好ましくは3~6の整数である。Xの具体例としては、例えば、炭化水素基;窒素、リン、ケイ素若しくは酸素から選ばれる、一つ又は複数の元素を含有する炭化水素基;又は窒素、リン、ケイ素等の元素若しくはこれらを含む基等が挙げられる。
【0027】
また、R5は、任意の置換基であり、kは1~4の整数であり、kが2以上である場合には、2個のR5が連結して環を形成していてよく、k個あるR5のうちの少なくとも1つは、下記式(2):
【化7】
で表される部分構造を含む。
【0028】
式(2)中、R11は、各々独立に、C1-8アルキル基であり、R12は、各々独立にC1-8アルキレン基であり、bは独立に0又は1であり、R13は、水素原子、C1-8アルキル基又はフェニル基のいずれかを示し、これらのアルキル基、アルキレン基、及びフェニル基は、C1-8の条件を満たす限度で置換基を含んでいてもよい。
【0029】
式(2)で表される部分構造は、好ましくは、2級、及び/又は3級炭素を有し、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、tert-アミル基、2,2-ジメチルプロピル基又はこれらの末端にフェニル基を有する構造等を有することができる。式(2)で表される部分構造は、式(1)中のR5が結合しているベンゼン環に直接結合していることが好ましい。また、式(2)で表される部分構造は、式(1)中のR5が結合しているベンゼン環の2位、及び/又は6位(-O-に対してオルト位)に結合していることが好ましい。
【0030】
式(1)で表される構造のうちの下記:
【化8】
の部分は、以下のいずれかの構造:
【化9】
であることが好ましく、それらの具体例としては、以下の化合物から、末端のフェノール性水酸基の水素を全て取り除いたものが挙げられる:
4,6-ジtert-ブチルベンゼン1,2,3-トリオール、2,6-ビス(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレン、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、1,3,5-トリス[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[[4-(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン。
【0031】
式(1)におけるYは、各々独立に、下記式(3):
【化10】
で表される構造を含む2価の連結基(置換基を有するフェノール単位)であり、そして式(1)におけるnは、Yの繰り返し数を表し、各々独立に、0~200の整数である。
【0032】
式(3)において、R21は、独立にC1-6の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、好ましくはメチル、エチル基、n-プロピル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、プロパルギル基等であり、より好ましくはメチル基、エチル基であり、更に好ましくはメチル基である。R22は、独立に水素原子又はC1-6の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基等であり、より好ましくは水素原子、メチル基であり、更に好ましくは水素原子である。ここで、飽和又は不飽和の炭化水素基はC1-6の条件を満たす限度で置換基を有していてもよい。
【0033】
式(1)におけるAは、炭素-炭素二重結合、及び/又はエポキシ結合を含有する置換基である。Aの具体例は、記式(4)~(8):
【化11】
表される。
【0034】
式(4)~(8)において、R31は、各々独立に、水素、水酸基又はC1-30の炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリロキシ基、アミノ基若しくはヒドロキシアルキル基である。R32は、各々独立に、C1-30の炭化水素基である。R33は、各々独立に、水素、水酸基又はC1-30の炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリロキシ基、アミノ基、ヒドロキシアルキル基、ビニル基若しくはイソプロペニル基であり、R33のうち少なくとも一つは、ビニル基又はイソプロペニル基である。sとtは、0~5の整数である。
【0035】
31の炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、1-エチルプロピル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、アミル、シクロペンチル、2,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、n-へキシル、シクロヘキシル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、3-エチルブチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチレン、4-メチルペンチレン、1,1-ジメチルブチレン、2,2-ジメチルブチレン、3,3-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルへキシル、2-メチルへキシル、3-メチルへキシル、4-メチルへキシル、5-メチルへキシル、1-エチルペンチル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、1,1-ジメチルペンチル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、4,4-ジメチルペンチル、1,2-ジメチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、1,4-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチル、3,4-ジメチルペンチル、2-メチル-3,3-ジメチルブチル、1-メチル-3,3-ジメチルブチル、1,2,3-トリメチルブチル、1,3-ジメチル-2-ペンチル、2-イソプロピルブチル、2-メチルシクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、1-シクロヘキシルメチル、2-エチルシクロペンチル、3-エチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、2,4-ジメチルシクロペンチル、2-メチルシクロペンチルメチル、2-シクロペンチルエチル、1-シクロペンチルエチル、n-オクチル、2-オクチル、3-オクチル、4-オクチル、2-メチルヘプチル、3-メチルヘプチル、4-メチルヘプチル、5-メチルヘプチル、6-メチルヘプチル、2-エチルへキシル、3-エチルへキシル、4-エチルへキシル、5-エチルへキシル、1,1-ジメチルへキシル、2,2-ジメチルへキシル、3,3-ジメチルへキシル、4,4-ジメチルへキシル、5,5-ジメチルへキシル、1,2-ジメチルへキシル、1,3-ジメチルへキシル、1,4-ジメチルへキシル、1,5-ジメチルへキシル、2,3-ジメチルへキシル、2,4-ジメチルへキシル、2,5-ジメチルへキシル、1,1-エチルメチルペンチル、2,2-エチルメチルペンチル、3,3-エチルメチルペンチル、4,4-エチルメチルペンチル、1-エチル-2-メチルペンチル、1-エチル-3-メチルペンチル、1-エチル-4-メチルペンチル、2-エチル-1-メチルペンチル、3-エチル-1-メチルペンチル、4-エチル-1-メチルペンチル、2-エチル-3-メチルペンチル、2-エチル-4-メチルペンチル、3-エチル-2-メチルペンチル、4-エチル-3-メチルペンチル、3-エチル-4-メチルペンチル、4-エチル-3-メチルペンチル、1-(2-メチルプロピル)ブチル、1-(2-メチルプロピル)-2-メチルブチル、1,1-(2-メチルプロピル)エチル、1,1-(2-メチルプロピル)エチルプロピル、1,1-ジエチルプロピル、2,2-ジエチルプロピル、1,1-エチルメチル-2,2-ジメチルプロピル、2,2-エチルメチル-1,1-ジメチルプロピル、2-エチル-1,1-ジメチルブチル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、2,5-ジメチルシクロヘキシル、2,6-ジメチルシクロヘキシル、3,5-ジメチルシクロヘキシル、2-メチルシクロヘキシルメチル、3-メチルシクロヘキシルメチル、4-メチルシクロヘキシルメチル、2-エチルシクロヘキシル、3-エチルシクロヘキシル、4-エチルシクロヘキシル、2-シクロヘキシルエチル、1-シクロヘキシルエチル、1-シクロヘキシル-2-エチレン、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、ベンジル、2-フェニルエチル等が挙げられる。
【0036】
31の炭化水素基は、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、1-エチルプロピル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、アミル、シクロペンチル、n-へキシルル、シクロヘキシル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、3-エチルブチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、n-ヘプチル、1-メチルへキシル、2-メチルへキシル、3-メチルへキシル、4-メチルへキシル、5-メチルへキシル、1-エチルペンチル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、2-メチルシクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、n-オクチル、2-オクチル、3-オクチル、4-オクチル、2-メチルヘプチル、3-メチルヘプチル、4-メチルヘプチル、5-メチルヘプチル、6-メチルヘプチル、2-エチルへキシル、3-エチルへキシル、4-エチルへキシル、5-エチルへキシル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、ベンジル等であり、より好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、1-エチルプロピル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、アミル、シクロペンチル、n-へキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-オクチル、3-オクチル、4-オクチル、2-メチルヘプチル、3-メチルヘプチル、4-メチルヘプチル、5-メチルヘプチル、6-メチルヘプチル、2-エチルへキシル、3-エチルへキシル、4-エチルへキシル、5-エチルへキシル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、ベンジル等であり、更に好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、アミル、シクロペンチル、n-へキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-オクチル、3-オクチル、4-オクチル、2-メチルヘプチル、3-メチルヘプチル、4-メチルヘプチル、5-メチルヘプチル、6-メチルヘプチル、2-エチルへキシル、3-エチルへキシル、4-エチルへキシル、5-エチルへキシル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、ベンジル等である。
【0037】
32の炭化水素基の具体例としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、1,2-プロピレン、テトラメチレン、2-メチル-1,3-トリメチレン、1,1-ジメチルエチレン、ペンタメチレン、1-エチル-1,3-プロピレン、1-メチル-1,4-ブチレン、2-メチル-1,4-ブチルレン、3-メチル-1,4-ブチレン、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン、1,2-シクロペンチレン、1,3-シクロペンチレン、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン、1,1-ジメチル-1,3-プロピレン、3,3-ジメチル-1,3-プロピレン、ヘキサメチレン、1,2-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシレン、1-エチル-1,4-ブチレン、2-エチル-1,4-ブチレン、3-エチル-1,4-ブチレン、1-メチル-1,5-ペンチレン、2-メチル-1,5-ペンチレン、3-メチル-1,5-ペンチレン、4-メチルペンチレン、1,1-ジメチル-1,4-ブチレン、2,2-ジメチル-1,4-ブチレン、3,3-ジメチル-1,4-ブチレン、1,2-ジメチル-1,4-ブチレン、1,3-ジメチル-1,4-ブチレン、2,3-ジメチル-1,4-ブチレン、ヘプタメチレン、1-メチル-1,6-へキシレン、2-メチル-1,6-ヘキシレン、3-メチル-1,6-ヘキシレン、4-メチル-1,6-ヘキシレン、5-メチル-1,6-ヘキシレン、1-エチル-1,5-ペンチレン、2-エチル-1,5-ペンチレン、3-エチル-1,5-ペンチレン、1,1-ジメチル-1,5-ペンチレン、2,2-ジメチル-1,5-ペンチレン、3,3-ジメチル-1,5-ペンチレン、4,4-ジメチル-1,5-ペンチレン、1,2-ジメチル-1,5-ペンチレン、1,3-ジメチル-1,5-ペンチレン、1,4-ジメチル-1,5-ペンチレン、2,3-ジメチル-1,5-ペンチレン、2,4-ジメチル-1,5-ペンチレン、3,4-ジメチル-1,5-ペンチレン、2-メチル-3,3-ジメチル-1,4-ブチレン、1-メチル-3,3-ジメチル-1,4-ブチレン、1,2,3-トリメチルー1,4-ブチレン等が挙げられる。
【0038】
また、R32の炭化水素基の具体例としては、1,3-ジメチル-1,4-ペンチレン、2-イソプロピル-1,4-ブチレン、2-メチル-1,4-シクロヘキシレン、3-メチル-1,4-シクロヘキシレン、4-メチル-1,4-シクロヘキシレン、1-シクロヘキシルメチレン、2-エチル-1,3-シクロペンチレン、3-エチル-1,3-シクロペンチレン、2,3-ジメチル-1,3-シクロペンチレン、2,4-ジメチル-1,3-シクロペンチレン、2-メチル-1,3-シクロペンチルメチレン、2-シクロペンチルエチレン、1-シクロペンチルエチレン、オクタメチレン、1-メチル-1,7-ヘプチレン、1-エチル1,6-へキシレン、1-プロピル-1,5-ペンチレン、2-メチル-1,7-ヘプチレン、3-メチル-1,7-ヘプチレン、4-メチル-1,7-ヘプチレン、5-メチル-1,7-ヘプチレン、6-メチル-1,7-ヘプチレン、2-エチル-1,6-ヘキシレン、3-エチル-1,6-ヘキシレン、4-エチル-1,6-ヘキシレン、5-エチル-1,6-ヘキシレン、1,1-ジメチル-1,6-ヘキシレン、2,2-ジメチル-1,6-ヘキシレン、3,3-ジメチル-1,6-ヘキシレン、4,4-ジメチル-1,6-ヘキシレン、5,5-ジメチル-1,6-ヘキシレン、1,2-ジメチル-1,6-ヘキシレン、1,3-ジメチル-1,6-ヘキシレン、1,4-ジメチル-1,6-ヘキシレン、1,5-ジメチル-1,6-ヘキシレン、2,3-ジメチル-1,6-ヘキシレン、2,4-ジメチル-1,6-ヘキシレン、2,5-ジメチル-1,6-ヘキシレン、1,1-エチルメチル-1,5-ペンチレン、2,2-エチルメチル-1,5-ペンチレン、3,3-エチルメチル-1,5-ペンチレン、4,4-エチルメチル-1,5-ペンチレン、1-エチル-2-メチル-1,5-ペンチレン、1-エチル-3-メチル-1,5-ペンチレン、1-エチル-4-メチル-1,5-ペンチレン、2-エチル-1-メチル-1,5-ペンチレン、3-エチル-1-メチル-1,5-ペンチレン、4-エチル-1-メチル-1,5-ペンチレン、2-エチル-3-メチル-1,5-ペンチレン、2-エチル-4-メチル-1,5-ペンチレン、3-エチル-2-メチル-1,5-ペンチレン、4-エチル-3-メチル-1,5-ペンチレン、3-エチル-4-メチル-1,5-ペンチレン、4-エチル-3-メチル-1,5-ペンチレン等が挙げられる。
【0039】
更に、R32の炭化水素基の具体例としては、1-(2-メチルプロピル)-1,4-ブチレン、1-(2-メチルプロピル)-2-メチル-1,4-ブチレン、1,1-(2-メチルプロピル)エチレン、1,1-(2-メチルプロピル)エチル-1,3-プロピレン、1,1-ジエチル-1,3-プロピレン、2,2-ジエチル-1,3-プロピレン、1,1-エチルメチル-2,2-ジメチル-1,3-プロピレン、2,2-エチルメチル-1,1-ジメチル-1,3-プロピレン、2-エチル-1,1-ジメチル-1,4-ブチレン、2,3-ジメチル-1,4-シクロヘキシレン、2,3-ジメチル-1,4-シクロヘキシレン、2,5-ジメチル-1,4-シクロヘキシレン、2,6-ジメチル-1,4-シクロヘキシレン、3,5-ジメチル-1,4-シクロヘキシレン、2-メチル-1,4-シクロヘキシル-1-メチレン、3-メチル-1,4-シクロヘキシル-1-メチレン、4-メチル-1,4-シクロヘキシル-1-メチレン、2-エチル-1,4-シクロヘキシレン、3-エチル-1,4-シクロヘキシレン、4-エチル-1,4-シクロヘキシレン、2-シクロヘキシルエチレン、1-シクロヘキシルエチレン、1-シクロヘキシル-2-エチレン、ノニルメチレン、1-メチル-1,8-オクチレン、デシルメチレン、1-メチル-1,8-ノニレン、ウンデシルメチレン、ドデシルメチレン、1,4-フェニレン、1,3-フェニレン、1,2-フェニレン、メチレン-1,4-フェニレン-メチレン、エチレン-1,4-フェニレン-エチレン等が挙げられる。
【0040】
32の炭化水素基は、好ましくは、メチレン、エチレン、トリメチレン、1,2-プロピレン、テトラメチレン、2-メチル-1,2-プロピレン、1,1-ジメチルエチレン、ペンタメチレン、1-エチル-1,3-プロピレン、1-メチル-1,4-ブチレン、2-メチル-1,4-ブチレン、3-メチル-1,4-ブチレン、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン、1,3-シクロペンチレン、1,6-へキサメチレン、1,4-シクロヘキシレン、1-エチル-1,4-ブチレン、2-エチル-1,4-ブチレン、3-エチル-1,4-ブチレン、1-メチル-1,5-ペンチレン、2-メチル-1,5-ペンチレン、3-メチル-1,5-ペンチレン、4-メチル-1,5-ペンチレン、ヘプタメチチレン、1-メチル-1,6-ヘキシレン、2-メチル-1,6-ヘキシレン、3-メチル-1,6-ヘキシレン、4-メチル-1,6-ヘキシレン、5-メチル-1,6-ヘキシレン、1-エチル-1,5-ペンチレン、2-エチル-1,5-ペンチレン、3-エチル-1,5-ペンチレン、2-メチル-1,4-シクロヘキシレン、3-メチル-1,4-シクロヘキシレン、4-メチル-1,4-シクロヘキシレン、オクタメチレン、1-メチル-1,7-ヘプチレン、3-メチル-1,7-ヘプチレン、4-メチル-1,7-ヘプチレン、2-メチル-1,7-ヘプチレン、5-メチル-1,7-ヘプチレン、6-メチル-1,7-ヘプチレン、2-エチル-1,6-ヘキシレン、3-エチル-1,6-ヘキシレン、4-エチル-1,6-ヘキシレン、5-エチル-1,6-ヘキシレン、ノニルメチレン、デシルメチレン、ウンデシルメチレン、ドデシルメチレン等であり、より好ましくは、メチレン、エチレン、トリメチレン、1,2-プロピレン、テトラメチレン、2-メチル-1,2-プロピレン、1,1-ジメチルエチレン、ペンタメチレン、1-エチル-1,3-プロピレン、1-メチル-1,4-ブチレン、2-メチル-1,4-ブチレン、3-メチル-1,4-ブチレン、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン、1,3-シクロペンチレン、1,6-へキサメチレン、1,4-シクロヘキシレン、ヘプタメチチレン、オクタメチレン、1-メチル-1,7-ヘプチレン、3-メチル-1,7-ヘプチレン、4-メチル-1,7-ヘプチレン、2-メチル-1,7-ヘプチレン、5-メチル-1,7-ヘプチレン、6-メチル-1,7-ヘプチレン、2-エチル-1,6-ヘキシレン、3-エチル-1,6-ヘキシレン、4-エチル-1,6-ヘキシレン、5-エチル-1,6-ヘキシレン、ノニルメチレン、デシルメチレン、ウンデシルメチレン、ドデシルメチレン等であり、更に好ましくは、メチレン、エチレン、トリメチレン、1,2-プロピレン、テトラメチレン、2-メチル-1,2-プロピレン、1,1-ジメチルエチレン、ペンタメチレン、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン、1,3-シクロペンチレン、1,6-へキサメチレン、1,4-シクロヘキシレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、1-メチル-1,7-ヘプチレン、3-メチル-1,7-ヘプチレン、4-メチル-1,7-ヘプチレン、2-メチル-1,7-ヘプチレン、5-メチル-1,7-ヘプチレン、6-メチル-1,7-ヘプチレン、2-エチル-1,6-ヘキシレン、3-エチル-1,6-ヘキシレン、4-エチル-1,6-ヘキシレン、5-エチル-1,6-ヘキシレン、ノニルメチレン、デシルメチレン、ウンデシルメチレン、ドデシルメチレン等である。
【0041】
式(1)、及び(1’)中のAについて、炭素-炭素二重結合を含有する置換基の具体例としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、1-ペンテニル基、p-ビニルフェニル基、p-イソプロペニルフェニル基、m-ビニルフェニル基、m-イソプロペニルフェニル基、o-ビニルフェニル基、o-イソプロペニルフェニル基、p-ビニルベンジル基、p-イソプロペニルベンジル基、m-ビニルベンジル基、m-イソプロペニルベンジル基、o-ビニルベンジル基、o-イソプロペニルベンジル基、p-ビニルフェニルエテニル基、p-ビニルフェニルプロペニル基、p-ビニルフェニルブテニル基、m-ビニルフェニルエテニル基、m-ビニルフェニルプロペニル基、m-ビニルフェニルブテニル基、o-ビニルフェニルエテニル基、o-ビニルフェニルプロペニル基、o-ビニルフェニルブテニル基、メタクリル基、アクリル基、2-エチルアクリル基、2-ヒドロキシメチルアクリル基等が挙げられる。
【0042】
式(1)におけるLは、任意の2価の連結基又は単結合(直接結合)である。Lが単結合である場合、式(1)は下式のように表される。
【化12】
また、Lが任意の2価の連結基である場合、かかるLの具体例は、例えば、下記式:
【化13】
{式中、a、R5、k、X、Y、及びnは、式(1)の説明において定義したとおりである}
で表される構造を有する。
【0043】
式(1)で表される構造は、Xの価数aの値に応じて様々な分岐構造を取り得る。例えば、式(1)においてa=3の場合には、下記式:
【化14】
{式中、nは、Yの繰り返し数を表し、0~200の整数である}
で表される分岐構造等が挙げられる。
【0044】
式(1)で表される構造としては、具体的には下記のような構造が挙げられる。
【化15】
【0045】
式中、Zは、式(1)におけるXに相当する任意の連結基である。R1は、式(2)で表される置換基であり、bは1~4の整数である。なお、R1の位置に限定はなく、R1は、任意の位置を取ってよい。また、bが2以上の場合には、複数あるR1のそれぞれが、同じ構造を取っても、異なった構造を取ってもよい。R1としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、tert-アミル基、2,2-ジメチルプロピル基又はこれらの末端にフェニル基を有する構造等が挙げられる。Aは、炭素-炭素二重結合、及び/又はエポキシ結合を含有する置換基である。R2は、水素又はC1-8の鎖状若しくは環状構造を有する炭化水素基である。R2が複数ある場合には、それぞれの置換基は同じでも異なっていてもよい。R2の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、フェニル基、ベンジル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられ、合成時の反応性等の観点から、水素、メチル、エチル、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、及びn-オクチル基が好ましい。しかしながら、合成時の反応性が、R2の位置又は合成時の反応条件を適切に設定することによってもコントロールできる場合には、R2の構造に制限はなく、C1-8の条件を満たす範囲内で任意の構造でよい。Zは、炭化水素基;窒素、リン、ケイ素、酸素から選ばれる、一つ又は複数の元素を含有する炭化水素基;又は窒素、リン、ケイ素等の元素若しくはこれらを含む基である。
【0046】
Zとしての炭化水素基の具体例は、例えば、下記式で表される構造等である。
【化16】
式中、R4~R10は、同じでも異なっていてもよく、水素又はC1-8の炭化水素基を示す。また、R31~R33は、同じでも異なっていてもよく、水素又はC1-6の炭化水素基を示す。j、k、l、及びmは、同じでも異なっていてもよく、0~4の整数である。R4~R10の具体例としては、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピルn-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。R31~R33の具体例としては、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピルn-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0047】
また、Zとして、窒素、リン、ケイ素、及び酸素から成る群から選ばれる、一つ又は複数の元素を含有する炭化水素基の具体例は、下記式で表されるものである。
【化17】
式中、R4~R10は、同じでも異なっていてもよく、水素又はC1-8の炭化水素基を示す。j、k、l、及びmは、同じでも異なっていてもよく、0~4の整数である。R4~R10の具体例としては、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピルn-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0048】
また、Zとして、窒素、リン、ケイ素等の元素又はこれらを含む基の具体例は、以下のとおりである。
【化18】
【0049】
上記具体例のうち、一つ目のものについてAの構造を具体的にすると、下記式のような構造になる。なお、4~6分岐の場合も同様であり、また下記式中のR31、R32、s、及びtは、Aの具体例において定義したとおりである。
【化19】
【化20】
【0050】
以上説明したPPE-Aの数平均分子量は、GPCを用いたポリスチレン換算分子量において、500~8,000であることが好ましい。
PPE-Aの数平均分子量は、樹脂組成物の硬化形態において、誘電率、及び誘電正接の低減を一層図り易くする観点から、好ましくは700以上、より好ましくは900以上、更に好ましくは1,100以上である。一方、流動性、他の成分との相溶性等の観点から、PPE-Aの数平均分子量は、好ましくは7,000以下、より好ましくは6,000以下、更に好ましくは4,500以下である。
本実施形態における式(1)の構造を有する変性PPEは、例えば、より高分子のPPEポリマーを用いた再分配反応法によりPPEを調製し、その末端にAを導入することにより製造することができる。再分配反応によるPPEの製造の場合は、既知の反応条件に定められた条件に従い製造することが可能である。この場合、得られるポリマーは、原料となるPPEよりも分子量が低くなるため、目的の分子量に合わせ、原料PPEと多官能フェノール化合物の比率を調整してよい。
【0051】
また、式(1)又は(1’)中の置換基Aを、例えば、式(4)~(7)で表される官能基を、得られたPPEポリマー末端へ導入する方法に限定はなく、官能基の種類に応じて既知の様々な方法を採用してよい。例えば、式(4)、(6)又は(7)の構造を有する官能基の導入は、一般的には、Williamson合成法によるエーテル結合の形成に従うことができる。式(5)の構造を有する官能基の導入は、PPEポリマー末端の水酸基と、炭素-炭素二重結合を有するカルボン酸(以下カルボン酸)とのエステル結合の形成反応であり、既知のエステル結合形成方法を利用することができる。
【0052】
PPE-Aは、高硬化反応性、及び低誘電特性、並びに良好な流動性・成形性を有し、耐熱性に優れるので、各種電気・電子機器用の材料として好適に使用でき、特に、電気・電子部品(プリント配線板基材等)用のプリプレグの製造に好適に使用できる。
なお、樹脂組成物において、所定のPPE-Aが単独で用いられてもよく、複数の異なるPPE-Aが組み合わせて用いられてもよい。
【0053】
[PPE-B]
PPE-Bは、その主鎖末端に下記式(4A):
【化21】
{式中、nは0又は1の整数であり、Rは、C1-8の飽和アルキル基又は不飽和アルキル基であり、そしてRは水素原子又はC1-8の飽和アルキル基若しくは不飽和アルキル基である}
で表される官能基を1分子中に平均1.5~2.5個有し、かつ、数平均分子量が1,000以上4,500以下のPPEである。本明細書では、PPE-Bの主鎖末端の官能基を「末端官能基」ともいう。
このうち、PPEの数平均分子量は、本発明の作用効果を奏する観点から、1,000以上4,500以下である。このような低分子範囲のPPE-Bを、同じく低分子範囲が好ましいPPE-Aとともに含むことで、樹脂組成物の粘度の増大を抑制できるので、樹脂組成物の基材への塗工性の向上を図ることができる。樹脂組成物の基材への塗工性の向上を図ることができることにより、樹脂組成物又はその硬化物に要求される、各種特性の向上も図ることができる。
ここでいう「低分子」とは、例えば、数平均分子量8,000を超えるPPEと比べて低分子量という趣旨である。従って、PPE-Bについて「低分子」とは、PPE-BがPPE-Aより低い数平均分子量を有することを限定する趣旨ではなく、同様に、PPE-Aについて「低分子」とは、PPE-AがPPE-Bより低い数平均分子量を有することを限定する趣旨ではない。PPE-Bの数平均分子量は、PPE-Aの数平均分子量より高くてよく、また低くてよい。
【0054】
樹脂流動性、及び樹脂組成物の硬化物に要求される各種特性の向上を一層図り易くする観点から、PPE-Bの数平均分子量は、好ましくは1,000以上、より好ましくは1,200以上、更に好ましくは1,500以上である。同様の観点から、PPE-Bの数平均分子量は、好ましくは4,500以下、より好ましくは4,000以下、更に好ましくは3,500以下である。
【0055】
なお、PPE-Bは、PPE-Aと区別されることができる。
樹脂組成物において、所定のPPE-Bが単独で用いられてもよく、複数の異なるPPE-Bが組み合わせて用いられてもよい。
【0056】
そして、PPE-Bは、その主鎖末端に式(4A)で表される末端官能基を1分子中に平均1.5~2.5個有する。これにより、分子量の大幅な増加を抑制し易くなり、樹脂組成物の粘度の増大を抑制できるので、樹脂組成物の基材への塗工性の向上を図ることができる。
【0057】
加熱成形時の樹脂流動性に一層優れる観点から、式(4A)で表される末端官能基は、メタクリル基、及び/又はアクリル基であることがより好ましい。
ただ、末端官能基は、本発明の作用効果を阻害しない範囲内であれば、メタクリル基又はアクリル基以外の官能基、例えば、ベンジル基、アリル基、プロパギル基、グリシジル基、エポキシ基、及びビニルベンゼン基等の官能基であってもよい。
【0058】
[PPE-AとPPE-Bとの併用]
本実施形態においては、本発明の作用効果を奏する観点から、上記のPPE-Aと上記のPPE-Bとを併用することが好ましい。互いに異なる複数のPPEを単に併用するのではなく、特有の構造を有するPPE-Aと、特有の分子量を有すると共に別の特有の構造を有するPPE-Bとを各々特定し、その上で両者を併用すると共に、樹脂組成物における各々の含有量を定めて、デスミア処理物性を改良することに、本実施形態は着目している。
【0059】
樹脂組成物において、所定のPPE-Aが単独で用いられてもよく、複数の異なるPPE-Aが組み合わせて用いられてもよいこと、また、所定のPPE-Bが単独で用いられてもよく、複数の異なるPPE-Bが組み合わせて用いられてもよいことは、上記のとおりである。
【0060】
また、樹脂組成物においては、本発明の作用効果を阻害しない範囲内であれば、PPE-A、及びPPE-B以外の、他のPPEが含まれていてもよい。他のPPEとしては、PPE-Aにおける好ましい数平均分子量範囲に含まれる数平均分子量を有するPPE、PPE-Bにおける数平均分子量範囲に含まれる数平均分子量を有するPPE、数平均分子量が8,000を超える高分子量PPEが挙げられる。このうち、高分子量PPEの例としては、1分子当たりの平均フェノール性水酸基数が1.2個以上、かつ数平均分子量が8,000を超えるPPEが挙げられる。ただし、上記のとおり、本実施形態の樹脂組成物は、その他のPPEを含まなくてよい。
【0061】
PPEとしてPPE-A、及びPPE-Bのみが用いられる場合、樹脂組成物におけるPPE100質量%又はPPE100質量部は、PPE-A、及びPPE-Bの合計100質量%又は合計100質量部に相当する。一方、樹脂組成物がPPE-A、及びPPE-B以外の他のPPEを含む場合、PPE100質量%又はPPE100質量部は、PPE-A、PPE-B、及び他のPPEの合計100質量%又は合計100質量部に相当することになる。
【0062】
なお、樹脂組成物においては、本発明の作用効果を阻害しない範囲内であれば、PPE以外の樹脂が含まれていてもよい。
【0063】
本発明の作用効果を奏する観点から、PPEの総量100質量%を基準として、PPE-Aの含有量が2質量%以上40質量%未満であり、かつPPE-Bの含有量が60質量%超え98質量%未満である。
まず、PPE-Aの含有量の下限値が上記の値であることで、樹脂組成物中に占めるPPE-Aの割合を確保することができる。一方、PPE-Aの含有量の上限値が上記の値であれば、樹脂組成物中に占めるPPE-Bの割合を確保することができる。同様に、PPE-Bの含有量の下限値が上記の値であることで、樹脂組成物中に占めるPPE-Bの割合を確保することができる。一方、PPE-Bの含有量の上限値が上記の値であれば、樹脂組成物中に占めるPPE-Aの割合を確保することができる。
そして、PPE-AとPPE-Bとを上記の特定割合で組み合わせることにより、樹脂組成物又はその硬化物に求められる各種特性の向上を図ることができ、特に、その樹脂組成物の硬化物について、優れたガラス転移温度(Tg)の確保と、デスミア処理物性の改良と、電気特性の向上(例えば、誘電正接(Df)の低減)とのバランスを取ることができる。
【0064】
従って、本発明の作用効果を奏する観点から、PPEの総量100質量%を基準として、PPE-Aの含有量は、好ましくは2質量%超え、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。同様の観点から、PPE-Aの含有量は、好ましくは39質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
また、本発明の作用効果を奏する観点から、PPEの総量100質量%を基準として、PPE-Bの含有量は、好ましくは61質量%以上、より好ましくは65質量%超え、更に好ましくは70質量%以上である。同様の観点から、PPE-Bの含有量は、好ましくは97質量%以下、より好ましくは97質量%未満、更に好ましくは95質量%未満である。
【0065】
PPE-AとPPE-Bとを併用するとき、PPE-Aに対してPPE-Bを添加してもよいし、PPE-Bに対してPPE-Aを添加してもよい。従って、例えば、PPE-A又はこれに類するPPEの製造ラインにおいて、PPE-Bを添加するように設備を設計してもよいし、PPE-B又はこれに類するPPEの製造ラインにおいて、PPE-Aを添加するように設備を設計してもよい。また、例えば、樹脂組成物に溶剤(有機溶剤)を含有せしてワニスを作製する段階で、PPE-AとPPE-Bとを同時に、又は一方の存在下で他方を添加してもよい。いずれの場合であっても、PPE-AとPPE-Bとの併用に当たっては、既知の製造ラインから大きな変更なく、これを有効に活用することが可能である。
【0066】
[(b)架橋剤]
本実施形態では、架橋反応を起こすか又は促進する能力を有する任意の架橋剤を使用することができる。架橋剤は、数平均分子量が4,000以下であることが好ましい。架橋剤の数平均分子量が4,000以下であると、樹脂組成物の粘度の増大を抑制でき、また加熱成型時の良好な樹脂流動性が得られる。数平均分子量は、一般的な分子量測定方法で測定したものであればよく、具体的には、GPCを用いて測定した値等が挙げられる。
【0067】
架橋剤は、架橋反応の観点から、炭素-炭素不飽和二重結合を1分子中に有する架橋型硬化剤であることが好ましく、炭素-炭素不飽和二重結合を1分子中に平均2個以上有することがより好ましく、デスミア処理物性の改良という観点からは、炭素-炭素不飽和二重結合を1分子中に平均2個以上有する架橋剤(以下、(b-1)第一架橋剤ともいう。)と少なくとも2つのエポキシ基を有する架橋剤(以下、(b-2)第二架橋剤ともいう)との併用がさらに好ましい。架橋剤は、1種類の化合物で構成されてもよく、2種類以上の化合物で構成されてもよい。本明細書にいう「炭素-炭素不飽和二重結合」とは、架橋剤がポリマー又はオリゴマーである場合、主鎖より分岐した末端に位置する二重結合をいう。炭素-炭素不飽和二重結合としては、例えば、ポリブタジエンにおける1,2-ビニル結合が挙げられる。
【0068】
架橋剤の数平均分子量が600未満である場合、架橋剤の1分子当たりの炭素-炭素不飽和二重結合の数(平均値)は、2~4であることが好ましい。架橋剤の数平均分子量が600~1500の場合には、架橋剤の1分子当たりの炭素-炭素不飽和二重結合の数(平均値)は、4~26であることが好ましい。架橋剤の数平均分子量が1,500~4,000の場合には、架橋剤の1分子当たりの炭素-炭素不飽和二重結合の数(平均値)は、26~60であることが好ましい。架橋剤の数平均分子量が上記範囲内にある場合に、炭素-炭素不飽和二重結合の数が特定値以上であることにより、本実施形態に係る樹脂組成物は、架橋剤の反応性が一層高まり、樹脂組成物の硬化物の架橋密度が一層向上し、その結果、一層優れた耐熱性を付与できる。一方で、架橋剤の数平均分子量が上記範囲内にある場合に、炭素-炭素不飽和二重結合の数が、特定値以下であることにより、加熱成形時に一層優れた樹脂流動性を付与できる。
【0069】
(b-1)第一架橋剤
第一架橋剤としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)等のトリアルケニルイソシアヌレート化合物、トリアリルシアヌレート(TAC)等のトリアルケニルシアヌレート化合物、分子中にメタクリル基を2個以上有する多官能メタクリレート化合物、分子中にアクリル基を2個以上有する多官能アクリレート化合物、ポリブタジエン等の分子中にビニル基を2個以上有する多官能ビニル化合物、分子中にビニルベンジル基を有するジビニルベンゼン等のビニルベンジル化合物、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン等の分子中にマレイミド基を2個以上有する多官能マレイミド化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。第一架橋剤は、これらの中でも、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、及びポリブタジエンから成る群より選択される少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。第一架橋剤が、上記で説明された少なくとも1種以上の化合物を含むことにより、硬化反応(架橋反応)時に架橋密度が一層高くなり、これにより、樹脂組成物の硬化物の耐熱性が一層向上する傾向にある。
【0070】
PPE:第一架橋剤の質量比は、硬化時の低誘電率、及び低誘電正接と架橋構造物の架橋密度のバランスを取るという観点から、25:75~95:5であることが好ましく、より好ましくは、32:68~85:15である。
【0071】
(b-2)第二架橋剤
樹脂組成物は、プリント配線板用基板のデスミア処理を促進するという観点から、第一架橋剤に加えて第二架橋剤を含むことが好ましい。第二架橋剤としては、分子中に残存する官能基による架橋ネットワークの観点、及びデスミア処理の促進の観点から、エポキシ樹脂が好ましい。理論に拘束されることを望まないが、エポキシ樹脂のベンゼン環又は架橋部が、PPEのベンゼン環よりもデスミア液で分解され易いため、第一架橋剤に加えて第二架橋剤としてエポキシ樹脂を含むPPE樹脂組成物は、架橋構造とデスミア処理物性のバランスを取ることができると考えられる。
【0072】
エポキシ樹脂としては、例えば、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも、デスミア処理物性の観点から、芳香族系が好ましく、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、DGEBA型などがより好ましい。単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
第二架橋剤の含有量は、PPE及び第二架橋剤の合計100質量部を基準として、1質量部~20質量部であることが好ましく、2質量部~18質量部であることがより好ましい。含有量が1質量部以上であることにより、本実施形態の樹脂組成物は、硬化した際に低誘電率性、低誘電正接性、及び金属箔との密着性に一層優れる傾向にある。第二架橋剤の含有量が20質量部以下であることにより、本実施形態の樹脂組成物は、加熱成形時に一層優れた樹脂流動性を有する傾向にある。
【0074】
[(c)有機過酸化物]
本実施形態では、PPE、及び架橋剤を含む樹脂組成物の重合反応を促進する能力を有する任意の有機過酸化物を使用することができる。有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。なお、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等のラジカル発生剤も樹脂組成物のための反応開始剤として使用することができる。中でも、得られる耐熱性、及び機械特性に優れ、更に低い誘電率、及び誘電正接を有する硬化物を提供することができるという観点から、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
【0075】
有機過酸化物の1分間半減期温度は、好ましくは155℃以上185℃以下であり、より好ましくは160℃~180℃又は165℃~175℃である。本明細書では、1分間半減期温度は、有機過酸化物が分解して、その活性酸素量が半分になる時間が1分間となる温度である。1分間半減期温度は、ラジカルに対して不活性な溶剤、例えばベンゼン等に有機過酸化物を0.05mol/L~0.1mol/Lの濃度となるように溶解させ、有機過酸化物溶液を窒素雰囲気化で熱分解させる方法で確認される値である。
【0076】
有機過酸化物の1分間半減期温度が155℃以上であることにより、PPE含有樹脂組成物を加熱加圧成型に供す際、PPEを十分に溶融させてから架橋剤との反応が開始されることになるので、成型性に優れる傾向にある。一方、有機過酸化物の1分間半減期温度が185℃以下であることにより、通常の加熱加圧成型条件(例えば最高到達温度200℃)での有機過酸化物の分解速度が十分であるため、架橋剤との架橋反応を効率的かつ緩やかに進めることができるので、良好な電気特性(特に誘電正接)を有する硬化物を形成可能である。
【0077】
1分間半減期温度が155℃~185℃の範囲内にある有機過酸化物としては、例えば、t-へキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(155.0℃)、t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート(166.0℃)、t-ブチルペルオキシラウレート(159.4℃)、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(158.8℃)、t-ブチルペルオキシ2-エチルへキシルモノカーボネート(161.4℃)、t-へキシルパーオキシベンゾエート(160.3℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(158.2℃)、t-ブチルペルオキシアセテート(159.9℃)、2,2-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ブタン(159.9℃)、t-ブチルパーオキシベンゾエート(166.8℃)、n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルペルオキシ)バレラート(172.5℃)、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(175.4℃)、ジクミルパーオキサイド(175.2℃)、ジ-t-へキシルパーオキサイド(176.7℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(179.8℃)、及びt-ブチルクミルパーオキサイド(173.3℃)等が挙げられる。
【0078】
有機過酸化物の含有量は、PPEと架橋剤の合計質量100質量%を基準として、反応率を高くすることができるという観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上又は1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、得られる硬化物の誘電率、及び誘電正接を低く抑えることができるという観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下、更に好ましくは0.9質量%以下である。
【0079】
[(d)熱可塑性樹脂]
樹脂組成物は、加速液に含侵されたプリント配線板用基板の樹脂減少量とデスミア処理物性の観点から、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
【0080】
熱可塑性樹脂は、ビニル芳香族化合物とオレフィン系アルケン化合物とのブロック共重合体、及びその水素添加物(ビニル芳香族化合物とオレフィン系アルケン化合物とのブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体)、並びにビニル芳香族化合物の単独重合体から成る群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記ブロック共重合体又はその水素添加物のビニル芳香族化合物由来の単位の含有率は、20質量%以上であることが好ましく、99質量%以下であることができる。上記ブロック共重合体又はその水素添加物のビニル芳香族化合物由来の単位の含有率が20質量%以上であることにより、PPEとの相溶性が一層向上し、金属箔との密着強度が一層向上する傾向にある。
【0081】
ビニル芳香族化合物は、分子内に芳香環、及びビニル基を有すればよく、例えば、スチレンが挙げられる。オレフィン系アルケン化合物は、分子内に、直鎖若しくは分岐構造を有するアルケンであればよく、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ブタジエン、及びイソプレンが挙げられる。これらの中でも、熱可塑性樹脂は、PPEとの相溶性に一層優れる観点から、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-ブタジエン-ブチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体、スチレン-イソブチレンブロック共重合体;スチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-エチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、SEBSの水素添加物、スチレン-ブタジエン-ブチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン‐イソプレンブロック共重合体の水素添加物などの水添スチレン系熱可塑性樹脂;及びスチレンの単独重合体(ポリスチレン:PS)から成る群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、SEBS、水添SEBS、及びPSからなる群より選択される1種以上であることがより好ましい。
【0082】
上記水素添加物における水素添加率は特に限定されず、オレフィン系アルケン化合物由来の炭素‐炭素不飽和二重結合が一部残存していてもよい。
【0083】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは30,000~300,000、より好ましくは31,000~290,000である。重量平均分子量が30,000以上であることにより、本実施形態の樹脂組成物は、硬化した際に耐熱性に一層優れる傾向にある。重量平均分子量が300,000以下であることにより、本実施形態の樹脂組成物は、加熱成形時に一層良好な樹脂流動性を有する傾向にある。重量平均分子量は、後述の実施例に記載の方法により求められる。
【0084】
熱可塑性樹脂の含有量は、PPE及び架橋剤の合計100質量部を基準として、2質量部~20質量部であることが好ましい。含有量が2質量部以上であることにより、本実施形態の樹脂組成物は、硬化した際に低誘電率性、低誘電正接性、及び金属箔との密着性に一層優れる傾向にある。含有量が20質量部以下であることにより、本実施形態の樹脂組成物は、加熱成形時に一層優れた樹脂流動性を有する傾向にある。
【0085】
[(e)難燃剤]
樹脂組成物は、難燃剤を含むことが好ましい。難燃剤としては、耐熱性を向上できる観点から、樹脂組成物の硬化後に樹脂組成物中の他の含有成分と相溶しないものが好ましい。好ましくは、難燃剤は、樹脂組成物の硬化後に樹脂組成物中のPPE、及び/又は架橋剤と相溶しない。難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等の無機難燃剤;ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエタン、4,4-ジブロモビフェニル、エチレンビステトラブロモフタルイミド等の芳香族臭素化合物;レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート等のリン系難燃剤等が挙げられる。これらの難燃剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、難燃剤は、樹脂組成物を硬化した際の低誘電率性、及び低誘電正接性に一層優れる観点から、デカブロモジフェニルエタンであることが好ましい。
【0086】
難燃剤の含有量は、特に限定されないが、UL規格94V-0レベルの難燃性を維持するという観点から、PPEと架橋剤との合計100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上である。また、得られる硬化物の誘電率、及び誘電正接を低く維持できる観点から、難燃剤の含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。
【0087】
[(f)シリカフィラー]
樹脂組成物は、シリカフィラーを含有してよい。シリカフィラーとしては、例えば、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、及び中空シリカが挙げられる。シリカフィラーの含有量は、PPE、及び架橋剤の合計100質量部に対して、10~100質量部であることができる。また、シリカフィラーは、その表面にシランカップリング剤等を用いて表面処理をされたものであってもよい。
【0088】
樹脂組成物は、上記の添加剤以外に、熱安定剤、酸化防止剤、UV吸収剤、界面活性剤、滑剤等の添加剤、溶剤等を更に含んでもよい。樹脂組成物は、溶剤を含む場合には、樹脂組成物中の固形成分が溶剤に溶解又は分散したワニスの形態であることができる。
【0089】
[(g)溶剤]
溶剤としては、溶解性の観点から、トルエン、キシレン等の芳香族系化合物、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、及びクロロホルムであることが好ましい。これらの溶剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
溶媒に対してPPEを好適に溶解させ、また、室温程度でも樹脂組成物の好適な流動性を確保し易くする観点からも、溶剤としては、トルエン等の芳香族系化合物の溶剤が好ましく、例えば、トルエン・メチルエチルケトン混合溶剤、トルエン・シクロヘキサン混合溶剤、及びトルエン・シクロペンタノン混合溶剤等が好ましい。また、本実施形態の樹脂組成物であれば、トルエン単独の溶剤であってもかかる溶剤に好適に溶解し、ひいては、基板への含浸性に優れるため、溶剤としてはトルエン単独の溶剤も好ましい。
【0090】
[電子回路基板材料]
本実施形態に係るプリント配線板用基板は、上記で説明された樹脂組成物で形成された電子回路基板材料を含むか、又は電子回路基板材料から成ることができる。電子回路基板材料は、上記で説明されたワニスを用いて形成されることが好ましい。電子回路基板材料は、具体的には、樹脂フィルム、基材と樹脂との含浸複合体(以下、「プリプレグ」ともいう)、若しくは樹脂付金属箔又はこれらの少なくとも1種を含む積層体である。
【0091】
[樹脂フィルム]
樹脂フィルムは、上記ワニスを単独で又は支持フィルム等の支持体の上に塗布した後に、樹脂ワニス中の有機溶剤を乾燥除去して製膜することにより得られる。
【0092】
支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリイミド;銅箔、アルミ箔等の金属箔;離型紙等を挙げることができる。なお、支持体には、マット加工、コロナ処理、離型処理等の化学的又は物理的な処理を施してあってもよい。
【0093】
本実施形態に係る樹脂フィルムは、多層プリント配線板等の積層体の層間絶縁シート、接着フィルム等として好適に用いることができる。
【0094】
[プリプレグ]
本実施形態に係るプリプレグは、基材と、この基材に含浸又は塗布された本実施形態の樹脂組成物とを含む。プリプレグは、例えば、ガラスクロス等の基材を上記ワニスに含浸させた後、熱風乾燥機等で溶剤分を乾燥除去することにより得られる。
【0095】
基材としては、ロービングクロス、クロス、チョップドマット、サーフェシングマット等の各種ガラスクロス;アスベスト布、金属繊維布、及びその他の合成若しくは天然の無機繊維布;全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維等の液晶繊維から得られる織布又は不織布;綿布、麻布、フェルト等の天然繊維布;カーボン繊維布、クラフト紙、コットン紙、紙-ガラス混繊糸から得られる布等の天然セルロース系基材;ポリテトラフルオロエチレン多孔質フィルム等が挙げられる。これらの基材は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0096】
プリプレグ中の本実施形態の樹脂組成物固形分の割合は、30~80質量%であることが好ましく、40~70質量%であることがより好ましい。上記割合が30質量%以上であることにより、プリプレグを電子基板用等に用いた場合に絶縁信頼性に一層優れる傾向にある。上記割合が80質量%以下であることにより、電子基板等の用途において、曲げ弾性率等の機械特性に一層優れる傾向にある。
【0097】
[金属張積層板(積層体)]
本実施形態に係る金属張積層板(積層体)は、本実施形態の樹脂組成物又は本実施形態のプリプレグと、金属箔とを積層して硬化して得られる。金属張積層板は、プリプレグの硬化物(「硬化物複合体」ともいう。)と金属箔とが積層して密着している形態を有することが好ましく、電子回路基板用材料として好適に用いられる。金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、及び銅箔が挙げられ、これらの中でも、銅箔は、電気抵抗が低いため好ましい。金属箔と組合せる硬化物複合体は、1枚でも複数枚でもよく、用途に応じて複合体の片面又は両面に金属箔を重ねて積層板に加工する。
【0098】
積層板の製造方法としては、例えば、PPE含有樹脂組成物と基材と複合体(例えば、前述のプリプレグ)を形成し、これを金属箔と重ねた後、その樹脂組成物を硬化させることにより、硬化物積層体と金属箔とが積層されている積層板を得る方法が挙げられる。その積層板の特に好ましい用途の1つは、プリント配線板である。プリント配線板は、金属張積層板から金属箔の少なくとも一部が除去されていることが好ましい。
【0099】
[プリント配線板]
本実施形態に係るプリント配線板は、金属張積層板から金属箔の一部が除去されている。本実施形態のプリント配線板は、典型的には、上述した本実施形態のプリプレグを用いて、加圧加熱成型する方法で形成できる。基材としてはプリプレグに関して前述したのと同様のものが挙げられる。本実施形態のプリント配線板は、その基板を加速液に浸漬した際の樹脂減少量が特性の数値範囲内に制御されることにより、穴からスミアが除去されており、電気特性(例えば、低誘電率及び低誘電正接など)及び絶縁信頼性に優れる。
【実施例
【0100】
以下に実施例を挙げて、本実施形態を詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0101】
(PPEの合成反応)
次の反応を不活性ガスの雰囲気下で実施した。反応に使用する溶媒は、市販の試薬である。使用した原料、及び試薬類は、以下のとおりである。
【0102】
1.溶媒
トルエン:和光純薬製試薬特級品をそのまま使用した。
メチルエチルケトン:和光純薬製試薬特級品をそのまま使用した。
メタノール:和光純薬製試薬特級品をそのまま使用した。
2.開始剤
ナイパーBMT:日本油脂製品をそのまま使用した。
3.原料PPE
S202A(ポリスチレン換算数平均分子量16,000):旭化成株式会社製製品をそのまま使用した。
S202Aは、いずれも下記の構造を有する。
【化22】
【0103】
4.原料フェノール(多官能/二官能フェノール)
4-1.式(2)の部分構造を含む価数a(a=3~6)のフェノール類
1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン:株式会社ADEKA製品(アデカスタブAO-30)をそのまま使用した。
【0104】
4-2.式(2)の部分構造を含まない価数2のフェノール類
ビスフェノールA:アルドリッチ試薬品をそのまま使用した。
【0105】
5.変性基原料
無水メタクリル酸:アルドリッチ試薬品をそのまま使用した。
ジメチルアミノピリジン:アルドリッチ試薬品をそのまま使用した。
【0106】
(PPEの同定・分析)
1.数平均分子量測定
クロロホルム溶媒下、GPCにより数平均分子量測定を行った。数平均分子量は、標準ポリスチレンを用いた検量線に基づいて、ポリスチレン換算法により求めた。
2.NMR測定
重クロロホルムに、5質量%濃度となるように試料を溶解し、NMR測定を実施した。反応の進行は、多官能フェノールユニットの芳香族のピークと、水酸基のプロトンピークの比率から、水酸基ピークの減少により確認した。
3.溶融粘度
試料の20質量%メチルエチルケトン溶液200mlをビーカーに入れ、B型回転粘度計を用いて25℃で回転数30rpmで粘度を測定した。
【0107】
4.平均末端官能基数
PPE一分子当たりの平均末端官能基数を以下の方法により求めた。すなわち、「高分子論文集,vol.51,No.7(1994),第480頁」記載の方法に準拠し、PPEの塩化メチレン溶液にテトラメチルアンモニウムハイドロオキシド溶液を加えることにより得られるサンプルの波長318nmにおける吸光度変化を紫外可視吸光光度計で測定した。この測定値から、PPEの末端変性の前後のフェノール性水酸基の数を求めた。また、上記1の方法により求めたPPEの数平均分子量と、PPEの質量とを用いてPPEの分子数(数平均分子数)を求めた。
これらの値から、下記数式(1)に従って、変性前後のPPE1分子当たりの平均フェノール性水酸基数を求めた。:
1分子当たりの平均フェノール性水酸基数
=フェノール性水酸基の数/数平均分子数…(1)
変性後の平均末端官能基数は、下記数式(2)に従って、変性後の平均末端官能基数を求めた。:
1分子当たりの平均末端官能基数
=変性前の平均フェノール性水酸基数-変性後の平均フェノール性水酸基数…(2)
【0108】
(製造例1)
PPE1の合成
500mlの3つ口フラスコに、3方コックを付け、更にジムロートと等圧滴下ロートを設置した。フラスコ内を窒素に置換した後、原料PPE S202A100g、トルエン200g、多官能フェノールとして1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン12.8gを加えた。フラスコに温度計を設置し、マグネチックスターラーにて撹拌しながら、オイルバスにてフラスコを90℃に加熱し、原料PPEを溶解させた。開始剤として、ベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルm-メチルベンゾイルペルオキシド、m-トルイルペルオキシドの混合物の40%メタキシレン溶液(日油製:ナイパーBMT)の37.5gをトルエン87.5gに希釈し、等圧滴下ロートに仕込んだ。フラスコ内の温度を80℃まで降温させた後、開始剤溶液を、フラスコ内へ滴下開始し、反応を開始した。開始剤を2時間かけて滴下し、滴下後、再び90℃に昇温し,4時間撹拌を継続した。反応後、ポリマー溶液をメタノール中に滴下し、再沈させた後、溶液と濾別し、ポリマーを回収した。その後、これを真空下100℃で3時間乾燥させた。1H-NMRにより、低分子フェノールがポリマー中に取り込まれ、水酸基のピークが消失していることを確認した。この1H-NMR測定結果から、得られたポリマーは、下記式:
【化23】
{式中、l、m、及びnは、下記数平均分子量を満たすように任意に選択される数である}
で表されるような構造を有するPPE(以下、PPE1という)であると確認できた。GPC測定の結果、得られたPPE1のポリスチレン換算での分子量はMn=1,500であった。また、PPE1の20%メチルエチルケトン溶媒中での溶液粘度は125cPoiseであった。
【0109】
(変性PPE1の合成)
トルエン80g、及び上記で合成したPPE1を26g混合して約85℃に加熱した。加熱された混合物へジメチルアミノピリジン0.55gを添加した。固体が全て溶解したと思われる時点で、溶解物へ無水メタクリル酸4.9gを徐々に添加した。得られた溶液を連続混合しながら85℃に3時間維持した。次いで、溶液を室温に冷却して、メタクリレート変性PPEのトルエン溶液を得た。
溶液の一部を採取し、乾燥後1H-NMR測定を実施した。PPEの水酸基由来のピークが消失していたことから、反応が進行しているものと判断し、精製操作に移った。上記メタクリレート変性PPEのトルエン溶液120gを、1Lビーカー中マグネチックスターラーで激しく撹拌したメタノール360g中に30分掛けて滴下した。得られた沈殿物を、メンブランフィルターで減圧濾過した後に乾燥し、38gのポリマーを得た。乾燥させたポリマーの1H-NMR測定結果を図1に示す。4.5ppm付近のPPEの水酸基由来のピークが消失したこと、及び、5.75ppm付近にメタクリル基のオレフィン由来のピークの発現を確認した。また、GC測定により、ジメチルアミノピリジン、無水メタクリル酸、メタクリル酸由来のピークがほぼ消失していることから、NMRのメタクリル基由来のピークは、PPE末端に結合しているメタクリル基のものと判断した。この結果から、得られたポリマーは、下記式:
【化24】
{式中、l、m、及びnは、下記数平均分子量を満たすように任意に選択される数である}
で表されるような構造を有する変性PPE(以下、変性PPE1という)であると確認できた。
また、GPC測定の結果、得られた変性PPE1のポリスチレン換算での分子量はMn=1,600であった。また、変性PPE1の平均末端官能基数は、上記数式(2)に従って、2.5以上であることが算出された。更に、変性PPE1の20%メチルエチルケトン溶媒中での溶液粘度は131cPoiseであった。
【0110】
樹脂組成物、及びその硬化物の形成に使用される材料
PPE
・上記で得られた変性ポリフェニレンエーテル1(変性PPE1)
・末端メタクリル基変性PPE「製品名SA9000」(Sabicイノベーティブプラスチックス社製、Mn:2756、末端官能基数:2.0個)
・「PPE S202A」(旭化成株式会社製、Mn:16,000)
【0111】
第一架橋剤
・ポリブタジエン「製品名B-1000」
(日本曹達社製、Mn:1200、Tg:-44℃)
・ジビニルベンゼン
【0112】
有機過酸化物
・ビス(1-tert-ブチルペルオキシ-1-メチルエチル)ベンゼン「製品名パーブチルP」(日油社製)
【0113】
第二架橋剤
・エポキシ樹脂(DGEBA型 エポキシ基当量184-194 Mw370)
【0114】
熱可塑性樹脂
・水添スチレン系熱可塑性樹脂(SEBS)「製品名タフテックN525」(Mw40万、スチレン含有量67質量%)
【0115】
難燃剤
・デカブロモジフェニルエタン「製品名SAYTEX8010」(アルベマール社製)
【0116】
シリカ
「CRS1077-EXR4」株式会社龍森製「溶融球状シリカEXR-4」をホソカワミクロン社製粉砕分級機「CRS1077」で処理したもの
【0117】
基材
・Lガラスクロス(旭シュエーベル社製、スタイル:2116)
【0118】
評価方法
1.PPEの数平均分子量、熱可塑性樹脂の重量平均分子量
GPC分析を用い、分子量既知の標準ポリスチレンの溶出時間との比較によりPPEの数平均分子量、熱可塑性樹脂の重量平均分子量を求めた。具体的には、試料濃度0.2w/vol%(溶媒:クロロホルム)の測定試料を調製後、測定装置にはHLC-8220GPC(東ソー株式会社製)を用い、カラム:Shodex GPC KF-405L HQ×3(昭和電工株式会社製)、溶離液:クロロホルム、注入量:20μL、流量:0.3mL/min、カラム温度:40℃、検出器:RI、の条件下にて測定した。
【0119】
2.加速液評価(樹脂減少量)
実施例又は比較例で作製したデスミア液耐性評価用サンプル3枚を、下記デスミア処理(3)を行う前に、温度25℃で濃度12%の次亜塩素酸ナトリウムに15分間浸漬した。この一連の浸漬処理に供する前後の各サンプルの重さを測定し、浸漬処理前後の重量減少率(%)を求め、その平均値を加速液評価の樹脂減少量として求めた。
【0120】
3.デスミア処理及びその評価
(3-1)デスミア液耐性(樹脂減少率)の評価
実施例又は比較例で作製したデスミア液耐性評価用サンプルをそれぞれ3枚用い、各デスミア液耐性評価用サンプルを、45℃の膨潤液マキュダイザー9204(マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン株式会社製)に5分間浸漬した後、70℃のマキュダイザー9275およびマキュダイザー9276(マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン株式会社製)に10分間浸漬した。その後、サンプルを45℃の中和液マキュダイザー9279(マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン株式会社製)および硫酸(98%)に5分間浸漬し、水洗した。この一連のデスミア処理に供する前後の各デスミア液耐性評価用サンプルの重さを測定し、デスミア処理前後の重量減少率(%)を求め、その平均値をデスミア処理の樹脂減少量として求めた。
【0121】
(3-2)表面粗さの測定
JIS B0031に従って、又はキーエンス社製「VR-3000」を用いて、デスミア処理されたサンプルの表面粗さを測定した。
【0122】
(3-3)ピール強度
JIS C-6481に従って、実施例又は比較例で作製したピール強度測定用サンプルのピール強度を測定した。
【0123】
(3-4)ビア底スミアの評価
デスミア処理後のビア底をSEM二次電子像(×1,000)により観察して、下記基準に従ってスミアの有無を目視で評価した。
◎(良好) 底部のビア縁部から内側に0~2μmの位置にスミアが残るか、または完全に除去される。
〇(許容) 底部のビア縁部から内側に2μm~5μm以下の位置にスミアが残る。
×(不可) 底部のビア縁部から内側に5μm超の位置までスミアが残る。
【0124】
<実施例1~2、比較例1~2>
ワニスの作製
表1に示される組成に従って、溶剤としてのトルエンに対し、所望により熱可塑性樹脂又はデスミア促進剤を添加し、攪拌、溶解させ、次いで、PPE、難燃剤及びシリカをそれぞれ添加し、PPEが溶解するまで攪拌を継続した。次いで、溶解物へ架橋剤及び有機過酸化物をそれぞれ添加し、十分に攪拌して、ワニスを得た。
【0125】
プリプレグの作製
得られたワニスにLガラスクロスを含浸させた後、所定のスリットに通すことにより余分なワニスを掻き落とし、105℃の乾燥オーブンにて所定時間乾燥させ、トルエンを除去することにより、プリプレグを得た。このプリプレグを所定サイズに切り出した。
【0126】
銅張積層板の作製
得られたプリプレグを所定枚数重ね、更にその重ね合わせたプリプレグの両面に銅箔(古川電気工業株式会社製、厚み35μm、GTS-MP箔)を重ね合わせた状態で、真空プレスを行うことにより、銅張積層板を得た。この真空プレスの工程では、先ず、室温から昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力10kg/cmの条件を採用し、次いで、130℃まで達した後に、昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力40kg/cmの条件を採用した。温度が200℃に達した後に、温度を200℃に維持したまま圧力40kg/cm、及び時間60分間の条件を採用した。
【0127】
銅箔なし積層板の作製
上記で得られた銅張積層板から、エッチングにより銅箔を除去することにより積層板を得た。
【0128】
ピール強度測定用サンプルの作製
以上のようにして製造した銅張積層板の銅箔層からキャリアを引き剥がした後、表面に電解銅めっきにより10μmの厚みとなるようにめっきし、ドライフィルムを張り合わせてエッチングレジスト層を形成した。そして、エッチングレジスト層に、0.4mm幅の引き剥がし強度測定用回路パターンを露光して現像し、エッチングパターンを形成した。その後、銅エッチング液で回路エッチング、エッチングレジスト剥離を行い、回路厚さ10μmのピール強度測定用サンプルを作製した。
【0129】
デスミア液耐性評価用サンプルの作製
上記において調製したワニスを、耐熱性フィルムの表面に厚さが100μmとなるように塗工乾燥して樹脂層を形成したものを2枚用意した。そして、樹脂層同士を熱間加工により張り合わせた後、耐熱性フィルムを剥がし、5cm×5cm角にカットし、デスミア液耐性評価用サンプルを作製した。
【0130】
各サンプルの評価及び測定結果を下記表1に示す。
【0131】
【表1】
図1