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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/04 20060101AFI20240329BHJP
   F04C 29/02 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
F04B39/04 H
F04C29/02 351D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019213620
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2021085344
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】冠城 美早子
(72)【発明者】
【氏名】手島 淳夫
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-020306(JP,A)
【文献】特開2017-172895(JP,A)
【文献】国際公開第2019/064883(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106704197(CN,A)
【文献】特開昭55-117092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/04
F04C 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルを含んだ熱媒体を圧縮する圧縮機であって、
圧縮された前記熱媒体と前記オイルとを分離させるオイル分離構造を備え、
前記オイル分離構造は、
中心軸を上下方向とする円柱状の内部空間であり、前記熱媒体及び前記オイルが流入して内周面に沿って周方向に旋回して前記熱媒体と前記オイルとを分離させる分離室と、
前記分離室内を上下方向に仕切る仕切部材と、を備え、
前記仕切部材は、
前記分離室の内周面によって支持された筒状の支持部と、
上端側が前記支持部に連続して形成され、当該支持部よりも小径で下端側が閉塞された筒状の旋回促進部と、を有し、
前記旋回促進部は、径方向の内側と外側を貫通させた連通路が形成されて、前記分離室の内周面に沿って旋回しながら下降してきた前記熱媒体の旋回を促進させ
前記仕切部材は、
前記支持部と前記旋回促進部とが連続してつながる部位をR形状としてあり、前記旋回促進部が前記支持部よりも径方向内側にあり、前記旋回促進部の上端側が前記支持部の上端側に連続して設けられていることを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
前記仕切部材は、
前記旋回促進部を横方向に貫通した複数の前記連通路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記仕切部材は、
横方向に沿った一直線上で対向するように配置された二つの前記連通路が形成されていることを特徴とする請求項に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記仕切部材は、
前記支持部における断面の厚さ変化が平均厚さに対して20%以内であることを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、冷媒からオイルを遠心分離させる構造が開示されており、容器内のオイル溜りの上方には、オイルの跳ね上がりを抑制する仕切板を設けている。仕切板の周縁には、上下方向に連通する切欠部が形成されており、オイルはこの切欠部を通ってオイル溜りへ流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-215148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背景技術のように、仕切板を設けるとしても、上下方向に連通した単純な切欠を形成しただけの構成では、オイルだけではなく、やはり冷媒も通過してしまうと考えられる。冷媒が仕切板を通過してしまうと、仕切板の下方にあるオイル溜りでオイルの巻き上げを生じさせてしまい、オイルの分離性能が低下してしまう可能性がある。したがって、オイルの分離性能に改善の余地があった。
【0005】
本発明の課題は、オイルの分離性能を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る圧縮機は、オイルを含んだ熱媒体を圧縮する圧縮機であって、圧縮された熱媒体とオイルとを分離させるオイル分離構造を備え、オイル分離構造は、中心軸を上下方向とする円柱状の内部空間であり、熱媒体及びオイルが流入して内周面に沿って周方向に旋回して熱媒体とオイルとを分離させる分離室と、分離室内を上下方向に仕切る仕切部材と、を備え、仕切部材は、分離室の内周面によって支持された筒状の支持部と、上端側が支持部に連続して形成され、支持部よりも小径で下端側が閉塞された筒状の旋回促進部と、を有し、旋回促進部は、径方向の内側と外側を貫通させた連通路が形成されて、分離室の内周面に沿って旋回しながら下降してきた熱媒体の旋回を促進させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、仕切部材に径方向の内側と外側を貫通させた連通路を形成したため、上下方向に連通させた単純な構造と比較して熱媒体が通過しにくくなる。また、仕切部材の旋回促進部は、支持部よりも小径であるため、分離室の内周面に沿って旋回しながら下降してきた熱媒体は、旋回が促進される。すなわち、熱媒体の旋回速度が上昇し、旋回方向の流線が強まるため、気相の熱媒体が連通路を通過しにくくなり、液相のオイルは連通路を通過して滞りなく排出される。したがって、熱媒体は仕切部材の下側へ通過することが抑制され、オイル溜りのオイルの巻き上げを極力回避でき、これによりオイルの分離性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】圧縮機における前後方向及び上下方向に沿った断面図である。
図2】分離室の拡大断面図である。
図3】仕切部材を示す図である。
図4】仕切部材の変形例を示す図である(貫通方向)。
図5】仕切部材の変形例を示す図である(テーパ)。
図6】第二実施形態における分離室の拡大断面図である。
図7】第二実施形態の仕切部材を示す図である。
図8】仕切部材の変形例を示す図である(長穴)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
《第一実施形態》
《構成》
図1は、圧縮機における前後方向及び上下方向に沿った断面図である。圧縮機11は、例えばカーエアコンの冷媒回路で用いられる電動型のスクロール圧縮機であり、冷媒(熱媒体)を吸入し、圧縮してから排出する。以下の説明では、便宜的に、圧縮機11における軸方向の一方側を前側とし、軸方向の他方側を後側とする。
【0011】
圧縮機11は、軸方向に沿って前側から順に並んだ、フロントハウジング12と、センタハウジング13と、リアハウジング14と、によって気密性を保つように一体化されている。フロントハウジング12には、冷媒を吸入する吸入口(図示省略)が形成されており、リアハウジング14には、圧縮された冷媒を排出する排出口16が形成されている。フロントハウジング12は、吸入口に連通した吸入室21を備え、この吸入室21に電動モータ22が収容されている。電動モータ22の回転軸23は、前側がフロントハウジング12によって回転自在に支持され、後側がセンタハウジング13によって回転自在に支持されている。
【0012】
センタハウジング13には、固定スクロール24と、可動スクロール25と、が収容されている。円板状の固定スクロール24は、センタハウジング13の後側を閉塞するように固定され、前面に渦巻き状の固定側ラップ26が形成されている。円板状の可動スクロール25は、固定スクロール24よりも前側に配置され、後面に渦巻き状の可動側ラップ27が形成されている。固定スクロール24の前面と可動スクロール25の後面とが対向し、固定側ラップ26と可動側ラップ27とが噛み合っている。固定側ラップ26の先端は、図示しないチップシールを介して可動スクロール25の後面に摺動可能に接触し、可動側ラップ27の先端は、図示しないチップシールを介して固定スクロール24の前面に摺動可能に接触している。固定スクロール24の前面、固定側ラップ26、可動スクロール25の後面、及び可動側ラップ27で囲まれた区画によって、冷媒を圧縮するための圧縮室28が形成されている。軸方向から見ると、圧縮室28は、略三日月状の密閉空間となる。
【0013】
可動スクロール25の前側には、背圧室29が形成されている。背圧室29には、後述する高圧のオイルが供給されることにより、可動スクロール25を固定スクロール24へ押し付け、圧縮室28の密閉性を高めている。可動スクロール25の前面には、ボス31が形成され、回転軸23の後端には、偏心させたクランク端部32が形成され、クランク端部32がボス31に回転自在の状態で嵌め込まれている。回転軸23の回転運動は、クランク端部32によって旋回運動として可動スクロール25に伝達される。可動スクロール25は、例えばピン&ホールを介して自転が阻止され、且つ固定スクロール24に対する公転が許容されている。
【0014】
固定スクロール24の中央には、前後方向に貫通した吐出孔33が形成され、固定スクロール24の後面には、吐出孔33の後端側を開閉可能な吐出弁34が設けられている。吐出弁34は、弾性変形可能な板材であり、上端側がボルト35を介して固定スクロール24の後面に締結された状態で、下端側で吐出孔33の後端側を塞いでいる。固定スクロール24に対して可動スクロール25が公転すると、圧縮室28は、容積を縮小させながらスクロール中心に向かって変位してゆく。圧縮室28は、スクロール外側にあるときに吸入室21と連通して冷媒を吸入し、スクロール中心にあるときに吐出孔33と連通して圧縮した冷媒を吐出する。吐出弁34は、吐出圧を受けて弾性変形するときに、下端側が後方に撓んで冷媒を吐出させる。固定スクロール24の後側には、リアハウジング14によって覆われた吐出室41が形成されている。
【0015】
リアハウジング14は、冷媒とオイルとを分離させる分離室42と、分離したオイルを貯留する貯留室43と、を備える。オイル分離の説明については後述する。分離室42は、リアハウジング14における吐出室41よりも後側に配置され、貯留室43は、リアハウジング14における分離室42よりも前側で、且つ吐出室41よりも下側に配置されている。分離室42は、リアハウジング14の下面側から開けられた丸穴であり、下端側が閉塞部材44によって封止され閉塞されている。分離室42の上端は、排出口16に連通している。分離室42の上部は、横方向に貫通した連通孔45を介して吐出室41に連通している。分離室42の底部は、横方向に貫通した連通孔46を介して貯留室43に連通している。
【0016】
リアハウジング14には、貯留室43の底面に連通するオイル戻し流路51が形成されている。センタハウジング13には、一方がオイル戻し流路51に連通し、他方が背圧室29に連通するオイル戻し流路52が形成されている。したがって、貯留室43に貯留されたオイルは、高圧となる分離室42からの圧力を受けて、オイル戻し流路51、オイル戻し流路52を順に経て背圧室29に供給される。これにより、可動スクロール25に背圧を与え、軸受を含む各摺動部の潤滑が行なわれる。なお、貯留室43から背圧室29の経路の間には絞りがあり、高圧から中圧に減圧されて背圧室29にオイルが供給される。また、回転軸23の内方には、軸方向に沿って延び背圧室29に連通するオイル戻し流路53が形成されている。したがって、背圧室29に供給されたオイルは、さらにオイル戻し流路53を経て、回転軸23の前端側へ供給される。これにより、軸受を含む各摺動部の潤滑が行なわれる。なお、回転軸23には絞りがあり、中圧から低圧に減圧されたオイルが回転軸23の前端側へ供給される。
【0017】
次に、冷媒とオイルとを分離させるオイル分離構造55について説明する。図2は、分離室42の拡大断面図である。オイル分離構造55は、分離室42と、排出配管61と、仕切部材62と、を備える。分離室42は、前述したようにリアハウジング14の下面側から開けられた丸穴により形成されるため、中心軸を上下方向とする円柱状の内部空間である。筒状に形成された排出配管61が、分離室42の上方から分離室42内に挿入され、当該排出配管61の上端が排出口16に接続されている。本実施例において、排出配管61の下端は分離室42における上下方向の略中央まで延びている。排出配管61の外径は分離室42の内径よりも小さく、分離室42の内周面63と排出配管61の外周面64との間に隙間が形成されている。図中、点線で示す矢印は冷媒の主な流れを表し、ブロック矢印はオイルの主な流れを表している。オイルを含む冷媒は、連通孔45から流入すると、分離室42の内周面63と排出配管61の外周面64との間を螺旋状に下降してゆき、周方向に旋回するときの遠心作用によって冷媒とオイルとが分離される。気相の冷媒は、排出配管61の下端から流入し、排出配管61内を上昇して排出口16から外部へ排出される。一方、分離されたオイルは、分離室42の内周面63を伝って下降してゆく。
【0018】
仕切部材62は、分離室42内を上下方向に仕切り、冷媒の下側への通過を抑制し、且つオイルの下側への通過を許容する。仕切部材62は、分離室42内に下側から圧入される。図3は、仕切部材62を示す図である。図中の(a)は、仕切部材62を上側から見た平面図を示し、図中の(b)は、仕切部材62のA‐A断面を示し、図中の(c)は仕切部材62の斜視図である。仕切部材62は、支持部71と、旋回促進部72と、を備える。支持部71は筒状であり、分離室42の内周面63によって支持される。旋回促進部72は、支持部71よりも小径で下端側が底部73によって閉塞された筒状であり、上端側が支持部71に連続して設けられている。具体的には、旋回促進部72が支持部71よりも下方にあり、旋回促進部72の上端側が支持部71の下端側に連続して設けられている。支持部71の下端側と旋回促進部72の上端側とが連続してつながる部位をR形状としている。すなわち、支持部71の下端側と旋回促進部72の上端側とは、段差ができないように連続した曲面によってつながっている。仕切部材62は、プレス加工によって成形される。
【0019】
旋回促進部72には、径方向の内側と外側を貫通させた複数の連通路75が形成されている。各連通路75は、径方向に沿って貫通させた同一径の丸穴であり、上下方向から見て円の中心を通る一直線上で対向するように配置された二つの連通路であることが好ましい。したがって、分離されたオイルは、支持部71の内周面、及び旋回促進部72の内周面を伝って、各連通路75から径方向外側へと排出される。こうして、分離されたオイルは、仕切部材62の下側へ通過し、貯留室43へと流れる。旋回促進部72の内側底面にオイルが溜まることがないように、連通路75が底部73の上面に接するように配置されている。
【0020】
支持部71は、分離室42の内周面63に圧入されるので、締め代を設けるために、支持部71の外径寸法は分離室42の内径寸法よりも僅かに大きくしてある。支持部71における上端の径方向外側となる角部74には、面取り加工かR面取り加工(フィレット)を施している。旋回促進部72は、分離室42の内周面63に沿って旋回しながら下降してきた冷媒の旋回を促進させるために、支持部71よりも小径にしている。旋回促進部72の内径寸法を小さくし過ぎると、オイルの排出性能が低下し、旋回促進部72の内径寸法を大きくし過ぎると、冷媒の旋回を促進する効果が低下する。したがって、旋回促進部72の内径寸法は、支持部71の内径寸法の例えば40%~60%程度の範囲とし、好ましくは50%程度である。また、支持部71における断面の厚さ変化が平均厚さに対して大きいと、分離室42の内周面63に圧入したときの保持力が低下する。したがって、支持部71における断面の厚さ変化は、平均厚さに対して20%以内とする。
【0021】
《作用》
次に、第一実施形態の主要な作用効果について説明する。分離室42の内周面63に沿って旋回しながら下降してきた冷媒は、前述したように排出配管61の下端から排出されてゆくが、一部の冷媒は、さらに分離室42の内周面63に沿って旋回しながら下降してくる。分離室42の底部には、分離されたオイルが溜まりやすく、これを高圧の冷媒が巻き上げてしまうことを抑制するために、仕切板を設け、この仕切板にオイルを通過させるための切欠を設けることが考えられる。しかしながら、上下方向に連通した単純な切欠を形成しただけの構成では、オイルだけではなく、やはり冷媒も通過してしまう。冷媒が仕切板を通過すると、仕切板の下方にあるオイル溜りでオイルの巻き上げを生じ、オイルの分離性能が低下する可能性がある。したがって、オイルの分離性能に改善の余地があった。
【0022】
そこで本実施形態では、仕切部材62に径方向の内側と外側を貫通させた連通路75を形成したため、上下方向に連通させた単純な構造と比較して冷媒が通過しにくくなる。また、仕切部材62の旋回促進部72は、支持部71よりも小径であるため、分離室42の内周面63に沿って旋回しながら下降してきた冷媒は、旋回が促進される。図3の(b)において、点線で示す矢印は冷媒の流れを表し、ブロック矢印はオイルの流れを表している。旋回しながら下降してきた冷媒は、支持部71から旋回促進部72へ移行すると、旋回速度が上昇し、旋回方向の流線が強まるため、連通路75を通過しにくくなり、旋回促進部72の内側底面に衝突してから上昇してゆく。したがって、冷媒は仕切部材62の下側へ通過することが抑制され、これによりオイルの分離性能が向上する。実際、発明者らの解析結果によれば、仕切部材62の下方では、冷媒の流れがほとんど生じなくなることが判明した。
【0023】
仕切部材62は、支持部71と旋回促進部72とが連続してつながる部位をR形状としている。これにより、オイルや冷媒を旋回促進部72へと滑らかに案内できる。特に冷媒は旋回しながら下降してくるが、その旋回速度や流線が弱まると、連通路75を通過しやすくなる。したがって、支持部71から旋回促進部72へと滑らかに案内し、旋回速度や流線が弱まらないようにすることで、連通路75を通過しにくくなり、オイルの分離性能が向上する。また、仕切部材62は、旋回促進部72が支持部71よりも下方にあり、旋回促進部72の上端側が支持部71の下端側に連続して設けられており、支持部71における上端の径方向外側が面取りされている。これにより、仕切部材62を分離室42へ圧入するときの作業性が向上する。
【0024】
また、仕切部材62には、旋回促進部72を横方向に貫通した複数の連通路75が形成されている。これにより、上下方向に連通させた構造と比較して、冷媒が通過しにくくなり、オイルの分離性能が向上する。また、複数の連通路75が形成されていることで、オイルの排出を阻むことはない。また、仕切部材62は、横方向に沿った一直線上で対向するように配置された二つの連通路75が形成されている。これにより、一回の穴開け加工で二つの連通路75を形成することができ、加工性に優れる。また、支持部71における断面の厚さ変化を平均厚さに対して20%以内としている。これにより、仕切部材62を分離室42の内周面63に圧入したときの保持力が低下することを抑制できる。さらに、仕切部材62をプレス加工によって成形しているので、中身の詰まった中実形状よりも加工性が向上し、コストを抑制できる。
【0025】
《変形例》
第一実施形態では、連通路75を径方向(横方向)に沿って貫通させているが、これに限定されるものではない。径方向に沿っていなくても、径方向の内側と外側を貫通させていればよいため、連通路75の貫通方向を、上下方向に傾斜させていてもよい。図4は、仕切部材の変形例を示す図である(貫通方向)。ここでは、径方向外側に向かうほど下方に下がるように、連通路75を貫通させている。これにより、連通路75を径方向に沿って貫通させた場合よりも、加工がしやすく、また仕切部材62の下方へとオイルを通過させやすい。
【0026】
第一実施形態では、旋回促進部72の内径を略均一とし、支持部71と旋回促進部72との間に段差のある構成を示したが、これに限定されるものではない。旋回促進部72において、上端が支持部71と同一径になるようにし、下側にいくほど小径になるテーパ状の構成としてもよい。テーパ形状は線形でも非線形でもよい。図5は、仕切部材の変形例を示す図である(テーパ)。ここでは、旋回促進部72を線形のテーパ形状にしている。なお連通路75は、径方向に沿って貫通させている。これにより、支持部71と旋回促進部72との間の段差をなくし、オイルや冷媒を旋回促進部72へと滑らかに案内することができる。
【0027】
また、第一の実施形態では、仕切部材62に二つの連通路75を形成しているが、これに限定されるものではなく、一つか、又は三つ以上の連通路75を形成してもよい。三つ以上にする場合は、連通路75の穴開け加工の工数を考慮し、周方向に90度ずつずらした四つにすることが好ましい。また、第一次の実施形態では、仕切部材62をプレス加工によって成形しているが、これに限定されるものではなく、鋳造してもよい。さらには、支持部71と旋回促進部72とを別部材で成形してから双方を連結するようにしてもよい。
【0028】
《第二実施形態》
《構成》
第二実施形態は、仕切部材の他の構成を示すものである。前述した第一実施形態と共通する部分については、詳細な説明を省略する。図6は、第二実施形態における分離室の拡大断面図である。オイル分離構造55は、仕切部材82を備える。図7は、仕切部材を示す図である。図中の(a)は、仕切部材82を上側から見た状態を示し、図中の(b)は、仕切部材82のB‐B断面を示し、図中の(c)は仕切部材82の斜視図である。
【0029】
仕切部材82は、支持部91と、旋回促進部92と、を備える。支持部91は筒状であり、分離室42の内周面63によって支持される。旋回促進部92は、支持部91よりも小径で下端側が底部93によって閉塞された筒状であり、上端側が支持部91に連続して設けられている。具体的には、旋回促進部92が支持部91よりも径方向内側にあり、旋回促進部92の上端側が支持部91の上端側に連続して設けられており、旋回促進部92の上端側を径方向外側に折り返したような形状としている。支持部91の上端側と旋回促進部92の上端側とが連続してつながる部位をR形状としている。すなわち、支持部91の下端側と旋回促進部92の上端側とは、段差ができないように連続した曲面によってつながっている。仕切部材82は、プレス加工によって成形される。
【0030】
旋回促進部92には、径方向の内側と外側を貫通させた二つの連通路95が形成されている。二つの連通路95は、径方向に沿って貫通させた同一径の丸穴であり、上下方向から見て円の中心を通る一直線上で対向するように配置されている。したがって、分離されたオイルは、支持部91の内周面、及び旋回促進部92の内周面を伝って、二つの連通路95から径方向外側へと排出される。こうして、分離されたオイルは、仕切部材62の下側へ通過し、貯留室43へと流れる。旋回促進部92の内側底面にオイルが溜まることがないように、連通路95が旋回促進部92の底部93側に配置されている。
【0031】
支持部91は、分離室42の内周面63に圧入されるので、締め代を設けるために、支持部91の外径寸法は分離室42の内径寸法よりも僅かに大きくしてある。支持部91における上端の径方向外側となる角部94には、プレス加工によってR形状が形成されている。旋回促進部92は、分離室42の内周面63に沿って旋回しながら下降してきた冷媒の旋回を促進させるために、支持部91よりも小径にしている。旋回促進部92の内径寸法を小さくし過ぎると、オイルの排出性能が低下し、旋回促進部92の内径寸法を大きくし過ぎると、冷媒の旋回を促進する効果が低下する。したがって、旋回促進部92の内径寸法は、支持部91の内径寸法の例えば40%~60%程度の範囲とし、好ましくは50%程度である。
【0032】
《作用》
次に、第二実施形態の主要な作用効果について説明する。
本実施形態では、仕切部材82は、旋回促進部92が支持部91よりも径方向内側にあり、旋回促進部92の上端側が支持部91の上端側に連続して設けられている。第一実施形態では、支持部71における上端の径方向外側に面取り加工を施す必要があったが、第二実施形態では、支持部91における上端の径方向外側となる角部94には、プレス加工によってR形状が形成されている。したがって、面取り加工を省略できため工数を削減することができる。その他の作用効果については、前述した第一実施形態と同様である。
【0033】
《変形例》
第二実施形態では、連通路95を丸穴としているが、これに限定されるものではない。連通路95は、径方向の内側と外側を貫通していればよいため、任意の形状とすることができる。図8は、仕切部材の変形例を示す図である(長穴)。ここでは、連通路95を周方向に沿って長くした長穴形状又は楕円形状とした。なお連通路75は、径方向に沿って貫通させている。これにより、連通路95を丸穴(正円)とした場合よりも、開口面積が増加し、仕切部材62の下方へとオイルを通過させやすくなる。また、同一の開口面積を確保しようとした場合、連通路95を上下方向に沿って長くすることもできるが、旋回促進部92の上下寸法が増加する可能性もある。したがって、連通路95を周方向に沿って長くする方が省スペース化に有利となる。
【0034】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0035】
11…圧縮機、12…フロントハウジング、13…センタハウジング、14…リアハウジング、16…排出口、21…吸入室、22…電動モータ、23…回転軸、24…固定スクロール、25…可動スクロール、26…固定側ラップ、27…可動側ラップ、28…圧縮室、29…背圧室、31…ボス、32…クランク端部、33…吐出孔、34…吐出弁、35…ボルト、41…吐出室、42…分離室、43…貯留室、44…閉塞部材、45…連通孔、46…連通孔、51…オイル戻し流路、52…オイル戻し流路、53…オイル戻し流路、55…オイル分離構造、61…排出配管、62…仕切部材、63…内周面、64…外周面、71…支持部、72…旋回促進部、73…底部、74…角部、75…連通路、82…仕切部材、91…支持部、92…旋回促進部、93…底部、94…角部、95…連通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8