(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
F04B 9/14 20060101AFI20240329BHJP
B65D 47/34 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
F04B9/14 B
B65D47/34 110
(21)【出願番号】P 2019216960
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】先曽 洋一
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】実公昭49-038571(JP,Y1)
【文献】特開2019-151404(JP,A)
【文献】特開2018-052594(JP,A)
【文献】実開昭61-019463(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 9/14
B65D 47/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体における口部の内側に、上方付勢状態で下方移動可能に配設されるステムと、
前記口部に装着される装着キャップが取り付けられるとともに、前記ステムが挿入された筒状のシリンダと、
前記シリンダ内で前記ステムの上下動に連係するとともに、前記シリンダの内周面に上下摺動可能に嵌合されたピストンと、
前記ステムの上端部に取り付けられ、内容物を吐出する吐出口を有する吐出ヘッドと、
前記シリンダ内において前記ステムに対して下方に位置する部分に配置され、前記ステムを上方付勢する付勢部材と、
前記ステムが挿通された状態で、前記シリンダに嵌合され、前記シリンダの上端開口を閉塞する抜け止め部と、
前記シリンダに取り付けられるとともに、前記ステムの下降端位置において前記吐出ヘッドが係合することで、前記シリンダに対する前記ステムの上下方向の移動を規制する規制部と、を備え、
前記抜け止め部は、前記シリンダに形成されたねじ部の外形が転写された状態で、前記ねじ部に係合する係合部を備え、
前記抜け止め部は、前記係合部と前記ねじ部とが係合して前記シリンダに嵌合された状態で前記シリンダに対する前記ステムの上方移動を規制し、前記係合部と前記ねじ部との係合が解除されて前記シリンダから取り外された状態で、前記シリンダの上端開口を開放して前記シリンダに対する前記ステムの上方規制を解除し、
前記抜け止め部は、破断可能な弱化部を介して前記規制部に連結され、
前記付勢部材は、金属製であ
り、前記付勢部材以外の他の構成部材は、樹脂材料により形成されている吐出器。
【請求項2】
前記抜け止め部は、
前記シリンダの周囲に配置されたベース筒と、
前記ベース筒から径方向に突出するとともに、上下方向に延びる縦リブと、を備え、
前記係合部は、前記縦リブに対して前記ねじ部の外形が転写されて形成されている請求項1に記載の吐出器。
【請求項3】
前記抜け止め部は、前記シリンダよりも軟らかい材料により形成されている請求項1又は請求項2記載の吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
吐出容器は、容器本体の口部に吐出器が装着されて構成されている。吐出器は、シリンダを有し、容器本体の口部に装着される固定吸引部と、ステム及び吐出ヘッドを有し、コイルスプリングによって上方付勢状態で下方移動可能に固定吸引部に組み合わされる作動部材と、を備えている(例えば、下記特許文献1参照)。
この構成によれば、作動部材の押し下げ操作により、吐出ヘッドを介してシリンダ内の内容物を吐出することができるとともに、コイルスプリングによる作動部材の上方への復元移動に伴ってシリンダ内に内容物を吸い上げることが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、廃棄物を廃棄する際には、例えば環境負荷の低減化、廃棄物の処理効率の向上化等に対応するために、一般的に廃棄物の種類に応じて分別を行った後に廃棄を行っている。この点、使い終わった吐出器を廃棄する際、金属製のコイルスプリングを具備したままの状態では、コイルスプリング以外の構成部品が合成樹脂製であったとしても、いわゆる不燃ごみに該当してしまう。そのため、金属製のコイルスプリングと、それ以外の合成樹脂製の構成部品と、を分別して廃棄することが望まれている。
【0005】
しかしながら、上述した従来の吐出器では、有底筒状のシリンダ内において、ステムの下方に位置する部分に、コイルスプリングが組み込まれている。この場合、廃棄時にコイルスプリングを取り外すことが難しく、上述したニーズに対応することができなかった。
【0006】
本発明は、シリンダ内に組み込まれる付勢部材を廃棄時に簡単に取り外すことができる吐出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る態様の吐出器は、容器本体における口部の内側に、上方付勢状態で下方移動可能に配設されるステムと、前記口部に装着される装着キャップが取り付けられるとともに、前記ステムが挿入された筒状のシリンダと、前記シリンダ内で前記ステムの上下動に連係するとともに、前記シリンダの内周面に上下摺動可能に嵌合されたピストンと、前記ステムの上端部に取り付けられ、内容物を吐出する吐出口を有する吐出ヘッドと、前記シリンダ内において前記ステムに対して下方に位置する部分に配置され、前記ステムを上方付勢する付勢部材と、前記ステムが挿通された状態で、前記シリンダに嵌合され、前記シリンダの上端開口を閉塞する抜け止め部と、前記シリンダに取り付けられるとともに、前記ステムの下降端位置において前記吐出ヘッドが係合することで、前記シリンダに対する前記ステムの上下方向の移動を規制する規制部と、を備え、前記抜け止め部は、前記シリンダに形成されたねじ部の外形が転写された状態で、前記ねじ部に係合する係合部を備え、前記抜け止め部は、前記係合部と前記ねじ部とが係合して前記シリンダに嵌合された状態で前記シリンダに対する前記ステムの上方移動を規制し、前記係合部と前記ねじ部との係合が解除されて前記シリンダから取り外された状態で、前記シリンダの上端開口を開放して前記シリンダに対する前記ステムの上方規制を解除し、前記抜け止め部は、破断可能な弱化部を介して前記規制部に連結され、前記付勢部材は、金属製であり、前記付勢部材以外の他の構成部材は、樹脂材料により形成されている。
【0008】
本態様によれば、シリンダと抜け止め部との嵌合を解除することで、シリンダの上端開口を開放させることができる。これにより、吐出器の構成部材の中から、付勢部材を取り出すことができる。そのため、シリンダ内に組み込まれる付勢部材を廃棄時に簡単に取り外すことができ、付勢部材と、その他の構成部材と、を分別することができる。その結果、環境負荷の低減化、廃棄物の処理効率の向上化等に対応することができる。
しかも、シリンダに形成されたねじ部に抜け止め部の係合部が係合されているので、抜け止め部とシリンダとを締結解除方向に相対回転させることで、抜け止め部を簡単にシリンダから離脱させることができる。これにより、付勢部材を簡単に取り出すことができる。
特に、本態様では、抜け止め部のシリンダへの嵌合により、シリンダのねじ部の外形を抜け止め部に転写することができるので、抜け止め部に予めねじ形状や係合部を成形する必要がない。また、打栓等によって抜け止め部をシリンダに嵌合させるだけで、抜け止め部をシリンダに簡単に取り付けることができる。そのため、製造効率の向上や製造コストの削減を図ることができる。
【0009】
本態様によれば、ステムが下降端位置で保持されるので、流通段階等において、吐出ヘッドが押下される等して、内容物が不意に吐出されるのを抑制できる。
特に、本態様では、規制部と抜け止め部とが破断可能な弱化部を介して連結されるので、抜け止め部のみがシリンダに嵌合されている場合に比べ、抜け止め部が不意にシリンダから外れるのを抑制できる。
【0010】
上記態様に係る吐出器において、前記抜け止め部は、前記シリンダの周囲に配置されたベース筒と、前記ベース筒から径方向に突出するとともに、上下方向に延びる縦リブと、を備え、前記係合部は、前記縦リブに対して前記ねじ部の外形が転写されて形成されていてもよい。
本態様によれば、ベース筒の全周に亘ってねじ部の外形を転写する場合に比べ、抜け止め部とねじ部との接触面積を縮小させることができる。そのため、抜け止め部(縦リブ)と雌ねじ部との間に作用する面圧を高めることができる。これにより、雌ねじ部の外形を縦リブに良好に転写させることができる。
【0011】
上記態様に係る吐出器において、前記抜け止め部は、前記シリンダよりも軟らかい材料により形成されていてもよい。
本態様によれば、抜け止め部をシリンダ内に嵌合させた際に、ねじ部の変形を抑えた上で、ねじ部の外形を抜け止め部に良好に転写させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シリンダ内に組み込まれる付勢部材を廃棄時に簡単に取り外すことができる
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る吐出器が下降端位置にある状態を示す吐出容器の断面図である。
【
図2】実施形態に係る吐出器が上昇端位置にある状態を示す吐出容器の断面図である。
【
図3】実施形態に係る吐出器が分解位置にある状態を示す吐出容器の部分断面図である。
【
図4】実施形態に係る吐出器の分解方法を説明するための吐出容器の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、本発明に係る吐出器が容器本体に取り付けられてなる吐出容器について説明する。
図1、
図2に示す吐出容器1は、有底筒状の容器本体11と、容器本体11の口部11aに着脱可能に装着された吐出器12と、を備えている。
容器本体11は、内容物が収容可能に構成されている。なお、内容物は、例えばシャンプーやボディソープ、化粧料等の液体である。
【0015】
吐出器12は、ポンプ機構14と、ポンプ機構14に取り付けられる外装部材15と、を備えている。ポンプ機構14は、ステム21やピストン22、シリンダ23、ピストンガイド24、下部弁体25、閉塞部26、規制リング27、付勢部材28等を備えている。なお、ポンプ機構14のうち、少なくともステム21やピストン22、シリンダ23は、共通軸上に同軸に配設された筒状に形成されている。以下、共通軸を軸線Oといい、軸線Oに沿う方向を上下方向という。上下方向のうち、容器本体11の底部から吐出器12に向かう方向を上方とし、吐出器12から容器本体11の底部に向かう方向を下方とする。また、上下方向から見た平面視において、軸線Oに交差する方向を径方向といい、軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0016】
シリンダ23は、上方に位置するものほど外径が拡大する多段筒状に形成されている。具体的に、シリンダ23は、取付筒31、収容筒32、摺動筒33及び突出筒34が下方から上方に連なっている。
取付筒31には、吸上筒41が嵌合されている。吸上筒41は、下端開口が容器本体11の底部に近接する位置まで延設されている。
【0017】
摺動筒33の上部には、摺動筒33を径方向に貫通する導入孔33aが形成されている。摺動筒33の上端開口縁には、径方向の外側に向けてフランジ部42が突設されている。フランジ部42は、摺動筒33の全周に亘って形成されている。フランジ部42は、吐出器12が容器本体11に装着された状態において、口部11aの上端開口縁上にパッキン44を間に挟んで配置される。
突出筒34は、フランジ部42から上方に延設されている。突出筒34の内周面には、雌ねじ部35が形成されている。
【0018】
下部弁体25は、上述した収容筒32内に収容されている。具体的に、下部弁体25は、嵌合筒45と、下方規制部46と、弁本体47と、を備えている。
嵌合筒45は、有頂筒状に形成されている。嵌合筒45の周壁部は、収容筒32の下部に嵌合されている。
下方規制部46は、収容筒32内において、嵌合筒45の頂壁部から上方に突設されている。
【0019】
弁本体47は、嵌合筒45(周壁部)の内周面に、弾性変形可能な連結片を介して連結されている。すなわち、弁本体47は、連結片の弾性変形に応じて嵌合筒45に対して上下方向に弾性変位可能に構成されている。弁本体47は、収容筒32内において、収容筒32の下端開口縁に形成された環状のシール突部に、シール突部の上方から着座する。
【0020】
下部弁体25(弁本体47)は、シリンダ23内の加圧時にシリンダ23の下端開口を閉塞したままで、シリンダ23内の減圧時にシリンダ23の下端開口を開放する逆止弁である。下部弁体25は、シリンダ23内の加圧時において、シリンダ23内の内容物が収容筒32の下端開口を通じて容器本体11に戻ることが阻止される。一方、シリンダ23内の減圧時には、容器本体11内の内容物が収容筒32の下端開口を通じてシリンダ23内に流入する。
【0021】
ピストンガイド24は、シリンダ23内をステム21とともに上下動可能に構成されている。具体的に、ピストンガイド24は、栓部51と、栓部51上方に延設された装着部52と、を備えている。
【0022】
栓部51は、有頂筒状に形成されている。栓部51は、上下動に伴い、収容筒32と摺動筒33内との連通及び遮断を切り替える。具体的に、
図1に示すステム21の下降端位置P1において、栓部51(周壁部)の下部は、収容筒32内に嵌合されている。これにより、収容筒32内と摺動筒33内との連通が上下方向で遮断される。一方、
図2に示すステム21の上昇端位置P2において、栓部51(周壁部)の下部は、収容筒32から上方に離脱する。これにより、収容筒32内と摺動筒33内とが連通する。
【0023】
栓部51の周壁部には、径方向の外側に向けて近接突起51aが形成されている。近接突起51aは、周方向に間隔をあけて複数形成されている。近接突起51aにおける径方向の外側端面は、収容筒32の内周面よりも径方向の外側に位置し、摺動筒33の内周面よりも径方向の内側に位置している。近接突起51aは、ステム21が下降端位置P1にある状態で、収容筒32の上端開口縁に収容筒32の上方から近接又は当接する。
【0024】
装着部52は、周方向に間隔をあけて配置された複数の分割周壁と、複数の分割周壁における周方向の中央部から径方向の内側に向けて各別に突出するリブと、を備えている。分割周壁の外周面は、栓部51の周壁部に対して径方向の内側に位置している。各リブにおける径方向の内側端部同士は、軸線O上で互いに連結されている。リブは、分割周壁における上下方向の全域にわたって配設されている。装着部52は、周方向で隣り合う分割周壁同士の間を通じて、分割周壁の内外が連通している。なお、装着部52は、周方向の全周に亘って連続して延びる筒部に、筒部を径方向に貫通する貫通孔を有する構成であってもよい。
【0025】
ステム21は、シリンダ23の摺動筒33内にシリンダ23の上方から挿入されている。ステム21は、吐出器12が容器本体11に装着された状態において、口部11aの内側に配設される。ステム21は、シリンダ23内において、付勢部材28により上方付勢状態で下方移動可能に構成されている。ステム21は、下筒部61と、下筒部61よりも小径に形成された上筒部62と、を備えている。
【0026】
下筒部61は、装着部52の周囲を取り囲んでいる。下筒部61の内周面と装着部52(分割周壁)の外周面との間には、周方向の全体に亘って隙間が形成されている。下筒部61の上端開口縁には、径方向の内側に向けて段部63が形成されている。図示の例において、段部63は、上方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びるテーパ状に形成されている。但し、段部63は、軸線Oに対して直交する方向に突設されていてもよい。
上筒部62は、段部63における径方向の内側端部(上端部)から上方に延設されている。上筒部62内の下部には、装着部52(分割周壁)が嵌合されている。
【0027】
ピストン22は、外筒及び内筒が連結部によって連結された構成である。
外筒は、上下方向の中央部から両側に向かうに従い外径が拡大している。外筒は、上下方向の両端部が摺動筒33の内周面上を上下方向に摺動可能に構成されている。
内筒は、上述した下筒部61内に上下方向に摺動可能に嵌合される。
【0028】
図2に示すように、ピストン22は、ステム21の上昇端位置P2において、外筒によって上述した導入孔33aを閉塞する。具体的に、外筒の上下方向の両端部が、摺動筒33の内周面のうち導入孔33aに対して上下方向の両側に位置する部分に密接することで、導入孔33aが閉塞される。
【0029】
閉塞部26は、シリンダ23内において、ピストン22の上方に位置する部分に配置されている。閉塞部26は、軸線Oと同軸に配置された筒状に形成されている。閉塞部26は、ステム21(上筒部62)の周囲を取り囲んでいる。具体的に、閉塞部26は、シール筒71と、囲繞筒72と、を備えている。
【0030】
シール筒71は、は、上下方向の中央部から両側に向かうに従い外径が拡大している。シール筒71は、上下方向の両端部が摺動筒33の内周面上を上下方向に摺動可能に構成されている。シール筒71は、
図1に示すステム21の下降端位置P1において、導入孔33aを閉塞している。具体的に、シール筒71の上下方向の両端部が、摺動筒33の内周面のうち導入孔33aに対して上下方向の両側に位置する部分に密接することで、導入孔33aが閉塞される。これにより、流通段階等、ステム21の下降端位置P1があるときに導入孔33aを通じた容器本体11内とシリンダ23内との連通が遮断されている。一方、シール筒71の下端部は、
図2に示すステム21の上昇端位置P2において、ピストン22における外筒の上端部に当接している。本実施形態において、シール筒71は、段部63に上下方向で対向している。
【0031】
囲繞筒72は、シール筒71から上方に延在している。囲繞筒72は、シール筒71に対して縮径している。囲繞筒72の下端縁は、上述した段部63に上下方向で対向している。囲繞筒72は、シリンダ23の内周面とステム21(上筒部62)の外周面との隙間を通じて突出筒34よりも上方に突出している。なお、下降端位置P1において、囲繞筒72の上端縁はステム21の上端縁と同等の位置に配置されている。
【0032】
付勢部材28は、シリンダ23内において、ピストンガイド24と下部弁体25との間に介在している。付勢部材28は、例えばコイルスプリングである。付勢部材28は、収容筒32内で下方規制部46の周囲を取り囲んでいる。付勢部材28の下端は、嵌合筒45の上面に支持されている。付勢部材28の上端は、栓部51の頂壁部に支持されている。すなわち、付勢部材28は、ピストンガイド24を介してステム21を上方に向けて付勢している。付勢部材28は、廃棄の際に吐出器12における他の構成部材とは分別が必要な材料により構成されている。このような材料として、製造の容易さや長期に渡って圧縮された状態であってもへたり難い物性等を鑑みると金属製であることが好ましい。本実施形態において、他の構成部材は、樹脂材料により形成されている。なお、付勢部材28は、コイルスプリングに限られない。
【0033】
規制リング27は、突出筒34に取り付けられている。規制リング27は、規制部80と、抜け止め部81と、を備えている。
規制部80は、軸線Oと同軸に配置された筒状に形成されている。規制部80は、突出筒34の周囲を取り囲んでいる。規制部80内には、打栓等によって突出筒34が嵌合されている。規制部80の外周面には、雄ねじが形成されている。規制部80の上端部には、径方向の内側に突出する規制突部82が形成されている。規制突部82は、突出筒34の上端部外周に形成された規制凹部(不図示)の内面に係合している。これにより、突出筒34に対する規制部80(規制リング27)の軸線O回りの回転が規制されている。なお、規制部80と突出筒34との間の回り止めを行う構成としては、規制部80に規制凹部を設け、突出筒34に規制突部を設ける等、適宜変更が可能である。
【0034】
抜け止め部81は、ベース筒85と、フランジ部86と、を備えている。
ベース筒85は、軸線Oと同軸に配置された筒状に形成されている。ベース筒85内には、上述した上筒部62や囲繞筒72がベース筒85の下方から挿入されている。ベース筒85の下部は、突出筒34の上端開口を通じてシリンダ23内に挿入されている。ベース筒85は、シリンダ23内において、突出筒34の内周面と囲繞筒72の外周面との間に進入している。これにより、ベース筒85は、シリンダ23の上端開口を閉塞している。本実施形態において、ベース筒85の下端縁は、上述したシール筒71に上下方向で対向している。ベース筒85は、上昇端位置P2において、シール筒71がベース筒85の下方から近接又は当接することで、抜け止め部81に対する閉塞部26の上方移動を規制する。なお、ベース筒85の下端は、摺動筒33内に位置している。
【0035】
フランジ部86は、ベース筒85における上下方向の中央部(突出筒34よりも上方に位置する部分)から径方向の外側に張り出している。フランジ部86の外周部分と、規制部80の上端縁とは、破断可能な弱化部88を介して連結されている。なお、弱化部88は、フランジ部86と規制部80とを周方向に間欠的に連結するものであってもよく、他の部分よりも薄肉に形成されているものであってもよい。
【0036】
ベース筒85のうち、フランジ部86よりも上方に位置する部分には、摘み部89が形成されている。摘み部89は、ベース筒85から径方向の外側に突出するとともに、上下方向に延在している。摘み部89の下端は、フランジ部86に連なっている。摘み部89は、周方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0037】
本実施形態において、規制リング27は、シリンダ23よりも軟らかい軟材質により形成されている。例えばシリンダ23がポリエチレンテフタレートにより形成されるのに対し、規制リング27はがポリプロピレンにより形成されている。
【0038】
ここで、ベース筒85のうち、フランジ部86よりも下方に位置する部分には、縦リブ90が形成されている。縦リブ90は、周方向に間隔をあけて複数形成されている。各縦リブ90は、ベース筒85から径方向の外側に突出するとともに、上下方向に延在している。縦リブ90の上端は、フランジ部86に連なっている。縦リブ90の下端は、ベース筒85の下端よりも上方に位置している。
【0039】
縦リブ90は、抜け止め部81が打栓により突出筒34内に嵌合された際に、雌ねじ部35のねじ山によって径方向の内側に向けて押し付けられている。すなわち、縦リブ90は、雌ねじ部35のねじ山によって変形させられた状態で、突出筒34内に打栓される。これにより、縦リブ90には、雌ねじ部35の外形が転写されてなる係合部91が形成される。係合部91は、雌ねじ部35のねじ溝内に進入して、ねじ山に対して上下方向で係合している。これにより、規制リング27は、シリンダ23に対する上方移動が規制されている。
【0040】
なお、縦リブ90のうち、ねじ山が押し付けられている部分は、持続応力の作用によってクリープ変形(塑性変形)が発生していてもよく、抜け止め部81をシリンダ23から離脱させた際に復元変形してもよい。また、縦リブ90は、抜け止め部81の打栓前の状態において、ねじ山よりも径方向の外側に位置し、突出筒34の内周面よりも径方向の内側に位置していればよい。
【0041】
外装部材15は、装着キャップ100と、吐出ヘッド101と、を備えている。外装部材15は、吐出器12が容器本体11に装着された状態において、吐出器12の外部に露呈する部分である。
装着キャップ100は、有頂筒状に形成されている。装着キャップ100の天壁部103には、天壁部103を上下方向に貫通する挿通孔105が形成されている。挿通孔105内には、上述した突出筒34や規制リング27が挿入されている。
【0042】
装着キャップ100の周壁部106は、天壁部103の外周縁から下方に延在している。周壁部106は、口部11aに着脱可能に螺着される。すなわち、ポンプ機構14は、装着キャップ100を介して容器本体11に装着される。但し、装着キャップ100は、例えばアンダーカット嵌合等、螺着以外の方法によって口部11aに装着されていてもよい。
【0043】
吐出ヘッド101は、操作部110と、装着筒111と、連結筒112と、吐出筒113と、を備えている。
操作部110は、有頂筒状に形成されている。
【0044】
装着筒111は、操作部110の天板部から下方に延在している。装着筒111は、軸線Oと同軸に配置されている。装着筒111の下部は、ステム21(上筒部62)内に打栓等によって嵌合されている。
【0045】
装着筒111のうち、ステム21よりも上方に位置する部分には、突出片120が形成されている。突出片120は、装着筒111から径方向の外側に突出するとともに、上下方向に沿って延在している。突出片120の上端は、操作部110の天板部に連なっている。突出片120の下端縁は、上筒部62の上端縁に上筒部62の上方から近接又は当接している。すなわち、突出片120は、ステム21に対する吐出ヘッド101の下方移動を規制する。
【0046】
連結筒112は、吐出ヘッド101の周壁部から下方に延在している。連結筒112は、装着筒111の周囲を取り囲んでいる。連結筒112は、
図1に示す下降端位置P1において、規制部80に螺着されている。これにより、ステム21が下降端位置P1で保持される。
【0047】
吐出筒113は、操作部110の周壁部及び連結筒112を径方向に貫くように形成されている。吐出筒113における径方向の内側開口部は、装着筒111内に連通している。吐出筒113における径方向の外側開口部は、装着筒111及び吐出筒113を通じてステム21内に連通する吐出口113aを構成している。
【0048】
次に、上述した吐出容器1による内容物の吐出方法について説明する。
まず、
図1に示すように、下降端位置P1に位置する吐出ヘッド101を、規制リング27(規制部80)に対して軸線O回りの締結解除方向に回転させることで、吐出ヘッド101の連結筒112と、規制部80と、の螺着を解除する。この際、吐出ヘッド101、ステム21及びピストンガイド24が、シリンダ23に対して上昇し、ピストンガイド24の栓部51がシリンダ23の収容筒32から外れ、収容筒32内と摺動筒33内とが連通する。そして、付勢部材28の上方付勢力によって、ピストンガイド24、ステム21及び吐出ヘッド101が一体に上昇する。この過程において、
図2に示すように、栓部51の頂壁部が、ピストン22の内筒の下端部に係合することで、ピストンガイド24とともにピストン22も上昇する。
【0049】
ステム21等が上昇すると、シリンダ23内が減圧されることで、下部弁体25がシリンダ23の下端開口を開放し、容器本体11内の内容物が、吸上筒41を通してシリンダ23内に流入する。また、ピストン22の外筒の上端開口縁が、シール筒71の下端縁に係合することで、シール筒71を上昇させる。これにより、シール筒71が導入孔33aから上方に離間する一方、ピストン22の外筒が導入孔33aを閉塞する。
【0050】
そして、吐出ヘッド101を押下して、ステム21及びピストンガイド24を下方移動させると、まずピストンガイド24の栓部51がピストン22の内筒から下方に離間する。これにより、シリンダ23内とステム21内とが連通するとともに、ステム21の下端部がピストン22の連結部に当接する。
ステム21及びピストンガイド24がさらに下方移動すると、ステム21及びピストンガイド24とともにピストン22も下方移動する。これにより、ピストン22が導入孔33aから下方に離間しつつ、シリンダ23内の内容物が、ピストンガイド24における周方向で互いに隣り合う近接突起51a同士の間を通して、ステム21内に流入する。その結果、ステム21内の内容物が吐出ヘッド101の吐出筒113内を通って、吐出口113aから吐出される。
【0051】
次に、吐出ヘッド101の押下を解除すると、付勢部材28の上方付勢力によって、吐出ヘッド101が押し上げられる。これにより、ステム21、ピストンガイド24、ピストン22が、吐出ヘッド101とともに上方に復元移動する。ステム21等の上方移動に伴い、上述したように容器本体11内の内容物が吸上筒41を通じてシリンダ23内に流入する。
【0052】
次に、吐出器12の廃棄方法(分解方法)について説明する。なお、吐出器12の分解作業は、吐出器12を容器本体11から取り外した状態で行うことが好ましい。
図3に示すように、上昇端位置P2にある吐出器12に対し、例えばシリンダ23と摘み部89とを把持した状態で、シリンダ23と抜け止め部81(摘み部89)とを軸線O回りに相対回転させる。この際、雌ねじ部35と係合部91との締結解除方向にシリンダ23と抜け止め部81(摘み部89)とを相対回転させる。なお、本実施形態では、突出筒34に対する規制部80の回転が規制されているため、抜け止め部81と規制部80との共回りが抑制される。
【0053】
シリンダ23と抜け止め部81との相対回転により、弱化部88が破断される。その後、抜け止め部81が規制部80から離脱した後、雌ねじ部35と係合部91との螺着が解除される。雌ねじ部35と係合部91との螺着が解除されることで、抜け止め部81はステム21が挿入された状態で、ステム21に対して上下動可能となる。これにより、閉塞部26を介した抜け止め部81によるステム21の上方規制が解除される。そのため、吐出ヘッド101を上方に引き上げることで、ステム21、ピストン22、ピストンガイド24、閉塞部26(以下、ステム21等という。)が抜け止め部81と一体となって、シリンダ23から引き抜かれる。なお、ステム21等は、抜け止め部81を把持した状態で引き抜いてもよい。
【0054】
図4に示すように、ステム21等をシリンダ23から引き抜くことで、シリンダ23の上端開口が開放される。この状態で、シリンダ23の上端開口が下方を向くように、シリンダ23を傾ける。すると、シリンダ23内に残っていた付勢部材28が、下部弁体25とともに抜け落ちる。これにより、吐出器12の構成部材の中から、分別が必要な付勢部材28を取り外すことができる。その後、付勢部材28と、他の構成部材と、を分別して廃棄する。
【0055】
このように、本実施形態では、シリンダ23内に配置され、ステム21を上方付勢する付勢部材28と、ステム21が挿通された状態で、シリンダ23に嵌合され、シリンダ23の上端開口を閉塞する抜け止め部81と、を備え、抜け止め部81は、シリンダ23に形成された雌ねじ部35の外形が転写された状態で、雌ねじ部35に係合される係合部91を備える構成とした。
この構成によれば、シリンダ23と抜け止め部81との嵌合を解除することで、シリンダ23の上端開口を開放させることができる。これにより、吐出器12の構成部材の中から、付勢部材28を取り出すことができる。そのため、シリンダ23内に組み込まれる付勢部材28を廃棄時に簡単に取り外すことができ、付勢部材28と、その他の構成部材と、を分別することができる。その結果、環境負荷の低減化、廃棄物の処理効率の向上化等に対応することができる。
しかも、シリンダ23に形成された雌ねじ部35に抜け止め部81の係合部91が係合されているので、抜け止め部81とシリンダ23とを締結解除方向に相対回転させることで、抜け止め部81を簡単にシリンダ23から離脱させることができる。これにより、付勢部材28を簡単に取り出すことができる。
特に、本実施形態では、抜け止め部81のシリンダ23への嵌合により、シリンダ23の雌ねじ部35の外形を抜け止め部81に転写することができるので、抜け止め部81に予めねじ形状や係合部を成形する必要がない。また、打栓等によって抜け止め部81をシリンダ23に嵌合させるだけで、抜け止め部81をシリンダ23に簡単に取り付けることができる。そのため、製造効率の向上や製造コストの削減を図ることができる。
【0056】
本実施形態では、下降端位置P1において吐出ヘッド101が規制部80に係合することで、シリンダ23に対するステム21の上下方向の移動が規制される。これにより、ステム21が下降端位置P1で保持されるので、流通段階等において、吐出ヘッド101が押下される等して、内容物が不意に吐出されるのを抑制できる。
特に、本実施形態では、規制部80と抜け止め部81とが破断可能な弱化部88を介して連結される構成とした。
この構成によれば、抜け止め部81のみがシリンダ23に嵌合されている場合に比べ、抜け止め部81が不意にシリンダ23から外れるのを抑制できる。
【0057】
本実施形態では、係合部91が、ベース筒85から径方向に突出する縦リブ90に対して転写される構成とした。
この構成によれば、ベース筒85の全周に亘って雌ねじ部35の外形を転写する場合に比べ、抜け止め部81と雌ねじ部35との接触面積を縮小させることができるので、抜け止め部81(縦リブ90)と雌ねじ部35との間に作用する面圧を高めることができる。これにより、雌ねじ部35の外形を縦リブ90に良好に転写させることができる。
【0058】
本実施形態では、抜け止め部81がシリンダ23よりも軟らかい材料により形成されている構成とした。
この構成によれば、抜け止め部81をシリンダ23内に嵌合させた際に、雌ねじ部35の変形を抑えた上で、雌ねじ部35の外形を縦リブ90に良好に転写させることができる。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
例えば、上述した実施形態では、抜け止め部81がシリンダ23内に挿入され、シリンダ23の雌ねじ部35の外形を抜け止め部81に転写させる構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、シリンダ23が抜け止め部81内に挿入され、シリンダ23に形成された雄ねじ部の外形を抜け止め部81に転写させる構成であってもよい。
上述した実施形態では、シリンダ23内において、ピストンガイド24と下部弁体25との間に付勢部材28を介在させる構成について説明したが、この構成に限られない。付勢部材28は、シリンダ23内において、ステム21を上方付勢し、かつ抜け止め部81をシリンダ23から離脱させた際にシリンダ23の上端開口を通じて取り外すことができる位置に配置されていればよい。
【0060】
上述した実施形態では、規制部80と抜け止め部81とを一体で形成した場合について説明したが、この構成に限られない。
上述した実施形態では、雌ねじ部35の外形を縦リブ90に転写する構成について説明したが、この構成に限られない。雌ねじ部35の外形は、例えばベース筒85に転写してもよい。
上述した実施形態では、ねじ部の外形が転写されることで、係合部が形成される構成について説明したが、この構成に限られない。係合部は、ねじ部に係合又は螺着される構成であれば、転写以外の方法(例えば、成形等)により形成してもよい。
【0061】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
11…容器本体
11a…口部
12…吐出器
21…ステム
22…ピストン
23…シリンダ
28…付勢部材
35…雌ねじ部(ねじ部)
80…規制部
81…抜け止め部
85…ベース筒
88…弱化部
90…縦リブ
91…係合部
101…吐出ヘッド
113a…吐出口