(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20240329BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240329BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240329BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
G01N21/892 A
G03G15/00 303
G03G21/00 510
B41J29/393 107
(21)【出願番号】P 2020030845
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊田 恭平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 耕生
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-126294(JP,A)
【文献】国際公開第2003/044506(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/046249(WO,A1)
【文献】特開平6-246904(JP,A)
【文献】特開平1-222381(JP,A)
【文献】特開2012-32776(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157042(WO,A1)
【文献】特開2005-43235(JP,A)
【文献】特開平10-100386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
B41J 29/00-B41J 29/70
B41F 31/00-B41F 35/38
G03G 15/00
G03G 21/00
G06T 7/00-G06T 7/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照画像のデータを取得する第1の取得手段と、
印刷物を読み取って得られる印刷画像のデータを取得する第2の取得手段と、
前記参照画像の注目画素位置の画素と前記印刷画像の前記注目画素位置の画素との間の第1の濃度差と、前記参照画像の前記注目画素位置を含む領域
における画素値の平均値と前記印刷画像の前記注目画素位置を含む領域
における画素値の平均値との
差である第2の濃度差を前記第1の濃度差から減算して得られる第3の濃度差と、
のうちの小さい方を前記注目画素位置に対応する差分として用いて、差分データを生成する生成手段と、
前記差分データに基づいて、前記印刷画像を検査する検査手段と、
を備えることを特徴とする、情報処理装置。
【請求項2】
前記生成手段は、各画素位置について、前記第1の濃度差と前記第3の濃度差とのうちの小さい方を画素値とすることにより、前記差分データを生成することを特徴とする、請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記生成手段は、前記参照画像の前記注目画素位置を中心とする領域と前記印刷画像の前記注目画素位置を中心とする領域との間の濃度差を前記第2の濃度差として算出することを特徴とする、請求項
1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記参照画像の前記注目画素位置を含む領域と、前記印刷画像の前記注目画素位置を含む領域とは同じ大きさの領域であることを特徴とする、請求項1乃至
3の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記検査手段は、前記差分データにおける差分が所定の値より大きい場合に、前記印刷画像に欠陥が含まれると判定することを特徴とする、請求項1乃至
4の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記検査手段は、前記差分データにおいて差分が所定の値より大きい領域が所定の形状を有する場合に、前記印刷画像に欠陥が含まれると判定することを特徴とする、請求項1乃至
4の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記検査手段は、前記印刷画像の検査により合格となった印刷物を第1のトレーに出力し、前記印刷画像の検査により不合格となった印刷物を第2のトレーに出力することを特徴とする、請求項1乃至
6の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
ユーザに対して前記第2の濃度差に関する通知を行う通知手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1乃至
7の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記通知手段は、前記参照画像と前記印刷画像との間の濃度の差が第1の閾値以上である画素数が、第2の閾値以上である場合に、前記通知を行うことを特徴とする、請求項
8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記第2の濃度差は、経過時間又は印刷装置の出力の回数に応じて生じることを特徴とする、請求項1乃至
9の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記第1の取得手段は、第1の時刻における印刷装置の出力を前記参照画像として取得し、
前記第1の取得手段は、前記第1の時刻に引き続いて前記印刷装置が稼働している時刻である第2の時刻における前記印刷装置の出力を前記印刷画像として取得することを特徴とする、請求項1乃至
10の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
参照画像のデータを取得する工程と、
印刷物を読み取って得られる印刷画像のデータを取得する工程と、
前記参照画像の注目画素位置の画素と前記印刷画像の前記注目画素位置の画素との間の第1の濃度差と、前記参照画像の前記注目画素位置を含む領域
における画素値の平均値と前記印刷画像の前記注目画素位置を含む領域
における画素値の平均値との
差である第2の濃度差を前記第1の濃度差から減算して得られる第3の濃度差と、
のうちの小さい方を前記注目画素位置に対応する差分として用いて、差分データを生成する工程と、
前記差分データに基づいて、前記印刷画像を検査する工程と、
を備えることを特徴とする、情報処理方法。
【請求項13】
コンピュータを、請求項1乃至
11の何れか一項に記載の情報処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷業では、発注主に納品する印刷成果物に欠陥がなく、その品質に問題がないことを保証するために、印刷終了後に検査(検品)作業が行われている。例えば、予め良品である印刷成果物の参照画像データ(以下、参照データと呼ぶ)を作成し、検査対象となる印刷物の印刷画像データ(以下、印刷データと呼ぶ)と参照データとを比較することにより自動で検査を行う技術がある。
【0003】
電子写真方式の印刷装置は、同一の入力データに対する出力成果物の濃度又は色合いが、出力時の印刷装置の状況に応じて異なって出力される場合がある。特許文献1においては、このようなケースを考慮した検査技術が開示されている。すなわち、特許文献1においては、キャリブレーション等の変化が印刷装置に生じた場合に、読取画像の欠陥検査を行うためのマスター画像を再生成し、読取画像と再生成したマスター画像とを比較する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、印刷装置にキャリブレーション等の明確な変化が生じた場合にのみマスター画像の再生成が行われる。このため、経時的な濃度変動等、明確な変化を伴わない濃度変動に対して対応できず、印刷装置の出力に対する検査を高精度に行うことができない場合があった。
【0006】
本発明は、印刷装置に明確な変化が生じない場合であっても、印刷装置の出力に対する検査を高精度に行うための処理を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成するために、例えば、一実施形態に係る情報処理装置は以下の構成を備える。すなわち、参照画像のデータを取得する第1の取得手段と、印刷物を読み取って得られる印刷画像のデータを取得する第2の取得手段と、前記参照画像の注目画素位置の画素と前記印刷画像の前記注目画素位置の画素との間の第1の濃度差と、前記参照画像の前記注目画素位置を含む領域における画素値の平均値と前記印刷画像の前記注目画素位置を含む領域における画素値の平均値との差である第2の濃度差を前記第1の濃度差から減算して得られる第3の濃度差と、のうちの小さい方を前記注目画素位置に対応する差分として用いて、差分データを生成する生成手段と、前記差分データに基づいて、前記印刷画像を検査する検査手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
印刷装置に明確な変化が生じない場合であっても、印刷装置の出力に対する検査を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係る印刷システムの機能構成の一例を示す図。
【
図2】実施形態1に係る情報処理装置の機能構成の一例を示す図。
【
図3】実施形態1に係る情報処理方法の処理の一例を示すフローチャート。
【
図4】実施形態1に係る差分生成処理の一例を示すフローチャート。
【
図5】実施形態1に係る生成部が行う処理を説明するための図。
【
図6】実施形態1に係る印刷装置の経時的な印刷濃度の変化の一例を示す図。
【
図7】実施形態1に係る生成部が行う処理の意義を説明するための図。
【
図8】実施形態2に係る情報処理装置の機能構成の一例を示す図。
【
図9】実施形態2に係る情報処理方法の処理の一例を示すフローチャート。
【
図10】実施形態2に係る情報処理装置の判定処理の一例を示すフローチャート。
【
図11】実施形態2に係る情報処理装置が行う判定処理を説明するための図。
【
図12】実施形態2に係る印刷装置の経時的な印刷濃度の変化の一例を示す図。
【
図13】実施形態2に係る情報処理装置が行う更新処理を説明するための図。
【
図14】実施形態2に係る異なる判定処理の一例を示すフローチャート。
【
図15】実施形態2に係る長周期的な濃度変動を説明するための図。
【
図16】実施形態1に係る情報処理装置の通知処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
[実施形態1]
実施形態1に係る情報処理装置は、印刷出力の目標を示す参照画像(参照データ)と印刷画像(印刷データ)との画素値を比較して印刷データの画質(品質)を評価する際に、参照データと印刷データとの間の大域的な濃度差に基づいて参照データの画素値を補正する。詳細な説明は
図4~
図7を参照して後述するが、情報処理装置は、例えば、参照データと印刷データとの対応する比較領域において、局所的な領域内の平均画素値を用いて画素値の補正を行い、補正した画素値に基づいて欠陥の検知を行う。このような処理によれば、参照データに対して経時的に生じる、大域的な印刷の濃度の変動の影響を低減し、より適切な欠陥検出が行えるようになる。
【0012】
なお、大域的な濃度の変動(濃度差)とは、例えば
図6に示されるような、時間の経過に応じて印刷データ全体に一様に生じる、任意のトナー色の、参照データに対する濃度差を指すものとする。
図6は、電子写真方式の印刷装置による、あるトナー色の一定の画素値に対する出力濃度差を、経過時間に対して示した模式図である。電子写真方式の印刷装置は、同一の入力データを与えても、出力時の状況によって出力印刷物の濃度又は色合いが異なる場合がある。例えば、
図6の例においては、時刻t2においては印刷装置の内部でトナーの補給が起こっており、印刷の濃度が上昇に転じている。
図6の例に関する詳細な説明は後述する。
【0013】
図1は、実施形態1に係る情報処理装置を含む印刷システムの構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係る情報処理装置100を含む印刷システムは、印刷用サーバ180及び印刷装置190を備える。印刷用サーバ180は、印刷する現行の印刷ジョブを生成し、印刷装置190へ投入する。印刷装置190は、投入された印刷ジョブに基づいて、給紙部191にセットされた記録媒体上に画像を形成する。画像が形成される記録媒体は特に限定はされないが、ここでは紙(印刷用紙)を用いるものとして以下の説明を行う。ユーザは、印刷装置の給紙部191に予め印刷用紙をセットしておく。印刷装置190は、印刷ジョブが投入された場合に、印刷用紙を、その表面又は両面に画像を形成しながら、搬送路192に沿って情報処理装置100へと搬送する。
【0014】
情報処理装置100は、印刷装置190が搬送路192を通じて送ってきた紙、すなわち印刷物に対して、搬送路192から接続される搬送路110で搬送しながら参照データに対する欠陥を検知するための検査処理を行い、検査結果に応じたトレーへと送る。情報処理装置100は、内部にCPU101、RAM102、ROM103、主記憶装置104、読取装置105、印刷装置インターフェース(I/F)106、汎用I/F107、ユーザインターフェース(UI)パネル108、及びメインバス109を有する。また、情報処理装置100は、搬送路192と接続された印刷物の搬送路110、検査処理で合格した印刷成果物の出力トレー111、及び欠陥が検出され検査不合格となった印刷物の出力トレー112を有する。以下、情報処理装置100が行う検査によって欠陥が検出されず合格とされた印刷物を印刷成果物と呼ぶものとする。
【0015】
CPU101は、情報処理装置100が有する各部を統括的に制御するプロセッサである。RAM102は、CPU101の主メモリ、及びワークエリアとして機能する。ROM103は、CPU101によって実行されるプログラム群を格納している。主記憶装置104は、CPU101によって実行されるアプリケーションや、画像処理に用いられるデータなどを記憶する。読取装置105は、例えばスキャナであり、印刷装置から送られてきた印刷物の片面又は両面を、搬送路110上で読み取り、画像データとして取得することができる。印刷I/F106は、印刷装置190と接続されており、印刷装置190と印刷物の処理タイミングの同期を取り、互いの稼働状況を連絡しあうことができる。汎用I/F107は、USB又はIEEE1394などのシリアルバスインターフェースであり、例えばユーザがログなどのデータを取得し持ちだすために用いられる。UIパネル108は、例えば液晶ディスプレイであり、情報処理装置100のUIとして機能し、現在の状況や設定を表示してユーザに伝える。また、UIパネル108は、ユーザからの指示を受け付けるために、タッチパネル方式であってもよく、入力用のボタンを備えていてもよい。メインバス109は、情報処理装置100の各部分を接続している。また、CPU101は、情報処理装置100又は印刷システムの内部各所を動作させることができる。例えば、CPU101は、各搬送路を同期して動かし、検査結果に応じて印刷物を合格の出力トレー111と不合格の出力トレー112とのどちらかに送るかを切り替えることができる。
【0016】
図2は、
図1に示される情報処理装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。情報処理装置100は、入力端子201、読取部202、参照データ保持部203、印刷データ保持部204、生成部205、検査部206、管理部207、及び出力端子208を備える。入力端子201は、印刷装置190からの印刷物の出力と同期して又は必要に応じて送信される、情報処理装置100への入力である制御信号を受信する。出力端子208は、検査部206によって行われた検査結果に基づく印刷システムの内部動作のための制御信号を出力する。入力端子201に制御信号が入力された場合、読取部202は、搬送路110上の印刷物の画像データを取得する。読取部202に取得される画像データは、読取装置105が読み取った画像に応じて参照データ又は印刷データに区別される。参照データは参照データ保持部203に格納され、印刷データは印刷データ保持部204に格納される。生成部205は、参照データと印刷データとを比較し、比較結果となる差分データを生成する。生成部205が生成する差分データについては
図4~
図7を参照して後述する。検査部206は、生成部205が生成した差分データに基づいて、印刷物に欠陥があるか否かを判定する。次いで検査部206は、判定結果に基づいて、印刷システムの内部駆動部に対する制御信号を、出力端子208を介して出力する。管理部207は、各機能部と情報をやり取りし、例えば現在の処理画像数又はエラーの有無などの稼働情報を収集管理し、必要に応じてログとして出力、又は印刷システム全体への制御信号を発信する。
【0017】
図3は、本実施形態に係る情報処理装置100が行う処理の手順の一例を示すフローチャートである。CPU101は、
図3に示すフローチャートに沿ったプログラムを読み出し実行する。以下においては、各ステップ(工程)は、参照番号の前にSをつけて表す。
【0018】
S301で情報処理装置100は、参照データを取得する。そのために、ユーザは、印刷装置によって印刷物を少量印刷し、その内から欠陥がなく成果物として納品して差し支えのない良品を選定する。次いで読取部202は、選定された良品の印刷物を読み取ることによって画像データを取得する。良品の画像データは参照データとして区別され、参照データ保持部に格納される。参照データの形式は特に限定されないが、以下においてはRGB8ビット形式で取得される(つまり、RGBの各チャンネルを要素として有する3次元ベクトルアレイで表される)ものとする。この例においては、S301においては良品の選定のために目視検査が必要となるが、後続する処理においては以下に説明するように自動化処理を行うことが可能である。S302で管理部207は、内部に有する印刷成果物の数量を示すカウントを1とする。このカウントは、後述するS303でのループにおいて印刷成果物が所定数に達するまでのカウントとして用いられる。
【0019】
続くS303~S311において、印刷装置190は本稼働を行い、印刷物を印刷成果物と検査不合格のものとに区別する。ここで、情報処理装置100は、印刷成果物が所定の数に達するまで、印刷装置190と同期した入力制御信号に基づいて、印刷装置190から順次流されてくる印刷物に対してS303~S311の処理を繰り返す。S304で読取部202は、印刷装置190から出力された印刷物を読み取り、被検査画像となる印刷データを生成し取得する。印刷データは印刷データ保持部204に格納される。印刷データの形式は特に限定されないが、参照データと同様の形式とされ、ここではRGB8ビット形式となる。
【0020】
S305で生成部205は、S301で取得した参照データとS304で取得した印刷データとに基づいて、良品である参照データと印刷データとの、各画像間の大域的な濃度差を考慮して得られた差を示すデータである差分データDを取得する。そのために、生成部205は、画像間の大域的な濃度差に基づいて、参照データの画素値を補正する。次いで、補正した画像データから差分を取る事により、差分データDを取得することができる。S305においては、差分データは、参照データ及び印刷データと同じサイズを有する画像データとして取得されるものとするが、取得処理の詳細については
図4を参照して後述する。
【0021】
S306で検査部206は、差分データDに対して印刷物の欠陥検出処理を行う。差分データDは画素ごとに画像間の差を示す値を記録しているので、検査部206は、差分データD上の所定の条件を満たす領域が存在する場合に、その領域を印刷物の欠陥を示す領域として検出することができる。ここで、印刷物の欠陥を示す差分データD上の領域は、例えば、差の値が一定の大きさを超えている画素、又はそのような画素領域が一定の面積を超えている領域、若しくはそのような画素領域がスジなどの一定の形状を構成している領域とすることができる。これらのような領域は、画像のフィルタリング処理、又はスジ方向に対応する行又は列の画素値の和を計算するなど、公知の技術を用いて検出することができる。検査部206は、このような欠陥を示す領域が検出された場合にその印刷データを不合格のデータとしてもよい。逆に、差分データD全域にわたって画素値が0又は十分に小さい場合、すなわち参照データと印刷データとの間に差がない場合には、その印刷データに対応する印刷物を良品として、印刷成果物に区分することができる。
【0022】
S307で検査部206は、S306における欠陥検出処理によって欠陥が検出されたか否かを判定する。欠陥が検出されていない場合は合格であり、処理がS308へと移る。S308で検査部206は、印刷物を印刷成果物用のトレー111に流すように、印刷システムへと制御信号を出力する。続くS309で管理部207は、印刷成果物のカウントを1増やし、処理をS311へと進める。また、S307で検査部206が欠陥が検出されたと判定した場合、検査は不合格であるとして、処理がS310へと進む。S310で検査部206は、印刷物を不合格のトレー112に流すように、印刷システムへと制御信号を出力し、処理をS311へと進める。なお、情報処理装置100は、不合格のトレー112を複数備え、検出された欠陥の種類や程度に応じて分別して各トレーに流すようにしてもよい。S311で検査部206は、印刷成果物のカウントが所定数に達しているかを判定し、達している場合は処理を終了し、達していない場合は処理をS303へと戻す。このような処理によれば、印刷物を自動的に合格品と不合格品にわけることができ、最終的な成果物として合格品を採用することで一定の品質を確保した所定数の成果物を得ることができる。
【0023】
次いで、
図4を参照して、S305における差分データの生成処理について説明する。
図4は、生成部205が印刷データPと参照データRとから差分データDを生成する処理の手順の一例を示すフローチャートである。説明のため、ここでは印刷データP及び参照データRは同じサイズを有しており、スキャン時の位置ずれ及び回転ずれなどは発生していないものとする。また、特定の画素位置(x,y)は互いの画像上の同じ位置に対応しているものとする。
【0024】
S401で生成部205は、印刷データPの画素P(x,y)を注目画素として、S401~S409の処理を繰り返す。S402で生成部205は、印刷データPの注目画素P(x,y)の周辺領域におけるRGBのチャンネルごとの平均値mpを計算し取得する。ここで、mpは3次元ベクトルであり、各要素がRGBの各チャンネルに対応するものとする。
図5は、注目画素P(x,y)と、平均値mpを求めるためのその周辺領域と、の関係を説明するための図である。
図5においては、画素501が注目画素P(x,y)であり、注目画素を中心とする7×7の領域502が平均値を取得するための領域(平均値取得領域)である。なお、ここでは説明のため平均値取得領域を7×7とするが、特にこの値に限定するものではなく、適宜所望の大きさの部分領域を用いてもよい。
【0025】
S403で生成部205は、S402と同様に、参照データRの注目画素R(x,y)の周辺領域におけるRGBのチャンネルごとの平均値mrを計算し取得する。mrは、mpと同様にRGBの各チャンネルに対応する3次元のベクトルである。S404で生成部205は、差分データDの位置(x,y)における画素値の候補となるd0を、下記の式(1)に従って算出する。すなわち、d0は、印刷データと参照データとの対応する位置の画素値の単純な差分であり、d0もRGBの各チャンネルに対応する要素を有する3次元ベクトルとなる。
d0=P(x,y)-R(x,y) 式(1)
【0026】
次いで、S405で生成部205は、差分データの位置(x,y)におけるd0とは異なる画素値の候補となるd1を、下記の式(2)に従って算出する。すなわち、d1は、印刷データPと参照データRとの対応する位置における、印刷データと、周辺領域の平均値を一致させるためのオフセットであるmp-mrを用いて補正した参照データと、の画素値の差分である。すなわち、P(x,y)と、R(x,y)+(mp-mr)と、の周辺領域の画素値の平均値が一致することから、画像間の大域的な濃度差を相殺しながら差分を取る事が可能になる。この処理の詳細な意義は
図6~
図7を参照して後述する。d1もd0と同様にRGBの各チャンネルに対応する要素を有する3次元ベクトルとなる。
d1=P(x,y)-R(x,y)-(mp-mr) 式(2)
【0027】
S406で生成部205は、d0とd1との2乗ノルムをそれぞれ算出し、そのどちらが小さいかを判定する。d0の2乗ノルムの方が小さければ処理はS407へと進み、そうでなければ処理はS408へと進む。S407又はS408で生成部205は、d0とd1とのうち、S406で判定された2乗ノルムがより小さいほうを差分データDの位置(x,y)における画素値D(x,y)として採用し、処理をS409へと進める。S409で生成部205は、印刷データPと参照データRとの全画素位置についてS401~S408の処理が行われたかを判定し、行われた場合は処理を終了し、行われていない場合は処理をS401へと戻す。
【0028】
以上のS401~S409を印刷データPと参照データRとの全画素位置に対して繰り返すことにより、差分データDの全画素値が決定され、差分画像が得られる。結果として、差分データDは、印刷データP並びに参照データRと同じサイズ及びチャンネル数を有し、画素位置(x,y)はこれらの画像データの同じ位置に対応する。
【0029】
このような処理によれば、参照データと印刷データとの間の大域的な濃度差に基づいて参照データの画像値の補正を行い、補正した画像値に基づいて差分データDを取得することができる。以下、このような補正を行う意義について説明する。
図6を再度参照すると、印刷物の出力を開始した時刻t0以降、t1を経てt2にかけて、徐々に濃度が小さくなる方向に濃度変動が起こっている様子が示されている。また、上述の通り、時刻t2においては印刷装置の内部でトナーの補給が起こっており、印刷の濃度が上昇に転じている。これらの濃度変動は、出力印刷画像上の全体で生じることが多い。
【0030】
このような印刷装置の特性によって生じる濃度変動の大きさが過大な場合は、印刷物上においてもその変動を視認でき、その印刷物は欠陥を有するものとなりうる。しかし、1つの画像内の局所的な領域のみにおいて濃度に差があるような場合と異なり、参照データとの濃度差が印刷データ全体に一様に生じている場合には、視覚的には差が目立ちにくく、許容できるケースとなることがある。印刷物の検査を行う目的は印刷成果物が問題のない品質であることを保証するためではあるが、品質を優先するあまり検査の基準を厳格にしすぎると、不合格品の増加によって生産性が悪化し、納期及びコストに悪影響を与えてしまう可能性がある。したがって、検査の基準は単に厳しければいいというわけではなく、ケースに応じて適切に設定されることが望ましい。
【0031】
以下、そのような視覚的に目立ちにくい濃度差を許容するケースについて考える。参照データが時刻t0に取得される場合、時刻t1においては同じ画素値の入力であっても幅601で示される分だけ印刷の濃度がずれることになる。この濃度差は、生成部205が生成する差分データDにおいても、読み取り画素値の差として現れ記録される。結果として、例えばS306におけるような差分データDに基づく欠陥検出処理を行う際に、d0を用いることにより、すなわち許容するべき一様な濃度差の存在を考慮せずに検査を行うことにより、検査の精度が落ちる又は結果の誤検出をする可能性がある。そのような観点から、本実施形態に係る検査部206は、そのような一様な濃度差を考慮した差分データDを生成するために、局所的な領域における画素値の分布に基づいて、参照データの補正を行う。すなわちここでは、上述のd1=P(x,y)-R(x,y)-(mp-mr)の補正を行う。d1は、平均値の差(mp-mr)として算出される画像間の濃度差を差し引いて差分を求めている。また、d1=(P(x,y)-mp)-(R(x,y)-mr)の変形からもわかるように、印刷データPと参照データRとのそれぞれ平均値を一致させてから差分を算出していると解釈することも可能である。いずれの解釈にせよ、本実施形態に係る検査部206は、d1を算出することにより、許容される濃度差分を差分データDから除去することできる。したがって、大域的な濃度差の影響を低減した検査を行うことができるようになる。
【0032】
ただし、差分データDの計算にd1を用いることによって逆に検査の精度が劣化してしまう場合もある。以下、
図7を参照してそのような場合について説明する。
図7は、ある注目画素(x,y)の周囲の参照データ701と、対応する位置の印刷データ704とを示す図である。参照データ701における注目画素が702、平均値取得領域が703であり、印刷データ704における注目画素が705、平均値取得領域が706である。印刷データ704は、参照データ701の対応する領域とは画素値が大きく異なる欠陥領域707(網掛け部)を有している。ここでは説明のため、欠陥領域707を除く領域では参照データと印刷データとの対応する画素位置の画素値は同一であるものとする。すなわち、
図7の両注目画素の画素値は同一となるため、欠陥検出に用いる差分データDの注目画素(x,y)における画素値は、差分0となり欠陥が検出されえない値となることが望ましい。しかし、d0は0となる一方で、d1を算出する場合に使用するmr及びmpは、平均値取得領域706内に入り込んでいる欠陥領域707の分だけ値が食い違うことになる。つまり、d1の計算式に従えば、mrとmpとの差をキャンセルするように画素値を調整するため、結果として欠陥領域707以外の領域は差がないにも関わらず、702と705の差分に欠陥領域707分の差分が含まれてしまうことになる。
【0033】
このように考えると、欠陥領域が平均値取得領域に掛かる領域、すなわち欠陥領域の周辺部では、計算値d1を用いると、差分データではあたかも欠陥領域がぼけて広がったように注目画素の差分画像値に算入される。つまり、実質的な解像度劣化、及び精度劣化を招くことがわかる。このことが、後の工程S306における欠陥検出処理の精度を劣化させ得る。
【0034】
そこで、本実施形態に係る生成部205は、上述したように、差分データDを生成する際に、画素ごとに、d1とd0とから2乗ノルムがより小さい方を差分データDの画素値として採用することができる。このような処理によれば、平均値の調整によって視覚的に目立ちにくい大域的な濃度差の影響を低減しつつ、上述のように欠陥領域の周辺部において欠陥領域分の差分を注目画素の差分に算入してしまうことを抑制することができる。したがって、差分データの生成精度が向上し、検査自体の精度及び生産性の向上にも寄与することができる。
【0035】
また、本実施形態に係る生成部205は、参照データ及び印刷データの各々全体を用いて差分データを生成したが、特にこのように限定されるわけではない。生成部205は、参照データと印刷データとのそれぞれ一部を用いて差分データを部分的に生成してもよく、そのように部分的に生成するデータに対して順次後続する検査処理を行ってもよい。
【0036】
また、本実施形態に係る情報処理装置100においては、新たな印刷データを処理するたびに、S403で生成部205がmrを算出してもよく、過去の処理で用いたmrを再取得してもよい。例えば、参照データが一度作成されたのちに一定期間不変であるような場合、参照データ保持部203は、過去の処理で用いた参照データから算出されたmrを格納し、生成部205は処理のたびに格納されたmrを読み出すことができる。
【0037】
また、本実施形態においては、印刷データPと参照データRとは同じサイズを有しており、スキャン時の位置ずれ及び回転ずれなどは発生していないものとしたが、実際の処理においてはスキャン時にこれらのようなずれが生じる可能性がある。そのような観点から、情報処理装置100は、スキャンした印刷データに対してスキャン時の位置ずれ及び回転ずれを補正する処理を行ってもよい。例えば、情報処理装置100は、印刷データを取得した時点(S304~S305の間)で参照データ及び印刷データに特徴点抽出処理を行い、両画像データの対応点を取得する。次いで、取得した対応点を一致させるような変換式(例えばアフィン変換)を求めて適用することにより、ずれに対する補正を行ってもよい。ここで用いられる特徴点抽出処理は特に限定されず、例えばSIFT、SURF、ORB又はAKAZEなどの公知の手法を用いてもよい。また例えば、生成部205は、S404において、注目画素P(x,y)に対して、参照データ上の注目画素R(x,y)との差分だけでなく、R(x,y)周辺の領域の画素との差分を求めてもよい。そのような場合、生成部205は、R(x,y)周辺の領域のうちから、P(x,y)との差分が最も小さくなる画素を選択し、その画素との差分をd0として取得してもよい。すなわち、注目画素の周辺領域のうち、P(x,y)との濃度差が最小となる点を対応点であるとしてもよい。
【0038】
また、画像のエッジ部では画素値の変化が大きいため、視覚的には影響の小さい僅かなずれ(例えば1画素程度)に対しても、差分データの算出において大きな差分が計上され得る。そのような観点から、差分データの画素値D(x,y)を決定するS407又はS408で生成部205は、d0又はd1に対してエッジ領域を考慮した重み係数を乗じたものをD(x,y)の値として決定してもよい。すなわち、エッジ抽出フィルタによって画像のエッジ成分を予め求めておき、エッジ領域では差分を軽減する重み係数を乗じることにより画素値D(x,y)を決定してもよい。なお、ここで用いられる重み成分は、上述のようなエッジ成分に対応する重み成分であってもよく、画像の領域ごとの周波数特性を求め、高周波領域で差分が軽減されるような重み成分であってもよい。このような処理によれば、視覚的影響と比較して差分データに大きな値が計上されてしまうのを抑制することができる。
【0039】
[実施形態2]
実施形態2に係る情報処理装置は、参照データと印刷データとの間の大域的な濃度差を検知し、その濃度差に応じて、参照データを補正する。この例においては、参照データを印刷データへと更新する。そのために、本実施形態に係る情報処理装置800は、判定部802及び更新部803を備え、生成部205に代わり生成部801を備えていることを除き実施形態1の情報処理装置100と同様の構成を有し、重複する説明は省略する。
図8は、本実施形態に係る情報処理装置800の機能構成の一例を示すブロック図である。管理部207は、判定部802及び更新部803とも情報をやり取りできるが、煩雑となるため
図8からはその表示を省略する。
【0040】
生成部801は、d1を用いずd0のみを用いることを除き、実施形態1に係る生成部205と同様に差分データDを生成し、詳細は後述するが、画像間で大域的な濃度差が生じているかどうかを判定するために必要な情報を取得する。判定部802は、生成部801が取得した情報に基づいて、参照データと印刷データとの間で大域的な濃度差が生じているかどうかを判定する。更新部803は、判定部802によって大域的な濃度差が生じていると判定された場合に、参照データを補正する。
【0041】
以下、
図9を参照して情報処理装置800が行う処理について説明する。
図9は、本実施形態に係る情報処理装置800が行う処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図9の例においては、S305に代わりS901が行われ、S309に後続してS902及びS903が処理されることを除き、
図3と同様の処理を行うため、重複する説明は省略する。
【0042】
S901で生成部801は、S301で取得した参照データとS304で取得した印刷データとに基づいて、d1を用いずd0のみを用いることを除いて実施形態1と同様の手法により差分データDを取得する。また、生成部801は、画像間で大域的な濃度差が生じているかどうかを判定するために必要な情報を取得する。次いで判定部802は、生成部801が取得した情報に基づいて大域的な濃度差が生じているかどうかを判定する。S901で行われる差分データの生成処理については、
図10を参照して説明する。
【0043】
図10は、実施形態2に係る情報処理装置800が差分データDを生成し、生成した差分データから印刷データPと参照データRとの間で大域的な濃度差が生じているか否かを判定する処理の手順の一例を示すフローチャートである。説明のため、ここでは印刷データPと参照データRとは同じサイズを有しており、スキャン時の位置ずれ及び回転ずれなどは発生していないものとする。また、画素位置(x,y)は互いの画像上の同じ位置に対応しているものとする。S1001で生成部801は、変数Devを0に初期化する。変数Devは、差分データの画素位置のうち、印刷データと参照データとの対応する位置の画素値の差が所定の条件を満たす位置の数を表す。この例において変数Devは、印刷データと参照データとの対応する位置の画素値の差がグレースケール換算で所定の範囲の外の値となる画素の数であるとするが、特にこれには限定されない。
【0044】
S1002で生成部801は、印刷データの画素P(x,y)を注目画素として、S1002~S1008の処理を、印刷データ上の全ての画素を対象として処理するまで繰り返す。S1003で生成部801は、実施形態1におけるS404と同様に印刷データPと差分データRとの対応する位置(x,y)の画素値の差分d0を算出する。S1004で生成部801は、差分データDの画素位置(x,y)における画素値を、S1003で算出されたd0の値として決定する。
【0045】
またS1005~S1008では、生成部801は、画像間で大域的な濃度差が生じているか否かを判定するために必要な情報を取得する。そのために、S1005で生成部801は、まずP(x,y)とR(x,y)との画素値をそれぞれグレースケール化(1次元化)する。次いで生成部801は、グレースケール化したP(x,y)とR(x,y)との画素値の差を変数dLとして算出する。
図10においては、グレースケール化する計算は、gray()として記載されている。生成部801が行うグレースケール化の処理は特に限定はされず、任意の手法が用いられてもよい。例えば、生成部801は、画素位置(x,y)におけるRGBチャンネルの各要素の値をそれぞれr(x,y)、g(x,y)、及びb(x,y)として、下記の式(3)のような重み係数付きの線形和を用いることによってgray(x,y)を算出してもよい。
gray(x,y)=0.21×r(x,y)+0.72×g(x,y)+0.072×b(x,y) 式(3)
【0046】
また、生成部801は、読取部202が取得した画像の色空間から、輝度、明度、又は濃度などをグレースケールへと変換する変換関数を適用することにより、gray(x,y)を算出してもよい。さらに、生成部801は、上述の変換関数の特性を予めLUT(ルックアップテーブル)として取得しておき、LUT処理によってgray(x,y)を取得するようにしてもよい。
【0047】
S1006で生成部801は、変数dLが予め決められた2つの閾値Th1及びTh2(0≦Th1≦Th2)を用いて、dLがTh1以上Th2以下の範囲にあるかどうかを判定する。dLがこの範囲内にあるのであれば、処理はS1008へと進む。dLがこの範囲内にないのであれば、処理はS1007へと進む。S1007で生成部801は、変数Devの値を1増やし、処理をS1008へと進める。S1008で生成部801は、印刷データPと参照データRとの全画素位置についてS1002~S1007の処理が行われたかを判定し、行われた場合は処理をS1009へと進め、行われていない場合は処理をS1002へと戻す。
【0048】
S1009で判定部802は、変数Devの値が1以上であるか否かを判定する。Devが1以上でない場合、つまり変数dLが全ての画素位置において所定の範囲内(Th1以上Th2以下)に存在する場合、処理はS1010へと進む。そうでない場合、つまり変数dLが所定の範囲外に存在する場合、処理はS1011へと進む。S1010で判定部802は、画像間の大域的な濃度差は検出されなかったと判定し、処理をS306へと進める。またS1011で判定部802は、画像間の大域的な濃度差が検出されたと判定し、処理をS306へと進める。
【0049】
なお、S306で検査部206は、実施形態1と同様に差分データDに対して印刷物の欠陥検出処理を行うが、上述の通りここでは差分データDはd0のみを用いて取得されている。しかし、S306の処理においては、実施形態1で用いられる差分データDと同様にd1とd0とを用いて取得した差分データが取得されて用いられてもよい。
【0050】
S309に後続するS902で更新部803は、S1009~S1011で行われた濃度差の判定の結果を参照し、画像間で大域的な濃度差が検出されたかどうかを判定する。判定がYESである場合、つまり、S307で欠陥が検出されず、S1011で大域的な濃度差が検出された場合には、処理がS903へと進む。S903で更新部803は、参照データ保持部203に格納された参照データを、S304で参照された印刷データで更新する。すなわち、参照データを印刷データで上書きする。次いで処理はS311へと進む。また、S902の判定がNOである場合、つまり、S307で欠陥が検出されず、S1011で大域的な濃度差が検出されなかった場合には、参照データは更新されず、処理はS311へと進む。
【0051】
以上の処理が終了した場合、S311で情報処理装置800は、処理をS303へと戻して次の印刷物に対する処理を繰り返す。特に、S903で参照データの更新が行われた場合には、次回以降の処理において用いられる参照データには更新された参照データが用いられる。
【0052】
このような処理によれば、印刷データと参照データとの画素値の差分、及び所定の閾値を用いることによって画像間の大域的な濃度差が生じているかどうかを判定し、その判定結果に基づいて参照データを補正(更新)することができる。以下、このような補正を行う意義について、
図11~
図13を参照して説明する。
図11においては、横軸が画素位置を、縦軸がグレースケール化した画素値を表している。また、縦軸は、上側ほど白に近く(低濃度であり)、下側ほど黒に近い(高濃度である)値を表す。
図11(a)における曲線1101は、ある参照データR(x,y)をグレースケール化した場合の画素ごとのグレースケール値gray(R(x,y))を表す曲線である。また、曲線1102及び1103は、曲線1101の画素値に閾値Th1及びTh2をそれぞれ加算した場合の曲線である。
【0053】
また、
図11(b)は、
図11(a)と同じ状況を、曲線1101を基準とした曲線で表したものであり、この図においては曲線1101は横軸と重なる位置にある。また、曲線1102は値がTh1である曲線1105に対応し、曲線1103は値がTh2である曲線1106に対応する。S902~S903で参照データが更新される時は、全てのdLが閾値の組Th1以上Th2以下である時であり、すなわち
図11中では印刷データの全画素位置において値が曲線1105と曲線1106との間(網掛け部)に存在している時である。
【0054】
図12は、印刷装置の経時的な濃度変動の一例を、経過時間(又は印刷物の生産数)に対する印刷の濃度で表している図である。この例においては、参照データRは時刻0で取得され、検査対象となる印刷データPは時刻tでの出力印刷物に基づいて取得されている。また、印刷データPには、各時刻における時刻0の時の濃度を基準とした濃度差(例えば、時刻tにおいては幅1201)が、画像全体に表れているものとする。
【0055】
情報処理装置800は、視覚的に目立たず許容され得ると考えられる画像全体への濃度差を検知した場合に、参照データを更新することができる。この時、視覚的に目立たず許容され得ると考えられる画像全体への濃度差は、例えば次のような条件(A)~(C)を満たすと考えられる。
(A)画像の全域で、差分の絶対値が大きくともある所定の値を超えないこと
(B)画像の全域で、差分の正負の方向が一定方向であること
(C)画像の全域で、差分の絶対値が略一定値とみなせること
【0056】
条件(A)は、印刷物が合格品であることに対応する条件である。局所的な差であっても画像全体に一様な差であっても、画像間で大きな濃度差がある場合には、視覚的にも許容できるといえないため、条件(A)が設けられてもよい。条件(B)及び(C)は、画像全体に一様とみなせる濃度差が生じていることに対応するものである。条件(B)又は(C)に反する場合は、印刷データにおいて局所的な濃度差が生じている。
【0057】
また、情報処理装置800は、更新しようとする参照データが、更新前後でほとんど変わらない場合には、不要な更新であるとして更新を行わなくてもよい。すなわち、上述の条件に以下の条件(D)を加えてもよい。
(D)画像の全域で、差分の絶対値が一定値以上であること
【0058】
図9及び
図10を参照して説明した実施例は、以上の条件(A)~(D)を、画像全域で変数dLが閾値以上(Th1以上)閾値以下(Th2以下)であると具体化して実施したものである。ここで、
図13を参照して、参照データが更新される場合と更新されない場合との例を、
図11(b)に重畳する形で説明する。
【0059】
点線1301、破線1302、一点鎖線1303は、それぞれ異なる印刷物に対応する印刷データの画素値のグレースケール値を表す曲線である。点線1301は全域で条件を満たす網掛け部の中に存在するため条件を満たし、S903で参照データが更新される。これは、この印刷物が大域的な濃度差が検出された合格品である場合に相当している。破線1302は一部が網掛け部の外に出ているため、参照データの更新は行われない。これは、この印刷物が検査に合格しない場合に相当している。また一点鎖線1303は全体がdL≒0であり網掛け部の外に出ているため、参照データの更新は行われない。これは、この印刷物は合格品であるが、濃度差が小さいため参照データの更新が不要である場合に相当する。
【0060】
このような処理によれば、参照データと印刷データとの各画素位置における画素値の差分から、各画像間の大域的な濃度差を検知することができる。次いで、その濃度差に基づいて、参照データを補正することができる。特に、参照データを印刷データで上書きすることにより、視覚的に目立ちにくい濃度差を差分データに算入することを抑制することができる。したがって、検査の精度の向上及び生産性の向上に寄与することができる。
【0061】
なお、この場合においては
図9のS303~S311のループ処理を逐次行うことが想定される。したがって、大域的な濃度変動が経時的に生じる場合には、S902において検出される大域的な濃度差も、例えば
図12に示される値と同様に経時的に増加していくことが想定される。そのような例においては、経時的に増加していく濃度差の値が所定の範囲内(Th1以上Th2以下)となった場合に参照データが更新され、再度処理が行われることになる。
【0062】
また、
図10に示す処理では、条件(A)~(D)の具体化として、画像全域で変数dLが閾値の組Th1以上Th2以下であるという判定方法が例示されたが、特にこれに限定はされない。例えば、生成部801は、統計的な特徴量を用いることで条件(A)~(D)を具体化し、参照データを更新するかどうかの判定を行ってもよい。以下、
図14を参照してそのような処理に関する説明を行う。
【0063】
図14は、情報処理装置800が行う、上述の統計的な特徴量を用いた判定の処理の一例を示すフローチャートである。
図14の例においては、変数Devに代わり3つの変数Max、Sum、及びSum2が用いられている。生成部801は、Max、Sum、及びSum2を用いて、それぞれ変数dLの絶対値の最大値、和、及び2乗の和を算出する。そのために、
図14の例においては、S1001に代わりS1401を、S1006及びS1007に代わりS1402を、S1009~S1011に代わりS1403~S1406を行うことを除いて、
図10に示す処理と同様の処理を行う。
【0064】
S1401で生成部801は、まず変数Max、Sum、及びSum2を0に初期化し、処理をS1002へと進める。また、S1005に後続するS1402で生成部801は、変数Maxに変数dLの絶対値と変数Maxとから大きい方の値を代入し(
図14ではmax()と表示)、変数SumにdLの値を加算し、変数Sum2にdLの2乗の値を加算する。S1008に後続する、つまり全画素位置に対するS1002からS1008までのループ処理が終了した次の工程であるS1403で生成部801は、変数Sumを画素値Nで割ることによってdLの平均値Meanを算出する。また生成部801は、Sum2とMeanとからdLの分散値Vを算出する。
【0065】
また、S1002からS1008までのループ処理は、各画素位置に対して順に行われてもよく、並列に処理が行われてもよい。並列に処理が行われる場合、生成部801は、並列処理単位ごとに算出されたdLのうち最大値をMax、和をSum、2乗の和をSum2とする。さらに、画素数Nが定数である場合、Mean及びVの算出処理から、Nの除算処理を省略してもよい。
【0066】
S1404で判定部802は、算出したMax、Mean、及びVと、所定の閾値Th_Max、Th_Mean、及びTh_Vとをそれぞれ比較する。ここでは、判定部802は、MaxがTh_Max以下であると判定され、MeanがTh_Mean以上であると判定され、VがTh_V以下であると判定された場合に、処理をS1405へと進め、大域的な濃度差が生じていると判定する。これらのいずれか1つ以上が満たされない場合は、判定部802は、処理をS1406へと進め、大域的な濃度差は生じていないと判定する。
【0067】
S1404で行われる判定と、上述の条件(A)~(D)と照合させると、まず、最大値MaxがTh_Maxよりも小さいと判定されることが条件(A)に対応する。次いで、平均値MeanがTh_Meanよりも大きいと判定されることは条件(D)に対応し、また、濃度差が正負にぶれている場合には平均値が小さくなりやすいことから、条件(B)にも対応する。さらに、VがTh_Vよりも小さいことは条件(B)及び(C)に対応する。このような処理によれば、各画素位置における濃度差の分布を用いることによって画像間の大域的な濃度差を検知し、参照データを更新することができる。
【0068】
また、本実施形態に係る生成部801は、例えば
図11を参照して説明したように、濃度が薄くなる方向への濃度変動を検知するものとして説明を行ったが、特にこれには限定されない。例えば、生成部801は、濃度が濃くなる方向への濃度変動を検知してもよく、両方向への濃度方向を検知してもよい。濃度が濃くなる方向への濃度変動を検知するために、生成部801は、Th1及びTh2と同様に、濃度が濃い方向にも閾値と判定機構を設け、
図10に示されるような判定処理を行ってもよい。
【0069】
また、本実施形態に係る情報処理装置800は、条件(E)として、(E)濃度変動が時間的に連続して同じ方向に検出されること、を参照データの更新に用いる条件に加えてもよい。すなわち、濃度変動の長周期的変動成分が検出されている場合に参照データの更新を行うようにしてもよい。ここで、長周期的変動成分とは、一定以上の期間連続して検出される、同符号の濃度変動の成分を表すものとする。以下、
図15を参照してそのような条件(E)に関する説明を行う。
【0070】
図15は、長期的には濃度変動が生じていない印刷装置の濃度変動の一例を表す図である。
図15においては、横軸が時間(又は印刷物生産数)、縦軸が印刷データの相対濃度を表しており、相対濃度の基準として時刻0の時の印刷物の濃度が用いられる。この図においては、時刻t3において実施形態2における参照データ更新の判定の条件が満たされ、ここでは印刷データが参照データより濃くなっているために、参照データを更新すると濃度はより濃くなる。このとき、濃度変動の量は1501で表される。また、時刻t3から間もない時刻t4において、参照データ更新の判定の条件が満たされ、ここでは印刷データが参照データより薄くなっているために、参照データを更新すると濃度はより薄くなる。このような場合、短時間の間に参照データが逆方向の濃度に更新され、基準が一定しないという現象が生じることになる。ここで、時刻t3において処理を行っている時点ではそれより未来の濃度変動は未知であることに留意されたい。
【0071】
このようなことに鑑みて、情報処理装置800は、短時間に、あるいは偶発的に生じた濃度変動を過度にキャッチして参照データを更新することを抑制するために、濃度変動の長周期的な変化のみを捉えるようにしてもよい。すなわち、例えば、情報処理装置800は、濃度変動が時間的に連続して同じ方向に検出されている時に限り参照データの更新を行うことができる。そのために、S902で用いられる、処理をS903へと進める条件として、濃度変動が検出されるとともに、同じ方向の濃度変動が所定の回数連続して検出されていることを追加する。更新部803は、検出された濃度変動に関する情報の履歴を、管理部207に格納し、参照できるようにしてもよい。このような処理によれば、ターゲットとなる濃度変動の検出の精度を向上させて、不適切な参照データの更新を抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態に係る更新部803は、参照データを印刷データで上書きすることにより参照データを更新するものとしたが、参照データの更新方法は特にこれには限定されない。更新部803は、参照データと印刷データとで対応する画素位置の画素値の差分に基づいた演算により、参照データを更新することができる。例えば、更新部803は、参照データと印刷データとで対応する画素位置の画素値の平均を、更新後の参照データの画素値としてもよい。また更新部803は、参照データと印刷データとで対応する画素位置の画素値について、重み係数付きの和を行うことにより、参照データを更新してもよい。さらに例えば、更新部803は、検出された画像間の濃度差の大きさに基づいて、参照データの画素値に値を加える又は乗じることにより参照データを更新してもよい。このような処理によれば、参照データが更新されたときの変化の大きさを抑えることができる。
【0073】
また、大域的な濃度差を検知するために用いられる閾値Th1及びTh2は、参照データの画素値の濃度に関わらず一定であってもよく、印刷装置の濃度変動の特性(いわゆる濃度特性ガンマ)に応じて画素値ごとに閾値が異なっていてもよい。すなわち例えば、
図11(a)において、曲線1101の高さ(画素値)に応じてTh1とTh2とが変化し、網掛け部の位置及び高さ、並びに曲線1102及び曲線1103の形状が変化してもよい。
【0074】
[ユーザ通知を行う例]
本明細書においては、印刷装置に経時的に生じる許容されるべき濃度変動に対して、適応的に調整処理を入れつつ検査処理を行うことができる情報処理装置の例が開示された。一方で、濃度変動が大きい場合、視覚的にも影響が大きく合格品として認められないばかりでなく、印刷の出力又は濃度調整に何らかの異常が生じており、連続して又は頻発して同様の印刷物を出力する可能性がある。その状態で稼働を続けると生産性の低下を招くため、速やかにユーザによる確認を行うことが望ましい。このような観点から、情報処理装置は、検出された濃度変動が所定の大きさよりも大きい場合に、ユーザにその状態を提示し、キャリブレーションをするか継続出力を行うかなどのユーザ判断を促してもよい。また情報処理装置は、そのようなユーザ判断を促す際、行われていた検査処理を一時停止してもよい。
【0075】
以下、
図16を参照して、実施形態1に係る情報処理装置100が行う上述のユーザ判断を促す処理に関する説明を行う。
図16の処理例においては、S1601~S1605が追加されていることを除き
図4と同様の処理を行い、重複する説明は省略する。S304に後続するS1601で生成部205は、変数Errの値を0に初期化し、処理をS401へと進める。変数Errは、参照データと印刷データとで大きな差分を持つ画素数をカウントして格納する変数である。S404に後続するS1602は、S404で算出したd0の絶対値が所定の閾値Th_E以下であるか否かを判定する。ここでTh_Eは、印刷装置の異常を示唆する大きな画素値を表す閾値であり、適宜所望の値に設定されてよい。d0の絶対値が閾値Th_E以上である場合には、処理はS1603へと進む。そうでない場合、処理はS405へと進む。S1603で生成部205は、変数Errの値を1増やし、処理をS405へと進める。また、S1602で行われる処理においてはd0に代わりmpとmrとが用いられてもよい。
【0076】
S401~S409のループ処理に後続するS1604で生成部205は、変数Errの値を所定の閾値Th_N_Errと比較する。ここで、閾値Th_N_Errは、参照データと印刷データとで大きな差分を持つとされた画素数に対して設定される閾値であり、変数Errが閾値Th_N_Err以上であれば画像全体に印刷装置の異常を示唆する大きな濃度変動が生じていると判断される。一方で、変数Errが閾値Th_N_Err未満である場合は、変数Errがカウントされていたとしてもそれは局所的な濃度変動によるものである、すなわち大域的な濃度変動ではない欠陥によるものであると判断される。変数Errが閾値Th_N_Err以上であると判断された場合、処理はS1605へと進む。そうでない場合、生成部205は処理を終了する。S1605で生成部205は、印刷装置に異常が生じている可能性がある旨をUIパネル108を介してユーザへと通知し、印刷装置の確認などをするよう判断をユーザに促す。この通知を行う際、情報処理装置100は、印刷装置の処理を一時停止してもよい。また、生成部205がユーザに判断を促すための条件はS1604で説明したものには限定されず、例えば、濃度変動が同じ方向にのみ検出されている場合、又は濃度変動が時間的に連続して検出されている場合などの条件を加えてもよい。閾値Th_N_Errは特に限定されず、条件に応じて所望の値として与えられてもよい。このような処理は、情報処理装置100に限らず、実施形態2に係る情報処理装置800が行ってもよい。このような処理によれば、濃度変動が一定の範囲内(例えばTh_E以内)であれば、濃度変動が生じていてもd1を考慮して良品と判定できる一方、濃度変動が一定の範囲を超えていると、ユーザに対する通知が行われる。
【0077】
このような処理によれば、大きな濃度差を検知した場合に、速やかにユーザによる確認を得るように促すことで、不合格品の発生抑制など全体としての生産性向上につなげることができる。
【0078】
[ログ]
また、管理部207は、濃度差の検出、参照データの更新、又はユーザへの通知などのイベントが生じた場合、そのイベントの発生時刻、発生したジョブ、及びイベントを発生させた根拠となるデータなどを保存してもよい。その場合、管理部207は、それらの情報を必要に応じてユーザに出力することができる。こうしたデータは、印刷成果物の確認、検査結果の検証、又は印刷装置のメンテナンスなどに活用することができる。
【0079】
[ユーザモード]
これまで述べてきたように生産性とのバランスを考慮した視覚的に目立ちにくい濃度差を許容するケースも考えられるが、常にそうであるとは限らず、品質を優先して厳密に成果物を管理したいケースも考えられる。そのような観点から、上述した実施形態を1つのモードとして実装し、ユースケースに応じて上述した実施形態のモードを使うか否かを使い分けるようにしてもよい。
【0080】
[色味の条件]
実施形態2に係る情報処理装置800は、印刷データ及び参照データをグレースケール化して大域的な濃度差の検出を行った。このとき、グレースケールの濃度差は許容されやすい一方で、人物の肌の色や食物などをはじめとする、色味の変動に対してより厳しい管理が求められやすい場合もある。そのような観点から、情報処理装置800は、濃度変動を検出するため、又は参照データを更新するために、色味変動の条件を追加で加えてもよい。例えば、情報処理装置800は、印刷データのRGBチャンネルの画素値のr:g:bが、参照データのr:g:bの比に対して所定の範囲内に収まる場合に濃度変動の検出又は参照データの更新処理を行ってもよい。また例えば、情報処理装置800は、印刷データ及び参照データの色空間を表色系色空間(例えばCIE L*a*b*)に変換し、変換後の色味変動が所定の範囲内に収まる場合に、濃度変動の検出又は参照データの更新処理を行ってもよい。
【0081】
実施形態1及び実施形態2においては、読取装置105が生成した印刷データの画素値から濃度変動を検出するため、印刷物の欠陥検出処理に含めて濃度変動検出処理を行うことができ、濃度変動検出のためだけのデバイスを必要としない。しかし、特にこれに限定されるわけではなく、情報処理装置が別途別の手段、例えば濃度センサを備え、濃度センサによって印刷物の濃度を測定することにより濃度変動が検出されてもよい。また、読取装置105はスキャナのような方式で画像データを取得するのではなく、撮像装置によって画像データを取得してもよい。さらに、本発明は上記で直接説明したものには限らず、各実施形態で説明した要素や概念を組み合わせて実現されてもよい。
【0082】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0083】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0084】
100:情報処理装置、101:CPU、102:RAM、103:ROM、104:主記憶装置、105:読取装置、106:印刷インターフェース、107:汎用インターフェース、108:ユーザーインターフェースパネル、109:メインバス