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特許7462437ロボットシステム、パラレルリンク機構、制御方法、制御装置、プログラム、及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】ロボットシステム、パラレルリンク機構、制御方法、制御装置、プログラム、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20240329BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20240329BHJP
   B25J 17/02 20060101ALI20240329BHJP
   B25J 9/06 20060101ALI20240329BHJP
   B23K 31/00 20060101ALN20240329BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
B25J11/00 D
B25J17/02 A
B25J9/06 B
B23K31/00 K
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020040214
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021137939
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 真拡
(72)【発明者】
【氏名】柴 岳人
(72)【発明者】
【氏名】渕上 康徳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏昌
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-071760(JP,A)
【文献】特開昭60-249588(JP,A)
【文献】特開昭61-278906(JP,A)
【文献】特開2018-202602(JP,A)
【文献】特表2005-528993(JP,A)
【文献】特開2002-239958(JP,A)
【文献】特開2010-247238(JP,A)
【文献】国際公開第2017/017712(WO,A1)
【文献】特開2019-048343(JP,A)
【文献】特開2008-126219(JP,A)
【文献】特開2010-082333(JP,A)
【文献】特開2019-090727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
B23K 31/00
G01N 29/00 - 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多関節のアーム機構と、
前記アーム機構の先端部に取り付けられる固定部、及び、
複数の並列なリンクを介して前記固定部に取り付けられ、前記固定部に対して可動な可動部、
を含み、前記アーム機構に対して4以上の自由度を有するパラレルリンク機構と、
前記可動部に取り付けられ、超音波センサを含む検査器を有するエンドエフェクタと、
制御点の位置又は向きを検出する検出器と、
前記アーム機構及び前記パラレルリンク機構を制御する制御装置であって、
前記アーム機構を動かし、前記制御点の姿勢を所定の第1姿勢に設定する第1動作と、
前記第1動作の後に、前記検出器の検出結果に基づいて前記パラレルリンク機構を動かし、前記制御点の前記姿勢を前記エンドエフェクタが作業を実行する作業姿勢に設定する第2動作と、
を実行する、前記制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記第2動作の後に、
前記超音波センサが作業対象へ超音波を送信したときの反射波の受信結果から、前記作業対象に対する前記検査器の傾きを計算し、
前記傾きが小さくなるように、前記パラレルリンク機構を動作させる、
ロボットシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1動作と前記第2動作との間に、
前記検出器の検出結果に基づき、前記作業姿勢までの前記制御点の前記姿勢の変位量を計算する計算処理と、
前記変位量が前記可動部の可動範囲内であるか判定する判定処理と、
を実行し、
前記制御装置は、前記判定処理において、前記変位量が前記可動範囲を超えるときには、前記アーム機構を動かして前記制御点の前記姿勢を前記作業姿勢に近づけた後に、前記第2動作を実行する、請求項1記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記第1動作と前記第2動作の間に、前記検出器の検出結果に基づいて前記アーム機構を動かし、前記制御点の前記姿勢を補正姿勢に設定する補正動作を実行し、
前記補正動作において、前記アーム機構の先端部の前記姿勢が特異点近傍を外れるように前記補正姿勢を設定する、
請求項1記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記作業対象は、複数の部材と、前記部材同士が接合された溶接部と、を含み、
前記制御装置は、前記溶接部に対する前記検査器の前記傾きを計算する、請求項1~3のいずれか1つに記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記超音波センサは、第1配列方向と、前記第1配列方向に交差する第2配列方向と、に沿って複数配列され、
前記パラレルリンク機構は、前記アーム機構に対して6自由度を有し、
前記制御装置は、前記第1配列方向と、前記第2配列方向と、前記第1配列方向及び前記第2配列方向を含む面と交差する交差方向と、における前記反射波の強度の勾配を計算し、前記勾配を用いて前記傾きを計算する、請求項4に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記パラレルリンク機構は、
前記固定部に取り付けられ、回転軸が前記固定部から前記可動部に向かう第1方向と交差する方向に沿って設けられるアクチュエータと、
前記回転軸と連結される第1部分を有し、前記アクチュエータによって回動される回動アームと、
前記回動アームの第2部分と第1ジョイント部材を介して連結され、前記可動部と第2ジョイント部材を介して連結されたリンクと、
をさらに含み、
前記回動アームの前記第1部分と前記第2部分との間には、屈曲部が設けられ、
前記第2部分は、前記第1部分に対して前記可動部側に設けられる、請求項1~5のいずれか1つに記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記固定部は、前記アクチュエータが取り付けられる第1面を有し、
前記可動部は、
前記エンドエフェクタが取り付けられる第2面と、
前記第1方向に対して傾斜し、前記第1方向を向いた第3面と、
を有し、
前記第2面のサイズは、前記第1面のサイズよりも小さく、
前記第2ジョイント部材は、前記第3面に取り付けられる請求項6記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記固定部には、前記第1方向に沿って前記固定部を貫通する第1孔が設けられ、
前記可動部には、前記第1方向に沿って前記可動部を貫通する第2孔が設けられた請求項6又は7に記載のロボットシステム。
【請求項9】
多関節のアーム機構と、
前記アーム機構の先端部に取り付けられる固定部、及び、
複数の並列なリンクを介して前記固定部に取り付けられ、前記固定部に対して可動な可動部、
を含み、前記アーム機構に対して4以上の自由度を有するパラレルリンク機構と、
前記可動部に取り付けられ、超音波センサを含む検査器を有するエンドエフェクタと、
制御点の位置又は向きを検出する検出器と、
を含むロボットシステムの制御方法であって、
前記アーム機構を動かし、前記制御点の姿勢を所定の第1姿勢に設定する第1ステップと、
前記第1ステップの後に、前記検出器の検出結果に基づいて前記パラレルリンク機構を動かし、前記制御点の前記姿勢を前記エンドエフェクタが作業を実行する作業姿勢に設定する第2ステップと、
を備え、
前記第2ステップの後に、前記超音波センサが作業対象へ超音波を送信したときの反射波の受信結果から、前記作業対象に対する前記検査器の傾きを計算し、前記傾きが小さくなるように、前記パラレルリンク機構を動作させる、制御方法。
【請求項10】
前記検出器の検出結果に基づき、前記作業姿勢までの前記制御点の前記姿勢の変位量を計算する計算ステップと、
前記変位量が前記可動部の可動範囲内であるか判定する判定ステップと、
をさらに備え、
前記計算ステップ及び前記判定ステップは、前記第1ステップと前記第2ステップとの間に実行され、
前記判定ステップにおいて、前記変位量が前記可動範囲を超えるときには、前記アーム機構を動かして前記制御点の前記姿勢を前記作業姿勢に近づけた後に、前記第2ステップを実行する、請求項9記載の制御方法。
【請求項11】
前記検出器の検出結果に基づいて前記アーム機構を動かし、前記制御点の前記姿勢を補正姿勢に設定する補正ステップをさらに備え、
前記補正ステップは、前記第1ステップと前記第2ステップとの間に実行され、
前記補正ステップにおいて、前記アーム機構の先端部の前記姿勢が特異点近傍を外れるように前記補正姿勢を設定する、請求項9記載の制御方法。
【請求項12】
前記エンドエフェクタによる作業の実行中は、前記検出器の検出結果に基づいて前記パラレルリンク機構を動かし、前記制御点の前記姿勢を調整する請求項9~11のいずれか1つに記載の制御方法。
【請求項13】
多関節のアーム機構と、
前記アーム機構の先端部に取り付けられる固定部、及び、
複数の並列なリンクを介して前記固定部に取り付けられ、前記固定部に対して可動な可動部、
を含み、前記アーム機構に対して4以上の自由度を有するパラレルリンク機構と、
前記可動部に取り付けられ、超音波センサを含む検査器を有するエンドエフェクタと、
制御点の位置又は向きを検出する検出器と、
を含むロボットシステムを制御する制御装置であって、
前記アーム機構を動かし、前記制御点の姿勢を所定の第1姿勢に設定する第1動作と、
前記第1動作の後に、前記検出器の検出結果に基づいて前記パラレルリンク機構を動かし、前記制御点の前記姿勢を前記エンドエフェクタが作業を実行する作業姿勢に設定する第2動作と、
を実行し、
前記第2動作の後に、前記超音波センサが作業対象へ超音波を送信したときの反射波の受信結果から、前記作業対象に対する前記検査器の傾きを計算し、前記傾きが小さくなるように前記パラレルリンク機構を動作させる、制御装置。
【請求項14】
前記第1動作と前記第2動作との間に、
前記検出器の検出結果に基づき、前記作業姿勢までの前記制御点の前記姿勢の変位量を計算する計算処理と、
前記変位量が前記可動部の可動範囲内であるか判定する判定処理と、
をさらに実行し、
前記判定処理において、前記変位量が前記可動範囲を超えるときには、前記アーム機構を動かして前記制御点の前記姿勢を前記作業姿勢に近づけた後に、前記第2動作を実行する、請求項13記載の制御装置。
【請求項15】
前記第1動作と前記第2動作の間に、前記検出器の検出結果に基づいて前記アーム機構を動かし、前記制御点の前記姿勢を補正姿勢に設定する補正動作を実行し、
前記補正動作において、前記アーム機構の先端部の前記姿勢が特異点近傍を外れるように前記補正姿勢を設定する、請求項13記載の制御装置。
【請求項16】
前記エンドエフェクタによる作業の実行中は、前記検出器の検出結果に基づいて前記パラレルリンク機構を動かし、前記制御点の前記姿勢を調整する請求項13~15のいずれか1つに記載の制御装置。
【請求項17】
多関節のアーム機構と、
前記アーム機構の先端部に取り付けられる固定部、及び、
複数の並列なリンクを介して前記固定部に取り付けられ、前記固定部に対して可動な可動部、
を含み、前記アーム機構に対して4以上の自由度を有するパラレルリンク機構と、
前記可動部に取り付けられ、超音波センサを含む検査器を有するエンドエフェクタと、
制御点の位置又は向きを検出する検出器と、
を含むロボットシステムを制御する制御装置に対して、
前記アーム機構を動かし、前記制御点の姿勢を所定の第1姿勢に設定する第1動作と、
前記第1動作の後に、前記検出器の検出結果に基づいて前記パラレルリンク機構を動かし、前記制御点の前記姿勢を前記エンドエフェクタが作業を実行する作業姿勢に設定する第2動作と、
を実行させ、
前記第2動作の後に、前記超音波センサが作業対象へ超音波を送信したときの反射波の受信結果から、前記作業対象に対する前記検査器の傾きを計算させ、前記傾きが小さくなるように、前記パラレルリンク機構を動作させる、プログラム。
【請求項18】
前記制御装置に対して、前記第1動作と前記第2動作との間に、
前記検出器の検出結果に基づき、前記作業姿勢までの前記制御点の前記姿勢の変位量を計算する計算処理と、
前記変位量が前記可動部の可動範囲内であるか判定する判定処理と、
をさらに実行させ、
前記判定処理において、前記変位量が前記可動範囲を超えるときには、前記アーム機構を動かして前記制御点の前記姿勢を前記作業姿勢に近づけた後に、前記第2動作を実行させる請求項17記載のプログラム。
【請求項19】
前記制御装置に対して、前記第1動作と前記第2動作の間に、前記検出器の検出結果に基づいて前記アーム機構を動かし、前記制御点の前記姿勢を補正姿勢に設定する補正動作を実行させ、
前記補正動作において、前記アーム機構の先端部の前記姿勢が特異点近傍を外れるように前記補正姿勢を設定する、請求項17記載のプログラム。
【請求項20】
前記制御装置に対して、前記エンドエフェクタによる作業の実行中には、前記検出器の検出結果に基づいて前記可動部を動作させ、前記制御点の前記姿勢を調整させる請求項17~19のいずれか1つに記載のプログラム。
【請求項21】
請求項17~20のいずれか1つに記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ロボットシステム、パラレルリンク機構、制御方法、制御装置、プログラム、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
多関節のアーム機構は、産業に広く利用されている。例えば、アーム機構に取り付けられたエンドエフェクタを用いて作業が実行される際、フィードバック制御により、制御点の姿勢を調整する場合がある。調整中、制御点の姿勢が特異点近傍になると、アーム機構の動作が不安定となる。この結果、アーム機構又はエンドエフェクタが別の部材と干渉したり、作業に通常よりも長い時間を要したりする可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-90727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施形態は、フィードバック制御により制御点の姿勢を調整する場合において、不安定な動作の発生を抑制できる、ロボットシステム、制御方法、制御装置、プログラム、及び記憶媒体を提供する。
本発明の別の一実施形態は、ロボットシステムに好適に用いられるパラレルリンク機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るロボットシステムは、多関節のアーム機構と、パラレルリンク機構と、エンドエフェクタと、検出器と、制御装置と、を備える。前記パラレルリンク機構は、前記アーム機構の先端部に取り付けられる固定部、及び、複数の並列なリンクを介して前記固定部に取り付けられ、前記固定部に対して可動な可動部を含む。前記エンドエフェクタは、前記可動部に取り付けられる。前記検出器は、制御点の位置又は向きを検出するために設けられる。前記制御装置は、前記アーム機構及び前記パラレルリンク機構を制御する。前記制御装置は、前記アーム機構を動かし、前記制御点の姿勢を所定の第1姿勢に設定する第1動作と、前記第1動作の後に、前記検出器の検出結果に基づいて前記パラレルリンク機構を動かし、前記制御点の前記姿勢を前記エンドエフェクタが作業を実行する作業姿勢に設定する第2動作と、を実行する。前記制御装置は、前記第1動作と前記第2動作との間に、前記検出器の検出結果に基づき、前記作業姿勢までの前記制御点の前記姿勢の変位量を計算する計算処理と、前記変位量が前記可動部の可動範囲内であるか判定する判定処理と、を実行する。前記制御装置は、前記変位量が前記可動範囲を超えるときには、前記アーム機構を動かして前記制御点の前記姿勢を前記作業姿勢に近づけた後に、前記第2動作を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係るロボットシステムを表す斜視図である。
図2】実施形態に係るパラレルリンク機構を表す斜視図である。
図3】実施形態に係るロボットシステムの動作を表す模式図である。
図4】制御点の特異点を表す模式図である。
図5】実施形態に係るロボットシステムの動作の一例を表す模式図である。
図6】実施形態に係るロボットシステムの動作の別の一例を表す模式図である。
図7】実施形態に係るロボットシステムの動作の別の一例を表す模式図である。
図8】実施形態に係るロボットシステムの動作を表すフローチャートである。
図9】実施形態に係るロボットシステムの動作を表すフローチャートである。
図10】実施形態に係るロボットシステムのエンドエフェクタを表す斜視図である。
図11】検査器先端の内部構造を表す斜視図である。
図12】検査器による検査方法を説明するための模式図である。
図13】実施形態に係るロボットシステムによる検査の流れを表すフローチャートである。
図14】検査における傾きの計算方法を説明するための図である。
図15】検査において得られた画像の一例である。
図16】検査において得られた画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
図1は、実施形態に係るロボットシステムを表す斜視図である。
実施形態に係るロボットシステム1は、図1に表したように、アーム機構100、パラレルリンク機構200、エンドエフェクタ300、検出器400、及び制御装置500を含む。
【0009】
アーム機構100は、複数のリンク110及び複数の回転軸120を含む。リンク110の一端同士は、回転軸120により連結されている。モータにより回転軸120が駆動されると、一方のリンク110が他方のリンク110に対して回動する。
【0010】
パラレルリンク機構200は、アーム機構100の先端部に取り付けられる。具体的には、複数のリンク110のうち、一端のリンク110の任意の一部に、パラレルリンク機構200が取り付けられる。複数のリンク110のうち、他端のリンク110は、基台130に連結されている。基台130は、床、壁、又は別の機構などの設置場所に固定される。
【0011】
パラレルリンク機構200は、固定部210、可動部220、リンク230、及び複数のアクチュエータ240を含む。固定部210は、アーム機構100の先端部に取り付けられている。可動部220は、複数のリンク230を介して固定部210に取り付けられている。複数のリンク230は、固定部210と可動部220との間に並列に設けられている。複数のリンク230は、複数のアクチュエータ240にそれぞれ連結されている。
【0012】
例えば、複数のアクチュエータ240は、モータであり、固定部210に取り付けられている。複数のアクチュエータ240がそれぞれ複数のリンク230を駆動させると、その動力が可動部220に伝達され、可動部220が固定部210に対して動く。
【0013】
固定部210の姿勢は、アーム機構100の先端部の姿勢に対応し、アーム機構100の動きにより決定される。ここでは、姿勢とは、位置及び向きを意味する。姿勢は、互いに直交する3方向(X方向、Y方向、及びZ方向)のそれぞれの位置と、各方向まわりの角度(ローリング、ピッチング、ヨーイング)と、により決定される。可動部220の姿勢は、固定部210の姿勢に対して可変である。
【0014】
アーム機構100の自由度は、4自由度以上であることが好ましい。例えば、アーム機構100は、垂直多関節ロボットであり、6自由度を有する。すなわち、アーム機構100は、その先端の3方向のそれぞれの位置と、その先端の3方向まわりのそれぞれの角度と、を制御できる。
同様に、パラレルリンク機構200は、4自由度以上であることが好ましい。例えば、パラレルリンク機構200は、6自由度を有する。すなわち、パラレルリンク機構200は、可動部220の3方向のそれぞれの位置と、可動部220の3方向まわりのそれぞれの角度と、を制御できる。
【0015】
エンドエフェクタ300は、可動部220に取り付けられている。すなわち、エンドエフェクタ300は、パラレルリンク機構200を介してアーム機構100に取り付けられている。エンドエフェクタ300の姿勢は、アーム機構100の動き及びパラレルリンク機構200の動きにより決定される。
【0016】
検出器400は、制御点の位置又は向きを検出する。制御装置500は、アーム機構100及びパラレルリンク機構200を制御し、制御点の姿勢を調整する。制御点とは、制御装置500によって位置および向きが制御される点である。制御点は、例えば、可動部220の任意の一点に設定される。又は、制御点は、エンドエフェクタ300の任意の一点に設定されても良い。
【0017】
検出器400は、例えば、測距センサ、光位置センサ、及びカメラの少なくともいずれかを含む。検出器400により検出される位置又は向きは、絶対的であっても良いし、相対的であっても良い。例えば図1に表したように、検出器400は、可動部220に取り付けられる。エンドエフェクタ300及び検出器400は、可動部220に対して固定されている。このため、検出器400の姿勢は、制御点の姿勢に対応する。この場合、検出器400は、作業対象に対する制御点の相対的な位置又は向きを検出する。別の例として、検出器400は、アーム機構100及びパラレルリンク機構200とは別に設けられても良い。この場合、検出器400は、アーム機構100及びパラレルリンク機構200が設けられた空間における制御点の絶対的な位置又は向きを検出する。
【0018】
制御装置500は、アーム機構100の各モータに駆動信号を送信する。各モータは、駆動信号に従って駆動され、各回転軸120の回転角度が制御される。これにより、アーム機構100の先端部の姿勢が制御される。同様に、制御装置500は、パラレルリンク機構200の各アクチュエータ240に駆動信号を送信する。各アクチュエータ240は、駆動信号に従って駆動され、各アクチュエータ240の回転軸の回転角度が制御される。これにより、固定部210に対する可動部220の姿勢が制御される。
【0019】
例えば、制御装置500は、アーム機構100のみを用いて制御点の姿勢を制御するときには、制御点の姿勢が所望の姿勢となるように、逆運動学計算により各回転軸120の回転角度を計算する。制御装置500は、パラレルリンク機構200のみを用いて制御点の姿勢を制御するときには、制御点の姿勢が所望の姿勢となるように、逆運動学計算により各アクチュエータ240の回転軸の回転角度を計算する。
【0020】
例えば、ロボットシステム1が作業を実行する場合、制御装置500は、制御点の姿勢が、予め設計された所望の姿勢となるように、逆運動学によって各回転軸120の回転角度を計算する。制御装置500は、各回転軸120の回転角度を計算された値に設定する。実際の作業対象の位置及び向きが予め設計された通りである場合、制御点の姿勢を上記所望の姿勢に設定することで、好適に作業を実行できる。
実際の作業対象の位置及び向きが予め設計された値からずれている場合、位置及び姿勢のずれ量が検出器400により検出される。制御装置500は、そのずれ量が補正されるように、逆運動学計算によって各アクチュエータ240の回転軸の回転角度を計算する。制御装置500は、各アクチュエータ240の回転角度を計算された値に設定する。これにより、制御点の姿勢が、実際の作業対象の位置及び向きに対応して設定される。
【0021】
図示した例では、アーム機構100及びパラレルリンク機構200が1つの制御装置500により制御されている。アーム機構100及びパラレルリンク機構200は、複数の制御装置500によりそれぞれ別々に制御されても良い。
【0022】
可動部220の固定部210に対する可動範囲は、基台130に対するアーム機構100の先端部の可動範囲に比べて小さい。例えば、制御装置500は、アーム機構100を動かすことで、作業対象に対する制御点の大まかな姿勢を調整できる。制御装置500は、パラレルリンク機構200を動かすことで、作業対象に対する制御点の細かな姿勢を調整できる。
【0023】
制御装置500は、検出器400による検出結果に応じて、制御点の姿勢を制御しても良い。例えば、制御装置500は、アーム機構100を所定の姿勢に設定した後は、検出器400による検出結果に応じてパラレルリンク機構200を動かし、制御点の細かな姿勢を調整しても良い。
【0024】
制御装置500は、中央演算処理装置(CPU)を含む処理回路を備える。制御装置500は、記憶装置510に接続されている。記憶装置510は、Read Only Memory(ROM)、Random Access Memory(RAM)、Hard Disk Drive(HDD)、Solid State Drive(SSD)などの記憶媒体を含む。制御装置500は、記憶装置510に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより、ロボットシステム1の各部を制御する。制御装置500は、ロボットシステム1の動作中に得られたデータを記憶装置510に記憶しても良い。
【0025】
制御装置500は、図1に表したように、入力装置520又は出力装置530とさらに接続されていても良い。入力装置520は、制御装置500又は記憶装置510に対してユーザがデータを入力する際に使用される。入力装置520は、キーボード、マウス、マイク(音声入力)、及びタッチパッドの少なくともいずれかを含む。出力装置530は、制御装置500から出力されたデータ又は記憶装置510に記憶されたデータを、ユーザが認識できるように出力する。出力装置530は、モニタ、スピーカ、プリンタ、及びプロジェクタの少なくともいずれかを含む。タッチパネルなどの入力装置520と出力装置530の両方の機能を備えた機器が用いられても良い。
【0026】
制御装置500は、アーム機構100及びパラレルリンク機構200と、有線通信、無線通信、又はネットワークによって接続される。制御装置500は、複数の制御部を含んでも良い。例えば、アーム機構100を制御する制御部(ロボットコントローラ)と、パラレルリンク機構200を制御する別の制御部(別のロボットコントローラ)と、これらの制御部とデータを送受信するさらに別の制御部と、が設けられても良い。これらの制御部は、有線通信、無線通信、又はネットワークによって接続される。同様に、制御装置500は、記憶装置510、入力装置520、及び出力装置530と、有線通信、無線通信、又はネットワークによって接続されても良い。制御装置500、記憶装置510、入力装置520、及び出力装置530の2つ以上は、1つの機器として構成されても良い。
【0027】
図2は、実施形態に係るパラレルリンク機構を表す斜視図である。
図2を参照して、実施形態に係るロボットシステム1に好適なパラレルリンク機構200の一例について説明する。図2に表したパラレルリンク機構200は、固定部210、可動部220、リンク230、アクチュエータ240、第1ジョイント部材250、第2ジョイント部材260、及び回動アーム270を含む。
【0028】
ここでは、説明のために、固定部210から可動部220に向かう方向を「上」(第1方向)と呼び、その反対方向を「下」と呼ぶ。これらの方向は、固定部210と可動部220との相対的な位置関係に基づき、重力の方向とは無関係である。
【0029】
図示した例では、固定部210及び可動部220は、平らな板状である。固定部210は、アーム機構100の先端部に取り付けられる下面210aと、下面210aとは反対側の上面210b(第1面)と、を有する。アクチュエータ240は、固定部210の上面210bに取り付けられている。この例では、アクチュエータ240は、モータである。アクチュエータ240の回転軸241は、上下方向と交差する方向に沿って設けられている。
【0030】
回転軸241には、回動アーム270の一部(第1部分271)が固定されている。回動アーム270は、アクチュエータ240により、回転軸241まわりに駆動される。回動アーム270の別の一部(第2部分272)には、第1ジョイント部材250が取り付けられている。第1部分271から第2部分272に向かう方向は、回転軸241の方向と交差する。回動アーム270が回転すると、可動部220と第2部分272との間の上下方向における距離が変化する。
【0031】
回動アーム270の第1部分271と第2部分272との間には、屈曲部273が設けられている。第2部分272は、第1部分271に対して、可動部220側に位置している。換言すると、第2部分272の上下方向における位置は、第1部分271の上下方向における位置と、可動部220の上下方向における位置と、の間にある。回動アーム270は、屈曲部273において、折れるように曲がっていても良いし、滑らかに湾曲していても良い。
【0032】
リンク230の一端は、第1ジョイント部材250を介して回動アーム270の第2部分272に連結されている。第1ジョイント部材250は、例えば、2自由度を有するユニバーサルジョイントである。第1ジョイント部材250は、継手251及び252を含む。継手251は、回動アーム270の第2部分272に固定されている。継手252は、リンク230の一端に固定されている。
【0033】
リンク230の他端は、第2ジョイント部材260を介して、可動部220に連結されている。第2ジョイント部材260は、可動部220の側面220a(第3面)に取り付けられている。側面220aは、上下方向に対して傾斜し、上方を向いている。
【0034】
第2ジョイント部材260は、例えば、3自由度を有するボールジョイントである。第2ジョイント部材260は、ボール261及びソケット262を含む。ソケット262の軸心は、リンク230の他端に固定され、ボール261と球面接触する。ボール261は、側面220aに固定されている。ソケット262の角度が変化した際に、ソケット262と可動部220との干渉を回避するために、ボール261は側面220aから離れている。
【0035】
可動部220の上面220b(第2面)には、エンドエフェクタ300が取り付けられる。側面220aは、上面220bと連なっている。可動部220が基準の姿勢にあるとき、上面220bは、例えば上面210bと平行である。可動部220の基準姿勢とは、可動部220が可動範囲内において予め設定された特定の姿勢を採った状態を指す。図2は、可動部220が基準姿勢にある状態を表している。このとき、可動部220は、固定部210に最も近接した位置にある。
【0036】
固定部210には、複数のアクチュエータ240及びエンドエフェクタ300の配線を通すための孔211(第1孔)が設けられている。孔211は、上下方向に沿って固定部210を貫通している。可動部220には、エンドエフェクタ300の配線を通すための孔221(第2孔)が設けられている。孔221は、上下方向に沿って可動部220を貫通している。
【0037】
例えば、エンドエフェクタ300の配線は、孔211及び221を通して、アーム機構100に向けて引き出される。例えば、アーム機構100へのパラレルリンク機構200の装着前に、エンドエフェクタ300の配線をアーム機構100の先端部に取り付けた場合でも、エンドエフェクタ300の配線を孔211及び221に通しながら、アーム機構100へパラレルリンク機構200を装着できる。
パラレルリンク機構200は、アーム機構100及びエンドエフェクタ300のみを含むロボットシステムに、取り付けることもできる。この場合、エンドエフェクタ300をアーム機構100から取り外した後、エンドエフェクタ300に接続されていた配線を孔211及び221に通してパラレルリンク機構200の先端側に引き出すことで、容易にアーム機構100の先端部にパラレルリンク機構200及びエンドエフェクタ300を取り付けることができる。
【0038】
パラレルリンク機構200には、リンク230、アクチュエータ240、第1ジョイント部材250、第2ジョイント部材260、及び回動アーム270の組が6つ設けられている。例えば、隣り合う一対のアクチュエータ240a及び240bは、それらの回転軸が互いに平行になるように設けられている。同様に、隣り合う一対のアクチュエータ240c及び240dは、それらの回転軸が互いに平行になるように設けられている。三対のアクチュエータ240は、孔211の周りに等間隔で設けられている。
【0039】
一対の回動アーム270a及び270bは、それらの第2部分272が互いに反対方向に向くように、一対のアクチュエータ240a及び240bにそれぞれ連結されている。同様に、一対の回動アーム270c及び270dは、それらの第2部分272が互いに反対方向に向くように、一対のアクチュエータ240c及び240dにそれぞれ連結されている。
【0040】
一対の回動アーム270の1つに連結されたリンク230と、別の一対の回動アーム270の1つに連結されたリンク230と、が同じ側面220aに連結される。例えば、回動アーム270bに連結されたリンク230bと、回動アーム270cに連結されたリンク230cと、は同じ側面220aに連結される。回動アーム270aに連結されたリンク230aと、回動アーム270dに連結されたリンク230dと、はそれぞれ別の側面220aに連結される。6つのアクチュエータ240の回転軸241の回転角度がそれぞれ独立して制御されることで、可動部220及びエンドエフェクタ300の姿勢が制御される。
【0041】
可動部220の上面220bのサイズは、固定部210の上面210bのサイズよりも小さい。例えば、上下方向と交差する一方向における上面220bの寸法は、当該一方向における上面210bの寸法よりも短い。
【0042】
可動部220が基準姿勢にある状態において、リンク230は、可動部220に向けて、上下方向に対して傾斜している。継手252及びソケット262の軸心は、リンク230に沿って設けられている。
【0043】
屈曲部273が設けられることで、可動部220が基準姿勢にある状態で、第1ジョイント部材250の偏角を小さくできる。また、側面220aが上下方向に対して傾斜することで、第2ジョイント部材260の偏角を小さくできる。例えば、屈曲部273の角度は、可動部220が基準姿勢にある状態で、第1ジョイント部材250の偏角が0度となるように設定されている。側面220aの上下方向に対する傾斜は、可動部220が基準姿勢にある状態で、第2ジョイント部材260の偏角が0度となるように設定されている。これにより、パラレルリンク機構200の大型化を抑制しつつ、固定部210に対する可動部220の可動範囲を広げることができる。
【0044】
図3(a)~図3(c)は、実施形態に係るロボットシステムの動作を表す模式図である。
図3(a)~図3(c)に表した例では、ロボットシステム1は、作業対象Oに対して、エンドエフェクタ300を用いて所定の作業を実行する。
【0045】
まず図3(a)に表したように、アーム機構100が設置された場所に、作業対象Oが搬送される。作業対象Oは、図3(a)に表したように搬送装置Cによって搬送されても良いし、人によって搬送されても良い。搬送装置Cの具体的な態様は、任意である。又は、アーム機構100が、無人搬送車(AGV)などに搭載され、移動しても良い。このときの制御点の姿勢は任意である。また、この例では、制御点は、エンドエフェクタ300の先端に設定されている。
【0046】
制御装置500は、第1動作を実行する。第1動作において、制御装置500は、アーム機構100を動かし、図3(b)に表したように、制御点の姿勢を所定の第1姿勢に設定する。なお、第1動作は、アーム機構100の先端部が所定の姿勢となるように、実行されても良い。第1動作において、パラレルリンク機構200及びエンドエフェクタ300が動作しない場合、アーム機構100の先端部の姿勢が定まると、制御点の姿勢も定まる。このように、間接的に制御点の姿勢が第1姿勢に設定されても良い。
【0047】
第1動作の後、検出器400は、制御点の位置又は向きを検出する。例えば、アーム機構100の先端部が第1姿勢にあるときの、制御点の位置又は向きが検出される。制御装置500は、第2動作を実行する。第2動作において、制御装置500は、図3(c)に表したように、パラレルリンク機構200を動かす。このとき、制御装置500は、検出器400による検出結果に応じて、制御点の姿勢を調整する。これにより、制御点の姿勢が、エンドエフェクタ300による作業に適した姿勢に設定される。
【0048】
第1動作及び第2動作の後、エンドエフェクタ300は、作業対象Oへの作業を実行する。作業の実行中に、制御装置500は、検出器400による検出結果に応じて、制御点の姿勢を調整しても良い。例えば、制御装置500は、パラレルリンク機構200を動かすことで、作業中の制御点の姿勢を調整する。作業は、例えば、塗装、溶接、検査、締結、組み立て、切削などである。エンドエフェクタ300の具体的な形態は、実行される作業に準じて決定される。
【0049】
実施形態の効果を説明する。
制御装置500がアーム機構100を動かす際には、例えば、制御点に対する移動指令から、逆運動学計算によってアーム機構100の各回転軸120の回転角度又は回転速度が決定される。一方で、アーム機構100には、制御上の特異点が存在する。制御上の特異点とは、逆運動学計算によって各回転軸120の回転角度を決定できない姿勢(位置及び向き)を指す。特異点では、各回転軸120の回転角度を一意に決めることができない。このため、アーム機構100の姿勢を、そのような姿勢に設定することができない。また、特異点付近では、アーム機構100の動作が不安定となりうる。以下では、特異点と、特異点付近の姿勢と、をまとめて「特異点近傍」と呼ぶ。
【0050】
図4(a)及び図4(b)は、制御点の特異点を表す模式図である。
図4(a)は、アーム機構100を側方から見たときの様子を表す。図4(b)は、アーム機構100を上方から見たときの様子を表す。複数の回転軸120は、基台130からパラレルリンク機構200に向けて、回転軸121~126を含む。図4(a)に表したように、回転軸124の回転中心と回転軸126の回転中心とが同一直線上に並んだ場合、パラレルリンク機構200の回転は、回転軸124及び126のいずれの回転によっても可能である。図4(b)に表したように、回転軸121の回転中心と回転軸126の回転中心とが同一直線上に並んだ場合も、パラレルリンク機構200の回転は、回転軸124及び126のいずれの回転によっても可能である。図4(a)及び図4(b)に表した姿勢に対しては、逆運動学計算によって回転軸121~126のそれぞれの回転角度が一意に決まらない。このため、制御点の姿勢が特異点近傍にあると、アーム機構100が制御不能になる可能性がある。
【0051】
例えば、ティーチングプレイバック方式によってアーム機構100に全く同一の動きを繰り返させる場合には、制御点の姿勢が特異点近傍とならないように、アーム機構100に動作を教示できる。しかし、フィードバック制御により制御点の姿勢を調整する場合には、制御点が教示されていない姿勢となりうる。このため、制御点の姿勢の調整中に、制御点の姿勢が特異点近傍となる可能性がある。
【0052】
この課題について、実施形態に係るロボットシステム1では、アーム機構100の先端部に、パラレルリンク機構200が設けられている。パラレルリンク機構200は、制御点に対する移動指令から、逆運動学計算によって各アクチュエータ240の駆動量が一意に決まる。このため、パラレルリンク機構200には、アーム機構100のような回転角度を決定できなくなる特異点は存在しない。例えば、制御装置500は、検出器400による検出結果に基づいて制御点の姿勢を調整する際には、パラレルリンク機構200を動かす。これにより、アーム機構100を動かさずに、制御点の姿勢を調整できる。又は、アーム機構100は予めプログラムされた動作のみを実行しつつ、検出結果に基づいて制御点の姿勢を調整できる。これにより、フィードバック制御によりエンドエフェクタ300の姿勢を調整する場合においても、アーム機構100の先端部の姿勢が特異点近傍となることを回避できる。
【0053】
フィードバック制御は、特に、ロボットシステム1によって高度な作業が実行される場合に必要とされる。例えば、塗装では、作業対象の表面の詳細な形状に倣ってエンドエフェクタ300の姿勢を調整する場合、又は作業対象の微小な位置ずれを補正するようにエンドエフェクタ300の姿勢を調整する場合、などが挙げられる。検査では、より適切な検査結果が得られるように、検査中に作業対象から得られた情報に基づいてエンドエフェクタ300の姿勢を調整する場合が挙げられる。
これらの作業中にアーム機構100の先端部の姿勢が特異点近傍となると、正常に作業を完了させることが困難となる。従って、実施形態に係るロボットシステム1は、特に、作業中において、検出器400による検出結果に基づいてエンドエフェクタ300の姿勢を調整する必要がある場合に、好適に用いられる。
【0054】
また、ロボットシステム1には、図2に表したパラレルリンク機構200が好適に用いられる。このパラレルリンク機構200によれば、大型化を抑制しつつ、固定部210に対する可動部220の可動範囲を広げることができる。例えば、エンドエフェクタ300による作業中に、パラレルリンク機構200が作業対象に干渉することを抑制できる。
【0055】
ロボットシステム1において、以下の動作が実行されても良い。
図5(a)~図5(c)は、実施形態に係るロボットシステムの動作の一例を表す模式図である。
図5(a)は、制御装置500により第1動作が実行された後の状態を表している。このとき、制御点の姿勢は、予めプログラムされた第1姿勢に設定される。
【0056】
制御装置500は、第1動作の後に、検出器400による検出結果に基づいて、制御点の姿勢を、エンドエフェクタ300が作業を実行する作業姿勢に設定するために必要な変位量を計算する。変位量は、X方向、Y方向、及びZ方向のそれぞれにおける移動量と、ローリング、ピッチング、及びヨーイングのそれぞれにおける回転角度と、で表される。制御装置500は、変位量を、パラレルリンク機構200の可動範囲と比較する。具体的な一例として、制御装置500は、第1姿勢から作業姿勢までの変位量を計算し、制御点が第1姿勢にあるときのパラレルリンク機構200の可動範囲と変位量とを比較する。
【0057】
変位量が可動範囲を超えているとき、制御装置500は、図5(b)に表したように、変位量が小さくなるように制御点の姿勢を補正する。その後、図5(c)に表したように、制御装置500は、制御点が補正された姿勢にあるときの検出結果に基づき、パラレルリンク機構200を動かして制御点の姿勢を作業姿勢に設定する。
【0058】
この動作によれば、アーム機構100によるプログラムされていない動きをなるべく抑えつつ、制御点を望ましい姿勢に設定できる。
【0059】
図6(a)、図6(b)、図7(a)、及び図7(b)は、実施形態に係るロボットシステムの動作の別の一例を表す模式図である。
図6(a)は、図5(a)と同様に、制御点の姿勢が第1姿勢に設定された状態を表している。この後、制御装置500は、図6(b)に表したように、第1姿勢から作業姿勢への変位量に拘わらず、検出器400による検出結果に基づき、アーム機構100を動かして制御点の姿勢を補正しても良い。
【0060】
エンドエフェクタ300による作業中に、検出結果によっては、パラレルリンク機構200を大きく動かす必要がある。このとき、検出結果から計算される制御点の望ましい姿勢が、パラレルリンク機構200の可動範囲外である場合は、作業中にアーム機構100を動かす必要がある。この場合は、パラレルリンク機構200による姿勢の調整が中止され、アーム機構100が動作した後、再度パラレルリンク機構200によって制御点の姿勢が調整される。パラレルリンク機構200の動作回数を減らすため、制御点を作業姿勢に設定する前に、アーム機構100を動かして制御点の姿勢を補正姿勢に設定しても良い。
【0061】
例えば、補正動作では、作業対象Oに対して制御点の姿勢が所定の第1状態となるように、制御点の姿勢が補正される。第1状態において制御点の姿勢を作業姿勢に設定するために必要な変位量は、第1姿勢から作業姿勢までの変位量よりも小さい。第1状態は、パラレルリンク機構200による制御点の姿勢の調整後においても、パラレルリンク機構200による可動範囲が広くなるように決定されることが好ましい。
【0062】
一方で、作業対象Oに対して制御点の姿勢を設定すると、図6(b)に表したように、一部の回転軸が直線状に並び、アーム機構100の先端部の姿勢が特異点近傍となる可能性がある。このため、補正動作において、制御装置500は、アーム機構100の先端部の姿勢が特異点近傍から外れるように、補正姿勢を設定する。
【0063】
具体的には、制御装置500は、第1動作の後に、作業対象Oに対して第1状態となる制御点の姿勢を計算する。制御装置500は、計算された姿勢において、アーム機構100の先端部の姿勢が特異点近傍にあるか判定する。先端部の姿勢が特異点近傍にないときには、制御装置500は、制御点の姿勢を第1状態に設定する。先端部の姿勢が特異点近傍にあるときには、制御装置500は、作業対象Oに対する制御点の姿勢が第2状態となるように、制御点の姿勢を補正する。第2状態は、第1状態に比べて、作業姿勢までの変位量が大きい。
【0064】
具体的には、第2状態において制御点の姿勢を作業姿勢に設定するために必要な変位量は、第1姿勢から作業姿勢までの変位量よりも小さい。第2状態において制御点の姿勢を作業姿勢に設定するために必要な変位量は、第1状態において制御点の姿勢を作業姿勢に設定するために必要な変位量よりも大きい。
【0065】
アーム機構100の先端部の姿勢が特異点近傍から外れるように補正が実行された結果、例えば図7(a)に表したように、作業対象Oに対する制御点の姿勢が第2状態に設定される。その後、制御装置500は、図7(b)に表したように、パラレルリンク機構200を動かして制御点の姿勢を作業姿勢に設定する。
【0066】
この動作によれば、アーム機構100の先端部の姿勢が特異点近傍となることを回避しつつ、作業中には、検出結果に基づく制御点の姿勢の調整にはパラレルリンク機構200のみで対応し易くなる。
【0067】
図8及び図9は、実施形態に係るロボットシステムの動作を表すフローチャートである。
図8は、図5(a)~図5(c)に表した動作を示す。まず、制御装置500は、第1動作(第1ステップ)を実行する(ステップS1)。第1動作では、アーム機構100が動作し、制御点の姿勢が所定の第1姿勢に設定される。制御装置500は、計算処理(計算ステップ)を実行する(ステップS2)。計算処理では、検出器400の検出結果に基づき、作業姿勢までの制御点の姿勢の変位量が計算される。制御装置500は、判定処理(判定ステップ)を実行する(ステップS3)。判定処理では、変位量が、可動部220の可動範囲内であるか判定される。
【0068】
変位量が可動範囲内であるとき、制御装置500は、第2動作(第2ステップ)を実行する(ステップS4)。第2動作では、検出器400の検出結果に基づいてパラレルリンク機構200が動作し、制御点の姿勢が作業姿勢に設定される。変位量が可動範囲外であるとき、制御装置500は、補正動作(補正ステップ)を実行する(ステップS5)。補正動作では、アーム機構100が動作し、制御点の姿勢が作業姿勢に近づく。その後、第2動作が実行される。
【0069】
制御装置500は、作業を実行する(ステップS6)。作業は、エンドエフェクタ300を用いて実行される。作業中は、検出器400の検出結果に基づいて、制御点の姿勢が調整される。検出結果に基づく姿勢の調整は、パラレルリンク機構200により実行される。
【0070】
図9は、図6(a)、図6(b)、図7(a)、及び図7(b)に表した動作を示す。制御装置500は、第1動作を実行し(ステップS1)、計算処理を実行する(ステップS2)。計算処理では、検出器400の検出結果に基づき、作業対象Oに対して第1状態となる制御点の姿勢を計算する。制御装置500は、判定処理を実行する(ステップS3)。判定処理では、第1状態において、アーム機構100の先端部の姿勢が特異点近傍にあるか判定される。
【0071】
第1状態においてアーム機構100の先端部の姿勢が特異点近傍にないとき、制御装置500は、第1補正動作を実行する(ステップS51)。第1補正動作では、アーム機構100が動作し、作業対象Oに対する制御点の姿勢が第1状態に設定される。第1状態においてアーム機構100の先端部の姿勢が特異点近傍にあるとき、制御装置500は、第2補正動作を実行する(ステップS52)。第2補正動作では、アーム機構100が動作し、作業対象Oに対する制御点の姿勢が第2状態に設定される。第1補正動作又は第2補正動作の後、制御装置500は、第2動作を実行し(ステップS4)、作業を実行する(ステップS6)。
【0072】
図10は、実施形態に係るロボットシステムのエンドエフェクタを表す斜視図である。
図10を参照して、実施形態に係るロボットシステム1に用いられるエンドエフェクタ300の一例について説明する。図10に表した例では、エンドエフェクタ300として、検査器310及び塗布装置320が設けられている。この例では、作業対象Oは溶接された部材であり、作業として検査が実行される。また、制御点は、検査器310の先端に設定される。
【0073】
検査器310は、溶接部を検査するための複数の超音波センサを含む。塗布装置320は、カプラントを溶接部の上面に塗布する。カプラントは、検査器310と検査対象との間で超音波の音響的整合をとるために用いられる。カプラントは、液体でも良いし、ゲル状でも良い。この例では、検出器400としてのカメラが、検査器310及び塗布装置320に隣接して設けられている。検出器400は、溶接された部材を撮影し、画像を取得する。検出器400は、画像から溶接痕を抽出し、溶接部の位置を検出する。
【0074】
図11は、検査器先端の内部構造を表す斜視図である。
検査器310先端の内部には、図11に表したマトリクスセンサ311が設けられている。マトリクスセンサ311は、複数の超音波センサ312を含む。超音波センサ312は、例えば、トランスデューサである。複数の超音波センサ312は、互いに交差する2方向(X方向及びY方向)に沿って配列されている。この例では、X方向とY方向は、直交している。なお、複数の超音波センサ312が配列されるX方向及びY方向は、制御点の位置を示す座標系のX方向及びY方向と対応していても良いし、対応していなくても良い。
【0075】
制御装置500は、パラレルリンク機構200を動かし、X方向及びY方向を含む面と交差するZ方向に沿って検査器310を移動させる。制御装置500は、検査器310を検査対象に接触させ、溶接部を検査する。
【0076】
図11は、部材5を検査する様子を表している。部材5は、金属板51(第1部材)と金属板52(第2部材)が、溶接部53においてスポット溶接されて作製されている。溶接部53では、金属板51の一部と金属板52の一部が溶融し、混ざり合って凝固した凝固部54が形成されている。それぞれの超音波センサ312は、カプラント55が塗布された部材5に向けて超音波USを送信し、部材5からの反射波RWを受信する。
【0077】
より具体的な一例として、図11に表したように、1つの超音波センサ312が溶接部53に向けて超音波USを送信する。超音波USの一部は、部材5の上面または下面などで反射される。複数の超音波センサ312のそれぞれは、この反射波RWを受信(検出)する。それぞれの超音波センサ312が順次超音波USを送信し、それぞれの反射波RWを複数の超音波センサ312で受信することで、部材5の溶接部53近傍を、2次元的に検査する。
【0078】
図12は、検査器による検査方法を説明するための模式図である。
図12(a)に表したように、超音波USの一部は、金属板51の上面5aまたは溶接部53の上面5bで反射される。超音波USの別の一部は、部材5に入射し、金属板51の下面5cまたは溶接部53の下面5dで反射する。
【0079】
上面5a、上面5b、下面5c、及び下面5dのZ方向における位置は、互いに異なる。すなわち、これらの面と超音波センサ312との間のZ方向における距離が、互いに異なる。超音波センサ312が、これらの面からの反射波を受信すると、反射波の強度のピークが検出される。超音波USを送信した後、各ピークが検出されるまでの時間を算出することで、どの面で超音波USが反射されているか調べることができる。
【0080】
図12(b)及び図12(c)は、超音波USを送信した後の時間と、反射波RWの強度と、の関係を例示するグラフである。ここでは、反射波RWの強度を絶対値で表している。図12(b)のグラフは、金属板51の上面5a及び下面5cからの反射波RWの受信結果を例示している。図12(c)のグラフは、溶接部53の上面5b及び下面5dからの反射波RWの受信結果を例示している。
【0081】
図12(b)のグラフにおいて、1回目のピークPe1は、上面5aからの反射波RWに基づく。2回目のピークPe2は、下面5cからの反射波RWに基づく。ピークPe1及びピークPe2が検出された時間は、それぞれ、金属板51の上面5a及び下面5cのZ方向における位置に対応する。ピークPe1が検出された時間とピークPe2が検出された時間との時間差TD1は、上面5aと下面5cとの間のZ方向における距離Di1に対応する。
【0082】
同様に、図12(c)のグラフにおいて、1回目のピークPe3は、上面5bからの反射波RWに基づく。2回目のピークPe4は、下面5dからの反射波RWに基づく。ピークPe3及びピークPe4が検出された時間は、それぞれ、溶接部53の上面5b及び下面5dのZ方向における位置に対応する。ピークPe3が検出された時間とピークPe4が検出された時間との時間差TD2は、上面5bと下面5dとの間のZ方向における距離Di2に対応する。
【0083】
制御装置500は、隣り合うピークの時間差から、溶接部53近傍の各点が溶接されているか検査する。また、溶接部53の上面5b及び下面5dは、金属板51の上面5aに対して傾斜していることがある。これは、溶接部53が凝固部54を含むことや、溶接の過程における形状の変形などに基づく。この場合、上面5b又は下面5dに対して平均的に垂直な方向に沿って超音波USが送信されることが望ましい。これにより、上面5b及び下面5dにおいてより強く超音波が反射され、検査の精度を向上させることができる。
【0084】
図13は、実施形態に係るロボットシステムによる検査の流れを表すフローチャートである。
まず、制御装置500は、第1動作を実行する(ステップS1)。検出器400は、部材5を撮影し、取得した画像から溶接部53の位置を検出する(ステップS11)。制御装置500は、第2動作を実行する(ステップS4)。これにより、検査器310及び塗布装置320の姿勢が調整される。ステップS11とS4との間に、図8又は図9に表した計算処理、判定処理、及び補正動作が実行されても良い。
【0085】
塗布装置320は、カプラント55を溶接部53に塗布する(ステップS12)。制御装置500は、パラレルリンク機構200を動かし、溶接部53が検出された位置に検査器310を接触させる(ステップS13)。検査器310が溶接部53に接触した状態で、制御装置500は、溶接部53を検査する(ステップS14)。
【0086】
具体的には、複数の超音波センサ312が、溶接部53を含む部材5に向けて超音波USを送信し、反射波RWを受信する。検査器310は、反射波の受信結果を制御装置500に送信する。制御装置500は、受信結果から、溶接部53に対する検査器310の傾きを計算する。制御装置500は、計算結果に基づき、その傾きが小さくなるように、パラレルリンク機構200を動かして検査器310の先端の姿勢を調整する。
【0087】
検査器310の姿勢の調整後、複数の超音波センサ312は、超音波USを再度送信し、反射波RWを受信する。制御装置500は、この反射結果に基づき、溶接部53が適切に溶接されているか判定する。これにより、溶接部53の検査が完了する。制御装置500は、未検査の溶接部53があるか判定する(ステップS15)。未検査の溶接部53が無い場合、動作を終了する。未検査の溶接部53がある場合、制御装置500は、未検査の溶接部53に対して第1動作を再度実行する。
【0088】
以下では、傾きの算出方法について具体的な一例を説明する。
図14は、検査における傾きの計算方法を説明するための図である。
図15及び図16は、検査において得られた画像の一例である。
【0089】
図15は、反射波の検出結果に基づいて描写される3次元のボリュームデータである。図16(a)は、図15に表したボリュームデータにおける溶接部53の表面を表す。図16(b)は、図15に表したボリュームデータにおける溶接部53近傍のY-Z断面を表す。図16(c)は、図15に表したボリュームデータにおける溶接部53近傍のX-Z断面を表す。図16(b)及び図16(c)では、上側が溶接部53の表面で、下向きに深さ方向のデータが示されている。輝度が高い部分は、超音波の反射強度が大きい部分である。超音波は、溶接部53の底面、未接合の部材同士の間の面などで強く反射される。
【0090】
検査器310の傾きは、図14に表した、溶接部53に垂直な方向53aと、検査器310の方向310aと、の間の角度に対応する。この角度は、X方向まわりの角度θxと、Y方向まわりの角度θyと、によって表される。検査器310の方向310aは、超音波センサ312の配列方向に対して垂直である。
【0091】
角度θxは、図16(b)に表したように、Y-Z断面での検出結果に基づいて算出される。角度θyは、図16(c)に表したように、X-Z断面での検出結果に基づいて算出される。制御装置500は、各断面について,3次元の輝度勾配の平均を角度θx及びθyとして算出する。制御装置500は、算出した角度θx及びθyを、検査器310の傾きとして、記憶装置510に記憶する。
【0092】
ここでは、制御装置500が、アーム機構100及びパラレルリンク機構200を制御し、検査に関する処理を実行する例を説明した。この例に限らず、アーム機構100及びパラレルリンク機構200を制御する制御装置と、検査に関する処理を実行する別の制御装置と、が設けられても良い。検査に関する処理は、ネットワークを介して別の制御装置又は処理装置により実行されても良い。
【0093】
以上では、ロボットシステム1が、6自由度を有する垂直多関節のアーム機構100を含む例を説明した。この例に限らず、アーム機構100は、4自由度以上を有していれば良い。4自由度以上であれば、アーム機構100による制御点の大まかな姿勢の調整後に、パラレルリンク機構200を用いて制御点の細かな姿勢を調整できる。又は、4自由度以上を有する水平多関節のアーム機構100が設けられても良い。いずれの形態においても、パラレルリンク機構200を用いて制御点の姿勢を調整することで、フィードバック制御により制御点の姿勢を調整する場合においても、不安定な動作の発生を抑制できる。
【0094】
実施形態は、以下の構成を含む。
(構成1)
多関節のアーム機構と、
前記アーム機構の先端部に取り付けられる固定部、及び、
複数の並列なリンクを介して前記固定部に取り付けられ、前記固定部に対して可動な可動部、
を含むパラレルリンク機構と、
前記可動部に取り付けられ、作業対象への作業を実行するエンドエフェクタと、
前記可動部と前記作業対象との間の位置の関係又は向きの関係を検出するための検出器と、
前記アーム機構及び前記パラレルリンク機構を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記エンドエフェクタによる作業時には、前記検出器による検出結果に基づき、前記パラレルリンク機構を動かして前記エンドエフェクタの姿勢を調整する、ロボットシステム。
【0095】
以上で説明したロボットシステム、ロボットシステムの制御方法、又は制御装置を用いることで、フィードバック制御によりエンドエフェクタ300の姿勢を調整する場合においても、不安定な動作の発生を抑制できる。また、ロボットシステムの制御装置に、上述した制御方法を実行させるプログラムを用いることで、同様の効果を得ることができる。
【0096】
上記の種々のデータの処理は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク及びハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD-ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリ、または、他の記録媒体に記録されても良い。
【0097】
例えば、記録媒体に記録されたデータは、コンピュータ(または組み込みシステム)により読み出されることが可能である。記録媒体において、記録形式(記憶形式)は任意である。例えば、コンピュータは、記録媒体からプログラムを読み出し、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させる。コンピュータにおいて、プログラムの取得(または読み出し)は、ネットワークを通じて行われても良い。
【0098】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 ロボットシステム、 100 アーム機構、 110 リンク、 121~126 回転軸、 130 基台、 200 パラレルリンク機構、 210 固定部、 211 孔、 220 可動部、 221 孔、 230,230a~230d リンク、 240,240a~240d アクチュエータ、 241 回転軸、 250 第1ジョイント部材、 251,252 継手、 260 第2ジョイント部材、 261 ボール、 262 ソケット、 270,270a~270d 回動アーム、 271 第1部分、 272 第2部分、 273 屈曲部、 300 エンドエフェクタ、 310 検査器、 311 マトリクスセンサ、 312 超音波センサ、 320 塗布装置、 400 検出器、 500 制御装置、 510 記憶装置、 520 入力装置、 530 出力装置、 O 作業対象
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16