(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理装置の制御方法、プログラム、及び印刷システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20240329BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240329BHJP
H04N 1/60 20060101ALI20240329BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
G06F3/12 353
G06F3/12 308
G06F3/12 344
H04N1/00 127A
H04N1/00 127B
H04N1/60
G06T1/00 510
(21)【出願番号】P 2020049937
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 孝明
【審査官】佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-325181(JP,A)
【文献】特開2016-173757(JP,A)
【文献】特開2016-115362(JP,A)
【文献】特開2000-103028(JP,A)
【文献】特開2014-199984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/09- 3/12
B41J 29/00- 29/70
H04N 1/00
H04N 1/60
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置であって、
印刷システムの出力カラープロファイルを前記印刷システムから受信する受信手段と、
特色を指定する品質要求データと印刷データを外部装置から受け付ける受付手段と、
前記受付手段によって受け付けた前記品質要求データで指定された前記特色と前記受信手段によって受信した複数の前記出力カラープロファイルとに基づいて得られる複数の色差のうち、最小の色差の出力カラープロファイルを、前記印刷データの印刷処理に使用する出力カラープロファイルとして選択する選択手段と
、
前記選択手段によって選択された出力カラープロファイルを含むジョブデータを生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された前記ジョブデータを前記印刷システムに送信する送信手段とを有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記選択手段によって選択された出力カラープロファイルを表示手段に表示させる表示制御手段をさらに有することを特徴とする請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記選択手段によって選択された出力カラープロファイルを、他の出力カラープロファイルに変更する変更手段をさらに有することを特徴とする請求項
2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記選択手段によって選択された出力カラープロファイルと色差を前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項
2または3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記選択手段によって選択された出力カラープロファイルとシミュレーション色値を前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項
2または3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記受付手段によって受け付けた前記品質要求データを前記特色を得るために解析する解析手段をさらに有することを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
情報処理装置の制御方法であって、
受信手段が、印刷システムの出力カラープロファイルを前記印刷システムから受信する受信工程と、
受付手段が、特色を指定する品質要求データと印刷データを外部装置から受け付ける受付工程と、
選択手段が、前記受付工程で受け付けた前記品質要求データで指定された前記特色と前記受信工程で受信した複数の前記出力カラープロファイルとに基づいて得られる複数の色差のうち、最小の色差の出力カラープロファイルを、前記印刷データの印刷処理に使用する出力カラープロファイルとして選択する選択工程と
、
前記選択工程で選択された出力カラープロファイルを含むジョブデータを生成する生成工程と、
前記生成工程で生成された前記ジョブデータを前記印刷システムに送信する送信工程とを含むことを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【請求項8】
請求項
7に記載された情報処理装置の制御方法を、コンピュータに実行させるプログラム。
【請求項9】
印刷システムであって、
特色を指定する品質要求データと印刷データを外部装置から受け付ける受付手段と、
前記受付手段によって受け付けた前記品質要求データで指定された前記特色と複数の出力カラープロファイルとに基づいて得られる複数の色差のうち、最小の色差の出力カラープロファイルを、前記印刷データの印刷処理に使用する出力カラープロファイルとして選択する選択手段と
、
前記選択手段によって選択された出力カラープロファイルを含むジョブデータを生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された前記ジョブデータに基づいてジョブを実行する実行手段とを有することを特徴とする印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理装置の制御方法、プログラム、及び印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリントオンデマンド(POD)、プロダクションプリンティング、及び商業印刷と呼ばれる印刷サービス形態がある。このようなサービス形態では、印刷を注文、依頼する顧客(エンドユーザとも称する。)と、印刷成果物を提供する印刷会社とが存在し、顧客は印刷会社に対して依頼する印刷成果物の仕様と、必要に応じて印刷に用いる画像データの提供を行い印刷物の注文を行う。印刷成果物の仕様とは、例えば使用する用紙種類、製本やステイプルといった仕上げ設定、印刷枚数や部数といった、印刷成果物の内容を決定する要素である。印刷会社は依頼された内容と画像データを用いて印刷成果物を作成して顧客に対して納品する。
【0003】
このような商業印刷サービスにおいて、印刷会社は印刷成果物の受注から納品までを行うために多様な機器やソフトウェアを用いる。例えば、用紙への印刷を行う印刷装置や製本・ステイプルを行うフィニッシャ、印刷物の検査・検品を行う検品装置が用いられる。その他に、顧客から印刷成果物の受注を受け付けるためのWebサーバや、印刷成果物の生産を管理するための端末やソフトウェアも用いられる。また、これらの機器やソフトウェアの使用者も複数存在する。例えば、受注案件の管理や顧客との連絡を行う受注担当者、印刷成果物を完成させるまでの作業工程を設計する工程設計者、印刷装置や検品装置の操作を行うオペレータ、最終印刷成果物の品質確認を行う確認者である。複数の生産拠点を備える印刷会社も存在し、このような場合、印刷会社は受注内容に基づき、どの生産拠点で印刷成果物の生産を行うかを決定する。
【0004】
商業印刷サービスにおいては、印刷会社は顧客から印刷成果物に対して品質条件を指定されることが多い。品質条件とは、印刷成果物の仕様とは異なり、用紙の表裏における画像の位置ずれ量や、成果物内に存在する画像やロゴなどの色値や、複数部数又は複数ページ間での画像の色値の変動量といった、印刷成果物の品質に関する条件を指す。印刷成果物はチラシやパンフレットのような配布物、写真集や書籍、名刺、展示パネルなど多岐にわたり、それらの用途や価格も様々であるため、品質条件もまた、求められる条件や水準は多種多様である。
【0005】
品質条件を満たすために、印刷会社では、作業工程と印刷成果物に対する品質確認工程が必要となる。作業工程とは、品質条件を満たすために必要とされる、各種装置の調整作業を示す。例えば、顧客と合意を得たサンプル印刷の結果に基づいて、印刷装置の特定の用紙における特定の色に合わせるための色調整作業が必要である。或いは、印刷成果物の用紙の表裏の印刷ずれが所定の範囲内に収まっていることが条件であれば、画像印字位置の調整作業が必要となる。さらに、これらの調整作業によって調整された装置の状態を確認する調整結果の確認作業も含まれる。
【0006】
一方、品質確認工程とは、生産された印刷成果物が品質条件を満たすかどうかを確認する工程である。例えば、印刷後の検品作業により、印刷条件を満たさない印刷成果物を不良品と判断し除外する。検品作業は、確認者自らが検査する場合、或いは、検品装置による自動での検査の場合がある。また、必要に応じて、顧客に対して、印刷成果物が品質条件を満たしていることを示す品質レポートを作成する。
【0007】
上述の各工程は、印刷成果物の種類や印刷条件に応じて、工程設計者により決定される。先に述べたとおり、商業印刷サービスが扱う印刷成果物の形態は多岐にわたる。さらに、印刷会社は、複数種の装置を所有する場合が多く、その中から最適な装置を選定し、各工程に反映させる作業も工程設計者が担う。そのため、工程設計者には高いスキルと経験値が要求され、作業量も多かった。
【0008】
上述の工程設計や品質レポート生成に必要とされる、品質条件の情報、そして、品質確認結果の情報は、従来統一された情報フォーマットで定義されていなかった。そのため、受注する印刷会社は、複数の顧客から異なる情報フォーマットで品質条件を受領することになり、作業工程を設計する際に各情報フォーマットに応じた工程決定が必要となっていた。また、発注する顧客側の観点でも、複数の印刷会社に対して印刷成果物の発注を行う際に、品質条件と品質レポートの受け渡しを異なる情報フォーマットで行う煩雑さが存在していた。
【0009】
そこで、品質条件と品質レポートを伝送するための情報フォーマットの統一手法として、標準化技術として非特許文献1、2にそれぞれ記載のPRX, PQXが検討されている。PRXとは、Print Requirement eXchange formatの略であり、印刷に要求する品質条件の標準データフォーマットを指す。PRXを用いることで、異なる顧客或いは異なる受注に対する品質条件を統一的な標準データフォーマットで記述できるようになる。PQXとは、Print Quality eXchange formatの略であり、印刷品質レポートの標準データフォーマットを指す。PQXは印刷成果物の品質データを標準データフォーマットで伝送することを可能にする。このようにPRX,PQXを用いて従来統一されていなかった品質条件と品質レポートとを統一された情報フォーマットで伝送できるようになる。
【0010】
前述の工程設計者が、指定される品質条件を満たすように印刷データに対する各種設定を行っている。顧客である印刷データの発注者が所望する品質条件を統一することで、商業印刷の現場においてPRXを介して顧客からの品質条件が指定されるケースは今後より一層増加していくと考えられる。
【0011】
特許文献1では、印刷に際し要求される印刷品質レベルに基づいて、印刷に使う用紙を選択する方法が提案されている。具体的には、画質レベル、表裏位置精度レベル、及び後処理調整レベルにおける用紙の品質情報を用紙パラメータとして保持しておき、印刷データに対して要求される印刷品質レベルと比較して要求を満たす用紙を決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【非特許文献】
【0013】
【文献】ISO/AWI 20616-1, Graphic technology -- File format for quality control and metadata -- Part 1: Print requirements exchange (PRX), [online], [令和2年3月5日検索], インターネット<URL:https://www.iso.org/standard/68565.html>
【文献】ISO/CD 20616-2, Graphic technology -- File format for quality control and metadata -- Part 2: Print quality exchange (PQX), [online], [令和2年3月5日検索], インターネット<URL:https://www.iso.org/standard/69572.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記従来技術には以下に記載する課題がある。商業印刷の現場においては、成果物の印刷に使用される用紙は予め決まっていることが多い。例えばフォトブックサービスでは、製本の形態やデザインフォーマット、表紙と本文で使用する用紙の種類やサイズは予め決まっているか、或いは数種類の中から顧客が選択する形式が一般的である。一方で、顧客からの品質条件を満たすための方法として、印刷データへの印刷設定による対応がある。例えば、色味に関しては、印刷処理する際の色変換に用いるカラープロファイルの選択の切替えや調整を行う。また、印刷データに特色が用いられている場合は、その特色をより正確に再現するための出力カラープロファイルの選択、などが挙げられる。たとえ使用する用紙が決まっていても、選択可能な複数のカラープロファイルが存在する。通常、オペレータが試行錯誤しながら最適なカラープロファイルの決定を行っている。
【0015】
しかし、上記従来技術では、印刷データで使用可能な用紙を決定することはできるものの、最適なカラープロファイルを設定するためのオペレータの作業は従来と変わらず必要である。出力カラープロファイルの決定を行うためにはオペレータの作業及びスキルが要求されるため、オペレータに負荷が掛かっているのが現状である。また、選択した出力カラープロファイルが本当に最適な設定であるかどうかを確認することも難しく、専門的な知識が必要でありオペレータの能力に依存してしまう。
【0016】
本発明は、上述の課題の少なくとも一つに鑑みて成されたものであり、品質要求データで指定された特色と複数の出力カラープロファイルとに基づいて得られる複数の色差のうち、最小の色差の出力カラープロファイルを、印刷データの印刷処理に使用する出力カラープロファイルとして選択し、選択された出力カラープロファイルを含むジョブデータを生成し、生成されたジョブデータを印刷システムに送信する仕組みを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、例えば、情報処理装置であって、印刷システムの出力カラープロファイルを前記印刷システムから受信する受信手段と、特色を指定する品質要求データと印刷データを外部装置から受け付ける受付手段と、前記受付手段によって受け付けた前記品質要求データで指定された前記特色と前記受信手段によって受信した複数の前記出力カラープロファイルとに基づいて得られる複数の色差のうち、最小の色差の出力カラープロファイルを、前記印刷データの印刷処理に使用する出力カラープロファイルとして選択する選択手段と、前記選択手段によって選択された出力カラープロファイルを含むジョブデータを生成する生成手段と、前記生成手段によって生成された前記ジョブデータを前記印刷システムに送信する送信手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、品質要求データで指定された特色と複数の出力カラープロファイルとに基づいて得られる複数の色差のうち、最小の色差の出力カラープロファイルを、印刷データの印刷処理に使用する出力カラープロファイルとして選択し、選択された出力カラープロファイルを含むジョブデータを生成し、生成されたジョブデータを印刷システムに送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】一実施形態に係るシステムの全体構成を説明する概念図。
【
図3】一実施形態に係るワークフロー管理システムのハードウェア構成を説明するブロック図。
【
図4】一実施形態に係る生産システムのハードウェア構成を説明するブロック図。
【
図5】一実施形態に係るソフトウェア構成を示す図。
【
図6】一実施形態に係る印刷時の処理手順を示すシーケンス図。
【
図7】一実施形態に係る印刷設定の決定処理の手順を示すフローチャート。
【
図9】一実施形態に係るICCプロファイルを用いた色変換処理の概要を表す図。
【
図10】一実施形態に係る特色シミュレーション処理の概要を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0021】
<第1の実施形態>
<印刷システムの概要>
以下では、本発明の第1の実施形態について説明する。まず、
図1を参照して、本実施形態における印刷システムの概要について説明する。各装置の役割と印刷システムの動作の詳細は
図2以降で詳述する。
図1において、平行四辺形の項目はデータを示す。本印刷システムは、少なくとも受注システムサーバ110、ワークフロー管理サーバ100、及び生産システム120を含んで構成される。受注システムサーバ110は、PRXデータ(品質要求データ)を生成し、印刷用データと共に、ワークフロー管理サーバ100に送信する。ワークフロー管理サーバ100は、受注システムサーバから受信したPRXデータを解析し、解析結果に基づく印刷データ、ジョブチケット、動作設定情報、制御指示を生成し、生産システム120へ送信する。生産システム120は、ワークフロー管理サーバ100からの上記各種データを受信して、印刷ジョブを実施する。また、生産システム120は、生産システム情報を任意のタイミングでワークフロー管理サーバ100に送信する。ここで、任意のタイミングとは、基本的にはワークフロー管理サーバ100からの要求に従ったタイミングであるが、生産システム120の生産システム情報が更新されたタイミングを含んでもよい。また、ワークフロー管理サーバ100が要求を行うタイミングは、例えば1日に1回、1週間に1回など周期的であることが望ましい。また、生産システム120は、印刷実施後においてPQX(品質レポート)を生成し、これをワークフロー管理サーバ100に送信する。なお、本実施形態によれば、ワークフロー管理サーバ100は、PRXデータに指定されている特色データに対する最適な印刷設定を、生産システム120から取得した上記生産システム情報に基づいて決定する。したがって、上記生産システム情報は最新の情報であることが望ましい。
【0022】
<印刷システムの構成>
次に、
図2を参照して、本実施形態に係る商業印刷システムの構成例を説明する。本商業印刷システムは、ワークフロー管理サーバ100、ワークフロー管理端末101、受注システムサーバ110、受注システム管理端末111、エンドユーザ端末112、生産システム120、及び生産オペレータ端末125を含んで構成される。これらの構成は一例であって本発明を限定する意図はない。即ち、本発明は他の装置を含んで構成されることも可能である。
【0023】
ワークフロー管理サーバ100は、情報処理装置の一例であり、商業印刷の商品に関して、ワークフロー全体を管理する装置である。ワークフロー管理サーバ100は、受注システムサーバ110から、印刷データや品質要求データであるPRXデータを受信し、受注システムサーバ110から受信した印刷用データを解釈して、受注ジョブ毎に生産システム120におけるワークフローを決定する。さらに、PRXデータで指定されている特色データに対して、生産システム120から取得する色設定情報を基に、最適な印刷設定(出力カラープロファイル)を決定する。ワークフロー管理サーバ100は、生産システム120での処理対象となるデータ(
図1に記載の印刷データ、ジョブチケット、動作設定情報、制御指示)を生成し、生産システム120を構成する各デバイスに送信する。生産システム120を構成するデバイスについては、後述する。さらに、ワークフロー管理サーバ100は、受注システムサーバ110から受信したPRXデータを生産システム120に送信する。ワークフロー管理サーバ100は、印刷実施後に生産システム120からPQXを受信すると、これを受注システムサーバ110に送信する。
【0024】
なお、本実施形態は、ワークフロー管理サーバ100は、ワークフロー管理を行う拠点に設置されるオンプレミスサーバであるものとして説明するが、その限りではない。別の実施形態として、ワークフロー管理サーバ100をクラウドサーバとして構築し、後述のワークフロー管理端末101からは、インターネットを介して接続する構成としてもよい。後述の、受注システムサーバ110も同様である。
【0025】
ワークフロー管理端末101は、ワークフロー管理者が操作する端末であって、ワークフロー管理サーバ100にネットワークを介して接続し、各種機能を実行する。具体的には、ワークフロー管理端末101は、ワークフロー管理機能の設定変更や、生産システム120のデバイスの状態確認などを行う。
【0026】
受注システムサーバ110は、商業印刷の商品に関して、エンドユーザから注文を受けるためのシステムを管理する装置である。受注システムサーバ110は、受注した商品や、エンドユーザからの注文内容に応じて、印刷用データ、及びPRXデータを生成し、ワークフロー管理サーバ100へと送信する。さらに、受注システムサーバ110は、ワークフロー管理サーバ100からPQXを受信する。
【0027】
受注システム管理端末111は、受注システム管理者が操作する端末であって、ネットワークを介して受注システムサーバ110に接続し、各種機能を実行する。具体的には、受注システム管理端末111は、商品別の要求品質設定、受注ジョブごとのステータス確認、受注ジョブごとの成果物の品位情報の閲覧などの機能を実行する。エンドユーザ端末112は、エンドユーザが操作する端末であって、ネットワークを介して受注システムサーバ110に接続する。そして、エンドユーザ端末112は、ウェブブラウザなどのUIから商品の選択、原稿データの送信、発注などの指示をエンドユーザから受け付け、それらの情報を受注システムサーバ110に送信する。
【0028】
生産システム(生産装置)120は、エンドユーザから受注した商業印刷における商品(成果物)を、生産するためのシステムである。詳細には、生産システム120は、印刷装置121、印刷装置121を制御するプリントサーバ122、後処理加工装置123、及び検品装置124などの装置を含んで構成される。印刷装置121とプリントサーバ122とは、ネットワーク、又は専用のインタフェースにより接続される。本実施形態では、後処理加工装置123及び検品装置124は、他のデバイスとネットワークで接続されるニアライン構成であるものとして説明する。ただし、本発明を限定する意図はなく、単独で稼働するオフライン構成でもよい。オフライン構成の場合は、後処理加工装置123及び検品装置124は、ネットワークと接続可能な不図示の操作端末と接続し、操作端末を介してネットワークと接続する。いずれの場合も、生産システム120に含まれる各装置は、ネットワーク経由で、ワークフロー管理サーバ100と接続し、各種情報の送受信を行う。
【0029】
なお、生産システム120は、プリントサーバ122、後処理加工装置123、及び検品装置124のいずれか、又は全てを含まない構成とすることもでき、或いは、それらの機器を1つの装置に含めて構成することもできる。即ち、生産システム120は、少なくとも印刷装置121の機能を有する構成であればよく、当該印刷装置が他の機器の機能を含むものであってもよく、
図2に示すように別途接続する形態でもよい。生産システム120は、ワークフロー管理サーバ100から受信したPRXデータを解析し、印刷品質要件及びプリプレス処理を特定する。
【0030】
印刷装置121は、ワークフロー管理サーバ100からのデータと指示に基づき、印刷処理を実行する装置である。印刷方式は特に限定する必要はなく、電子写真方式、インクジェット方式、その他の方式のいずれでもよい。生産システム120の管理者又はオペレータは、印刷装置121のUIを介して、印刷に関する制御を指示することが可能である。プリントサーバ122は、印刷装置121を制御するサーバである。一般的な印刷システムと同様に、生産システム120の管理者、或いは、オペレータは、プリントサーバ122のUIを介して、印刷に関する制御を指示することが可能である。
【0031】
後処理加工装置123は、印刷済みの用紙、用紙束に対して、後処理加工を施すための装置である。例えば、用紙への筋付け(クリース)や折り、或いは、用紙束に対する断裁、製本処理などである。検品装置124は、最終成果物又は中間成果物に対して、不具合を検知し、ユーザへの通知や、生産ラインからの除外などの処理を実行する装置である。生産オペレータ端末125は、上述の生産システム120の各種デバイスを操作するオペレータが使用する装置である。デバイスの稼働状況の確認、異常発生時のエラー情報の確認などの機能を有する。別の形態として、外部の端末ではなく、各デバイスが具備するUI操作部が、これらの機能を担う構成でもよい。
【0032】
<ハードウェア構成>
次に、本実施形態に関わる各種装置のハードウェア構成を説明する。
図3は、本実施形態に係るワークフロー管理サーバ100とワークフロー管理端末101とを含む、ワークフロー管理システムのハードウェア構成を示す。なお、受注システムサーバ110の場合も、そのハードウェア構成は以下で説明するワークフロー管理サーバ100と同様であるため、その説明は省略する。
【0033】
まず、ワークフロー管理サーバ100のハードウェア構成を説明する。ワークフロー管理サーバ100は、CPU201、ROM202、RAM203、HDD204、及びネットワークI/F205を含む。CPU201は、ROM202又はハードディスク(HDD)204に記憶された制御プログラムをRAM203に展開し、その展開したプログラムを実行してシステムバス206に接続される各種のデバイスとのアクセスを制御する。ROM202は、CPU201が実行可能な制御プログラム等を記憶している。RAM203は、主としてCPU201の主メモリ、ワークエリア等として機能し、不図示の増設ポートに接続されるオプションRAMによりメモリ容量を拡張することができるように構成されている。ハードディスク(HDD)204は、ブートプログラム、各種のアプリケーション、フォントデータ、ユーザファイル、及び編集ファイル等を記憶する。なお、本実施形態ではHDD204を用いた例について説明するが、HDDの他にSDカードや、フラッシュメモリなどを外部記憶装置として利用してもよい。これは、以降に説明するHDDを有する装置も同様である。ネットワークI/F205は、ネットワークを経由して、各種装置とデータ通信を行う。
【0034】
次に、ワークフロー管理端末101のハードウェア構成を説明する。なお、受注システム管理端末111、エンドユーザ端末112、及び生産オペレータ端末125などの、その他の端末装置も、そのハードウェア構成は以下で説明するワークフロー管理端末101と同様であるため、その説明は省略する。
【0035】
ワークフロー管理端末101は、CPU221、ROM222、RAM223、HDD224、及びネットワークI/F225を備える。CPU221は、ROM222又はハードディスク(HDD)224に記憶された制御プログラムをRAM223に展開し、その展開したプログラムを実行してシステムバス226に接続される各種のデバイスとのアクセスを制御する。ROM222は、CPU221が実行可能な制御プログラム等を記憶している。RAM223は、主としてCPU221の主メモリ、ワークエリア等として機能し、不図示の増設ポートに接続されるオプションRAMによりメモリ容量を拡張することができるように構成されている。ハードディスク(HDD)224は、ブートプログラム、各種のアプリケーション、フォントデータ、ユーザファイル、及び編集ファイル等を記憶する。ネットワークI/F225は、ネットワークを経由して、その他の装置とデータ通信を行う。
【0036】
図4は、本実施形態に係る生産システム120に含まれる各装置のハードウェア構成を示す。プリントサーバ122は、CPU301、ROM302、RAM303、HDD304、ネットワークI/F305、及びプリンタI/F307を備える。
【0037】
CPU301は、ROM302又はハードディスク(HDD)304に記憶された制御プログラムをRAM303に展開し、その展開したプログラムを実行してシステムバス306に接続される各種のデバイスとのアクセスを制御する。ROM302は、CPU301が実行可能な制御プログラム等を記憶している。RAM303は、主としてCPU301の主メモリ、ワークエリア等として機能し、不図示の増設ポートに接続されるオプションRAMによりメモリ容量を拡張することができるように構成されている。ハードディスク(HDD)304は、ブートプログラム、各種のアプリケーション、フォントデータ、ユーザファイル、編集ファイル等を記憶する。ネットワークI/F305は、ネットワークを経由して、その他の装置とデータ通信を行う。プリンタI/F307は、印刷装置121の画像形成部321への画像出力を制御する。またプリンタI/F307は、印刷装置121内部に備わる測定部322を制御し、測定結果を受信する。
【0038】
印刷装置121は、少なくとも印刷動作を担う画像形成部321、及び測定部322を備える。他にも、不図示の給紙装置や、インラインの後処理装置が印刷装置121に対して接続された構成でも構わない。画像形成部321は、印刷用データを用紙に出力する。そのハードウェア構成は、一般的な印刷装置121と同じである。測定部322は、プリントサーバ122、又は、印刷装置121自体の指示に従い、画像形成部321が生成する印刷物を測定する。測定形式は、分光測色、濃度測定、CCSスキャン、及びCISスキャンなどの既知の測定形式を用いてよい。なお、本実施形態では、測定部322は、印刷装置121内に設けられるものとして説明するが、限定する意図はない。例えば、印刷装置121とは独立して、測定部322単体でネットワークに接続する構成でもよい。或いは、ネットワークに接続可能な不図示の操作端末と測定部322とが接続し、操作端末を介してネットワークに接続する構成でもよい。いずれの場合も、測定部322は、ネットワーク経由で、ワークフロー管理サーバ100と接続し、各種情報の送受信を行う。
【0039】
<ソフトウェア構成>
次に、
図5を参照して、本実施形態に係る各種装置のソフトウェア構成を説明する。
図5(a)は、本実施形態に係る受注システムサーバ110のソフトウェア構成を示す。これらのソフトウェアモジュールは、HDD(不図示)にプログラムとして格納され、CPU(不図示)が、そのプログラムをRAM(不図示)に展開して実行することにより実現される。
【0040】
受注システムサーバ110は、ソフトウェアモジュールとして、受注部501、PRX生成部502、及びデータ管理部503を含む。受注部501は、ネットワークを介して、エンドユーザ端末112から商品の注文情報を受信する。注文情報には、商品種別の情報、入稿された画像データ、及び品質に係る要求情報などが含まれる。なお、本実施形態では、入稿データとして、PDF形式データを例に説明するがその限りではない。即ち、生産システム120が解釈可能な、その他の一般的な形式の画像データを扱う形態でもよい。PRX生成部502は、受注部501から受信した注文情報を解析し、PRXデータを生成する。データ管理部503は、注文情報、PRXデータ、及びPQXデータなどの情報を不図示のメモリに記録する。また、データ管理部503は、入稿された画像データ、商品種別情報、及び、PRXデータをワークフロー管理サーバ100へと送信する。さらにデータ管理部503は、各種装置との間の、その他のデータ送受信を実行する。
【0041】
図5(b)は、本実施形態に係るワークフロー管理サーバ100のソフトウェア構成を示す。これらのソフトウェアモジュールは、HDD204にプログラムとして格納され、CPU201が、そのプログラムをRAM203に展開して実行することにより実現される。
【0042】
ワークフロー管理サーバ100は、ソフトウェア構成として、PRX解析部521、情報取得部522、工程管理部523、印刷設定決定部524、データ管理部525、及びプリプレス制御部526を含む。PRX解析部521は、受注システムサーバ110から受信したPRXデータを解析し、印刷品質要件や必要とされるプリプレス処理の一部を特定する。印刷品質要件とは、例えば、所定の色パッチの測定結果から得られる平均色差が、特定の基準内に収まっていることを要求するものである。また、プリプレス処理とは、例えば、画像データの余白部に、色品位確認処理で測色対象となる、色パッチ画像を追加するなどの処理である。
【0043】
情報取得部522は、生産システム120に対して、印刷ジョブに設定する印刷設定項目に関する情報を問合せて、情報(生産システム情報)を取得する。なお、上述したように、問い合わせのタイミングについては、例えば1日1回、1週間に1回など周期的なタイミングであることが望ましい。本実施形態によれば、上記生産システム情報には、生産システム120で設定可能なカラープロファイル情報が少なくとも含まれるものとする。さらに、情報取得部522は、取得したカラープロファイル情報を、工程管理部523へ送信する。
【0044】
工程管理部523は、受注システムサーバ110から受信した商品種別情報、及び、PRX解析部521の解析結果情報を用いて、生産システム120の決定や、プリプレス制御部526への命令を実行する。なお、本実施形態では、説明を容易にするため1つの生産システム120を含む印刷システムについて説明しているが、本来は、複数の生産システムが含まれ、その中から受注した印刷ジョブを投入する生産システムを決定するものである。また、工程管理部523は、PRXの情報及び情報取得部522において取得した生産システム情報(カラープロファイル情報等を含む)を、印刷ジョブに対する印刷設定を決定する印刷設定決定部524に渡す。印刷設定決定部524は、生産システム情報に基づき、印刷データに対する印刷設定項目を決定する。例えば、印刷設定決定部524は、PRXの情報に特色に関する情報があれば、取得した生産システム120のカラープロファイル情報に基づいて、最適なカラープロファイルを決定する。このように、本実施形態においては、PRXで指定された特色データが存在している場合、その特色データに対して設定すべき最適なカラープロファイルを、情報取得部522で取得した生産システム情報に従って決定する。詳細については後述する。
【0045】
また、工程管理部523は、生産システム120での各デバイスが参照するジョブチケットデータを生成する。本実施形態では、ジョブチケットデータとして、既知のJDFデータを用いて説明するが、その限りではない。即ち、生産システム120が解釈可能な、その他の既知のジョブチケットデータ形式を用いる構成でもよい。また、工程管理部523は、PRXの情報を参照し、後処理加工装置123や検品装置124の動作設定情報を生成する。さらに、工程管理部523は、後述のプリプレス処理後のPDFデータ、JDFデータ、及び、各デバイスの動作設定情報を、生産システム120へ送信する。
【0046】
データ管理部525は、生産システム120へPDFデータ、JDFデータ、そして、生産システム120を構成する各種装置に対する指示情報を送信する。なお、これらのPDFデータ、JDFデータ、指示情報等を含めて生産システム120へ印刷ジョブを投入する際のデータを総称して、ジョブデータと称する。さらに、データ管理部525は各種装置との間のその他のデータ送受信を実行する。プリプレス制御部526は、PRX解析部521によってPRXデータが解析されて特定されたプリプレス処理を制御する。例えば、プリプレス制御部526は、特定されたプリプレス処理に従って、生産システム120が実施するワークフローに必要に応じてプリプレス処理を組み込む。
【0047】
図5(c)は、本実施形態に係る生産システム120のソフトウェア構成を示す。これらのソフトウェアモジュールは、生産システム120を構成する各種デバイスにおいて、HDD304にプログラムとして格納され、CPU301が、そのプログラムをRAM303に展開して実行することにより実現される。なお、生産システム120は印刷装置121、プリントサーバ122、後処理加工装置123、及び検品装置124を含むが、本実施形態では上記4つのハードウェアを、生産システム120という一つのハードウェアとみなして説明する。従って、以下で説明する生産システム120に含まれるソフトウェアモジュールはいずれの装置で実現されてもよい。
【0048】
生産システム120は、ソフトウェアモジュールとして、印刷制御部541、情報管理部542、及びデータ管理部543を含む。印刷制御部541は、ワークフロー管理サーバ100から受信した情報(PDF,JDF)を用いて、印刷制御を実行する。また、印刷制御部541は、印刷品位を調整する調整機能も有しており、ワークフロー管理サーバ100、プリントサーバ122、又は、生産オペレータ端末125のいずれかから受信した制御指示に応じて、調整機能を実行する。また、印刷制御部541は、測定制御部5411を有する。測定制御部5411は、ワークフロー管理サーバ100、プリントサーバ122、又は、生産オペレータ端末125のいずれかから受信した制御指示に応じて、測定部322による測定制御を実行する。
【0049】
情報管理部542は、生産システム120における印刷設定などの情報をHDD304等のメモリを用いて管理し、必要に応じて処理を行う。管理する情報の一例として、本実施形態では、生産システム情報である印刷設定可能なカラープロファイル情報がある。データ管理部543は、ワークフロー管理サーバ100へ、生産システム120の各種デバイスの制御結果などの情報を送信する。さらにデータ管理部543は、各種装置との間の、その他のデータ送受信を実行する。なお、データ管理部543は、各デバイスに個別に備わる形態でもよい。
【0050】
<ICC色変換処理>
ここで、
図9を参照して、本実施形態に係る印刷データの色変換処理について説明する。
図9は、印刷データに対する色変換処理に関する概要を示す。以下で説明する処理は、例えば、生産システム120における印刷制御部541において、印刷データに対する処理として実行される。
【0051】
プリンタの色変換処理には、一般的に、ICC(International Color Consortium)が提唱する規格のプロファイルフォーマットと色変換モジュール(CMM)が用いられている。対象のプロファイルはICCプロファイルと呼ばれる。ICCプロファイルを用いることで、
図9に示すようにソースプロファイルと出力プロファイルという2つのプロファイルを用いて色変換を行うことで、様々な入出力デバイスの様々な色空間に対応した色変換を行うことが可能となる。
【0052】
ICCプロファイルは、一つのデバイスの色空間に対応して定義されたカラー画像データを、別のデバイスに固有の色空間又はデバイスに依存しない色空間PCS(Profile Connection Space)に対応して定義されるカラー画像データに変換するために使用される。PCS色空間とは、例えばL*a*b*やXYZといったデータが知られている。例えば、RGBデータを含む印刷データ901が入力された場合は、RGBソースプロファイルと呼ばれるICCプロファイル902を用いて、デバイス非依存のPCS色空間データ(ここではL*a*b*)903へ変換される。さらに、ICCプロファイル904を用いて、L*a*b*データが印刷装置121で出力されるCMYKデータ905へ変換される。
【0053】
また、別の例では、CMYKデータを含む印刷データ906が入力された場合は、CMYKソースプロファイルと呼ばれるICCプロファイル907を用いて、デバイス非依存のPCS色空間データ(ここではL*a*b*)908へ変換される。その後、ICCプロファイル904を用いて、L*a*b*データが印刷装置121で出力されるCMYKデータ905へ変換される。特色データ909を含む印刷データが入力された場合は、特色データについて定義されているPCS色空間データに対して、ICCプロファイル910を用いて、L*a*b*データが印刷装置121で出力されるCMYKデータ905へ変換される。ここで、特色データは、PCS色空間データを直接保持している形態が一般的であるが、それ以外の形態もありうる。例えば、印刷装置121やプリントサーバ122が、特色の名前又はIDとPCS色空間データ情報を紐付けた、特色変換テーブル912を保持している形態が考えられる。その場合は、特色の名前又はID情報が保持されいてる入力印刷データ911に対して、前述の特色変換テーブル912を用いて、PCS色空間データ913へ変換することができる。
【0054】
<シーケンス>
次に、
図6を参照して、本実施形態に係る印刷処理時のシーケンスについて説明する。
【0055】
S601で、ワークフロー管理サーバ100の情報取得部522は、生産システム120から生産システム情報の取得を開始し、生産システム120へ問い合わせを行う。問い合わせ(要求)のタイミングについては、例えば1日1回、1週間に1回など周期的なタイミングであることが望ましい。例えば毎日特定の時間に取得を開始するなど、生産システム120の最新情報を取得しておくことが望ましい。これにより、定期的に最新の情報を取得することができるとともに、実際に印刷を受注した際に取得する場合と比較して印刷時の処理時間を低減することができる。続いて、S602で、生産システム120の情報管理部542は、生産システム情報を確認する。ここで確認する生産システム情報とは、例えば印刷制御部541で実行される設定可能な出力カラープロファイル情報などである。具体的には、情報管理部542は、プリントサーバ122のHDD304等に管理している情報から自装置の印刷出力に関する1以上のプロファイル情報を生産システム情報として取得する。さらに、生産システム120は、取得した生産システム情報を、データ管理部543を介してワークフロー管理サーバ100へ送信する。S603で、ワークフロー管理サーバ100の情報取得部522は、取得した生産システム情報を、データ管理部525に保存する。
【0056】
S604で、受注システムサーバ110の受注部501は、エンドユーザからの注文を受注する。受注する注文は、印刷データとしてのPDFと、成果物に関する要求情報とであり、受注システムサーバ110の不図示の操作部などから受け付けることができる。続いて、S605で、受注システムサーバ110のPRX生成部502は、受注した印刷データ及び成果物要求情報から、PRXを生成する。PRXを生成すると、データ管理部503は、印刷データとともに、生成したPRXデータをワークフロー管理サーバ100へ送信する。
【0057】
次に、S606で、ワークフロー管理サーバ100のPRX解析部521は、受注システムサーバ110から受信したPRXデータを解析する。具体的には、PRXに指定されている成果物要求情報を読み込み、設定されているQualityGoalにColorが存在する場合はその内容を確認する。PRXの詳細については、
図11を用いて後述する。続いて、S607で、ワークフロー管理サーバ100の印刷設定決定部524は、後述する
図7のフローチャートに基づき、印刷ジョブに指定されている特色データに対して設定する出力カラープロファイルを決定する。さらに、S608で、ワークフロー管理サーバ100の工程管理部523は、生産システム120において印刷を実行するために必要情報を記したJDFを生成する。上記必要情報には、印刷ジョブに含まれる特色データに対して設定する出力カラープロファイル情報を含む。ここで、データ管理部525は、PDFデータと、生成したJDFデータとを含むジョブデータを生産システム120へ送信する。
【0058】
S609で、生産システム120の印刷制御部541は、受信したジョブデータ、即ち、PDFデータ及びJDFデータに基づき、印刷処理を実行する。印刷処理が完了すると、検品装置124によってPQXデータを生成し、ワークフロー管理サーバ100へ送信する。なお、後処理が設定されている場合には、後処理加工装置123によって当該後処理を実行する。
【0059】
<PRX説明>
ここで、
図11及び
図12を参照して、PRXについて説明する。
図11は本実施形態におけるPRXの構成情報を示し、
図12は実際のPRXデータの一例を示す。PRXとは、例えば、XMLテキスト形式で記述されたデータであって、印刷データに対して通常1つのPRXが紐付けて存在する。PRXは、顧客からの各種品質に対する要望や要求の情報に基づいて構成されている。
【0060】
PRXInfoは、PRX要素のひとつである。PRXのIDや名前といった、PRXを特定するための識別情報(例えば、”JOB201906080020”)から構成されている。BuyerInfoは、PRX要素のひとつである。印刷データを発注した顧客の情報(例えば、”XYZトラベル株式会社”)から構成されている。
【0061】
EvaluatinInfoは、PRX要素のひとつである。評価に用いる演算式の定義など、顧客が利用する品質評価に関する情報から構成されている。品質に対する許容範囲レベルといった情報(閾値)を指定することも可能である。上記閾値には、上限値及び下限値がそれぞれ設定されてもよい。
【0062】
QualitySpecificationは、PRX要素のひとつである。評価項目に対する品質目標や評価基準に関する情報から構成されている。CustomerJobは、QualitySpecification要素のひとつである。要求品質項目に対する印刷ジョブに関する情報から構成される。QualityGoalsは、CustomerJob要素のひとつである。顧客が指示する印刷品質の目標に関する情報から構成されている。Colorは、QualityGoals要素のひとつである。顧客が指示する要求品質が色の場合に用いられる情報から構成されている。色以外では、RegistrationやBarcodeといった異なる要求品質に特化した項目も並列して存在する。ColorScoreは、上記Color要素のひとつである。顧客が指示する色に関する要求品質のスコアに関する情報から構成されている。ColorScoringScaleは、ColorScore要素のひとつである。ColorScoreで取扱う要求品質のスコアのスケールに関する情報から構成されている。
【0063】
UoMは、ColorScoringScale要素のひとつである。本要素で取扱う数字の単位を指定する。例えば、dE2000というパラメータがセットされると、ColorScaringScaleでスコア付けする数値は、dE2000という、色差に関する単位が用いられることを意味する。ParameterScoreは、ColorScoringScale要素のひとつである。ColorScoreで取扱う要求品質のスコアに関する情報から構成されている。Rankは、ParameteScoreの要素のひとつである。要求品質の具体的なランク情報を表す。ValueRangeは、ParameterScoreの要素のひとつである。要求品質の具体的な数字を表す。ScoringInfoは、ColorScoreの要素のひとつである。ColorScoringScale要素で指定されたColorScoreに関する構成されている。MinimumAcceptableRankは、ScoringInfoの要素のひとつである。要求品質の受け入れ可能な最低限のランクを表す。
【0064】
CxFReferenceDataは、Color Exchange Formatに則った構成であって、主に色に関する情報から構成されている。任意の色空間情報を設定可能で、例えば
図12に示すようにCxF:ColorCIELabという指定をすることでL*a*b*情報を保存する。
【0065】
SamplingPositionImageDataは、PRX要素のひとつである。特定の画像データの位置に関する情報から構成される。
【0066】
<印刷設定の決定処理>
次に、
図7を参照して、本実施形態に係る印刷設定の決定処理(S607)における出力カラープロファイル設定の決定処理の処理手順を説明する。以下で説明する処理は、例えばCPU201がROM202に格納された制御プログラムをRAM203に読み出して実行することにより実現される。以下では、出力カラープロファイルを単に出力プロファイルと称する。
【0067】
S701で、印刷設定決定部524は、上記S606でPRXデータを解析した解析結果を参照し、所定の品質項目、例えば特色が指定されているか否かを判断する。ここでPRXに特色が指定されていない場合は、本フローを終了し、指定されている場合はS702に進む。S702で、印刷設定決定部524は、上記S603で生産システム情報を取得して保存している1以上の出力プロファイルのうち、1つ目の出力プロファイルを選択する。続いて、S703で、印刷設定決定部524は、指定された特色情報及びS702で選択した出力プロファイル情報に基づき、特色のシミュレーション色値を取得する。つまり、特色のシミュレーション色値とは、指定された特色データと、出力カラープロファイルとを用いて、生産システム120で印刷を実施した際の特色データの出力値の予測値を示す。
【0068】
ここで、
図10を用いて、特色のシミュレーション色値を取得する処理について説明する。
図10は、本実施形態における、特色データのシミュレーションを取得する処理の概要を示す。
図10に示す処理は、ワークフロー管理サーバ100における印刷設定決定部524にて実行される。1001及び1002は、PRXデータを解析することにより得られたPRXデータに指定された特色データである。1001はPCS色空間データのひとつであるL*a*b*データとして指定されている場合を示し、1002は名前又はIDとして指定されている場合を示す。PRXデータでは1001又は1002の形式で指定されているものとする。なお、本発明において他の形式の適用を除外するわけではない。名前やIDとして指定されている場合は、前述の通り、色変換テーブル1003を介してL*a*b*データ1004へ変換する。
【0069】
次に、印刷設定決定部524は、L*a*b*データとしての特色データ1001、1004を、S702又はS706で選択した出力プロファイル1005を用いてCMYKデータ1006へ変換する。さらに、印刷設定決定部524は、変換されたCMYKデータ1006を、再度同じ出力プロファイル1005を用いて、L*a*b*データへ変換する。ここで変換されたL*a*b*データが、シミュレーションされた特色データ1007となる。このように、特色データとして本来出力されるべき色値を、出力プロファイルによりCMYKデータへ変換することで、実際に出力を行う印刷装置121に依存したデバイス依存の色空間データとなる。デバイス依存の色空間へマッピングしたデータを、再度同じ出力プロファイルによりL*a*b*データへ変換することで、対象の特色データを印刷装置121で出力した場合の色値を取得することができる。
【0070】
図7の説明に戻る。S704で、印刷設定決定部524は、S703で取得した特色シミュレーションの色値と、指定された特色情報の色値とに基づき、色差を取得しデータ管理部525へ保存する。特色情報の色値をL*、a*、b*、特色シミュレーションの色値をL’*、a’*、b’*とすると、以下の数式1により色差deltaEを取得することができる。
deltaE=sqrt((L*-L’*)^2+(a*-a’*)^2+(b*-b’*)^2)・・・数式1
本演算式は一般的な色差値の算出方法として知られているが、もちろん本演算式だけに限定されたものではなく他の手法を用いてもよい。
【0071】
次に、S705で、印刷設定決定部524は、生産システム情報として取得した出力プロファイルの全てついてS703及びS704の処理を実施したか否かを判断する。まだ実施していない他のプロファイルが存在する場合(S705でNO)は、S706へ進み、印刷設定決定部524は、次の出力プロファイルを選択し、S703へ処理を戻す。一方、S705で全ての出力プロファイルに対して処理を実施したと判断した場合(S705でYES)は、S707に進み、印刷設定決定部524は、全ての出力プロファイルから取得した色差値の中で、最小の色差となる出力プロファイルを選択する。続いて、S708で、印刷設定決定部524は、処理結果及び最小色差となる出力プロファイルの情報をユーザへ報知する。
【0072】
ここで、
図8を参照して、上記S708で、ユーザへ提示するUI画面の一例を説明する。
図8に示すUI801は、ワークフロー管理サーバ100のCPU201で生成され、ワークフロー管理サーバ100の不図示の操作部上へ表示される。或いは、ワークフロー管理端末101へ転送され、ワークフロー管理端末101の不図示の操作部上へ表示される形態でもよいし、他の装置に送信して表示するようにしてもよい。
【0073】
UI801は、ユーザへ提示する特色シミュレーション情報の一例を示す画面である。802~812の表示を含んで構成される。なお、ここでの表示内容は、
図12に示すPRXデータに対応した表示例を示す。802は、対象となるPRXのID情報であり、PRXの解析(S606)により取得することができる。ここでは、
図12に示すように、PRXInfoに保存されている。803は、対象となる印刷データ及びPRXデータの顧客情報であり、PRXの解析により取得することができる。本実施形態では、BuyerInfoに保存されている。
【0074】
804~806は、対象となる特色データの情報である。804は、特色の名称であり、PRXの解析により取得することができる。本実施形態では、CxFReferenceDataのObject Nameに保存されている。805は、特色データの色値であり、PRXの解析により取得することができる。本実施形態では、CxFReferenceDataのColorCIELabに保存されている。806は、本特色データに対して指定されている要求レベル(閾値)に関する情報であり、PRXの解析により取得することができる。本実施形態では、QualitySpcificationのColorScoringScaleに保存されている。
【0075】
807~810は、上記S702~S707において処理した出力プロファイル毎に処理したシミュレーションの結果と色差情報、要求レベルと比較した判定結果(処理結果)の情報である。
【0076】
807は、処理を行った出力プロファイルの名称である。808は、S704で取得した色差値の情報である。809は、S703で取得したシミュレーション色値の情報である。810は、出力プロファイルそれぞれの色差値と、806に示す要求レベル(閾値)とを比較し、満たしているかどうかを判定した結果である。本実施形態では、例えば、要求レベルとして色差dE=10.0が指定されており、それよりも色差値が小さい、即ち、品質基準を満たす出力プロファイルは○、大きい出力プロファイルは×、と表示する。つまり、各出力プロファイルについて品質基準を満たすか否かが識別可能に表示される。判定結果の表示方法はこの方式に限らない。例えば、PRXでは要求レベルのランクを複数指定可能であるため、複数段階の判定結果を保持して表示させることも有効である。811は、ユーザにより出力プロファイルの選択を受付けるための項目である。後述するS711において、ユーザ入力により何れかの選択項目が選択され、812のOKボタンが押下されることでユーザからの選択を受け付け、最終的に印刷設定として利用する出力プロファイルを決定する。つまり、UI801では、決定した出力プロファイル(UI801では、ユーザプロファイル2)が、他の出力プロファイル(UI801では、普通紙1、ユーザプロファイル1)へ変更可能に表示される。
【0077】
図7の説明に戻る。S709で、印刷設定決定部524は、S707で選択した最小色差の値が、PRXに指定されている要求レベルを満たしているか否かを判断する。要求レベルを満たすと判断した場合(S709でYES)は、S710で、印刷設定決定部524は、その色差値を取得した出力プロファイルデータを、特色向けの印刷設定値として決定し、本フローを終了する。
【0078】
一方、S709で要求レベルを満たすと判断しなかった場合(S709でNO)はS711に進み、印刷設定決定部524は、ユーザからの選択を受け付ける。例えば、UI801を介して、出力プロファイルが指定されOKボタン812が操作されることで、選択を受け付ける。受け付けた選択により指定された出力プロファイルを、S710で、印刷設定決定部524は、特色向け印刷設定値として決定し、本フローを終了する。
【0079】
以上説明したように、本実施形態に係る情報処理装置は、印刷装置から1以上の当該印刷装置に関わる情報を受信し、品質要求データを含む印刷データを外部装置から受け付ける。また、本情報処理装置は、品質要求データを解析し、所定の品質項目が要求されていると判定した場合、受信した1以上の当該印刷装置に関わる情報に基づき、所定の品質項目の品質基準を満たす印刷設定を決定する。なお、所定の品質項目とは、特色データに関する情報を示し、1以上の当該印刷装置に関わる情報とは、出力プロファイルを含む生産システム情報を示す。これにより、本実施形態によれば、印刷データとともに受信する品質要求データと、生産システムの情報とに基づいて、印刷データに含まれる所定の品質項目(特色データ)に対して最適な印刷設定(出力カラープロファイル)を決定することができる。よって、本実施形態によれば、オペレータに負荷を掛けることなく、また、オペレータの力量によって成果物の品質レベルが影響されることなく、最適な印刷設定の決定が可能となる。
【0080】
本発明は上記実施形態に限らず様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、印刷データの品質要求内容を伝達するデータフォーマットとしてPRXを使用する例について説明したが、これに限らない。例えば、XJDF (Exchange Job Definition Format)などのデータフォーマットにより、品質要求内容が伝達されることとしてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、所定の品質項目、例えば特色データに関する項目についての印刷設定について説明したが、他の品質項目等を考慮して印刷設定を決定することも可能である。例えば、品質要求データにおいて印刷で使用するシートの情報(種別、サイズ等)が指定されている場合には、当該使用するシートに対して使用可能な出力カラープロファイルの中から、印刷設定として用いる出力カラープロファイルを選択してもよい。これにより、複数の出力カラープロファイルについてシミュレーション色値や色差値を取得する対象を減らすことができ、それらの処理負荷を低減することができる。
【0082】
また、品質要求データにおいて、上記所定の品質項目以外に1以上の品質項目が指定されている場合には、指定された各品質項目を重み付けし、重み付けの高い品質項目を優先して印刷設定を決定するようにしてもよい。例えば、各品質項目におけるシミュレーション値を取得し、それぞれの品質基準からの差分からスコアを取得して、当該スコアに重み付けを考慮してトータルスコアを取得し、最も良いスコアの印刷設定を選択するようにしてもよい。或いは、重み付けの最も高い品質項目から順に印刷設定を決定するようにしてもよい。最も高い重み付けを有する品質項目が複数存在する場合には、平均スコアが最大となるように印刷設定を決定するようにしてもよい。このように、顧客からの品質要求に応じて柔軟に印刷設定を決定することが望ましい。
【0083】
<その他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0084】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0085】
100:ワークフロー管理サーバ、101:ワークフロー管理端末、110:受注システムサーバ、111:受注システム管理端末111、エンドユーザ端末112、120:生産システム、121:印刷装置、122:プリントサーバ、123:後処理加工装置、124:検品装置