(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】構造体を配置した水処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 3/14 20230101AFI20240329BHJP
C02F 3/06 20230101ALI20240329BHJP
【FI】
C02F3/14
C02F3/06
(21)【出願番号】P 2020050232
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】行谷 宗大
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-028679(JP,A)
【文献】特開2015-188825(JP,A)
【文献】特開平08-155483(JP,A)
【文献】特開2001-029985(JP,A)
【文献】国際公開第2007/029509(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/14-3/26
C02F 7/00
B01F27/00-27/96
B01F21/00-25/90
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水の流れる水路に設置されたインペラで曝気及び/又は撹拌を伴う水処理システムにおいて、
水処理システムは、無終端水路の水処理槽からなり、
前記被処理水の流れ方向における前記インペラの上流であり、かつ、前記無終端水路全体に対して規則的な位置に構造体を設けることを特徴とする、水処理システム。
【請求項2】
前記構造体は、担体であることを特徴とする、請求項1に記載された水処理システム。
【請求項3】
前記構造体の位置及び/又は大きさは変更可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載された水処理システム。
【請求項4】
被処理水の流れる水路に設置されたインペラで曝気及び/又は撹拌を伴う水処理システムにおいて、
水処理システムは、無終端水路の水処理槽からなり、
前記被処理水に対して処理を行う無終端水路の
前記水処理槽内に、
前記水処理槽の容積を調整するために構造体を設けることを特徴とする、水処理システム。
【請求項5】
被処理水の流れる水路に設置されたインペラで曝気及び/又は撹拌を伴う水処理システムにおいて、
水処理システムは、無終端水路の水処理槽からなり、
前記被処理水に対して処理を行う無終端水路の
前記水処理槽内に設けられ、
前記水処理槽の容積を調整するため、
前記被処理水の流れ方向における前記インペラの上流であり、かつ、前記無終端水路全体に対して規則的な位置に設けられる構造体。
【請求項6】
被処理水の流れる水路に設置されたインペラで曝気及び/又は撹拌を伴う水処理システムにおいて、
水処理システムは、無終端水路の水処理槽からなり、
既設の無終端水路の水処理槽と、
前記水処理槽内に、
前記被処理水の流れ方向における前記インペラの上流であり、かつ、前記無終端水路全体に対して規則的な位置に設置される構造体と、を備えたことを特徴とする、水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水や汚水等の被処理水の処理において、無終端水路で硝化、脱窒を行うオキシデーションディッチ法が知られている。オキシデーションディッチ法は、被処理水が周回する無終端流路からなる反応槽(以下、「オキシデーションディッチ槽」ともいう。)の1又は数カ所に撹拌曝気装置を設け、被処理水を曝気及び/又は撹拌することにより、硝化または脱窒の条件を調整している。
【0003】
オキシデーションディッチ法を用いた被処理水の処理は、他の被処理水の処理方法と比較して発生汚泥量が少ないことや維持管理が容易であること等の利点があり、広く活用されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、隔壁で仕切られた流入側直線流路および流出側直線流路と、これら両直線流路の端部を互いに接続する円弧流路とを備えた循環水路を有するオキシデーションディッチ槽の前記円弧流路部分に、外方向に向けて膨出する弧状ガイド壁を備えた水処理槽において、前記弧状ガイド壁における前記循環水路の流れ方向に面する流入側端部が、前記直線流路に沿った流れ方向に対して内側に傾斜する内側入口角を有して配置されたことを特徴とする、水処理槽が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の人口減少に伴い地方都市などでは、水処理槽で処理する下水や汚水等の量も減少しているため、水処理槽に流入する汚水等の流入水量が減少傾向にある。そのため、水処理槽内で汚水等の滞留時間が増大し、所定の性能を発揮することができず、水処理槽を備えた水処理システムの適正な運転管理が難しくなっているという問題がある。
よって、本発明の課題は、水処理槽への被処理水の流入水量の減少に対して所定の性能を維持する水処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、流入水量の減少に応じて水処理槽内に構造体を設けることにより、水処理槽の容積を低下し、汚水等の滞留時間の増大を抑制することを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の水処理システムである。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の水処理システムは、被処理水の流れる水路に設置されたインペラで曝気及び/又は撹拌を伴う水処理システムにおいて、前記被処理水の流れ方向における、前記インペラの上流に構造体を設けることを特徴とする。
この水処理システムによれば、水処理槽内に構造体を配置することで、水処理槽の有効容積をコントロールすることができる。これにより流入水量の低下に対して、水処理槽内の被処理水の滞留時間を最適化し、水処理槽の有する最適な性能を発揮させることができる。
また、この水処理システムは、曝気撹拌を行うインペラの流れ方向における上流側に構造体を設けることを特徴とする。曝気撹拌を行うインペラの上流側は、インペラにより発生した循環流の流れが弱まり、流速が低下する。そのため、曝気撹拌を行うインペラの上流側には、沈殿物が溜まりやすいという問題がある。しかし、本発明の水処理システムによれば、曝気撹拌を行うインペラの上流側に設けられた構造体により水路の断面積が小さくするため、流れが弱くなった循環流の流速を上げることができる。
【0009】
また、本発明の水処理システムの一実施態様としては、構造体は、担体であることを特徴とする。
この特徴によれば、構造体を担体とすることで、担体に嫌気性微生物が定着し、被処理水の分解が促進されることで、自己消化により汚泥の堆積を減少させることができる。
【0010】
また、本発明の水処理システムの一実施態様としては、構造体の位置及び/又は大きさは変更可能であることを特徴とする。
この特徴によれば、水処理槽に流入する被処理水の流入量の変化に応じて、構造体の位置、又は、大きさを変更することができるため、被処理水の流速や滞留時間を最適化し、水処理槽の有する最適な性能を発揮させることが可能となる。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の水処理システムは、被処理水に対して処理を行う水処理槽内に、水処理槽の容積を調整するために構造体を設けることを特徴とする。
この特徴によれば、水処理槽の槽内に構造体を配置することで、水処理槽の有効容積をコントロールすることができる。これにより流入水量の低下に対して、被処理水の滞留時間を最適化し、水処理槽の有する最適な性能を発揮させることができる。また、この水処理システムは、曝気槽など、被処理水の流入量が変化することにより処理性能が変動する処理槽に適用することができる。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の構造体としては、被処理水に対して処理を行う水処理槽内に設けられ、水処理槽の容積を調整することを特徴とする。
本発明の構造体よれば、水処理槽の槽内に構造体を配置することで、水処理槽の有効容積をコントロールすることができる。これにより流入水量の低下に対して、被処理水の滞留時間を最適化し、水処理槽の有する最適な性能を発揮させることができる。
【0013】
上記課題を解決するための本発明の水処理システムは、水処理システムにおいて、既設の水処理槽と、既設の水処理槽に新たに設置する構造体と、を備えたことを特徴とする。
この特徴によれば、大規模な改修工事等の必要なく、水処理槽をダウンサイジングすることが可能となるため、流入水量の低下に対して、水処理槽の有する最適な性能を発揮させるためのコストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水処理槽への被処理水の流入水量の減少に対して所定の性能を維持する水処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第一の実施態様における水処理システムの構造を示す概略平面図である。
【
図2】本発明の第一の実施態様における水処理システムに用いる曝気撹拌装置の構造を示す概略断面図である。
【
図3】本発明の構造体の構造を示す概略斜視図である。
【
図4】本発明の第二の実施態様における水処理システムの構造を示す概略平面図である。
【
図5】本発明の第三の実施態様における水処理システムの構造を示す概略平面図である。
【
図6】既設の水処理システムを示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る水処理システムの実施態様を詳細に説明する。
なお、実施態様に記載する水処理システムの構造については、本発明に係る水処理システムを説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0017】
[第一の実施態様]
本発明の第一の実施態様の水処理システム100は、被処理水の流れる水路として無終端10を備えたオキシデーションディッチ槽に関するものである。無終端水路10内には、曝気及び/又は撹拌を行う曝気撹拌装置1を備え、硝化または脱窒を伴う被処理水の処理を行なうものである。
【0018】
本発明の水処理システムで処理される被処理水については特に限定されないが、下水、農業集落排水、畜産廃水、工業排水等の有機性廃水が挙げられる。特に人口減少や過疎化等の要因により、処理設備への流入量が従来よりも減少傾向にある下水、農業集落排水等の処理を行なうオキシデーションディッチ槽に対して、本発明を好適に利用することができる。
【0019】
また、第一の実施態様の水処理システム100は、無終端水路を備えたオキシデーションディッチ槽に関するものであるが、これに限定されるものではなく、無終端水路を利用しない水処理槽でもよい。例えば、曝気槽、嫌気処理槽、硝化槽、脱窒槽、pH調整槽などにも利用することができる。
【0020】
図1は、本発明の第一の実施態様における水処理システム100の構造を示す概略平面図である。また、
図1(A)及び
図1(B)は、無終端水路10に対する構造体2の配置について例示する概略平面図である。なお、構造体2については後述する。
図1に示すように、本実施態様における水処理システム100は、被処理水を循環させ好気処理又は嫌気処理を行なう無終端水路10と、被処理水を曝気及び撹拌する曝気撹拌装置1と、無終端水路10の容積を調整するための構造体2を備えている。
【0021】
(無終端水路)
図1に示すように、本実施態様における無終端水路10は、平面視長円形状を成す周囲壁10a及び無終端水路10の中央部には長手方向に延在する区画壁10bより構成されている。また、無終端水路10は、直線部である直線水路10cと曲線部である循環水路10dに分けられる。
無終端水路10には、導入口10eを通して下水などの被処理水が導入されているとともに、この無終端水路10からは当該無終端水路10で処理された処理水が導出口10fを通じて導出されている。
図1に示した導入口10eと導出口10fの配置は一例を示すものであって、
図1に示す配置に限定されるものではない。なお、
図1中の矢印は被処理水の流れ方向を示すものである。
【0022】
(曝気撹拌装置)
本実施態様における水処理システム100は、無終端水路10内の被処理水を撹拌、曝気する曝気撹拌装置1を備え、曝気撹拌装置1は無終端水路10の両端の循環水路10dに配置されている。なお、本実施態様における曝気撹拌装置1は、縦軸型撹拌曝気機について示しているが、これに限定されるものではない。曝気撹拌装置1としては、縦軸型のほかに、横軸型、斜軸型などが挙げられる。
【0023】
図2は、本実施態様における曝気撹拌装置1の構造の一例を示す概略断面図である。曝気撹拌装置1は、
図2に示すように、上下方向に延在し、軸線周りに回転するシャフト11を有し、このシャフト11の下端には、複数の羽根状のインペラ12が設けられている。また、インペラ12は、シャフト11の外周面から放射状に取り付けられている。
曝気撹拌装置1は、インペラ12を回転させるための駆動源としてインペラ回転用の駆動部13を備えている。駆動部13はインペラ12を回転させることができれば種類は特に限定されるものではない。具体的には、電気モータや内燃機関によるものが考えられる。
【0024】
また、曝気撹拌装置1は、
図2に示すように、シャフト11を回転自在に支持して昇降可能とする昇降装置14を備えるものとしてもよい。これにより、無終端水路10内におけるインペラ12の高さ位置を制御し、後述する好気運転と無酸素運転の切り替えを可能とする。
【0025】
本実施態様の水処理システム100では、2つの曝気撹拌装置1が設けられ、各曝気撹拌装置1は、無終端水路10の両端の循環水路10dに配置されている。無終端水路10内の被処理水は、インペラ12が浸漬するように水量が調整され、駆動部13の駆動によるインペラ12の回転に従って、無終端水路10内を反時計回り(
図1中の矢印)に循環する。
【0026】
本実施態様における水処理システム100では、無終端水路10内を好気状態にする好気運転と、無終端水路10内を嫌気状態にする無酸素運転を交互に行う。好気運転時には、
図2に示すように、曝気撹拌装置1のインペラ12の回転数を増やして適度の飛沫を発生させ、被処理水に空気を供給して曝気する。無酸素運転時には、インペラ12を下降させて回転数を減らして被処理水を撹拌する。このように、曝気撹拌装置1のインペラ12の被処理水への浸漬度合いと回転速度によって、無終端水路10内に好気状態又は嫌気状態を形成することができる。
【0027】
一方、被処理水の流入水量が低下すると、曝気撹拌装置1による被処理水への好気運転の調整が困難となる。曝気撹拌装置1としては、本来想定される被処理水の流入水量に合わせた出力等の機能を有するものを配置している。このため、被処理水の流入水量の低下により、曝気撹拌装置1では、いわゆるオーバースペックとなり、好気運転と無酸素運転に係るインペラ12の駆動において過剰な電力を消費するとともに、被処理水の処理における最適な運転を行うことが困難となるという問題が生じる。
【0028】
そこで、本実施態様の水処理システム100は、無終端水路10に構造体2を配置することにより、被処理水の流入水量の低下に応じて無終端水路内の容積を適切に調整し、被処理水の処理を最適化することが可能となる。
【0029】
(構造体)
構造体2は、無終端水路10内に設置されることで無終端水路10の容積を調整することを目的とするものである。
構造体2の無終端水路10内の設置位置については、特に限定されるものではない。例えば、
図1(A)に示すように、区画壁10bに沿って直線水路10cに設置する。また、
図1(B)に示すように、周囲壁10aに沿って直線水路10cに設置する。また、特定の位置ではなく、水路全体に対して規則的又は不規則的に構造体を配置してもよい。
【0030】
ここで、第一の実施態様の水処理システムにおける構造体2は、曝気撹拌装置1の上流側に配置する。なお、無終端水路10内に配置された構造体2と曝気撹拌装置1との位置関係において、「上流側」又は「下流側」とは、曝気撹拌装置1と最も近い位置に配置された構造体2との関係において決定する。
【0031】
無終端水路10内の被処理水の流れは、曝気撹拌装置1により形成される撹拌流によって発生するものであるため、被処理水の流速は、無終端水路10内の被処理水の流れ方向における曝気撹拌装置1の下流側直後が最も速く、曝気撹拌装置1の上流側直前が最も遅いという特徴がある。
そこで、
図1(A)及び
図1(B)に示すように、無終端水路10内の被処理水の流れ方向における曝気撹拌装置1の上流側直前に、構造体2を設置することにより、構造体2が水路の断面積が小さくするため、循環流の流速を上げることができるという効果がある。また、曝気撹拌装置1の上流側直前の流速を上げることにより、沈殿物の堆積を抑制することができる。
【0032】
また、構造体2の設置方法は、特に制限されるものではなく、例えば、溶接等により設置位置を変更できないように固定する方法や、設置位置を変更できるように設置する方法が挙げられる。設置位置が変更可能な設置方法は、例えば、ボルトなどの取り外し可能な固定手段に固定する方法や、被処理水の比重より重い素材で形成された構造体を被処理水中に着底する方法などが挙げられる。設置位置を変更できない固定方法の場合には、被処理水の流れに対して安定して設置することができる。設置位置を変更可能な固定方法の場合には、縦軸型曝気撹拌装置1の設置位置の変更等に応じて、構造体2の設置位置も変更することができるため、仕様の変更に対応することができる。
【0033】
また、構造体2は、大きさを変更可能に形成してもよい。大きさを変更する手段としては、例えば、
図3(A)、
図3(B)に示すように複数のプレート状の構造体ユニットを組み合わせる手段や、
図3(C)に示すように複数の担体や砂袋などの構造体ユニットを組み合わせる手段が挙げられる。構造体2の大きさを変更可能に形成することにより、無終端水路10内を流れる被処理水の水量が増減するなど変化した際に、複数のプレート状の構造体の一部を、設置又は撤去することで、水処理システム100の性能を発揮するために無終端水路10を最適な容積に調整することができる。
【0034】
また、構造体2は、
図3(D)に示すように、一つの構造体で形成してもよい。一つの構造体で形成する場合には、強固な構造物として設置することができる。また、構造が単純であるため、簡単な形状の型にコンクリート等を流し込んで固めることで、設置現場にて低コストかつ迅速に製造することができる。
【0035】
構造体2の形状は、特に制限されず、例えば、
図3(A)、
図3(B)、
図3(D)のように、水路の幅を漸次縮小するような形状や、
図3(C)のように、水深を浅くするような形状などが挙げられる。水路幅を漸次縮小する形状では、被処理水の流速を漸次上昇することができるため、被処理水の流れが生じない液溜まりが生じないという効果がある。水深を浅くする形状では、被処理水に上下方向の流れを生じるため、水路底部の沈殿物を撹拌するという効果がある。
【0036】
また、構造体2は、形状が変更可能なものでもよい。例えば
図3(C)に示すように、ステンレス等の防錆能力を有する金属製のネットで作られた袋に、複数の砂袋等の形状の変更が可能な構造体ユニットを入れて無終端水路10に設置することが挙げられる。この形状の変更が可能な構造体ユニットを使用する場合、水路の形状に合わせて密に設置することができる。
【0037】
構造体2の材質については、無終端水路10内に設置されることで、無終端水路10の容積を調整することができればよく、特に限定されるものではない。構造体2の材質としては、例えば、コンクリート、金属、プラスチックのほか、無終端水路10や、周囲壁10a又は区画壁10bと同様の材質を用いることが挙げられる。
【0038】
さらに、構造体2の材質としては、固定床担体であることが挙げられる。この場合、無終端水路10内を流れる被処理水の滞留時間が長くなることで汚泥が発生し無終端水路10の底部に堆積してしまうという問題があるが、構造体2を固定床担体とすることで、無終端水路10の容積を最適に変更し、さらに、嫌気性微生物が定着し、被処理水の分解が促進されることで、自己消化により汚泥の発生及び堆積を抑制することが可能となる。
【0039】
[第二の実施態様]
図4は第二の実施態様における構造体を設置された水処理システム200の構造を示す概略説明図である。なお、第一の実施態様の水処理システム100と同じものについては、説明を省略する。
また、第二の実施態様である構造体を設置した水処理システム200の内、周囲壁20a、区画壁20b、直線水路20c、循環水路20d、導入口20e、導出口20fは、第一の実施態様である水処理システム100の、周囲壁10a、区画壁10b、直線水路10c、循環水路10d、導入口10e、導出口10fと同一のものである。
【0040】
第二の実施態様における水処理システム200は、無終端水路20の、循環水路20dではなく、直線水路20cに曝気撹拌装置1が配置されており、曝気撹拌装置1から発生する撹拌流を無終端水路20に沿って流れるように整流することを目的とするガイド板3を備えていることを特徴とする。
【0041】
(ガイド板)
図4は、無終端水路20を平面から見た場合における、第二の実施態様における本発明のガイド板3の構成を示す概略説明図である。
ガイド板3は、縦軸型曝気撹拌装置1のインペラ12によって発生した撹拌流を導くことで、無終端水路20内の被処理水を撹拌及び循環させることを目的とするものである。
【0042】
ガイド板3は、縦軸型曝気撹拌装置1の上流側を覆うように区画壁20bに固定されている。ガイド板4の高さ位置は、上端は被処理水の略水面に位置し、下端は縦軸型曝気撹拌装置の下端と同等、もしくはやや上位に位置している。ガイド板3の上端を略水面に位置することにより、インペラ12の回転により飛散する飛沫が周囲に着水し、酸素供給効率を高めることができる。また、浮遊するスカムを消失させる作用に優れる。また、ガイド板3の下端を、縦軸型曝気撹拌装置1の下端と同等に設置することにより、インペラ12の回転により発生した撹拌流を所定の位置に誘導することができる。
【0043】
ガイド板3の材質は、プラスチック等の樹脂、鉄、アルミニウム等の金属、木材等が挙げられるが特に限定されるものではない。例えば、ステンレスのような耐腐食性の金属や、耐腐食性の加工を施した金属等が好ましい。これにより、下水、畜産廃水、工場廃水等の有機性廃水等に長時間接触させても腐食せず、かつ高い強度を備えているためメンテナンスサイクルを短くすることができる。
【0044】
[第三の実施態様]
図5は第三の実施態様における構造体を設置された水処理システム300の構造を示す概略説明図である。
第三の実施態様における水処理システム300は、好気性微生物処理を行う水処理槽30と、被処理水に対して空気を供給する曝気装置30aと、水処理槽30内の容積を調整する構造体21を備える。
【0045】
曝気装置30aは、コンプレッサ等により被処理水に対して空気を供給する装置である。これにより被処理水を好気条件とすることができる。
【0046】
構造体21は、複数の担体からなる構造体ユニットを備える固定床担体である。固体床担体を用いることにより、汚泥の発生及び堆積を抑制することができる。
【0047】
[構造体の設置方法]
既設の水処理システムに構造体を設置する方法について、
図6を用いて詳細に説明する。
図6は、既設の水処理システム500を示す概略説明図である。構造体の設置方法では、無終端水路50の容積を決定するための容積決定ステップと、無終端水路50内に構造体を設置するための構造体設置ステップとを備える。
【0048】
容積決定ステップでは、既設の水処理システム500の無終端水路50に流入する被処理水の流入水量に係るデータに基づき、好適な無終端水路の容積を決定する。
このとき、既設の水処理システム500における被処理水の流入水量に係るデータの種類及び取得手段は特に限定されない。例えば、作業員による日常点検等の監視(目視)に基づく記録(手書きの数字あるいはデータ値など)を用いることや、無終端水路500に設けた水量計の観測記録を用いること等が挙げられる。また、被処理水の発生源に係る情報(人口数、世帯数、稼働している工場数等)から、被処理水の流入水量を予測したデータを用いること等が挙げられる。
【0049】
得られた被処理水の流入水量に係るデータに基づき、無終端流路として好適な容積を決定する手段は特に限定されず、例えば、従来の水処理システムの設計と同様に行うことができる。新たな無終端流路の容積を決定する手段としては、例えば、過去の運転実績に基づき決定するものであってもよく、水処理システム500の設計に係る各種計算式に基づき決定するものであってもよい。
【0050】
容積決定ステップにより、無終端流路として好適な容積が決定された後、既設の水処理システム500の無終端流路50の容積を変更するための構造体設置ステップを実施する。
構造体設置ステップは、既設の水処理システム500の無終端流路50に構造体を設置する。このとき、構造体を設置後の新たな無終端流路が容量決定ステップによって決定された容積を満たすサイズとなるように構造体を設置する。
構造体を設置する手段は特に限定されない。例えば、既設の無終端水路50内に設置した後に、構造体が転倒することがないように、構造体と周囲壁50a又は区画壁50bとを連結するサポートなどを設けても良い。
また、構造体を設置することで、無終端水路50を流れる被処理水の水量が低下するため、必要に応じて被処理水の流速を調節するために、曝気撹拌装置1を撤去することもできる。
以上のステップにより、既設の無終端水路50に構造体が設置されたことにより、容積が最適化された循環水路である無終端水路が形成される。
【0051】
[構造体の撤去方法]
図1の第一の実施態様の水処理システム100を用いて構造体2の撤去方法を説明する。構造体の撤去方法は、無終端水路10の容積を決定するための容積決定ステップと、無終端水路10から構造体を撤去するための構造体撤去ステップとを備える。
【0052】
容積決定ステップは、構造体の設置方法と同様の容積決定ステップにより、好適な無終端水路10の容積を決定する。次に、構造体撤去ステップにより、水処理システム100の無終端流路10に設置された構造体2を撤去する。このとき、構造体2を撤去された新たな無終端流路が容積決定ステップによって決定された容積を満たすサイズとなるように構造体2を撤去する。ここで、撤去する構造体2は、構造体2の一部であっても良いし、全てであっても良い。また、大きさの小さい別の構造体への変更であっても良い。
【0053】
なお、上述した実施態様は、本発明の水処理システム及び構造体の一例を示すものである。本発明に係る水処理システム及び構造体は、上述した実施態様に限られるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る水処理システム及び構造体を変形してもよい。
【0054】
例えば、無終端水路ではなく、通常の水路に用いてもよい。これにより、通常の水路においても、水路を通過する流体の流速を減ずることなく容積の変更をすることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の水処理システム及び構造体は、生物学的水処理設備用の縦軸型曝気撹拌装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 曝気撹拌装置、2,21 構造体、3 ガイド板、11 シャフト、12 インペラ、13 駆動部、14 昇降装置、10,20,50 無終端水路、30 水処理槽、10a,20a,50a 周囲壁、10b,20b,50b 区画壁、10c,20c,50c 直線水路、10d,20d,50d 循環水路、10e,20e,50e 導入口、10f,20f,50f 導出口、30a 曝気装置、100,200,300 水処理システム、500 既設の水処理システム