(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】運搬車両の自動運転方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240329BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240329BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
G08G1/00 X
G08G1/16 A
E02F9/20 N
(21)【出願番号】P 2020060970
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-01-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (刊行物1) ▲1▼ 会見日 平成31年4月2日 ▲2▼ 会見場所 株式会社熊谷組 技術研究所 会議室(茨城県つくば市鬼ケ窪1043番地) ▲3▼ 公開者 株式会社熊谷組 SOINN株式会社 ▲4▼ 公開の内容 「運搬車両の自動運転方法」 (刊行物2) ▲1▼ ウェブサイトの掲載日 平成31年4月4日 ▲2▼ ウェブサイトのアドレス https://www.kumagaigumi.co.jp/news/2019/pr_20190404_1.html ▲3▼ 公開者 株式会社熊谷組 ▲4▼ 公開の内容 「AI制御による不整地運搬車(クローラキャリア)の自動走行技術の開発」 (刊行物3) ▲1▼ ウェブサイトの掲載日 平成31年4月8日 ▲2▼ ウェブサイトのアドレス https://soinn.com/2019/04/ai制御による不整地運搬車クローラキャリアの自/ ▲3▼ 公開者 SOINN株式会社 ▲4▼ 公開の内容 「AI制御による不整地運搬車(クローラキャリア)の自動走行技術の開発」 (刊行物4) ▲1▼ 刊行物名 第19回建設ロボットシンポジウム論文集 ▲2▼ 発行日 令和1年10月9日 ▲3▼ 発行所 建設ロボット研究連絡協議会 ▲4▼ 公開者 飛鳥馬 翼、北原 成郎、宮川 克己、古川 敦、藤本 和也 ▲5▼ 公開の内容 「AI制御による不整地運搬車の自動走行技術の開発-AIによる自動走行車両群の運行管理-」 (刊行物5) ▲1▼ 開催日 令和1年10月9日~同10月11日 ▲2▼ 集会名、開催場所 第19回建設ロボットシンポジウム北九州国際会議場 福岡県北九州市小倉北区浅野3丁目9-30 ▲3▼ 公開者 飛鳥馬 翼、北原 成郎、宮川 克己、古川 敦、藤本 和也▲4▼ 公開の内容 「AI制御による不整地運搬車の自動走行技術の開発-AIによる自動走行車両群の運行管理-」
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (刊行物6) ▲1▼ 刊行物名 熊谷組技術研究報告 No78/2019 ▲2▼ 発行日 令和1年12月27日 ▲3▼ 発行所 福井県福井市大手三丁目2番1号 株式会社熊谷組 ▲4▼ 公開者 飛鳥馬 翼、北原 成郎、宮川 克己、古川 敦 ▲5▼ 公開の内容 「AI制御による不整地運搬車の自動走行技術の開発」(刊行物7) ▲1▼ 刊行物名 月刊「土木技術」2020年3月号 ▲2▼ 発行日 令和2年3月1日 ▲3▼ 発行所 東京都千代田区一番町27-2 理工図書株式会社 ▲4▼ 該当ページ 第48頁~第50頁 ▲5▼ 公開者 理工図書株式会社 ▲6▼ 公開の内容 「i-Constructionの未来につながる無人化施工技術」 (刊行物8) ▲1▼ 開催日 令和1年7月25日 ▲2▼ 集会名、開催場所 株式会社日経BP i-Construction実践セミナー ホテル雅叙園東京(東京都目黒区下目黒1-8-1) ▲3▼ 公開者 北原 成郎 ▲4▼ 公開の内容 「i-Constructionとともに進化する無人化施工技術」
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】北原 成郎
(72)【発明者】
【氏名】古川 敦
(72)【発明者】
【氏名】畑本 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】天下井 哲生
(72)【発明者】
【氏名】飛鳥馬 翼
(72)【発明者】
【氏名】竹下 嘉人
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和也
(72)【発明者】
【氏名】小林 英仁
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/070869(WO,A1)
【文献】特開2019-065662(JP,A)
【文献】特開2010-134961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G08G 1/16
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬車両を、予め設定された始点から終点まで自動運転
により往復させる方法であって、
前記始点と
前記終点とを結ぶ、運搬車両が走行可能な複数の教示経路のデータを作成する教示経路作成ステップと、
前記作成された複数の教示経路について、前記教示経路を走行する複数の運搬車両の台数を指定するとともに、前記複数の運搬車両の前記教示経路における位置関係を算出し、前記算出された位置関係から、前記教示経路における前記複数の運搬車両の位置関係が安全であるか否かを判定し、前記安全と判定された位置関係のみを経路のデータとしたモデル経路を作成して記憶するモデル経路作成ステップと、
前記複数の運搬車両の運行計画を前記モデル経路の中から選
択してこれを運行パターンとする運行
パターン選
択ステップと、
前記
選択された運行パターンと前記運搬車両の現在位置と姿勢のデータとに基づいて、前記運搬車両を自動運転させる運行ステップと、を備え、
前記教示経路作成ステップでは、
当該教示経路を構成する走路の道幅、往復距離、当該教示経路を往復に要する時間、及び、当該教示経路を走行する運搬車両の車両サイズを用いて、当該教示経路を評価し、
前記運行
パターン選
択ステップでは、
前記モデル経路の中から、
前記教示経路の評価結果を用いて、予め設定した作業目標を満たすモデル経路を選択
してこれを運行パターンとし、
前記運行ステップでは、
前記
選択された運行
パターンと、前記複数の運搬車両が取得した現在位置と姿勢とに基づいて、前記運搬車両に進行もしくは停止を指示することを特徴とする運搬車両の自動運転方法。
【請求項2】
前記教示経路作成ステップでは、
現在位置と姿勢とを取得する手段を備えた運搬車両を走行させて、複数の教示経路のデータを作成することを特徴とする請求項1に記載の運搬車両の自動運転方法。
【請求項3】
前記教示経路作成ステップでは、
予めオペレータが、前記運搬車両の走行状況をカメラ映像で確認しながら前記運搬車両を遠隔操作で走行させて得られた、前記運搬車両の車両位置と車両姿勢とから、前記教示経路のデータを作成することを特徴とする請求項2に記載の運搬車両の自動運転方法。
【請求項4】
前記教示経路が1車線である場合には、前記教示経路に運搬車両の退避箇所を設けるとともに、
前記運行ステップでは、
各運搬車両に進行もしくは停止の指示に加えて、前記退避箇所に向かう往路もしくは復路を走行する運搬車両のいずれかを、前記退避箇所へ移動させることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の運搬車両の自動運転方法。
【請求項5】
前記始点と終点とを複数設けたことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の運搬車両の自動運転方法。
【請求項6】
前記始点と終点との間に少なくとも1つの中間点を設けるとともに、
始点と中間点との間、隣接する中間点間、及び、中間点間と終点との間を、それぞれ、サブ教示経路とし、これら各サブ教示経路のそれぞれについて、サブモデル経路を求めるとともに、サブモデル経路を繋げた経路を運行モデルとし、
前記運行ステップでは、
前記サブモデル経路ごとに、前記複数の運搬車両に、進行、停止、もしくは、退避箇所へ移動に指示することを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の運搬車両の自動運転方法。
【請求項7】
前後して移動する複数の運搬車両をグループ化し、このグループ化された複数の運搬車両を単一の運搬車両とみなして制御することを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の運搬車両の自動運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台の運搬車両を自動走行させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な土木工事において、土砂の運搬は、土砂載積場所から搬出場所まで、殆ど同一経路を往復する繰り返し作業が行われている。その作業は、単調な繰り返しでありながら、運転経路からの逸脱や運搬車両の離合などの危険があるだけでなく、運搬車両の運転手の疲労蓄積や集中力の低下による事故の危険もある。
そこで、これらの問題を解決するため、複数台の運搬車両に、それぞれ、衛星測位装置(GNSS ; Global Navigation Satellite System)と慣性測量装置(IMU ; Inertial Measurement Unit)とを搭載し、3次元測位により、運搬車両の位置を確定するとともに、遠隔地より、遠隔操作オペレータが、モニターで車両周辺の様子を確認しながら、車両を予め設定された経路に沿って走行させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の方法では、運搬車両が複数台であるため、土砂積載の遠隔操作を行う積載操作オペレータの他に、衝突の安全確認を行いながら、複数台の運搬車両を遠隔操作で自動走行させる走行操作オペレータが必要であった。
【0005】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、走行操作オペレータがいなくても、複数台の運搬車両を所定の運搬経路に沿って、安全に、かつ、効率よく自動走行させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、運搬車両を、予め設定された始点から終点まで自動運転により往復させる方法であって、前記始点と前記終点とを結ぶ、運搬車両が走行可能な複数の教示経路のデータを作成する教示経路作成ステップと、前記作成された複数の教示経路について、前記教示経路を走行する複数の運搬車両の台数を指定するとともに、前記複数の運搬車両の前記教示経路における位置関係を算出し、前記算出された位置関係から、前記教示経路における前記複数の運搬車両の位置関係が安全であるか否かを判定し、前記安全と判定された位置関係のみを経路のデータとしたモデル経路を作成して記憶するモデル経路作成ステップと、前記複数の運搬車両の運行計画を前記モデル経路の中から選択してこれを運行パターンとする運行パターン選択ステップと、前記選択された運行パターンと前記運搬車両の現在位置と姿勢のデータとに基づいて、前記運搬車両を自動運転させる運行ステップと、を備え、前記教示経路作成ステップでは、当該教示経路を構成する走路の道幅、往復距離、当該教示経路を往復に要する時間、及び、当該教示経路を走行する運搬車両の車両サイズを用いて、当該教示経路を評価し、前記運行パターン選択ステップでは、前記モデル経路の中から、前記教示経路の評価結果を用いて、予め設定した作業目標を満たすモデル経路を選択してこれを運行パターンとし、前記運行ステップでは、前記選択された運行パターンと、前記複数の運搬車両が取得した現在位置と姿勢とに基づいて、前記運搬車両に進行もしくは停止を指示することを特徴とする。
これにより、運搬車両の安全性を向上させることができるとともに、運搬車両の運行を管理するオペレータが不要となったので、生産性を向上させることができる。
また、運搬車両の走行速度が平準化されるので、燃費効率が向上する。
また、運搬車両に衝突回避用のセンサーを搭載しなくても、運搬車両同士の接触をなくすことができる。
また、本発明は、運搬車両の走行経路が複雑で長距離である場合や、運転車両の台数が3台以上である場合についても対応可能である。
なお、教示経路は、始点及び終点を含む地図や航空写真等を参照して作成することも可能であるが、現在位置と姿勢とを取得する手段を備えた運搬車両を走行させて教示経路を作成すれば、精度の高い教示経路のデータを取得することができる。
また、予めオペレータが、前記運搬車両の走行状況をカメラ映像で確認しながら前記運搬車両を遠隔操作で走行させて得られた、前記運搬車両の車両位置と車両姿勢とから、前記教示経路のデータを作成すれば、運転手が運搬車両を直接運転する必要がなく、かつ、精度の高い教示経路のデータを効率よく取得することができる。
【0007】
また、前記教示経路が1車線である場合には、前記教示経路に運搬車両の退避箇所を設けるとともに、前記運行ステップでは、各運搬車両に進行もしくは停止の指示に加えて、前記退避箇所に向かう往路もしくは復路を走行する運搬車両のいずれかを、前記退避箇所へ移動させるようにしたので、走路が1車線であっても、運搬車両を安全に自動走行させることができる。
また、本発明は、前記始点と終点とを複数であっても対応可能である。
また、前記始点と終点との間に少なくとも1つの中間点を設けるとともに、始点と中間点との間、隣接する中間点間、及び、中間点間と終点との間を、それぞれ、サブ教示経路とし、これら各サブ教示経路のそれぞれについて、サブモデル経路を求めるとともに、サブモデル経路を繋げた経路を運行モデルとし、前記運行ステップでは、前記サブモデル経路ごとに、前記複数の運搬車両に、進行、停止、もしくは、退避箇所へ移動に指示するようにしたので、始点と終点との距離が長い場合や、走行させる運搬車両の台数が多い場合でも、運搬車両を安全にかつ確実に自動走行させることができる。
また、前後して移動する複数の運搬車両をグループ化し、このグループ化された複数の運搬車両を単一の運搬車両とみなして制御するようにしたので、運搬車両の台数が多い場合でも運搬車両を効率よく自動走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態に係る土砂運搬システムを示す図である。
【
図3】車両の安全な位置関係と衝突の可能性がある位置関係の例を示す図である。
【
図4】本発明による運搬車両の自動運転方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態に係る土砂運搬システム100を示す図で、1は運搬車両待機場所、2は土砂積載場所、3は土砂搬出場所、4a,4bは第1及び第2の走路、5はモデル経路作成装置、6は図示しない遠隔操作室に設けられた土砂運搬管理装置、10は運搬車両、20は積載機、30はダンプトラックである。
運搬車両待機場所1は、土砂搬出場所3へ向かう運搬車両10が待機している場所で、後述するように、土砂搬出場所3で土砂Gをダンプトラック30に積換えた後に戻ってきて待機する場合もある。
なお、同図の点Aは、運搬車両10の出発する箇所(以下、始点Aという)でもあり、土砂Gを運んできた運搬車両10が出て行く箇所でもある。この始点Aでは、2台の運搬車両10が十分にすれ違うことのできるものとする。
本例では、林道を整備した程度の、舗装がなされていない走路4a,4bを安定して走行するため、運搬車両10として、走行手段11が無限軌道である不整地運搬車(クローラキャリア)等を用いている。
運搬車両10は、衛星測位装置(GNSS)と慣性測量装置(IMU)とを備え、当該運搬車両10の位置と姿勢(以下、位置情報という)を取得する位置情報取得手段12と、位置情報取得手段12で取得された位置情報を、遠隔操作室に設置された土砂運搬管理装置6に無線通信により送信する送信機13と、受信機14と、受信機14で受信した土砂運搬管理装置6からの指令により、当該運搬車両10の走行状態を制御する走行制御手段15と、図示しない複数のカメラと、を備え、第1の走路4a、第2の走路4b、もしくは、第1の走路4aと第2の走路4bとを通って、始点A~終点Bまでを、自動運転により往復する。
なお、符号16は土砂を積載するための荷台、符号17は位置情報取得手段12等が配置された制御室、13Aは送信機13に接続された無線通信用の送信アンテナ、14Aは受信機14に接続された無線通信用の受信アンテナである(GNSSの受信アンテナについては省略した)。
【0010】
土砂積載場所2は、運搬車両待機場所1から離れた山中等に設けられた、2台の運搬車両10が十分な間隔を持って走行できる広さを有する場所で、運搬車両10と積載機20とを遠隔操作して、土砂Gの採取と採取した土砂Gを運搬車両10に積込む場所である。
なお、同図の点Bは、土砂積載場所2に運搬車両10が出入りする箇所(以下、終点Bという)である。この終点Bでも、2台の運搬車両10が十分にすれ違うことができるものとする。
本例では、積載機20としてバックホウを用い、土砂Gの集積、土砂Gの運搬車両10への積込み、土砂積載場所2の整地等を行うようにしている。
土砂積載場所2には、運搬車両10と積載機20を遠隔操作するための複数台のカメラC2(図では1台のみ表示)が設置されている。カメラC2で撮影された運搬車両10及び積載機20の映像は土砂運搬管理装置6に送信される。
積載機20は、受信アンテナ21Aを備えた受信機21と、受信機21で受信した土砂運搬管理装置6からの指令により、無限軌道から成る走行手段22と、ブーム23、アーム24、バケット25の動きを制御する積載機制御手段26とを備え、遠隔操作室に設置された土砂運搬管理装置6により遠隔操作され、土砂Gの採取と、運搬車両10への土砂Gの積込みと、土砂積載場所2の整地等を行う。
土砂搬出場所3は、一般道路に通じる搬出ゲートを備え、運搬車両10が運んできた土砂Gをダンプトラック30に積換えて外部に搬出する箇所で、土砂Gを降ろした運搬車両10は運搬車両待機場所1へ戻り待機する。ダンプトラック30は、土砂Gを図示しない土砂置き場まで運搬する。
第1及び第2の走路4a,4bは、ともに、始点Aと終点Bとを結ぶ林道を整備して構築された走路で、第1の走路4aには、始点Aと終点Bとのほぼ中間に、バイパスとなる第1の退避路4pが設けられ、第2の走路4bには、第2の退避路4qが設けられている。
上記の第1及び第2の退避路4p,4qは、第1及び第2の走路4a,4bを整備して、運搬車両10の走路とする際に、同時に、構築される。
なお、
図1では省略しているが、土砂積載場所2から土砂搬出場所3までの走路である第1及び第2の走路4a,4b、及び、第1及び第2の退避路4p,4qの複数個所には、運搬車両10の走行状態を撮影する複数台のカメラが設置されている。
【0011】
モデル経路作成装置5は、教示経路設定手段51と、モデル経路作成手段52とを備え、複数の教示経路のそれぞれについて、当該教示経路を走行する複数の運搬車両10の安全な(衝突の可能性のない)位置関係を示すデータから成るモデル経路を作成する。
なお、教示経路設定手段51と、モデル経路作成手段52とは、例えば、コンピュータ上のソフトウェアを利用して構成される。
教示経路
設定手段51は、予め運搬車両10のオペレータが、遠隔操作室にて、走行状況をカメラ映像で確認しながら、終点B(土砂積載場所2)から始点A(土砂搬出場所3)まで、遠隔操作にて運転(教示運転)を行って得られた、遠隔操作の操作内容と運搬車両10の車両位置と車両姿勢とから、教示経路のデータを作成するとともに、教示経路を設定する。ここで、教示経路のデータとは、運搬車両10の走行時間と当該教示経路における運搬車両10の位置及び姿勢との関係を示すデータを指す。
なお、本例では、カメラ映像として、土砂積載場所2から土砂搬出場所3までの走路の複数個所に設置されたカメラで撮影された映像と、運搬車両10に搭載された複数のカメラで撮影された映像とを用いた。
例えば、
図2(a)に示すように、始点Aと終点B間には、始点Aと終点Bとを結ぶ2つの走路4a,4bがあり、第1の走路4aは、道幅が、2台の運搬車両10がすれ違うことができず、かつ、普通の運搬車両101,102は通行できるが、大型の運搬車両103,104は通行できない広さの走路であったとする。
また、第2の走路4bは、第1の走路4aよりも広
い走路であるが、道幅としては、普通の運搬車両101,102も、大型の運搬車両103,104も、どちらも、すれ違えない広さであったとする。
この場合の教示経路としては、
図2(b)に示すような、退避路4pを有し、走路4aを往復する教示経路K1、
図2(c)に示すような、走路4aを往路とし走路4bを復路とする教示経路K2、
図2(d)に示すような、走路4bを往路とし走路4aを復路とする教示経路K3、
図2(e)に示すような、退避路4qを有し、走路4bを往復する教示経路K4の4つが考えられる。
教示経路K1は、往復距離が最短であるので、コスト(燃費)の面で有利である。
教示経路K2は、往復距離は長いが、退避路を使わないので、走行時間が最小となる。
教示経路K3は、教示経路K2と同じく走行時間は短いが、道幅の狭い方の道(走路4a)を、土砂Gを積載した運搬車両10が通ることになるので、教示経路K2よりも走行安全性は低い。
教示経路K4は、往復距離は長いが、大型車両が使用可能である点で有利である。
これら教示経路K1~K4の評価結果は、後述する運行パターンの設定時に使用される。
本例では、
図2(b),(e)の破線に示すように、退避路4p,4qを有する教示経路K1,K4においては、往路のみ退避路4p,4qを利用するものとし、土砂Gを積載した運搬車両10の通行する復路は退避路4p,4qを利用しないものとする。
なお、往路であっても復路であっても退避路4p,4qを利用してもよいが、後述するモデル経路の作成時における複数の運搬車両10の位置関係の算出が煩雑になるので、本例のように、往路と復路とを予め決めておく方が好ましい。
【0012】
モデル経路作成手段52では、教示経路設定手段51にて設定された複数の教示経路K1~K4のそれぞれについて、当該教示経路を走行する複数の運搬車両10(例えば、教示経路K1であれば、運搬車両101と102、教示経路K4であれば、運搬車両103と104)の時刻ごとの位置データから、前記複数の運搬車両10の時刻ごとの位置関係を算出するとともに、この算出された時刻ごとの位置関係から、教示経路K1~K4における複数の運搬車両10の安全な位置関係や衝突の可能性のある位置関係を計算し、時刻ごとの位置関係が安全な位置関係のみをモデル経路KM1~KM4における複数の運搬車両10の時刻ごとの位置データとする。すなわち、モデル経路KM1~KM4をそれぞれ走行する複数の運搬車両10の位置データは、位置関係が全て、衝突の可能性がない安全な位置関係にある位置データのみである。複数の運搬車両10の時刻ごとの位置データは、運搬車両10の車両間隔ごとに算出される。
なお、衝突の可能性のある位置関係とは、2台の運搬車両10,10の位置データを、各運搬車両10の進行方向に時間的に動かしたときに、2台の運搬車両10,10間の距離が所定量以下になるか、もしくは、位置データが一致する場合のことをいう。
教示経路K1を例にとると、
図3(a)に示すように、時刻t
1において、空の運搬車両101も土砂Gを積載した運搬車両102も第1の退避路4pよりも所定距離だけ手前にある場合(位置データD
10)には、運搬車両101と運搬車両102とは、安全な位置関係にある。なお、「手前」とは運搬車両101,102から見たときの位置関係を指す。
時刻t
1よりも所定時間Δt後の時刻t
2における、運搬車両101,102の位置関係は、
図3(b)に示すような、土砂Gを積載した運搬車両102が、走路4aを、第1の退避路4pの手前まで進んだとき、空の運搬車両101が第1の退避路4p内に待機している場合(位置データD
21)と、
図3(c)に示すような、土砂Gを積載した運搬車両102が第1の退避路4pの手前まで進んだとき、空の運搬車両101が第1の退避路4pを過ぎて走路4a内に入ってしまった場合(位置データD
22)とがある。
位置データD
21の場合は、時刻t
2よりも所定時間Δt後の時刻t
3には、
図3(d)に示すように、運搬車両101は、第1の走路4aの第1の退避路4pよりも終点B側に位置し、運搬車両102は第1の走路4aの第1の退避路4pよりも始点A側に位置する(位置データ,D
31)。したがって、位置データD
10,D
21,D
31は安全な位置関係にある時系列データであると判定される。
これに対して、位置データD
22の場合は、運搬車両101と運搬車両102とが第1の走路4a内で向き合う位置関係にあるので、運搬車両101と運搬車両102とは、衝突の可能性のある位置関係にあると判定される。すなわち、位置データD
22は、モデル経路KM1のデータから除外される。
このように、モデル経路KM1は、空の運搬車両101と土砂Gを積載した運搬車両102の2台の車両について、
図3(a),(b),(d)のような、安全な位置関係のみを、退避路4pを含む走路4aに書き込んだ複数の位置データD
ijの集合である。なお、モデル経路KM1の各位置データは、運搬車両101と運搬車両102との間隔ごとに時系列的に並べられて、複数の位置データ群D
KM1を構成する。
なお、教示経路K2~K4から、モデル経路KM2~KM4を作成する場合も、上記のモデル経路KM1を作成する場合と同様である。
【0013】
土砂運搬管理装置6は、モデル経路記憶手段61と、運行パターン選択手段62と、運搬車両制御手段63と、土砂積載制御手段64とを備え、運搬車両10の走行・停止と、積載機20による土砂Gの積み込みを制御する。
モデル経路記憶手段61~運搬車両制御手段63の各手段は、例えば、CPU(Central Processing
Unit)、メモリー、I/Oインターフェイス等で構成されるコンピュータと、コンピュータ上で起動するソフトウェアで構成され、土砂積載制御手段64は、オペレータが操作する、図示しないコンピュータ及びメモリーを内蔵した遠隔・自動操作盤から構成される。
モデル経路記憶手段61は、モデル経路作成手段52で作成された、KM1~KM4などの、複数のモデル経路を記憶する。
運行パターン選択手段62は、モデル経路作成手段52で作成されたモデル経路の中から、入力された、作業目標、または、車両サイズなどの条件を満たすモデル経路を選択してこれを運行パターンとする。
教示経路が上記のK1~K4であり、作業目標が「コストが最小」である場合には、運行パターンとして、モデル経路KM1が選択される。
運搬車両制御手段63は、選択されたモデル経路KM1と複数の運搬車両10から送られてくる位置情報とから、複数の運搬車両10の進行・停止(待機)を判断し、これら複数の運搬車両10のそれぞれに、進行・停止(待機)の指令を送信することで、複数の運搬車両10の走行を自動制御する。
なお、各位置データは、運搬車両101と運搬車両102との運転間隔ごとに作成され、かつ、時系列的に並べられているので、複数の運搬車両10を選択されたモデル経路KM1の位置データ群(D
KM111~D
KM11n)に基づいて進行・待機・停止の動作を指令すれば、複数の運搬車両10の走行を自動制御できる。ここで、添え字11の前の数字は運転間隔(T
i)、後の数字は時刻(t
j)を表している。
例えば、
図3(a)に示すように、時刻t
1において、空の運搬車両101も土砂Gを積載した運搬車両102も第1の退避路4pよりも手前に位置している場合、運搬車両101が第1の退避路4pの入り口近傍まで進んだときに、運搬車両101に退避指令を発して、時刻t
2には、運搬車両101が第1の退避路4p内で停止・待機するように、運搬車両101の走行を制御する。
また、土砂Gの積込みに時間がかかるなどして、運搬車両101と運搬車両102との位置関係がずれてしまった場合には、運搬車両101と運搬車両102との位置関係が、
図3(b)に示した位置関係になるまで、運搬車両101が第1の退避路4p内で停止・待機するように、運搬車両101の走行を制御するように、運搬車両制御手段63をソフトウェア設定すればよい。
なお、制御に使用する位置データ群を、運搬車両101と運搬車両102との位置関係が、運搬車両101,102から送られてきた位置データと同じ位置関係にある位置データ群(例えば、D
KM131~D
KM13m)を用いて、運搬車両101と運搬車両102の走行を制御するようにソフトウェア設定してもよい。
土砂積載制御手段64は、土砂積載場所2内における運搬車両10の走行・停止を遠隔操作により制御するとともに、積載機20の積載機制御手段26を制御して、運搬車両10への土砂の積込みとを遠隔操作する。制御は、遠隔操作室のオペレータが、土砂積載場所2に設置された複数台のカメラC2(図では1台のみ表示)で撮影され、土砂運搬管理装置6に送信された、運搬車両10及び積載機20の映像を見ながら行う。
【0014】
次に、本発明による運搬車両の自動運転方法について、
図4のフローチャートを参照して説明する。
始めに、オペレータが、土砂積載場所2から土砂搬出場所3まで、遠隔操作にて、運搬車両10の教示運転を行い、運搬車両10の車両位置と車両姿勢のデータである教示経路のデータを取得(ステップS10)し、この取得した、教示経路のデータから、土砂を運搬する教示経路を設定する(ステップS11)。
設定される教示経路は1つでもよいし、複数であってもよい。
次に、教示経路を走行する複数の運搬車両10の位置データから、複数の運搬車両の位置関係を算出(ステップS12)した後、この算出された位置関係から、複数の運搬車両10の安全な位置関係や衝突の可能性のある位置関係を計算し、安全な位置関係のみを複数の運搬車両10の位置データとするモデル経路を作成する(ステップS13)。
そして、作成されたモデル経路の中から、作業目標や車両サイズ等の条件を満たすとともに、安全かつ生産効率の高いモデル経路を選択して、これを運行パターンとし(ステップS14)、この運行パターンに従って、複数の運搬車両10を自動運転させる(ステップS15)。
【0015】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0016】
例えば、前記実施の形態では、始点Aと終点Bとをそれぞれ箇所としたが、
図5(a)に示すように、始点Aと終点Bのいずれか一方、あるいは両方を複数としてもよい。なお、モデル経路の作成方法や運搬車両の自動制御方法は、実施の形態と同様である。
また、
図5(b)に示すように、始点Aと終点Bとの距離が長い場合や、走行させる運搬車両10の台数が多い場合には,複数の退避路4p
1~4p
nを設けるとともに、始点Aと終点Bとの間に中間点C
1~Cnを設け、始点Aと中間点C
1との間、中間点C
1と中間点C
2との間、……、中間点C
nと終点Bとの間を、それぞれ、教示経路K1~Knとすればよい。そして、この分割された教示経路K1~Knごとに、モデル経路KM1~KMnを作成し、このモデル経路KM1~KMnを用いて運搬車両10の走行・停止を自動制御すれば、更に細かい制御を行うことができる。
また、前記実施の形態では、第1及び第2の退避路4p,4qをバイパス状としたが、
図6(a)に示すように、第1の退避路4pに代えて、第1の走路4aから分岐する退避用分岐路41pを退避路としてもよい。第1の退避路4pの場合には、運搬車両10は、前進・停止(待機)・前進により、第1の走路4aに戻ったが、退避用分岐路41pの場合には、前進・停止(待機)・後退により、第1の走路4aに戻る。
なお、
図6(b)に示すように、第1の走路4aから分岐する林道4mがあった場合には、林道4mの第1の走路4aに連結する側を、退避用分岐路41pとしてもよい。
あるいは、
図6(c)に示すように、第1の走路4aに、第1の走路4aの道幅を一部広げた一時退避箇所42pを設けてもよい。
第2の退避路4qについても、同様である。
また、前後して移動する複数の運搬車両をグループ化し、このグループ化された複数の運搬車両を単一の運搬車両とみなして、前記に記載したモデル経路を作成し、自動運転を行うこともできる。
ここで、前後して移動する複数の運搬車両をグループ化して走行させるとは、複数の運搬車両が始点から終点、もしくは、終点から始点に向かって、連続して(他の運搬車両を間にはさまずに)走行させることを指す。
すなわち、グループ化した複数台の運搬車両のうちの1台の運搬車両を代表車両とし、この運搬車両を自動運転させるとともに、他の運搬車両については、代表車両との距離が一定の範囲内になるように制御すれば、複数の運搬車両を単一の運搬車両とみなして走行させたことになる。
これにより、時刻ごとの運搬車両間の位置関係を算出は、代表車両と他の運搬車両、もしくは、他の代表車両と位置関係のみを算出するだけでよいので、モデル経路作成ステップの負荷が減り、運搬車両の台数が多い場合でも運搬車両を効率よく自動走行させることができる。
なお、代表車両は、グループの先頭の運搬車両とし、衝突防止センサー等を使って、後方車両が前方車両に対して一定の車間距離を保ちつつ追従しながら走行することが制御上好ましい。
【符号の説明】
【0017】
1 運搬車両待機場所、
10 運搬車両、11 走行手段、12 位置情報取得手段、13 送信機、
14 受信機、15 走行制御手段、16 荷台、17 制御室、
13A 送信アンテナ、14A 受信アンテナ、
2 土砂積載場所、20 積載機、21 受信機、21A 受信アンテナ、
22 走行手段、23 ブーム、24 アーム、25 バケット、
26 積載機制御手段、3 土砂搬出場所、30 ダンプトラック、
4a 第1の走路、4b 第2の走路、4p 第1の退避路、4q 第1の退避路、
5 モデル経路作成装置、51 教示経路設定手段、52 モデル経路作成手段、
6 土砂運搬管理装置、61 モデル経路記憶手段、62 運行パターン選択手段、
63 運搬車両制御手段、64 土砂積載制御手段、
100 土砂運搬システム、A 始点、B 終点、C2 カメラ、G 土砂。