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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】濃縮装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/00 20060101AFI20240329BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20240329BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B01D61/00 500
B01D61/58
B01D63/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020068336
(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公開番号】P2021164899
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】593145766
【氏名又は名称】美浜株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】伊東 護
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-506867(JP,A)
【文献】国際公開第2020/050282(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/024573(WO,A1)
【文献】特開2015-226864(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038402(WO,A1)
【文献】特開2015-192979(JP,A)
【文献】特開2016-150308(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0224476(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110606589(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00 - 71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィード溶液中の水が移行されて前記フィード溶液が濃縮される濃縮装置であって、
前記フィード溶液から該フィード溶液よりも高い浸透圧を有する中間ドロー溶液へ、かつ、該中間ドロー溶液から該中間ドロー溶液よりも高い浸透圧を有する最終ドロー溶液へ、前記フィード溶液中の水が順次移行されて前記フィード溶液が濃縮されるものであり、
前記フィード溶液が送液されるフィードラインと、前記中間ドロー溶液が送液される中間ドローラインと、前記中間ドロー溶液を収容する中間ドロー槽と、前記最終ドロー溶液が送液される最終ドローラインと、第1正浸透膜を有する第1正浸透モジュールと、第2正浸透膜を有する第2正浸透モジュールを有しており、
前記中間ドローラインは、前記中間ドロー槽と前記第1正浸透モジュールとの間で前記中間ドロー溶液を循環させるとともに、前記中間ドロー槽と前記第2正浸透モジュールとの間で前記中間ドロー溶液を循環させるものであり、
前記第1正浸透モジュールは、前記フィードラインからの前記フィード溶液が通過するフィード側部屋と、前記中間ドローラインからの前記中間ドロー溶液が通過する中間ドロー側第1部屋をさらに有し、前記第1正浸透膜は前記フィード側部屋と前記中間ドロー側第1部屋の仕切りであり、該第1正浸透膜を介して、前記フィード側部屋中の前記フィード溶液から前記中間ドロー側第1部屋中の前記中間ドロー溶液へ前記フィード溶液中の水が移行されて前記フィード溶液が濃縮されるものであり、
前記第2正浸透モジュールは、前記中間ドローラインからの前記中間ドロー溶液が通過する中間ドロー側第2部屋と、前記最終ドローラインからの前記最終ドロー溶液が通過する最終ドロー側部屋をさらに有し、前記第2正浸透膜は前記中間ドロー側第2部屋と前記最終ドロー側部屋の仕切りであり、該第2正浸透膜を介して、前記中間ドロー側第2部屋中の前記中間ドロー溶液から前記最終ドロー側部屋中の前記最終ドロー溶液へ前記中間ドロー溶液中の水が移行されるものであり、
前記フィード溶液を収容するフィード槽をさらに有し、
前記フィードラインは、前記フィード槽と前記第1正浸透モジュールとの間で前記フィード溶液を循環させるものであることを特徴とする濃縮装置。
【請求項2】
前記第1正浸透モジュールおよび前記第2正浸透モジュールは、各々、外箱と該外箱内を通る中空糸を有しており、
前記第1正浸透膜および前記第2正浸透膜は前記中空糸であり、
前記フィード側部屋および前記中間ドロー側第2部屋は前記中空糸内の空間であり、
前記中間ドロー側第1部屋および前記最終ドロー側部屋は前記外箱内かつ前記中空糸外の空間であることを特徴とする請求項1に記載の濃縮装置。
【請求項3】
記最終ドロー溶液を収容する最終ドロー槽をさらに有し
記最終ドローラインは、前記最終ドロー槽と前記第2正浸透モジュールとの間で前記最終ドロー溶液を循環させるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の濃縮装置。
【請求項4】
前記フィード溶液は、食品、化学研磨液と酸性・アルカリ性の水溶液と界面活性剤との中から選ばれる薬液、医薬品、香料、染料、飲料、サプリメント、シアン化ナトリウム水溶液とストリキニーネ水溶液とニコチン水溶液との中から選ばれる毒物、メッキ液および排水のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の濃縮装置。
【請求項5】
前記中間ドロー溶液は、塩化ナトリウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液、液糖、エチレンオキシドプロピレンオキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール、クエン酸溶液、アスコルビン酸溶液、グルタミン酸溶液、ポリスチレンスルホン酸溶液のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の濃縮装置。
【請求項6】
前記最終ドロー溶液は、塩化ナトリウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液、液糖、エチレンオキシドプロピレンオキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール、クエン酸溶液、アスコルビン酸溶液、グルタミン酸溶液、ポリスチレンスルホン酸溶液のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の濃縮装置。
【請求項7】
前記中間ドローラインは2つのラインを有しており、
一方のラインが、前記中間ドロー槽と前記第1正浸透モジュールとの間で前記中間ドロー溶液を循環させるものであり、
他方のラインが、前記中間ドロー槽と前記第2正浸透モジュールとの間で前記中間ドロー溶液を循環させるものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の濃縮装置。
【請求項8】
前記中間ドローラインは1つのラインを有しており、
該1つのラインが、前記中間ドロー槽と、前記第1正浸透モジュールと、前記第2正浸透モジュールとの間で前記中間ドロー溶液を循環させるものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の濃縮装置。
【請求項9】
前記中間ドロー溶液、前記中間ドローライン、および前記中間ドロー槽の組み合わせが、複数段、順次連結されたものであり、
前記中間ドロー溶液は、前記連結された複数段において、前段よりも後段の方が高い浸透圧を有するものであり、
前記中間ドローラインのうち、前記連結された複数段での隣接する段同士における中間ドローラインが、前記第1正浸透膜および前記第2正浸透膜とは異なる第3正浸透膜を有する第3正浸透モジュールを介して連結されており、前記前段における前記中間ドロー溶液から前記後段における前記中間ドロー溶液へ水が移行されるものであり、
前記中間ドローラインのうち、前記連結された複数段での最初の段における中間ドローラインが、前記最初の段における中間ドロー槽と前記第1正浸透モジュールとの間で前記中間ドロー溶液を循環させるものであり、
前記中間ドローラインのうち、前記連結された複数段での最後の段における中間ドローラインが、前記最後の段における中間ドロー槽と前記第2正浸透モジュールとの間で前記中間ドロー溶液を循環させるものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の濃縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィード溶液中の水が移行されてフィード溶液が濃縮される濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海水などから純水を取り出す方法として、正浸透膜を用いた処理方法が知られている(特許文献1参照)。海水などのフィード溶液に対し、該フィード溶液よりも高い浸透圧を有するドロー溶液を用意する。用意したこれらの溶液を正浸透膜を介して接触させることにより、正浸透現象を利用して浸透圧の低い側から浸透圧の高い側へ、すなわち、フィード溶液からドロー溶液へ水(水分子)を移行する方法である。そして、水が移行されたドロー溶液に適宜処理を施し、水を回収する。
【0003】
正浸透現象を利用した技術は、上記のようにフィード溶液から水を取り出すことができるが、これは言い換えればフィード溶液を濃縮することになる。
ここで、ジュースなどの飲料を濃縮する従来の方法として、減圧によってその水分を蒸発させて濃縮する方法(減圧蒸留法)が挙げられる。しかし、この減圧蒸留法では風味(フレーバー)成分も蒸発してしまい、濃縮後に風味が落ちてしまう。
そこで、風味を落とさずに濃縮する方法として、フィード溶液として濃縮対象の飲料を用意し、正浸透現象を利用して水を抜いて濃縮化する方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-188787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような正浸透膜を用いた処理は、例えば、フィード溶液を収容するフィード槽、ドロー溶液を収容するドロー槽、正浸透膜を有する正浸透モジュールを備えた装置を用いて行われる。フィード槽と正浸透モジュールとの間でフィード溶液を循環させ、また、ドロー槽と正浸透モジュールとの間でドロー溶液を循環させつつ、正浸透モジュール内の正浸透膜を介してフィード溶液からドロー溶液へ水を移行させる。
【0006】
この濃縮処理により、フィード溶液から移行してくる水によってドロー溶液が薄まっていく。濃縮処理を続けるには、前述したようにドロー溶液の方がフィード溶液よりも浸透圧が高くなければならないので、薄まったドロー溶液に濃いドロー溶液をつぎ足すなどして、上記の浸透圧の高低関係を維持する必要がある。
【0007】
しかしながら、上記のドロー溶液のつぎ足しはコスト高へとつながってしまう。
正浸透膜モジュールを介しての濃縮において、上記のようにフィード溶液からドロー溶液へ水が移行するが、その一方で、ドロー溶液からフィード溶液へドロー溶液中の溶質がわずかながら移行する。使用する正浸透膜にもよるが、例えば、フィード溶液中の1Lの水が移行するのに対し、逆にドロー溶液中の0.15g程度の溶質がフィード溶液へと移行して拡散する。フィード溶液の種類(例えば飲料など)によっては、その拡散により問題が生じることがあり(味など)、ドロー溶液の種類を厳選(つまり、溶質がフィード溶液中に拡散しても問題のないドロー溶液を選択)する必要が出てくる。このとき、特には、ドロー溶液が比較的高価なものである場合、上記のドロー溶液のつぎ足しはコスト面に大きな影響を与えてしまう。
【0008】
また、別の手段として、逆浸透膜(RO膜)を配置した装置を用いるなどして薄まったドロー溶液を濃い状態に戻すことが挙げられるが、高圧での処理(例えば10MPa程度)となり、太い配管等が必要となり、装置の規模と生産量との兼ね合いによってはコスト面で不利となる。
【0009】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、コスト面で有利な濃縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、フィード溶液中の水が移行されて前記フィード溶液が濃縮される濃縮装置であって、
前記フィード溶液から該フィード溶液よりも高い浸透圧を有する中間ドロー溶液へ、かつ、該中間ドロー溶液から該中間ドロー溶液よりも高い浸透圧を有する最終ドロー溶液へ、前記フィード溶液中の水が順次移行されて前記フィード溶液が濃縮されるものであり、
前記フィード溶液が送液されるフィードラインと、前記中間ドロー溶液が送液される中間ドローラインと、前記中間ドロー溶液を収容する中間ドロー槽と、前記最終ドロー溶液が送液される最終ドローラインと、第1正浸透膜を有する第1正浸透モジュールと、第2正浸透膜を有する第2正浸透モジュールを有しており、
前記中間ドローラインは、前記中間ドロー槽と前記第1正浸透モジュールとの間で前記中間ドロー溶液を循環させるとともに、前記中間ドロー槽と前記第2正浸透モジュールとの間で前記中間ドロー溶液を循環させるものであり、
前記第1正浸透モジュールは、前記フィードラインからの前記フィード溶液が通過するフィード側部屋と、前記中間ドローラインからの前記中間ドロー溶液が通過する中間ドロー側第1部屋をさらに有し、前記第1正浸透膜は前記フィード側部屋と前記中間ドロー側第1部屋の仕切りであり、該第1正浸透膜を介して、前記フィード側部屋中の前記フィード溶液から前記中間ドロー側第1部屋中の前記中間ドロー溶液へ前記フィード溶液中の水が移行されて前記フィード溶液が濃縮されるものであり、
前記第2正浸透モジュールは、前記中間ドローラインからの前記中間ドロー溶液が通過する中間ドロー側第2部屋と、前記最終ドローラインからの前記最終ドロー溶液が通過する最終ドロー側部屋をさらに有し、前記第2正浸透膜は前記中間ドロー側第2部屋と前記最終ドロー側部屋の仕切りであり、該第2正浸透膜を介して、前記中間ドロー側第2部屋中の前記中間ドロー溶液から前記最終ドロー側部屋中の前記最終ドロー溶液へ前記中間ドロー溶液中の水が移行されるものであることを特徴とする濃縮装置を提供する。
【0011】
このような濃縮装置であれば、まず、フィード溶液においては、その中の水を移行して濃縮することができる。この際、例えば飲料のフレーバー成分なども残して濃縮することができ、減圧蒸留法などよりも品質良く濃縮可能である。また濃縮後は重量が軽くなり、運送費を安くすることができる。
次に中間ドロー溶液においては、フィード溶液から一旦水が移行されてくるものの、その水は最終ドロー溶液へと移行するため、水により薄まるのを防ぐことができる。これにより、中間ドロー溶液に対して、濃い状態に戻すための従来の処理(つぎ足しや、RO膜による処理)をなくす、あるいは頻度を減らすことができ、コストや手間の低減へとつながる。中間ドロー溶液として比較的高価なものを用いた場合に特に有効である。
また、最終ドロー溶液について、第1、第2正浸透膜を介して、その溶質がフィード溶液へと移行して拡散し得るが、その量は極わずかであるためフィード溶液の品質への影響を極めて小さくすることができる。したがって最終ドロー溶液の種類の選択幅が広がり、例えば用意しやすい低価格のものを選択することも可能になる。
これらの点から、本発明の濃縮装置は、従来法と同等以上の濃縮ができるとともに、手間もかからずコスト面で極めて有効である。
【0012】
また、前記第1正浸透モジュールおよび前記第2正浸透モジュールは、各々、外箱と該外箱内を通る中空糸を有しており、
前記第1正浸透膜および前記第2正浸透膜は前記中空糸であり、
前記フィード側部屋および前記中間ドロー側第2部屋は前記中空糸内の空間であり、
前記中間ドロー側第1部屋および前記最終ドロー側部屋は前記外箱内かつ前記中空糸外の空間とすることができる。
【0013】
このような中空糸を有するものであれば、効率良くフィード溶液の濃縮化を行うことができる。
【0014】
また、前記フィード溶液を収容するフィード槽と、前記最終ドロー溶液を収容する最終ドロー槽をさらに有し、
前記フィードラインは、前記フィード槽と前記第1正浸透モジュールとの間で前記フィード溶液を循環させるものであり、
前記最終ドローラインは、前記最終ドロー槽と前記第2正浸透モジュールとの間で前記最終ドロー溶液を循環させるものとすることができる。
【0015】
このようなものであれば、第1正浸透モジュールに一度通過させるだけ(1パス)では濃縮化が不十分なフィード溶液の場合でも、循環により繰り返して中間ドロー溶液(さらには最終ドロー溶液)への水の移行を行うことができるので、十分に濃縮化を行うことができる。
また、最終ドロー溶液を循環可能なため、1パスの場合に比べて用意する最終ドロー溶液の液量を減らすことができ、コストを削減することができる。
【0016】
また、前記フィード溶液は、食品、薬液、医薬品、香料、染料、飲料、サプリメント、毒物、メッキ液および排水のうちのいずれかのものとすることができる。
【0017】
本発明は特にこれらの濃縮化に適した装置である。
【0018】
また、前記中間ドロー溶液は、塩化ナトリウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液、液糖、エチレンオキシドプロピレンオキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール、クエン酸溶液、アスコルビン酸溶液、グルタミン酸溶液、ポリスチレンスルホン酸溶液のうちのいずれかのものとすることができる。
【0019】
また、前記最終ドロー溶液は、塩化ナトリウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液、液糖、エチレンオキシドプロピレンオキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール、クエン酸溶液、アスコルビン酸溶液、グルタミン酸溶液、ポリスチレンスルホン酸溶液のうちのいずれかのものとすることができる。
【0020】
これらは、フィード溶液の濃縮化に用いる中間ドロー溶液や最終ドロー溶液として特に適している。
【0021】
また、前記中間ドローラインは2つのラインを有しており、
一方のラインが、前記中間ドロー槽と前記第1正浸透モジュールとの間で前記中間ドロー溶液を循環させるものであり、
他方のラインが、前記中間ドロー槽と前記第2正浸透モジュールとの間で前記中間ドロー溶液を循環させるものとすることができる。
または、前記中間ドローラインは1つのラインを有しており、
該1つのラインが、前記中間ドロー槽と、前記第1正浸透モジュールと、前記第2正浸透モジュールとの間で前記中間ドロー溶液を循環させるものとすることができる。
【0022】
後者のように中間ドローラインとして1つのラインを有するタイプとすれば、装置としてより単純化した構成とすることができる。
また、前者のように中間ドローラインとして2つのラインを有するタイプとすれば、各ラインにおける中間ドロー溶液の循環をよりスムーズに行うことができる。
【0023】
あるいは、前記中間ドロー溶液、前記中間ドローライン、および前記中間ドロー槽の組み合わせが、複数段、順次連結されたものであり、
前記中間ドロー溶液は、前記連結された複数段において、前段よりも後段の方が高い浸透圧を有するものであり、
前記中間ドローラインのうち、前記連結された複数段での隣接する段同士における中間ドローラインが、前記第1正浸透膜および前記第2正浸透膜とは異なる第3正浸透膜を有する第3正浸透モジュールを介して連結されており、前記前段における前記中間ドロー溶液から前記後段における前記中間ドロー溶液へ水が移行されるものであり、
前記中間ドローラインのうち、前記連結された複数段での最初の段における中間ドローラインが、前記最初の段における中間ドロー槽と前記第1正浸透モジュールとの間で前記中間ドロー溶液を循環させるものであり、
前記中間ドローラインのうち、前記連結された複数段での最後の段における中間ドローラインが、前記最後の段における中間ドロー槽と前記第2正浸透モジュールとの間で前記中間ドロー溶液を循環させるものとすることができる。
【0024】
中間ドロー溶液等がこのような複数段からなるものであれば、最終ドロー溶液中の溶質がフィード溶液へ移行する量をより一層少なくすることができ、フィード溶液への品質の影響をさらに小さくすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の濃縮装置であれば、従来よりもコストを低減しつつ、従来法と同等以上の品質でフィード溶液の濃縮化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の濃縮装置の一例を示す概略図である。
図2】第1正浸透モジュールの一例を示す概略図である。
図3】スパイラル膜の内部構造の一例を示す概略図である。
図4】本発明の濃縮装置の別の一例(中間ドローラインが1つ)を示す概略図である。
図5】本発明の濃縮装置の別の一例(各段における中間ドローラインが2つ)を示す概略図である。
図6】本発明の濃縮装置の別の一例(各段における中間ドローラインが1つ)を示す概略図である。
図7】実施例における各溶液の液量変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について図面を参照して実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1に本発明の濃縮装置の概略の一例を示す。
本発明の濃縮装置1は、濃縮対象のフィード溶液の他、中間ドロー溶液に加えて最終ドロー溶液を有しており、フィード溶液から該フィード溶液よりも高い浸透圧を有する中間ドロー溶液へ、かつ、中間ドロー溶液から該中間ドロー溶液よりも高い浸透圧を有する最終ドロー溶液へ、フィード溶液中の水が順次移行されてフィード溶液が濃縮される装置である。図1に示す例では、フィード溶液を収容するフィード槽2と、中間ドロー溶液を収容する中間ドロー槽3と、最終ドロー溶液を収容する最終ドロー槽4を有している。また、第1正浸透膜5を有する第1正浸透モジュール6(以下、単に第1モジュールとも言う)、第2正浸透膜7を有する第2正浸透モジュール8(以下、単に第2モジュールとも言う)を有している。
【0028】
そして、フィード槽2と第1モジュール6を結ぶフィードライン9が設けられており、フィード槽2中のフィード溶液が第1モジュール6との間で循環して送液可能になっている。
また、中間ドロー溶液を送液するための中間ドローライン10が設けられている。中間ドローライン10は、中間ドロー槽3と第1モジュール6との間で中間ドロー溶液を循環させるとともに、中間ドロー槽3と第2モジュール8との間で中間ドロー溶液を循環させるものであればよく、ここではその一例として2つのライン(中間ドローライン10A、10B)で構成されているものを挙げる。中間ドローライン10Aは中間ドロー槽3と第1モジュール6を結ぶラインであり、中間ドロー槽3中の中間ドロー溶液が第1モジュール6との間で循環して送液可能になっている。一方、中間ドローライン10Bは中間ドロー槽3と第2モジュール8を結ぶラインであり、中間ドロー槽3中の中間ドロー溶液が第2モジュール8との間で循環して送液可能になっている。
さらに、最終ドロー槽4と第2モジュール8を結ぶ最終ドローライン11が設けられており、最終ドロー槽4中の最終ドロー溶液が第2モジュール8との間で循環して送液可能になっている。
各溶液の送液のため、各ラインにはポンプを設けることができる。
【0029】
ここで第1モジュール6について図2を参照して説明する。
第1モジュール6は、外箱12と、第1正浸透膜5として外箱12の内部を通る中空糸13を有している。中空糸13は第1モジュール6内を貫通しており、第1モジュール6の内部は、第1正浸透膜5(中空糸13)を仕切りとして、空間的に、中空糸13内の空間(フィード側部屋)と、外箱12内かつ中空糸13外の空間(中間ドロー側第1部屋)とに分かれている。
このフィード側部屋にはフィードライン9から送液されてくるフィード溶液が通過して排出可能になっている。また、中間ドロー側第1部屋には、中間ドローライン10Aから送液されてくる中間ドロー溶液が通過して排出可能になっている。
そして、第1正浸透膜5(中空糸13)を介して、フィード溶液から中間ドロー溶液へと水が移行されるようになっている。
【0030】
また、第2モジュール8も、例えば、第1モジュール6と基本的に同様の構造とすることができる。すなわち、図2において、第1正浸透膜5、中空糸13内の空間であるフィード側部屋、外箱12内かつ中空糸13外の空間である中間ドロー側第1部屋を、それぞれ、第2正浸透膜7、中間ドロー側第2部屋、最終ドロー側部屋に置き換えたものとすることができる。
そして、第2正浸透膜7(中空糸13)を介して、中間ドロー溶液から最終ドロー溶液へと水が移行されるようになっている。
【0031】
従来の濃縮装置では単にフィード溶液とドロー溶液の組み合わせ(フィード溶液用のライン1つとドロー溶液用のライン1つを1つの正浸透膜で連結)であったが、本発明の濃縮装置では、フィード溶液、中間ドロー溶液、最終ドロー溶液の組み合わせからなっている。この構成の違いがもたらす効果等について、以下に説明する。
まず、フィード溶液を正浸透膜(第1、第2正浸透膜6、8)を介して、中間ドロー溶液、さらには最終ドロー溶液へと、フィード溶液中の水を順次移行することができ、フィード溶液の濃縮化を行うことができる。特にフィード溶液が飲料など、フレーバー成分を有するものである場合、従来の減圧蒸留法とは異なり、そのフレーバー成分を濃縮物に残すことができ、品質良く濃縮することができる。
【0032】
また中間ドロー溶液では、第1正浸透膜5を介して移行してくるフィード溶液中の水は、最終的に、第2正浸透膜7を介して最終ドロー溶液へと移行される。このため、濃縮装置1を稼働し始めると、フィード溶液からの水の移行によって一旦中間ドロー溶液の液量が増えて溶質濃度が薄まるものの、移行されてきた水は結局のところ最終ドロー溶液へと移行し、しばらくすると中間ドロー溶液の液量は初期状態と同程度になって安定し、溶質濃度も初期状態と同程度に落ち着くことになる。すなわち、フィード溶液の濃縮を行っても、中間ドロー溶液の濃度は初期状態に比べて変化していないことになる。
【0033】
従来の濃縮装置では、上記のようにフィード溶液とドロー溶液の組み合わせでしかなかったため、そのドロー溶液がフィード溶液からの水の移行により薄まるため、フィード溶液の濃縮化後は、ドロー溶液のつぎ足しやRO膜による処理でドロー溶液を濃くし直す必要があった。しかも、フィード溶液と正浸透膜を介して接するドロー溶液としては、ドロー溶液中の溶質もわずかではあるがフィード溶液に移行して品質に影響を与えるため、それを考慮した上で厳選し、その結果比較的高価なものを用意しなければならない場合もあった。そのような場合、上記のドロー溶液を濃くし直す作業は手間がかかる上にコスト面で不利であった。
【0034】
しかしながら本発明であれば、フィード溶液と第1正浸透膜と接する中間ドロー溶液は、フィード溶液の濃縮化を行っても初期状態と変わらない状態とすることができるので、従来のつぎ足しやRO膜による処理を不要とすることができる。または、その処理を行うとしても頻度を著しく減らすことができる。そのため、手間やコストを大幅に削減することが可能である。
【0035】
また最終ドロー溶液に関しては、中間ドロー溶液とは異なり、最終的に水が移行してくるものであり、フィード溶液の濃縮化に伴い、液量が増していき、溶質濃度が低くなっていく。なお、最終ドロー溶液中の溶質も、第2正浸透膜7、そして第1正浸透膜5を介してフィード溶液に移行し得る。しかしながらその量は極わずかであるため、フィード溶液の品質へ与える影響は極めて小さい。これらのことを考慮し、最終ドロー溶液としては、例えば、簡単に低コストで、用意および廃棄処理できるものを選択することができる。したがって、この面でも低コスト化を図ることができる。
【0036】
なお、フィード溶液の例としては、浸透圧がさほど高くなく、熱をかけずに濃縮したいものが挙げられる。例えば、食品、薬液、医薬品、香料、染料、飲料、サプリメント、毒物、メッキ液および排水などが挙げられるが、水が含まれるものであればよく、これらに限定されない。
飲料としては、果汁、ジュース、コーヒー、茶飲料などが挙げられる。
食品としては、スープ、出汁、牛乳、豆乳などの液体食品が挙げられる。
薬液としては、水洗で薄まった化学研磨液、酸性・アルカリ性の水溶液、界面活性剤などが挙げられる。
医薬品としては、水を使用して抽出した漢方薬、水溶液中で合成した医薬品などが挙げられる。
香料としては、水を使用して抽出した花などの天然物由来の香料などが挙げられる。
染料としては、水系で水洗により薄まった各種染料などが挙げられる。
サプリメントとしては、水を使用して抽出した天然物由来の成分、アスタキサンチン酸、コラーゲン、ビタミン類などが挙げられる。
毒物としては、シアン化ナトリウム水溶液、ストリキニーネ水溶液、ニコチン水溶液などが挙げられる。
メッキ液としては、金、パラジウム、白金、銀などの貴金属を含む、水で薄まったメッキ液などが挙げられる。
排水としては、高COD含有排水、銅、亜鉛、ニッケルなどの金属を含む排水、シアン化合物やジオキサンなどの有害物を含む排水などが挙げられる。
【0037】
また中間ドロー溶液と最終ドロー溶液については、その種類は限定されず、適宜決定することができる。例えば互いに異なるものとすることができる。特に、中間ドロー溶液はその溶質がフィード溶液に移行してもさほど品質に影響を与えないものを選ぶことができ、最終ドロー溶液は、前述したようにフィード溶液にまで溶質が移行するのが極わずかであることを考慮すると、中間ドロー溶液よりも浸透圧を容易に高くでき、かつ、低コストで簡便に用意できるものを選ぶことができる。フィード溶液との浸透圧の大小関係(最終ドロー溶液>中間ドロー溶液>フィード溶液)も成り立つように考慮しつつ選択すれば良い。
いずれも、例えば、塩化ナトリウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液などの無機塩水溶液、液糖、エチレンオキシドプロピレンオキシド、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの浸透圧を有する有機物水溶液、クエン酸溶液、アスコルビン酸溶液、グルタミン酸溶液などの有機酸水溶液、ポリスチレンスルホン酸溶液などの高分子電解質水溶液のうちのいずれかとすることができるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
フィード溶液、中間ドロー溶液、最終ドロー溶液の三者の組み合わせの例としては、[茶飲料、アスコルビン酸溶液、塩化ナトリウム水溶液]、[オレンジジュース、液糖、塩化カルシウム水溶液]、[スープ、グルタミン酸水溶液、塩化マグネシウム水溶液]などが挙げられるが、当然これらの組み合わせに限定されるものではない。
【0039】
なお、図1に示す例では、前述したようにフィード槽2、最終ドロー槽4の配置に対し、これらの槽と第1、第2モジュール6、8との間で各溶液が循環可能な形態でフィードライン9、最終ドローライン11が設けられている。しかしながら本発明はこれに限定されず、フィード槽2、最終ドロー槽4は設けず、単に各ライン9、11のみ、それぞれ第1、第2モジュール6、8に対して配置し、循環ではなく1パスで各溶液を第1、第2モジュール6、8に送液する形態とすることも可能である。各溶液の種類、浸透圧、液量などに応じて、全て1パスの形態とするか、一部あるいは全てを循環の形態とするか、適宜、目的も考慮して決定することができる。
【0040】
また、第1、第2正浸透モジュール6、8中の第1、第2正浸透膜5、7として中空糸13を有する例を示したが特に限定されない。
例えば、中空糸よりも口径が大きいチューブラ膜からなるものとすることができる。あるいは、平膜からなるものや、平膜を用いたスパイラル膜からなるものとすることができる。
平膜からなるものは、例えば平膜を仕切りにして外箱内を2つの空間(フィード側部屋および中間ドロー側第1部屋、または、中間ドロー側第2部屋および最終ドロー側部屋)に分けたものとすることができる。
【0041】
また、従来公開されているスパイラル膜の図を用いてスパイラル膜について説明する。図3はスパイラル膜の内部構造の一例である。ここでは第1正浸透モジュール6の例として説明するが、溶液の種類と通過箇所の点を除いて、第2正浸透モジュール8の場合も基本的に同様の構成とすることができる。
このスパイラル膜15は、第1正浸透膜である平膜16、フィード溶液が通過するメッシュ型のフィードスペーサ17(フィード側部屋)、平膜16、中間ドロー溶液が通過するメッシュ型のドロースペーサ18(中間ドロー側第1部屋)を順に重ね合わせ、それを中間ドロー溶液が通過する中心管19にのり巻きのようにスパイラル状に巻いたものである。この巻いた状態で外箱(不図示)内に収容されている。
【0042】
フィード溶液は、スパイラル膜15の断面周辺部の平膜16同士の間のフィードスペーサ17に送液されて通過する。このとき、フィードスペーサ17内のフィード溶液中の水が浸透圧により平膜16を介してドロースペーサ18内の中間ドロー溶液へ移行する。そして、濃縮されたフィード溶液が、スパイラル膜15の反対側の断面周辺部から出ていくようになっている。
【0043】
またスパイラル膜15の中心部に位置する中心管19には孔が設けられており、中間ドロー溶液の入口から送液された中間ドロー溶液を孔からドロースペーサ18に拡散供給する役割と、拡散後にフィード溶液から中間ドロー溶液に移行してきた水を含む中間ドロー溶液をドロースペーサ18から集める役目を持つ。そのため中心管19は、その中央付近で管内がセパレータ20で塞がれている。中心管19においてセパレータ20よりも中間ドロー溶液の入口側では、中間ドロー溶液は中心管19からドロースペーサ18内へ拡散され、そこでは浸透圧により平膜16を介してフィード溶液から水が中間ドロー溶液に移行する。そして中心管においてセパレータ20よりも中間ドロー溶液の出口側では、ドロースペーサ18内に一旦拡散した中間ドロー溶液がフィード溶液からの水とともに中心管19に集まり、最終的に中間ドロー溶液の出口から出ていくようになっている。
【0044】
ところで、図1では中間ドローラインとして2つの中間ドローライン10A、10Bからなるものを例に挙げたが、この場合、中間ドロー槽3と第1モジュール6との間で、また、中間ドロー槽3と第2モジュール8との間で、よりスムーズに循環しやすい。
この図1の中間ドローラインの例とは別態様の濃縮装置31を図4に示す。中間ドローラインとして1つのラインを有する場合である。1つの中間ドローライン10が、中間ドロー槽3と、第1モジュール6と、第2モジュール8とをまとめて結んでおり、それら三者の間で中間ドロー溶液を循環させるものである。
このようなものであれば、特にライン本数が減り、装置としてより単純な構造となる。なお、第1モジュール6でフィード溶液から移行してくる水の量と、第2モジュール8で最終ドロー溶液へ移行する水の量とのバランスを考慮し、中間ドロー溶液が中間ドローライン10内でスムーズに流れるように、流量を調整可能な設備をさらに設けても良い。
【0045】
さらに別の態様の濃縮装置41の例を図5に示す。図1の例において、中間ドロー溶液、中間ドローライン、中間ドロー槽の組み合わせを複数段設け、順次連結したものである。ここでは3段(最初の段、2番目の段、最後の段)からなる例を挙げているが、これに限定されず、2段、あるいは3段よりも段数を多くしたものとすることもできる。
図5の3段構成において、隣接する段同士を連結するものとして、第1正浸透膜5や第2正浸透膜7とは異なる第3正浸透膜32を有する第3正浸透モジュール33(以下、単に第3モジュールとも言う)が配置されている。
なお、ここでいう「異なる」第3正浸透膜とは、役割(どの溶液からどの溶液へ水を移行させるためのものか)が異なるというだけであって、例えば使用する正浸透膜の製品の同一性を否定するものではない。第1~第3正浸透膜として、全て同じ製品のものを用いることもできるし、互いに異なる製品のものを用いることもできる。
【0046】
各段における中間ドロー溶液は前段よりも後段の方がより高い浸透圧を有するものとなっている。すなわち、浸透圧の大小に関して、最初の段<2番目の段<最後の段、という関係になっている。
また図5に示すように、中間ドローライン10として、6つのライン(段ごとに述べると、中間ドローライン10Pと10Q、10Rと10S、10Tと10U)、中間ドロー槽3として、3つの槽(段ごとに述べると、中間ドロー槽3P、3Q、3R)、第3モジュール33として、2つのモジュール(最初の段と2番目の段を連結する第3モジュール33P、2番目の段と最後の段を連結する第3モジュール33Q)が配置されている。
そして、最初の段の中間ドローライン10Pにより、最初の段の中間ドロー槽3Pと第1モジュール6との間で中間ドロー溶液が循環可能になっている。
また、最後の段の中間ドローライン10Uにより、最後の段の中間ドロー槽3Rと第2モジュール8との間で中間ドロー溶液が循環可能になっている。
【0047】
このような構成により、全体的に見ると、中間ドロー槽3と第1モジュール6との間、および、中間ドロー槽3と第2モジュール8との間において、中間ドロー溶液が循環している。そして、第1モジュール6において、フィード溶液中の水が中間ドロー溶液へと移行してフィード溶液が濃縮化し、さらに第3モジュール33を介して各段をその水が移行し、最終的には第2モジュール8において、その水が中間ドロー溶液から最終ドロー溶液へと移行するようになっている。
一方で、最終ドロー溶液中の溶質は、フィード溶液へと移行するにしても、複数段の中間ドロー溶液を介することになるので、フィード溶液への移行量をより一層少なくすることができる。このため、フィード溶液の品質に与える影響をより小さなものとすることができる。装置の規模、用意する中間ドロー溶液の量等に応じて、適宜段数を決定することができる。
【0048】
なお、図5では各段における中間ドローラインが図1のように2つの例を示したが、この他、図6の別の濃縮装置51のように、各段における中間ドローラインが図4のように1つのラインからなる構成とすることも可能である。各段における中間ドロー溶液の流量バランスを調整可能であれば、このように各段におけるライン数を減らして構成の簡便化を図ることができる。
【実施例
【0049】
以下、本発明の実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例)
図1に示す本発明の濃縮装置1を用意して室温20℃にて茶飲料の濃縮化を行った。
第1、第2正浸透モジュールとしてAQUAPORIN社製:正浸透モジュールHFFO2、フィード溶液として茶飲料、中間ドロー溶液としてアスコルビン酸溶液、最終ドロー溶液として食塩水(塩化ナトリウム水溶液)を用意した。濃度(モル濃度)は各々、原液、1.3mol/L、2mol/L、であった。
浸透圧は、水中に溶けている分子やイオンの数の総量に比例することが知られている。溶液の分子、イオン濃度を考えた場合、例えば1molの食塩(NaCl)は水1Lに溶かすとほぼ100%解離してNaとClの2つのイオンになるため、水中での分子、イオン濃度は2mol/Lであり、その時の浸透圧はおおよそ4.9MPaとなる。
実施例に使用した溶液のそれぞれの浸透圧を、食塩(NaCl)に換算した形にして考えてみる。茶飲料は純水にお茶の葉から成分を抽出して茶飲料とする。茶飲料中の塩類の合計は、茶飲料メーカーの資料によると、食塩(NaCl)相当で0.03g程度である。これは食塩の5.1×10-4mol/Lというきわめて薄い溶液であり、水中での分子、イオン濃度は1.0×10-3mol/Lとなる。アスコルビン酸の1.3mol/Lの場合、アスコルビン酸の解離定数がpKa=4.17であることから、おおよそ水中での分子、イオン濃度は1.4mol/Lとなる。食塩水2mol/Lの水中での分子、イオン濃度は4mol/Lである。
これらから浸透圧を比較すると、
茶飲料<アスコルビン酸溶液1.3mol/L<食塩水2mol/L、であることがわかる。この3種類の溶液で茶飲料の濃縮化を行った。
【0050】
なお、装置稼働中(濃縮化中)、各溶液はいずれも図1に示すように各々のラインで循環させた。
フィードライン9でのフィード溶液の第1正浸透モジュール6での入口流量は30~38L/h、フィード溶液の出口流量は15~25L/h、中間ドローライン10Aの中間ドロー溶液の第1正浸透モジュール6での入口流量は15~20L/h、中間ドロー溶液の出口流量は20~30L/h、中間ドローライン10Bの中間ドロー溶液の第2正浸透モジュール8での入口流量は25~40L/h、中間ドロー溶液の出口流量は、15~30L/h、最終ドローライン11での最終ドロー溶液の第2正浸透モジュール8での入口流量は15~30L/h、最終ドロー溶液の出口流量は25~32L/hであった。
また、最初に用意したフィード溶液、中間ドロー溶液、最終ドロー溶液の液量は、各々5L、3L、5Lであり、2分毎に22分間のそれぞれの液量を計測した。
【0051】
図7に、計測した各溶液の液量変化のグラフを示す。横軸が稼働時間(分)、縦軸が液量(L)である。
茶飲料T1は徐々に液量が減少したことがわかる。最終的に茶飲料T1は1.2L程度になった。これは茶飲料中の水が移行して濃縮化されたためである。
また、アスコルビン酸溶液T2の液量は0~4分においていったん上昇して下がった後、当初の3L程度で安定した。茶飲料からの水の移行により一時的に液量が増加した後、移行してきた水の分だけ食塩水へと移行して当初の液量程度に下がり、その後は茶飲料からの水の移行量と食塩水への水の移行量とのバランスが取れ、当初の液量程度に落ち着いたものである。
例えばほぼ中間地点、実験開始後の10分後のそれぞれの流量はフィードライン9でのフィード溶液の入口流量は30L/h、フィード溶液の出口流量は15L/h、中間ドローライン10Aの中間ドロー溶液の入口流量は30L/h、中間ドロー溶液の出口流量は15L/h、中間ドローライン10Bの中間ドロー溶液の入口流量は25L/h、中間ドロー溶液の出口流量は、15L/h、最終ドローライン11での最終ドロー溶液の入口流量は15L/h、最終ドロー溶液の出口流量は25L/hであった。
この瞬間においてフィード溶液から中間ドロー溶液ヘは15L/hの流速で純水が移動し、中間ドロー溶液から最終ドロー溶液には10L/hの流速で純水が移動したことがわかる。
この結果、食塩水Tの液量は徐々に増加した。茶飲料中の水がアスコルビン酸溶液を介して食塩水へ移行してきたためである。
【0052】
濃縮後の茶飲料に水を足して元に戻したところ、風味等、品質面で優れたものであった。また、食塩水からのアスコルビン酸溶液を介しての塩化ナトリウムの移行も極めて少なかったと考えられる。
また、濃縮化にあたり、茶飲料から水が移行してくる中間ドロー溶液として、比較的高価なアスコルビン酸溶液を用いたが、茶飲料の濃縮化後にアスコルビン酸溶液の濃度測定を行ったところ、当初の値とほぼ変わっていなかった。そのため、次の別の茶飲料の濃縮化に向けて、濃くするためのつぎ足しを行う必要がなかった。このように従来のようなつぎ足しが必要ないため、コストを大幅に削減することができた。
また、食塩水は液量が増えて濃度も薄まったが、次の別の茶飲料の濃縮化に向けて、液量の調整および安価な食塩を足すだけで良いので、コスト的に問題はなかった。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0054】
1、31、41、51…本発明の濃縮装置、 2…フィード槽、
3、3P~3R…中間ドロー槽、 4…最終ドロー槽、
5…第1正浸透膜、 6…第1正浸透モジュール、
7…第2正浸透膜、 8…第2正浸透モジュール、
9…フィードライン、 10、10A、10B、10P~10U…中間ドローライン、
11…最終ドローライン、 12…外箱、 13…中空糸、
15…スパイラル膜、 16…平膜、 17…フィードスペーサ、
18…ドロースペーサ 19…中心管、 20…セパレータ、
32…第3正浸透膜、 33、33P、33Q…第3正浸透モジュール。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7