(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】吸音構造
(51)【国際特許分類】
G10K 11/168 20060101AFI20240329BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20240329BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20240329BHJP
G10K 11/165 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
G10K11/168
E04B1/82 M
G10K11/16 120
G10K11/165
(21)【出願番号】P 2020073670
(22)【出願日】2020-04-16
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲鶴▼羽 琢元
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐生
【審査官】中嶋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-110468(JP,A)
【文献】特開2005-226361(JP,A)
【文献】特開平05-080775(JP,A)
【文献】特開平06-017491(JP,A)
【文献】特開2010-111347(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0132999(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/168
E04B 1/82
G10K 11/16
G10K 11/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体を集合して形成されると共に間隔を空けて配置された複数の粉粒体層と、
前記粉粒体層の間に配置され、前記粉粒体層と吸音周波数が異なる吸音材と、
を備え、
前記粉粒体層は、
壁体から張り出した保持部材に収容されている、
吸音構造。
【請求項2】
前記吸音材は繊維系多孔質材である、
請求項1に記載の吸音構造。
【請求項3】
前記吸音材は前記粉粒体と異なる大きさ及びかさ比重の異径粉粒体を集合して形成された異径粉粒体層である、
請求項1に記載の吸音構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、対向する一対の板材間に吸音材を充填した吸音パネルが示されている。この吸音パネルには、吸音材として粒状体が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の吸音パネルでは、吸音材として粒状体(粉粒体層)のみを用いているため、吸音できる音の周波数が限定的である。すなわち、吸音性能が限定的である。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、粉粒体層を用いた吸音構造において吸音性能を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の吸音構造は、粉粒体を集合して形成されると共に間隔を空けて配置された複数の粉粒体層と、前記粉粒体層の間に配置され、前記粉粒体層と吸音周波数が異なる吸音材と、を備え、前記粉粒体層は、壁体から張り出した保持部材に収容されている。
【0007】
請求項1の吸音構造によると、粉粒体を集合して形成された粉粒体層の間に、吸音材が配置されている。つまり、この吸音構造は、粉粒体層と吸音材とを含んで構成されている。粉粒体は音によって振動し、吸音性能を発揮する。このとき、粉粒体層は、特定の周波数において高い吸音性能を発揮する。一方で、吸音材も、特定の周波数において高い吸音性能を発揮する。
【0008】
これにより、例えば粉粒体層のみで構成された吸音構造と比較して、吸音できる周波数領域が広い。したがって、粉粒体層のみで構成された吸音構造及び吸音材のみで構成された吸音構造より、吸音性能が高い。
【0009】
請求項2の吸音構造は、請求項1の吸音構造において、前記吸音材は繊維系多孔質材である。
【0010】
請求項2の吸音構造によると、吸音材が繊維系多孔質材で形成されている。このため、比較的高い周波数の音を吸音できる。
【0011】
請求項3の吸音構造は、請求項1の吸音構造において、前記吸音材は前記粉粒体と異なる大きさ及びかさ比重の異径粉粒体を集合して形成された異径粉粒体層である。
【0012】
請求項3の吸音構造では、2つの粉粒体層(粉粒体層及び異径粉粒体層)によって吸音性能が発揮される。粉粒体層が高い吸音性能を発揮できる周波数は、粉粒体層を構成する粉粒体の大きさ及びかさ比重に依存する。このため、大きさ及びかさ比重の異なる粉粒体(粉粒体及び異径粉粒体)によって形成された2つの粉粒体層(粉粒体層及び異径粉粒体層)は、それぞれ高い吸音性能を発揮できる周波数が異なる。これにより、この吸音構造は、例えば1種類の粉粒体のみで構成された吸音構造と比較して、吸音できる周波数領域が広い。
【0013】
一態様の吸音構造は、前記粉粒体層は、壁体から張り出した保持部材に収容されている。
【0014】
一態様の吸音構造では、粉粒体層が壁体から張り出した保持部材に収容されている。このため、吸音材は、粉粒体層の間に差し込むだけで粉粒体層の間に保持できる。すなわち、吸音材を粉粒体層の間に保持するための特別な構成が必要ない。これにより、吸音構造の構成を簡略化できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、粉粒体層を用いた吸音構造において吸音性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る吸音構造を示す立面図である。
【
図2】(A)は本発明の実施形態に係る吸音構造において、粒子が袋体によって包装されて形成された粉粒体層を、保持部材へ収容している状態を示す斜視図であり、(B)は保持部材の形状の変形例を示す斜視図であり、(C)は保持部材の形状の変形例及び粒子を袋体によって包装しないで粉粒体層を形成する変形例を示す斜視図である。
【
図3】(A)は本発明の実施形態に係る吸音構造において、壁体に保持された粉粒体層の間に吸音材を差し込んでいる状態を示す断面図であり、(B)は壁体に保持された粉粒体層及び粉粒体層の間に差し込まれた吸音材の表面に、さらに吸音材を配置している状態を示す断面図である。
【
図4】シリカを用いて形成した粉粒体層及びグラウスールを用いて形成した吸音材それぞれの吸音特性を示すグラフである。
【
図5】(A)は吸音構造をパネル状に形成した変形例において、ライナ間の空間をパネルの面内方向に区画した例を示す平面図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面図である。
【
図6】(A)は吸音構造をパネル状に形成した変形例において、ライナ間の空間をパネルの面内方向に格子状に区画した例を示す平面図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面図であり、(C)は(A)におけるC-C線断面図である。
【
図7】(A)は吸音構造をパネル状に形成した変形例において、ライナ間の空間をパネルの面内方向と交わる方向に区画した例を示す平面図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る吸音構造について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0018】
(吸音構造)
図1には、本発明の実施形態に係る吸音構造の一例が示されている。この吸音構造は、2つの空間V1、V2を区画する壁体10の表面の少なくとも一部を覆っている。この吸音構造は、空間V1に存在する音源Oから発生した音S1を吸収する(吸音)目的と、壁体10を透過して空間V2へ伝搬する音S2を小さくする(遮音)目的で設けられる。
【0019】
なお、
図1においては、図示を簡略化するため、音S1の伝搬方向として、壁体10に直交する方向のみを示している。音S1は、音源Oの指向性に応じて、壁体10に直交する方向以外の方向にも伝搬するものとする。同様に音S2も、壁体10に直交する方向以外の方向にも伝搬するものとする。
【0020】
壁体10を形成する素材及び壁体10が配置される場所は特に限定されるものではない。例えば壁体10は、コンクリート等の湿式材料を用いた構造躯体、戸境壁又は間仕切壁等とすることができる。
【0021】
また、壁体10は、石膏ボード等のパネル材、ランナー、スタッド等の乾式材料を用いた間仕切壁、雑壁又は可動壁等とすることができる。さらに、石膏ボードや鋼板、アルミ板等のパネル材を、壁体10としてもよい。
【0022】
本発明の実施形態に係る吸音構造は、粉粒体層20と、吸音材30と、を備えて形成されている。粉粒体層20は、壁体10から張り出した保持部材40に収容されている。
【0023】
(粉粒体層)
粉粒体層20は、複数の粉粒体(以下、粒子20Aと称す)を集合することによって構成されている。粒子20Aは、シリカ(無水ケイ酸)を用いて形成され、粒径が200μm以下、かさ比重が0.2以下とされている。粉粒体層20は、粒子20Aが振動することにより、吸音性能を発現する。
【0024】
なお、粒子20Aとして用いる材料としては、シリカの他、タルク(含水珪酸マグネシウム)、中空ガラスビーズ、ケイ酸カルシウムやカーボン等を用いることができる。
【0025】
図2(A)に示すように、粉粒体層20は、袋体22によって包装されている。袋体22は、音S1によって粒子20Aが振動できるように、粉粒体層20を被覆している。換言すると、袋体22は、粒子20Aが動ける程度に粉粒体層20を被覆しており、粉粒体層20に過剰な圧縮力を与えていない。袋体22は、例えば厚さが0.1mm程度のポリ塩化ビニル(PVC)で構成されている。
【0026】
(保持部材)
粉粒体層20を収容する保持部材40は、軽量鉄骨(LGS:Light Gauge Steel)を用いて形成された枠材である。保持部材40としては、鋼製のチャンネル材、アルミの押出材、木製の造作材等を用いてもよい。
【0027】
保持部材40は、断面視(
図1参照)において上方が開放されたU字型の形状とされ、壁体10にビスを用いて固定されている。保持部材は壁体10の面内方向(かつ横方向)に沿う長尺部材であり、長手方向の端部が開放して形成されている。
【0028】
なお、保持部材40の壁体10に対する固定方法としては、ビス止めの他、アングル材を保持ステーとして用いる方法、接着剤を用いる方法等を採用することができる。保持部材40を壁体10へ固定した後、保持部材40へ、袋体22で包装された粉粒体層20を収容する。これにより、粉粒体層20が壁体10の表面に保持される。
【0029】
なお、保持部材40へ粉粒体層20を収容した後、保持部材40を壁体10へ固定することによっても、粉粒体層20が壁体10の表面に保持される。この場合、保持部材40の壁体10への固定方法は、ビス止め以外の方法を適宜選択すればよい。
【0030】
なお、保持部材40に収容される袋体22は1つに限らない。袋体22の大きさに応じて、または保持部材40の大きさに応じて、複数の袋体22を保持部材40に収容することができる。
【0031】
図1に示すように、保持部材40は、壁体10の上下方向に、所定の間隔を空けて複数配置されている。これにより、複数の粉粒体層20が、壁体10の表面において、上下方向に所定の間隔を空けて配置される。
【0032】
なお、本実施形態における保持部材40は断面視でU字型の形状とされているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば
図2(B)に示す保持部材42のように、断面視でL字型の形状としてもよい。このような形状でも、袋体22によって包装された粉粒体層20を保持することができる。
【0033】
また、
図2(C)に示す保持部材44のように、保持部材は、断面視でU字型の形状とすると共に、長手方向の端部にエンドプレート44Aを備えていてもよい。これにより、粉粒体層20を袋体22によって包装しなくても、粉粒体層20を保持部材44に保持できる。このように、本実施形態においては、粉粒体層20を壁体10の表面に保持させることができれば、袋体22は必ずしも設ける必要はない。
【0034】
(吸音材)
図1に示すように、吸音材30は、粉粒体層20の間に配置されている(この部分を吸音材30Aとする)。また、吸音材30は、粉粒体層20及び吸音材30Aの表面(空間V1側の表面)を被覆するように配置されている(この部分を吸音材30Bとする)。
【0035】
なお、吸音材30Bは必ずしも設けなくてもよい。吸音材30Bを設けない場合は、粉粒体層20及び吸音材30Aの表面に仕上げ材を敷設することができる。また、吸音材30Bを設ける場合は、吸音材30Bの表面に仕上げ材を敷設することができる。この仕上げ材としては、ガラスクロス等、通気性を備えた材料を用いる事が好ましい。通気性を備えた材料を用いることにより、吸音材30が吸音性能を発揮し易い。
【0036】
吸音材30は、板状に成形されたグラスウール(所謂グラスウールボード)を用いて形成されている。グラスウールは、シリカ(無水ケイ酸)と吸音周波数が異なる。
【0037】
ここで、「吸音周波数が異なる」とは、吸音率が卓越する周波数(ピーク周波数)が異なることを示す。
図4には、グラスウールの吸音特性が実線の曲線L1で、シリカの吸音特性が破線の曲線L2で示されている。この曲線L1、L2は、音の入射方向に沿う厚みが等しい(共に40mm)グラスウール及びシリカの吸音特性の一例を示している。
【0038】
曲線L1に示されるように、グラスウールの吸音率が卓越する周波数は、1000~1500Hzである。換言すると、グラスウールは、1000~1500Hzの音を、1000Hzより低い周波数の音より効率よく吸収する。
【0039】
また、曲線L2に示されるように、シリカの吸音率が卓越する周波数は、200~400Hzである。換言すると、グラスウールは、200~400Hzの音を、200Hzより低い周波数の音や400Hzより高い周波数の音より効率よく吸収する。
【0040】
すなわち、グラスウールは周波数が高い音を効率よく吸収する一方、シリカは周波数が低い音を効率よく吸収する。
【0041】
なお、グラスウール及びシリカの吸音率が卓越する周波数は、これらの厚みや、空隙率、粒径、かさ比重等の諸条件によって変化する。すなわち、これらを調整することで、吸音性能を調整できる。
【0042】
吸音材30を配置するには、まず
図3(A)に示すように、吸音材30Aを粉粒体層20の間に差し込んで、粉粒体層20の間に保持させる。
【0043】
次いで、吸音材30Bによって粉粒体層20及び吸音材30Aの表面を被覆する。このとき、吸音材30Aおよび吸音材30Bは、壁体10及び保持部材40に、接着剤等により固定することが好ましい。これにより、
図1に示すように、吸音材30は、粉粒体層20の振動を妨げたり吸音材30Aの通気性を遮ったりすることなく粉粒体層20の間及び表面に配置される。
【0044】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る吸音構造によると、
図1に示すように、粉粒体(粒子20A)を集合して形成された粉粒体層20の間に、吸音材30が配置されている。つまり、この吸音構造は、粉粒体層20と吸音材30とを含んで構成されている。
【0045】
粉粒体(粒子20A)は音によって振動し、吸音性能を発揮する。このとき、粉粒体層20は、特定の周波数において高い吸音性能を発揮する。一方で、吸音材30も、特定の周波数において高い吸音性能を発揮する(
図4参照)。
【0046】
これにより、例えば粉粒体層20のみで構成された吸音構造と比較して、吸音できる周波数領域が広い。したがって、粉粒体層20のみで構成された吸音構造及び吸音材30のみで構成された吸音構造より、吸音性能が高い。
【0047】
また、本発明の実施形態に係る吸音構造では、粉粒体層20が壁体10から張り出した保持部材40に収容されている。このため、吸音材30(吸音材30A)は、粉粒体層20の間に差し込むだけで粉粒体層20の間に保持できる。すなわち、吸音材30を粉粒体層20の間に保持するための特別な構成が必要ない。これにより、吸音構造の構成を簡略化できる。
【0048】
<その他の実施形態>
上記実施形態における吸音構造は、壁体10を覆うものとして形成されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば本発明における吸音構造は、壁体10に代えて、建物のスラブの表面(床面又は天井面)を覆うものとしてもよい。さらに、本発明における吸音構造は、パネル状に形成することで、壁体10やスラブと独立して用いることができる。
【0049】
吸音構造をパネル状に形成する実施形態の一例としては、例えば
図5(A)、(B)に示すパネル材50が挙げられる。パネル材50においては、2枚のライナ(板材)52、54の間の空間が、複数のリブ56で区画されている。
【0050】
リブ56は、2枚のライナ52、54の間の空間を、パネル材50の面内方向において、複数の空間に区画している。リブ56で区画された空間には、粉粒体層20と吸音材30とが交互に充填されている。
【0051】
なお、
図5(A)、(B)において、リブ56は1方向(Y方向)のみに沿って配置されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば
図6(A)、(B)、(C)に示すように、リブ56を互いに交わる2方向(X方向及びY方向:X方向とY方向とは互いに略直交する方向)に配置してもよい。すなわち、リブ56を格子状に配置してもよい。この場合、リブ56で区画された空間には、粉粒体層20と吸音材30とを市松状に充填する。
【0052】
また、リブ56は、例えばパネル材50の面内方向において六角形を隙間なく並べた形状となるように配置してもよい(所謂ハニカム構造)。これによりパネル材50を軽量化できる。
【0053】
なお、ライナ52、54には、図示しない通気口を形成することが好適である。これにより、吸音材30および粉粒体層20が吸音性能を発揮し易い。なお、粉粒体層20の吸音に通気性は必ずしも必要ないが、通気性を確保することにより、粉粒体層20まで音が到達し易いため、吸音効果を発揮し易くできる。
【0054】
吸音構造をパネル状に形成する実施形態の別の一例としては、例えば
図6(A)、(B)に示すパネル材60が挙げられる。パネル材60においては、2枚のライナ62、64の間の空間が、複数の面材66で区画されている。
【0055】
面材66は、2枚のライナ62、64の間の空間を、パネル材60の面内方向と略直交する方向において、複数の空間に区画している。面材66で区画された空間には、粉粒体層20と吸音材30とが交互に充填されている。
【0056】
なお、ライナ62、64及び面材66には、図示しない通気口を形成することが好適である。これにより、吸音材30および粉粒体層20が吸音性能発揮し易い。
【0057】
パネル材50、60のように、吸音構造を壁体10と独立して用いることにより、この吸音構造を、様々な場所に適用することができる。例えば建物の仕上げ材として適用したり、航空機や車両の壁や扉として適用したり、騒音を発する各種機器のエンクロージャとして適用したりすることができる。
【0058】
なお、これらのパネル材50、60を形成するライナ52、54、62、64、リブ56、面材66としては、例えば不織布等各種の材料を用いることができるが、強度や軽量性、対候性等の観点からは、アルミニウムやガリバリウム鋼板、炭素繊維板などを用いることも好適である。
【0059】
また、上記実施形態においては、吸音材30としてグラスウールを用いているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば吸音材30としては、ロックウールやセルロースファイバー等の繊維系多孔質材料を用いることができる。
【0060】
なお、吸音材30としては、求められる機能や施工性に応じて、発泡系多孔質材を用いてもよい。発泡系多孔質材としては、ポリスチレン、ウレタン、ポリエチレン等の材料を用いることができる。
【0061】
さらに、吸音材30としては、繊維系多孔質材料に代えて、粉粒体層20を構成する粒子20Aと異なる大きさ及びかさ比重の粒子(本発明における異径粉粒体の一例)によって構成された粉粒体層(本発明における異径粉粒体層の一例)によって構成することもできる。すなわち、本発明の吸音構造は、2種類の粉粒体層を交互に配置することで形成してもよい。
【0062】
なお、吸音材30として粉粒体層を用いる場合、上述したパネル材50、60におけるリブ56、面材66としては、ガラスろ紙、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリプロピレン(PP)等を用いてもよい。これにより、大きさ及びかさ比重の異なる粒子で形成された粉粒体層間で振動が伝達され、吸音効果を高めることができる。
【0063】
またさらに、本発明の吸音構造は、3種類以上の粉粒体層を交互に配置することで形成してもよい。あるいは、1種類の粉粒体層と、繊維系多孔質材料で形成された2種類以上の吸音材とを組み合わせて形成してもよいし、1種類の繊維系多孔質材料で形成された吸音材と、2種類以上の粉粒体層とを組み合わせて形成してもよい。
【符号の説明】
【0064】
20 粉粒体層
20A 粒子(粉粒体)
30 吸音材
30A 吸音材
40 保持部材
42 保持部材
44 保持部材