(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】墨出し方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
G01C15/00 103B
(21)【出願番号】P 2020080194
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】松原 拡平
(72)【発明者】
【氏名】宮口 幹太
(72)【発明者】
【氏名】丸子 勇人
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-29998(JP,A)
【文献】特開2019-15511(JP,A)
【文献】特開2012-14956(JP,A)
【文献】特開平5-337847(JP,A)
【文献】特開平7-167655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に対して墨出し線を付す墨出し方法であって、
少なくとも前記対象物における前記墨出し線を付す墨出位置に前記墨出し線を付すための光である墨出用照射光を照射する照射工程、又は、前記対象物における前記墨出位置を含む領域に前記墨出用照射光を照射することにより変質する第1物質を塗布する塗布工程の内の一方の工程を行う第1工程と、
前記照射工程又は前記塗布工程の内の他方の工程を行う第2工程と、
前記第1物質に作用する第2物質を用いて、前記第1物質における前記墨出用照射光にて変質した一
部を除去することにより、前記第1物質における変質した一部に対応する前記墨出し線を生成する第3工程と、
を含む墨出し方法。
【請求項2】
前記第1工程では、前記照射工程を行い、
前記第2工程では、前記塗布工程を行う、
請求項1に記載の墨出し方法。
【請求項3】
前記塗布工程では、前記第1物質を対象物に噴霧することにより塗布し、
前記第3工程では、前記第2物質を前記第1物質に噴霧する、
請求項1又は2に記載の墨出し方法。
【請求項4】
前記照射工程では、前記対象物に対して線状のレーザー光を照射するレーザー光出力装置から出力される当該レーザー光、又は、前記対象物に対して面状に投射光を投射する投射装置から出力される当該投射光を、前記墨出用照射光として照射する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の墨出し方法。
【請求項5】
前記第1物質は、少なくともハロゲン化銀を含む複数種類からなる物質であり、
前記第2物質は、現像定着液に対応する物質である、
請求項1から4の何れか一項に記載の墨出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、墨出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、広く普及している墨出し手法に図面をもとに基準を決め、水平および鉛直方向にレーザー光線を投影するレーザー墨出器を用いて、投影した光線を目印に新たな墨出しを行うことが一般的となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術においては、レーザー光線は一時的な投影であり、レーザー墨出器の出力の停止後はレーザー光線が消滅するので、レーザー光線が照射された跡を床又は壁等に残すために、レーザー墨出器の出力の停止前にレーザー光線をもとに改めて墨つぼを用いて墨出しする必要があり、当該墨つぼを用いて墨出しする作業に手間を要することから、墨出し作業の効率化の観点からは改善の余地があった。
【0005】
本発明は上記事実に鑑み、墨出し作業の作業効率を向上させることが可能となる墨出し方法を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の墨出し方法は、対象物に対して墨出し線を付す墨出し方法であって、少なくとも前記対象物における前記墨出し線を付す墨出位置に前記墨出し線を付すための光である墨出用照射光を照射する照射工程、又は、前記対象物における前記墨出位置を含む領域に前記墨出用照射光を照射することにより変質する第1物質を塗布する塗布工程の内の一方の工程を行う第1工程と、前記照射工程又は前記塗布工程の内の他方の工程を行う第2工程と、前記第1物質に作用する第2物質を用いて、前記第1物質における前記墨出用照射光にて変質した一部を除去することにより、前記第1物質における変質した一部に対応する前記墨出し線を生成する第3工程と、を含む。
【0007】
請求項2に記載の墨出し方法は、請求項1に記載の墨出し方法において、前記第1工程では、前記照射工程を行い、前記第2工程では、前記塗布工程を行う。
【0008】
請求項3に記載の墨出し方法は、請求項1又は2に記載の墨出し方法において、前記塗布工程では、前記第1物質を対象物に噴霧することにより塗布し、前記第3工程では、前記第2物質を前記第1物質に噴霧する。
【0009】
請求項4に記載の墨出し方法は、請求項1から3のいずれか一項に記載の墨出し方法において、前記照射工程では、前記対象物に対して線状のレーザー光を照射するレーザー光出力装置から出力される当該レーザー光、又は、前記対象物に対して面状に投射光を投射する投射装置から出力される当該投射光を、前記墨出用照射光として照射する。
【0010】
請求項5に記載の墨出し方法は、請求項1から4のいずれか一項に記載の墨出し方法において、前記第1物質は、少なくともハロゲン化銀を含む複数種類からなる物質であり、前記第2物質は、現像定着液に対応する物質である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の墨出し方法によれば、墨出用照射光を照射する工程、第1物質を塗布する工程、及び第2物質を用いて墨出し線を生成する工程を含むことにより、例えば、従来の墨つぼを用いて墨出しする作業を省略することができるので、墨出し作業の作業効率を向上させることが可能となる。
【0012】
請求項2に記載の墨出し方法によれば、第1工程では照射工程を行い、第2工程では塗布工程を行うことにより、例えば、対象物に照射されている墨出用照射光を基準にして、第1物質を塗布することができるので、第1物質を適切な位置に適切な量だけ迅速に塗布することができ、墨出し作業の作業効率を更に向上させることが可能となり、また、第1物質の無駄な使用を抑制することが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の墨出し方法によれば、第1物質を対象物に噴霧することにより塗布し、また、第2物質を前記第1物質に噴霧することにより、例えば、作業員が手作業を行いにくい場所(一例としては、壁と床とが交わる部分、角部、又は曲線部等)等においても各物質を容易に塗布又は付着させることが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の墨出し方法によれば、レーザー光又は投射光を墨出用照射光として照射することにより、例えば、レーザー光を用いて墨出位置を照射して当該墨出位置に対して確実に墨出し線を付すことが可能となり、また、投射光を用いて一定の領域における任意の個所に墨出し線を付すことが可能となる。
【0015】
請求項5に記載の墨出し方法によれば、第1物質は少なくともハロゲン化銀を含む複数種類からなる物質であり、また、第2物質は現像定着液に対応する物質であることにより、例えば、第2物質を用いて、第1物質における墨出用照射光にて変質した一部以外の他の一部を除去することにより、第1物質における変質した一部に対応する墨出し線を生成することができるので、墨出し線を確実に付すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】墨出し線が付される対象となる建設中の建物を示す図である。
【
図2】第1の墨出し方法を示すフローチャートである。
【
図7】墨出用テープが貼付された状態の床の一部を示す図である。
【
図8】墨出用テープが貼付された状態の床の一部を示す図である。
【
図9】墨出用テープが貼付された状態の床の一部を示す図である。
【
図10】第2の墨出し方法を示すフローチャートである。
【
図11】墨出装置が設置された状態の建設中の建物の内部の側面図である。
【
図13】墨出し線が付される対象となる建設中の建物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る墨出し方法の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、墨出し方法に関する。
【0019】
ここで、「墨出し方法」とは、対象物に対して墨出し線を付すための方法である。この墨出し方法は、墨出し線を付すための方法である限りにおいて任意であるが、例えば、第1工程、第2工程、及び第3工程を含む。なお、これらの各工程により実現される方法以外の方法についても、墨出し方法と解釈してもよい。
【0020】
「対象物」とは、墨出し線が付される対象となる物であり、例えば、建設中又は建設済の建物における任意の部分等を含む概念であり、一例としては、床、壁、天井、柱、及び梁等を含む概念である。「墨出し線」とは、建設作業等の任意の作業において基準となる線であり、例えば、建設作業においては、当該墨出し線を基準に建築用の部材の位置決め等が行われる。
【0021】
「第1工程」とは、照射工程又は塗布工程の内の一方を行う工程である。
【0022】
「照射工程」とは、少なくとも墨出位置に墨出用照射光を照射する工程である。「墨出位置」とは、対象物における墨出し線を付す対象となる位置であり、例えば、建物の設計仕様(BIM(Building Information Modeling)データを含む)等に基づいて定められている位置である。「墨出用照射光」とは、墨出し線を付すために墨出位置に照射される光であり、例えば、対象物に対して線状のレーザー光を照射するレーザー光出力装置から出力される当該レーザー光、又は、対象物に対して面状に投射光を投射する投射装置から出力される当該投射光等を含む概念である。
【0023】
「レーザー光」とは、比較的指向性が高い光であり、例えば、対象物に対して所定幅(例えば、2.0mm~5.0mm程度等)の線状の光として照射される光等を含む概念である。また、「投射光」とは、一定の広がりをもつ領域にわたって照射される光であり、例えば、対象物に対して所定の領域全体に照射される(つまり、面状に投射される)光等を含む概念である。
【0024】
レーザー光出力装置は任意であり、例えば、線状のレーザー光(つまり、レーザー光線)を出力する公知のレーザー墨出し器等を用いてよいし、あるいは、他の任意の装置を用いてもよい。また、投射装置も任意であり、例えば、面状に投射光を投射する公知のプロジェクタ等を用いてもよいし、あるいは、他の任意の装置を用いてもよい。
【0025】
「塗布工程」とは、対象物における墨出位置を含む領域に第1物質を塗布する工程であり、例えば、第1物質を噴霧する(つまり、噴射又はスプレーする)ことにより塗布する工程等を含む概念である。なお、第1物質については後述する。
【0026】
「第2工程」とは、照射工程又は塗布工程の内の他方の工程(つまり、第1工程で行われていない他方の工程)を行う工程である。
【0027】
「第3工程」とは、第2物質を用いて、第1物質における墨出用照射光にて変質した一部又は当該一部以外の他の一部を除去することにより、第1物質における変質した一部に対応する墨出し線を生成する工程であり、例えば、第2物質を噴霧する(つまり、噴射又はスプレーする)工程等を含む概念である。
【0028】
「第1物質」とは、墨出し線を生成するために用いられる物質であり、具体的には、墨出用照射光が照射された場合に変質する物質であり、例えば、いわゆる感光性を有する物質等を含む概念である。なお、この第1物質は任意であり、例えば、1種類の物質を用いて構成される物質を第1物質として用いてもよいし、あるいは、複数種類の物質によって構成されている物質を第1物質として用いてもよい(後述の第2物質も同様とする)。また、この第1物質の具体的な内容については、実施の形態において説明する(後述の第2物質も同様とする)。
【0029】
「第2物質」とは、第1物質に作用する物質であり、具体的には、第1物質における墨出用照射光にて変質した一部又は当該一部以外の他の一部を除去するために用いられる物質等を含む概念である。
【0030】
そして、以下に示す各実施の形態では、建設中の建物の床に対して墨出し線を付す場合を例示して説明する。また、実施の形態1においては、前述の第1物質及び第2物質を用いて墨出し線を付す場合について説明し、実施の形態2においては、第1物質のみ(具体的には、墨出用テープ3(
図7))を用いて墨出し線を付す場合について説明する。
【0031】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、各実施の形態の具体的内容について説明する。
【0032】
(実施の形態1)
最初に実施の形態1について説明する。この実施の形態は、第1物質及び第2物質を用いて墨出し線を付す実施の形態であり、特に、第1物質に作用する第2物質を用いて、第1物質における墨出用照射光にて変質した一部以外の他の一部を除去することにより、墨出し線を生成して付す実施の形態である。
【0033】
(各物質)
まず、本実施の形態で用いる第1物質及び第2物質について説明する。
【0034】
(各物質-第1物質)
本実施の形態で用いる第1物質の構成は任意であるが、例えば、感光主薬、溶媒、分光増感剤、カプラー、及び染料等も含むこととしてもよい。なお、ここで説明した第1物質を構成する各要素は一例であり、前述の定義に従う限りにおいて、任意の要素を省略してもよく、あるいは、ここで具体的に記載されていない要素を追加してもよい。
【0035】
「感光主薬」とは、第1物質における感光性の特徴を奏する主な物質であり、例えば、ハロゲン化銀(一例としては、塩化銀、ヨウ化銀、及び臭化銀)等を含む物質を用いてもよい。「溶媒」とは、目的とする物質を溶かす物質であって、乳剤又はバインダーであり、例えば、粘性をもたせることを考慮してゼラチン等を用いてもよい。「分光増感剤」とは、照射された光についての吸収帯域を長波長まで拡張する増感剤及び発光体等を用いてもよい。「カプラー」としては、例えば、発色材料である。「染料」とは、所定波長帯域以下の波長を吸収する物質であり、例えば、クリソフェニン、ベンゾパープリン4B等を含む物質を用いてもよい。
【0036】
そして、本実施の形態では、赤色に対応する波長帯の光でハロゲン化銀が感光するように構成された第1物質として、例えば、少なくとも前述の感光主薬、溶媒、分光増感剤、及び染料を含む物質(つまり、少なくともハロゲン化銀を含む複数種類からなる物質)を用いる場合について説明する。また、この第1物質が、液体として噴霧して塗布される粘性を有する塗料として構成されている場合について説明する。
【0037】
(各物質-第2物質)
本実施の形態で用いる第2物質の構成は任意であるが、例えば、現像主液、現像保恒剤、促進剤、抑制材、及び定着剤等を含むこととしてもよい。なお、ここで説明した第2物質を構成する各要素は一例であり、前述の定義に従う限りにおいて、任意の要素を省略してもよく、あるいは、ここで具体的に記載されていない要素を追加してもよい。
【0038】
「現像主液」とは、還元剤として機能する物質であり、例えば、p-フェニレンジアミン、及びフェニドン等を含む物質を用いてもよい。「現像保恒剤」とは、現像主液が効果を発揮した後の酸化防止を行うための物質であり、例えば、亜硫酸ナトリウム、及び亜硫酸水素ナトリウム等を含む物質を用いてもよい。「促進剤」とは、現像を促進するための物質であり、また、「抑制剤」とは、いわゆるカブリ防止のための物質である。「定着剤」とは、第1物質における墨出用照射光にて変質した一部以外の他の一部を除去する機能を有する物質であり、具体的には、ハロゲン化銀を溶解して除去する機能を有する物質であり、例えば、チオ硫酸ナトリウム等を用いることができる。
【0039】
そして、本実施の形態では、第1物質における感光していない部分を除去するように構成された第2物質として、例えば、少なくとも前述の現像主液、現像保恒剤、及び定着剤を含む物質(つまり、現像定着液に対応する物質)を用いる場合について説明する。また、この第2物質が、液体として噴霧されるように構成されている場合について説明する。
【0040】
(建設中の建物)
次に、墨出し線が付される対象となる建設中の建物について説明する。
図1は、墨出し線が付される対象となる建設中の建物を示す図である。なお、
図1においては、建設中の建物内の1個の部屋に墨出装置94が設置されている状態が図示されている。また、
図1においては、床91に照射されたレーザー光L1(墨出用照射光)が実線で図示されており、また、空間における当該レーザー光L1の一部の軌跡が説明の便宜上一点鎖線にて図示されている。
【0041】
また、以下の説明では、各図に示すX―Y―Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、Z方向が垂直方向(鉛直方向)であって、X方向及びY方向が垂直方向に対して直交する水平方向であるものとして、例えば、Z方向を高さ方向と称し、+Z方向を上側(平面)と称し、-Z方向を下側(底面)と称して説明する。
【0042】
図1に示す建設中の建物の構成は任意であるが、例えば、床91、壁92、及び天井93を備える。そして、本実施の形態では、床91、壁92、及び天井93がコンクリートの色に対応する灰色となっており、床91におけるレーザー光L1が照射されている位置(
図1では、実線の十字の実線に対応する位置)が墨出し線を付す墨出位置である場合について説明する。この場合、例えば、床91が「対象物」に対応するものと解釈してもよい。
【0043】
墨出装置94は、対象物に対して線状のレーザー光L1を照射するレーザー光出力装置である。この墨出装置94の構成は任意であるが、例えば、公知のレーザー墨出し器と同様にして構成されており、また、照射部941から赤色のレーザー光L1を出力するように構成されている。
【0044】
(第1の墨出し方法)
次に、第1の墨出し方法について説明する。「第1の墨出し方法」とは、前述の墨出方法であり、例えば、第1物質及び第2物質を用いて墨出し線を生成して付すための方法である。
図2は、第1の墨出し方法を示すフローチャートであり(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)、
図3~
図6は、床の一部を示す図である。なお、
図3~
図6の(a)は、平面図であり、また、
図3~
図6の(b)は、各図の(a)の平面図に対応する断面図である。特に、
図3~
図6の(b)は、
図3(a)に示すA-A矢視に対応する断面図である。ここでは、例えば、これらの各図を適宜参照して、
図1の床91に墨出し線を付す場合を例示して説明する。
【0045】
図2のSA1においてレーザー光L1の照射を開始する。具体的には任意であるが、例えば、
図1に示すように、従来と同様にして、建設中の建物における所定位置に墨出装置94を設置し、ユーザ(例えば、作業員)が墨出装置94を操作することにより、床91における墨出位置(
図1ではレーザー光L1が実線にて図示されている位置)へのレーザー光L1の照射を開始する。なお、当該建設中の建物のBIMデータを墨出装置94に入力することにより、墨出装置94が、当該BIMデータに基づいてレーザー光L1を床91に照射することとしてもよいし、あるいは、他のデータに基づいてレーザー光L1を照射することとしてもよい。そして、この場合、
図1に図示されているように、床91における墨出位置に、線状の十字のレーザー光L1が照射されることになる。なお、例えば、このSA1が「照射工程(第1工程)」に対応するものと解釈してもよい。
【0046】
図2のSA2において第1薬液11(
図3)を噴霧する。なお、「第1薬液」11とは、前述の第1物質を含む液体として塗料であり、例えば、
図3の第1薬液用スプレー装置1に収容されている。「第1薬液用スプレー装置」1とは、第1薬液11を収容しており、当該収容している第1薬液11を噴霧する(スプレーする)ためのノズルを備えており、一例としては、公知のスプレー缶の如き構造を適用して構成することができる。
【0047】
SA2の工程について具体的には任意であるが、例えば、ユーザが、第1薬液用スプレー装置1を操作することにより、
図3に示すように、当該第1薬液用スプレー装置1に収容されている第1薬液11を、床91における墨出位置を含む領域に向けて噴霧する。この場合、当該第1薬液11が床91に付着して塗布され、当該床91上に第1薬液層12が形成される。なお、「第1薬液層」12とは、前述の第1物質を含む層であり、噴霧されて床91に塗布された第1薬液11によって形成される層(つまり、第1薬液11に対応する層)である。
【0048】
そして、この場合、時間の経過に従って、第1薬液層12におけるレーザー光L1が照射されている部分が、感光して変質することになり、
図4の第1薬液側変質部121が形成されることになる。なお、「第1薬液側変質部」121とは、第1薬液層12の一部であり、例えば、レーザー光L1により感光して変質し変色した部分であって、一例としては、ハロゲン化銀が銀になることにより変質して例えば黒色に変色した部分である。
【0049】
なお、本実施の形態では、前述したように、第1物質(つまり、第1薬液層12)が、赤色に対応する波長帯の光でハロゲン化銀が感光するように構成されているので、第1薬液層12における赤色のレーザー光L1が照射された部分が感光し、第1薬液層12におけるその他の部分(自然光が照射されている部分)については、墨出しに関連する程度での感光が行われないことになる。つまり、
図4の第1薬液側変質部121は、
図4(a)に図示されているように、平面視において
図1において床に照射されたレーザー光L1に対応する十字の線状となる。なお、例えば、このSA2が「塗布工程(第2工程)」に対応するものと解釈してもよい。
【0050】
図2のSA3においてレーザー光L1の照射を終了する。具体的には任意であるが、例えば、ユーザがSA2で形成された第1薬液層12における感光の程度を視認して確認したり、あるいは、所定時間の経過を確認したりして適切なタイミングを判断した上で、墨出装置94を操作することにより、レーザー光L1の照射を終了する。なお、ここでは、例えば、第1薬液層12がレーザー光L1で十分に感光する時間を、墨出装置94に予め設定しておき、墨出装置94が当該設定された時間に基づいて、自動的に照射を終了させてもよい。
【0051】
図2のSA4において第2薬液21(
図5)を噴霧する。なお、「第2薬液」とは、前述の第2物質を含む液体であり、例えば、
図5の第2薬液用スプレー装置2に収容されている。「第2薬液用スプレー装置」2とは、第2薬液21を収容しており、当該収容している第2薬液21を噴霧する(スプレーする)ためのノズルを備えており、一例としては、前述の第1薬液用スプレー装置1と同様であり、公知のスプレー缶の如き構造を適用して構成することができる。
【0052】
SA4の工程について具体的には任意であるが、例えば、ユーザが、第2薬液用スプレー装置2を操作することにより、
図5に示すように、当該第2薬液用スプレー装置2に収容されている第2薬液21を、床91に塗布されている第1薬液層12に向けて噴霧する。この場合、当該第2薬液21が第1薬液層12全体に付着して、第1薬液層12において現像及び定着に対応する反応がおこり、第1薬液層12における第1薬液側変質部121以外の部分が第2薬液21によって溶解されることになる。そして、この第1薬液層12における溶解された部分(つまり、第1薬液層12における第1薬液側変質部121以外の部分)を任意の手法(例えば、水又は他の任意の液体で洗い流す手法、あるいは、布又は紙等でふき取る手法等)を用いて除去することにより、
図6に示すように、第1薬液側変質部121を墨出し線として生成して床91に残し、当該第1薬液側変質部121である墨出し線を床における墨出位置に付す。このようにして、灰色の床91に対して黒色の第1薬液側変質部121からなる墨出し線が付されることになる。なお、例えば、このSA3が「第3工程」に対応するものと解釈してもよい。これにて、第1の墨出し方法を終了する。
【0053】
(本実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、レーザー光L1を照射する工程、第1薬液11を塗布する工程、及び第2薬液21を用いて墨出し線を生成する工程を含むことにより、例えば、従来の墨つぼを用いて墨出しする作業を省略することができるので、墨出し作業の作業効率を向上させることが可能となる。
【0054】
また、第1工程では照射工程を行い、第2工程では塗布工程を行うことにより、例えば、対象物である床91に照射されているレーザー光L1を基準にして、第1薬液11を塗布することができるので、第1薬液11を適切な位置に適切な量だけ迅速に塗布することができ、墨出し作業の作業効率を更に向上させることが可能となり、また、第1薬液11の無駄な使用を抑制することが可能となる。
【0055】
また、第1薬液11を対象物である床91に噴霧することにより塗布し、また、第2薬液21を第1薬液11(より具体的には、第1薬液層12)に噴霧することにより、例えば、作業員が手作業を行いにくい場所においても各薬液を容易に塗布又は付着させることが可能となる。
【0056】
また、レーザー光L1を墨出用照射光として照射することにより、例えば、レーザー光L1を用いて墨出位置を照射して当該墨出位置に対して確実に墨出し線を付すことが可能となる。
【0057】
また、第1薬液11は少なくともハロゲン化銀を含む複数種類からなる物質を含む薬液であり、また、第2薬液21は現像定着液に対応する物質を含む薬液であることにより、例えば、第2薬液21を用いて、第1薬液11(より具体的には、第1薬液層12)におけるレーザー光L1にて変質した第1薬液側変質部121以外の他の一部を除去することにより、第1薬液層12に対応する墨出し線を生成することができるので、墨出し線を確実に付すことが可能となる。
【0058】
(実施の形態2)
次に実施の形態2について説明する。この実施の形態は、第1物質を用いて墨出し線を付す実施の形態であり、特に、墨出用テープ3(
図7)を用いて墨出し線を生成して付す実施の形態である。なお、この実施の形態においては、実施の形態1で説明した内容を同様な内容については、説明を省略する。
【0059】
(墨出用テープ)
図7~
図9は、墨出用テープが貼付された状態の床の一部を示す図である。なお、
図7~
図9の(a)は、平面図であり、また、
図7~
図9の(b)は、各図の(a)の平面図に対応する断面図である。特に、
図7~
図9の(b)は、
図7(a)に示すB-B矢視に対応する断面図である。
【0060】
図7の墨出用テープ3は、墨出し線を付すために用いられるテープであり、例えば、不要波長吸収層31、感光層32、接着層33が重畳されて1枚のテープとして形成されているものである。
【0061】
不要波長吸収層31とは、墨出し線を付すために感光層32を感光させるためのレーザー光L1の色である赤色以外の波長帯の光を吸収するための層であり、つまり、墨出し線を付すために不要な自然光を吸収するための層である。この不要波長吸収層31は任意の物質で構成することができるが、例えば、前述の染料に対応するクリソフェニン、ベンゾパープリン4Bを用いて構成することができる。また、この不要波長吸収層31は、当該不要波長吸収層31が重なっている感光層32が当該不要波長吸収層31側から透過して見えるように比較的薄く形成されていることとする。
【0062】
感光層32とは、前述の第1物質によって形成される層であり、具体的には、不要波長吸収層31と接着層33との間に形成される層であり、例えば、前述の感光主薬、溶媒、及び分光増感剤を含む物質にて形成される層である。
【0063】
接着層33とは、墨出用テープ3を床91(
図1)等の対象物に接着させて取り付けるための層であり、例えば、感光層32側とは反対側の面(
図7(b)の-Z方向の面)に対象物に接着する接着面を備える層である。
【0064】
(第2の墨出し方法)
次に、第2の墨出し方法について説明する。「第2の墨出し方法」とは、前述の墨出方法であり、例えば、第1物質を用いて墨出し線を生成して付すための方法である。
図10は、第2の墨出し方法を示すフローチャートである。ここでは、例えば、前述の
図7~
図9を適宜参照して、
図1の床91に墨出し線を付す場合を例示して説明する。
【0065】
図10のSB1においてレーザー光L1の照射を開始する。具体的には任意であるが、例えば、
図1に示すように、
図2のSA1の場合と同様にして、床91における墨出位置へのレーザー光L1の照射を開始する。
【0066】
図10のSB2において墨出用テープ3を貼付する。具体的には任意であるが、例えば、
図1に示すように、墨出位置に対応する位置にレーザー光L1が照射されているので、床91における当該レーザー光L1が照射されている位置を含む領域に、墨出用テープ3を貼付する。ここでは、例えば、
図7(b)に図示されているように、墨出用テープ3における接着層33の接着面を床91に接着させることにより、墨出用テープ3を床91に貼付する。なお、
図7では、墨出用テープ3が
図7(a)の図面左右方向(X軸方向)に沿って貼付されているので、床91における十字のレーザー光L1が照射されている一部(レーザー光L1におけるY軸に沿っている部分の
図7の図面上側(+Y方向)及び図面下側(-Y方向に対応する分)に墨出用テープ3が貼付されていない状態が図示されているが、必要に応じて、墨出用テープ3を
図7の図面上下方向(Y軸方向)にも沿って更に貼付することにより、床91におけるレーザー光L1が照射されている部分全てに墨出用テープ3を貼付してもよい。あるいは、墨出用テープ3として幅が比較的広いものを用いることにより、床91におけるレーザー光L1が照射されている部分全てに1枚の墨出用テープ3を貼付してもよい。
【0067】
そして、この場合、墨出用テープ3の感光層32におけるレーザー光L1が照射されている部分が、感光して変質することになり、
図8の感光層側変質部321が形成されることになる。なお、「感光層側変質部」321とは、感光層32の一部であり、例えば、レーザー光L1により感光して変質し変色した部分であって、一例としては、ハロゲン化銀が銀になることにより変質して例えば黒色に変色した部分である。
【0068】
なお、本実施の形態では、前述したように、不要波長吸収層31が赤色以外の波長帯の光を吸収するように構成されているので、感光層32における赤色のレーザー光L1が照射された部分が感光し、感光層32におけるその他の部分については自然光が不要波長吸収層31にて吸収されるので、墨出しに関連する程度での感光が行われないことになる。つまり、
図8の感光層側変質部321は、
図9(a)に図示されているように、平面視において
図1において床に照射されたレーザー光L1に対応する十字の線状となる。
【0069】
図10のSB3においてレーザー光L1の照射を終了する。具体的には任意であるが、例えば、
図2のSA3の場合と同様にして、レーザー光L1の照射を終了する。そして、この場合、SB2において形成された
図9の感光層側変質部321が不要波長吸収層31を透過して視認可能となり、当該感光層側変質部321が黒色の墨出し線として灰色の床91に付されることになる。これにて、第2の墨出し方法を終了する。
【0070】
(本実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、墨出用テープ3を用いることにより、例えば、従来の墨つぼを用いて墨出しする作業を省略することができるので、墨出し作業の作業効率を向上させることが可能となる。
【0071】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0072】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏したりすることがある。
【0073】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値(個数)、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0074】
(各ステップについて)
また、上記各実施の形態における各墨出し方法の各ステップの実行順序を任意に入れ替えてもよい。例えば、
図2において、SA2を実行した後に、SA1を実行するように構成してもよいし、又は、SA4を実行した後に、SA3を実行するように構成してもよい。あるいは、
図10において、SB2を実行した後に、SB1を実行するように構成してもよい。
【0075】
(レーザー光の色について)
また、上記各実施の形態では、レーザー光L1の色が赤色である場合について説明したが、当該色を他の任意の色(例えば、緑色、青色、黄色等)に変更してもよい。この場合、各実施の形態で説明した墨出し方法を実行できるように、各物質の構成を任意に変更してもよい。
【0076】
(第1物質における墨出用照射光にて変質した一部の除去について)
また、上記実施の形態1においては、第1物質における墨出用照射光にて変質した一部(つまり、
図4の第1薬液層12における第1薬液側変質部121)以外の他の一部を除去することにより、墨出し線を生成する場合について説明したが、これに限らない。例えば、第1物質における墨出用照射光にて変質した一部を除去するように構成してもよい。具体的には任意であるが、例えば、第1物質としていわゆるフォトレジストに対応する物質を用いる、第2物質としてフォトレジストにおける墨出用照射光が照射されて変質した一部を溶解して除去する任意の物質を用いることにより、第1物質の一部に墨出用照射光を照射して変質させた後に、第1物質に対して第2物質を噴霧して付着させることにより、第1物質における当該変質した部分を溶解させて除去することにより、第1物質における除去された一部を墨出し線として用いてもよい。
【0077】
(照射箇所のブロック割り)
また、上記実施の形態1において、レーザー光L1を照射して第1薬液層12を、墨出し線を付すために必要な程度感光させるためには、所定時間以上当該第1薬液層12にレーザー光L1を照射し続ける必要がある点を考慮して、当該レーザー光L1を照射する場所をブロック割りしてもよい。例えば、
図1に図示されている3面の壁92に対して墨出し線を付す場合、壁92毎にブロック割りして、ブロック毎(1面の壁92毎)に墨出し線を付するようにしてもよい。
【0078】
(レーザー光の幅)
また、墨出装置94が出力するレーザー光L11の幅を任意に調整してもよい。
図11は、墨出装置が設置された状態の建設中の建物の内部の側面図であり、
図12は、
図11における一部の拡大図である。
図11に示すように、墨出装置94は、三脚を備えており床91から所定の高さに対応する位置からレーザー光L1を出力するように構成されているので、同じ幅のレーザー光L1を照射する場合、
図12に示すように、壁92におけるレーザー光L1を照射する位置に応じて、壁92に照射されたレーザー光L1の幅D1、D2が相互に異なることになる。すなわち、例えば、照射部941と同じ高さの位置に向かってレーザー光L11を照射する場合の、壁92に照射される当該レーザー光L11の幅D1と、照射部941よりも下側(-Z方向)の位置に向かってレーザー光L12(レーザー光L11と同じ幅のレーザー光)を照射する場合の、壁92に照射される当該レーザー光L12の幅D2とが相互に異なることになり、結果として、壁92に付される墨出し線の幅が、当該墨出し線が付される位置に応じて相互に異なることになる。
【0079】
この点を考慮して、墨出し線の幅を、当該墨出し線が付される位置に関わらず一定に維持するために、墨出装置94から出力するレーザー光L1の幅を任意に調整するように構成してもよい。具体的な調整手法は任意であるが、例えば、墨出装置94の設置位置と墨出し線を付す位置との関係に基づいて、対象物に照射されるレーザー光L1の幅が一定となるように、墨出装置94から出力されるレーザー光L1の幅を決定するためのプログラムを墨出装置94にインストールし、墨出装置94の設置位置及び墨出し線を付す位置を示す情報を墨出装置94に入力し、墨出装置94が、当該入力された情報に基づいて、自己が出力するレーザー光L1の幅を自動的に調整することにより、レーザー光L1が照射される対象物の位置に関わらず、当該対象物に照射されたレーザー光L1の幅を一定に維持してもよいし、あるいは、ユーザが墨出装置94をマニュアル操作することにより、当該墨出装置94から出力されるレーザー光L1の幅を調整するように構成してもよい。
【0080】
(プロジェクタ装置)
図13は、墨出し線が付される対象となる建設中の建物を示す図である。上記実施の形態の
図1の墨出装置94と共に、又は、当該墨出装置94の代わりに、
図13のプロジェクタ装置95を用いて、墨出用照射光を照射(投射)してもよい。
【0081】
プロジェクタ装置95は、投射装置であってプロジェクタであり、例えば、
図13に図示されている1面の壁92全体に面状に投射光L2を照射(投射)する装置である。例えば、プロジェクタ装置95は赤色の4個の十字の墨出用画像L21を含む投射光L2を壁92に照射する。そして、この投射光L2における墨出用画像L21を、実施の形態1で説明したレーザー光L1と同様にして用いることにより、当該投射光L2の墨出用画像L21を用いて墨出し線を付してもよい。特に、このように構成した場合、投射光L2を照射する位置及び照射する範囲を変更することなく、墨出用画像L21の形状又は位置等を変更するのみで、墨出し線の形状又は位置を変更することが可能となる。
【0082】
そして、このように構成することにより、例えば、投射光L2を用いて一定の領域における任意の個所に任意の形状又は個数の墨出し線を付すことが可能となる。
【0083】
(墨出し装置又は墨出しシステムについて)
また、上記実施の形態1で説明した第1の墨出し方法の全部又は一部を自動で実行する墨出し装置又は墨出しシステムを構成してもよい。具体的には任意であるが、例えば、ドローン等の飛行体に対して、第1薬液用スプレー装置1及び第2薬液用スプレー装置2を実装することにより、当該飛行体を用いて、
図2のSA2及びSA4を実行するように構成してもよい。あるいは、当該飛行体又は地上を自動走行する車両に対して、第1薬液用スプレー装置、第2薬液用スプレー装置2、及び墨出装置94の機能を実装することにより、
図2の全ての工程を飛行体又は車両にて実行するように構成してもよい。
【0084】
(不要波長吸収層について)
また、上記実施の形態2で説明した
図7の墨出用テープ3における不要波長吸収層31を省略してもよい。なお、この場合、不要波長吸収層31を構成していた物質を感光層32に追加してもよいし、当該物質を感光層32に追加しなくてもよい。
【0085】
(貼付用装置)
図14は、貼付用装置の内部を示す側面図である。なお、
図14においては、貼付用装置4の内部の各要素が実線で図示されており、当該内部の要素を収容しているケース400の外形が一点鎖線で図示されている。
【0086】
貼付用装置4は、実施の形態2で説明した
図7の墨出用テープ3を貼付するための装置であり、例えば、搬送テープ45が、巻き出しリール41側から繰り出されて、第1回転軸43及び第2回転軸44を介して、巻き取りリール42側で巻き取られるように構成されており、特に、墨出用テープ3が搬送テープ45と共に巻き出しリール41に巻回されていることとする。そして、搬送テープ45と共に墨出用テープ3(
図14では不図示)を繰り出して、第1回転軸43付近で当該墨出用テープ3をケース400の外部に繰り出し、床91に貼付してもよい。なお、墨出用テープ3の貼付方法はこの貼付用装置4を用いる手法に限らず、他の任意の手法(例えば、巻回された状態の墨出用テープ3を、人手で繰り出して貼付する手法等)で貼付してもよい。
【0087】
(噴霧以外の手法)
また、上記各実施の形態では、第1薬液11(つまり、第1物質)及び第2薬液21(つまり、第2物質)を噴霧する場合について説明したが、これに限らない。例えば、作業用のヘラ又は筆を用いて、作業員が第1薬液11及び第2薬液21を塗ってもよい。
【0088】
(対象物)
また、上記各実施の形態では、床91が対象物である場合について主に説明したが、壁92又は天井93を対象物として墨出しを行ってもよい。
【0089】
(応用)
また、上記各実施の形態及び変形例に記載の技術を任意に応用してもよい。例えば、
図1等では、床91等の対象物に対して照射されるレーザー光L1が直線である場合について例示したが、これに限らず、例えば、曲線のレーザー光L1を対象物に照射することにより、対象物に対して曲線の墨出し線を付してもよい。
【0090】
また、上記実施の形態1で説明した技術を用いて、意匠描画を行うことも可能となる。例えば、描画対象の外形に対応する線をレーザー光L1にて対象物に照射した上で、第1薬液11及び第2薬液21を順次噴霧することにより、対象物に描画対象を描画してもよい。
【0091】
また、上記実施の形態1で説明した技術を用いて、マスキング描画を行うことも可能となる。例えば、描画対象に対応する線をレーザー光L1にて対象物に照射した上で、マスキングする領域(つまり、描画を行わない隠す領域)に対してマスキング用紙を仮止めした後、第1薬液11及び第2薬液21を順次噴霧し、マスキング用紙を取り外すことにより、対象物に一部がマスキングされた(隠された)描画対象を描画してもよい。
【0092】
(特徴について)
また、上記各実施形態及び変形例において説明した特徴を任意に組み合わせてもよい。
【0093】
(付記)
付記1の墨出し方法は、対象物に対して墨出し線を付す墨出し方法であって、少なくとも前記対象物における前記墨出し線を付す墨出位置に前記墨出し線を付すための光である墨出用照射光を照射する照射工程、又は、前記対象物における前記墨出位置を含む領域に前記墨出用照射光を照射することにより変質する第1物質を塗布する塗布工程の内の一方の工程を行う第1工程と、前記照射工程又は前記塗布工程の内の他方の工程を行う第2工程と、前記第1物質に作用する第2物質を用いて、前記第1物質における前記墨出用照射光にて変質した一部又は当該一部以外の他の一部を除去することにより、前記第1物質における変質した一部に対応する前記墨出し線を生成する第3工程と、を含む。
【0094】
付記2の墨出し方法は、付記1に記載の墨出し方法において、前記第1工程では、前記照射工程を行い、前記第2工程では、前記塗布工程を行う。
【0095】
付記3の墨出し方法は、付記1又は2に記載の墨出し方法において、前記塗布工程では、前記第1物質を対象物に噴霧することにより塗布し、前記第3工程では、前記第2物質を前記第1物質に噴霧する。
【0096】
付記4の墨出し方法は、付記1から3のいずれか一項に記載の墨出し方法において、前記照射工程では、前記対象物に対して線状のレーザー光を照射するレーザー光出力装置から出力される当該レーザー光、又は、前記対象物に対して面状に投射光を投射する投射装置から出力される当該投射光を、前記墨出用照射光として照射する。
【0097】
付記5の墨出し方法は、付記1から4のいずれか一項に記載の墨出し方法において、前記第1物質は、少なくともハロゲン化銀を含む複数種類からなる物質であり、前記第2物質は、現像定着液に対応する物質である。
【0098】
(付記の効果)
付記1に記載の墨出し方法によれば、墨出用照射光を照射する工程、第1物質を塗布する工程、及び第2物質を用いて墨出し線を生成する工程を含むことにより、例えば、従来の墨つぼを用いて墨出しする作業を省略することができるので、墨出し作業の作業効率を向上させることが可能となる。
【0099】
付記2に記載の墨出し方法によれば、第1工程では照射工程を行い、第2工程では塗布工程を行うことにより、例えば、対象物に照射されている墨出用照射光を基準にして、第1物質を塗布することができるので、第1物質を適切な位置に適切な量だけ迅速に塗布することができ、墨出し作業の作業効率を更に向上させることが可能となり、また、第1物質の無駄な使用を抑制することが可能となる。
【0100】
付記3に記載の墨出し方法によれば、第1物質を対象物に噴霧することにより塗布し、また、第2物質を前記第1物質に噴霧することにより、例えば、作業員が手作業を行いにくい場所(一例としては、壁と床とが交わる部分、角部、又は曲線部等)等においても各物質を容易に塗布又は付着させることが可能となる。
【0101】
付記4に記載の墨出し方法によれば、レーザー光又は投射光を墨出用照射光として照射することにより、例えば、レーザー光を用いて墨出位置を照射して当該墨出位置に対して確実に墨出し線を付すことが可能となり、また、投射光を用いて一定の領域における任意の個所に墨出し線を付すことが可能となる。
【0102】
付記5に記載の墨出し方法によれば、第1物質は少なくともハロゲン化銀を含む複数種類からなる物質であり、また、第2物質は現像定着液に対応する物質であることにより、例えば、第2物質を用いて、第1物質における墨出用照射光にて変質した一部以外の他の一部を除去することにより、第1物質における変質した一部に対応する墨出し線を生成することができるので、墨出し線を確実に付すことが可能となる。
【符号の説明】
【0103】
1 第1薬液用スプレー装置
2 第2薬液用スプレー装置
3 墨出用テープ
4 貼付用装置
11 第1薬液
12 第1薬液層
21 第2薬液
31 不要波長吸収層
32 感光層
33 接着層
41 巻き出しリール
42 巻き取りリール
43 第1回転軸
44 第2回転軸
45 搬送テープ
91 床
92 壁
93 天井
94 墨出装置
95 プロジェクタ装置
121 第1薬液側変質部
321 感光層側変質部
400 ケース
941 照射部
D1 幅
D2 幅
L1 レーザー光
L2 投射光
L11 レーザー光
L12 レーザー光
L21 墨出用画像