(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタ制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/02 20060101AFI20240329BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240329BHJP
B41J 2/025 20060101ALI20240329BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240329BHJP
B41J 29/42 20060101ALI20240329BHJP
G06F 3/12 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B41J2/02
B41J2/01 401
B41J2/025
B41J29/38
B41J29/42 F
G06F3/12 308
G06F3/12 330
(21)【出願番号】P 2020084512
(22)【出願日】2020-05-13
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青野 正裕
(72)【発明者】
【氏名】大川 佳祐
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-058715(JP,A)
【文献】国際公開第2018/038036(WO,A1)
【文献】特開2013-039788(JP,A)
【文献】国際公開第2015/105031(WO,A1)
【文献】特開昭63-257648(JP,A)
【文献】特開2003-311971(JP,A)
【文献】特開2017-071141(JP,A)
【文献】特開2017-149120(JP,A)
【文献】特開2013-141807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
B41J 29/38 - 29/42
G06F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたインクをインク粒子にして噴出し、該インク粒子に印字内容に応じた帯電電圧を印加し、該帯電電圧に応じて前記インク粒子を偏向させて印字を行う印字ヘッドと、
該印字ヘッドへの該インクを供給する本体と、該印字ヘッドおよび該本体を制御する制御部とを有し、前記制御部は、外部からソフトウェアや情報を入力する機能を有するインクジェットプリンタであって、
前記制御部は、印字制御を実行する印字制御部と、顧客の仕様に対応するプリンタ特性変更ソフトウェアにより前記印字制御部を制御するプリンタ特性変更ソフトウェア制御部と、操作表示部とを備えており、
前記プリンタ特性変更ソフトウェア制御部は、前記プリンタ特性変更ソフトウェアとカスタムGUIとを記憶し、前記カスタムGUIを前記操作表示部に表示し、前記操作表示部の操作により前記プリンタ特性変更ソフトウェアを実行してプリンタ特性変更ソフトウェア制御パラメータを求め、前記プリンタ特性変更
ソフトウェア制御パラメータに基づいて前記印字制御部を制御
し、
前記プリンタ特性変更ソフトウェアを操作するためのプリンタ特性変更ソフトウェア操作GUIを作成して前記操作表示部に表示し、前記プリンタ特性変更ソフトウェア操作GUIを通して前記プリンタ特性変更ソフトウェアを実行し、
前記プリンタ特性変更ソフトウェア制御パラメータに基づく前記印字制御部の制御を前記プリンタ特性変更ソフトウェアが作成した制御用APIを経由して実行するようにした、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
請求項1記載のインクジェットプリンタにおいて、前記プリンタ特性変更ソフトウェアは、前記インクの特性を設定するインク特性設定ソフトウェアであり、前記インク特性設定ソフトウェアを用いて、前記印字ヘッドにおけるインク温度および前記インク粒子を噴出するための励振電圧の励振周波数を制御することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
請求項1記載のインクジェットプリンタにおいて、前記プリンタ特性変更ソフトウェア制御部は、前記プリンタ特性変更ソフトウェアの実行状況を表示し監視することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項4】
入力されたインクをインク粒子にして噴出し、該インク粒子に印字内容に応じた帯電電圧を印加し、該帯電電圧に応じて前記インク粒子を偏向させて印字を行う印字ヘッドと、該印字ヘッドへの該インクを供給する本体と、該印字ヘッドおよび該本体を制御する制御部とを有し、前記制御部は、外部からソフトウェアや情報を入力する機能を有するインクジェットプリンタ制御方法であって、
顧客の仕様に対応したプリンタ特性変更ソフトウェアおよびカスタムGUIを入力し、前記カスタムGUIを操作表示部に表示し、前記操作表示部の操作に基づいて、前記プリンタ特性変更ソフトウェアを実行してプリンタ特性変更ソフトウェア制御パラメータを求め、前記プリンタ特性変更ソフトウェア制御パラメータに基づいてインクジェットプリンタの印字動作を制御
し、
前記プリンタ特性変更ソフトウェアを操作するためのプリンタ特性変更ソフトウェア操作GUIを作成して前記操作表示部に表示し、前記プリンタ特性変更ソフトウェア操作GUIを通して前記プリンタ特性変更ソフトウェアを実行し、
前記プリンタ特性変更ソフトウェア制御パラメータに基づく前記インクジェットプリンタの印字動作の制御を前記プリンタ特性変更ソフトウェアが作成した制御用APIを経由して実行するようにした、インクジェットプリンタ制御方法。
【請求項5】
請求項4記載のインクジェットプリンタ制御方法において、前記プリンタ特性変更ソフトウェアは、前記インクの特性を設定するインク特性設定ソフトウェアであり、前記インク特性設定ソフトウェアを用いて、前記印字ヘッドにおけるインク温度および前記インク粒子を噴出するための励振電圧の励振周波数を制御することを特徴とするインクジェットプリンタ制御方法。
【請求項6】
請求項4記載のインクジェットプリンタ制御方法において、
前記プリンタ特性変更ソフトウェアの実行状況を監視することを特徴とするインクジェットプリンタ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、例えば、生産ラインを搬送される製品に、製造年月日、製品名、消費期限、等の情報を印字するなど、産業用に幅広く用いられている。産業用に用いるインクジェットプリンタでは、適正な印字が行えなくなると製品の生産に悪影響を与える。そのため、適正な印字を行うために、インクジェットプリンタを駆動するための駆動制御パラメータを適切に設定することが重要である。この駆動制御パラメータは、使用環境などにより異なるため、その設定作業は煩雑であり、設定作業を簡単に行うための技術が開発されている。
【0003】
例えば、特開2000-71437号公報(特許文献1)には、特定の駆動条件における記録ヘッドと被記録媒体の相対速度に関する相対速度情報と環境条件に関する環境情報を入力情報とし記録ヘッドの駆動条件を出力情報とするニューラルネットワーク手段によって制御テーブルを作成するインクジェット記録装置(インクジェットプリンタ)の技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェットプリンタを顧客の環境にマッチングさせるにあたり、顧客ごとに特有の要求が発生しうる。また、顧客要求には専用の操作インターフェースが必要になるものも存在している。このような顧客の要求に応じるためには、プリンタの制御ソフトウェアを顧客向けに改変する必要がある。しかし、顧客ごとに異なる要求に対して、個別に制御ソフトウェアを改変するには工数がかかってしまうという課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、顧客ごとに異なる要求に対し、顧客が簡単な操作により顧客仕様に対応した制御パラメータの設定を行うことができるインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、その一例を挙げると、入力されたインクをインク粒子にして噴出し、該インク粒子に印字内容に応じた帯電電圧を印加し、該帯電電圧に応じて前記インク粒子を偏向させて印字を行う印字ヘッドと、該印字ヘッドへの該インクを供給する本体と、該印字ヘッドおよび該本体を制御する制御部とを有し、前記制御部は、外部からソフトウェアや情報を入力する機能を有するインクジェットプリンタであって、前記制御部は、印字制御を実行する印字制御部と、顧客の仕様に対応するプリンタ特性変更ソフトウェアにより前記印字制御部を制御するプリンタ特性変更ソフトウェア制御部と、操作表示部とを備えており、前記プリンタ特性変更ソフトウェア制御部は、前記プリンタ特性変更ソフトウェアとカスタムGUIとを記憶し、前記カスタムGUIを前記操作表示部に表示し、前記操作表示部の操作により前記プリンタ特性変更ソフトウェアを実行してプリンタ特性変更ソフトウェア制御パラメータを求め、前記プリンタ特性変更制御パラメータに基づいて前記印字制御部を制御するようにした、インクジェットプリンタである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、顧客ごとに異なる要求に対し、顧客が簡単に顧客仕様に対応した制御パラメータを設定することができるインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタ制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例1におけるインクジェットプリンタの全体構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施例1におけるインクジェットプリンタの印字機構を示す図である。
【
図3】本発明の実施例1における制御部の構成を示す図である。
【
図4】インク特性設定ソフトウェアの機能を説明する図である。
【
図6】カスタムソフトウェア操作GUIの例を示す図である。
【
図8】本発明の実施例2における制御部の構成を示す図である。
【
図10】プリンタ特性変更ソフトウェアの構成を示す図である。
【
図11】プリンタ特性変更ソフトウェアの作成手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の具体的な実施例について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明する本発明の実施例に限定されるものではない。また、以下の各実施例の説明および各図面において、同様の構成要素には同一の名称、符号を付し、その重複する説明を省略する場合がある。
【0011】
≪実施例1≫
本発明の本実施例では、顧客要求に合わせてカスタマイズした設定作業を容易に行うことができるインクジェットプリンタを示す。すなわち、顧客によるカスタマイズされた設定作業を容易に行うために、ソフトウェア及びグラッフィックユーザインターフェイス(以下、GUI)を基本制御ソフトの変更なくインストール可能なインクジェットプリンタの例を示す。この実施例1における具体的な動作の例としては、インクの温度特性設定ソフトウェアについて示す。
【0012】
まず、
図1により、本発明の実施例1におけるインクジェットプリンタの全体構成について説明する。
図1において、インクジェットプリンタ1は、プリンタ全体の制御を行う制御部10と、制御部10の制御により印字を行う印字ヘッド20と、印字ヘッド20に印字用のインクを供給するとともに、印字ヘッドで使用しないインクを回収する本体30とを有する。2は、パーソナルコンピュータ(以下、PCと称する。)であり、「プリンタ特性変更ソフトウェア」および「カスタムGUI」を作成し、制御部10との間で情報のやり取りを行う機能を有するコンピュータである。
【0013】
制御部10の印字制御部13は、印字ヘッド20および本体30を駆動制御し、印字作業を実行するために設けられる。印字ヘッド20は、インク粒子を噴出し、被印字物3に印字を行う。なお、印字ヘッド20と本体30の概略構成及び動作は後述する。
【0014】
操作表示部14は、印字制御部13の駆動(印字動作)のために必要なデータの入力や、操作に必要な情報を表示するために設けられる。なお、この実施例では、操作表示部14は操作部と表示部とが一体化されたタッチパネルとして示しているが、操作部と表示部とを別々に設置した操作表示部を用いても良い。また、操作表示部14は、顧客(操作者)が欲する特別な仕様(顧客が要求する仕様)の制御パラメータ(プリンタ特性変更制御パラメータ)の設定作業を行い、その制御パラメータに基づいた印字動作を実行可能にするために、設定作業を実施する際のカスタムGUIを表示し、この表示場面を操作して顧客が要求する仕様の設定作業を実行するために使用される。
【0015】
プリンタ特性変更ソフトウェア制御部11は、PC2からプリンタ特性変更ソフトウェアおよびカスタムGUIを入出力部15を介して入力し、プリンタ特性変更ソフトウェア制御部11内の記憶部(
図3に示すプリンタ特性変更ソフトウェア記憶部111,カスタムGUI記憶部112)に記憶する。プリンタ特性変更ソフトウェア制御部11は、記憶したプリンタ特性変更ソフトウェアおよびカスタムGUIを用いて、顧客の操作により、顧客が要求する仕様に合ったプリンタ特性変更制御パラメータの設定作業を実行する。プリンタ特性変更ソフトウェア制御部11の詳細は後述する。
【0016】
操作表示部14には、カスタムGUIが表示される。表示されるGUIは、プリンタ特性変更ソフトウェア制御部11で生成される。制御用API12は、プリンタ特性変更ソフトウェアが作成したインクジェットプリンタを制御するために用いるAPIである。プリンタ特性変更ソフトウェアは自由に印字制御部13を制御することはできない。制御はこの制御用API12を経由して実行され、これによりシステムのセキュリティが担保される。
【0017】
次に、
図2により、印字機構(印字ヘッド20、本体30)および印字動作について説明する。
図2は、インクジェットプリンタの印字機構の概略を示す図である。
【0018】
図2において、本体30内には、印字用のインクを保有するインク容器31が配置されている。このインク容器31内のインクは、インク供給経路の途中に設けた開閉弁32およびポンプ33(インク供給用)を介して印字ヘッド20内のノズル21に供給される。すなわち、開閉弁はインク供給時には開状態にし、ポンプ33を駆動することにより、インクがノズル21に供給される。ノズル21には、ピエゾ素子が組み込まれている。このピエゾ素子に励振電圧生成器22から所定周波数の励振電圧を供給することにより、その振動によってインクが粒子化され噴出する。ノズル21から噴出されたインク粒子は、帯電電極23に供給された電圧により、印字する文字に対応して帯電される。帯電されたインク粒子は、偏向電極24により偏向され、被印字物3に向け飛翔し、被印字物3に着弾する。これにより、ラインを移動中の被印字物3に印字がなされる。一方、印字に使用しないインク粒子は、帯電電極23において帯電されず、偏向電極24内を直進し、ガター25に捕捉される。ガター25に捕捉されたインク粒子は、不使用インクとして、回収経路途中に設けた開閉弁34およびポンプ35(インク回収用)を介してインク容器31に回収される。すなわち、開閉弁34は開状態としてポンプ35を駆動することにより、不使用インクは回収される。
図2の矢印は、インクの流れる方向を示している。これら印字機構(印字ヘッド20、本体30)の駆動制御は、印字制御部13(
図1参照)により制御される。なお、実際のインクジェットプリンタでは、インクの粘度を検出する粘度計、インク粘度を調整するための溶剤が溶剤容器に貯留されており、粘度が所定範囲内になるよう溶剤をインク容器31に供給する機器を有する。また、インク容器31内のインクが印字により少なくなった場合に、補助インクをインク容器31に補充する機器も有する。これらの機器は、この
図2では省略している。
【0019】
次に、
図3により、プリンタ特性変更ソフトウェア制御部11について説明する。
図3では、実施例1におけるプリンタ特性変更ソフトウェア制御部11の機能ブロック構成を示している。
【0020】
図3において、プリンタ特性変更ソフトウェア制御部11は、PC2で作成されたプリンタ特性変更ソフトウェアを入力し記憶する。具体的には、プリンタ特性変更ソフトウェア制御部11内のプリンタ特性変更ソフトウェア記憶部111にプリンタ特性変更ソフトウェアを記憶する。顧客要求に応えるためのプリンタ特性変更ソフトウェアは、PC2内のプリンタ特性変更ソフトウェア作成部201で作成される。プリンタ特性変更ソフトウェア制御部11に保存(記憶)されたプリンタ特性変更ソフトウェアは、プリンタ特性変更ソフトウェア実行部113により実行される。また、プリンタ特性変更ソフトウェア制御部11は、PC2で作成されたカスタムGUIを記憶する。具体的には、プリンタ特性変更ソフトウェア制御部11内のカスタムGUI記憶部112に記憶される。カスタムGUIは、PC2のカスタムGUI作成部202で作成される。
【0021】
ここで、プリンタ特性変更ソフトウェアについて、
図10および
図11を用いて説明する。
まず、
図10にプリンタ特性変更ソフトウェアの機能構成を示す。最初にプリンタ特性変更GUI1001を用いて、ユーザ(顧客)は特性変更ソフトウェア1002に変更したい特性に設定したいパラメータを入力する。特性変更ソフトウェア1002内部の特性設定パラメータ受信部1003で、プリンタ特性変更GUIからのパラメータを受信する。受信した値に基づき、プリンタ特性設定ソフトウェアはプリンタ特性設定API呼び出し部1004から、あらかじめインプジェットプリンタに備わるプリンタ特性設定API1005を呼び出す。これによりプリンタ特性設定GUIからユーザが設定した値が決められたプリンタ特性に設定される。
【0022】
次に、
図11により、プリンタ特性変更ソフトウェアの作成手順を説明する。まず、顧客の要求に基づき、ステップ1101において、設定・変更したいプリンタ特性を選定する。選定した特性に対して、その特性を変更するためのAPIがプリンタ特性設定APIとしてあらかじめプリンタには備わっている。そのため、ステップ1102において、プリンタ特性が選定されると、使用するAPIは自動的に決定される。次に、ステップ1103において、APIには設定のために必要なパラメータが決定される。そして、ステップ1104において、そのパラメータをプリンタ特性変更GUIから受信するために、プリンタ設定パラメータ受信部を作成する。これによりプリンタ特性変更ソフトウェアが作成可能である。
【0023】
さて、再び
図1および
図3において、カスタムGUIは、カスタムGUI実行部115にて実行される。カスタムGUIの実行とは、具体的には操作者(顧客)からの入力(操作表示部14から入力する)を受付け、入力された内容をプリンタ特性変更ソフトウェア制御パラメータ114に反映するという工程である。
【0024】
プリンタ特性変更ソフトウェア実行部113は、プリンタ特性変更ソフトウェア制御パラメータ114の内容に基づいて、プリンタ特性変更ソフトウェアを実行し、顧客が要求する制御パラメータを作成する。プリンタ特性変更ソフトウェアおよびカスタムGUIにより作成した顧客が要求する制御パラメータを印字制御部13に出力する場合には、前述した制御用APIを用いる。カスタムGUI実行部115は、プリンタ特性変更ソフトウェア操作GUI116を作成し、カスタムソフトウェアを操作するGUIを操作表示部14に提供する。このGUIは、操作表示部14に表示される。このGUIを通して、プリンタ特性変更ソフトウェアの実行と、カスタムGUIの呼び出しが可能となる。プリンタ特性変更ソフトウェアおよびカスタムGUIにより作成した顧客が要求する制御パラメータを印字制御部13に出力する場合には、前述した制御用APIを用いる。
【0025】
次に、この実施例における具体的な制御パラメータの設定動作を、インクの温度特性設定パラメータを作成する場合を例にとり説明する。
【0026】
まず、ノズルに与える励振周波数は、インクの特性によって最適値が異なる。また、温度によりインク特性は変化するので、温度に合わせて励振周波数を調節する必要がある。そこで、インクジェットプリンタは、温度とそれに応じた最適励振周波数の温度励振周波数テーブルを保持している。この温度励振周波数テーブルは、実験的に決定される。つまり、ある温度において励振周波数を変化させ、印字の品質を見て最適な周波数を決定するということである。通常、主要なインクに関しては、テーブルを事前にインクジェットプリンタ制御部に保持している。しかし、インクには顧客専用にカスタマイズしたものもあり、これらはそれぞれテーブルの決定が必要となる。また、インクによっては、温度励振周波数テーブルだけではなく粘度に対する励振周波数テーブルが必要なものもある。他にもインク固有の設定値が存在し、テーブル決定ソフトウェアを汎用的に作るのは難しい。
そこで、本実施例では、プリンタ特性変更ソフトウェアとして温度励振周波数テーブルと粘度励振周波数テーブルを設定可能なインク特性設定ソフトウェア、カスタムGUIとして温度励振周波数テーブルを設定するGUIを作成する例を示す。
【0027】
プリンタ特性変更ソフトウェアは、PC2内のプリンタ特性変更ソフトウェア作成部によって作成される。これは例えばC言語で記述され、コンパイルすることでソフトウェアとなる。プリンタ特性変更ソフトウェアが実行され、制御パラメータが生成された後、インクジェットプリンタを制御する場合(具体的には、印字制御部13が印字ヘッド20および本体30を制御する場合)には、制御APIを用いる。制御APIは例えばC言語のライブラリという形で提供され、ライブラリの関数を実行することでインクジェットプリンタを制御できる。プリンタ特性変更ソフトウェアには、たとえばコマンドライン引数という形で入力を与えることができる。これにより、プリンタ特性変更ソフトウェア制御パラメータを与えることが可能である。
【0028】
次に、
図4により、インク特性設定ソフトウェアの機能を説明する。
図4において、コマンドライン引数41により、温度特性書込モード42と粘度特性書込モード44が選択される。そして、それぞれのモードにおいて、対応するAPI(温度特性書込API43、粘度特性書込API45)を用いてインク特性を設定する。
【0029】
次に、
図5により、カスタムGUIの例を説明する。
図5に示すGUIは、操作表示部14に表示される。設定箇所選択部52では、設定したい温度を選択することが出来る。選択した温度は特性表示部51に表示される。選択した温度(この例では30℃)に対して励振周波数設定部53に励振周波数を入力して所望の励振周波数に設定する。温度を選択し、励振周波数を設定すると、それに対応した特性が特性表示部51に表示される。この特性で問題が無ければ、設定完了ボタン54を押下する。このカスタムGUIは、例えばHTML5,CSS,Javascriptを用いて作成される。設定完了ボタン54の押下により、設定値はプリンタ特性変更ソフトウェア制御パラメータ114として保存される(
図3参照)。これは例えばテキストファイルの形式で保存される。
【0030】
PC2で作成されたプリンタ特性変更ソフトウェアは、入出力部15を介してプリンタ特性変更ソフトウェア記憶部に入力される。この入力は、例えばSSHサーバであり、SSHプロトコルを用いて実行ファイルを送付する形で実現される。カスタムGUIについても同様にして実現される。
【0031】
プリンタ特性変更ソフトウェア実行部113では、プリンタ特性変更ソフトウェアに対し、プリンタ特性変更ソフトウェア制御パラメータ114にコマンドライン引数を与えて実行する。これは、例えばシェルスクリプトで実現する。このスクリプトはプリンタ特性変更ソフトウェア入力部でソフトを入力する際に、自動生成するべきである。
【0032】
図6にプリンタ特性変更ソフトウェア操作GUIの例を示す。ソフト名表示部61にソフト名が表示されている。設定画面ボタン62を押下すると、カスタムGUIが呼び出される。実行ボタン63を押下すると、プリンタ特性変更ソフトウェア実行部であるシェルスクリプトが実行され、ソフトウェアが起動する。
【0033】
なお、プリンタ特性変更ソフトウェアやカスタムGUIは、セキュリティの観点から、インクジェットプリンタ制御部から隔離されていることが望ましい。これは仮想OSやコンテナといった技術で実現される。例えば、コンテナを使うこととすると、コンテナの内部と外部は通信により結合している。プリンタ特性変更ソフトウェアの実行は、外部から内部に実行のための通信を発することにより実現する。カスタムGUIの表示には、例えばwebサーバが用いられる。GUI描画部としてwebブラウザを使用し、コンテナ内部のwebサーバにアクセスしてカスタムGUIを表示する。制御APIもこの通信により実現される。コンテナ内部からインクジェットプリンタの印字制御部13に対して所定の通信を発することで、インクジェットプリンタの制御を実現する。
【0034】
そのような構成では、プリンタ特性変更ソフトウェアとカスタムGUIが分離されているので、同じソフトウェアに異なるGUIを用意することが可能である。これにより顧客要求に柔軟に対応することが可能である。
【0035】
次に、
図7により、別のカスタムGUIの例を示す。これは用意された温度に対し、用意された選択肢の中から励振周波数を選択する方法である。このGUIを用いても、同様のプリンタ特性変更ソフトウェア制御パラメータを生成することが可能である。また、粘度特性の設定が必要なインクに対しても、同様に同じソフト、異なるGUIを用いることで要求に応えることが可能である。また、言語を英語に変更する際にも英語版のGUIをつくるだけで対応することが可能である。
【0036】
以上説明したように、本発明の実施例1では、顧客ごとに異なる要求に対し、顧客が簡単に顧客仕様に対応した制御パラメータを設定することができる。
【0037】
≪実施例2≫
次に、本発明の実施例2について
図8を用いて説明する。この実施例2では、実施例1においてプリンタ特性変更ソフトウェアから制御するだけではなく、インクジェットプリンタの状態を監視する例を示す。
【0038】
図8は、実施例2におけるプリンタ特性変更ソフトウェア制御部11の構成例を示す。実施例1と異なりプリンタ特性変更ソフトウェア制御パラメータはここでは省略し、プリンタ特性変更ソフトウェア監視パラメータ120を記載している。プリンタ特性変更ソフトウェアは制御APIを通してインクジェットプリンタの状態を取得し、ここに書き込む。これは、例えば実施例1と同様にテキストファイルである。書き込むタイミングは、例えば周期監視でもよいし、カスタムGUIからシグナルを発して、シグナルハンドラの起動による書き込みでもよい。監視パラメータは、例えばインクの温度や現在の励振周波数である。
【0039】
図9に、実施例2におけるカスタムGUIの例を示す。ソフトウェア監視パラメータ120として保存されている情報を取得し、表示する。例えばインクの温度や励振周波数である。
【0040】
この本発明の実施例2によれば、顧客が簡単に顧客仕様に対応した制御パラメータを設定することができるだけでなく、監視を行うプリンタ特性変更ソフトウェアおよびカスタムGUIを作成することが可能である。
【0041】
≪その他の実施例≫
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、本発明は様々な変形例が含まれる。また、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【符号の説明】
【0042】
1…インクジェットプリンタ、2…パーソナルコンピュータ(PC)、3…被印字物、10…制御部、11…プリンタ特性変更ソフトウェア制御部、12…盛業用API、13…印字制御部、14…操作表示部、15…入出力部、20…印字ヘッド、21…ノズル、22…励振電圧生成器、23…帯電電極、24…偏向電極、25…ガター、30…本体、31…インク容器、32…開閉弁、33…ポンプ、34…開閉弁、35…ポンプ、41…コマンドライン引数、42…温度特性書込モード、43…温度特性書込API、44…粘度特性書込モード、45…粘度特性書込API、51…特性表示部、52…設定箇所選択部、53…励振周波数設定部、54…設定完了ボタン、61…ソフト名表示部、62…設定画面ボタン、63…実行ボタン、111…プリンタ特性変更ソフトウェア記憶部、112…カスタムGUI記憶部、113…プリンタ特性変更ソフトウェア実行部、114…プリンタ特性変更送付とウェア制御パラメータ、115…カスタムGUI実行部、116…プリンタ特性変更ソフトウェア操作GUI、120…プリンタ特性変更ソフトウェア監視パラメータ、201…プリンタ特性変更ソフトウェア作成部、202…カスタムGUI作成部