(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】配管又は配線又はダクトのルート作成装置、配管又は配線又はダクトのルート作成方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/18 20200101AFI20240329BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20240329BHJP
G06F 30/27 20200101ALI20240329BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20240329BHJP
G06F 113/14 20200101ALN20240329BHJP
【FI】
G06F30/18
F16L1/00 Z
G06F30/27
G06Q10/04
G06F113:14
(21)【出願番号】P 2020086513
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 志郎
(72)【発明者】
【氏名】奥山 圭太
(72)【発明者】
【氏名】若林 英祐
(72)【発明者】
【氏名】山田 諄太
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-161694(JP,A)
【文献】特開2002-288250(JP,A)
【文献】特開平11-282893(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0104457(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/18
F16L 1/00
G06F 30/27
G06Q 10/04
G06F 113/14
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルを生成するセル生成装置と、
ルート探索アルゴリズムによりルートを生成するルート探索装置と、
ルート選択アルゴリズムによりルートを選択するルート選択装置と、
ルートを実座標に変換する実座標変換装置と、
ルートの情報を含むデータセットと、
前記データセットを学習する学習手段と、
前記学習手段により学習した結果を利用する学習運用手段と、を備え、
前記学習手段により学習した結果を、前記ルート探索装置によるルートの生成および前記ルート選択装置によるルートの選択の少なくともいずれか一方に利用することを特徴とする配管又は配線又はダクトのルート作成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の配管又は配線又はダクトのルート作成装置であって、
前記ルート探索装置でルートを生成する際、前記ルート探索アルゴリズムと前記学習運用手段を併用してルートを生成し、
前記ルート選択装置でルートを選択する際、前記ルート選択アルゴリズムと前記学習運用手段を併用して最適ルートを選択することを特徴とする配管又は配線又はダクトのルート作成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の配管又は配線又はダクトのルート作成装置であって、
前記データセットは、第1のデータセットと、前記第1のデータセットと異なる第2のデータセットを有し、
前記学習手段は、第1の学習手段と、前記第1の学習手段と異なる第2の学習手段を有し、
前記学習運用手段は、第1の学習運用手段と、前記第1の学習運用手段と異なる第2の学習運用手段を有し、
前記ルート探索装置でルートを生成する際、前記第1の学習手段で前記第1のデータセットを学習し、当該学習した結果を前記第1の学習運用手段によりルートの生成に利用し、
前記ルート選択装置でルートを選択する際、前記第2の学習手段で前記第2のデータセットを学習し、当該学習した結果を前記第2の学習運用手段によりルートの選択に利用することを特徴とする配管又は配線又はダクトのルート作成装置。
【請求項4】
請求項1に記載の配管又は配線又はダクトのルート作成装置であって、
前記学習手段および前記学習運用手段に深層学習を用いることを特徴とする配管又は配線又はダクトのルート作成装置。
【請求項5】
請求項1に記載の配管又は配線又はダクトのルート作成装置であって、
前記データセットは、ルートの形状、特性、機能、性能、座標のいずれかの情報を含むことを特徴とする配管又は配線又はダクトのルート作成装置。
【請求項6】
請求項1に記載の配管又は配線又はダクトのルート作成装置であって、
前記データセットは、配管の熱応力、圧力損失、振動、耐震、応力、減肉、二相流課題、水撃、施工性、検査性、アクセス性、機器操作性、物量、コストのいずれかの情報を含むことを特徴とする配管又は配線又はダクトのルート作成装置。
【請求項7】
請求項1に記載の配管又は配線又はダクトのルート作成装置であって、
前記ルート探索装置でルートを生成する際、前記ルート探索アルゴリズムと前記学習運用手段を交互に利用してルートを生成することを特徴とする配管又は配線又はダクトのルート作成装置。
【請求項8】
(a)空間を複数セルに分割し、ルートを敷設可能なセルを他のセルと区別する工程、
(b)ルート探索アルゴリズムによりルートを生成する工程、
(c)ルート選択アルゴリズムによりルートを選択する工程、
を有する配管又は配線又はダクトのルート作成方法であって、
ルートの情報を含むデータセットを学習手段により学習した結果を、前記(b)工程および前記(c)工程の少なくともいずれか一方に利用することを特徴とする配管又は配線又はダクトのルート作成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の配管又は配線又はダクトのルート作成方法であって、
前記(b)工程において、前記ルート探索アルゴリズムと前記学習手段により学習した結果を併用してルートを生成し、
前記(c)工程において、前記ルート選択アルゴリズムと前記学習手段により学習した結果を併用して最適ルートを選択することを特徴とする配管又は配線又はダクトのルート作成方法。
【請求項10】
請求項8に記載の配管又は配線又はダクトのルート作成方法であって、
前記(b)工程および前記(c)工程において、それぞれ異なる学習手段およびデータセットを利用することを特徴とする配管又は配線又はダクトのルート作成方法。
【請求項11】
請求項8に記載の配管又は配線又はダクトのルート作成方法であって、
深層学習を用いることを特徴とする配管又は配線又はダクトのルート作成方法。
【請求項12】
請求項8に記載の配管又は配線又はダクトのルート作成方法であって、
前記データセットは、ルートの形状、特性、機能、性能、座標のいずれかの情報を含むことを特徴とする配管又は配線又はダクトのルート作成方法。
【請求項13】
請求項8に記載の配管又は配線又はダクトのルート作成方法であって、
前記データセットは、配管の熱応力、圧力損失、振動、耐震、応力、減肉、二相流課題、水撃、施工性、検査性、アクセス性、機器操作性、物量、コストのいずれかの情報を含むことを特徴とする配管又は配線又はダクトのルート作成方法。
【請求項14】
請求項8に記載の配管又は配線又はダクトのルート作成方法であって、
前記(b)工程において、前記ルート探索アルゴリズムと前記学習手段により学習した結果を交互に利用してルートを生成することを特徴とする配管又は配線又はダクトのルート作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管又は配線又はダクトのルートの自動設計技術に係り、特に、発電プラントや鉄道関連施設等の複雑なルート設計に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電プラントや原子力発電プラント、石油化学プラント、鉄道関連施設等では、膨大な量の機器や配管、空調ダクト、ケーブルトレイ等が建屋内に配置される。また、これらの施設では、安全性確保の観点から多重の安全系統の配備が必要とされる場合も多く、そのための配管又は配線又はダクトのルート設計には、多種多様な設計ルールの適用を必要とするとともに、熟練者並みの信頼性の高い設計が求められる。
【0003】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には「配管の施工性を考慮した、遺伝的アルゴリズムによる配管自動ルーティング方法」が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には「配管ルートを探索するためのルート探索部と、複数の配管ルートを整列させるためのルート整列部を、備えた配管ルート作成装置、作成方法およびプログラム」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-288250号公報
【文献】特開2019-106141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、配管ルートの作成に遺伝的アルゴリズムを適用し、配管ルートの施工性を得点化している。この方法により、配管施工性の良いルートを複数生成し、複数の候補の得点から、準最適な配管ルートを選択できる。
【0007】
また、上記特許文献2では、配管ルートを探索するルート探索部と、複数の配管ルートを整列させるルート整列部の、複数の手段を備えている。これらの手段の構成により、配管ルート設計の処理の効率を向上させている。
【0008】
しかしながら、プラントの種類によっては、数百以上の多数で、かつ多種多様な設計ルールが規定されている場合があり、これらの多数かつ多種多様なルールの取り扱い方法については、特許文献1,2のいずれにも記載されていない。
【0009】
幾つかのプラントの配管自動設計では、多数の設計ルールの適用の困難性が、自動設計の実現に障害となっていた。すなわち、非常に多数の設計ルールを順守する必要のある配管を自動設計する場合、より効果的に設計ルールをルート生成及び選択過程に取り込む必要があった。
【0010】
しかしながら、遺伝的アルゴリズム等のアルゴリズムを用いて、配管ルートに多数のルールを適用させるためには、プログラミング作業が非常に煩雑な作業となり、実現が困難であった。また、仮に多数のルールをプログラムに取り込めた場合でも、ルート探索に多大な時間を必要とする可能性があるとともに、ルート探索ができない可能性があった。
【0011】
また、熟練者の経験で作成した配管を模倣する場合、これらの配管形状を具体的な設計ルールに全て体系化することは困難であった。これらの場合においても、アルゴリズムを用いて、プログラムで全て自動設計に適用することは現実的では無かった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、配管又は配線又はダクトのルートの自動設計において、多数かつ多種多様な設計ルールを適用しつつ、熟練者並みの信頼性の高いルート作成が可能な配管又は配線又はダクトのルート作成装置及び配管又は配線又はダクトのルート作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、セルを生成するセル生成装置と、ルート探索アルゴリズムによりルートを生成するルート探索装置と、ルート選択アルゴリズムによりルートを選択するルート選択装置と、ルートを実座標に変換する実座標変換装置と、ルートの情報を含むデータセットと、前記データセットを学習する学習手段と、前記学習手段により学習した結果を利用する学習運用手段と、を備え、前記学習手段により学習した結果を、前記ルート探索装置によるルートの生成および前記ルート選択装置によるルートの選択の少なくともいずれか一方に利用することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、(a)空間を複数セルに分割し、ルートを敷設可能なセルを他のセルと区別する工程、(b)ルート探索アルゴリズムによりルートを生成する工程、(c)ルート選択アルゴリズムによりルートを選択する工程、を有する配管又は配線又はダクトのルート作成方法であって、ルートの情報を含むデータセットを学習手段により学習した結果を、前記(b)工程および前記(c)工程の少なくともいずれか一方に利用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、配管又は配線又はダクトのルートの自動設計において、多数かつ多種多様な設計ルールを適用しつつ、熟練者並みの信頼性の高いルート作成が可能な配管又は配線又はダクトのルート作成装置及び配管又は配線又はダクトのルート作成方法を実現することができる。
【0016】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例1に係る配管ルート作成装置の概略構成及び動作(作用)を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る配管ルート作成システムを示す図である。
【
図3】本発明の実施例2に係る配管ルート作成装置の概略構成及び動作(作用)を示す図である。
【
図4】本発明の実施例3に係る配管ルート作成装置の概略構成及び動作(作用)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例1】
【0019】
図1及び
図2を参照して、本発明の実施例1に係る配管ルート作成装置の構成とその動作(作用)について説明する。なお、本発明は、配管又は配線又はダクトのルート作成に適用できるが、以下の説明では、配管のルート作成を代表的な実施例として説明する。すなわち、以下の配管で説明した内容は、配線、ダクトのルート生成にも同様に適用することができる。
【0020】
図1は、本実施例の配管ルート作成装置1の概略構成及び動作(作用)を示す図である。
図2は、本実施例の配管ルート作成システムを示す図であり、
図1の配管ルート作成装置1と、システムを構成する他の装置との関係を示している。
【0021】
本実施例の配管ルート作成装置1は、
図1に示すように、セル(格子)を生成する手段であるセル生成装置2と、ルート探索アルゴリズムによりルートを探索する手段であるルート探索装置3と、ルート選択アルゴリズムによりルートを選択する手段であるルート選択装置4と、配管ルートを実座標に変換する手段である実座標変換装置5と、配管データセット6Aと、配管データセット6Aを学習する手段であるデータ学習装置7と、データ学習装置7で学習した結果からルートを探索する学習運用装置(手段)8と、配管データセット6Aとは異なる内容の配管データセット6Bと、配管データセット6Bを学習する手段であるデータ学習装置9と、学習を運用して準最適なルートを選択する学習運用装置(手段)10で、構成されている。
【0022】
セルを生成するセル生成装置(手段)2は、例えば3次元CADの情報を基に、配管をルートする空間をセルで分割して、機器、壁、床、柱等が設置された障害物の領域と、配管ルートの敷設が可能な空間をセルで区別する。また、生成したセルの中心で、配管のルートを探索する。
【0023】
ルートを探索するルート探索装置(手段)3は、ルートの始終点、配管サイズ、障害物の位置等の設計情報を基に、迷路法や線分探索法等のルート探索アルゴリズム(以下、アルゴリズムと略す)をプログラミングして、配管のルートを生成する。これらのルートを探索するアルゴリズムでも、長さ最小等の簡易な設計ルールを考慮することはできる。
【0024】
本発明では、多数の複雑な設計ルールを適用するため、アルゴリズムとは別に、配管データセット6Aを学習するデータ学習装置(手段)7と、データ学習装置(手段)7での学習をルート探索に運用する学習運用装置(手段)8を併用して、配管ルートを生成している。
【0025】
なお、ルート探索時では全てのルールを学習させず、ルート探索に適切な設計ルールだけを適用する。また、ルート探索に用いた設計ルールのもとで、最適解の候補となる配管を多数本(数十本以上)生成する。データ学習装置(手段)7と学習をルート探索に運用する学習運用装置(手段)8には深層学習(ディープラーニング)が用いられる。
【0026】
また、学習する配管データセット6Aは、配管の形状、特性、機能、性能、座標等に関するデータを含んでいる。例えば、設計ルールを順守できている配管の3次元CADの情報や、配管のルート座標情報である。過去のプラントで、熟練者が設計した配管に関するデータ等も用いられる。
【0027】
また、学習する配管データセット6Aには、配管の熱応力、圧力損失、振動、耐震、応力、減肉、二相流課題、水撃、施工性、検査性、機器操作性、アクセス性、物量、コスト、良否、適合性等に関する情報も含むことも可能である。例えば、学習データの入力値として配管の形状、特性、機能、性能、座標に関するデータとし、出力値として配管の熱応力、圧力損失、振動、耐震、応力、減肉、二相流課題、水撃、施工性、検査性、機器操作性、アクセス性、物量、コスト、良否、適合性等を含む情報(設計ルール)としても良い。これらの情報を含むことにより、より最適な配管ルートが生成される。
【0028】
また、データセット内の配管と同様の形状の配管を生成したい場合にも、学習効果は有効である。配管データセット6Aは作成する配管毎に変更することが可能である。配管データセット6Aは、深層学習の重みとバイアスに加工しても良い。
【0029】
本発明では、複数生成した配管から、最適な配管を選択するルート選択装置(手段)4を備える。選択のアルゴリズムには遺伝的アルゴリズム等(以下、アルゴリズムと略す)が用いられる。
【0030】
また、本発明では、選択のアルゴリズムとは別に、配管データセット6Bを学習するデータ学習装置(手段)9と、データ学習装置(手段)9で学習した内容をルート選択に運用する学習運用装置(手段)10を併用して、最適な配管を選択する。
【0031】
ここでは、ルート探索で使用していない設計ルールを含めて学習させ、学習運用装置(手段)10で、これらの配管データセット6Bを適用させる。ここでも、データ学習装置(手段)9と学習を選択に運用する学習運用装置(手段)10は、深層学習(ディープラーニング)で作成される。また、学習する配管データセット6Bは、配管データセット6Aと同様のデータである。データセット内の配管と同様の形状の配管を選択したい場合にも、学習効果は有効である。
【0032】
最後に、実座標に変換する実座標変換装置(手段)5を用いて、セル上に生成した最適な配管ルートを、3次元CAD内での座標値に変換する。
【0033】
配管を生成する設計ルールは多数有り、適用する内容も多種多様である。場合によっては、数百以上の設計ルールを配管ルートに適用する必要がある。また、配管内を流れる流体の種類、使用される環境や、必要な信頼性は、配管毎に異なるため、配管毎に適用するルールセットが大きく異なる。これらの異なる設計ルールを各種アルゴリズムに組み込み、適用するためには、膨大なプログラミング作成作業が、配管毎に必要となり、現実的ではない。そのため、本発明のように、多数の設計ルールを考慮して作成された配管形状を学習する手段と、学習を運用する手段を別途備えることにより、多数設計ルールを考慮した自動設計を実現化できる。
【0034】
また、多種多様な配管に適用するため、配管毎に学習する配管データセットを変更できるようにする。一方で、学習を運用する手段だけでは、学習データが不足した場合、適切な配管ルートを探索できない場合がある。そのため、本発明では、プログラムで作成されたルート探索及びルート選択するアルゴリズムを保持するとともに、学習運用手段を併用して、設置している。なお、1本の配管(ルート)の生成過程において、学習を運用する手段と、アルゴリズムによりルートを生成する手段は、適切に交互に使用できる。
【0035】
例えば、学習を運用する手段で解(ルート)が見つからない場合、ルート探索アルゴリズムを運用させている。すなわち、学習を運用する手段は、ルート探索アルゴリズムやルート選択アルゴリズムとは別に機能を持たせており、学習運用手段とこれらのアルゴリズムは、条件に合わせて組み合わせて(ハイブリットで)用いている。また、学習を運用する手段は、各種アルゴリズムより、高速な処理が可能である。すなわち、学習及び学習を運用する手段を持たせることにより、ルート探索とルート選択の計算時間が大幅に減少する。
【0036】
さらに、多数の設計ルールを一度に取り込みすぎると、設計ルールが厳しすぎて、配管のルート探索及び選択ができなくなる可能性がある。そのため、設計ルールの学習と運用を、それぞれ複数段に分けて設置する。特に、配管生成過程の前後に学習手段及び学習運用手段を複数設置することが望ましい。
【0037】
なお、学習するデータセットは、各手段で異なったデータセットを与える。設計ルールには、必ず守るべきルール(以下、Mustルールと略す)と、守った方が望ましいルール(以下、Betterルールと略す)がある。ルート探索には主にMustルールを学習させ、ルート選択には主にBetterルールを覚えさせる。その結果、ルート探索時には、守るべきルールを順守した配管が多数生成され、ルート選択時には、守った方が良いルールも考慮されて、その中から最適な配管を選択する。そのため、本発明では、ルート探索前後に異なったデータセットを学習させた方が望ましく、複数の学習手段及び学習運用手段を備える。
【0038】
なお、ルート探索とルート選択で学習手段を分離しない場合には以下の問題も生じる。ルート探索時から全ての学習データを適用すると、ルーティング条件が厳しく、ルート探索に多くの時間を費やす。一方で、ルート選択時だけに全ての学習データを与えると、ルート探索時に非常にランダムな配管が生成され、最適な配管への収束が困難になる。そのため、本発明のように、適切に学習データを分離して、複数段に学習を行い、適用することにより、多数の設計ルールを考慮したルーティングの実現性と、最適解への収束性を向上させることができる。
【0039】
次に、
図2を用いて、上記で説明した配管ルート作成装置1を適用した配管ルート作成システムについて説明する。
図2は、本発明の配管ルート作成装置1と入出力装置の関係を示している。配管ルート作成装置1は、コンピュータ内にインストールされ、同じくコンピュータ内にインストールされた3次元CADシステム11のCADモデルのデータを入力として使用する。なお、3次元CADシステム11は、必ずしも配管ルート作成装置1と同一のコンピュータ内にインストールされる必要はない。
【0040】
また、配管データセット6をコンピュータ内のハードディスクに格納する。なお、配管データセット6は深層学習の重みとバイアスのデータに加工しても良い。
【0041】
これらの入力から、本発明の配管ルート作成装置1により、配管ルートを生成する。生成された配管ルートは、ルートを表示する表示装置12に表示される。なお、表示装置12は、3次元CADシステム11を兼用しても良い。
【0042】
以上説明したように、本実施例の配管又は配線又はダクトのルート作成装置は、セルを生成するセル生成装置2と、ルート探索アルゴリズムによりルートを生成するルート探索装置3と、ルート選択アルゴリズムによりルートを選択するルート選択装置4と、ルートを実座標に変換する実座標変換装置5と、ルートの情報を含むデータセット6(6A,6B)を備えており、ルート探索装置3でルートを生成する際、順守すべきマストルール(Mustルール)により複数のルートを生成し、ルート選択装置4でルートを選択する際、順守するのが望ましいベタールール(Betterルール)によりルート探索装置3で生成した複数のルートから最適ルートを選択する。
【0043】
これにより、従来の方法では多数かつ多種多様な設計ルール(マストルールおよびベタールール)を一度に取り込むことで最適なルート探索が困難になるのに対し、本実施例ではマストルールとベタールールを階層化して取り込むことで多数かつ多種多様な設計ルールを適用しつつ、熟練者並みの信頼性の高いルート作成することが可能となる。
【実施例2】
【0044】
図3を参照して、本発明の実施例2に係る配管ルート作成装置について説明する。
図3は、本実施例の配管ルート作成装置1の概略構成及び動作(作用)を示す図である。
【0045】
本実施例の配管ルート作成装置1は、
図3に示すように、ルートを作成するルート探索においては、実施例1(
図1)と同様に、ルート探索装置(手段)3のアルゴリズムとは別に、配管データセット6Aを学習するデータ学習装置(手段)7と、データ学習装置(手段)7での学習をルート探索に運用する学習運用装置(手段)8を併用して、配管ルートを生成している。一方、ルート選択においては、従来のルート選択装置(手段)4の遺伝的アルゴリズム等の選択アルゴリズムにより配管を選択する。
【0046】
本実施例のように、データ学習装置(手段)と学習運用装置(手段)を配管ルートを探索する場合だけに用いても効果が得られる。この場合、配管ルートの探索において、多数の設計ルールを適用することができる。
【実施例3】
【0047】
図4を参照して、本発明の実施例3に係る配管ルート作成装置について説明する。
図4は、本実施例の配管ルート作成装置1の概略構成及び動作(作用)を示す図である。
【0048】
本実施例の配管ルート作成装置1は、
図4に示すように、ルートを作成するルート探索においては、従来のルート探索装置(手段)3によるルート探索アルゴリズムにより配管ルートを生成する。一方、ルート選択においては、ルート選択装置(手段)4の選択アルゴリズムとは別に、配管データセット6Bを学習するデータ学習装置(手段)9と、データ学習装置(手段)9で学習した内容をルート選択に運用する学習運用装置(手段)10を併用して、最適な配管ルートを選択する。
【0049】
本実施例のように、データ学習装置(手段)と学習運用装置(手段)を配管ルートを選択する場合だけに用いても効果が得られる。この場合、配管ルートの探索において、多数の設計ルールを適用することができる。この場合、配管ルートの選択において、多数の設計ルールを適用することができる。
【0050】
以上説明したように、本発明の配管又は配線又はダクトのルート作成装置は、データセット6(6A,6B)を学習する学習手段(データ学習装置7,9)と、学習手段(データ学習装置7,9)により学習した結果を利用する学習運用手段(学習運用装置8,10)を備えており、学習手段(データ学習装置7,9)により学習した結果をルートの生成およびルートの選択の少なくともいずれか一方に利用する。
【0051】
また、データセット6(6A,6B)は、第1のデータセット6Aと、第1のデータセット6Aと異なる第2のデータセット6Bを有し、学習手段(データ学習装置7,9)は、第1の学習手段(データ学習装置7)と、第1の学習手段(データ学習装置7)と異なる第2の学習手段(データ学習装置9)を有し、学習運用手段(学習運用装置8,10)は、第1の学習運用手段(学習運用装置8)と、第1の学習運用手段(学習運用装置8)と異なる第2の学習運用手段(学習運用装置10)を有し、ルート探索装置3でルートを生成する際、第1の学習手段(データ学習装置7)で第1のデータセット6Aを学習し、当該学習した結果を第1の学習運用手段(学習運用装置8)によりルートの生成に利用し、ルート選択装置4でルートを選択する際、第2の学習手段(データ学習装置9)で第2のデータセット6Bを学習し、当該学習した結果を第2の学習運用手段(学習運用装置10)によりルートの選択に利用する。
【0052】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施例は本発明に対する理解を助けるために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…配管ルート作成装置、2…セル生成装置(手段)、3…ルート探索装置(手段)、4…ルート選択装置(手段)、5…実座標変換装置(手段)、6,6A,6B…配管データセット、7…データ学習装置(手段)、8…学習運用装置(手段)、9…データ学習装置(手段)、10…学習運用装置(手段)、11…3次元CADシステム、12…表示装置。