IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京窯業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-蓄熱体の評価試験方法 図1
  • 特許-蓄熱体の評価試験方法 図2
  • 特許-蓄熱体の評価試験方法 図3
  • 特許-蓄熱体の評価試験方法 図4
  • 特許-蓄熱体の評価試験方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】蓄熱体の評価試験方法
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20240329BHJP
   G01N 17/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
F28D20/00 A
G01N17/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020099829
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021193328
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】影山 健友
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-003023(JP,A)
【文献】中国実用新案第202581867(CN,U)
【文献】特開2016-085202(JP,A)
【文献】特開平10-246585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 17/00 - 21/00
F28F 21/00 - 27/02
G01N 17/00 - 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス焼結体を基体とする蓄熱体の耐性を評価する蓄熱体の評価試験方法であり、
一方向に開口した箱状の本体、及び、該本体の開口を被覆する蓋体を備え、前記本体と前記蓋体の双方が、単一の軸方向に延びて列設された隔壁により区画された複数のセルを備えるハニカム構造を有するセラミックス焼結体で形成されており、前記本体の底部と前記蓋体とを前記セルが貫通している容器を使用し、
前記本体に評価対象の蓄熱体を収容し、前記本体の開口を前記蓋体で被覆した状態の前記容器を、
実機の熱交換部に充填されている蓄熱体に埋設し、操業を行う
ことを特徴とする蓄熱体の評価試験方法。
【請求項2】
前記容器は、前記評価対象の蓄熱体の基体と同一種類のセラミックスで形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の蓄熱体の評価試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱体の耐性を評価する評価試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体の流路に配置され流体から熱を回収する蓄熱体の例として、蓄熱式バーナ(リジェネバーナ)の熱交換部に配される蓄熱体を挙げることができる。蓄熱式バーナは、鍛造炉、熱処理炉、溶解炉、焼成炉などの工業炉において使用されているバーナであり、バーナの燃焼により高温となった排ガスと、バーナの燃焼のために新たに供給されるガスとを、交互に熱交換部に流通させるべく、ガスの流通方向が所定時間間隔で切り換えられる。排ガスの熱は蓄熱体によって回収され、回収された熱によって、新たに供給されるガスが予熱される。
【0003】
種々の工場からの排ガスに含まれる揮発性有機化合物を燃焼処理する排ガス燃焼処理装置にも、蓄熱体を使用したものがある。これは、燃焼空間と連通する空間であって蓄熱体が配された熱交換部を複数備えており、未処理の排ガスが熱交換部を介して燃焼空間に導入されるモードと、燃焼空間で燃焼処理した処理済みのガスが熱交換部を介して外部に排出されるモードとに、各熱交換部を切替えるものである。燃焼空間で高温となった処理済みのガスは、熱交換部に配された蓄熱体に熱を与えて低温となって排出され、未処理の排ガスは高温の蓄熱体によって予熱されてから燃焼空間に導入されるため、熱効率よく排ガスの燃焼処理を行うことができる。
【0004】
このように使用される蓄熱体としては、従前より、アルミナなど耐火性の高いセラミックス焼結体が使用される。しかしながら、蓄熱体は、高温下で吸熱と放熱を繰り返すことにより熱衝撃を受けるため、脆性材料であるセラミックスは亀裂や割れを生じることがある。
【0005】
また、本出願人は、蓄熱体として、非酸化物セラミックスを使用することを提案している(特許文献1参照)。非酸化物セラミックスは共有結合性が高く、酸化物セラミックスに比べて硬度が高く、熱的特性に優れている利点がある。しかしながら、非酸化物セラミックスは、酸素の存在する高温の雰囲気下で使用されると、酸化されやすい。酸化が進行すると、蓄熱体としての熱的特性が変化するおそれや、表面の酸化層と非酸化物セラミックス層との境界から亀裂や割れが生じるおそれがある。
【0006】
このような酸化を防止することを目的として、本出願人は蓄熱体の少なくとも表面の一部を、ケイ酸系ガラスの酸化防止層で被覆することを提案している(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。しかしながら、ケイ酸系ガラスの酸化防止層は高温下で軟化・溶融するため、蓄熱体同士が付着したり、蓄熱体と熱交換部のケーシングとが付着したりすることがある。このような付着が生じると、ガスが流通する通路が閉塞されるおそれがある。また、蓄熱体を交換するメンテナンスにも支障をきたす。
【0007】
加えて、蓄熱体が実際に配される工業炉や排ガス燃焼処理装置では、雰囲気中に不純物が含まれている。不純物は、モリブデン、鉄、マンガン、クロム、ナトリウム、カリウム、硫黄、リンなど、極めて多種である。これら不純物の種類は、工業炉などで行われる処理の内容や、使用される処理剤によって異なる。
【0008】
このような不純物の中には、蓄熱体を構成する材料と反応するものが含まれるおそれがあり、化学反応によって蓄熱体の特性が変化することがあり得る。また、不純物が蓄熱体に付着すると、蓄熱体の熱交換特性が低下するおそれがある。加えて、蓄熱体に不純物が付着することにより、ガスが流通する通路が閉塞され、圧力損失が増大するおそれがある。特に、不純物の中には、蓄熱体に付着することによって粘性の高い被膜を形成するものがあり、剥がれにくく、ガスが流通する通路が早期に閉塞されるため、厄介である。例えば、上記の排ガス燃焼処理装置の処理対象の排ガスには、シリコーン樹脂が含まれることが多い。シリコーン樹脂の酸化分解により生じるシリカは、針状または繊維状であり、絡み合って皮膜化するため、ガスが流通する通路が早期に閉塞されてしまう。
【0009】
上記のように、蓄熱体が、蓄熱体としての作用を発揮しつつ長期に使用できるかどうかは、実際に使用される環境に大きく依存する。そのため、実験室の環境で蓄熱体の耐性を評価する試験を行うことは意義が小さく、実際に使用される環境で蓄熱体が示す耐性こそが評価される必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第6680668号公報
【文献】特許第5709007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、実際に使用される環境で蓄熱体が示す耐性を評価することができる蓄熱体の評価試験方法の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる蓄熱体の評価試験方法は、
「セラミックス焼結体を基体とする蓄熱体の耐性を評価する蓄熱体の評価試験方法であり、
一方向に開口した箱状の本体、及び、該本体の開口を被覆する蓋体を備え、前記本体と前記蓋体の双方が、単一の軸方向に延びて列設された隔壁により区画された複数のセルを備えるハニカム構造を有するセラミックス焼結体で形成されており、前記本体の底部と前記蓋体とを前記セルが貫通している容器を使用し、
前記本体に評価対象の蓄熱体を収容し、前記本体の開口を前記蓋体で被覆した状態の前記容器を、
実機の熱交換部に充填されている蓄熱体に埋設し、操業を行う」ものである。
【0013】
評価対象の蓄熱体の基体である「セラミックス焼結体」、及び、評価試験に使用される容器を構成する「セラミックス焼結体」の「セラミックス」としては、炭化珪素、アルミナ、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウム、を例示することができる。
【0014】
評価試験で評価する蓄熱体の「耐性」の評価は、蓄熱体として作用をどの程度の期間にわたり発揮できるかどうかの評価であり、評価項目としては、亀裂や割れ、不純物の付着、不純物との反応による成分変化、流体の流通路の不純物による閉塞、酸化の程度、コーティング剤の溶融に伴う蓄熱体同士の固着や流体の流通路の閉塞、を例示することができる。蓄熱体の耐性が低く耐用期間が短いと、蓄熱体の交換や洗浄等のメンテナンスのために頻繁に操業を停止する必要があるため、常に、より耐用期間の長い蓄熱体が要請されている。
【0015】
蓄熱体が使用される環境は、現場ごとに大きく相違する。例えば、蓄熱体が工業炉で使用される場合、それが鍛造炉であるか、溶解炉であるか、焼成炉であるか等、処理の種類によっても、処理対象の材料の種類によっても、設定温度が相違する。また、処理剤や添加剤の種類によって、雰囲気に含まれる不純物の種類が相違する。加熱源に使用される重油など燃料に由来する不純物もあり、その成分は燃料の種類や精製度に影響を受ける。蓄熱体が排ガス燃焼処理装置に使用される場合、その装置が設置されている工場での作業が、塗装であるか、接着であるか、洗浄であるか等、作業の種類によって、設定温度や燃焼残渣の種類が相違する。蓄熱体が配される熱交換部に流通させる流体の速度の設定も、現場ごとに種々である。
【0016】
このように、蓄熱体が使用される環境は、由来を種々とする多種類の要素が複雑に関係しているため、蓄熱体が使用される実際の環境を、実験室で再現することは不可能である。また、使用中の実機の熱交換部に充填される蓄熱体を、評価対象の蓄熱体にそっくり入れ替えて試験を行うことも、実際的ではない。
【0017】
そこで、本発明では、ハニカム構造を有するセラミックス焼結体で形成された容器に、評価対象の蓄熱体を収容し、実機の熱交換部に充填されている蓄熱体に埋設する。実機の熱交換部に充填されている蓄熱体とは、その時点で、実機における使用のために採用されている蓄熱体である。容器の蓋体と底部はセルが貫通しているため、熱交換部を流通する流体は、蓄熱体が収容されている容器内の空間を通過する。つまり、評価対象の蓄熱体を、その時点において現場で使用されている蓄熱体と、同一の環境に置くことができる。
【0018】
従って、この状態で一定期間を経過した後、容器から蓄熱体を取り出して各項目について評価すれば、実際に使用される環境で蓄熱体が示す耐性を評価することができる。評価対象の蓄熱体は、容器に入った状態で実機内に設置されるため、その時点において実機で採用されている蓄熱体に紛れてしまうことがない。
【0019】
ここで、容器としては、金属製の筒の両端を網などで通気可能に閉鎖したものも想到し得る。このような金属製の容器は、製造が容易である。しかしながら、本発明者の検討の結果、評価対象の蓄熱体を収容させる容器が金属製であると、正しい評価をすることができないことが分かった。具体的には、炭化珪素質焼結体を基体とする蓄熱体を、金属製の容器に収容した状態で実機の熱交換部の蓄熱体に埋設し、一定期間の経過後に取り出し、割れていた蓄熱体と正常な蓄熱体との双方について、電子顕微鏡で微細構造を観察すると共に、電子プローブマイクロアナライザを用いて元素分析を行った。その結果、割れていた蓄熱体の中に、正常な蓄熱体と微細構造や元素の分布において差異がないものが存在した。このことから、酸化や不純物との反応による変質が、割れの原因ではないと考えられた。また、熱交換部において非常に高温となる部分から低温の部分まで、温度の異なる複数箇所に埋設した容器に収容した蓄熱体の何れについても、同じように割れているものが存在し、熱衝撃が原因ではない割れが存在すると考えられた。
【0020】
このような割れは、評価対象の蓄熱体がセラミックス焼結体であり、容器を形成している金属とは熱膨張率が大きく異なるために、容器と内容物との熱膨張の差異に起因して、生じたものと考えられた。また、評価対象の蓄熱体が、炭化珪素質焼結体の基体にケイ酸系ガラスの酸化防止層のコーティングが施されている場合の割れは、次のように生じると考えられた。すなわち、高温下で金属製の容器が大きく熱膨張すると、容積が大きくなった容器の中で、熱膨張率の小さい蓄熱体の占める高さが低くなり、この高さ位置にケイ酸系ガラスの溶融層が生じる。この状態で温度が低下すると、溶融していたケイ酸系ガラスの層が容器の内壁と接着した状態で固化し、蓄熱体の移動を妨げる。一方で、金属製の容器は大きく熱収縮して容積が小さくなる。そのため、動けない蓄熱体に対し、容器の壁から圧力が作用することにより、蓄熱体に割れが生じる。つまり、金属製の容器を使用すると、評価試験のために持ち込まれた容器に起因する割れという、実際の使用現場では生じないはずの割れが生じてしまうという問題がある。
【0021】
このような問題に対し、本発明では、セラミックス焼結体で形成された容器を使用する。評価対象の蓄熱体と容器との熱膨張率の差異が小さいため、評価試験のために容器を用いることに起因して蓄熱体に生じる割れを抑制し、適正な評価を行うことができる。
【0022】
本発明にかかる蓄熱体の評価試験方法は、上記構成に加え、
「前記容器は、前記評価対象の蓄熱体の基体と同一種類のセラミックスで形成されている」ものとすることができる。
【0023】
容器が評価対象の蓄熱体と同じくセラミックス焼結体であることに加え、セラミックスの種類も同一であるため、容器と評価対象の蓄熱体の基体とで熱膨張率が同一である。従って、容器との熱膨張率の差異に起因する割れの問題なく、より適正に蓄熱体の評価を行うことができる。
【0024】
次に、本発明にかかる蓄熱体の評価試験方法で使用される容器は、
「一方向に開口した箱状の本体と
該本体の開口を被覆する蓋体と、を具備し、
前記本体と前記蓋体の双方が、単一の軸方向に延びて列設された隔壁により区画された
複数のセルを備えるハニカム構造を有するセラミックス焼結体で形成されており、前記本
体の底部と前記蓋体とを前記セルが貫通している」ものである。
【0025】
これは、上記の蓄熱体の評価試験方法に使用される、評価試験用の部材としての容器の構成である。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明によれば、実際に使用される環境で蓄熱体が示す耐性を評価することができる蓄熱体の評価試験方法を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】(a)本実施形態の蓄熱体の評価方法に使用される容器20の斜視図であり、(b)図1(a)の容器の本体を高さ方向の中間で切断した切断部端面図である。
図2】本実施形態の蓄熱体の評価方法の説明図である。
図3図1(a)の容器の本体を接合した場合の斜視図である。
図4】本実施形態の蓄熱体の評価方法に使用される他の容器20bの斜視図である。
図5】本実施形態の蓄熱体の評価方法に使用される他の容器20cの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態である蓄熱体の評価試験方法について、図面を用いて具体的に説明する。
【0029】
まず、蓄熱体の評価試験方法に使用される容器20の構成について、図1を用いて説明する。容器20は、一方に開口部25を有する箱状の本体21と、開口部25を被覆する蓋体22とを備えている。本体21と蓋体22とは、何れもハニカム構造を有するセラミックス焼結体で形成されている。ハニカム構造は、単一の軸方向に延びて列設された隔壁12により区画された複数のセル11を備える構造である。容器20において、本体21の底部と蓋体22とを、セル11が貫通している。
【0030】
このような容器20は、次のように製造することができる。まず、セラミックス原料粉末をバインダ等と混合した混練物を押出成形することにより、ハニカム構造を有する成形体を得る。この成形体を焼成することにより、ハニカム構造を有するセラミックス焼結体が得られる。押出成形を経て製造されることから、この段階でセラミックス焼結体は、セル11の軸方向に直交する断面が単一形状の柱状である。
【0031】
このような柱状のセラミックス焼結体を、セル11が開放する方向と同一方向に開口するように、底部と側壁とを残してくり抜くように切除することにより、箱状の本体21が製造される。図1では、角柱状のセラミックス焼結体を、くり抜かれた部分も角柱状であったように切除している場合を例示している。開口部25が開放している方向を「上」とすると、このような加工をすることより、本体21の底部においてセル11は上下に貫通し、周壁においてもセル11が上下に貫通している。
【0032】
また、蓋体22は、押出成形体を焼成して得たハニカム構造を有するセラミックス焼結体を、セル11の軸方向に直交する方向に切断することにより、蓋体22の厚さを有する平板を得た後、開口部25に嵌合するように形状及び大きさに整えることにより、製造することができる。
【0033】
なお、ハニカム構造体をフィルタとして使用する場合は、流体が隔壁12を通過するように、セル11の端部を交互に目封止するが、容器20を形成するためのハニカム構造体ではこのような目封止は行わない。流体は、本体21の底部及び蓋体22において、セル11をストレートに通過する。
【0034】
次に、容器20を使用して行う蓄熱体の評価試験方法について、図2を用いて説明する。まず、評価対象の蓄熱体30を箱状の本体21に収容し、蓋体22を開口部25に嵌め込むことにより、試験体Sとする。このような試験体Sは、複数を用意するとよい。
【0035】
ここで、容器20は、評価対象の蓄熱体30の基体と同一種類のセラミックスで形成されているものを使用する。例えば、蓄熱体の基体が炭化珪素の焼結体である場合は、容器20として炭化珪素の焼結体で形成されているものを使用する。蓄熱体の基体がアルミナの焼結体である場合は、容器20としてアルミナの焼結体で形成されているものを使用する。蓄熱体の基体がムライトの焼結体である場合は、容器20としてムライトの焼結体で形成されているものを使用する。蓄熱体の基体がコーディエライトの焼結体である場合は、容器20としてコーディエライトの焼結体で形成されているものを使用する。
【0036】
そして、実際に現場で使用されている工業炉や排ガス燃焼処理装置など、実機の熱交換部100に試験体Sを設置する。熱交換部100には、その時点で実機での使用のために採用されている蓄熱体130が充填されているため、その蓄熱体130に試験体Sを埋設する。熱交換部100において、温度など環境が異なる複数の箇所に、それぞれ試験体Sを配置するとよい。
【0037】
この状態で、実機を使用して通常の操業をする。操業中に熱交換部を流通する流体は、蓋体22及び本体21の底部を貫通しているセル11を通って容器20の内部を通過する。これにより、評価対象の蓄熱体30は、蓄熱体130と同一の環境下に置かれて、同一の条件で熱交換を行う。
【0038】
この状態で、一定期間が経過したら、熱交換部から試験体Sを取り出し、容器20に収容されていた蓄熱体30について、所定の項目で評価を行う。本実施形態の評価試験方法によれば、実際に使用される環境で蓄熱体30が示す耐性を、直接、評価することができる。
【0039】
容器20は、評価対象の蓄熱体30の基体と同一種類のセラミックスで形成されているため、容器20と蓄熱体30の熱膨張率の差異に起因して生じる割れの問題なく、蓄熱体30の耐性を評価することができる。
【0040】
なお、図3に示すように、複数の容器の本体21を接合して、蓄熱体30の評価試験に供することができる。このようにすることにより、熱交換部が非常に大型である場合に、多数の蓄熱体30について一度に評価試験を行うことができる。
【0041】
また、上記では、角柱状のハニカム構造体を、くり抜かれる部分が角柱状であったように切除して箱状の本体21とした容器20を、図1を用いて説明した。これに限定されず、図4に示すように、角柱状のハニカム構造体を、くり抜かれる部分が円柱状であったように切除して箱状の本体21bとし、その開口部25bに円盤状の蓋体22bが嵌め込まれる容器20bとすることができる。
【0042】
或いは、図5に示すように、円柱状のハニカム構造体を、くり抜かれる部分が円柱状であったように切除して箱状の本体21cとし、その開口部25cに円盤状の蓋体22cが嵌め込まれる容器20cとすることができる。
【0043】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0044】
例えば、箱状の本体の開口部の縁に、蓋体を載置するための段部を設けることができる。
【符号の説明】
【0045】
11 セル
12 隔壁
20,20b,20c 容器
21,21b,21c 本体
22,22b,22c 蓋体
25,25b,25c 開口部
30 蓄熱体(評価対象の蓄熱体)
100 熱交換部(実機の熱交換部)
130 蓄熱体(実機の熱交換部に充填されている蓄熱体)
S 試験体
図1
図2
図3
図4
図5