(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】タイヤ性能予測モデルの学習方法、タイヤ性能予測方法、システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20240329BHJP
G01M 17/02 20060101ALI20240329BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20240329BHJP
G06F 30/27 20200101ALI20240329BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240329BHJP
【FI】
B60C19/00 Z
G01M17/02
G06F30/10
G06F30/27
G06T7/00 350B
G06T7/00 610C
(21)【出願番号】P 2020103633
(22)【出願日】2020-06-16
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 学
(72)【発明者】
【氏名】中本 智
(72)【発明者】
【氏名】石神 直大
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-035626(JP,A)
【文献】特開2004-333295(JP,A)
【文献】特開2001-050848(JP,A)
【文献】特開2015-059922(JP,A)
【文献】特開2013-178116(JP,A)
【文献】特開2021-089163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 19/00
G01M 17/02
G06F 30/10
G06F 30/27
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のプロセッサが実行する方法であって、
タイヤ接地面形状を表す接地面画像に基づく入力画像を特徴抽出部に入力して画像の特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、
前記抽出された画像の特徴量を入力としてタイヤ性能値を出力するように予測モデルを機械学習させる学習ステップと、
を含む、タイヤ性能予測モデルの学習方法。
【請求項2】
1又は複数のプロセッサが実行する方法であって、
タイヤ接地面形状を表す接地面画像に基づく入力画像を特徴抽出部に入力して画像の特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、
前記抽出された画像の特徴量を入力としてタイヤ性能値を出力するように機械学習された予測モデルを用いて、前記抽出された画像の特徴量に対応する前記タイヤ性能値を出力する予測ステップと、
を含む、タイヤ性能予測方法。
【請求項3】
前記接地面画像は、前記タイヤ接地面形状及び接地圧力を表す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記接地面画像に基づき前記入力画像を生成する画像生成ステップを含み、
前記画像生成ステップは、
前記学習ステップで用いられる、前記接地面画像と前記タイヤ性能値とを関連付けた教師データセットのうち、接地面形状が最も大きい接地面画像を選択するステップと、
前記選択した接地面画像に基づき画像中のトリミング位置を決定するステップと、
前記決定したトリミング位置を用いて前記教師データセットの前記接地面画像をトリミングしてトリム済画像をそれぞれ生成するステップと、
前記各々のトリム済画像のアスペクト比を変更せずに前記各々のトリム済画像のサイズを前記特徴抽出部に入力可能なサイズに変更して前記入力画像を生成するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記接地面画像に基づき前記入力画像を生成する画像生成ステップを含み、
前記画像生成ステップは、
予め定められたトリミング位置を用いて前記接地面画像をトリミングしてトリム済画像を生成するステップと、
前記トリム済画像のアスペクト比を変更せずに前記トリム済画像のサイズを前記特徴抽出部に入力可能なサイズに変更して前記入力画像を生成するステップと、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記接地面画像に基づき前記入力画像を生成する画像生成ステップを含み、
前記画像生成ステップは、
タイヤサイズとトリミング位置とを予め関連付けたデータに基づき、指定されたタイヤサイズに対応する前記トリミング位置を特定するステップと、
前記特定したトリミング位置を用いて前記接地面画像をトリミングしてトリム済画像を生成するステップと、
前記トリム済画像のアスペクト比を変更せずに前記トリム済画像のサイズを前記特徴抽出部に入力可能なサイズに変更して前記入力画像を生成するステップと、
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の方法を実行する1又は複数のプロセッサを備える、システム。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の方法を1又は複数のプロセッサに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ性能予測モデルの学習方法、タイヤ性能予測方法、システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
機械学習の活用が様々な産業分野に広がっており、同業他社のタイヤへの適応事例も増えている。例えば、特許文献1には、タイヤのトレッドが写っている画像をニューラルネットワークに入力し、摩耗状態又は摩耗量を推定することが記載されている。
【0003】
本開示の発明者らは、タイヤの設計者はタイヤ接地面に基づき議論することが多いため、タイヤ性能は接地面に表れると考えている。そこで、所定荷重の下、路面に接地するタイヤの接地面形状を表す接地面画像からタイヤ性能値を予測できれば、試作数および試験の削減につながり、有用と考える。また、接地面のどの要素がタイヤの各性能に関係しているかが明らかになる手がかりとなる。しかしながら、タイヤの接地面画像からタイヤ性能を予測するための具体的な手法は提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、タイヤの接地面画像に基づきタイヤ性能値を予測するためのタイヤ性能予測モデルの学習方法、タイヤ性能予測方法、システム及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のタイヤ性能予測モデルの学習方法は、1又は複数のプロセッサが実行する方法であって、タイヤ接地面形状を表す接地面画像に基づく入力画像を特徴抽出部に入力して画像の特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、前記抽出された画像の特徴量を入力としてタイヤ性能値を出力するように予測モデルを機械学習させる学習ステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態のタイヤ性能予測モデル学習システムおよびタイヤ性能予測システムの使用態様を示す図。
【
図2】第1実施形態のタイヤ性能予測モデル学習システム及びタイヤ性能予測システムを示すブロック図。
【
図3】第1実施形態のタイヤ性能予測モデル学習システムが実行するフローチャート。
【
図4】第1実施形態のタイヤ性能予測システムが実行するフローチャート。
【
図5】接地面画像をトリミングして入力画像を生成する過程に関する説明図。
【
図6】第2実施形態のタイヤ性能予測モデル学習システム及びタイヤ性能予測システムを示すブロック図。
【
図7】第2実施形態のタイヤ性能予測モデル学習システムが実行するフローチャート。
【
図8】第2実施形態のタイヤ性能予測システムが実行するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1実施形態>
以下、本開示の第1実施形態を、図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、タイヤ性能予測モデル学習システム1およびタイヤ性能予測システム2の使用態様を示す図である。
図1に示すように、接地面画像5は試験装置3又はタイヤ接地シミュレーションシステム4から得られる。タイヤ性能予測モデル学習システム1は、予測モデルへの入力としての接地面画像5と、予測モデルからの出力として正しいタイヤ性能値とを関連付けた教師データを用いて、予測モデルを機械学習させる。教師データに用いる入力画像は、接地面画像に基づいている。タイヤ性能予測システム2は、タイヤ性能予測モデル学習システム1が構築した予測モデルを用いて、予測対象の接地面画像5に基づきタイヤ性能値を算出(予測)し、出力する。
【0010】
予測対象となるタイヤ性能値は、実測値である。本実施形態で用いたタイヤ性能値は、CP(コーナリングパワー)、SAP(セルフアライニングパワー)、CFmax(最大コーナリングフォース)、SAT(セルフアライニングトルク)である。勿論、タイヤ性能値は、これ以外の任意のタイヤ性能に適用可能である。
【0011】
接地面画像5は、タイヤ接地面形状を表す。本実施形態の接地面画像5は、タイヤ接地面形状を表すと共に、路面に垂直な方向の接地圧力Pzを、カラー画像の場合は色で表し、グレースケールの場合は輝度で表す。本実施形態の接地面画像5は、タイヤが転動していない静止状態の画像であるが、これに限定されず、転動中の画像にしてもよい。転動状態又は静止状態にかかわらず、タイヤのキャンバ角は任意の角度に設定可能である。本実施形態の接地面画像5は、タイヤの静止状態の画像であるが、タイヤの転動状態である場合には進行方向に対するスリップ角度は0度でもよく、0度以外の角度にしてもよい。本実施形態の接地面画像5は、静止状態における路面に垂直な方向の接地面圧力Pzのみを表現しているが、これに限定されない。例えば、タイヤが転動状態である場合には、タイヤの進行方向に沿った圧力Px又はタイヤの進行方向に直交する方向に沿った圧力Pyを表現してもよい。なお、これらの座標系は一例であり、適宜変更可能である。なお、精度が確保できるのであれば、接地面画像5はタイヤ接地面形状のみを表すものでもよい。試験装置3は、所定荷重の下、試験対象のタイヤ30を、試験路面31に接地させ、試験路面31における透明路面を介してカメラ32で接地面形状を撮影する。接地圧力は、透明板等を用いた光学的手法、もしくは圧力センサを用いて計測する。試験装置3は、上記試験によって接地面画像5を生成する。また、接地面画像5は、
図1に示すタイヤ接地シミュレーションシステム4によって得られたシミュレーション結果から取得されてもよい。
【0012】
なお、実装方法によってタイヤ性能予測モデル学習システム1と、タイヤ性能予測システム2とが同じコンピュータシステム上に構築されず、個々に独立して運用することが可能である。すなわち、タイヤ性能予測モデル学習システム1のみを実装してもよく、タイヤ性能予測システム2のみを実装してもよい。
【0013】
[タイヤ性能予測モデル学習システム1]
図2は、タイヤ性能予測モデル学習システム1及びタイヤ性能予測システム2を示すブロック図である。
図2に示すように、タイヤ性能予測モデル学習システム1は、変換部10と、特徴抽出部11と、学習部12と、を有する。変換部10は省略可能である。
【0014】
これら各部10~12は、プロセッサ1a、メモリ1b、各種インターフェイス等を備えたコンピュータにおいて予め記憶されている
図3に示す処理ルーチンをプロセッサ1aが実行することによりソフトウェア及びハードウェアが協働して実現される。本実施形態では、1つの装置におけるプロセッサ1aが各部を実現しているが、これに限定されない。例えば、ネットワークを用いて分散させ、複数のプロセッサが各部の処理を実行するように構成してもよい。すなわち、1又は複数のプロセッサが処理を実行する。
【0015】
特徴抽出部11は、接地面画像5に基づく入力画像6が入力されると、画像の特徴量を抽出する。変換部10が設けられていない構成においては、接地面画像5が入力画像6として特徴抽出部11に入力される。変換部10が設けられている構成においては、変換部10が出力する入力画像6を入力する。特徴抽出部11は、画像から特徴量を抽出できれば、どのようなアルゴリズムでもよい。例えば、ニューラルネットワーク(例えば、Alexnet、GoogleNet、ResNet101)、離間コサイン変換処理、AutoEncoder、離間コサイン変換処理とAutoEncoderを併用した構成などが挙げられる。
【0016】
学習部12は、教師データセットD1(又はD2)を用いて、特徴抽出部11により抽出された画像の特徴量を入力としてタイヤ性能値を出力するように、予測モデル13を機械学習させ構築する。教師データセットD1は、接地面画像5(接地面画像1~N)又は入力画像6(入力画像1~N)とタイヤ性能(X1,X2,…,XN)値とが関連付けられたデータである。教師データセットD2は、入力画像6(入力画像1~N)とタイヤ性能(X1,X2,…,XN)値とが関連付けられたデータである。Nは、教師データの件数を示す。予測モデル13は、教師有りの機械学習モデルであれば、例えば、ガウス過程回帰、線形回帰、分類木、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、アンサンブル木等の種々のモデルを利用可能である。
【0017】
変換部10は、接地面画像5を、特徴抽出部11に入力可能なサイズの入力画像6に変換する。本実施形態では、875×656ピクセルでカラー又はグレースケール(8bit)の接地面画像5を、227×227ピクセルのグレースケール(8bit)の入力画像6に変換しているが、これは例であり、これに限定されない。
【0018】
特徴抽出部11に入力可能なサイズに変換するにあたり、元の接地面画像5に表れている画像の特徴を壊さないようにしなければならない。接地面の大きさが性能に影響を与える。例えば、タイヤサイズが大きいタイヤの接地面は画像中で大きくなり、逆にタイヤサイズが小さいタイヤの接地面は画像中で小さく写る。これをトリミング後の画像に占める接地面の大きさが同じになるようにトリミングすると、タイヤサイズが小さいタイヤについては本来では性能値を小さく予測しなければならないところ、タイヤサイズが大きいタイヤと同じような性能であると過大に予測してしまうおそれがある。よって、接地面形状の大きさがタイヤ性能値に影響を与えるために、複数の画像間で尺度を維持する必要がある。
【0019】
そのために、変換部10は、選択部10aと、トリミング位置決定部10bと、トリミング部10cと、サイズ変更部10dと、を有する。前提として、全ての接地面画像5は同じ撮影条件で撮影されており、尺度が同一である。同じ撮影条件とは、
図1に示すように、カメラ32から試験路面31までの距離が同一であり、且つ、カメラ32のズーム値が同一であることを意味する。
【0020】
選択部10aは、機械学習に用いられる、接地面画像5とタイヤ性能(X
1~N)とを関連付けた教師データセットD1のうち、接地面形状が最も大きい接地面画像を選択する。
図5に示す接地面画像50,51,52であれば、接地面画像50の接地面形状が最も大きい。
【0021】
トリミング位置決定部10bは、
図5に示すように、選択部10aが選択した接地面画像50に基づき画像中のトリミング位置P1を決定する。入力画像6中の接地面形状が大きいほど、予測精度が向上する。そこで、本実施形態では、接地面形状を含む最小矩形又は最小矩形を所定画素広げた範囲をトリミング位置P1としている。トリミング位置決定部10bが決定したトリミング位置P1は、タイヤ性能予測システム2が用いるために、メモリ1bに記憶される。
【0022】
トリミング部10cは、トリミング位置決定部10bが決定したトリミング位置P1を用いて、教師データセットD1の全ての接地面画像5(画像1~N)をトリミングしてトリム済画像をそれぞれ生成する。
【0023】
サイズ変更部10dは、トリミング部10cが生成した各々のトリム済画像を、特徴抽出部11に入力可能なサイズに変更して入力画像6を生成する。サイズ変更部10dは、トリム済画像のアスペクト比を変更せずにサイズ変更を行う。
図5の例では、接地面画像50からトリム済画像(非図示)を経て入力画像60を生成する。接地面画像51からトリム済画像(非図示)を経て入力画像61を生成する。接地面画像52からトリム済画像(非図示)を経て入力画像62を生成する。このような処理を実行することで、各々の入力画像60~62に写る接地面形状の尺度がばらばらになることを回避している。
【0024】
変換部10によって、1画像内のアスペクト比及び複数画像間の相対的な大きさ(尺度)を保ちつつトリミングすることで、予測性能が良くなるタイヤ性能は、次の通りである。
コーナリング系:CP、SAP、CFmax(最大コーナリングフォース)、SAT
トラクション系:ドライ路面における制動性能、ウェット路面における制動性能、氷路面における制動性能、雪上路面における制動性能、氷上摩擦性能、雪上摩擦性能、耐ハイドロプレーニング性能
騒音系:車内外騒音性能、タイヤ単体試験における放射音性能
転がり抵抗
耐摩耗性
ヒール&トー摩耗性能、及び偏摩耗性能に関しては、接地面内での接地圧の高い領域の比率や分布、接地面の形などが影響しており、上記したタイヤサイズの情報を残したトリミングやサイズ変更は必要ないと考える。
【0025】
[タイヤ性能予測システム2]
図2に示すように、タイヤ性能予測システム2は、変換部20と、特徴抽出部21と、予測部22と、を有する。変換部20は、タイヤ性能予測モデル学習システム1と同様に省略可能である。
【0026】
特徴抽出部21は、接地面画像5に基づく入力画像6が入力されると、画像の特徴量を抽出する。変換部20が設けられていない構成においては、接地面画像5が入力画像6として特徴抽出部21に入力される。変換部20が設けられている構成においては、変換部20が出力する入力画像6を入力する。タイヤ性能予測システム2における特徴抽出部21は、タイヤ性能予測モデル学習システム1における特徴抽出部11と同じ構成である。
【0027】
予測部22は、タイヤ性能予測モデル学習システム1によって構築された予測モデル13を用いて、特徴抽出部21が出力した画像の特徴量を入力してタイヤ性能値を出力する。
【0028】
変換部20は、
図2に示すように、予測対象の接地面画像5を、特徴抽出部21に入力するのに適した入力画像6に変換する。変換部20は、トリミング部20cと、サイズ変更部20dと、を有する。トリミング部20cは、予め定められたトリミング位置P1を用いて接地面画像5をトリミングしてトリム済画像を生成する。トリミング位置P1は、トリミング位置決定部10bにより決定され、メモリ1bに記憶されている。サイズ変更部20dは、トリミング部20cが生成したトリム済画像のサイズを特徴抽出部21に入力可能なサイズに変更して入力画像6を生成する。サイズ変更部20dは、トリム済画像のアスペクト比を変更せずにサイズ変更を行う。トリミング部20cは、タイヤ性能予測モデル学習システム1におけるトリミング部10cと同じ構成である。サイズ変更部20dは、タイヤ性能予測モデル学習システム1におけるサイズ変更部10dと同じ構成である。
【0029】
[タイヤ性能予測モデルの学習方法]
図2に示すタイヤ性能予測モデル学習システム1における1又は複数のプロセッサが実行する、タイヤ性能予測モデルの学習方法について、
図3を用いて説明する。
【0030】
まず、ステップST1~4を実行することにより、変換部10は、接地面画像5に基づき入力画像6を生成する。具体的には、ステップST1において、選択部10aは、機械学習で用いられる、接地面画像5(画像1~N)とタイヤ性能(X1~N)とを関連付けた教師データセットD2のうち、接地面形状が最も大きい接地面画像50を選択する。
次のステップST2において、トリミング位置決定部10bは、選択した接地面画像50に基づき画像中のトリミング位置P1を決定する。
次のステップST3において、トリミング部10cは、トリミング位置決定部10bが決定したトリミング位置P1を用いて、教師データセットD1の全ての接地面画像(1~N)をトリミングしてトリム済画像をそれぞれ生成する。
次のステップST4において、サイズ変更部10dは、各々のトリム済画像のアスペクト比を変更せずに各々のトリム済画像のサイズを特徴抽出部11に入力可能なサイズに変更して入力画像6(60~62)を生成する。
次のステップST5において、特徴抽出部11は、タイヤ接地面形状を表す接地面画像5に基づく入力画像6を特徴抽出部11に入力して画像の特徴量を抽出する。
次のステップST6において、学習部12は、抽出された画像の特徴量を入力としてタイヤ性能値を出力するように予測モデル13を機械学習させる。
【0031】
[タイヤ性能予測方法]
図2に示すタイヤ性能予測システム2における1又は複数のプロセッサが実行する、タイヤ性能予測方法について、
図4を用いて説明する。
【0032】
まず、ステップST101~102を実行することにより、変換部20は、接地面画像5に基づき入力画像6を生成する。具体的には、ステップST101において、トリミング部20cは、予め定められたトリミング位置P1を用いて、予測対象の接地面画像5をトリミングしてトリム済画像を生成する。
次のステップST102において、サイズ変更部20dは、トリム済画像のアスペクト比を変更せずにトリム済画像のサイズを特徴抽出部21に入力可能なサイズに変更して入力画像6を生成する。
次のステップST103において、特徴抽出部21は、タイヤ接地面形状を表す接地面画像5に基づく入力画像6を特徴抽出部21に入力して画像の特徴量を抽出する。
次のステップST104において、予測部22は、抽出された画像の特徴量を入力としてタイヤ性能値を出力するように機械学習された予測モデル13を用いて、抽出された画像の特徴量に対応するタイヤ性能値を出力する。
【0033】
<第2実施形態>
以下、本開示の第2実施形態を、図面を参照して説明する。
【0034】
図6に示すように、第2実施形態のタイヤ性能予測モデル学習システム1及びタイヤ性能予測システム2は、タイヤサイズとトリミング位置とを予め関連付けたデータD3を用いて、トリミング処理を実行するように、構成されている。
【0035】
具体的に、
図6及び
図7に示すように、第2実施形態のタイヤ性能予測モデル学習システム1の変換部10は、トリミング位置特定部10eを有する。メモリ1bには、タイヤサイズとトリミング位置とを関連付けたデータD3が記憶されている。
タイヤ性能予測モデル学習システム1の動作は、次の通りである。
まず、ステップST201~203を実行することにより、変換部10は、接地面画像5に基づき入力画像6を生成する。具体的には、ステップST201において、トリミング位置特定部10eは、タイヤサイズとトリミング位置とを予め関連付けたデータD3に基づき、指定されたタイヤサイズに対応するトリミング位置を特定する。
次のステップST202において、トリミング位置特定部10eが特定したトリミング位置P1を用いて、教師データセットD1の全ての接地面画像(1~N)をトリミングしてトリム済画像をそれぞれ生成する。
次のステップST203において、サイズ変更部10dは、各々のトリム済画像のアスペクト比を変更せずに各々のトリム済画像のサイズを特徴抽出部11に入力可能なサイズに変更して入力画像6(60~62)を生成する。
次のステップST204において、特徴抽出部11は、タイヤ接地面形状を表す接地面画像5に基づく入力画像6を特徴抽出部11に入力して画像の特徴量を抽出する。
次のステップST205において、学習部12は、抽出された画像の特徴量を入力としてタイヤ性能値を出力するように予測モデル13を機械学習させる。
【0036】
具体的に、
図6及び
図8に示すように、第2実施形態のタイヤ性能予測システム2の変換部20は、トリミング位置特定部20eを有する。メモリ1bには、タイヤサイズとトリミング位置とを関連付けたデータD3が記憶されている。
タイヤ性能予測システム2の動作は、次の通りである。
まず、ステップST301~303を実行することにより、変換部20は、接地面画像5に基づき入力画像6を生成する。具体的には、ステップST301において、トリミング位置特定部20eは、タイヤサイズとトリミング位置とを予め関連付けたデータD3に基づき、指定されたタイヤサイズに対応するトリミング位置を特定する。
次のステップST302において、トリミング部20cは、トリミング位置特定部20eが特定したトリミング位置P1を用いて、予測対象の接地面画像5をトリミングしてトリム済画像を生成する。
次のステップST303において、サイズ変更部20dは、トリム済画像のアスペクト比を変更せずにトリム済画像のサイズを特徴抽出部21に入力可能なサイズに変更して入力画像6を生成する。
次のステップST304において、特徴抽出部21は、タイヤ接地面形状を表す接地面画像5に基づく入力画像6を特徴抽出部21に入力して画像の特徴量を抽出する。
次のステップST305において、予測部22は、抽出された画像の特徴量を入力としてタイヤ性能値を出力するように機械学習された予測モデル13を用いて、抽出された画像の特徴量に対応するタイヤ性能値を出力する。
【0037】
以上のように、第1実施形態又は第2実施形態のタイヤ性能予測モデルの学習方法は、1又は複数のプロセッサが実行する方法であって、タイヤ接地面形状を表す接地面画像5に基づく入力画像6を特徴抽出部11に入力して画像の特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、抽出された画像の特徴量を入力としてタイヤ性能値を出力するように予測モデル13を機械学習させる学習ステップと、を含む。
【0038】
第1実施形態又は第2実施形態のタイヤ性能予測モデル学習システム1は、タイヤ接地面形状を表す接地面画像5に基づく入力画像6を入力して画像の特徴量を抽出する特徴抽出部11と、抽出された画像の特徴量を入力としてタイヤ性能値を出力するように予測モデル13を機械学習させる学習部12と、を備える。
【0039】
これにより、接地面画像5に基づく入力画像6から抽出した特徴量に基づきタイヤ性能値を予測する予測モデル13を提供でき、接地面画像5に基づきタイヤ性能値を知ることが可能となる。
【0040】
第1実施形態又は第2実施形態のタイヤ性能予測方法は、1又は複数のプロセッサが実行する方法であって、タイヤ接地面形状を表す接地面画像5に基づく入力画像6を特徴抽出部21に入力して画像の特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、抽出された画像の特徴量を入力としてタイヤ性能値を出力するように機械学習された予測モデル13を用いて、抽出された画像の特徴量に対応するタイヤ性能値を出力する予測ステップと、を含む。
【0041】
第1実施形態又は第2実施形態のタイヤ性能予測システム2は、タイヤ接地面形状を表す接地面画像5に基づく入力画像6を入力して画像の特徴量を抽出する特徴抽出部21と、抽出された画像の特徴量を入力としてタイヤ性能値を出力するように機械学習された予測モデル13を用いて、抽出された画像の特徴量に対応するタイヤ性能値を出力する予測部22と、を備える。
【0042】
これにより、接地面画像5に基づく入力画像6から抽出した特徴量に基づき予測モデル13がタイヤ性能値を予測するので、接地面画像5に基づきタイヤ性能値を知ることが可能となる。
【0043】
特に限定されないが、第1実施形態又は第2実施形態のように、接地面画像5は、タイヤ接地面形状及び接地圧力を表すことが好ましい。
【0044】
特に限定されないが、第1実施形態のタイヤ性能予測モデルの学習方法のように、接地面画像5に基づき入力画像6を生成する画像生成ステップを含み、画像生成ステップは、学習ステップで用いられる、接地面画像5とタイヤ性能値とを関連付けた教師データセットD1のうち、接地面形状が最も大きい接地面画像50を選択するステップと、選択した接地面画像50に基づき画像中のトリミング位置P1を決定するステップと、決定したトリミング位置P1を用いて教師データセットD1の全ての接地面画像5をトリミングしてトリム済画像をそれぞれ生成するステップと、各々のトリム済画像のアスペクト比を変更せずに各々のトリム済画像のサイズを特徴抽出部11に入力可能なサイズに変更して入力画像6を生成するステップと、を含む、としてもよい。
【0045】
これにより、接地面形状が最も大きい接地面画像5を選択してトリミング位置P1を決定するので、トリム済画像に占める接地面をできるだけ大きくでき、予測モデル13による予測精度を向上させることが可能となる。それでいて、決定したトリミング位置を全ての接地面画像5に共通で用いてトリミングを行うので、タイヤサイズによる接地面形状の大きさの違いを考慮して、正しくタイヤ性能値を予測可能となる。
【0046】
特に限定されないが、第1実施形態のタイヤ性能予測方法のように、接地面画像5に基づき入力画像6を生成する画像生成ステップを含み、画像生成ステップは、予め定められたトリミング位置を用いて接地面画像5をトリミングしてトリム済画像を生成するステップと、トリム済画像のアスペクト比を変更せずにトリム済画像のサイズを特徴抽出部21に入力可能なサイズに変更して入力画像6を生成するステップと、を含む、としてもよい。
【0047】
これにより、予め定められたトリミング位置を共通で用いてトリミングを行うので、タイヤサイズによる接地面形状の大きさの違いを考慮して、正しくタイヤ性能値を予測可能となる。
【0048】
特に限定されないが、第2実施形態のタイヤ性能予測モデルの学習方法又はタイヤ性能予測方法のように、接地面画像5に基づき入力画像6を生成する画像生成ステップを含み、画像生成ステップは、タイヤサイズとトリミング位置とを予め関連付けたデータD3に基づき、指定されたタイヤサイズに対応するトリミング位置を特定するステップと、特定したトリミング位置を用いて接地面画像5をトリミングしてトリム済画像を生成するステップと、トリム済画像のアスペクト比を変更せずにトリム済画像のサイズを特徴抽出部11,21に入力可能なサイズに変更して入力画像6を生成するステップと、を含む、としてもよい。
【0049】
これにより、タイヤサイズに応じた共通又は別個の適切なトリミング位置を用いてトリミングを行うので、タイヤサイズによる接地面形状の大きさの違いを考慮して、正しくタイヤ性能値を予測可能となる。
【0050】
本実施形態に係るプログラムは、上記方法をコンピュータに実行させるプログラムである。
これらプログラムを実行することによっても、上記方法の奏する作用効果を得ることが可能となる。
【0051】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0052】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0053】
例えば、特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現できる。特許請求の範囲、明細書、および図面中のフローに関して、便宜上「まず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実行することが必須であることを意味するものではない。
【0054】
図2、
図7に示す各部は、所定プログラムを1又はプロセッサで実行することで実現しているが、各部を専用メモリや専用回路で構成してもよい。上記実施形態のシステム1は、一つのコンピュータのプロセッサ1aにおいて各部が実装されているが、各部を分散させて、複数のコンピュータやクラウドで実装してもよい。すなわち、上記方法を1又は複数のプロセッサで実行してもよい。
【0055】
システム1は、プロセッサ1aを含む。例えば、プロセッサ1aは、中央処理ユニット(CPU)、マイクロプロセッサ、またはコンピュータ実行可能命令の実行が可能なその他の処理ユニットとすることができる。また、システム1は、システム1のデータを格納するためのメモリ1bを含む。一例では、メモリ1bは、コンピュータ記憶媒体を含み、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリまたはその他のメモリ技術、CD-ROM、DVDまたはその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージまたはその他の磁気記憶デバイス、あるいは所望のデータを格納するために用いることができ、そしてシステム1がアクセスすることができる任意の他の媒体を含む。
【符号の説明】
【0056】
1…タイヤ性能予測モデル学習システム、10…変換部、11…特徴抽出部、12…学習部、2…タイヤ性能予測システム、20…変換部、21…特徴抽出部、22…予測部