(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】免震改修方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20240329BHJP
E04H 12/08 20060101ALI20240329BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
E04G23/02 F
E04H12/08
E04H9/02 331A
E04H9/02 331B
E04H9/02 331D
(21)【出願番号】P 2020107400
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2019127401
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (公開の事由1)2019年7月12日に、株式会社竹中工務店、株式会社日建設計、及び名古屋テレビ塔株式会社が、自ら開催した「名古屋テレビ塔 全体改修工事(免震を含む)の技術報告」にて発明を公開した。 (公開の事由2)2019年9月22日に、株東海テレビ放送株式会社が、「スタイルプラス」というテレビ番組にて発明を公開した。 (公開の事由3)2019年10月23日に、株式会社竹中工務店、株式会社日建設計、及び名古屋テレビ塔株式会社が、記者会見を行って発明を公開した。 (公開の事由4)2020年2月25日に、株式会社竹中工務店、株式会社日建設計、及び名古屋テレビ塔株式会社が、記者会見を行って発明を公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】000152424
【氏名又は名称】株式会社日建設計
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】下野 耕一
(72)【発明者】
【氏名】松原 拡平
(72)【発明者】
【氏名】岡田 秀明
(72)【発明者】
【氏名】徳野 亨
(72)【発明者】
【氏名】林 康生
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 陽平
(72)【発明者】
【氏名】二宮 利治
(72)【発明者】
【氏名】木村 征也
(72)【発明者】
【氏名】榊原 啓太
(72)【発明者】
【氏名】清本 莉七
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-182371(JP,A)
【文献】特開2015-83762(JP,A)
【文献】特開2017-89109(JP,A)
【文献】特開2014-47581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G23/00-23/08
E04H5/00-5/12
7/00-14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
夫々が既存基礎で支持された複数の柱脚部を有するとともに当該柱脚部に対して少なくとも1つの柱が斜め姿勢で立設された建造物を改修して、前記複数の柱脚部の夫々に当該柱脚部を支持する免震支承を備えた免震構造を構築する免震改修方法であって、
前記複数の柱脚部の夫々において当該柱脚部と前記既存基礎との間に新設基礎を構築する新設基礎構築工程と、
前記新設基礎構築工程の後に、前記新設基礎同士を繋ぐ新設繋ぎ材を設置して、当該新設繋ぎ材に緊張力を付与する張力移行工程と、
前記張力移行工程の後に、前記複数の柱脚部の夫々において前記新設基礎を前記既存基礎から切り離してそれらの間に前記免震支承を設置する免震支承設置工程と、を実行する免震改修方法。
【請求項2】
前記既存基礎に対して前記新設基礎を切り離してから前記免震支承の設置が完了するまでの期間において前記新設基礎の水平移動を防止する仮設のストッパーを、前記既存基礎同士を繋ぐ既存繋ぎ材と前記新設繋ぎ材とに亘らせて設置する請求項1に記載の免震改修方法。
【請求項3】
前記建造物に作用する地震力を減衰させるダンパーを、前記既存基礎同士を繋ぐ既存繋ぎ材と前記新設基礎とに亘らせて設置する請求項1又は2に記載の免震改修方法。
【請求項4】
前記免震支承設置工程を実行するにあたり、前記柱脚部の水平移動に対して復元力を付加せずに当該柱脚部を支持する第1免震支承と、前記柱脚部の水平移動に対して復元力を付加しながら当該柱脚部を支持する第2免震支承とを、前記免震支承として前記複数の柱脚部の夫々に設ける請求項1~3の何れか1項に記載の免震改修方法。
【請求項5】
前記第1免震支承が、転がり免震支承で構成されており、
前記第2免震支承が、積層ゴム免震支承で構成されている請求項4に記載の免震改修方法。
【請求項6】
前記免震支承設置工程を実行するにあたり、前記複数の柱脚部の夫々において、平面視で前記建造物の中心部を通る中心通過線上に複数の前記第1免震支承を配置すると共に、当該複数の第1免震支承が配置された前記中心通過線を挟んだ両側に前記第2免震支承を夫々配置する請求項4又は5に記載の免震改修方法。
【請求項7】
前記新設基礎構築工程及び前記免震支承設置工程を実行するにあたり、前記柱脚部における前記第1免震支承の前記新設基礎を構築して当該第1免震支承に前記建造物の鉛直荷重を負担させた状態で、前記柱脚部における前記第2免震支承の前記新設基礎を構築する請求項4~6の何れか1項に記載の免震改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、夫々が既存基礎で支持された複数の柱脚部を有するとともに当該柱脚部に対して少なくとも1つの柱が斜め姿勢で立設された建造物を改修して、前記複数の柱脚部の夫々に当該柱脚部を支持する免震支承を備えた免震構造を構築する免震改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の柱脚部を有するとともに当該柱脚部に対して少なくとも1つの柱が斜め姿勢で立設された鉄塔等の建造物を改修して、複数の柱脚部の夫々に当該柱脚部を支持する免震支承を備えた免震構造を構築する免震改修方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
特許文献1記載の免震改修方法では、夫々の柱脚部を既存基礎(下部構造)から切り離して免震支承を設置する際に当該夫々の柱脚部が互いに離間する方向に変位するのを防止するため、複数の柱脚部同士を繋ぐ水平繋ぎ材が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特許文献1記載の免震改修方法では、夫々の柱脚部を既存基礎から切り離すタイミングで、当該柱脚部同士が互いに離間する方向に変位しようとするスラストが水平繋ぎ材に作用する。そのスラストによる水平繋ぎ部材の伸びにより、夫々の柱脚部が若干外方へ変位する場合がある。そして、このような柱脚部の変位は、その柱脚部の上部構造体の損傷の要因となる。また、この柱脚部の変位を防止するためには、非常に大規模な繋ぎ材を設置することが考えられるが、工期の長期化やコストアップ等の問題が生じる。
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、夫々が既存基礎で支持された複数の柱脚部を有するとともに当該柱脚部に対して少なくとも1つの柱が斜め姿勢で立設された鉄塔等の建造物を改修して複数の柱脚部の夫々に免震構造を構築する免震改修方法において、複数の柱脚部を既存基礎から切り離してそれらの間に免震支承を設置する際に、柱脚部同士が互いに離間する方向に変位しようとするスラストを好適に制御する技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、夫々が既存基礎で支持された複数の柱脚部を有するとともに当該柱脚部に対して少なくとも1つの柱が斜め姿勢で立設された建造物を改修して、前記複数の柱脚部の夫々に当該柱脚部を支持する免震支承を備えた免震構造を構築する免震改修方法であって、
前記複数の柱脚部の夫々において当該柱脚部と前記既存基礎との間に新設基礎を構築する新設基礎構築工程と、
前記新設基礎構築工程の後に、前記新設基礎同士を繋ぐ新設繋ぎ材を設置して、当該新設繋ぎ材に緊張力を付与する張力移行工程と、
前記張力移行工程の後に、前記複数の柱脚部の夫々において前記新設基礎を前記既存基礎から切り離してそれらの間に前記免震支承を設置する免震支承設置工程と、を実行する点にある。
【0006】
本構成によれば、建造物を改修して複数の柱脚部の夫々に免震構造を構築するにあたり、夫々の柱脚部において、当該柱脚部と既存基礎との間に新設基礎を構築した上で、その新設した新設基礎を既存基礎から切り離してそれらの間に免震支承を設置するので、既存基礎の下に免震支承を設置する場合と比較して、必要な掘削深さをできるだけ小さくすることができる。
【0007】
更に、上記免震支承設置工程で夫々の柱脚部を既存基礎から切り離す前に、上記張力移行工程を実行して、複数の柱脚部同士を新設繋ぎ材で繋いで当該新設繋ぎ材に緊張力を付与するので、既存基礎における柱脚部の外方への変位を抑えていた力をスムーズに新設繋ぎ材の緊張力へ移行させることができる。
よって、免震支承を設置するにあたって既存基礎に対して新設基礎を切り離した際には、既に付与されている新設繋ぎ材の緊張力により、柱脚部に構築された新設基礎同士が互いに離間する方向に変位しようとするスラストを好適に制御することができる。
【0008】
従って、本発明により、夫々が既存基礎で支持された複数の柱脚部を有する鉄塔等の建造物を改修して複数の柱脚部の夫々に免震構造を構築する免震改修方法において、鉄塔などのように、柱脚部に対して少なくとも1つの柱が斜め姿勢で立設されていることで、柱脚部同士が互いに離間する方向に変位しようとするスラストが大きい建造物であっても、複数の柱脚部を既存基礎から切り離してそれらの間に免震支承を設置する際に、柱脚部同士が互いに離間する方向に変位しようとするスラストを好適に制御する技術を提供することができる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、前記既存基礎に対して前記新設基礎を切り離してから前記免震支承の設置が完了するまでの期間において前記新設基礎の水平移動を防止する仮設のストッパーを、前記既存基礎同士を繋ぐ既存繋ぎ材と前記新設繋ぎ材とに亘らせて設置する点にある。
【0010】
本構成によれば、既存基礎に対して新設基礎を切り離した状態であっても、既存繋ぎ材を新設繋ぎ材に接続された仮設のストッパーの反力受けとして利用する合理的な形態で、新設基礎の水平移動を防止することができる。そして、免震支承の設置が完了した段階で、仮設のストッパーを撤去することで、新設基礎の水平移動を許容した状態で免震支承により当該新設基礎を支持させることができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、前記建造物に作用する地震力を減衰させるダンパーを、前記既存基礎同士を繋ぐ既存繋ぎ材と前記新設基礎とに亘らせて設置する点にある。
【0012】
本構成によれば、既存繋ぎ材を新設基礎に接続されたダンパーの反力受けとして利用する合理的な形態で、建造物に作用する地震力を減衰するダンパーを設置することができる。
【0013】
本発明の第4特徴構成は、前記免震支承設置工程を実行するにあたり、前記柱脚部の水平移動に対して復元力を付加せずに当該柱脚部を支持する第1免震支承と、前記柱脚部の水平移動に対して復元力を付加しながら当該柱脚部を支持する第2免震支承とを、前記免震支承として前記複数の柱脚部の夫々に設ける点にある。
【0014】
特に鉄塔では、複数の柱脚部の夫々に対して、鉄塔の鉄骨柱から、鉄塔の頂部から見て外方下向きの斜め方向に軸力が伝達される場合がある。よって、地震や風圧等により、鉄塔全体にかかる水平力が変化して、鉄塔の鉄骨柱から夫々の柱脚部への軸力の伝達状態が変化すると、夫々の柱脚部が傾いて、例えば免震支承の免震機能が低下する虞がある。また、特許文献1に記載の免震構造では、転がり免震支承とは別に、柱脚部の水平移動に対して復元力を付加するスプリングが設けられているが、このスプリングは、上記のような柱脚部の姿勢維持には寄与しない構造である。
そこで、本構成によれば、鉄塔などの建造物が有する複数の柱脚部の夫々が上記第1免震支承と上記第2免震支承との複数の免震支承により支持されることになる。このことで、地震や風圧等により建造物の鉄骨柱から外方下向きの斜め方向に向けて夫々の柱脚部に伝達される軸力の伝達状態が変化した場合であっても、夫々の柱脚部の姿勢を適切に維持することができる。結果、上記第1免震支承において柱脚部の水平移動を良好に許容しながら、上記第2免震支承においてその柱脚部の水平移動に対して良好に復元力を付加して、建造物の水平位置を適切なものに維持することができる。
従って、鉄塔などの建造物が有する複数の柱脚部の夫々に当該柱脚部を支持する免震支承を備えた免震構造において、柱脚部の姿勢を適切に維持して免震支承の免震機能の低下を抑制し、安定化させることができる。
【0015】
本発明の第5特徴構成は、前記第1免震支承が、転がり免震支承で構成されており、
前記第2免震支承が、積層ゴム免震支承で構成されている点にある。
【0016】
本構成によれば、上記第1免震支承が、柱脚部から伝達される鉛直荷重が変化しても高さ方向の厚みが変化し難い転がり免震支承で構成されており、上記第2免震支承が、柱脚部から伝達される鉛直荷重が増加した場合に高さ方向の厚みが僅かに小さくなる積層ゴム免震支承で構成されている。このことで、建造物全体の鉛直荷重の殆どを上記第1免震支承である転がり免震支承に負担させて、上記第2免震支承である積層ゴム免震支承が負担する鉛直荷重を大幅に軽減することができる。よって、上記第2免震支承を構成する積層ゴム免震支承において、ゴム部分の残留応力が軽減されるので、当該ゴム部分により柱脚部の水平移動に対して一層良好に復元力を付加することができる。
【0017】
本発明の第6特徴構成は、前記免震支承設置工程を実行するにあたり、前記複数の柱脚部の夫々において、平面視で前記建造物の中心部を通る中心通過線上に複数の前記第1免震支承を配置すると共に、当該複数の第1免震支承が配置された前記中心通過線を挟んだ両側に前記第2免震支承を夫々配置する点にある。
【0018】
本構成によれば、夫々の柱脚部において、複数の第1免震支承が、平面視で建造物の中心部を通る中心通過線上に配置されているので、地震や風圧等により建造物の鉄骨柱から外方下向きの斜め方向に向けて夫々の柱脚部に伝達される軸力の伝達方向が上記中心通過線を通る鉛直面内で変化した場合であっても、上記中心通過線と垂直な軸周りの柱脚部の回転を好適に防止することができる。更に、夫々の柱脚部において、複数の第1免震支承が配置された中心通過線を挟んだ両側に第2免震支承が夫々配置されているので、柱脚部が上記中心通過線周りに回転しようとした場合でも、両側に配置された夫々の第2免震支承により柱脚部から伝達される鉛直荷重を負担して当該柱脚部の上記中心通過線周りの回転を抑制することができる
【0019】
本発明の第7特徴構成は、前記新設基礎構築工程及び前記免震支承設置工程を実行するにあたり、前記柱脚部における前記第1免震支承の前記新設基礎を構築して当該第1免震支承に前記建造物の鉛直荷重を負担させた状態で、前記柱脚部における前記第2免震支承の前記新設基礎を構築する点にある。
【0020】
本構成によれば、上述した免震構造を構築するにあたり、建造物全体の鉛直荷重を上記第1免震支承に負担させた後に、上記第2免震支承の新設基礎を構築するので、第2免震支承に伝達される鉛直荷重を極めて少なくしつつ、その第2免震支承により柱脚部に対して安定的に復元力を付加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】免震改修方法の第1工程での基礎部分の状態を示す拡大図
【
図4】免震改修方法の第2工程での基礎部分の状態を示す拡大図
【
図5】免震改修方法の第3工程での基礎部分の状態を示す拡大図
【
図6】免震改修方法の第4工程での基礎部分の状態を示す拡大図
【
図7】免震改修方法の第5工程での基礎部分の状態を示す拡大図
【
図8】免震改修方法の第6工程での基礎部分の状態を示す拡大図
【
図9】免震改修方法の第7工程での基礎部分の状態を示す拡大図
【
図10】免震改修方法の第8工程での基礎部分の状態を示す拡大図
【
図11】免震改修方法の第9工程での基礎部分の状態を示す拡大図
【
図12】免震改修方法の第10工程での基礎部分の状態及び本実施形態の免震構造を示す拡大図
【
図13】新設繋ぎ材における緊張装置の緊張工程の状態を示す平面図
【
図14】新設繋ぎ材における緊張装置の緊張工程完了後の固定状態を示す平面図
【
図16】既存斜め繋ぎ材の軸力を軸力開放装置により開放する状態を示す平面図
【
図17】柱脚部における免震支承の配置状態を示す平面図
【
図18】柱脚部における免震支承の別の配置状態を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
先ず、本実施形態の免震構造(以下「本免震構造」と呼ぶ。)100について説明する。
図2、
図12、及び
図17に示すように、本免震構造100は、鉄塔1(建造物の一例)が有する複数の柱脚部Xの夫々において、当該柱脚部Xを構成する新設下部基礎25と新設上部基礎20との間に介装させる形態で、当該柱脚部Xを支持する免震支承21を備えた免震構造として構成されている。尚、本実施形態の鉄塔1は、平面視で四角形の頂点部分に柱脚部Xを配置した略四角錐状のものであるが、本発明において鉄塔1の形状については限定されるものではなく、例えば平面視で三角形の頂点部分に柱脚部を配置した略三角錐状の鉄塔であっても良い。
【0023】
免震支承21で支持された鉄塔1では、複数の柱脚部Xの夫々に対して、軸芯が傾斜し柱脚部Xから斜め上方に向けて直線状に延びる斜め姿勢で立設された鉄骨柱2から、鉄塔1の頂部から見て外方下向きの斜め方向に軸力が伝達される。従って、地震や風圧等により、鉄塔1の鉄骨柱2から夫々の柱脚部Xへの軸力の伝達状態が変化すると、夫々の柱脚部Xが傾いて、例えば免震支承21の免震機能が低下することが懸念される。そこで、本免震構造100では、柱脚部Xの姿勢を適切なものに維持して免震支承21の免震機能の低下を抑制し、安定化させるための特徴を採用しており、その詳細構成について以下にする。
【0024】
本免震構造100の夫々の柱脚部Xには、
図17に示すように、柱脚部Xの水平移動に対して復元力を付加せずに当該柱脚部Xを支持する転がり免震支承21A(第1免震支承の一例)と、柱脚部Xの水平移動に対して復元力を付加しながら当該柱脚部Xを支持する積層ゴム免震支承21B(第2免震支承の一例)とが、上記免震支承21として設けられている。
【0025】
即ち、鉄塔1が有する複数の柱脚部Xの夫々が、転がり免震支承21Aと積層ゴム免震支承21Bとの複数の免震支承21により支持される。すると、地震や風圧等により鉄塔1の鉄骨柱2から外方下向きの斜め方向に向けて夫々の柱脚部Xに伝達される軸力の伝達状態が変化した場合であっても、夫々の柱脚部Xの姿勢が適切なものに維持される。よって、転がり免震支承21Aにおいて柱脚部Xの水平移動が良好に許容されながら、積層ゴム免震支承21Bにおいてその柱脚部Xの水平移動に対して良好に復元力が付加されて、鉄塔1の水平位置が適切なものに維持される。
【0026】
転がり免震支承21Aは、ボールベアリングがレール上を滑動する直動機構を用いた公知の転がり免震支承と同様の構成を有しており、少なくとも2つの直動機構を交差配置して構成されている。
一方、積層ゴム免震支承21Bは、公知の積層ゴム免震支承と同様の構成を有しており、ゴム板と鋼板とを交互に重ねあわせた積層ゴムで構成されている。
そして、転がり免震支承21Aは、柱脚部Xから伝達される鉛直荷重が変化しても高さ方向の厚みが変化し難く、一方、積層ゴム免震支承21Bは、柱脚部Xから伝達される鉛直荷重が増加した場合に高さ方向の厚みが僅かに小さくなる。すると、鉄塔1全体の鉛直荷重の殆どが転がり免震支承21Aに負担され、積層ゴム免震支承21Bが負担する鉛直荷重が大幅に軽減される。その結果、積層ゴム免震支承21Bでは、ゴム部分の残留応力が軽減されることで、当該ゴム部分により柱脚部Xの水平移動に対して良好に復元力が付加されることになる。
【0027】
本免震構造100における夫々の柱脚部Xでの免震支承21A,21Bの配置状態に関して、
図17を参照して以下に説明を加える。
夫々の柱脚部Xにおいて、鉄塔1の中心部Oを通る中心通過線L上に、2つの転がり免震支承21Aが配置されている。更に、これらの転がり免震支承21Aが配置された中心通過線Lを挟んだ両側には、積層ゴム免震支承21Bが夫々配置されている。
このような配置を採用することで、地震や風圧等により鉄骨柱2から夫々の柱脚部Xに伝達される軸力の伝達方向が中心通過線Lを通る鉛直面内で変化した場合であっても、中心通過線Lと垂直な軸周りの柱脚部Xの回転を好適に防止することができる。更に、中心通過線Lを挟んだ両側に積層ゴム免震支承21Bが夫々配置されているので、柱脚部Xが中心通過線L周りに回転しようとした場合でも、両側に配置された夫々の積層ゴム免震支承21Bにより柱脚部Xから伝達される鉛直荷重が負担されることで、柱脚部Xの中心通過線L周りの回転を抑制できる。
また、この柱脚部Xには、上記免震支承21と同様に新設下部基礎25と新設上部基礎20との間に介装させる形態で、風揺れを防止するための耐風ストッパー50が例えば平面視での中央部に配置されている。
【0028】
夫々の柱脚部Xでの免震支承21A,21Bの配置状態を、
図18に示す状態としても構わない。
即ち、この
図18に示す配置状態では、中心通過線L上の外方側に積層ゴム免震支承21Bが配置されており、更に、中心通過線Lを挟んだ両側に転がり免震支承21Aが夫々配置されている。また、この配置状態では、柱脚部Xにおける内方側には、地震力を減衰させるためのダンパー装置55を適宜配置することができる。尚、夫々の免震支承21A,21Bの設置数や配置等については適宜変更可能である。
【0029】
図2及び
図12に示すように、本免震構造100には、複数の柱脚部Xの新設上部基礎20同士を繋ぐ例えばH形鋼製の新設繋ぎ材30が設置されている。更に、この新設繋ぎ材30には、当該新設繋ぎ材30に緊張力を付与するための緊張装置32が設けられている。そして、この緊張装置32により新設繋ぎ材30に緊張力を付与することで、複数の柱脚部Xの新設上部基礎20の夫々が外方に変位しようとするスラストが好適に制御されている。
また、
図9にも示すように、新設上部基礎20の上部分20Aの側面に設けた第1ダンパー基礎部45Aと地盤側の第2ダンパー基礎部45Bとの間に、地震力を減衰させるためのダンパー装置45が設置されている。
【0030】
上述した本免震構造100は、新築の鉄塔に対して構築することもできるが、本実施形態の免震改修方法(以下「本免震改修方法」と呼ぶ。)より既存の鉄塔1を改修して構築することができる。本免震改修方法は、夫々が既存基礎10で支持された複数の柱脚部Xを有する改修前の鉄塔1(
図1参照)を改修して、当該複数の柱脚部Xの夫々に上述した免震構造100を有する改修後の鉄塔1(
図2参照)を構築する方法であって、以下に説明する第1工程~第10工程を順に実行して構成されている。
【0031】
以下、本実施形態の免震改修方法の各工程の詳細について説明する。
尚、
図1に示す改修前の鉄塔1には、複数の柱脚部X同士を繋ぐ鉄骨鉄筋コンクリート製の既存繋ぎ材15が設けられている。尚、本実施形態では、既存繋ぎ材15を、複数の柱脚部X同士を外周で繋ぐ外周繋ぎ材とするが、複数の柱脚部X同士を対角で繋ぐ斜め繋ぎ材であっても構わない。
また、改修前の鉄塔1の既存基礎10は、複数の柱脚部Xの夫々に配置された既存基礎柱脚部分11と、その下に構築された既存基礎底盤部分12とを有して構成されている。
【0032】
(第1工程)
第1工程では、既存の鉄塔1の必要箇所を補強した上で、
図3に示すように、既存基礎10を囲う山留壁Wを構築し、当該山留壁Wの内側において柱脚部Xの周囲の地盤を掘削する。
【0033】
(第2工程)
上記第1工程の後に実行される第2工程では、
図4に示すように、山留壁Wの内側において、既存基礎柱脚部分11における下部分10A以外の領域と既存繋ぎ材15における鉄骨部分15A以外の領域とのコンクリート部分が解体される。
更に、この第2工程では、複数の柱脚部X同士を繋ぐ例えばH形鋼製の新設繋ぎ材30が設置される。新設繋ぎ材30は、既存繋ぎ材15の上面に沿わせた姿勢で設けられ、既存基礎柱脚部分11のコンクリート部分の解体により露出された鉄骨柱2の部分に対して、複数枚の鋼板からなる接合プレート31を介して溶接接合される。
【0034】
新設繋ぎ材30には、詳細については後述するが、新設繋ぎ材30に緊張力を付与するための緊張装置32が設けられている。
また、既存繋ぎ材15と新設繋ぎ材30とに亘らせた状態で、当該既存繋ぎ材15に対する新設繋ぎ材30の長手方向に沿った変位を防止するための仮設のストッパー装置40(ストッパーの一例)が設けられる。このストッパー装置40は、既存繋ぎ材15の第2ダンパー基礎部45Bにボルトで固定されたブラケット40Aと、新設繋ぎ材30にボルトで固定されたブラケット40Bとを、ジャッキ装置40Cを介して連結して構成されている。尚、第2ダンパー基礎部45Bは、詳細については後述するが、地震力を減衰するためのダンパー装置45(
図9参照)の反力受け用の基礎として既存繋ぎ材15に構築される。また、ジャッキ装置40Cから新設繋ぎ材30の長手方向に沿って軸力が伝達されるブラケット40Bから新設繋ぎ材30への曲げ応力の伝達を軽減するために、当該ブラケット40Bは新設繋ぎ材30の軸心に近い高さに設けられている。このように構成されたストッパー装置40は、少なくとも後述する第5工程において既存基礎柱脚部分11に対して新設上部基礎20を切り離してから、後述する第6工程において免震支承21の設置が完了するまでの期間において、新設上部基礎20の水平移動を防止するものとして設置される。尚、既存繋ぎ材15側のブラケット40Aと新設繋ぎ材30側のブラケット40Bとを、ジャッキ装置40Cに代えて長ボルトで連結するように構成しても構わない。
【0035】
(第3工程)
上記第2工程の後に実行される第3工程では、
図5に示すように、柱脚部Xにおいて、既存基礎柱脚部分11の下部分10Aの上に、鉄筋コンクリート製の新設上部基礎20(新設基礎の一例)の上部分20Aを構築する新設基礎上部分構築工程(新設基礎構築工程の一部)が実行される。尚、この新設上部基礎20の上部分20Aの構築は、必要な配筋を施した上でコンクリートを打設して行われるが、例えば形状等に合わせて複数段階に分けて構築しても構わない。また、詳細な説明は割愛するが、新設上部基礎20のコンクリート部分にはプレストレスが導入される。
【0036】
(第4工程)
上記第3工程の後に実行される第4工程では、
図6に示すように、新設繋ぎ材30に設けられた緊張装置32を操作して当該新設繋ぎ材30に緊張力を付与する張力移行工程が実行される。
この緊張装置32は、
図13~
図15に示すように、新設繋ぎ材30を2つの鋼材部分30A,30Bに分割し、それら鋼材部分30A,30Bの夫々に設けられたブラケット33間を新設繋ぎ材30の長手方向に沿わせた複数の長ボルト35で連結して構成されている。
そして、この長ボルト35により2つの鋼材部分30A,30Bの距離を狭くすることで、新設繋ぎ材30に緊張力が付与されることになる。
そして、既存基礎柱脚部分11の解体前に張力移行工程を実行して複数の柱脚部X同士を新設繋ぎ材30で繋いで当該新設繋ぎ材30に緊張力を付与することで、既存基礎柱脚部分11の解体に伴って複数の柱脚部Xの夫々が外方に変位しようとするスラストが好適に制御されることになる。また、この緊張工程の後には、
図14に示すように、新設繋ぎ材30を構成する2つの鋼材部分30A,30B同士が、これらの夫々に対して複数のボルトで固定される連結部材36,37によって連結固定される。
【0037】
連結部材36,37のうち、平面視で中央部に位置する連結部材37は、平鋼製のスプライスプレートとして構成されており、当該連結部材37のサイズやそれに形成されるボルト穴の位置等は、緊張工程完了後での実測により決定される。
一方、中央部の連結部材37を挟んで両外側に位置する連結部材36は、曲げ剛性が高い山形鋼で構成されており、
図13に示すように、新設繋ぎ材30に緊張力を付与する際に取り付けられて、2つの鋼材部分30A,30Bに対し、長手方向に沿った相対変位を許容しながら芯ずれが防止するガイド機構部として機能する。即ち、連結部材36において、一方側の鋼材部分30Aへの固定用ボルトが挿通されるボルト孔36aが、上記新設繋ぎ材30の長手方向に長尺な長孔として形成されている。このことで、鋼材部分30Aへの固定用ボルトを緩めた状態とすれば、当該鋼材部分30Aに対する連結部材36が固定された鋼材部分30Bの相対変位を、上記長手方向に沿ったものに規制しながら、上記長手方向と交差する方向へのずれを防止することができる。
【0038】
更に、
図6に示すように、この第4工程では、既存基礎柱脚部分11の下部分10Aのうち、後の第5工程においてジャッキJ(
図7及び
図17参照)を設置するためのジャッキ設置部分10Aaが解体される。
【0039】
(第5工程)
上記第4工程の後に実行される第5工程では、
図7及び
図17に示すように、既存の既存基礎底盤部分12と新設上部基礎20の上部分20Aとの間に上下に台座Jaを設けた状態で複数のジャッキJが配置される。そして、これらジャッキJを伸張作動させる形態で、当該複数の柱脚部Xにおける新設上部基礎20の上部分20Aをジャッキアップして、当該複数の柱脚部Xの夫々を支持する既存基礎柱脚部分11の既に解体されたジャッキ設置部分10Aa以外の残部分10Abを解体するジャッキアップ工程が実行される。
また、既存基礎柱脚部分11の残部分10Abの解体後には、夫々のジャッキJの軸力配分等が調整される。このとき、既存基礎底盤部分12に対して新設上部基礎20を切り離した状態であっても、既存繋ぎ材15を新設繋ぎ材30に接続された仮設のストッパー装置40の反力受けとして利用する合理的な形態で、新設上部基礎20の水平移動が防止されている。
【0040】
(第6工程)
上記第5工程の後に実行される第6工程では、
図8に示すように、ジャッキJの下方の台座Ja部分を埋設させる状態で、既存の既存基礎底盤部分12上に、鉄筋コンクリート製の新設下部基礎25が構築される。
【0041】
(第7工程)
上記第6工程の後に実行される第7工程では、
図9に示すように、新設上部基礎20の上部分20Aの下方において、新設下部基礎25上に新たな免震支承21としての転がり免震支承21A及び積層ゴム免震支承21B等を設置する免震支承設置工程が実行される。これら免震支承21を設置した時点では、新設上部基礎20の上部分20Aの下面と、これら免震支承21の上面との間には隙間が形成された状態となっている。尚、本実施形態では、これら転がり免震支承21A及び積層ゴム免震支承21Bの配置状態としては、上述したとおり
図17に示す配置状態を採用するが、
図18に示す配置状態や別の配置状態を採用しても構わない。
【0042】
更に、この第7工程では、新設上部基礎20の上部分20Aの下方に設置した転がり免震支承21Aの上部基礎20Baを構築する第1上部基礎構築工程(新設基礎構築工程の一部)が実行され、その第1上部基礎構築工程の後に、夫々のジャッキJを収縮作動させる形態で、複数の柱脚部Xにおける新設上部基礎20の上部分20Aをジャッキダウンするジャッキダウン工程が実行される。このような第1上部基礎構築工程及びジャッキダウン工程が実行されることで、鉄塔1全体の鉛直荷重が転がり免震支承21Aに負担されることになり、積層ゴム免震支承21Bには鉛直荷重が伝達されない状態となる。
また、上記ジャッキダウン工程の後は、全てのジャッキJ及びその上の台座Jaが撤去される。
【0043】
また、この第7工程では、新設上部基礎20の上部分20Aの側面に設けた第1ダンパー基礎部45Aと既存の既存繋ぎ材15の上面に設けた第2ダンパー基礎部45Bとに亘らせた状態でダンパー装置45(ダンパの一例)が設置される。更に、既存繋ぎ材15の鉄骨部分15Aが新設上部基礎20の上部分20A近傍で切断される。そして、既存繋ぎ材15を新設上部基礎20に接続されたダンパー装置45の反力受けとして利用する合理的な形態で、鉄塔1に作用する地震力を減衰することができる。
【0044】
更に、
図16に示すように、対角に配置された柱脚部X間を繋ぐ既存の斜め繋ぎ材16が存在する場合には、その繋ぎ材についても切断される。この斜め繋ぎ材16の切断にあたって、当該斜め繋ぎ材16に軸力が残存している場合には、切断前の斜め繋ぎ材16に軸力開放装置56を設置し、当該軸力開放装置56により斜め繋ぎ材16の軸力を開放して、当該軸力を新設繋ぎ材30に移行させることができる。
かかる軸力開放装置56は、斜め繋ぎ材16に固定された一対のブラケット57と、それらブラケット57間を連結する長ボルト58とで構成されている。そして、斜め繋ぎ材16に軸力開放装置56を設置し、一対のブラケット57間の所定箇所で斜め繋ぎ材16を切断した後に、この長ボルト58により一対のブラケット57間の距離を広くすることで、斜め繋ぎ材16の軸力が開放される。
【0045】
(第8工程)
上記第7工程の後に実行される第8工程では、
図10に示すように、新設上部基礎20の上部分20Aの下方に設置した積層ゴム免震支承21Bの上部基礎20Bbを構築する第2上部基礎構築工程(新設基礎構築工程の一部)が実行される。このとき、鉄塔1の鉛直荷重は既に転がり免震支承21Aにより負担されているため、積層ゴム免震支承21Bに伝達される鉛直荷重が極めて少なくなる。すると、このような積層ゴム免震支承21Bでは、ゴム部分の残留応力が軽減され、合わせて水平方向の残留変位もなくせるので、当該ゴム部分により柱脚部Xの水平移動に対して良好な復元力を付加可能な状態となる。
そして、この時点において、上部分20Aと上部基礎20Ba,20Bbとが一体化されて、本免震構造100における免震支承21の新設上部基礎20となる。
即ち、柱脚部Xと既存の既存基礎底盤部分12との間に構築される新設上部基礎20を構築する新設基礎構築工程は、上述の第3工程にて実行される新設基礎上部分構築工程と、上述の第7工程で実行される第1上部基礎構築工程と、上述の第8工程で実行される第2上部分基礎構築工程とによって構成されることになる。
【0046】
(第9工程)
上記第8工程の後に実行される第9工程では、
図11に示すように、ストッパー装置40が撤去されることで、免震支承21により支持された柱脚部Xの新設上部基礎20の水平移動が可能な状態となる。
【0047】
(第10工程)
上記第9工程の後に実行される第10工程では、
図12に示すように、山留壁Wが撤去され、柱脚部Xを囲う擁壁46や、その擁壁46の上部を覆う状態で新設上部基礎20と一体化された上部スラブ47等が構築される。
【0048】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0049】
(1)上記実施形態では、第1免震支承として転がり免震支承21Aを用いたが、当該第1免震支承は、柱脚部Xの水平移動に対して復元力を付加せずに当該柱脚部Xを支持するものであればよく、例えば滑り免震支承などの別の形式の免震支承を採用することができる。
また、上記実施形態では、第2免震支承として積層ゴム免震支承21Bを用いたが、当該第2免震支承は、柱脚部Xの水平移動に対して復元力を付加しながら当該柱脚部Xを支持するものであればよく、復元機能を有する別の形式の免震支承を採用することができる。
【0050】
(2)上記実施形態では、新設繋ぎ材30を既存繋ぎ材15の上面に沿わせた姿勢で設置したが、新設繋ぎ材30の設置位置については適宜変更可能である。例えば、新設繋ぎ材30を高所に設置して、その下に人が通過できるスペースを設けても構わない。
また、上記実施形態では、改修後の新設上部基礎20の高さを改修前の既存基礎柱脚部分11と略同等としたが、改修後において新設上部基礎20を改修前よりも上方に構築する形態で、その下方に設置する免震支承21についても、例えば人がアクセスできない程度の高所に設置することができる。
【0051】
(3)上記実施形態では、既存基礎10が比較的大型であったため、既存の既存基礎底盤部分12を残しながらその上の既存基礎柱脚部分11を解体して、当該既存基礎底盤部分12上での既存基礎柱脚部分11があった部分に新設上部基礎20を構築して免震支承21を設置するようにしたが、既存基礎の解体範囲等については適宜変更可能であり、既存基礎を解体することなく当該既存基礎と柱脚部との間に新設基礎を構築しても構わない。
【0052】
(4)上記実施形態では、複数の柱脚部X同士を繋ぐ新設繋ぎ材30に緊張力を付与する構成に関し、上記実施形態では、緊張装置32を採用したが、例えば、新設繋ぎ材30を構成する鉄骨を加熱した状態で柱脚部Xに接続し、その接続後に冷却することで熱応力により新設繋ぎ材30に張力を付与するなどのような別の構成を採用することもできる。
【0053】
(5)上記実施形態では、鉄骨柱2の姿勢を、軸芯が傾斜し柱脚部から斜め上方に延びる斜め姿勢としたが、軸心が傾斜せずに層毎に偏芯し柱脚部から斜め上方に向けて階段状に延びる斜め姿勢としても構わない。
【0054】
(6)本発明は、上記実施形態に示した鉄塔1に限らず、柱脚部に対して少なくとも1つの柱が斜め姿勢で立設された建物等の各種の建造物に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 鉄塔(建造物)
2 鉄骨柱(柱)
10 既存基礎
12 既存基礎底盤部分(既存基礎)
15 既存繋ぎ材
20 新設上部基礎(新設基礎)
21 免震支承
21A 転がり免震支承(第1免震支承)
21B 積層ゴム免震支承(第2免震支承)
30 新設繋ぎ材
32 緊張装置
40 ストッパー装置(ストッパー)
45 ダンパー装置(ダンパー)
56 軸力開放装置
100 免震構造
O 中心部
L 中心通過線
X 柱脚部