(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】鉄筋緊結金具
(51)【国際特許分類】
E04C 5/18 20060101AFI20240329BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20240329BHJP
F16B 7/04 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
E04C5/18 102
E04G21/12 105E
F16B7/04 301G
(21)【出願番号】P 2020107418
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000446
【氏名又は名称】岡部株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊二
(72)【発明者】
【氏名】園部 裕司
(72)【発明者】
【氏名】岩淵 洋平
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-202052(JP,A)
【文献】特開2002-081171(JP,A)
【文献】登録実用新案第3156293(JP,U)
【文献】特開2003-120029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/18
E04G 21/12
F16B 7/04
F16B 37/00-37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に並べた鉄筋を挟む一対の鉄筋挟持部と鉄筋抱持部とによりほぼU字形状に形成された鉄筋拘束プレートと、
前記鉄筋拘束プレートの一対の鉄筋挟持部の内、一方の鉄筋挟持部に設けられたボルト挿入孔に軸部が挿入されるボルトと、
他方の鉄筋挟持部に設けられたクサビ挿入孔に挿入され楔効果を発揮するクサビナットとを備え、
当該クサビナットは、
前記ボルトの軸部が螺合する雌ネジ孔が形成された底板部と、
その底板部の左右両側からそれぞれ立設して前記クサビ挿入孔に
前記一方の鉄筋挟持部とは反対側から挿入され、先端の先細部から後端の幅広部に至る途中で止まるようクサビ形状に形成された一対のクサビ形状側板部とを有することを特徴とする鉄筋拘束金具。
【請求項2】
請求項1記載の鉄筋拘束金具において、
前記クサビ挿入孔には、
前記クサビナットの一対のクサビ形状側板部それぞれの挿入箇所を区分けするように突出した側板区分け部が設けられていることを特徴とする鉄筋拘束金具。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の鉄筋拘束金具において、
前記鉄筋拘束プレートの鉄筋抱持部には、前記クサビナットおよびボルトから離れた鉄筋の節部に係合する節部係合部が設けられていることを特徴とする鉄筋拘束金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平行に並べた鉄筋同士を緊結する鉄筋拘束金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、場所打ちコンクリート杭の鉄筋やコンクリート構造物の鉄筋組立において、平行な2本の鉄筋同士を緊結する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)
この鉄筋用緊結金具では、コ字状に形成されたクリップ本体と、ねじ部および楔形状のクサビ本体を有する楔と、楔のねじ部に螺合するナットで構成されており、平行に並べた鉄筋は、クリップ本体に挿入され、さらに、クリップ本体の穴に楔が挿通されて、楔のねじ部がナットに螺合されることで(ナットを締め付けることで)、鉄筋同士を緊結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1に記載の従来の鉄筋用緊結金具では、平行に並べた鉄筋をクリップ本体で挟み、楔のねじ部をクリップ本体に挿入してナットで締め付けることにより楔の楔本体がクリップ本体に進入して、楔本体が鉄筋に当接することで鉄筋同士を緊結して拘束するが、楔本体が鉄筋の谷部(凹部)に当接せずに節部(凸部)に当接した場合には、所定の耐力(拘束力)が得られないおそれがある、という問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みなされたもので、平行に並べた鉄筋同士を緊結する際に確実に所定の拘束力(耐力)を得ることができる鉄筋緊結金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するため、本発明に係る鉄筋緊結金具は、平行に並べた鉄筋を挟む一対の鉄筋挟持部と鉄筋抱持部とによりほぼU字形状に形成された鉄筋拘束プレートと、前記鉄筋拘束プレートの一対の鉄筋挟持部の内、一方の鉄筋挟持部に設けられたボルト挿入孔に軸部が挿入されるボルトと、他方の鉄筋挟持部に設けられたクサビ挿入孔に挿入され楔効果を発揮するクサビナットとを備え、当該クサビナットは、前記ボルトの軸部が螺合する雌ネジ孔が形成された底板部と、その底板部の左右両側からそれぞれ立設して前記クサビ挿入孔に前記一方の鉄筋挟持部とは反対側から挿入され、先端の先細部から後端の幅広部に至る途中で止まるようクサビ形状に形成された一対のクサビ形状側板部とを有することを特徴とする。
また、本発明に係る鉄筋緊結金具では、前記鉄筋拘束プレートの鉄筋抱持部には、前記クサビナットおよびボルトから離れた鉄筋の節部に係合する節部係合部が設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係る鉄筋緊結金具では、前記クサビ挿入孔には、前記クサビナットの一対のクサビ形状側板部それぞれの挿入箇所を区分けするように突出した側板区分け部が設けられていることも特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る鉄筋緊結金具では、クサビナットに螺合するボルトを締付けてクサビナットの一対のクサビ形状側板部が鉄筋拘束プレートのクサビ挿入孔に入り込んでいって楔効果を発揮しながら平行に並べた鉄筋同士を緊結する際、一対のクサビ形状側板部が単独で上下左右に動いたり変形等する。
そのため、平行に並べた鉄筋同士を緊結する際、クサビナットの一対のクサビ形状側板部は鉄筋の谷部(凹部)に当接する確率(頻度)が増大するので、平行に並べた鉄筋の拘束力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る実施形態の鉄筋緊結金具の使用状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の鉄筋緊結金具の分解斜視図である。
【
図3】(a)~(c)それぞれ本発明に係る実施形態の鉄筋緊結金具を構成するクサビナットの平面図、正面図、低面図である。
【
図4】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の鉄筋緊結金具を構成するクサビナットの側面、
図3(b)におけるA-A線断面図である。
【
図5】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の鉄筋緊結金具を構成する鉄筋拘束プレートの斜視図である。
【
図6】(a)~(c)それぞれ本発明に係る実施形態の鉄筋緊結金具を構成する鉄筋拘束プレートの平面図、正面図、低面図である。
【
図7】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の鉄筋緊結金具を構成する鉄筋拘束プレートの右側面図、左側面図である。
【
図8】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の鉄筋緊結金具を使用して2本の鉄筋を緊結する際の状態を示す説明図である。
【
図9】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の鉄筋緊結金具を使用して2本の鉄筋を緊結する際のクサビナット、およびクサビナットの動きを示す説明図である。
【
図10】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の鉄筋緊結金具を構成するクサビナットのクサビ形状側板部の他の形状を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係る実施形態の鉄筋緊結金具1について説明する。尚、下記に説明する実施形態は、あくまで本発明の一例であり、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0010】
本実施形態の鉄筋緊結金具1は、鉄筋かご(杭かご)等を組み立てる際、
図1に示すように平行に並べた鉄筋2,2同士を緊結する金具であって、
図2に示すようにボルト11と、クサビナット12と、鉄筋拘束プレート13等を備えて構成される。尚、緊結すべき鉄筋2は、節部2aや谷部2b、リブ2cが形成された周知の異形鉄筋である。
【0011】
(ボルト11)
ボルト11は、
図2等に示すように外周に雄ネジが形成された軸部11aと、頭部11bと、フランジ部11cとを有する周知のフランジボルトで、鉄筋拘束プレート13の一対の鉄筋挟持部13a,13bの内、一方(
図2では上方)の鉄筋挟持部13aに設けられたボルト挿入孔13a1に軸部11aを挿入して使用するものである。尚、ボルト11は、フランジ部11cを介して軸部11aをボルト挿入孔13a1に挿入するフランジ無しの通常のホルトでも勿論良い。
【0012】
(クサビナット12)
クサビナット12は、1枚の鋼板プレートを所定形状にカットした上に曲げ加工して形成したもので、
図3や
図4等に示すように長方形状の底板部12aと、その底板部12aの長辺側の左右両側からそれぞれ立設した一対のクサビ形状側板部12b,12bとを有する。
【0013】
底板部12aには、ボルト11の軸部11aが螺合する雌ネジ孔12a1が設けられている。本実施形態では、雌ネジ孔12a1をバーリング加工等によって形成しているため、
図3(b)に示すように雌ネジ孔12a1の形成部分が底板部12a下面より突出しているが、底板部12a下面より突出していなくても勿論良いし、さらには底板部12aにボルト孔を形成し、ナット等を溶接して雌ネジ孔12a1を設けても勿論良い。
【0014】
一対のクサビ形状側板部12b,12bは、それぞれ、
図3や
図4等に示すように鉄筋拘束プレート13のクサビ挿入孔13b1に先細部12b1,12b1から挿入され後端の幅広部12b2,12b2に至る途中でクサビ挿入孔13b1内周面に斜辺部12b3,12b3が当接して楔効果を発揮するように台形形状に形成されている。
【0015】
ここで、
図3(b)に示すように一対のクサビ形状側板部12b,12bの先細部12b1,12b1の幅をL1、幅広部12b2,12b2の幅をL2とし、また、クサビ挿入孔13b1の後述する側板挿入部13b2,13b2の長手方向の長さL3(
図6(c)参照。)とすると、クサビナット12の一対のクサビ形状側板部12b,12bがクサビ挿入孔13b1の側板挿入部13b2,13b2に挿入されて楔効果を発揮しつつもクサビナット12が抜けないようするため、L1<L3<L2の関係にする必要がある。
【0016】
また、
図4(a)に示すように一対のクサビ形状側板部12b,12b間の間隔をL4とすると、一対のクサビ形状側板部12b,12bが同時に同じ節部2aに当接しないようにするためには、鉄筋2の節部2aの幅L5(
図9(a)参照。)よりも大、すなわちL4>L5とすることが好ましく、本実施形態では、L4>L5としている。
【0017】
(鉄筋拘束プレート13)
鉄筋拘束プレート13は、クサビナット12よりも厚さが薄い一枚の薄板状の鋼板を所定形状にカットした後、U字形状に曲げることによって一対の鉄筋挟持部13a,13bおよび鉄筋抱持部13cを設けたもので、
図1に示すように平行に並べた鉄筋2,2を、ボルト11やクサビナット12、一対の鉄筋挟持部13a,13bおよび鉄筋抱持部13cで極力隙間が生じないように抱持ないしは挟持して拘束するように構成した金具である。
【0018】
一対の鉄筋挟持部13a,13bの内、一方(
図2や
図5上、上側)の鉄筋挟持部13aには、
図5や
図6等に示すようにボルト11の軸部11aが挿入されるボルト挿入孔13a1が設けられている。
【0019】
また、他方(
図2や
図5上、下側)の鉄筋挟持部13bには、クサビナット12の底板部12aの左右両側からそれぞれ立設した一対のクサビ形状側板部12b,12bが先細部12b1,12b1から挿入されて楔効果を発揮するクサビ挿入孔13b1が設けられている。
【0020】
クサビ挿入孔13b1は、正面視台形でかつ平面視長方形のクサビナット12の一対のクサビ形状側板部12b,12bがそれぞれ所定の場所を通って挿入されることが望ましいため、
図5や
図6等に示すように一対のクサビ形状側板部12b,12bそれぞれが挿入される側板挿入部13b2,13b2を区分けしてクサビ形状側板部12b,12bを案内する側板区分け部13b3,13b3を設けたH字形状に形成されている。
【0021】
また、鉄筋抱持部13cの左右両側には、それぞれ、
図5~
図7等に示すようにクサビナット12およびボルト11から離れた鉄筋2の節部(リブ)21に係合する節部係合部13c1,13c2が設けられている。
【0022】
節部係合部13c1,13c2は、
図6(a)~(c)および
図7(a),(b)に示すように
図5上上側であるボルト挿入孔13a1が設けられた鉄筋挟持部13a側では、右側面視で左側に設けられている一方、
図5上下側であるクサビ挿入孔13b1が設けられた鉄筋挟持部13b側では、右側面視で右側に設けている。
【0023】
<実施形態の鉄筋拘束金具1の機能>
次の以上のように構成された実施形態の鉄筋拘束金具1の機能について、図面を参照して説明する。
【0024】
平行に並べた2本の鉄筋2,2同士を緊結する場合、まず、作業員は、平行に並べた2本の鉄筋2,2に鉄筋拘束プレート13の開口側を対向させて横から差し込んで、
図8(a)に示すように鉄筋拘束プレート13で平行状態に並べた2本の鉄筋2,2を挟むと共に、鉄筋拘束プレート13の対向する鉄筋挟持部13bのクサビ挿入孔13b1からクサビナット12の一対のクサビ形状側板部12b,12bを挿入する。
【0025】
また、ボルト11の軸部11aを鉄筋拘束プレート13の鉄筋挟持部13aのボルト挿入孔13a1からクサビ挿入孔13b1に挿入されたクサビナット12の底板部12aの雌ねじ孔12a1に螺合し、平行に並べた2本の鉄2,2を挟持するように実施形態の鉄筋拘束金具1を組み上げる。
【0026】
次に、作業員は、
図8(a)に示すようにボルト11の頭部11bを図示しないインパクトレンチや工具等を使用して回転させる。すると、ボルト11の軸部11aがクサビナット12の底板部12の雌ネジ孔12a1に螺合しているため、クサビナット12はボルト11の頭部11bに向かって徐々に近付き引寄せられる。
【0027】
その際、実施形態の鉄筋拘束金具1では、ボルト11側を回すため、ロングソケットが必要なく、ナットのように手作業で仮締めすることなく初めからインパクトレンチ等の工具で締め込みが可能となり、作業効率を向上させることができる。
【0028】
また、クサビナット12がボルト11の頭部11bに向かって徐々に引寄せられると、
図8(b)に示すようにクサビナット12の一対のクサビ形状側板部12b,12bはその先細部12b1,12b1からクサビ挿入孔13b1に挿入していき、その楔効果によってクサビ形状側板部12b,12bの斜辺部12b3,12b3がクサビ挿入孔13b1内縁部に当たって楔効果を発揮し、ボルト挿入孔13a1側の鉄筋挟持部13aとクサビ挿入孔13b1側の鉄筋挟持部13bとを近付け、鉄筋拘束プレート13の一対の鉄筋挟持部13a,13bおよび鉄筋抱持部13cで平行状態の2本の鉄筋2,2を緊結することができる。
【0029】
また、クサビナット12は、底板部12の両側から立設させた一対のクサビ形状側板部12b,12bを有するため、ボルト11の回転によってボルト11の頭部11bに向かって徐々に近付く際、クサビ形状側板部12b,12bの楔効果を発揮する台形形状によって
図8(b)に示すようにクサビ形状側板部12b,12bの斜辺部12b3,12b3が2本の鉄筋2,2の内、ボルト11側の鉄筋2の外周面を徐々に強く押圧していく。
【0030】
すると、クサビナット12のクサビ形状側板部12b,12bは、
図9(b)(実線が静止状態、点線が前後(上下)左右に動いた場合の動きの例を示している。)に示すようにそれぞれ独立して前後(上下)左右に動くことが可能であるため、従来のように楔本体が一体式の塊の場合よりも一方のクサビ形状側板部12b,12bは左右に曲がって鉄筋2の谷部2bに当接する確率が増大する。
【0031】
そのため、従来の場合よりもクサビナット12のクサビ形状側板部12b,12bが確実に鉄筋2の谷部2bに入り込んで当接するので、平行に並べた鉄筋2,2同士を緊結する際に確実に所定の拘束力(耐力)を得ることができる。
【0032】
また、一対のクサビ形状側板部12b,12b間の間隔L4(
図4(a)参照。)は、鉄筋2の節部2a,2a間の間隔L5(
図9(a)参照。)よりも大きくしているため、クサビ形状側板部12b,12bの少なくとも一方は鉄筋2の谷部2bに当接し易くなり、この点でも平行に並べた鉄筋同2,2士を緊結する際に確実に所定の拘束力(耐力)を得ることができる。
【0033】
また、鉄筋拘束プレート13の鉄筋抱持部13cには、内側に折り曲げた節部係合部13c1,13c2を設けているため、鉄筋緊結金具1で平行状態の鉄筋2,2を拘束する際、鉄筋拘束プレート13の鉄筋抱持部13cはクサビナット12およびボルト11から離れた側の鉄筋2に接触する際、鉄筋抱持部13cの節部係合部13c1,13c2は鉄筋2の節部2aに係合したり、谷部2bに入り込む。
【0034】
そのため、鉄筋抱持部13cに節部係合部13c1,13c2を設けない場合よりも鉄筋抱持部13c側の鉄筋2に対する係合度が向上するので、節部係合部13c1が拘束している鉄筋2がズレようとした場合には、節部係合部13c1,13c2が鉄筋2の谷部2bに入り込むことで節部2aに係合して抵抗しストッパーの役割を果たし、平行状態の鉄筋2,2をより確実に拘束することが可能となる。
【0035】
尚、拘束する平行状態の2本の鉄筋2,2の径が異なる場合は、ボルト11およびクサビナット12側に径が小さい(細い)鉄筋2を配置する。このように径が小さい(細い)鉄筋2をボルト11およびクサビナット12側に配置してボルト11を締め付けると、ボルト11の引き寄せやボルト11の頭部11bを中心とした回転方向の動きでクサビナット12のクサビ形状側板部12b,12bが径の小さい(細い)鉄筋2の谷部2bに確実に入り込んで確実に固定することができる。
【0036】
<実施形態の鉄筋拘束金具1のまとめ>
以上説明したように、本発明に係る実施形態の鉄筋緊結金具1では、鉄筋拘束プレート13のクサビ挿入孔13b1に挿入したクサビナット12の一対のクサビ形状側板部12b,12bの楔効果等によって平行に並べた鉄筋2,2同士を緊結するため、クサビナット12に螺合するボルト11を締付けて一対のクサビ形状側板部12b,12bが鉄筋拘束プレート13のクサビ挿入孔13b1に入り込んでいって楔効果を発揮しながら鉄筋2,2の節部2aや谷部2bに接触する際に、一対のクサビ形状側板部12b,12bはそれぞれ底板部12aの両側で単独で上下左右に動いたり変形し易い。
【0037】
そのため、本発明に係る実施形態の鉄筋緊結金具1によれば、平行状態の鉄筋2,2同士を緊結する際、クサビナット12の一対のクサビ形状側板部12b,12bは鉄筋2の谷部2b(凹部)2bに当接する頻度が増大するので、平行に並べた鉄筋2,2の拘束力を向上させることができる。
【0038】
特に、本発明に係る実施形態の鉄筋緊結金具1では、クサビナット12の一対のクサビ形状側板部12b,12bの正面視形状を台形にしているため、鉄筋2との当接範囲をより確保することができ、鉄筋2,2を鉄筋拘束プレート13の鉄筋抱持部13cの方へ移動できることにより強固に緊結することができる。
【0039】
また、拘束する2本の鉄筋2,2の径が異なる場合は、ボルト11およびクサビナット12側に細い鉄筋2を配置するため、ボルト11を締め付けると、ボルト11の引き寄せやボルト11の頭部11bを中心とした回転方向の動きで一対のクサビ形状側板部12b,12bが細い鉄筋2の谷部2bに入り込み、確実に固定することができる。
【0040】
また、本発明に係る実施形態の鉄筋緊結金具1では、鉄筋拘束プレート13の鉄筋抱持部13cには、内側に折り曲げた節部係合部13c1,13c2を設けている。
【0041】
そのため、本発明に係る実施形態の鉄筋緊結金具1では、鉄筋拘束プレート13の鉄筋抱持部13cがクサビナット12およびボルト11から離れた側の鉄筋2に接触する際、鉄筋抱持部13cの節部係合部13c1,13c2は鉄筋2の節部2aに係合したり、谷部2bに入り込む。
【0042】
その結果、鉄筋抱持部13cに節部係合部13c1,13c2を設けない場合よりも鉄筋抱持部13c側の鉄筋2に対する係合度が向上すると共に、節部係合部13c1が拘束している鉄筋2がズレようとした場合には、節部係合部13c1,13c2が鉄筋2の谷部2bに入り込むことで節部2aに係合して抵抗しストッパーの役割を果たすので、平行状態の鉄筋2,2をより確実に拘束することが可能となる。
【0043】
特に、本発明に係る実施形態の鉄筋緊結金具1では、鉄筋抱持部13c両側の縁部全体に節部係合部13c1,13c2を設けるのではなく、鉄筋抱持部13c両側の縁部の一部、具体的には鉄筋抱持部13cの上側であれば
図7(b)に示すように右側、鉄筋抱持部13cの下側であれば
図7(b)に示すように左側に設けているため、鉄筋拘束プレート13を鉄筋2,2に取付ける際に節部係合部13c1,13c2が邪魔にならず、鉄筋2,2の拘束作業の作業効率が向上すると共に、鉄筋2の長手方向(軸心方向)に延びるリブ2cに節部係合部13c1,13c2が当接し難くなり、鉄筋2の短手方向(周方向)に延びる節部2aに係合し易くなるので、この点でも平行状態の鉄筋2,2をより確実に拘束することが可能となる。
【0044】
また、本発明に係る実施形態の鉄筋緊結金具1では、鉄筋拘束プレート13のクサビ挿入孔13b1には、クサビナット12の一対のクサビ形状側板部12b,12bそれぞれを案内すると共に挿入箇所を区分けするように突出した側板区分け部13b3,13b3を設けている。
【0045】
そのため、ボルト11を回転させてクサビナット12の一対のクサビ形状側板部12b,12bが鉄筋拘束プレート13のクサビ挿入孔13b1の中を進んで締め付けていく際に、側板区分け部13b3,13b3によってクサビ形状側板部12b,12bはガイドされながら進むので、クサビナット12の回転を抑制することができクサビナット12のクサビ形状側板部12b,12bを鉄筋2表面に確実に当接して緊結することができる。また、例えば、径の小さい鉄筋を拘束する際には、側板区分け部13b3,13b3がクサビナット12の底板部12aに当接して、クサビナット12が抜け出ないようにしている。
【0046】
尚、上記実施形態の説明では、クサビナット12の一対のクサビ形状側板部12b,12bの正面視の形状を台形にして説明したが、本発明ではこれに限らず、楔効果を発揮できる形状であれば十分であるため、例えば、
図10(a)に示すクサビナット12’のようにクサビ形状側板部12bの正面視の形状を、台形を2段重ねたような形状にして、傾斜角度の異なる2つの斜辺部12b31’,12b32’を設けるようにしても良いし、さらには
図10(b)に示すクサビナット12”のようにクサビ形状側板部12bの正面視の形状を先細部12a”を設けるものの半円形形状にして斜辺部12b3の代わりに湾曲部12b3”を設けるようにしても勿論良い。
【符号の説明】
【0047】
1…鉄筋緊結金具、11…ボルト、11a…軸部、11a1…雄ネジ部、11b…頭部、11c…フランジ部、12,12’,12”…クサビナット、12a…底板部、12a1…雌ネジ孔、12b,12b’,12b”…クサビ形状側板部、12b1,12b1’,12b1”…先細部、12b2,12b2’,12b2”…幅広部、12b3,12b3’,12b3”…斜辺部、13…鉄筋拘束プレート、13a,13b…鉄筋挟持部、13a1…ボルト挿入孔、13b1…クサビ挿入孔、13b2…側板挿入部、13b3…側板区分け部、13c…鉄筋抱持部、13c1,13c2…節部係合部、2…鉄筋、2a…節部、2b…谷部、2c…リブ。