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  • 特許-有機溶剤の精製方法及び精製システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】有機溶剤の精製方法及び精製システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/36 20060101AFI20240329BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B01D61/36
B01D61/58
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020121868
(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公開番号】P2022018631
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】久松 篤史
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-141793(JP,A)
【文献】特開2015-071139(JP,A)
【文献】特開2016-030232(JP,A)
【文献】特開2018-192475(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207431(WO,A1)
【文献】特開2020-146639(JP,A)
【文献】特開2021-053588(JP,A)
【文献】米国特許第5203969(US,A)
【文献】中国特許出願公開第109663376(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/22
B01D61/00-71/82
C02F 1/44
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水よりも高い沸点を有する有機溶剤と水との混合液から前記有機溶剤を分離して精製する精製方法であって、
前記混合液における前記有機溶剤の濃度に応じて前記混合液に市水、純水及び超純水のいずれかである水を加えて供給液とし、
前記供給液を浸透気化膜を有する浸透気化膜モジュールに供給し、
前記供給液が供給された前記浸透気化膜モジュールから排出される透過蒸気を外部に排出する、精製方法。
【請求項2】
前記供給液をイオン交換樹脂に通液してから前記浸透気化膜モジュールに供給する、請求項1に記載の精製方法。
【請求項3】
Nを2以上の整数とし、Kを1≦K<Nである整数として、前段の前記浸透気化膜モジュールから排出される濃縮液が後段の前記浸透気化膜モジュールに供給され、かつ初段の前記浸透気化膜モジュールに前記供給液が供給されるようN台の前記浸透気化膜モジュールが直列に接続されており、初段からK段目までの前記浸透気化膜モジュールからの透過蒸気を外部に排出し、K+1段目からN段目までの前記浸透気化膜モジュールからの透過蒸気を凝縮したのちに前記混合液に加える、請求項1または2に記載の精製方法。
【請求項4】
前記混合液における前記有機溶剤の濃度がしきい値を超えるときに、前記混合液での前記有機溶剤の濃度が前記しきい値以下となるまで前記混合液に水を加えて前記供給液とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の精製方法。
【請求項5】
水よりも高い沸点を有する有機溶剤と水との混合液から前記有機溶剤を分離して精製する精製システムであって、
前記混合液における前記有機溶剤の濃度に応じて前記混合液に市水、純水及び超純水のいずれかである水を供給して供給液とする手段と、
浸透気化膜を有する浸透気化膜モジュールと、
を有し、
記供給液前記浸透気化膜モジュールに供給され
前記供給液が供給された前記浸透気化膜モジュールから排出される透過蒸気を外部に排出する、精製システム。
【請求項6】
イオン交換手段をさらに備え、
前記供給液は前記イオン交換手段を通液してから前記浸透気化膜モジュールに供給される、請求項5に記載の精製システム。
【請求項7】
Nを2以上の整数とし、Kを1≦K<Nである整数として、前段の前記浸透気化膜モジュールから排出される濃縮液が後段の前記浸透気化膜モジュールに供給され、かつ初段の前記浸透気化膜モジュールに前記供給液が供給されるように直列に接続されたN台の前記浸透気化膜モジュールを備え、
初段からK段目までの前記浸透気化膜モジュールからの透過蒸気は外部に排出され、K+1段目からN段目までの前記浸透気化膜モジュールからの透過蒸気は凝縮したのちに前記混合液に加えられる、請求項5または6に記載の精製システム。
【請求項8】
前記混合液における前記有機溶剤の濃度がしきい値を超えるときに、前記混合液での前記有機溶剤の濃度が前記しきい値以下となるまで前記混合液に水を供給する制御が行われる、請求項5乃至7のいずれか1項に記載の精製システム。
【請求項9】
前記混合液を貯留する貯留槽における液体の量を測定する液体量測定手段を備え、
前記貯留槽での液体の量が所定の量となるまで前記混合液を前記貯留槽に供給し、
その後、前記貯留槽内の前記混合液に水を供給する前記制御が実行される、請求項8に記載の精製システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤と水との混合液から有機溶剤を分離して精製する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
水よりも高い沸点を有する有機溶剤と水との混合液から、その有機溶剤と水とを分離し、有機溶剤を精製することについての要求がある。例えば、大気圧(0.1013MPa)での沸点が202℃であるN-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPとも称する)は、例えばリチウムイオン二次電池の製造工程において分散媒として使用されており、乾燥工程において気化したNMPは、水スクラバーによって回収される。回収されたNMPは水との混合液となっているから、分散媒としてNMPを再利用するためには、混合液からNMPと水とを分離してNMPを精製する必要がある。
【0003】
水よりも高い沸点を有する有機溶剤と水との混合液からその有機溶剤と水とを分離する手法として、古くから蒸留法などが知られているが、蒸留法に比べて省エネルギー性能に優れ、かつ、装置規模も小さくできる技術として、浸透気化法(PV法)がある。特許文献1は、NMPと水との混合液からPV法によってNMPを分離する分離システムを開示している。このシステムでは、例えばゼオライトからなる浸透気化膜を有する浸透気化膜モジュールを使用し、浸透気化膜モジュールの入口側に混合液を供給し、浸透気化膜を挟んで入口側とは反対側となる透過側を減圧する。その結果、混合液を入口側から透過側へと移動させる駆動力が得られ、浸透気化膜の親水性により浸透気化膜の透過速度に差が生じるので、水は浸透気化膜を透過し、NMPは浸透気化膜の入口側(すなわち濃縮側)に残存する。NMP濃度が高められた液体が、濃縮液として、浸透気化膜の入口側から排出される。浸透気化膜を透過した蒸気を凝縮して得た透過液は、わずかな量しかNMPを含んでいないので、系外に排出される。さらに特許文献1は、前段から排出される濃縮液が後段に供給されるように複数の浸透気化膜モジュールを直列に接続することにより、後段の浸透気化膜モジュールからより高い濃度のNMPを得ることも開示している。このとき、後段の浸透気化膜モジュールの透過液は、前段の浸透気化膜モジュールの透過液よりも相対的に高濃度のNMPを含んでいるため、これを前段の浸透気化膜モジュールの入口に戻すことにより、NMPの回収率を向上させることも特許文献1は開示している。
【0004】
特許文献2は、浸透気化膜モジュールを用いてNMPと水との混合液からNMPを分離する際に、ゼオライトなどからなる浸透気化膜の劣化などを防ぐために、浸透気化膜モジュールの前段にイオン交換樹脂カラムを設けることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-71139号公報
【文献】特開2014-144937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
浸透気化膜を用いてNMPと水との混合液からNMPを分離する場合、浸透気化膜を透過するNMPの量は、浸透気化膜を挟んで液相側でのNMPの平衡蒸気圧と気相側でのNMPの分圧との差に依存し、この差が大きいほど浸透気化膜を透過するNMPの量は増加する。このことは、混合液中のNMP濃度が高くなると、透過蒸気として浸透気化膜モジュールから排出されるNMPの量が増大することを意味する。工程から回収したNMPを含む混合液からその工程で再利用するためにNMPと水とを分離してNMPを精製する場合、工程での種々の状況によって混合液におけるNMP濃度は変動し、混合液における実際のNMP濃度が計画値を上回るときには、透過蒸気として浸透気化膜モジュールから排出されるNMPの量が増えることになる。透過蒸気を凝縮した透過液を外部に排出することを考えると、透過液中のNMPの量が増加するほど、濃縮液により回収されるNMPの回収率が低下するとともに、有機溶剤であるNMPの廃棄処理コストが上昇する。したがって、透過蒸気として浸透気化膜モジュールから排出されるNMPの量が増加しないようにすることが求められる。NMP以外の有機溶剤と水との混合液から浸透気化膜を用いてその有機溶剤を分離し精製する場合においても、同様の課題が存在する。
【0007】
本発明の目的は、浸透気化膜を用いて有機溶剤と水との混合液からその有機溶剤を分離して精製する精製方法及び精製システムであって、混合液における有機溶剤の濃度が上昇した場合であっても系外に排出される有機溶剤の量が増えず、有機溶剤の回収率の低下を抑制できる精製方法及び精製システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の精製方法は、水よりも高い沸点を有する有機溶剤と水との混合液から有機溶剤を分離して精製する精製方法であって、混合液における有機溶剤の濃度に応じて混合液に市水、純水及び超純水のいずれかである水を加えて供給液とし、供給液を浸透気化膜を有する浸透気化膜モジュールに供給し、供給液が供給された浸透気化膜モジュールから排出される透過蒸気を外部に排出する。
【0009】
本発明の精製システムは、水よりも高い沸点を有する有機溶剤と水との混合液から有機溶剤を分離して精製する精製システムであって、混合液における有機溶剤の濃度に応じて混合液に市水、純水及び超純水のいずれかである水を供給して供給液とする手段と、浸透気化膜を有する浸透気化膜モジュールと、を有し、供給液浸透気化膜モジュールに供給され、供給液が供給された浸透気化膜モジュールから排出される透過蒸気を外部に排出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、浸透気化膜を用いて有機溶剤と水との混合液からその有機溶剤を分離して精製する場合に、混合液における有機溶剤の濃度が高まったときにはその混合液に水を加えて有機溶剤の濃度を低下させてから浸透気化膜による分離を行うことにより、混合液における有機溶剤の濃度の上昇の有無によらずに、系外に排出される有機溶剤の量が増加することを抑制し、有機溶剤の回収率が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の一形態の精製システムの構成を示す図である。
図2】本発明の別の実施形態の精製システムの構成を示す図である。
図3】本発明のさらに別の実施形態の精製システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。本発明に基づく精製システムが対象とする有機溶剤は、例えば1気圧(0.1013MPa)における沸点が水よりも高い有機溶剤であり、そのような有機溶剤の例としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1-メトキシ-2-プロパノール(PGME)、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセタート(PEGMEA)、ピリジン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、モノエタノールアミン(MEA)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、γ-ブチロラクトン(GBL)、ジメチルアセトアミド(DMA)などが挙げられる。以下の説明では、有機溶剤がNMPであるものとして説明するが、本発明は有機溶剤がNMPである場合に限られるものではない。
【0013】
図1は、本発明の実施の一形態の精製システムを示している。図1に示す精製システムは、NMPと水との混合液からNMPと水とを分離してNMPを回収、精製するものであって、混合液を貯留する貯留槽10と、浸透気化膜21を備える浸透気化膜モジュール20とを備えている。混合液は、配管11を介して貯留槽10に供給される。配管11には、混合液の供給量を制御する電磁弁15が設けられている。貯留槽10に水を供給するための配管12も設けられており、配管12には、水の供給量を制御する電磁弁16が設けられている。貯留槽10に供給される水としては、一例として、市水、純水、超純水などが挙げられる。貯留槽10には、貯留槽10内の液体の量を測定する液体量測定手段であるレベル計13と、貯留槽10内の液体における含水率を測定する含水率計14が取り付けられている。貯留槽10には、配管11を介してNMPと水との混合液が供給され、配管12を介して水が供給される。したがって、随伴する不純物を無視すれば、貯留槽10内にはNMPと水しか存在しないから、含水率計14で求めた含水率を1から減算することにより、貯留槽10内の液体におけるNMPの濃度が得られることになる。したがって含水率計14は、貯留槽10内の液体におけるNMPの濃度を測定する濃度測定手段を構成する。ここでは含水率計14を用いているが、例えば、屈折率計を用いれば混合液中のNMP濃度を直接測定することができるので、濃度測定手段として含水率計14の代わりに屈折率計を用いてもよい。さらには、含水率計でも屈折率計でもないセンサーを用いて、貯留槽10内の液体におけるNMP濃度を測定してもよい。なお、本明細書において「NMPの濃度を測定する」とは、NMPの濃度を直接測定する場合に限らず、例えば、含水率計で求めた含水率からNMPの濃度を算出する場合のように間接的に測定(取得)する場合も含む。含水率計14あるいは屈折率計は、貯留槽10に直接取り付けるのではなく、貯留槽10に接続する循環配管を設け、その循環配管に設置してもよい。貯留槽10内の液体は、供給液として浸透気化膜モジュール20に供給される。
【0014】
浸透気化膜モジュール20に設けられる浸透気化膜21は、例えばゼオライト膜によって構成されている。本実施形態における浸透気化膜21として使用な可能なゼオライト膜は、例えば、A型、Y型、T型、MOR型、CHA型などのゼオライトからなるものである。浸透気化膜モジュール10の入口に必要に応じて熱交換器が設けられており、貯留槽10からの供給液が例えば120℃に加熱されて浸透気化膜モジュール10に供給される。浸透気化膜モジュール20の透過側は不図示の真空ポンプで減圧されており、浸透気化膜21によってNMPと水が分離され、水を主体とする成分が透過蒸気の形態で浸透気化膜モジュール20の透過側から排出され、NMPを主体とする成分は、濃縮液として浸透気化膜モジュール20の濃縮側から排出される。
【0015】
浸透気化膜21を透過して透過側に漏れ出すNMPの量は、浸透気化膜21を挟んで液相側でのNMPの平衡蒸気圧と気相側でのNMPの分圧との差に依存し、供給液すなわち貯留槽10内の液体のNMP濃度が高いほど、液相側でのNMPの平衡蒸気圧も高くなるから、浸透気化膜21の透過側に漏れ出すNMPの量は多くなる。本実施形態では、浸透気化膜21の透過側に漏れ出すNMPの量を低減するため、含水率計14の測定値から求められる貯留槽10内の液体におけるNMP濃度に応じて、NMP濃度が高い場合に配管12を介して貯留槽10内に水を供給して貯留槽10内の液体におけるNMP濃度を下げる制御を行う。例えば、含水率計14の測定値から算出されるNMP濃度がしきい値を超えるときに、含水率計14から制御装置(不図示)に信号が出力され、制御装置からの信号によって電磁弁16が開くようにし、貯留槽10でのNMPの濃度がしきい値以下となるまで貯留槽10に水が供給されるようにする。実際には含水率とNMP濃度の和は1であるので、含水率がしきい値を下回るときに、含水率がしきい値以上となるように貯留槽10に水を供給すればよい。貯留槽10でのNMPの濃度がしきい値以下となると、含水率計14からの信号の出力が停止して電磁弁16が閉じ、これにより、配管12を介した貯留槽10へのさらなる水の供給が行われなくなる。このような制御を実行することによって、貯留槽10から浸透気化膜モジュール20に供給される供給水におけるNMP濃度もしきい値以下となる。その結果、貯留槽10に供給される混合液におけるNMP濃度が上昇した場合であっても、浸透気化膜モジュール20の透過側から排出される透過蒸気に含まれるNMPの量が増加することを防止できる。
【0016】
より具体的な制御手順として、レベル計13によって貯留槽10内の液位を測定し、貯留槽10内の液体の量が所定の量となるまで電磁弁15を開けて配管11を介して混合液を貯留槽10に供給し、液体の量が所定の量に達したら電磁弁15を閉じ、次に、含水率計14によって貯留槽10内の液体における含水率を測定し、含水率計14での測定値に基づいて貯留槽10内の液体におけるNMPの濃度を算出し、算出されたNMP濃度がしきい値を超える場合に、貯留槽10内の液体におけるNMPの濃度が上記のしきい値以下となるまで電磁弁16を開けて配管12を介して貯留槽10に水を供給し、その後、貯留槽10内の液体を供給液として浸透気化膜モジュール20に供給するようにしてもよい。含水率計14ではなく屈折率計を用いる場合には、電磁弁15を閉じたのち、屈折率計によって貯留槽10内の液体におけるNMP濃度を測定し、測定されたNMP濃度がしきい値を超える場合に、貯留槽10内の液体におけるNMPの濃度がしきい値以下となるまで電磁弁16を開けて配管12を介して貯留槽10に水を供給し、その後、貯留槽10内の液体を供給液として浸透気化膜モジュール20に供給すればよい。
【0017】
本発明に基づく精製システムでは、例えば特許文献1に記載されるように、複数台の浸透気化膜モジュールを直列に接続することにより、NMPの回収率を高めることができる。図2は、本発明の別の実施形態の精製システムを示している。図2に示す精製システムは、図1に示す精製システムと同様のものであるが、2台の浸透気化膜モジュール20A,20Bを直列に設けたものである。前段の浸透気化膜モジュール20Aに対して貯留槽10から供給液が供給され、この浸透気化膜モジュール20Aから排出される濃縮液が後段の浸透気化膜モジュール20Bに供給される。後段の浸透気化膜モジュール20Bの濃縮液から高濃度のNMPが回収される。前段の浸透気化膜モジュール20Aの透過側から排出される透過蒸気はほとんど水蒸気であるので、凝縮器22Aによって透過液とされて外部に排出される。これに対し、後段の浸透気化膜モジュール20Bの透過側から排出される浸透蒸気は多くのNMPを含むので、凝縮器22Bによって透過液とされたのち、貯留槽10に戻される。この構成において初段の浸透気化膜モジュール20Aの浸透蒸気に含まれるNMPの量は供給液におけるNMP濃度に依存するから、図1に示した精製システムにおけるものと同様の制御を行って供給液におけるNMP濃度を低くすることにより、初段の浸透気化膜モジュール20Aから浸透蒸気に含まれて排出されるNMPの量を少なくして精製システムでのNMPの低下を抑制することができる。
【0018】
直列に接続される浸透気化膜モジュールの台数は2に限定されるものではなく、3以上とすることもできる。Nを2以上の整数としてN台の浸透気化膜モジュールを直列に接続するときは、Kを1≦K<Nである整数として、前段の浸透気化膜モジュールから排出される濃縮液が後段の浸透気化膜モジュールに供給され、かつ初段の浸透気化膜モジュールに供給液が供給されるようにし、初段からK段目までの浸透気化膜モジュールからの透過蒸気を外部に排出し、K+1段目からN段目までの浸透気化膜モジュールからの透過蒸気を凝縮したのちに貯留槽10に戻すようにすればよい。
【0019】
本発明に基づく精製システムでは、特許文献2に示すように、浸透気化膜モジュールの前段に、イオン交換樹脂を充填したイオン交換樹脂カラムなどのイオン交換装置を設けてもよい。図3に示す本発明のさらに別の実施形態の精製システムは、図1に示す精製システムにおいて、貯留槽10と浸透気化膜モジュール20との間にイオン交換装置30を設け、貯留液10からの供給液がイオン交換樹脂を通液してから浸透気化膜モジュール20に供給されるようにしたものである。この場合、貯留槽10内の液体におけるNMP濃度を調整するために配管12を介して貯留槽10に供給される水として純水を使用することにより、イオン交換装置30におけるイオン交換負荷を低減することが可能になる。
【符号の説明】
【0020】
10 貯留槽
13 レベル計
14 含水率計
15,16 電磁弁
20,20A,20B 浸透気化膜モジュール
21 浸透気化膜
22A,22B 凝縮器
30 イオン交換装置
図1
図2
図3