(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】移動足場
(51)【国際特許分類】
E04G 3/28 20060101AFI20240329BHJP
E04G 3/24 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
E04G3/28 304
E04G3/24 302E
(21)【出願番号】P 2020139451
(22)【出願日】2020-08-20
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 亮人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀之
(72)【発明者】
【氏名】宮内 洋二
(72)【発明者】
【氏名】大下 知英
(72)【発明者】
【氏名】内藤 陽
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 康如
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 祐
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-048129(JP,A)
【文献】特開2012-219551(JP,A)
【文献】特開2004-176403(JP,A)
【文献】特開2012-154034(JP,A)
【文献】実開平6-67682(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第110552541(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 3/24
E04G 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錐状の塔状構造物を挟んで両側に配置され、前記塔状構造物の外周壁に沿って昇降する一対のクライミング装置と、
前記一対のクライミング装置にそれぞれ支持された状態で前記塔状構造物を挟んで両側に配置され、前記クライミング装置の昇降動作に伴って、互いに接離する方向へ移動する一対の足場支持部材と、
前記足場支持部材に載せられる足場板と、
を有する移動足場。
【請求項2】
一対の前記足場支持部材の上面間に架け渡されると共に互いに離間して配置され、前記足場支持部材の接離を案内する一対の案内部材と、
一対の前記案内部材上にそれぞれ取り付けられた一対の走行レールと、
前記走行レール上を走行するガーダと、
前記ガーダ上を走行する巻上機と、
を有する請求項1に記載の移動足場。
【請求項3】
一対の前記足場支持部材の下面間に架け渡されると共に互いに離間して配置され、前記足場支持部材の接離の案内を補助する一対の案内補助部材と、
前記足場支持部材及び前記案内補助部材に架け渡された足場支持補助部材と、
を有する、請求項1又は2に記載の移動足場。
【請求項4】
前記クライミング装置は、
前記足場支持部材を支持する外フレームと、
前記外フレームにスライド可能に嵌合した内フレームと、
前記外フレームを前記外周壁にロック及びアンロックする第一ロックピンと、
前記内フレームを前記外周壁にロック及びアンロックする第二ロックピンと、
前記外フレーム及び前記内フレームの何れか一方がロックされた状態で、他方を前記塔状構造物の高さ方向へスライドさせるジャッキ装置と、
を有する請求項1~3の何れか1項に記載の移動足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動足場に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、塔状構造物を解体するための解体用の足場装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1における解体用の足場装置は、塔状構造物の周囲に隙間を有して配置するリングフレームと、リングフレームに対して放射状にスライド可能なスライドフレームと、を備えている。そして、この解体用の足場装置においては、塔状構造物の解体に伴ってスライドフレームを放射状にスライドさせる。スライドフレームには、固定作業デッキが設けられている。固定作業デッキには、仮設作業デッキ(足場板)が架け渡される。
【0005】
しかしながら、スライドフレーム(足場支持部材)は放射状にスライドするため、移動方向が多方向となる。このため、足場支持部材を手動で動かす場合は、手間がかかる。また、足場支持部材を動かす駆動装置を設ける場合は、当該駆動装置の機構が複雑なものとなる。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、足場板が架け渡される足場支持部材の移動作業を軽減できる移動足場を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の移動足場は、錐状の塔状構造物を挟んで両側に配置され、前記塔状構造物の外周壁に沿って昇降する一対のクライミング装置と、前記一対のクライミング装置にそれぞれ支持された状態で前記塔状構造物を挟んで両側に配置され、前記クライミング装置の昇降動作に伴って、互いに接離する方向へ移動する一対の足場支持部材と、前記足場支持部材に載せられる足場板と、を有する。
【0008】
請求項1の移動足場においては、足場支持部材がクライミング装置に支持されている。このクライミング装置は、錐状の塔状構造物の両側に配置され、塔状構造物の外周壁に沿って昇降する。
【0009】
ここで、塔状構造物は、外径が上方に向かって小さくなるため、クライミング装置が塔状構造物の外壁面に沿って下降すると、クライミング装置の間隔が広がる。クライミング装置の間隔が広がると、クライミング装置に支持された一対の足場支持部材も間隔を広げる。
【0010】
このため、塔状構造物の外径の変化に応じて、足場支持部材は自動的に接離する方向へ移動する。このため、足場板が載せられる足場支持部材の移動作業を軽減できる。また、足場支持部材の間隔を広げ又は狭める駆動機構を別途設ける必要がない。
【0011】
請求項2の移動足場は、請求項1に記載の移動足場において、一対の前記足場支持部材の上面間に架け渡されると共に互いに離間して配置され、前記足場支持部材の接離を案内する一対の案内部材と、一対の前記案内部材上にそれぞれ取り付けられた一対の走行レールと、前記走行レール上を走行するガーダと、前記ガーダ上を走行する巻上機と、を有する。
【0012】
請求項2の移動足場においては、足場支持部材の上に、案内部材、走行レール、ガーダ、巻上機が設けられている。これにより、クレーン作業が可能となる。このため、小割した塔状構造物の小割片を塔状構造物の下方に吊り下ろすことができるので、塔状構造物の頂部まで届くタワークレーンを配備する必要ない。
【0013】
請求項3の移動足場は、請求項1又は2に記載の移動足場において、一対の前記足場支持部材の下面間に架け渡されると共に互いに離間して配置され、前記足場支持部材の接離の案内を補助する一対の案内補助部材と、前記足場支持部材及び前記案内補助部材に架け渡された足場支持補助部材と、を有する。
【0014】
請求項3の移動足場においては、足場支持補助部材が足場支持部材及び案内補助部材に架け渡されている。これにより、足場板の支持箇所が増えるので、剛性の低い足場板、又はサイズの小さい足場板の使用が可能となる。
【0015】
請求項4の移動足場は、請求項1~3の何れか1項に記載の移動足場において、前記クライミング装置は、前記足場支持部材を支持する外フレームと、前記外フレームにスライド可能に嵌合した内フレームと、前記外フレームを前記外周壁にロック及びアンロックする第一ロックピンと、前記内フレームを前記外周壁にロック及びアンロックする第二ロックピンと、前記外フレーム及び前記内フレームの何れか一方がロックされた状態で、他方を前記塔状構造物の高さ方向へスライドさせるジャッキ装置と、を有する。
【0016】
請求項4の移動足場においては、ジャッキ装置が、外フレーム及び内フレームの何れか一方が第一ロックピン又は第二ロックピンでロックされた状態で、他方を塔状構造物の高さ方向へスライドさせる。これにより、内フレームがロックされた状態で、外フレームを上昇させられる。また、外フレームがロックされた状態で、内フレームを上昇させられる。これらの動作を繰り返すことで、移動足場を上方へ移動させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、足場板が架け渡される足場支持部材の移動作業を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る移動足場を示す斜視図である。
【
図2】(A)は本発明の実施形態に係る移動足場のクライミング装置における外フレームを煙突の外壁に固定した状態を示す立面図であり、(B)は内フレームをジャッキアップした状態を示す立面図であり、(C)は内フレームを煙突の外壁に固定した状態を示す立面図であり、(D)は外フレームをジャッキアップした状態を示す立面図である。
【
図3】(A)は本発明の実施形態に係る移動足場を煙突の頂部に配置した状態を示すY方向からみた立面図であり、(B)はX方向からみた立面図であり、(C)は(B)におけるC-C線矢視図である。
【
図4】(A)は本発明の実施形態に係る移動足場を煙突の頂部を解体した後、降下させた状態を示すY方向からみた立面図であり、(B)はX方向からみた立面図であり、(C)は(B)におけるC-C線矢視図である。
【
図5】(A)は本発明の実施形態に係る移動足場を煙突の頂部に配置した状態において、足場支持部材に足場板を架け渡した状態を示す平面図であり、(B)は足場支持部材と案内補助部材との間に足場支持補助部材を架け渡した状態を示す平面図であり、(C)は移動足場を煙突の頂部を解体した後、降下させた状態において、足場支持部材と案内補助部材との間に足場支持補助部材を架け渡した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る移動足場について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0020】
各図において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0021】
<移動足場>
図1に示すように、本発明の実施形態に係る移動足場10は、クライミング装置20、足場機構30、案内機構40及び揚重機構50を含んで構成されている。なお、足場機構30、案内機構40及び揚重機構50は被覆材Fで覆われて配置される。
【0022】
被覆材Fは、図示しない下地材等に固定されたシートであり、煙突Cの解体に伴う粉塵等が外部へ飛散することを抑制する。被覆材Fの内側には、粉塵の飛散抑制のために負圧集塵機を配置すると好適である。
【0023】
移動足場10は、錐状の塔状構造物の一例である煙突Cを解体する作業用の足場である。なお、移動足場10は、煙突Cのほか、灯台、電波塔、展望台など、各種の塔状構造物の解体に使用することができる。
【0024】
詳しくは後述するが、クライミング装置20は、煙突Cの外周壁に沿って昇降する一対の昇降装置であり、煙突Cを挟んで両側に配置されている。足場機構30は、クライミング装置20に支持されており、足場支持部材32、吊下げ部材34、足場支持補助部材38及び足場板36を備えている(
図4(A)~(C)、
図5(A)~(C)等参照)。
【0025】
また、案内機構40は、足場機構30の移動を案内する案内部材42及び案内補助部材44を備えており、クライミング装置20又は煙突Cに支持されている。
【0026】
さらに、揚重機構50は、解体された煙突Cの解体片を揚重する装置であり、案内機構40に支持されている。
【0027】
(クライミング装置)
クライミング装置20は、
図2(A)~(D)に示すように、外フレーム22、内フレーム24及びポールジャッキ(ジャッキ装置)26を備えて形成されている。
【0028】
クライミング装置20は、煙突Cに対して、ロックピンP2(
図2(A)、(B)参照)、P3(
図2(C)、(D)参照)を用いて固定される。煙突Cには、これらのロックピンP2、P3を挿入するための挿入孔H1が形成される。
【0029】
具体的には、外フレーム22には、ロックピンP2を挿通させるロック孔H2が4箇所に設けられている。ロック孔H2は、挿入孔H1と重なる位置に配置できるように形成されている。換言すると、外フレーム22におけるロック孔H2と重なるように、挿入孔H1を形成する。
【0030】
なお、「重なる位置」とは、煙突Cの外周壁を法線方向からみた場合において重なる位置である。また、ロック孔H2の数は、移動足場10の重量を支持するために必要な数以上とし、4つに限定されない。後述するロック孔H3についても同様である。
【0031】
同様に、内フレーム24には、ロックピンP3を挿通させるロック孔H3が4箇所に設けられている。ロック孔H3は、挿入孔H1と重なる位置に配置できるように形成されている。換言すると、内フレーム24におけるロック孔H3と重なるように、挿入孔H1を形成する。
【0032】
ここで、外フレーム22と内フレーム24とは、スライド機構28を介して互いに相対移動可能に連結されている。この移動方向は、外フレーム22及び内フレーム24の軸方向に沿う方向である。また、この移動方向は、クライミング装置20を煙突Cに固定した状態では、方向Zが含まれる鉛直面上で、かつ、煙突Cの外周壁に沿う方向である。
【0033】
スライド機構28は、例えばベアリングを含んだレールである。外フレーム22と内フレーム24とは互いに嵌合した状態で配置され、当該嵌合部分に、スライド機構28が設けられている。これにより、外フレーム22と内フレーム24とのガタつきが抑制されている。
【0034】
さらに、外フレーム22と内フレーム24とは、ポールジャッキ26を介して互いに支持可能に連結されている。具体的には、ポールジャッキ26におけるシリンダ26Aが外フレーム22に固定され、ポールジャッキ26におけるポール26Bが内フレーム24に固定されている。
【0035】
ポール26Bは、シリンダ26Aを貫通するように配置されている。ポール26B及びシリンダ26Aの少なくとも一方に、ポール26Bの軸方向に沿う荷重が作用した状態で、ポール26B及びシリンダ26Aの相対位置を固定することができる。
【0036】
以上の構成により、クライミング装置20は、煙突Cの外周壁に沿って昇降することができる。昇降方法の一例を説明すると、まず、
図2(A)に示すように、外フレーム22のロック孔H2へロックピンP2を挿通させる。
【0037】
このロックピンP2は、ロック孔H2と重なる位置にある挿入孔H1へ挿入する。これにより、ロックピンP2は、ロック孔H2及び挿入孔H1へ挿通され、外フレーム22が煙突Cの外周壁にロック(固定)される。
【0038】
次に、
図2(B)に示すように、ポールジャッキ26を用いて内フレーム24をジャッキアップする。このとき、内フレーム24のロック孔H3が、挿入孔H1と重なる位置に配置されるように内フレーム24をジャッキアップする。
【0039】
次に、ロックピンP2をロック孔H2及び挿入孔H1へ挿通させた状態で、内フレーム24のロック孔H3へロックピンP3を挿通させる。このロックピンP3は、ロック孔H3と重なる位置にある挿入孔H1へ挿入する。これにより、ロックピンP3が、ロック孔H3及び挿入孔H1へ挿通され、内フレーム24が煙突Cの外周壁にロックされる。
【0040】
次に、
図2(C)に示すように、ロックピンP2をロック孔H2及び挿入孔H1から抜いて、外フレーム22を煙突Cの外周壁からアンロック(固定解除)する。そして、ポールジャッキ26を用いて外フレーム22をジャッキアップする。このとき、外フレーム22のロック孔H2が、挿入孔H1と重なる位置に配置されるようにジャッキアップする。
【0041】
これにより、
図2(D)に示すように、クライミング装置20は、煙突Cの外周壁に沿って上昇し、
図2(A)に示した状態と比較して高い位置に配置される。
【0042】
さらにクライミング装置20を高い位置に配置させるためには、ロックピンP3をロック孔H3及び挿入孔H1へ挿通させた状態で、内フレーム24のロック孔H2へロックピンP2を挿通させ、内フレーム24を煙突Cの外周壁にロックする。
【0043】
その後、ロックピンP3をロック孔H3及び挿入孔H1から抜いて、内フレーム24を煙突Cの外周壁からアンロックする。以上の工程を繰り返すことで、クライミング装置20を、煙突Cの外周壁上で上昇させることができる。
【0044】
なお、クライミング装置20を煙突Cの外周壁上で「下降」させる場合は、以上の工程の順序を逆にすればよい。また、ロックピンP2及びロックピンP3は、本発明における第一ロックピン及び第二ロックピンの一例である。ロックピンP2及びロックピンP3は、油圧シリンダなどを用いて孔から抜き差しすることができる。
【0045】
(足場機構)
図1に示すように、クライミング装置20の外フレーム22には、X方向の両側、かつ、上方向(すなわち、斜め上方向)に向かって延出した2本のステー22Sが接合されている。ステー22Sは、足場機構30の重量を外フレーム22へ伝達する支持脚である。
【0046】
足場機構30は、鋼製のボックストラスによって形成された足場支持部材32と、足場支持部材32に吊り下げられた吊下げ部材34と、を備えている。足場支持部材32及び吊下げ部材34は、それぞれX方向に沿って延設され、かつ、Y方向において煙突Cの両側にそれぞれ設けられている。
【0047】
図1においては、図示を簡略化するため、足場支持部材32を形成するボックストラスの形状は省略している。
図3(A)、(B)には、当該ボックストラスの形状の概要を図示している。ボックストラスは、長尺部材を組み合わせて箱状に形成された梁であり、斜材を組合わせて形成される。
【0048】
吊下げ部材34は、足場支持部材32の略全長に亘って配置された鋼製の長尺部材である。吊下げ部材34は、上下方向に延設された連結部34Aを介して、足場支持部材32と連結されている。連結部34Aは、後述する案内機構40における案内補助部材44を挟み込むように配置された複数本の鋼材で形成されている。
【0049】
(案内機構)
図1に示すように、案内機構40は、鋼製のボックストラスによって形成された案内部材42及び案内補助部材44を備えている。案内部材42及び案内補助部材44は、一対の足場機構30に架け渡されている。
【0050】
具体的には、案内部材42はY方向に沿って延設され、煙突Cの両側に配置された一対の足場支持部材32の上面間に架け渡されている。また、案内部材42は、足場支持部材32のX方向における両端部のそれぞれに配置され、これら一対の案内部材42は、X方向において互いに離間して配置されている。
【0051】
図3(A)、(B)に示すように、案内部材42と足場支持部材32との間には、レール46が配置されている。レール46は、足場支持部材32が、案内部材42の延設方向であるY方向に沿って滑らかに動けるようにガイドする補助機構である。レール46によって、案内部材42は、一対の足場支持部材32の接離する方向(平面視にて接離する方向、また、X方向からみて、Y方向に沿って接離する方向)への移動をスムーズに案内することができる。
【0052】
案内補助部材44は、案内部材42に沿って、かつ、平面視で案内部材42の下方に配置されている。案内補助部材44は、1対の案内部材42毎に、それぞれ2本設けられ、上下方向に延設された連結部44Aを介して、案内部材42と連結されている。
【0053】
案内補助部材44は、上述したように、足場機構30の吊下げ部材34を支持する連結部34Aによって挟み込まれた状態で配置されている。このため、案内補助部材44は、吊下げ部材34のX方向への移動を拘束する。
【0054】
これにより、案内補助部材44は、足場支持部材32が移動する際のがたつきを抑制することができる。換言すると、案内補助部材44は、足場支持部材32の接離の案内を補助することができる。
【0055】
(揚重機構)
図3(A)、(B)に示すように、揚重機構50は、一対の案内部材42上にそれぞれ取り付けられた一対の走行レール52と、走行レール52上を走行するガーダ54と、ガーダ54上を走行する巻上機56と、を含んで構成されている。
【0056】
走行レール52は、ガーダ54が、案内部材42の延設方向であるY方向に沿って滑らかに動けるようにガイドする補助機構である。
【0057】
ガーダ54は、一対の案内部材42上に架け渡された桁材であり、X方向に沿って延設されている。ガーダ54は、Y方向に沿って移動することにより、巻上機56のY方向における位置を位置決めする。
【0058】
巻上機56は、ガーダ54に支持されたホイスト又はウインチであり、ガーダ54の下方において、ガーダ54の延設方向であるX方向に沿って移動する。これにより、巻上機56のX方向における位置が位置決めされる。
【0059】
巻上機56は、解体した煙突Cの解体片を揚重し、地表面へ降ろす。この際、解体片は煙突Cの内側から降ろしてもよいし、外側から降ろしてもよい。
【0060】
(足場機構の移動)
図3(A)、(B)には、煙突Cの頂部に、クライミング装置20、足場機構30、案内機構40及び揚重機構50を配置した状態が示されている。
【0061】
図3(B)に示すように、煙突Cは、下方から上方に向かって外径が小さくなる錐状に形成されている。この煙突Cの外周壁に近接して足場支持部材32及び吊下げ部材34を配置する。このため、煙突Cの頂部において、足場支持部材32及び吊下げ部材34は、案内部材42及び案内補助部材44の両端部より内側の部分に配置される。
【0062】
このときの吊下げ部材34及び案内補助部材44の配置を、
図3(C)に示す。この状態においては、
図5(A)に示すように、足場板36を吊下げ部材34に架け渡す。これにより、煙突Cの周囲に作業員が作業するための作業床が形成される。
【0063】
ここで、
図5(B)に示すように、互いに直交して配置された吊下げ部材34と案内補助部材44との間には、足場支持補助部材38を斜め方向に架け渡すことができる。足場支持補助部材38としては、例えば鋼製の管体(パイプ)を用いることができる。「斜め方向」とはX方向及びY方向の双方と交わる方向であり、本実施形態においては、X方向及びY方向の双方に対して、約45°で交わる方向とされている。
【0064】
このように足場支持補助部材38を斜め方向に架け渡すことで、足場支持補助部材38がない場合と比較して、足場板36の支持箇所を多くすることができる。
【0065】
なお、足場板36及び足場支持補助部材38は、足場機構30に含まれるものとする。また、本発明における「足場支持部材に載せられる足場板」とは、本実施形態の足場板36のように、足場支持部材32から吊下げ支持された吊下げ部材34に載せられた足場板を含む。
【0066】
図3(A)、(B)、(C)に示した状態で煙突Cの頂部の解体が完了した後、クライミング装置20を煙突Cの外周壁に沿って下降させる。このとき、
図4(A)、(B)、(C)に示すように、足場支持部材32及び吊下げ部材34は、クライミング装置20の下降に連動して、案内部材42及び案内補助部材44の両端部側へスライドする。これにより、煙突Cの外周壁に近接して足場支持部材32及び吊下げ部材34を配置することができる。
【0067】
なお、クライミング装置20の下降に伴い、足場支持部材32及び吊下げ部材34の間隔が大きくなる。このため、吊下げ部材34に足場板36を架け渡すことが難しくなる場合がある。このため、煙突Cの解体が進んだ段階では、
図5(C)に示すように、足場支持補助部材38を吊下げ部材34と案内補助部材44との間に架け渡すことが好適である。
【0068】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る移動足場10においては、足場支持部材32がクライミング装置20に支持されている。このクライミング装置20は、錐状の塔状構造物である煙突Cの両側に配置され、煙突Cの外周壁に沿って昇降する。
【0069】
ここで、煙突Cは、外径が上方に向かって小さくなる。このため、
図3(B)及び
図4(B)を用いて示したように、クライミング装置20が煙突Cの外周壁に沿って下降すると、クライミング装置20の間隔(Y方向に沿う間隔)が広がる。クライミング装置20の間隔が広がると、クライミング装置20に支持された一対の足場支持部材32も間隔を広げる。
【0070】
このため、一対の足場支持部材32は、煙突Cの外径の変化に応じて、自動的に、互いに接離する方向へ移動する。このため、
図5(A)、(B)、(C)に示す足場板36が載せられる足場支持部材32の移動作業を軽減できる。また、足場支持部材32の間隔を広げ又は狭める駆動機構を別途設ける必要がない。
【0071】
また、本発明の実施形態に係る移動足場10においては、
図1(A)に示すように、足場支持部材32の上に、案内部材42、走行レール52、ガーダ54及び巻上機56が設けられている。これにより、クレーン作業が可能となる。このため、小割した煙突Cの小割片を煙突Cの下方に吊り下ろすことができるので、煙突Cの頂部まで届くタワークレーンを配備する必要ない。
【0072】
また、本発明の実施形態に係る移動足場10においては、
図5(B)、(C)に示すように、足場支持補助部材38を、足場支持部材32から吊下げられた吊下げ部材34及び案内補助部材44の間に架け渡すことができる。
【0073】
これにより、足場支持補助部材38が無い場合と比較して、足場板36の支持箇所が増える。このため、足場板36として、剛性の低い足場板、又はサイズが小さい足場板の使用が可能となる。
【0074】
また、本発明の実施形態に係る移動足場10においては、
図2(A)~(D)に示すように、クライミング装置20におけるポールジャッキ26が、外フレーム22及び内フレーム24の何れか一方が煙突Cの外壁面にロックされた状態で、他方を煙突Cの高さ方向へスライドさせる。
【0075】
これにより、内フレーム24がロックされた状態で、外フレーム22を上昇させられる。また、外フレーム22がロックされた状態で、内フレーム24を上昇させられる。これらの動作を繰り返すことで、移動足場10を上方へ移動させることができる。下方へ移動させる場合も同様である。
【0076】
なお、本実施形態においては、煙突Cを解体するために走行レール52、ガーダ54及び巻上機56を用いているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば煙突Cの高さが低い場合や、十分な高さのタワークレーンを用意できる場合は、走行レール52、ガーダ54及び巻上機56は必ずしも用いる必要はない。これらを用いなくても、煙突Cは解体できる。
【0077】
また、本実施形態においては、足場支持部材32の移動を案内するために案内部材42及び案内補助部材44を設けているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば案内部材42及び案内補助部材44を省略しても、煙突Cの外径の変化に応じて、クライミング装置20の間隔が変わるので、足場支持部材32は自動的に接離する方向へ移動する。
【0078】
また、本実施形態におけるクライミング装置20は、煙突Cの挿入孔H1へロックピンP2、P3を抜挿しながら、外フレーム22と内フレーム24とを順次昇降させるものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0079】
例えば煙突Cの高さが低い場合などは、地表面から煙突Cの頂部に届くレールを煙突Cに沿わせて配置し、そのレール上を、外フレーム22が昇降するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 移動足場
20 クライミング装置
22 外フレーム
24 内フレーム
26 ポールジャッキ(ジャッキ装置)
32 足場支持部材
34 吊下げ部材(足場支持部材)
36 足場板
38 足場支持補助部材
42 案内部材
44 案内補助部材
52 走行レール
54 ガーダ
56 巻上機
C 煙突(塔状構造物)
P2 ロックピン(第一ロックピン)
P3 ロックピン(第二ロックピン)