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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】撹拌装置及び撹拌方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 27/806 20220101AFI20240329BHJP
   B01F 23/50 20220101ALI20240329BHJP
【FI】
B01F27/806
B01F23/50
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020141889
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037651
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】石原 治彦
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-285348(JP,A)
【文献】実開昭63-111927(JP,U)
【文献】特開2015-213877(JP,A)
【文献】特開2016-036835(JP,A)
【文献】特開2002-085951(JP,A)
【文献】特開平08-075752(JP,A)
【文献】特開2009-190026(JP,A)
【文献】特開2020-115410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 27/806
B01F 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する貯留部と、
前記貯留部の高さ方向について移動可能であるとともに、前記貯留部に貯留された前記液体中に粉体を分散させる撹拌部と、
前記撹拌部を駆動する駆動部と、
前記液体中の前記粉体の分散状態に基づいて前記撹拌部の前記高さ方向についての位置を制御する制御部と、
を備える、撹拌装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記分散状態を示すパラメータとして、前記駆動部の駆動に関する駆動パラメータを取得し、
前記制御部は、前記駆動パラメータの変化に応じて、前記撹拌部の前記高さ方向についての位置を制御する、
請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記撹拌部が前記高さ方向の初期位置に位置する状態において、前記駆動パラメータが基準範囲より大きくなったことに基づいて、前記撹拌部を前記初期位置から前記高さ方向の上側に移動させ、
前記撹拌部が前記高さ方向の前記上側に前記初期位置から移動している状態において、増加から減少へ前記駆動パラメータの経時的な変化が切り替わったことに基づいて、前記撹拌部を前記高さ方向の下側に移動させ、
前記撹拌部が前記高さ方向の前記下側に移動している状態において、前記駆動パラメータが前記基準範囲内になったことに基づいて、前記撹拌部の前記高さ方向についての移動を停止させる、
請求項2に記載の撹拌装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記撹拌部の前記高さ方向についての移動が停止している状態において、増加から減少へ前記駆動パラメータの経時的な変化が切り替わったことに基づいて、前記撹拌部の回転を停止させる、
請求項3に記載の撹拌装置。
【請求項5】
前記駆動パラメータは、前記駆動部の負荷電流値又は前記駆動部のトルク値である、
請求項2~4のいずれか1項に記載の撹拌装置。
【請求項6】
真空装置と接続可能な接続口をさらに備える、請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項7】
貯留部に液体を貯留することと、
撹拌部を前記貯留部に貯留された前記液体中で駆動することにより前記液体中に粉体を分散することと、
前記液体中の前記粉体の分散状態に基づいて、前記貯留部の高さ方向について前記撹拌部の位置を制御することと、
を含む、撹拌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、撹拌装置及び撹拌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体の撹拌装置では、粉体と液体とが容器(タンク)に投入され、例えば、撹拌翼等で粉体と液体とを接触させると、せん断応力等の力により粉体が液体中で分散される。この際、粉体と液体との親和性(濡れ性)が低い場合がある。親和性が低い場合、粉体は液体の液面に浮いたままとなり、撹拌翼により粉体と液体とを撹拌しても分散が進みにくい。そのため、例えば粉体と液体との親和性が低い場合でも、粉体と液体との分散に要する時間を短くすることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭63-111927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、効率的に粉体を液体に分散可能な撹拌装置及び撹拌方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、撹拌装置は、貯留部と、撹拌部と、駆動部と、制御部と、を備える。貯留部は、液体を貯留する。撹拌部は、貯留部の高さ方向について移動可能であるとともに貯留部に貯留された液体中に粉体を分散させる。駆動部は、撹拌部を駆動する。制御部は、液体中の粉体の分散状態に基づいて、撹拌部の高さ方向についての位置を制御する。
【0006】
実施形態によれば、撹拌方法では、貯留部に液体を貯留する。撹拌方法では、撹拌部を貯留部に貯留された液体中で駆動することにより液体中に粉体を分散する。撹拌方法では、液体中の粉体の分散状態に基づいて、貯留部の高さ方向について撹拌部の位置を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る撹拌装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、実施形態に係る撹拌装置のブロック図の一例である。
図3図3は、互いに対して親和性の低い液体と粉体とを実施形態の撹拌装置において分散する場合の状態パラメータの変化の一例を示すグラフである。
図4図4は、互いに対して親和性の低い液体と粉体とを実施形態の撹拌装置において分散する場合に、液体に粉体を投入する前に制御部によって実行される処理の一例を示す。
図5図5は、互いに対して親和性の低い液体と粉体とを実施形態の撹拌装置において分散する場合に、液体へ粉体を投入した時点以後に制御部によって実行される処理の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
【0009】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る撹拌装置1の一例を示す。撹拌装置1では、鉛直方向と一致又は略一致する高さ方向(矢印Z1及び矢印Z2で示す方向)が、規定される。また、撹拌装置1では、高さ方向について交差する(垂直又は略垂直な)第1の水平方向(矢印X1及び矢印X2で示す方向)、及び、高さ方向及び第1の水平方向の両方に対して交差する(垂直又は略垂直な)第2の水平方向が、規定される。
【0010】
図1に示すように、撹拌装置1は、貯留部2、液体供給部3、粉体供給部4、撹拌部5、駆動部6、移動機構7、排出部8及び処理装置9を備える。貯留部2は、撹拌装置1において使用される液体10及び粉体11を貯留する。貯留部2は、例えば、底部を備える円筒又は略円筒の容器である。本実施形態では、貯留部2の高さ方向についての寸法は、第1の水平方向及び第2の水平方向についての寸法に比べてはるかに大きい。液体供給部3は、撹拌装置1において使用される液体10を貯留部2に供給する。粉体供給部4は、撹拌装置1において使用される粉体11を貯留部2に供給する。液体供給部3及び粉体供給部4は、高さ方向について貯留部2の上部に設けられる。液体供給部3から供給される液体10と、粉体供給部4から供給される粉体11との親和性(濡れ性)は、低い。親和性(濡れ性)とは、主として粉体の表面に対する液体の付着しやすさを表す。本実施形態では、液体10は、粉体11を分散する分散媒である。ある一例では、液体供給部3から供給される液体10及び粉体供給部4から供給される粉体11の組み合わせは、水系液体及び炭素材料である。なお、本実施形態では、液体供給部3と粉体供給部4とは別に設けられているが、液体供給部3と粉体供給部4とが一体であってもよい。ある一例では、液体10及び粉体11は、1つの供給部を通じて貯留部2に供給される。
【0011】
撹拌部5は、貯留部2の内部に供給された液体10及び粉体11を撹拌する。撹拌部5は、貯留部2の内部に配置される。撹拌部5は、例えば、撹拌翼である。撹拌翼としては、これに限定されるものではないが、例えば、プロペラ形状の撹拌翼、円盤形状の撹拌翼等が挙げられる。駆動部6は、接続部12により撹拌部5と接続される。本実施形態では、接続部12はシャフトである。これにより、駆動部6は、撹拌部5を駆動する駆動源となる。撹拌部5は、駆動部6により駆動されることで、貯留部2の内部において液体10及び粉体11を撹拌する。本実施形態では、図1に示す矢印のように、撹拌部5が、駆動部6により駆動されることで接続部12を軸として回転可能である。ある一例では、接続部12及び撹拌部5は、貯留部2において、第1の水平方向及び第2の水平方向の両方について中央に位置する。すなわち、接続部12及び撹拌部5は、高さ方向に垂直又は略垂直な断面において貯留部2の中央の部位に位置する。別のある一例では、接続部12及び撹拌部5は、高さ方向に垂直又は略垂直な断面において貯留部2の中央の部位からずれた位置、すなわち貯留部2の中心から偏心した位置に配置される。
【0012】
移動機構7は、接続部12を高さ方向について移動させる。接続部12は、移動機構7により駆動されることで、高さ方向に沿って上側又は下側へ移動可能である。移動機構7は、接続部12と接続部12に取り付けられた撹拌部5とを一緒に高さ方向に沿って移動させることで、撹拌部5を高さ方向に移動させる。排出部8は、撹拌装置1において液体10及び粉体11の分散が完了した後に、貯留部2の内部の液体10及び粉体11を排出する。排出部8は、高さ方向について貯留部2の下部に設けられる。処理装置9は、駆動部6の駆動を制御することで撹拌部5を回転させる。処理装置9は、移動機構7を制御することで、接続部12及び撹拌部5を高さ方向に沿って移動させる。なお、撹拌部5の回転、撹拌部5及び接続部12の高さ方向に沿う移動のそれぞれは、同一の駆動部によって駆動されてもよい。
【0013】
図2は、実施形態に係る撹拌装置1のブロック図の一例を示す。撹拌装置1の処理装置9は、制御部13及び検出部14を備える。処理装置9は、例えば、コンピュータである。処理装置9は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を含むプロセッサ又は集積回路(制御回路)、及び、メモリ等の記憶媒体を備える。処理装置9に設けられるプロセッサ又は集積回路は、1つであってもよく、複数であってもよい。処理装置9は、記憶媒体等に記憶されるプログラム等を実行することにより、処理を実行する。なお、検出部14は、処理装置9とは別に設けられていてもよい。
【0014】
制御部13は、駆動部6の駆動及び移動機構7を制御する。これにより、駆動部6に接続された撹拌部5では、撹拌部5の回転が制御される。また、移動機構7に接続された接続部12では、接続部12の高さ方向に沿う移動が制御される。本実施形態では、接続部12に撹拌部5が取り付けられているため、接続部12の高さ方向に沿う移動にともなって、撹拌部5が高さ方向に沿って移動する。撹拌部5の回転速度及び接続部12(撹拌部5)の高さ方向に沿う移動の移動速度は、作業者等により、後述するユーザーインターフェース15等を介してあらかじめ設定されていてもよい。また、液体10と粉体11との組み合わせに対応させて、回転速度及び移動速度が設定されてもよい。ある一例では、制御部13は、液体10の粘度によらず撹拌部5の回転速度を一定又は略一定に維持する。撹拌部5の回転速度は、例えば、1800rpmである。接続部12(撹拌部5)の高さ方向に沿う移動速度は、例えば、10cm/s程度である。
【0015】
検出部14は、貯留部2の貯留された液体10及び粉体11の状態パラメータを検出する。状態パラメータは、貯留部2に貯留された液体10における、粉体11の分散の状態(分散状態)を示すパラメータである。状態パラメータは、液体10中の粉体11の分散の状態を直接的に示すパラメータであってもよく、液体10中の粉体11の分散の状態を間接的に示すパラメータであってもよい。すなわち、状態パラメータは、液体10中の粉体11の分散の状態に対応して変化(変動)するパラメータであればよい。本実施形態では、検出部14が、状態パラメータとして、駆動部6の駆動パラメータを検出する。駆動パラメータは、駆動部6の駆動に関連するパラメータである。駆動パラメータは、駆動部6の駆動に要する負荷電流値、駆動部6のトルク値を含む。検出部14は、駆動部6の負荷電流値及び駆動部6のトルク値の少なくとも一方を状態パラメータとして検出する。
【0016】
状態パラメータは、液体10中の粉体11の分散の状態に対応して変動する。撹拌部5が液体10及び粉体11を撹拌することで、液体10及び粉体11の分散を進行させると、状態パラメータの値は減少する。言い換えると、液体10及び粉体11の分散が進行していない状態では状態パラメータの値は比較的大きく、液体10及び粉体11の分散が進行した状態では状態パラメータの値は比較的小さい。また、粉体11が液体10中において十分に分散した状態では、状態パラメータの値は、粉体11が液体10に含まれていない状態における液体10の状態パラメータの値と近い値となる。
【0017】
駆動パラメータとして負荷電流値及び/又はトルク値を用いる場合においても、液体10及び粉体11の分散が進行していない状態では値が比較的大きく、液体10及び粉体11の分散が進行した状態では値が比較的小さい。駆動パラメータとして負荷電流値及び/又はトルク値を用いる場合、撹拌部5が液体10中にある状態における値が、撹拌部5が液体10の外にある状態における値よりも大きい。すなわち、高さ方向について液体10の液面より下に撹拌部5が位置する状態における駆動パラメータの値は、高さ方向について液体10の液面より上に撹拌部5が位置する状態における駆動パラメータの値よりも大きい。
【0018】
本実施形態の撹拌装置1では、ユーザーインターフェース15が設けられてもよい。ユーザーインターフェース15は、操作部材を備える。操作部材では、撹拌装置1の操作に関連する指令が、作業者等によって入力される。操作部材としては、ボタン、ダイヤル及びタッチパネル等が挙げられる。また、ユーザーインターフェース15は、作業者等に情報を告知する告知部を備えていてもよい。告知部は、画面表示、音の発信及びライトの点灯等によって、告知する。告知部では、例えば、作業者によって認識されることが必要な情報、及び、作業者への警告情報等が、告知される。
【0019】
図3は、撹拌における負荷電流値の経時的な変化の一例を示す概略図である。図3では、横軸は液体10の貯留部2への供給からの経過時間を示し、縦軸は負荷電流値を示す。また、曲線αは、負荷電流値の経時的な変化を示す。図3の一例では、時間t0において、液体10が液体供給部3を通じて、貯留部2に供給され始める。時間t1において貯留部2への液体10の供給が完了すると、撹拌部5が液体10の中で回転し始める。そして、時間t2において、粉体11が粉体供給部4を通じて、貯留部2に供給され始める。すなわち、時間t1から時間t2までの間では、液体10が貯留部2に貯留されており、かつ、粉体11が貯留部2に供給されていない。この時間t1から時間t2までの間における貯留部2の貯留状態を基準状態と規定する。すなわち、液体10の供給が完了してから液体10に粉体11を投入するまでの貯留部2の貯留状態を、基準状態と規定する。また、基準状態における撹拌部5の高さ方向についての位置を初期位置と規定する。
【0020】
基準状態において、検出部14が検出した状態パラメータの値(負荷電流値)をパラメータ基準値S0とする。パラメータ基準値S0は、粉体11が含まれていない液体10の状態パラメータの値である。パラメータ基準値S0は、基準状態における状態パラメータの1つの値であってもよく、基準状態における状態パラメータの複数の値から算出された値であってもよい。ある一例では、パラメータ基準値S0として、基準状態において取得された状態パラメータの複数の値を平均した値が用いられる。粉体11の液体10中における分散が十分に進行すると、状態パラメータの値は、粉体11が含まれない液体10の状態パラメータの値、すなわちパラメータ基準値S0に近い値となる。また、パラメータ基準値S0を含む基準範囲Sを規定する。基準範囲Sの下限値はS1であり、基準範囲Sの上限値はS2である。S1及びS2は、液体10及び粉体11の組み合わせ等により適宜設定される。ある一例では、S1及びS2は、作業者等により、ユーザーインターフェース15等を介してあらかじめ設定される。
【0021】
時間t2において粉体11が供給され始めると、負荷電流値が上昇し始める。この状態では、貯留部2において、粉体11は、液体10の高さ方向について上側の部位により多く存在する。図3の一例では、時間t2を超えると、曲線αが単調増加する。時間t3又はその直近の時点において、負荷電流値が基準範囲Sの上限値S2を超えると、撹拌部5が、移動機構7により高さ方向の上側に上昇し始める。液体10中の粉体11の一部は、撹拌部5と一緒に液体10の高さ方向の上側に移動する。撹拌部5の上昇にともなって、撹拌部5の位置における粉体11の存在量が増えるため、負荷電流値が経時的に大きくなる。時間t3からある程度の時間が経過した時間t4では、液体10と粉体11との分散が進行するとともに、撹拌部5が液体10の液面に近づく。撹拌部5が液体10の液面近傍に位置すると、負荷電流値の変化率は小さくなる。すなわち、時間t3から時間t4の間では、曲線αの傾きが、時間の進行とともに徐々に小さくなる。そして、時間t4において、負荷電流値の経時的な変化が、増加から減少へ切り替わる。言い換えれば、図3では、曲線αの傾きが、時間t3から時間t4の間では正であり、時間t4において0となり、時間t4を超えると負になる。
【0022】
時間t4又はその直近の時点において、撹拌部5の高さ方向についての移動が、上昇から下降へと切り替わる。すなわち、撹拌部5が、移動機構7により高さ方向の下側に下降し始める。また、時間t4又はその直近の時点における撹拌部5の高さ方向についての位置が、撹拌部5の上限位置である。液体10中の粉体11の一部は、撹拌部5と一緒に液体10の高さ方向の下側に移動する。撹拌部5の下降にともなって、液体10と粉体11との分散が進行するため、負荷電流値が経時的に小さくなる。図3の一例では、時間t4を超えると、曲線αが単調減少する。時間t5又はその直近の時点において、負荷電流値が基準範囲Sの上限値S2を下回ると、撹拌部5の高さ方向についての移動が、移動機構7により停止される。時間t5又はその直近の時点における撹拌部5の高さ方向についての位置が、撹拌部5の停止位置である。ある一例では、撹拌部5の停止位置は、上限位置に対して高さ方向の下側に位置するとともに、初期位置に対して高さ方向の上側に位置する。すなわち、撹拌部5の停止位置は、高さ方向について、上限位置と初期位置との間に位置する。
【0023】
時間t5を超えると、撹拌部5は、高さ方向について停止位置に停止した状態であるとともに、停止位置において回転し続ける。停止位置において撹拌部5が回転し続けると、負荷電流値が経時的に大きくなる。これは、粉体11が液体10中で分散される過程において、一時的に粉体11が液体10中に偏って存在するためである。図3の一例では、時間t5を超えると、曲線αが単調増加する。時間t5からある程度の時間が経過した時間t6では、液体10と粉体11との分散が十分に進行する。これにより、負荷電流値の変化率は小さくなる。すなわち、時間t5から時間t6の間では、曲線αの傾きが、時間の進行とともに徐々に小さくなる。そして、時間t6又はその直近の時点において、負荷電流値の経時的な変化が、増加から減少へ切り替わる。言い換えれば、図3では、曲線αの傾きが、時間t5から時間t6の間では正であり、時間t6又はその直近の時点において0となり、時間t6を超えると負になる。そして、負荷電流値の経時的な変化が増加から減少へ切り替わった直後の時間t7において、撹拌部5の回転が、駆動部6により停止される。以上のようにして、図3の一例では、撹拌装置1により、粉体11が液体10中に分散される。
【0024】
図4は、液体10に粉体11を投入する前において制御部13によって実行される処理の一例を示す。また、図5は、液体10に粉体11を投入した時点以後において、制御部13によって実行される処理の一例を示す。図4及び図5の処理は、撹拌装置1において撹拌作業がされるたびに、制御部13によって実行される。したがって、図4及び図5の処理は、撹拌装置1の1回の撹拌において実行される処理を示す。なお、以下の説明では、時間の変数として時間tを規定する。そして、時間tにおける負荷電流値I(t)を規定する。また、撹拌装置1では、検出部14によって定期的に負荷電流値I(t)が検出される。制御部13は、負荷電流値I(t)を定期的に取得する。負荷電流値I(t)を検出する時間間隔は、0.1秒以上1秒以下であることが好ましい。
【0025】
撹拌装置1では、液体10が、液体供給部3を通じて貯留部2に供給される。この段階では、液体10が貯留部2に貯留されており、粉体11が貯留部2に供給されていない。撹拌部5は、高さ方向について貯留部2の下側の部位、すなわち前述の初期位置に位置し、液体10の液面は、高さ方向について撹拌部5よりも上側に位置する。図4に示すように、制御部13は、駆動部6の駆動を制御し、撹拌部5を回転させる(S101)。制御部13は、撹拌装置1における液体10と粉体11との分散が完了するまで、撹拌部5の回転を停止させない。すなわち、撹拌部5は、液体10と粉体11との分散が完了するまで、回転し続ける。撹拌部5が回転している状態において、検出部14は状態パラメータを検出し、制御部13は状態パラメータを取得する(S102)。S102では、状態パラメータを、1回のみ取得してもよく、複数回取得してもよい。本実施形態では、制御部13は、状態パラメータとして、前述した駆動部6の負荷電流値I(t)を取得する。制御部13は、S102で取得した状態パラメータに基づいて、負荷電流値I(t)に関して、パラメータ基準値S0として設定し、基準範囲Sを設定する(S103)。
【0026】
粉体11が粉体供給部4を通じて貯留部2に供給されると、状態パラメータが変動する。図5に示すように、制御部13は、状態パラメータと基準範囲Sの上限値S2とを比較する(S201)。本実施形態では状態パラメータとして負荷電流値I(t)を用いるため、制御部13は、負荷電流値I(t)と基準範囲Sの上限値S2とを比較する。負荷電流値I(t)が上限値S2以下の場合(S201-No)、処理はS201に戻り、S201以降の処理が順次行われる。負荷電流値I(t)が上限値S2より大きい場合(S201-Yes)、制御部13は、移動機構7を制御し、撹拌部5を初期位置から高さ方向についての上側に移動させる(S202)。すなわち、制御部13は、移動機構7を制御し、接続部12及び撹拌部5を一緒に高さ方向の上側に移動させる。撹拌部5の高さ方向の上側への移動速度(上昇速度)は、負荷電流値I(t)の変動を検出可能な速度であれば、特に限定されるものではない。上昇速度は、例えば、10cm/sであってもよく、0cm/sより大きく10cm/s未満であってもよい。
【0027】
撹拌部5が高さ方向の上側に移動すると、状態パラメータが変動する。制御部13は、負荷電流値I(t)が経時的に低下しているか否かを判定する(S203)。ある一例では、リアルタイムの負荷電流値I(t)と前回の検出時における負荷電流値I(t-1)とを比較することにより、制御部13は、負荷電流値I(t)が低下しているか否かを判定する。別のある一例では、リアルタイムの負荷電流値I(t)を時間微分した値dI(t)/dtに基づいて、制御部13は、負荷電流値I(t)が低下しているか否かを判定する。負荷電流値I(t)が低下していない場合(S203-No)、処理はS202に戻り、S202以降の処理が順次行われる。負荷電流値I(t)が低下している場合(S203-Yes)、制御部13は、移動機構7を制御し、撹拌部5を高さ方向の下側に移動させる(S204)。すなわち、制御部13は、移動機構7を制御し、接続部12及び撹拌部5を一緒に高さ方向の下側に移動させる。このように、負荷電流値I(t)が低下し始める撹拌部5の高さ方向の位置が、撹拌部5の上限位置である。制御部13は、高さ方向について上限位置を超えない範囲で、撹拌部5の位置を制御する。撹拌部5の高さ方向の下側への移動速度(下降速度)は、撹拌部5の上昇速度と同一であってもよく、上昇速度とは異なる速度であってもよい。本実施形態では、撹拌部5の下降速度は、上昇速度と同一であるか又はほとんど同一である。
【0028】
撹拌部5が上限位置から高さ方向の下側に移動すると、状態パラメータが変動する。制御部13は、負荷電流値I(t)と基準範囲Sの上限値S2とを比較する(S205)。負荷電流値I(t)が上限値S2以上の場合(S205-No)、処理はS204に戻り、S204以降の処理が順次行われる。負荷電流値I(t)が上限値S2より小さい場合(S205-Yes)、制御部13は、移動機構7を制御し、高さ方向の下側への撹拌部5の移動を停止させる(S206)。このように、負荷電流値I(t)が基準範囲Sの上限値S2より小さくなる撹拌部5の高さ方向の位置が、撹拌部5の停止位置である。
【0029】
撹拌部5が停止位置に留められた状態において、制御部13は、駆動部6の駆動を制御し、撹拌部5の回転を維持する(S207)。これにより液体10と粉体11との分散が進行し、状態パラメータが変動する。制御部13は、負荷電流値I(t)が経時的に低下しているか否かを判定する(S208)。S208では、S203の場合と同様にして制御部13は、負荷電流値I(t)が低下しているか否かを判定する。負荷電流値I(t)が低下していない場合(S208-No)、処理はS207に戻り、S207以降の処理が順次行われる。負荷電流値I(t)が低下している場合(S208-Yes)、制御部13は、駆動部6の駆動を制御し、撹拌部5の回転を停止させる(S209)。これにより、液体10と粉体11との分散が完了する。
【0030】
また、撹拌装置1では、前述した状態パラメータに基づく制御による全自動モードと、ユーザーインターフェース15を介して入力された指令に基づいて撹拌部5を高さ方向について移動させる時間設定モードと、を備えていてもよい。時間設定モードでは、制御部13は、ユーザーインターフェース15で入力された指令等に基づいて、撹拌部5及び移動機構7等が所定の動作を継続する時間を設定する。なお、全自動モードと時間設定モードとは、互いに切り替え可能である。
【0031】
ある一例では、制御部13は、撹拌部5が高さ方向のある位置で留められた状態で回転を継続する時間を設定する。この場合、制御部13は、撹拌部5が前述の上限位置で留められた状態で回転する時間を5分に設定し、撹拌部5が前述の停止位置で留められた状態で回転する時間を10分に設定してもよい。この例では、制御部13は、移動機構7を制御し、前述のようにして撹拌部5を前述の上限位置まで移動させた後に、上限位置で撹拌部5を5分間回転させる。5分経過後、制御部13は、移動機構7を制御し、前述のようにして撹拌部5を前述の停止位置まで移動させた後に、停止位置で撹拌部5を10分間回転させる。10分経過後、制御部13は、駆動部6の駆動を制御し、撹拌部5の回転を停止させる。なお、撹拌部5の上限位置での回転時間、及び、撹拌部5の停止位置での回転時間は特に制限されるものではなく、液体10及び粉体11の組み合わせ等に基づいて適宜設定される。
【0032】
別のある一例では、制御部13は、撹拌部5が前述の上限位置と初期位置との間で、高さ方向について往復を繰り返す時間を設定する。この場合、制御部13は、撹拌部5が高さ方向について往復を繰り返す時間を15分に設定してもよい。この例では、制御部13は、移動機構7を制御し、前述のようにして撹拌部5を前述の上限位置まで移動させた直後に、撹拌部5が下側へ移動する状態に切替える。そして、撹拌部5を前述の初期位置まで移動させる。制御部13は、移動機構7を制御し、撹拌部5を前述の初期位置まで移動させた直後に、撹拌部5が上側へ移動する状態に切替える。そして、撹拌部5を再び前述の上限位置まで移動させる。制御部13は、移動機構7を制御し、撹拌部5を、高さ方向について前述のように15分間繰り返し移動させる。15分経過後、制御部13は、駆動部6の駆動を制御し、撹拌部5の回転を停止させる。撹拌部5の回転が停止する場合、撹拌部5は、高さ方向について初期位置又は初期位置とほとんど同じ位置で停止することが好ましい。なお、撹拌部5が高さ方向について往復を繰り返す時間は特に制限されるものではなく、液体10及び粉体11の組み合わせ等に基づいて適宜設定される。
【0033】
本実施形態では、制御部13は、液体中の粉体の状態を示す状態パラメータに基づいて、撹拌部5を高さ方向について移動させる。これにより、貯留部2に供給された液体10及び粉体11が強制的に撹拌され、液体10中に粉体11が分散する。そのため、液体10及び粉体11の親和性が互いに対して低い場合であっても、実施形態に係る撹拌装置1は、短い時間で液体中に粉体を分散させることができる。また、短い時間で液体中に粉体を分散させることができるため、実施形態に係る撹拌装置1を使用することにより、分散が難しい粉体(材料)を液体に分散させたものの生産量を増加できる。そして、生産量が増加することにより、設備投資の削減に寄与し得る。
【0034】
本実施形態では、制御部13は、駆動パラメータの変化に応じて、撹拌部5を高さ方向について移動させる。これにより、制御部13は、貯留部2に供給された液体10及び粉体11の分散の状態に応じて、撹拌部5を高さ方向について移動させることができる。そのため、液体10及び粉体11の親和性が互いに対して低い場合であっても、撹拌装置1は、より短い時間で液体中に粉体を分散させることができる。
【0035】
本実施形態では、制御部13は、撹拌部5が高さ方向の初期位置に位置する状態において、駆動パラメータが基準範囲より大きくなったことに基づいて、撹拌部5を初期位置から高さ方向の上側に移動させる。制御部13は、撹拌部5が高さ方向の上側に初期位置から移動している状態において、駆動パラメータの経時的な変化が増加から減少へ切り替わったことに基づいて、撹拌部5を高さ方向の下側に移動させる。これにより、撹拌部5は、高さ方向について、貯留部2に貯留された液体10の液面を越えることがない。また、図1に示すように、高さ方向の上側(液面近傍)に存在する粉体11の一部が、前述のような撹拌部5の移動にともなって、高さ方向の下側(液体10中)に移動させられる。そのため、液体10及び粉体11の親和性が互いに対して低い場合であっても、撹拌装置1は、一層短い時間で液体中に粉体を分散させることができる。
【0036】
本実施形態では、制御部13は、撹拌部5が、高さ方向の下側に移動している状態において、駆動パラメータが基準範囲内になったことに基づいて、撹拌部5の高さ方向についての移動を停止させる。これにより、図1に示すように液体10中に存在する粉体11が、液体10に分散させられる。そのため、液体10及び粉体11の親和性が互いに対して低い場合であっても、撹拌装置1は、さらに短い時間で液体中に粉体を分散させることができる。
【0037】
本実施形態では、制御部13は、撹拌部5の高さ方向についての移動が停止している状態において、駆動パラメータの経時的な変化が増加から減少へ切り替わったことに基づいて、撹拌部5の回転を停止させる。これにより、液体10及び粉体11の分散が終了した直後又はほとんど直後に、撹拌装置1による撹拌を終了させることができる。そのため、撹拌装置1では不要な撹拌時間を削減することができ、効率よく液体中に粉体を分散させる作業を実施することができる。
【0038】
本実施形態では、貯留部2の中央部に対して、第1の水平方向及び第2の水平方向の少なくとも一方に撹拌部5が偏心していてもよい。これにより、貯留部2に貯留された液体10及び粉体11の撹拌がさらに効率よく進むため、さらに一層短い時間で液体中に粉体を分散させることができる。
【0039】
(変形例)
ある変形例では、前述のように負荷電流値I(t)が低下している場合(S208-Yes)、制御部13は、移動機構7を制御し、接続部12に接続された撹拌部5を初期位置まで、高さ方向の下側へ移動させてもよい。この場合、撹拌部5の回転は停止されない。すなわち、制御部13は、撹拌部5を回転させた状態で、撹拌部5を高さ方向の下側へ移動させるとともに、初期位置において高さ方向の下側への移動を停止する。制御部13は、駆動部6の駆動を制御し、初期位置において撹拌部5を一定時間回転させる。その後、制御部13は、駆動部6の駆動を制御し、撹拌部5の回転を停止させる。本変形例においても、撹拌装置1では前述と同様の制御が実行されるため、前述の実施形態等と同様の作用及び効果を奏する。
【0040】
ある変形例では、撹拌装置1に、真空装置と接続可能な接続口が設けられていてもよい。接続口は、貯留部2の高さ方向について上側の部位に形成される。真空装置(チャンバー)が接続口に接続されることにより、液体10と粉体11との分散が完了した後に、脱泡することができる。すなわち、液体10及び粉体11を別の装置(容器)に移し替えることなく、脱泡できる。また、本変形例においても、撹拌装置1では前述と同様の制御が実行されるため、前述の実施形態等と同様の作用及び効果を奏する。
【0041】
前述の実施形態等では、制御部13は、検出部14により検出した状態パラメータに基づいて、駆動部6の駆動を制御し、撹拌部5を高さ方向について移動させたが、これに限るものではない。ある変形例では、撹拌装置1に、カメラ等の撮影装置が設けられる。制御部13は、撮影装置によって撮影された画像及び/又は動画に基づいて、前述の状態パラメータを取得する。そして、制御部13は、状態パラメータに基づいて、駆動部6の駆動及び移動機構7を制御し、撹拌部5を回転させるとともに、撹拌部5(接続部12)を高さ方向について移動させる。この場合、カメラの撮影画像等における粉体11の位置情報等が、状態パラメータとなる。そして、撮影画像等では、輝度及び色等のいずれかに基づいて、粉体11の位置情報を特定する。本変形例においても、撹拌装置1では前述と同様の制御が実行されるため、前述の実施形態等と同様の作用及び効果を奏する。
【0042】
これらの少なくとも一つの実施形態では、撹拌装置は、貯留部と、撹拌部と、駆動部と、制御部と、を備える。貯留部は、液体を貯留する。撹拌部は、貯留部の高さ方向について移動可能であるとともに液体中に粉体を分散させる。駆動部は、撹拌部が接続されるとともに、撹拌部を回転駆動により回転させる。制御部は、液体における粉体の分散状態に基づいて、撹拌部を高さ方向について移動させる。これにより、効率的に粉体を液体に分散することができる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1…撹拌装置、2…貯留部、5…撹拌部、6…駆動部、10…液体、11…粉体、13…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5