(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H01F 30/10 20060101AFI20240329BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240329BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20240329BHJP
H02M 3/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
H01F30/10 D
H01F30/10 H
H01F17/00 B
H01F17/04 A
H02M3/00 Y
(21)【出願番号】P 2020158237
(22)【出願日】2020-09-23
(62)【分割の表示】P 2018106182の分割
【原出願日】2018-06-01
【審査請求日】2021-03-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】小川 紘生
(72)【発明者】
【氏名】吉野 智彦
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】畑中 博幸
【審判官】岩間 直純
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-236365(JP,A)
【文献】国際公開第2016/193017(WO,A1)
【文献】特開2016-28407(JP,A)
【文献】特開2010-212669(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0180206(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の積層基板が重なり合い一体化された状態で、前記積層基板同士の間を内部の層として複数の層に配線パターンを用いて1次側及び2次側の各回路が形成された回路基板と、
前記回路基板に取り付けられて前記1次側の回路と前記2次側の回路との間の磁気結合をなす磁性体コアと、
前記磁性体コアの周囲に渦状に形成された箇所を含む前記配線パターンにより構成されて前記各回路の一部をなす1次側及び2次側の各巻線とを備え、
前記複数の積層基板は、
前記1次側の巻線を有する積層基板と、前記2次側の巻線を有する積層基板と、これら積層基板の間に
両方と隣接して介挿され
、他のいずれか一方の隣接する積層基板との間には巻線の構成部分となる前記配線パターンが形成される層を有しない
単一の積層基板と、
を含むことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
複数の積層基板が重なり合い一体化された状態で、前記積層基板同士の間を内部の層として複数の層に配線パターンを用いて1次側及び2次側の各回路が形成された回路基板と、
前記回路基板に取り付けられて前記1次側の回路と前記2次側の回路との間の磁気結合をなす磁性体コアと、
前記磁性体コアの周囲に渦状に形成された箇所を含む前記配線パターンにより構成されて前記各回路の一部をなす1次側及び2次側の各巻線とを備え、
前記複数の積層基板は、
前記1次側の巻線を有する積層基板と、前記2次側の巻線を有する積層基板と、これら積層基板の間に介挿されて巻線の構成部分となる前記配線パターンが形成される層を有しない積層基板と、を含み、
前記回路基板では、
層内で前記1次側及び2次側の各巻線は、全ての巻線領域が前記磁性体コアにより形成される磁路の内側を通る位置にあり、前記各巻線の内周端及び外周端の両方が前記各巻線と層方向に重なる領域外で他の層の前記配線パターンとビアホールで接続されるとともに、前記各巻線の配線パターンの一部が前記ビアホールの外側を囲んでいることを特徴とする電子部品。
【請求項3】
請求項2に記載の電子部品において、
前記1次側及び2次側の各巻線は、
前記回路基板内の層方向で互いの巻線領域が重なり合いつつ、互いに一方の両端位置が他方の巻線領域と層方向に重ならない位置に形成されていることを特徴とする電子部品。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の電子部品において、
前記1次側及び前記2次側の各巻線は、前記回路基板の外面以外の内層のみに前記配線パターンとして形成されていることを特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレーナ型トランスを有した電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電子部品に関する先行技術として、例えばコイル一体型スイッチング電源モジュールが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このモジュールは、1次コイル導体パターンと2次コイル導電パターンを形成した多数の両面基板を積層した積層基板に磁性体コアを組み合わせてプリントコイルトランス(プレーナ型トランス)としている。積層基板は多数の両面基板から構成されており、隣接する両面基板の間はプリプレグを充填して絶縁されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、先行技術の構造では、トランスの1次と2次の各コイル導体パターンは隣接した両面基板の各層に形成されているため、必然的に互いの絶縁距離は最小限(両面基板やプリプレグの厚み分だけ)に留まり、トランス全体として耐圧(耐電圧)性能を向上することが難しいという問題ある。また、複数の層間でコイル導体パターンを接続する際、スルーホールの位置がコイル導体パターンの位置と重なっているため、構造的に絶縁距離の確保をより困難にしている。
【0005】
そこで本発明は、耐圧性能を向上することができる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
【0007】
本発明の電子部品は、複数に層をなす配線パターンを用いて1次側及び2次側の各回路が形成された回路基板に磁性体コアを取り付けたものである。磁性体コアは1次側の回路と2次側の回路との磁気結合をなしており、これによりプレーナ型トランスを構成する。配線パターンには1次側及び2次側の各巻線を構成するものがあり、各巻線は回路基板を貫通する磁性体コアの周囲に渦状に形成されている。
【0008】
〔第1手段〕
本発明の電子部品は、複数の積層基板が重なり合い一体化された状態で、前記積層基板同士の間を内部の層として複数の層に配線パターンを用いて1次側及び2次側の各回路が形成された回路基板と、前記回路基板に取り付けられて前記1次側の回路と前記2次側の回路との間の磁気結合をなす磁性体コアと、前記磁性体コアの周囲に渦状に形成された前記配線パターンにより前記各回路の一部をなす1次側及び2次側の各巻線とを備え、前記複数の積層基板は、前記1次側の巻線を有する積層基板と、前記2次側の巻線を有する積層基板と、これら積層基板の間に両方と隣接して介挿され、他のいずれか一方の隣接する積層基板との間には巻線の構成部分となる前記配線パターンが形成される層を有しない単一の積層基板と、を含む。
第1の手段は、絶縁層を用いることである。すなわち、回路基板内で1次側の巻線の層と2次側の巻線の層とは、これらの間に介挿された絶縁層により、互いの絶縁距離が大きく確保されている。絶縁層は、各巻線と層方向に重なる領域内にはいかなる配線パターンをも有していない。したがって、回路基板内で1次側の巻線の層と2次側の巻線の層との間には、それぞれの配線パターンを担持する積層基板(シート)が介在することによる基本的な絶縁距離に加え、「絶縁層」がさらに介在することによる追加的・付加的な絶縁距離が確保される。これにより、基本的な絶縁距離だけを有する構造よりも大きく絶縁距離を確保でき、回路全体として耐圧性能を向上することができる。
【0009】
〔第2手段〕
本発明の電子部品は、複数の積層基板が重なり合い一体化された状態で、前記積層基板同士の間を内部の層として複数の層に配線パターンを用いて1次側及び2次側の各回路が形成された回路基板と、前記回路基板に取り付けられて前記1次側の回路と前記2次側の回路との間の磁気結合をなす磁性体コアと、前記磁性体コアの周囲に渦状に形成された前記配線パターンにより前記各回路の一部をなす1次側及び2次側の各巻線とを備え、前記回路基板では、層内で前記1次側及び2次側の各巻線の内周端及び外周端の両方が各巻線と層方向に重なる領域外で他の層の前記配線パターンとビアホールで接続されるとともに、前記各巻線の配線パターンの一部が前記ビアホールの外側を囲んでいる。
第2の手段は、回路基板における巻線とビアホールとの位置関係である。すなわち、渦状の巻線は、内周端と外周端をそれぞれビアホールで他の層の配線パターンと接続することになるが、その際、ビアホールの位置が相手側(1次側なら2次側、2次側なら1次側)の巻線に近いほど絶縁距離が小さくなり、それだけ回路全体として耐圧性能が低くなる。特に、内周端は磁性体コアの近傍に位置していることが通常であるため、1次側、2次側ともに互いのビアホールが他方の巻線に近接してしまうことになる。
【0010】
本発明では、1次側の巻線の両端をいずれも2次側の巻線と層方向に重なる領域外で他の層の配線パターンと接続するビアホールが形成されるとともに、2次側の巻線の両端をいずれも1次側の巻線と層方向に重なる領域外で他の層の配線パターンと接続するビアホールが形成されている。これにより、絶縁距離が小さくなることを防止し、回路全体として耐圧性能の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐圧性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態の電子部品の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【
図2】回路基板モジュールを単体で示す分解斜視図である。
【
図3】回路基板モジュールの積層構造を概略的に示した分解斜視図である。
【
図4】
図1中のIV-IV線に添う縦断面図である。
【
図6】第1層から第4層までの各層の平面図である。
【
図7】第5層から第8層までの各層の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
〔全体構成〕
図1は、一実施形態の電子部品100の構成を概略的に示す分解斜視図である。この実施形態では、電子部品100の例としてモジュール型のDC-DCコンバータを挙げているが、本発明はこれに限定されない。以下、電子部品100の構成について説明する。
【0015】
電子部品100は、例えば大きく分けて樹脂ケース102と回路基板モジュール104からなり、回路基板モジュール104を樹脂ケース102内に収容した状態で、内部を充填材(例えばウレタン樹脂)により封止して完成される。樹脂ケース102は中空のカバー形状であり、その下面が回路基板モジュール104の外形に合わせて開放されている。
【0016】
回路基板モジュール104には磁性体コア106が組み合わされている。回路基板モジュール104には、主にDC-DCコンバータの1次側回路120と2系統の2次側回路122,124が形成されており、DC-DCコンバータの作動時には、1次側回路120と各2次側回路122,124とが磁性体コア106により磁気結合されるものとなっている。なお、1次側回路120や各2次側回路122,124は回路基板モジュール104の
図1でみて上面に実装された各種の電子部品を有するが、それらの図示は省略している。
【0017】
〔回路基板及び磁性体コア〕
図2は、回路基板モジュール104を単体で示す分解斜視図である。回路基板モジュール104には、上記のように磁性体コア106が組み合わされる他、複数の入力端子アレイ108,110及び出力端子アレイ112,114が実装されている。
【0018】
磁性体コア106は、例えばE-E型構造であり、2つのコアパーツ106a,106bが回路基板モジュール104の両面側から対向して組み合わされている。本実施形態では磁性体コア106は2つのコアパーツ106a,106b間にギャップが設けられていないが、コアギャップを設けることとしてもよい。磁性体コア106の組み付けのため、回路基板モジュール104には中央寄り位置に挿通孔104aが形成されている他、挿通孔104aを挟んで両側縁部に一対の切欠部104bが形成されている。
【0019】
挿通孔104aは、回路基板モジュール104の両面にて略正方形状に開口しつつ厚み方向に貫通しており、その内部には磁性体コア106の中脚107aが両側から挿通されるものとなっている。
【0020】
一対の切欠部104bは、回路基板モジュール104の両側縁部から内側に向けてコ字形状に形成されており、これら一対の切欠部104bには磁性体コア106の両外脚107bが嵌め合わされるものとなっている。なお、本実施形態では一対の切欠部104bがいずれも側方にて一段階幅広に拡張された保持空間104cとして形成されている。保持空間104cは、例えば
図1に示す磁性体コア106の組み付け状態で2つのコアパーツ106a,106bの両側における突き合わせ面への接着剤の塗布、接着テープの貼り付け、あるいは両コアパーツ106a,106bのクリップ止めといった組み付け作業のための空間として機能する。これにより、電子部品100の組み立て作業性が向上し、生産効率を高めて製造コスト低減に寄与することができる。
【0021】
入力端子アレイ108,110は、図示しないスルーホールを通じて回路基板モジュール104に実装されて1次側回路120に接続される。また、出力端子アレイ112,114もまた、図示しないスルーホールを通じて回路基板モジュール104に実装されて2次側回路122に接続される。これら入力端子アレイ108,110及び出力端子アレイ112,114は、電子部品100の完成状態で樹脂ケース102から下方に突出した状態となる。
【0022】
〔積層基板〕
図3は、回路基板モジュール104の積層構造を概略的に示した分解斜視図である。なお、回路基板モジュール104は完成状態において一体焼成されているため、
図3に示すように事後的な分解はできない構造であるが、ここでは積層構造の理解のために便宜的に分解図を示すものとする。
【0023】
回路基板モジュール104は、例えば7枚の積層基板(シート基板、グリーンシート)を積層してこれらを一体に焼成した積層構造をなす。以下では便宜上、積層方向で最上位の積層基板の上面を第1層L1とし、その下面と第2位の積層基板の上面との間を第2層L2、その下面と第3位の積層基板の上面との間を第3層L3、その下面と第4位の積層基板の上面との間を第4層L4、その下面と第5位の積層基板の上面との間を第5層L5、その下面と第6位の積層基板の上面との間を第6層L6、その下面と最下位の積層基板の上面との間を第7層L7、そして、最下位の積層基板の下面を第8層L8とする。
【0024】
〔層断面〕
先ず、回路基板モジュール104の断面を挙げて層構造を説明する。
図4は、磁性体コア106の長手方向に添う回路基板モジュール104及び磁性体コア106の縦断面図(
図1中のIV-IV断面)である。また、
図5は、磁性体コア106の幅方向に添う回路基板モジュール104及び磁性体コア106の縦断面図(
図1中V-V断面)である。なお、
図4及び
図5では積層基板の各層及び配線パターンを誇張して示している。以下、各層における配線パターンの配置について説明する。
【0025】
〔第1層(1層目)〕
第1層L1は、回路基板モジュール104の上面に位置する。第1層L1には、主に1次側回路120の配線パターンを構成する1次パターン120aが形成されるとともに、2次側回路122の配線パターンを構成する2次パターン122aもまた形成されている。これら1次パターン120a及び2次パターン122aは、いずれも磁性体コア106の直下をはじめその近傍の領域を避けた位置に所定の絶縁距離をおいて配置されている。
【0026】
〔第2層(2層目)〕
第2層L2は、回路基板モジュール104の内層に位置する。第2層L2には、1次パターン120aの他に2次側回路122の配線パターンを構成する2次側巻線122bが形成されている。1次パターン120aは磁性体コア106からは離れて配置されているが、2次側巻線122bは磁性体コア106(中脚107a)の周囲で渦状を描くようにして配線されている。
【0027】
〔第3層(3層目)〕
第3層L3は、回路基板モジュール104の内層に位置する。第3層L3には、1次パターン120aだけが配置されている。
【0028】
〔第4層(4層目)〕
第4層L4は、回路基板モジュール104の内層に位置する。第4層L4には、1次側巻線120bのみが形成されている。1次側巻線120bは、磁性体コア106(中脚107a)の周囲で渦状を描くようにして配線されている。
【0029】
〔第5層(5層目)〕
第5層L5は、回路基板モジュール104の内層に位置する。第5層L5には、1次側巻線120bのみが形成されている。上記の第4層L4と同様に、1次側巻線120bは磁性体コア106の周囲で渦状を描くようにして配線されている。
【0030】
〔第6層(6層目)〕
第6層L6は、回路基板モジュール104の内層に位置する。第6層L6には、1次パターン120aだけが配置されている。
【0031】
〔第7層(7層目)〕
第7層L7は、回路基板モジュール104の内層に位置する。第7層L7には、1次パターン120aの他に第1層~第2層とは別系統の2次側回路124の配線パターンを構成する2次側巻線124bが形成されている。上記の第2層と同様に、1次パターン120aは磁性体コア106からは離れて配置されているが、2次側巻線124bは磁性体コア106(中脚107a)の周囲で渦状を描くようにして配線されている。
【0032】
〔第8層(8層目)〕
第8層L8は、回路基板モジュール104の下面に位置する。第8層L8には、主に1次側回路120の配線パターンを構成する1次パターン120aが形成されるとともに、第1層~第2層とは別系統の2次側回路124の配線パターンを構成する2次パターン124aもまた形成されている。これら1次パターン120a及び2次パターン124aは、いずれも磁性体コア106の下方向からみて直上をはじめその近傍の領域を避けた位置に所定の絶縁距離をおいて配置されている。
【0033】
〔ビアホール〕
図5に示されているように、回路基板モジュール104には1次ビアホール126及び2次ビアホール128もまた形成されている。1次ビアホール126は1次側回路120の複数の層に跨がる配線パターン(例えば1次パターン120aと1次側巻線120b)とを接続する。また、2次ビアホール128は2次側回路122,124それぞれの複数の層に跨がる配線パターン(例えば2次パターン122aと2次側巻線122b、2次パターン124aと2次側巻線122b)とを接続する。なお、
図5に示される1次ビアホール126及び2次ビアホール128の幅方向位置は便宜上示したものである。
【0034】
〔層平面〕
次に、各層の平面構造を説明する。
図6は、第1層L1から第4層L4までの各層の平面図である。また
図7は、第5層L5から第8層L8までの各層の平面図である。なお、第8層L8については回路基板モジュール104の底面視(下面視)を平面図としている。なお、
図6,
図7では詳細な配線パターンの形状や他のビアホール、スルーホールの配置等については図示を省略している。
【0035】
〔第1層(1層目)〕
図6中(A):第1層L1には、上記のように1次側回路120及び2系統の2次側回路122,124(配線パターン及び実装部品を含む)が形成されているが、1次側巻線120b及び2次側巻線122b,124bはいずれも配置されていない。また、1次側回路120及び2次側回路122,124と磁性体コア106との間には、耐圧(耐電圧)性能を向上するために充分な絶縁距離が確保されている。本実施形態では、第1層L1に1次側巻線120b及び2次側巻線122b,124bが形成されておらず、したがって磁性体コア106の周囲に露出していない点も耐圧性能の向上に大きく寄与している。
【0036】
〔第2層(2層目)〕
図6中(B):第2層L2には、上記のように2次側巻線122bの配線パターンが形成されている。ここで、2次側巻線122bのパターン形状に着目すると、その外周端及び内周端(参照符号なし)の位置がいずれも磁性体コア106の中脚107aから外方向に離隔されていることが分かる。なお第2層L2には、この他にも1次パターン120aが形成されている。
【0037】
〔第3層(3層目)〕
図6中(C):第3層L3には、上記のように1次パターン120aが主に形成されているだけである。このように本実施形態では、第2層L2の1次側巻線120bに隣り合うようにして2次側巻線122bが形成されている構造ではない。
【0038】
〔第4層(4層目)〕
図6中(D):第4層L4には、第2層L2との間に第3層L3を介して1次側巻線120bの配線パターンが形成されている。ここでも1次側巻線120bのパターン形状に着目すると、その外周端及び内周端(参照符号なし)の位置がいずれも磁性体コア106の中脚107aから外方向、かつ、2次側巻線122bとは逆方向に離隔されていることが分かる。
【0039】
〔絶縁距離の確保〕
ここまでの各層の平面構成から明らかなように、本実施形態では以下のように絶縁距離の確保が図られている。
(1)
図6中(C):第2層L2と第4層L4との間に絶縁層としての第3層L3が介挿されており、第3層L3には、2次側巻線122b及び1次側巻線120bと層方向に重なる領域内にいずれの配線パターンも形成されていない。これにより、1次側巻線120bと2次側巻線122bとの間に2層分の(1層より大きく)絶縁距離の確保が図られている。
【0040】
(2)
図6中(B)(D):1次側巻線120b及び2次側巻線122bがいずれも、外周端のみならず内周端までも磁性体コア106の中脚107aから外方向に離隔して配置されている。すなわち、第2層L2の2次側巻線122bについては、内周端及び外周端をいずれも第4層L4の1次側巻線120bと層方向に重ならない配置とし、また、第4層L4の1次側巻線120bについては、内周端及び外周端をいずれも第2層L2の2次側巻線122bと層方向に重ならない配置としている。このため、第2層L2では1次ビアホール126の位置が2次側巻線122bの巻線領域外にあり、これらの間には所定の絶縁距離DIが確保されている。また、第4層L4では2次ビアホール128の位置が1次側巻線120bの巻線領域外にあり、これらの間にも所定の絶縁距離DIが確保されている。なお、第2層L2と第4層L4の絶縁距離DIが異なっていてもよい。
【0041】
通常、1次側巻線120bや2次側巻線122bの配線パターンは基本的に中脚107aの周囲で渦状を描き、それによって磁束を磁性体コア106に収束させるものであるため、必然的に内周端は中脚107aに近接して配置されると考えられる。しかし、本実施形態では敢えて内周端の位置も外方向に離隔させて配置することで、上記のように他の層における1次側巻線120bと他方の2次ビアホール128との絶縁距離DI、そして2次側巻線122bと他方の1次ビアホール126との絶縁距離DIを大きく確保することに寄与しているのである。
【0042】
(3)
図6中(A):加えて、回路基板モジュール104の外面に2次側巻線122bが露出していないことにより、磁性体コア106との間に絶縁距離の確保が図られている。
【0043】
次に
図7を参照し、別系統の2次側回路124との絶縁について説明する。
【0044】
〔第5層(5層目)〕
図7中(E):第5層L5には、1次側巻線120bの配線パターンが形成されている。ここでも1次側巻線120bのパターン形状に着目すると、その外周端及び内周端(参照符号なし)の位置がいずれも磁性体コア106の中脚107aから外方向、かつ、2次側巻線122b,124bとは逆方向に離隔されていることが分かる。
〔第6層(6層目)〕
図7中(F):第6層L6には、1次パターン120aが主に形成されているだけである。したがって本実施形態では、第5層L5の1次側巻線120bに隣り合うようにして2次側巻線124bが形成されている構造ではない。
【0045】
〔第7層(7層目)〕
図6中(G):第7層L7には、第5層L5との間に第6層L6を介して上記のように2次側巻線124bの配線パターンが形成されている。ここでも同様に、2次側巻線124bのパターン形状に着目すると、その外周端及び内周端(参照符号なし)の位置がいずれも磁性体コア106の中脚107aから外方向に離隔されていることが分かる。なお第7層L7には、この他にも1次パターン120aが形成されている。
【0046】
〔第8層(8層目)〕
図7中(H):第8層L8には、上記のように1次側回路120及び2系統の2次側回路122,124(配線パターン及び実装部品を含む)が形成されているが、1次側巻線120b及び2次側巻線122b,124bはいずれも配置されていない。また、1次側回路120及び2次側回路122,124と磁性体コア106との間には、耐圧性能を向上するために充分な絶縁距離が確保されている。本実施形態では、第8層L8にも1次側巻線120b及び2次側巻線122b,124bが形成されておらず、したがって磁性体コア106の周囲に露出していない点も耐圧性能の向上に大きく寄与している。
【0047】
〔絶縁距離の確保〕
残りの各層の平面構成から明らかなように、さらに本実施形態では以下のように絶縁距離の確保が図られている。
(4)
図7中(F):第5層L5と第7層L7との間に絶縁層としての第6層L6が介挿されており、第6層L6には、1次側巻線120b及び2次側巻線124bと層方向に重なる領域内にいずれの配線パターンも形成されていない。これにより、1次側巻線120bと2次側巻線124bとの間に2層分の(1層より大きく)絶縁距離の確保が図られている。
【0048】
(5)
図7中(E)(G):1次側巻線120b及び2次側巻線124bがいずれも、外周端のみならず内周端までも磁性体コア106の中脚107aから外方向に離隔して配置されている。すなわち、第7層L7の2次側巻線124bについては、内周端及び外周端をいずれも第5層L5の1次側巻線120bと層方向に重ならない配置とし、また、第5層L5の1次側巻線120bについては、内周端及び外周端をいずれも第7層L7の2次側巻線122bと層方向に重ならない配置としている。このため、第5層L5では2次ビアホール128の位置が1次側巻線120bの巻線領域外にあり、これらの間には所定の絶縁距離DIが確保されている。また、第7層L7では1次ビアホール126の位置が2次側巻線124bの巻線領域外にあり、これらの間にも所定の絶縁距離DIが確保されている。なお、第5層L5と第7層L7の絶縁距離DIが異なっていてもよい。
【0049】
(6)
図7中(H):加えて、回路基板モジュール104の外面(下面)に2次側巻線124bが露出していないことにより、磁性体コア106との間に絶縁距離の確保が図られている。
【0050】
以上のように本実施形態の電子部品100によれば、1次側回路120、2次側回路122及び磁性体コア106における絶縁距離の確保を図ることにより、回路全体としての耐圧性能を向上することができる。したがって、電子部品100をDC-DCコンバータとした場合には、より高圧領域での使用が可能となり、汎用性や有用性を高めることができる。
【0051】
本発明は上述した一実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施可能である。
一実施形態では、2系統の2次側回路122,124を備えた回路構成としているが、1次側回路120に対して1系統の2次側回路122(又は2次側回路124)だけを備えた回路構成としてもよい。この場合の層構成は、最上位から
図6中(A)、(B)、(C)、(D)、
図7中(F)、(G)の6層構成とすることができる。
【0052】
1次側回路120や2次側巻線122b,124bのパターンは
図6、
図7に示した例に限らず、その他のパターン形状としてもよい。例えば、1次側巻線120bのパターンとして、内周端及び外周端以外の部分を磁性体コア106の中脚107aにより近接させたパターン形状としてもよい。また、1次側巻線120bや2次側巻線122b,124bの内周端及び外周端の位置は、
図6、
図7に示される例よりもさらに中脚107aから離隔させてもよい。
【0053】
磁性体コア106は、E-E型の他にE-I型でもよいし、U-U型やU-I型等、その他の型であってもよい。また、2つのコアパーツ106a,106b同士は接着剤により相互に接着されていてもよいし、接着テープを用いて相互に接着されていてもよいし、クリップ等の部材により挟持されて固定されていてもよい。
【0054】
回路基板モジュール104の外形は図示の例に限らず、円形状のものやその他の多角形状のものでもよい。
【0055】
一実施形態では電子部品100をDC-DCコンバータとしたが、プレーナ型トランスやリアクトルとして実施してもよい。
【符号の説明】
【0056】
100 電子部品
104 回路基板モジュール
106 磁性体コア
120 1次側回路
120a 1次パターン
122a 2次パターン
122,124 2次側回路
120b 1次側巻線
122b,124b 2次側巻線
126 1次ビアホール
128 2次ビアホール