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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/00 20060101AFI20240329BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20240329BHJP
   H02K 5/24 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
H02K5/00 A
H02K7/116
H02K5/24
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020170219
(22)【出願日】2020-10-08
(65)【公開番号】P2022062308
(43)【公開日】2022-04-20
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 友康
(72)【発明者】
【氏名】坂田 憲児
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 育夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 毅
(72)【発明者】
【氏名】磯村 結珠
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-092908(JP,A)
【文献】特開2002-333015(JP,A)
【文献】特開2020-096403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/00
H02K 7/116
H02K 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォームを有するウォーム軸と、
前記ウォームに噛み合わされる歯部を有するウォームホイールと、
前記ウォーム軸および前記ウォームホイールを収容するハウジングと、
を備えたモータ装置であって、
前記ハウジングは、
前記ウォーム軸を回転自在に収容する第1収容部と、
前記ウォームホイールを回転自在に収容する第2収容部と、
前記第2収容部の側方において前記第1収容部から前記ウォーム軸の軸方向に突出され、前記ウォーム軸の軸方向端部を回転自在に支持する軸受を収容する第3収容部と、
を有し、
前記第2収容部と前記第3収容部との間に、前記第3収容部の傾斜を抑える補強部材が設けられ
前記第3収容部は、
内側に前記軸受が装着される本体部と、
前記本体部の軸方向端部を閉塞する底壁部と、
前記底壁部の外側に設けられる平坦面と、
を備え、
前記補強部材が、前記第2収容部と前記本体部との間に設けられ、
前記平坦面が、前記軸受を前記本体部に装着する治具の受け面になっていることを特徴とする、
モータ装置。
【請求項2】
前記ウォームホイールの軸方向に対する前記底壁部の幅寸法および前記補強部材の幅寸法が、それぞれ同じ大きさになっていることを特徴とする、
請求項に記載のモータ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載のモータ装置において、
前記第2収容部の開口部がカバー部材により閉塞されており、
前記カバー部材には、前記第2収容部に設けられた係合凸部に係合される被係合部が設けられ、
前記第2収容部と前記第3収容部と前記補強部材とで囲まれた空隙部に、前記係合凸部および前記被係合部が配置されていることを特徴とする、
モータ装置。
【請求項4】
前記空隙部は、前記第2収容部の径方向外側への前記被係合部の弾性変形を許容することを特徴とする、
請求項に記載のモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォームを有するウォーム軸と、ウォームに噛み合わされる歯部を有するウォームホイールと、ウォーム軸およびウォームホイールを収容するハウジングと、を備えたモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に搭載されるパワーウィンドウ装置等の駆動源には、小型でありながら大きな出力が得られる減速機構付きのモータ装置が用いられる。そして、操作者が車室内等に設けられた操作スイッチを操作することで、モータ装置が正逆方向に回転駆動されて、ひいてはウィンドウガラス等が開閉駆動される。
【0003】
このようなモータ装置が、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された減速機構付きモータ(モータ装置)は、ウォーム軸およびウォームホイールを有する減速機構を備えている。そして、減速機構は、アーマチュア軸の回転を減速して高トルク化し、高トルク化された回転力を外部に出力するようになっている。
【0004】
ウォーム軸およびウォームホイールは、それぞれ樹脂製のギヤケース(ハウジング)の内部に収容されている。具体的には、ウォーム軸は、略筒状に形成されたウォーム軸収容部に回転自在に収容されている。また、ウォームホイールは、略円盤状に形成されたウォームホイール収容部に回転自在に収容されている。さらに、ウォームホイール収容部の側方には、ウォーム軸収容部の軸方向端部から突出するようにして、ウォーム軸の軸方向端部を回転自在に支持する軸受を収容する軸受収容部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-154685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に記載のモータ装置では、射出成形された樹脂製のハウジングが冷却される(硬化する)際の収縮時において、ウォーム軸収容部の軸方向端部から突出された軸受収容部が、ウォームホイール収容部に対して傾斜する等の「歪み」を発生する虞があった。
【0007】
軸受収容部に「歪み」が発生すると、ウォーム軸の両端を回転自在に支持する一対の軸受の同軸度が低下することになる(図9の第1軸線C1(反り発生)参照)。これにより、ウォーム軸の回転抵抗が増加してモータ装置の出力トルク低下(作動ロスの発生)を招いたり、モータ装置の作動音の増大等を招いたりする虞があった。
【0008】
本発明の目的は、軸受収容部の成形精度を向上させて、出力トルクの低下や作動音の増大等を効果的に抑制できるモータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のモータ装置では、ウォームを有するウォーム軸と、前記ウォームに噛み合わされる歯部を有するウォームホイールと、前記ウォーム軸および前記ウォームホイールを収容するハウジングと、を備えたモータ装置であって、前記ハウジングは、前記ウォーム軸を回転自在に収容する第1収容部と、前記ウォームホイールを回転自在に収容する第2収容部と、前記第2収容部の側方において前記第1収容部から前記ウォーム軸の軸方向に突出され、前記ウォーム軸の軸方向端部を回転自在に支持する軸受を収容する第3収容部と、を有し、前記第2収容部と前記第3収容部との間に、前記第3収容部の傾斜を抑える補強部材が設けられ、前記第3収容部は、内側に前記軸受が装着される本体部と、前記本体部の軸方向端部を閉塞する底壁部と、前記底壁部の外側に設けられる平坦面と、を備え、前記補強部材が、前記第2収容部と前記本体部との間に設けられ、前記平坦面が、前記軸受を前記本体部に装着する治具の受け面になっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のモータ装置によれば、第2収容部と第3収容部との間に、第3収容部の傾斜を抑える補強部材が設けられているので、ハウジングの硬化時において、第2収容部と第3収容部との間で補強部材が突っ張って、ひいては他の収容部に対して第3収容部が倒れることが防止される。これにより、第3収容部の成形精度が向上して、ひいては出力トルク低下や作動音の増大等を効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るモータ装置の平面図である。
図2図1のA-A線に沿う断面図である。
図3】ハウジングを単体で示す斜視図である。
図4】ハウジングを表側から見た平面図である。
図5】ハウジングを裏側から見た平面図である。
図6】カバー部材を単体で示す斜視図である。
図7】カバー部材のハウジングへの装着手順を説明する説明図である。
図8】(a),(b)は、第3収容部への軸受の装着手順を説明する説明図である。
図9】ハウジングの硬化時における収縮具合(歪み具合)を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明に係るモータ装置の平面図を、図2図1のA-A線に沿う断面図を、図3はハウジングを単体で示す斜視図を、図4はハウジングを表側から見た平面図を、図5はハウジングを裏側から見た平面図を、図6はカバー部材を単体で示す斜視図を、図7はカバー部材のハウジングへの装着手順を説明する説明図を、図8(a),(b)は第3収容部への軸受の装着手順を説明する説明図を、図9はハウジングの硬化時における収縮具合(歪み具合)を説明する説明図をそれぞれ示している。
【0014】
図1および図2に示されるように、減速機構付モータ(モータ装置)10は、自動車等の車両に搭載されるパワーウィンドウ装置の駆動源に用いられ、ウィンドウガラスを昇降させるウィンドウレギュレータを駆動するものである。減速機構付モータ10は、車両のドア内に形成された幅狭のスペースに設置されるため、厚み寸法が抑えられて扁平形状となっている。そして、減速機構付モータ10は、モータ部30およびギヤ部40を備え、これらのモータ部30およびギヤ部40は、複数の締結ねじ11(図1では2つのみ示す)により一体化(ユニット化)されている。
【0015】
モータ部30は、磁性体からなる鋼板を深絞り加工等することで、有底筒状に形成されたヨーク31を備えている。ヨーク31の軸方向と直交する方向における断面形状は、略小判形状に形成されている。ヨーク31の内側には合計4つのマグネット32(図1では2つのみ示す)が固定されている。これらのマグネット32は90°間隔で配置され、それぞれのマグネット32の内側には、コイル33が巻装されたアーマチュア34が、微小隙間(エアギャップ)を介して回転自在に設けられている。つまり、アーマチュア34は、ヨーク31の内部に回転自在に収容されている。
【0016】
ヨーク31の底部側(図1の左側)は段付形状に形成されており、当該段付形状の部分には、ヨーク31の本体部よりも小径となった有底筒部31aが設けられている。有底筒部31aの内側には、第1スラスト軸受TB1および第1ラジアル軸受RB1が装着されている。第1スラスト軸受TB1および第1ラジアル軸受RB1は、第1軸線C1上に設けられ、アーマチュア軸35の軸方向一側(図1の左側)を回転自在に支持している。このように、有底筒部31aは、第1スラスト軸受TB1および第1ラジアル軸受RB1を介して、アーマチュア軸35の軸方向一側を回転自在に支持している。
【0017】
アーマチュア34の回転中心には、アーマチュア軸35が固定されている。アーマチュア軸35の軸方向他側(図1の右側)で、かつアーマチュア34の近傍には、コンミテータ(整流子)36が固定されている。そして、コンミテータ36を形成する複数のセグメント(図示せず)には、アーマチュア34に巻装されたコイル33がそれぞれ電気的に接続されている。そして、これらのアーマチュア34,アーマチュア軸35およびコンミテータ36においても、それぞれ第1軸線C1上に設けられている。
【0018】
コンミテータ36の外周部には、ブラシホルダ(図示せず)に移動自在に保持された一対のブラシ37(図示では1つのみ示す)が摺接される。一対のブラシ37は、コンミテータ36の周囲に90°間隔で配置されており、ブラシスプリング38のばね力により、それぞれコンミテータ36に向けて所定圧で押圧されている。これにより、一対のブラシ37に駆動電流を供給することで、アーマチュア34に電磁力が発生し、ひいてはアーマチュア軸35が所定の回転方向に所定の回転速度で回転される。
【0019】
また、アーマチュア軸35の軸方向他側には、当該アーマチュア軸35により回転されるウォーム軸51が一体に設けられ、当該ウォーム軸51の軸方向一側(図1の左側)で、かつアーマチュア軸35の近傍は、第2ラジアル軸受RB2により回転自在に支持されている。第2ラジアル軸受RB2は、第1軸線C1上に設けられ、かつ一対のブラシ37を保持するブラシホルダに保持されている。ここで、ブラシホルダの一側はヨーク31の開口部(図示せず)にがたつかないように圧入固定され、ブラシホルダの他側はハウジング50にがたつかないように圧入固定されている。
【0020】
このように、アーマチュア軸35およびウォーム軸51は同軸上に設けられ、アーマチュア軸35の軸方向一側およびウォーム軸51の軸方向一側は、第1軸線C1上に設けられた第1,第2ラジアル軸受RB1,RB2により、それぞれスムーズに回転可能に支持されている。
【0021】
ギヤ部40は、ハウジング50と、当該ハウジング50に装着されるカバー部材60と、ハウジング50に固定されるコネクタ部材70と、を備えている。
【0022】
ハウジング50は、プラスチック等の樹脂材料を射出成形することで形成され、当該ハウジング50は、ヨーク31の開口部に対して、コネクタ部材70を介して複数の締結ねじ11で接続されている。そして、ハウジング50の内部には、外周部にウォーム51a(図2参照)が設けられ、かつアーマチュア軸35の軸方向他側に一体に設けられたウォーム軸51と、ウォーム51aに噛み合わされる歯部52a(図2参照)を備えた樹脂製のウォームホイール52と、が回転自在に収容されている。
【0023】
図3ないし図5に示されるように、ハウジング50は、略筒状に形成された第1収容部53と、略円盤状に形成された第2収容部54と、第2収容部54の側方において第1収容部53からウォーム軸51の軸方向に突出された略筒状の第3収容部55と、第2収容部54の側方においてヨーク31側(図3の上側)に設けられた第4収容部56と、を備えている。
【0024】
ここで、第1収容部53,第3収容部55および第4収容部56は、それぞれ第1軸線C1上に設けられ、最もヨーク31寄りの部分に第4収容部56が配置されている。そして、第4収容部56には、コネクタ部材70を形成するコネクタ本体(図示せず)が収容され、当該コネクタ本体は、ブラシホルダに電気的に接続されている。なお、コネクタ部材70には、車両側の給電コネクタ(図示せず)が接続されるコネクタ接続部71(図1参照)が設けられている。
【0025】
また、ハウジング50には、合計3つの固定脚57が設けられている。これらの固定脚57には固定ボルト(図示せず)が挿通され、これによりハウジング50(減速機構付モータ10)は車両のドア内に設けられた取付ステー(図示せず)に固定される。ここで、3つの固定脚57は、第2収容部54の周囲に分散して配置されている。これにより、第2収容部54の中央部分に配置されるセレーション出力部SO(図1および図2参照)が、振れることなく安定して回転可能となっている。
【0026】
第1収容部53は、第1軸線C1上に設けられ、第1収容部53の内側には、図1および図2に示されるように、ウォーム軸51が回転自在に収容されている。また、第1収容部53の軸方向に沿う第4収容部56側(図1の左側)には、第2ラジアル軸受RB2を保持するブラシホルダの他側が圧入固定されている。
【0027】
第2収容部54は、第1軸線C1と直交する第2軸線C2上に設けられ、第2収容部54の内側には、図1および図2に示されるように、ウォームホイール52が回転自在に収容されている。ここで、ウォーム51aおよびウォームホイール52は、ウォーム減速機(減速機構)を構成しており、アーマチュア軸35およびウォーム軸51の回転を減速して高トルク化し、高トルク化された回転力をセレーション出力部SOから出力するようになっている。
【0028】
図3に示されるように、第2収容部54は、円盤状底壁部54aと、当該円盤状底壁部54aから起立された筒状壁部54bと、を備えている。また、円盤状底壁部54aの中心には筒部54cが設けられ、当該筒部54cには、丸鋼棒からなる支持軸SH(図1および図2参照)が固定されている。そして、図2に示されるように、ウォームホイール52は、筒部54cおよび支持軸SHの双方に回転自在に支持されている。
【0029】
ここで、ウォームホイール52の回転中心(第2軸線C2上)には、セレーション出力部SOが一体に設けられ、当該セレーション出力部SOは、減速機構付モータ10の出力部として機能する。具体的には、セレーション出力部SOは、ウィンドウレギュレータの被駆動部に動力伝達可能に噛み合わされる。なお、図2に示されるように、ウォームホイール52は、支持軸SHに対して、止め輪SRにより抜け止めされている。
【0030】
図4に示されるように、円盤状底壁部54aの表側(第2収容部54の内側)には、環状の摺接凸部54dが設けられている。摺接凸部54dは、第2収容部54の内側に微小高さで突出されており(図2参照)、ウォームホイール52を摺動自在に支持している。これにより、ウォームホイール52および摺接凸部54dの接触面積が小さくなり、ウォームホイール52は第2収容部54の内側でスムーズに回転可能となっている。
【0031】
また、図5に示されるように、円盤状底壁部54aの裏側(第2収容部54の外側)には、環状および直線状の複数の補強リブRbが設けられている。これらの補強リブRbは、円盤状底壁部54a、ひいてはハウジング50全体の強度を高める機能に加えて、ハウジング50の射出成形後の収縮による変形(所謂「ヒケ」の発生)を抑える機能を有している。
【0032】
なお、円盤状底壁部54aの裏側で、かつ第1収容部53の近傍には、ハウジング50を射出成形する際に用いる金型(図示せず)のキャビティへの入口となるゲート痕GTが設けられている。具体的には、当該ゲート痕GTが形成された部分から、金型の内部のキャビティに対して溶融樹脂が所定圧で供給され、ひいてはハウジング50が所定形状に形成される。
【0033】
さらに、図3ないし図5に示されるように、筒状壁部54bの径方向外側および軸方向一側(図4の手前側)には、3つの第1係合部54eおよび1つの第2係合部54fがそれぞれ設けられている。これらの第1係合部54eおよび第2係合部54fには、カバー部材60(図6参照)の第1係合爪61aおよび第2係合爪61b(図6参照)がそれぞれ係合するようになっている。これにより、カバー部材60は、第2収容部54の開口部OP(図3および図4参照)を閉塞しつつ、ハウジング50に対してがたつくことなく固定される。
【0034】
ここで、第1係合部54eおよび第2係合部54fは、筒状壁部54bの周囲に等間隔(90°間隔)で配置されており、3つの第1係合部54eは、筒状壁部54bの軸方向に延在されており、1つの第2係合部54fは、筒状壁部54bの軸方向端部に配置されている。つまり、第1係合部54eと第2係合部54fとは、それぞれ形状が異なっている。
【0035】
具体的には、第1係合部54eは、カバー部材60の第1係合爪61aの装着を案内する案内溝54gと、第1係合爪61aが引っ掛けられる(係合される)第1係合凸部(係合凸部)54hと、を備えている。なお、第1係合凸部54hは、筒状壁部54bの径方向外側に突出されている。これに対し、第2係合部54fは、カバー部材60の第2係合爪61bが引っ掛けられる(係合される)第2係合凸部54kを備えている。ここで、第2係合凸部54kは、筒状壁部54bの軸方向一側(図4の手前側)に突出されている。
【0036】
このように、カバー部材60の第1係合爪61aおよび第2係合爪61bは、筒状壁部54bの周囲に等間隔で設けられた第1係合部54eおよび第2係合部54fにそれぞれ固定される。したがって、カバー部材60は、筒状壁部54bに対して、がたつくことなく強固に固定される。なお、第1係合部54eおよび第2係合部54fは、それぞれ3つの固定脚57を避けた位置に配置されている。
【0037】
ここで、図2および図6に示されるように、カバー部材60は、プラスチック等の樹脂材料により略円盤状に形成されたカバー本体61と、当該カバー本体61に二色成形等により一体化されたゴム製のシール本体62(図6の網掛け部分)と、を備えている。
【0038】
カバー本体61の径方向外側(外周部分)には、3つの長尺の第1係合爪(被係合部)61a、および1つの短尺の第2係合爪61bが設けられ、これらの係合爪61a,61bは、カバー本体61の周囲に90°間隔で配置されている。そして、第1係合爪61aは、筒状壁部54bの第1係合凸部54h(図4参照)に径方向から引っ掛けられる(係合される)。これに対し、第2係合爪61bは、筒状壁部54bの第2係合凸部54k(図4参照)に軸方向から引っ掛けられる(係合される)。
【0039】
また、シール本体62は、外周リップ62aと内周リップ62bとを備えている。そして、図2に示されるように、カバー部材60をハウジング50に装着した状態において、外周リップ62aは、筒状壁部54bの径方向内側に密着される。これに対し、内周リップ62bには、ウォームホイール52の小径部52bが摺接するようになっている。これにより、ハウジング50の内部への埃等の進入が阻止される。
【0040】
カバー部材60をハウジング50に装着するには、図7の矢印M1に示されるように、3つの第1係合爪61aを3つの第1係合部54eにそれぞれ臨ませ、かつ1つの第2係合爪61bを1つの第2係合部54fに臨ませる。次いで、3つの第1係合爪61aの先端側の部分を、第1係合部54eの案内溝54gにそれぞれ沿わせるようにする。その後、第1係合爪61aを第1係合凸部54hに引っ掛け(係合させ)、第2係合爪61bを第2係合凸部54kに引っ掛ける(係合させる)。
【0041】
これによりカバー部材60が、それぞれの係合爪61a,61bおよび係合凸部54h,54kを介して、ハウジング50の筒状壁部54bに固定される。ここで、図7では、ハウジング50およびカバー部材60のみを図示しており、ハウジング50の内部に収容されるウォームホイール52等の図示を省略している。
【0042】
図1図3および図4に示されるように、第3収容部55は、第1軸線C1上に設けられ、第2収容部54の側方において第1収容部53からウォーム軸51の軸方向(図1および図4の右側)に突出されている。そして、第3収容部55の内側には、ウォーム軸51の軸方向他側(図1の右側)が、回転自在に収容されている。
【0043】
第3収容部55は、内側に第2スラスト軸受TB2および第3ラジアル軸受RB3が装着された略筒状の本体部55aと、本体部55aの軸方向端部を閉塞する略円盤状の底壁部55bと、を備えている。すなわち、第3収容部55は、第2スラスト軸受TB2および第3ラジアル軸受RB3を収容しており、これらの軸受TB2,RB3を介して、ウォーム軸51の軸方向他側を回転自在に支持している。ここで、第2スラスト軸受TB2および第3ラジアル軸受RB3は、本発明における軸受を構成している。このように、アーマチュア軸35およびウォーム軸51は、それぞれ第1軸線C1上に設けられ、かつヨーク31,ブラシホルダおよびハウジング50に支持された第1,第2,第3ラジアル軸受RB1,RB2,RB3により、スムーズに回転可能に支持されている。
【0044】
また、底壁部55bの外側には、平坦面55cが設けられている。当該平坦面55cは、第2スラスト軸受TB2および第3ラジアル軸受RB3を、第3収容部55の本体部55aに装着する治具TL(図8(a),(b)参照)の受け面となっている。これにより、本体部55aの内側に、第2スラスト軸受TB2および第3ラジアル軸受RB3を、第1軸線C1に沿わせて真っ直ぐに装着可能となっている。以下、それぞれの軸受TB2,RB3の本体部55aへの装着方法について説明する。
【0045】
図8(a)に示されるように、まず、矢印M2のように、ハウジング50を基台として機能する治具TLに臨ませる。次に、ハウジング50の平坦面55cを治具TLの上面に突き合わせる。このとき、治具TLの軸線とハウジング50の第1軸線C1とを一致させる。その後、矢印M3のように、第2スラスト軸受TB2および第3ラジアル軸受RB3を、この順番で本体部55aの内側に入れて、かつ押圧治具PTでこれらの軸受TB2,RB3を第1軸線C1に沿わせて押圧する。これにより、第2スラスト軸受TB2および第3ラジアル軸受RB3が、本体部55a(第3収容部55)の内側の所定箇所に正確に位置決めされる。
【0046】
また、図8(b)に示されるような装着方法でも良い。すなわち、まず、基台として機能する装着治具WTの先端部分に、第2スラスト軸受TB2および第3ラジアル軸受RB3をセットする。次いで、矢印M4のように、ハウジング50の第1収容部53の内側に装着治具WTの先端部分(それぞれの軸受TB2,RB3)が入り込むように臨ませる。このとき、装着治具WTの軸線とハウジング50の第1軸線C1とを一致させる。その後、矢印M5のように、押圧治具として機能する治具TLの下面で、ハウジング50の平坦面55cを第1軸線C1に沿わせて真っ直ぐに押圧する。これにより、第2スラスト軸受TB2および第3ラジアル軸受RB3が、本体部55a(第3収容部55)の内側の所定箇所に正確に位置決めされる。
【0047】
図1図3および図4に示されるように、第2収容部54と第3収容部55の本体部55aとの間には、複数の屈曲部を備えた補強部材58が設けられている。当該補強部材58の長手方向一側(図4の下側)は、固定脚57を介して第2収容部54の筒状壁部54bに一体に設けられている。これに対し、補強部材58の長手方向他側(図4の上側)は、第3収容部55の本体部55aに一体に設けられている。
【0048】
補強部材58には、略90°に屈曲された第1屈曲部58a、および略135°に屈曲された第2屈曲部58bが設けられている。第1屈曲部58aは補強部材58の長手方向一側に配置され、第2屈曲部58bは補強部材58の長手方向他側に配置されている。
【0049】
このように、補強部材58の2箇所に屈曲部58a,58bを設けることで、図4に示されるように、第2収容部54と第3収容部55と補強部材58とで囲まれた空隙部SPを略長方形として、ハウジング50の成形に用いる金型の形状を簡素化可能としている。
【0050】
また、図8(a),(b)に示されるように、第3収容部55よりも大径の治具TLが使用可能となっている。具体的には、第2屈曲部58bを設けることで、補強部材58の第3収容部55の近傍を、第1軸線C1と直交する方向に延ばせるようにしている。したがって、軸受装着作業の際に、補強部材58に治具TLが接触する等して、補強部材58が損傷することを未然に防げる。言い換えれば、補強部材58は、軸受装着作業の邪魔になることがない。
【0051】
さらに、図3に示されるように、第2収容部54(ウォームホイール52)の軸方向に対する底壁部55bの幅寸法D、および補強部材58の幅寸法Wは、それぞれ同じ大きさに設定されている(D=W)。これによっても、ハウジング50の成形に用いる金型の形状を簡素化可能としている。
【0052】
また、図4に示されるように、第2収容部54と第3収容部55と補強部材58とで囲まれた空隙部SPは略長方形であるが、当該空隙部SPの短辺部の長さ寸法T1の方が長辺部の長さ寸法T2よりも若干短い設定となっている(T1<T2)。言い換えれば、空隙部SPは正方形に近い長方形となっている。これにより、比較的大きな空隙部SPが、第2収容部54と第3収容部55と補強部材58との間に形成される。よって、空隙部SPを形成する金型の部分(棒形状)を細くせずに済み、ひいては金型の長寿命化が実現可能となっている。
【0053】
さらに、空隙部SPには、3つの第1係合部54eのうちの1つが配置されている。つまり、空隙部SPには、1つの第1係合爪61a(図6参照)と、1つの案内溝54gと、1つの第1係合凸部54hと、が配置されている。よって、補強部材58は、例えば、減速機構付モータ10の搬送中において、第1係合凸部54hおよび第1係合爪61aに障害物が当たって、第1係合凸部54hおよび第1係合爪61aが損傷することを防止する。
【0054】
そして、空隙部SPは、第2収容部54の径方向外側への第1係合爪61aの弾性変形を十分に許容する。したがって、補強部材58は、カバー部材60のハウジング50(筒状壁部54b)への装着作業の邪魔になることがない。
【0055】
第2収容部54と第3収容部55との間に設けられる補強部材58は、ハウジング50の射出成形後の収縮(熱収縮)により他の収容部53,54,56に対する第3収容部55の傾斜(所謂「ヒケ」の発生)を抑える機能を有している。具体的には、図9に示されるように、ハウジング50が射出成形後に冷却されて硬化すると、破線矢印に示されるように第2軸線C2に向けて収縮する。このとき、補強部材58が無い場合には、太い一点鎖線のように第1軸線C1(反り発生)が大きく歪んでしまい、ひいては第1,第2,第3ラジアル軸受RB1,RB2,RB3(図1参照)の同軸度が低下する。これにより、アーマチュア軸35およびウォーム軸51(図1参照)のスムーズな回転が阻害されて、出力トルクの低下や作動音の増大等を招いてしまう。
【0056】
これに対し、本実施の形態のように補強部材58を設けた場合には、ハウジング50の冷却時において当該補強部材58が、第2収容部54と第3収容部55との間で実線矢印に示されるように所定の力Fで突っ張る。そのため、ハウジング50が破線矢印に示されるように収縮したとしても、他の収容部53,54,56に対する第3収容部55の倒れ(傾斜)が抑えられて、細い一点鎖線のように第1軸線C1が歪むことなく略真っ直ぐに保持される。よって、第1,第2,第3ラジアル軸受RB1,RB2,RB3の同軸度の低下が効果的に抑えられている。
【0057】
以上詳述したように、本実施の形態に係る減速機構付モータ10によれば、第2収容部54と第3収容部55との間に、第3収容部55の傾斜を抑える補強部材58が設けられているので、ハウジング50の硬化時において、第2収容部54と第3収容部55との間で補強部材58が突っ張って、ひいては他の収容部53,54,56に対して第3収容部55が倒れることが防止される。これにより、第3収容部55の成形精度が向上して、ひいては出力トルク低下や作動音の増大等を効果的に抑えることができる。
【0058】
また、本実施の形態に係る減速機構付モータ10によれば、第3収容部55は、内側に第2スラスト軸受TB2および第3ラジアル軸受RB3が装着される本体部55aと、本体部55aの軸方向端部を閉塞する底壁部55bと、底壁部55bの外側に設けられる平坦面55cと、を備え、補強部材58が、第2収容部54と本体部55aとの間に設けられ、平坦面55cが、第2スラスト軸受TB2および第3ラジアル軸受RB3を本体部55aに装着する治具TLの受け面になっている。
【0059】
これにより、第2スラスト軸受TB2および第3ラジアル軸受RB3を、本体部55a(第3収容部55)の内側の所定箇所に、正確に位置決めすることができる。
【0060】
さらに、本実施の形態に係る減速機構付モータ10によれば、第2収容部54(ウォームホイール52)の軸方向に対する底壁部55bの幅寸法Dおよび補強部材58の幅寸法Wが、それぞれ同じ大きさになっている(D=W)。
【0061】
これにより、ハウジング50の成形に用いる金型の形状を簡素化することができ、ひいては、寸法精度が良好となったハウジング50を容易に量産することが可能となる。
【0062】
また、本実施の形態に係る減速機構付モータ10によれば、第2収容部54の開口部OPがカバー部材60により閉塞されており、カバー部材60には、第2収容部54に設けられた第1係合凸部54hに係合される第1係合爪61aが設けられ、第2収容部54と第3収容部55と補強部材58とで囲まれた空隙部SPに、第1係合凸部54hおよび第1係合爪61aが配置されている。
【0063】
これにより、補強部材58は、減速機構付モータ10の搬送中等において、第1係合凸部54hおよび第1係合爪61aに障害物が当たって、第1係合凸部54hおよび第1係合爪61aが損傷することを防止することができる。
【0064】
さらに、本実施の形態に係る減速機構付モータ10によれば、空隙部SPは、第2収容部54の径方向外側への第1係合爪61aの弾性変形を許容する。
【0065】
これにより、補強部材58が、カバー部材60のハウジング50(筒状壁部54b)への装着作業の邪魔になることがなく、組み立て作業性の低下を抑制することができる。
【0066】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態では、補強部材58を、2つの第1屈曲部58aおよび第2屈曲部58bを有する形状としたが、本発明はこれに限らず、必要とされる強度に応じて、補強部材を真っ直ぐな形状や3つ以上の屈曲部を有する形状にしても良い。
【0067】
また、上記実施の形態では、減速機構付モータ10を、車両に搭載されるパワーウィンドウ装置の駆動源に用いたものを示したが、本発明はこれに限らず、サンルーフ装置等の他の駆動源にも用いることができる。
【0068】
その他、上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0069】
10:減速機構付モータ(モータ装置),11:締結ねじ,30:モータ部,31:ヨーク,31a:有底筒部,32:マグネット,33:コイル,34:アーマチュア,35:アーマチュア軸,36:コンミテータ,37:ブラシ,38:ブラシスプリング,40:ギヤ部,50:ハウジング,51:ウォーム軸,51a:ウォーム,52:ウォームホイール,52a:歯部,52b:小径部,53:第1収容部,54:第2収容部,54a:円盤状底壁部,54b:筒状壁部,54c:筒部,54d:摺接凸部,54e:第1係合部,54f:第2係合部,54g:案内溝,54h:第1係合凸部(係合凸部),54k:第2係合凸部,55:第3収容部,55a:本体部,55b:底壁部,55c:平坦面(受け面),56:第4収容部,57:固定脚,58:補強部材,58a:第1屈曲部,58b:第2屈曲部,60:カバー部材,61:カバー本体,61a:第1係合爪(被係合部),61b:第2係合爪,62:シール本体,62a:外周リップ,62b:内周リップ,70:コネクタ部材,71:コネクタ接続部,C1:第1軸線,C2:第2軸線,GT:ゲート痕,OP:開口部,PT:押圧治具,RB1:第1ラジアル軸受,RB2:第2ラジアル軸受,RB3:第3ラジアル軸受(軸受),Rb:補強リブ,SH:支持軸,SO:セレーション出力部,SP:空隙部,SR:止め輪,TB1:第1スラスト軸受,TB2:第2スラスト軸受(軸受),TL:治具,WT:装着治具
図1
図2
図3
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図9