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特許7462533ロータ、モータ及びブラシレスワイパーモータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】ロータ、モータ及びブラシレスワイパーモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/278 20220101AFI20240329BHJP
【FI】
H02K1/278
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020180640
(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2022071593
(43)【公開日】2022-05-16
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】大堀 竜
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-028344(JP,A)
【文献】特開2020-078176(JP,A)
【文献】特開2019-068574(JP,A)
【文献】特開2015-042111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線回りに回転するシャフトと、
前記シャフトを保持するとともに、前記回転軸線を径方向中心として回転するロータコアと、
前記ロータコアの外周面に周方向に沿って並んで配置された複数の磁石と、
前記ロータコアの前記外周面の前記周方向で隣り合う前記磁石の間において前記ロータコアの径方向の外方に向かって突出する突極と、
を備え、
前記突極は、前記周方向の両側において前記磁石の前記周方向の端部に対向する突極側対向面を有し、
複数の前記磁石は、前記周方向の両側において前記突極側対向面と対向する磁石側対向面を有し、
前記突極側対向面の径方向に沿う寸法は、前記磁石側対向面の径方向に沿う寸法よりも大きく、
複数の前記磁石は、前記回転軸線方向からみて前記磁石の前記周方向中央と前記回転軸線とを通る第1直線と平行で、かつ前記突極側対向面に沿う直線と前記ロータコアの前記外周面に沿う曲線との交点を通る第2直線を挟んで前記周方向中央側の第1領域と前記突極側の第2領域とを有し、
前記第1領域の磁化配向は、前記第1直線と平行な方向となるパラレル配向であり、
前記第2領域の全体の磁化配向は、径方向に沿う方向となるラジアル配向であり、
前記磁石側対向面の全体の磁化配向は、前記磁石側対向面に沿っている
ことを特徴とするロータ。
【請求項2】
環状のステータコア及び前記ステータコアの内周面から前記径方向の内方に突出する複数のティースを有するステータと、
前記ティースに装着されるコイルと、
前記複数のティースに対して前記径方向の内側に配置される請求項1記載のロータと、
を備える
ことを特徴とするモータ。
【請求項3】
前記複数のティースは、
前記ステータコアの前記内周面から前記径方向に沿って内方に突出するティース本体と、
前記ティース本体の前記径方向内側端から前記周方向に沿って外方に延びる一対の鍔部と、
を有し、
前記第1領域の前記周方向に沿う寸法は、前記ティース本体の前記周方向に沿う寸法よりも大きく、かつ前記ティース本体の前記周方向沿う寸法に前記一対の鍔部のそれぞれの前記周方向に沿う寸法を加算した寸法よりも小さい
ことを特徴とする請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
車両に搭載されるワイパーの駆動源として請求項2又は請求項3に記載のモータを備えることを特徴とするブラシレスワイパーモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ、モータ及びブラシレスワイパーモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、界磁用の永久磁石をロータコアの表面に有する表面磁石(SPM:Surface Permanent Magnet)型のロータとして、周方向に並ぶ永久磁石間においてロータコアの径方向外方に突出する突部を備えるインセット型のロータが知られている。このロータにおいて、ロータコア及び突部は、磁性材料によって形成されている。ロータコアの突部は、突出方向をステータのコイルによる鎖交磁束が流れやすい方向とするとともに鎖交磁束の磁路の磁気抵抗(リラクタンス)を小さくするように、ロータコアを回転させるリラクタンストルクを発生させる。
【0003】
ところで、このようなロータでは、ステータのコイルによる鎖交磁束は、ロータコアの突部に向かって吸引されるように流れやすくなることに起因して、永久磁石の周方向両端部などにおいて磁石内部に侵入して、磁石内部に減磁界を発生させる場合がある。このため、ステータのコイルの鎖交磁束による永久磁石の減磁を抑制することが望まれている。この永久磁石の減磁を抑制するためのさまざまな技術が開示されている。
例えば、永久磁石の周方向両端部において、他の部位よりも固有保磁力が大きい保磁部を設けた技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-78176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際に、永久磁石の周方向の両端部に上述の保持部を設けようとすると、他の部位と保持部との材料を変更する等の必要が考えられる。このように、永久磁石が製造しにくいものとなり、製造コストも増大する可能性があった。
【0006】
そこで、本発明は、容易に製造でき、かつ製造コストの増大も抑制できつつ、ステータのコイルの鎖交磁束による磁石の減磁を抑制することができるロータ、モータ及びブラシレスワイパーモータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係るロータは、回転軸線回りに回転するシャフトと、前記シャフトを保持するとともに、前記回転軸線を径方向中心として回転するロータコアと、前記ロータコアの外周面に周方向に沿って並んで配置された複数の磁石と、前記ロータコアの前記外周面の前記周方向で隣り合う前記磁石の間において前記ロータコアの径方向の外方に向かって突出する突極と、を備え、前記突極は、前記周方向の両側において前記磁石の前記周方向の端部に対向する突極側対向面を有し、複数の前記磁石は、前記周方向の両側において前記突極側対向面と対向する磁石側対向面を有し、前記突極側対向面の径方向に沿う寸法は、前記磁石側対向面の径方向に沿う寸法よりも大きく、複数の前記磁石は、前記回転軸線方向からみて前記磁石の前記周方向中央と前記回転軸線とを通る第1直線と平行で、かつ前記突極側対向面に沿う直線と前記ロータコアの外周面に沿う曲線との交点を通る第2直線を挟んで前記周方向中央側の第1領域と前記突極側の第2領域とを有し、前記第1領域の磁化配向は、前記第1直線と平行な方向となるパラレル配向であり、前記第2領域の全体の磁化配向は、径方向に沿う方向となるラジアル配向であり、前記突極側対向面の全体の磁化配向は、前記磁石側対向面に沿っていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るモータは、環状のステータコア及び前記ステータコアの内周面から前記径方向の内方に突出する複数のティースを有するステータと、前記ティースに装着されるコイルと、前記複数のティースに対して前記径方向の内側に配置される上記に記載のロータと、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るブラシレスワイパーモータは、車両に搭載されるワイパーの駆動源として上記に記載のモータを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、容易に製造でき、かつ製造コストの増大も抑制できつつ、ステータのコイルの鎖交磁束による磁石の減磁を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態におけるブラシレスワイパーモータの斜視図。
図2図1のA-A線に沿う断面図。
図3】本発明の実施形態におけるステータ及びロータの径方向に沿う断面図。
図4図3のB部拡大図。
図5】本発明の実施形態におけるロータの突極への鎖交磁束の流れの一例を示す説明図。
図6】本発明の実施形態における永久磁石の減磁率の変化を示すグラフ。
図7】本発明の実施形態における永久磁石の磁化配向をパラレル配向とした場合とラジアル配向とした場合とを比較したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るロータ、モータ及びブラシレスワイパーモータについて、添付図面を参照しながら説明する。
【0013】
<ブラシレスワイパーモータ>
図1は、ブラシレスワイパーモータ1の斜視図である。図2は、図1のA-A線に沿う断面図である。
図1及び図2に示すように、ブラシレスワイパーモータ1は、例えば車両に搭載されるワイパーの駆動源である。ブラシレスワイパーモータ1は、モータ部(請求項におけるモータの一例)2と、モータ部2の回転を減速して出力する減速部3と、モータ部2の駆動制御を行うコントローラ部4と、を備える。
なお、以下の説明において、単に軸方向という場合は、モータ部2のシャフト31の回転軸線方向をいい、単に周方向という場合は、シャフト31の周方向(後述のロータ9の回転方向)をいい、単に径方向という場合は、シャフト31の径方向をいうものとする。
【0014】
<モータ部>
モータ部2は、モータケース5と、モータケース5内に収納されている略円筒状のステータ8と、ステータ8の径方向内側に設けられ、ステータ8に対して回転可能に設けられたロータ9と、を備える。モータ部2は、ステータ8に電力を供給する際にブラシを必要としない、いわゆるブラシレスモータである。
【0015】
<モータケース>
モータケース5は、例えばアルミダイキャスト等の放熱性の優れた材料から形成されている。モータケース5は、軸方向に分割可能に構成された第1モータケース6と、第2モータケース7と、からなる。第1モータケース6及び第2モータケース7は、それぞれ有底筒状に形成されている。
第1モータケース6は、底部10が減速部3のギアケース40と接合されるように、このギアケース40と一体成形されている。底部10の径方向略中央には、ロータ9のシャフト31を挿通可能な貫通孔10aが形成されている。
【0016】
また、第1モータケース6の開口部6aに、径方向の外方に向かって張り出す外フランジ部16が形成されている。第2モータケース7の開口部7aに、径方向の外方に向かって張り出す外フランジ部17が形成されている。これら外フランジ部16,17同士を突き合わせて内部空間を有するモータケース5を形成している。モータケース5の内部空間には、第1モータケース6及び第2モータケース7の内側に嵌め合わされるようにステータ8が配置される。
【0017】
<ステータ>
図3は、ステータ8及びロータ9の径方向に沿う断面図である。
図2及び図3に示すように、ステータ8は、筒状のコア部21と、コア部21から径方向の内方に向かって突出する複数(例えば、本第実施形態では6つ)のティース22と、が一体成形された環状のステータコア20を有する。
ステータコア20は、複数の金属板を軸方向に積層することにより形成されている。なお、ステータコア20は、複数の金属板を軸方向に積層して形成される場合に限られるものではなく、例えば、軟磁性粉を加圧成形することにより形成されてもよい。
【0018】
ティース22は、一体成形されたティース本体22a及び一対の鍔部22bを備える。ティース本体22aは、コア部21の内周面から径方向に沿って内方に突出する。鍔部22bは、ティース本体22aの径方向内側端から周方向に沿って延びる。一対の鍔部22bは、ティース本体22aから周方向の外方に延びるように形成されている。そして、周方向で隣り合う鍔部22bの間に、蟻溝状のスロット19が形成される。
【0019】
また、コア部21の内周面及びティース22は、樹脂製のインシュレータ23によって覆われている。このインシュレータ23の上から各ティース22にコイル24が巻回されている。各コイル24は、コントローラ部4からの給電により、ロータ9を回転させるための磁界を発生させる。
【0020】
<ロータ>
ロータ9は、ステータ8の径方向内側に微小隙間を介して回転自在に設けられている。
ロータ9は、シャフト31と、シャフト31に固定されたロータコア32と、ロータコア32に固定された4つの永久磁石(請求項における磁石の一例)33と、ロータコア32及び永久磁石33を周囲から覆う略円筒状のマグネットカバー70と、を備える。このように、モータ部2において、永久磁石33の磁極数とスロット19(ティース22)の数との比は、例えば4:6である。
【0021】
ロータ9は、シャフト31の中心線(軸心)C1を回転軸線として、この回転軸線を径方向中心として回転する。
シャフト31は、減速部3を構成するウォーム軸44(図2参照)と一体成形されている。
ロータコア32は、シャフト31の外側に嵌め合わされるように固定されている。ロータコア32は、シャフト31を軸心C1とする円柱状に形成されている。
【0022】
ロータコア32は、複数の金属板を軸方向に積層することにより形成されている。なお、ロータコア32は、複数の金属板を軸方向に積層して形成される場合に限られるものではなく、例えば、軟磁性粉を加圧成形することにより形成されてもよい。
【0023】
ロータコア32の径方向略中央には、軸方向に貫通する貫通孔32aが形成されている。この貫通孔32aに、シャフト31が圧入されている。なお、シャフト31の外周面にロータコア32が嵌め合わされるように、相対的に貫通孔32aにシャフト31が挿入されてもよい。この場合、接着剤等によってシャフト31とロータコア32とが固定されてもよい。
ロータコア32において、径方向内側の内周面(つまり貫通孔32aの内周面)の円弧中心及び径方向外側の外周面32bの円弧中心は、シャフト31の軸心C1の位置と一致する。
【0024】
さらに、ロータコア32の外周面32bには、4つの突極35が周方向に等間隔で設けられている。突極35は、ロータコア32と一体的に径方向の外方に突出するとともにロータコア32の軸方向全体に亘って延びるように形成されている。突極35の基端(径方向内側端)とロータコア32の外周面32bとの接続部には、丸面取り部32cが形成されている。突極35は、ロータコア32と同様に複数の金属板を軸方向に積層することにより形成されている。
【0025】
このように形成されたロータコア32の外周面32bにおいて、周方向で隣り合う2つの突極35の間は、それぞれ磁石収納部36として構成されている。
すなわち、ロータ9は、界磁用の永久磁石33をロータコア32の外周面32bに有する表面磁石(SPM:Surface Permanent Magnet)型のロータであるとともに、周方向に並ぶ永久磁石33間においてロータコア32の径方向外方に突出する突極35を備えるインセット型のロータである。
【0026】
また、突極35の先端面(径方向外側の端面)35aには、軸方向に延びる凹部38が形成されている。さらに、突極35の先端面35aには、周方向両側の角部に、丸面取り部35bが形成されている。また、突極35は、周方向で対向する2つの側面35cが突出方向に平行となるように形成されている。つまり、突極35は、周方向の幅寸法が突出方向で均一になるように形成されている。
【0027】
<永久磁石>
図4は、図3のB部拡大図である。
図3図4に示すように、4つの永久磁石33は、ロータコア32の外周面32bに設けられる4つ磁石収納部36に配置されている。各永久磁石33は、磁石収納部36において、例えば接着剤等によりロータコア32に固定されている。
【0028】
永久磁石33は、例えばフェライト磁石や希土類磁石である。永久磁石33は瓦状に形成されている。永久磁石33において、径方向内側の内周面33bの円弧中心Ciは、シャフト31の軸心C1の位置と一致する。径方向外側の外周面33aの円弧中心Coは、シャフト31の軸心C1に対して偏心している。具体的には、永久磁石33の外周面33aの円弧中心Coは、永久磁石33の中心を通る径方向において軸心C1よりもロータコア32の外周面32b寄りに設定されている。
【0029】
これにより、永久磁石33は、シャフト31の軸心C1回りの周方向両側の端部33sにおける径方向の厚みが、周方向中央部33cにおける径方向の厚みよりも小さくなる。これに伴い、永久磁石33の径方向外側の外周面33aとティース22の内周面との間の隙間は、永久磁石33の周方向中央部33cにおいて最も小さく、この周方向中央部33cから周方向外側に離間するに従って増大傾向に変化する。
【0030】
永久磁石33の内周面33bは、ロータコア32の外周面32bのほぼ全体に接触している。また、永久磁石33の周方向両側の各周方向側面33dは、突極35の側面35cに接触している。周方向側面33dは、円弧面33fを介して径方向内側の内周面33bに滑らかに接続されている。円弧面33fの曲率半径は、ロータコア32の外周面32bと突極35の基端との接続部に形成された丸面取り部32cの曲率半径よりも大きい。このため、円弧面33fと丸面取り部32cとが接触してしまうことがない。したがって、ロータコア32の外周面32bに永久磁石33の内周面33bが確実に接触される。また、突極35の側面35cに永久磁石33の周方向側面33dが確実に接触される。
【0031】
次に、永久磁石33の磁化配向について詳述する。
永久磁石33は、磁化配向の異なる2つの領域R1,R2(第1領域R1、第2領域R2)を有する。
ここで、2つ領域R1,R2について説明する。軸方向からみて永久磁石33の周方向中央部33cと軸心C1とを通る直線を第1直線L1とする。突極35の側面35cに沿う直線を補直線Lhとする。ロータコア32の外周面32bに沿う曲線をLkとする。補直線Lhと曲線Lkとの交点を交点C2とする。この交点C2を通り、かつ第1直線L1に平行な直線を第2直線L2とする。
【0032】
永久磁石33は、第2直線L2を中心に周方向中央部33c側の領域が、第1領域R1に設定されている。第2直線L2を中心に突極35側の領域が、第2領域R2に設定されている。すなわち、1つの永久磁石33は、1つの第1領域R1と、この第1領域R1に対して第2直線L2を挟んで周方向両側に配置された2つの第2領域R2と、を有する。軸方向からみると、第1領域R1は、略長方形状の領域となり、第2領域R2は、径方向内側に向かって先細りとなる略三角形状の領域となる。
第1領域R1の全体は、磁化配向が第1直線L1と平行な方向となるパラレル配向(図4における矢印PM参照)である。一方、第2領域R2の全体は、磁化配向が径方向に沿う方向となるラジアル配向(図4における矢印RM参照)である。
【0033】
このように構成された永久磁石33は、周方向で隣り合う永久磁石33の相互の磁化配向が反対方向となるように配置されている。すなわち、4つの永久磁石33は、周方向に磁極が互い違いになるように配置されている。さらに換言すると、外周側がN極とされた永久磁石33と外周側がS極とされた永久磁石33とは周方向で隣り合うように配置されている。これにより、周方向で隣り合う永久磁石33の間に配置されるロータコア32の突極35は、磁極の境界(極境界)に位置している。
【0034】
<減速部>
図1及び図2に戻り、減速部3は、モータケース5が取り付けられているギアケース40と、ギアケース40内に収納されるウォーム減速機構41と、を備える。
ギアケース40は、例えばアルミダイキャスト等の放熱性の優れた材料により形成されている。ギアケース40の外形は、一面に開口部40aを有する箱状に形成されている。ギアケース40は、内部にウォーム減速機構41を収容するギア収容部42を有する。また、ギアケース40の側壁40bには、第1モータケース6が一体成形されている箇所に、この第1モータケース6の貫通孔10aとギア収容部42とを通じさせる開口部43が形成されている。
【0035】
また、ギアケース40の底壁40cには、略円筒状の軸受ボス49が突設されている。
軸受ボス49は、ウォーム減速機構41の出力軸48を回転自在に支持するために設けられ、内周面に不図示の滑り軸受を備える。
さらに、軸受ボス49の先端内周縁には、不図示のOリングが装着されている。これにより、軸受ボス49を介して外部から内部に塵埃や水が侵入してしまうことが防止される。
また、軸受ボス49の外周面には、複数のリブ52が設けられている。これにより、軸受ボス49の所望の剛性が確保されている。
【0036】
ギア収容部42に収容されたウォーム減速機構41は、ウォーム軸44と、ウォーム軸44に噛合されるウォームホイール45と、により構成されている。
ウォーム軸44は、モータ部2のシャフト31と同軸上に配置されている。そして、ウォーム軸44は、両端がギアケース40に設けられた軸受46,47によって回転自在に支持されている。ウォーム軸44のモータ部2側の端部は、軸受46を介してギアケース40の開口部43に至るまで突出している。この突出したウォーム軸44の端部とモータ部2のシャフト31との端部が接合され、ウォーム軸44とシャフト31とが一体化されている。なお、ウォーム軸44とシャフト31は、1つの母材からウォーム軸部分と回転軸部分とを成形することにより一体として形成されてもよい。
【0037】
ウォーム軸44に噛合されるウォームホイール45には、このウォームホイール45の径方向中央に出力軸48が設けられている。出力軸48は、ウォームホイール45の回転軸方向と同軸上に配置されており、ギアケース40の軸受ボス49を介してギアケース40の外部に突出している。出力軸48の突出した先端には、不図示の電装品と接続可能なスプライン48aが形成されている。
【0038】
また、ウォームホイール45の径方向中央には、出力軸48が突出されている側とは反対側に、不図示のセンサ磁石が設けられている。このセンサ磁石は、ウォームホイール45の回転位置を検出する回転位置検出部60の一方を構成している。この回転位置検出部60の他方を構成する磁気検出素子61は、ウォームホイール45のセンサ磁石側(ギアケース40の開口部40a側)でウォームホイール45と対向配置されているコントローラ部4に設けられている。
【0039】
<コントローラ部>
モータ部2の駆動制御を行うコントローラ部4は、磁気検出素子61が実装されたコントローラ基板62と、ギアケース40の開口部40aを閉塞するように設けられたカバー63と、を有する。そして、コントローラ基板62が、ウォームホイール45のセンサ磁石側(ギアケース40の開口部40a側)に対向配置されている。
【0040】
コントローラ基板62は、いわゆるエポキシ基板に複数の導電性のパターン(不図示)が形成されたものである。コントローラ基板62には、モータ部2のステータコア20から引き出されたコイル24の端末部が接続されていると共に、カバー63に設けられたコネクタ11の不図示の端子が電気的に接続されている。また、コントローラ基板62には、磁気検出素子61の他に、コイル24に供給する電流を制御するFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)等のスイッチング素子からなるパワーモジュール(不図示)が実装されている。さらに、コントローラ基板62には、このコントローラ基板62に印加される電圧の平滑化を行うコンデンサ(不図示)等が実装されている。
【0041】
このように構成されたコントローラ基板62を覆うカバー63は、樹脂により形成されている。また、カバー63は、若干外側に膨出するように形成されている。そして、カバー63の内面側は、コントローラ基板62等を収容するコントローラ収容部56とされている。
また、カバー63の外周部に、コネクタ11が一体成形されている。このコネクタ11は、不図示の外部電源から延びるコネクタと嵌着可能に形成されている。そして、コネクタ11の不図示の端子に、コントローラ基板62が電気的に接続されている。これにより、外部電源の電力がコントローラ基板62に供給される。
【0042】
さらに、カバー63の開口縁には、ギアケース40の側壁40bの端部と嵌め合わされる嵌合部81が突出形成されている。嵌合部81は、カバー63の開口縁に沿う2つの壁81a,81bにより構成されている。そして、これら2つの壁81a,81bの間に、ギアケース40の側壁40bの端部が挿入(嵌め合い)される。これにより、ギアケース40とカバー63との間にラビリンス部83が形成される。このラビリンス部83によって、ギアケース40とカバー63との間から塵埃又は水が浸入してしまうことが防止される。なお、ギアケース40とカバー63との固定は、不図示のボルトを締結することにより行われる。
【0043】
<ブラシレスモータワイパモータの動作>
次に、ブラシレスワイパーモータ1の動作について説明する。
ブラシレスワイパーモータ1において、コネクタ11を介してコントローラ基板62に供給された電力は、不図示のパワーモジュールを介してモータ部2の各コイル24に選択的に供給される。
すると、各コイル24に流れる電流は、ステータ8(ティース22)に所定の鎖交磁束を形成する。この鎖交磁束は、ロータ9の永久磁石33により形成される有効磁束との間で磁気的な吸引力又は反発力(磁石トルク)を発生させる。
【0044】
また、ロータコア32の突極35は、突出方向をステータ8(ティース22)からの鎖交磁束が流れやすい方向とするとともに、鎖交磁束の磁路の磁気抵抗(リラクタンス)を小さくするように、ロータコア32を回転させるリラクタンストルクを発生させる。
これらの磁石トルク及びリラクタンストルクは、ロータ9を継続的に回転させる。
ロータ9の回転は、シャフト31と一体化されているウォーム軸44に伝達され、さらにウォーム軸44に噛合されているウォームホイール45に伝達される。そして、ウォームホイール45の回転は、ウォームホイール45に連結されている出力軸48に伝達され、出力軸48は、所望の電装品を駆動させる。
【0045】
また、コントローラ基板62に実装されている磁気検出素子61によって検出されたウォームホイール45の回転位置の検出信号は、不図示の外部機器に出力される。不図示の外部機器は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECU(Electronic Control Unit)である。
【0046】
また、不図示の外部機器の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。不図示の外部機器は、ウォームホイール45の回転位置検出信号に基づいて、不図示のパワーモジュールのスイッチング素子等の切替えタイミングを制御し、モータ部2の駆動制御を行う。なお、パワーモジュールの駆動信号の出力及びモータ部2の駆動制御は、不図示の外部機器の代わりにコントローラ部4によって実行されてもよい。
【0047】
<永久磁石の作用>
次に、図5に基づいて、永久磁石33の作用について説明する。
図5は、ロータ9の突極35への鎖交磁束の流れの一例を示す説明図である。図5は、前述の図4に対応している。
図5に示すように、ロータ9の回転時において、回転方向Rの前方側のティース22から突極35に向かってステータ8のコイル24による鎖交磁束が流れる場合、永久磁石33の突極35の近傍、つまり、永久磁石33の第2領域R2付近を鎖交磁束が通過しようとする。つまり、永久磁石33の第2領域R2に鎖交磁束が侵入しようとする。この第2領域R2付近の鎖交磁束の流れの向きは、ロータ9の径方向外方から突極35の先端に向かうように、径方向に対して斜めの向きとなる(図5における矢印Y1参照)。
【0048】
ここで、永久磁石33は、鎖交磁束が流れて永久磁石33の内部に鎖交磁束が侵入されると減磁界が生じてしまう。鎖交磁束は、永久磁石33の磁化配向に沿って流れやすい(侵入しやすい)。しかしながら、突極35へと向かう鎖交磁束の流れの向き(矢印Y1)に対し、突極35の近傍の永久磁石33における第2領域R2の磁化配向は、ラジアル配向(矢印RM)である。ラジアル配向は径方向に沿う方向であるから、第2領域R2付近の鎖交磁束の流れと交差する形になる。このため、第2領域R2に鎖交磁束が流れにくくなる(侵入しにくくなる)。
【0049】
したがって、本実施形態のロータ9によれば、突極35と隣り合う永久磁石33の周方向両端部である第2領域R2の磁化配向をラジアル配向とすることにより、ステータ8のコイル24の鎖交磁束による減磁が生じてしまうことを抑制できる。換言すれば、第2領域R2は、突極35に向かって鎖交磁束が吸引されやすい領域、つまり、永久磁石33の第2直線L2を中心に突極35側の領域である。このため、永久磁石33の鎖交磁束の影響を受けやすい箇所を積極的に鎖交磁束の流れと交差する磁化配向とすることで、永久磁石33に鎖交磁束が侵入してしまうことを効果的に防止できる。
【0050】
図6は、縦軸を第2領域R2における永久磁石33の減磁率[%]とし、横軸をコイル24に供給する電流値[A]とした場合の永久磁石33の減磁率の変化を示すグラフであり、磁化配向別に比較している。
図6に示すように、第2領域R2の磁化配向をパラレル配向とした場合や、永久磁石33の外周面33aで、かつ周方向中央部33cに向かうように逆ラジアル配向(図3における2点鎖線で示す矢印参照)とした場合と比較して、ラジアル配向とした場合の減磁率が抑えられていることが確認できる。
【0051】
また、本実施形態のロータ9によれば、永久磁石33の第1領域R1の磁化配向がパラレル配向であるので、ブラシレスワイパーモータ1のモータ特性を向上できる。以下に詳述する。
【0052】
図7は、縦軸を永久磁石33の有効磁束[μWb]とし、永久磁石33の磁化配向をパラレル配向とした場合とラジアル配向とした場合とを比較したグラフである。
図7に示すように、永久磁石33の磁化配向をパラレル配向とした場合、ラジアル配向とする場合よりも有効磁束が増大することが確認できる。このため、突極35から離間した位置で鎖交磁束の影響を受けにくい第1領域R1の磁化配向をパラレル配向とすることにより、ブラシレスワイパーモータ1の駆動時における永久磁石33の有効磁束を十分確保することが可能になる。よって、ブラシレスワイパーモータ1のモータ特性を向上できる。
【0053】
また、第1領域R1の磁化方向に対して第2領域R2の磁化配向を変更するだけなので、例えば永久磁石33の第1領域R1と第2領域R2とで材料を変更する等の必要もない。このため、永久磁石33を容易に製造でき、かつ製造コストの増大も抑制できる。
第2領域R2の全体をラジアル配向とすることで、第2領域R2の全体の減磁を抑制できる。
【0054】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、モータとして、ブラシレスワイパーモータ1を例に挙げたが、本発明に係るモータは、ブラシレスワイパーモータ1に限定されない。例えば、モータは、車両に搭載される各種の電装品(例えば、パワーウインドウ、サンルーフ及び電動シート等)の駆動源又は車両以外の各種機器に搭載される駆動源であってもよい。
【0055】
上述の実施形態では、ロータコア32において、外周面33aの円弧中心Coは、シャフト31の軸心C1に対して偏心しているとしたが、これに限定されない。
例えば、永久磁石33において、径方向外側の外周面33aの円弧中心Coは、シャフト31の軸心C1と一致していてもよい。この場合、永久磁石33は、外周面33aと内周面33bとの間における径方向の厚みが周方向全体に亘って均一になる。これに伴い、永久磁石33の径方向外側の外周面33aとティース22の内周面との間の隙間は、周方向全体に亘って一定になる。
【0056】
上述した実施形態では、突極35の先端面35aには、凹部38が形成されているとしたが、これに限定されず、凹部38は省略されてもよい。
【0057】
上述の実施形態では、永久磁石33は、第1領域R1の全体の磁化配向が第1直線L1と平行な方向となるパラレル配向である場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではい。第1領域R1の磁化配向は、パラレル配向に代わって、径方向に沿う方向となるラジアル配向、永久磁石33の外周面33aにおける周方向中央部33cに向かうように逆ラジアル配向、極異方性配向など、さまざまな磁化配向を採用することができる。第1領域R1の全体が同一の磁化配向でなくてもよい。
【0058】
上述の実施形態では、永久磁石33は、第2領域R2の全体の磁化配向が径方向に沿う方向となるラジアル配向である場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、第2領域R2の少なくとも一部がラジアル配向であればよい。第2領域R2のラジアル配向以外の箇所は、第1領域R1の配向と同一にすればよい。但し、第2領域R2の一部のみをラジアル配向とした場合、第2領域R2の全体をラジアル配向とする場合と比較して若干減磁する可能性がある。
【符号の説明】
【0059】
1…ブラシレスワイパーモータ、2…モータ部(モータ)、3…減速部、4…コントローラ部、5…モータケース、6…第1モータケース、6a,7a…開口部、7…第2モータケース、8…ステータ、9…ロータ、10…底部、10a…貫通孔、11…コネクタ、16…外フランジ部、17…外フランジ部、19…スロット、20…ステータコア、21…コア部、22…ティース、22a…ティース本体、22b…鍔部、23…インシュレータ、24…コイル、31…シャフト、32…ロータコア、32a…貫通孔、32b…外周面、32c…丸面取り部、33…永久磁石(磁石)、33a…外周面、33b…内周面、33c…周方向中央部、33d…周方向側面(磁石側対向面)、33f…円弧面、33s…端部、35…突極、35a…先端面、35b…丸面取り部、35c…側面(突極側対向面)、36…磁石収納部、38…凹部、40…ギアケース、40a,43…開口部、40b…側壁、40c…底壁、41…ウォーム減速機構、42…ギア収容部、44…ウォーム軸、45…ウォームホイール、46,47…軸受、48…出力軸、48a…スプライン、49…軸受ボス、52…リブ、56…コントローラ収容部、60…回転位置検出部、61…磁気検出素子、62…コントローラ基板、63…カバー、70…マグネットカバー、81…嵌合部、81a…壁、81b…壁、83…ラビリンス部、C1…軸心(回転軸線)、C2…交点、L1…第1直線、L2…第2直線、Lh…補直線、Lk…曲線、R1…第1領域、R2…第2領域、PM…パラレル配向、RM…ラジアル配向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7