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特許7462544窒化物半導体、ウェーハ、半導体装置及び窒化物半導体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】窒化物半導体、ウェーハ、半導体装置及び窒化物半導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20240329BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20240329BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20240329BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240329BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240329BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20240329BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/78 301B
H01L21/20
H01L21/205
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020205601
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022092728
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 年輝
(72)【発明者】
【氏名】名古 肇
(72)【発明者】
【氏名】田島 純平
(72)【発明者】
【氏名】布上 真也
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-070091(JP,A)
【文献】特開2020-098939(JP,A)
【文献】特開2013-026321(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0020581(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102891174(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/338
H01L 21/336
H01L 21/20
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Alx1Ga1-x1N(0<x1≦1)を含む第1窒化物領域と、
Alx2Ga1-x2N(0<x2<1、x2<x1)を含み炭素を含む第2窒化物領域と、
第3窒化物領域であって、前記第1窒化物領域と前記第3窒化物領域との間に前記第2窒化物領域があり、前記第3窒化物領域は、Al、Ga及びNを含み、前記第3窒化物領域は、炭素を含まない、または、前記第3窒化物領域における第3炭素濃度は、前記第2窒化物領域における第2炭素濃度よりも低い、前記第3窒化物領域と、
を含む窒化物部材を備え
前記第2炭素濃度は、1×10 19 /cm 以上8×10 19 /cm 以下である、窒化物半導体。
【請求項2】
前記第2窒化物領域は酸素を含まない、または、
前記第2窒化物領域における第2酸素濃度は、前記第3窒化物領域における第3酸素濃度よりも低い、請求項1に記載の窒化物半導体。
【請求項3】
前記第2酸素濃度は、4×1016/cm以下である、請求項2に記載の窒化物半導体。
【請求項4】
前記x2は、0.08以上、0.28以下である、請求項1~のいずれか1つに記載の窒化物半導体。
【請求項5】
前記第3窒化物領域におけるAl組成比は、前記第2窒化物領域におけるAl組成比よりも高く、前記第1窒化物領域におけるAl組成比よりも低い、請求項1~のいずれか1つに記載の窒化物半導体。
【請求項6】
Alx1Ga1-x1N(0<x1≦1)を含む第1窒化物領域と、
Alx2Ga1-x2N(0<x2<1、x2<x1)を含み炭素を含む第2窒化物領域と、
第3窒化物領域であって、前記第1窒化物領域と前記第3窒化物領域との間に前記第2窒化物領域があり、前記第3窒化物領域は、Al、Ga及びNを含み、前記第3窒化物領域は、炭素を含まない、または、前記第3窒化物領域における第3炭素濃度は、前記第2窒化物領域における第2炭素濃度よりも低い、前記第3窒化物領域と、
を含む窒化物部材を備え
前記第3窒化物領域におけるAl組成比は、前記第2窒化物領域におけるAl組成比よりも高く、前記第1窒化物領域におけるAl組成比よりも低い、窒化物半導体。
【請求項7】
前記第3窒化物領域における前記Al組成比は、0.18以上、0.38以下である、請求項5または記載の窒化物半導体。
【請求項8】
Al x1 Ga 1-x1 N(0<x1≦1)を含む第1窒化物領域と、
Al x2 Ga 1-x2 N(0<x2<1、x2<x1)を含み炭素を含む第2窒化物領域と、
第3窒化物領域であって、前記第1窒化物領域と前記第3窒化物領域との間に前記第2窒化物領域があり、前記第3窒化物領域は、炭素を含まない、または、前記第3窒化物領域における第3炭素濃度は、前記第2窒化物領域における第2炭素濃度よりも低い、前記第3窒化物領域と、
を含む窒化物部材を備え、
前記第3窒化物領域は、複数の第1領域と、複数の第2領域と、含み、
前記第1窒化物領域から前記第2窒化物領域への第1方向において、前記複数の第1領域の1つは、前記複数の第2領域の1つと前記複数の第2領域の別の1つとの間にあり、前記複数の第2領域の前記1つは、前記複数の第1領域の前記1つと、前記複数の第1領域の別の1つとの間にあり、
前記第1領域は、Aly1Ga1-y1N(0<y1≦1)を含み、
前記第2領域は、Aly2Ga1-y2N(0≦y2<y1)を含む、窒化物半導体。
【請求項9】
前記y2は、前記x2よりも高い、請求項8記載の窒化物半導体。
【請求項10】
前記y1は、前記x1以下である、請求項8または9に記載の窒化物半導体。
【請求項11】
前記複数の第1領域のそれぞれの前記第1方向に沿う第1領域厚さは、前記第2窒化物領域の前記第1方向に沿う第2窒化物領域厚さよりも薄く、
前記複数の第2領域のそれぞれの前記第1方向に沿う第2領域厚さは、前記第2窒化物領域厚さよりも薄い、請求項8~10のいずれか1つに記載の窒化物半導体。
【請求項12】
前記複数の第1領域のそれぞれの前記第1方向に沿う第1領域厚さは、前記第1窒化物領域の前記第1方向に沿う第1窒化物領域厚さよりも薄く、
前記複数の第2領域のそれぞれの前記第1方向に沿う第2領域厚さは、前記第1窒化物領域厚さよりも薄い、請求項8~10のいずれか1つに記載の窒化物半導体。
【請求項13】
前記複数の第1領域のそれぞれは、前記第1方向に沿う第1領域厚さt1を有し、
前記複数の第2領域のそれぞれは、前記第1方向に沿う第2領域厚さt2を有し、
前記x2、前記t1、前記t2、前記y1及び前記y2は、
x2<{(y1・t1+y2・t2)/(t1+t2)}
を満たす、請求項8~10のいずれか1つに記載の窒化物半導体。
【請求項14】
前記複数の第1領域のそれぞれは、前記第1方向に沿う第1領域厚さt1を有し、
前記複数の第2領域のそれぞれは、前記第1方向に沿う第2領域厚さt2を有し、
前記x1、前記t1、前記t2、前記y1及び前記y2は、
{(y1・t1+y2・t2)/(t1+t2)}<x1
を満たす、請求項13記載の窒化物半導体。
【請求項15】
基板をさらに備え、
前記基板と前記第3窒化物領域との間に前記第1窒化物領域がある、請求項1~14のいずれか1つに記載の窒化物半導体。
【請求項16】
前記窒化物部材は、
Alx4Ga1-x4N(0≦x4<1)を含む第4窒化物領域と、
Alx5Ga1-x5N(0<x5≦1、x4<x5)を含む第5窒化物領域と、
をさらに含み、
前記第3窒化物領域は、前記第1窒化物領域と前記第5窒化物領域との間にあり、
前記第4窒化物領域は、前記第3窒化物領域と前記第5窒化物領域との間にある、
請求項1~1のいずれか1つに記載の窒化物半導体。
【請求項17】
前記第4窒化物領域は、第1膜領域及び第2膜領域を含み、
前記第1膜領域は、前記第3窒化物領域と前記第2膜領域との間にあり、
前記第1膜領域は、炭素を含み、
前記第2膜領域は、炭素を含まない、または、前記第2膜領域における炭素濃度は、前記第1膜領域における炭素濃度よりも低い、請求項16記載の窒化物半導体。
【請求項18】
請求項1~1のいずれか1つに記載の窒化物半導体と、
基板と、
を備え、
前記基板と前記第3窒化物領域との間に前記第1窒化物領域がある、ウェーハ。
【請求項19】
請求項1~7のいずれか1つに記載の窒化物半導体と、
第1電極と、
第2電極と、
第3電極と、
絶縁部材と、
を備え、
前記窒化物部材は、
Al x4 Ga 1-x4 N(0≦x4<1)を含む第4窒化物領域と、
Al x5 Ga 1-x5 N(0<x5≦1、x4<x5)を含む第5窒化物領域と、
をさらに含み、
前記第3窒化物領域は、前記第1窒化物領域と前記第5窒化物領域との間にあり、
前記第4窒化物領域は、前記第3窒化物領域と前記第5窒化物領域との間にあり、
前記第1電極から前記第2電極への方向は、前記第1窒化物領域から前記第2窒化物領域への第1方向と交差する第2方向に沿い、
前記第3電極の前記第2方向における位置は、前記第1電極の前記第2方向における位置と、前記第2電極の前記第2方向における位置と、の間にあり、
前記第4窒化物領域は、第1部分領域、第2部分領域、第3部分領域、第4部分領域、及び、第5部分領域を含み、
前記第1部分領域から前記第1電極への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第2部分領域から前記第2電極への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第3部分領域は、前記第2方向において前記第1部分領域と前記第2部分領域との間にあり、前記第3部分領域から前記第3電極への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第4部分領域は、前記第2方向において前記第1部分領域と前記第3部分領域との間にあり、
前記第5部分領域は、前記第2方向において前記第3部分領域と前記第2部分領域との間にあり、
前記第5窒化物領域は、第6部分領域及び第7部分領域を含み、
前記第4部分領域から前記第6部分領域への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第5部分領域から前記第7部分領域への方向は、前記第1方向に沿い、
前記絶縁部材は、前記窒化物部材と前記第3電極との間にある、半導体装置。
【請求項20】
請求項8~14のいずれか1つに記載の窒化物半導体と、
第1電極と、
第2電極と、
第3電極と、
絶縁部材と、
を備え、
前記窒化物部材は、
Al x4 Ga 1-x4 N(0≦x4<1)を含む第4窒化物領域と、
Al x5 Ga 1-x5 N(0<x5≦1、x4<x5)を含む第5窒化物領域と、
をさらに含み、
前記第3窒化物領域は、前記第1窒化物領域と前記第5窒化物領域との間にあり、
前記第4窒化物領域は、前記第3窒化物領域と前記第5窒化物領域との間にあり、
前記第1電極から前記第2電極への方向は、前記第1方向と交差する第2方向に沿い、
前記第3電極の前記第2方向における位置は、前記第1電極の前記第2方向における位置と、前記第2電極の前記第2方向における位置と、の間にあり、
前記第4窒化物領域は、第1部分領域、第2部分領域、第3部分領域、第4部分領域、及び、第5部分領域を含み、
前記第1部分領域から前記第1電極への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第2部分領域から前記第2電極への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第3部分領域は、前記第2方向において前記第1部分領域と前記第2部分領域との間にあり、前記第3部分領域から前記第3電極への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第4部分領域は、前記第2方向において前記第1部分領域と前記第3部分領域との間にあり、
前記第5部分領域は、前記第2方向において前記第3部分領域と前記第2部分領域との間にあり、
前記第5窒化物領域は、第6部分領域及び第7部分領域を含み、
前記第4部分領域から前記第6部分領域への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第5部分領域から前記第7部分領域への方向は、前記第1方向に沿い、
前記絶縁部材は、前記窒化物部材と前記第3電極との間にある、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、窒化物半導体、ウェーハ、半導体装置及び窒化物半導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、窒化物半導体に基づく半導体装置において、特性の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-069983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、特性の向上が可能な窒化物半導体、ウェーハ、半導体装置及び窒化物半導体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、窒化物半導体は、窒化物部材を含む。前記窒化物部材は、Alx1Ga1-x1N(0<x1≦1)を含む第1窒化物領域と、Alx2Ga1-x2N(0<x2<1、x2<x1)を含み炭素を含む第2窒化物領域と、第3窒化物領域と、を含む。前記第1窒化物領域と前記第3窒化物領域との間に前記第2窒化物領域がある。前記第3窒化物領域は、Al、Ga及びNを含む。前記第3窒化物領域は、炭素を含まない。または、前記第3窒化物領域における第3炭素濃度は、前記第2窒化物領域における第2炭素濃度よりも低い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態に係る窒化物半導体を例示する模式的断面図である。
図2図2は、窒化物半導体の特性を例示するグラフ図である。
図3図3は、窒化物半導体の特性を例示するグラフ図である。
図4図4は、第1実施形態に係る窒化物半導体を例示する模式的断面図である。
図5図5は、第1実施形態に係る窒化物半導体を例示するグラフ図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、第1実施形態に係る窒化物半導体を例示するグラフ図である。
図7図7は、第1実施形態に係る窒化物半導体を例示する模式図である。
図8図8は、窒化物半導体の特性を例示するグラフ図である。
図9図9は、第3実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図10図10は、第3実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図11図11は、第4実施形態に係る窒化物半導体の製造方法を例示するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る窒化物半導体を例示する模式的断面図である。
図1に示すように、実施形態に係る窒化物半導体110は、窒化物部材10Mを含む。窒化物部材10Mは、第1窒化物領域11、第2窒化物領域12及び第3窒化物領域13を含む。窒化物部材10Mは、第4窒化物領域14及び第5窒化物領域15を含んでも良い。第4窒化物領域14及び第5窒化物領域15は、機能領域に対応する。第4窒化物領域14及び第5窒化物領域15は必要に応じて設けられ、省略されても良い。窒化物半導体110は、基板18sを含んでも良い。
【0009】
第1窒化物領域11は、Alx1Ga1-x1N(0<x1≦1)を含む。第1窒化物領域11におけるAlの組成比x1は、例えば、0.35以上1以下である。1つの例において、第1窒化物領域11は、AlNを含む。第1窒化物領域11は、例えば、Alの組成比が異なる複数のAlGaN膜を含んでも良い。第1窒化物領域11は、例えば、AlN膜とAl0.35Ga0.65N膜とを含んでも良い。
【0010】
第2窒化物領域12は、Alx2Ga1-x2N(0<x2<1、x2<x1)を含み炭素を含む。第2窒化物領域12におけるAlの組成比x2は、例えば、0.08以上、0.28以下である。第2窒化物領域12は、例えば、AlGaN(例えば、Al0.15Ga0.85N)である。
【0011】
第1窒化物領域11と第3窒化物領域13との間に第2窒化物領域12がある。第3窒化物領域13は、Al、Ga及びNを含む。後述するように、第3窒化物領域13は、例えば、Al組成比が互いに異なる積層膜を含んでも良い。第3窒化物領域13は、炭素を含まない。または、第3窒化物領域13における炭素の濃度(第3炭素濃度)は、第2窒化物領域12における炭素の濃度(第2炭素濃度)よりも低い。
【0012】
第1窒化物領域11から第2窒化物領域12への方向を第1方向とする。第1方向は、例えば、積層方向に対応する。第1方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。例えば、第1~第3窒化物領域11~13は、X-Y平面に実質的に平行に広がる層状である。例えば、第1~第3窒化物領域11~13は、X-Y平面に実質的に平行に広がる膜である。
【0013】
基板18sが設けられる場合、基板18sと第3窒化物領域13との間に第1窒化物領域11がある。基板は、例えば、シリコンを含む。基板18sは、シリコン、サファイア、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、及び、窒化ガリウム(GaN)よりなる群から選択された少なくとも1つを含んでも良い。基板18sは、例えば、シリコン基板である。
【0014】
実施形態に係るウェーハ210は、実施形態に係る窒化物半導体110と、基板18sと、を含む。ウェーハ210において、基板18sと第3窒化物領域13との間に第1窒化物領域11がある。
【0015】
既に説明したように、窒化物部材10Mは、第4窒化物領域14及び第5窒化物領域15を含んでも良い。第4窒化物領域14は、Alx4Ga1-x4N(0≦x4<1)を含む。第4窒化物領域14におけるAlの組成比x4は、例えば、0以上0.5以下である。第4窒化物領域14は、例えば、GaNを含む。第4窒化物領域14におけるAlの組成比x4は、第3窒化物領域13におけるAlの組成比よりも低い。
【0016】
図1に示すように、第4窒化物領域14は、第1膜領域14a及び第2膜領域14bを含んでも良い。第1膜領域14aは、第3窒化物領域13と第2膜領域14bとの間にある。第1膜領域14aは、炭素を含む。第2膜領域14bは、炭素を含まない。または、第2膜領域14bにおける炭素濃度は、第1膜領域14aにおける炭素濃度よりも低い。炭素を含む第1膜領域14aが設けられることにより、例えば、低い転位密度が得易くなる。炭素濃度が低い第2膜領域14bにより、例えば、高い電子移動度が得易い。
【0017】
第5窒化物領域15は、Alx5Ga1-x5N(0<x5≦1、x4<x5)を含む。第5窒化物領域15におけるAlの組成比x5は、例えば、0.05以上0.35以下である。第5窒化物領域15は、例えば、AlGaNである。第3窒化物領域13は、第1窒化物領域11と第5窒化物領域15との間にある。第4窒化物領域14は、第3窒化物領域13と第5窒化物領域15との間にある。
【0018】
例えば、第4窒化物領域14の第5窒化物領域15に対向する部分にキャリア領域が形成される。キャリア領域は、例えば、2次元電子ガスである。窒化物半導体110に基づく半導体装置において、キャリア領域が半導体装置の動作に用いられる。
【0019】
実施形態においては、上記のように、炭素を含む第2窒化物領域12が設けられる。これにより、例えば、窒化物部材10Mにおいて、低い転位密度が得られる。これは、炭素を含む第2窒化物領域12において、転位の方向が曲がり、第2窒化物領域12よりも上に延びる転位が減少することが原因であると考えられる。第2窒化物領域12における炭素濃度が第3窒化物領域13における炭素濃度よりも高いことで、例えば、第3窒化物領域13に加わる歪みが大きくなる。これにより、転位密度が低減する。
【0020】
窒化物部材10Mは、例えば、III族元素(AlまたはGa)を含む原料ガスと、V族元素(N)を含む原料ガスと、を用いて、例えば、MOCVD(metal organic chemical vapor deposition)などにより形成される。第2窒化物領域12の形成において、例えば、処理条件によって、原料ガスに含まれる炭素が窒化物の中に取り込まれやすくなる。これにより、第2窒化物領域12における炭素の濃度を高くできる。処理条件によって、第2窒化物領域12における炭素の濃度を制御できる。
【0021】
図2は、窒化物半導体の特性を例示するグラフ図である。
図2の横軸は、第2窒化物領域12における炭素の濃度(第2炭素濃度CC2)である。縦軸は、第4窒化物領域14における転位密度DDである。図2の例において、第3窒化物領域13における炭素の濃度(第3炭素濃度)は、約5×1018/cmである。
【0022】
図2に示すように、第2炭素濃度CC2が第3炭素濃度よりも高い8×1018/cm以上において、転位密度DDが低くなる。これは、第2窒化物領域12において、転位の伝搬方向が曲がりやすくなることが原因であると考えられる。第2窒化物領域12において、炭素濃度が高いと、第2窒化物領域12の横方向成長が促進される。その結果、転位が曲がり、転位密度DDが低くなると考えられる。
【0023】
図2に示すように、第2炭素濃度CC2が過度に高いと、転位密度DDが高くなる。過度に炭素が高くなることで、結晶格子間への炭素の混入が生じ、結晶の品質が低くなることが原因であると考えられる。
【0024】
実施形態において、例えば、第2炭素濃度CC2は、1×1019/cm以上であることが好ましい。例えば、第2炭素濃度CC2は、例えば、8×1019/cm以下であることが好ましい。低い転位密度DDが得られる。特性の向上が可能な窒化物半導体を提供できる。
【0025】
例えば、第2窒化物領域12の形成において、例えば、処理条件によって、原料ガスに含まれる酸素が窒化物の中に取り込まれにくくなる。これにより、第2窒化物領域12に含まれる酸素の濃度を低くできる。処理条件によって、第2窒化物領域12に含まれる酸素の濃度を制御できる。酸素は、例えば、原料ガスに含まれても良い。酸素を含むガスが、上記の原料ガスとは別に供給されても良い。
【0026】
図3は、窒化物半導体の特性を例示するグラフ図である。
図3の横軸は、第2窒化物領域12における酸素の濃度(第2酸素濃度CO2)である。縦軸は、転位密度DDである。図3の例において、第3窒化物領域13における酸素の濃度(第3酸素濃度)は、6×1016/cmである。
【0027】
図3に示すように、第2酸素濃度CO2が、第3酸素濃度よりも低い4×1016/cm以下において、転位密度DDが低くなる。これは、第2窒化物領域12において、格子緩和が低減されることが原因であると考えられる。酸素濃度が低いと、第2窒化物領域12において格子緩和が低減される。その結果、転位密度が低減すると考えられる。酸素濃度が低いと、第3窒化物領域13に加わる歪みが大きくなる。第2窒化物領域12における酸素素濃度が第3窒化物領域13における酸素濃度よりも低いことで、例えば、第3窒化物領域13に加わる歪みが大きくなる。これにより、転位密度が低減する。
【0028】
実施形態において、例えば、第2酸素濃度CO2は、4×1016/cm以下であることが好ましい。第2酸素濃度CO2は、3×1014/cm以上でも良い。第2酸素濃度CO2が過度に低くなくて良い。
【0029】
このように、第2窒化物領域12は、酸素を含まないことが好ましい。または、第2窒化物領域12における酸素濃度CO(第2酸素濃度)は、第3窒化物領域13における酸素濃度CO(第3酸素濃度)よりも低いことが好ましい。特性の向上が可能な窒化物半導体を提供できる。
【0030】
例えば、第3窒化物領域13におけるAl組成比は、第2窒化物領域12におけるAl組成比(組成比x2)よりも高く、第1窒化物領域11におけるAl組成比(組成比x)よりも低いことが好ましい。組成比は、それぞれの窒化物領域における平均の組成比で良い。このような組成比の関係により、適正な応力または歪みが生じ易くなり、低い転位密度DDが易くなる。
【0031】
第3窒化物領域13におけるAl組成比は、0.18以上、0.38以下であることが好ましい。このような組成比において、適正な応力または歪みが生じ易くなり、低い転位密度DDが得易い。
【0032】
実施形態において、第2窒化物領域12におけるAl組成比(組成比x2)は、例えば、0.08以上、0.28以下であることが好ましい。このような組成比x2において、適正な応力または歪みが生じ易くなり、低い転位密度DDが得易い。
【0033】
図1に示すように、第1窒化物領域11は、第1方向(Z軸方向)に沿う厚さ(第1窒化物領域厚さtr1)を有する。第1窒化物領域厚さtr1は、例えば、10nm以上1500nm以下である。1つの例において、第1窒化物領域厚さtr1は、約150nmである。
【0034】
図1に示すように、第2窒化物領域12は、第1方向に沿う厚さ(第2窒化物領域厚さtr2)を有する。第2窒化物領域厚さtr2は、例えば、50nm以上2000nm以下である。1つの例において、第2窒化物領域厚さtr2は、約200nmである。
【0035】
図1に示すように、第3窒化物領域13は、第1方向に沿う厚さ(第3窒化物領域厚さtr3)を有する。第3窒化物領域厚さtr3は、例えば、100nm以上7000nm以下である。1つの例において、第3窒化物領域厚さtr3は、約3000nmである。
【0036】
図4は、第1実施形態に係る窒化物半導体を例示する模式的断面図である。
図4に示すように、実施形態に係る窒化物半導体111及びウェーハ211において、第3窒化物領域13は、積層構造を有する。
【0037】
例えば、第3窒化物領域13は、複数の第1領域13aと、複数の第2領域13bと、含む。第1窒化物領域11から第2窒化物領域12への第1方向(Z軸方向)において、複数の第1領域13aの1つは、複数の第2領域13bの1つと、複数の第2領域13bの別の1つとの間にある。複数の第2領域13bの上記の1つは、複数の第1領域13aの上記の1つと、複数の第1領域13aの別の1つとの間にある。例えば、第1領域13aと第2領域13bとが、Z軸方向に沿って、交互に設けられる。
【0038】
第1領域13aは、Aly1Ga1-y1N(0<y1≦1)を含む。第2領域13bは、Aly2Ga1-y2N(0≦y2<y1)を含む。
【0039】
第1領域13aにおけるAl組成比(組成比y1)は、例えば、0.75以上1以下である。1つの例において、第1領域13aは、AlNである。
【0040】
第2領域13bにおけるAl組成比(組成比y2)は、例えば、0.06以上0.3以下である。1つの例において、第2領域13bは、Al0.13Ga0.87Nである。
【0041】
1つの例において、組成比y1は、組成比x1以下である。1つの例において、組成比y2は、組成比x2よりも高い。
【0042】
例えば、複数の第1領域13aの1つが第2窒化物領域12と接しても良い。例えば、複数の第2領域13bの1つが第2窒化物領域12と接しても良い。例えば、複数の第1領域13aの1つが第4窒化物領域14と接しても良い。例えば、複数の第2領域13bの1つが第4窒化物領域14と接しても良い。複数の第1領域13aと、複数の第2領域13bと、は、例えば、超格子構造を形成しても良い。複数の第1領域13aの数と、複数の第2領域13bの数と、の差の絶対値は、0でも良く1でも良い。複数の第1領域13aの数は、例えば、10以上200以下である。
【0043】
複数の第1領域13aのそれぞれは、第1方向(Z軸方向)に沿う第1領域厚さt1を有する。例えば、第1領域厚さt1は、第2窒化物領域12の第1方向に沿う第2窒化物領域厚さtr2よりも薄い。複数の第2領域13bのそれぞれは、第1方向に沿う第2領域厚さt2を有する。例えば、第2領域厚さt2は、第2窒化物領域厚さtr2よりも薄い。例えば、第1領域厚さt1は、第2領域厚さt2よりも薄い。
【0044】
例えば、複数の第1領域13aのそれぞれの第1方向に沿う第1領域厚さt1は、第1窒化物領域11の第1方向に沿う第1窒化物領域厚さtr1よりも薄い。複数の第2領域13bのそれぞれの第1方向に沿う第2領域厚さt2は、第1窒化物領域厚さtr1よりも薄い。
【0045】
第1領域厚さt1は、例えば、3nm以上10nm以下である。1つの例において、第1領域厚さt1は、5nmである。第2領域厚さt2は、例えば、15nm以上40nm以下である。1つの例において、第2領域厚さt2は、25nmである。
【0046】
このような構造を有する第3窒化物領域13において、例えば、第1領域13aと第2領域13bとの間の界面において、転位が曲がりやすくなる。より低い転位密度DDが得易い。Alの組成比が異なる複数の領域が設けられることで、例えば高い耐圧が得易くなる。
【0047】
複数の第1領域13aと、複数の第2領域13bと、を含む第3窒化物領域13における実効的なAl組成比za3は、以下により得られる。既に説明したように、複数の第1領域13aのそれぞれは、第1方向に沿う第1領域厚さt1を有する。複数の第2領域13bのそれぞれは、第1方向に沿う第2領域厚さt2を有する。第1領域厚さt1、第2領域厚さt2、組成比y1、及び、組成比y2を用いて、第3窒化物領域13における実効的なAl組成比za3は、
za3=(y1・t1+y2・t2)/(t1+t2)
で表される。
【0048】
実効的なAl組成比za3は、複数の第1領域13aと、複数の第2領域13bと、を含む第3窒化物領域13における平均のAl組成比とみなすことができる。
【0049】
実施形態において、第3窒化物領域13における実効的なAl組成比za3は、第2窒化物領域12におけるAl組成比(組成比x2)よりも高いことが好ましい。例えば、組成比x2、第1領域厚さt1、第2領域厚さt2、組成比y1、及び、組成比y2は、
x2<{(y1・t1+y2・t2)/(t1+t2)}
を満たすことが好ましい。
【0050】
実施形態において、第3窒化物領域13における実効的なAl組成比za3は、第1窒化物領域11におけるAl組成比(組成比x1)よりも低いことが好ましい。例えば、組成比x2、第1領域厚さt1、第2領域厚さt2、組成比y1、及び、組成比y2は、
{(y1・t1+y2・t2)/(t1+t2)}<x1
を満たすことが好ましい。
【0051】
図5は、第1実施形態に係る窒化物半導体を例示するグラフ図である。
図5の横軸は、Al組成比C(Al)である。縦軸は、Z軸方向における位置pZである。図5に示すように、第3窒化物領域13における実効的なAl組成比za3は、組成比y1と組成比y2と間にある。例えば、Al組成比za3は、組成比x2よりも高い。これにより、低い転位密度DDが得易い。例えば、Al組成比za3は、組成比x1よりも低い。これにより、低い転位密度DDが得易い。第3窒化物領域13における実効的なAl組成比za3は、例えば、0.18以上0.28以下であることが好ましい。低い転位密度DDが得易い。
【0052】
図6(a)及び図6(b)は、第1実施形態に係る窒化物半導体を例示するグラフ図である。
これらの図は、窒化物半導体111のSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)分析結果を例示している。これらの図において、横軸は、Z軸方向における位置pZである。図6(a)の縦軸は、炭素濃度CCまたは酸素濃度COである。図6(b)の縦軸は、Alの2次イオン強度Int_Alである。
【0053】
図6(b)に示すように、Al組成比が互いに異なる第1領域13a及び第2領域13bが第3窒化物領域13に設けられる場合においても、分析条件によっては、第3窒化物領域13におけるAlの2次イオン強度Int_Alが実質的に一定であるように観測されても良い。
【0054】
図6(a)に示すように、第2窒化物領域12における炭素濃度CCは、第3窒化物領域13における炭素濃度CCよりも高い。図6(a)に示すように、第2窒化物領域12における酸素濃度COは、第3窒化物領域13における酸素濃度COよりも低い。このような構成により、低い転位密度が得易い。
【0055】
例えば、第2窒化物領域12における炭素濃度CCは、第1窒化物領域11における炭素濃度CCよりも高い。第2窒化物領域12における酸素濃度COは、第1窒化物領域11における酸素濃度COよりも低い。
【0056】
第2窒化物領域12における炭素濃度CCは、例えば、1×1019/cm以上8×1019/cm以下(例えば約3.9×1019/cm)である。第2窒化物領域12における酸素濃度COは、例えば、0.4×1016/cm以上4×1016/cm未満(例えば約1.4×1016/cm)である。
【0057】
第3窒化物領域13における炭素濃度CCは、例えば、1×1019/cm以上2×1019/cm未満(約1.5×1019/cm)である。第3窒化物領域13における酸素濃度COは、例えば、3×1016/cm以上5×1016/cm以下(例えば約3.9×1016/cm)である。
【0058】
このように、第2窒化物領域12における炭素濃度CCは、第3窒化物領域13における炭素濃度CCよりも高い。例えば、第2窒化物領域12における酸素濃度COは、第3窒化物領域13における酸素濃度COよりも低い。
【0059】
図7は、第1実施形態に係る窒化物半導体を例示する模式図である。
図7は、窒化物半導体111の(20-24)非対称反射における逆格子空間マッピング図である。図7の横軸は、<20-20>方向の格子定数の逆数Qxである。縦軸は、<0004>方向の格子定数の逆数Qzである。逆数Qzが大きいことは、Al組成比が高いことに対応する。
【0060】
図7に示すように、第2窒化物領域12におけるAl組成比(組成比x2)は、第3窒化物領域13における実効的なAl組成比(組成比za3)よりも低い。
【0061】
図8は、窒化物半導体の特性を例示するグラフ図である。
図8の横軸は、第2窒化物領域12におけるAl組成比(組成比x2)である。縦軸は、第4窒化物領域14における転位密度DDである。図8の例において、第3窒化物領域13の第1領域13aにおけるAl組成比(組成比y1)は、1である。第1領域13aの第1領域厚さt1は、5nmである。第3窒化物領域13の第2領域13bにおけるAl組成比(組成比y2)は、0.13である。第2領域13bの第2領域厚さt2は、25nmである。複数の第1領域13aの数は、101である。複数の第2領域13bの数は、100である。第3窒化物領域13における実効的なAl組成比za3は、0.275である。
【0062】
図8に示すように、組成比x2がAl組成比za3よりも低いと、転位密度DDが低くなる。組成比x2がAl組成比za3以下であることで、第3窒化物領域13に加わる歪みが引張歪みとなる。第2窒化物領域12と第3窒化物領域13との間の界面に近い領域で、転位の屈曲効果が増大される。これにより、転位が低減されると考えられる。
【0063】
図8に示すように、組成比x2が組成比y2よりも低いと、さらに低い転位密度DDが得られる。組成比x2が組成比y2よりも低いことで、第2領域13bに効果的に引張歪みが導入される。第1領域13aと第2領域13bとの間の界面において、転位の屈曲効果が得られると考えられる。
【0064】
(第2実施形態)
第2実施形態は、ウェーハに係る。実施形態に係るウェーハ(ウェーハ210またはウェーハ211)は、第1実施形態に係る窒化物半導体(窒化物半導体110または窒化物半導体111)の少なくとも一部と、基板18sと、を含む(図1または図4参照)。基板18sと第3窒化物領域13との間に第1窒化物領域11がある。実施形態によれば、特性の向上が可能なウェーハを提供できる。
【0065】
(第3実施形態)
第3実施形態は、半導体装置に係る。
図9は、第3実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図9に示すように、実施形態に係る半導体装置120は、第1実施形態に係る窒化物半導体(この例では、窒化物半導体110)と、第1電極51と、第2電極52と、第3電極53と、絶縁部材61と、を含む。
【0066】
第1電極51から第2電極52への方向は、第1方向(Z軸方向)と交差する第2方向に沿う。第2方向は、例えばX軸方向である。第3電極53の第2方向における位置は、第1電極51の第2方向における位置と、第2電極52の第2方向における位置と、の間にある。
【0067】
窒化物部材10Mは、第1~第5窒化物領域11~15を含む。第4窒化物領域14は、第1部分領域10a、第2部分領域10b、第3部分領域10c、第4部分領域10d、及び、第5部分領域10eを含む。第1部分領域10aから第1電極51への方向は、第1方向(Z軸方向)に沿う。第2部分領域10bから第2電極52への方向は、第1方向に沿う。第3部分領域10cは、第2方向(X軸方向)において第1部分領域10aと第2部分領域10bとの間にある。第3部分領域10cから第3電極53への方向は、第1方向に沿う。第4部分領域10dは、第2方向において第1部分領域10aと第3部分領域10との間にある。第5部分領域10eは、第2方向において第3部分領域10cと第2部分領域10bとの間にある。
【0068】
第5窒化物領域15は、第6部分領域15f及び第7部分領域15gを含む。第4部分領域10dから第6部分領域15fへの方向は、第1方向(Z軸方向)に沿う。第5部分領域10eから第7部分領域15gへの方向は、第1方向に沿う。
【0069】
絶縁部材61は、窒化物部材10Mと第3電極53との間にある。例えば、絶縁部材61は、第1絶縁領域61pを含む。第1絶縁領域61pは、第1方向(Z軸方向)において、第3部分領域10cと第3電極53との間に設けられる。
【0070】
半導体装置120は、窒化物半導体111を含んでも良い。半導体装置120において、第1電極51と第2電極52との間に流れる電流は、第3電極53の電位により制御できる。第3電極53の電位は、例えば、第1電極51の電位を基準にした電位である。第1電極51は、例えば、ソース電極として機能する。第2電極52は、例えば、ドレイン電極として機能する。第3電極53は、例えば、ゲート電極として機能する。1つの例において、半導体装置120は、HEMT(High Electron Mobility Transistor)である。実施形態によれば、特性の向上が可能な半導体装置を提供できる。
【0071】
半導体装置120においては、第3電極53の少なくとも一部は、第2方向(例えばX軸方向)において、第6部分領域15fと第7部分領域15gとの間にある。第3電極53の少なくとも一部が、第2方向(例えばX軸方向)において、第4部分領域10dと第5部分領域10eとの間にあっても良い。半導体装置120は、例えば、ノーマリオフ型である。
【0072】
図10は、第3実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図10に示すように、実施形態に係る半導体装置121は、第1実施形態に係る窒化物半導体(この例では、窒化物半導体110)と、第1電極51と、第2電極52と、第3電極53と、絶縁部材61と、を含む。半導体装置121においては、第3電極53は、第2方向(例えばX軸方向)において、第6部分領域15f及び第7部分領域15gと重ならない。第3電極53は、第2方向(例えばX軸方向)において、第4部分領域10d及び第5部分領域10eと重ならない。半導体装置121は、例えば、ノーマリオン型である。
【0073】
(第4実施形態)
第4実施形態は、窒化物半導体の製造方法に係る。第4実施形態に係る窒化物半導体の製造方法は、ウェーハの製造方法、または、半導体装置の製造方法に適用されても良い。
【0074】
図11は、第4実施形態に係る窒化物半導体の製造方法を例示するフローチャート図である。
図11に示すように、実施形態に係る窒化物半導体の製造方法は、第2窒化物領域12を形成すること(ステップS110)と、第3窒化物領域13を形成すること(ステップS120)と、を含む。
【0075】
第2窒化物領域12の形成においては、Alx1Ga1-x1N(0<x1≦1)を含む第1窒化物領域11の上に、Alx2Ga1-x2N(0<x2<1、x2<x1)を含み炭素を含む第2窒化物領域12が形成される。
【0076】
第3窒化物領域13の形成においては、第2窒化物領域12の上に、第3窒化物領域13が形成される。第3窒化物領域13は、Al、Ga及びNを含む。第3窒化物領域13は、炭素を含まない。または、第3窒化物領域13における第3炭素濃度は、第2窒化物領域12における第2炭素濃度よりも低い。
【0077】
第2窒化物領域12における炭素の濃度は、例えば、第2窒化物領域12の形成において使用される原料ガスの供給量と、成長温度と、の少なくともいずれかにより制御できる。原料ガスは、例えば、TMAl(トリメチルアルミニウム)及びTMGa(トリメチルガリウム)などを含む。例えば、原料ガスの供給量を増大させると、第2窒化物領域12における炭素の濃度が上昇する。成長温度を低くすると、第2窒化物領域12における炭素の濃度が上昇する。第3窒化物領域13における炭素の濃度は、例えば、第3窒化物領域13の形成において使用される原料ガスの供給量と、成長温度と、の少なくともいずれかにより制御できる。原料ガスは、例えば、TMAl及びTMGaなどを含む。例えば、原料ガスの供給量を増大させると、第3窒化物領域13における炭素の濃度が上昇する。成長温度を低くすると、第3窒化物領域13における炭素の濃度が上昇する。実施形態によれば、特性の向上が可能な窒化物半導体の製造方法が提供できる。
【0078】
第3窒化物領域13における第3酸素濃度は、第2窒化物領域12における第2酸素濃度よりも高くしてもよい。第2窒化物領域12における酸素の濃度は、例えば、第2窒化物領域12の形成において使用される原料ガスの供給量と、成長温度と、の少なくともいずれかにより制御できる。原料ガスは、例えば、アンモニアなどを含む。例えば、原料ガスの供給量を減少させると、第2窒化物領域12における酸素の濃度が減少する。成長温度を高くすると、第2窒化物領域12における酸素の濃度が減少する。第3窒化物領域13における酸素の濃度は、例えば、第3窒化物領域13の形成において使用される原料ガスの供給量と、成長温度と、の少なくともいずれかにより制御できる。原料ガスは、例えば、アンモニアなどを含む。例えば、原料ガスの供給量を減少させると、第3窒化物領域13における酸素の濃度が減少する。成長温度を高くすると、第3窒化物領域13における酸素の濃度が減少する。実施形態によれば、特性の向上が可能な窒化物半導体の製造方法が提供できる。
【0079】
窒化物半導体を用いた半導体装置において、低オン抵抗及び高耐圧が得られる。半導体装置において、結晶内に生じる転位を低減することで、より良好な特性が得られる。実施形態によれば、例えば、転位を低減できる。
【0080】
実施形態において、窒化物領域の形状などに関する情報は、例えば、電子顕微鏡観察などにより得られる。窒化物領域における組成及び元素濃度に関する情報は、例えば、EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)、または、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)などにより得られる。窒化物領域における組成に関する情報は、例えば、逆格子空間マッピングなどによりえられても良い。
【0081】
実施形態によれば、特性の向上が可能な窒化物半導体、ウェーハ、半導体装置及び窒化物半導体の製造方法を提供することができる。
【0082】
本願明細書において、「電気的に接続される状態」は、複数の導電体が物理的に接してこれら複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。「電気的に接続される状態」は、複数の導電体の間に、別の導電体が挿入されて、これらの複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。
【0083】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、窒化物半導体に含まれる、窒化物領域及び基板などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0084】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0085】
その他、本発明の実施の形態として上述した窒化物半導体、ウェーハ、半導体装置及び窒化物半導体の製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての窒化物半導体、ウェーハ、半導体装置及び窒化物半導体の製造方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0086】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと解される。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
10M…窒化物部材、 10a~10e…第1~第5部分領域、 11~15…第1~第5窒化物領域、 13a、13b…第1、第2領域、 14a、14b…第1、第2膜領域、 15f…第6部分領域、 15g…第7部分領域、 18s…基板、 51~53…第1~第3電極、 61…絶縁部材、 61p…第1絶縁領域、 110、111…窒化物半導体、 120…半導体装置、 210、211…ウェーハ、 C(Al)…Al組成比、 CC2…第2炭素濃度、 CO…酸素濃度、 CO2…第2酸素濃度、 DD…転位密度、 Int_Al…2次イオン強度、 Qx…逆数、 Qz…逆数、 pZ…位置、 t1、t2…第1、第2領域厚さ、 tr1~tr3…第1~第3窒化物領域厚さ、 x1、x2、y1、y2…組成比、 za3…組成比
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11