(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】減速装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
F16H1/32 B
(21)【出願番号】P 2020213390
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】田村 光拡
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-060221(JP,A)
【文献】特開2019-178735(JP,A)
【文献】特開2017-044268(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01128094(EP,A1)
【文献】特開2011-089542(JP,A)
【文献】特開2020-133843(JP,A)
【文献】西独国実用新案公開第08015726(DE,U)
【文献】米国特許第04722616(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内歯歯車及び外歯歯車を有する減速機構と、前記減速機構により減速された回転を出力する出力部材と、前記出力部材
の回転に対して固定された固定部材と、前記固定部材および前記出力部材を支持する主軸受と、を備える減速装置であって、
前記主軸受は、板部材により構成される内輪及び外輪を有し、
前記内輪及び前記外輪の少なくとも一方は、
前記固定部材および前記出力部材とは別体で前記固定部材または前記出力部材に連結されており、当該一方は、板部材により構成される延在部を有し、当該延在部が前記減速装置の他の機能部品を構成する減速装置。
【請求項2】
前記延在部は、他の部材の移動を規制する移動規制部品を構成する、
請求項1記載の減速装置。
【請求項3】
前記延在部は、前記外歯歯車の軸方向の移動を規制する、
請求項2記載の減速装置。
【請求項4】
前記減速装置は、前記外歯歯車が撓み変形する撓み噛合い式の減速装置であって、
前記延在部は前記外歯歯車を構成する、
請求項1記載の減速装置。
【請求項5】
前記延在部は、前記外歯歯車の自転成分又は公転成分と同期するピン部材を構成する、
請求項1記載の減速装置。
【請求項6】
前記内輪は、互いに分割された第1内輪部材と第2内輪部材とを有し、
前記第1内輪部材及び前記第2内輪部材の一方が
他方よりも前記主軸受の転走面から軸方向において離れた位置まで延在した前記延在部を有する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の減速装置。
【請求項7】
前記延在部は、前記固定部材および前記出力部材の一方と連結部材により連結され、前記連結部材よりも軸方向における前記転走面の反対側まで延びた前記延在部が、前記減速装置の他の機能部品を構成する、
請求項6記載の減速装置。
【請求項8】
前記主軸受は、単一の軸受により、ラジアル荷重及び両方向のスラスト荷重を受けることができる構成である、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の減速装置。
【請求項9】
前記内輪及び前記外輪は、プレス成形により曲折させた板部材により構成される、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の減速装置。
【請求項10】
前記内輪又は前記外輪は、前記出力部材と連結するための連結部材が螺合するネジ穴を有する、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の減速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内歯歯車及び外歯歯車を有する減速機構と、当該減速機構において減速された回転を出力する出力部材と、出力部材を支持する主軸受とを備える減速装置がある(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の従来の減速装置は、部品点数が多いという課題を有する。本発明は、部品点数の削減を図れる減速装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
内歯歯車及び外歯歯車を有する減速機構と、前記減速機構により減速された回転を出力する出力部材と、前記出力部材の回転に対して固定された固定部材と、前記固定部材および前記出力部材を支持する主軸受と、を備える減速装置であって、
前記主軸受は、板部材により構成される内輪及び外輪を有し、
前記内輪及び前記外輪の少なくとも一方は、前記固定部材および前記出力部材とは別体で前記固定部材または前記出力部材に連結されており、当該一方は、板部材により構成される延在部を有し、当該延在部が前記減速装置の他の機能部品を構成する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る減速装置によれば、部品点数を削減できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態1に係る減速装置を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態2に係る減速装置を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態3に係る減速装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0009】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る減速装置を示す断面図である。本実施形態では、起振体軸10の回転軸O1に沿った方向を軸方向、回転軸O1を中心とする回転方向を周方向、回転軸O1に直交する方向を径方向と呼ぶ。また、軸方向において出力部材24の配置側を出力側、その反対側を反出力側と呼ぶ。
【0010】
減速装置1は、撓み噛合い式歯車装置であり、起振体軸10、起振体軸受11、外歯歯車15、第1内歯歯車21、第2内歯歯車22、出力部材24、カバー部材25、軸受26、27、主軸受28、並びに、ストッパーリング16を備える。
【0011】
起振体軸10は、回転運動を入力する入力軸である。起振体軸10は、回転軸O1を中心に回転する中空筒状の軸であり、回転軸O1に垂直な断面の外形が非円形(例えば楕円状)の起振体10Aと、起振体10Aの軸方向の両側に設けられた軸部10B、10Cとを有する。楕円状は、幾何学的に厳密な楕円である必要はなく、略楕円を含む。軸部10B、10Cは、回転軸O1に垂直な断面の外形が円形の軸である。起振体軸10の素材は特に限定されないが、本実施形態においては、鉄鋼素材等の金属から構成される。
【0012】
外歯歯車15は、可撓性を有する円筒状の部材であり、外周に歯が設けられている。外歯歯車15の素材は特に限定されないが、本実施形態においては、鉄鋼素材等の金属から構成される。
【0013】
第1内歯歯車21は内周の一部に歯が設けられた環状の部材である。第2内歯歯車22は内周に内歯が設けられた環状の部材である。第1内歯歯車21の内歯と第2内歯歯車22の内歯は軸方向に並び、外歯歯車15と噛合う。第1内歯歯車21は外歯歯車15の反出力側の部分と噛合し、第2内歯歯車22は外歯歯車15の出力側の部分と噛合する。第1内歯歯車21および第2内歯歯車22の素材は特に限定されないが、本実施形態においては、樹脂により構成されている。樹脂の種類は特に限定されないが、本実施形態においては、炭素繊維を含有するPEEK(Poly Ether Ether Ketone)材により構成されている。
【0014】
第1内歯歯車21は、さらに、軸方向における一端部と他端部とがそれぞれ反出力側と出力側とに延在した外周部を有する。当該外周部は、外歯歯車15と第1内歯歯車21及び第2内歯歯車22との噛合部を径方向外方から覆うケーシングとして機能する。
【0015】
起振体軸受11は、例えばコロ軸受であり、起振体10Aと外歯歯車15との間に配置される。起振体軸受11は、専用の外輪及び内輪を有さず、外歯歯車15の内周部が起振体軸受11の外輪を兼ね、起振体10Aの外周部が起振体軸受11の内輪を兼ねている。なお、起振体軸受11は、別途、外輪と内輪とを有していてもよい。外歯歯車15は、起振体軸受11を介して起振体10Aに相対的に回転可能に支持される。起振体軸受11の転動体の素材は特に限定されないが、本実施形態においては、鉄鋼素材等の金属から構成される。
【0016】
ストッパーリング16は、外歯歯車15及び起振体軸受11の反出力側に配置され、外歯歯車15及び起振体軸受11が反出力側へ移動することを規制する。ストッパーリング16の素材は特に限定されないが、本実施形態においては、鉄鋼素材等の金属から構成される。
【0017】
主軸受28の内輪28i1は、外歯歯車15及び起振体軸受11の出力側に位置する延在部28eを有する。延在部28eは、外歯歯車15及び起振体軸受11が出力側へ移動することを規制する移動規制部品として機能する。
【0018】
出力部材24は、減速装置1の出力側に位置し、第2内歯歯車22と連結されることで、減速された回転を出力する。出力部材24は、起振体軸10の中空部を塞がないように中央が貫通した環状の構成であってもよい。出力部材24の素材は特に限定されないが、本実施形態においては、樹脂により構成されている。樹脂の種類は特に限定されないが、本実施形態においては、炭素繊維を含有するPOM(Polyoxymethylene, Polyacetal)材により構成されている。
【0019】
起振体10A、起振体軸受11、外歯歯車15、第1内歯歯車21及び第2内歯歯車22は、減速機構を構成する。第1内歯歯車21は、減速装置1を支持する外部の支持部材81に直接又は間接的に連結される。減速機構は、起振体10Aに入力された回転を減速し、減速された回転を第2内歯歯車22に出力する。第2内歯歯車22は出力部材24と共に外部の相手部材82に連結される。第2内歯歯車22及び出力部材24は、減速機構により減速された回転を相手部材82に出力する。
【0020】
カバー部材25は、減速装置1の反出力側に位置し、外歯歯車15と第1内歯歯車21との噛合部を反出力側から覆う。カバー部材25は、第1内歯歯車21と連結される。カバー部材25の素材は特に限定されないが、本実施形態においては、樹脂により構成されている。樹脂の種類は特に限定されないが、本実施形態においては、炭素繊維を含有するPOM材により構成されている。
【0021】
軸受26、27は、例えば、玉軸受であるが、軸受の種類は特に限定されない。軸受26は、カバー部材25と起振体軸10との間に介在し、これらを相対的に回転可能に支持する。軸受27は、出力部材24と起振体軸10との間に介在し、これらを相対的に回転可能に支持する。
【0022】
主軸受28は、第1内歯歯車21と、第2内歯歯車22及び出力部材24との間に介在し、これらを相対的に回転可能に支持する。主軸受28は、クロスローラベアリングであり、単一の軸受でラジアル荷重、並びに、両方向のスラスト荷重を受けることができる。加えて、主軸受28は、単一の軸受でモーメント荷重を受けることができる構成であってもよい。単一の軸受とは、軸受のみを取り出したときに、各々が軸受として機能する複数の部品に分割できない構成を意味する。なお、主軸受28は、クロスローラベアリングに限られず、例えば四点接触玉軸受など、単一の軸受でラジアル荷重、両方向のスラスト荷重を受けることができるその他の軸受が適用されてもよい。また、主軸受は、単一の軸受でラジアル荷重、両方向のスラスト荷重を受けることができる軸受に限定されるものではなく、各種軸受を適用可能であり、例えば、一対の軸受により構成されてもよい。この場合、一対の軸受の両方に本発明を適用してもよいし、一方にのみ本発明を適用してもよい。さらに、ラジアル荷重および両方向のスラスト荷重のうち一部荷重を受けられない軸受でもよい。
【0023】
<減速動作>
外部から起振体軸10に回転運動が入力されると、起振体10Aの回転運動が外歯歯車15に伝わる。このとき、外歯歯車15は、起振体10Aの外周面に沿った形状に規制され、軸方向から見て、長軸部分と短軸部分とを有する楕円形状に撓んでいる。さらに、外歯歯車15は、固定された第1内歯歯車21と長軸部分で噛合っている。このため、外歯歯車15は起振体10Aと同じ回転速度で回転することはなく、外歯歯車15の内側で起振体10Aが相対的に回転する。そして、この相対的な回転に伴って、外歯歯車15は長軸位置と短軸位置とが周方向に移動するように撓み変形する。この変形の周期は、起振体軸10の回転周期に比例する。
【0024】
外歯歯車15が撓み変形する際、その長軸位置が移動することで、外歯歯車15と第1内歯歯車21との噛合う位置が回転方向に変化する。ここで、外歯歯車15の歯数が100で、第1内歯歯車21の歯数が102だとすると、噛合う位置が一周するごとに、外歯歯車15と第1内歯歯車21との噛合う歯がずれていき、これにより外歯歯車15が回転(自転)する。上記の歯数であれば、起振体軸10の回転運動は減速比100:2で減速されて外歯歯車15に伝達される。
【0025】
一方、外歯歯車15はもう一方の第2内歯歯車22とも噛合っているため、起振体軸10の回転によって外歯歯車15と第2内歯歯車22との噛合う位置も回転方向に変化する。一方、第2内歯歯車22の歯数と外歯歯車15の歯数とは一致しているため、外歯歯車15と第2内歯歯車22とは相対的に回転せず、外歯歯車15の回転運動が減速比1:1で第2内歯歯車22へ伝達される。これらによって、起振体軸10の回転運動が減速比100:2で減速されて、第2内歯歯車22及び出力部材24へ伝達される。そして、この減速された回転運動が、出力部材24から相手部材82へ出力される。
【0026】
減速装置1の減速運転中、外部の支持部材81と相手部材82との間にラジアル荷重又は両方向のスラスト荷重が加わった場合、主軸受28がこれらの荷重を受けることで、減速装置1は、支障なく減速運転を継続することができる。また、減速装置1の減速運転中、外部の支持部材81と相手部材82との間にモーメント荷重が加わった場合、主軸受28が当該モーメント荷重を受けることで、支障なく上記の減速運転が継続できるという作用が得られてもよい。
【0027】
<主軸受の内輪及び外輪>
主軸受28は、板部材から構成される内輪28i1、28i2と、板部材から構成される外輪28o1、28o2と、ローラ状の転動体28tとを有する。なお、主軸受28が四点接触玉軸受であれば、転動体28tは玉状となる。上記板部材は、鋼材などの金属から構成されてもよい。
【0028】
内輪28i1、28i2及び外輪28o1、28o2の各々は、板部材をプレス成形により曲折して構成され、
図1の断面形状のうち少なくとも転走面(軌道面とも言う)を構成する板状部位が、周方向に連続した環状の形態を有する。外輪28o1、28o2は、出力側と反出力側とにそれぞれ配置され、互いに分割された2つの部材から構成され、各々に転動体28tが転走する転走面が含まれる。同様に、内輪28i1、28i2は、出力側と反出力側とにそれぞれ配置され、互いに分割された2つの部材から構成され、各々に転動体28tが転走する転走面が含まれる。内輪28i1及び外輪28o2の転走面には、回転軸x1を有する転動体(ローラ)が転走し、内輪28i2及び外輪28o1の転走面には、回転軸x2を有する転動体(ローラ)が転走する。内輪28i1は本発明に係る第1内輪部材の一例に相当し、内輪28i2は本発明に係る第2内輪部材の一例に相当する。
【0029】
内輪28i1、28i2及び外輪28o1、28o2を板部材から構成することで、主軸受28の軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0030】
外輪28o1、28o2は、さらに、径方向外方に広がるフランジ部28f1と、フランジ部28f1に設けられた連結用穴(例えば貫通孔)h28oとを有する。フランジ部28f1は周方向の全周に連なって設けられていても良いし、周方向における複数の箇所に設けられていても良い。連結用穴h28oは、周方向における複数の箇所に設けられている。
【0031】
第1内歯歯車21は、軸方向から見て、上記フランジ部28f1と重なるように位置するフランジ部21fと、フランジ部21fに設けられた連結用穴(例えばネジ穴)h21とを有する。フランジ部21fは、周方向の全周に連なって設けられていても良いし、周方向における複数の箇所に設けられていても良い。連結用穴h21は、周方向における複数の箇所に設けられている。
【0032】
外輪28o1、28o2のフランジ部28f1と、第1内歯歯車21のフランジ部21fとは、連結用穴h28o、h21を介して、ボルト等の連結部材B1により連結されている。さらに、フランジ部28f1、21fは、外部の支持部材81に連結用穴h28o、h21を介して、ボルト等の連結部材B2により連結することができる。
【0033】
内輪28i1、28i2は、さらに、径方向内方に広がるフランジ部28f2と、フランジ部28f2に設けられた連結用穴(例えば貫通孔)h28iとを有する。フランジ部28f2は周方向の全周に連なって設けられていても良いし、周方向における複数の箇所に設けられていても良い。連結用穴h28iは、周方向における複数の箇所に設けられている。
【0034】
第2内歯歯車22は、周方向における複数の箇所に連結用穴(例えばネジ穴)h22が設けられている。
【0035】
出力部材24は、周方向における複数の箇所に連結用穴(例えば貫通孔)h24a、h24bが設けられている。
【0036】
出力部材24と、内輪28i1、28i2のフランジ部28f2と、第2内歯歯車22とは、互いの連結用穴h24a、h28i、h22を介して、ボルト等の連結部材B3により連結されている。さらに、外部の相手部材82は、出力部材24、フランジ部28f2及び第2内歯歯車22の連結用穴h24b、h28i、h22を介してボルト等の連結部材B4を介して連結することができる。
【0037】
内輪28i1は、さらに、径方向内方に延在し、周方向に連なる円板状(中央が貫通した円板状、つまり環状)の延在部28eを有する。延在部28eを有する内輪28i1は、もう一方の内輪28i2よりも、装置の軸方向における内方に位置する。装置内方とは軸方向において減速機構の中央(外歯歯車15と、第1内歯歯車21及び第2内歯歯車22との噛合部の中央)に近い方を意味する。
【0038】
延在部28eは、前述したように、軸受以外の機能部品を構成し、具体的には、外歯歯車15及び起振体軸受11が出力側に移動するのを規制する移動規制部品として機能する。
【0039】
板部材は高い厚み精度、並びに、所望の表面特性を得やすい。したがって、板部材から構成される内輪28i1の延在部28eは、高コストな加工処理を施さなくても、厚み精度を高く、かつ、移動規制部品に適した表面特性を持たせることができる。
【0040】
さらに、延在部28eは、軸方向から見て、軸受27の外輪と重なる位置まで延在し、起振体軸受11のリテーナの側面全体に接触することができる。当該接触により、起振体軸受11の移動を安定的に規制できる。このように、リテーナの側面全体に接触して、起振体軸受11の移動を規制する構成は、独立したストッパー部材を配置するか、あるいは、内輪28i1、28i2の一方又は両方に延在部を設ける以外に、実現することは難しい。例えば、仮に、延在部28eの替わりに出力部材24の一部を延在させることで同様の移動規制部品を設けようとした場合、次のような困難さが生じる。すなわち、軸受27の外輪は、反出力側から出力部材24の内周部に嵌入され、かつ、出力部材24の径方向内方に張り出した張出部24aに当接して位置決めされる。したがって、延在部28eの替わりに、出力部材24の一部を起振体軸受11の近傍まで延在させると、軸受27と出力部材24との組み込みが困難となる。しかし、実施形態1では、内輪28i2に延在部28eを設けることで、内輪28i2の一部を移動規制部品として機能させているので、上記のような困難さが生じることなく移動規制部品(延在部28e)を有する内輪28i2を装置に組み込むことができる。
【0041】
なお、実施形態1においては、主軸受28の外輪が2つの部材(外輪28o1、28o2)から構成され、内輪が2つの部材(内輪28i1、28i2)から構成される例を示した。しかし、外輪が単一の板部材からプレス成形等により構成されてもよいし、内輪が単一の板部材からプレス成形等により構成されてもよい。また、実施形態1の構成において、外輪28o1、28o2のいずれか一方の一端部に続いて、反出力側に延在する延在部を有していてもよい。そして、当該延在部が、外歯歯車15と第1内歯歯車21及び第2内歯歯車22との噛合部の径方向外方を覆うケーシングとして機能してもよい。このように延在部を有する外輪は、装置の軸方向内方に位置する外輪28o1であってもよく、この場合、延在部を小さなサイズとし、かつ、延在部を複雑な形状に加工することなく、ケーシングとして機能させることができる。
【0042】
以上のように、実施形態1の減速装置1によれば、第1内歯歯車21、第2内歯歯車22及び外歯歯車15を有する減速機構と、減速機構により減速された回転を出力する出力部材24と、出力部材24を支持する主軸受28とを備える。さらに、主軸受28は、板部材により構成される内輪28i1、28i2と外輪28o1、28o2とを有し、かつ、内輪28i1は延在部28eを有し、延在部28eは減速装置1の他の機能部品を構成する。したがって、内輪28i1と他の機能部品とが一体化され、部品点数の削減を図ることができる。また、主軸受28の内輪28i1、28i2及び外輪28o1、28o2が板部材から構成されることで、ブロック状の内輪及び外輪を有する主軸受と比べて、主軸受28が軽量化され、延いては、減速装置1の軽量化を図ることができる。
【0043】
具体的には、延在部28eは、他の部材の移動を規制する移動規制部品として機能する。内輪28i1は、板部材から構成されるため、その延在部28eは、高い厚み精度が得られ、さらに、所望の表面特性を容易に得ることができる。したがって、延在部28eは、移動規制部品として良好に機能する。
【0044】
より具体的には、延在部28eは、外歯歯車15の出力側への移動を規制する。延在部28eは、外歯歯車15が摺動して外歯歯車15の移動を規制するため、摺動に耐える表面特性を要するが、内輪28i1は板部材から構成されるので、このような表面特性を容易に得ることができる。
【0045】
さらに、実施形態1の減速装置1によれば、内輪28i1、28i2は、互いに分割された2つの部材から構成され、一方の内輪28i2が延在部28eを有する。内輪28i1、28i2が2つの部材から構成されることで、転動体28tの転走面の加工が容易となり、一方の内輪28i1が延在部28eを有するので、両方の内輪28i1に延在部を設け、2つの延在部を重ねて使用する場合と比較して、延在部28eの成形が容易となり、かつ、延在部28eの組み込みが容易となる。
【0046】
さらに、実施形態1の減速装置1によれば、内輪28i1、28i2のうち、装置の軸方向における内方に配置された内輪28i1に延在部28eが設けられている。したがって、延在部28eを、小さなサイズで、かつ、他の部品を避けるような複雑な形状を要することなく、減速機構の機能部品として配置できる。
【0047】
さらに、実施形態1の減速装置1によれば、主軸受28は単一の軸受により、ラジアル荷重及び両方向のスラスト荷重を受けることができる構成である。したがって、主軸受を軸方向に配置を異ならせて2つ有する構成と比較して、減速装置1の総合的な部品点数を低減できる。また、このような荷重を受ける軸受は、互いに分割される2つの内輪28i1、28i2と、互いに分割される2つの外輪28o1、28o2とから構成しやすいため、内輪28i1、28i2が互いに分割する構成により得られる上記の効果と合わせて、内輪28i1、28i2が互いに分割される2つの部材から構成されることで、上記の荷重を受ける軸受を構成しやすいという効果が奏される。
【0048】
さらに、実施形態1の減速装置1によれば、内輪28i1、28i2と外輪28o1、28o2とが、プレス成形により曲折させた板部材により構成される。したがって、内輪28i1、28i2及び外輪28o1、28o2の製造コストの低減を図れ、減速装置1の部品コストの低減を図れる。
【0049】
(実施形態2)
図2は、本発明の実施形態2に係る減速装置を示す断面図である。実施形態2では、偏心体軸31の回転軸O1に沿った方向を軸方向、回転軸O1を中心とする回転方向を周方向、回転軸O1に直交する方向を径方向と呼ぶ。また、軸方向において減速された回転運動を出力するキャリア体41の配置側(外歯歯車34、36から見たキャリア体41側)を出力側、その反対側を反出力側と呼ぶ。
【0050】
実施形態2の減速装置1Aは、外歯歯車34、36が偏心揺動する偏心揺動型減速装置であり、2つの偏心体31b、31cを有する偏心体軸31と、2つの外歯歯車34、36と、外歯歯車34、36と噛合する内歯歯車38と、偏心体軸受51、52と、外歯歯車34、36に係合する内ピン55epと、内ピン55epと連結されるキャリア体41と、外歯歯車34、36が揺動する箇所を反出力側から覆うカバー部材46と、キャリア体41と内歯歯車38との間に介在する主軸受55とを備える。キャリア体41は、本発明に係る出力部材の一例に相当する。内ピン55epは、本発明に係るピン部材の一例に相当する。
【0051】
さらに、減速装置1Aは、外歯歯車34とカバー部材46との間に配置されるストッパーリング44と、2つの外歯歯車34、36の間に配置されるストッパーリング45と、偏心体軸31の軸部31a1に取り付けられたカラー48と、カラー48とカバー部材46との間に位置するシール47と、偏心体軸31を支持する高速軸受53、54とを備える。
【0052】
偏心体軸31は、回転軸O1が中心軸線と重なる軸部31a1、31a2、31a3と、回転軸O1から偏心して設けられた偏心体31b、31cとを有する。偏心体31b、31cは、回転軸O1に垂直な断面が円形であり、偏心体軸31が回転することで互いに異なる位相で偏心回転する。
【0053】
外歯歯車34は、偏心体31bに偏心体軸受51を介して組み込まれ、偏心体軸31が回転することで揺動する。もう一方の外歯歯車36は、偏心体31cに偏心体軸受52を介して組み込まれ、偏心体軸31が回転することで、外歯歯車34と異なる位相で揺動する。外歯歯車34には、内ピン55epを通す内ピン孔34hが設けられている。同様に、外歯歯車36には、内ピン55epを通す内ピン孔36hが設けられている。
【0054】
内ピン55ep、内ピン孔34h、36hは、1つずつ設けられていても良いし、周方向における複数の箇所に複数個ずつ設けられていても良い。
【0055】
内ピン55epは、スリーブ49を介して内ピン孔34h、36hの内周面に接触し、外歯歯車34、36の運動(自転運動)と同期して運動(静止を含む)する。具体的には、外歯歯車34、36の自転に同期して公転することで、キャリア体41を自転させるか、外歯歯車34、36の自転が拘束される場合には、公転が拘束されて、キャリア体41の自転も拘束される。
【0056】
キャリア体41は、2つの外歯歯車34、36よりも出力側に配置され、主軸受55の内輪55i1、55i2及び内ピン55epに連結される。
【0057】
高速軸受53、54は、特に軸受の種類は限定されないが、例えば玉軸受である。一方の高速軸受53は、カバー部材46と偏心体軸31の軸部31a2との間に介在し、これらを相対的に回転可能に支持する。もう一方の高速軸受54は、キャリア体41及び偏心体軸31の軸部31a3との間に介在し、これらを相対的に回転可能に支持する。
【0058】
主軸受55は、内歯歯車38とキャリア体41とを相対的に回転可能に支持する。主軸受55は、クロスローラベアリングであり、単一の軸受でラジアル荷重、並びに、両方向のスラスト荷重を受けることができる。加えて、主軸受55は、単一の軸受でモーメント荷重を受けることができる構成であってもよい。なお、主軸受55は、クロスローラベアリングに限られず、例えば四点接触玉軸受など、単一の軸受でラジアル荷重、両方向のスラスト荷重を受けることができるその他の軸受が適用されてもよい。
【0059】
<減速動作>
上記構成の減速装置1Aは、内歯歯車38がボルト等の連結部材B13により直接又は間接的に外部の支持部材81に連結され、キャリア体41がボルト等の連結部材B12により直接又は間接的に外部の相手部材82に連結される。そして、外部から偏心体軸31に回転運動が入力されると、減速装置1Aは入力された回転を減速し、減速された回転をキャリア体41から相手部材82に出力する。
【0060】
詳細には、偏心体軸31が回転すると偏心体31b、31cが偏心回転し、一方の外歯歯車34ともう一方の外歯歯車36とが180度の位相差で揺動される。2つの外歯歯車34、36があることで、伝達容量の増大及び強度の維持が図られ、さらに、減速装置1Aの回転バランスを保つことができる。外歯歯車34、36は、内歯歯車38に内接噛合しており、内歯歯車38は支持部材81と連結されている。このため、外歯歯車34、36は、偏心体軸31が1回転するごとに、内歯歯車38に対して歯数差分だけ相対回転(自転)する。外歯歯車34、36の自転成分は、内ピン55epを介してキャリア体41に伝達される。これらの結果、偏心体軸31の回転運動が、(内歯歯車38と外歯歯車34、36の歯数差)/(外歯歯車34及び外歯歯車36の共通の歯数)の減速比で減速されてキャリア体41へ伝達される。そして、キャリア体41から相手部材82へ減速された回転が出力される。
【0061】
減速装置1Aの減速運転中、外部の支持部材81と相手部材82との間にラジアル荷重又は両方向のスラスト荷重が加わった場合、主軸受55がこれらの荷重を受けることで、減速装置1Aは支障なく減速運転を継続することができる。また、減速装置1Aの減速運転中、外部の支持部材81と相手部材82との間にモーメント荷重が加わった場合、主軸受55が当該モーメント荷重を受けることで、上記の減速運転が支障なく継続できるという作用が得られてもよい。
【0062】
なお、減速装置1Aは、キャリア体41が直接又は間接的に支持部材に連結され、内歯歯車38が直接又は間接的に相手部材に連結され、減速された回転を内歯歯車38を介して相手部材に出力するように使用されてもよい。この場合、内歯歯車38、あるいは、内歯歯車38と連結されるカバー部材46が本発明に係る出力部材の一例に相当する。
【0063】
<主軸受の内輪及び外輪>
主軸受55は、板部材から構成される内輪55i1、55i2と、板部材から構成される外輪55o1、55o2と、ローラ状の転動体55tを有する。なお、主軸受55が四点接触玉軸受であれば、転動体55tは玉状となる。
【0064】
内輪55i1、55i2及び外輪55o1、55o2の各々は、板部材をプレス成形により曲折して構成され、
図1の断面形状のうち少なくとも転走面(軌道面とも言う)を構成する板状部位が、周方向に連続した環状の形態を有する。外輪55o1、55o2は、出力側と反出力側とにそれぞれ配置される2つの部材から構成され、各々に転動体55tが転走する転走面が含まれる。同様に、内輪55i1、55i2は、出力側と反出力側とにそれぞれ配置される2つの部材から構成され、各々に転動体55tが転走する転走面が含まれる。内輪55i1及び外輪55o2の転走面には、回転軸x1を有する転動体(ローラ)が転走し、内輪55i2及び外輪55o1の転走面には、回転軸x2を有する転動体(ローラ)が転走する。
【0065】
内輪55i1、55i2及び外輪55o1、55o2を板部材から構成することで、主軸受55の軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0066】
外輪55o1、55o2は、さらに、径方向外方に広がるフランジ部55f1と、フランジ部55f1に設けられた連結用穴(例えば貫通孔)h55oとを有する。フランジ部55f1は周方向の全周に連なって設けられていても良いし、周方向における複数の箇所に設けられていても良い。連結用穴h55oは、周方向における複数の箇所に設けられている。
【0067】
内歯歯車38は、周方向における複数の箇所に連結用穴(例えばネジ穴)h38が設けられている。
【0068】
外輪55o1、55o2のフランジ部55f1と、内歯歯車38とは、連結用穴h55o、h38を介して、ボルト等の連結部材B11により連結されている。なお、フランジ部55f1は、外部の支持部材に連結するために使用されてもよい。この場合、支持部材は、連結用穴h55o、h38を介して、ボルト等の連結部材により連結される。
【0069】
内輪55i1、55i2は、さらに、径方向内方に広がるフランジ部55f2と、フランジ部55f2に設けられた連結用穴(例えば貫通孔)h55iとを有する。フランジ部55f2は周方向の全周に連なって設けられていても良いし、周方向における複数の箇所に設けられていても良い。連結用穴h55iは、周方向における複数の箇所に設けられている。
【0070】
キャリア体41は、周方向における複数の箇所に連結用穴(例えば貫通孔)h41が設けられている。
【0071】
内輪55i1、55i2のフランジ部55f2と、キャリア体41とは、連結用穴h55i、h41を介して、ボルト等の連結部材B12により連結されている。さらに、外部の相手部材82は、フランジ部55f2及びキャリア体41の連結用穴h55i、h41を介してボルト等の連結部材B12を介して連結することができる。
【0072】
内輪55i1は、さらに、径方向内方に延在した延在部55e1を有する。延在部55e1を有する内輪55i1は、もう一方の内輪55i2よりも、装置内方(軸方向における内方)に位置する。さらに、延在部55e1には、反出力側にピン状に突出した中空の内ピン55epを有する。内ピン55epは、板材を深絞り加工することで形成されている。延在部55e1は、周方向に連なる円板状(中央が貫通した円板状)であってもよいし、周方向における一部に切欠きを有する構成であってもよい。内ピン55epは、周方向における1箇所又は複数箇所に設けられている。内ピン55epは、キャリア体41の貫通孔を出力側から反出力側へ抜け、外歯歯車34、36の側へ突出している。
【0073】
もう一方の内輪55i2は、同様に、径方向内方に延在した延在部55e2を有する。延在部55e2は、周方向に連なる円板状(中央が貫通した円板状)であってもよいし、周方向における一部に切欠きを有する構成であってもよい。延在部55e2は、内ピン55epの根元の開口部を塞ぐ。
【0074】
以上のように、実施形態2の減速装置1Aによれば、内歯歯車38及び外歯歯車34、36を有する減速機構と、減速機構により減速された回転を出力するキャリア体(出力部材)41と、キャリア体41を支持する主軸受55とを備える。さらに、主軸受55は、板部材により構成される内輪55i1、55i2と外輪55o1、55o2とを有し、かつ、内輪55i1は延在部55e1(内ピン55epを含む)を有し、延在部55e1は減速装置1の他の機能部品(内ピン55ep)を構成する。したがって、内輪55i1と他の機能部品とが一体化され、部品点数の削減を図ることができる。また、主軸受55の内輪55i1、55i2及び外輪55o1、55o2が板部材から構成されることで、ブロック状の内輪及び外輪を有する主軸受と比べて、主軸受55が軽量化され、延いては、減速装置1Aの軽量化を図ることができる。
【0075】
具体的には、内輪55i1の延在部55e1は、外歯歯車34、36の自転成分と同期する内ピン55epを構成する。したがって、1つ又は複数の内ピン55epを一体化でき、内ピン55epの組付け工程の単純化を図ることができる。
【0076】
また、実施形態2の減速装置1Aにおいても、実施形態1と同様に、内輪55i1、55i2は互いに分割された2つの部材から構成され、さらに、主軸受55は、単一の軸受により、ラジアル荷重及び両方向のスラスト荷重を受ける。加えて、内輪55i1、55i2及び外輪55o1、55o2が、板部材をプレス成形により曲折させた板部材により構成される。したがって、実施形態1の同様の構成により得られる前述の効果が、同様に奏される。
【0077】
(実施形態3)
図3は、実施形態3に係る減速装置を示す断面図である。実施形態3は、実施形態1の一部を変更したものであり、実施形態1と同様の構成は同一符号を付して詳細な説明は省略する。実施形態3の減速装置1Bは、所謂シルクハット型の撓み噛合い式歯車装置であり、その減速機構は、フランジ部28f3を有する外歯歯車28e2と、1つの内歯歯車21Bと、1つの内歯歯車21Bに対応する起振体軸受11Bとを有する。また、実施形態3の減速装置1Bは、内輪28i1Bの延在部が外歯歯車28e2として機能する主軸受28Bを有する。
【0078】
内歯歯車21Bは、実施形態1の第1内歯歯車21と同様の構成である。実施形態3の減速装置1Bは、2つ目の内歯歯車を有さない。
【0079】
外歯歯車28e2は、円筒部と、円筒部の一端から径方向外方へ広がるフランジ部28f3とを有し、少なくとも円筒部に可撓性を有する金属部材である。円筒部において、内歯歯車21B(その内歯部)と対向する範囲に外歯G1が設けられている。
【0080】
起振体軸受11Bは、起振体10Aと外歯歯車28e2との間に介在し、起振体10Aと外歯歯車28e2とを相対的に回転自在に支持する。起振体軸受11Bは、外歯歯車28e2と内歯歯車21Bとの噛合部に対応する位置(噛合部の径方向内方)に設けられる。
【0081】
起振体軸10は、実施形態1と同様の構成に加えて、起振体軸受11Bの一端部近傍に位置する突起10eを有する。突起10eは、起振体軸受11Bの出力側への移動を規制する。
【0082】
外歯歯車28e2のフランジ部28f3は、出力部材24に連結されている。
【0083】
主軸受28Bは、内歯歯車21Bと、出力部材24及び外歯歯車28e2のフランジ部28f3との間に介在し、内歯歯車21Bと出力部材24、並びに、内歯歯車21Bと外歯歯車28e2を、相対的に回転自在に支持する。主軸受28Bは、内輪28i1Bの延在部が異なる他は、実施形態1の主軸受28Bと同様に構成される。
【0084】
<減速動作>
外部から起振体軸10に回転運動が入力されると、起振体10Aの回転運動が外歯歯車28e2に伝わる。このとき、外歯歯車28e2の外歯部は、起振体10Aの外周面に沿った形状に規制され、軸方向から見て、長軸部分と短軸部分とを有する楕円形状に撓んでいる。さらに、外歯歯車28e2は、固定された内歯歯車21Bと長軸部分で噛合っている。このため、外歯歯車28e2は起振体10Aと同じ回転速度で回転することはなく、外歯歯車28e2の内側で起振体10Aが相対的に回転し、外歯歯車28e2の長軸位置と短軸位置とが周方向に移動するように撓み変形する。そして、長軸位置が移動することで、外歯歯車28e2と内歯歯車21Bとの噛合う位置が回転方向に変化する。ここで、外歯歯車28e2の歯数が100で、内歯歯車21Bの歯数が102だとすると、噛合う位置が一周するごとに、外歯歯車28e2と内歯歯車21Bとの噛合う歯がずれていき、これにより外歯歯車28e2が回転(自転)する。上記の歯数であれば、起振体軸10の回転運動は減速比100:2で減速されて外歯歯車28e2に伝達される。そして、外歯歯車28e2の回転がフランジ部28f3を介して出力部材24に伝達され、出力部材24から外部の相手部材82に減速された回転が出力される。
【0085】
減速装置1Bの減速運転中、外部の支持部材81と相手部材82との間にラジアル荷重又は両方向のスラスト荷重が加わった場合、主軸受28Bがこれらの荷重を受けることで、減速装置1Bは、支障なく減速運転を継続することができる。また、減速装置1Bの減速運転中、外部の支持部材81と相手部材82との間にモーメント荷重が加わった場合、主軸受28Bが当該モーメント荷重を受けることで、支障なく上記の減速運転が継続できるという作用が得られてもよい。
【0086】
<主軸受の内輪及び外輪>
主軸受28Bは、2つの部材から構成される内輪28i1B、28i2と、2つの部材から構成される外輪28o1、28o2とを有し、さらに、装置内方に位置する内輪28i1Bが他の機能部品を構成する延在部(外歯歯車28e2)を有する。延在部は、軸方向に延在する筒状部とされ、前述したように、シルクハット型の外歯歯車28e2を構成する。
【0087】
さらに、内輪28i1Bのフランジ部28f3には、タップ等によりネジが形成されたネジ穴h28Bが設けられ、ボルト等の連結部材B6、B7と螺合する。そして、出力部材24と内輪28i1B、28i2とは、連結用穴h24a、h28i及びネジ穴h28Bとを介して、ボルト等の連結部材B6により連結されている。この構成により、内輪28i1B、28i2と出力部材24とを連結するためにナットが不要となり、部品点数をさらに削減できる。さらに、出力部材24と外部の相手部材82は、連結用穴h24b、h28i及びネジ穴h28Bとを介して、ボルト等の連結部材B7により連結されている。この構成により、相手部材82と出力部材24とを連結するためにナットが不要となり、部品点数をさらに削減できる。
【0088】
なお、減速装置1Bは、内輪28i1B、28i2及び外歯歯車28e2を外部の支持部材と連結させ、外輪28o1、28o2及び内歯歯車21Bを外部の相手部材と連結させて使用することもできる。この場合、起振体軸10に入力された回転運動は、減速されて内歯歯車21Bに伝達され、内歯歯車21Bから外部の相手部材へ出力されることとなる。この場合には、内歯歯車21Bが、減速された回転を出力する出力部材として機能する。
【0089】
さらに、内歯歯車21Bが出力部材として機能する構成において、外輪28o2の連結用穴h28oを、タップ等によりネジが形成されたネジ穴から構成する一方、内歯歯車21Bの連結用穴h21を貫通孔から構成してもよい。そして、ボルトが、内歯歯車21Bの連結用穴(例えば貫通孔)h21から、外輪28o1、28o2の連結用穴h28oに通され、一方の外輪28o2の連結用穴h28o(ネジ穴)に螺合されることで、出力部材である内歯歯車21Bと、外輪28o1、28o2とが連結されてもよい。
【0090】
以上のように、実施形態3に係る減速装置1Bによれば、内歯歯車21B及び外歯歯車15を有する減速機構と、減速機構により減速された回転を出力する出力部材24と、出力部材24を支持する主軸受28Bとを備える。さらに、主軸受28Bは、板部材により構成される内輪28i1B、28i2と外輪28o1、28o2とを有し、かつ、内輪28i1Bは延在部(28e2)を有し、延在部が他の機能部品を構成する。したがって、内輪28i1Bと他の機能部品とが一体化され、部品点数の削減を図ることができる。また、主軸受28Bの内輪28i1B、28i2及び外輪28o1、28o2が板部材から構成されることで、ブロック状の内輪及び外輪を有する主軸受と比べて、主軸受28Bが軽量化され、延いては、減速装置1Bの軽量化を図ることができる。
【0091】
具体的には、内輪28i1Bの延在部(28e2)は、撓み変形する外歯歯車28e2を構成する。板部材である内輪28i1Bの延在部により、外歯歯車28e2の撓み変形する特性を得やすい。
【0092】
さらに、実施形態3に係る減速装置1Bによれば、内輪28i1Bは、ボルト等の連結部材B6、B7と螺合するネジ穴h28Bを有する。したがって、内輪28i1B、28i2の連結、あるいは、内輪28i1B、28i2と他の部材(出力部材24、外歯歯車28e2など)とを連結する際に、ナットとして機能する部材が存在しないような箇所である場合に、ナットを不要として、部品点数の削減を図れる。
【0093】
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、所謂筒型の撓み噛合い式歯車装置と、センタークランク型の偏心揺動型の減速装置と、所謂シルクハット型の撓み噛合い式歯車装置とを示した。しかし、本発明は、例えば所謂カップ型の撓み噛合い式歯車装置、偏心体を有する2個以上の偏心軸が減速装置の軸心からオフセットして配置された所謂振り分け型の偏心揺動型減速装置、あるいは、単純遊星歯車装置など、様々な種類の減速装置に適用することができる。単純遊星歯車装置に本発明が適用される場合、実施形態2と同様に内輪の延在部によりピン部材を構成し、当該ピン部材が遊星歯車(外歯歯車)の公転成分と同期する構成が採用されてもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0094】
1、1A、1B 減速装置
10 起振体軸
10A 起振体
11 起振体軸受
15 外歯歯車
16 ストッパーリング
21 第1内歯歯車
22 第2内歯歯車
24 出力部材
28、28B 主軸受
28i1、28i2、28i1B、55i1、55i2 内輪
28o1、28o2、55o1、55o2 外輪
28e 延在部(規制規制部品)
28e2 外歯歯車(延在部)
31 偏心体軸
31b、31c 偏心体
34、36 外歯歯車
38 内歯歯車
41 キャリア体(出力部材)
55 主軸受
55e1、55e2 延在部
55ep 内ピン(ピン部材、延在部)