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特許7462553遺伝子発現をサイレンシングするための植物非コードRNA分子の特異性の改変
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】遺伝子発現をサイレンシングするための植物非コードRNA分子の特異性の改変
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20240329BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240329BHJP
   C12N 15/29 20060101ALI20240329BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20240329BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20240329BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240329BHJP
   A01H 5/10 20180101ALI20240329BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20240329BHJP
【FI】
C12N15/09 100
C12N15/113 Z
C12N15/29 ZNA
C12N15/55
C12N15/09 110
A01H1/00 A
C12N5/10
A01H5/10
A01H5/00 A
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2020515770
(86)(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 IB2018057160
(87)【国際公開番号】W WO2019058255
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】1715113.5
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1715116.8
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1719516.5
(32)【優先日】2017-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519428096
【氏名又は名称】トロピック バイオサイエンシーズ ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】マオリ エヤル
(72)【発明者】
【氏名】ガランティ ヤーロン
(72)【発明者】
【氏名】ピグノッチ クリスティナ
(72)【発明者】
【氏名】チャパッロ ガルシア アンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】メイア オフィール
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】Frontiersin Plant Science, 2017 Sep 13, Vol. 8, Article No.1598, pp.1-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
A01H 1/00-17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物細胞において標的RNAに対するRNAサイレンシング分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子を改変する方法であって、前記RNAサイレンシング分子のサイレンシング特異性を第2の標的RNAに向けてリダイレクトするDNA編集剤を前記植物細胞に導入し、それによって前記RNAサイレンシング分子をコードする前記遺伝子を改変して、前記RNAサイレンシング分子の元の特異性が無効化され、第2の標的RNAに対する新しい特異性が獲得される、工程を含み、前記標的RNA及び前記第2の標的RNAが異なり、前記DNA編集剤が、エンドヌクレアーゼと、少なくとも1つのgRNAとを含む、方法。
【請求項2】
前記RNAサイレンシング分子をコードするか又はそれにプロセシングされる前記遺伝子が、前記植物細胞に対して内在性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的RNAと前記第2の標的RNAとが異なる遺伝子にコードされている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記RNAサイレンシング分子をコードする前記遺伝子を前記改変することが、前記RNAサイレンシング分子に、前記第2の標的RNAに対して少なくとも45%の相補性を付与することを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記RNAサイレンシング分子の前記サイレンシング特異性が、前記第2の標的RNAのRNAレベルを測定することによって決定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記RNAサイレンシング分子の前記サイレンシング特異性が、表現型的に決定される請求項1から5のいずれか一項に記載の方法であって、前記表現型的に決定されることは、任意で、葉の着色、花の着色、成長速度、植物の大きさ、作物の収率、果実の形質、生物的ストレス耐性、及び非生物的ストレス耐性からなる群から選択される少なくとも1つの植物表現型の決定によってもたらされる、方法。
【請求項7】
前記RNAサイレンシング分子の前記サイレンシング特異性が、遺伝子型的に決定される請求項1から6のいずれか一項に記載の方法であって、任意で、植物表現型が植物遺伝子型の前に決定されるか、あるいは、植物遺伝子型が植物表現型の前に決定される、方法。
【請求項8】
前記RNAサイレンシング分子が、前駆体からプロセシングされる請求項1から7のいずれか一項に記載の方法であって、前記RNAサイレンシング分子は、任意で、低分子干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、Piwi相互作用RNA(piRNA)及びトランス作用性siRNA(tasiRNA)からなる群から選択されるRNA干渉(RNAi)分子であり、前記RNAi分子は、任意で、前記RNAi分子の配列が、二次RNA造を保存し、細胞RNAi因子によって認識されるように改変される、方法。
【請求項9】
前記遺伝子の前記改変は、欠失、挿入、点突然変異、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される改変によって行われる請求項1から8のいずれか一項に記載の方法であって、前記改変は、任意で、
(a)前記RNAサイレンシング分子のステム領域にある;
(b)前記RNAサイレンシング分子のループ領域にある;
(c)前記RNAサイレンシング分子の非構造化領域にある;
(d)前記RNAサイレンシング分子のステム領域及びループ領域にある;又は
(e)前記RNAサイレンシング分子のステム領域及びループ領域、並びに非構造化領域にある、
方法。
【請求項10】
前記改変が、最大200ヌクレオチドの改変を含む、及び/又は、前記方法は前記植物細胞にドナーオリゴヌクレオチド配列を導入する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(a)前記少なくとも1つのgRNAが、植物発現性プロモーターに作動可能に連結される;及び/又は
(b)前記DNA編集剤が、CRISPR DNA編集システムのものである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記DNA編集剤が、CRISPR DNA編集システムのものであり、前記エンドヌクレアーゼがCas9を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記DNA編集剤が、
(a)DNA、RNA又はRNPとして前記細胞に適用される;及び/又は
(b)植物細胞における発現を監視するためのレポーターに連結され、任意で、前記レポーターは蛍光タンパク質である、
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の標的RNAが、前記植物細胞に対して外来性である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記植物細胞がプロトプラストである、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記RNAサイレンシング分子が、前記第2の標的RNAからのmRNA及び/又はタンパク質産物のレベルにおける観察可能な減少を提供する、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記改変が、ネイティブなRNAサイレンシング分子と比較して10から250ヌクレオチドの改変である、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記改変が、少なくとも5塩基の連続する核酸配列における改変である、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
改変前の前記RNAサイレンシング分子が、前記第2の標的RNAの配列に対して、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%又は98%の相補性、かつ99%までの相補性を有するものである、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の方法に従って生成された植物細胞。
【請求項21】
請求項20に記載の植物細胞を含む植物。
【請求項22】
標的遺伝子の発現が低下した植物を生成する方法であって、
(a)請求項21に記載の植物を育種する工程と、
(b)前記第2の標的RNAの発現が低下し、かつ、前記DNA編集剤を含まない、子孫植物を選択し、それによって標的遺伝子の発現が低下した前記植物を生成する工程と
を含み、それによって前記標的遺伝子の発現が低下した植物を生成させ、
任意で、前記育種は交配もしくは自配を含む、及び/又は、前記第2の標的RNAは、ストレス感受性、除草剤感受性、収率の低下、生長速度の低下もしくは収量品質の低下を付与する植物の遺伝子のものである、方法。
【請求項23】
増加したストレス耐性、増加した収率、増加した成長速度、又は増加した収量品質を有する植物を生成する方法であって、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法により、植物細胞においてRNAサイレンシング分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって前記植物を生成する工程を含み、前記第2の標的RNAが、ストレスに対する感受性、低下した収率、低下した成長速度、又は低下した収量品質を付与する植物の遺伝子のものである、方法。
【請求項24】
病原体もしくは病害虫耐容性又は耐性植物を生成する方法であって、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法により、植物細胞においてRNAサイレンシング分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって前記病原体もしくは病害虫耐容性又は耐性植物を生成する工程を含み、前記第2の標的RNAは、前記病原体もしくは病害虫に対する感受性を付与する植物の遺伝子のものであるか、あるいは、前記第2の標的RNAは、前記病原体もしくは病害虫の遺伝子のものである、方法。
【請求項25】
除草剤耐性植物を生成する方法であって、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法により、植物細胞においてRNAサイレンシング分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって前記除草剤耐性植物を生成する工程を含み、前記第2の標的RNAが、前記除草剤に対する感受性を付与する植物の遺伝子のものである、方法。
【請求項26】
請求項22から25のいずれか一項に記載の方法に従って生成された植物。
【請求項27】
前記植物が、遺伝子組換えされていない(非GMOである)請求項21若しくは26に記載の植物。
【請求項28】
前記植物が、作物、花及び樹木からなる群から選択される、請求項21、26若しくは27のいずれか一項に記載の植物。
【請求項29】
請求項21及び26から28のいずれか一項に記載の植物の種子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野及び背景
本発明は、そのいくつかの実施形態において、RNAサイレンシング分子を含む非コードRNA分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子を改変することに関し、より詳細には、植物における目的の内在性又は外来性の標的遺伝子発現をサイレンシングするためのその使用に関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
RNAサイレンシング又はRNA干渉(RNAi)、すなわちRNA分子が遺伝子発現又は翻訳を阻害する内在の同時転写又は転写後の遺伝的調節機構は、一般に、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、トランス作用性siRNA(ta-siRNA)、piwi相互作用RNA(piRNA)、アンチセンスRNAなどを含む非コードRNA分子によって媒介される。最近、さらなる非コードRNAは、転移RNA(tRNA)、核内小分子RNA(snoRNA)、核小体小分子RNA(snoRNA)及びリピート由来RNA等、RNAサイレンシング活性を有することが示唆されている。これらのカノニカル及び非カノニカルRNAサイレンシング分子は、それらの基質、生合成、エフェクタータンパク質、及び標的下方制御の様式が異なる。
【0003】
さらに、アルゴノートタンパク質は小分子RNAと複合体を形成し、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)、RNA干渉(RNAi)エフェクター複合体のコアを形成する。アルゴノートスーパーファミリーは、Ago及びPiwiと呼ばれる2つのクレードに分離する。Agoタンパク質(例えば、Ago1及びAgo2)は、典型的にはmiRNA及びsiRNAと複合体を形成し、Piwiタンパク質(例えば、Piwi、Ago3及びAubergine(Aub))は、典型的にはpiRNAと複合体を形成する。
【0004】
低分子干渉RNA(siRNA)は20~25ヌクレオチド(nt)の長さの二本鎖RNA分子であり、転写中あるいは転写後にその転写産物を分解することによって相補的なヌクレオチド配列をもつ特定の遺伝子の発現を妨害し、翻訳を起こさない。
【0005】
マイクロRNA(miRNA)は、長い自己相補的前駆体に由来する長さ20~24ntの小分子内在非コードRNA(ncRNA)である。成熟miRNAは、(i)翻訳を阻害することによって、又は(ii)標的転写産物との完全又はほぼ完全な相補体によってコードmRNAを分解することによって、2つの方法で遺伝子発現を調節する。植物の標的mRNAの大部分は単一のmiRNA相補的な部位を含み、その結果、標的mRNAはRNAサイレンシング分子及びRNA崩壊機構によって切断され、分解される。
【0006】
Piwi相互作用RNA(piRNA)は、長い一本鎖前駆体分子の産物であり、ダイシング工程なしに生成される小分子非コードRNAである。piRNAは、典型的には、26~31ntの長さであり、ほとんどがアンチセンスである。piRNAは、Piwiタンパク質との相互作用を介してRNA-タンパク質複合体を形成する。アンチセンスpiRNAは、典型的には、Piwi又はAubにロードされる。
【0007】
トランス作用性siRNA(tasiRNA)は、転写後遺伝子サイレンシングを介して遺伝子発現を抑制するクラスの低分子干渉RNA(siRNA)である。それらの生合成は、tasiRNA前駆体にmiRNAが結合することによって始まる。この結合は、tasiRNA前駆体鋳型からdsRNAを合成するRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)を動員する。次に、このようなdsRNAをDICER-LIKE4(DCL4)によって約21ヌクレオチドの「段階的」間隔の成熟したtasiRNAにプロセシングされる。
【0008】
近年のゲノム編集技術の進歩により、生細胞内のDNA配列を変化させることが可能になってきた。植物の細胞内の数十億個のヌクレオチドのうちの数個のみを編集することによって、これらの新しい技術は、過酷な気候(作物の性能及び非生物的ストレス)で作物をより良く成長させ、生物的ストレス(昆虫、ウイルス、細菌、甲虫、線虫など)に対する耐性を高めるための最も効果的な方法である可能性がある。CRISPR/Cas9等のゲノム編集技術を用いて病害虫に対する耐性を獲得するアプローチは、停止コドン、フレームシフト、挿入、欠失の導入などによる植物感受性遺伝子ノックアウト(周知のMLO遺伝子など)、又はプロモーター、マイクロRNA結合部位などの調節エレメントの修飾による、R遺伝子などの耐性遺伝子のアップレギュレーション等、限られている。それにもかかわらず、病原体を特異的に標的化するアプローチは、トランスジェニックなCRISPR適用に限定される。
【0009】
様々な生物(例えば、マウス、ヒト、エビ、植物)におけるRNA分子のゲノム編集に関する以前の研究では、例えば、miRNA活性のノックアウトに焦点を当てたり、標的RNAにおけるその結合部位を変化させたりすることに焦点が当てられていた。
【0010】
Zhaoら[Zhaoら、Scientific Reports(2014)4:3943]は、マウス細胞においてCRISPRシステムを用いるmiRNA阻害戦略を提供した。Zhaoは特別に設計されたgRNAを用いて、Cas9によって単一部位でmiRNA遺伝子を切断し、マウス細胞でmiRNAのノックダウンをもたらした。
【0011】
例えば、Jiangら[Jiangら、RNA Biology(2014)11(10):1243-9]は、CRISPR/Cas9を使用して、HeLa細胞におけるクラスターの5’領域を標的化することによって、そのクラスターからヒトmiR-93を枯渇させた。ドローシャ(Drosha)プロセシング部位(すなわち、二本鎖RNA特異的RNアーゼIII酵素であるドローシャが、一次miRNA(pri-miRNA)に結合してこれを切断し、それによって宿主細胞の核内でpre-miRNAにプロセシングする位置)及びシード配列(すなわち、典型的にはmiRNA 5’末端から2~7位に位置する、miRNAのmRNAへの結合に必須である保存された7塩基配列)を含む標的領域において、種々の小さいインデルが誘導された。Jiangらによれば、ただ1つのヌクレオチドの欠失でさえ、高い特異性で標的miRNAの完全なノックアウトをもたらした。
【0012】
植物ゲノム編集に関して、Bortesi及びFischer[Bortesi及びFischer、Biotechnology Advances(2015) 33:41-52]は、ZFN及びTALENと比較して植物におけるCRISPR-Cas9技術の使用を論じ、Basak及びNithin[Basak及びNithin、Front Plant Sci.(2015) 6:1001]は、シロイヌナズナ及びタバコ、並びに小麦、トウモロコシ、及びイネのような作物等のモデル植物におけるタンパク質コード遺伝子のノックダウンのためのCRISPR-Cas9技術の使用を実証した。
【0013】
miRNA活性又は標的結合部位の破壊に加えて、内在及び外来性の標的遺伝子の人工マイクロRNA(amiRNA)媒介遺伝子サイレンシングを使用する遺伝子サイレンシングが使用された[Tiwariら、Plant Mol Biol(2014) 86:1]。マイクロRNAと同様に、amiRNAは、約21nt長の一本鎖であり、pre-miRNA内の二重鎖の成熟miRNA配列を置換することによって設計される[Tiwariら(2014)前出]。これらのamiRNAは、人工発現カセット(プロモーター、ターミネーターなどを含む)内に導入遺伝子として導入され[Carbonellら、Plant Physiology(2014) 113.234989頁]、小分子RNA生合成及びサイレンシング機構を介してプロセシングされ、標的発現を下方制御する。Schwabら[Schwabら、The Plant Cell(2006) 第18巻、1121-1133]によれば、amiRNAは、組織特異的又は誘導性プロモーター下で発現された場合に活性であり、特に、関連するが同一ではないいくつかの標的遺伝子を下方制御する必要がある場合に、植物における特異的遺伝子サイレンシングに使用することができる。
【0014】
Senisら[Senisら、Nucleic Acids Research(2017) 第45巻(1):e3]は、内在miRNA遺伝子座へのプロモーターを用いない抗ウイルスamiRNAの操作を開示している。具体的には、Senisらは、Cas9又はTALENのような配列特異的ヌクレアーゼによって誘導される相同指向性DNA組換えによって、天然に存在するmiRNA遺伝子(例えば、miR122)に隣接するamiRNA前駆体導入遺伝子(ヘアピンpri-amiRNA)を挿入する。このアプローチは、天然miRNA(miR122)を発現する転写活性DNAを利用することによって、プロモーターとターミネーターのないamiRNAを使用する、すなわち内在プロモーターとターミネーターが、挿入されたamiRNA導入遺伝子の転写を駆動し調節した。
【0015】
RNA及び/又はタンパク質を細胞に導入する種々のDNAを含まない方法は、以前に記載されている。例えば、エレクトロポレーション及びリポフェクションを使用するRNAトランスフェクションは、米国特許出願公開第20160289675号明細書に記載されている。Cas9タンパク質及びgRNA複合体のマイクロインジェクションによる細胞へのCas9/gRNAリボ核タンパク質(RNP)複合体の直接送達は、Cho[Choら、「Heritable gene knockout in Caenorhabditis elegans by direct injection of Cas9-sgRNA ribonucleoproteins」、Genetics(2013)195:1177-1180]によって記載された。Cas9タンパク質/gRNA複合体のエレクトロポレーションによる送達は、Kim[Kimら、「Highly efficient RNA-guided genome editing in human cells via delivery of purified Cas9 ribonucleoproteins」、Genome Res.(2014)24:1012-1019]によって記載されている。リポソームを介するCas9タンパク質結合gRNA複合体の送達は、Zuris[Zurisら、「Cationic lipid-mediated delivery of proteins enables efficient protein-based genome editing in vitro and in vivo」、Nat Biotechnol.(2014) doi:10.1038/nbt.3081]によって報告された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許出願公開第20160289675号明細書
【非特許文献】
【0017】
【文献】Zhaoら、Scientific Reports(2014)4:3943
【文献】Jiangら、RNA Biology(2014)11(10):1243-9
【文献】Bortesi及びFischer、Biotechnology Advances(2015) 33:41-52
【文献】Basak及びNithin、Front Plant Sci.(2015) 6:1001
【文献】Tiwariら、Plant Mol Biol(2014) 86:1
【文献】Carbonellら、Plant Physiology(2014) 113.234989頁
【文献】Schwabら、The Plant Cell(2006) 第18巻、1121-1133
【文献】Senisら、Nucleic Acids Research(2017) 第45巻(1):e3
【文献】Choら、「Heritable gene knockout in Caenorhabditis elegans by direct injection of Cas9-sgRNA ribonucleoproteins」、Genetics(2013)195:1177-1180
【文献】Kimら、「Highly efficient RNA-guided genome editing in human cells via delivery of purified Cas9 ribonucleoproteins」、Genome Res.(2014)24:1012-1019
【文献】Zurisら、「Cationic lipid-mediated delivery of proteins enables efficient protein-based genome editing in vitro and in vivo」、Nat Biotechnol.(2014) doi:10.1038/nbt.3081
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、植物細胞においてRNAサイレンシング活性を有さない非コードRNA分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子を改変する方法であって、目的の標的RNAに対する非コードRNA分子のサイレンシング特異性を付与するDNA編集剤を植物細胞に導入し、それによって上記非コードRNA分子をコードするか又はそれにプロセシングされる上記遺伝子を改変する工程を含む方法が提供される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、植物細胞においてRNAサイレンシング活性を有さない非コードRNA分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子を改変する方法であって、目的の標的RNAに対する非コードRNA分子のサイレンシング特異性を付与するDNA編集剤を植物細胞に導入する工程を含む方法が提供される。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、植物細胞において標的RNAに対するRNAサイレンシング分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子を改変する方法であって、RNAサイレンシング分子のサイレンシング特異性を第2の標的RNAに向けてリダイレクトするDNA編集剤を植物細胞に導入し、それによって上記RNAサイレンシング分子をコードする上記遺伝子を改変する工程を含み、上記標的RNA及び上記第2の標的RNAが異なる方法が提供される。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、植物細胞において標的RNAに対するRNAサイレンシング分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子を改変する方法であって、RNAサイレンシング分子のサイレンシング特異性を第2の標的RNAに向けてリダイレクトするDNA編集剤を植物細胞に導入する工程を含み、上記標的RNA及び上記第2の標的RNAが異なる方法が提供される。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本発明のいくつかの実施形態の方法に従って生成された植物細胞が提供される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本発明のいくつかの実施形態の植物細胞を含む植物が提供される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、標的遺伝子の発現が低下した植物を生成する方法であって、(a)本発明のいくつかの実施形態の植物を育種する工程と、(b)目的の標的RNA若しくは第2の標的RNAの発現が低下した子孫植物、又は目的の標的RNAに対する非コードRNA分子中にサイレンシング特異性を含み、DNA編集剤を含まない子孫植物を選択し、それによって標的遺伝子の発現が低下した植物を生成する工程とを含む方法が提供される。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、増加したストレス耐性、増加した収率、増加した成長速度、又は増加した収量品質を有する植物を生成する方法であって、本発明のいくつかの実施形態に従って、植物細胞において非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか又はRNAサイレンシング分子にプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって植物を生成する工程を含み、目的の標的RNAが、ストレスに対する感受性、低下した収率、低下した成長速度、又は低下した収量品質を付与する植物の遺伝子のものである方法が提供される。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、病原体耐容性又は耐性植物を生成する方法であって、本発明のいくつかの実施形態に従って、植物細胞において非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか又はRNAサイレンシング分子にプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって病原体耐容性又は耐性植物を生成する工程を含み、目的の標的RNAは、病原体に対する感受性を付与する植物の遺伝子のものである方法が提供される。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、病原体耐容性又は耐性植物を生成する方法であって、本発明のいくつかの実施形態に従って、植物細胞において非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか又はRNAサイレンシング分子にプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって病原体耐容性又は耐性植物を生成する工程を含み、目的の標的RNAは、病原体の遺伝子のものである方法が提供される。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、病害虫耐容性又は耐性植物を生成する方法であって、本発明のいくつかの実施形態に従って、植物細胞において非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか又はRNAサイレンシング分子にプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって病害虫耐容性又は耐性植物を生成する工程を含み、目的の標的RNAは、病害虫の遺伝子のものである方法が提供される。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、病害虫耐容性又は耐性植物を生成する方法であって、本発明のいくつかの実施形態に従って、植物細胞において非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか又はRNAサイレンシング分子にプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって病害虫耐容性又は耐性植物を生成する工程を含み、目的の標的RNAが、病害虫に対する感受性を付与する植物の遺伝子である方法が提供される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、除草剤耐性植物を生成する方法であって、本発明のいくつかの実施形態に従って、植物細胞において非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか又はRNAサイレンシング分子にプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって除草剤耐性植物を生成する工程を含み、目的の標的RNAが、除草剤に対する感受性を付与する植物の遺伝子のものである方法が提供される。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本発明のいくつかの実施形態の方法に従って生成された植物が提供される。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本発明のいくつかの実施形態の植物の種子が提供される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記非コードRNA分子をコードするか又はそれにプロセシングされる上記遺伝子は、植物細胞に対して内在性である。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記RNAサイレンシング分子をコードする上記遺伝子は、植物細胞に対して内在性である。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、非コードRNA分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子を改変することは、上記非コードRNA分子に、目的の標的RNAに対して少なくとも45%の相補性を付与することを含む。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、RNAサイレンシング分子をコードする遺伝子を改変することは、上記RNAサイレンシング分子に、上記第2の標的RNAに対して少なくとも45%の相補性を付与することを含む。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、非コードRNA分子のサイレンシング特異性は、目的の標的RNAのRNAレベル(濃度)又はタンパク質レベル(濃度)を測定することによって決定される。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、RNAサイレンシング分子のサイレンシング特異性は、上記第2の標的RNAのRNAレベル(濃度)を測定することによって決定される。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子のサイレンシング特異性は、表現型的に決定される。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、表現型的に決定されることは、植物の葉の着色、花の着色、成長速度、植物の大きさ、作物の収率、果実の形質、生物的ストレス耐性、及び非生物的ストレス耐性からなる群から選択される少なくとも1つの植物表現型の決定によってもたらされる。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、非コードRNA分子のサイレンシング特異性は、遺伝子型的に決定される。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、植物表現型は、植物遺伝子型の前に決定される。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、植物遺伝子型は、植物表現型の前に決定される。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子は、前駆体からプロセシングされる。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子は、RNA干渉(RNAi)分子である。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によれば、RNAi分子は、低分子干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、Piwi相互作用RNA(piRNA)及びトランス作用性siRNA(tasiRNA)からなる群から選択される。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、非コードRNA分子は、核内小分子RNA(snRNA)、核小体小分子RNA(snoRNA)、長鎖非コードRNA(lncRNA)、リボソームRNA(rRNA)、転移RNA(tRNA)、リピート由来RNA、及び転移因子RNAからなる群から選択される。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記RNA分子又はRNAi分子は、RNAi分子の配列が、構造のオリジナリティを保存し、細胞RNAi因子によって認識されるように改変されるように設計される。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態によれば、遺伝子の改変は、欠失、挿入、点突然変異、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される改変によって行われる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態によれば、改変は、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子のステム領域にある。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態によれば、改変は、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子のループ領域にある。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態によれば、改変は、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子の非構造化領域にある。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態によれば、改変は、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子のステム領域及びループ領域にある。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態によれば、改変は、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子のステム領域及びループ領域、並びに非構造化領域にある。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態によれば、改変は挿入である。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態によれば、改変は欠失である。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態によれば、改変は点突然変異である。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態によれば、改変は、最大200ヌクレオチドの改変を含む。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態によれば、当該方法は、植物細胞にドナーオリゴヌクレオチドを導入する工程をさらに含む。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記DNA編集剤は、植物発現性プロモーターに作動可能に連結された少なくとも1つのgRNAを含む。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態によれば、DNA編集剤はエンドヌクレアーゼを含まない。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態によれば、DNA編集剤はエンドヌクレアーゼを含む。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態によれば、DNA編集剤は、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)及びCRISPRからなる群から選択されるDNA編集システムである。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態によれば、エンドヌクレアーゼはCas9を含む。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態によれば、DNA編集剤は、DNA、RNA又はRNPとして細胞に適用される。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態によれば、DNA編集剤は、植物細胞における発現を監視するためのレポーターに連結される。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態によれば、レポーターは蛍光タンパク質である。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態によれば、目的の標的RNA又は第2の標的RNAは、植物細胞に対して内在性である。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態によれば、目的の標的RNA又は第2の標的RNAは、植物細胞に対して外来性である。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態によれば、植物細胞はプロトプラストである。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態によれば、育種は、交配又は自配を含む。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態によれば、植物は、遺伝子組換えされていない(非GMOである)。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態によれば、植物は、作物、花及び樹木からなる群から選択される。
【0074】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料を、本発明の実施形態の実施又は試験において使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料を以下に記載する。矛盾する場合には、定義を含む特許明細書が優先する。さらに、材料、方法、及び実施例は、例示にすぎず、必ずしも限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
本発明のいくつかの実施形態は、添付の図面を参照して、単に例として本明細書に記載される。ここで図面を詳細に特に参照すると、示される詳細は、例として、及び本発明の実施形態の例示的な議論の目的のためであることが強調される。この点に関して、図面を参照した説明により、本発明の実施形態がどのように実施され得るかが当業者に明らかになる。
【0076】
図1図1は、PDS遺伝子を標的とする、従って、内在PDS遺伝子の遺伝子サイレンシングを誘導するsiRNAによる内在miRNAのゲノム編集誘導遺伝子サイレンシング(GEiGS)交換の実施形態のフローチャートであり。改変を導入するために、2成分系が使用されている。第一に、CRISPR/CAS9システムは、GFP含有ベクター中で、選択された遺伝子座において、その部位における相同DNA修復(HDR)を促進するように設計された特異的ガイドRNAを介して切断を生じる。第二に、新たに割り当てられた遺伝子を標的とするための、miRNA配列の所望の改変を伴うドナー(DONOR)配列を、HDRの鋳型として導入する。このシステムは、プロトプラスト形質転換において使用されており、CRISPR/CAS9ベクター中のGFPシグナルに起因してFACSによって濃縮され、回収され、そして植物に再生される。
図2図2A~Cは、PDS遺伝子のサイレンシングが光退色を引き起こすことを示す写真である。タバコ(Nicotiana)(図2A~B)及びシロイヌナズナ(Arabidopsis)(図2C)植物におけるPDS遺伝子のサイレンシングは、ベンサミアナタバコ(図2B)及びシロイヌナズナ(図2C、右側)において光退色を引き起こす。PDSサイレンシングの3.5週間後に写真を撮った。
図3図3A~Dは、GEiGSを用いたシロイヌナズナにおけるGFP発現レベルのノックダウンの写真である。GFPを発現するシロイヌナズナプロトプラストを、GFP siRNAを発現するためにGEiGSを用いて編集したプロトプラスト(図3C~D)と比較して、対照として示す(図3A~B)。注目すべきことに、GEiGSプロトプラスト又は植物は、GFPタンパク質の発現についてサイレンシングされる。
図4図4は、GFPを標的とするsiRNAによる内在miRNAのGEiGS交換により、GFPに対する活性RNAiを有するシロイヌナズナ植物を生成する実施形態のフローチャートである。改変を導入するために、CRISPR/CAS9システムは、RFP含有ベクター中で、選択された遺伝子座において、その部位における相同DNA修復(HDR)を促進するように設計された特異的ガイドRNAを介して切断を生じる。第二に、GFP遺伝子を標的とするための、miRNA配列の所望の改変を有するドナー配列を、HDRの鋳型として導入する。このシステムは、GFP発現プロトプラストにおいて使用されている。CRISPR/CAS9ベクター中のRFPシグナルに起因してFACSによる推定上改変された細胞の濃縮が行われ、回収されている。再生された植物は、GFPシグナルの強度について分析されている。
図5図5は、GFPを標的とするsiRNAによる内在miRNAのGEiGS交換により、GFPに対するGEiGS指向RNAiによるシロイヌナズナ植物を生成する実施形態のフローチャートである。注目すべきことに、GEiGS植物は、植物形質転換後にGFP発現についてサイレンシングされる。RFPは、CRISPR/CAS9ベクターの一過性の存在を有する細胞の濃縮のために使用されている。
図6図6は、GFPを標的とするsiRNAによる内在miRNAのGEiGS交換により、ウイルス感染、例えば、TMV感染(すなわち、外来性遺伝子)に抵抗性の植物を生成する実施形態のフローチャートである。RFPは、CRISPR/CAS9ベクターの一過性の存在を有する細胞の濃縮のために使用されている。
図7図7は、穿孔線虫ネモグリセンチュウによって引き起こされたトップリング病に罹患している倒伏したバナナ植物の写真である。
図8図8は、タイ・グエン(Tay Nguyen)地域の異なる作物におけるネモグリセンチュウ及びミナミネグサレセンチュウの発生を示す表である。
図9図9は、GEiGS鋳型を生成するための計算パイプラインの実施形態のフローチャートである。計算GEiGSパイプラインは、生物学的メタデータを適用し、そして内在非コードRNA遺伝子(例えば、miRNA遺伝子)を最小限に編集するために使用されるGEiGS DNAドナー鋳型の自動生成を可能にし、新たな機能の獲得、すなわち、目的の遺伝子発現を標的とするそれらのサイレンシング能力のリダイレクションを導く。
図10図10は、任意の所望の外来性病害虫遺伝子を標的とする病害虫耐性植物の設計を示す実施形態のフローチャートである。病原体/病害虫必須遺伝子を標的としたsiRNAによる内在性miRNAのGEiGS交換により、病原体/病害虫感染に抵抗性の植物を生成する。
図11図11は、最小限に編集されたmiRNA遺伝子塩基を用いてRNAサイレンシング分子を設計するために必要とされる主要な段階を示す実施形態の図である。
図12図12A~Gは、miR-390及び改変されたmiR390の一次転写産物、構造並びに標的配列を示す。miR390の一次転写産物、及びその改変版の二次構造表現:(図12A)野生型;(図12B~C)標的GFPへの改変版;(図12D~E)標的AtPDS3への改変版;(図12F~G)標的AtADH1への改変版。成熟miRNA/siRNAを赤色で囲み、設計による構造保存を示す。CRISPR/CAS9システムによる操作のために標的とされた領域を紫色で囲み、NGG配列を黄色で強調する(図12A)。
図13(1)】図13A~Gは、miR-173及び改変されたmiR173の一次転写産物、構造並びに標的配列を示す。miR173及びその改変版の一次転写産物の二次構造表現:(図13A)野生型;(図13B~C)標的GFPへの改変版;(図13D~E)標的AtPDS3への改変版;(図13F~G)標的AtADH1への改変版。成熟miRNA/siRNAを赤色で囲み、設計による構造保存を示す。CRISPR/CAS9システムによる操作のために標的とされた領域を紫色で囲み、NGG配列を黄色で強調する(図13A)。
図13(2)】図13Hは、前駆体構造が生合成において役割を果たさず、従って維持される必要がない、GEiGSオリゴ設計の実施形態の例を示す。ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)bnTAS3B tasiRNAに基づく設計。上から下へ:野生型tasiRNA、最小の配列変更を有するGEiGS設計、及び最大の配列変更を有するGEiGS設計。成熟した小分子RNA分子を生じる非コードRNA前駆体の選択は緑色で強調してある。GEiGSオリゴと野生型配列との間の配列の相違は、赤色で強調されている。注目すべきは、tasiRNAの生合成は、miRNAやtRNAとは異なり、前駆体の二次構造に依存しないことである。
図14図14A~Dは、miR-173及びその改変版による遺伝子ターゲティングを例示する。(図14A)野生型miR-173は、成熟miRNAの、遺伝子中の配列(赤色)に対する配列相補性によってTAS1c転写産物を標的とする。新たに改変されたmiRNA(SWAP1、2、3、4、9及び10)を、それらの配列(赤色)に対する配列相補性によって、(図14B)GFP、(図14C)AtPDS3及び(図14D)AtADH1を標的とするように設計した。wt配列からの改変ヌクレオチドは小文字で書かれている。
図15図15A~Dは、miR-390及びその改変版による遺伝子ターゲティングを例示する。(図15A)野生型miR-390は、成熟miRNAの、遺伝子内の配列(赤色)に対する配列相補性によってTAS3転写産物を標的とする。新たに改変されたmiRNA(SWAP5、6、7、8、11及び12)を、それらの配列(赤色)に対する配列相補性によって、(図15B)GFP、(図15C)AtPDS3及び(図15D)AtADH1を標的とするように設計した。wt配列からの改変ヌクレオチドは小文字で書かれている。
図16図16は、PDS3表現型/遺伝子型を示す。ドナーの存在対野生型配列を検証するために、退色した表現型植物を選択し、内部アンプリコンPCR、続いてBtsαI(NEB)による制限消化分析によって遺伝子型を決定した。レーン1:ドナー(DONOR)なしで処理された植物、制限あり、レーン2~4:ドナーを含むPDS3処理植物、制限あり、レーン5:陽性プラスミドドナー対照、非制限、レーン6:鋳型無し対照の水、レーン7:陽性プラスミドドナー、制限あり、レーン8:負のドナーで衝撃された植物、制限あり、レーン9:非処理対照植物、制限あり。その後のアンプリコンの外部PCR増幅を処理し、挿入を確認するために配列決定した。
図17図17は、ADH1表現型/遺伝子型を示す。ドナーの存在を検証するために、植物をアリルアルコール耐性により選択し、内部アンプリコンPCR、続いてBccI(NEB)制限消化により遺伝子型を決定した。レーン1:アリルアルコール感受性対照植物、制限あり、レーン2~4:ドナーを含むアリルアルコール耐性植物、制限あり、レーン5:陽性プラスミドドナー対照、制限なし、レーン6:鋳型なし対照、レーン7:陽性プラスミドドナー、制限あり、レーン8:非特異的ドナーを用いた衝撃された植物、制限あり、レーン9:非アリルアルコール処理対照、制限あり。
図18図18は、AtPDS3転写産物を標的とするmiR-173改変植物における遺伝子発現分析を示すグラフである。AtPDS3発現の分析は、GEiGS#5及びSWAP1及び2(GFP)で衝撃された植物と比較して、GEiGS#4及びSWAP3で衝撃された植物を再生する際に、qRT-PCRによって行った。注目すべきは、対照植物と比較して、miR-173をAtPDS3を標的とするように改変した場合、遺伝子発現レベルの平均82%の低下が観察された(エラーバーはSDを示す;Ct値で計算したp値<0.01)。
図19図19は、AtPDS3転写産物を標的とするmiR-390改変植物における遺伝子発現分析を示すグラフである。AtADH1発現の分析は、GEiGS#5及びSWAP1及び2(GFP)で衝撃された植物と比較して、GEiGS#1及びSWAP11で衝撃された植物を再生する際に、qRT-PCRによって行った。注目すべきは、対照植物と比較して、miR-390をAtADH1を標的とするように改変した場合、遺伝子発現レベルの平均82%の低下が観察された(エラーバーはSDを表す;Ct値で計算したp値<0.01)。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、RNAサイレンシング分子を含む非コードRNA分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子を改変することに関し、より詳細には、植物における目的の内在又は外来性の標的RNAをサイレンシングするためのその使用に関するが、これに限定されない。
【0078】
本発明の原理及び動作は、図面及び添付の説明を参照することにより、より良く理解することができる。
【0079】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載されるか、又は実施例によって例示される詳細に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、又は様々な方法で実施又は実行されることが可能である。また、本明細書で使用される語法及び用語は、説明の目的のためのものであり、限定とみなされるべきではないことを理解されたい。
【0080】
様々な生物(例えば、マウス、ヒト、植物)におけるRNA分子のゲノム編集に関するこれまでの研究では、遺伝子組換えを用いたmiRNA活性又は標的結合部位の破壊に焦点が当てられていた。植物におけるゲノム編集は、さらに、CRISPR-Cas9技術、ZFN及びTALENの、モデル植物における遺伝子のノックダウン又は挿入への使用に集中している。さらに、内在及び外来性の標的遺伝子をサイレンシングするために人工マイクロRNA導入遺伝子を使用する植物における遺伝子サイレンシングが記載された[Molnar Aら、Plant J.(2009)58(1):165-74.doi:10.1111/j.1365-313X.2008.03767.x.Epub 2009年1月19日;Borges及びMartienssen、Nature Reviews Molecular Cell Biology | AOP、2015年11月4日オンライン公開;doi:10.1038/nrm4085]。人工miRNA導入遺伝子は、人工発現カセット(プロモーター、ターミネーター、選択マーカーなどを含む)内で植物細胞に導入され、標的発現を下方制御する。
【0081】
本発明を実施に移す中で、本発明者らは、目的の非天然標的遺伝子(植物細胞に対して内在性又は外来性)を標的とし、それと干渉するように設計された非コードRNA分子(例えば、内在性)を対象とする遺伝子編集技術を考案した。本明細書に記載の遺伝子編集技術は、プロモーター、ターミネーター、選択マーカーを有する発現カセットを含む古典的な分子遺伝学的遺伝子導入ツールを実施しない。
【0082】
本明細書中以下及びそれに続く実施例の節に示されるように、本発明者らは、例えば、RNAサイレンシング分子(例えば、siRNA、miRNA、piRNA、tasiRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、snRNA、snoRNAなど)を含む植物細胞の内在非コードRNA分子を利用し、そしてそれらを改変して、目的の任意のRNA標的を標的化し、そして下方制御し得る、ゲノム編集誘導遺伝子サイレンシング(GEiGS)プラットフォームを設計した(図1の例示的フローチャートを参照のこと)。GEiGSを使用して、本発明の方法は、有望な非コードRNA分子のスクリーニング、これらの内在RNA分子中のヌクレオチドを編集し、それによってそれらの特異性を、病原体及び病害虫によってコードされる内在性及び/又は外来性のRNAを含む、目的の任意のRNAを効果的かつ特異的に標的化し、下方制御するためにリダイレクトすることを可能にする(図9の例示的フローチャートを参照のこと)。総合すると、GEiGSは、作物収量、作物成長速度、作物品質を高めるため、並びにストレス、病原体、病害虫及び除草剤に対する作物保護のための新規な非GMO技術として利用することができる。
【0083】
従って、本発明の一態様によれば、植物細胞においてRNAサイレンシング活性を有さない非コードRNA分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子を改変する方法であって、目的の標的RNAに対する非コードRNA分子のサイレンシング特異性を付与するDNA編集剤を植物細胞に導入し、それによって非コードRNA分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子を改変する工程を含む方法が提供される。
【0084】
本発明の別の態様によれば、植物細胞において標的RNAに対するRNAサイレンシング分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子を改変する方法であって、RNAサイレンシング分子の特異性を第2の標的RNAに向けてリダイレクトするDNA編集剤を植物細胞に導入し、それによってRNAサイレンシング分子をコードする遺伝子を改変する工程を含み、標的RNA及び第2の標的RNAが異なる方法が提供される。
【0085】
本明細書で使用される「植物」という用語は、種子、シュート、茎、根(塊根を含む)、台木、接ぎ穂、及び植物細胞、組織及び器官を含む、植物全体、接木植物、植物及び植物部分の祖先及び子孫を包含する。植物は、懸濁培養物、胚、分裂組織領域、カルス組織、葉、配偶体、胞子体、花粉、及び小胞子を含む任意の形態であり得る。本発明の方法において有用であり得る植物は、上科(スーパーファミリー)緑色植物亜界に属する全ての植物、特に、以下の植物を含むリストから選択される、飼料又は飼葉用マメ科植物、観賞植物、食用作物、樹木、又は潅木植物を含む、単子葉植物及び双子葉植物が挙げられる:アカシア(Acacia)種、カエデ属(Acer)の種、マタタビ属(Actinidia)の種、トチノキ属(Aesculus)の種、カウリマツ(Agathis australis)、アルビジア・アマラ(Albizia amara)、アルソフィラ・トリカラー(Alsophila tricolor)、ウシクサ属(Andropogon)の種、ラッカセイ属(Arachis)の種、ビンロウ(Aseca catechu)、アステリア・フラグランス(Astelia fragrans)、アストラガルス・シサー(Astragalus cicer)、バイキアエア・プルリジュガ(Baikiaea plurijuga)、カバノキ属(Betuila)の種、アブラナ属(Brassica)の種、オヒルギ(Bruguiera gymnorrhiza)、ブルケア・アフリカーナ(Burkea africana)、ハナモツヤクノキ(Butea frondosa)、カダバ・ファリノーサ(Cadaba farinosa)、ベニゴウカン属(カリアンドラ属、Calliandra)の種、チャノキ(Camellia sinensis)、ダンドク(Canna indica)、トウガラシ属(Capsicum)の種、カシア属(Cassia)の種、セントロエマ・プベスケンス(Centroema pubescens)、ボケ属(Chacoomeles)の種、シナニッケイ(Cinnamomum cassia)、アラビカコーヒーノキ(Coffea arabica)、コロフォスペルムム・モパネ(Colophospermum mopane)、タマザキクサフジ(Coronillia varia)、コトネアスター・セロティナ(Cotoneaster serotina)、サンザシ属(Crataegus)の種、キュウリ属(Cucumis)の種、イトスギ属(Cupressus)、シルバー・ファーン(Cyathea dealbata)、マルメロ(Cydonia oblonga)、スギ(Cryptomeria japonica)、オガルカヤ属(Cymbopogon)の種、シンシア・ディアルバータ(Cynthea dealbata)、マルメロ、ヴァロニカ(Dalbergia monetaria)、ダバリア・ディバリカータ(Davallia divaricata)、ヌスビトハギ属(Dasmodium)の種、ディクソニア・スクアローサ(Dicksonia squarosa)、ジベテロポゴン・アンプレクテンス(Dibeteropogon amplectens)、ジオクレア属(Dioclea)の種、フジマメ属(Dolichos)の種、ドリクニウム・レクタム(Dorycnium rectum)、エチノクロア・ピラミダリス(Echinochloa pyramidalis)、エーラフィア属(Ehraffia)の種、シコクビエ(Eleusine coracana)、スズメガヤ属(Eragrestis)の種、デイゴ属(エリスリナ属、Erythrina)の種、ユーカリ属(Eucalypfus)の種、ユークレア・シンペリー(Euclea schimperi)、ユーラリア・ビロサ(Eulalia vi/losa)、ヅパ属(Pagopyrum)の種、フェイジョア・セロウィアナ(Feijoa sellowlana)、オランダイチゴ属(Fragaria)の種、フレミンジア(Flemingia)の種、フレイシネチア・バンクシイ(Freycinetia banksli)、ゲンノショウコ(Geranium thunbergii)、イチョウ(GinAgo biloba)、グリシン・ジャバニカ(Glycine javanica)、グリリシディア属(Gliricidia)の種、アプランドワタ(ゴシピウム・ヒルスツム、Gossypium hirsutum)、グレビレア(Grevillea)の種、グイボウルティア・コレオスペルマ(Guibourtia coleosperma)、イワオウギ属(Hedysarum)の種、ヘマルチア・アルティッシマ(Hemaffhia altissima)、ヘテロポゴン・コントルツス(Heteropogon contoffus)、オオムギ(Hordeum vulgare)、ヒパーレニア・ルファ(Hyparrhenia rufa)、オトギリソウ(Hypericum erectum)、ヒペフェリア・ジソルテ(Hypeffhelia dissolute)、インジゴ・インカマタ(Indigo incamata)、アヤメ属(Iris)の種、レプタルレナ・ピロリフォリア(Leptarrhena pyrolifolia)、レスペディザ(Lespediza)の種、レチュカ(Lettuca)の種、ギンネム(レウカエナ・レウコセファラ、Leucaena leucocephala)、ロウデチア・シンプレクス(Loudetia simplex)、ロトヌス・バイネスリ(Lotonus bainesli)、ミヤコグサ属(Lotus)の種、マクロチローマ・アキシラレ(Macrotyloma axillare)、リンゴ属(Malus)の種、キャッサバ(Manihot esculenta)、ムラサキウマゴヤシ(Medicago saliva)、メタセコイア(Metasequoia glyptostroboides)、ムサ・サピエンツム(Musa sapientum)、バナナ、ニコチアヌム(Nicotianum)の種、オノブリョチス(Onobrychis)の種、オルニソプス属(Ornithopus)の種、イネ属(Oryza)の種、ペルトフォルム・アフリカヌム(Peltophorum africanum)、チカラシバ属(Pennisetum)の種、パーシア・グラティッシマ(アボカド、Persea gratissima)、ペチュニア属(Petunia)の種、インゲンマメ属(Phaseolus)の種、カナリーヤシ(Phoenix canariensis)、フォルミウム・クッキアヌム(Phormium cookianum)、カナメモチ属(Photinia)種、ピセア・グラウカ(Picea glauca)、マツ属(Pinus)種、エンドウ(Pisum sativam)、ポドカルプス・トタラ(Podocarpus totara)、ポゴナルスリア・フレッキイ(Pogonarthria fleckii)、ポゴナルスリア・セクアルローサ(Pogonaffhria squarrosa)、ポプラ属(Populus)の種、プロソピス・シネラリア(Prosopis cineraria)、ベイマツ(Pseudotsuga menziesii)、プテロロビウム・ステラツム(Pterolobium stellatum)、セイヨウナシ(Pyrus communis)、カシ属(Quercus)の種、シャリンバイ(Rhaphiolepsis umbellata)、ロパロスチリス・サピダ(Rhopalostylis sapida)、ルス・ナタレンシス(Rhus natalensis)、セイヨウスグリ(Ribes grossularia)、スグリ属(Ribes)の種、ニセアカシア(Robinia pseudoacacia)、バラ属(Rosa)の種、キイチゴ属(Rubus)種、ヤナギ属(Salix)の種、スキザクリウム・サングイネウム(Schyzachyrium sanguineum)、シアドピチス・ベフィシラタ(Sciadopitys vefficillata)、セコイア(Sequoia sempervirens)、セコイアデンドロン(Sequoiadendron giganteum)、モロコシ(Sorghum bicolor)、ホウレンソウ属(Spinacia)の種、スポロボルス・フィムブリアツス(Sporobolus fimbriatus)、スチブルス・アロペクロイデス(Stiburus alopecuroides)、スチロサントス・フミリス(Stylosanthos humilis)、タデハギ(Tadehagi)の種、ラクウショウ(Taxodium distichum)、テメダ・トリアンドラ(Themeda triandra)、ジャジクソウ属(Trifolium)の種、コムギ属(Triticum)の種、アメリカツガ(Tsuga heterophylla)、スノキ属(Vaccinium)種、ソラマメ属(Vicia)の種、ヨーロッパブドウ(ヴィティス・ヴィニフェラ、Vitis vinifera)、ワトソニア・ピラミダタ(Watsonia pyramidata)、オランダカイウ(Zantedeschia aethiopica)、トウモロコシ(Zea mays)、アマランサス、アーティチョーク(チョウセンアザミ)、アスパラガス、ブロッコリー、芽キャベツ(Brussels sprouts)、キャベツ、セイヨウアブラナ(キャノーラ)、ニンジン、カリフラワー、セロリ、コラードの葉(collard greens)、アマ(亜麻)、ケール、レンティル、アブラナ(oilseed rape)、オクラ、タマネギ、ジャガイモ、イネ、ダイズ、イチゴ、サトウダイコン、サトウキビ、ヒマワリ、トマト、カボチャ、茶及び樹木。あるいは、藻類及び他の非緑色植物を、本発明のいくつかの実施形態の方法に使用することができる。
【0086】
特定の実施形態によれば、植物は、作物、花又は樹木である。
【0087】
特定の実施形態によれば、植物は、木質植物種、例えば、オニマタタビ(Actinidia chinensis)(マタタビ科)、キャッサバ(Manihotesculenta)(トウダイグサ科)、ユリノキ(Firiodendron tulipera)(モクレン科)、ポプラ(Populus)(ヤナギ科)、ビャクダン(Santalum album)(ビャクダン科)、ニレ(Ulmus)(ニレ科)、並びにバラ科(リンゴ属、サクラ属、ナシ属)及びミカン科(柑橘属、ミカン属(Microcitrus))、裸子植物、例えば、カナダトウヒ(Picea glauca)及びテーダマツ(Pinus taeda)、森林樹(例えば、カバノキ科、ブナ科、裸子植物及び熱帯樹種)、果樹、灌木又は草本、例えば、(バナナ、ココア、ココヤシ、コーヒー、ナツメヤシ、ブドウ及び茶)並びにアブラヤシである。
【0088】
特定の実施形態によれば、植物は、熱帯作物のもの、例えば、コーヒー、マカダミア、バナナ、パイナップル、タロ、パパイヤ、マンゴ、オオムギ、豆類、キャッサバ、ヒヨコマメ、ココア(チョコレート)、カウピー、トウモロコシ(トウキビ)、キビ、イネ、モロコシ、サトウキビ、サツマイモ、タバコ、タロ、チャ(茶)、ヤムである。
【0089】
「穀物」、「種子」、又は「豆」は、別のそのような植物に発生することができる開花植物の生殖単位を指す。本明細書で使用される場合、これらの用語は、同義的に、かつ互換的に使用される。
【0090】
特定の実施形態によれば、植物は植物細胞、例えば胚細胞懸濁液中の植物細胞である。
【0091】
特定の実施形態によれば、植物細胞はプロトプラストである。
【0092】
プロトプラストは、任意の植物組織、例えば、果実、花、根、葉、胚、胚細胞懸濁液、カルス又は苗組織に由来する。
【0093】
本明細書中で使用される場合、用語「非コードRNA分子」は、アミノ酸配列に翻訳されず、そしてタンパク質をコードしないRNA配列をいう。
【0094】
一実施形態によれば、非コードRNA分子は、典型的には、RNAサイレンシングプロセシング機構又は活性を受ける。しかし、本明細書では、RNA干渉又は翻訳阻害をもたらすプロセシング機構を誘発しうるヌクレオチドのわずかな変化(例えば、miRNAについて24ヌクレオチドまで)も意図される。
【0095】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子は、細胞に対して内在性(天然、例えば未変性)である。非コードRNA分子はまた、細胞に対して外来性であり得る(すなわち、外部から付加され、そして細胞中に天然に存在しない)ことが理解される。
【0096】
いくつかの実施形態によれば、非コードRNA分子は、固有の翻訳阻害活性を含む。
【0097】
いくつかの実施形態によれば、非コードRNA分子は、固有のRNAi活性を含む。
【0098】
いくつかの実施形態によれば、非コードRNA分子は、固有の翻訳阻害活性又は固有のRNAi活性を含まない(すなわち、非コードRNA分子は、RNAサイレンシング活性を有さない)。
【0099】
本発明の一実施形態によれば、非コードRNA分子は、標的RNA(例えば、天然標的RNA)に特異的であり、例えば、RT-PCR、ウェスタンブロット、免疫組織化学及び/若しくはフローサイトメトリー、配列決定又は任意の他の検出方法によってRNA又はタンパク質レベルで決定される場合に、標的遺伝子に対して100%未満の全体的相同性、例えば、標的遺伝子に対して99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%未満の全体的相同性を示して、第2の標的RNA又は目的の標的RNAを交差阻害又はサイレンシングするように設計されない限り(以下に論じる)、第2の標的RNA又は目的の標的RNAを交差阻害又はサイレンシングしない。
【0100】
一実施形態によれば、非コードRNA分子は、RNAサイレンシング分子又はRNA干渉(RNAi)分子である。
【0101】
用語「RNAサイレンシング」又はRNAiは、非コードRNA分子(「RNAサイレンシング分子」又は「RNAi分子」)が、配列特異的に、遺伝子発現又は翻訳の同時転写(転写時)阻害又は転写後阻害を媒介する細胞調節機構をいう。
【0102】
一実施形態によれば、RNAサイレンシング分子は、転写中のRNA抑制(同時転写遺伝子サイレンシング)を媒介することができる。
【0103】
具体的な実施形態によれば、同時転写遺伝子サイレンシングは、エピジェネティックサイレンシング(例えば、機能的遺伝子発現を妨げるクロマチン状態(chromatic state))を含む。
【0104】
一実施形態によれば、RNAサイレンシング分子は、転写後のRNA抑制(転写後遺伝子サイレンシング)を媒介することができる。
【0105】
転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)とは、典型的には、翻訳を妨げることによって活性を低下させるメッセンジャーRNA(mRNA)分子の分解又は切断の過程(典型的には細胞質内で起こる)をいう。例えば、そして以下に詳細に議論されるように、RNAサイレンシング分子のガイド鎖は、mRNA分子中の相補的配列と対合し、そして例えば、アルゴノート2(Ago2)による切断を誘導する。
【0106】
同時転写遺伝子サイレンシングとは、典型的には遺伝子活性の不活性化(すなわち、転写抑制)を指し、典型的には細胞核内で起こる。このような遺伝子活性抑制は、標的DNAやヒストンをメチル化するメチルトランスフェラーゼなどのエピジェネティック関連因子によって媒介される。従って、同時転写遺伝子サイレンシングにおいて、小分子RNAと標的RNAとの結合(小分子RNA-転写産物相互作用)は、標的新生転写産物を不安定化し、そして遺伝子活性及び転写を抑制する構造へのクロマチン再構築を誘導するDNA改変酵素及びヒストン改変酵素(すなわち、エピジェネティック因子)を動員する。また、同時転写遺伝子サイレンシングにおいて、クロマチン関連の長鎖非コードRNA骨格は、小分子RNAとは無関係にクロマチン修飾複合体を動員してもよい。これらの同時転写サイレンシング機構は、不適切な転写事象を検出しサイレンシングするRNAサーベイランスシステムを形成し、自己強化エピジェネティックループを介してこれらの事象の記憶を提供する[D.Hoch及びD.Moazed、RNA-mediated epigenetic regulation of gene expression、Nat Rev Genet.(2015) 16(2):71-84に記載されている]。
【0107】
本発明の一実施形態によれば、RNAi生合成/プロセシング機構は、RNAサイレンシング分子を生成する。
【0108】
本発明の一実施形態によれば、RNAi生合成/プロセシング機構はRNAサイレンシング分子を生成するが、特異的標的は特定されていない。
【0109】
一実施形態によれば、非コードRNA分子は、RNA干渉(RNAi)を誘導することができる。
【0110】
以下は、本発明の特定の実施形態に従って使用され得る固有のRNAi活性を含む非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)の詳細な説明である。
【0111】
一実施形態によれば、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子は、前駆体からプロセシングされる。
【0112】
一実施形態によれば、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子は、一本鎖RNA(ssRNA)前駆体からプロセシングされる。
【0113】
一実施形態によれば、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子は、二重鎖構造の一本鎖RNA前駆体からプロセシングされる。
【0114】
一実施形態によれば、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子は、(例えば、完全及び不完全な塩基対合を含む)dsRNA前駆体からプロセシングされる。
【0115】
一実施形態によれば、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子は、非構造化RNA前駆体からプロセシングされる。
【0116】
一実施形態によれば、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子は、タンパク質コードRNA前駆体からプロセシングされる。
【0117】
一実施形態によれば、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子は、非コードRNA前駆体からプロセシングされる。
【0118】
一実施形態によれば、dsRNAは、2つの異なる相補的RNAから、又はそれ自体が折り畳まれてdsRNAを形成する単一のRNAから誘導することができる。
【0119】
完全及び不完全な塩基対合RNA(すなわち、二本鎖RNA;dsRNA)、siRNA及びshRNA - 細胞中の長いdsRNAの存在は、ダイサー(dicer)と呼ばれるリボヌクレアーゼIII酵素の活性を刺激する。ダイサー(エンドリボヌクレアーゼダイサー又はRNaseモチーフを有するヘリカーゼとしても知られる)は、植物において典型的にはダイサー様(DCL)タンパク質と呼ばれる酵素である。植物によってDCL遺伝子の数が異なるため、たとえばシロイヌナズナのゲノムは典型的には4つのDCL遺伝子をもち、イネは8つのDCL遺伝子をもち、トウモロコシのゲノムは5つのDCL遺伝子をもつ。ダイサーは、短い干渉RNA(siRNA)として知られるdsRNAの短いフラグメントへのdsRNAのプロセシングに関与する。ダイサー活性に由来するsiRNAは、典型的には、約21~約23ヌクレオチド長であり、2つの3’ヌクレオチドオーバーハングを有する約19塩基対二重鎖を含む。
【0120】
従って、本発明のいくつかの実施形態は、dsRNAをコードする遺伝子を改変して、サイレンシング特異性(サイレンシング活性を含む)を第2の標的RNA(すなわち、目的のRNA)に向け直すことを意図する。
【0121】
一実施形態によれば、21bpより長いdsRNA前駆体が使用される。種々の研究は、長いdsRNAが、ストレス応答を誘導することなく、又は有意なオフターゲット効果を引き起こすことなく、遺伝子発現をサイレンシングするために使用され得ることを実証する。例えば、以下を参照[Stratら、Nucleic Acids Research、2006、第34巻、第13号、3803-3810;Bhargava Aら、Brain Res. Protoc.2004;13:115-125;Diallo M.ら、Oligonucleotides.2003;13:381-392;Paddison P.J.ら、Proc.Natl Acad.Sci.USA.2002;99:1443-1448;Tran N.ら、FEBS Lett.2004;573:127-134]。
【0122】
用語「siRNA」は、RNA干渉(RNAi)経路を誘導する小分子の阻害性RNA二重鎖(一般に18~30塩基対)を指す。典型的には、siRNAは、中央の19bp二重鎖領域及び末端上の対称的な2塩基3’-オーバーハングを有する21マー(塩基長)として化学的に合成されるが、25~30塩基長の化学的に合成されたRNA二重鎖は、同じ位置の21マーと比較して、100倍もの効力の増加を有し得ることが最近記載されている。RNAiを誘発する際に、より長いRNAを使用して得られた観察された増大した効力は、生成物(21マー)の代わりに基質(27マー)をダイサーに提供することから生じること、及びこれが、RISCへのsiRNA二重鎖の侵入の速度又は効率を改善することが示唆される。
【0123】
3’-オーバーハングの位置は、siRNAの効力に影響を及ぼすが、組成は影響を及ぼさないこと、及びアンチセンス鎖上に3’-オーバーハングを有する非対称二重鎖は、一般に、センス鎖上に3’-オーバーハングを有するものよりも強力であることが見出されている(Roseら、2005)。
【0124】
二本鎖干渉RNA(例えば、siRNA)の鎖は、ヘアピン又はステムループ構造(例えば、shRNA)を形成するために連結され得る。従って、言及したように、本発明のいくつかの実施形態のRNAサイレンシング分子は、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)であってもよい。
【0125】
短鎖ヘアピンRNA「shRNA」という用語は、本明細書中で使用される場合、相補的配列の第1及び第2の領域を含むステムループ構造を有するRNA分子をいい、これらの領域の相補性及び配向の程度は、領域間で塩基対形成が起こるように十分であり、第1及び第2の領域は、ループ領域によって連結され、ループは、ループ領域内のヌクレオチド(又はヌクレオチドアナログ)間の塩基対形成の欠如から生じる。ループ中のヌクレオチドの数は、3~23、又は5~15、又は7~13、又は4~9、又は9~11(両端の数値を含む)である。ループ中のヌクレオチドのいくつかは、ループ中の他のヌクレオチドとの塩基対相互作用に関与し得る。ループを形成するために使用され得るオリゴヌクレオチド配列の例としては、5’-CAAGAGA-3’及び5’-UUACAA-3’(国際公開第2013126963号パンフレット及び国際公開第2014107763号パンフレット)が挙げられる。得られる一本鎖オリゴヌクレオチドは、RNAi機構と相互作用することができる二本鎖領域を含むステムループ又はヘアピン構造を形成することが、当業者によって認識される。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態のRNAサイレンシング分子は、RNAのみを含有する分子に限定される必要はなく、化学修飾されたヌクレオチド及び非ヌクレオチドをさらに包含する。
【0127】
トランス作用性siRNA(Ta-siRNA)、リピート関連siRNA(Ra-siRNA)及び天然アンチセンス転写産物由来siRNA(Nat-siRNA)を含む種々の型のsiRNAが、本発明によって意図される。
【0128】
一実施形態によれば、サイレンシングRNAは、約26及び31ヌクレオチド長のPiwi相互作用RNAのクラスである「piRNA」を含む。piRNAは、典型的には、Piwiタンパク質との相互作用を介してRNA-タンパク質複合体を形成する、すなわち、アンチセンスpiRNAは、典型的には、Piwiタンパク質(例えば、Piwi、Ago3及びAubergine(Aub))にロードされる(取り込まれる)。
【0129】
miRNA - 別の実施形態によれば、RNAサイレンシング分子はmiRNAであってもよい。
【0130】
用語「マイクロRNA」、「miRNA」及び「miR」は同義であり、遺伝子発現を調節する長さ約19~24ヌクレオチドの非コード一本鎖RNA分子の一群を指す。miRNAは、広範囲の生物(例えば、昆虫、哺乳類、植物、線虫)に見出され、発生、恒常性、及び疾患の病因において役割を果たすことが示されている。
【0131】
最初に、pre-miRNAは、長い非完全二本鎖ステムループRNAとして存在し、これは、成熟ガイド鎖(miRNA)及びパッセンジャー鎖(miRNA)として公知の類似のサイズのフラグメントを含むsiRNA様二重鎖へと、ダイサーによってさらにプロセシングされる。miRNAとmiRNAは、pri-miRNAとpre-miRNAの対向アームに由来してもよい。miRNA配列は、クローニングされたmiRNAのライブラリー中に見出されることがあるが、典型的にはmiRNAよりも低い頻度で見出される。
【0132】
当初はmiRNAとの二本鎖種として存在しているが、最終的にはmiRNAは一本鎖RNAとしてRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)として知られるリボ核タンパク質複合体に取り込まれるようになる。さまざまなタンパク質がRISCを形成することができ、これによりmiRNA/miRNA二重鎖に対する特異性、標的遺伝子の結合部位、miRNAの活性(抑制又は活性化)、及びmiRNA/miRNA二重鎖のどの鎖がRISCにロードされるかにばらつきが生じる可能性がある。
【0133】
miRNA:miRNA二重鎖のmiRNA鎖がRISCにロードされると、miRNAは除去され、分解される。RISCにロードされるmiRNA:miRNA二重鎖の鎖は、5’末端があまり緊密に対合していない鎖である。miRNA:miRNAの両端がおよそ等価な5’対合をもつ場合には、miRNAとmiRNAの両方が遺伝子サイレンシング活性をもつ可能性がある。
【0134】
RISCは、miRNAとmRNAとの間の高いレベルの相補性、特にmiRNAのヌクレオチド2~8(「シード配列」と呼ばれる)に基づいて標的核酸を特定する。
【0135】
翻訳の効率的な阻害を達成するためのmiRNAとそのmRNA標的との間の塩基対形成必要性については、多くの研究が注目している(Bartel 2004、Cell 116-281による総説)。全ゲノム上のmiRNA結合を解析する計算研究から、標的結合におけるmiRNAの5’側の塩基2~8(「シード配列」とも呼ばれる)の特異的な役割が示唆されているが、通常「A」であることがわかっている最初のヌクレオチドの役割も認識されていた(Lewisら2005 Cell 120-15)。同様に、ヌクレオチド1~7又は2~8を使用して、Krekら(2005、Nat Genet 37-495)によって標的が特定及び確認された。mRNAの標的部位は5’ UTR、3’ UTR、又はコード領域にあってもよい。興味深いことに、複数のmiRNAが同一又は複数の部位を認識することによって同一のmRNA標的を調節している可能性がある。遺伝的に特定されたほとんどの標的に複数のmiRNA結合部位が存在することは、複数のRISCの協同作用が最も効率的な翻訳阻害をもたらすことを示している可能性がある。
【0136】
miRNAは、mRNA切断又は翻訳抑制という2つの機構のいずれかによって、RISCを遺伝子発現の下方制御に誘導する可能性がある。miRNAがmiRNAとある程度相補性をもつ場合には、mRNAがmRNAの切断を指定することもある。miRNAが切断を誘導する場合、切断は、典型的には、miRNAの残基10及び11に対合するヌクレオチド間である。あるいは、miRNAがmiRNAに対して必要な程度の相補性を有さない場合、miRNAは翻訳を抑制し得る。動物ではmiRNAと結合部位との間の相補性の程度が低い可能性があるため、翻訳抑制が動物でより多くみられる可能性がある。
【0137】
miRNA及びmiRNAのいずれかの一対の5’末端及び3’末端に可変性(ばらつき)がある可能性があることに注意すべきである。この可変性は、切断部位に関するドローシャ及びダイサーの酵素プロセシング(処理)の可変性に起因し得る。miRNA及びmiRNAの5’末端及び3’末端における可変性は、pri-miRNA及びpre-miRNAのステム構造におけるミスマッチに起因する可能性もある。ステム鎖のミスマッチは、異なるヘアピン構造の集団をもたらし得る。ステム構造の可変性はまた、ドローシャ及びダイサーによる切断産物の可変性をもたらし得る。
【0138】
pre-miRNA配列は45~90、60~80又は60~70ヌクレオチドを含み得、一方、pri-miRNA配列は45~30,000、50~25,000、100~20,000、1,000~1,500又は80~100ヌクレオチドを含み得ることが理解される。
【0139】
一実施形態によれば、miRNAはmiR-390a(配列番号28に記載)を含む。
【0140】
一実施形態によれば、miRNAはmiR-173(配列番号29に記載)を含む。
【0141】
アンチセンス - アンチセンスは、遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズすることによって、その遺伝子の発現を阻止又は阻害するように設計された一本鎖RNAである。標的RNAの下方制御は、標的RNAをコードするmRNA転写産物と特異的にハイブリダイズし得るアンチセンスポリヌクレオチドを使用して達成され得る。
【0142】
言及したように、非コードRNA分子は、カノニカルな(内因性)RNAi活性を含まなくてもよい(例えば、カノニカルなRNAサイレンシング分子ではないか、又はその標的は特定されていない)。このような非コードRNA分子には、以下のものが含まれる。
【0143】
一実施形態によれば、非コードRNA分子は、転移RNA(tRNA)である。用語「tRNA」は、核酸のヌクレオチド配列とタンパク質のアミノ酸配列との間の物理的連結として働くRNA分子を指し、以前は可溶性RNA又はsRNAと呼ばれていた。tRNAは、典型的には、約76~90ヌクレオチド長である。
【0144】
一実施形態によれば、非コードRNA分子はリボソームRNA(rRNA)である。用語「rRNA」は、リボソームのRNA成分、すなわちリボソーム小サブユニット又はリボソーム大サブユニットのいずれかを指す。
【0145】
一実施形態によれば、非コードRNA分子は、核内小分子RNA(snRNA又はU-RNA)である。用語「sRNA」又は「U-RNA」は、真核細胞における細胞核のスプライシング斑点及びカハール体に見出される小分子RNA分子を意味する。snRNAは、典型的には約150ヌクレオチド長である。
【0146】
一実施形態によれば、非コードRNA分子は、核小体小分子RNA(snoRNA)である。用語「snoRNA」は、主として他のRNA、例えばrRNA、tRNA及びsnRNAの化学修飾を導く小分子RNA分子のクラスを指す。snoRNAは、典型的には、2つのクラスのうちの1つに分類される:C/DボックスsnoRNAは、典型的には、約70~120ヌクレオチド長であり、メチル化に関連し、そしてH/ACAボックスsnoRNAは、典型的には、約100~200ヌクレオチド長であり、そしてシュードウリジル化に関連する。
【0147】
snoRNAと同様にscaRNA(すなわち、Small Cajal body RNA gene(小分子カハール体RNA遺伝子))もsnoRNAと同様のRNA成熟の役割を果たすが、その標的はスプライセオソームsnRNAであり、scaRNAは(核のカハール体の)スプライセオソームsnRNA前駆体の部位特異的改変を行う。
【0148】
一実施形態によれば、非コードRNA分子は、細胞外RNA(exRNA)である。用語「exRNA」は、転写された場所である細胞の外部に存在するRNA種(例えば、エキソソームRNA)を意味する。
【0149】
一実施形態によれば、非コードRNA分子は、長鎖非コードRNA(lncRNA)である。用語「lncRNA」又は「長鎖ncRNA」は、典型的には200ヌクレオチドより長い非タンパク質コード転写産物を指す。
【0150】
一実施形態によれば、非コードRNA分子の非限定的な例としては、マイクロRNA(miRNA)、piwi相互作用RNA(piRNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、トランス作用性siRNA(tasiRNA)、核内小分子RNA(snRNA又はURNA)、核小体小分子RNA(snoRNA)、小分子カハール体RNA(scaRNA)、転移RNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、細胞外RNA(exRNA)、リピート由来RNA、転移因子RNA及び長鎖非コードRNA(lncRNA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
一実施形態によれば、RNAi分子の非限定的な例には、低分子干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、Piwi相互作用RNA(piRNA)及びトランス作用性siRNA(tasiRNA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0152】
上記のように、本発明のいくつかの実施形態の方法は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに向けて、非コードRNA分子のサイレンシング活性及び/又は特異性をリダイレクトするために(又は非コードRNA分子がRNA分子をサイレンシングする固有の能力を有さない場合、サイレンシング活性及び/又は特異性を生成するために)利用される。
【0153】
一実施形態によれば、標的RNA及び第2の標的RNAは異なる。
【0154】
一実施形態によれば、植物細胞において標的RNAに対するRNAサイレンシング分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子を改変する方法は、RNAサイレンシング分子のサイレンシング活性及び/又は特異性を第2の標的RNAに向けてリダイレクトするDNA編集剤を植物細胞に導入し、それによってRNAサイレンシング分子をコードする遺伝子を改変する工程を含み、標的RNA及び第2の標的RNAは異なる。
【0155】
本明細書中で使用される場合、用語「サイレンシング特異性をリダイレクトする」、「サイレンシング特異性を向け直す」は、非コードRNA(例えば、RNAサイレンシング分子)の非天然標的に向かって非コードRNA(例えば、RNAサイレンシング分子)の元の特異性を再プログラミングすることをいう。従って、非コードRNAの本来の特異性は消失し(すなわち、機能の喪失)、新しい特異性は、天然標的とは異なるRNA標的(すなわち、目的のRNA)に対するものである(すなわち、機能の獲得)。非コードRNAがサイレンシング活性を持たない場合には、機能の獲得のみが起こることが理解されるであろう。
【0156】
本明細書中で使用される場合、用語「標的RNA」は、非コードRNA分子によって天然に結合されるRNA配列をいう。従って、標的RNAは、非コードRNAの基質として当業者によって考慮される。
【0157】
本明細書中で使用される場合、用語「第2の標的RNA」は、非コードRNA分子によって天然には結合されないRNA配列(コード又は非コード)をいう。従って、第2の標的RNAは、非コードRNAの天然の基質ではない。
【0158】
本明細書中で使用される場合、用語「目的の標的RNA」は、設計された非コードRNA分子によってサイレンシングされるべきRNA配列(コード又は非コード)をいう。
【0159】
本明細書中で使用される場合、用語「標的遺伝子をサイレンシングすること」は、標的遺伝子からのmRNA及び/又はタンパク質産物のレベルにおける(例えば、同時転写及び/又は転写後遺伝子サイレンシングによる)欠如又は観察可能な減少を意味する。従って、標的遺伝子のサイレンシングは、本発明の設計された非コードRNA分子によって標的化されない標的遺伝子と比較して、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%であり得る。
【0160】
サイレンシングの結果は、植物から設計された非コードRNAを取り込む植物細胞又は植物全体又は他の生物の外向きの特性の試験によって、又は生化学的技術(以下に議論されるように)によって確認され得る。
【0161】
本発明のいくつかの実施形態の設計された非コードRNA分子は、農業的に価値のある形質(例えば、バイオマス、収率など)に影響を及ぼさないという条件で、いくつかのオフターゲット特異性効果を有することができることが理解されるであろう。
【0162】
一実施形態によれば、第2の標的RNA又は目的の標的RNAは、植物細胞に対して内在性である。例示的な内在性の第2標的RNA又は目的の標的RNAには、本明細書中以降でさらに論じされるように、ストレス、感染、除草剤に対する感受性を付与する遺伝子の産物、又は植物成長速度、作物収量に関連する遺伝子の産物が含まれるが、これらに限定されない。
【0163】
一実施形態によれば、第2の標的RNA又は目的の標的RNAは、植物細胞に対して外来性である(本明細書では異種とも呼ばれる)。このような場合、第2の標的RNA又は目的の標的RNAは、植物ゲノムの天然の一部ではない遺伝子の産物である。例示的な外来性第2標的RNAには、本明細書中以下にさらに議論されるように、植物病原体(例えば、昆虫、ウイルス、細菌、真菌、線虫などであるがこれらに限定されない)の遺伝子の産物が挙げられるが、これらに限定されない。外来性標的RNA(コード又は非コード)は、植物の内在RNA配列(例えば、内在核酸配列と部分的に相同であり得る)と配列同一性を共有する核酸配列を含み得る。
【0164】
内在非コードRNA分子と標的RNAとの特異的結合は、コンピューターアルゴリズム(例えば、BLAST)によって決定することができ、そして例えば、ノーザンブロット、In Situ(インサイチュ)ハイブリダイゼーション、QuantiGene Plexアッセイなどを含む方法によって検証され得る。
【0165】
用語「相補性」又は「相補的」の使用は、非コードRNA分子(又はプロセシングされる小分子RNA形態で存在する非コードRNA分子の少なくとも一部、又は二本鎖ポリヌクレオチド若しくはその一部の少なくとも1本鎖、又は一本鎖ポリヌクレオチドの一部)が、生理的条件下で標的RNA又はそのフラグメントにハイブリダイズして、標的遺伝子の制御又は機能又は抑制をもたらすことを意味する。例えば、いくつかの実施形態では、非コードRNA分子は、標的RNA(又は所与の標的遺伝子のファミリーメンバー)中の10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、70、80、90、100、150、200、300、400、500又はこれより多い連続するヌクレオチドの配列と比べて、100%配列同一性又は少なくとも約30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。
【0166】
本明細書中で使用される場合、非コードRNA分子、又はそれらのプロセシングされる小分子RNA形態は、5’から3’に読み取られた配列のうちの1つの配列のすべてのヌクレオチドが、3’から5’に読み取られた場合の他の配列のすべてのヌクレオチドに相補的である場合、「完全な相補性」を示すと言われる。基準ヌクレオチド配列と完全に相補的なヌクレオチド配列は、基準ヌクレオチド配列の逆相補配列と同一の配列を示すであろう。
【0167】
配列相補性を決定するための方法は、当技術分野で周知であり、当技術分野で周知のバイオインフォマティクスツール(例えば、BLAST、多重配列アラインメント)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0168】
一実施形態によれば、非コードRNA分子がsiRNAであるか、又はsiRNAにプロセシングされる場合、相補性は、その標的配列に対して90~100%の範囲(例えば、100%)である。
【0169】
一実施形態によれば、非コードRNA分子がmiRNA若しくはpiRNAであるか、又はmiRNA若しくはpiRNAにプロセシングされる場合、相補性は、その標的配列に対して33~100%の範囲である。
【0170】
一実施形態によれば、非コードRNA分子がmiRNAである場合、シード配列相補性(すなわち、5’からのヌクレオチド2~8)は、その標的配列に対して85~100%の範囲(例えば、100%)である。
【0171】
一実施形態によれば、非コードRNAは、小分子RNA形態にさらにプロセシングされ得る(例えば、pre-miRNAは、成熟miRNAにプロセシングされる)。このような場合、相同性は、プロセシングされる小分子RNA形態(例えば、成熟miRNA配列)に基づいて測定される。
【0172】
本明細書中で使用される場合、用語「小分子RNA形態」は、標的RNA(又はそのフラグメント)とハイブリダイズし得る成熟小分子RNAをいう。一実施形態によれば、小分子RNA形態はサイレンシング活性を有する。
【0173】
一実施形態によれば、標的配列に対する相補性は、プロセシングされる小分子RNA形態の少なくとも約33%(例えば、21~28ntの33%)である。従って、例えば、非コードRNA分子がmiRNAである場合、成熟miRNA配列(例えば、21nt)の33%は、シード相補性を含む(例えば、21ntのうちの7nt)。
【0174】
一実施形態によれば、標的配列に対する相補性は、プロセシングされる小分子RNA形態の少なくとも約45%(例えば、21~28ntの45%)である。従って、例えば、非コードRNA分子がmiRNAである場合、成熟miRNA配列(例えば、21nt)の45%は、シード相補性を含む(例えば、21ntのうちの9~10nt)。
【0175】
一実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して約10%、20%、30%、33%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%までの相補性を有するものとして選択される。
【0176】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して99%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0177】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して98%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0178】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して97%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0179】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して96%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0180】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して95%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0181】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して94%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0182】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して93%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0183】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して92%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0184】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して91%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0185】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して90%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0186】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して85%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0187】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して50%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0188】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して33%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0189】
一実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して、少なくとも約33%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はさらには100%の相補性を含むように設計される。
【0190】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小33%の相補性(例えば、85~100%のシードマッチ(seed match))を含むように設計される。
【0191】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小40%の相補性を含むように設計される。
【0192】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小45%の相補性を含むように設計される。
【0193】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小50%の相補性を含むように設計される。
【0194】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小45%の相補性を含むように設計される。
【0195】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小60%の相補性を含むように設計される。
【0196】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小70%の相補性を含むように設計される。
【0197】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小80%の相補性を含むように設計される。
【0198】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小85%の相補性を含むように設計される。
【0199】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小90%の相補性を含むように設計される。
【0200】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小91%の相補性を含むように設計される。
【0201】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小92%の相補性を含むように設計される。
【0202】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小93%の相補性を含むように設計される。
【0203】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小94%の相補性を含むように設計される。
【0204】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小95%の相補性を含むように設計される。
【0205】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小96%の相補性を含むように設計される。
【0206】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小97%の相補性を含むように設計される。
【0207】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小98%の相補性を含むように設計される。
【0208】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小99%の相補性を含むように設計される。
【0209】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して100%の相補性を含むように設計される。
【0210】
非コードRNA分子のサイレンシング活性及び/若しくは特異性を誘導するため、又は非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)のサイレンシング活性及び/若しくは特異性を、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに向けてリダイレクトするために、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)をコードする遺伝子を、DNA編集剤を用いて改変する。
【0211】
以下は、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)をコードする遺伝子に核酸改変を導入するために使用される方法及びDNA編集剤、並びに本開示の特定の実施形態に従って使用され得るそれを実施するための薬剤の種々の非限定的な例の説明である。
【0212】
改変エンドヌクレアーゼを用いたゲノム編集 - このアプローチは、典型的にはゲノム中の所望の位置(複数可)で特異的な二本鎖切断(DSB)を切断し作製するために人工的に改変されたヌクレアーゼを用いる逆遺伝学的方法を指し、その二本鎖切断はその後、相同組換え(HR)又は非相同末端結合(NHEJ)などの細胞内在性プロセスによって修復される。NHEJは最小限の末端トリミングの有無にかかわらず二本鎖切断(DSB)でDNA末端を直接結合する一方、HRは欠失したDNA配列を切断部位で再生/コピーするために鋳型(すなわち、S期に形成された姉妹染色分体)として相同ドナー(donor)配列を利用する。ゲノムDNAに特定のヌクレオチド改変を導入するために、所望の配列を含むドナーDNA修復鋳型が、HRの間に存在しなければならない(外因的に提供される一本鎖又は二本鎖のDNA)。
【0213】
ほとんどの制限酵素は、DNA上の数塩基対を標的として認識し、これらの配列は、しばしば、ゲノムにわたる多くの位置に見出され、所望の位置に限定されない複数の切断を生じるので、ゲノム編集は、従来の制限エンドヌクレアーゼを使用して実施され得ない。この課題を克服し、部位特異的な一本鎖切断又は二本鎖切断(DSB)を作り出すために、現在までにいくつかの異なるクラスのヌクレアーゼが発見され、生物工学的に操作されている。これらには、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)及びCRISPR/Cas9システムが含まれる。
【0214】
メガヌクレアーゼ - メガヌクレアーゼは、一般に、4つのファミリー:LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-Cysボックスファミリー及びHNHファミリーに分類される。これらのファミリーは、触媒活性及び認識配列に影響を及ぼす構造モチーフによって特徴付けられる。例えば、LAGLIDADGファミリーのメンバーは、保存されたLAGLIDADGモチーフの1つ又は2つのコピーのいずれかを有することによって特徴付けられる。メガヌクレアーゼの4つのファミリーは、保存された構造要素、従ってDNA認識配列特異性及び触媒活性に関して互いに大きく分離されている。メガヌクレアーゼは、微生物種において一般的に見出され、そして非常に長い認識配列(>14bp)を有するという独特の特性を有し、従って、それらを、所望の位置での切断に対して天然に非常に特異的にする。
【0215】
これを利用して、ゲノム編集における部位特異的二本鎖切断(DSB)を作ることができる。当業者は、これらの天然に存在するメガヌクレアーゼを使用することができるが、このような天然に存在するメガヌクレアーゼの数は限られている。この課題を克服するために、突然変異誘発及びハイスループットスクリーニング法を用いて、ユニークな配列を認識するメガヌクレアーゼ変異体が作製された。例えば、種々のメガヌクレアーゼが融合されて、新しい配列を認識するハイブリッド酵素が作製されている。
【0216】
あるいは、メガヌクレアーゼのDNA相互作用アミノ酸は、配列特異的メガヌクレアーゼを設計するために変更され得る(例えば、米国特許第8,021,867号明細書を参照のこと)。メガヌクレアーゼは、例えばCerto、MTら、Nature Methods(2012)9:073-975;米国特許第8,304,222号明細書;米国特許第8,021,867号明細書;米国特許第8,119,381号明細書;米国特許第8,124,369号明細書;米国特許第8,129,134号明細書;米国特許第8,133,697号明細書;米国特許第8,143,015号明細書;米国特許第8,143,016号明細書;米国特許第8,148,098号明細書;又は米国特許第8,163,514号明細書に記載されている方法を用いて設計することができる。これらの文献のそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。あるいは、部位特異的切断特性を有するメガヌクレアーゼは、市販の技術(例えば、Precision BiosciencesのDirected Nuclease Editor(商標)ゲノム編集技術)を使用して得られ得る。
【0217】
ZFN及びTALEN - 2つの異なるクラスの操作されたヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)及び転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)の両方が、標的二本鎖切断(DSB)を生成するのに有効であることが証明されている(Christianら、2010;Kimら、1996;Liら、2011;Mahfouzら、2011;Millerら、2010)。
【0218】
基本的に、ZFN及びTALEN制限エンドヌクレアーゼ技術は、特異的DNA結合ドメイン(それぞれ、一連のジンクフィンガードメイン又はTALEリピートのいずれか)に連結された非特異的DNA切断酵素を利用する。典型的には、DNA認識部位及び切断部位が互いに分離している制限酵素が選択される。切断部分を分離し、次いでDNA結合ドメインに連結し、それによって所望の配列に対して非常に高い特異性を有するエンドヌクレアーゼを生じる。このような特性を有する例示的な制限酵素は、Fok1である。さらに、Fok1は、ヌクレアーゼ活性を有するために二量体化を必要とするという利点を有し、これは、各ヌクレアーゼパートナーが固有のDNA配列を認識するので、特異性が劇的に増加することを意味する。この効果を増強するために、ヘテロ二量体としてのみ機能し得、そして増加した触媒活性を有するFok1ヌクレアーゼが操作された。ヘテロ二量体機能性ヌクレアーゼは、不要なホモ二量体活性の可能性を避け、従って二本鎖切断(DSB)の特異性を増加させる。
【0219】
従って、例えば、特定の部位を標的とするために、ZFN及びTALENは、ヌクレアーゼ対として構築され、この対の各メンバーは、標的とされた部位で隣接する配列に結合するように設計される。細胞における一過性発現の際に、ヌクレアーゼはその標的部位に結合し、FokIドメインはヘテロ二量化し、二本鎖切断(DSB)を作り出す。非相同末端結合(NHEJ)経路を介したこれらの二本鎖切断(DSB)の修復は、しばしば小さな欠失又は小さな配列挿入(インデル)を生じる。NHEJによってなされる各修復は独特であるので、単一のヌクレアーゼ対の使用は、標的部位での一連の異なる挿入又は欠失を有する対立遺伝子系列を生成し得る。
【0220】
一般に、NHEJは比較的正確であり(ヒト細胞中のDSBの約85%が、検出から約30分以内にNHEJによって修復される)、遺伝子編集では、修復が正確である場合、ヌクレアーゼは、修復生成物が変異原性であり、認識/切断部位/PAMモチーフが消失/変異するか、又は一過性に導入されたヌクレアーゼがもはや存在しなくなるまで切断を続けるので、誤ったNHEJが依拠される。
【0221】
欠失は、典型的には、長さが数塩基対から数百塩基対の範囲であるが、2対のヌクレアーゼを同時に使用することによって、より大きな欠失が、細胞培養において首尾よく生成されている(Carlsonら、2012;Leeら、2010)。さらに、標的領域に相同性を有するDNAのフラグメントがヌクレアーゼ一対と一緒に導入される場合、二本鎖切断(DSB)は、相同組換え(HR)を介して修復されて、特異的な改変を生成し得る(Liら、2011;Millerら、2010;Urnovら、2005)。
【0222】
ZFN及びTALENの両方のヌクレアーゼ部分は類似の特性を有するが、これらの操作されたヌクレアーゼ間の差異は、それらのDNA認識ペプチドにある。ZFNはCys2-His2ジンクフィンガーに依存し、TALENはTALEに依存する。これらのDNA認識ペプチドドメインの両方は、それらがそれらのタンパク質中に組み合わせて天然に見出されるという特徴を有する。Cys2-His2ジンクフィンガーは、典型的には、3bp離れた反復で見出され、そして種々の核酸相互作用タンパク質において多様な組み合わせで見出される。他方、TALEは、アミノ酸と認識されたヌクレオチド対との間に1対1の認識比を有する反復において見出される。ジンクフィンガー及びTALEの両方が反復パターンで起こるので、多種多様な配列特異性を作製するために、異なる組み合わせを試みることができる。部位特異的ジンクフィンガーエンドヌクレアーゼを作製するためのアプローチとしては、例えば、モジュラーアセンブリ(この場合、トリプレット配列と相関するジンクフィンガーは、必要とされる配列をカバーするために列で結合される)、OPEN(ペプチドドメイン対トリプレットヌクレオチドの低ストリンジェンシー選択、続いて、細菌系におけるペプチド組み合わせ対最終標的の高ストリンジェンシー選択)、及びとりわけ、ジンクフィンガーライブラリーの細菌ワンハイブリッドスクリーニングが挙げられる。ZFNはまた、例えば、Sangamo Biosciences(商標)(リッチモンド(Richmond)、カリフォルニア州)から設計され、そして商業的に入手され得る。
【0223】
TALENを設計し、取得する方法は、例えば、以下に記載されている。Reyonら、Nature Biotechnology 2012年5月;30(5):460-5;Millerら、Nat Biotechnol.(2011) 29:143-148;Cermakら、Nucleic Acids Research(2011)39(12):e82及びZhangら、Nature Biotechnology(2011) 29(2):149-53。Mojo Handという名前の最近開発されたウェブベースのプログラムが、ゲノム編集アプリケーションのためのTAL及びTALEN構築物を設計するためにMayo Clinicによって導入された(www(dot)talendesign(dot)orgを通してアクセスすることができる)。TALENはまた、例えば、Sangamo Biosciences(商標)(リッチモンド(Richmond)、カリフォルニア州)から設計され、そして商業的に入手され得る。
【0224】
T-GEEシステム(TargetGene’s Genome Editing Engine) - ポリペプチド部分及び特異性付与核酸(SCNA)を含有するプログラマブル核タンパク質分子複合体であって、標的細胞においてインビボで集合し、所定の標的核酸配列と相互作用することができるものが提供される。プログラマブル核タンパク質分子複合体は、標的核酸配列内の標的部位を特異的に改変及び/若しくは編集し、並びに/又は標的核酸配列の機能を改変することができる。核タンパク質組成物は、(a)キメラポリペプチドをコードし、(i)標的部位を改変することができる機能ドメイン、及び(ii)特異性付与核酸と相互作用することができる連結ドメインを含むポリヌクレオチド分子、並びに(b)(i)標的部位に隣接する標的核酸の領域に相補的なヌクレオチド配列、及び(ii)ポリペプチドの連結ドメインに特異的に結合することができる認識領域を含む特異性付与核酸(SCNA)を含む。この組成物は、特異性付与核酸及び標的核酸の塩基対形成を介して、標的核酸に対する分子複合体の高い特異性及び結合能力で、所定の核酸配列標的を正確に、信頼性をもって、かつ費用効果的に改変することを可能にする。この組成物は、遺伝毒性が低く、それらの組立てにおいてモジュール式であり、カスタマイズすることなく単一のプラットフォームを利用し、特殊化された中核施設の外部での独立した使用のために実用的であり、開発時間枠がより短く、コストが低減されている。
【0225】
CRISPR-Casシステム及びそのすべての変法(本明細書では「CRISPR」とも呼ばれる) - 多くの細菌及び古細菌は、侵入するファージ及びプラスミドの核酸分子を分解することができる内在RNAベースの適応免疫系を含む。これらのシステムは、RNA成分を産生するclustered regularly interspaced short palindromic repeat(CRISPR:クラスター化され、規則的に間隔があいた短い回文構造の繰り返し)ヌクレオチド配列とタンパク質成分をコードするCRISPR関連(Cas)遺伝子とからなる。CRISPR RNA(crRNA)は、特定のウイルス及びプラスミドのDNAに対して相同性を有する短鎖を含み、対応する病原体の相補的核酸を分解するようにCasヌクレアーゼに指示するためのガイドとして作用する。化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)のII型CRISPR/Casシステムの研究では、3つの成分がRNA/タンパク質複合体を形成し、一緒になって配列特異的ヌクレアーゼ活性に十分であることが示されている:Cas9ヌクレアーゼ、標的配列と相同性を有する20塩基対を含むcrRNA、及びトランス活性化crRNA(traccrRNA)(Jinekら、Science(2012)337:816-821)。
【0226】
さらに、crRNAとtracrRNAとの融合で構成される合成キメラガイドRNA(gRNA)が、インビトロでcrRNAに相補的なDNA標的を切断するようにCas9を誘導できることが実証された。合成gRNAと組み合わせたCas9の一過性発現を使用して、様々な異なる種において標的二本鎖切断(DSB)を生成することができることも実証された(Choら、2013;Congら、2013;DiCarloら、2013;Hwangら、2013a、b;Jinekら、2013;Maliら、2013)。
【0227】
ゲノム編集のためのCRISPR/Casシステムは、gRNAとエンドヌクレアーゼ、例えばCas9の2つの異なる成分を含んでいる。
【0228】
gRNA(本明細書では短鎖ガイドRNA(sgRNA)とも呼ばれる)は、典型的には、標的相同配列(crRNA)と、単一のキメラ転写産物においてcrRNAをCas9ヌクレアーに連結する内在細菌RNAゼ(tracrRNA)との組み合わせをコードする20ヌクレオチド配列である。gRNA/Cas9複合体は、gRNA配列と相補的ゲノムDNAとの間の塩基対形成によって標的配列に動員される。Cas9の首尾よい結合のために、ゲノム標的配列はまた、標的配列の直後に正しいプロトスペーサー隣接モチーフ(Protospacer Adjacent Motif:PAM)配列を含まなければならない。gRNA/Cas9複合体の結合は、Cas9が二本鎖切断(DSB)を引き起こすDNAの両方の鎖を切断できるように、ゲノム標的配列にCas9を局在化する。ZFNやTALENと同様に、CRISPR/Casによって生成される二本鎖切断(DSB)は相同組換えやNHEJを受けることができ、DNA修復の際に特異的な配列改変を受けやすい。
【0229】
Cas9ヌクレアーゼは、RuvCとHNHという2つの機能ドメインを持ち、それぞれ異なるDNA鎖を切断する。これらのドメインの両方が活性化されると、Cas9はゲノムDNAに二本鎖切断(DSB)を引き起こす。
【0230】
CRISPR/Casの重要な利点は、このシステムの高い効率が、合成gRNAを容易に作製する能力と結びついていることである。これは、異なるゲノム部位での改変を標的化するために、及び/又は同じ部位での異なる改変を標的化するために、容易に改変され得るシステムを作製する。さらに、複数の遺伝子の同時標的化を可能にするプロトコルが確立されている。突然変異をもつ細胞の大部分は、標的遺伝子に二対立遺伝子突然変異を提示する。
【0231】
しかしながら、gRNA配列とゲノムDNA標的配列との間の塩基対形成相互作用における見かけ上の柔軟性は、標的配列との不完全な一致(マッチ)をCas9によって切断することを可能にする。
【0232】
単一の不活性触媒ドメイン(RuvCドメイン又はHNHドメインのいずれか)を含むCas9酵素の改変型は、「ニッカーゼ」と呼ばれる。活性のあるヌクレアーゼドメインが1つだけあれば、Cas9ニッカーゼは標的DNAの一方の鎖だけを切断し、一本鎖切断、すなわち「ニック」を作る。一本鎖切断、すなわちニックは、ほとんどがPARP(センサー)やXRCC1/LIG III複合体(連結)のような(これらだけではない)タンパク質が関与する一本鎖切断修復機構によって修復される。もし一本鎖切断(SSB)がトポイソメラーゼIの毒物によって、あるいは天然に存在するSSB上にPARP1を捕捉する薬物によって生じると、これらは持続し、細胞がS期に入って複製フォークがこのようなSSBに出会うと、それらはHRによってのみ修復可能な一端DSBとなる。しかし、Cas9ニッカーゼによって導入される2つの近位の反対鎖ニックは、しばしば「二重ニック」CRISPRシステムと呼ばれる二本鎖切断として扱われる。基本的に非平行DSBである二重ニックは、遺伝子標的に対する所望の効果及びドナー配列の存在及び細胞周期段階(HRははるかに存在量が少なく、細胞周期のS期及びG2期にのみ起こりうる)に応じて、他のDSBと同様にHR又はNHEJによって修復することができる。従って、もし特異性とオフターゲット効果の減少がきわめて重要であれば、Cas9ニッカーゼを用いて、ゲノムDNAのごく近傍及び反対の鎖に標的配列をもつ2つのgRNAを設計することによって二重ニックを作り出すと、どちらかのgRNAだけではゲノムDNAを変化させないようなニックが生じるので、オフターゲット事象は不可能ではないにしてもオフターゲット効果は減少するであろう。
【0233】
2つの不活性触媒ドメイン(活性を持たないCas9又はdCas9)を含むCas9酵素の改変型はヌクレアーゼ活性を有さないが、gRNA特異性に基づいてDNAに結合することができる。dCas9は、不活性酵素を既知の調節ドメインに融合させることにより、DNA転写調節因子が遺伝子発現を活性化又は抑制するためのプラットフォームとして利用することができる。例えば、ゲノムDNA中の標的配列へのdCas9単独の結合は、遺伝子転写を妨害し得る。
【0234】
標的配列の選択及び/又は設計を助けるために利用可能な多数の公的に利用可能なツール、並びに、異なる種における異なる遺伝子についてのバイオインフォマティックに決定された固有のgRNAのリストがいくつかあり、例えばFeng Zhang研究室のTarget Finder、Michael Boutros研究室のTarget Finder(E-CRISP)、RGEN Tools: Cas-OFFinder、CasFinder:ゲノム中の特定のCas9標的を特定するためのFlexibleアルゴリズム、及びCRISPR Optimal Target Finderがあるが、しかしこれらに限定されない。
【0235】
CRISPRシステムを使用するために、gRNA及びCasエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)の両方は、(例えば、リボ核タンパク質複合体として)標的細胞において発現されるか、又は存在するべきである。挿入ベクターは、単一のプラスミド上に両方のカセットを含み得るか、又はカセットは、2つの別個のプラスミドから発現される。CRISPRプラスミドは、Addgene(75 Sidney St、Suite 550A・Cambridge、MA 02139)からのpx330プラスミドのように市販されている。植物ゲノムを改変するためのclustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)関連(Cas)-ガイドRNA技術及びCasエンドヌクレアーゼの使用はまた、少なくとも、Svitashevら、2015、Plant Physiology,169(2):931-945;Kumar及びJain,2015,J Exp Bot 66: 47-57;及び米国特許出願公開第20150082478号(これは、その全体が参照により本明細書中に具体的に援用される)によって開示される。gRNAでDNA編集を行うために使用され得るCasエンドヌクレアーゼには、Cas9、Cpf1(Zetscheら、2015、Cell.163(3):759-71)、C2c1、C2c2、及びC2c3(Shmakovら、Mol Cell.2015年11月5日;60(3):385-97)が含まれるが、これらに限定されない。
【0236】
特定の実施形態によれば、CRISPRは、配列番号1~4又は配列番号235~366からなる群から選択される核酸配列を含む短鎖ガイドRNA(sgRNA)を含む。
【0237】
「ヒットエンドラン(hit and run)」又は「インアウト(in-out)」 - は、2ステップの再結合手順を含む。第1のステップにおいて、二重正/負選択マーカーカセットを含む挿入型ベクターを使用して、所望の配列変更を導入する。挿入ベクターは、標的遺伝子座に対して相同性を持つ単一の連続領域を含み、目的の突然変異を運ぶように改変される。この標的化構築物を、相同性領域内の1箇所で制限酵素を用いて線状化し、細胞内に導入し、正の選択を行い、相同組換え媒介事象を単離する。相同配列を有するDNAは、プラスミド、一本鎖又は二本鎖オリゴとして提供することができる。これらの相同組換え体は、選択カセットを含む介在ベクター配列によって分離される局所重複を含む。第2のステップでは、標的クローンを負の選択に供し、重複配列間の染色体内組換えを介して選択カセットを失った細胞を特定する。局所的組換え事象は重複を除去し、組換え部位に応じて、対立遺伝子は導入された変異を保持するか、野生型に復帰するかのいずれかである。最終的な結果は、外来配列を保持することなく、所望の改変を導入することである。
【0238】
「二重置換」又は「タグ及び交換」ストラテジー - は、ヒットエンドランアプローチと同様の2ステップ選択手順を含むが、2つの異なる標的化構築物の使用を必要とする。第1のステップにおいて、3’及び5’相同性アームを有する標準的な標的化ベクターを使用して、変異が導入されるべき場所の近くに二重の正/負選択可能なカセットを挿入する。系成分を細胞に導入し、正の選択を適用した後、HR媒介事象を特定することができよう。次に、所望の突然変異と相同性の領域を含む第2の標的化ベクターを標的化クローンに導入し、負の選択を適用して選択カセットを除去し、突然変異を導入する。最終対立遺伝子は、望ましくない外来配列を排除しながら、所望の変異を含む。
【0239】
特定の実施形態によれば、DNA編集剤は、DNA標的化モジュール(例えば、gRNA)を含む。
【0240】
特定の実施形態によれば、DNA編集剤はエンドヌクレアーゼを含まない。
【0241】
特定の実施形態によれば、DNA編集剤は、ヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)及びDNA標的化モジュール(例えば、gRNA)を含む。
【0242】
特定の実施形態によれば、DNA編集剤は、CRISPR/Cas、例えばgRNA及びCas9である。
【0243】
特定の実施形態によれば、DNA編集剤はTALENである。
【0244】
特定の実施形態によれば、DNA編集剤はZFNである。
【0245】
特定の実施形態によれば、DNA編集剤はメガヌクレアーゼである。
【0246】
一実施形態によれば、DNA編集剤は、植物細胞における発現を監視するためのレポーターに連結される。
【0247】
一実施形態によれば、レポーターは蛍光レポータータンパク質である。
【0248】
用語「蛍光タンパク質」は、蛍光を発し、典型的にはフローサイトメトリー、顕微鏡法又は任意の蛍光イメージングシステムによって検出可能であり、従って、このようなタンパク質を発現する細胞の選択の基礎として使用することができるポリペプチドを指す。
【0249】
レポーターとして使用することができる蛍光タンパク質の例は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)及び赤色蛍光タンパク質(例えば、dsRed、mCherry、RFP)であるが、これらに限定されない。蛍光又は他のレポーターの非限定的なリストは、ルミネセンス(例えば、ルシフェラーゼ)又は比色アッセイ(例えば、GUS)によって検出可能なタンパク質を含む。特定の実施形態によれば、蛍光レポーターは、赤色蛍光タンパク質(例えば、dsRed、mCherry、RFP)又はGFPである。
【0250】
新しいクラスの蛍光タンパク質及び応用の総説は、Trends in Biochemical Sciences[Rodriguez,Erik A.;Campbell,Robert E.;Lin,John Y.;Lin,Michael Z.;Miyawaki,Atsushi;Palmer,Amy E.;Shu,Xiaokun;Zhang,Jin;Tsien,Roger Y.「The Growing and Glowing Toolbox of Fluorescent and Photoactive Proteins」、Trends in Biochemical Sciences.doi:10.1016/j.tibs.2016.09.010]に見出すことができる。
【0251】
別の実施形態によれば、レポーターは植物の内在遺伝子である。例示的なレポーターは、カロチノイド生合成経路における重要な酵素の1つをコードするフィトエンデサチュラーゼ遺伝子(PDS3)である。そのサイレンシングは、アルビノ/退色表現型を生じる。従って、PDS3の発現が減少した植物は、完全なアルビノ及び矮化症まで、減少したクロロフィルレベルを示す。本教示に従って使用され得るさらなる遺伝子は、作物保護に関与する遺伝子を含むが、これに限定されない。例示的な遺伝子を以下の表1Bに記載する。
【0252】
別の実施形態によれば、レポーターは抗生物質選択マーカーである。レポーターとして使用され得る抗生物質選択マーカーの例は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(nptII)及びハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hpt)であるが、これらに限定されない。本教示に従って使用され付加さらなるマーカー遺伝子は、ゲンタマイシンアセチルトランスフェラーゼ(accC3)耐性遺伝子並びにブレオマイシン及びフレオマイシン耐性遺伝子を含むが、これらに限定されない。
【0253】
酵素NPTIIは、カナマイシン、ネオマイシン、ジェネティシン(又はG418)及びパロモマイシンのような多くのアミノグリコシド系抗生物質をリン酸化することによって不活性化することが認識されるであろう。これらのうち、カナマイシン、ネオマイシン及びパロモマイシンは、多様な範囲の植物種で使用される。
【0254】
別の実施形態によれば、レポーターは毒性選択マーカーである。レポーターとして使用することができる例示的な毒性選択マーカーは、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH1)遺伝子を使用するアリルアルコール選択であるが、これに限定されない。ADH1は、アルコールとアルデヒド又はケトンとの間の相互変換を触媒し、同時にNAD+又はNADP+を還元するデヒドロゲナーゼ酵素の群を含み、組織内のアルコール性毒性物質を分解する。ADH1発現の減少を有する植物は、アリルアルコールに対する耐性の増加を示す。従って、減少したADH1を有する植物は、アリルアルコールの毒性効果に対して抵抗性である。
【0255】
使用されるDNA編集剤にかかわらず、本発明の方法は、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)をコードする遺伝子が、欠失、挿入又は点突然変異の少なくとも1つによって改変されるように使用される。
【0256】
一実施形態によれば、改変は、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子の構造化領域にある。
【0257】
一実施形態によれば、改変は、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子のステム領域にある。
【0258】
一実施形態によれば、改変は、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子のループ領域にある。
【0259】
一実施形態によれば、改変は、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子のステム領域及びループ領域にある。
【0260】
一実施形態によれば、改変は、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子の非構造化領域にある。
【0261】
一実施形態によれば、改変は、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子のステム領域及びループ領域、並びに非構造化領域にある。
【0262】
特定の実施形態によれば、改変は、(天然の非コードRNA分子、例えばRNAサイレンシング分子と比較して)約10~250ヌクレオチド、約10~200ヌクレオチド、約10~150ヌクレオチド、約10~100ヌクレオチド、約10~50ヌクレオチド、約1~50ヌクレオチド、約1~10ヌクレオチド、約50~150ヌクレオチド、約50~100ヌクレオチド又は約100~200ヌクレオチドの改変を含む。
【0263】
一実施形態によれば、改変は、(天然非コードRNA分子、例えばRNAサイレンシング分子と比較して)最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200又は最大250ヌクレオチドの改変を含む。
【0264】
一実施形態によれば、改変は、連続した核酸配列(例えば、少なくとも5、10、20、30、40、50、100、150、200塩基)にあり得る。
【0265】
一実施形態によれば、改変は、非連続的な様式、例えば、20、50、100、150、200、500、1000核酸配列全体にわたる様式であり得る。
【0266】
特定の実施形態によれば、改変は、最大200ヌクレオチドの改変を含む。
【0267】
特定の実施形態によれば、改変は、最大150ヌクレオチドの改変を含む。
【0268】
特定の実施形態によれば、改変は、最大100ヌクレオチドの改変を含む。
【0269】
特定の実施形態によれば、改変は、最大50ヌクレオチドの改変を含む。
【0270】
特定の実施形態によれば、改変は、最大25ヌクレオチドの改変を含む。
【0271】
特定の実施形態によれば、改変は、最大20ヌクレオチドの改変を含む。
【0272】
特定の実施形態によれば、改変は、最大15ヌクレオチドの改変を含む。
【0273】
特定の実施形態によれば、改変は、最大10ヌクレオチドの改変を含む。
【0274】
特定の実施形態によれば、改変は、最大5ヌクレオチドの改変を含む。
【0275】
一実施形態によれば、改変は、RNAサイレンシング分子の構造に依存する。
【0276】
従って、RNAサイレンシング分子が非必須構造(すなわち、その適切な生合成及び/又は機能において役割を果たさないRNAサイレンシング分子の二次構造)を含むか、又は純粋にdsRNA(すなわち、完全又はほぼ完全なdsRNAを有するRNAサイレンシング分子)である場合、RNAサイレンシング分子のサイレンシング特異性をリダイレクトするために、いくつかの改変(例えば、20~30ヌクレオチド、例えば、1~10ヌクレオチド、例えば、5ヌクレオチド)が導入される。
【0277】
別の実施形態によれば、RNAサイレンシング分子が必須構造を有する(すなわち、RNAサイレンシング分子の適切な生合成及び/又は活性がその二次構造に依存する)場合、RNAサイレンシング分子のサイレンシング特異性をリダイレクトするために、より大きな改変(例えば、10~200ヌクレオチド、例えば、50~150ヌクレオチド、例えば、30超のヌクレオチドかつ200以下のヌクレオチド、30~200ヌクレオチド、35~200ヌクレオチド、35~150ヌクレオチド、35~100ヌクレオチド)が導入される。
【0278】
一実施形態によれば、改変は、RNAサイレンシング分子の認識/切断部位/PAMモチーフが改変されて、元のPAM認識部位を無効にするようにされる。
【0279】
特定の実施形態によれば、改変は、PAMモチーフ中の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の核酸にある。
【0280】
一実施形態によれば、改変は挿入を含む。
【0281】
特定の実施形態によれば、挿入は、(天然の非コードRNA分子、例えばRNAサイレンシング分子と比較して)約10~250ヌクレオチド、約10~200ヌクレオチド、約10~150ヌクレオチド、約10~100ヌクレオチド、約10~50ヌクレオチド、約1~50ヌクレオチド、約1~10ヌクレオチド、約50~150ヌクレオチド、約50~100ヌクレオチド又は約100~200ヌクレオチドの挿入を含む。
【0282】
一実施形態によれば、挿入は、(天然の非コードRNA分子、例えばRNAサイレンシング分子と比較して)最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200又は最大250ヌクレオチドの挿入を含む。
【0283】
特定の実施形態によれば、挿入は、最大200ヌクレオチドの挿入を含む。
【0284】
特定の実施形態によれば、挿入は、最大150ヌクレオチドの挿入を含む。
【0285】
特定の実施形態によれば、挿入は、最大100ヌクレオチドの挿入を含む。
【0286】
特定の実施形態によれば、挿入は、最大50ヌクレオチドの挿入を含む。
【0287】
特定の実施形態によれば、挿入は、最大25ヌクレオチドの挿入を含む。
【0288】
特定の実施形態によれば、挿入は、最大20ヌクレオチドの挿入を含む。
【0289】
特定の実施形態によれば、挿入は、最大15ヌクレオチドの挿入を含む。
【0290】
特定の実施形態によれば、挿入は、最大10ヌクレオチドの挿入を含む。
【0291】
特定の実施形態によれば、挿入は、最大5ヌクレオチドの挿入を含む。
【0292】
一実施形態によれば、改変は欠失を含む。
【0293】
特定の実施形態によれば、欠失は、(天然の非コードRNA分子、例えばRNAサイレンシング分子と比較して)約10~250ヌクレオチド、約10~200ヌクレオチド、約10~150ヌクレオチド、約10~100ヌクレオチド、約10~50ヌクレオチド、約1~50ヌクレオチド、約1~10ヌクレオチド、約50~150ヌクレオチド、約50~100ヌクレオチド又は約100~200ヌクレオチドの欠失を含む。
【0294】
一実施形態によれば、欠失は、(天然の非コードRNA分子、例えばRNAサイレンシング分子と比較して)最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200又は最大250ヌクレオチドの欠失を含む。
【0295】
特定の実施形態によれば、欠失は、最大200ヌクレオチドの欠失を含む。
【0296】
特定の実施形態によれば、欠失は、最大150ヌクレオチドの欠失を含む。
【0297】
特定の実施形態によれば、欠失は、最大100ヌクレオチドの欠失を含む。
【0298】
特定の実施形態によれば、欠失は、最大50ヌクレオチドの欠失を含む。
【0299】
特定の実施形態によれば、欠失は、最大25ヌクレオチドの欠失を含む。
【0300】
特定の実施形態によれば、欠失は、最大20ヌクレオチドの欠失を含む。
【0301】
特定の実施形態によれば、欠失は、最大15ヌクレオチドの欠失を含む。
【0302】
特定の実施形態によれば、欠失は、最大10ヌクレオチドの欠失を含む。
【0303】
特定の実施形態によれば、欠失は、最大5ヌクレオチドの欠失を含む。
【0304】
一実施形態によれば、改変は点突然変異を含む。
【0305】
特定の実施形態によれば、点突然変異は、(天然の非コードRNA分子、例えばRNAサイレンシング分子と比較して)約10~250ヌクレオチド、約10~200ヌクレオチド、約10~150ヌクレオチド、約10~100ヌクレオチド、約10~50ヌクレオチド、約1~50ヌクレオチド、約1~10ヌクレオチド、約50~150ヌクレオチド、約50~100ヌクレオチド又は約100~200ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0306】
一実施形態によれば、点突然変異は、(天然非コードRNA分子、例えばRNAサイレンシング分子と比較して)最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200又は最大250ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0307】
特定の実施形態によれば、点突然変異は、最大200ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0308】
特定の実施形態によれば、点突然変異は、最大150ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0309】
特定の実施形態によれば、点突然変異は、最大100ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0310】
特定の実施形態によれば、点突然変異は、最大50ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0311】
特定の実施形態によれば、点突然変異は、最大25ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0312】
特定の実施形態によれば、点突然変異は、最大20ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0313】
特定の実施形態によれば、点突然変異は、最大15ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0314】
特定の実施形態によれば、点突然変異は、最大10ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0315】
特定の実施形態によれば、点突然変異は、最大5ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0316】
一実施形態によれば、改変は、欠失、挿入及び/又は点突然変異のいずれかの組み合わせを含む。
【0317】
一実施形態によれば、改変は、ヌクレオチド置換(例えば、ヌクレオチド交換(スワッピング))を含む。
【0318】
特定の実施形態によれば、交換(スワッピング)は、(天然の非コードRNA分子、例えばRNAサイレンシング分子と比較して)約10~250ヌクレオチド、約10~200ヌクレオチド、約10~150ヌクレオチド、約10~100ヌクレオチド、約10~50ヌクレオチド、約1~50ヌクレオチド、約1~10ヌクレオチド、約50~150ヌクレオチド、約50~100ヌクレオチド又は約100~200ヌクレオチドの交換を含む。
【0319】
一実施形態によれば、ヌクレオチド交換は、(天然の非コードRNA分子、例えばRNAサイレンシング分子と比較して)最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200又は最大250ヌクレオチドのヌクレオチド置換を含む。
【0320】
特定の実施形態によれば、ヌクレオチド交換は、最大200ヌクレオチドのヌクレオチド置換を含む。
【0321】
特定の実施形態によれば、ヌクレオチド交換は、最大150ヌクレオチドのヌクレオチド置換を含む。
【0322】
特定の実施形態によれば、ヌクレオチド交換は、最大100ヌクレオチドのヌクレオチド置換を含む。
【0323】
特定の実施形態によれば、ヌクレオチド交換は、最大50ヌクレオチドのヌクレオチド置換を含む。
【0324】
特定の実施形態によれば、ヌクレオチド交換は、最大25ヌクレオチドのヌクレオチド置換を含む。
【0325】
特定の実施形態によれば、ヌクレオチド交換は、最大20ヌクレオチドのヌクレオチド置換を含む。
【0326】
特定の実施形態によれば、ヌクレオチド交換は、最大15ヌクレオチドのヌクレオチド置換を含む。
【0327】
特定の実施形態によれば、ヌクレオチド交換は、最大10ヌクレオチドのヌクレオチド置換を含む。
【0328】
特定の実施形態によれば、ヌクレオチド交換は、最大5ヌクレオチドのヌクレオチド置換を含む。
【0329】
一実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)をコードする遺伝子は、内在RNAサイレンシング分子(例えば、miRNA)の配列を選択されたRNAサイレンシング配列(例えば、siRNA)と交換することによって改変される。
【0330】
特定の実施形態によれば、内在RNAサイレンシング分子(例えば、miRNA)の遺伝子交換のために使用されるsiRNAの配列は、配列番号5~配列番号12又は配列番号103~配列番号234からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0331】
一実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、miRNA前駆体(pri/pre-miRNA)又はsiRNA前駆体(dsRNA)などのRNAサイレンシング分子)のガイド鎖は、構造のオリジナリティを保存し、同じ塩基対形成プロファイルを維持するように改変される。
【0332】
一実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、miRNA前駆体(pri/pre-miRNA)又はsiRNA前駆体(dsRNA)などのRNAサイレンシング分子)のパッセンジャー鎖は、構造のオリジナリティを保存し、同じ塩基対形成プロファイルを維持するように改変される。
【0333】
本明細書中で使用される場合、用語「構造のオリジナリティ」は、二次RNA構造(すなわち、塩基対形成プロファイル)をいう。構造のオリジナリティを維持することは、構造依存性であり、純粋に配列依存性ではない非コードRNA(例えば、siRNA又はmiRNAのようなRNAサイレンシング分子)の正確かつ効率的な生合成/プロセシングのために重要である。
【0334】
一実施形態によれば、非コードRNA(例えば、RNAサイレンシング分子)は、標的RNAに対して約50~100%の相補性を含むようにガイド鎖(サイレンシング鎖)において改変され(上記のように)、一方、パッセンジャー鎖は、元の(未改変の)非コードRNA構造を保存するように改変される。
【0335】
一実施形態によれば、非コードRNA(例えば、RNAサイレンシング分子)は、シード配列(例えば、5’末端からのmiRNAヌクレオチド2~8について)が標的配列に対して相補的であるように改変される。
【0336】
特定の実施形態によれば、RNAサイレンシング分子(すなわち、RNAi分子)は、RNAi分子の配列が、構造のオリジナリティを保存し、細胞RNAiプロセシング及び実行因子によって認識されるように改変されるように設計される。
【0337】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、rRNA、tRNA、lncRNA、snoRNAなど)は、RNAi分子の配列が、細胞RNAiプロセシング及び実行因子によって認識されるように改変されるように設計される。
【0338】
本発明のDNA編集剤は、DNA送達方法(例えば、発現ベクターによる)を使用して、又はDNAを含まない方法を使用して、植物細胞に導入され得る。
【0339】
一実施形態によれば、gRNA(又は使用されるDNA編集システムに依存して、使用される任意の他のDNA認識モジュール)は、RNAとして細胞に提供され得る。
【0340】
従って、本技術は、RNAトランスフェクション(例えば、mRNA+gRNAトランスフェクション)、又はリボ核タンパク質(RNP)トランスフェクション(例えば、タンパク質-RNA複合体トランスフェクション、例えば、Cas9/gRNAリボ核タンパク質(RNP)複合体トランスフェクション)のような一過性のDNA方法又はDNAを含まない方法を用いてDNA編集剤を導入することに関することが理解される。
【0341】
例えば、Cas9は、DNA発現プラスミドとして、インビトロ転写産物(すなわち、RNA)として、又はリボ核タンパク質粒子(RNP)中のRNA部分に結合した組換えタンパク質として導入され得る。gRNAは、例えば、DNAプラスミドとして、又はインビトロ転写産物(すなわち、RNA)として送達され得る。
【0342】
RNA又はRNPトランスフェクションのための当該分野で公知の任意の方法が、本教示に従って使用され得る。例としては、例えば、マイクロインジェクション[Choら、「Heritable gene nockout in Caenorhabditis elegans by direct injection of Cas9-sgRNA ribonucleoproteins」、Genetics(2013)195:1177-1180(参照により本明細書に援用される)に記載されている]、エレクトロポレーション[Kimら、「Highly efficient RNA-guided genome editing in human cells via delivery of purified Cas9 ribonucleoproteins」、Genome Res.(2014)24:1012-1019(参照により本明細書に援用される)に記載されている]、又は例えばリポソームを用いる脂質媒介性トランスフェクション[Zurisら、「Cationic lipid-mediated delivery of proteins enables efficient protein-based genome editing in vitro and in vivo」、Nat Biotechnol.(2014) doi:10.1038/nbt.3081(参照により本明細書に援用される)に記載されている]が挙げられるがこれらに限定されない。RNAトランスフェクションのさらなる方法は、米国特許出願公開第20160289675号に記載されており、この文献は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0343】
本発明のRNAトランスフェクション方法の1つの利点は、RNAトランスフェクションが本質的に一過性であり、ベクターを含まないことである。RNA導入遺伝子は、任意のさらなる配列(例えば、ウイルス配列)を必要としない、最小発現カセットとして、細胞に送達され得、そしてそこで発現され得る。
【0344】
一実施形態によれば、本発明のDNA編集剤は、発現ベクターを用いて植物細胞に導入される。
【0345】
本発明のいくつかの実施形態の「発現ベクター」(本明細書では「核酸構築物」、「ベクター」又は「構築物」とも呼ばれる)は、このベクターを原核生物、真核生物、又は好ましくはその両方における複製に適したもの(例えば、シャトルベクター)にするさらなる配列を含む。
【0346】
本発明のいくつかの実施形態による方法において有用な構築物は、当業者に周知の組換えDNA技術を使用して構築され得る。核酸配列は、商業的に入手可能であり、植物に形質転換するのに適し、形質転換された細胞における目的の遺伝子の一過性発現に適したベクターに挿入することができる。遺伝子構築物は、核酸配列が、植物細胞における発現を可能にする1つ以上の調節配列に作動可能に連結される発現ベクターであり得る。
【0347】
一実施形態によれば、機能的DNA編集剤を発現させるために、切断モジュール(ヌクレアーゼ)がDNA認識ユニットの不可欠な部分でない場合、発現ベクターは、切断モジュール並びにDNA認識ユニット(例えば、CRISPR/Casの場合、gRNA)をコードし得る。
【0348】
あるいは、切断モジュール(ヌクレアーゼ)及びDNA認識ユニット(例えば、gRNA)は、別々の発現ベクターにクローニングされ得る。このような場合、少なくとも2つの異なる発現ベクターを同じ植物細胞に形質転換しなければならない。
【0349】
あるいは、ヌクレアーゼが利用されない場合(すなわち、外来性供給源から細胞に投与されない場合)、DNA認識ユニット(例えば、gRNA)は、単一の発現ベクターを使用してクローニング及び発現され得る。
【0350】
典型的な発現ベクターはまた、転写及び翻訳開始配列、転写及び翻訳ターミネーター、並びに任意にポリアデニル化シグナルを含むことができる。
【0351】
一実施形態によれば、DNA編集剤は、植物細胞において活性なシス作用性調節エレメント(例えば、プロモーター)に作動可能に連結された少なくとも1つのDNA認識ユニット(例えば、gRNA)をコードする核酸剤を含む。
【0352】
一実施形態によれば、ヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)及びDNA認識ユニット(例えば、gRNA)は、同じ発現ベクターからコードされる。このようなベクターは、ヌクレアーゼ及びDNA認識ユニットの両方の発現のために、植物細胞において活性な単一のシス作用性調節エレメント(例えば、プロモーター)を含み得る。あるいは、ヌクレアーゼ及びDNA認識ユニットはそれぞれ、植物細胞において活性なシス作用性調節エレメント(例えば、プロモーター)に作動可能に連結され得る。
【0353】
一実施形態によれば、ヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)及びDNA認識ユニット(例えば、gRNA)は、異なる発現ベクターからコードされ、それによって各々は、植物細胞において活性なシス作用性調節エレメント(例えば、プロモーター)に作動可能に連結される。
【0354】
本明細書で使用される「植物発現可能」又は「植物細胞において活性」という語句は、プロモーター配列を指すが、植物細胞、組織又は器官、好ましくは単子葉植物又は双子葉植物の細胞、組織又は器官における発現を少なくとも誘導、付与、活性化又は増強することができる、プロモーター配列に添加されるか又はプロモーター配列に含まれる任意のさらなる調節要素を含めたプロモーター配列を指す。
【0355】
使用される植物プロモーターは、構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、誘導性プロモーター、キメラプロモーター又は発生的に調節されるプロモーターであり得る。
【0356】
本発明のいくつかの実施形態の方法に有用な好ましいプロモーターの例を、表I、II、III及びIVに示す。
【0357】
【表1】
【0358】
【表2(1)】
【0359】
【表2(2)】
【0360】
【表3】
【0361】
【表4(1)】
【0362】
【表4(2)】
【0363】
【表4(3)】
【0364】
誘導性プロモーターは、特定の植物組織において、発生段階によって、又はストレス条件(例えば、光、温度、化学物質、干ばつ、高塩分、浸透圧ショック、酸化剤条件を含むか、又は病原性の場合)等の特定の刺激によって誘導されるプロモーターであり、これには、限定されないが、エンドウrbcS遺伝子に由来する光誘導性プロモーター、アルファルファrbcS遺伝子由来のプロモーター、干ばつにおいて活性なプロモーターDRE、MYC及びMYB、高塩分及び浸透圧ストレスにおいて活性なプロモーターINT、INPS、prxEa、Ha hsp 17.7G4及びRD21、並びに病原性ストレスにおいて活性なプロモーターhsr203J及びstr246Cが含まれる。
【0365】
一実施形態によれば、プロモーターは病原体誘導性プロモーターである。これらのプロモーターは、細菌、真菌、ウイルス、線虫及び昆虫などの病原体に感染した後の植物における遺伝子の発現を指令する。このようなプロモーターには、病原体による感染後に誘導される病原関連タンパク質(PRタンパク質)由来のもの;例えば、PRタンパク質、SARタンパク質、β-1,3-グルカナーゼ、キチナーゼなどが含まれる。例えば、Redolfiら(1983) Neth.J.Plant Pathol 89:245-254;Uknesら(1992) Plant Cell 4:645-656;及びVan Loon(1985) Plant Mol.Virol.4:111-116を参照のこと。
【0366】
一実施形態によれば、2つ以上のプロモーターが発現ベクターにおいて使用される場合、プロモーターは同一である(例えば、全て同一である、少なくとも2つ同一である)。
【0367】
一実施形態によれば、2つ以上のプロモーターが発現ベクターにおいて使用される場合、プロモーターは異なる(例えば、少なくとも2つが異なる、全てが異なる)。
【0368】
一実施形態によれば、発現ベクター中のプロモーターは、CaMV 35S、2x CaMV 35S、CaMV 19S、ユビキチン、AtU626又はTaU6を含むが、これらに限定されない。
【0369】
特定の実施形態によれば、発現ベクター中のプロモーターは35Sプロモーターを含む。
【0370】
特定の実施形態によれば、発現ベクター中のプロモーターは、U6プロモーターを含む。
【0371】
発現ベクターはまた、転写及び翻訳開始配列、転写及び翻訳ターミネーター配列、並びに任意にポリアデニル化シグナルを含むことができる。
【0372】
特定の実施形態によれば、発現ベクターは、限定されるものではないが、G7終止配列、AtuNos終止配列又はCaMV-35Sターミネーター配列などの終止配列を含む。
【0373】
植物細胞は、本発明のいくつかの実施形態の核酸構築物で安定に又は一過性に形質転換され得る。安定な形質転換において、本発明のいくつかの実施形態の核酸分子は、植物ゲノムに組み込まれ、そのため、安定で遺伝的な形質を表す。一過性形質転換では、核酸分子は、形質転換された細胞によって発現されるが、ゲノムに組み込まれず、そのため、一過性の形質を表す。
【0374】
単子葉植物及び双子葉植物の両方に外来遺伝子を導入する種々の方法がある(Potrykus、I.、Annu.Rev.Plant.Physiol.、Plant.Mol.Biol.(1991) 42:205-225;Shimamotoら、Nature(1989) 338:274-276)。
【0375】
植物ゲノムDNAへの外来性DNAの安定な積分を引き起こす主な方法には、2つの主要なアプローチが含まれる:
【0376】
(i)アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介遺伝子移入:Kleeら(1987) Annu.Rev.Plant Physiol.38:467-486;Klee及びRogers、Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants、第6巻、Molecular Biology of Plant Nuclear Genes、Schell、J.及びVasil、L.K.編、Academic Publishers、サンディエゴ、カリフォルニア州(1989)中、2-25頁;Gatenby、Plant Biotechnology、Kung、S.及びArntzen、C.J.編、Butterworth Publishers、ボストン、マサチューセッツ州(1989)中、93-112頁。
【0377】
(ii)直接DNA取り込み:Paszkowskiら、Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants、第6巻、Molecular Biology of Plant Nuclear Genes、Schell,J.及びVasil,L.K.編、Academic Publishers、サンディエゴ、カリフォルニア州(1989)中、52-68頁;プロトプラストへのDNAの直接取り込み方法を含む、Toriyama,K.ら(1988) Bio/Technology 6:1072-1074。植物細胞の短時間の電気ショックによって誘導されるDNA取り込み:Zhangら、Plant Cell Rep.(1988) 7:379-384。Frommら、Nature(1986)319:791-793。粒子衝撃による植物細胞又は組織へのDNA注入、Kleinら、Bio/Technology(1988)6:559-563;McCabeら、Bio/Technology(1988) 6:923-926;Sanford、Physiol.Plant.(1990) 79:206-209;マイクロピペット系の使用による:Neuhausら、Theor.Appl.Genet.(1987) 75:30-36;Neuhaus及びSpangenberg、Physiol.Plant.(1990) 79:213-217;細胞培養物、胚又はカルス組織のガラス繊維又は炭化ケイ素ウィスカー形質転換、米国特許第5,464,765号明細書、又は発芽花粉とのDNAの直接インキュベーションによる(DeWetら、Experimental Manipulation of Ovule Tissue、Chapman,G.P.及びMantell,S.H.及びDaniels,W.編、Longman、London、(1985)中、197-209頁;並びにOhta、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1986)83:715-719。
【0378】
アグロバクテリウム系は、植物ゲノムDNAに組み込まれる特定のDNAセグメントを含むプラスミドベクターの使用を含む。植物組織の接種方法は、植物種及びアグロバクテリウム送達系に依存して変化する。広く使用されているアプローチは、植物全体の分化の開始のための良好な供給源を提供する任意の組織外植片を用いて実施され得る葉円盤状組織手順である。Horschら、Plant Molecular Biology Manual A5、Kluwer Academic Publishers、Dordrecht(1988)中、1-9頁。補助的なアプローチは、真空浸透と組み合わせてアグロバクテリウム送達系を使用する。アグロバクテリウム系は、形質転換双子葉植物の作出において特に生存可能である。
【0379】
一実施形態によれば、アグロバクテリウムを用いない発現方法を用いて、外来遺伝子を植物細胞に導入する。一実施形態によれば、アグロバクテリウムを用いない発現方法は一過性である。特定の実施形態によれば、外来遺伝子を植物細胞に導入するために、衝撃法が使用される。別の具体的な実施形態によれば、植物根の衝撃を使用して、外来遺伝子を植物細胞に導入する。本発明のいくつかの実施形態に従って使用され得る例示的な衝撃方法は、以下の実施例のセクションにおいて議論される。
【0380】
さらに、種々のクローニングキット又は遺伝子合成が、本発明のいくつかの実施形態の教示に従って使用され得る。
【0381】
一実施形態によれば、核酸構築物はバイナリーベクターである。バイナリーベクターの例は、pBIN19、pBI101、pBinAR、pGPTV、pCAMBIA、pBIB-HYG、pBecks、pGreen又はpPZPである(Hajukiewicz、P.ら、Plant Mol.Biol.25,989(1994)、及びHellensら、Trends in Plant Science 5、446(2000))。
【0382】
DNA送達の他の方法(例えば、以下に議論されるようなトランスフェクション、エレクトロポレーション、衝撃、ウイルス接種)において使用される他のベクターの例は、pGE-sgRNA(Zhangら、Nat.Comms.2016:12697)、pJIT163-Ubi-Cas9(Wangら、Nat.Biotechnol 2004 32、947-951)、pICH47742::2x35S-5’UTR-hCas9(STOP)-NOST(Belhanら、Plant Methods 2013 11;9(1):39)、pAHC25(Christensen,A.H.及びP.H.Quail、1996.Ubiquitin promoter-based vectors for high-level expression of selectable and/or screenable marker genes in monocotyledonous plants.Transgenic Research 5:213-218)、pHBT-sGFP(S65T)-NOS(Sheenら、Protein phosphatase activity is required for light-inducible gene expression in maize、EMBO J.12(9)、3497-3505(1993))である。
【0383】
一実施形態によれば、本発明のいくつかの実施形態の方法は、植物細胞にドナーオリゴヌクレオチドを導入することをさらに含む。
【0384】
一実施形態によれば、改変が挿入である場合、当該方法は、植物細胞にドナーオリゴヌクレオチドを導入することをさらに含む。
【0385】
一実施形態によれば、改変が欠失である場合、当該方法は、植物細胞にドナーオリゴヌクレオチドを導入することをさらに含む。
【0386】
一実施形態によれば、改変が欠失及び挿入(例えば、交換)である場合、当該方法は、植物細胞にドナーオリゴヌクレオチドを導入することをさらに含む。
【0387】
一実施形態によれば、改変が点突然変異である場合、当該方法は、植物細胞にドナーオリゴヌクレオチドを導入することをさらに含む。
【0388】
本明細書中で使用される場合、用語「ドナーオリゴヌクレオチド」又は「ドナーオリゴ」は、外来性ヌクレオチド(すなわち、ゲノムにおける正確な変化を生成するために植物細胞に外部から導入されるもの)をいう。一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは合成されたものである。
【0389】
一実施形態によれば、ドナーオリゴはRNAオリゴである。
【0390】
一実施形態によれば、ドナーオリゴはDNAオリゴである。
【0391】
一実施形態によれば、ドナーオリゴは合成オリゴである。
【0392】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、一本鎖ドナーオリゴヌクレオチド(ssODN)を含む。
【0393】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、二本鎖ドナーオリゴヌクレオチド(dsODN)を含む。
【0394】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、二本鎖DNA(dsDNA)を含む。
【0395】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、二本鎖DNA-RNA二重鎖(DNA-RNA二重鎖)を含む。
【0396】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、二本鎖DNA-RNAハイブリッドを含む。
【0397】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、一本鎖DNA-RNAハイブリッドを含む。
【0398】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、一本鎖DNA(ssDNA)を含む。
【0399】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、二本鎖RNA(dsRNA)を含む。
【0400】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、一本鎖RNA(ssRNA)を含む。
【0401】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、(上述のように)交換のためのDNA又はRNA配列を含む。
【0402】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、非発現ベクターフォーマット又はオリゴで提供される。
【0403】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、DNAドナープラスミド(例えば、環状又は線状プラスミド)を含む。
【0404】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、約50~5000、約100~5000、約250~5000、約500~5000、約750~5000、約1000~5000、約1500~5000、約2000~5000、約2500~5000、約3000~5000、約4000~5000、約50~4000、約100~4000、約250~4000、約500~4000、約750~4000、約1000~4000、約1500~4000、約2000~4000、約2500~4000、約3000~4000、約50~3000、約100~3000、約250~3000、約500~3000、約750~3000、約1000~3000、約1500~3000、約2000~3000、約50~2000、約100~2000、約250~2000、約500~2000、約750~2000、約1000~2000、約1500~2000、約50~1000、約100~1000、約250~1000、約500~1000、約750~1000、約50~750、約150~750、約250~750、約500~750、約50~500、約150~500、約200~500、約250~500、約350~500、約50~250、約150~250又は約200~250ヌクレオチドを含む。
【0405】
特定の実施形態によれば、ssODN(例えばssDNA又はssRNA)を含むドナーオリゴヌクレオチドは、約200~500ヌクレオチドを含む。
【0406】
特定の実施形態によれば、dsODN(例えば、dsDNA又はdsRNA)を含むドナーオリゴヌクレオチドは、約250~5000ヌクレオチドを含む。
【0407】
一実施形態によれば、内在RNAサイレンシング分子(例えば、miRNA)の、選択されたRNAサイレンシング配列(例えば、siRNA)との遺伝子交換のために、発現ベクター、ssODN(例えば、ssDNA又はssRNA)又はdsODN(例えば、dsDNA又はdsRNA)は、植物細胞中で発現される必要はなく、非発現鋳型として働くことができる。特定の実施形態によれば、このような場合、DNA編集剤(例えば、Cas9/sgRNAモジュール)のみが、DNA形態で提供される場合、発現される必要がある。
【0408】
いくつかの実施形態によれば、ヌクレアーゼを使用せずに内在非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)を遺伝子編集するために、DNA編集剤(例えば、gRNA)を、(例えば、本明細書中で議論されるように、オリゴヌクレオチドドナーDNA又はRNA)を用いて、又は用いずに、真核細胞に導入してもよい。
【0409】
一実施形態によれば、植物細胞へのドナーオリゴヌクレオチドの導入は、上記の方法のいずれかを使用して(例えば、発現ベクター又はRNPトランスフェクションを使用して)行われる。
【0410】
一実施形態によれば、gRNA及びDNAドナーオリゴヌクレオチドは、(例えば、衝撃を介して)植物細胞に同時導入される。任意のさらなる因子(例えば、ヌクレアーゼ)が、それと一緒に導入され得ることが理解される。
【0411】
一実施形態によれば、gRNAは、DNAドナーオリゴヌクレオチドの前に(例えば、数分又は数時間以内に)植物細胞に導入される。任意のさらなる因子(例えば、ヌクレアーゼ)が、gRNA又はDNAドナーオリゴヌクレオチドの前に、それと同時に、又はそれに続いて導入され得ることが理解される。
【0412】
一実施形態によれば、gRNAは、DNAドナーオリゴヌクレオチドに続いて(例えば、数分又は数時間以内に)植物細胞に導入される。任意のさらなる因子(例えば、ヌクレアーゼ)が、gRNA又はDNAドナーオリゴヌクレオチドの前に、それと同時に、又はそれに続いて導入され得ることが理解される。
【0413】
一実施形態によれば、ゲノム編集のための少なくとも1つのgRNA及びDNAドナーオリゴヌクレオチドを含む組成物が提供される。
【0414】
一実施形態によれば、ゲノム編集のための少なくとも1つのgRNA、ヌクレアーゼ(例えばエンドヌクレアーゼ)及びDNAドナーオリゴヌクレオチドを含む組成物が提供される。
【0415】
植物細胞への直接DNA移入の種々の方法が存在し、当業者は、どれを選択するかを知っている。エレクトロポレーションでは、プロトプラストを強い電場に短時間暴露する。マイクロインジェクションでは、DNAは、非常に小さいマイクロピペットを用いて細胞に直接機械的に注入される。微粒子衝撃では、DNAは、硫酸マグネシウム結晶又は金又はタングステン粒子などの微小発射体に吸着され、微小発射体は、プロトプラスト、細胞又は植物組織の中へと物理的に加速される。
【0416】
従って、核酸の送達は、DNA、RNA、ペプチド、及び/若しくはタンパク質、又は核酸及びペプチドの組み合わせを植物細胞に送達するための方法における、例えば、プロトプラストの形質転換(例えば、米国特許第5,508,184号明細書を参照のこと)、乾燥/阻害媒介DNA取り込み(例えば、Potrykusら(1985) Mol.Gen.Genet.199:183-8を参照のこと)、エレクトロポレーション(例えば、米国特許第5,384,253号明細書を参照のこと)、炭化ケイ素繊維を用いた撹拌(例えば、米国特許第5,302,523号明細書及び同第5,464,765号明細書を参照のこと)、アグロバクテリウム媒介形質転換(例えば、米国特許第5,563,055号明細書、同第5,591,616号明細書、同第5,693,512号明細書、同第5,824,877号明細書、同第5,981,840号明細書、及び同第6,384,301号明細書を参照のこと)、DNAコーティングされた粒子の加速(例えば、米国特許第5,015,580号明細書、同第5,550,318号明細書、同第5,538,880号明細書、同第6,160,208号明細書、同第6,399,861号明細書、及び同第6,403,865号明細書を参照のこと)、並びにナノ粒子、ナノキャリア、及び細胞膜透過性ペプチド(国際公開第201126644A2号パンフレット;同第2009046384A1号パンフレット;同第2008148223A1号パンフレット)を含むが、これらに限定されない、当業者に公知の任意の方法によって、本発明の実施形態において植物細胞に導入され得る。
【0417】
トランスフェクションの他の方法としては、トランスフェクション試薬(例えば、リポフェクチン、ThermoFisher)、デンドリマー(Kukowska-Latallo,J.F.ら、1996、Proc.Natl.Acad.Sci.USA93、4897-902)、細胞膜透過性ペプチド(Maeら、2005、Internalisation of cell-penetrating peptides into tobacco protoplasts、Biochimica et Biophysica Acta 1669(2):101-7)又はポリアミン(Zhang及びVinogradov、2010、Short biodegradable polyamines for gene delivery and transfection of brain capillary endothelial cells、J Control Release、143(3):359-366)の使用が挙げられる。
【0418】
特定の実施形態によれば、DNAを植物細胞(例えば、プロトプラスト)に導入するために、当該方法は、ポリエチレングリコール(PEG)媒介DNA取り込みを含む。さらなる詳細については、Kareschら(1991) Plant Cell Rep.9:575-578;Mathurら(1995) Plant Cell Rep.14:221-226;Negrutiuら(1987) Plant Cell Mol.Biol.8:363-373を参照のこと。次いで、植物細胞(例えば、プロトプラスト)を、それらが細胞壁を成長させ、分裂を開始してカルスを形成し、シュート及び根を発達させ、そして植物全体を再生させる条件下で培養する。
【0419】
安定した形質転換に続いて、植物繁殖が実行される。植物繁殖の最も一般的な方法は、種子によるものである。しかし、種子の繁殖による再生では、種子はメンデルの法則によって支配される遺伝的分散に従って植物によって生成されるので、ヘテロ接合性のために作物に均一性が欠けているという欠点がある。基本的には、それぞれの種子は遺伝的に異なっており、それぞれが固有の形質をもって成長することになる。従って、形質転換植物は、再生植物が親である遺伝子導入植物と同一の形質及び特徴を有するように生産されることが好ましい。従って、形質転換された植物は、遺伝子的に同一の形質転換された植物の迅速で一貫した生殖を提供するマイクロプロパゲーションによって再生されることが好ましい。
【0420】
マイクロプロパゲーションは、選択された親植物又は栽培品種から切り出された単一の組織片から新世代植物を成長させるプロセスである。このプロセスは、所望の形質を有する植物の大量繁殖を可能にする。新しく作られた植物は遺伝的に元の植物と同一で、すべての特徴をもっている。マイクロプロパゲーション(又はクローニング)は、短期間での高品質の植物材料の量産化を可能にし、元の遺伝子導入植物又は形質転換植物の特徴の保存において、選択された栽培品種の迅速な増殖を提供する。クローニング植物の利点は、植物の増殖速度、並びに生産される植物の品質及び均一性である。
【0421】
マイクロプロパゲーションは、段階間の培養培地又は増殖条件の変更を必要とする多段階手順である。従って、マイクロプロパゲーション工程は、4つの基本段階:第1段階、初期組織培養;第2段階、組織培養増殖;第3段階、分化及び植物形成;並びに第4段階、温室培養及びハードニングを含む。第1段階の初期組織培養の間、組織培養は確立され、汚染物質を含まないことが証明される。第2段階の間、生産目標を満たすのに十分な数の組織試料が生産されるまで、最初の組織培養物を増殖させる。第3段階の間に、第2段階で成長させた組織試料を分割し、個々の小植物に成長させる。第4段階では、形質転換された小植物をハードニングのために温室に移し、そこで植物の光に対する耐性を徐々に増大させて、それを自然環境で成長させることができる。
【0422】
安定な形質転換が現在好ましいが、葉細胞、分裂組織細胞又は植物全体の一過性形質転換もまた、本発明のいくつかの実施形態によって想定される。
【0423】
一過性形質転換は、上記の直接DNA移入方法のいずれかによって、又は改変植物ウイルスを使用するウイルス感染によって達成され得る。
【0424】
植物宿主の形質転換に有用であることが示されているウイルスには、CaMV、TMV、TRV及びBVが含まれる。植物ウイルスを用いた植物の形質転換は、米国特許第4,855,237号明細書(BGV)、欧州特許出願公開第67,553号明細書(TMV)、特開昭63-14693号公報(TMV)、欧州特許出願公開第194,809号明細書(BV)、欧州特許出願公開第278,667号明細書(BV);及びGluzman、Y.ら、Communications in Molecular Biology: Viral Vectors、Cold Spring Harbor Laboratory、New York、172-189頁(1988)に記載されている。植物を含む多くの宿主において外来DNAを発現させる際に使用するためのシュードウイルス粒子は、国際公開第87/06261号パンフレットに記載されている。
【0425】
植物における非ウイルス外来性核酸配列の導入及び発現のための植物RNAウイルスの構築は、上記の参考文献並びにDawson,W.O.ら、Virology(1989) 172:285-292;Takamatsuら、EMBO J.(1987) 6:307-311;Frenchら、Science(1986) 231:1294-1297;及びTakamatsuら、FEBS Letters(1990) 269:73-76によって実証されている。
【0426】
ウイルスがDNAウイルスである場合、ウイルス自体に適切な改変を行うことができる。あるいは、外来DNAを用いて所望のウイルスベクターを構築するのを容易にするために、ウイルスを最初に細菌プラスミドにクローニングすることができる。次いで、ウイルスをプラスミドから切り出すことができる。ウイルスがDNAウイルスの場合には、細菌の複製起点がウイルスDNAに結合し、それが細菌によって複製される。このDNAの転写と翻訳は、ウイルスDNAをキャプシド化するコートタンパク質を産生する。ウイルスがRNAウイルスの場合、ウイルスは一般にcDNAとしてクローニングされ、プラスミドに挿入される。次いで、このプラスミドを使用して、構築物の全てを作製する。次に、プラスミドのウイルス配列を転写し、ウイルス遺伝子を翻訳して、ウイルスRNAをキャプシド化するコートタンパク質を産生することによってRNAウイルスが産生される。
【0427】
本発明のいくつかの実施形態の構築物に含まれるような非ウイルス外来性核酸配列の植物における導入及び発現のための植物RNAウイルスの構築は、上記の参考文献並びに米国特許第5,316,931号明細書によって実証される。
【0428】
一実施形態では、植物ウイルス核酸が提供される。この植物ウイルス核酸では、天然コートタンパク質コード配列がウイルス核酸から欠失されて、非天然植物ウイルスコートタンパク質コード配列、及び非天然プロモーター、好ましくは非天然コートタンパク質コード配列のサブゲノムプロモーターであって、植物宿主において発現し、組換え植物ウイルス核酸のパッケージングを行い、組換え植物ウイルス核酸による宿主の全身感染を確実にすることができる非天然プロモーターが挿入されている。あるいは、コートタンパク質遺伝子は、タンパク質が産生されるように、その中に非天然核酸配列を挿入することによって不活性化され得る。組換え植物ウイルス核酸は、1つ以上のさらなる非天然のサブゲノムプロモーターを含み得る。各非天然のサブゲノムプロモーターは、植物宿主において隣接する遺伝子又は核酸配列を転写又は発現することができ、互いに、及び天然のサブゲノムプロモーターと組換えすることができない。非天然(外来)核酸配列は、2つ以上の核酸配列が含まれる場合、天然植物ウイルスサブゲノムプロモーター又は天然及び非天然植物ウイルスサブゲノムプロモーターに隣接して挿入され得る。非天然核酸配列は、サブゲノムプロモーターの制御下で宿主植物において転写又は発現されて、所望の産物を産生する。
【0429】
第2の実施形態において、組換え植物ウイルス核酸は、天然コートタンパク質コード配列が、非天然コートタンパク質コード配列の代わりに、非天然コートタンパク質サブゲノムプロモーターの1つに隣接して配置されることを除いて、第1の実施形態におけるように提供される。
【0430】
第3の実施形態では、天然コートタンパク質遺伝子がそのサブゲノムプロモーターに隣接し、1つ以上の非天然サブゲノムプロモーターがウイルス核酸に挿入されている組換え植物ウイルス核酸が提供される。挿入された非天然のサブゲノムプロモーターは、植物宿主において隣接する遺伝子を転写又は発現することができ、互いに、及び天然のサブゲノムプロモーターと組換えすることができない。非天然核酸配列は、非天然サブゲノム植物ウイルスプロモーターに隣接して挿入され得、その結果、配列は、所望の産物を産生するために、サブゲノムプロモーターの制御下で宿主植物において転写又は発現される。
【0431】
第4の実施形態において、組換え植物ウイルス核酸は、天然コートタンパク質コード配列が非天然コートタンパク質コード配列によって置換されることを除いて、第3の実施形態におけるように提供される。
【0432】
ウイルスベクターは、組換え植物ウイルス核酸によってコードされるコートタンパク質によってキャプシド化され、組換え植物ウイルスを産生する。組換え植物ウイルス核酸又は組換え植物ウイルスは、適切な宿主植物に感染するために使用される。組換え植物ウイルス核酸は、宿主において複製し、宿主において全身に広がり、宿主において外来遺伝子(複数種可)(単離された核酸)の転写又は発現が可能であり、所望のタンパク質を産生する。
【0433】
上記に加えて、本発明のいくつかの実施形態の核酸分子はまた、葉緑体ゲノムに導入され得、それによって葉緑体発現を可能にする。
【0434】
葉緑体のゲノムに外来性核酸配列を導入する技術が知られている。この技術は、以下の手順を含む。第一に、植物細胞が、細胞当たりの葉緑体の数を約1に減少させるように化学的に処理される。次いで、外来性核酸が、少なくとも1つの外来性核酸分子を葉緑体に導入する目的で、粒子衝撃を介して細胞に導入される。外来性核酸は、葉緑体に固有の酵素によって容易にもたらされる相同組換えを介して葉緑体のゲノムに組み込まれ得るように選択される。この目的のために、外来性核酸は、目的の遺伝子に加えて、葉緑体のゲノムに由来する少なくとも1つの核酸鎖を含む。さらに、外来性核酸は、選択可能なマーカーを含み、これは、このような選択後の葉緑体ゲノムのコピーの全て又は実質的に全てが外来性核酸を含むことを確認するための連続的な選択手順によって役立つ。この技法に関連するさらなる詳細は、参照により本明細書に援用される米国特許第4,945,050号明細書及び同第5,693,507号明細書に見出される。従って、ポリペプチドは、葉緑体のタンパク質発現系によって産生されることが可能で、そして葉緑体の内膜に組み込まれ得る。
【0435】
使用される形質転換/感染方法にかかわらず、本教示はさらに、ゲノム編集事象を含む形質転換細胞を選択する。
【0436】
特定の実施形態によれば、選択は、特定の遺伝子座において首尾よく正確な改変(例えば、交換、挿入、欠失、点突然変異)を含む細胞のみが選択されるように実施される。従って、意図しない遺伝子座における改変(例えば、挿入、欠失、点突然変異)を含む任意の事象を含む細胞は、選択されない。
【0437】
一実施形態によれば、改変細胞の選択は、表現型レベルで、分子事象の検出によって、蛍光レポーターの検出によって、又は選択(例えば、抗生物質)の存在下での成長によって行うことができる。
【0438】
一実施形態によれば、改変細胞の選択は、新たに編集された非コードRNA分子の生合成及び発生(例えば、新規miRNAバージョンの存在、新規編集siRNA、piRNA、tasiRNAなどの存在)を分析することによって行われる。
【0439】
一実施形態によれば、改変された細胞の選択は、標的RNAをコードする植物又は生物における少なくとも1つの表現型、例えば、植物の葉の色、例えば葉及び他の器官におけるクロロフィルの部分的又は完全な喪失(退色)、壊死パターン(nacrotic paterrn)の存在/非存在、花の色、果実形質(例えば、貯蔵寿命、硬さ及び風味)、成長速度、植物サイズ(例えば、矮化症)、作物収量、生物的ストレス耐性(例えば、疾患耐性、線虫死亡率、甲虫産卵率、又は細菌、ウイルス、真菌、寄生虫、昆虫、雑草、及び栽培植物若しくは天然植物のいずれかに関連する他の耐性表現型)、非生物的ストレス耐性(例えば、耐熱・耐寒性、耐乾燥性、耐塩性、耐アリルアルコール性、又は栄養素、例えばリン(P)の欠如に対する抵抗性)を確認することによって、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対する非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)のサイレンシング活性及び/又は特異性を分析することによって行われる。
【0440】
一実施形態によれば、非コードRNA分子のサイレンシング特異性は、例えば、遺伝子の発現又は発現の欠如によって遺伝子型的に決定される。
【0441】
一実施形態によれば、非コードRNA分子のサイレンシング特異性は、表現型的に決定される。
【0442】
一実施形態によれば、植物の表現型は、遺伝子型の前に決定される。
【0443】
一実施形態によれば、植物の遺伝子型は、表現型の前に決定される。
【0444】
一実施形態によれば、改変細胞の選択は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAのRNAレベルを測定することによって、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対する非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)のサイレンシング活性及び/又は特異性を分析することによって行われる。これは、例えば、ノーザンブロッティング、ヌクレアーゼ保護アッセイ、In Situハイブリダイゼーション、又は定量的RT-PCRによって、当該分野で公知の任意の方法を使用して実施され得る。
【0445】
一実施形態によれば、改変細胞の選択は、例えば、挿入、欠失、挿入-欠失(インデル(Indel))、反転、置換、及びそれらの組み合わせなど、求められる編集のタイプに応じて、本明細書で「突然変異」又は「編集」とも呼ばれるDNA編集事象を含む植物細胞又はクローンを分析することによって行われる。
【0446】
配列変更を検出するための方法は、当該分野で周知であり、そしてDNA及びRNA配列決定(例えば、次世代シークエンシング)、電気泳動、酵素に基づくミスマッチ検出アッセイ及びハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、PCR、RT-PCR、RNase保護、In Situハイブリダイゼーション、プライマー伸長、サザンブロット、ノーザンブロット及びドットブロット分析)を含むが、これらに限定されない。一塩基多型(SNP)の検出のために使用される種々の方法(例えば、ユニークな制限部位(複数可)の出現又は消失を検出するためのPCRに基づくT7エンドヌクレアーゼ、Hetroduplex及びSanger配列決定、又はPCR、続いて制限消化もまた、使用され得る。
【0447】
DNA編集事象(例えば、インデル)の存在を確認する別の方法は、ミスマッチDNAを認識し切断する構造選択的酵素(例えば、エンドヌクレアーゼ)を利用するミスマッチ切断アッセイを含む。
【0448】
一実施形態によれば、形質転換細胞の選択は、蛍光レポーターによって発せられる蛍光を示す形質転換細胞を選択するフローサイトメトリー(FACS)によって行われる。FACSソーティングに続いて、蛍光マーカーを提示する、形質転換植物細胞の正に選択されたプールを収集し、そしてアリコートを、上記のようにDNA編集事象を試験するために使用し得る。
【0449】
抗生物質選択マーカーを使用した場合、形質転換後、植物細胞クローンを、それらがコロニー、すなわちクローン及びマイクロカルスに発達するまで、選択(例えば、抗生物質)の存在下で培養する。次いで、カルスの細胞の一部を、上記のように、DNA編集事象について分析(検証)する。
【0450】
従って、本発明の一実施形態によれば、当該方法は、形質転換された細胞において、第2の標的RNAに対する内在非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)の相補性を検証することをさらに含む。
【0451】
上記のように、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)をコードする遺伝子の改変後、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して、少なくとも約30%、33%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はさらには100%の相補性を含む。
【0452】
設計された非コードRNA分子と目的の標的RNAとの特異的結合は、計算アルゴリズム(例えば、BLAST)などの当技術分野で公知の任意の方法によって決定することができ、例えば、ノーザンブロット、In Situハイブリダイゼーション、QuantiGene Plexアッセイ等を含む方法によって検証することができる。
【0453】
陽性クローンは、DNA編集事象に関してホモ接合又はヘテロ接合であり得ることが理解されるであろう。ヘテロ接合体細胞の場合、細胞(例えば、二倍体の場合)は、改変された遺伝子のコピー及び非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)の非改変遺伝子のコピーを含み得る。当業者は、意図される用途に従って、さらなる培養/再生のためにクローンを選択する。
【0454】
一実施形態によれば、一過的な方法が所望される場合、所望されるようなDNA編集事象の存在を示すクローンが、DNA編集剤の不存在、すなわち、DNA編集剤をコードするDNA配列の喪失についてさらに分析され、選択される。これは、例えば、DNA編集剤の発現喪失(例えば、mRNA、タンパク質で)を、例えばGFPの蛍光検出又はq-PCR、HPLCによって分析することによって行うことができる。
【0455】
一実施形態によれば、一過性方法が所望される場合、細胞は、本明細書中に記載される核酸構築物又はその部分(例えば、DNA編集剤をコードする核酸配列)の不存在について分析され得る。これは、蛍光顕微鏡法、q-PCR、FACS、及び/又はサザンブロット、PCR、配列決定、HPLCなどの任意の他の方法によって確認することができる。
【0456】
一実施形態によれば、以下に論じるように、DNA編集剤(例えばエンドヌクレアーゼ)を欠く植物を得るために、植物を交配する。
【0457】
陽性クローンを保存(例えば、凍結保存)してもよい。
【0458】
あるいは、植物細胞(例えば、プロトプラスト)は、最初にカルスに成長する植物細胞の群に成長させ、次いで植物組織培養法を用いてカルスからシュートの再生(カルス生成)によって、植物全体に再生され得る。カルスへのプロトプラストの成長及びシュートの再生は、植物の各種に合わせてカスタマイズされなければならない組織培養培地中の植物成長調節因子の適切なバランスを必要とする。
【0459】
プロトプラストはまた、プロトプラスト融合と呼ばれる技術を使用して、植物育種のために使用され得る。異なる種からのプロトプラストは、電場又はポリエチレングリコールの溶液を使用することによって融合するように誘導される。この技術は、組織培養において体細胞ハイブリッドを生成するために使用され得る。
【0460】
プロトプラスト再生の方法は、当該分野で周知である。いくつかの因子、すなわち、遺伝子型、ドナー組織及びその前処理、プロトプラスト単離のための酵素処理、プロトプラスト培養の方法、培養物、培養培地、並びに物理的環境が、プロトプラストの単離、培養、及び再生に影響を及ぼす。徹底的な概説については、Maheshwariら、1986 Differentiation of Protoplasts and of Transformed Plant Cells: 3-36、Springer-Verlag、Berlinを参照のこと。
【0461】
再生された植物は、当業者が適切と考えるように、さらなる育種及び選択に供され得る。
【0462】
従って、本発明の実施形態はさらに、本教示に従って生成された第2の標的RNAをサイレンシングすることができる非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)を含む植物、植物細胞、及び植物の加工産物に関する。
【0463】
本発明の1つの局面によれば、標的遺伝子の発現が低下した植物を産生する方法であって、(a)本発明のいくつかの実施形態による植物を育種する工程と、(b)目的の標的RNA若しくは第2の標的RNAの発現が低下した子孫植物、又は目的の標的RNAに対する非コードRNA分子中にサイレンシング特異性を含み、かつ前記DNA編集剤を含まない子孫植物を選択し、それによって標的遺伝子の発現が低下した植物を産生する工程とを含む方法が提供される。
【0464】
一実施形態によれば、育種は、交配又は自配を含む。
【0465】
本明細書で用いる「交配」という用語は、雄性植物(又は配偶子)による雌性植物(又は配偶子)の受精を意味する。用語「配偶子」とは、配偶体から有糸分裂によって植物体内で産生され、有性生殖に関与する一倍体生殖細胞(卵又は精子)を指し、その間に、異性の2つの配偶子が融合して二倍体接合体を形成する。この用語は一般に、花粉(精子細胞を含む)及び胚珠(胚盤を含む)への言及を含む。従って、「交配」とは、一般に、ある個体の胚珠が他の個体の花粉と受精することを指し、「自配」とは、個体の胚珠が同一個体由来の花粉と受精することを指す。交配は植物の育種に広く用いられており、母親由来の1本の染色体と父親由来の1本の染色体を交配した2つの植物間のゲノム情報の混合をもたらす。この結果、遺伝的に遺伝する形質が新たに組み合わされることになる。
【0466】
上記のように、植物は、望ましくない因子、例えば、DNA編集剤(例えばエンドヌクレアーゼ)を欠く植物を得るために交配され得る。
【0467】
一実施形態によれば、増加したストレス耐性、増加した収率、増加した成長速度、又は増加した収量品質を有する植物を生成する方法であって、本発明のいくつかの実施形態の方法に従って、植物細胞において非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか、又はRNAサイレンシングにプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって植物を生成する工程を含み、目的の標的RNAは、ストレスに対する感受性、減少した収率、減少した成長速度、又は減少した収量品質を付与する植物の遺伝子のものである方法が提供される。
【0468】
本明細書で使用される「ストレス耐性」という語句は、代謝、成長、生産性及び/又は生存率の実質的な変化を被ることなく、植物が生物的又は非生物的ストレスに耐える能力を指す。
【0469】
本明細書で使用される「非生物的ストレス」という語句は、植物の代謝、成長、発生、繁殖、又は生存(集合的に「成長」)に悪影響を及ぼす、生きていない(「非生物的な」)物理的又は化学的因子への植物、植物細胞などの曝露を指す。非生物的ストレスは、例えば、水(例えば、洪水、干ばつ、又は脱水)、嫌気性条件(例えば、低レベルの酸素又は高レベルのCO)、異常な浸透圧条件(例えば、浸透圧ストレス)、塩分、又は温度(例えば、高温/加熱、低温、凍結、又は霜)、汚染物質への曝露(例えば、重金属毒性)、嫌気性、栄養不足(例えば、窒素不足又は限られた窒素)、大気汚染、又は紫外線照射などの環境要因によって植物に課すことができる。
【0470】
本明細書で使用される「生物的ストレス」という語句は、植物の代謝、成長、発生、繁殖、又は生存(集合的に「成長」)に悪影響を及ぼす、生きている(「生物的な」)生物への植物、植物細胞などの曝露を指す。生物的ストレスは、例えば、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫、有益及び有害な昆虫、雑草、並びに栽培植物又は天然植物によって引き起こされ得る。
【0471】
本明細書で使用される「収量」又は「植物収量」という語句は、増加した植物成長(成長速度)、増加した作物成長、増加したバイオマス、及び/又は増加した植物産物産生(穀物、果実、種子等を含む)を指す。
【0472】
一実施形態によれば、増加したストレス耐性、増加した収率、増加した成長速度又は増加した収量品質を有する植物を生成するために、非コードRNA分子は、ストレスに対する感受性、減少した収率、減少した成長速度又は減少した収量品質を付与する植物の遺伝子である目的のRNAを標的とするように設計される。
【0473】
一実施形態によれば、標的とされる(例えば、ノックアウトされる)例示的な感受性植物遺伝子は、感受性S遺伝子(例えば、MLO(Mildew Locus O)として知られる遺伝子座に存在するもの)を含むが、これに限定されない。
【0474】
一実施形態によれば、本方法によって生成される植物は、本方法によって生成されない植物と比較して、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%増加したストレス耐性、増加した収率、増加した収量品質、増加した成長速度を含む。
【0475】
ストレス耐性の増大を評価するための当技術分野で公知の任意の方法を、本発明に従って使用することができる。ストレス耐性の増加を評価する例示的な方法には、Yoon,SK.、Bae,EK.、Lee,H.ら、Trees(2018)32:823.www(dot)doi(dot)org/10.1007/s00468-018-1675-2)に記載されているように、塩ストレス耐性の向上のためのポプラにおけるPagSAP1の下方制御、及びSlbZIP38の下方制御によるトマトにおける干ばつ耐性の向上(Pan Yら、Genes 2017,8,402;doi:10.3390/genes8120402)が含まれるが、これらに限定されない。これらは、参照により本明細書に援用される。
【0476】
増加した収率を評価するための当該分野で公知の任意の方法が、本発明に従って使用され得る。収率の増加を評価する例示的な方法は、Ar-Rafi Md.Faisalら、AJPS> 第8巻、第9号、2017年8月、DOI:10.4236/ajps.2017.89149に記載されるようなイネにおけるDST発現の低下を含むが、これに限定されず、カノーラにおけるBnFTAの下方制御は、Wang Yら、Mol Plant.2009年1月;2(1):191-200.doi:10.1093/mp/ssn088に記載されるように、収率の増加をもたらした。これらは、両方とも参照により本明細書に援用される。
【0477】
上昇した成長速度を評価するための当技術分野で公知の任意の方法を、本発明に従って使用することができる。成長速度の上昇を評価する例示的な方法としては、Marcelo de Freitas Limaら、Biotechnology Research and Innovation(2017)1、14-25に記載されるように、シロイヌナズナにおけるBIG BROTHERの発現の減少が挙げられるが、これらに限定されず、又はGA2-OXIDASEは成長及びバイオマスの増大をもたらす。この文献は、参照により本明細書に援用される。
【0478】
増加した収量品質を評価するための当技術分野で公知の任意の方法を、本発明に従って使用することができる。収量品質の増加を評価する例示的な方法には、Yeh S Yら、Rice(NY).2015;8:36に記載されているように、イネのOsCKX2の下方制御が、より多くの分げつ、より多くの穀物の生産をもたらし、穀物がより重かったこと;及び多くの植物におけるOMTレベルの低下(これは、改変されたリグニン蓄積を生じる)は、Verma SR及びDwivedi UN、South African Journal of Botany、第91巻、2014年3月、107-125頁に記載されるように、産業目的のための材料の消化性を高めることが挙げられるが、これらに限定されない。上記の両方の文献は、参照により本明細書に援用される。
【0479】
一実施形態によれば、当該方法は、甘味の増加、糖含有量の増加、風味の増加、熟成制御の改善、水ストレス耐性の向上、熱ストレス耐性の向上、及び塩耐性の増加を含む植物の生成をさらに可能にする。当業者は、改変のための標的RNA配列を選択するために、本明細書中に記載される方法を利用する方法を知る。
【0480】
一実施形態によれば、病原体耐容性又は耐性植物を生成する方法であって、本発明のいくつかの実施形態の方法に従って、植物細胞において非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか、又はRNAサイレンシング分子にプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって病原体耐容性又は耐性植物を生成する工程を含み、目的の標的RNAが、病原体に対する感受性を付与する植物の遺伝子のものである方法が提供される。
【0481】
一実施形態によれば、病原体耐容性又は耐性植物を生成する方法であって、本発明のいくつかの実施形態の方法に従って、植物細胞において非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか、又はRNAサイレンシング分子にプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって病原体耐容性又は耐性植物を生成する工程を含み、目的の標的RNAが病原体の遺伝子のものである方法が提供される。
【0482】
一実施形態によれば、有害生物耐容性又は耐性植物を生成する方法であって、本発明のいくつかの実施形態の方法に従って、植物細胞において非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか、又はRNAサイレンシング分子にプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって有害生物耐容性又は耐性植物を生成する工程を含み、目的の標的RNAが有害生物の遺伝子のものである方法が提供される。
【0483】
本明細書中で使用される場合、用語「病原体」は、植物にコロニー形成、損傷、攻撃、又は感染することによって、植物に負の影響を及ぼす生物をいう。従って、病原体は、植物の成長、発生、生殖、収穫又は収量に影響を及ぼし得る。これには、病気を広げたり、宿主に損傷を与えたり、宿主の栄養分をめぐって競合したりする生物が含まれる。植物病原体は、限定されるものではないが、真菌、卵菌類、細菌、ウイルス、ウイロイド、ウイルス様生物、植物質、原生動物(原虫)、線虫、昆虫及び寄生植物を含む。
【0484】
病原体の非限定的な例としては、長い触角を持つカミキリムシ(long horned borer)等のカミキリムシ(roundheaded borer);レッドガムラープキジラミ(red gum lerp psyllid)(グリカスピス・ブリンブレコンベイ(Glycaspis brimblecombei))、ブルーガムキジラミ(blue gum psyllid)、スポッティッドガムラープキジラミ(spotted gum lerp psyllid)、レモンガムラープキジラミ(lemon gum lep psyllid)等のキジラミ;カメノコハムシ;ゾウムシ;ハムシ;ナラタケ;トウマストコリス・ペレグリヌス(Thaumastocoris peregrinus);ユーカリアシブトコバチ(レプトシブ・インバサ、Leptocybe invasa)、オフェリムス・マスケッリ(Ophelimus maskelli)及びセリトリコデス・グロブレス(Selitrichodes globules)等の固着性のフシバチ(gall wasp)(タマバチ(Cynipidae));雑食性尺取り虫(Omnivorous looper)及びオレンジハマキガ(Orange tortrix)等の食葉性毛虫類;ガラスのような羽を持つヨコバイ(Glassy-winged sharpshooter);並びにジャイアント・ホワイトフライ(Giant whitefly)等のコナジラミ類が挙げられるが、これらに限定されない。病原体の他の非限定的な例には、ケアブラムシ亜科(Chaitophorus)の種、クラウディーウィングド・コットンウッド(Cloudywinged cottonwood)及びニタイケアブラムシ属(Periphyllus)の種等のアブラムシ;リンゴカキカイガラムシ(Oystershell scale)及びナシマルカイガラムシ(San Jose scale)等のマルカイガラムシ科のカイガラムシ(Armored scale);ボクトウガの幼虫(Carpenterworm);アメリカスズメバチガ(American hornet moth)及びウエスタン・ポピュラー・クリアウィング(Western poplar clearwing)等のスカシバガ(Clearwing moth)穿孔虫;ブロンズ樺木輪状食い虫(Bronze birch borer)及びブロンズポプラ木輪状食い虫(Bronze poplar borer)等のタマムシ類(Flatheaded borer);アメリカシロヒトリ(Fall webworm)、果樹ハマキムシ(Fruit-tree leafroller)、レッドハンプトキャタピラー(Redhumped caterpillar)、ヨーロッパヤナギドクガ(Satin moth)のケムシ、スパイニーエルムキャタピラー(Spiny elm caterpillar)、テンマクケムシ(Tent caterpillar)、ドクガ類(Tussock moth)及びニシトラフアゲハ(Western tiger swallowtail)等の葉食性毛虫類;ポプラシールドベアラー(Poplar shield bearer)等のハモグリムシ(Foliage miner);コットンウッドフシダニ(Cottonwood gall mite)等のフシダニ類(gall mite)並びに水疱ダニ類(blister mite);ポプラ虫コブアブラムシ(Poplar petiolegall aphid)等の虫コブアブラムシ(Gall aphid);ガラスのような羽を持つヨコバイ(Glassy-winged sharpshooter);ハムシ類及びノミトビヨロイムシ類;コナカイガラムシ類;ポプラ及びヤナギの穿孔虫(Poplar and willow borer);カミキリムシ;ハバチ類;クロカタカイガラムシ(black scale)、柑橘類の木の害虫(Brown soft scale)、コットニーメープルカイガラムシ(Cottony maple scale)及びミズキカタカイガラムシ(European fruit lecanium)等のカタカイガラムシ類(Soft scale);バッファローツノゼミ(Buffalo treehopper)等のツノゼミ;並びにグンバイムシ(lace bug)及びカスミカメ(Lygus bug)等の半翅類昆虫が含まれる。
【0485】
ウイルス性植物病原体の他の非限定的な例としては、種:マメ早期褐変ウイルス(Pea early-browning virus:PEBV)、属:トブラウイルス、種:トウガラシ輪紋ウイルス(Pepper ringspot virus:PepRSV)、属:トブラウイルス、種:スイカモザイクウイルス(WMV)、属:ポティウイルス、及びポティウイルス属由来の他のウイルス、種:タバコモザイクウイルス属(TMV)、トバモウイルス及びトバモウイルス属由来の他のウイルス、種:ジャガイモウイルスX属(PVX)、ポテックススウイルス及びポテックスウイルス属由来の他のウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。従って、本教示は、RNAウイルス並びにDNAウイルス(例えば、ジェミニウイルス又はビジミニウイルス)の標的化を想定している。標的とすることができるジェミニウイルスとしては、アブチロンモザイクビジェミニウイルス(abutilon mosaic bigeminivirus)、アゲラタム黄色葉脈ビジェミニウイルス(ageratum yellow vein bigeminivirus)、マメカリコモザイクビジェミニウイルス(bean calico mosaic bigeminivirus)、マメ金色葉脈モザイクビジェミニウイルス(bean golden mosaic bigeminivirus)、ビンディ黄色葉脈ビジェミニウイルス(bhendi yellow vein mosaic bigeminivirus)、キャッサバアフリカモザイクビジェミニウイルス(cassava African mosaic bigeminivirus)、キャッサバインドモザイクビジェミニウイルス(cassava Indian mosaic bigeminivirus)、チノデルトマトビジェミニウイルス(chino del tomate bigeminivirus)、コットンリーフクラムプルビジェミニウイルス(cotton leaf crumple bigeminivirus)、コットン葉巻ビジェミニウイルス(cotton leaf curl bigeminivirus)、クロトン黄色葉脈モザイクビジェミニウイルス(croton yellow vein mosaic bigeminivirus)、フジマメ黄色モザイクビジェミニウイルス(dolichos yellow mosaic bigeminivirus)、ユーフォルビアモザイクビジェミニウイルス(euphorbia mosaic bigeminivirus)、ホースグラム黄色モザイクビジェミニウイルス(horsegram yellow mosaic bigeminivirus)、ヤトロファモザイクビジェミニウイルス(jatropha mosaic bigeminivirus)、ライマメ金色モザイクビジェミニウイルス(lima bean golden mosaic bigeminivirus)、メロン葉巻ビジェミニウイルス(melon leaf curl bigeminivirus)、リョクトウ黄色モザイクビジェミニウイルス(mung bean yellow mosaic bigeminivirus)、オクラ葉巻ビジェミニウイルス(okra leaf-curl bigeminivirus)、トウガラシワステコビジェミニウイルス(pepper hausteco bigeminivirus)、トウガラシテキサスビジェミニウイルス(pepper Texas bigeminivirus)、ジャガイモ黄色モザイクビジェミニウイルス(potato yellow mosaic bigeminivirus)、タンキリマメモザイクビジェミニウイルス(rhynchosia mosaic bigeminivirus)、シラノ金色モザイクビジェミニウイルス(serrano golden mosaic bigeminivirus)、カボチャ葉巻ビジェミニウイルス(squash leaf curl bigeminivirus)、タバコ葉巻ビジェミニウイルス(tobacco leaf curl bigeminivirus)、トマトオーストラリア葉巻ビジェミニウイルス(tomato Australian leafcurl bigeminivirus)、トマト金色モザイクビジェミニウイルス(tomato golden mosaic bigeminivirus)、トマトインド葉巻ビジェミニウイルス(tomato Indian leafcurl bigeminivirus)、トマトリーフクラムプルビジェミニウイルス(tomato leaf crumple bigeminivirus)、トマト斑紋ビジェミニウイルス(tomato mottle bigeminivirus)、トマト黄色葉巻ビジェミニウイルス(tomato yellow leaf curl bigeminivirus)、トマト黄色モザイクビジェミニウイルス(tomato yellow mosaic bigeminivirus)、スイカ萎縮ビジェミニウイルス(watermelon chlorotic stunt bigeminivirus)及びスイカ葉巻斑紋ビジェミニウイルス(watermelon curly mottle bigeminivirus)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0486】
本明細書中で使用される場合、用語「病害虫」は、植物に直接的又は間接的に害を及ぼす生物をいう。直接的な効果としては、例えば、植物の葉を食すことが挙げられる。間接的な効果には、例えば、病原体(例えば、ウイルス、細菌など)の植物への伝播が含まれる。後者の場合、病害虫は病原体伝播のベクターとなる。例示的な病害虫には、これらに限定されないが、甲虫、シラミ、昆虫、線虫、カタツムリが含まれる。
【0487】
一実施形態によれば、病原体は線虫である。例示的な線虫には、ネモグリセンチュウ(ラドホラス・シミリス(Radopholus similis))、エレガンス線虫(シノラブディス・エレガンス、Caenorhabditis elegans)、ラドホルス・アラボコフェアエ(Radopholus arabocoffeae)、ミナミネグサレセンチュウ(Pratylenchus coffeae)、ネコブセンチュウ(メロイドギン属(Meloidogyne)の種)、シストセンチュウ(ヘテロデラ属(Heterodera)及びグロボデラ属(Globodera)の種)、ネグサレセンチュウ(プラチレンクス属(Pratylenchus)の種)、クキセンチュウ(ジチレンカス・ディプサシ(Ditylenchus dipsaci))、マツノザイセンチュウ(ブルサフェレンクス・キシロフィルス(Bursaphelenchus xylophilus))、ニセフクロセンチュウ(ロチレンクルス・レニフォルミス(Rotylenchulus reniformis))、ブドウオオハリセンチュウ(Xiphinema index)、ナコブス・アベルランス(Nacobbus aberrans)及びアフェレンコイデス・ベッセイ(Aphelenchoides besseyi)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0488】
一実施形態によれば、病原体は真菌である。例示的な真菌は、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、レプトスファエリア・マキュランス(Leptosphaeria maculans)(キャベツ根朽病菌(Phoma lingam))、菌核病菌(スクレロチニア・スクレロチオラム、Sclerotinia sclerotiorum)、ピリキュラリア・グリセア(イネいもち病菌、Pyricularia grisea)、イネ馬鹿苗病菌(ジベレラ フジクロイ、Gibberella fujikuroi)(フザリウム・モニリフォルメ(Fusarium moniliforme))、マグナポルテ・オリザエ(イネいもち病菌、Magnaporthe oryzae)、ボトリティス・シネレア(Botrytis cinereal)、プッチニア属(Puccinia)の種、フザリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearum)、ブルメリア・グラミニス(Blumeria graminis)、ミコスファエレラ・グラミニコラ(Mycosphaerella graminicola)、コレトトリカム属(Colletotrichum)の種、ウスティラゴ・メイディス(Ustilago maydis)、メラムプソラ・リニ(Melampsora lini)、ファコプソラ・パチリジ(Phakopsora pachyrhizi)及びリゾクトニア・ソラニ-(Rhizoctonia solani)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0489】
一実施形態によれば、病原体耐性又は耐容性植物を生成するために、非コードRNA分子は、病原体に対する感受性を付与する植物の遺伝子のものである目的のRNAを標的とするように設計される。
【0490】
一実施形態によれば、標的化される例示的な植物遺伝子は、キュウリにおけるウイルス感染に対する感受性を付与する遺伝子eIF4Eを含むが、これに限定されない。
【0491】
一実施形態によれば、病原体耐性又は耐容性植物を生成するために、非コードRNA分子は、病原体の遺伝子のものである目的のRNAを標的とするように設計される。
【0492】
植物又は病原体標的遺伝子の決定は、日常的なバイオインフォマティクス分析によるなど、当技術分野で公知の任意の方法を使用して達成することができる。
【0493】
一実施形態によれば、線虫病原体遺伝子は、ネモグリセンチュウ遺伝子カルレティキュリン(Calreticulin)13(CRT)又はコラーゲン5(col-5)を含む。
【0494】
一実施形態によれば、真菌病原体遺伝子は、フザリウム・オキシスポラム遺伝子FOW2、FRP1、及びOPRを含む。
【0495】
一実施形態によれば、病原体遺伝子は、例えば、液胞型ATPアーゼ(vATPase)、dvssj1及びdvssj2、α-チューブリン及びsnf7を含む。
【0496】
特定の実施形態によれば、植物がセイヨウアブラナ(ナタネ)である場合、目的の標的RNAとしては、レプトスファエリア・マクランス(Leptosphaeria maculans)(キャベツ根朽病菌(Phoma lingam))(例えば、根朽病(Phoma stem canker)を引き起こす)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:AM933613.1に記載);ノミトビヨロイムシ(Flea beetle)(フィロトレタ・ビッツラ(Phyllotreta vittula)又はハムシ類(Chrysomelidae)、例えば、GenBank受入番号:KT959245.1に記載)の遺伝子;又はスクレロチニア・スクレロチオルム(Sclerotinia sclerotiorum)の遺伝子(例えば、菌核病(Sclerotinia stem rot)を引き起こす)(例えば、GenBank受入番号:NW_001820833.1に記載)が挙げられるが、これに限定されない。
【0497】
特定の実施形態によれば、植物がシトラスシネンシス(Citrus x sinensis)(オレンジ)である場合、目的の標的RNAとしては、柑橘類潰瘍病(Citrus Canker:CCK)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:AE008925に記載);カンジダタス・リベリバクター(Candidatus Liberibacter)種(例えば、カンキツグリーニング病(Citrus greening disease)を引き起こす)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:CP001677.5に記載);又はならたけ病(Armillaria root rot)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:KY389267.1に記載)の遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0498】
特定の実施形態によれば、植物がギニアアブラヤシ(Elaeis guineensis)(アブラヤシ)である場合、目的の標的RNAとしては、マンネンタケ属(Ganoderma)の種(例えば、根株心腐病(Ganoderma butt rot)としても知られる樹幹腐敗病(basal stem rot:BSR)を引き起こす)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:U56128.1に記載)、ヒロヘリアオイラガ(イラクサキャタピラー、Nettle Caterpillar)の遺伝子、又はフザリウム種、フィトフトラ属(疫病菌、Phytophthora)の種、フハイカビ属(フィチウム属、Pythium)の種、リゾクトニア・ソラニ-(Rhizoctonia solani)のいずれか1種の遺伝子(例えば、根腐れ(Root rot)を引き起こす)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0499】
特定の実施形態によれば、植物がエゾヘビイチゴ(Fragaria vesca)(野生イチゴ)である場合、目的の標的RNAは、バーティシリウム・ダーリエ(Verticillium dahlia)(例えば、バーティシリウム萎凋病(Verticillium Wilt)を引き起こす)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:DS572713.1に記載);又はフザリウム・オキシスポラム分化型フラガリアエ(Fusarium oxysporum f.sp.fragariae)の遺伝子(例えば、フザリウム萎凋病(Fusarium wilt)を引き起こす)(例えば、GenBank受入番号:KR855868.1に記載)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0500】
特定の実施形態によれば、植物がダイズ(ダイズマメ)である場合、目的の標的RNAは、ファコプソラ・パキリジー(P.pachyrhizi)(例えば、アジアダイズさび病(Asian rust)としても知られるダイズさび病(Soybean rust)を引き起こす)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:DQ026061.1に記載);ダイズアブラムシの遺伝子(例えば、GenBank受入番号:KJ451424.1に記載);ダイズ矮化病ウイルス(SbDV)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:NC_003056.1に記載);又はアオクサカメムシ(Green Stink Bug)(アクロステルヌム・ヒラレ(Acrosternum hilare))の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:NW_020110722.1に記載)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0501】
特定の実施形態によれば、植物がゴシピウム・レモンディ(Gossypium raimondii)(綿)である場合、目的の標的RNAは、フザリウム・オキシスポラム分化型バシンフェクツム(Fusarium oxysporum f.sp.vasinfectum)(例、フザリウム萎凋病(Fusarium wilt)を引き起こす)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:JN416614.1に記載);ダイズアブラムシの遺伝子(例えば、GenBank受入番号:KJ451424.1に記載);又はワタキバガ(Pink bollworm)(ペクチノフォラ・ゴシピエラ(Pectinophora gossypiella))の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:KU550964.1に記載)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0502】
特定の実施形態によれば、植物がイネ(Oryza sativa)(コメ)である場合、目的の標的RNAは、イモチ病菌(ピリキュラリア・グリセア、Pyricularia grisea)(例えば、イネイモチ病(Rice Blast)を引き起こす)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:AF027979.1に記載);ジベレラ・フジクロイ(Gibberella fujikuroi)(フザリウム・モニリフォルメ(Fusarium moniliforme))の遺伝子(例えば、馬鹿苗病(Bakanae Disease)を引き起こす)(例えば、GenBank受入番号:AY862192.1に記載);又はテッポウムシ(Stem borer)、例えば、イッテンオオメイガ(Scirpophaga incertulas Walker - Yellow Stem Borer)、イネシロオオメイガ(S.innota Walker - White Stem Borer)、ニカメイガ(Chilo suppressalis Walker - 稲の髄虫(Striped Stem Borer))、セサミア・インフェレンス(Sesamia inferens Walker - イネヨトウ(Pink Stem Borer))の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:KF290773.1に記載)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0503】
特定の実施形態によれば、植物がソラナム・リコペルシカム(Solanum lycopersicum)(トマト)である場合、目的の標的RNAは、疫病菌(Phytophthora infestans)(例えば、疫病を引き起こす)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:AY855210.1に記載);コナジラミ タバココナジラミ(Bemisia tabaci)の遺伝子(例えばGennadius。例えば、GenBank受入番号:KX390870.1に記載);又はトマト黄化葉巻ウイルス(Tomato yellow leaf curl geminivirus:TYLCV)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:LN846610.1に記載されている)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0504】
特定の実施形態によれば、植物がソラナム・チューベローサム(Solanum tuberosum)(ジャガイモ)である場合、目的の標的RNAは、疫病菌(Phytophthora infestans)(例えば、疫病(Late Blight)を引き起こす)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:AY050538.3に記載);エルウィニア(Erwinia)種の遺伝子(例えば、黒脚病及び軟腐病(Blackleg and Soft Rot)を引き起こす)(例えば、GenBank受入番号:CP001654.1に記載);又はシストセンチュウ(Cyst Nematodes)の遺伝子(例えば、グロボデラ・パリダ(Globodera pallida)及びG.ロストキエンシス(G.rostochiensis)(例えば、GenBank受入番号:KF963519.1に記載)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0505】
具体的な実施形態によれば、植物がテオブロマ・カカオ(Theobroma cacao)(カカオ)である場合、目的の標的RNAは、担子菌モニリオフトラ・ロレリ(Moniliophthora roreri)(例えば、霜白鞘病(Frosty Pod Rot)を引き起こす)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:LATX01001521.1に記載);モニリオフトラ・ペルニキオサ(Moniliophthora perniciosa)(例えば、天狗巣病(Witches’s Broom disease)を引き起こす)の遺伝子;又はメクラカメムシの変種(Mirid)、例えば、ジスタンチエラ・テオブロマ(Distantiella theobroma)及びサールベルゲラ・シンギュラリス(Sahlbergella singularis)、ヘロペルティス(Helopeltis)種、モナロニオン(Monalonion)の遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0506】
特定の実施形態によれば、植物がヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis vinifera)(ブドウ)である場合、目的の標的RNAは、クロステロウイルスGVA(例えば、ルゴースウッド病(Rugose wood disease)を引き起こす)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:AF007415.2に記載);ブドウ葉巻ウイルス(Grapevine leafoll virus)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:FJ436234.1に記載);ブドウファンリーフ病ウイルス(Grapevine fanleaf degeneration disease virus:GFLV)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:NC_003203.1に記載);又はブドウフレック病(Grapevine fleck disease(GFkV)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:NC_003347.1に記載)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0507】
特定の実施形態によれば、植物がトウキビ(コーンとも呼ばれるトウモロコシ)である場合、目的の標的RNAは、ツマジロクサヨトウ(Fall Armyworm)(例えば、ヨトウガ(スポドプテラ・フルギペルダ、Spodoptera frugiperda))(例えば、GenBank受入番号:AJ488181.3に記載)の遺伝子;ヨーロッパアワノメイガの遺伝子(例えば、GenBank受入番号:GU329524.1に記載);又は北部および西部ハムシモドキ幼虫(Northern and western corn rootworms)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:NM_001039403.1に記載)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0508】
特定の実施形態によれば、植物がサトウキビである場合、目的の標的RNAは、穿孔性節足動物(Internode Borer)(例えば、スジツトガ(キロ・サッカリパグス・インディカス、Chilo Saccharifagus Indicus)の遺伝子、キサントモナス・アルビリネアンス(Xanthomonas Albileneans)(例えば、葉焼け(Leaf Scald)を引き起こす)の遺伝子;又はサトウキビ黄葉病ウイルス(Sugarcane Yellow Leaf Virus:SCYLV)の遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0509】
特定の実施形態によれば、植物がコムギである場合、目的の標的RNAは、プクシニア・ストリイフォルミス(Puccinia striiformis)の遺伝子(例えば、黄さび病(stripe rust)を引き起こす)又はアブラムシ(Aphid)の遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0510】
特定の実施形態によれば、植物がオオムギである場合、目的の標的RNAは、プクシニア・ホルデイ(Puccinia hordei)(例えば、葉さび病(Leaf rust)を引き起こす)の遺伝子、プクシニア・ストリイフォルミス分化型ホルデイ
(Puccinia striiformis f.sp.Hordei)(例えば、黄さび病を引き起こす)の遺伝子、又はアブラムシ(Aphid)の遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0511】
特定の実施形態によれば、植物がヒマワリである場合、目的の標的RNAは、プクシニア・ヘリアンティ(Puccinia helianthi)(例えば、さび病(Rust disease)を引き起こす)の遺伝子;ボエレマ・マクドナルディイ(Boerema macdonaldii)(例えば、フォーマ茎枯れ病(Phoma black stem)を引き起こす)の遺伝子;ゾウムシ(Seed weeil)(例えば、赤と灰)、例えばスミクロニクス・フルウス(Smicronyx fulvus)(赤);スミクロニクス・ソルディダス(Smicronyx sordidus)(灰)の遺伝子;又はスクレロチニア・スクレロチオラム(Sclerotinia sclerotiorum)(例えば、茎腐れ病及び菌核病(Sclerotinia stalk and head rot disease)を引き起こす)の遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0512】
特定の実施形態によれば、植物がゴムの木である場合、目的の標的RNAは、南米葉枯病菌(Microcyclus ulei)(例えば、南米の葉枯れ病(South American leaf blight:SALB)を引き起こす)の遺伝子;パラゴムノキ根白腐病菌(Rigidoporus microporus)(例えば、根白腐病(White root disease)を引き起こす)の遺伝子;ガノデルマ・シュードフェレウム(Ganoderma pseudoferreum)の遺伝子(例えば、根紅腐病(Red root disease)を引き起こす)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0513】
特定の実施形態によれば、植物がリンゴ植物である場合、目的の標的RNAは、ネオネクトリア・ジチシマ(Neonectria ditissima)(例えば、リンゴ腐らん病(Apple Canker)を引き起こす)の遺伝子、ポドスファエラ・レウコトリカ(Podosphaera leucotricha)(例えば、リンゴうどんこ病(Apple Powdery Mildew)を引き起こす)の遺伝子、又はベンチュリア・イネクアリス(Venturia inaequalis)(例えば、リンゴ黒星病(Apple Scab)を引き起こす)遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0514】
目的のRNA(例えば、病原体の遺伝子)を標的とするように改変され得る例示的な内在非コードRNA分子、内在非コードRNA分子を改変するために使用され得る例示的なgRNA(すなわち、DNA編集剤)配列、及び目的の標的RNAに対する内在非コードRNA分子のサイレンシング特異性をリダイレクトするための例示的なヌクレオチド配列は、以下の表1Bに提供される。
【0515】
【表5(1)】
【0516】
【表5(2)】
【0517】
【表5(3)】
【0518】
【表5(4)】
【0519】
【表5(5)】
【0520】
【表5(6)】
【0521】
【表5(7)】
【0522】
【表5(8)】
【0523】
【表5(9)】
【0524】
【表5(10)】
【0525】
【表5(11)】
【0526】
【表5(12)】
【0527】
【表5(13)】
【0528】
【表5(14)】
【0529】
【表5(15)】
【0530】
【表5(16)】
【0531】
【表5(17)】
【0532】
【表5(18)】
【0533】
【表5(19)】
【0534】
【表5(20)】
【0535】
【表5(21)】
【0536】
【表5(22)】
【0537】
【表5(23)】
【0538】
一実施形態によれば、当該方法によって生成される植物は、当該方法によって生成されない植物と比較して(すなわち、野生型植物と比較して)、病原体に対して少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%耐性又は耐容性である。
【0539】
植物の病原体に対する耐容性又は耐性を評価するための当該分野で公知の任意の方法が、本発明に従って使用され得る。例示的な方法には、Ramirez V1、Garcia-Andrade J、Vera P.、Plant Signal Behav 2011年6月;6(6):911-3.Epub 2011年6月1日に記載されているように、ボトリティス・シネレア(Botrytis cinereal)に対する耐性を増強するシロイヌナズナにおけるMYB46発現の減少;又はアルファルファにおけるHCTの下方制御は、Gallego-Giraldo L.ら、New Phytologist(2011) 190:627-639 doi:10.1111/j.1469-8137.2010.03621.xに記載されるように、植物における防御応答の活性化を促進することが含まれるが、これに限定されない。上記文献は、両方とも参照により本明細書に援用される。
【0540】
一実施形態によれば、除草剤耐性植物を生成する方法であって、本発明のいくつかの実施形態の方法に従って、植物細胞において非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか、又はRNAサイレンシング分子にプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって除草剤耐性植物を生成する工程を含み、目的の標的RNAは、除草剤に対する感受性を付与する植物の遺伝子のものである方法が提供される。
【0541】
一実施形態によれば、除草剤は、色素体内(例えば、葉緑体内)に存在する経路を標的とする。
【0542】
従って、除草剤耐性植物を生成するために、非コードRNA分子は、目的のRNAを標的とするように設計される。これには、葉緑体遺伝子psbA(除草剤アトラジンの標的である光合成キノン結合膜タンパク質Qをコードする)及びEPSPシンターゼ(核タンパク質であるが、葉緑体におけるその過剰発現又は蓄積は、EPSPの転写速度を増加させるとともに酵素の代謝回転を減少させるので、植物を除草剤グリホサートに対して耐性にすることを可能にする)に対する遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。
【0543】
一実施形態によれば、当該方法によって生成される植物は、当該方法によって生成されない植物と比較して、除草剤に対して少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%耐性である。
【0544】
一実施形態によれば、本発明のいくつかの実施形態の方法に従って生成された植物が提供される。
【0545】
一実施形態によれば、植物は、遺伝子組換えされていない(非GMOである)。
【0546】
一実施形態によれば、本発明のいくつかの実施形態の方法に従って生成された植物の種子が提供される。
【0547】
内在非コードRNAにおける最小限のヌクレオチド改変/編集を伴うGEiGSの設計は、当業者に周知のバイオインフォマティクスツールに基づくインシリコ方法を用いて達成することができる。
【0548】
一実施形態によれば、このような方法は、以下のように実施される:
【0549】
以下の情報が利用可能であるべきである:a)遺伝子編集誘導遺伝子サイレンシング(GEiGS)によってサイレンシングされる標的配列(「標的」);b)GEiGS(すなわち、改変サイレンシング活性及び/又は特異性を有する非コードRNA)が遍在的に(例えば、構成的に)又は特異的に発現される(例えば、特定の組織、発生段階、ストレス、加熱/冷ショックなどに特異的な発現)かどうかを選択すること。
【0550】
入力基準に適合する関連miRNAのみをフィルタリング(すなわち、選択)するために、この情報を公的又は組織内の利用可能なmiRNAデータセット(例えば、小分子RNA配列決定、ゲノム配列、マイクロアレイなど)に提出する:miRbase(Kozommara及びGriffiths-Jones(2014))、tasRNAdb(Zhang Changqingら、(2013))、及びmirEx 2.0(Zielezinski、Andrzejら、「mirEX 2.0 - Integrated Environment for Expression Profiling of Plant microRNAs」、BMC Plant Biology 15(2015):144、PMC.Web. 2018年9月15日)のような、上記の要件に従って発現されるmiRNA。
【0551】
公的に入手可能なツールを用いて、強力な標的特異的siRNA配列の一覧を作製することができる。miRNAは強力なsiRNA配列に対してアラインメントされ、最も相同なmiRNAが選択され得る。フィルタリングを受けたmiRNAは、強力なsiRNAと同様に、同じ方向に類似の配列を有し得る。
【0552】
標的特異的な強力なsiRNAと高い相同性を有するとスコア付けされた自然成熟miRNA配列を、標的の配列と完全に一致させるように改変する。この改変は、標的相同性が最も高い1つの成熟miRNA鎖で起こる可能性がある(例えば、元のmiRNAガイド又はパッセンジャー鎖のいずれかであり得る)。標的に対するこのような100%相補性は、潜在的に、miRNA配列をsiRNAに変えることができる。
【0553】
最小のGEは、標的に対する天然に存在する高い相同性(逆相補性)を有するmiRNA配列をフィルタリングすることによって達成され得る。
【0554】
一次改変miRNA遺伝子を用いて、改変miRNA前駆体配列(pre-miRNA)に隣接するゲノムDNA配列に基づいて、ssDNAオリゴ(例えば、200~500ntのssDNA長さ)及びdsDNAフラグメント(例えば、250~5000ntのdsDNAフラグメントのみ又はプラスミド内でクローニングされたdsDNAフラグメント)を生成すること。改変されたmiRNAのガイド鎖(サイレンシング鎖)配列は、標的に対して100%相補的であるように設計され得る。
【0555】
同じ塩基対形成プロファイルを保つことにより、元の(改変されていない)miRNA前駆体及び成熟構造を保存するために、他のmiRNA遺伝子領域の配列を改変する。
【0556】
元の未改変miRNA遺伝子(ゲノムmiRNA遺伝子座に特異的)を特異的に標的とし、改変版(すなわちオリゴ/フラグメント配列)を標的としないようにsgRNAを設計する。
【0557】
改変されたmiRNA遺伝子と元のmiRNA遺伝子との比較制限酵素部位を解析し、異なる制限部位をまとめる。このような検出システムは、制限酵素消化及びゲル電気泳動に先行するPCRに基づく。
【0558】
上記で詳細に論じたように検証する。
【0559】
内在非コードRNA(例えば、miRNA)が、標的との天然の高い相同性(例えば、60~90%)を含む場合に、インシリコ方法を用いて、他の標的に向けた非コードRNAの標的化(例えば、「オフターゲット効果」)を調べることで、目的の標的の特異的なサイレンシングを得るようにする。
【0560】
内在非コードRNA(例えば、miRNA)を最小限に改変して、目的の標的をサイレンシングするその効力を高める。
【0561】
最小限に編集された一次miRNA遺伝子のGEiGS結果を検証し、候補の改良された最小限に編集されたmiRNAを生成する。実験的に有効な一次GEiGS結果(一次の最小編集miRNA遺伝子)は、標的に100%適合するように改変されたガイド鎖又はパッセンジャー鎖を有するmiRNAと考えられる。
【0562】
図11に示すように)元の配列に徐々に戻るいくつかのガイド鎖配列又はパッセンジャー鎖配列を生成する。
【0563】
7つのシードヌクレオチド(5’末端からヌクレオチド2~8)のうち少なくとも5つの一致があるようにシード配列を保持する。
【0564】
標的サイレンシング効率のための種々の候補「改良された最小限に編集されたmiRNA遺伝子」を試験する。最小限のmiRNA配列改変で最も高いサイレンシングをもたらす遺伝子GE媒介ノックインを選択する。
【0565】
改良された最小限に編集されたmiRNA候補の潜在的「オフターゲット効果」を試験する。「オフターゲット効果」の有意な予測は、改良された最小限に編集されたmiRNA遺伝子の最終評価に影響を及ぼす。
【0566】
実験的検証に基づいて、あまり改良されていない最小限に編集されたmiRNA遺伝子候補を試験する。
【0567】
本明細書で使用される「約」という用語は、±10%を指す。
【0568】
用語「comprises(含む)」、「comprising(含む)」、「includes(含む)」、「including(含む)」、「having(有する)」、及びそれらの複合語は、「including but not limited to(含むが、これに限定されない)」を意味する。
【0569】
「consisting of(からなる)」という用語は、「including and limited to(を含み、かつ、限定される)」を意味する。
【0570】
「consisting essentially of(から本質的になる)」という用語は、組成物、方法又は構造が、追加の成分、工程及び/又は部品を含んでもよいが、その追加の成分、工程及び/又は部品が、請求項に係る組成物、方法又は構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変更しない場合に限ることを意味する。
【0571】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の参照対照を含む。例えば、「化合物」又は「少なくとも1つの化合物」という用語は、複数の化合物及びそれらの混合物を含むことができる。
【0572】
本出願を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示されてもよい。範囲形式での説明は、単に便宜及び簡潔さのためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。従って、範囲の記載は、その範囲内のすべての可能な部分範囲並びに個々の数値を具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、及び6などを具体的に開示したと考えるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0573】
本明細書中で数値範囲が示されている場合にはいつでも、その数値範囲は、示された範囲内のあらゆる引用された数値(分数又は整数)を含むことが意図されている。句、第1の示された数と第2の示された数との間「にわたる/の範囲」、及び第1の示された数から第2の示された数まで(第1の示された数~第2の示された数)「にわたる/の範囲」は、本明細書中で互換的に使用され、その第1及び第2の示された数並びにそれらの間のすべての分数及び整数を含むことが意図されている。
【0574】
本明細書で使用する場合、用語「方法」は、与えられた課題を成し遂げるためのやり方、手段、技法及び手順を指し、それらには、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の分野の当業者に公知であるか、又は化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の分野の当業者によって公知のやり方、手段、技法及び手順から容易に開発されるやり方、手段、技法及び手順が含まれるが、これらに限定されない。
【0575】
本明細書で使用する場合、用語「処置すること」は、状態の進行を排除すること、実質的に阻害すること、緩慢化すること若しくは逆転させること、状態の臨床症候若しくは美的症候を実質的に改善すること、又は状態の臨床症候若しくは美的症候の外観を実質的に予防することを含む。
【0576】
明確性のために、別個の実施形態に関して記載される本発明の特定の特徴が、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔さのために、単一の実施形態に関して記載される本発明の種々の特徴が、別個に若しくはいずれかの好適なサブコンビネーションにおいて、又は適宜本発明のいずれかの他の記載された実施形態において提供されてもよい。種々の実施形態に関して記載される特定の特徴は、それらの要素がなければその実施形態が動作不能である場合を除き、それらの実施形態の必須の特徴と考えられるべきではない。
【0577】
本明細書中でこれまで記載された及び添付の特許請求の範囲でクレームされる本発明の種々の実施形態及び態様は、以下の実施例で実験的にサポートされる。
【0578】
本願に開示されるあらゆる配列番号は、その配列番号がDNA配列フォーマット又はRNA配列フォーマットでのみ表されている場合であっても、その配列番号が言及される文脈に応じて、DNA配列又はRNA配列のいずれかを指すことができるということは理解される。例えば、配列番号1~配列番号4はDNA配列フォーマットで表される(例えば、チミンについてTと書かれている)が、それは、gRNA核酸配列に対応するDNA配列又はRNA分子核酸配列のRNA配列のいずれかを指すことができる。同様に、いくつかの配列は、記載される分子の現実の種類に応じて、RNA配列フォーマットで表されている(例えば、ウラシルについてUと書かれている)が、それは、dsRNAを含むRNA分子の配列、又は示されたRNA配列に対応するDNA分子の配列のいずれかを指すことができる。いずれにせよ、いずれかの置換を有して開示された配列を有するDNA分子及びRNA分子の両方が想定される。
【実施例
【0579】
ここで、以下の実施例を参照するが、これらは、上記の説明と共に、本発明を非限定的な様式で例示する。
【0580】
一般に、本明細書で使用される命名法及び本発明で利用する実験室手順は、分子技法、生化学的技法、微生物学的技法及び組換えDNA技法を含む。このような技法は、文献に十分に説明されている。例えば下記を参照。「Molecular Cloning: A laboratory Manual」、Sambrookら、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」、I~III巻、Ausubel,R.M.編(1994);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、ボルチモア(Baltimore)、メリーランド州(Maryland)(1989);Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons、ニューヨーク(New York)(1988);Watsonら、「Recombinant DNA」、Scientific American Books、ニューヨーク(New York);Birrenら(編)「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」、1~4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク(New York)(1998);米国特許第4,666,828号明細書;米国特許第4,683,202号明細書;米国特許第4,801,531号明細書;米国特許第5,192,659号明細書及び米国特許第5,272,057号明細書に示される方法論;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」、I~III巻、Cellis,J.E.編(1994);「Current Protocols in Immunology」、I~III巻、Coligan J.E.編(1994);Stitesら(編)、「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、ノーウォーク(Norwalk)、コネチカット州(1994);Mishell及びShiigi(編)、「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H.Freeman and Co.、ニューヨーク(New York)(1980);利用可能なイムノアッセイは、特許文献及び科学文献に詳細に記載されている。例えば、米国特許第3,791,932号明細書;米国特許第3,839,153号明細書;米国特許第3,850,752号明細書;米国特許第3,850,578号明細書;米国特許第3,853,987号明細書;米国特許第3,867,517号明細書;米国特許第3,879,262号明細書;米国特許第3,901,654号明細書;米国特許第3,935,074号明細書;米国特許第3,984,533号明細書;米国特許第3,996,345号明細書;米国特許第4,034,074号明細書;米国特許第4,098,876号明細書;米国特許第4,879,219号明細書;米国特許第5,011,771号明細書及び米国特許第5,281,521号明細書を参照;「Oligonucleotide Synthesis」、Gait,M.J.編(1984);「Nucleic Acid Hybridization」、Hames,B.D.、及びHiggins S.J.編(1985);「Transcription and Translation」、Hames,B.D.、及びHiggins S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」、Freshney,R.I.編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」、IRL Press,(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」、Perbal,B.、(1984)及び「Methods in Enzymology」、1~317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、サンディエゴ(San Diego)、カリフォルニア州(1990);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual」、CSHL Press(1996);これらのすべては、参照により、本明細書中にすべて示されているが如く援用される。他の一般的な参考文献は、本明細書全体にわたって提供されている。これらの文献の中にある手順は当該技術分野で周知であると考えられるが、読者の便宜のために提供されている。上記文献に含まれるすべての情報は、参照により本明細書に援用される。
【0581】
一般的な材料と実験手順
シロイヌナズナの細胞培養
シロイヌナズナ(生態型ランズバーグ・エレクタ(Landsberg erecta))細胞培養物を、100mLの液体増殖培地(ビタミン[Duchefa、ハーレム(Haarlem)、オランダ]、30g/Lスクロース、0.5mg/L 1-ナフタレン酢酸(NAA)及び0.5mg/L 6-ベンジルアミノプリン(BAP)を含む4.4g/L ムラシゲスクーグ(Murashige and Skoog:MS)塩)中で、25℃、16時間の光周期及び穏やかな攪拌(100rpm)で維持した。毎週、6mlの培養物を新鮮な培地に移した。
【0582】
植物成長
シロイヌナズナ(生態型コロンビア(Colombia)-0)苗を表面滅菌し、16時間の明周期で20℃で0.8g/L寒天を補充したMS培地を含むプレート上で育成した。
【0583】
シロイヌナズナ細胞培養物の安定形質転換
pK7WGF2プラスミドを有するアグロバクテリウムを、100mg/Lのスペクチノマイシンを補充したLB培地中で28℃で0.8のODまで成長させた。細菌を遠心分離によって回収し、同量の植物細胞培養培地に再懸濁した。新鮮な培地に移した4日後、4mlのシロイヌナズナ細胞を、0.1mLのアグロバクテリウム懸濁液と共に、シャーレ中、25℃、暗所で穏やかに撹拌しながら(130rpm)インキュベートした。48時間後、細胞を遠心分離によって回収し、細胞培養培地で5回洗浄して、大部分の細菌を除去した。最後に、細胞を2mlの細胞培養培地に再懸濁し、0.4% Phytagel、500mg/L timenten及び50mg/L カナマイシンを補充した細胞培養培地を含有するシャーレ上にプレートした。カルス形成が観察されるまで、通常は2~3週間後、皿を暗所で25℃で保存した。
【0584】
バナナ胚形成カルス
Banana胚形成カルスは、Ma[Ma S.S.、Proceedings of Symposium on Tissue culture of horticultural crops、Taipei、Taiwan、1988年3月8~9日、181-188頁]及びSchoofs[Schoofs H.、The origin of embryogenic cells in Musa.PhD thesis、KULeuven、Belgium(1997)]に記載されているように、未成熟雄花又は茎端などの初期の外植片から発生させた。胚形成細胞懸濁液を、液体培地中で新しく発生した高胚形成性カルスから開始する。開始された細胞懸濁液が完全に樹立されるまで(6~9ヶ月)、培地の80%を12~14日毎に新しくする。
【0585】
コーヒー胚形成カルス
コーヒー胚形成カルスは、以前に記載されたように得られる[Etienne,H.、Protocol for somatic embryogenesis in woody plants(2005) Springer.167-1795頁]。簡単に述べると、若葉を表面滅菌し、1cm片に切断し、2.26μMの2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、4.92μMのインドール-3-酪酸(IBA)及び9.84μMのイソペンテニルアデニン(iP)を補充した半強度半固形MS培地上に1ヶ月間置く。次いで、外植片を4.52μM 2,4-D及び17.76μM 6-ベンジルアミノプリン(6-BAP)を含有する半強度半固体MS培地に、6~8カ月間、胚形成カルスの再生まで移植する。胚形成カルスを、5μMの6-BAPを補充したMS培地上で維持する。
【0586】
細胞懸濁培養物を、以前に記載されたように[Acuna,J.R.及びM.de Pena、Plant Cell Reports(1991)10(6):345-348頁]、胚形成カルスから生成する。胚形成カルス(30g/l)を、13.32μMの6-BAPを補充した液体MS培地に入れる。フラスコを28℃の振盪インキュベーター(110rpm)に置く。細胞懸濁液を、完全に樹立されるまで、2~4週間ごとに継代/継代培養する。細胞懸濁培養物を、4.44μMの6-BAPを含む液体MS培地中で維持する。
【0587】
GEiGS鋳型を生成するための計算パイプライン
計算GEiGSパイプラインは、生物学的メタデータを適用し、非コードRNA遺伝子(例えば、miRNA遺伝子)を最小限に編集するために使用されるGEiGS DNA鋳型の自動生成を可能にし、新しい機能獲得、すなわち目的の標的配列へのサイレンシング能力のリダイレクションをもたらす。
【0588】
図9に示されるように、パイプラインは、a)GEiGSによってサイレンシングされるべき標的配列;b)遺伝子編集されるべき及びGEiGSを発現するための宿主生物;c)GEiGSが遍在的に発現されるか否かを選択し得ることを記入し、そして入力を提出することから開始する。特定のGEiGS発現が必要とされる場合、いくつかの選択肢(特定の組織、発生段階、ストレス、熱/低温ショックなどに特異的な発現)から選択することができる。
【0589】
すべての必要な入力が提出されると、計算プロセスは、miRNAデータセット(例えば、小分子RNA配列決定、マイクロアレイなど)の間での検索、及び入力基準に適合する関係miRNAのみのフィルタリングから始まる。次に、選択された成熟miRNA配列を標的配列に対して整列させ、最も高い相補的レベルを有するmiRNAをフィルタリングする。次いで、これらの天然の標的相補的な成熟miRNA配列は、標的の配列に完全に一致するように改変される。次いで、改変された成熟miRNA配列を、siRNA効力を予測するアルゴリズムに通し、そして最高のサイレンシングスコアを有するトップ20をフィルタリングする。次いで、これらの最終改変されたmiRNA遺伝子を用いて、200~500ntのssDNA又は250~5000ntのdsDNA配列を以下のように生成する。
【0590】
200~500nt ssDNAオリゴ及び250~5000ntのdsDNAフラグメントは、改変されたmiRNAに隣接するゲノムDNA配列に基づいて設計される。pre-miRNA配列は、オリゴの中心に位置する。改変されたmiRNAのガイド鎖(サイレンシング)配列は標的に対して100%相補的である。しかし、改変されたパッセンジャーmiRNA鎖の配列は、元の(改変されていない)miRNA構造を保存するためにさらに改変され、同じ塩基対形成プロファイルを維持する。
【0591】
次に、改変交換バージョンではなく、元の未改変miRNA遺伝子を特異的に標的化するように、異なるsgRNAを設計する。最後に、改変されたmiRNA遺伝子と元のmiRNA遺伝子との間で比較制限酵素部位解析を行い、制限部位の差異についてまとめる。
【0592】
従って、パイプライン出力は以下を含む。
a)最小限に改変されたmiRNAを有する200~500nt ssDNAオリゴ又は250~5000ntのdsDNAフラグメント配列
b)改変されたものではなく元のmiRNA遺伝子を特異的に標的とする2~3個の異なるsgRNA
c)改変されたmiRNA遺伝子と元のmiRNA遺伝子の間の異なる制限酵素部位の一覧
【0593】
標的遺伝子
フィトエンデサチュラーゼ遺伝子(PDS)
理論的根拠
PDSは、クロロフィル生合成経路における必須遺伝子であり、植物におけるPDS機能の喪失は、アルビノ表現型を生じる[Fanら、Sci Rep(2015)5:12217]。ゲノム編集(GE)戦略又はRNAiにおける標的遺伝子として使用される場合、陽性編集された植物は、葉及び他の器官におけるクロロフィルの部分的又は完全な喪失(退色)によって容易に特定される。
【0594】
方法
遍在する発現プロファイルを有するmiRNAが選択される(用途によっては、特定の組織、発生段階、温度、ストレスなどに特異的である発現プロファイルを有するmiRNAを選択してもよい)。
【0595】
miRNAはシロイヌナズナ由来のPDS遺伝子を標的とするsiRNAに改変される(後述の表1A参照)。トランスフェクション及びFACSソーティング(陽性Cas9/sgRNAトランスフェクション事象を特定するためにRFP/GFPを使用する)に続いて、シュートが再生されるまで、プロトコロニー(又はカルス)を固体状再生培地(半強度MS+B5ビタミン、20g/lスクロース、0.8%寒天)に移す。これらのシュートにおける色素沈着の消失は、PDS遺伝子の機能の喪失と正しいGEを示している。ランダム配列をもつオリゴをトランスフェクトした対照小植物では、アルビノ表現型は観察されない。
【0596】
緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子
理論的根拠
GFPは、238アミノ酸残基(26.9kDa)から構成されるタンパク質であり、青色~紫外線範囲の光に暴露されると明るい緑色蛍光を示す。多くの他の海洋生物は類似の緑色蛍光タンパク質を有するが、GFPは伝統的にクラゲのオワンクラゲ(Aequorea victoria)から最初に単離されたタンパク質を指す。オワンクラゲ由来のGFPは、395nmの波長で主励起ピークを有し、475nmで副励起ピークを有する。その発光ピークは、可視スペクトルの下部緑色部分にある509nmにある。GFPの蛍光量子収率(QY)は0.79である。ウミシイタケ(Renilla reniformis)由来のGFPは498nmに単一の主要励起ピークを有する。GFPは、分子酸素以外にアクセサリー補因子、遺伝子産物、又は酵素/基質を必要とせずに内部発色団を形成する能力のために、生物学の多くの分野において優れたツールを提供する。
【0597】
方法
遍在する発現プロファイルを有するmiRNAが選択される(適用に依存して、特定の組織、発生段階、温度、ストレスなどに特異的である発現プロファイルを有するmiRNAを選択し得る)。
【0598】
miRNAは、GFP遺伝子を標的とするsiRNAに改変される(以下の表1Aを参照のこと)。トランスフェクション後、FACSソーティングを行い、GFPシグナルはないか又は低いmCherry発現プロトプラスト(mCherryは、陽性Cas9/sgRNAトランスフェクション事象を特定するために使用される)を単離する。対照(非標的siRNA配列を有するオリゴ)では、全てのプロトプラストがmCherry及びGFPを発現する。次に、候補の成功GEプロトプラスト(mCherry陽性及びGFP陰性)を、さらなる分析のために植物に再生する。プロトプラストはまた、顕微鏡下で定性的に記録される。定量分析及び比のために、FACS分析を使用した。
【0599】
【表6】
【0600】
siRNA設計
標的特異的siRNAは、ThermoFisher Scientificの「BLOCK-iT(商標)RNAi Designer」及びInvivogenの「Find siRNA sequences」などの公的に入手可能なsiRNA設計ツールによって設計される。
【0601】
sgRNA設計
sgRNAは、Parkら、Bioinformatics(2015) 31(24):4014-4016に以前に記載されているように、公的に入手可能なsgRNA設計ツールを用いて内在miRNA遺伝子を標的とするように設計される。2つのsgRNAはそれぞれのカセットに対して設計されているが、1細胞あたり1つのsgRNAが発現し、遺伝子交換が開始される。sgRNAは、交換後に改変されるpre-miRNA配列に対応する。
【0602】
効率的なsgRNA選択の機会を最大にするために、2つの異なる公的に利用可能なアルゴリズム(CRISPER Design: www(dot)crispr(dot)mit(dot)edu:8079/及びCHOPCHOP: www(dot)chopchop(dot)cbu(dot)uib(dot)no/)を使用し、各アルゴリズムからのトップスコアを示すsgRNAを選択する。
【0603】
交換ssDNAオリゴ設計
400bのssDNAオリゴはmiRNA遺伝子のゲノムDNA配列に基づいて設計されている。このpre-miRNA配列は、オリゴの中心に位置する。次に、ガイド(サイレンシング)siRNA鎖が標的に対して100%相補的に保たれるように、二本鎖siRNA配列を成熟miRNA配列と交換する。パッセンジャーsiRNA鎖の配列を改変して、元のmiRNA構造を保存し、同じ塩基対形成プロファイルを維持する。
【0604】
交換プラスミドDNA設計
4000bpのdsDNAフラグメントはmiRNA遺伝子のゲノムDNA配列に基づいて設計される。pre-miRNA配列はdsDNAフラグメントの中心に位置している。次に、ガイド(サイレンシング)siRNA鎖が標的に対して100%相補的に保たれるように、二本鎖siRNA配列を成熟miRNA配列と交換する。パッセンジャーsiRNA鎖の配列を改変して、元のmiRNA構造を保存し、同じ塩基対形成プロファイルを維持する。最後に、このフラグメントを標準ベクター(例えば、pBluescript)にクローニングする。
【0605】
交換のための長いプラスミド
プラスミド-1:GEiGS_mir173_si-GFP_1(配列番号31)
プラスミド-2:GEiGS_mir173_si-GFP_2(配列番号32)
プラスミド-3:GEiGS_mir173_si-PDS_1(配列番号33)
プラスミド-4:GEiGS_mir173_si-PDS_2(配列番号34)
プラスミド-5:GEiGS_mir390a_si-GFP_1(配列番号35)
プラスミド-6:GEiGS_mir390a_si-GFP_2(配列番号36)
プラスミド-7:GEiGS_mir390a_si-PDS_1(配列番号37)
プラスミド-8:GEiGS_mir390a_si-PDS_2(配列番号38)
【0606】
sgRNAの配列
シロイヌナズナmir-390A:
1.CTATCCATCCTGAGTTTCATTGG(配列番号1);
2.AAGAATCTGTAAAGCTCAGGAGG(配列番号2);
シロイヌナズナmir-173:
1.CTTGCAGAGAGAAATCACAGTGG(配列番号3);
2.GCTTACACAGAGAATCACAGAGG
CTGCATACAGAGAATCAGAGG(配列番号4);
【0607】
交換された内在miRNAの一覧
1.シロイヌナズナmir-390A
2.シロイヌナズナmir-173
【0608】
遺伝子交換に用いられるssDNAオリゴ
オリゴ-1:GEiGS_mir173_si-GFP_1(5’→3’)(配列番号5)。
オリゴ-2:GEiGS_mir173_si-GFP_2(5’→3’)(配列番号6)。
オリゴ-3:GEiGS_mir173_si-PDS_1(5’→3’)(配列番号7)。
オリゴ-4:GEiGS_mir173_si-PDS_2(5’→3’)(配列番号8)。
オリゴ-5:GEiGS_mir390a_si-GFP_1(5’→3’)(配列番号9)。
オリゴ-6:GEiGS_mir390a_si-GFP_2(5’→3’)(配列番号10)。
オリゴ-7:GEiGS_mir390a_si-PDS_1(5’→3’)(配列番号11)。
オリゴ-8:GEiGS_mir390a_si-PDS_2(5’→3’)(配列番号12)
【0609】
sgRNAクローニング
利用したトランスフェクションプラスミドは、以下のものを含む4つのモジュールから構成された。
1)G7終結配列によって終結したCsVMVプロモーターによって駆動されるmCherry;
2)2 x 35S::hCas9-35S-ter、すなわち、AtuNos終結配列によって終結された35Sプロモーターによって駆動されるhCas9;
3)ガイド1のsgRNAを駆動するAtU6-26及び/又はU6合成プロモーター
【0610】
プラスミド設計
一過性発現には、3つの転写単位を含むプラスミドを用いる。最初の転写単位は、mCherryの発現を駆動するCsVMVプロモーター及びG7ターミネーターを含む。次の転写単位は、Cas9の発現を駆動する2x-35Sプロモーター及び35Sターミネーターからなる。3番目は、miRNA遺伝子を標的とするためのsgRNAを発現するシロイヌナズナU6プロモーターを含む(各ベクターは単一のsgRNAを含む)。
【0611】
miR-173及びmiR-390を標的とし、GFP、AtPDS3及びAtADH1を標的とするSWAPを導入するためのCRISPR/CAS9の設計及びクローニング
本発明者らは、図12A~G及び13A~Gに可視化された、標的遺伝子に逆に相補する小分子RNAを生成することによって、ゲノム的状況において、成熟したmiR-173及びmiR-390の配列を、GFP、AtPDS3又はAtADH1を標的とするように、変更するように設計した。さらに、miRNA前駆体転写産物の二次構造を維持するために、図12A~G、13A~G、14A~D及び15A~D並びに表2(以下)に特定されるように、pri-miRNAのさらなる変更を行った。これらのフラグメントをPUCプラスミドにクローン化し、ドナー(DONOR)と命名し、DNAフラグメントをSWAPと称した。miR-173を改変するための配列について、 - SWAP1及びSWAP2はGFPを標的とし、SWAP3及びSWAP4はAtPDS3を標的とし、SWAP9及びSWAP10はAtADH1を標的とする(下記表2参照)。miR-390を改変するための配列について、 - SWAP5及びSWAP6はGFPを標的し、SWAP7及びSWAP8はAtPDS3を標的とし、SWAP11及びSWAP12はAtADH1を標的とする(下記表2参照)。
【0612】
miR-173及びmiR-390を標的とするガイドRNAをCRISPR/CAS9ベクター系に導入して、所望のmiRNA遺伝子座におけるDNA切断を生じさせた。これらを遺伝子衝撃プロトコルによりDONORベクターと共に植物に同時導入し、相同DNA修復(HDR)により所望の改変を導入した。これらのガイドRNAは、以下の表2に特定され、そして図12A及び13Aに例示される。
【0613】
【表7(1)】
【0614】
【表7(2)】
【0615】
【表7(3)】
【0616】
【表7(4)】
【0617】
プロトプラスト単離
プロトプラストを、消化溶液(1%セルラーゼ、0.5%マセロザイム、0.5%ドリセラーゼ、0.4Mマンニトール、154mM NaCl、20mM KCl、20mM MES pH5.6、10mM CaCl2)中で植物材料(例えば、葉、カルス、細胞懸濁液)を、穏やかに振盪して室温で4~24時間インキュベートすることによって単離した。消化後、残存する植物材料をW5溶液(154mM NaCl、125mM CaCl2、5mM KCl、2mM MES pH5.6)で洗浄し、プロトプラスト懸濁液を40μmストレーナーで濾過した。室温で3分間80gで遠心分離した後、プロトプラストを2mlのW5バッファに再懸濁し、重力によって氷中で沈殿させた。最終プロトプラストペレットを2mlのMMg(0.4Mマンニトール、15mM MgCl2、4mM MES pH5.6)に再懸濁し、血球計を用いてプロトプラスト濃度を測定した。プロトプラストの生存率を、トリパンブルー染色を用いて評価した。
【0618】
ポリエチレングリコール(PEG)媒介プラスミドトランスフェクション
プロトプラストのPEGトランスフェクションは、Wang[Wangら、Scientia Horticulturae(2015) 191:82-89頁]によって報告されたストラテジーの改変版を用いて行った。プロトプラストを、MMg溶液中に2~5×10プロトプラスト/mlの密度に再懸濁した。100~200μlのプロトプラスト懸濁液を、プラスミドを含むチューブに添加した。プラスミド:プロトプラスト比は、形質転換効率に大きく影響し、従って、プロトプラスト懸濁液中のプラスミド濃度の範囲(5~300μg/μl)をアッセイした。PEG溶液(100~200μl)を混合物に添加し、10~60分の範囲の様々な時間、23℃でインキュベートした。PEG4000濃度を最適化し、200~400mMマンニトール、100~500mM CaCl2溶液中の20~80% PEG4000の範囲をアッセイした。次いで、プロトプラストをW5で洗浄し、80gで3分間遠心分離し、その後、1mlのW5に再懸濁し、暗所で23℃でインキュベートした。24~72時間インキュベートした後、蛍光を顕微鏡で検出した。
【0619】
蛍光タンパク質発現細胞のFACSソーティング
プラスミド/RNA送達の24~72時間後、細胞を収集し、フローサイトメーターを用いて蛍光タンパク質発現について選別し、以前に記載されたように[Chiangら、Sci Rep(2016)6:24356]、mCherry/編集剤発現細胞を濃縮した。この濃縮工程は、抗生物質選択をバイパスし、蛍光タンパク質、Cas9及びsgRNAを一過性に発現する細胞のみを収集することを可能にする。これらの細胞は、HRによる標的遺伝子の編集についてさらに試験することができ、これにより交換事象が成功し、対応する遺伝子発現が消失する。
【0620】
衝撃と植物の再生
シロイヌナズナ根調製物
塩素ガス滅菌シロイヌナズナ(cv.Col-0)種子をMSマイナススクロースプレート上に播種し、暗所で4℃で3日間春化処理し、続いて25℃で恒光下で垂直に発芽させた。2週間後、根を1cm根切片に切り出し、Callus Induction Media(CIM:B5ビタミン、2%グルコース、pH 5.7、0.8%寒天、2mg/l IAA、0.5mg/l 2,4-D、0.05mg/lキネチンを含む1/2MS)プレート上に置いた。暗所、25℃で6日間インキュベートした後、根切片を濾紙ディスク上に移し、衝撃に備えて、4~6時間、CIMMプレート(ビタミン、2%グルコース、0.4Mマンニトール、pH 5.7及び0.8%寒天を含まない1/2MS)上に置いた。
【0621】
衝撃
プラスミド構築物を、PDS-1000/He粒子送達(Bio-Rad;PDS-1000/Heシステム#1652257)を介して根組織に導入し、以下に概説するいくつかの調製工程が、この手順を実施するために必要であった。
【0622】
金ストック材料の調製
40mgの0.6μm金(Bio-Rad;カタログ:1652262)を1mlの100%エタノールと混合し、パルス遠心分離してペレットにし、エタノールを除去した。この洗浄手順をさらに2回繰り返した。
【0623】
洗浄後、ペレットを1mlの滅菌蒸留水に再懸濁し、1.5mlチューブに50μlアリコート作業容量として分配した。
【0624】
ビーズ調製
要するに、以下のことを行った。
【0625】
単一のチューブは、シロイヌナズナ根の2つのプレートに衝撃を与えるのに十分な金であり(プレート当たり2ショット)、従って、各チューブを4つの(1,100psi(約7.6MPa))のBiolistic破裂板(Bio-Rad;カタログ:1652329)の間に分配した。
【0626】
衝撃は同じ試料の複数のプレートを必要とするので、チューブを合わせ、それに応じてDNA及びCaCl2/スペルミジン混合物の体積を調整して、試料の一貫性を維持し、調製物全体を最小限にした。
【0627】
以下のプロトコルは、金の1つのチューブを調製するプロセスを要約し、これらは、使用される金のチューブの数に従って調整されるべきである。
【0628】
この後の全てのプロセスは、エッペンドルフサーモミキサー中で4℃で行った。
【0629】
プラスミドDNA試料を調製し、各チューブは、1000ng/μlの濃度で添加された11μgのDNAを含む。
1)493μlのddH2Oを1アリコート(7μl)のスペルミジン(Sigma-Aldrich;S0266)に添加し、0.1Mスペルミジンの最終濃度を得た。1250μlの2.5M CaCl2をスペルミジン混合物に添加し、ボルテックスし、氷上に置いた。
2)予め調製した金のチューブをサーモミキサーに入れ、1400rpmの速度で回転させた。
3)チューブに11μlのDNAを加え、ボルテックスし、回転するサーモミキサーに戻した。
4)DNA/金粒子を結合させるために、70μlのスペルミジンCaCl2混合物を各チューブ(サーモミキサー中)に添加した。
5)チューブを15~30秒間激しくボルテックスし、氷上に約70~80秒間置いた。
6)混合物を7000rpmで1分間遠心分離し、上清を除去し、氷上に置いた。
7)500μlの100%エタノールを各チューブに添加し、ペレットをピペッティングにより再懸濁し、ボルテックスした。
8)チューブを7000rpmで1分間遠心分離した。
9)上清を除去し、ペレットを50μlの100%エタノールに再懸濁し、氷上で保存した。
【0630】
マクロ担体調製
層流キャビネット内で以下のことを行った。
1)マクロ担体(Bio-Rad;1652335)、停止スクリーン(Bio-Rad;1652336)、及びマクロ担体ディスクホルダーを滅菌乾燥した。
2)マクロ担体のディスクホルダーにマクロ担体を平らに配置した。
3)DNA被覆金混合物をボルテックスし、各Biolistic破裂板の中心に広げた(5μl)。
エタノールを蒸発させた。
【0631】
PDS-1000(ヘリウム粒子送達系)
要するに、以下のことを行った。
【0632】
ヘリウムボトルの調整弁を少なくとも1300psi(約9.0MPa)の流入圧力に調整した。真空は、真空/ベント/ホールド・スイッチを押し、稼動スイッチを3秒間押し続けることによって作り出した。これは、ヘリウムが配管に流れ込むことを確実にした。
【0633】
1100psi(約7.6MPa)の破裂ディスクをイソプロパノールに入れ、混合して静電気を除去した。
1)1つの破裂ディスクをディスク保持キャップ内に配置した。
2)マイクロ担体発射アセンブリを構築した(停止スクリーンと金含有マイクロ担体を備えた)。
3)シャーレ上でシロイヌナズナ根カルスを発射アセンブリの6cm下に置いた。
4)真空圧を27インチHg(水銀)(約91kPa)に設定し、ヘリウム弁を開いた(約1100psi(約7.6MPa)で)。
5)真空を解放した。マイクロ担体発射アセンブリ及び破裂板保持キャップを取り外した。
6)同じ組織への衝撃(すなわち、各プレートを2回衝撃した)。
7)次に、衝撃を与えた根を、暗所で、25℃で、さらに24時間、CIMプレート上に置いた。
【0634】
同時衝撃
GEiGSプラスミドの組み合わせに衝撃を与える場合、5μg(1000ng/μl)のsgRNAプラスミドを8.5μg(1000ng/μl)のswap(スワップ)プラスミドと混合し、この混合物11μlを試料に添加した。同時により多くのGEiGSプラスミドを衝撃する場合、使用したsgRNAプラスミド対swapプラスミドの濃度比は1:1.7であり、この混合物11μg(1000ng/μl)を試料に添加した。GEiGS交換に関連しないプラスミドを同時衝撃する場合、等しい比率を混合し、11μg(1000ng/μl)の混合物を各試料に添加した。
【0635】
植物再生
シュート再生のために、Valvekensら[Valvekens,D.ら、Proc Natl Acad Sci USA(1988) 85(15):5536-5540]からの改変プロトコルを実施した。B5ビタミン、2%グルコース、pH5.7、0.8%寒天、5mg/l 2 iP、0.15mg/l IAAを有する1/2MSを含むシュート誘導培地(SIM)プレート上に、衝撃を与えた根を置いた。プレートを、25℃で16時間明、23℃で8時間暗のサイクルに放置した。10日後、プレートを、3%スクロース、0.8%寒天を含むMSプレートに1週間移し、次いで、新鮮な同様のプレートに移した。植物が再生したら、それらを根から切り出し、分析するまで、3%スクロース、0.8%寒天を含むMSプレート上に置いた。
【0636】
コロニー形成と植物再生
蛍光タンパク質陽性細胞を部分的にサンプリングし、DNA抽出及びゲノム編集(GE)試験に使用し、コロニー形成を28~35日間可能にするために液体培地中で高希釈で部分的に平板培養した。コロニーを採取し、増殖させ、2つのアリコートに分割した。1つのアリコートを、DNA抽出及びゲノム編集(GE)試験及びCRISPR DNA非含有試験(以下を参照のこと)のために使用し、一方、他のアリコートは、それらの状況が確認されるまで培養物中に保持した。GE及びCRISPR DNAを含まないことを明確に示すもののみを次段階へ選択した。コロニーを培養培地中で約6~10週間増殖させた。プロトコロニー(又はカルス)を再生培地(例えば、半強度MS+B5ビタミン、20g/lスクロース)に継代培養し、再生した小植物を28℃で低い光強度で固化培地(0.8%寒天)上に置いた。2ヶ月後、小植物を土壌に移し、80~100%湿度の温室に入れた。
【0637】
シロイヌナズナ苗へのウイルス接種とDNA送達
TuMV感染性クローンp35S::TuMV-GFP(0.1mg/ml)に感染したシロイヌナズナ葉由来の液汁を、機械的接種のために使用する。
【0638】
植物の繁殖
配列決定され、標的遺伝子の発現を失ったと予測され、CRISPRシステムDNA/RNAを含まないことが見出されたクローンを、大量に生成するために繁殖させ、そして並行して、所望の形質を試験するために機能的アッセイが行われる苗を発生するために分化させた。
【0639】
表現型解析
上記のように、例えば、標的遺伝子に依存する色素沈着、蛍光又は形態を見ることによる。
【0640】
アリルアルコール選択
アリルアルコールで植物を選択するために、衝撃後10日目に、根をSIM培地上に置いた。根を30mMアリルアルコール(Sigma-Aldrich、米国)に2時間浸漬した。次に、根をMS培地で3回洗浄し、3%スクロース、0.8%寒天を含むMSプレート上に置いた。再生プロセスは、先に記載したように実施した。
【0641】
遺伝子型決定
組織試料を処理し、アンプリコンを製造業者の推奨に従って増幅した。MyTaq Plant-PCR Kit(BioLine BIO 25056)を短い内部増幅に用い、Phire Plant Direct PCR Kit(Thermo Scientific;F-130WH)を長い外部増幅に用いる。これらの増幅のために使用されるオリゴは、上記の表2に特定される。miRNA遺伝子座における異なる改変は、以下のようにアンプリコンの異なる消化パターンを介して特定された。
【0642】
miR-390の改変については、 - 内部アンプリコンは978塩基対の長さであり、外部増幅については2629塩基対であった。swap7の特定については、NlaIIIによる消化は、636塩基対のフラグメントサイズをもたらしたが、wtバージョンでは、それは、420及び216の長さのフラグメントに切断された。swap8の特定については、Hpy188Iによる消化は、293及び339塩基対のフラグメントサイズをもたらしたが、wtバージョンでは、この部位は存在せず、632長のフラグメントをもたらした。swap11及び12の特定については、BccIによる消化は、662塩基対のフラグメントサイズをもたらしたが、wtバージョンでは、それは、147及び417長のフラグメントに切断された。
【0643】
miR-173の改変については、 - 内部アンプリコンは574塩基対の長さであり、ネステッド外部増幅については466塩基対であった。swap3の特定については、BslIによる消化は、外部アンプリコンにおいて217及び249塩基対のフラグメントサイズ、並びに内部アンプリコンにおいて317及び149塩基対のフラグメントサイズをもたらした。wtバージョンでは、この部位は存在せず、外部アンプリコンでは466長のフラグメントを、内部反応では574長のフラグメントをもたらした。swap4の特定については、BtsαIによる消化は、外部アンプリコンにおいて212及び254塩基対のフラグメントサイズ、並びに内部アンプリコンにおいて212及び362のフラグメントサイズをもたらした。wtバージョンでは、この部位は存在せず、外部アンプリコンでは466長のフラグメントを、内部反応では574長のフラグメントをもたらした。swap9の特定については、NlaIIIによる消化は、外部アンプリコンにおいて317及び149塩基対のフラグメントサイズ、並びに内部アンプリコンにおいて317及び244のフラグメントサイズを生じた。wtバージョンでは、この部位は存在せず、外部アンプリコンでは466長のフラグメントを、内部反応では561長のフラグメントをもたらした。swap10の特定については、NlaIIIによる消化は、外部アンプリコンにおいて375及び91塩基対のフラグメントサイズ、並びに内部アンプリコンにおいて375及び186のフラグメントサイズを生じた。wtバージョンでは、この部位は存在せず、外部アンプリコンでは466長のフラグメントを、内部反応では561長のフラグメントをもたらした。
【0644】
DNAとRNAの単離
試料を液体窒素中に回収し、処理するまで-80℃で保存した。組織の粉砕は、ドライアイス中に置かれたチューブ中で、プラスチック組織粉砕ペスル(Axygen、米国)を用いて行った。RNA/DNA精製キット(カタログ番号48700;Norgen Biotek Corp.、カナダ)を用いて、製造業者の説明書に従って、粉砕組織からのDNA及び全RNAの単離を行った。RNA画分の低い260/230比(<1.6)の場合、単離RNAは、1μlグリコーゲン(カタログ10814010;Invitrogen、米国)10%V/V酢酸ナトリウム、3M pH5.5(カタログAM9740、Invitrogen、米国)及び3倍の体積のエタノールを用いて-20℃で一晩沈殿した。溶液を4℃で最高速度で30分間遠心分離した。これに続いて、70%エタノールで2回洗浄し、15分間風乾し、ヌクレアーゼを含まない水(カタログ番号10977035;Invitrogen、米国)に再懸濁した。
【0645】
逆転写(RT)及び定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)
1μgの単離された全RNAを、製造業者のマニュアルに従ってDNase Iで処理した(AMPD1;Sigma-Aldrich、米国)。この試料を、High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(カタログ4368814;Applied Biosystems、米国)の使用マニュアルに従って逆転写した。
【0646】
遺伝子発現のために、定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)解析を、CFX96 Touch(商標)Real-Time PCR Detection System(BioRad、米国)及びSYBR(登録商標)Green JumpStart(商標)Taq ReadyMix(商標)(S4438、Sigma-Aldrich、米国)で、製造業者のプロトコルに従って実施し、Bio-RadCFXマネージャープログラム(バージョン3.1)で解析した。AtADH1(AT1G77120)の分析のために、以下のプライマーセットを使用した:順方向GTTGAGAGTGTTGGAGAAGGAG 配列番号367及び逆方向CTCGGTGTTGATCCTGAGAAG 配列番号368。AtPDS3(AT4G14210)の分析のために、以下のプライマーセットを使用した:順方向GTACTGCTGGTCCTTTGCAG 配列番号369及び逆方向AGGAGCACTACGGAAGGATG 配列番号370。内在較正遺伝子のために、18SリボソームRNA遺伝子(NC_037304)を使用した - 順方向ACACCCTGGGAATTGGTTT 配列番号371及び逆方向GTATGCGCCAATAAGACCAC 配列番号372。
【0647】
実施例1A
遺伝子編集誘導遺伝子サイレンシング(GEiGS)
GEiGSオリゴを設計するためには、プロセシングされ、誘導体である小分子サイレンシングRNA分子(成熟)を生じる鋳型非コードRNA分子(前駆体)が必要とされる。前駆体の2つの供給源及びそれらの対応する成熟配列を、GEiGSオリゴを生成するために使用した。miRNAについては、配列はmiRBaseデータベース[Kozomara,A.及びGriffiths-Jones,S.、Nucleic Acids Res(2014) 42: D68、AiD73]から入手し、tasiRNA前駆体及び成熟体はtasiRNAdbデータベース[Zhang,C.ら、Bioinformatics(2014) 30:1045、Ai1046]から入手した。
【0648】
サイレンシング標的を、種々の宿主生物において選択した(上記の表1Bを参照のこと)。siRNAは、siRNArulesソフトウェア[Holen,T.、RNA(2006) 12: 1620、Ai1625]を用いてこれらの標的に対して設計した。これらのsiRNA分子の各々を使用して、各前駆体中に存在する成熟配列を置換し、「ナイーブ」GEiGSオリゴを生成した。これらのナイーブ配列の構造は、ViennaRNA Package v2.6[Lorenz,R.ら、ViennaRNA Package 2.0.Algorithms for Molecular Biology(2011) 6:26]を使用して、野生型前駆体の構造に可能な限り近づくように調整した。構造調整後、配列数及び野生型と改変オリゴとの間の二次構造変化を計算した。これらの計算は、野生型に対して最小の配列変更しか必要としない潜在的に機能的なGEiGSオリゴを特定するために必須である。
【0649】
野生型前駆体に対するCRISPR/cas9小分子ガイドRNA(sgRNA)を、CasOTソフトウェア[Xiao,A.ら、Bioinformatics(2014) 30:1180、Ai1182]を用いて作製した(上記表1B参照)。GEiGSオリゴを生成するために適用される改変がsgRNAのPAM領域に影響を及ぼし、それを改変オリゴに対して無効にするsgRNAを選択した。
【0650】
実施例1B
内在性植物遺伝子の遺伝子サイレンシング-PDS
ゲノム編集誘導遺伝子サイレンシング(GEiGS)を用いた内在遺伝子サイレンシングの定量的評価のためのハイスループットスクリーニングを確立するために、本発明者らは、いくつかの潜在的な視覚マーカーを考慮した。本発明者らは、色素蓄積に関与する遺伝子(例えば、フィトエンデサチュラーゼ(PDS)をコードする遺伝子)に焦点を当てることを選択した。PDSのサイレンシングは、光退色を引き起こし(図2B)、これは、遺伝子編集後のロバストな苗スクリーニングとして、概念実証(POC)として使用することを可能にする。図2A~Cは、PDSのためにサイレンシングされたベンサミアナタバコ及びシロイヌナズナ植物を用いた代表的な実験を示す。植物は、減少した量のカロチノイドを有する植物において観察される特徴的な光退色表現型を示す。
【0651】
POC実験では、siRNAの選択を以下のように行った。
【0652】
GEiGS適用を用いてPDS遺伝子に対してシロイヌナズナ又はベンサミアナタバコにおけるRNAi機構を開始するためには、PDSを標的とする有効な21~24bpのsiRNAを特定する必要がある。活性なsiRNA配列を見出すために2つのアプローチが使用される:1)文献をスクリーニングする - PDSサイレンシングは多くの植物において周知のアッセイであるので、本発明者らは、シロイヌナズナ又はベンサミアナタバコにおける遺伝子に100%一致し得る、異なる植物において十分に特徴付けられた短いsiRNA配列を特定している。2)特定の遺伝子に対する遺伝子サイレンシングを開始する際に、どのsiRNAが有効であるかを予測するために使用されている、多くの公開アルゴリズムが存在する。これらのアルゴリズムの予測は100%ではないので、本発明者らは、少なくとも2つの異なるアルゴリズムの結果である配列のみを使用している。
【0653】
PDS遺伝子をサイレンシングするsiRNA配列を使用するために、本発明者らは、CRISPR/Cas9システムを使用して、それらを公知の内在非コードRNA遺伝子配列と交換する(例えば、miRNA配列を変化させる、長いdsRNA配列を変化させる、アンチセンスRNAを作製する、tRNAを変化させる、など)。特徴付けられた非コードRNA、例えばmiRNAの多くのデータベースがある。本発明者らは、いくつかの公知のシロイヌナズナ又はベンサミアナタバコ内在非コードRNA、例えば、異なる発現プロフィール(例えば、低い構成的発現、高度に発現、ストレスで誘導されるなど)を有するmiRNAを選択している。例えば、内在miRNA配列をPDS遺伝子を標的とするsiRNAと交換するために、本発明者らは、HRアプローチ(相同組換え)を使用している。HRを用いて、次の2つの選択肢が考えられる:例えば、中央に改変miRNA配列を含む約250~500ntのドナーssDNAオリゴ配列を使用すること、又は、2×21bpのmiRNA及びPDSのsiRNAに変更するmiRNA(図1に示すように、siRNAの500~2000bp上流及び下流側)を除き、植物ゲノム中の取り囲むmiRNAとほぼ100%同一の1Kb~4Kb挿入フラグメントを有するプラスミドを使用すること。トランスフェクションは、以下の構築物を含む:CRISPR:Cas9/GFPセンサー(これは、陽性の形質転換細胞を追跡し、そして濃縮する)、gRNA(これは、Cas9を、挿入ベクター/オリゴに依存して、HRによって修復される二本鎖切断(DSB)を生成するように誘導する)。挿入ベクター/オリゴは、置換され(すなわち、miRNA)、目的の突然変異(すなわち、siRNA)を運ぶように改変された、標的化された遺伝子座を囲む相同性の2つの連続した領域を含む。プラスミドが使用される場合、標的化構築物は、制限酵素認識部位を含むか、又は制限酵素認識部位を含まず、そして選択されたsiRNAでのmiRNAの置換で終わる相同組換えのための鋳型として使用される。プロトプラストへのトランスフェクション後、FACSを用いてCas9/sgRNAトランスフェクト事象を濃縮し、プロトプラストを植物に再生し、退色した苗をスクリーニングし、スコア化する(図1参照)。対照として、プロトプラストを、ランダムな非PDS標的化配列を有するオリゴでトランスフェクトする。陽性編集植物はPDSを標的とするsiRNA配列を産生すると予想され、従ってPDS遺伝子はサイレンシングされ、苗はgRNAを持たない対照と比較して白いと見られる。交換(スワップ)後、編集されたmiRNAは、元の塩基対形成プロファイルが維持されるので、miRNAとして依然としてプロセシングされることに留意することが重要である。しかし、新たに編集されたプロセシングされたmiRNAは、標的に対して高い相補性(例えば、100%)を有し、従って、実際には、新たに編集された小分子RNAは、siRNAとして作用する。
【0654】
実施例2
「内在」導入遺伝子の遺伝子サイレンシング - GFP
GEiGSの効率をチェックするための別の迅速かつ強固なアプローチは、GFP(緑色蛍光タンパク質)のようなマーカー遺伝子でもある導入遺伝子をサイレンシングすることによる。細胞におけるGFPサイレンシングの有効性を評価するための容易な選択肢はほとんどない(例えば、FACS分析、PCR及び顕微鏡検査)。GEiGSを用いたGFPサイレンシングのPOCを示すために、本発明者らは、GFPを安定に発現する遺伝子導入シロイヌナズナ又はタバコ系統を用いている。GFP発現植物由来のプロトプラストは、GFP遺伝子を標的とするRNAサイレンシング機構を開始するために強力なsiRNAとして作用するように内在非コードRNA、例えばmiRNAを改変するためにGEiGS方法論と共に使用される。正に編集された植物は、図3に示されるように、GFP発現についてサイレンシングされることが期待される。さらに、植物におけるGFPサイレンシングは、十分に特徴付けられ、そしてGFPサイレンシングを開始するために利用され得る多くの利用可能な短いRNA配列(siRNA)が存在する。従って、遺伝子交換のために、本発明者らは、GFPに特異的なsiRNAを生成するために公的に利用可能なツールを使用しているか、又は文献から入手可能な公知のsiRNA分子を使用している。
【0655】
GFP遺伝子をサイレンシングするsiRNA配列を使用するために、本発明者らは、CRISPR/Cas9システムを使用して、公知の内在非コードRNA、例えばmiRNA遺伝子配列とそれらを交換する(例えば、miRNA配列を変化させる、長いdsRNA配列を変化させる、アンチセンスRNAを作製する、tRNAを変化させるなど)。特徴付けられた非コードRNA、例えばmiRNAの多くのデータベースが存在し、本発明者らは、いくつかの公知のシロイヌナズナ又はニコチアナ・ベンサミアナ非コードRNA、例えば異なる発現プロフィール(例えば、低構成的発現、高度に発現、ストレス中で誘導等)を有するmiRNAを選択している。例えば、内在miRNA配列をsiRNAと交換(スワップ)するために、本発明者らはHRアプローチを使用している。HRにおいて、2つの選択肢が企図される:例えば、中央にsiRNA配列を含む約250~500bpのドナーオリゴ配列を使用すること、又は、2×21bpのmiRNA及びGFPのsiRNAに変更するmiRNA(siRNAの500~2000bp上流及び下流側、図1を参照のこと)を除き、植物ゲノム中の取り囲むmiRNAとほぼ100%同一の1Kb~4Kb挿入フラグメントを発現するプラスミドを使用すること。トランスフェクションは、以下の構築物を含む:CRISPR:Cas9/RFPセンサー(例えば、FACS分析を使用して、陽性の形質転換細胞を追跡し、そして濃縮するため)、gRNA(これは、Cas9を、挿入ベクター/オリゴに依存してHRによって修復されるDSBを生成するように誘導する)。挿入ベクターは、置換され(すなわち、miRNA)、目的の突然変異(すなわち、siRNA)を運ぶように改変された標的遺伝子座を囲む相同性の2つの連続した領域を含む。標的化構築物は、制限酵素認識部位を含むか、又は制限酵素認識部位を含まず、そして選択されたsiRNAでのmiRNAの交換で終わる相同組換えのための鋳型として使用される。プロトプラストへのトランスフェクション後、FACSを用いて、陽性トランスフェクト事象を濃縮し(赤色蛍光タンパク質(RFP)マーカーを用いて)、濃縮したプロトプラストを、顕微鏡下でGFPサイレンシングについてスコア化する(図4)。陽性編集プロトプラストは、GFPを標的とするsiRNA配列を産生すると予想され、従って、導入遺伝子のGFP発現は、対照プロトプラストと比較してサイレンシングされると予想される。GFPは、回復及び再生の2つの最後のステップが必要ではないので、PDSよりも速い方法であり、スコアリングは、プロトプラスト/細胞レベルで行うことができる。
【0656】
実施例3
シロイヌナズナにおける外来性導入遺伝子 - GFP - の遺伝子サイレンシング
GFPサイレンシングの前者の例に加えて、GEiGSの効率を実証する別の方法は、一過性GFP形質転換アッセイにおいてGFP(緑色蛍光タンパク質)のようなマーカー遺伝子をサイレンシングすることによる。この実施例では、第1の植物細胞(例えば、シロイヌナズナ)をGEiGSを用いて処理して、GFPを標的とする小分子siRNA分子を発現させる(siGFPを利用する方法は、上記の実施例2で論じられている)。次いで、対照プロトプラスト(例えば、GEiGS-PDS)及びGEiGSを用いて編集したプロトプラスト(siGFPを発現する)を、別々に2つのマーカー(センサー) GFP+RFPを発現するプラスミドでトランスフェクトする。GEiGS処理においてRFPのみを発現するがGFPを発現しないプロトプラストは、siGFP発現によるGFPサイレンシングの結果である(図5に示すように)。
【0657】
実施例4
ウイルス感染に対する免疫植物、外来性ウイルス遺伝子のサイレンシング(GFPをマーカーとして使用)
GEiGSが、外来性遺伝子をノックダウンする能力を有する植物免疫化のためのロバストな方法であることを証明するために、本発明者らは、ウイルス遺伝子のサイレンシングの例を提供している。種々の植物種に感染し、発明POCで使用できる種々のウイルスにはTuMV、CMV、TMVなどがある。
【0658】
カブモザイクウイルス(TuMV)はアブラムシによって非持続的に伝播し、世界中の多くの地域でアブラナ科作物の流行病を引き起こす。一本鎖であるTuMVゲノムは約10,000ntのプラスセンスRNA分子である(受入番号NC_002509)。TuMVは、Urcuqui-Inchimaら[Urcuqui-Inchimaら、Virus Res.(2001) 74:157-175]が先に議論した同じ典型的なポティウイルス遺伝子組換え組織を有する。TuMVの症状は、広範囲、黄色、円形、不規則な領域の斑点である。最も古い葉は、しばしば全面的に明るい黄色になる。葉身はしばしば壊死に陥る。TuMV-GFP及びサプレッサー欠損TuMV-AS9-GFPを広範に用いて、シロイヌナズナにおける抗ウイルスサイレンシング活性を露出させた。野生型植物はTuMV-AS9-GFPに対して免疫性であったが、免疫はDCL2及びDCL4の喪失によって効果的に抑制され、TuMVがsiRNA依存性抗ウイルス応答の効果を通常マスクすることを示した[Hernan Garcia-Ruizら、The Plant Cell(2010)22: 481-496]。
【0659】
キュウリモザイクウイルス(CMV)はプロモウイルス科(Bromoviridae)の植物病原ウイルスである。これは、植物ウイルス属、ククモウイルスのタイプメンバーである。このウイルスは、世界中に分布し、非常に広い宿主範囲を有する。実際、それは、任意の既知の植物ウイルスの最も広い宿主範囲を有するという評判を有する。これは、植物から植物へ、樹液及びアブラムシの両方によって口針伝播様式で機械的に伝搬され得る。このウイルスは、1934年にモザイク症状を示すキュウリ(Cucumis sativus)で初めて発見されたため、キュウリモザイクと名づけられた。非CP依存的な細胞間移動のためにミュータント3a MPを利用する発現CMVベースの発現ベクターが開発された。この新しいベクター[Fujikiら、Virology(2008) 381(1): 136-142]をアグロバクテリウムバイナリーベクターに組み込み、アグロインフィルトレーションにより植物に送達した。結果は、この新規CMVベース発現ベクターが組み換えタンパク質産生に非常に有望であることを実証する。
【0660】
タバコモザイクウイルス(TMV)は一本鎖RNAウイルスであり、一般的にナス科植物、ペチュニア、トマト及びタバコなどの多くの種を含む植物科に感染する。このウイルスは葉の表面に茶色の斑点のモザイク状のパターンを引き起こす。このウイルスは、通常、植物を死滅させないが、その成長を深刻に阻害し得る。より低い葉は、熱く乾燥した天候で「モザイク焼け」を被ることがあり、葉の大面積が死滅する。このウイルスは単独では植物に侵入できない。植物は、通常、ヒトの取り扱い後に植物創傷を介して、又は汚染された装置を介して感染される。いったん植物の中に入ると、ウイルスは遺伝暗号(RNA)を放出する。植物はこのコードに混乱し、それ自体と間違い、ウイルスタンパク質を産生し始める。植物におけるウイルスベースの発現系は、高レベルの遺伝子増殖及び同時に、宿主活性の障害を最小限に抑えながら短期間内に達成可能な発現レベルの上昇のために、代替の一過性発現系に対して特に魅力的である。TMVは、最も広く研究されている植物ウイルスの1つであり、従って、ベクター開発のための当然の選択肢となっている。TMVベースのベクターは、全可溶性タンパク質の80%もの高い組み換えタンパク質収率をもたらした。農業感染は安価で再現性があり、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)が保有するバイナリーベクターのT-DNAの一部として、ウイルス発現ベクターを植物組織に送達する好ましい方法となっている。
【0661】
本発明者らは、シロイヌナズナの感染のためにTuMV-GFPを、又はタバコ植物のためにTMV-GFPを使用している。ウイルス感染に抵抗性の植物を作製するために、本発明者らは、植物感染時にGFPを発現する操作されたウイルスを使用する。このようなウイルスの使用は、上記の実施例3に記載されるのと同じ構築物を使用することを可能にする。その違いは、現在ではGFPがウイルス感染から発現していることである。ウイルス-GFP(CMV又はTMV)に感染した対照植物は、顕微鏡下でGFPの発現を示すが(図6)、siRNA GFPを発現するように操作されたGEiGS植物は、GFPのレベルの低下を示すと予想される(図6)。従って、Virus-GFPに感染したあとに、発現がないGEiGS植物を作製することにより、外来性遺伝子のRNAiサイレンシングが達成され、GEiGSがウイルス及び潜在的に他の病原体に対する免疫植物への有効な方法であることが実証されるであろう。細胞におけるGFPサイレンシングの有効性を評価するための容易な選択肢はほとんどない(例えば、FACS分析、PCR及び顕微鏡の使用)。植物におけるGFPサイレンシングは十分に特徴づけられており、GFPサイレンシングの開始において活性である多くの利用可能な短いRNA配列(siRNA)が存在する。従って、遺伝子交換のために、本発明者らは、文献から入手可能な少数の公知のsiRNA分子を使用している。
【0662】
GFP遺伝子をサイレンシングするsiRNA配列を使用するために、本発明者らは、CRISPR/Cas9システムを使用して、既知の内在非コードRNA、例えばmiRNA遺伝子配列とそれらを交換している(上記のように、長いdsRNA配列の変更、アンチセンスRNAの作製、tRNAの変更など、これらのsiRNA配列を導入するための多くの他の選択肢がある)。特徴付けられた内在非コードRNA、例えばmiRNAの多くのデータベースがあり、本発明者らは、いくつかの公知のシロイヌナズナ又はベンサミアナタバコ非コードRNA、例えば、異なる発現プロフィール(例えば、低い構成的発現、高度に発現、ストレス中で誘導など)を有するmiRNAを選択している。例えば、内在miRNA配列をsiRNAと交換(スワップ)するために、本発明者らはHRアプローチを使用している。HRにおいて、2つの選択肢が企図される:例えば、中央にsiRNA配列を含む約250~500bpのドナーオリゴ配列を使用すること、又は、2×21bpのmiRNA及びGFPのsiRNAに変更する*miRNA(siRNAの500~2000bp上流及び下流側、図1を参照のこと)を除き、植物ゲノム中の取り囲むmiRNAとほぼ100%同一である1Kb~4Kb挿入フラグメントを発現するプラスミドを使用すること。トランスフェクションは、以下の構築物を含む:CRISPR:Cas9/RFPセンサー(例えば、FACS分析を使用して、陽性の形質転換細胞を追跡し、そして濃縮するため)、gRNA(これは、Cas9を、挿入ベクター/オリゴに依存してHRによって修復されるDSBを生成するように誘導する)。挿入ベクターは、置換され(すなわち、miRNA)、目的の突然変異(すなわち、siRNA)を運ぶように改変された標的遺伝子座を囲む相同性の2つの連続した領域を含む。標的化構築物は、制限酵素認識部位を含むか、又は制限酵素認識部位を含まず、そして選択されたsiRNAでのmiRNAの交換で終わる相同組換えのための鋳型として使用される。プロトプラストへのトランスフェクション後、FACSを用いて陽性トランスフェクト事象を濃縮し、プロトプラストを植物に再生し、植物を機械的接種によりウイルスに感染させる。植物を、顕微鏡下でのGFPサイレンシングについてスコア化する(図6に記載されるように)。GEiGSを有する陽性編集プロトプラストはGFPを標的とするsiRNA配列を産生すると予想され、従って、ウイルスGFP遺伝子発現は、対照非編集植物と比較してサイレンシングされると予想される。
【0663】
実施例5
線虫抵抗性のバナナ植物
線虫によるバナナの生産性へのダメージは非常に大きく、未処理土壌における収率損失の50%に達する。この問題は、単作が一般的である伝統的なバナナ農園で強調されている。世界のさまざまな地域で臭化メチルのような殺線虫剤を禁止することは、この課題を悪化させ、農業従事者に不適切で信頼のない代替物を残した。ネモグリセンチュウであるネモグリセンチュウは、世界で最も経済的に重要なバナナの線虫寄生虫である。穿孔性線虫による感染はバナナの倒伏病、トウガラシの黄色病、カンキツの衰退を引き起こす。これらの病気は、ネモグリセンチュウの感染が根の組織を破壊し、ほとんど~全く支えられない植物や、水を取り込んで栄養分を移動させる能力をほとんど~全くもたない植物を残す結果である。世界中のカンキツ、観賞植物、その他の農業産業に被害を与えるため、ネモグリセンチュウは最も規制されている線虫の植物病害虫の1つである(図7)。
【0664】
RNA干渉(RNAi)は、多種多様な生物、特に自由生活モデル線虫、エレガンス線虫(シノラブディス・エレガンス、Caenorhabditis elegansにおける機能解析のための非常に貴重な遺伝子サイレンシング装置として出現した。植物寄生線虫への応用を記述した研究が増えている。一連の細胞型で発現する遺伝子は、線虫が全身性RNAi応答を誘発する二本鎖RNA(dsRNA)又は短鎖干渉RNA(siRNA)を取り込むとサイレンシングされる。エレガンス線虫を用いた広範なsiRNA試験は、線虫がその生活環を完結するのをうまく防ぐことができたのは、胚形成の初期に発現するサイレンシング遺伝子に起因することを示唆している。R。similisでは、このような候補遺伝子は、カルレティキュリン13(CRT)又は遺伝子コラーゲン5(col-5)である可能性がある。CRTは、多くの動物寄生虫及び植物線虫の寄生、免疫回避、生殖及び病因において重要な役割を果たすCa2結合多機能タンパク質である。従って、CRTはエレガンス線虫を制御するための有望な標的である。Col-5は線虫のコラーゲン遺伝子に属し、多様な機能をもつタンパク質をコードしている。それらの最も豊富な産物の中にはクチクラコラーゲンがあり、それは線虫クチクラ中に存在するタンパク質の約80%を含む。これらのコラーゲンの構造は、これまでに研究された自由生活性及び寄生性の線虫種において驚くほど類似していることがわかっており、それらをコードする遺伝子は、発現が発生調節を受ける大きな多重遺伝子ファミリーを構成しているようである。
【0665】
GEiGSを利用することにより、本発明者らは、摂食時に根から線虫に伝達され、続いて線虫遺伝子のサイレンシングを誘導するsiRNA分子を発現するバナナ植物を作製している。生活環における遷移に不可欠な遺伝子のサイレンシングは、線虫の繁殖を阻害し、線虫による破損を消失させる。本発明者らは、いくつかのバナナ内在非コードRNA、例えば、CRT又はcol-5遺伝子からの短い配列を有するmiRNA配列を変化させている。GEiGSは、バナナプロトプラストにおいて使用され、そしてこれは、小植物に再生され、次いで、耐性について異なる線虫でスクリーニングされる。
【0666】
実施例6
フザリウム・オキシスポラム耐性のバナナ植物
フザリウム属は、世界中の土壌及び有機基質中に広く広がっている数種の真菌を含む。フザリウム・オキシスポラムは、この属の最も関連性のある種の1つであり、広範囲の経済的に重要な園芸作物、花、樹木、及びキャベツ、バナナ、及び綿などの多数の野外作物を含む、100種を超える植物種における根腐れ病、苗立枯病及び枯れ病の原因である。フザリウム・オキシスポラムは、様々な作物において大幅な収量損失を引き起こす破壊的な病原体であり、作物耐性を改善するための持続可能で環境に優しい方法の開発が重要である。フザリウム・オキシスポラムは、その一次宿主植物によって決定される病原性株の120以上の形態専門種からなる。フザリウム・オキシスポラムのすべての株は腐生性であり、土壌中の有機物上で長期間増殖し、生存することができ、制御することが非常に困難である。その病原性の生活環は、適当な宿主を認識すると胞子の発芽から始まる。いったん菌糸が形成されると、病原体は根を直接貫通して宿主に入り、菌糸体形成につながる微小分生子を産生することによって木部内に定着する。病原体によるコロニー形成及び毒素産生は、宿主維管束系の閉塞をもたらし、維管束系の黄変、葉脈の透明化、白化、葉脈及び葉における壊死、葉の脱離及び萎凋などの特徴的な疾患症状を引き起こす。植物が死んだ後、菌類は腐敗した葉の表面に胞子を形成する。フザリウム・オキシスポラムは熱帯及び亜熱帯地域で最も多く、気候変動によりその地理的範囲が広がることが予想される。萎凋病のための現在の制御方法は非常に限定されており、作物の輪作は、大きな宿主範囲及び土壌中でのその持続性のために効果的ではない。萎凋病の管理は、主に、土壌滅菌が温室内でのみ行われ得る一方で、接種物の伝播を減少させるのみである栽培慣行及び農場衛生を通じて行われる。臭化メチルのような広域スペクトル殺生物剤を使用する土壌くん蒸は高価であり、環境に多くの有害な影響を及ぼす。
【0667】
Hu z.は、宿主送達(Host-Delivered)RNA干渉技術を用いて、半生体栄養菌フザリウム・オキシスポラム分化型コングルチナンス(F. oxysporum f. sp. Conglutinans)における3つの異なる遺伝子(FOW2、FRP1、及びOPR)を部分的にサイレンシングした[Huら、Front Chem.(2015)20(3):1]。真菌病原体遺伝子を標的とする二本鎖RNA(dsRNA)分子の発現は、多くのトランスジェニックシロイヌナズナ系統において達成された。トランスジェニック系統に感染したフザリウム・オキシスポラムは、3つの標的遺伝子すべてで実質的に減少したmRNAレベルを示し、FOW2、FRP1、及びOPRについてそれぞれ平均75、83、及び72%の減少を示した。病原体遺伝子のサイレンシングは、感染と闘うトランスジェニック系統の能力に明らかな正の影響を及ぼした。すべてのトランスジェニック系統は、病徴発現の遅延を伴うフザリウム・オキシスポラムに対する抵抗性の増強を示し、特にFRP1及びOPR系統で顕著であった。真菌感染後の生存率は、一貫して10%の生存率を示した対照野生型植物と比較して、トランスジェニック系統で高く、FOW2系統は25%生存;FRP1系統は30~50%生存及びOPRは45~70%生存を示した。下方制御効果は、関連遺伝子における意図しない効果なしに標的遺伝子に特異的であった(Hu Z.(2015)前出)。真菌では、長いdsRNAと短いdsRNAの両方が等しく取り込まれ、RNAiを誘導して標的遺伝子をサイレンシングすることが示された。
【0668】
本発明者らは、FOW2、FRP1及びOPRのような真菌遺伝子を特異的に標的とするために、内在非コードRNA(例えば、miRNA)配列をほとんど変化させることによって、フザリウム・オキシスポラムに抵抗性のバナナ植物を作製するために、GEiGSを利用している。編集したプロトプラストを小植物に再生し、制御された環境下でフザリウム・オキシスポラムで攻撃し、耐性植物が関連siRNAを発現することを確認する。
【0669】
実施例7
線虫耐性コーヒーの木
コーヒーは、コーヒー豆と呼ばれる種子が各種コーヒー飲料及び製品を製造するために使用される開花植物の属である。コーヒーは、アカネ科のメンバーである。それらは、熱帯及び南アフリカ並びに熱帯アジアに由来する低木又は小木である。コーヒーは、世界で最も価値があり、広く取引されている商品作物の1つとしてランク付けされており、中南米、カリブ海、アフリカの国々を含むいくつかの国の重要な輸出産物である。コーヒー生産量の着実な減少は、生物学的及び社会経済的制約に起因している。あまり研究されていない生物的制約の中には、線虫がある。
【0670】
植物寄生線虫は、世界、特にベトナムでコーヒー生産に対する厳しい制約と見なされている(図8)。優勢で最も重要な種は、ラドホルス・アラボコフェアエ(Radopholus arabocoffeae)及びミナミネグサレセンチュウである。両種は5歳未満の植物の死の原因である。伝統的に、サレ線虫(P.coffeae)を制御する主な方法は、化学的手段によるものであり、ラドホルス・アラボコフェアエに対する特別な制御戦略は存在しない。
【0671】
本発明者らは、GEiGSストラテジー(上記の実施例5に記載されるようである)を利用して、摂食時に根から線虫に伝達されるsiRNA分子を発現するロブスタコーヒーノキ(Coffea canephora)(ロブスタ(Robusta))の木を作製し、続いて線虫遺伝子のサイレンシングを誘導する。生活環における遷移に不可欠な遺伝子のサイレンシングは、線虫の繁殖を阻害し、線虫による破損を消失させる。従って、本発明者らは、いくつかの内在非コードRNA、例えば、線虫遺伝子由来の短い配列を有するmiRNA配列を変化させている。GEiGSは、コーヒープロトプラストにおいて使用され、これは、小植物に再生され、次いで、耐性について異なる線虫でスクリーニングされる。
【0672】
実施例8
異なる遺伝子を標的とする内在性miRNAを改変した植物の生成
miRNAのゲノム遺伝子座におけるその認識配列(miRNAに成熟するであろう)のごくわずかな改変は、非トランスジェニック様式で、新しい遺伝子を調節する新しいシステムに導くことができる。従って、シロイヌナズナ根の衝撃によるこれらの改変及びさらなる解析のためのそれらの再生を導入するために、アグロバクテリウムフリー一過性発現方法を使用した。本発明者らは、シロイヌナズナ植物において2つの遺伝子、PDS3及びADH1を標的とすることを選択した。
【0673】
カロチノイドは植物の多くの生理学的過程において重要な役割を果たし、フィトエンデサチュラーゼ遺伝子(PDS3)はカロチノイド生合成経路における重要な酵素の1つをコードし、そのサイレンシングはアルビノ/退色表現型を生じる。従って、PDS3の発現が減少した植物は、完全なアルビノ及び矮化症まで、減少したクロロフィルレベルを示す。
【0674】
アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH1)は、アルコールとアルデヒド又はケトンとの間の相互変換を触媒し、同時にNAD+又はNADP+を還元するデヒドロゲナーゼ酵素の群を含む。この酵素の主な代謝目的は、組織内のアルコール性毒性物質の分解である。ADH1発現の減少を有する植物は、アリルアルコールに対する耐容性の増加を示す。従って、減少したADH1を有する植物はアリルアルコールの毒性効果に対して抵抗性であり、従って、それらの再生をアリルアルコール選択を用いて行った。
【0675】
2つの十分に確立されたmiRNA、miR-173及びmiR-390が改変されるように選択され、これらは、以前に、植物の発育全体を通して発現されることが示された[Zielezinski Aら、BMC Plant Biology(2015)15: 144]。改変を導入するために、2成分系を使用した。まず、CRISPR/CAS9システムを用いて、miR-173及びmiR-390遺伝子座において、設計された特定のガイドRNA(図12A及び13A;及び上述の表2)を介して切断を生成し、その部位における相同的DNA修復(HDR)を促進した。第二に、新たに割り当てられた遺伝子を標的とするためのmiRNA配列の所望の改変を伴うA DONOR配列を、HDRの鋳型として導入した(図12A~G、13A~G、14A~D及び15A~D;上記表2)。さらに、miRNA(pri-miRNA)の一次転写産物の二次構造は、成熟miRNAの正確な生合成及び活性に重要であるので、さらなる改変をpri-miRNAの相補鎖に導入し、構造保存のためにmFOLD(www(dot)unafold(dot)rna(dot)Albany(dot)edu)において分析した(図12A~G及び13A~G)。全体として、miRNA遺伝子座ごとに2つのガイドを設計し、各遺伝子ごとに2つの異なるDONOR配列(改変miRNA配列)を設計した(図14A~D及び15A~D、上述の表2)。
【0676】
実施例9
衝撃及び植物再生
GEiGS構築物を、(上記の材料及び実験手順の節で詳細に議論されたように)予め調製された根に衝撃し、そして再生した。PDS3形質転換体については退色表現型を介して、ADH1形質転換体についてはアリルアルコール処理での生存を介して植物を選択した。SwapをSwapなし、すなわち保持された野生型と比較して検証するために、これらの植物を、改変領域にわたる特異的プライマーを介した挿入について続いてスクリーニングし、続いて制限消化した(図16)。
【0677】
実施例10
表現型選択の遺伝子型検証
前述したように、よく知られた表現型形質であるフィトエンデサチュラーゼ(PDS3)とアルコールデサチュラーゼ(ADH1)を標的として、遺伝子編集システムの概念実証(POC)が確立された。
【0678】
上記のように、減少したADH1発現を有する植物は、アリルアルコールに対する耐容性の増加を示す。従って、ADH1を標的とする改変miRNAのための衝撃植物を、30mMアリルアルコールを含有する培地中で再生し、対照植物の再生速度と比較した。118 GEiGS#3+SWAP11アリルアルコール選択植物は、アリルアルコール培地上で51の対照植物と比較して生存した(データは示さず)。選択されたGEiGS#3+SWAP11のうち、5つがDONORを保有することが示された(データは示さず)。DONOR処理植物において再生する大量の植物は、衝撃プロセスの間の一過性発現にも起因し得る。
【0679】
従って、退色表現型(図16)及びアリルアルコール選択(図17)によるPDS3及びADH1の選択は、それぞれ、遺伝子型決定のための形質転換小植物選択のための理想的な手段を与える。
【0680】
4kbのスワップ領域を、主に、内部プライマー及び制限酵素消化のバリエーションを介する挿入に対する元の野生型の特異的アンプリコン分化を通して評価した。
【0681】
ADH1(図17)は、制限DONORプラスミド及び非制限DONORプラスミドと比較した場合、予想されるDONOR存在制限パターンを有するアリルアルコール選択植物の比較遺伝子型を示した。PDS3(図16)は、制限DONORプラスミド及び非制限DONORプラスミドのものと比較した、DONORを伴う及び伴わない衝撃試料表現型と、それらのそれぞれの異なる制限酵素消化パターンとの比較を示した。これらの結果は、PDS3アルビノ/退色表現型と予想される制限パターンとの明確な関連を提供した。そのあとで、特定の内部、すなわちスワップ(Swap)領域内のプライマーと、交換(スワッピング)で導入するべきゲノム領域の外部にあってそれに特異的な外部プライマーとを組み合わせて、外部PCRを実施した(データは示さず)。ヘテロ接合性、ホモ接合性、又はDONOR Swapの存在を評価するために、PCRアンプリコンのSanger配列決定によって、Swapのさらなる検証を得た(データは示さず)。
【0682】
実施例11
改変されたmiRNAはその新しい標的遺伝子の発現を低下させる
GEiGS系における改変miRNAが新たに指定された標的の発現を下方制御する可能性を検証するために、qRT-PCR(定量的リアルタイムPCR)を用いて遺伝子発現解析を行った。正に特定された再生植物からRNAを抽出し、逆転写し、再生植物と比較し、並行して処理したが、関連する改変構築物は導入されなかった。miR-173をPDS3を標的とするように改変した場合(GEiGS#4+SWAP4)では、遺伝子発現量の平均83%の低下が認められた(図18)。ADH1を標的とするように改変されたmiR-390(GEiGS#3+SWAP11)を有する植物では、同様の遺伝子発現の変化が観察され、対照植物のレベルの82%であった(図19)。まとめると、これらの結果は、内在遺伝子座におけるmiRNA転写産物中の標的認識配列を置換することにより、内在miRNAを改変して新たな遺伝子をうまく標的とし、その発現を低下させる遺伝子編集法を実証する。
【0683】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、多くの代替、修正、及び変形が当業者には明らかであろうことは明らかである。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神及び広い範囲内にある、そのような代替、修正、及びバリエーションのすべてを包含することが意図される。
【0684】
本明細書において言及される全ての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許又は特許出願が、参照により本明細書に援用されるように具体的かつ個別に示されたかのように、その全体が本明細書に援用される。さらに、本出願における任意の参考文献の引用又は特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを容認するものとして解釈されるべきではない。節の見出しが使用される限り、それらは必ずしも限定するものと解釈されるべきではない。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13(1)】
図13(2)】
図14
図15
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図18
図19
【配列表】
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