(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】資産ポートフォリオを作成するためのコンピュータ実施方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/06 20120101AFI20240329BHJP
【FI】
G06Q40/06
(21)【出願番号】P 2020546100
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 CN2019107125
(87)【国際公開番号】W WO2020057659
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-08-08
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HK
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520332656
【氏名又は名称】ロングヴュー フィナンシャル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Longview Financial Limited
【住所又は居所原語表記】Suite 813/814, Cyberport 1, 100 Cyberport Road, Pok Fu Lam, Hong Kong
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】シリンガー,ジュリアン モーリツ
【審査官】橋沼 和樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0024395(US,A1)
【文献】特開2005-182580(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0167777(US,A1)
【文献】柿木 秀文 HIDEFUMI KAKINOKI,進化的アルゴリズムによるリスク管理を目的とした投資戦略最適化 Investment Strategy Optimization to Aim at Risk Management by Evolutionary Algorithm,情報処理学会研究報告 平成21年度▲3▼ [CD-ROM] ,日本,社団法人情報処理学会,2009年10月15日,Vol. 2009-AL-126 No.9,pp.1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポートフォリオを自動的に選択するためにコンピュータによって実行される方法であって、該ポートフォリオは資産の集団を含み、当該方法は、
複数の利用可能な資産から複数の第1世代のポートフォリオを生成するステップであって、該複数の第1世代のポートフォリオのそれぞれは、該複数の利用可能な資産のうちの1つ以上をランダムに選択することによって生成される、ステップと、
前記複数の第1世代のポートフォリオのそれぞれについて、前記ランダムに選択された資産のそれぞれにランダムなパーセント比重を適用するステップであって、該ランダムなパーセント比重の合計は100%に等しくなるように構成されている、ステップと、
前記複数の第1世代のポートフォリオのそれぞれについてスコアを算出するステップであって、前記複数の第1世代のポートフォリオのそれぞれについてのスコアは、複数の異なる評価要因の集合を含む、ステップと、
前記複数の第1世代のポートフォリオをそれぞれのスコアによりランク付けするステップと、
前記複数の第1世代のポートフォリオのうちの複数を、それぞれのスコアに基づいて複数の親ポートフォリオとして選択するステップと、
前記複数の親ポートフォリオを用いて複数の子ポートフォリオを生成するステップであって、該複数の子ポートフォリオのそれぞれは前記複数の親ポートフォリオのうちの2つを組み合わせることによって生成され、前記複数の親ポートフォリオ及び/又は前記複数の子ポートフォリオのうちの一部は変異プロセスに供されるために選択され、それにより、選択されたポートフォリオは、該ポートフォリオの少なくとも1つの資産がランダムに選択され、該ランダムに選択された資産の全て又はランダムなパーセント比重部分は、既存のポートフォリオの全ての資産の群及び他の適格資産の群を含む資産の集合からランダムに選択される別の資産に置き換えられ、前記変異プロセスに供されるために選択された前記複数の親ポートフォリオ及び/又は前記複数の子ポートフォリオは、前記複数の親ポートフォリオ及び/又は前記複数の子ポートフォリオのそれぞれに、事前に設定された変異率に従ってバイナリ値を割り当てることにより選択され、割り当てられたバイナリ値は、親ポートフォリオ及び/又は子ポートフォリオが前記変異プロセスのために選択されるか否かを決定する、ステップと、
を含
み、
前記複数の子ポートフォリオのそれぞれは、ランク付けのスコアで互いに隣接する2つの親ポートフォリオによって生成される、方法。
【請求項2】
初期資産ポートフォリオを記述するデータを受信するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記初期資産ポートフォリオを前記複数の第1世代のポートフォリオのうちの最初の第1世代のポートフォリオとするステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の利用可能な資産は、前記初期資産ポートフォリオ及び他の適格資産を含む資産を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
複数の利用可能な資産からランダムに選択された資産に適用されるランダムなパーセント比重は、前記初期資産ポートフォリオにおける前記ランダムに選択された資産のパーセント比重の最大値に限定されるか又は該ランダムに選択された資産が前記複数の利用可能な資産からの他の適格資産のうちの1つである場合は所定の最大パーセント比重に限定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の第1世代のポートフォリオのそれぞれについてスコアを算出するステップは、前記複数の異なる評価要因の加重集合を算出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
子ポートフォリオのための資産は、前記隣接する2つの親ポートフォリオを含む一群の資産からランダムに選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
一群の親資産からランダムに選択された資産に割り当てられるランダムなパーセント比重は、それぞれの親ポートフォリオにおけるその元のパーセント比重の最大値に限定される、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の親ポートフォリオ及び子ポートフォリオのそれぞれのためのスコアを算出するステップと、
前記複数の親ポートフォリオ及び子ポートフォリオを、それぞれのスコアでランク付けするステップと、
前記複数の親ポートフォリオ及び子ポートフォリオのサブセットをそれぞれのスコアに基づき次世代の親ポートフォリオとして選択し、該次世代の親ポートフォリオを用いて複数の次世代の子ポートフォリオを生成するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ランク付けのスコアで互いに隣接する2つの次世代の親ポートフォリオから複数の次世代の子ポートフォリオのそれぞれを生成するステップと、
前記変異プロセスに供するために前記複数の次世代の親ポートフォリオ及び/又は次世代の子ポートフォリオの一部を選択するステップと、
を含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記次世代の親ポートフォリオ及び次世代の子ポートフォリオのそれぞれのためのスコアを算出するステップと、
前記次世代の親ポートフォリオ及び前記次世代の子ポートフォリオを、それぞれの前記スコアによりランク付けするステップと、
前記次世代の親ポートフォリオ及び前記次世代の子ポートフォリオのサブセットを、それぞれの前記スコアに基づいてさらなる世代の親ポートフォリオとして選択するステップと、
前記さらなる世代の親ポートフォリオを用いて複数のさらなる世代の子ポートフォリオを生成するステップと、
を含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
前記ランク付けするステップ、前記選択するステップ、前記生成するステップ及び各さらなる世代のポートフォリオのためのスコアを算出するステップを、最高ランクのポートフォリオについて算出されたスコアの限界改善が、予め設定された反復回数にわたって所定量未満になるまで複数回繰り返すことを含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記最高ランクのポートフォリオが実施のために選択される、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
プロセッサによって実行された場合に、電子処理装置に、
複数の利用可能な資産から複数の第1世代のポートフォリオを生成するステップであって、該複数の第1世代のポートフォリオのそれぞれは、該複数の利用可能な解のうちの1つ以上をランダムに選択することによって生成される、ステップと、
前記複数の第1世代のポートフォリオのそれぞれについて、前記ランダムに選択された資産のそれぞれにランダムなパーセント比重を適用するステップであって、該ランダムなパーセント比重の合計は100%に等しくなるように構成されている、ステップと、
前記複数の第1世代のポートフォリオのそれぞれについてスコアを算出するステップであって、前記複数の第1世代のポートフォリオのそれぞれについてのスコアは、複数の異なる評価要因の集合を含む、ステップと、
前記複数の第1世代のポートフォリオをそれぞれのスコアによりランク付けするステップと、
前記複数の第1世代のポートフォリオのうちの複数を、それぞれのスコアに基づいて複数の親ポートフォリオとして選択するステップと、
前記複数の親ポートフォリオを用いて複数の子ポートフォリオを生成するステップであって、該複数の子ポートフォリオのそれぞれは前記複数の親ポートフォリオのうちの2つを組み合わせることによって生成され、前記複数の親ポートフォリオ及び/又は前記複数の子ポートフォリオのうちの一部は変異プロセスに供されるために選択され、それにより、選択されたポートフォリオは、該ポートフォリオの少なくとも1つの資産がランダムに選択され、該ランダムに選択された資産の全て又はランダムなパーセント比重部分は、既存のポートフォリオの全ての資産の群及び他の適格資産の群を含む資産の集合からランダムに選択される別の資産に置き換えられ、前記変異プロセスに供されるために選択された前記複数の親ポートフォリオ及び/又は前記複数の子ポートフォリオは、前記複数の親ポートフォリオ及び/又は前記複数の子ポートフォリオのそれぞれに、事前に設定された変異率に従ってバイナリ値を割り当てることにより選択され、割り当てられたバイナリ値は、親ポートフォリオ及び/又は子ポートフォリオが前記変異プロセスのために選択されるか否かを決定する、ステップと、
を実行させ
、
前記複数の子ポートフォリオのそれぞれは、ランク付けのスコアで互いに隣接する2つの親ポートフォリオによって生成される、機械読み取り可能コードを記憶する非一時的コンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項15】
資産ポートフォリオを自動的に作成するためのコンピュータベースのシステムであって、当該システムは、
機械読み取り可能コードを記憶するコンピュータ読み取り可能媒体と、
プロセッサと、
を含み、
前記プロセッサは、前記機械読み取り可能コードを実行して、
複数の利用可能な資産から複数の第1世代の資産ポートフォリオを生成させることであって、該複数の第1世代の資産ポートフォリオのそれぞれは、前記複数の利用可能な資産のうちの1つ以上をランダムに選択することにより生成される、ことと、
前記複数の第1世代の資産ポートフォリオのそれぞれについて、前記ランダムに選択された資産のそれぞれにランダムなパーセント比重を適用することであって、ランダムなパーセント比重の合計は100%に等しくなるように構成されている、ことと、
前記複数の第1世代の資産ポートフォリオのそれぞれについてスコアを算出することであって、前記複数の第1世代の資産ポートフォリオのそれぞれについてのスコアは、複数の異なる評価要因の集合を含む、ことと、
前記複数の第1世代の資産ポートフォリオをそれぞれのスコアでランク付けすることと、
前記複数の第1世代の資産ポートフォリオのうちの複数を、それぞれのスコアに基づいて複数の親ポートフォリオとして選択することと、
前記複数の親ポートフォリオを用いて複数の子ポートフォリオを生成することであって、該複数の子ポートフォリオのそれぞれは前記複数の親ポートフォリオのうちの2つを組み合わせることによって生成され、前記複数の親ポートフォリオ及び/又は前記複数の子ポートフォリオのうちの一部は変異プロセスに供されるために選択され、それにより、選択されたポートフォリオは、該ポートフォリオの少なくとも1つの資産がランダムに選択され、該ランダムに選択された資産の全て又はランダムなパーセント比重部分は、既存のポートフォリオの全ての資産の群及び他の適格資産の群を含む資産の集合からランダムに選択される別の資産に置き換えられ、前記変異プロセスに供されるために選択された前記複数の親ポートフォリオ及び/又は前記複数の子ポートフォリオは、前記複数の親ポートフォリオ及び/又は前記複数の子ポートフォリオのそれぞれに、事前に設定された変異率に従ってバイナリ値を割り当てることにより選択され、割り当てられたバイナリ値は、親ポートフォリオ及び/又は子ポートフォリオが前記変異プロセスのために選択されるか否かを決定する、ことと、
を行わせるように構成され
、
前記複数の子ポートフォリオのそれぞれは、ランク付けのスコアで互いに隣接する2つの親ポートフォリオによって生成される、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多くの制約及び評価要因に基づいて資産のポートフォリオを作成するためのコンピュータ実施方法に関し、より具体的には、限定されないが、株式、債券及び/又はファンド等の金融資産のポートフォリオを、定量的及び/又は定性的な財務基準に関して生成、作成又は変更するためのコンピュータ実施方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代ポートフォリオ理論では、効率的フロンティア(ポートフォリオフロンティア又はマーコウィッツフロンティア)は、リスク-リターンのスペクトルの「効率的」部分を占める投資ポートフォリオである。正式には、より高い期待リターンを持つがリターンの標準偏差が同じである他のポートフォリオが存在しないという条件を満たす一連のポートフォリオである。
【0003】
資産の組み合わせ、すなわちポートフォリオは、ポートフォリオのリターンの標準偏差で表されるリスクの発生に対して、可能な限り最も高い期待リターンを生み出すことができる場合に「効率的」と呼ばれる。ここでは、リスク資産のすべての可能な組み合わせをリスク期待リターン空間にプロットすることができ、そのような可能なポートフォリオの全ての集合は、その空間内の領域を定義する。無リスク資産を保有する機会がない場合、この領域は機会集合(実現可能集合)である。この領域の正の傾斜(上向きの傾斜)した頂点境界は放物線の一部であり、「効率的フロンティア」と呼ばれる。
【0004】
無リスク資産が利用可能であれば、機会集合はより大きくなり、その上限である効率的フロンティアは、無リスク資産のリターン値の垂直軸から生じる直線のセグメントであり、リスク資産のみの機会集合の値の接点である。無リスク資産と接点ポートフォリオとの間のポートフォリオの全ては、無リスク資産と接点ポートフォリオからなるポートフォリオである一方、接点ポートフォリオの上方及び右側の直線状のフロンティア上の全てのポートフォリオは、無リスク金利での借入れ及びその資金を接点ポートフォリオに投資することによって生成される。
【0005】
しかしながら、効率的フロンティアは、変化するリスク及びリターンを構成しない、時間フロンティアにおける1つの点である。これは、過去のリスク及びリターンのデータに基づいてある時点で計算された効率的フロンティアに基づいて選択されたポートフォリオにつながり得る。この場合、そのポートフォリオは、特定のリターンの創出の期待について選択されるか又は合意されたリスクの発生に関して選択される。しかしながら、リスク及びリターンの発生は経時的に変化する。
【0006】
したがって、リスクやリターン等の変化する制約や評価要因を考慮したポートフォリオのための資産の最も効率的又は最適な組み合わせを特定するための改善された方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ポートフォリオのための資産の組み合わせを特定する既知の方法に関連する、大規模な計算の取り組みを要すること、局所的な最適のみを見つけるリスクや、目標基準を特定できないといった1つ以上の問題をある程度軽減又は回避することである。
【0008】
当業者であれば、以下の説明から本発明の他の目的を導き出すであろう。したがって、上記の目的についての記述は網羅的ではなく、本発明の多くの目的のいくつかを例示するに過ぎない。
【0009】
本発明は限定されないがとりわけ、例えば、株式、債券、ファンド、仕組債又は保険等の金融資産のポートフォリオの定量的及び/又は定性的財務基準に関する質を、進化したポートフォリオの変更/調整の反復プロセスと組み合わせた遺伝的アルゴリズムの概念を用いて改善し、その後、採点評価方法、すなわち、「適性」採点法又は評価方法を介して金融ポートフォリオの質を評価することを求める。
【0010】
本発明は、多くの情報及び制約に基づいて、金融投資家に対する投資ポートフォリオ案を導き出すのに役立つと考えられる。本発明から生まれる資産/ポートフォリオのリバランスの提言は、様々な金融投資資産への投資を考えているか又は金融資産における現在の分配の再評価を考えている投資家に、金融資産のポートフォリオを提案するのに用いることができる。本発明の評価の範囲は、ミューチュアルファンド(「MF」)、債券、仕組債、保険、上場資産(一般的には株式、上場投信(ETF)等)及び現金資産(例えば、預金、貯蓄/当座預金口座)を含む金融資産管理の資産(「金融資産」)を包含する。
【0011】
しかしながら、本発明の方法は、多数の制約及び評価要因を示す状況に対処するために、複数の利用可能な資産を効率的又は最適な方法で組み合わせる必要がある他の複雑な状況に適用することができる。そのような状況の1つは、人的資源、医療機材、医薬品、救助機材、宿泊施設、後方支援の組み合わせが、利用可能な資金、利用可能な人員、輸送手段、規制要件、タイミング等の制約を考慮して決定及び組み合わされる必要がある災害救援である。定義された一連の制約/評価係数を用いて、本発明の方法は、初期の人間が作成した提案(場合によっては、空の提案が初期の提案を構成することもある)に基づいて、最適な又は少なくとも改善された災害救援パッケージの展開を可能にする。したがって、本発明は、改善された又は最適な解決策に発展されるために、技術的解決策及び/又は後方支援的な解決策を含む解決策の評価にも適用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の主な態様では、本発明は、資産のポートフォリオを自動的に作成するためのコンピュータ実施方法を提供する。本方法は、複数の利用可能な資産から複数の第1世代の資産ポートフォリオを生成するステップを含み、複数の第1世代の資産ポートフォリオの各々は、複数の利用可能な資産のうちの1つ以上をランダムに選択することによって生成される。この方法は、生成された各ポートフォリオについて、ランダムに選択された資産のそれぞれにランダムなパーセント比重(percent weightings)を適用することを伴うが、パーセント比重の合計が100%に等しくなるように構成されている。本方法は、複数の第1世代の資産ポートフォリオのそれぞれについてスコアを算出することを伴い、複数の第1世代の資産ポートフォリオのそれぞれについてのスコアは、好ましくは、複数の異なる評価要因の集合に基づく適性スコアを含み、そして、複数の第1世代の資産ポートフォリオを、それらの各々のスコアによってランク付けすることを伴う。続いて、複数の第1世代の資産ポートフォリオのうちの1つ以上の資産が、それぞれのスコアに基づいて選択される。このプロセスは、最高ランクのポートフォリオのスコアの限界改善が、予め設定されたか、選択されたか又は算出された量を下回るまで、複数の反復を通して繰り返される。そして、この条件を満たす最高ランクのポートフォリオが実施のために選択され得る。このプロセスは、実施された最高ランクのポートフォリオを初期資産ポートフォリオとして、すなわち「スタート」又は「元手」ポートフォリオとして用いることにより、定期的に繰り返すこともできる。
【0013】
第2の主な態様では、本発明は、プロセッサによって実行された場合、電子処理装置に第1の主な態様のステップを実行させる、機械可読コードを記憶する非一時的なコンピュータ可読媒体を提供する。
【0014】
第3の主な態様では、本発明は、資産ポートフォリオを自動的に作成するためのコンピュータベースのシステムを提供し、当該システムは、機械可読コードを記憶するコンピュータ可読媒体と、機械可読コードを実行して第1の主な態様のステップを実施ように構成されたプロセッサとを含む。
【0015】
発明の概要は、本発明を定義するために不可欠な特徴の全てを必ずしも開示しておらず、発明は、開示された特徴の部分的な組み合わせにおいて存在し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の前述の及びさらなる特徴は、添付の図面に関連して、一例としてのみ提供される下記の好ましい実施形態の説明から明らかとなる。
【
図1】
図1は、本発明の方法を実施するコンピュータベースのシステムの第1の実施形態の図である。
【
図2】
図2は、本発明の方法を実施するコンピュータベースのシステムの第2の実施形態の図である。
【
図3】
図3は、本発明の方法を実施するコンピュータベースシステムの第3の実施形態の図である。
【
図4】
図4は、評価されるべき2つの適合係数のための数学的解空間の表現である。
【
図5】
図5は、本発明の方法を一般的に示す概略図である。
【
図6】
図6は、本発明に係る、第1世代のポートフォリオ及び次世代のポートフォリオを生成する方法を示す概略図である。
【
図8】
図8は、フィットネススコアの計算を示す表を含む。
【
図9】
図9は、それぞれのフィットネススコアによるポートフォリオのランキングの概略図である。
【
図10】
図10は親ポートフォリオからの子ポートフォリオの生成を示す概略図である。
【
図11】
図11は、変異選択及び変異プロセスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明は好ましい実施形態及び限定されないが、本発明を実施するために必要な特徴の組み合わせを一例として説明するものにすぎない。
【0018】
本明細書において、「一実施形態」又は「実施形態」と言及する場合、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造又は特性が本発明の少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。本明細書における様々な箇所に現れる「一実施形態において」という表現は、必ずしも同一の実施形態を言及するものではなく、他の実施形態を相互に排除する別個の又は代替的な実施形態であるとも限らない。さらに、いくつかの実施形態によって示されても、他の実施形態によって示されないことがある様々な特徴が記載される。同様に、いくつかの実施形態の要件であり得るが、他の実施形態の要件ではない様々な要件が記載される。
【0019】
なお、図示の要素は、ハードウェア、ソフトウェア又はそれらの組み合わせの種々の形態で実施され得ることを理解されるべきである。好ましくは、これらの要素は、プロセッサ、メモリ及び入出力インターフェースを含み得る、1つ以上の適切にプログラムされた汎用デバイス上でハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにおいて実施される
図示の様々な要素の機能は、専用のハードウェアと、適切なソフトウェアに関連してソフトウェアを実行可能なハードウェアとを使用することによって提供され得る。プロセッサによって提供される場合、係る機能は、1つの専用プロセッサによって、1つの共用プロセッサによって又は一部が共用であり得る複数の個々のプロセッサによって提供されてもよい。さらに、「プロセッサ」又は「コントローラ」という用語の明示的な使用は、ソフトウェアを実行可能なハードウェアのみを意味するものと解釈すべきではなく、限定されないが、デジタル信号プロセッサ(「DSP」)ハードウェア、ソフトウェアを記憶するための読取り専用メモリ(「ROM」)、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)及び不揮発性記憶装置を暗黙的に含む。
【0020】
本願の特許請求の範囲において、特定の機能を行うための手段として表される任意の要素は、例えば、a)その機能を行う回路要素の組み合わせ又はb)ファームウェア、マイクロコード等を含む任意の形態のソフトウェアと、その機能を行うためのそのソフトウェアを実行するための適切な回路との組み合わせを含む、その機能を実行する任意の方法を包含することを意図する。このようなクレームによって定義される発明は、記載された種々の手段によって提供される機能がクレームが要求する方法で組み合わされ、一緒にされるという事実に由来する。そのため、これらの機能を提供することができる任意の手段は、本願に示すものと同等であるとみなされる。
【0021】
一般に、本発明は、遺伝的最適化アルゴリズムを用いて、数学的な「適性(fitness)」関数を用いるポートフォリオを評価する遺伝的アルゴリズムの概念を用いた機械ベースの数学的最適化プロセスに基づいて、資産ポートフォリオ、特に金融資産ポートフォリオを作成することを可能にするコンピュータベースのシステム及びプロセスを含む。本発明は、「適性」スコアが最高のポートフォリオを見つけることを目的とする。最初のインプットは、既存の又はすでに実施されている金融資産のポートフォリオであり、その後、最適化されるか若しくは少なくとも改善されるポートフォリオであるか又は完全に現金からなるポートフォリオであるか、その両方の組み合わせである。
【0022】
本発明の文脈において、「適性」とは、以下でより詳しく説明する多数の適性要因の集合、好ましくは加重集合(weighted aggregate)として計算され得る。要因は、それぞれが評価されたポートフォリオの異なる基準の尺度となり得る数学関数を含み得る。要因の重みは、それぞれの文脈に基づいて決定され得る。これらの要因のそれぞれは、総適性スコアのパラメータであってもよいため、それらの間にはトレードオフが存在し得る。
【0023】
遺伝的アルゴリズムは、制約最適化問題及び非制約最適化問題の双方を解決するための方法を含んでもよく、生物学的進化を推進するプロセスである自然選択に基づき得る。遺伝的アルゴリズムは、本願でポートフォリオと呼ぶ個々の解の集団を繰り返し修正するように構成されることが好ましい。各ステップで、遺伝的アルゴリズムは、親として設定される現在の集団内でより適性が高い個々のポートフォリオを選択し、次の世代のポートフォリオを生成するために、それらを用いて子孫、例えば子ポートフォリオを生成するように構成されている。世代を重ねるにつれて、集団は改善された又は最適な解に向かって「進化」する。
【0024】
ポートフォリオの構築のために、アルゴリズムは進化の3つの主要な原理、すなわち「交差」、「変異」及び「選択」を適用する。鍵となる仮定の1つは、この発見的アプローチは、潜在的に膨大な量の潜在的解にもかかわらず、解空間/曲面内で大域的最適解を見つけることができるということである。解空間はn次元空間であり、nは評価される適性要因の数である。その空間内では、投資選択のための又は実際には複雑な状況に関連する任意の選択のための制限/限定に応えるために、特定の制約を課すことができる。
【0025】
ポートフォリオは、所定の適性基準に従って、それらの適性に基づいて評価される。最適化プロセスは、投資家の現在のポートフォリオを含み得る初期入力ポートフォリオを出発点としてとり、その適性を評価できる。遺伝的最適化プロセスは、より良い又は最適な適性スコアを持つ代替的な金融ポートフォリオを見つけるのを試みるために用いられる。一般に、遺伝的最適化プロセスでは、母集団が大きく、ポートフォリオの世代の集合(次世代のポートフォリオ)が大きいほど、より良好な結果が得られるはずである。すなわち、これにより、解空間においてより良い解又は大域的最適解が見つかる可能性が高まるが、アルゴリズムのために追加のコンピュータによる計算/実行時間が代償としてかかる。変異のプロセス自体は、世代にかけて結果のばらつきを増加させる。解空間の曲面に次第では、これは、解を解曲面が非常に不安定な最適解に近づける可能性がより高いが(すなわち、大域的最適ではない局所最適から離れる可能性が高くなる)、解空間/解曲面が非常に滑らか/安定したより不安定な結果にもつながり得る。
【0026】
適性スコア自体は、個々の要因のスコアの加重和であることが好ましく、そのため、これらの要因のそれぞれについて設定された加重に依存する。特定の要因のための加重が大きいほど、一般に、この特定の適性基準を満たす解、すなわち、その特定の要因に対するスコアがより高い解を見つけることにより重点が置かれる。いくつかの要因は、相殺的な特性(例えば、既存の資産を可能な限り多く維持するための最適化対可能な限り多くの「好ましい」資産を有するための最適化)を有し、いくつかの要因は、特定のシナリオにおいて相互に増幅する特性を有し得る。しかしながら、一般に、これらの要因は、大抵独立し、相関関係がないものになるように設計されている。つまり、入力がわずかに変化された場合、出力は回帰の観点から見て安定していなければならない。
【0027】
図1を参照して、本発明の方法を適用可能なコンピュータベースのシステム20の第1の実施形態の概略図を一例として示す。コンピュータベースのシステム20は、インターネット24等の通信ネットワークによってサーバシステム26に接続された複数のクライアント装置12を含む。クライアント装置12は、サーバシステム26に直接接続されてもよいし、金融アドバイザーシステム又はブローカーシステム等の中間システム28を介して接続されてもよい。クライアント装置12は、個人投資家によって操作される装置に限定されず、機関投資家、アドバイザー投資家又は資産ポートフォリオに投資したいと望む他の第三者を代表し得る。
【0028】
本明細書に記載の実施形態は、金融資産を管理するためのコンピュータベースのシステムを含むが、本発明の概念は、使用又は実施が複数の制約及び/又は評価の対象となる資産の管理又は使用又は実施が複数の制約及び/又は評価要因の対象になる任意の解の集団に適用され得る。そのため、本発明の概念は、保険見積りを最適化するために、キャッシュフロー管理及び/又は予測を最適化するために、複雑な工学的な問題等の技術的問題に対する技術的解決策の集団を最適化するために、コンピュータベースのシステムにおいて実施でき得る。例えば、そのような工学的な問題の1つは、核融合反応器チャンバ内でのプラズマ発生及び/又は流れの管理を最適化することであり得る。
【0029】
サーバシステム26それ自体は、金融資産を金融機関22等から購入又は販売できる1つ以上のディーラー又はブローカーシステム30に接続されている。サーバシステム26は、プロセッサ34及び少なくとも1つのメモリ36を含み、少なくとも1つのメモリ36は、プロセッサ34によって実施された場合に、プロセッサ34に本明細書に記載の本発明の方法を実施させるとともに、クライアント装置12によりアクセス可能なグラフィカルユーザーインターフェースを生成させる機械可読能命令を記憶する。サーバシステム36は、クライアントのアカウントデータ、ファンド資産データ、取引データ及びサーバシステム36の機能に必要な他の全てのデータを記憶するためのシステムデータベース38を含む。システムデータベース38は、サーバ36内で実施されてもよいし、インターネット24等の通信ネットワークを介してサーバ36に接続される別個の装置を含み得る。加えて、
図1のシステムは、サーバシステム26、アドバイザーシステム28、ブローカーシステム30及びクライアント装置12にリアルタイムの又は準リアルタイムの資産評価データを提供するための1つ以上のマーケット情報データベース40を含み得る。いくつかの実施形態では、ブローカーシステム30がリアルタイムの又は準リアルタイムの資産評価データを提供する。
【0030】
システム26のプロセッサ34は、複数のクライアント装置12から入力データを受信し、システムデータベース38からリアルタイムの又は準リアルタイムの金融データを受信するように構成されている。
【0031】
クライアント装置12は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン又はクライアント(投資家)がそれらの金融投資を管理するためのサーバシステムのグラフィカルユーザーインターフェースへのアクセスを提供する任意の他の好適なクライアント装置12を含み得る。システム26は、前記クライアント装置12が好適な通信ネットワーク24を介してシステム26と交信することを可能にするために、任意の好適な使用可能な電子処理装置に好適なグラフィカルインターフェースを提供できる。システム26は、インターネット24等のコンピュータネットワークを介して通信することが好ましいが、いくつかの実施形態では、プライベート通信ネットワークが利用され得る。
【0032】
プロセッサ34は、好ましくは、一式のパラメータ及び/又は制約に基づいて、クライアント装置12のためにポートフォリオを含む資産の組み合わせを自動的に特定するように構成されていることが好ましい。パラメータ及び/又は制約は、クライアント装置12によって入力され得る。パラメータ及び/又は制約は、とりわけ、1つの投資の最大ウェイト、資産クラスの最大ウェイト、通貨ウェイト、商品リスク格付け、投資家リスク発生、通貨タイプ、最大総投資額、各商品毎の最小投資額のうちの1つ以上を含み得る。ポートフォリオの適性スコアを決定するためのパラメータ、例えば、評価要因は、資産クラス配分要因(ACA)、資産相関要因(AC)、優先資産要因(PA)、既存資産の再利用(REA)、ポートフォリオパフォーマンス要因(PP)、ポートフォリオ変動率要因(PV)、優先通貨要因(PC)、FX最小化要因(FXM)、投資指向要因(IP)及びシャープレシオ要因(SR)のいずれか1つ以上を含み得る。本発明の方法の1つの目的は、前記一式のパラメータ及び/又は制約内で最適なポートフォリオ(金融資産の組み合わせ)を見つけることである。
【0033】
プロセッサ34は、過去のリスク及びリターンデータに基づいて資産の初期ポートフォリオの組み合わせを決定することによって又は既存のポートフォリオを用いることにより、クライアント装置12のためにポートフォリオを含む資産の組み合わせを自動的に特定するように構成され得る。
【0034】
図2を参照して、本発明の方法が実施され得るコンピュータベースのシステム100の第2の実施形態の概略図を示す。コンピュータベースのシステム100は、本発明の方法を他の資産管理機能に適用することができる仮想ファンドシステム100を含む。仮想ファンドとは、ミューチュアルファンドの資産保有の制約なしに、投資戦略の遂行において金融資産を取引するために、投資家の資金をプールする点で、ミューチュアルファンドのように活動するファンドを意味する。仮想ファンドシステム100(以下では「vファンド」システム100という)は、インターネット114等の通信ネットワークによってvファンドサーバシステム116に接続される複数のクライアント装置112を含む。クライアント装置112は、サーバシステム116に直接接続されてもよいし、金融アドバイザーシステム又はブローカーシステム等の中間システム118を介して接続されてもよい。クライアント装置112は、個人投資家によって操作される装置に限定されず、機関投資家、アドバイザー投資家又はvファンド101への投資を望む他の第三者の代表であり得る。
【0035】
vファンドサーバシステム116それ自体は、vファンド101が金融資産を金融機関22等から購入又は販売できる1つ以上のディーラー又はブローカーシステム120に接続されている。vファンド101により管理される金融資産は、投資家の投資金の額に比例して投資家が所有する。vファンドサーバシステム116は、プロセッサ124及び少なくとも1つのメモリ126を含み、少なくとも1つのメモリ126は、プロセッサ124によって実施された場合に、プロセッサ124に本明細書に記載の本発明の方法を実施させるとともに、クライアント装置112によりアクセス可能なグラフィカルユーザーインターフェースを生成させる機械可読能命令を記憶する。vファンドサーバシステム116は、クライアントのアカウントデータ、ファンド資産データ、取引データ及びvファンドサーバシステム116の機能に必要な他の全てのデータを記憶するためのシステムデータベース128を含む。システムデータベース128は、サーバ116内で実施されてもよいし、インターネット114等の通信ネットワークを介してサーバ116に接続される別個の装置を含み得る。加えて、
図2のシステムは、vファンドサーバシステム116、アドバイザーシステム118、ブローカーシステム120にリアルタイムの又は準リアルタイムの資産評価データを提供するための1つ以上のマーケット情報データベース130を含み得る。いくつかの実施形態では、ブローカーシステム120がリアルタイムの又は準リアルタイムの資産評価データを提供する。
【0036】
図2の実施形態では、vファンドサーバシステム116は、クライアント装置112を用いる複数の投資家に代わって1つの仮想金融資産ファンド(vファンド)101を管理するのに対して、
図3の実施形態では、後述するように、サーバシステムは複数のvファンドを管理する。システムのプロセッサ124は、複数のクライアント装置112から入力データを受信し、システムデータベース128からvファンド101のポートフォリオにおいて保有する現在の金融資産を定義するリアルタイム又は準リアルタイムのデータを受信するように構成されている。これに対応して、プロセッサ124は、受信されたクライアント装置の入力データに応答して、vファンドポートフォリオ内で保有する金融資産残高を調整する。次に、各クライアント装置112のために、各クライアントの投資家アカウントをファンドで更新するデータを生成して、現在前記ファンドで保有されているのと同じ調整資産を各クライアントの投資額に応じて比例的に前記クライアントアカウントにおいて再現する。投資家のために生成されたデータは、直ちに前記投資家のクライアント装置112に送られるか又は投資家が次にシステム116にサインインしたときに送られる。いずれの場合においても、データは、ファンド101によって運用されるどの資産が、前述及び後述の技術的利益を伴って、その投資家によって所有されるかを定義する。
【0037】
クライアント装置112は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン又はクライアント(投資家)がそれらの金融投資を管理するためのvファンドシステムのグラフィカルユーザーインターフェースへのアクセスを提供する任意の他の好適なクライアント装置12を含み得る。システム116は、前記クライアント装置112が好適な通信ネットワーク114を介してシステム116と交信することを可能にするために、任意の好適な使用可能な電子処理装置に好適なグラフィカルインターフェースを提供できる。システム116は、インターネット114等のコンピュータネットワークを介して通信することが好ましいが、いくつかの実施形態では、プライベート通信ネットワークが利用され得る。
【0038】
より具体的には、プロセッサ124は、vファンドポートフォリオにおいて保有する各金融資産及び市場における他の金融資産の現在価値を定義するリアルタイム又は準リアルタイムのマーケットデータを受信するように構成されていることが好ましい。そのため、プロセッサ124は、vファンドポートフォリオにおいて保有する現在の金融資産を定義する受け取った前記クライアント入力データ及び前記マーケットデータを処理して、(i)売却すべき資産の売り注文及び受信したマーケットデータに基づいてそのような注文が実行された場合に期待される価値及び(ii)購入すべき資産の買い注文及び受信したマーケットデータに基づいて予測されるコストを定義するデータを生成し得る。プロセッサ124は、ブローカーシステム120等に前記売り注文を執行のために送信し、その後に執行された売り注文について実現された価値についてブローカーシステム120からデータを受信するように構成され得る。プロセッサ124は、ブローカーシステム120又はマーケット情報データベース130から新しいリアルタイム又は準リアルタイムのマーケットデータを受信し、これに応答して、売り注文の執行から期待される価値と実際に実現される価値との間の差を定義するデータを生成するようにも構成され得る。価格差データの生成には、外国為替レートデータが伴い得る。
【0039】
プロセッサ124は、価格差データ及び新たなマーケットデータを用いて、予め計算された買い注文を調整し、その後に調整された買い注文を執行するためにブローカーシステム120に出すように構成され得る。これに応答して、プロセッサ124は、ブローカーシステム120から新たに購入した資産を定義するデータを受信するように構成され得る。プロセッサ124は、新たに購入した資産を定義するデータと、ファンドポートフォリオ内に残っている資産を定義するデータとを組み合わせて、ポートフォリオの保有量を更新するように構成されている。
【0040】
そして、プロセッサ124は、各クライアント装置のために、各クライアントの投資家アカウントを更新するデータを生成し、前記クライアントアカウントにおいて、更新されたファンドポートフォリオで保有されているのと同じ更新された保有資産を各クライアントの投資額に応じて比例的に再現する。そのため、金融資産はファンドの投資マネージャーによって管理されるが、実際の資産は投資家が投資額に比例して直接所有する。これにより、クライアントの投資家と、それぞれのクライアントポートフォリオに割り当てられた金融資産との間に、直接的な所有リンクが生じる。技術的な利点は、投資家のクライアントポートフォリオの任意の時点における評価は、当該投資家が所有する資産の市場価値に直接リンクし、さらに、当該投資家は、多数のマーケットデータソースのいずれかを通じてリアルタイムで又は準リアルタイムで評価データにアクセスして、当該資産の評価を得ることができることである。したがって、頻繁に計算されないNAVと価値が結びついたミューチュアルファンドとは対照的に、本発明の構成は、ファンドの運用資産の投資家が直接所有する仮想ファンドに基づく投資ビークル及びリアルタイム又は準リアルタイム評価データへのアクセスを提供する。
【0041】
さらなる技術的な利点は、仮想ファンドが運用する資産の構成を表示するリアルタイム又は準リアルタイムデータに投資家がアクセスできる点である。
【0042】
よりさらなる技術的な利点は、仮想ファンドの投資マネージャーは、より簡単に且つ計算の複雑さが軽減された状態でリアルタイムのデータに基づいてファンドの運用資産の全体的な評価を中心的に特定できる点である。
【0043】
図2のシステムでは、クライアント装置112は、本発明の方法を実施するためにプロセッサ124によって処理される入力を提供し得る。
【0044】
図3を参照して、本発明の方法が適用され得るコンピュータベースのシステム200の第3の実施形態の概略図を示す。コンピュータベースのシステムは、仮想ファンドシステム200の別の実施形態を含む。この実施形態の「vファンド」システム200は、「vファンド」システム200が複数のvファンドs200a~200nを含む点を除いて、図
2のものと概ね同じである。前述のように、複数のクライアント装置212は、インターネット214等の通信ネットワークによってvファンドサーバシステム216に接続されている。クライアント装置212は、サーバシステム216に直接接続されてもよいし、金融アドバイザーシステム又はブローカーシステム等の中間システム218を介して接続されてもよい。vファンドサーバシステム216自体は、vファンドのマネージャーが複数のvファンドについて金融資産を金融機関
222等から購入及び売却する1つ以上のディーラー又はブローカーシステム
220に再び接続される。vファンドサーバシステム216は、プロセッサ
224及び少なくとも1つのメモリ
226を含み、少なくとも1つのメモリ
226は、プロセッサ
224によって実施された場合に、プロセッサ
224に本明細書に記載の本発明の方法を実施させるとともに、クライアント装置112によりアクセス可能なグラフィカルユーザーインターフェースを生成させる機械可読能命令を記憶する。vファンドサーバシステム216は、クライアントのアカウントデータ、ファンド資産データ、取引データ及びvファンドサーバシステム216の機能に必要な他の全てのデータを記憶するためのシステムデータベース
228を含む。加えて、
図3のシステムは、vファンドサーバシステム216、アドバイザーシステム218、ブローカーシステム
220にリアルタイムの又は準リアルタイムの資産評価データを提供するための1つ以上のマーケット情報データベース230を含み得る。
【0045】
図3の実施形態では、vファンドサーバシステム216は、クライアント装置212を用いる複数の投資家に代わって複数のvファンドs200a~200nを管理する。システムのプロセッサ
224は、複数のクライアント装置212から入力データを受信し、システムデータベース
228からvファンド200a~200nの複数のポートフォリオにおいて保有する現在の金融資産を定義するリアルタイム又は準リアルタイムのデータを受信するように構成されている。これに対応して、プロセッサ
224は、受信されたクライアント装置の入力データに応答して、複数のポートフォリオ内で保有する金融資産残高を調整する。次に、各クライアント装置112のために、各クライアントの投資家アカウントをファンドで更新するデータを生成し、各クライアントの投資額に応じて、現在複数のvファンドポートフォリオで運用されているのと同じ調整資産を前記クライアントアカウントにおいてに各クライアントの投資額に応じて比例的に再現する。
【0046】
より具体的には、プロセッサ224は、複数のファンドポートフォリオにおいて保有する各金融資産及び好ましくは市場における他の金融資産の現在価値を定義するリアルタイム又は準リアルタイムのマーケットデータを受信するように構成されていることが好ましい。プロセッサ224は、複数のvファンドポートフォリオにより運用されている保有する現在の金融資産を定義する受け取った前記クライアント入力データ及び前記マーケットデータを処理して、(i)売却すべき資産の売り注文及び受信したマーケットデータに基づいてそのような注文が執行された場合に期待される価値及び(ii)購入すべき資産の買い注文及び受信したマーケットデータに基づいて予測されるコストを定義するデータを生成し得る。プロセッサ224は、ブローカーシステム220に前記売り注文を執行のために送信し、その後に執行された売り注文について実現された価値についてブローカーシステム220からデータを受信するように構成されている。プロセッサ224は、ブローカーシステム220又はマーケット情報データベース230から新しいリアルタイム又は準リアルタイムのマーケットデータを受信するようにも構成され得る。プロセッサ224は、売り注文の執行から期待される価値と実際に実現される価値との間の差を定義する。プロセッサ224は、価格差データ及び任意の新たなマーケットデータを用いて予め算出した買い注文を調整し、その後に調整した買い注文を執行のためにブローカーシステム220に提出する。これに応答して、プロセッサ224は、ブローカーシステム220から新たに購入した資産を定義するデータを受信し、新たなに購入した資産のどの部分を複数のvファンドポートフォリオのうちのどれに割り当てるべきかを受信したデータから決定する。
【0047】
そして、プロセッサ224は、新たに購入した資産の前記部分を、それぞれのvファンドポートフォリオに割り当てて、新たに購入した資産の前記部分を定義するデータを、前記vファンドポートフォリオにおいて残っている資産を定義するデータとを組み合わせて、保有ポートフォリオを更新するように構成されている。そして、プロセッサ224は、各クライアント装置のために、各クライアントの投資家アカウントを更新するデータを生成し、前記クライアントアカウントにおいて、複数のvファンドで運用されている更新された保有資産と同じ資産を各クライアントの投資額に応じて比例的に再現する。
【0048】
図3のシステムでは、クライアント装置212は、本発明の方法を実施するためにプロセッサ224によって処理される入力を提供し得る。
【0049】
本発明の実施形態によって対処される1つの技術的課題は、ファンド型の投資ビークルのクライアント投資家に、投資額の評価データへのリアルタイムアクセスをどのように与えるかである。技術的解決方法は、各クライアント投資家のためにデータを生成して各クライアント投資家アカウントを更新し、複数のvファンドポートフォリオによって運用される更新された保有資産と同じ資産を、クライアント投資家の投資額に比例してクライアントアカウントにおいて再現することである。これは、vファンドにより運用される金融資産のクライアント投資家による直接的な所有リンクとともに、それによってリアルタイム又は準リアルタイムの評価データへのアクセスを提供する能力を作り出す。
【0050】
一旦システムに接続されると、すべての参加者は、それによって提供される高められた接続性の恩恵を受ける。クライアントは、アカウントにおけるすべての投資に関する最新情報を入手でき、通常はアクセスできない質の高いマネージャーにアクセスすることができる。アドバイザーは、ポートフォリオのカスタマイズやvファンドシステムを通じて口座から収益をあげることができるため、運用資産残高(AUM)ベースの手数料をチャージできる。金融仲介機関は、集中リスクモデルに基づいて、自社で調査及び合理化した商品販売で収益を上げることができる。銀行等の他の金融機関は、システムにリンクされた全てに追加の金融関連商品(例えば、クレジットカード、住宅ローン、保険)を販売することができる。世界の遠隔地の投資マネージャーは、物理的な制約及び/又は規制上の障害のために、これまで不可能であった地域において新たなクライアント層を開拓することができる。
【0051】
図4は、評価されるべき2つの適性要因についての数学的解空間300を一例として示す概略図を提供する。解空間300は、数多くの制約によって制限されているため、線310によって境界される実現可能な解領域300Aは、解空間300の全領域よりも小さい。この例では、ポートフォリオAは、最良の適性スコアを有する最適解を含む最大値を占めるポートフォリオを構成する。これとは対照的に、ポートフォリオBは、実際には、下位解、すなわち、実現可能な解領域300Aにおいて最高適性スコアを持たない解を含む場合に、解空間300の限定された視野を有する一部の観察者にとって最適解を構成するものとして見え得る極大値を占める。ポートフォリオCは、実現可能な解領域300A内で非最適解であるのに対して、ポートフォリオDは、実現可能な解領域300Aの外にあるため、有効な解ではなく、いかなる考慮の対象外となり得る。
【0052】
図5は、入力400、最適化プロセス410及び出力420を示す、本発明の一般的なプロセスの概略図を提供する。入力は、ユーザーによってクライアント装置12、112、212(
図1~
図3)上で入力され得る。入力は、とりわけ、ユーザーの固有識別子(ID)、セッションのために選択された通貨、選択されたタイプのリスク評価及びユーザーの居住国等のセッション関連情報401を含み得る。ユーザー又は顧客情報402は、ユーザーのリスクプロファイル、ユーザーが選好する通貨、集中のカテゴリ、集中限度、推奨の種類、グロース及び/又はインカムに関するユーザーの基準を含み得る。さらなる入力は、リスクレベル、通貨、価格、外国為替換算レート、資産通貨の現在の金額及び凍結金額、収益率(ROI)、キャッシュリスククラス等のユーザーの投資目標を含むユーザーの現在のポートフォリオ情報403を含み得る。この結果、ユーザー情報402及び現在のポートフォリオ情報403から複数の制約を導き出すことができる。さらなる入力情報は、適性パラメータ情報404及び適性パラメータ重み405を含み得る。適格商品情報405も入力され得る。
【0053】
簡単に言えば、最適化プロセス410は、ポートフォリオ又は個体の集合をランダムに生成する第1のステップ411と、生成されたポートフォリオのそれぞれに適性テストを適用する第2のステップ412と、生成されたポートフォリオのうち、適性スコアが上位のものを含む一部のポートフォリオのみを維持する第3のステップ413と、適性スコアが上位のものを含む一部の生成されたポートフォリオを用いて、次世代のポートフォリオを「再生」、すなわち生成する第4のステップ414と、適性スコアで最高ランクの次世代のポートフォリオの改善が所定の値又は量を下回るまで第1~第4のステップを複数回繰り返す第5のステップ415とを含む。そして、最高ランクの次世代ポートフォリオは、ユーザーの新しいリバランスされたポートフォリオとして実施されるために出力420として選択され得る。ここで、出力データは、ユーザーID及びリバランス状態を含むセッション関連情報421、目標ID、シャープレシオ、ROI、適性スコア、適性関数名及び現在及びリバランスされたポートフォリオに対応する値及びポートフォリオ全体を含む成功シナリオ情報422を含み得る。出力420は、ユーザーのリバランスされたポートフォリオを定義する情報423を含んでもよい。必要に応じて、失敗シナリオ出力情報424も提供され得る。
【0054】
図6は、第1世代のポートフォリオを生成するための方法500を示す。本方法は、初期資産ポートフォリオ501から始まることが好ましいが、これは必須ではない。初期資産ポートフォリオ501は、ユーザーの又はファンドの既存のポートフォリオを含み得る。あるいは、初期資産ポートフォリオ501は、空のポートフォリオ、現金のみのポートフォリオ又は現金及び資産の組み合わせを含み得る。現金は資産として取り扱うことができる。
図6において、初期資産ポートフォリオ501は、3つの資産A、B及びCを含み、各資産は、ポートフォリオ501内でそれぞれパーセント比重を有する。Aの比率は57%、Bの比率は12%、Cの比率は31%である。前記資産A、B又はCのうちの1つは現金を含み得る。いずれにせよ、3つの資産A、B及びCのパーセント比重は100%になる。
【0055】
初期資産ポートフォリオ501は、第1世代のポートフォリオを生成するために、複数の利用可能な資産503の全部又は一部を形成するものとみなされる。複数の利用可能な資産503には、第1世代のポートフォリオ506を生成するために用いることができる数多くの他の適格資産502が含まれ得る。この例では、他の適格資産502は資産X、Y及びZを含む。そのため、複数の利用可能な資産503は資産の一覧を含み、前記リスト503のリストからランダムに選択し、設定された限度内で重さをランダムに割り当てることによって、生成された第1世代のポートフォリオ506に含まれ得る。
【0056】
複数の利用可能な資産503において、資産A、B及びCのそれぞれは、初期ポートフォリオ501における当初のパーセント比重の最大値に限定されるが、より低いか又はより高い最大値が適用され得る。また、複数の利用可能な資産503において、他の適格資産502のX、Y及びZのそれぞれは100%のパーセント比重に限定されるが、より低い最大限度がこれらの資産に適用され得る。
【0057】
方法500は、複数の利用可能な資産503から複数の第1世代のポートフォリオ505を生成する。第1世代のポートフォリオ505のそれぞれは、前記複数の利用可能な資産503のうちの1つ以上をランダムに選択し、ランダムに選択された資産のそれぞれに対してランダムなパーセント比重(ランダムなパーセント比重の合計は100%に等しくなるように構成される)を適用するステップ504によって生成される。複数の利用可能な資産503からランダムに選択されたいずれかの資産に対するランダムに選択されたパーセント比重は連続した値の範囲からランダムに選択され、該範囲はその下限はゼロであることが好ましく、その上限は複数の利用可能な資産503におけるその資産の最大限度であることが好ましい。しかしながら、資産のいずれかについて、の連続する範囲のパーセント比重の異なる下限及び上限を適用してもよい。一例として、
図6は、ランダムに生成された第1世代のポートフォリオのうちの、パーセント比重が異なる資産A、B、X及びYを含む第1のポートフォリオ505を示す。ステップ504を繰り返して、所定の数の第1世代のポートフォリオ505がランダムに生成される。
【0058】
図7は、
図6の方法500を資産A及びBのランダム選択に関して一例としてより詳細に示す。方法500は、空の第1世代のポートフォリオ505から始まる。第1の資産507は、利用可能な資産503のリストからランダムに選択される。この場合、第1のランダムに選択された資産507はAである。ランダムに選択されたパーセント比重が資産Aに適用され、前記ランダムに選択されたパーセント比重は、下限がゼロで上限が57%の連続した範囲から選択される。この場合、第1の資産507(A)に対するランダムに選択されたパーセント比重は、その許容範囲内である36.7%である。資産Aが第1のランダムに選択された資産を含むにも関わらず、将来のランダム選択のために利用可能な資産503のリストから取り下げられることはない。しかしながら、資産Aの利用可能な最大パーセント比重は57%であり、資産Aに既に適用されたランダムに選択されたパーセント比重は36.7%であるため、利用可能な資産503のリストにおいて資産Aに許容される最大パーセント比重は20.3%に減らされることにより、第1世代のポートフォリオ506において資産Aがさらないランダムに選択された場合にそのパーセント比重が57%を超える可能性を防止する。したがって、利用可能な資産503のリストは、
図7の503Aで示すように修正される。
【0059】
第1世代のポートフォリオ506のための第1のランダムに選択された資産507は、1回以上のランダムな選択を通して第1世代のポートフォリオ505の57%を超えることができない資産Aを含んでいたため、利用可能な資産503Aのリストから1つ以上の他の資産をランダムに選択するプロセスを続ける必要がある。これとは対照的に、例えば、リスト503からの第1のランダムに選択された資産が資産Xであった場合、この資産のランダムに選択されたパーセント比重を100%とすることができるため、第1世代のポートフォリオ505のうちのこの特定のもの生成を完了することが可能できる。
図7に示されるように、資産Bは、リスト503Aからの第2のランダムに選択された資産508である。この場合、利用可能な資産503Aのリストにおいて、資産Bのために利用可能な最大パーセント比重は12%であるが、この例では、第2の選択された資産508(B)のためにランダムに選択されたパーセント比重は4.6%である。その結果、利用可能な資産のリスト503Aは、資産Bの比率の最大値7.4%に限定されたリスト503Bを提供するように修正される。
【0060】
リスト503Bからの資産の次のランダム選択では、資産Aが再び選択され、今回は9.3%がパーセント比重としてランダムに割り当てられた。この結果、利用可能な資産のリスト503Bは、資産Aのパーセント比重の最大値が11%に限定されたリスト503Cを提供するために修正される。ポートフォリオ505は現在資産Aを46%、資産Bを4.6%有しているため、修正されたリスト503Cから資産をさらにランダムに選択する必要がある。資産をランダムに選択し、パーセント比重を許容限度内でランダムに割り当てるプロセスは、ポートフォリオ505が
図7の505Aに示すように満たされるまで続けられる。
【0061】
好ましい実施形態では、生成されるべき第1世代のポートフォリオ505の数は256であることが好ましく、この数は、次世代のポートフォリオの各々においても繰り返されることが好ましいが、世代毎に他の所定の数のポートフォリオが選択されてもよいことが分かる。いくつかの実施形態では、ユーザーの又はファンドの既存のポートフォリオの等の初期ポートフォリオは、第1世代のポートフォリオ505のうちの第1のポートフォリオを含む。各世代のポートフォリオのために所定数のポートフォリオを選択することは、経験豊かなスタッフによる定性的及び/又は定量的評価によって決定され得る。
【0062】
利用可能な資産のリストが、初期ポートフォリオ及び他の適格資産のリストからn個の資産を含む場合、n個の資産のそれぞれからN個の二極化されたポートフォリオ(polarized portfolios)を生成することが可能である。二極化されたポートフォリオは、1つの適格資産のみを、その対応する最大パーセント比重で満たすことによって作成される。ポートフォリオが完全に満たされていない場合は、ポートフォリオが完全に満たされるまで、利用可能な資産リストからの他の資産を用いて、ランダムプロセスでポートフォリオを満たす。
【0063】
第1世代のポートフォリオ505が生成されると、複数の第1世代のポートフォリオ505のそれぞれについて適性スコアが算出される。各第1世代のポートフォリオ505のためのスコアは、複数の異なる評価要因の集合体を含む。集合体は、複数の異なる評価要因の重み付けされた集合体であることが好ましい。適性スコアの算出の例を
図8に示す。
【0064】
図9は、256個の第1世代のポートフォリオ505を、その適性スコアに従ってどのようにランク付けすることができるかを示す。
図9の例では、256個の第1世代のポートフォリオのうちの下位50%が破棄されるのに対して、上位50%が複数の子ポートフォリオの生成のための親ポートフォリオとして選択される。
【0065】
図10は、親ポートフォリオ601として選択された128個の第1世代のポートフォリオを用いて、子ポートフォリオ602を好ましくは同数(128)の生成する方法600を示す。各子ポートフォリオ602は、選択された128個の親ポートフォリオのうちのランク付けリスト603のなかの2つの親ポートフォリオ601によって生成される。各子ポートフォリオ602は、ランク付けリスト603における2つの隣接する親ポートフォリオ601によって生成されることが好ましい。例えば、第1の親ポートフォリオが第2の親ポートフォリオに、すなわち、ランク付けリスト603における次の隣接する親ポートフォリオと組み合わされ、第2の親ポートフォリオが、第3の親ポートフォリオ601と組み合わされる。しかしながら、第128の子ポートフォリオを作成するには、第128の親ポートフォリオは新たに生成される親ポートフォリオを組み合わせられることが好ましいが、いくつかの実施形態では、第1~第126の親ポートフォリオのうちのランダムに選択された1つとを組み合わされた第128の親ポートフォリオから第128の子ポートフォリオを作成できる。
【0066】
第1の親ポートフォリオ601A及び第2の親ポートフォリオ602Aから第1の子ポートフォリオ602を生成することを例に取った場合、第1の親ポートフォリオ601A及び第2の親ポートフォリオ601Bの資産が組み合わされて利用可能な資産のリスト604が作られ、
図7に示すものと概ね同様の方法で、リスト604から資産をランダムに選択し、リスト604の資産についての許容可能なパーセント比重範囲からパーセント比重値をランダムに選択して第1の子ポートフォリオ602が生成される。方法600を繰り返すことにより、127個の第1の子ポートフォリオ602を生成することができる。最後の、すなわち、第128の子ポートフォリオ602は、資産及びパーセント比重値を同様にランダム選択することにより生成されるが、第128の親ポートフォリオ601と、新たに生成された親ポートフォリオ又は第1~第126の親ポートフォリオ601のうちの1つをランダムに選択したものと組み合わせたものを通じて生成される。
【0067】
現在、128個の親ポートフォリオ601及び128個の子ポートフォリオ602の全ては共に次世代の一式のポートフォリオ710を含む。
【0068】
次世代の一式のポートフォリオ710のいくつかが選択されて変異プロセスを受けてもよく、それにより、該一式のうちの選択されたポートフォリオについて、該ポートフォリオの少なくとも1つの資産がランダムに選択され、該ランダムに選択された資産の全部又はランダムに選択されたパーセント比重部分が、既存のポートフォリオの全て資産の群及び/又は他の適格資産の群を含む資産の集合からランダムに選択された別の資産に置き換えられる。変異プロセスを受けるために選択された次世代の一式のポートフォリオ710からのポートフォリオは、次世代の一式のポートフォリオ710のうちの次のポートフォリオのそれぞれに、予め設定された変異率に従ってバイナリ値を割り当てることによって選択され得る。割り当てられたバイナリ値は、ポートフォリオが変異プロセスのために選択されるか否かを決定する。変異のために選択されるバイナリ値が割り当てられる確率は、予め設定された変異率と等しくなる。次世代の一式のポートフォリオ710を含む128個の親ポートフォリオ601の全て及び128個の子ポートフォリオ全てが、変異選択プロセスの対象となり得る。
【0069】
変異選択700及び変異プロセス750のそれぞれは
図11に示されている。変異選択プロセス700において、256個の次世代ポートフォリオ710のそれぞれは、「0」又は「1」のバイナリ値が割り当てられ、「0」は当該ポートフォリオが変異プロセス750に供されないことを示し、「1」は選択されたポートフォリオが以下で説明するように変異されることを示す。次世代ポートフォリオ710に「1」が割り当てられる確率は予め設定された変異率に等しく、変異率は熟練人材によって選択されるか又は計算され得る。
【0070】
変異プロセス750では、選択された次世代ポートフォリオ710について、好ましくは前記選択された次世代ポートフォリオ710の資産及び/又は他の適格資産X、Y、Zを含む利用可能な資産のリスト751が形成される。変異プロセス750は、前記選択された次世代ポートフォリオ710の資産から資産をランダムに選択するステップを含む。この場合、選択されたポートフォリオ710からの資産Aがランダムに選択される。変異プロセス750の次のステップでは、前記ランダムに選択された資産Aのランダムに決定された部分が、利用可能な資産のリスト751からランダムに選択された資産に置き換えられるように選択される。この場合、資産Xがリスト751から選択され、資産Aの一部を置き換えることにより、選択されたポートフォリオ710の変異版752を形成し、変異版752は、変異前の資産A、B及びCのみではなく、資産A、B、C及びXの組み合わせを含む。
【0071】
次世代のポートフォリオ710は、一部変異されたポートフォリオ752を含む。結果として得られた次世代のポートフォリオ710、752は、本明細書で前に記載した方法によってさらに別の次世代のポートフォリオを作るために適性評価及び選択プロセスに供される。これは、次世代のポートフォリオ710、752のそれぞれについて適性スコアを算出すること、前記次世代のポートフォリオ710、752をそれぞれの適性スコアによってランク付けすること、次世代のポートフォリオ710、752のサブセットをそれぞれのスコアに基づいて次世代の親ポートフォリオとして選択すること、該次世代の親ポートフォリオを用いて複数の次世代の子ポートフォリオを生成することを伴う。前記次世代の親ポートフォリオ及び次世代の子ポートフォリオの一部を選択して変異プロセスに供することにより、さらに別の次世代のポートフォリオに至り得る。
【0072】
図12に示すように、ランク付けステップ、選択ステップ、生成ステップ及び次世代のポートフォリオのそれぞれについてスコアの算出するステップは、最高ランクのポートフォリオについて算出された適性スコアの限界改善が複数回、例えば100回、好ましくは、該100回程度の繰り返しのうちの予め設定された数の後半、例えば10回(latter pre-set number, e.g., 10 of said 100 or so iterations)にわたって所定の量より小さくなるまで繰り返される。この点に到達すると、最高ランクのポートフォリオが実施のために選択され得る。
【0073】
「適性」、すなわち、総適性スコアは、以下でさらに述べる所与の金融資産の特定の基準に基づいて数学的に決定された式を含み得る多数の要因の加重集合として算出される。対応する重みは、最適化要求毎に独立して定義することもできるか又は普遍的に設定することもできる。全ての要因は、所与の資産の特定の面/財務的な品質基準を検討することによって、総適性スコアに独自に寄与する。ある要因は別の要因に対して相殺又は増幅する特徴を有し得るが、一般的には、それらの要因は資産の独立した/非相関の特性に基づくように設計される。これらの要因は最適化を受ける金融ポートフォリオに適用され、とりわけ株式、債券、ミューチュアルファンド、仕組債及び現金を含む金融ポートフォリオ内のすべての資産を考慮に入れることができる。各要因には、最適化プロセスに対するその要因の影響の大きさを決定する所与の重みが割り当てられることが好ましい。
【0074】
適性スコアのために考慮され得る要因は以下の通りである。
【0075】
1)資産クラスアロケーション要因(ACA)
ACAは、推奨されているポートフォリオが、資産クラスに対して所与の目標ポートフォリオ/目標状態アロケーションにどの程度従っているかを測定する。
【0076】
2)資産相関要因(AC)
ACは、ポートフォリオ内の資産の相関を測定する。
【0077】
3)優先資産要因(PA)
PAは、推奨ポートフォリオにおける優先資産(プレミア・ファンド)の使用を測定する。これは主に、売却/償還のための資産の特定のために利用される。
【0078】
4)既存資産の再利用要因(REA)
REAは、新規ポートフォリオのための投資家の既存資産の再利用を測定する。目的は、顧客のポートフォリオ内の資産の回転率を下げることであり、資産が顧客のポートフォリオに維持されるべきかどうかを評価するために主に用いられる。凍結資産は計算から除外される。
【0079】
5)ポートフォリオパフォーマンス要因(PP)
PPは、目標アロケーションポートフォリオのパフォーマンスを測定する。ポートフォリオパフォーマンスはポートフォリオ変動率と共に、複数の資産選択肢が利用可能な場合に、「買い」推奨のための実現し得る最適な資産を特定するのに役立つ。
【0080】
6)ポートフォリオ変動率要因(PV)
PVは、目標ポートフォリオのリスクを測定する。ポートフォリオ変動率はポートフォリオパフォーマンスとともに、複数の資産選択肢が利用可能な場合に、「買い」推奨のための実現し得る最適な資産を特定するのに役立つ。
【0081】
7)優先通貨要因(PC)
PCは、投資家が選好する安全通貨に適合する目標アロケーションポートフォリオの程度を測定する。
【0082】
8)外国為替最小化要因(FXM)
FXMは、外国為替(FX)取引を減らすことにより、推奨ポートフォリオの実施に伴うFXを最小化する。目標アロケーションにおける各通貨(現金及び当該通貨建ての有価証券)について、そのような通貨が既存のポートフォリオにどれだけ既に含まれているかの割合を測定する。
【0083】
9)投資選好要因(IP)
IPは、顧客の選好する「グロース」対「インカム」に対するポートフォリオの最適化を測定する。
【0084】
10)シャープレシオ要因(SR)
SRは、目標アロケーションポートフォリオのシャープレシオを測定する。シャープレシオは、超過収益を標準偏差で割ったもので与えられる。SRは、追加的な1単位の変動率のそれぞれを耐えることで得られる超過収益の量を表わす。
【0085】
適性スコア(FS)好ましくは下記のように計算される。
【0086】
【数1】
式中、
i=1、2、・・・n
F
iは対応する要因iの値であり、
w
iは要因iの対応する重みであり、
全ての要因は0.0~1.0に縮小される。
【0087】
検証結果
5つの異なる入力ポートフォリオを用いて、上述の方法を8149の異なるテストケースで検証した。適性スコアの改善は平均30%であった。検証には、パフォーマンス/応答時間の評価も含まれた。これは、所与のアプリケーションプログラムインタフェース(API)を介して要求を送信してから、応答を電子的に受信するまでの時間を測定する。一般に、このアルゴリズムは、ポートフォリオの規模が大きく、領域が大きくても非常に速く動作することが分かった。検査した8149件のシナリオでは、4秒以内に50%以上の応答が得られた。ポートフォリオの適性は世代とともに改善し、より初期の世代のポートフォリオにおける適性にはより大きなばらつきがあるのに対して、より後の世代のポートフォリオは概ね高い適性をもたらすことが分かった。
【0088】
本説明は本発明の原理を示す。そのため、当業者であれば、本発明の原理を具現化する本明細書に明示的に記載されていないか又は示されていない様々な構成を考え出すことができ、そのような構成は本発明の精神及び範囲内に含まれることが分かる。
【0089】
さらに、本発明の原理、態様及び実施形態並びにそれらの特定の例を記載する本明細書のすべての記述は、それらの構造的及び機能的な同等物の両方を包含することを意図する。加えて、そのような同等物は、現在知られている同等物及び将来開発される同等物、すなわち構造にかかわらず、同じ機能を実行するように開発された任意の要素の両方を含むことを意図する。
【0090】
図面及び前述の説明において本発明を詳細に図示及び説明してきたが、それらは例示的なものであって、本質的に限定するものではない。例示の実施形態のみを図示説明したが、本発明の範囲を何ら限定するものではないことが分かる。本明細書に記載の任意の特徴は、任意の実施形態と共に使用され得ることが分かる。例示の実施形態は互いに排他的でないか又は本明細書に記載していない他の実施形態を排除するものではない。したがって、本発明は、上述した例示の実施形態の1つ以上の組み合わせを含む実施形態も提供する。本明細書に記載の本発明の修正及び変形は、その精神及び範囲から逸脱することなく行うことができる。したがって、添付の特許請求の範囲によって示されるような制限のみが課されるべきである。
【0091】
以下の特許請求の範囲及び本発明の先の説明において、明示的な文言又は必要な暗示のために文脈上別異の解釈を要する場合を除き「含む」という用語は、包括的な意味で使用される。すなわち、記載された特徴の存在を特定するためであって、本発明の様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在又は追加を排除するものではない。
【0092】
何らかの先行技術の刊行物が本明細書において言及されている場合、そのような言及は、当該刊行物が当該技術分野における技術常識の一部を構成することを認めるものではないことを理解すべきである。