(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】有機化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 471/16 20060101AFI20240329BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20240329BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240329BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240329BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240329BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
C07D471/16 CSP
A61K31/4985
A61P43/00 111
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/18
(21)【出願番号】P 2020551313
(86)(22)【出願日】2019-03-21
(86)【国際出願番号】 US2019023350
(87)【国際公開番号】W WO2019183341
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-02-08
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ポン・リ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・チアン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・デイビス
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/132408(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/117514(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
式I
[式中、
R
1は、Hであり;
Zは、Oであり;
R
2およびR
3は、各々独立して、HおよびD(重水素)より選択され;そして
R
4からR
14は、各々独立して、HおよびDより選択される]
で示され、
遊離または塩形態であり、
ただし、
少なくともR
2
およびR
3
がDであるか、または
少なくともR
8
およびR
9
がDであるか、または
少なくともR
4
からR
7
の4つすべてがDである、
化合物。
【請求項2】
R
2がDであり、R
3がDである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
8
およびR
9
がDである、請求項
1に記載の化合物。
【請求項4】
R
4からR
7の4つすべてが、Dである、請求項
1に記載の化合物。
【請求項5】
R
8からR
9およびR
11からR
14の6つすべてが、Dである、請求項
1に記載の化合物。
【請求項6】
各々遊離または塩形態の
【化2】
【化3】
からなる群より選択される化合物。
【請求項7】
遊離または塩形態の
【化4】
で示される化合物。
【請求項8】
遊離または塩形態の
【化5】
で示される化合物。
【請求項9】
医薬的に許容される塩の形態である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
構造の1つ以上の指定される位置に重水素が80%超組み込まれている、請求項1~
9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
遊離または医薬的に許容される塩形態の請求項1~
10のいずれか一項に記載の化合物を、医薬的に許容される希釈剤または担体と混合されて含む、医薬組成物。
【請求項12】
筋肉内または皮下注射のための長時間作用型注射用として製剤化されている、請求項
11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
遊離または医薬的に許容される塩形態の請求項1~
10のいずれか一項に記載の化合物または請求項
11または
12に記載の医薬組成物を含む、中枢神経系障害の治療または予防のための医薬。
【請求項14】
障害が、肥満、不安、全般性不安、社交不安およびパニック障害、うつ病、難治性うつ病、大うつ病性障害、治療抵抗性うつ病、精神病、統合失調症、睡眠障害、性障害、片頭痛、頭痛、特発性疼痛、神経障害性疼痛、慢性疼痛、線維筋痛症、慢性疲労、広場恐怖症、社会恐怖症、認知症における激越、アルツハイマー病における激越、自閉症および関連する自閉症障害における激越、消化管障害、アルツハイマー病またはパーキンソン病における認知症;気分障害;オピエート依存、コカイン依存、アンフェタミン依存、および/またはアルコール依存、薬物またはアルコール依存からの離脱;過食性障害;強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)、強迫性ギャンブル障害、強迫性摂食障害、身体醜形障害、心気症、病的身繕い障害、窃盗症、放火症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、衝動制御障害、およびその組合せからなる群より選択される、障害からなる群より選択される、請求項
13に記載の医薬。
【請求項15】
障害が、セロトニン5-HT
2A、セロトニン再取り込みトランスポーター(SERT)、ドーパミンD
1および/またはD
2経路および/またはμ-オピオイド受容体に関連する障害である、請求項
13に記載の医薬。
【請求項16】
障害が、(1)うつ病に罹患している患者における精神病;(2)精神病に罹患している患者におけるうつ病;(3)精神病またはパーキンソン病に関連する気分障害;(4)精神病またはパーキンソン病に関連する睡眠障害;および(5)物質嗜癖、物質使用障害および/または物質誘発障害より選択される障害である、請求項
13に記載の医薬。
【請求項17】
中枢神経系障害が、強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)、全般性不安障害、社交不安障害、パニック障害、広場恐怖症、強迫性ギャンブル障害、強迫性摂食障害、身体醜形障害、心気症、病的身繕い障害、窃盗症、放火症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、衝動制御障害、および関連障害、およびその組合せより選択される障害である、請求項
13に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2018年3月23日出願の米国仮出願第62/647,488号に基づく優先権および利益を主張し、当該出願の内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、本明細書に記載する遊離、固体、医薬的に許容される塩および/または実質的に純粋な形態の特定の重水素化置換複素環縮合γ-カルボリン、ならびに5-HT2A受容体、セロトニントランスポーター(SERT)、ドーパミンD1および/またはD2受容体シグナル伝達系に関連する経路および/またはμ-オピオイド受容体に関連する疾患、例えば、不安、精神病、統合失調症、睡眠障害、性障害、片頭痛、疼痛を伴う状態(例えば頭痛、神経障害性疼痛、および急性鎮痛として)、線維筋痛症、慢性疲労、社会恐怖症、消化管障害、例えば消化管運動の機能不全および肥満;うつ病および気分障害、例えば精神病またはパーキンソン病に関連するもの;精神病、例えばうつ病に関連する統合失調症;双極性障害;薬物依存、例えばオピエート依存およびアルコール依存、薬物離脱症状;強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)、および関連障害;および他の精神および神経学状態などの疾患または障害の治療におけるその医薬組成物および使用方法、ならびに他の薬物との組合せに関する。いくつかの実施態様において、疾患または障害は、治療抵抗性うつ病、コカイン依存、および/またはアンフェタミン依存を含み得る。
【背景技術】
【0003】
置換複素環縮合γ-カルボリンは、中枢神経系障害の処置において5-HT2受容体、特に5-HT2A受容体のアゴニストまたはアンタゴニストであることが知られている。これらの化合物は、米国特許第6,548,493号;第7,238,690号;第6,552,017号;第6,713,471号;第7,183,282号;米国再発行特許第39680号および米国再発行特許第39679号に、5-HT2A受容体調節に関連する障害、例えば肥満、不安、うつ病、精神病、統合失調症、睡眠障害、性障害、片頭痛、頭痛に関連する状態、社会恐怖症、消化管障害、例えば消化管運動の機能不全、および肥満の処置に有用な新規な化合物として記載されている。米国特許出願公開第2010/113781号および第2004/209864号はまた、置換複素環縮合γ-カルボリンの製造方法、ならびに中枢神経系障害、例えば嗜癖行動および睡眠障害の制御および予防に有用なセロトニンのアゴニストおよびアンタゴニストとしてのこれらのγ-カルボリンの使用を開示している。
【0004】
また、米国特許出願公開第2011/071080号は、精神病およびうつ病性障害ならびに精神病またはパーキンソン病の患者における睡眠、うつ病性および/または気分障害の組合せの治療のための特定の置換複素環縮合γ-カルボリンの使用を開示する。精神病および/またはうつ病に関連する障害に加えて、この特許出願は、ドーパミンD2受容体に影響を及ぼすことなくまたは影響を最小限とし、これにより高い占有率のドーパミンD2経路に関連する副作用、または慣用の睡眠鎮静薬(例えばベンゾジアゼピン)に関連する他の経路(例えばGABAA受容体)の副作用(薬物依存、筋緊張低下、脱力、頭痛、かすみ目、回転性めまい、悪心、嘔吐、上腹部不快感、下痢、関節痛および胸部痛の発症を含むがこれらに限定されない)なしに睡眠障害の処置に有用な、5-HT2A受容体に選択的に拮抗する、低用量におけるこれら化合物の使用を開示し、クレームする。米国特許出願公開第2011/112105号はまた、これら置換複素環縮合γ-カルボリンのトルエンスルホン酸付加塩結晶の製造方法を開示する。
【0005】
関連する刊行物国際公開第2017/132408号および米国特許出願公開第2017/319586号は、上記刊行物で開示されている化合物の新規なオキソ代謝産物を開示している。これらのオキソ代謝産物は、セロトニン受容体阻害、SERT阻害およびドーパミン受容体調節を含む、親化合物の独特な薬理活性の多くを保持している。しかしながら、これらのオキソ代謝産物は、予想外にも、μオピエート受容体にて有意な活性を示すことが分かった。
【0006】
強迫性障害(OCD)および関連障害は、極めて一般的になっており、治療が困難である。OCDは、人々の約2.3%が生涯のある時点で発症すると推定され、所与の年の間に、世界中の人々の1.2%が障害に罹患していると推定される。OCDに罹患している人の半分は、20歳より前に症状を示し始め、これは、適切で効果的な教育を受ける能力に深刻な影響を及ぼし得る。しかしながら、効果的な治療がなければ、疾患は数十年持続し得る。薬理的OCD治療の中心となるものは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)によるものである。第2の治療法は、クロミプラミン、リスペリドン、クエチアピンおよびオランザピンなどの抗精神病薬によるものである。相当数の患者は、これらの薬物に反応しないか、またはこれらの薬物により引き起こされる副作用に対処できない。さらに最近では、オピオイド鎮痛薬のトラマドールがOCDの処置に有効であり得ることが報告されている。オピエートは、従来のOCD治療薬と全く異なる経路により作動し、それ故に従来のセロトニン性薬物を服用できないかまたはこれらの薬物が有効でない人に治療の可能性を提供する。しかしながら、強力なオピエート薬は耽溺性があり得て、その使用は一部の患者では禁忌であり得る。したがって、OCDおよび関連障害の新しい治療が必要に迫られたままである。
【発明の概要】
【0007】
以下に示す式AおよびBの化合物は、強力なセロトニン5-HT
2A受容体アンタゴニストおよびμオピエート受容体パーシャルアゴニストである。これらの化合物はまた、ドーパミン受容体、特にドーパミンD1受容体と相互作用する。
【化1】
式AおよびBで示される化合物およびその類似体は、中枢神経系障害の治療または予防に有用であるが、患者に投与されたとき、これらの化合物の治療濃度の改善または薬物動態分布または動態の改善を提供できる式AおよびBで示される化合物の同位体類似体などの類似体が当該技術分野において必要とされている。式AおよびBで示される化合物の重水素化類似体である式IおよびII以降で示される化合物を提供することにより、本開示はこれを満たすものである。その有用な代謝および薬物動態プロファイルにより、本開示の化合物は、患者に投与されたとき、長時間にわたる化合物AおよびBおよびその類似体の治療量濃度の改善を提供する長時間作用型または持続放出組成物としての製剤に特に適し得る。
【0008】
第1態様において、本開示は、式I:
【化2】
式I
[式中、
R
1は、C
1-4アルキル(例えばメチル)であり;
Zは、O、または-C(O)-であり;
R
2およびR
3は、各々独立して、HおよびD(重水素)より選択され;そして
R
4からR
14は、各々独立して、HおよびDより選択される]
で示され、
遊離または塩形態、例えば単離または精製された遊離または塩形態であり、
ただし、R
2からR
14の少なくとも1つは、Dである、化合物(化合物I)に関する。
【0009】
本開示は、
1.1 ZがOである、化合物I;
1.2 Zが-C(O)である、化合物I;
1.3 R
1がメチルである、化合物I、1.1または1.2;
1.4 R
2がHであり、R
3がDである、化合物1.1~1.3のいずれか;
1.5 R
2がDであり、R
3がDである、化合物1.1~1.3のいずれか;
1.6 R
2がHであり、R
3がHである、化合物1.1~1.3のいずれか;
1.7 R
4からR
7の任意の1つがDである、化合物1.1~1.6のいずれか;
1.8 R
4からR
7の任意の2つがDである、化合物1.1~1.6のいずれか;
1.9 R
4からR
7の任意の3つがDである、化合物1.1~1.6のいずれか;
1.10 R
4からR
7の4つすべてがDである、化合物1.1~1.6のいずれか;
1.11 R
8からR
14の6つすべてがHである、化合物1.1~1.10のいずれか;
1.12 R
8からR
14の任意の1つまたは2つがDである、化合物1.1~1.10のいずれか;
1.13 R
8からR
14の任意の3つまたは4つがDである、化合物1.1~1.10のいずれか;
1.14 R
8からR
14の任意の5つまたは6つがDである、化合物1.1~1.10のいずれか;
1.15 R
8からR
14の6つすべてがDである、化合物1.1~1.10のいずれか;
1.16 遊離形態の、化合物Iまたは1.1~1.15のいずれか;
1.17 塩形態、例えば医薬的に許容される塩形態の、化合物Iまたは1.1~1.15のいずれか;
1.18 固体形態の、化合物Iまたは1.1~1.15のいずれか;
1.19 実質的に純粋なジアステレオマー形態である(すなわち、他のジアステレオマーを実質的に含まない)、化合物Iまたは1.1~1.18のいずれか;
1.20 70%超、好ましくは80%超、より好ましくは90%超および最も好ましくは95%超のジアステレオマー過剰率を有する、化合物Iまたは1.1~1.18のいずれか;
1.21 構造の1つ以上の指定される位置に重水素が50%超(すなわち、50原子%超のD)、例えば60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、96%超、97%超、98%超または99%超組み込まれている、化合物Iまたは1.1~1.20のいずれか;
1.22 単離または精製された形態の、化合物Iまたは1.1~1.21のいずれか;
1.23 化合物が、
【化3】
【化4】
からなる群より選択される、化合物Iまたは1.1~1.22のいずれか;
1.24 化合物が、
【化5】
からなる群より選択される、化合物Iまたは1.1~1.22のいずれか;
1.25 化合物が、
【化6】
からなる群より選択される、化合物Iまたは1.1~1.22のいずれか
を含む、遊離または塩形態、例えば単離または精製された遊離または塩形態の、式Iの化合物の更なる例示的実施態様を提供する。
【0010】
第2態様において、本開示は、医薬的に許容される塩形態の前記化合物Iまたは1.1~1.25(以下まとめて、「式I以降の化合物」または「本開示の化合物」)の各々を提供する。本開示は、
2.1 塩が、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセチルサリチル酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などより選択される酸付加塩である、式I~II以降の化合物;
2.2 塩がフマル酸付加塩である、式I~II以降の化合物;
2.3 塩がリン酸付加塩である、式I~II以降の化合物;
2.4 塩がトルエンスルホン酸付加塩である、式I~II以降の化合物;
2.5 塩が固体形態である、2.1~2.4のいずれか
を含む、式I以降の化合物の更なる例示的実施態様を提供する。
【0011】
第3態様において、本開示は、化合物Iまたは1.1~1.25のいずれかによる化合物を、例えば医薬的に許容される希釈剤または担体と混合されて含む、医薬組成物(医薬組成物3)を提供する。本開示は、
3.1 式I以降の化合物が固体形態である、医薬組成物3;
3.2 式I以降の化合物が化合物2.1~2.5に記載されるように医薬的に許容される塩形態である、医薬組成物3または3.1;
3.3 組成物が本明細書に記載のデポー製剤である(例えば、組成物が例えば筋肉内または皮下注射のための、長時間作用型注射用として製剤化されている)、医薬組成物3または3.1~3.3のいずれか;
3.4 式I以降の化合物がポリマーマトリックス中である、医薬組成物3または3.1~3.4のいずれか
を含む、医薬組成物3の更なる例示的実施態様を提供する。
【0012】
更なる実施態様において、本開示の医薬組成物は、持続または遅延放出のためのものであり、例えばデポー製剤である。一の実施態様において、デポー製剤(デポー製剤3.3)は、好ましくは遊離または医薬的に許容される塩形態であって、好ましくは医薬的に許容される希釈剤または担体と混合されている、3.1~3.3のいずれかの医薬組成物であり、例えば注射可能なデポーとして持続または遅延放出を提供する。
【0013】
特定の実施態様において、デポー製剤3.3は、遊離塩基または医薬的に許容される塩形態、所望により結晶形態の化合物Iまたは1.1~1.25のいずれか1つによる化合物を含み、ここで、該化合物は、マイクロ粒子またはナノ粒子サイズ、例えば、0.5~100μm、例えば5~30μm、10~20μm、20~100μm、20~50μmまたは30~50μmの体積ベースの粒子径(例えば直径またはDv50)を有する粒子または結晶に粉砕されているかまたは結晶化される。このような粒子または結晶は、適切な医薬的に許容される希釈剤または担体、例えば水と組み合されて、注射用デポー製剤を形成し得る。例えば、デポー製剤は、4~6週間の治療に適した投与量の薬物を有する筋肉内または皮下注射に製剤化され得る。いくつかの実施態様において、粒子または結晶は、0.1~5m2/g、例えば0.5~3.3m2/gまたは0.8~1.2m2/gの表面積を有する。
【0014】
別の一実施態様において、本開示は、医薬組成物3または3.1~3.3のいずれかであり、式I~IV以降の化合物がポリマーマトリックス中である、医薬組成物3.4を提供する。一の実施態様において、本開示の化合物は、ポリマーマトリックス内に分散または溶解している。更なる実施態様において、ポリマーマトリックスは、デポー製剤において用いられる標準的ポリマー、例えばヒドロキシ脂肪酸のポリエステルおよびその誘導体より選択されるポリマー、またはアルキルα-シアノアクリレート、ポリアルキレンオキサレート、ポリオルトエステル、ポリカルボネート、ポリオルト-カルボネート、ポリアミノ酸、ヒアルロン酸エステルおよびその混合物のポリマーを含む。更なる実施態様において、ポリマーは、ポリ乳酸、ポリd,l-乳酸、ポリグリコール酸、PLGA50:50、PLGA85:15およびPLGA90:10のポリマーからなる群より選択される。別の一実施態様において、ポリマーは、ポリ(グリコール酸)、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-乳酸、前記の共重合体、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルトカルボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸-カプロラクトン)、ポリ無水物、および天然ポリマー、例えばアルブミン、カゼイン、およびワックス、例えばグリセロールモノおよびジステアレートなどより選択される。好ましい実施態様において、ポリマーマトリックスは、ポリ(d,l-乳酸-グリコール酸共重合体)を含む。
【0015】
(医薬)組成物3および3.1~3.4は、持続または遅延放出に特に有用であり、ここで、本開示の化合物は、ポリマーマトリックスの分解時に放出される。これらの組成物は、最大180日間、例えば約14から約30から約180日間にわたる本開示の化合物の制御および/または持続放出のために(例えばデポー組成物として)製剤化され得る。例えば、ポリマーマトリックスは、約30、約60または約90日間にわたって本開示の化合物を分解および放出し得る。別の一例において、ポリマーマトリックスは、約120または約180日間にわたって本開示の化合物を分解および放出し得る。
【0016】
さらに別の一実施態様において、本開示の医薬組成物、例えば本開示のデポー組成物、例えば医薬組成物3.3または3.4は、注射による投与のために製剤化される。
【0017】
第4態様において、本開示は、国際公開第2000/35419号(米国特許出願公開第2001/0036472号)および欧州特許出願公開第1539115号(米国特許出願公開第2009/0202631号)に記載の浸透圧による制御放出経口送達システム(OROS)において前記式I~IV以降の化合物を提供し、これら各出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。したがって、第4態様の一実施態様において、本開示は、(a)遊離または医薬的に許容される塩形態の式I~IV以降いずれかの化合物または前記の本発明の医薬組成物を含有するゼラチンカプセル;(b)カプセルから外側へ向かう順序で、(i)バリア層、(ii)膨張層および(iii)半透過層を含む、ゼラチンカプセル上に重ねられた多層壁;および(c)および壁を通って形成されているかまたは形成可能なオリフィスを含む、医薬組成物またはデバイス(医薬組成物P.1)を提供する。
【0018】
別の一実施態様において、本発明は、液体、遊離または医薬的に許容される塩形態の式I以降の化合物または本発明の医薬組成物、例えば医薬組成物3または3.1~3.4のいずれかを含有するゼラチンカプセルを含む医薬組成物であって、該ゼラチンカプセルが、ゼラチンカプセルの外表面に接触しているバリア層、バリア層に接触している膨張層、膨張層を包含する半透過層、および壁に形成されているかまたは形成可能な出口オリフィスを含む複合壁によって囲まれている、医薬組成物(医薬組成物P.2)を提供する。
【0019】
第4態様のさらに別の一実施態様において、本発明は液体、遊離または医薬的に許容される塩形態の式I以降の化合物または本発明の医薬組成物、例えば医薬組成物3または3.1~3.4のいずれかを含有するゼラチンカプセルを含む組成物であって、該ゼラチンカプセルが、ゼラチンカプセルの外表面に接触しているバリア層、バリア層に接触している膨張層、膨張層を包含する半透過層、および壁に形成されているかまたは形成可能な出口オリフィスを含む複合壁によって囲まれており、該バリア層が膨張層と出口オリフィスでの環境との間にシールを形成する、組成物(医薬組成物P.3)を提供する。
【0020】
第4態様のさらに別の一実施態様において、本発明は、液体、遊離または医薬的に許容される塩形態の式I以降の化合物または本発明の医薬組成物、例えば医薬組成物3または3.1~3.4のいずれかを含有するゼラチンカプセルを含む組成物であって、該ゼラチンカプセルが、ゼラチンカプセルの外表面に接触しているバリア層、バリア層の一部に接触膨張層、少なくとも膨張層を包含する半透過層、およびゼラチンカプセル表面から使用環境まで延びている投与剤形に形成されているかまたは形成可能な出口オリフィスによって囲まれている、組成物(医薬組成物P.4)を提供する。膨張層は、1つ以上の個別のセクション、例えばゼラチンカプセルの対向する側部または端部に位置する2つのセクションに形成され得る。
【0021】
第4態様の特定の態様において、浸透圧による制御放出経口送達システム(すなわち医薬組成物P.1~P.4)中の本開示の化合物は、液体製剤中であり、ここで、該製剤は、純粋な液体活性剤、溶液、懸濁液、エマルションもしくは自己乳化組成物中の液体活性剤、または同類のものであり得る。
【0022】
ゼラチンカプセル、バリア層、膨張層、半透過層;およびオリフィスの特徴を含む浸透圧による制御放出経口送達システム組成物の更なる情報は、国際公開第2000/35419号(および対応するUS2001/0036472)に見ることができ、これら各出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0023】
式I以降の化合物または本開示の医薬組成物のための他の浸透圧による制御放出経口送達システムは、欧州特許出願公開第1539115号(米国特許出願公開第2009/0202631号)に見ることができ、これら各出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。したがって、第4態様の別の一実施態様において、本発明は、(a)第1層および第2層を含む2つ以上の層であって、該第1層が遊離もしくは医薬的に許容される塩形態の式I以降の化合物または前記医薬組成物を含み、該第2層がポリマーを含む、2つ以上の層;(b)2つ以上の層を囲む外壁;および(c)該外壁におけるオリフィスを含む、組成物またはデバイス(医薬組成物P.5)を提供する。
【0024】
医薬組成物P.5は、好ましくは、3層コアを囲む半透膜を利用し;これらの実施態様において、第1層は、第1薬物層と称され、少量の薬物(例えば式IV以降の化合物)および塩などの浸透圧調整剤を含有し、中間層は、第2薬物層と称され、多量の薬物、添加剤を含有し、塩を含有せず:第3層は、プッシュ層と称され、浸透圧調整剤を含有し、薬物を含有しない。少なくとも1つのオリフィスは、カプセル型錠剤の第1薬物層端部の膜を通して穿孔される。(医薬組成物P.6)
【0025】
医薬組成物P.5またはP.6は、区画を画定する膜であって、該膜が内部保護サブコート、そこに形成されているかまたは形成可能な少なくとも1つの出口オリフィスおよび半透過性の膜の少なくとも一部を囲む膜;出口オリフィス遠く離れて区画内に位置する膨張層であって、膜の半透過性部分と流体連結している膨張層;出口オリフィスと隣接して位置する第1薬物層;および第1薬物層と膨張層間の区画内に位置する第2薬物層であって、本発明の化合物を遊離またはその医薬的に許容される塩で含む薬物層を含み得る。第1薬物層および第2薬物層の相対粘度に応じて、異なる放出プロファイルが得られる。各層の最適な粘度を同定するのは必須である。本発明において、粘度は、塩、塩化ナトリウムの添加によって調節される。コアからの送達プロファイルは、各薬物層の重量、処方、厚さに依存する。(医薬組成物P.7)
【0026】
特定の実施態様において、本発明は、第1薬物層が塩を含み、第2薬物層が塩を含まない、医薬組成物P.7を提供する。医薬組成物P.5~P.7は、所望により、膜と薬物層との間に流動促進層を含み得る。
【0027】
組成物P.1~P.7は、一般的に、浸透圧による制御放出経口送達システム組成物と称される。
【0028】
第5態様において、本発明は、中枢神経系障害の治療または予防方法であって、それを必要とする患者に式I以降の化合物または医薬組成物3または3.1~3.4またはP.1~P.7を投与することを含む、方法(方法1)、例えば、投与される化合物または組成物が、
1.1 遊離または医薬的に許容される塩形態の化合物Iまたは1.1~1.25のいずれか;
1.2 式2.1~2.5のいずれかの化合物;
1.3 医薬組成物3または3.1~3.4のいずれかに記載の医薬組成物;
1.4 医薬組成物P.1~P.7;
1.5 前記浸透圧による制御放出経口送達システム組成物
である、方法1を提供する。
【0029】
第5態様の更なる実施態様において、本開示は、方法が、
1.6 中枢神経系障害が、肥満、不安(例えば全般性不安、社交不安およびパニック障害)、うつ病(例えば難治性うつ病およびMDD)、精神病(例えば認知症に関連する精神病、例えば進行性パーキンソン病における幻覚または偏執性妄想)、統合失調症、睡眠障害(特に統合失調症および他の精神および神経疾患に関連する睡眠障害)、性障害、片頭痛、疼痛および疼痛を伴う状態、例えば頭痛、特発性疼痛、慢性疼痛(例えば、他の病気のために24時間の長時間治療を必要とする患者における中等度から中重度の慢性疼痛)、神経障害性疼痛、歯痛、線維筋痛症、慢性疲労、広場恐怖症、社会恐怖症、認知症における激越(例えばアルツハイマー病における激越)、自閉症および関連する自閉症障害における激越、消化管障害、例えば消化管運動の機能不全、および認知症、例えばアルツハイマー病またはパーキンソン病における認知症;気分障害;薬物依存、例えば、オピエート依存および/またはアルコール依存、および薬物またはアルコール依存(例えばオピエート依存)からの離脱;薬物依存に関連する併存疾患、例えばうつ病、不安および精神病;過食性障害;および強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)および関連障害からなる群より選択される障害である、方法1または方法1.1~1.5のいずれか;
1.7 中枢神経系障害が、米国特許出願公開第2011/071080号(この出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に同様に記載される、セロトニン5-HT2A、ドーパミンD1および/またはD2受容体系および/またはセロトニン再取り込みトランスポーター(SERT)経路に関連する障害である、方法1または方法1.1~1.6のいずれか;
1.8 中枢神経系障害が、μオピオイド受容体関連障害である、方法1または方法1.1~1.7のいずれか;
1.9 中枢神経系障害が、(1)うつ病に罹患している患者における精神病、例えば統合失調症;(2)精神病、例えば統合失調症に罹患している患者におけるうつ病;(3)精神病および/または薬物依存、例えば統合失調症またはパーキンソン病に関連する気分障害;(4)精神病、例えば統合失調症またはパーキンソン病に関連する睡眠障害;および(5)物質嗜癖、物質使用障害および/または物質誘発障害より選択される障害であり、所望により、患者が不安または不安障害の残遺症状に罹患しており;所望により、うつ病が治療抵抗性うつ病である、方法1または方法1.1~1.8のいずれか;
1.10 中枢神経系障害が精神病、例えば統合失調症であり、該患者がうつ病に罹患している患者である、方法1または方法1.1~1.9のいずれか;
1.11 該患者が、慣用の抗精神病薬、例えばクロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジンプロマジン、チオリダジン、チオチキセン、トリフロペラジン、ブレクスピプラゾール、カリプラジン、アセナピン、ルラシドン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンおよびジプラシドンの副作用に耐えることができない、方法1または方法1.1~1.10のいずれか;
1.12 該患者が、非麻薬性鎮痛薬および/またはオピエートおよびオピオイド薬の副作用に耐えることができない、あるいはオピエート薬の使用が、例えば物質濫用のためまたは物質濫用の可能性が高いため、該患者では禁忌であり、オピエートおよびオピオイド薬が、例えばモルヒネ、コデイン、テバイン、オリパビン、ジプロピオン酸モルヒネ、ジニコチン酸モルヒネ、ジヒドロコデイン、ブプレノルフィン、エトルフィン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、オキシコドン、オキシモルフォン、フェンタニル、α-メチルフェンタンチル、アルフェンタニル、トレファンチニル、ブリフェンタニル、レミフェンタニル、オクトフェンタニル、スフェンタニル、カルフェンタニル、メペリジン、プロジン、プロメドール、ロポキシフェン、デキストロプロポキシフェン、メサドン、ジフェノキシレート、デゾシン、ペンタゾシン、フェナゾシン、ブトルファノール、ナルブフィン、レボルファノール、レボメトルファン、トラマドール、タペンタドールおよびアニレリジン、またはそれらの任意の組合せを含む、方法1または方法1.1~1.11のいずれか;
1.13 該患者が、慣用の抗精神病薬、例えばハロペリドール、ブレクスピプラゾール、カリプラジン、アセナピン、ルラシドン、アリピプラゾール、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンおよびジプラシドンの副作用に耐えることができない、方法1または方法1.1~1.12のいずれか;
1.14 該障害がうつ病であり、該患者が精神病、例えば統合失調症またはパーキンソン病に罹患している患者である、方法1または方法1.1~1.13のいずれか;
1.15 該障害が睡眠障害であり、該患者がうつ病に罹患している、方法1または方法1.1~1.13のいずれか;
1.16 該1つ以上の障害が睡眠障害であり、該患者が精神病、例えば統合失調症に罹患している、方法1または方法1.1~1.13のいずれか;
1.17 該1つ以上の障害が睡眠障害であり、該患者がパーキンソン病に罹患している、方法1または方法1.1~1.13のいずれか;
1.18 該1つ以上の障害が睡眠障害であり、該患者がうつ病および精神病、例えば統合失調症またはパーキンソン病に罹患している、方法1または方法1.1~1.13のいずれか;
1.19 該患者が薬物依存障害に罹患しており、所望により前記障害のいずれかに関連して、例えば、該患者がオピエート依存、コカイン依存、アンフェタミン依存および/またはアルコール依存、または薬物またはアルコール依存(例えばオピエート、コカインまたはアンフェタミン依存)からの離脱に罹患しており、所望により、患者が、併存疾患、例えば不安、うつ病または精神病、または不安または不安障害および/または気分変化の残遺症状(例えばうつ病)に罹患している、方法1または1.1~1.18のいずれか;
1.20 有効量が、1mg~1000mg、好ましくは2.5mg~50mg、あるいは、長時間作用型製剤については、25mg~1500mg、例えば50mg~500mg、250mg~1000mg、250mg~750mgまたは75mg~300mgである、前記方法のいずれか;
1.21 有効量が、1日当たり1mg~100mg、例えば1日当たり2.5mg~50mgである、前記方法のいずれか;
1.22 治療されるべき状態が、例えば、ドーパミン作動薬、例えばレボドパおよびレボドパアジュバント(カルビドパ、COMT阻害薬、MAO-B阻害薬)、ドーパミンアゴニスト、および抗コリン作動薬より選択される医薬、例えばレボドパを投与されている患者における、ジスキネジアである、前記方法のいずれか;
1.23 患者がパーキンソン病に罹患している、前記方法のいずれか
をさらに含む、方法1または方法1.1~1.5のいずれかを提供する。
【0030】
物質使用障害および物質誘発障害は、DSM(精神障害の診断と統計マニュアル)の第5版により定義される物質関連障害の2つのカテゴリーである。物質使用障害は、個人が、結果をして問題を経験するにもかかわらず摂取を継続する物質の使用により生じる症状のパターンである。物質誘発障害は、物質の使用により誘発される障害である。物質誘発障害は、中毒、離脱、物質誘発精神障害、例えば物質誘発精神病、物質誘発双極性および関連障害、物質誘発うつ病性障害、物質誘発不安障害、物質誘発強迫性および関連障害、物質誘発睡眠障害、物質誘発性機能不全、物質誘発せん妄および物質誘発神経認知障害を含む。
【0031】
DSM-Vは、物質使用障害を軽度、中等度または重度に分類する基準を含む。本明細書に記載の方法のいくつかの実施態様において、物質使用障害は、軽度物質使用障害、中等度物質使用障害または重度物質使用障害より選択される。いくつかの実施態様において、物質使用障害は、軽度物質使用障害である。いくつかの実施態様において、物質使用障害は、中等度物質使用障害である。いくつかの実施態様において、物質使用障害は、重度物質使用障害である。
【0032】
不安およびうつ病は、物質使用または物質濫用の治療を受けている患者において極めて一般的な併存障害である。物質濫用障害の一般的治療は、オピオイドパーシャルアゴニストであるブプレノルフィンとオピオイドアンタゴニストであるナロキソンとの組合せであるが、これらの薬物はいずれも、不安またはうつ病に対して顕著な効果がなく、それ故に、第3の薬物、例えばベンゾジアゼピン系抗不安薬またはSSRI抗うつ薬も処方しなければならないという共通の結果をもたらす。これは、治療レジメンおよび患者コンプライアンスをより困難にする。対照的に、本開示の化合物は、セロトニン拮抗作用およびドーパミン調節と共にオピエート拮抗作用を提供する。これにより、不安および/またはうつ病と併存して物質使用または濫用障害を有する患者の治療が顕著に増強され得る。
【0033】
本開示の化合物は、併存不安に罹患している患者の抗不安薬での治療の必要性を軽減する抗不安特性を有し得る。したがって、いくつかの実施態様において、本開示は、中枢神経系障害が、例えば不安の症状に罹患している患者または併存障害または残遺障害として不安と診断された患者における、物質嗜癖、物質使用障害および/または物質誘発障害または物質濫用障害であり、該方法が、抗不安薬、例えばベンゾジアゼピンの更なる投与を含まない、方法1、または方法1.1~1.23のいずれかによる方法を提供する。ベンゾジアゼピンは、GABA調節化合物であり、これは、下記方法3.1および3.2を参照して説明されるものを含む。
【0034】
第5態様の別の一実施態様において、本開示は、方法がさらに、
1.24 中枢神経系障害が、強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)、全般性不安障害、社交不安障害、パニック障害、広場恐怖症、強迫性ギャンブル障害、強迫性摂食障害、身体醜形障害、心気症、病的身繕い障害、窃盗症、放火症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、衝動制御障害、および関連障害、およびそれらの組合せより選択される障害である、方法1または方法1.1~1.23のいずれか;
1.25 中枢神経系障害が、強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)、社交不安障害、パニック障害、広場恐怖症、強迫性ギャンブル障害、強迫性摂食障害、身体醜形障害および衝動制御障害より選択される、方法1または方法1.1~1.23のいずれか;
1.26 中枢神経系障害が、強迫性障害(OCD)または強迫性パーソナリティ障害(OCPD)である、方法1または方法1.1~1.23のいずれか;
1.27 該患者が、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、例えばシタロプラム、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチンおよびセルトラリンでの治療に反応しないか、またはその副作用に耐えられない、いずれかの前記方法;
1.28 該患者が、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)、例えばベンラフェキシン、シブトラミン、デュロキセチン、アトモキセチン、デスベンラファキシン、ミルナシプランおよびレボミルナシプランでの治療に反応しないか、またはその副作用に耐えられない、いずれかの前記方法;
1.29 該患者が、抗精神病薬、例えばクロミプラミン、リスペリドン、クエチアピンおよびオランザピンでの治療に反応しないか、またはその副作用に耐えられない、いずれかの前記方法;
1.30 有効量が、1mg~1000mg、好ましくは2.5mg~50mg、あるいは、長時間作用型製剤については、25mg~1500mg、例えば50mg~500mg、250mg~1000mg、250mg~750mgまたは75mg~300mgである、前記方法のいずれか;
1.31 有効量が、1日当たり1mg~100mg、好ましくは1日当たり2.5mg~50mgである、前記方法のいずれか
である、方法1または方法1.1~1.7のいずれかを提供する。
【0035】
さらに別の一実施態様において、本開示は、障害が統合失調症または睡眠障害である、前記方法1または1.1~1.31のいずれかを提供する。いくつかの実施態様において、該統合失調症はうつ病に関連する。
【0036】
さらに別の一実施態様において、本開示は、医薬組成物3または3.1~3.4、または医薬組成物P.1~P.7が、約14日間、約30~約180日間にわたる、好ましくは約30、約60または約90日間にわたる本発明の化合物の制御および/または持続放出のために投与される、方法1.1~1.31のいずれかを提供する。制御および/または持続放出は、治療、特に投薬レジメンのノンコンプライアンスまたは不遵守が一般的に生じる抗精神病薬治療の早期中止を回避するために特に有用である。
【0037】
さらに別の一実施態様において、本発明は、本開示のデポー組成物が一定時間の本発明の化合物の制御および/または持続放出のために投与される、前記方法1または1.1~1.31のいずれかを提供する。
【0038】
第6態様において、本発明は、1つ以上の睡眠障害の予防または治療方法であって、それを必要とする患者に式I以降の化合物または医薬組成物3または3.1~3.4またはP.1~P.7を投与することを含む、方法(方法2)、例えば投与される化合物または組成物が、
2.1 遊離または医薬的に許容される塩形態の化合物Iまたは1.1~1.25;
2.2 化合物5.1~5.5;
2.3 医薬組成物3または3.1~3.4のいずれかに記載の医薬組成物;
2.4 医薬組成物P.1~P.7;
2.5 前記浸透圧による制御放出経口送達システム組成物
である、方法2を提供する。
【0039】
第6態様の更なる実施態様において、本発明は、睡眠障害が、睡眠維持障害、頻繁な覚醒、および休息できていないと感じる目覚めを含む、方法2、または2.1~2.5;例えば、
2.6 睡眠障害が、睡眠維持障害である、前記方法のいずれか;
2.7 有効量が、1日当たり1mg~5mg、好ましくは2.5~5mgである、前記方法のいずれか;
2.8 有効量が、1日当たり2.5mgまたは5mgである、前記方法のいずれか;
2.9 睡眠障害が、ジスキネジアに罹患しているかまたはそのリスクがある患者、例えばレボドパおよびレボドパアジュバント(カルビドパ、COMT阻害薬、MAO-B阻害薬)より選択されるドーパミン作動薬、ドーパミンアゴニストおよび抗コリン作動薬、例えばレボドパを投与されている患者におけるものである、前記方法のいずれか;
2.10 患者がパーキンソン病に罹患している、前記方法のいずれか
を提供する。
【0040】
第6態様の更なる実施態様において、本発明は、睡眠障害が、睡眠維持障害、頻繁な覚醒、および休息できていないと感じる目覚めを含む、方法2、または2.1~2.10のいずれかを提供する。
【0041】
本開示の化合物、本開示の医薬組成物または本開示のデポー組成物は、慣用の単剤療法において通常生じる望ましくない副作用を引き起こすことなく組み合される薬物の治療活性を高めるように、特に個々の薬物が単剤療法として用いられる場合より低い投与量にて、第2治療薬と組み合され得る。したがって、本開示の化合物は、他の抗うつ薬、抗精神病薬、他の睡眠薬、および/またはパーキンソン病または気分障害を治療するのに用いられる薬物と同時に(simultaneously)、連続してまたは同期間に(contemporaneously)投与され得る。別の一例において、副作用は、本開示の化合物を1つ以上の第2治療薬と組み合わせて遊離または塩形態で投与することにより軽減または最小化し得て、ここで、(i)第2治療薬または(ii)本開示の化合物および第2治療薬両方の投与量は、薬物/化合物が単剤療法として投与される場合より低い。特定の実施態様において、本開示の化合物は、例えばパーキンソン病の治療において用いられるような、例えばレボドパおよびレボドパアジュバント(カルビドパ、COMT阻害薬、MAO-B阻害薬)より選択されるドーパミン作動薬、ドーパミンアゴニストおよび抗コリン作動薬を投与されている患者においてジスキネジアを治療するのに有用である。
【0042】
したがって、第7態様において、本開示は、1つ以上の治療薬の患者への投与をさらに含む方法であって、1つ以上の治療薬が、遊離または医薬的に許容される塩形態の、GABA活性を調節する(例えば、活性を増強し、GABA伝達の促進する)化合物、GABA-Bアゴニスト、5-HT受容体モジュレーター(例えば5-HT1Aアゴニスト、5-HT2Aアンタゴニスト、5-HT2Aインバースアゴニストなど)、メラトニン受容体アゴニスト、イオンチャネルモジュレーター(例えばブロッカー)、セロトニン-2アンタゴニスト/再取り込み阻害薬(5-HT2拮抗作用およびセロトニン再取り込み阻害の両方を有する化合物、すなわちSARI)、オレキシン受容体アンタゴニスト、H3アゴニストまたはアンタゴニスト、ノルアドレナリンアゴニストまたはアンタゴニスト、ガラニンアゴニスト、CRHアンタゴニスト、ヒト成長ホルモン、成長ホルモンアゴニスト、エストロゲン、エストロゲンアゴニスト、ニューロキニン-1薬、抗うつ薬、オピエートアゴニストおよび/またはオピエートパーシャルアゴニスト(例えばμ-、κ-またはδ-オピエート受容体アゴニストまたはパーシャルアゴニスト)、ノシセプチンアゴニスト、および抗精神病薬、例えば非定型抗精神病薬より選択される、方法I、または方法1.1~1.31のいずれか、または方法2または2.1~2.10のいずれか(それぞれ方法I-AおよびII-A;まとめて「方法3」)を提供する。
【0043】
第7態様の更なる実施態様において、本開示は、前記より選択される、およびさらにμオピエート、κオピエート、δオピエートおよび/またはノシセプチン/オルファニン受容体のアゴニストまたはパーシャルアゴニストより選択される1つ以上の治療薬を患者に投与することをさらに含む、方法I、または方法1.1~1.31のいずれか、または方法2または2.1~2.10のいずれかを提供する。第7態様の更なる実施態様において、本開示はまた、セロトニンHT6受容体アンタゴニスト、およびmGluR-2、-3または-5受容体アゴニストまたはアンタゴニスト(例えば正と負の両方のモジュレーターおよびパーシャルアゴニストを含む)より選択される1つ以上の治療薬をさらに含む、方法I、または方法1.1~1.31のいずれか、または方法2または2.1~2.10のいずれかを提供する。
【0044】
第7態様の更なる実施態様において、本発明は、患者に1つ以上の下記治療薬:
3.1 治療薬が、GABA活性を調節する(例えば、活性を増強し、GABA伝達の促進する)化合物である、方法I-AまたはII-A;
3.2 GABA化合物が、ドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、インディプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ゼレプロン、ゾルピデム、ガボキサドール、ビガバトリン、チアギャビン、EVT201(Evotec Pharmaceuticals)およびエスタゾラムの1つ以上からなる群より選択される、方法I-AまたはII-Aまたは3.1;
3.3 治療薬が更なる5HT2a受容体アンタゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.4 該更なる5HT2a受容体アンタゴニストが、ピマバンセリン、ケタンセリン、リスペリドン、エプリバンセリン、ボリナンセリン(Sanofi-Aventis、France)、プルバンセリン、MDL100907(Sanofi-Aventis、France)、HY10275(Eli Lilly)、APD125(Arena Pharmaceuticals、San Diego、CA)およびAVE8488(Sanofi-Aventis、France)の1つ以上より選択される、方法I-AまたはII-Aまたは3.3;
3.5 治療薬がメラトニン受容体アゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.6 メラトニン受容体アゴニストが、メラトニン、ラメルテオン(ROZEREM(登録商標)、Takeda Pharmaceuticals、Japan)、VEC-162(Vanda Pharmaceuticals、Rockville、MD)、PD-6735(Phase II Discovery)およびアゴメラチンの1つ以上からなる群より選択される、方法I-AまたはII-Aまたは3.5;
3.7 治療薬がイオンチャネルブロッカーである、方法I-AまたはII-A;
3.8 該イオンチャネルブロッカーが、ラモトリジン、ギャバペンチンおよびプレガバリンの1つ以上である、方法I-AまたはII-Aまたは3.7;
3.9 治療薬がオレキシン受容体アンタゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.10 オレキシン受容体アンタゴニストが、オレキシン、1,3-ジアリールウレア、SB-334867-a(GlaxoSmithKline、UK)、GW649868(GlaxoSmithKline)およびベンズアミド誘導体からなる群より選択される、方法I-AまたはII-Aまたは3.9;
3.11 治療薬が、セロトニン-2アンタゴニスト/再取り込み阻害薬(SARI)である、方法I-AまたはII-A;
3.12 セロトニン-2受容体アンタゴニスト/再取り込み阻害薬(SARI)が、1つ以上のOrg50081(Organon-Netherlands)、リタンセリン、ネファゾドン、サーゾーンおよびトラゾドンからなる群より選択される、方法I-AまたはII-Aまたは3.11;
3.13 治療薬が5HTIaアゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.14 5HTIaアゴニストが、レピノタン、サリゾタン、エプタピロン、ブスピロンおよびMN-305(MediciNova、San Diego、CA)の1つ以上からなる群より選択される、方法I-AまたはII-Aまたは3.13;
3.15 治療薬がニューロキニン-1薬である、方法I-AまたはII-A;
3.16 ニューロキニン-1薬がカソピタント(GlaxoSmithKline)である、方法I-AまたはII-Aまたは3.15;
3.17 治療薬が抗精神病薬である、方法I-AまたはII-A;
3.18 抗精神病薬が、クロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジンプロマジン、チオリダジン、チオチキセン、トリフロペラジン、ブレクスピプラゾール、カリプラジン、アセナピン、ルラシドン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびパリペリドンからなる群より選択される、方法I-AまたはII-Aまたは3.17;
3.19 治療薬が抗うつ薬である、方法I-AまたはII-A;
3.20 抗うつ薬が、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、硫酸フェネルジン、プロトリプチリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミンおよびベンラフェキシンより選択される、方法I-AまたはII-Aまたは3.19;
3.21 抗精神病薬が非定型抗精神病薬である、方法I-AまたはII-A、3.17または3.18;
3.22 非定型抗精神病薬が、ブレクスピプラゾール、カリプラジン、アセナピン、ルラシドン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびパリペリドンからなる群より選択される、方法I-AまたはII-A、または3.17~3.21のいずれか;
3.23 治療薬が、3.1~3.22のいずれかより選択され、例えば、モダフィニル、アルモダフィニル、ドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、インディプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ゼレプロン、ゾルピデム、ガボキサドール、ビガバトリン、チアギャビン、EVT201(Evotec Pharmaceuticals)、エスタゾラム、ピマバンセリン、ケタンセリン、リスペリドン、エプリバンセリン、ボリナンセリン(Sanofi-Aventis、France)、プルバンセリン、MDL100907(Sanofi-Aventis、France)、HY10275(Eli Lilly)、APD125(Arena Pharmaceuticals、San Diego、CA)、AVE8488(Sanofi-Aventis、France)、レピノタン、サリゾタン、エプタピロン、ブスピロン、MN-305(MediciNova、San Diego、CA)、メラトニン、ラメルテオン(ROZEREM(登録商標)、Takeda Pharmaceuticals、Japan)、VEC-162(Vanda Pharmaceuticals、Rockville、MD)、PD-6735(Phase II Discovery)、アゴメラチン、ラモトリジン、ギャバペンチン、プレガバリン、オレキシン、1,3-ジアリールウレア、SB-334867-a(GlaxoSmithKline、UK)、GW649868(GlaxoSmithKline)、ベンズアミド誘導体、Org50081(Organon-Netherlands)、リタンセリン、ネファゾドン、サーゾーン、トラゾドン、カソピタント(GlaxoSmithKline)、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、硫酸フェネルジン、プロトリプチリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミン、ベンラフェキシン、クロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジンプロマジン、チオリダジン、チオチキセン、トリフロペラジン、ブレクスピプラゾール、カリプラジン、アセナピン、ルラシドン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびパリペリドンからなる群より選択される、方法I-AまたはII-A;
3.24 治療薬がH3アゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.25 治療薬がH3アンタゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.26 治療薬がノルアドレナリンアゴニストまたはアンタゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.27 治療薬がガラニンアゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.28 治療薬がCRHアンタゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.29 治療薬がヒト成長ホルモンである、方法I-AまたはII-A;
3.30 治療薬が成長ホルモンアゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.31 治療薬がエストロゲンである、方法I-AまたはII-A;
3.32 治療薬がエストロゲンアゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.33 治療薬がニューロキニン-1薬である、方法I-AまたはII-A;
3.34 治療薬が、式(I)の化合物と組み合され、治療薬が抗パーキンソン病薬、例えばL-ドーパ、コカレルドーパ、デュオドーパ、スタレボ、シンメトレル、ベンズトロピン、ビペリデン、ブロモクリプチン、エンタカポン、ペルゴリド、プラミペキソール、プロシクリジン、ロピニロール、セレギリンおよびトルカポンである、方法I-AまたはII-A;
3.35 治療薬が、オピエートアゴニストまたはオピエートパーシャルアゴニスト、例えばμアゴニストまたはパーシャルアゴニスト、またはκアゴニストまたはパーシャルアゴニスト、例えば混合アゴニスト/アンタゴニスト(例えばμパーシャルアゴニスト活性およびκアンタゴニスト活性を有する薬物)である、方法I-AまたはII-A;
3.36 治療薬がブプレノルフィンであり、所望により、該治療が抗不安薬、例えばGABA化合物またはベンゾジアゼピンの併用治療を含まない、方法3.35;
3.37 列記した疾患および/またはパーキンソン病に罹患している患者において、式(I)の化合物を用いて、睡眠障害、うつ病、精神病、またはそれらの任意の組合せを治療し得る、方法I-AまたはII-A;
3.38 障害が、精神病、例えば統合失調症、うつ病、気分障害、睡眠障害(例えば睡眠維持および/または睡眠開始)またはそれらの障害の任意の組合せの少なくとも1つ以上より選択される、方法I-AまたはII-A;
3.39 障害が睡眠障害である、前記方法のいずれか;
3.40 障害が精神病、例えば統合失調症またはパーキンソン病に関連する睡眠障害である、前記方法のいずれか
を遊離または医薬的に許容される塩形態で投与することをさらに含む、方法3(すなわち方法I-AまたはII-A)を提供する。
【0045】
本発明の第8態様において、本開示の化合物と、方法I-A、II-Aまたは方法3または3.1~3.40のいずれかに記載の1つ以上の第2治療薬の組合せは、前記の医薬組成物またはデポー組成物として患者に投与され得る。組合せ組成物は、組み合わせた薬物の混合物、ならびに薬物の2つ以上の別個の組成物を含み得て、ここで個々の組成物が、患者に例えば一緒に共投与され得る。
【0046】
特定の実施態様において、方法I-A、II-A、3または3.1~3.40は、それを必要とする患者に、本発明の化合物を、非定型抗精神病薬、例えばブレクスピプラゾール、カリプラジン、アセナピン、ルラシドン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンまたはパリペリドンより選択される化合物と組み合わせて、遊離または医薬的に許容される塩形態で投与することを含み、ここで、例えば非定型抗精神病薬の投与量を減少させる、および/または副作用を減少させる。
【0047】
別の一実施態様において、方法I-A、II-A、3または3.1~3.40は、それを必要とする患者に、本発明の化合物を、抗うつ薬、例えば、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、硫酸フェネルジン、プロトリプチリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミンまたはベンラフェキシンと組み合わせて、遊離または医薬的に許容される塩形態で投与することを含む。あるいは、抗うつ薬は、本発明の化合物に加えて補助薬として投与され得る。
【0048】
さらに別の一実施態様において、方法I-A、II-A、3または3.1~3.40は、それを必要とする患者に、本発明の化合物を、GABA活性を調節する化合物、例えばドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、インディプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ゼレプロン、ゾルピデム、ガボキサドール、ビガバトリン、チアギャビン、EVT201(Evotec Pharmaceuticals)、エスタゾラムより選択される化合物またはそれらの任意の組合せと組み合わせて、遊離または医薬的に許容される塩形態で投与することを含む。他の実施態様において、本明細書に記載の方法は、GABA化合物、ベンゾジアゼピンまたは任意の他の抗不安薬の投与をさらに含まない。
【0049】
好ましい別の一実施態様において、方法I-A、II-A、3または3.1~3.40は、それを必要とする患者に、本発明の化合物を、ドキセピンと組み合わせて、遊離または医薬的に許容される塩形態で投与することを含む。ドキセピンの投与量は、当業者に公知の任意の範囲で変化し得る。一例において、10mg用量のドキセピンが、任意の投与量の本発明の化合物と組み合され得る。
【0050】
別の一実施態様において、方法I-A、II-A、3または3.1~3.40は、それを必要とする患者に、本発明の化合物を(例えば1日の投与レジメンの一部として)非定型刺激薬、例えばモダフィニル、アドラフィニルまたはアルモダフィニルと組み合わせて投与することを含む。本発明の化合物をこのような薬物と共に組み込むレジメンは、例えば双極性うつ病、統合失調症に関連する認知、およびパーキンソン病および癌などの状態における過剰な眠気および疲労の治療において、より規則的な睡眠を促進し、このような薬物のより高いレベルと関連する精神病または躁病などの副作用を回避する。
【0051】
前記実施態様のいくつかにおいて、式I以降の化合物;医薬組成物3および3.1~3.4;組成物P.1~P.7;方法1および1.1~1.31;および方法2および2.1~2.10および3および3.1~3.40;本開示の化合物の各々は、式Aおよび/または式Bの化合物を実質的に含まない。
【0052】
第9態様において、本発明は、前記1つ以上の障害の治療または予防のための(医薬製造における)、例えば方法1または1.1~1.31のいずれか、方法2および2.1~2.10および方法3または3.3~3.40のいずれか、または本発明の第10態様に記載の任意の方法における、下記:
9.1 遊離または医薬的に許容される塩形態の化合物Iまたは1.1~1.25;
9.2 化合物5または5.1~5.5;
9.3 医薬組成物3または3.1~3.4;
9.4 医薬組成物P.1~P.7;
9.5 前記浸透圧による制御放出経口送達システム組成物
に記載の化合物の使用を提供する。
【0053】
第10態様において、本発明は、前記1つ以上の障害の治療または予防、例えば方法1および1.1~1.31、方法2および2.1~2.10、方法I-A、II-A、3または3.1~3.40のいずれかまたは本発明の第8および第9態様に記載の任意の方法における使用のための前記医薬組成物、例えば、
10.1 医薬組成物3または3.1~3.4;
10.2 医薬組成物P.1~P.7;
10.3 前記浸透圧による制御放出経口送達システム組成物
を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0054】
他に明記されていないかまたは内容から明らかでない場合、本明細書で用いられる下記の用語は、下記意味を有する:
【0055】
理論に拘束されるものではないが、本発明は、化合物Aおよび化合物B:
【化7】
などの化合物で処置された動物で生じることが見出されている代謝を特に制限、遅延、変更および/または防止する化合物を提供する。
【0056】
重水素(2H)原子の化学的および物理的特性、例えば電子電荷、電子体積、極性、電子価などが通常の水素原子(1H)と比較して極めて類似しているため、重水素で水素を置換した薬物化合物は、一般的に、非重水素化類似体と同様の生物学的活性を有すると考えられるが、薬物動態特性が改善される可能性がある。重水素原子がプロチウム原子のおよそ2倍の原子量を有するが、その空間体積および電荷分布は同様であることが特に重要であり、ここで、これらの後者の要因が生体分子と結合するに重要である。薬物動態特性の改善は、H-D結合と比較してC-D結合の結合強度が極めて強く、それ故に酵素(代謝)反応中におけるD/H引き抜きに対するエネルギー障壁がより高いこと(速度論的同位体効果)により生じる。このような置換が薬理活性を深刻に損失しすぎることなく薬物動態特性の改善をもたらす程度は可変的である。したがって、いくつかの状況においては、得られた重水素化化合物のみが、薬物動態学的安定性の適度な増加を示し、一方、他の状況においては、得られた重水素化化合物は、著しい安定性の改善を有し得る。さらに、同時重水素置換の影響を確実に予測することは困難であり得る。これらは、代謝安定性の相加的(相乗的)改善をもたらす場合もあれば、もたらさない場合もある。
【0057】
これまでに多くの重水素化医薬化合物が提案および調査されているが、米国食品医薬品局によって承認されている重水素化医薬化合物は、重水素化されていない対応物より治療上有用な長い半減期を有する、ハンチントン病薬のテトラベナジン重水素型であるデューテトラベナジン(Teva Pharmaceuticals、2017年4月)の1つのみである。
【0058】
本開示は、式Aおよび/または式Bの化合物の構造の特定の選択された位置に重水素原子を含有する化合物を提供する。これらの特定の重水素化は、これらの化合物に影響を及ぼす可能性が高いと本願発明者らにより決定された酵素経路との関係のため、該化合物の代謝分解およびクリアランスに影響を有すると予想される。したがって、これらの新規な化合物は、天然の水素類似体と同様の方法であるが、予想外にも代謝安定性および薬物動態特性を改善しながら、5-HT2A受容体に拮抗し、セロトニン再取り込みトランスポーターを阻害し、ドーパミン作動性タンパク質リン酸化を調節し、μオピエート受容体活性を調節すると予想される。
【0059】
本明細書で用いられる「アルキル」は、他に明記されない限り、例えば長さが1~21個の炭素原子の、飽和または不飽和炭化水素部分であり;あらゆるこのようなアルキルは、他に明記されない限り、直鎖または分岐鎖(例えばn-ブチルまたはtert-ブチル)であり得て、好ましくは直鎖である。例えば、「C1-21アルキル」は、1~21個の炭素原子を有するアルキルを意味する。一の実施態様において、アルキルは、1つ以上のヒドロキシまたはC1-22アルコキシ(例えばエトキシ)基で置換されていてもよい。別の一実施態様において、アルキルは、好ましくは直鎖で、所望により飽和または不飽和の、1~21個の炭素原子を含み、例えば、R1が、1~21個の炭素原子、好ましくは6~15個の炭素原子、16~21個の炭素原子を含むアルキル鎖であるいくつかの実施態様において、例えばそれが結合する-C(O)-と一緒になって、例えば式Iの化合物から切断されたとき、天然または非天然の、飽和または不飽和脂肪酸の残基を形成する。
【0060】
用語「D」または「重水素」は、水素原子の2H同位体を指す。水素の2つの安定な同位体の天然存在量は、約99.98%プロチウム(1H)および0.02%重水素(2H)である。したがって、平均して、一般的試薬を用いて合成された分子における任意の水素原子は、すべての水素原子の位置にて約0.02%重水素を有する。したがって、当業者は、本明細書に記載のように、C-D結合または「D」原子を有する化学構造を言及するときに、これは分子の該位置が重水素の天然の0.02%存在量より多く有するように濃縮されていることを意味すると理解する。したがって、分子内のラベル「D」は、例えば、少なくとも0.1%重水素、または少なくとも1%重水素、または少なくとも10%重水素を指す。好ましくは、本開示による任意化合物は、化合物構造の各指定される「D」原子の位置に重水素が50%超(すなわち、50原子%超のD)、例えば60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、96%超、97%超、98%超または99%超組み込まれている。
【0061】
用語「医薬的に許容される希釈剤または担体」は、医薬製剤において有用であり、アレルゲン性、発熱性または病原性である物質および病気を潜在的に引き起こすかもしくは促進することが知られている物質を含まない希釈液および担体を意味することが意図される。したがって、医薬的に許容される希釈液または担体は、体液、例えば血液、尿、髄液、唾液など、ならびにその構成成分、例えば血液細胞および循環タンパク質を除外する。適切な医薬的に許容される希釈液および担体は、医薬製剤に関するいくつかの周知の論文のいずれか、例えばAnderson, Philip O.; Knoben, James E.; Troutman, William G, eds., Handbook of Clinical Drug Data, Tenth Edition, McGraw-Hill, 2002; Pratt and Taylor, eds., Principles of Drug Action, Third Edition, Churchill Livingston, New York, 1990; Katzung, ed., Basic and Clinical Pharmacology, Ninth Edition, McGraw Hill, 20037ybg; Goodman and Gilman, eds., The Pharmacological Basis of Therapeutics, Tenth Edition, McGraw Hill, 2001; Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Ed., Lippincott Williams & Wilkins., 2000; and Martindale, The Extra Pharmacopoeia, Thirty-Second Edition (The Pharmaceutical Press, London, 1999) に見ることができ、これらすべては、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0062】
化合物についての「精製された」、「精製された形態の」および「単離および精製された形態の」なる用語は、合成プロセス(例えば反応混合物)または天然源またはそれらの組合せから単離された後の該化合物の物理的状態を指す。したがって、化合物についての「精製された」、「精製された形態の」および「単離および精製された形態の」なる用語は、本明細書に記載または当業者に周知の標準的な分析技術により特徴付けるのに十分な純度の、精製プロセスまたは本明細書に記載もしくは当業者に周知のプロセス(例えばクロマトグラフィー、再結晶化、LC-MSおよびLC-MS/MS技術など)から得られた後の該化合物の物理的状態を指す。
【0063】
他に断らない限り、本開示の化合物、例えば化合物Iまたは1.1~1.25は、遊離または塩、例えば酸付加塩の形態で存在し得る。十分に塩基性である本発明の化合物の酸付加塩は、例えば無機または有機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、トルエンスルホン酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン、パモ酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセチルサリチル酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などとの酸付加塩である。また、十分に酸性である本発明の化合物の塩は、アルカリ金属塩、例えばナトリウムまたはカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムまたはマグネシウム塩、アンモニウム塩、または生理学的に許容されるカチオンを提供する有機塩基との塩、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ピペリジン、モルホリンまたはトリス-(2-ヒドロキシエチル)-アミンとの塩である。特定の実施態様において、本発明の化合物の塩は、トルエンスルホン酸付加塩である。
【0064】
本開示の化合物は、医薬品としての使用が意図され、それ故に医薬的に許容される塩が好ましい。医薬用途に適さない塩は、例えば本発明の遊離化合物の単離または精製に有用であり得て、それ故に本開示の化合物の範囲に含まれる。
【0065】
本開示の化合物は、1つ以上のキラル炭素原子を含み得る。したがって、化合物は、個々の異性体、例えばエナンチオマーまたはジアステレオマー形態で、または個々の形態の混合物、例えばラセミ/ジアステレオマー混合物として存在する。不斉中心が(R)-、(S)-、または(R,S)-配置にあるあらゆる異性体が存在し得る。本発明は、個々の光学活性異性体両方およびその混合物(例えばラセミ/ジアステレオマー混合物)を包含すると理解されるべきである。したがって、本発明の化合物は、ラセミ混合物であってもよく、または、例えば主に純粋、または実質的に純粋な異性体形態、例えば70%超のエナンチオマー/ジアステレオマー過剰率(「ee」)、好ましくは80%超のee、より好ましくは90%超のee、最も好ましくは%超のeeであってもよい。該異性体の精製および該異性体混合物の分離は、当該技術分野で公知の標準的な技術(例えば、カラムクロマトグラフィー、分取TLC、分取HPLC、擬似移動床など)により達成され得る。
【0066】
二重結合または環についての置換基の性質による幾何異性体は、シス(Z)またはトランス(E)体であり得て、両方の異性体が本発明の範囲に包含される。
【0067】
本開示の化合物は、安定または不安定な同位体を包含することも意図される。安定同位体は、同種の豊富な核種(すなわち元素)と比較して1つの追加の中性子を含有する非放射性同位体である。このような同位体を含む化合物の活性は保持され、このような化合物はまた非同位体類似体の薬物動態の測定に関して有用性を有することが予想される。例えば、本開示の化合物の特定位置における水素原子は、重水素(非放射性の安定な同位体)で置き換えられ得る。公知の安定同位体の例としては、重水素、13C、15N、18Oが挙げられるがこれらに限定されない。あるいは、同種の豊富な核種(すなわち元素)と比較して複数の追加の中性子を含有する放射性同位体である不安定同位体、例えば、123I、131I、125I、11C、18Fは、I、CおよびFの対応する豊富な種に置き換わり得る。本発明の化合物の有用な同位体の別の例は、11C同位体である。これらの放射性同位体は、本発明の化合物の放射性イメージングおよび/または薬物動態試験に有用である。
【0068】
したがって、式Iの化合物の範囲によって具体的に提供される重水素化に加えて、本開示は、1つ以上の炭素原子、窒素原子または酸素原子が安定または不安定な同位体(例えば、11C、13C、15N、18O、18F)に置き換えられており、さらに1つ以上の水素原子がトリチウム(3H)に置き換えられている式Iによる化合物をさらに想定する。これらの化合物は、例えば、構造決定(例えば核磁気共鳴または質量スペクトル分析による)、および代謝および排泄経路を解明するおよび潜在的な薬物候補のクリアランスを測定するラジオイメージング研究の目的に有用である。
【0069】
本開示の化合物は、デポー製剤、例えば組成物3および3.1~3.4のいずれかに記載のポリマーマトリックス中に本発明の化合物を分散、溶解または被包させることにより、デポー製剤として含まれ得て、化合物は、ポリマーが時間とともに分解するにつれて持続的に放出される。ポリマーマトリックスからの本発明の化合物の放出は、化合物を例えば医薬デポー組成物から、その医薬デポーが投与される対象体、例えば温血動物、例えばヒトへ制御および/または遅延および/または持続放出することを提供する。したがって、医薬デポーは、本発明の化合物を対象体へ特定の疾患または病状の治療に有効な濃度にて長時間、例えば14~180日間、好ましくは約30、約60または約90日間にわたって送達する。
【0070】
本発明の組成物(例えば本発明のデポー組成物)におけるポリマーマトリックスに有用なポリマーは、ヒドロキシ脂肪酸のポリエステルおよびその誘導体、または他の化学物質、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリクエン酸、ポリリンゴ酸、ポリ-β-ヒドロキシ酪酸、ε-カプロラクトン開環重合体、乳酸-グリコール酸共重合体、2-ヒドロキシ酪酸-グリコール酸共重合体、ポリ乳酸-ポリエチレングリコール共重合体またはポリグリコール酸-ポリエチレングリコー共重合体)、アルキルα-シアノアクリレート(例えばポリ(ブチル2-シアノアクリレート))、ポリアルキレンオキサレート(例えばポリトリメチレンオキサレートまたはポリテトラメチレンオキサレート)、ポリオルトエステル、ポリカルボネート(例えばポリエチレンカルボネートまたはポリエチレンプロピレンカルボネート)、ポリオルト-カルボネート、ポリアミノ酸(例えばポリ-γ-L-アラニン、ポリ-γ-ベンジル-L-グルタミン酸またはポリ-y-メチル-L-グルタミン酸)、ヒアルロン酸エステルなどのポリマーを含み得て、これらポリマーの1つ以上が用いられ得る。
【0071】
ポリマーが共重合体である場合、それは、ランダム、ブロックおよび/またはグラフト共重合体のいずれかであり得る。上記α-ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシジカルボン酸およびヒドロキシトリカルボン酸が、その分子中に光学活性を有する場合、D-異性体、L-異性体および/またはDL-異性体のいずれか1つが用いられ得る。とりわけ、α-ヒドロキシカルボン酸ポリマー(好ましくは、乳酸-グリコール酸重合体)、そのエステル、ポリ-α-シアノアクリル酸エステルなどが用いられ得て、乳酸-グリコール酸共重合体(ポリ(乳酸-α-グリコール酸)またはポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)とも称され、以下PLGAを称する)が好ましい。したがって、一態様において、ポリマーマトリックスに有用なポリマーは、PLGAである。本明細書で用いられる、用語PLGAは、乳酸の重合体を含む(ポリ乳酸、ポリ(乳酸)またはPLAとも称される)。最も好ましくは、ポリマーは、生分解性ポリ(d,l-乳酸-グリコール酸共重合体)ポリマーである。
【0072】
好ましい実施態様において、本発明のポリマーマトリックスは、生体適合性および生分解性である。用語「生体適合性」は、毒性がなく、発癌性がなく、そして体組織において著しく炎症を誘導しない高分子物質と定義される。マトリックス物質は、生分解性であるべきであり、ここで、高分子物質は、身体で容易に排泄可能な生成物に体内プロセスによって分解されるべきであり、体内に蓄積されるべきでない。生体分解の生成物はまた、ポリマーマトリックスが身体と生体適合性であるという点で身体と生体適合性であるべきである。ポリマーマトリックス物質の特定の有用な例としては、ポリ(グリコール酸)、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-乳酸、前記の共重合体、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルトカルボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸-カプロラクトン)、ポリ無水物、および天然ポリマー、例えばアルブミン、カゼイン、およびワックス、例えばグリセロールモノおよびジステアレートなどが挙げられる。本発明の実施において用いるのに好ましいポリマーは、dl(ポリ乳酸-グリコール酸共重合体)である。このような共重合体におけるラクチド対グリコリドのモル比は、およそ75:25から50:50の範囲であることが好ましい。
【0073】
有用なPLGAポリマーの重量平均分子量は、約5,000~500,000ダルトン、好ましくは約150,000ダルトンであり得る。達成すべき分解速度に依存して、種々の分子量のポリマーを用い得る。薬物放出の拡散メカニズムについて、ポリマーは、すべての薬物がポリマーマトリックスから放出されるまで無傷のままであるべきであり、その後分解するべきである。薬物はまた、高分子添加剤が生体浸食する(bioerode)場合、ポリマーマトリックスから放出され得る。
【0074】
PLGAは、任意の慣用の方法により製造されてもよく、または商業的に入手してもよい。例えば、PLGAは、環状ラクチド、グリコリドなどから適切な触媒での開環重合により製造され得る(欧州特許第58481号;Effects of polymerization variables on PLGA properties: molecular weight, composition and chain structure参照)。
【0075】
PLGAは、生理学的条件下で(例えば、ヒトなどの温血動物の組織に見ることができる水および生物学的酵素の存在下で)加水分解可能であって酵素的に切断可能であるエステル結合の分解により固形ポリマー組成物全体が分解して乳酸およびグリコール酸を形成することによって生分解性であると考えられる。乳酸およびグリコール酸のいずれも、水溶性で、通常の代謝の無毒性の生成物であり、これは、さらに分解されて、二酸化炭素と水を形成する。言い換えれば、PLGAは、水の存在下で、例えばヒトなどの温血動物の体内でそのエステル基の加水分解によって分解されて、乳酸およびグリコール酸を生じ、酸性微小環境を作ると考えられる。乳酸およびグリコール酸は、通常の生理学的条件下のヒトなどの温血動物の体内における様々な代謝経路の副産物であり、それ故に良好な忍容性を示し、最小の全身毒性をもたらす。
【0076】
別の一実施態様において、本発明に有用なポリマーマトリックスは、ポリエステルの構造が星形である星形ポリマーを含み得る。これらのポリエステルは、酸性残基鎖により囲まれる中心部分として単一のポリオール残基を有する。ポリオール部分は、例えばグルコースまたはマンニトールであり得る。これらのエステルは、公知であって、英国特許出願公開第2,145,422号および米国特許第5,538,739号に記載されており、これら各出願の内容は、出典明示により本明細書の一部とする。
【0077】
星形ポリマーは、ポリヒドロキシ化合物、例えばポリオール、例えばグルコースまたはマンニトールを開示剤として用いて製造され得る。ポリオールは、少なくとも3つのヒドロキシ基を含有し、最大約20,000ダルトンの分子量を有し、エステルの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、例えば平均3つのヒドロキシ基を有するポリオールはエステル基の形態であり、これらはポリラクチドまたはコ-ポリラクチド鎖を含有する。分岐ポリエステル、例えばポリ(d,l-乳酸-グリコール酸共重合体)は、複数のポリラクチド直鎖を有する中心グルコース部分を有する。
【0078】
前記の本発明のデポー組成物(例えばポリマーマトリックスにおける組成物6および6.1~6.10)は、本発明の化合物が分散または被包しているマイクロ粒子もしくはナノ粒子の形態または液体形態のポリマーを含み得る。「マイクロ粒子」は、粒子のマトリックスとして作用するポリマー内に本発明の化合物が分散または溶解している溶液または固体形態のいずれかで本発明の化合物を含有する固形粒子を意味する。ポリマーマトリックスの適切な選択により、得られたマイクロ粒子が拡散放出性および生分解放出性の両方を示すマイクロ粒子製剤が作られ得る。
【0079】
ポリマーがマイクロ粒子形態であるとき、マイクロ粒子は、任意の適切な方法を用いて、例えば溶媒蒸発法または溶媒抽出法により製造され得る。例えば、溶媒蒸発法において、本発明の化合物およびポリマーを、揮発性有機溶媒(例えば、アセトンなどのケトン、クロロホルムまたは塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、ハロゲン化芳香族性炭化水素、ジオキサンなどの環状エーテル、酢酸エチルなどのエステル、アセトニトリルなどのニトリル、またはエタノールなどのアルコール)に溶解させて、適切なエマルション安定化剤(例えばポリビニルアルコール、PVA)を含有する水相に分散させ得る。その後、有機溶媒を蒸発させて、本発明の化合物が被包されたマイクロ粒子を提供する。溶媒抽出法において、本発明の化合物およびポリマーを、極性溶媒(例えばアセトニトリル、ジクロロメタン、メタノール、酢酸エチルまたはギ酸メチル)に溶解させて、その後、水相(例えば水/PVA溶液)に分散させ得る。エマルションを調製して、本発明の化合物が被包されたマイクロ粒子を提供する。スプレードライは、マイクロ粒子を製造するための別の製剤技術である。
【0080】
本発明のマイクロ粒子を製造する別の方法はまた、米国特許第4,389,330号および米国特許第4,530,840号の両方に記載されている。
【0081】
本発明のマイクロ粒子は、注射可能な組成物における使用に許容されるサイズ範囲のマイクロ粒子を製造できる任意の方法によって製造され得る。一の好ましい製造方法は、米国特許第4,389,330号に記載されているものである。この方法において、活性剤を適切な溶媒に溶解または分散させる。活性剤含有溶媒に、所望の活性剤負荷を有する生成物を提供する活性成分と相対的な量のポリマーマトリックス物質を加える。所望により、マイクロ粒子生成物の成分すべてを溶媒媒体中で一緒に混合し得る。
【0082】
本発明の化合物および本発明の実施において用いられ得るポリマーマトリックス物質の溶媒としては、有機溶媒、例えばアセトン;ハロゲン化炭化水素、例えばクロロホルム、塩化メチレンなど;芳香族炭化水素化合物;ハロゲン化芳香族炭化水素化合物;環状エーテル;アルコール、例えばベンジルアルコール;酢酸エチルなどが挙げられる。一の実施態様において、本発明の実施における使用のための溶媒は、ベンジルアルコールと酢酸エチルの混合物であり得る。本発明に有用なマイクロ粒子の製造に関する更なる情報は、米国特許出願公開第2008/0069885号に見ることができ、該出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0083】
マイクロ粒子に組み込まれる本開示の化合物の量は、通常約1重量%~約90重量%、好ましくは30~50重量%、より好ましくは35~40重量%の範囲である。重量%は、マイクロ粒子の総重量当たりの本開示の化合物部分を意味する。
【0084】
医薬デポー組成物は、医薬的に許容される希釈剤または担体、例えば水混和性の希釈剤または担体を含み得る。
【0085】
浸透圧による制御放出経口送達システム組成物の詳細は、欧州特許出願公開第1539115号(米国特許出願公開第2009/0202631号)および国際公開第2000/35419号(米国特許出願公開第2001/0036472号)に見ることができ、これら各出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0086】
「治療有効量」は、疾患または障害に罹患している対象体に投与されるとき、治療に予定している時間にわたって疾患または障害の軽減、寛解または退行を生じるのに有効な(例えば医薬デポーにおいて含有されるような)本発明の化合物の量である。
【0087】
本発明の実施に用いられる投与量は、例えば治療されるべき特定の疾患または状態、用いられる本発明の特定の化合物および所望の療法に応じて当然変化する。他に断らない限り、投与のための本発明の化合物の量(遊離塩基または塩形態として投与される)は、遊離塩基形態の本発明の化合物の量を指すかまたはそれに基づく(すなわち、量の計算は遊離塩基量に基づく)。
【0088】
本発明の化合物は、経口、非経腸(静脈内、筋肉内または皮下)または経皮を含む任意の満足な経路によって投与され得るが、好ましくは経口投与される。特定の実施態様において、本発明の化合物は、例えばデポー製剤中であり、好ましくは非経腸、例えば注射により投与される。
【0089】
一般に、方法1および1.1~1.31、方法2および2.1~2.10ならびに方法3および3.1~3.40、または前記の本開示の化合物の使用、例えば、少なくともうつ病、精神病の組合せ、例えば、上記の(1)うつ病に罹患している患者における精神病、例えば統合失調症;(2)精神病、例えば統合失調症に罹患している患者におけるうつ病;(3)精神病、例えば統合失調症またはパーキンソン病に関連する気分障害;(4)精神病、例えば統合失調症またはパーキンソン病に関連する睡眠障害;および(5)物質嗜癖、物質使用障害および/または物質誘発障害などの疾患の組合せの治療についての満足な結果は、好ましくは経口投与により、1日1回約1mg~100mg程度、好ましくは2.5mg~50mg、例えば1日1回2.5mg、5mg、l0mg、20mg、30mg、40mgまたは50mgの投与量にて経口投与することで得られることが示されている。
【0090】
方法2または2.1~2.10または前記の本開示の化合物の使用、例えば睡眠障害単独の治療についての満足な結果は、好ましくは経口投与により、1日1回遊離または医薬的に許容される塩形態で本発明の化合物を約2.5mg~5mg程度、例えば2.5mg、3mg、4mgまたは5mgの投与量にて経口投与することで得られることが示されている。
【0091】
方法I-Aまたは方法II-A、または3.1~3.40のいずれかについての満足な結果は、1日1回、l00mg未満、好ましくは50mg未満、例えば40mg未満、30mg未満、20mg未満、l0mg未満、5mg未満、2.5mg未満にて得られることが示されている。方法II-Aまたは3.1~3.40のいずれかついての満足な結果は、5mg未満、好ましくは2.5mg未満にて得られることが示されている。
【0092】
デポー組成物がより長期間の作用を達成するために用いられる本明細書に記載の障害の治療のために、投与量は、短期作用組成物と比較して高く、例えば1~100mgより高く、例えば25mg、50mg、100mg、500mg、1,000mg、または1000mg超である。本開示の化合物の作用持続時間は、ポリマー組成、すなわちポリマー:薬物の比率およびマイクロ粒子サイズの操作により制御され得る。本発明の組成物がデポー組成物である場合、注射による投与が好ましい。
【0093】
本開示の化合物の医薬的に許容される塩は、慣用の化学方法により塩基性または先生部分を含有する親化合物から合成され得る。一般に、このような塩は、これら化合物の遊離塩基形態を化学量論量の適切な酸と水もしくは有機溶媒またはその2つの混合物中で反応させることにより製造され得て;一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。これら塩、例えばアモルファスまたは結晶形態のトルエンスルホン酸塩の製造についての更なる詳細については、国際特許出願第PCT/US08/03340号および/または米国仮出願第61/036,069号)(米国特許出願公開第2011/112105号に各々対応する)に見ることができる。
【0094】
本開示の化合物を含む医薬組成物は、従来の希釈剤または添加剤(例としてはゴマ油があげられるがこれに限定されない)およびガレヌス分野で公知の技術を用いて製造され得る。したがって、経口剤形は、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤などを含み得る。
【実施例】
【0095】
本発明の化合物の製造方法:
中間体を含む式AおよびBの化合物の合成方法は、国際公開第2017/132408号として公開されている国際出願第PCT/US2017/15178号、および米国特許出願公開第2017/319580号に開示されている。
【0096】
他の本開示の化合物の本質的なコアは、上記刊行物に開示され、当業者に知られている類似の手順により製造され得る。本開示の特定の重水素化化合物は、一般的に、重水素化試薬が利用可能である場合、市販の重水素化試薬を非重水素化試薬に代えることによる類似の手段によって製造され得る。
【0097】
本発明の化合物のジアステレオマーの単離または精製は、当該技術分野で知られている慣用方法、例えば、カラム精製法、分取薄層クロマトグラフィー、分取HPLC、結晶化、トリチュレーション、擬似移動床法などによって行うことができる。
【0098】
本開示の化合物の塩は、米国特許第6,548,493号;第7,238,690号;第6,552,017号;第6,713,471号;第7,183,282号;米国再発行特許第39680号;米国再発行特許第39679号;および国際公開第2009/114181号(米国特許出願公開第2011/112105号)(それぞれの記載内容は全体として出典明示により本明細書の一部とする)に同様に記載されているように製造することができる。
【0099】
製造された化合物のジアステレオマーは、室温にてChiralpak(登録商標)AY-H(5μ、30×250mm)を用いてHPLCによって分離し、10%エタノール/90%ヘキサン/0.1%ジメチルエチルアミンで溶出することができる。ピークを230nmにて検出して、98~99.9%eeのジアステレオマーを生成することができる。
【0100】
実施例1:(6bR,10aS)-1,1-d
2-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの合成
【化8】
【0101】
工程1:(4aS,9bR)-エチル6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレート(1.60g、8.0mmol)、2-クロロ-2,2-ジ-ジュウテリオアセトアミド(2.5g、26mmol)およびKI(2.68g、16mmol)のジオキサン(30mL)中の脱気混合物に、ジイソプロピルエチルアミン(3.0mL、16mmol)を、室温にて加える。その後、反応混合物を、激しく撹拌下5日間104℃に加熱する。溶媒を真空下除去し、残渣をジクロロメタン(50mL)中に懸濁させ、水(20mL)で抽出する。有機相を分離し、無水K
2CO
3で乾燥し、残渣まで濃縮する。生成物を、ヘキサン中で0~100%酢酸エチルのグラジェントを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、(4aS,9bR)-エチル5-(2-アミノ-1,1-d
2-2-オキソエチル)-6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレートを褐色の油状物として得る(1.26g、収率41%)。MS (ESI) m/z 384.1 [M+1]。出発物質の合成は、米国特許出願公開第2010/113781号に開示されている。反応スキームを以下に示す:
【化9】
【0102】
工程2:工程1の生成物(1.26g、3.3mmol)の脱気混合物に、K
2CO
3(1.0g、6.0mmol)、ジオキサン(6mL)中のCuI(132mg、0.69mmol)、およびN,N,N,N'-テトラメチルエチレンジアミン(0.3mL、12.0mmol)を、室温にて加える。反応混合物を99℃に加熱し、この温度にて20時間撹拌する。室温に冷却後、混合物を直接シリカゲルカラムに載せる。生成物を、100%酢酸エチルを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、(6bR,10aS)-エチル1,1-d
2-2-オキソ-2,3,6b,7,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(9H)-カルボキシレートを淡赤色の固体として得る(680mg、収率68%)。MS (ESI) m/z 318.2 [M+1]
+。反応スキームを以下に示す:
【化10】
【0103】
工程3:工程2の生成物(680mg、2.24mmol)をHBr溶液(酢酸中33%、10ml)中に室温にて懸濁させる。混合物を70℃に加熱し、70℃にてさらに2時間撹拌する。LC-MSは、反応完了を確認する。反応混合物を室温に冷却し、氷でさらに冷却する。酢酸エチル(60mL)を加えて、生成物の塩を沈殿させる。固体をろ過し、真空下乾燥する。生成物のHBr塩をメタノール(20mL)中に懸濁させ、ドライアイスおよび2-プロパノールで冷却する。アンモニア(メタノール中7N)を、pHが14以上になるまで加える。その後、溶媒を真空下除去して、粗製物(6bR,10aS)-1,1-d
2-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンを褐色の固体として得る(227mg、収率44%)。粗生成物をさらに精製することなく次の工程で直接用いる。MS (ESI) m/z 232.2 [M+1]
+。反応スキームを以下に示す:
【化11】
【0104】
工程4:工程3の粗生成物(227mg、0.98mmol)、1-(3-クロロプロキシ)-4-フルオロベンゼン(320μL、2.0mmol)およびKI(330mg、2.0mmol)のDMF(4mL)中の混合物を、アルゴンで3分間バブリングし、DIPEA(350μL、2mmol)を加える。得られた混合物を76℃に加熱し、この温度にて2時間撹拌する。室温に冷却後、溶媒を除去し、残渣を、酢酸エチル中で0~100%混合溶媒[酢酸エチル/メタノール/7N NH
3(10:1:0.1 v/v)]のグラジェントを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題生成物を褐色の固体として得る(110mg、収率28%)。
1HNMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.34 (s, 1H), 7.14 - 7.06 (m, 2H), 6.97 - 6.89 (m, 2H), 6.77 (d, J = 6.7 Hz, 1H), 6.64 (td, J = 7.5, 1.1 Hz, 1H), 6.58 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 3.97 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.30 - 3.17 (m, 2H), 2.92 - 2.81 (m, 1H), 2.70 - 2.58 (m, 1H), 2.47 - 2.28 (m, 2H), 2.10 (t, J = 11.6 Hz, 1H), 1.99 - 1.90 (m, 1H), 1.90 - 1.75 (m, 3H), 1.74 - 1.61 (m, 1H)。MS (ESI) m/z 384.2 [M+1]
+。反応スキームを以下に示す:
【化12】
【0105】
実施例2:(6bR,10aS)-8-(1,1,2,2,3,3-d
6-3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの合成
【化13】
【0106】
工程1:脱気したCH
3CN(5mL)に、p-フルオロフェノール(442mg、4.0mmol)、1,3-ジブロモプロパン-d
6(1.02g、4.9mmol)およびK
2CO
3(608mg、4.4mmol)を、撹拌下加える。得られた混合物を80℃に加熱し、80℃にて一晩撹拌する。室温に冷却後、溶媒を除去し、残渣をジクロロメタン(50mL)中に懸濁させ、水(20mL)で抽出する。水相を分離し、ジクロロメタン(10mL)でさらに抽出する。合わせた有機相を無水Na
2CO
3で乾燥し、濃縮して、粗生成物1-(3-ブロモ-1,1,2,2,3,3-d
6-プロポキシ)-4-フルオロベンゼンを無色の油状物として得る。0.98gの粗生成物を得て、これをさらに精製することなく次の工程で直接用いる。反応スキームを以下に示す:
【化14】
【0107】
工程2:(6bR,10aS)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンHBr塩(900mg、2.9mmol)、1-(3-ブロモ-1,1,2,2,3,3-d
6-プロポキシ)-4-フルオロベンゼン(500mg、2.1mmol)およびヨウ化カリウム(500mg、3.6mmol)のDMF(5mL)中の混合物を、アルゴンで3分間バブリングし、ジ-イソプロピルエチルアミン(550μL、3.16mmol)を加える。得られた混合物を78℃に加熱し、この温度にて2時間撹拌する。室温に冷却後、溶媒を除去し、残渣をジクロロメタン(50mL)中に懸濁させ、水(20mL)で抽出する。水相を分離し、ジクロロメタン(10mL)でさらに抽出する。合わせた有機相を無水Na
2CO
3で乾燥し、濃縮する。最終生成物を、酢酸エチル中で0~80%混合溶媒[酢酸エチル/メタノール/7N NH
3(10:1:0.1 v/v)]のグラジェントを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題生成物を淡褐色の固体として得る(400mg、収率49%)。
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.73 (s, 1H), 7.00 - 6.90 (m, 2H), 6.89 - 6.77 (m, 3H), 6.77 - 6.69 (m, 1H), 6.61 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 3.95 (d, J = 14.5 Hz, 1H), 3.59 - 3.19 (m, 3H), 3.10 - 2.59 (m, 2H), 2.28 (s, 1H), 2.01 (t, J = 16.0 Hz, 3H)。MS (ESI) m/z 388.2 [M+1]
+。反応スキームを以下に示す:
【化15】
【0108】
実施例3:(6bR,10aS)-8-(1,1,3,3-d
4-3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの合成
【化16】
【0109】
工程1:脱気したCH
3CN(5mL)に、p-フルオロフェノール(546mg、4.9mmol)、1,3-ジブロモ-1,1,3,3-d
4-プロパン(1.1g、5.4mmol)およびK
2CO
3(730mg、5.4mmol)を、撹拌下加える。得られた混合物を80℃に加熱し、80℃にて21時間撹拌する。室温に冷却後、溶媒を除去し、残渣をジクロロメタン(50mL)中に懸濁させ、水(20mL)で抽出する。水相を分離し、ジクロロメタン(10mL)でさらに抽出する。合わせた有機相を無水MgSO
4で乾燥し、濃縮して、粗生成物1-(3-ブロモ-1,1,3,3-d
4-プロポキシ)-4-フルオロベンゼンを淡黄色の油状物として得る(0.82g)。それをさらに精製することなく次の工程で直接用いる。反応スキームを以下に示す:
【化17】
【0110】
工程2:(6bR,10aS)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(930mg、4.1mmol)、1-(3-ブロモ-1,1,3,3-d
4-プロポキシ)-4-フルオロベンゼン(500mg、2.1mmol)およびヨウ化カリウム(560mg、3.4mmol)のDMF(5mL)中の混合物を、アルゴンで3分間バブリングし、ジイソプロピルエチルアミン(550μL、3.2mmol)を加える。得られた混合物を78℃に加熱し、この温度にて2時間撹拌する。室温に冷却後、溶媒を除去し、残渣をジクロロメタン(50mL)中に懸濁させ、水(20mL)で抽出する。水相を分離し、ジクロロメタン(10mL×2)でさらに抽出する。合わせた有機相を無水MgSO
4で乾燥し、濃縮する。最終生成物を、酢酸エチル中で0~80%混合溶媒[酢酸エチル/メタノール/7N NH
3(10:1:0.1 v/v)]のグラジェントを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、生成物を、酢酸エチル中で0~100%混合溶媒[酢酸エチル/メタノール(20:1 v/v)]のグラジェントを用いて、塩基性アルミナカラムクロマトグラフィーで精製する。表題生成物を白色の固体として得る(248mg、収率31%)。
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.80 (s, 1H), 7.01 - 6.88 (m, 2H), 6.87 - 6.77 (m, 3H), 6.73 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 6.59 (dd, J = 7.8, 1.0 Hz, 1H), 3.96 (d, J = 14.6 Hz, 1H), 3.39 (d, J = 14.5 Hz, 1H), 3.37 - 3.24 (m, 2H), 2.92 (d, J = 9.9 Hz, 1H), 2.74 (s, 1H), 2.25 (d, J = 14.3 Hz, 1H), 1.98 (dd, J = 37.6, 12.2 Hz, 5H)。MS (ESI) m/z 386.2 [M+1]
+。反応スキームを以下に示す:
【化18】
【0111】
実施例4:(6bR,10aS)-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(式Aの化合物)および4-((6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-1-(4-フルオロ-フェニル)-ブタン-1-オン(式Bの化合物)の合成
米国特許出願公開第2017/319580号は、式AおよびBの化合物の合成を実施例3および1としてそれぞれ開示している:
【化19】
【0112】
式Aの化合物および式Bの化合物の両方を、(6bR、10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-カルボン酸エチルエステルから合成する。このカルバメートエステルを、最初にHBr/酢酸溶液を用いて脱保護する。その後、得られたアミンを、適切なアルキル化剤(式Aの化合物については1-(3-クロロプロキシ)-4-フルオロベンゼン;式Bの化合物については4-クロロ-4'-フルオロブチロフェノン)と反応させ、所望の生成物を得る。
【0113】
実施例5:6bR,10aS)-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(式Aの化合物)および4-((6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-1-(4-フルオロ-フェニル)-ブタン-1-オン(式Bの化合物)の実験特性
米国特許出願公開第2017/319580号は、実施例1~10において式AおよびBの化合物の薬理特性を評価するいくつかの実験データを開示している。また、米国仮出願第62/639,244号(および国際公開第2019/023062号)は、これらの化合物についての更なる特性を開示している。これらの開示を以下に要約する。
【0114】
細胞および核内の受容体機能アッセイを、式Bの化合物について実施し、ヒトμオピエート受容体対する化合物のアゴニストおよびアンタゴニスト効果を測定する。化合物のアンタゴニスト効果は、IC50が1.3×10-6M、KBが1.4×10-7Mであることが分かった。
【0115】
受容体結合プロファイル試験を、式Bの化合物について実施し、結果はコントロール特異的結合のパーセントとして表され、IC
50値およびヒル係数(nH)を非線形回帰分析により決定する。下記の受容体親和性の結果を得る:
【表1】
【0116】
式AおよびBの化合物を、ヒトμオピエート受容体(μ1サブタイプ)を発現するCHO-K1を用いて、アゴニストおよびアンタゴニスト両方の機能受容体活性アッセイにおいて、ブプレノルフィン(μオピエートパーシャルアゴニスト)、ナロキソン(μオピエートアンタゴニスト)およびDAMGO(μオピエートフルアゴニスト)と比較する。結果は、式Aの化合物が、μ受容体の弱いアンタゴニストであり、ナロキソンと比較して極めて高いIC
50を示し、適度に高い親和性であるが、パーシャルアゴニストであり、DAMGOに対してわずか約22%アゴニスト活性を示す(ブプレノルフィンのDAMGOに対する約79%活性と比較して)ことを示している。式Bの化合物はまた、適度に強いパーシャルアゴニスト活性を有することが示されている。
【表2】
【0117】
式AおよびBの化合物を、マウスDOI誘発性頭部痙攣(Head Twitch)モデルでも試験する。R-(-)-2,5-ジメトキシ-4-ヨードアンフェタミン(DOI)は、セロトニン5-HT
2受容体ファミリーのアゴニストである。マウスに投与すると、頻繁な頭部痙攣に関連する行動プロファイルが生じる。所期の時間中のこれらの頭部痙攣の頻度を、脳内の5-HT
2受容体のアゴニズムおよびアンタゴニズムの推定値とすることができる。DOIの皮下注射30分後のマウスの経口投与において、下記結果を得て、これは両方の化合物がDOI誘発性頭部痙攣を阻止するのに有効であることを示している。
【表3】
【0118】
式AおよびBの化合物を、拘束されたマウスの疼痛反射閾値によって示される鎮痛作用の測定であるマウステールフリック(Tail Flick)アッセイでも試験する。雄性CD-1マウスを、尾が加熱されるように、高強度赤外熱源の収束ビーム下にその尾がくるように置く。加熱装置を付けてから熱の経路の外側にマウスが尾を動かすまでの時間量(潜時(latency))を記録する。モルヒネの投与により、鎮痛作用がもたらされ、これにより、熱に対するマウスの反応の遅延が生じる(潜時の増大)。モルヒネ(MOR)アンタゴニスト、すなわちナロキソン(NAL)の前投与により、この効果は逆転し、正常な潜時となる。この試験は、μオピエート受容体のアンタゴニズムを計測するための機能アッセイとして用いられる。群1のマウスは、陰性対照であり、試験の30分および60分前の両方にビヒクルを投与される。群2および3のマウスは、陽性対照であり、試験の前に、ビヒクルの後、モルヒネを投与されるか、またはナロキソンの後、モルヒネを投与される。群4、5および6のマウスは、試験対象であり、試験の60分前に、3つの用量のうちの1つの式AまたはBの化合物、および試験の30分前にモルヒネを投与される。試験結果を、測定した平均テールフリック潜時を秒で下記に示す。
【表4】
【0119】
第2の同様のマウステールフリック試験を実施して、3つの異なる用量の式Aの化合物での処置の前に、ナロキソンで処置したマウスに対する影響を試験する。結果を、平均潜時として秒で表に示す。
【表5】
【0120】
第1の試験は、式AおよびBの化合物の両方が、モルヒネ誘発性μオピエート受容体活性の用量依存的な遮断を発揮することを示している。第2の試験は、より高用量の式Aの化合物が、用量依存的なμオピエートアゴニスト活性を発揮することを示している。したがって、これらの化合物は、μオピエート受容体のパーシャルアゴニストおよびパーシャルアンタゴニストである。
【0121】
式AおよびBの化合物をマウスCNSリンタンパク質プロファイルアッセイでも評価する。選択した重要な中枢神経系タンパク質についてのタンパク質リン酸化の程度をマウスの側坐核において測定する。試験したタンパク質は、ERK1、ERK2、Glu1、NR2BおよびTH(チロシンヒドロキシラーゼ)を含み、結果を抗精神病薬のリスペリドンおよびハロペリドールと比較する。結果は、式Aの化合物も式Bの化合物もTHリン酸化またはNR2Bリン酸化に顕著な効果を有せず、GluR1およびERK2リン酸化にわずかな効果を有することを示している。対照的に、ハロペリドールは、THリン酸化を400~500%増加をさせ、これは、式AおよびBの化合物がドーパミン代謝を妨害しないことを示唆している。
【0122】
式Aの化合物を、OCDについてのマウスのガラス玉覆い隠し(marble-burying)モデルでも試験する。ガラス玉覆い隠し試験を、げっ歯類における反復行動および不安関連行動を測定するために用いる。ラットおよびマウスが有害または無害な物体を寝床に埋めるという観察に基づいており、OCDなどの反復行動障害の処置における薬理学的介入の効果を測定するための動物モデルとして用いられている。選択的mGluR5グルタメート受容体アンタゴニストのMPEP(2-メチル-6-(フェニルエチニル)ピリジン)を陽性対照として用いる。マウスに所望の薬物を投与し、ガラス玉と寝床を備えたケージに入れ、30分後にマウスによって埋められたビー玉の数を測定する。結果を下記表に示し、式Aの化合物がOCD症状を用量依存的に減少させることを示している。
【表6】
【0123】
式Aの化合物を、雄性Sprague-Dawleyラットへの反復(28日)毎日投与中にさらに評価して、投薬に対する薬理効果をモニターし、薬理学的耐性が生じるかを決定する。モルヒネを、モデルの妥当性を確保するために陽性対照として、そして同様の薬理学的クラスからの参考対照薬として用いる。結果は、0.3および3mg/kgのいずれおける実施例3の化合物の4回の反復投与は、28日間の皮下投与中に耐性を生じないことを示している。さらに、離脱時に、行動的および身体的兆候の同様であるが減少するプロファイルがより高用量で観察され、これは、臨床的意義があるとは考えられない。したがって、全体として、実施例3の化合物は、投与中止に対する身体的依存症候群を生じないことが分かった。対照的に、モルヒネの反復投与は、この試験において耐性および依存の明確な兆候を生じることが示されており、体重、食物と水の摂取、直腸温度および臨床的兆候の変化が、耐性および離脱誘発依存の発生と一致する。
【0124】
式Aの化合物を、マウスにおいてオキシコドン依存離脱試験でも評価する。オキシコドンを、8日間にわたって用量を増加させながらマウスに投与して、身体的依存を誘発する。9日目(the night day)に、2用量のうちの1つの式Aの化合物をマウスに投与し、続いてビヒクルまたはナロキソンいずれかを注射する。その後、マウスを、オピエート離脱の兆候および症状についてモニターする。結果は、式Aの化合物が、オピエート依存マウスにおいてオピエート投与の突然の中止後にオピエート離脱の兆候および症状を用量依存的に減少させることを示している。
【0125】
式Aの化合物を、炎症性疼痛モデルのマウスホルマリン足(formalin paw)試験でも評価する。マウスの後足への2.5%ホルマリン溶液の皮下注射は、急性疼痛反応および遅延炎症反応の二相性反応をもたらす。ホルマリン投与の30分前に、同じ足を、ビヒクル、モルヒネ、または3つの用量のうち1つの式Aの化合物で前処置する。結果は、式Aの化合物が、モルヒネ陽性対照に匹敵する程度まで、初期の急性疼痛反応および後期の遅延炎症反応の量上を用量依存的に減弱することを示している。
【0126】
実施例6:(6bR,10aS)-8-(3-(2,3,5,6-テトラジュウテリオ-4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン
【化20】
【0127】
脱気したDMF(2mL)に、p-フルオロフェノール-d5(250mg、2.13mmol)を、撹拌下加える。得られた溶液を氷で5分間冷却する。NaH(約70mg、95%)を、一度に上記溶液に加え、混合物を室温にて10分間撹拌する。1,3-ジブロモプロパン(650μL)のDMF(2mL)中の溶液を滴下する。混合物を室温にて3.5時間撹拌し、その後75℃にて一晩撹拌する。反応混合物を冷却し、その後ろ過する。ろ液を濃縮し、得られた粗生成物を、ヘキサン中で0~10%酢酸エチルのグラジェントを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、1-(3-ブロモプロポキシ)-4-フルオロ-2,3,5,6-d4-ベンゼンを無色の油状物として得る(60mg、収率12%)。
【0128】
(6bR,10aS)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(230mg、1.0mmol)、1-(3-ブロモプロポキシ)-4-フルオロ-2,3,5,6-d4-ベンゼン(60mg、0.25mmol)およびKI(49mg、0.35mmol)のDMF(4mL)中の混合物を、アルゴンで3分間バブリングし、その後、DIPEA(50μL、0.28mmol)を加える。得られた混合物を76℃に加熱し、この温度にて2時間撹拌する。室温に冷却後、溶媒を除去し、残渣を、酢酸エチル中で0~100%混合溶媒[酢酸エチル/メタノール/7N NH3(10:1:0.1 v/v)]のグラジェントを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題生成物を白色の固体として得る(35mg、収率9.1%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 10.34 (s, 1H), 6.77 (dd, J = 7.2, 1.0 Hz, 1H), 6.63 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 6.58 (dd, J = 7.8, 1.1 Hz, 1H), 3.97 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.80 (d, J = 14.6 Hz, 1H), 3.30 - 3.14 (m, 3H), 2.92 - 2.80 (m, 1H), 2.70 - 2.59 (m, 1H), 2.46 - 2.30 (m, 2H), 2.16 - 2.04 (m, 1H), 2.01 - 1.90 (m, 1H), 1.90 - 1.74 (m, 3H), 1.68 (t, J = 11.0 Hz, 1H)。MS (ESI) m/z 386.2 [M+1]+。
【0129】
実施例7:(6bR,10aS)-8-(3,3-ジジュウテリオ-3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの合成
【化21】
【0130】
工程1:LiAlD4(850mg、20.2mmol)のTHF(25mL)中の混合物に、0℃にて激しく撹拌下3-(ベンジルオキシ)プロパン酸(3.2g、17.7mmol)を数回に分けて加える。混合物温度を、添加工程中5℃未満に維持する。その後、混合物を室温にて一晩撹拌し、0℃に冷却する。水(0.85mL)およびNaOH(15%、0.85mL)をゆっくり加えて、反応をクエンチする。溶媒を除去し、残渣をジクロロメタン(100mL)で希釈し、MgSO4で乾燥する。MgSO4をろ過し、ろ液を蒸発乾固する。生成物3-(ベンジルオキシ)-1,1-ジジュウテリオプロパン-1-オールを、蒼白色の固体として得る(2.86g、収率96%)。この生成物をさらに精製することなく次の工程で直接用いる。
【0131】
工程2:工程1の粗製物3-(ベンジルオキシ)-1,1-ジジュウテリオプロパン-1-オール(2.4g、14.3mmol)をTHF(30mL)に溶解させ、p-フルオロフェノール(1.6g、14.3mmol)、続いてPPh3(3.75g、14.3mmol)を加える。この混合物に、ジエチルアゾジカルボキシレート(2.3mL、14.6mmol)を撹拌下ゆっくり滴下した。混合物温度を、添加工程中に40~50℃内に維持する。室温にて一晩撹拌後、反応混合物を蒸発乾固する。残渣を、溶離剤としてヘキサン中で0~15%酢酸エチルのグラジェントを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製する。生成物1-(3-(ベンジルオキシ)-1,1-ジジュウテリオプロポキシ)-4-フルオロベンゼンを、蒼白色の固体として得る(1.89g、収率50%)。
【0132】
工程3:パラジウム活性炭(10%、0.5g)を、1-(3-(ベンジルオキシ)-1,1-ジジュウテリオプロポキシ)-4-フルオロベンゼン(1.89g、7.2mmol)のメタノール(45mL)中の溶液に室温にて加える。混合物を脱気し、水素を3回再充填し、その後、室温にて12時間水素雰囲気下撹拌する。反応終了後、固体をろ過し、ろ液を蒸発乾固する。残渣をジクロロメタン(40mL)に溶解させ、N、N-ジイソプロピルエチルアミン(1.7mL、11mmol)を加える。反応溶液を0℃に冷却し、塩化メシル(0.65mL、7.9mmol)を1分以内に滴下する。その後、反応混合物を撹拌下室温まで徐々に温める。室温にて0.5時間撹拌後、反応を水(20mL)でクエンチする。有機相を分離し、MgSO4で乾燥し、ろ過する。ろ液を蒸発乾固して、粗生成物3,3-ジジュウテリオ-3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルメタンスルホネートを得る(1.93g、収率100%)。この生成物をさらに精製することなく次の工程で直接用いる。MS (ESI) m/z 251.2 [M+1]+。
【0133】
工程4:粗製物(6bR,10aS)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(520mg、2.3mmol)および3,3-ジジュウテリオ-3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルメタンスルホネート(530mg、2.1mmol)のDMF(4mL)中の混合物を、アルゴンで3分間バブリングし、DIPEA(500μL、2.6mmol)を加える。得られた混合物を78℃に加熱し、この温度にて2時間撹拌する。その後、混合物を室温に冷却し、DMFを除去する。残渣をジクロロメタン(30mL)で処理し、水(10mL)で抽出する。有機相を分離し、K2CO3で乾燥し、ろ過する。ろ液を濃縮し、溶離剤として0.1%ギ酸を有する水中で0~20%アセトニトリルのグラジェントを用いて、セミ分取HPLCにより精製する。表題生成物を、緑色の固体として得る(121mg、収率14%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 10.35 (s, 1H), 7.09 (dd, J = 9.8, 7.9 Hz, 2H), 6.97 - 6.88 (m, 2H), 6.77 (dd, J = 7.2, 1.1 Hz, 1H), 6.63 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 6.57 (dd, J = 7.8, 1.2 Hz, 1H), 3.80 (d, J = 14.6 Hz, 1H), 3.33 - 3.27 (m, 1H), 3.27 - 3.16 (m, 2H), 2.86 (dd, J = 11.5, 6.3 Hz, 1H), 2.69 - 2.57 (m, 1H), 2.45 - 2.26 (m, 2H), 2.09 (td, J = 11.8, 2.5 Hz, 1H), 1.94 (dt, J = 14.2, 2.5 Hz, 1H), 1.89 - 1.73 (m, 3H), 1.67 (t, J = 11.0 Hz, 1H)。MS (ESI) m/z 396.2 [M+1]+。
【0134】
実施例8:(6bR,10aS)-1,1-ジジュウテリオ-8-(1,1,2,2,3,3-ヘキサジュウテリオ-3-(2,3,5,6-テトラジュウテリオ-4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの合成
【化22】
【0135】
4-フルオロフェノール-d5(500mg、4.3mmol)およびK2CO3(690mg、4.9mmol)のアセトニトリル(5mL)中の脱気した懸濁液に、1,3-ジブロモ-1,1,2,2,3,3-ヘキサジュウテリオプロパン(1.0g、4.8mmol)を、撹拌下加える。得られた混合物を80℃に加熱し、この温度にて一晩撹拌する。室温に冷却後、反応混合物を濃縮し、残渣を水(20mL)中に懸濁させ、ジクロロメタン(2×30mL)で抽出する。合わせたジクロロメタン相をNa2CO3で乾燥し、ろ過する。ろ液を濃縮して、粗生成物1-(3-ブロモ-1,1,2,2,3,3-ヘキサジュウテリオプロポキシ)-2,3,5,6-テトラジュウテリオ-4-フルオロベンゼンを無色の油状物として得る(1.0g、収率95%)。この生成物をさらに精製することなく次の工程で直接用いる。
【0136】
(6bR,10aS)-1,1-ジジュウテリオ-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンHBr塩(500mg、2.2mmol)、1-(3-ブロモ-1,1,2,2,3,3-ヘキサジュウテリオプロポキシ)-2,3,5,6-テトラジュウテリオ-4-フルオロベンゼン(500mg、2.0mmol)およびKI(380mg、2.3mmol)のDMF(5mL)中の混合物を、アルゴンで3分間バブリングし、ジ-イソプロピルエチルアミン(400μL、4.8mmol)を加える。得られた混合物を78℃この温度にて2時間撹拌する。室温に冷却後、溶媒を除去し、残渣をジクロロメタン(50mL)中に懸濁させ、混合物を水(20mL)で抽出する。水相を分離し、ジクロロメタン(10mL)で抽出する。合わせた有機相をNa2CO3で乾燥し、ろ過する。ろ液を濃縮し、酢酸エチル中で0~100%混合溶媒[酢酸エチル/メタノール/7N NH3(10:1:0.1 v/v)]のグラジェントを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、褐色の固体を得る(230mg)。この褐色の生成物を、溶離剤として0.1%ギ酸を有する水中で0~20%アセトニトリルのグラジェントを用いて、セミ分取HPLCによりさらに精製する。表題生成物を、白色の固体として得る(80mg、収率9%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 10.35 (s, 1H), 6.78 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 6.64 (td, J = 7.5, 1.2 Hz, 1H), 6.58 (dd, J = 7.7, 1.1 Hz, 1H), 3.30 - 3.25 (m, 1H), 3.22 (dt, J = 10.7, 6.4 Hz, 1H), 2.86 (ddt, J = 11.3, 6.2, 1.9 Hz, 1H), 2.64 (ddt, J = 11.4, 4.7, 2.4 Hz, 1H), 2.17 - 2.02 (m, 1H), 1.95 (dt, J = 14.3, 2.6 Hz, 1H), 1.80 (ddt, J = 14.2, 12.1, 4.7 Hz, 1H), 1.68 (tdd, J = 10.7, 6.0, 4.4 Hz, 1H)。MS (ESI) m/z 394.2 [M+1]+。
【0137】
実施例9:(6bR,10aS)-1,1-ジジュウテリオ-8-(1,1,2,2,3,3-ヘキサジュウテリオ-3-(4-フルオロフェノキシ)-プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの合成
【化23】
【0138】
工程1:4-フルオロフェノール(442mg、4.0mmol)およびK2CO3(608mg、4.4mmol)のアセトニトリル(5mL)中の脱気した懸濁液に、1,3-ジブロモ-1,1,2,2,3,3-ヘキサジュウテリオプロパン(1.0g、4.8mmol)を、撹拌下加える。得られた混合物を80℃に加熱し、この温度にて一晩撹拌する。室温に冷却後、反応混合物を濃縮し、残渣を水(20mL)中に懸濁させ、ジクロロメタン(2×30mL)で抽出する。合わせたジクロロメタン相をNa2CO3で乾燥し、ろ過する。ろ液を濃縮して、粗生成物1-(3-ブロモ-1,1,2,2,3,3-ヘキサジュウテリオプロポキシ)-4-フルオロベンゼンを無色の油状物として得る(0.98g)。この生成物をさらに精製することなく次の工程で直接用いる。
【0139】
工程2:(6bR,10aS)-1,1-ジジュウテリオ-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンHBr塩(900mg、2.9mmol)、1-(3-ブロモ-1,1,2,2,3,3-ヘキサジュウテリオプロポキシ)-4-フルオロベンゼン(500mg、2.1mmol)およびKI(500mg、3.6mmol)のDMF(5mL)中の混合物を、アルゴンで3分間バブリングし、ジ-イソプロピルエチルアミン(500μL、3.16mmol)を加える。得られた混合物を78℃この温度にて2時間撹拌する。室温に冷却後、反応混合物を蒸発乾固する。残渣をジクロロメタン(50mL)中に懸濁させ、水(20mL)で抽出する。水相を分離し、ジクロロメタン(10mL)で抽出する。合わせた有機相をNa2CO3で乾燥し、ろ過する。ろ液を濃縮し、酢酸エチル中で0~100%混合溶媒[酢酸エチル/メタノール/7N NH3(10:1:0.1 v/v)]のグラジェントを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製する して、表題化合物を淡褐色の固体として得る(400mg、収率49%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 10.34 (s, 1H), 7.15 - 7.05 (m, 2H), 6.93 (ddd, J = 6.8, 5.4, 3.3 Hz, 2H), 6.77 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 6.63 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 6.58 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 3.30 - 3.24 (m, 1H), 3.21 (dt, J = 12.9, 6.4 Hz, 1H), 2.85 (dd, J = 11.1, 6.4 Hz, 1H), 2.71 - 2.58 (m, 1H), 2.17 - 2.04 (m, 1H), 1.94 (d, J = 12.7 Hz, 1H), 1.87 - 1.74 (m, 1H), 1.73 - 1.62 (m, 1H)。MS (ESI) m/z 390.2 [M+1]+。
【0140】
実施例10:重水素化化合物の受容体結合活性
実施例1、3、6、7および9の化合物ならびに式Aの化合物を、CHOまたはHEK-293細胞株いずれかで発現されるヒト組み換え受容体を用いて、放射性リガンド結合アッセイにおいて試験する。試験した受容体は、ドーパミンD
1受容体(アンタゴニスト放射性リガンド)、ドーパミンD
2S受容体(アゴニスト放射性リガンド)、μオピオイド(MOP)受容体(アゴニスト放射性リガンド)、セロトニン5-HT
2A受容体(アゴニスト放射性リガンド)およびセロトニントランスポーター(SERT)(アンタゴニスト放射性リガンド)である。結合アッセイを、以下の表に記載の手順に従って実施する。
【表7】
1. Zhou, Q.Y. et al., Nature 347:76-80 (1990).
2. Grandy, D.K. et al., Proc. Natl. Acad. Scis. U.S.A., 86: 9762-66 (1989).
3. Wang, J.B. et al., FEBS Lett., 338: 217-22 (1994).
4. Bryant, H.U. et al., Life Sci., 15: 1259-68 (1996).
5. Tatsumi, M. et al., Eur. J. Pharmacol., 368: 277-83 (1999).
実施したすべてのアッセイについて、検出方法はシンチレーションカウンティングである。結果を、対照の特異的結合の割合([測定した特異的結合]/[対照特異的結合]×100)および対照特異的結合の阻害割合(100-[([測定した特異的結合]/[対照特異的結合]×100])として表す。
【0141】
【0142】
これらの結果は、本開示による重水素化化合物が、非重水素化類似体の式Aの化合物と比較して匹敵するインビトロ薬理学的効力を提供することを示している。しかしながら、このデータはまた、重水素化類似体の薬理学的活性が、式Aの化合物と類似するが、同一ではないことを示している。
【0143】
実施例11:重水素化化合物の薬物動態
第1の試験において、実施例2および8の化合物を、ラットにおいて標準的な方法を用いて式Aの化合物と比較する。各試験化合物を、ポリエチレングリコール400ビヒクルに溶解させ、10mg/kgの用量で経口投与するか、3mg/kgの用量で皮下投与する。薬物の血漿濃度を投与後0時間から72時間までの時点で測定する。結果を下記表に要約する。
【表9】
【0144】
これらの結果は、経口薬物動態の改善が、非重水素化式Aの化合物と比較して実施例2および8の化合物について観察されることを示している。得られた総血漿用量(AUCにより示される)が、重水素化化合物についてより高く、投与後2時間から12時間までのピーク時間中の薬物の血漿濃度は、重水素化化合物について一貫してより高いレベルを示す。
【0145】
これらの結果は、皮下投与されると(肝臓での初回通過代謝を回避する経路)、3つの化合物間での血漿濃度プロファイルの差異が著しく減衰することをさらに示している。重水素化化合物は、皮下投与されるとAUCのわずかな増加を示し続けるが、非重水素化化合物と比較した差異は有意ではない。
【0146】
経口および皮下の結果を総合すると、結果は、重水素化がクレームされている化合物の初回通過肝代謝の程度を制限することを示唆している。
本発明は、以下の態様および実施態様を含む。
[1] 式I:
【化24】
式I
[式中、
R
1
は、C
1-4
アルキル(例えばメチル)であり;
Zは、O、または-C(O)-であり;
R
2
およびR
3
は、各々独立して、HおよびD(重水素)より選択され;そして
R
4
からR
14
は、各々独立して、HおよびDより選択される]
で示され、
遊離または塩形態であり、
ただし、R
2
からR
14
の少なくとも1つは、Dである、化合物。
[2] ZがOである、[1]に記載の化合物。
[3] Zが-C(O)である、[1]に記載の化合物。
[4] R
1
がメチルである、[1]、[2]または[3]に記載の化合物。
[5] R
2
がHであり、R
3
がDである、[1]~[4]のいずれかに記載の化合物。
[6] R
2
がDであり、R
3
がDである、[1]~[4]のいずれかに記載の化合物。
[7] R
2
がHであり、R
3
がHである、[1]~[4]のいずれかに記載の化合物。
[8] R
4
からR
7
の任意の1つ、任意の2つまたは任意の3つが、Dである、[1]~[7]のいずれかに記載の化合物。
[9] R
8
からR
14
の任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ、任意の5つまたは任意の6つが、Dである、[1]~[7]のいずれかに記載の化合物。
[10] R
4
からR
7
の4つすべてが、Dである、[1]~[7]のいずれかに記載の化合物。
[11] R
8
からR
14
の6つすべてが、Dである、[1]~[7]のいずれかに記載の化合物。
[12] 塩の形態、例えば医薬的に許容される塩の形態である、[1]~[11]のいずれかに記載の化合物。
[13] 構造の1つ以上の指定される位置に重水素が50%超(すなわち、50原子%超のD)、例えば60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、96%超、97%超、98%超または99%超組み込まれている、[1]~[12]のいずれかに記載の化合物。
[14] 遊離または医薬的に許容される塩形態の[1]~[13]のいずれかに記載の化合物を、医薬的に許容される希釈剤または担体と混合されて含む、医薬組成物。
[15] 例えば筋肉内または皮下注射のための長時間作用型注射用として製剤化されている、[14]に記載の医薬組成物。
[16] 遊離または医薬的に許容される塩形態の[1]~[13]のいずれかに記載の化合物または[14]または[15]に記載の医薬組成物を、治療または予防を必要とする患者に投与することを含む、中枢神経系障害の治療または予防方法。
[17] 障害が、肥満、不安(例えば全般性不安、社交不安およびパニック障害)、うつ病(例えば難治性うつ病およびMDDまたは治療抵抗性うつ病)、精神病(例えば認知症に関連する精神病、例えば進行性パーキンソン病における幻覚または偏執性妄想)、統合失調症、睡眠障害(特に統合失調症および他の精神および神経疾患に関連する睡眠障害)、性障害、片頭痛、疼痛および疼痛を伴う状態、例えば頭痛、特発性疼痛、神経障害性疼痛、慢性疼痛、線維筋痛症、慢性疲労、広場恐怖症、社会恐怖症、認知症における激越(例えばアルツハイマー病における激越)、自閉症および関連する自閉症障害における激越、消化管障害、例えば消化管運動の機能不全、および認知症、例えばアルツハイマー病またはパーキンソン病における認知症;気分障害;薬物依存、例えば、オピエート依存、コカイン依存、アンフェタミン依存、および/またはアルコール依存、および薬物またはアルコール依存(例えばオピエート依存)からの離脱;薬物依存に関連する併存疾患、例えばうつ病、不安および精神病;過食性障害;および強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)および関連障害、例えば強迫性ギャンブル障害、強迫性摂食障害、身体醜形障害、心気症、病的身繕い障害、窃盗症、放火症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、衝動制御障害、および関連障害、およびその組合せからなる群より選択される、障害からなる群より選択される、[16]に記載の方法。
[18] 障害が、セロトニン5-HT
2A
、セロトニン再取り込みトランスポーター(SERT)、ドーパミンD
1
および/またはD
2
経路および/またはμ-オピオイド受容体に関連する障害である、[16]に記載の方法。
[19] 障害が、(1)うつ病に罹患している患者における精神病、例えば統合失調症;(2)精神病、例えば統合失調症に罹患している患者におけるうつ病;(3)精神病、例えば統合失調症またはパーキンソン病に関連する気分障害;(4)精神病、例えば統合失調症またはパーキンソン病に関連する睡眠障害;および(5)物質嗜癖、物質使用障害および/または物質誘発障害より選択される障害である、[16]に記載の方法。
[20] 中枢神経系障害が、強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)、全般性不安障害、社交不安障害、パニック障害、広場恐怖症、強迫性ギャンブル障害、強迫性摂食障害、身体醜形障害、心気症、病的身繕い障害、窃盗症、放火症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、衝動制御障害、および関連障害、およびその組合せより選択される障害である、[16]に記載の方法。
[21] 中枢神経系障害の治療または予防のための医薬の製造における、遊離または医薬的に許容される塩形態の[1]~[13]のいずれかに記載の化合物、または遊離または医薬的に許容される塩形態の[14]または[15]に記載の医薬組成物の使用。