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特許7462569CYP26酵素を阻害するための化合物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】CYP26酵素を阻害するための化合物および方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/18 20060101AFI20240329BHJP
   C07D 307/79 20060101ALI20240329BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20240329BHJP
   A61K 31/343 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 17/12 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240329BHJP
   A61K 31/07 20060101ALI20240329BHJP
   A61K 31/11 20060101ALI20240329BHJP
   A61K 31/203 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
C07D209/18 CSP
C07D307/79
A61K31/404
A61K31/343
A61P17/00
A61P17/12
A61P17/10
A61P29/00
A61P17/06
A61P17/04
A61P17/16
A61P17/18
A61P35/00
A61P27/02
A61P27/04
A61P9/10
A61P3/06
A61P7/02
A61P31/12
A61P11/00
A61P1/00
A61P1/04
A61P25/28
A61P25/16
A61P17/14
A61P37/06
A61P17/02
A61P3/10
A61P19/08
A61P21/00
A61P43/00 111
A61K31/07
A61K31/11
A61K31/203
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020552070
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 CA2018051582
(87)【国際公開番号】W WO2019113693
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】62/597,619
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520210169
【氏名又は名称】クィーンズ ユニバーシティー アット キングストン
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン ドナルド アンドルー
(72)【発明者】
【氏名】ペトコビッチ マーティン
(72)【発明者】
【氏名】サーハー ウッタム
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-532194(JP,A)
【文献】米国特許第05902726(US,A)
【文献】米国特許第04522808(US,A)
【文献】国際公開第2005/016339(WO,A1)
【文献】特表2010-540407(JP,A)
【文献】国際公開第2016/022446(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0093721(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第107266413(CN,A)
【文献】GERNERT, D. L. ET AL,Design and synthesis of benzofused heterocyclic RXR modulators,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2004年,14(11),2759-2763
【文献】HENKE, B. R. ET AL,Synthesis and biological activity of a novel series of indole-derived PPARγ agonists,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,1999年,9(23),3329-3334
【文献】RUECKER, C. ET AL,2D QSAR of PPARγ agonist binding and transactivation,Bioorganic & Medicinal Chemistry,2006年,14(15),5178-5195
【文献】D'ANNESSA, I. ET AL,Design of Allosteric Stimulators of the Hsp90 ATPase as New Anticancer Leads,Chemistry - A European Journal,2017年04月19日,23(22),5188-5192
【文献】YOON, D. ET AL,SAR Studies of Indole-5-propanoic Acid Derivatives To Develop Novel GPR40 Agonists,ACS Medicinal Chemistry Letters,2017年11月21日,8(12),1336-1340
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1a):
の化合物であって、
式中、
R1、R2、およびR3は、独立して、H、ハロ、または置換されているかもしくは置換されていないC1~C4アルキルであり、かつ
置換基は、独立して、アリール、ハロ、ニトロ、ヒドロキシル、アミノ、チオール、アルコキシル、アミド、カルボキシル、アルケニル、アリル、またはシアノである、
化合物。
【請求項2】
化合物026、または034:
を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式:
を有する、化合物。
【請求項4】
式:
を有する、化合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物を含む、哺乳類における皮膚の状態を処置するための薬学的組成物。
【請求項6】
皮膚の状態が、皮膚の疾患である、請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
皮膚の状態が、光線性角化症、ヒ素性角化症、炎症性のおよび非炎症性のざ瘡、乾癬、魚鱗癬、および他の角化、皮膚の過増殖性の障害、湿疹、アトピー性皮膚炎、ダリエー病、扁平苔癬、グルココルチコイドによる損傷、またはステロイド性萎縮である、請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
化合物が、局所抗微生物薬として、皮膚の抗色素沈着薬として、加齢および光による皮膚の損傷の影響を処置および回復させるために、適用される、請求項5~7のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物を含む、哺乳類におけるがん性の状態または前がん性の状態を処置または予防するための薬学的組成物。
【請求項10】
状態が、前悪性のもしくは悪性の過増殖性の疾患、乳房の、皮膚の、前立腺の、子宮頸部の、子宮の、結腸の、膀胱の、食道の、胃の、肺の、喉頭の、口腔の、血液の、リンパ系のがん、血液障害、化生、異形成、新形成、白板症、粘膜の乳頭腫、またはカポジ肉腫である、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物を含む、哺乳類における増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜剥離、ドライアイ、またはコルネオパシー(corneopathy)を含む、目の疾患を処置するための薬学的組成物。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物を含む、哺乳類における血管疾患を処置するための薬学的組成物。
【請求項13】
血管疾患が、脂質代謝に関連する疾患、脂質異常症、または血管形成術後の再狭窄の予防を含む、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物を含む薬学的組成物であって、哺乳類における、
循環中の組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)のレベルを増加させるための、または
ヒトパピローマウイルス(HPV)に関連する状態および疾患、炎症性疾患、神経変性疾患、脳卒中、成長ホルモンの異常な産生を含む異常な下垂体機能、免疫系に関連する疾患を処置するもしくは予防するための、
アポトーシスの誘導およびT細胞により活性化されたアポトーシスの阻害の両方を含む、アポトーシス調節するための
毛髪の成長回復させるための
臓器移植拒絶調節するための、または
創傷治癒促進させるための、
薬学的組成物。
【請求項15】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物を含む、哺乳類における、II型インスリン非依存性糖尿病の処置のための薬学的組成物。
【請求項16】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物を含む、哺乳類における、異所性骨形成の障害、または筋組織石灰化の処置のための薬学的組成物。
【請求項17】
粉末、スプレー、丸剤、錠剤、シロップ、エリキシル、注射によって投与され得る溶液もしくは懸濁液、坐剤、皮膚下に留置するための徐放製剤、または筋肉内注射として投与される、請求項5~16のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
化合物が、1 mLにつき0.01ミリグラム~1 mgの該化合物を含む製剤の状態で局所適用のための医薬中に含まれる、請求項5~8のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
化合物が、1日につき体重1 kgあたり0.01~5 mgを含む製剤の状態で全身投与のための医薬中に含まれる、請求項5~16のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
化合物が、レチノール、レチンアルデヒド、RA、もしくは他の天然のもしくは合成レチノイドから選択される、レチノイドまたはレチノイド前駆体との組み合わせとして提供される、請求項5~19のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
組み合わせが、錠剤、カプセル、注射剤、または局所製剤として提供される、請求項20に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物を含む、薬学的組成物。
【請求項23】
賦形剤をさらに含む、請求項22に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、CYP26として知られる、ある種のシトクロムP450酵素(P450RAI)を阻害する化合物に関連する。本発明はまた、レチノイド様活性を有する化合物にも関連する。
【背景技術】
【0002】
背景
ビタミンAの代謝は、発生や再生の間の遺伝子発現の制御に、ならびに上皮組織の増殖および分化に関与するレチノイン酸(RA)の、いくつかの活性型を生じさせる。RAは、いくつかの細胞型において、アポトーシス(すなわちプログラム細胞死)に関連付けられており、かつ抗発がん性および抗腫瘍性の特性を有することが示されている。レチノール欠乏についての初期の研究は、ビタミンA不足と、がんの高発生および化学発がんへの感受性増加との間の相関を示した。いくつかの動物モデルが、皮膚、乳腺上皮、口腔、気道消化管、肝臓、膀胱、および前立腺を含む多様な組織において発がんを抑制するレチノイドの有効性を証明するために、使用されている。これらの研究は、前悪性の病変の処置、ならびに二次性腫瘍の予防(たとえば、非小細胞肺がんの、および基底細胞がんの再発の予防)における、予防目的のレチノイドの使用をもたらすこととなった。RAそれ自体は、治療上、とりわけがんの処置において、有用であることが見出されている。研究は、RA代謝を妨害するシトクロムP450阻害剤が、RAのレベルの増加をもたらすことを示しており、該阻害剤はがんの処置における有用な治療剤であり得る(Wouters W., et al., Cancer Res (1992) 52:2841-6(非特許文献1))。したがって、RAを代謝するシトクロムP450は、多数の異なる種類のがんの処置のための有用な標的であり得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Wouters W., et al., Cancer Res (1992) 52:2841-6
【発明の概要】
【0004】
概要
1つの局面において、本発明は、式:
の化合物を提供し、
式中、
Aは、置換されているかまたは置換されていない疎水性部分であり、Gは、置換されているかもしくは置換されていないヘテロアリール基を含む部分であるか、または置換されているかもしくは置換されていないアリール基および少なくとも1つのヘテロ原子を含む部分であり、
R3は、独立して、H、ハロ、または置換されているかもしくは置換されていないC1~C4であり、
点線は、存在していても存在していなくてもよい結合であり、nは1または2であり、pは0~3であり、
ここで置換基は、独立して、アルキル、アリール、ハロ、ニトロ、ヒドロキシル、アミノ、チオール、アルコキシル、アミド(amido)、アミド(amide)、ボリル、カルボキシル、アルケニル、アリル、シアノ、置換されているアルキル(たとえばアルキルアミノ、ハロゲン化アルキル)、置換されていないアルキル、またはそれらの組み合わせである。
【0005】
1つの態様において、本発明は、式(1)の化合物:
を提供し、
式中、
Aは、置換されているかまたは置換されていない疎水性部分であり、nは1または2であり、R1、R2、およびR3は、独立して、H、または置換されているかもしくは置換されていないC1~C4であり、mは0または1であり、ここで置換基は、独立して、アルキル、アリール、ハロ、ニトロ、ヒドロキシル、アミノ、チオール、アルコキシル、アミド(amido)、アミド(amide)、カルボキシル、アルケニル、アリル、シアノ、置換されているアルキル(たとえばアルキルアミノ、ハロゲン化アルキル)、または置換されていないアルキルである。1つの態様において、Aは、置換されているかまたは置換されていない芳香族部分であり、かつXはヘテロ原子である。1つの態様において、化合物は、式(1a)の化合物:
である。
【0006】
1つの態様において、化合物は、表1の化合物025、026、027、028、029、030、031、032、033、または034である。1つの局面において、本発明は、表1の化合物026を提供する。
【0007】
1つの局面において、本発明は、哺乳類において疾患または状態を処置する方法を提供し、該方法は、上記式の化合物を含むRAの分解の阻害剤を投与する工程を含む。1つの態様において、疾患または状態は、皮膚の疾患または皮膚の状態である。1つの態様において、皮膚の疾患または皮膚の状態は、光線性角化症、ヒ素性角化症、炎症性のおよび非炎症性のざ瘡、乾癬、魚鱗癬、および他の角化、皮膚の過増殖性の障害、湿疹、アトピー性皮膚炎、ダリエー病、扁平苔癬、グルココルチコイドによる損傷、またはステロイド性萎縮である。1つの態様において、化合物は、局所抗微生物薬として、皮膚の抗色素沈着薬として、加齢および光による皮膚の損傷の影響を処置する、ならびに回復させるために、適用される。1つの態様において、哺乳類において疾患または状態を処置する方法は、がん性の状態または前がん性の状態を予防する工程をさらに含む。この局面の1つの態様において、状態は、前悪性のもしくは悪性の過増殖性の疾患、乳房の、皮膚の、前立腺の、子宮頸部の、子宮の、結腸の、膀胱の、食道の、胃の、肺の、喉頭の、口腔の、血液の、リンパ系のがん、化生、異形成、新形成、白板症、または粘膜の乳頭腫、またはカポジ肉腫である。1つの態様において、化合物は、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜剥離、ドライアイ、コルネオパシー(corneopathy)を含む、目の疾患を処置するために有用である。1つの態様において、化合物は、心血管疾患を処置するために有用である。1つの態様において、心血管疾患は、脂質代謝に関連する疾患、脂質異常症、血管形成術後の再狭窄の予防を含む。1つの態様において、化合物は、循環中の組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)のレベルを増加させる物質として有用であり、または化合物は、ヒトパピローマウイルス(HPV)に関連する状態および疾患、肺線維症、回腸炎、大腸炎、およびクローン病などの炎症性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病などの神経変性疾患、脳卒中、成長ホルモンの異常な産生を含む、異常な下垂体機能、アポトーシスの誘導およびT細胞により活性化されたアポトーシスの阻害の両方を含む、アポトーシスの調節、毛髪の成長の回復、免疫系に関連する疾患、臓器移植拒絶の調節、創傷治癒の促進を、処置するもしくは予防する物質として、有用である。1つの態様において、化合物は、II型インスリン非依存性糖尿病、異所性骨形成の障害、または筋組織石灰化の処置において、有用である。1つの態様において、医薬は、粉末、スプレー、丸剤、錠剤、シロップ、エリキシル、注射によって投与され得る溶液もしくは懸濁液、坐剤、皮膚下に留置するための徐放製剤、または筋肉内注射として、投与される。この局面の1つの態様において、化合物は、1 mLにつき0.01ミリグラム~1 mgの化合物を含む製剤の状態で局所適用のための医薬中に含まれる。1つの態様において、化合物は、1日につき体重1 kgあたり0.01~5 mgを含む製剤の状態で全身投与のための医薬中に含まれる。1つの態様において、化合物は、レチノール、レチンアルデヒド、RA、もしくは他の天然のもしくは合成レチノイドから選択される、レチノイドまたはレチノイド前駆体との組み合わせとして提供される。1つの態様において、組み合わせは、錠剤、カプセル、注射剤、または局所製剤として、提供される。本明細書において記載される局面の1つの態様において、化合物は、表1の化合物026である。1つの態様において、化合物は、表1の025、026、027、028、029、030、031、032、033、または034である。
【0008】
1つの局面において、本発明は、本明細書において記載されるような化合物を含む薬学的組成物を提供する。1つの態様において、薬学的組成物は、賦形剤をさらに含む。1つの態様において、化合物は、表1の025、026、027、028、029、030、031、032、033、または034である。
[本発明1001]
式:
の化合物であって、
式中、
Aは、置換されているかまたは置換されていない疎水性部分であり、
Gは、置換されているかもしくは置換されていないヘテロアリール基を含む部分であるか、または置換されているかもしくは置換されていないアリール基および少なくとも1つのヘテロ原子を含む部分であり;
R3は、独立して、H、ハロ、または置換されているかもしくは置換されていないC1~C4であり、
点線は、存在していても存在していなくてもよい結合であり;
nは1または2であり、
pは0~3であり、
置換基は、独立して、アルキル、アリール、ハロ、ニトロ、ヒドロキシル、アミノ、チオール、アルコキシル、アミド(amido)、アミド(amide)、ボリル、カルボキシル、アルケニル、アリル、シアノ、置換されているアルキル(たとえばアルキルアミノ、ハロゲン化アルキル)、置換されていないアルキル、またはそれらの組み合わせである、
前記化合物。
[本発明1002]
式(1):
の化合物を含む、本発明1001の化合物であって、
式中、
Aは、置換されているかまたは置換されていない疎水性部分であり、
R1、R2、およびR3は、独立して、H、ハロ、または置換されているかもしくは置換されていないC1~C4であり、
点線は、存在していても存在していなくてもよい結合であり;
Xはヘテロ原子(たとえばN、O、S)であり、
nは1または2であり、
mは0または1であり、かつ
pは0~3であり、
ここで置換基は、独立して、アルキル、アリール、ハロ、ニトロ、ヒドロキシル、アミノ、チオール、アルコキシル、アミド(amido)、アミド(amide)、カルボキシル、アルケニル、アリル、シアノ、置換されているアルキル(たとえばアルキルアミノ、ハロゲン化アルキル)、または置換されていないアルキルである、
前記化合物。
[本発明1003]
Aが、置換されているかまたは置換されていない芳香族部分である、本発明1001または1002の化合物。
[本発明1004]
式(1a):
の化合物を含む、本発明1001の化合物。
[本発明1005]
化合物025、026、027、028、029、030、031、032、033、または034:
を含む、本発明1001の化合物。
[本発明1006]
式:
を有する、化合物。
[本発明1007]
本発明1001~1006のいずれかの化合物を投与する工程を含む、哺乳類において皮膚の状態を処置する方法。
[本発明1008]
皮膚の状態が、皮膚の疾患である、本発明1007の方法。
[本発明1009]
皮膚の状態が、光線性角化症、ヒ素性角化症、炎症性のおよび非炎症性のざ瘡、乾癬、魚鱗癬、および他の角化、皮膚の過増殖性の障害、湿疹、アトピー性皮膚炎、ダリエー病、扁平苔癬、グルココルチコイドによる損傷、またはステロイド性萎縮である、本発明1007の方法。
[本発明1010]
化合物が、局所抗微生物薬として、皮膚の抗色素沈着薬として、加齢および光による皮膚の損傷の影響を処置および回復させるために、適用される、本発明1007~1009のいずれかの方法。
[本発明1011]
哺乳類において疾患または状態を処置する方法が、がん性の状態または前がん性の状態を予防する工程をさらに含む、本発明1007の方法。
[本発明1012]
状態が、前悪性のもしくは悪性の過増殖性の疾患、乳房の、皮膚の、前立腺の、子宮頸部の、子宮の、結腸の、膀胱の、食道の、胃の、肺の、喉頭の、口腔の、血液の、リンパ系のがん、血液障害、化生、異形成、新形成、白板症、粘膜の乳頭腫、またはカポジ肉腫である、本発明1011の方法。
[本発明1013]
化合物が、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜剥離、ドライアイ、コルネオパシー(corneopathy)を含む、目の疾患を処置するために有用である、本発明1007の方法。
[本発明1014]
化合物が、血管疾患を処置するために有用である、本発明1007の方法。
[本発明1015]
血管疾患が、脂質代謝に関連する疾患、脂質異常症、血管形成術後の再狭窄の予防を含む、本発明1014の方法。
[本発明1016]
化合物が、循環中の組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)のレベルを増加させる物質として有用である、または化合物が、ヒトパピローマウイルス(HPV)に関連する状態および疾患、肺線維症、回腸炎、大腸炎、およびクローン病などの炎症性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病などの神経変性疾患、脳卒中、成長ホルモンの異常な産生を含む、異常な下垂体機能、アポトーシスの誘導およびT細胞により活性化されたアポトーシスの阻害の両方を含む、アポトーシスの調節、毛髪の成長の回復、免疫系に関連する疾患、臓器移植拒絶の調節、創傷治癒の促進を、処置するもしくは予防するために有用である、本発明1007の方法。
[本発明1017]
化合物が、II型インスリン非依存性糖尿病、異所性骨形成の障害、または筋組織石灰化の処置において有用である、本発明1007の方法。
[本発明1018]
それが、粉末、スプレー、丸剤、錠剤、シロップ、エリキシル、注射によって投与され得る溶液もしくは懸濁液、坐剤、皮膚下に留置するための徐放製剤、または筋肉内注射として投与される、疾患または状態の処置における本発明1007の方法。
[本発明1019]
化合物が、1 mLにつき0.01ミリグラム~1 mgの該化合物を含む製剤の状態で局所適用のための医薬中に含まれる、本発明1007の方法。
[本発明1020]
化合物が、1日につき体重1 kgあたり0.01~5 mgを含む製剤の状態で全身投与のための医薬中に含まれる、本発明1007の方法。
[本発明1021]
化合物が、レチノール、レチンアルデヒド、RA、もしくは他の天然のもしくは合成レチノイドから選択される、レチノイドまたはレチノイド前駆体との組み合わせとして提供される、本発明1007または1008の方法。
[本発明1022]
組み合わせが、錠剤、カプセル、注射剤、または局所製剤として提供される、本発明1021の方法。
[本発明1023]
化合物が、本発明1005の化合物025、026、027、028、029、030、031、032、033、または034である、本発明1007~1022のいずれかの方法。
[本発明1024]
本発明1001~1005のいずれかの化合物を含む、薬学的組成物。
[本発明1025]
賦形剤をさらに含む、本発明1025の薬学的組成物。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明のより良い理解のため、およびそれがどのように実施され得るのかをより明確に示すため、次に、添付の図面が、例として以下に説明される:
図1】増加していく濃度の化合物026の存在下(白い三角形) 対 ケトコナゾール(黒い三角形)の存在下での、CYP26A1酵素の活性のプロットを示す。
図2】増加していく濃度の化合物026の存在下(白い三角形) 対 ケトコナゾール(黒い三角形)の存在下での、CYP26B1酵素の活性のプロットを示す。
図3】ビヒクル(DMSO、黒い棒)、0.1 μM RA(灰色の棒)、1 μM化合物026(白い棒)、または0.1 μM RAと1 μM化合物026との足し合わせ(チェック模様の棒)のいずれかで、24時間、48時間、または72時間処理されたMCF-7細胞における、CYP26A1の発現の、QPCR分析の棒グラフを示す。
図4】ビヒクル(DMSO、白い棒)または1 μM RA(黒い棒)で24時間処理された初代ヒト骨髄間質細胞における、CYP26酵素の発現の、QPCR分析の棒グラフを示す。
図5】培養培地のみ(黒い棒)と比較した、ビヒクル(DMSO、非誘導)で、もしくは1 μM RA(RAで誘導)で24時間前処理された初代ヒト骨髄間質細胞による、ビヒクル(DMSO、白い棒)、または1 μM化合物026(灰色の棒)のいずれかの存在下での、RA代謝の棒グラフを示す。
図6】マウスOP9間質細胞の存在下または非存在下で培養され、そしてビヒクル(DMSO)、0.1 μM RA、または0.1 μM RAと1 μM化合物026との足し合わせで72時間処理された、ヒトAML THP-1細胞のPE-CD11bのMFIにおける倍率変化についてのFACS分析の棒グラフを示す。
図7】マウスOP9細胞の存在下または非存在下で増殖させ、そしてビヒクル(DMSO)、0.1 μM RA、1 μM化合物026、または0.1 μM RAと1 μM 026との足し合わせで48時間処理された、アポトーシス(FITC-アネキシンV陽性)MV4-11細胞のパーセンテージについてのFACS分析の棒グラフを示す。
図8】マウスOP9細胞の存在下または非存在下で増殖させ、そしてビヒクル(DMSO)、1 μM RA、または1 μM RAと1 μM RAとの足し合わせで72時間処理されたkasumi-1ヒトAML細胞中の、FITC-CD34陽性/PE-CD38陰性LSCのパーセンテージについてのFACS分析の棒グラフを示す。
図9】ビヒクル(生理的食塩水/0.1% DMSO、黒い棒)、または化合物026(40 μg/kg、灰色の棒)の静脈内への投薬を受けたマウスから単離された骨髄単核細胞における、RAの標的遺伝子(Cyp26a1およびCrabp2)の発現の、QPCR分析の棒グラフを示す。
図10】対照培地(CM)中または骨形成性培地(OM)中で、21日間、ビヒクル(DMSO)の存在下、または増加していく濃度の化合物026の存在下で増殖させた、アリザリンレッド染色されたMC3T3細胞を示す。
図11】ビヒクル、10 nmol RA、2 μmol 026、または10 nmol RAと2 μmol 026との足し合わせで2週間局所処置されたライノマウスからの、表皮シート調製物(上のパネル)、および皮膚の組織切片(ヘマトキシリンおよびエオシンを用いて染色、下のパネル)の、写真を示す(写真は200xの拡大率である)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
態様の詳細な説明
定義
本明細書において使用される場合、「RA」との語はレチノイン酸を指す。
【0011】
本明細書において使用される場合、「A」との語は、C4~C50部分などの疎水性部分を指し、これは、芳香族、非芳香族、環状、非環状、またはそれらの任意の組み合わせであってよく、かつこれは、置換されているかまたは置換されていない。典型的な疎水性部分は、フェニル、ヘテロアリール、または脂肪族の部分を含み得る。
【0012】
本明細書において使用される場合、「MEM」との語は最小必須培地(Sigma-Aldrich, Oakville, Canadaより入手可能)を指す。
【0013】
本明細書において使用される場合、「MEM-α」との語はα改変型の最小必須培地(Thermofisher Scientific, Ottawa, Canadaより入手可能)を指す。
【0014】
本明細書において使用される場合、「IMDM」との語はイスコフ改変ダルベッコ培地(Sigma Aldrich, Oakville, Canadaより入手可能)を指す。
【0015】
本明細書において使用される場合、「RMPI-1640」との語はロズウェルパーク記念研究所1640培地(Thermofisher Scientific, Ottawa, Canadaより入手可能)を指す。
【0016】
本明細書において使用される場合、「APL」との語は急性前骨髄球性白血病を指す。
【0017】
本明細書において使用される場合、「AML」との語は急性骨髄性白血病を指す。
【0018】
本明細書において使用される場合、「FBS」との語はウシ胎児血清(Sigma-Aldrich, Oakville, Canadaより入手可能)を指す。
【0019】
本明細書において使用される場合、「QPCR」との語は定量的ポリメラーゼ連鎖反応を指す。
【0020】
本明細書において使用される場合、「DMSO」との語はジメチルスルホキシドを指す。
【0021】
本明細書において使用される場合、「CYP26」との語は、レチノイン酸の代謝に特異性を有する、シトクロムP450酵素のサブファミリーを指す。
【0022】
本明細書において使用される場合、「DPM」との語は1分あたりの分解を指す。
【0023】
本明細書において使用される場合、RARBとの語はレチノイン酸受容体ベータを指す。
【0024】
本明細書において使用される場合、Crabp2との語は細胞性RA結合タンパク質2を指す。
【0025】
本明細書において使用される場合、「FACS」との語は蛍光活性化セルソーティングを指す。
【0026】
本明細書において使用される場合、「MFI」との語は蛍光強度の中央値を指す。
【0027】
本明細書において使用される場合、「CD11b」との語は分化のクラスター(cluster of differentiation)分子11bを指し、これはまた、マクロファージ-1抗原(Mac-1)、インテグリンアルファM(ITGAM)、または補体受容体3(CR3)としても知られている。
【0028】
本明細書において使用される場合、「FLT3」との語はFMS関連チロシンキナーゼ3を指す。
【0029】
本明細書において使用される場合、「CD34」との語は分化のクラスター分子34を指す。
【0030】
本明細書において使用される場合、「CD38」との語は分化のクラスター分子38を指し、これはまた、環状ADPリボースヒドロラーゼとしても知られている。
【0031】
本明細書において使用される場合、「PE」との語は、フルオロフォアであるフィコエリスリンを指す。
【0032】
本明細書において使用される場合、「FITC」との語は、フルオロフォアであるフルオレセインイソチオシアナートを指す。
【0033】
本明細書において使用される場合、「IL-3」との語はインターロイキン3を指す。
【0034】
本明細書において使用される場合、「LSC」との語は白血病幹細胞を指す。
【0035】
本明細書において使用される場合、「CFU」との語はコロニー形成単位を指す。
【0036】
本明細書において使用される場合、「MDS」との語は骨髄異形成症候群を指す。
【0037】
本明細書において使用される場合、「PMM2」との語はホスホマンノムターゼ2遺伝子を指す。
【0038】
本明細書において使用される場合、「Bglap」との語は、オステオカルシンとしても知られている、骨カルボキシグルタミン酸含有タンパク質の遺伝子を指す。
【0039】
本明細書において使用される場合、「Ibsp」との語は、骨シアロタンパク質またはBSPとしても知られている、インテグリン結合シアロタンパク質の遺伝子を指す。
【0040】
本明細書において使用される場合、「CM」との語は対照の増殖培地を指す。
【0041】
本明細書において使用される場合、「OM」との語は骨形成性培地を指す。
【0042】
本明細書において使用される場合、「IHC」との語は免疫組織化学を指す。
【0043】
本明細書において使用される場合、「BCC」との語は基底細胞がんを指す。
【0044】
本明細書において使用される場合、「Smo」との語はスムーズンドを指す。
【0045】
本明細書において使用される場合、「置換されていない」との語は、水素によって占められている、原子の、任意の利用可能な原子価を指す。また、原子の利用可能な原子価の位置を占めているものが特定されない場合には、それは水素である。
【0046】
態様
レチノイド様活性を有するいくつかの化合物は、レチノイドに反応性であるいくつかの疾患の処置のための薬剤として、米国およびその他において、適切な監督官庁の承認のもとで市販されている。レチノイン酸(RA)それ自体は、天然物であり、多数のヒトおよび哺乳類の組織において生合成され、かつその中に存在しており、そして、ヒトを含む哺乳類において、遺伝子発現の制御、組織の分化および維持、ならびに他の重要な生物学的プロセスに、重要な役割を果たしていることが知られている。天然のRAの、ヒトを含む哺乳類に存在する天然の分解経路は、CYP26A1およびCYP26B1を含むCYP26ファミリーの酵素によって触媒される、ヒドロキシ化の段階を含む。CYP26A1の阻害剤がいくつか、以前に合成または発見されており、それにはリアラゾール(liarazole)、ケトコナゾール、およびR116010が含まれる。CYP26の阻害剤の、哺乳類への投与は、RAレベルの有意な増加をもたらす。CYP26阻害剤(たとえばリアラゾール)を用いた処置は、たとえば乾癬の改善に関して、レチノイドによる処置と同様の効果を有することが示されている。
【0047】
本発明の態様は、CYP26B1の阻害剤として作用する化合物を提供する。したがって、そのような化合物は、レチノイドに反応する、もしくは天然のRAによって制御される疾患の処置または予防において、治療上の利点を提供する潜在性を有する。これらの化合物の、認識されている作用機序は、天然のRAを分解する酵素CYP26B1を阻害することにより、RAの内在性レベルを、所望の治療上の利点が得られるレベルへと上昇させる、というものである。
【0048】
概して、CYP26B1の阻害剤として作用するそのような化合物は、A-スペーサー-COOHという構造として、互いに連結された3つの部分を有する。つまり、そのような化合物は、疎水性部分(「A」)、カルボン酸部分(「COOH」)、およびスペーサー部分(「スペーサー」)を有し、該スペーサー部分は、その第一の末端においてAと結合されており、かつその第二の末端においてCOOHと結合されている。したがって、スペーサーは、それがAとCOOHとを互いに分離させたままにするので、そのように称され、かつスペーサー部分の長さが、AとCOOHとの間の距離を決定する。1つの態様において、スペーサーは、環状、直線状、またはそれらの組み合わせであってよい。Aおよびスペーサーはどちらも、置換されていてもよく、または置換されていなくてもよい。ある態様において、スペーサーは、アリール基を含む。他の態様において、スペーサーは、非芳香族の環状部分を含む。ある態様において、スペーサーは、脂肪族であり、かつ非環状である。
【0049】
1つの態様において、そのような阻害性化合物は、以下に示されるような構造式:
を有し、
式中、
Aは、置換されているかまたは置換されていない疎水性部分であり、
Gは、置換されているかもしくは置換されていないヘテロアリール基を含む部分であるか、または置換されているかもしくは置換されていないアリール基および少なくとも1つのヘテロ原子を含む部分であり;
R3は、独立して、H、ハロ、または置換されているかもしくは置換されていないC1~C4であり、
点線は、存在していても存在していなくてもよい結合であり;
nは1または2であり、
pは0~3であり、
ここで置換基は、独立して、アルキル、アリール、ハロ、ニトロ、ヒドロキシル、アミノ、チオール、アルコキシル、アミド(amido)、アミド(amide)、ボリル、カルボキシル、アルケニル、アリル、シアノ、置換されているアルキル(たとえばアルキルアミノ、ハロゲン化アルキル)、置換されていないアルキル、またはそれらの組み合わせである。
【0050】
上記式の1つの態様において、Gは、少なくとも1つのヘテロ原子を含む縮合芳香環系を、含む。1つの態様において、そのような阻害性化合物は、図(1)に示されるような構造式:
を有し、
式中、
Aは、置換されているかまたは置換されていない疎水性部分であり、
R1、R2、およびR3は、独立して、H、ハロ、または置換されているかもしくは置換されていないC1~C4であり、
点線は、存在していても存在していなくてもよい結合であり;
Xはヘテロ原子(たとえばN、O、S)であり、
nは1または2であり、
mは0または1であり、かつ
pは0~3であり、
ここで置換基は、独立して、アルキル、アリール、ハロ、ニトロ、ヒドロキシル、アミノ、チオール、アルコキシル、アミド(amido)、アミド(amide)、カルボキシル、ボリル、アルケニル、アリル、シアノ、置換されているアルキル(たとえばアルキルアミノ、ハロゲン化アルキル)、置換されていないアルキル、またはそれらの組み合わせである。
【0051】
そのような阻害性化合物は、ヒトを含む哺乳類における疾患もしくは状態の予防または処置のために有用である。そのような疾患および状態は、レチノイド化合物の投与によって、または生物の天然のRAによって、予防される、処置される、改善される、または疾患の発症が遅れる。これらの化合物は、RAの分解の阻害剤として作用するので、本発明の態様はまた、これらの化合物の、RAまたは他のレチノイドと組み合わせた使用にも、関連する。
【0052】
式(1)の1つの態様において、Aは、式(1a):
に示されるように、置換されているかまたは置換されていない芳香族部分である。
【0053】
これの、および式(1)の他の化合物の構造式は、表1に示される。式(1)および(1a)の化合物の1つの態様において、化合物は、化合物026:
である。
【0054】
本明細書において記載される研究において、化合物026は、CYP26B1に対して高度に選択的であることが示され、該化合物は、HeLa細胞ベースのアッセイ(後述)において、CYP26A1に対しての7 μMと比較して、0.2 μMのIC50を有する(表2を参照されたい)。図1は、ケトコナゾールと比較した、化合物026の、CYP26A1に対する阻害活性を示す。図2は、化合物026の、CYP26B1に対する阻害活性を示す。この化合物は、CYP26A1の阻害に関してはケトコナゾールと同等であるが、図2は、ケトコナゾールと比較して劇的に増加した、CYP26B1酵素活性の阻害を示す。重要なことに、この化合物は、ルシフェラーゼレポーターのトランス活性化実験において、アゴニスト活性を示さなかった、これは、該化合物が、RAシグナル伝達経路を直接的に活性化するわけではないことを示す。しかしながら、0.1 μM RAと1 μM化合物026との足し合わせを用いた、MCF-7細胞の同時処理は、RAの標的遺伝子の転写を増強し、そしてこの応答を少なくとも72時間まで延長し、これらは望ましい作用機構を示す。
【0055】
ヒト白血病幹細胞(LSC)は、骨髄の内部に存在しており、かつ化学療法のあいだ残存することが示されている。これらは、初回寛解後の疾患の再発の原因であると考えられている。いくつかの急性骨髄性白血病(AML)は、APLとは異なり、レチノイド療法に、十分には反応しない。これについて示唆される理由の1つは、CYP26酵素の活性による、骨髄における局在化したRAの代謝である。CYP26B1は、未検出であったCYP26A1と比較して、培養された初代ヒト骨髄間質細胞において高度に発現していることが見出され(図4)、これは、このアイソフォームが、観察されたRA代謝の主な原因であることを示唆する。さらに、CYP26B1の発現はまた、CYP26A1とは異なり、RAでの処理により、高度に誘導された(図4)。ヒト骨髄間質細胞とCYP26B1に選択的な化合物026との同時処理は、RAに反応して、初代ヒト骨髄細胞において、RAの標的遺伝子の発現を大いに増強かつ延長し、これは、この化合物が、培養中で、骨髄におけるRAシグナル伝達を増強することができることを示す。さらに化合物026は、用量依存的な様式で、ヒト骨髄細胞において、基底のRA代謝、およびRAに誘導されるRA代謝を両方とも効果的に妨害した(図5)。ヒト骨髄間質細胞からの結果と一致して、ヒト造血細胞の長期培養を持続させるために広く使用される、マウスOP9骨髄間質細胞株は、Cyp26酵素発現、および化合物026の活性に関して、類似の結果を示した;マウスCyp26b1は、OP9細胞において、Cyp26a1よりもはるかに高度に発現され、また、1 μM RAによって高度に誘導された。さらに化合物026は、OP9細胞において、ヒト細胞に類似した様式で、基底のRA代謝、およびRAに誘導されるRA代謝を効果的に妨害した。
【0056】
CYP26B1はまた、初代ヒト骨髄試料中の骨髄間質の構成要素において、発現されることが見出された。CYP26B1抗体での免疫組織化学(IHC)染色は、巨核球、内皮細胞、血管周囲細胞、および線維芽細胞において検出され、これらのすべては、骨髄における幹細胞ニッチの重要な構成要素であることが知られている。巨核球の数が増加している(巨核球が増加している慢性骨髄性白血病、および本態性血小板血症)患者からの骨髄試料は、血小板を含め、CYP26B1抗体での、増加した染色を示した。CYP26B1の阻害は、したがって、血小板産生などの巨核球に関連する障害、ならびに凝固および出血の障害において、それらに加え、創傷治癒プロセスの改変において、使用され得る。
【0057】
白血病細胞をRAの効果に対して感受性にするという、CYP26B1阻害の能力を試験するため、OP9間質細胞およびヒトAML細胞の共培養が確立された。CD11bは、ミエロイド細胞の表面に存在する細胞表面マーカーであり、そしてこれはミエロイド分化を示す。PE-CD11b抗体で染色された細胞のMFIによって決定されたように(図6)、RAは、THP-1細胞の表面上のCD11bマーカーの発現を有意に増加させる。OP9間質の存在下での、化合物026(1μM)と組み合わせたRA(0.1μM)でのTHP-1細胞の処理は、CD11bのMFIを大いに増強させた(図6)。さらに化合物026は、間質の存在下で、THP-1細胞を、低用量のRAに対して感受性にさせ、これは、RAへの曝露およびそれに続く分化からAML細胞を防御するのを、骨髄間質によるRA代謝が手助けすることができること、ならびにCYP26B1の化学的な阻害が、この作用を妨害することができることを、示唆する。これらのデータと一致して、コロニー形成能力(LSC活性を示す)は、THP-1細胞において、RAへの曝露によって減少し、かつこれは、間質細胞との培養によって妨害された。化合物026の添加は、RAの効果をレスキューし、かつコロニー形成単位を低下させた。
【0058】
MV4-11細胞は、ヒトAMLにおいてよく見られる、FLT3遺伝子の遺伝子内縦列重複を含む、別のヒトAML細胞株である。RAは、CD11b+ MV4-11細胞のパーセンテージを増加させ、そして間質の存在は、この効果を妨害した。化合物026は、間質の存在下で、RAに誘導される分化をレスキューした。MV4-11細胞はまた、RAに反応してアポトーシスに至り、かつこの効果は、間質細胞の存在により同様に妨害され、そして化合物026の添加によりレスキューされ(図7)、これらは、RA代謝がまた、RAに反応したアポトーシスから、AML芽球を防御することができることを示す。
【0059】
LSCは、造血前駆マーカーであるCD34が陽性であり、かつ分化マーカーであるCD38が陰性であるAML細胞の画分において、多いことが示されている。Kasumi-1 AML細胞は、比較的高い割合の、これらのCD34+CD38- LSCを有し、該細胞は、フローサイトメトリーによって容易に検出されることができる。1 μM RAでの処理は、これらの細胞の数を有意に減少させたが、OP9骨髄間質の存在は、この効果をほとんど妨害した(図8)。化合物026の添加は、RAの、CD34+CD38-細胞の数を減少させる能力を、回復させた(図8)。類似の結果が、MDSL細胞を用いても得られた;これは、しばしばAMLに進行する状態である骨髄異形成症候群(MDS)を有する患者に由来する、細胞株である。
【0060】
骨髄中での造血細胞のRAへの曝露を変化させる、CYP26B1阻害剤化合物の能力を、インビボで試験するため、マウスは、ビヒクル(0.9%生理的食塩水/0.1%DMSO)、または化合物026のいずれかの静脈内注射を、連続した2日間に、1日につき1回受けた。RAの標的遺伝子の発現を調べるため、骨髄単核細胞が翌日、マウスから採取された。ビヒクルが注射されたマウスと比較して、Cyp26a1およびCrabp2の発現は両方とも、026が注射されたマウスにおいて誘導され(図9)、これは、これらの細胞が、該化合物での処置において、RAに曝露されたことを示す。
【0061】
RAはまた、発生の種々の段階において、骨細胞分化に影響をおよぼすことが知られており、かつCyp26b1は、骨格の適切な発達に必要とされる。したがって、本発明者らはまた、CYP26B1の阻害が、分化した骨細胞(骨芽細胞)の形成を妨害し得るかどうかも試験した。MC3T3-E1細胞株は、骨形成性培地中で培養した場合に骨形成性の分化に至る、マウス頭蓋冠に由来する前骨芽細胞株である。この株は、骨細胞分化に関与する因子を研究するために、および骨芽細胞形成の潜在的な阻害剤をスクリーニングするために、使用されることができる。MC3T3細胞は、Cyp26a1と比較して、高いレベルのCyp26b1を発現することが見出され、かつRAは、Cyp26b1の発現を大いに誘導したが、しかしCyp26a1についてはそうではなかった。さらに、MC3T3細胞はすみやかにRAを代謝し、そしてこの活性は、1 μM RAでの24時間の前処理によって増加する。化合物026は、用量依存的な様式で、これらの細胞において、基底のRA代謝とともに、RAに誘導されるRA代謝を妨害することが見出された。骨芽細胞の分化は、骨芽細胞に特異的な遺伝子の発現に加え、染料のアリザリンレッドによって検出されることができる、高度に石灰化した細胞外マトリックスの存在によって、特徴付けされる。骨形成性培地(OM)中で21日間増殖させたMC3T3細胞は、アリザリンレッド染色(図10)によって明らかにされたように、石灰化したマトリックスを形成し、かつこれは、化合物026の存在によって、用量依存的な様式で減少した。マーカー遺伝子の発現分析は、骨芽細胞遺伝子であるBglap、およびIbspが、OM中で増殖させた、ビヒクル(DMSO)で処理された細胞において、高度に発現した一方で、10 μM化合物026は、それらの発現を妨害したことを明らかにし、これらは、OMに反応した骨芽細胞形成が損なわれたことを示唆する。さらに、骨形成性の分化のみを妨害しない、低用量のRA(10 nmol)での処理は、1 μM化合物026の存在下で、BglapおよびIbspの発現を抑制するのに有効であった。この状況での、増加したRAシグナル伝達を確認するため、Cyp26b1遺伝子の発現もまた測定された、これは、該遺伝子が、これらの細胞において、RAによって高度に誘導されるためである。化合物026で処理されたMC3T3細胞は、対照と比較して、Cyp26b1の劇的な上方制御を示した、これは、RAへの曝露の増加を示す。
【0062】
レチノイドは、皮膚科学の分野において広く使用されており、かつざ瘡を処置するために特に効果的であるが、それらはまた、全身投与される場合に、有意な毒性作用をもたらす。本発明者らは、代替の処置法としてのCYP26B1阻害の、潜在的な効力を評価するための手段として、ざ瘡のライノマウスモデルを使用した。6~8週齢の無毛ライノ変異体マウスは、ビヒクル(アセトン/10%DMSO)、RA(10 nmol)、化合物026(2 μmol)、またはRAと026との組み合わせを用いて、連続した2週間にわたり、1週間につき5回、局所的に処置された。ビヒクルで処置されたマウスは、表皮および真皮において、大きな、ケラチンで満たされた嚢(utriculus)を有し、そしてこれらは、表皮シート調製物および組織切片(図11、最も左側のパネル)において観察されることができる。RAでの処置は、これらの嚢のサイズの減少、および表皮の肥厚化をもたらす(図11)。この効果はまた、化合物026のみ、またはRAとの組み合わせを用いた処置においても観察され、これは、皮膚でのCYP26B1の化学的な阻害が、表皮におけるざ瘡病変を減少させるのに十分であり得ることを示す。
【0063】
ヒト皮膚試料もまた、CYP26B1の存在に関して、IHCによって分析された。毛包および脂腺は、染色に陽性を示した。これらの実験はまた、基底細胞がん(BCC)腫瘍細胞における、CYP26B1の強い発現を明らかにした。これらの結果は、CYP26B1の阻害がまた、BCC患者を処置するためにも有用であり得ることを示す。進行したBCCを有する患者はしばしば、腫瘍の縮小をもたらすビスモデギブなどの、スムーズンド(Smo)タンパク質を阻害する薬物によって、処置される。しかしながら腫瘍は、中断後すぐに再発し得るため、患者は、これらの薬物を無期限に摂取しなければならない。マウスにおける最近の研究は、ビスモデギブに耐性の残存BCC細胞を、RAで処置すると、それら細胞を、Smoの阻害に対して感受性にすることができ、かつ腫瘍を消滅させることができたことを示した。したがって、Smoの阻害と組み合わせたCYP26B1の阻害は、BCCに対する有用な治療戦略であり得る。
【0064】
レチノイドは、限定するものではないが、以下を含む皮膚疾患の処置に有用であることが知られている:光線性角化症、ヒ素性角化症、炎症性のおよび非炎症性のざ瘡、乾癬、魚鱗癬、および他の角化、ならびに皮膚の過増殖性の障害、湿疹、アトピー性皮膚炎、ダリエー病、扁平苔癬、グルココルチコイドによる損傷(ステロイド性萎縮)の予防および回復。そのような化合物は、局所抗微生物薬として、皮膚の抗色素沈着薬として、適用されることができ、かつ加齢および光による皮膚の損傷の影響を処置および回復させるために、適用されることができる。
【0065】
レチノイドはまた、乳房の、皮膚の、前立腺の、子宮頸部の、子宮の、結腸の、膀胱の、食道の、胃の、肺の、喉頭の、口腔の、血液の、およびリンパ系のがん、化生、異形成、新形成、白板症、ならびに粘膜の乳頭腫などの、前悪性のならびに悪性の過増殖性の疾患を含む、がん性のならびに前がん性の状態の処置または予防のために、ならびにカポジ肉腫の処置のために、有用である。加えて、レチノイド化合物は、限定するものではないが、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜剥離、およびドライアイ、ならびに他のコルネオパシー(corneopathy)を含む、目の疾患を処置するために使用されることができ、それだけではなく、限定するものではないが、脂質異常症などの脂質代謝に関連する疾患、血管形成術後の再狭窄の予防を含む、さまざまな心血管疾患の処置および予防のために使用されることができ、かつ、循環中の組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)のレベルを増加させる物質として、使用されることができる。レチノイド化合物のための他の用途は、ゆうぜいおよび生殖器ゆうぜいを含む、ヒトパピローマウイルス(HPV)に関連する状態ならびに疾患、肺線維症、回腸炎、大腸炎、およびクローン病などの、さまざまな炎症性疾患、アルツハイマー病およびパーキンソン病などの神経変性疾患、ならびに脳卒中、成長ホルモンの異常な産生を含む、異常な下垂体機能、アポトーシスの誘導およびT細胞により活性化されたアポトーシスの阻害の両方を含む、アポトーシスの調節、本化合物とミノキシジルなどの他の物質との組み合わせ療法を含む、毛髪の成長の回復、免疫抑制薬および免疫刺激薬としての本化合物の使用、臓器移植拒絶の調節を含む、免疫系に関連する疾患、ならびに口角症の調節を含む、創傷治癒の促進の、処置ならびに予防を、含む。レチノイドはまた、II型インスリン非依存性糖尿病、肝臓の線維症とともに、心血管石灰化および筋組織石灰化などの異所性骨形成の障害を処置するためにも有用であることが、発見されている。
【0066】
この発明はまた、薬学的に許容される賦形剤との混合物中に、本明細書において記載されるような1つまたは複数の化合物を含む薬学的製剤にも関連し、前記製剤は、レチノイドによって処置可能であるような上述の状態、もしくは生物の天然のRAによって制御される、もしくはそれに反応性である状態を処置する、または軽減するための、ヒトを含む哺乳類への投与用に、適合されている。これらの製剤はまた、レチノイドを含む薬剤の効果を、もしくは生物の天然のRAの効果を増強する、または延長するために、レチノイドと同時投与されることができる。
【0067】
この発明の態様の化合物は、以下のような検討事項に応じて、局所投与されてよく、または全身投与されてもよい:処置されるべき状態;部位特異的な処置の必要性;投与されるべき薬物の量;および他の検討事項。たとえば、皮膚病の処置においては、一般的に、薬物を局所投与することが好ましい。とはいえ、深刻なざ瘡または乾癬の処置については、経口投与もまた使用され得る。溶液、懸濁液、ゲル、軟膏、または膏薬等のような任意の一般的な局所製剤が、使用され得る。そのような局所製剤の調製は、Remington’s Pharmaceutical Science, Edition 17, Mack Publishing Company, Easton, PAによって例示されるように、薬学的製剤の分野において十分に記述されている。局所適用に関して、これらの化合物はまた、粉末またはスプレー、特にエアロゾルの形態としても、投与され得る。薬物が全身投与されるべき場合には、それは、粉末、丸剤、錠剤等として、または経口投与のために適したシロップもしくはエリキシルとして、調合され得る。静脈内または腹腔内投与に関して、化合物は、注射によって投与され得る溶液または懸濁液として、調製される。ある状況においては、これらの化合物を、坐剤の形で、または皮膚下に留置するための徐放製剤として、もしくは筋肉内注射として調剤することが、有用であり得る。
【0068】
皮膚の乾燥を処置する、光からや、皮膚病を処置する別の薬剤からの保護を提供する、感染を処置または予防する、過敏症や炎症等を低減するといった、二次的な目的のために、他の薬剤が、そのような局所製剤に添加されることができる。
【0069】
レチノイド酸様化合物による処置に対して、もしくは天然のレチノイン酸による制御に対して感受性であることが知られている、もしくは発見されている、皮膚病または任意の他の適応症の処置は、本発明の態様の、1つまたは複数の化合物の治療上有効な用量の投与によって、もたらされる。治療濃度とは、疾患もしくは状態を予防する、それらを処置する、それらを改善する、それらの症状を低減する、それらの発症を遅らせる、またはそれらの増殖を遅くするもしくは予防する、濃度である。ある態様において、化合物は、特定の状態の発症を予防するために、予防的な様式で使用され得る。
【0070】
有用な治療濃度または予防濃度は、状態ごとに変わり、かつ、ある状況においては、処置される状態の深刻性によって、および処置への患者の感受性によって、変わり得る。したがって、単一の濃度が一律に有用というわけではなく、処置される疾患の特性に応じて改変が必要である。そのような濃度は、通常の実験法によって達成可能である。しかしながら、たとえば、ざ瘡、または類似の皮膚病の処置においては、1 mLにつき0.01ミリグラム~1 mgの製剤が、局所適用のための治療上有効な濃度となると予想される。全身投与される場合には、体重1 kgあたり、1日につき、0.01~5 mgの量が、これらの化合物が有用である多くの疾患の処置において治療成果をもたらすと予想され得る。
【0071】
いくつかの適用において、本発明のCYP26阻害性化合物は、レチノイドの製剤と同時投与され得る。
【0072】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するものであり、かつ、何らかの点において限定されることが意図されたものではない。
【実施例
【0073】
実施例1. 式(1)の化合物の合成
上記反応スキームは、式(1)の化合物の合成に至る合成経路を示す。化合物026は黄色い粉末であり、NMR、MS、およびHPLCによって以下のように特徴付けされた。1H NMR δ (CDCl3, 500 MHz): 1.3 (s, 9H), 6.43 (d, 1H), 6.85 (s, 1H), 7.26 (s, 2H), 7.40 (m, 5H), 7.68 (s, 1H), 7.82 (s, 1H), 7.93 (d, 2H), 8.50 (br s, 1H) ppm。分子量: 319.40、式: C21H21NO2。純度 (HPLC): >98% (HPLCの詳細: 90:10 MeCN:H2O, 0.5 mg/mL, 254 nm; 1 mL/分。
【0074】
実施例2. レチノイド活性アッセイ
このレチノイド活性アッセイは、一過性にトランスフェクトされた、RAに感受性のレポーター構築物の発現を、試験化合物が誘導する能力を測定する。このアッセイにおいて、MCF-7細胞には、ホタルルシフェラーゼの発現を引き起こす2つのRA応答エレメントを含むCYP26A1遺伝子の上流プロモーターを含む構築物(pCYP26A1-luc)が、トランスフェクトされる。CYP26A1は、これらの細胞において、RAによって高度に誘導性であるので、この構築物は、レチノイド様転写活性に感受性であるレポーターとして利用される。
【0075】
MCF-7細胞は、10% FBSを含むRPMI-1640培地中で維持された。指数関数的に増殖中の細胞は、トリプシン中でのインキュベーションにより採取された。細胞はその後、収集され、そして50,000細胞/ウェルとして、24ウェルプレートにプレーティングされた。細胞が80~90%コンフルエンスに達したら(たとえば翌日)、細胞に2種類のプラスミドがトランスフェクトされた。第一のプラスミドは、CYP26A1-luc構築物(375 ng)であった。第二のプラスミドは、構成的なチミジンキナーゼプロモーターによって作動するウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を含む、対照プラスミド(pRL-tk)(25 ng)であった。トランスフェクションは、FuGene 6トランスフェクション試薬(Promega)を用いて、DNA:FuGeneの1:3の比で実施された。トランスフェクションの24時間後、細胞は、3連で、DMSO中で0.1、1、および10 μMの最終濃度に希釈された、試験化合物を用いて処理された。レポーター活性化の陽性対照として、細胞はまた、上記に列挙されたものと同じ濃度で、DMSO中で希釈されたRAで処理された。DMSO処理のみは、陰性対照として利用された。処理の24時間後、細胞はpassive lysis buffer(Promega)中に採取され、そして細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性が、ルミノメーターを用いて読み取られた。データは、ウミシイタケルシフェラーゼに対して相対的なホタルルシフェラーゼの活性として、表現される(表3~5を参照されたい)。CYP26A1阻害剤化合物についてはレポーターの活性化は一切検出されなかったが、関連性を有するレチノイド様化合物は、ルシフェラーゼ発現を誘導する。
【0076】
加えて、特定の関心対象のいくつかの化合物に関して、試験化合物での処理の後での、RAの内在性の標的遺伝子の発現を測定するために、MCF-7細胞において第二のアッセイが実施される。指数関数的に増殖中のMCF-7細胞は、トリプシンで処理され、収集され、そして1ウェルにつき300,000細胞として、6ウェル培養皿へとプレーティングされた。細胞がコンフルエンシーに達したら、それらは、DMSO中で1 μMの最終濃度へと希釈された試験化合物で、処理された。陽性対照として、細胞はまた、1μMの最終濃度のRAで処理された。処理の24時間後、RNAは、TRI試薬(Sigma-Aldrich, Oakville, Canadaより入手可能)を用いて採取された。cDNAは、2 μgの全RNAから、ランダムプライマー法により、Superscript III cDNA合成キットを用いて合成された(キットはLife Technologies, Burlington, ON, Canadaより入手可能)。RA誘導性であるCYP26A1遺伝子の発現の分析は、2ステップサーマルサイクリング反応において、Sybr Select Master Mix(Life Technologies)および遺伝子特異的プライマーを用いた、PMM2の発現に対して正規化されたqPCRによって、定量された。重要なことに、CYP26B1に対する阻害活性を有する化合物は、単独で投与された場合に、RAの標的遺伝子の発現を有意に誘導することはなく、これは、レチノイド様活性の欠如を示す。
【0077】
実施例3. RA活性アッセイの増強
RA活性アッセイは、CYP26を阻害する化合物の、たとえばRAの異化作用を制限することによる、RAの活性を増強する能力を、測定するために使用される。このアッセイは、RAと関心対象の化合物とを用いて処理されているMCF-7細胞における、RAの内在性の標的遺伝子の発現を測定した。CYP26の活性を阻害する化合物は、RAに反応した、RAの標的遺伝子の誘導を、延長する効果を有するものと考えられる。
【0078】
指数関数的に増殖中のMCF-7細胞は、トリプシンで処理され、収集され、そして1ウェルにつき300,000細胞として、6ウェル培養皿へとプレーティングされた。細胞がコンフルエンシーに達したら、それらは、CYP26阻害剤の試験化合物により、もしくはケトコナゾール(非選択的CYP阻害剤)により、1 μMの最終濃度で、または対照として同量のDMSOで、処理された。RAもまた、1 μMの最終濃度で添加された。RNAは、Trizol試薬を用いて、処理の24、48、および72時間後に採取された。cDNAは、2 μgの全RNAから、ランダムプライマー法により、Superscript III cDNA合成キットを用いて合成された(Life Technologies, Burlington, ON, Canadaより入手可能)。RA誘導性であるCYP26A1遺伝子の発現の分析は、2ステップサーマルサイクリング反応において、Sybr Select Master Mix(Life Technologies)および遺伝子特異的プライマーを用いた、PMM2の発現に対して正規化されたqPCRによって、定量された。データは、CYP26A1の誘導を増強する、CYP26B1選択的阻害剤に関して提供される。化合物026の、MCF-7細胞におけるRAシグナル伝達の増強については、図3を参照されたい。
【0079】
実施例4. 細胞ベースの阻害剤アッセイ
CYP26A1またはCYP26B1が安定的にトランスフェクトされたHeLa細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)および100 μg/mLハイグロマイシンを含む最小必須培地(Minimum Essesntial Medium)(MEM)中で維持された。指数関数的に増殖中の細胞は、トリプシン中でのインキュベーションにより採取された。細胞はその後、収集され、そして、増加していく濃度の試験化合物の存在下または非存在下で、0.05 μCi [3H]-RAを含む0.2 mLの培養培地中で5 x 105細胞として、48ウェル培養プレートへと再プレーティングされた。試験化合物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で希釈され、そしてその後、2連で、0.01、0.1、1、10、および100 μMの最終濃度でウェルへと添加された。RA代謝の阻害についての陽性対照として、細胞はまた、上記と同じ濃度のケトコナゾールともインキュベートされた。細胞は、3時間、37度でインキュベートされた。レチノイドはその後、クロロホルムの代わりにジクロロメタンを用いるよう改変された、Bligh, et al., (1959), Canadian Journal of Biochemistry 37, 911-917の手順を用いて抽出された。各試料の水溶性放射能レベルは、βシンチレーションカウンター(MP Biomedicals of Solon, OH, USAより入手可能なEcolumeシンチレーション液使用)を用いて定量された。IC50値は、全トランス型RAの代謝を50%阻害するために必要とされる阻害剤の濃度を表し、かつ、対数変換されたデータに由来するものであった。いくつかの好ましい化合物についての、このアッセイにおいて得られたIC50値が、表2に列挙される。
【0080】
実施例5. 白血病細胞の分化のFACSによる分析
多くのヒト非APL AML細胞株は、RAに誘導される分化に対して感受性である。しかしながら、白血病細胞の骨髄間質細胞との共培養は、このRAの効果を妨害することができる。このアッセイは、白血病細胞の分化に対して間質細胞が有している防御作用を打破する、CYP26阻害剤化合物の能力を、試験する。これらの実験のため、OP9マウス骨髄間質細胞は、24ウェルプレート中、20% FBSを含むMEM-αで、細胞の単層が形成されるまで増殖させる。OP9細胞はその後、増殖停止を誘導するため、GammaCell 20セシウム137線源(Queen’s Universityに設置されている)を用いて照射される(15 Gy)。白血病細胞はその後、照射された単層に、またはOP9細胞無しの対照ウェルに添加される。AML細胞株(150,000細胞)は、その後、それらに適した以下の増殖培地中で、OP9単層上にプレーティングされる;THP-1は、10% FBSを含むRPMI-1640培地;MDSLは、10% FBSおよび10 ng/ml組み換えヒトIL-3を含むRPMI-1640培地;Kasumi-1は、20% FBSを含むRPMI-1640;MV4-11は、10% FBSを含むIMDM。細胞はその後、72時間にわたり、DMSO(ビヒクル対照)で、RA(THP-1およびMV4-11細胞については0.1 μM、ならびにKasumi-1細胞については1μM)で、試験CYP26阻害剤化合物で、またはRAと阻害剤化合物との組み合わせで、処理される。処理期間後、白血病細胞は収集され、そしてミエロイド分化を示す細胞表面抗原(PE-CD11b)、または幹細胞集団を示す細胞表面抗原(FITC-CD34、PE-CD38)に対する、フルオロフォアで標識された抗体を用いて、染色される;すべての抗体は、BD Biosciencesより入手可能である。染色された細胞はその後、CD11b+である細胞のパーセンテージ、CD11bの相対的な発現レベル(蛍光強度の中央値 - MFIによる)、またはCD34+CD38-白血病幹細胞(LSC)のパーセンテージを評価するために、FACS Divaソフトウェアを用いて、BD FACS Aria 3フローサイトメーター(Queen’s University)において、FACSによりソートされる。結果は、典型的には3連の平均として、表される。
【0081】
実施例6. 白血病細胞のアポトーシス
RAはまた、AML細胞を含む多様な細胞型において、アポトーシスを誘導することができる。この実験は、骨髄間質細胞の存在下で、RAに誘導されるアポトーシスをレスキューする、CYP26阻害剤化合物の能力に関して、該化合物を試験する。これらの実験のため、MV4-11 AML細胞は、間質単層の存在下および非存在下で、上述のようにプレーティングされる。細胞はその後、48時間にわたり、RA(0.1 μM)で処理される。処理期間後、細胞は、アポトーシス細胞の表面に結合する、FITC標識されたアネキシンV抗体(Thermofisher Scientificより入手可能)で染色される。細胞はその後、上述のようにFACSによってソートされ、そしてデータはアネキシンV+(アポトーシス)細胞のパーセンテージとして表現される。
【0082】
実施例7. 白血病細胞のコロニー形成
この実験は、造血幹・前駆細胞、および白血病幹細胞の、長期的な増殖能力を試験するために使用される。長期培養におけるコロニー形成能力は、幹細胞/前駆細胞の活性を示す。したがって、白血病幹細胞への影響の測定として、骨髄間質の存在下で、RAおよび/またはCYP26阻害剤で処理された白血病細胞は、コロニー形成能力について試験された。これらの実験のため、骨髄間質細胞および白血病細胞の共培養が、上述のように調製され、そしてRAおよび/またはCYP26阻害剤化合物で72時間処理される。処理期間後、白血病細胞は、収集され、そして、コロニー形成能力を評価するために、半固体のメチルセルロース培地に再プレーティングされる。35 mmプレートに、培養皿1枚につき、1.1 mlのMethoCult(STEMCELL Technologies, Vancouver, Canadaより入手可能)中の500個の白血病細胞がプレーティングされる。1回の処理につき、3連のプレートが調製され、そして培養物は、14~16日間にわたり、CO2インキュベーター内で増殖させる。培養期間後、コロニーは、解剖顕微鏡のもとで計数される。
【0083】
実施例8. 骨芽細胞の細胞分化
RAは、骨細胞(軟骨細胞/骨芽細胞)の分化の種々の段階を妨害することによって、骨形成に影響をおよぼすことが示されている。これらの実験は、細胞培養モデルを用いて、インビトロでの骨芽細胞分化を減少させるまたは妨害する、CYP26阻害剤の能力を試験するために、使用される。MC3T3-E1マウス頭蓋冠前骨芽細胞(American Type Culture Collectionより入手可能)は、アスコルビン酸無しで、MEM-α中で培養された。骨芽細胞の分化、およびマトリックスのミネラリゼーションを誘導するため、細胞は、アスコルビン酸(50 μg/ml)およびリン酸(10 mM β-グリセロリン酸)を含む培地へと交換され、そして2~3日ごとに培地を代えながら、21日間まで培養される。細胞はまた、骨芽細胞分化への影響を評価するため、変化させた濃度のRAまたはCYP26阻害剤化合物で処理される。処理期間の最後で、24ウェルプレート中の細胞は、70%エタノール中で固定され、そして、骨芽細胞分化を示す、石灰化した細胞外マトリックスを可視化するため、アリザリンレッド(40 mM、pH 4.2)で染色される。染色されたウェルは、Leica MZ95解剖顕微鏡のもとで写真撮影された。6ウェルプレート中で増殖させた他の細胞は、RNA抽出、ならびに骨分化マーカー、およびRAの標的遺伝子のqPCR分析のために、使用される。
【0084】
実施例9. 培養された骨髄間質細胞および骨芽細胞によるRA代謝
これらの実験は、初代細胞または細胞株の、RAを代謝する能力を評価するためのものであり、かつこの能力に対する、CYP26A1またはCYP26B1の阻害の影響を決定するためのものである。これらの実験のため、細胞は、48ウェルプレートへとプレーティングされ、そして放射能標識(3H)されたRAで処理される。この標識されたRAの、水溶性代謝物への変換の度合いが、上述のように、細胞ベースの阻害剤アッセイにおいて決定される。初代ヒト骨髄間質細胞(Lonzaより入手可能)は、MyeloCult(Stem Cell Technoloigies, Vancouver, Canadaより入手可能)中で培養された。マウスOP9骨髄間質細胞およびMC3T3前骨芽細胞は、上述のように培養された。細胞は適した培養培地にプレーティングされ、そして単層を形成させる。細胞はその後、CYP26発現を誘導するために、DMSO(ビヒクル対照)、またはRA(1 μM)のいずれかで、24時間にわたり前処理される。ビヒクルの、およびRAに誘導される細胞は、その後、RA代謝に対する影響を調べるため、試験CYP26阻害剤の存在下または非存在下で、3H-RAに曝露される。細胞は3時間にわたり標識されたRAとインキュベートされ、そして代謝物は上述のように抽出されそして分析される。
【0085】
実施例10. マウス骨髄におけるRA活性の誘導
ヒトおよびマウス骨髄間質細胞はCYP26酵素を発現しており、かつCyp26B1は、これらの細胞において、RAによって高度に誘導性である。この実験は、CYP26阻害剤への骨髄の曝露が、骨髄におけるRAレベルを上昇させるのに、およびRAの標的遺伝子を誘導するのに、十分であるかどうかを試験する。マウス(8~12週齢)は、連続した2日間(1日につき1回)に、0.9%塩化ナトリウム/0.1% DMSOに溶解されたCYP26阻害剤化合物の静脈内注射(尾静脈)を受けた。動物には、40 μg/kgの用量の阻害剤が、または同量のビヒクルのみが投与された。2回目の注射後の朝、動物は犠牲にされ、そして骨髄単核細胞が、Lympholyte-mammal試薬(Cedarlane, Burlington, Canadaより入手可能)を用いて大腿骨から採取された。RNAはその後、単離された細胞から抽出され、そしてRAの標的遺伝子の発現は、qPCRによって評価された。
【0086】
実施例11. ざ瘡のマウスモデルにおける化合物の効果
レチノイドは、ざ瘡を含む、ヒトにおける多様な皮膚疾患の処置において有用であることが示されている。これらの実験は、ざ瘡のマウスモデルにおける、潜在的な抗ざ瘡の効力についての、CYP26阻害剤化合物、および他のレチノイドの能力を試験する。ライノマウスモデルは、ざ瘡に類似する皮膚病変を発症する、無毛の変異体であり、かつ、ざ瘡の新規な治療法を評価するための、そしてレチノイドのインビボ活性を評価するためのモデルとして、広く使用されている。試験化合物またはRAは、アセトン/10% DMSO中に溶解され、そして0.4 mlが、動物(2匹の雄 + 2匹の雌)の背部の皮膚に、1日に1回、1週間につき5日、連続した2週間にわたり、局所適用された。最後の処置の翌日に、動物は犠牲にされ、そして皮膚は、処置動物から収集され、そして組織学上の処理がなされ、そして表皮シートは、嚢の可視化のため調製された。組織切片は、ホルマリン固定された試料をパラフィン包埋することによって調製され、そしてヘマトキシリンおよびエオシンで染色された。写真は、Nikon Eclipse E600顕微鏡のもとで、Q Imagingソフトウェアを用いて、20Xの拡大率で撮影された。表皮シートは、皮膚試料を5日間、0.5%酢酸中で4度で5日間処理し、その後で真皮層と表皮層とが慎重に分離され、そして表皮がその後、一連のエタノール処理(70%、80%、90%、および100%)を用いて脱水されたことによって、調製された。100%エタノール中での一晩の脱水後、表皮層は、CitriSolv透徹剤(Fisher Scientificより入手可能)を用いて透徹され、そしてパーマウント(Fisher Scientificより入手可能)中で、ガラススライドにマウントされた。表皮層はその後、上述のように写真撮影された。
【0087】
実施例12. 免疫組織化学によるCYP26Bの検出
ヒト組織試料は、ヒトCYP26B1に対する抗体(Sigma-Aldrich, Canadaより入手可能)を用いて染色された。染色は、Queen’s Laboratory for Molecular Pathologyにおいて、ベンタナシステムを用いて実施された。
【0088】
等価物
この説明は、ある特定の態様を参照してなされていること、かつ、本発明の原理を活用する他の態様を作り出すことが可能であって、それらは本発明の精神および範囲内にあることが、当業者によって理解される。
【0089】
(表1)本明細書において記載される化合物の構造式
【0090】
(表2)式(1)のさまざまな化合物のCYP26阻害活性
【0091】
(表3)RA対照と比較した、化合物025、027、および028で処理されたMCF-7細胞における、Cyp26a1-luc構築物の相対的なルシフェラーゼ活性
【0092】
(表4)RA対照と比較した、化合物026、029、および030で処理されたMCF-7細胞における、Cyp26a1-luc構築物の相対的なルシフェラーゼ活性
【0093】
(表5)RA対照と比較した、化合物031、032、および033で処理されたMCF-7細胞における、Cyp26a1-luc構築物の相対的なルシフェラーゼ活性
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11