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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】ポンプシステム
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/08 20060101AFI20240329BHJP
   F04D 29/08 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
F04D13/08 L
F04D29/08 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021076463
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2022170371
(43)【公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】荒木 慎一郎
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0289261(US,A1)
【文献】特開2020-045847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/08
F04D 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液槽内に設けられた吐出管と、
前記液槽内を昇降移動可能に設けられたポンプと、
前記液槽内に設けられ、前記ポンプを昇降移動させる際に、当該ポンプの昇降移動を案内するガイドレールと、
前記ポンプに設けられ、前記ガイドレールに沿って摺動自在なガイド部と、
前記ポンプを下降させたときに当該ポンプと前記吐出管とを接続し、前記ポンプを上昇させたときに当該ポンプと前記吐出管との接続を解除する接続機構と、を備えたポンプシステムであって、
前記接続機構は、
前記吐出管に設けられ、管フランジ面を有する管フランジと、
前記ポンプに設けられ、前記ポンプの昇降移動に伴って前記管フランジ面に対面可能なポンプフランジ面を有するポンプフランジと、
前記管フランジ側に設けられた管側連結部と、
前記ポンプフランジ側に設けられ、前記ポンプの昇降移動に伴って前記管フランジ面と前記ポンプフランジ面とが対面したときに前記管側連結部と連結され、前記管フランジ面と前記ポンプフランジ面とが離間したときに前記管側連結部との連結が解除されるポンプ側連結部と、
前記管フランジ面又は前記ポンプフランジ面のいずれかに形成された環状溝と、前記環状溝に配置された環状シールと、を備え、
前記ポンプ側連結部と前記管側連結部とを連結させたときに、前記ポンプの自重により前記管フランジ面と前記ポンプフランジ面とは対面するように構成され、
前記環状溝は前記管フランジ面又は前記ポンプフランジ面の中心軸を含む断面視において前記中心軸に沿った内壁面を有する形状に構成され、
前記環状シールは、
弾性体から構成され、前記環状溝に収容される基部と、前記管フランジ面と前記ポンプフランジ面とが対面する前の非接続状態においては前記環状溝からはみ出す突出部とを有し、
前記基部は、前記環状溝の前記内壁面に沿った面を有する形状であり、
前記突出部は前記基部よりも、前記断面視において面積が小さくなる形状であり、
前記環状溝及び前記環状シールは、前記非接続状態において前記内壁面と前記基部との間に隙間を有するように構成されており、
前記隙間は、前記管フランジ面と前記ポンプフランジ面とが対面した接続状態での前記突出部の弾性変形による前記環状シールの形状変化を受け入れ可能な大きさを有しているポンプシステム。
【請求項2】
前記基部に対応する部分は、前記断面視において、矩形の角部に切欠部を有する形状に構成されている請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項3】
前記基部に対応する部分は、前記断面視において、矩形の辺部に切欠部を有する形状に構成されている請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項4】
前記突出部に対応する部分は、前記断面視において、半円の一部に切欠部を有する形状に構成されている請求項1から3のいずれか一項に記載のポンプシステム。
【請求項5】
前記切欠部は、前記環状シールの内向面に設けられている請求項2から4のいずれか一項に記載のポンプシステム。
【請求項6】
前記突出部に対応する部分は、前記断面視において、前記基部側の基端から当該突出部の先端にかけて幅狭となる形状をしている請求項1から5のいずれか一項に記載のポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液槽内に設けられた吐出管と、前記液槽内を昇降移動可能に設けられたポンプと、前記液槽内に設けられ、前記ポンプを昇降移動させる際に、当該ポンプの昇降移動を案内するガイドレールと、前記ポンプに設けられ、前記ガイドレールに沿って摺動自在なガイド部と、前記ポンプを下降させたときに当該ポンプと前記吐出管とを接続し、前記ポンプを上昇させたときに当該ポンプと前記吐出管との接続を解除する接続機構と、を備えたポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポンプシステムとしてマンホールポンプ設備1が開示されている。なお、当該背景技術の説明で用いる文言や符号は特許文献1のものである。当該マンホールポンプ設備1に配置されるポンプとしての下吸込水中ポンプ10は、電動機11と、電動機11の下方に接続されたポンプケーシング12と、電動機11の回転軸に接続され、ポンプケーシング12の内部において回転する羽根車と、を備えている。
【0003】
電動機11には、昇降用チェーン16が取り付けられており、この昇降用チェーン16を昇降させることによって、下吸込水中ポンプ10は吐出配管4からマンホール100の天井近傍まで至って鉛直方向に延びるガイドレール15に沿ってマンホール100の内部を上下移動可能に構成されている。
【0004】
下吸込水中ポンプ10の吐出口14と吐出配管4との取り合いは、下吸込水中ポンプ10を吐出配管4に対して上方から落とし込むと、下吸込水中ポンプ10の自重によって吐出口14と吐出配管4とにそれぞれ設けられたフランジどうしが自動的に密着状に接続される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-101088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、下吸込水中ポンプ10の駆動時には、液体の吐出による反力が下吸込水中ポンプ10に作用する。上述のように、下吸込水中ポンプ10の自重によって吐出口14と吐出配管4とにそれぞれ設けられたフランジどうしを自動的に密着状に接続させる構成では下吸込水中ポンプ10は吐出配管4から離間する方向へ動き、吐出口14と吐出配管4とにそれぞれ設けられたフランジどうしの隙間が大きくなり、下吸込水中ポンプ10から吐出された液体が、当該隙間から漏れ出る虞がある。
【0007】
また、液体の漏れが発生すると、吐出口14と吐出配管4とにそれぞれ設けられたフランジの表面が荒れ、漏れ量が経時的に増加する虞もある。このようなフランジどうしの隙間からの液体の漏れは、ポンプ効率の低下の原因となるため、下吸込水中ポンプ10のようなポンプの駆動時においても、フランジどうしの隙間の封止を維持できるようなポンプシステムが求められていた。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、ポンプの駆動時においても、管フランジ面とポンプフランジ面との封止を維持できるようなポンプシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するための、本発明に係るポンプシステムの特徴は、液槽内に設けられた吐出管と、前記液槽内を昇降移動可能に設けられたポンプと、前記液槽内に設けられ、前記ポンプを昇降移動させる際に、当該ポンプの昇降移動を案内するガイドレールと、前記ポンプに設けられ、前記ガイドレールに沿って摺動自在なガイド部と、前記ポンプを下降させたときに当該ポンプと前記吐出管とを接続し、前記ポンプを上昇させたときに当該ポンプと前記吐出管との接続を解除する接続機構と、を備えたポンプシステムであって、前記接続機構は、前記吐出管に設けられ、管フランジ面を有する管フランジと、前記ポンプに設けられ、前記ポンプの昇降移動に伴って前記管フランジ面に対面可能なポンプフランジ面を有するポンプフランジと、前記管フランジ側に設けられた管側連結部と、前記ポンプフランジ側に設けられ、前記ポンプの昇降移動に伴って前記管フランジ面と前記ポンプフランジ面とが対面したときに前記管側連結部と連結され、前記管フランジ面と前記ポンプフランジ面とが離間したときに前記管側連結部との連結が解除されるポンプ側連結部と、前記管フランジ面又は前記ポンプフランジ面のいずれかに形成された環状溝と、前記環状溝に配置された環状シールと、を備え、前記ポンプ側連結部と前記管側連結部とを連結させたときに、前記ポンプの自重により前記管フランジ面と前記ポンプフランジ面とは対面するように構成され、前記環状溝は前記管フランジ面又は前記ポンプフランジ面の中心軸を含む断面視において前記中心軸に沿った内壁面を有する形状に構成され、前記環状シールは、弾性体から構成され、前記環状溝に収容される基部と、前記管フランジ面と前記ポンプフランジ面とが対面する前の非接続状態においては前記環状溝からはみ出す突出部とを有し、前記基部は、前記環状溝の前記内壁面に沿った面を有する形状であり、前記突出部は前記基部よりも、前記断面視において面積が小さくなる形状であり、前記環状溝及び前記環状シールは、前記非接続状態において前記内壁面と前記基部との間に隙間を有するように構成されており、前記隙間は、前記管フランジ面と前記ポンプフランジ面とが対面した接続状態での前記突出部の弾性変形による前記環状シールの形状変化を受け入れ可能な大きさを有している点にある。
【0010】
環状シールとしては、Oリングを用いることも考えられる。しかし、Oリングは、断面が円形であることから、環状溝から前方へ突出する量を多くしづらい。すなわち、環状溝から前方へ突出する量を多くすると、環状溝に収容される部分の接触面積が狭くなる。そのため、ポンプを昇降させる際に、ポンプフランジ面又は管フランジ面との接触により、環状溝からずらされ脱落する虞がある。
【0011】
一方、環状溝に収容される部分の接触面積を広くすると、環状溝から前方へ突出する量が少なくなる。このような場合に、ポンプの駆動により、管フランジ面とポンプフランジ面との隙間が大きくなりすぎると、Oリングが管フランジ面又はポンプフランジ面と十分に接触せずに、液体の漏れ起こしてしまう虞がある。
【0012】
基部は、管フランジ面又はポンプフランジ面の中心軸を含む断面視において当該中心軸に沿った内壁面を有する形状の環状溝の当該内壁面に沿った面を有する形状であることから、当該基部は環状溝において面接触することができる。なお、このような環状溝に円形の断面形状を有するOリングを収容したとき、Oリングは環状溝の内壁面には点接触するに過ぎない。
【0013】
環状シールは、このような基部において環状溝に収容されることから、ポンプを昇降させる際に、ポンプフランジ面又は管フランジ面と接触したとしても、環状溝からずらされにくいことから脱落がしにくい。なお、基部と環状溝との間には、環状溝に基部を挿入できる程度の隙間があればよい。また、環状シールは、環状溝に配置する際に、接着剤によって基部と環状溝とを接着してもよい。
【0014】
環状シールは、剛性が高いと弾性変形がしにくく、また、弾性変形による形状変化を受け入れるために基部と環状溝との隙間を大きく設けておく必要である。上述のように、環状シールは、突出部は基部よりも、前記断面視において面積が小さくなる形状であることから、突出部においては剛性が低いため弾性変形が容易であり、また、弾性変形による形状変化を受け入れるために基部と環状溝との隙間は小さくてすむ。
【0015】
ポンプの駆動時には、液体の吐出による反力がポンプに作用する。ポンプは吐出管から離間する方向へ動き、管フランジ面とポンプフランジ面との隙間は大きくなる。このような場合であっても、環状シールの突出部は環状溝からはみ出して、ポンプフランジ面又は管フランジ面に接触するため、当該隙間からの液体の漏れを抑制することができる。つまり、管フランジ面とポンプフランジ面とが対面した接続状態においては、突出部が管フランジ面又はポンプフランジ面に押圧されながら当該管フランジ面又はポンプフランジ面に接触し続けるため液体が漏れることはない。
【0016】
突出部は、丸みを帯びた形状であってもよいし、角張った形状であってもよい。丸みを帯びた形状とは頂点を有しない形状をいい、角張った形状とは頂点を一つないし複数有する形状をいう。
【0017】
環状シールの材質は、適度な弾性を有しながら、水や油に対して耐食性があるものが好ましく、例えばアクリロニトリル・ブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム等から選択することができる。
【0018】
本発明においては、前記基部に対応する部分は、前記断面視において、矩形の角部に切欠部を有する形状に構成されていると好適である。
【0019】
上述の構成によると、切欠部は、基部において、断面視における矩形の角部を切り欠くという簡単な構成により容易に実現することができる。
【0020】
環状シールは、切欠部を有する部分において剛性が低いため弾性変形がしやすく、突出部の押圧に伴い環状シールが形状変化をする際に、当該切欠部により区画された空間に逃げることができる。なお、切欠部は、後加工により環状シールに形成されてもよいし、環状シールの製造時に予め設けられてもよい。以下の切欠部においても同様である。
【0021】
本発明においては、前記基部に対応する部分は、前記断面視において、矩形の辺部に切欠部を有する形状に構成されていると好適である。
【0022】
上述の構成によると、切欠部は、基部において、断面視における矩形の辺部を切り欠くという簡単な構成により容易に実現することができる。
【0023】
本発明においては、前記突出部に対応する部分は、前記断面視において、半円の一部に切欠部を有する形状に構成されていると好適である。
【0024】
上述の構成によると、切欠部は、突出部において、断面視における半円を切り欠くという簡単な構成により容易に実現することができる。
【0025】
本発明においては、前記切欠部は、前記環状シールの内向面に設けられていると好適である。
【0026】
上述の構成によると、切欠部は環状シールの内向面に設けられていることから、環状シールと環状溝との隙間は、当該切欠部の部分において広くなる。ポンプの駆動時に液体が当該隙間に入り込むことにより、環状シールは、突出部が管フランジ面又はポンプフランジ面に向けて突出する方向に変形を促されるため、突出部は、管フランジ面又はポンプフランジ面に対してより強く接触することとなる。
【0027】
本発明においては、前記突出部に対応する部分は、前記断面視において、前記基部側の基端から当該突出部の先端にかけて幅狭となる形状をしていると好適である。
【0028】
上述の構成によると、突出部は、前記断面視において、前記基部側の基端から当該突出部の先端にかけて幅狭となる形状をしていることから、先端にかけて剛性が低くなっている。したがって、突出部は先端ほど弾性変形がしやすく、管フランジ面とポンプフランジ面との隙間の変動に追従して、容易に形状変化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】ポンプシステムの全体図
図2】接続機構の説明図
図3】接続機構の説明図
図4】別実施形態に係る環状シールの説明図
図5】別実施形態に係る環状シールの説明図
図6】別実施形態に係る環状シールの説明図
図7】別実施形態に係る環状シールの説明図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1には、液槽としてのマンホール100の設けられるポンプシステム1が示されている。
【0031】
ポンプシステム1は、吐出管2、ポンプ3、ガイドレール4、ガイド部5、及び、接続機構6等を備えている。
【0032】
吐出管2は、直管21や曲管22をフランジ等により連結することにより構成されており、マンホール100内、例えば床面及び壁面に対してブラケット等によって固定的に設けられている。
【0033】
ポンプ3は、水中ポンプであり、電動機31と、電動機31に接続されたポンプケーシング32と、電動機31の出力軸に接続され、ポンプケーシング32の内部において回転する羽根車(図示せず)と、ポンプケーシング32の下面に設けられた吸込口33と、ポンプケーシング32の側面に設けられた吐出口34等を備えている。
【0034】
ポンプ3の上部には、吊り具35が接続されている。吊り具35は、例えばチェーンやロープである。ホイスト等によって吊り具35を巻き取りや繰り出しすることによって、ポンプ3はマンホール100内を昇降移動可能となっている。
【0035】
ガイドレール4は、直管又は鋼材等によって構成され、マンホール100内に鉛直方向に沿って固定的に設けられている。一方、ガイド部5はガイドレール4を挿通可能な孔部を有し、ポンプ3のポンプフランジ36の天面側に設けられている。
【0036】
ガイド部5の前記孔部にガイドレール4が挿通されることにより、ポンプ3はガイドレール4に沿って、マンホール100内の所定軌道を昇降移動させられる。なお、ガイド部5はガイドレール4に沿ってポンプ3の昇降移動の案内が可能な態様であればよく、例えば前記孔部に代えて、ガイドレール4の形状に対応した凹部を有し、当該凹部にガイドレール4が挿通されるように構成されていてもよい。
【0037】
接続機構6は、ポンプ3を下降させたときに当該吐出管2とポンプ3とを接続し、ポンプ3を上昇させたときに当該吐出管2とポンプ3との接続を解除する機構であり、図2及び図3に示すように、管フランジ23と、ポンプフランジ36と、管側連結部24と、ポンプ側連結部38と、環状溝39と、環状シール7と、を備えている。
【0038】
管フランジ23は、吐出管2の端部に設けられており、管フランジ面25を有している。管フランジ23の管フランジ面25の裏面には管側連結部24が設けられている。
【0039】
ポンプフランジ36は、ポンプ3の吐出口34に設けられており、ポンプフランジ面37を有している。ポンプフランジ36の天面側に設けられたガイド部5には、管フランジ面25の裏面の管側連結部24に対面するようにポンプ側連結部38が設けられている。
【0040】
ポンプフランジ面37及び管フランジ面25はそれぞれ垂直な面であるのに対して、ポンプ側連結部38及び管側連結部24は、図1から図3において、それぞれ垂直から右に傾斜した接触面を有している。
【0041】
管側連結部24とポンプ側連結部38とは、ポンプ3の昇降移動に伴って、管フランジ面25とポンプフランジ面37とが対面する位置において互いの接触面が接触し、管フランジ23とポンプフランジ36とが連結され、管フランジ面25とポンプフランジ面37とが離間したときに互いの接触面が離間し、管フランジ23とポンプフランジ36との連結が解除されるように構成されている。
【0042】
なお、ポンプ3を吊り降ろす際に、ポンプ側連結部38の接触面が管側連結部24の接触面に接触しながら滑り降りることになるが、このとき、上記のように互いの接触面が傾斜していることから、ポンプフランジ36は管フランジ23へと近づけられる。
【0043】
管フランジ23とポンプフランジ36とが連結された際には、管側連結部24とポンプ側連結部38との接触面を中心としたポンプ3の自重によるモーメントにより、ポンプフランジ面37を管フランジ面25に圧接させるような力が作用する。これにより、吐出管2とポンプ3とが連通される。
【0044】
以上のようにして吐出管2とポンプ3とが連通されたのちポンプ3が駆動されると、マンホール100に貯留されている液体がポンプ3の吸込口33から吸引され、吐出口34から吐出される。この吐出された液体は吐出管2を介してマンホール100の外部に導かれる。
【0045】
ところで、ポンプ3の駆動時には、液体の吐出による反力がポンプ3に作用する。すなわちポンプ3は吐出管2から離間する方向へ動こうとし、具体的には、ポンプ側連結部38は、管側連結部24との接触面が傾斜面であることからせりあがり、図3に示すように、特にポンプフランジ面37のうち上側において管フランジ面25から離間する方向へ移動し、隙間が大きくなることがある。
【0046】
このように大きくなった隙間から、吐出した液体が漏れることを抑制するために、管フランジ面25及びポンプフランジ面37の間に環状シール7が設けられている。
【0047】
本実施形態においてはポンプフランジ面37には切削加工等により環状溝39が形成されており、環状シール7は当該環状溝39に配置される。
【0048】
図3の拡大図に詳細に示すように、環状溝39は、ポンプフランジ36の中心軸を含む断面視において当該中心軸に沿った内壁面を有する形状、本実施形態においてはコの字形状をしている。なお、環状溝39の内壁面のうちポンプフランジ36の中心軸を含む断面視において当該中心軸に沿った内壁面は丸みを帯びていてもよい。この場合は、環状溝39は、ポンプフランジ36の中心軸を含む断面視においてUの字形状となる。
【0049】
環状シール7は、無端状のシール材であり、適度な弾性を有しながら、水や油に対して耐食性があるものが好ましく、例えばアクリロニトリル・ブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム等の弾性体から構成されている。環状シール7は、基部71と突出部72とを有している。
【0050】
基部71は、環状溝39のコの字形状の内壁面に沿った面を有する形状をしている。本実施形態においては、環状シール7のうち基部71に対応する部分は矩形状である。基部71の、当該環状シール7の径方向における外寸は、環状溝39の、ポンプフランジ36の径方向における内寸よりもいくらか小さく構成されている。したがって、基部71は、隙間を有する態様で環状溝39に収容される。なお、環状シール7のうち基部71に対応する部分はUの字形状であってもよい。
【0051】
本実施形態においては、環状シール7の外寸は、環状溝39の外周側の直径と略等しいのに対して、環状シール7の内寸は、環状溝39の内周側の直径よりも大きく設定されており、環状シール7を環状溝39に配置したときには、環状シール7の外周側よりも内周側のほうが環状溝39との隙間が大きい。当該隙間は、環状シール7が弾性変形による形状変化をしたときに逃げ込む部分となる。なお、基部71と環状溝39との間には、環状溝39に基部71を挿入できる程度の隙間があればよい。また、環状シール7を環状溝39に配置する際に、接着剤によって基部71と環状溝39とを接着してもよい。
【0052】
上述のように、環状シール7の中心軸を含む断面視において、環状溝39はコの字形状をし、基部71はコの字形状の内壁面に沿った面を有する形状をしていることから、基部71が環状溝39に収容された際に、環状溝39及び基部71は、環状シール7の中心軸を含む断面視において三辺において対面する。上述のように、環状シール7の外寸は、環状溝39の外周側の直径と略等しいことから、環状シール7が変形していない状態であっても、環状シール7は、外周面と環状溝39の底部に対面する側面において、環状溝39と接触する。
【0053】
環状シール7は、基部71において上述のように複数の面が接触する態様によって環状溝39に収容されることから、ポンプ3を昇降させる際に、管フランジ面25と接触したとしても、環状溝39からずらされにくいことから脱落がしにくい。
【0054】
突出部72は、環状シール7の中心軸を含む断面視において、基部71側の基端から突出部72の先端にかけて幅狭となる形状をしている。本実施形態においては、環状シール7のうち突出部72に対応する部分は半円形状をしている。
【0055】
ただし、突出部72は、上述の半円形状のように丸みを帯びた形状であってもよいし、これとは異なり角張った形状であってもよい。なお、丸みを帯びた形状とは頂点を有しない形状をいい、角張った形状とは頂点を一つないし複数有する形状をいう。
【0056】
環状シール7は、突出部72が基部71よりも、断面視において面積が小さくなる形状、具体的には、突出部72が半円形状であることから、環状シール7の先端にかけて体積が少ないため、突出部72は先端にかけて剛性が低くなっている。したがって、突出部72は先端ほど弾性変形がしやすく、管フランジ面25とポンプフランジ面37との隙間の変動に追従して、容易に形状変化することができる。また、弾性変形による形状変化を受け入れるために基部71と環状溝39との隙間は小さくてすむ。
【0057】
環状シール7は、当該環状シール7の中心軸に沿った方向の自然長が、環状溝39の収容深さ(ポンプフランジ36の中心軸に沿った方向の長さ)より長く構成されている。したがって、突出部72は、管フランジ面25とポンプフランジ面37とが対面する前の、環状シール7に弾性変形が生じていない状態においては環状溝39からはみ出している。
【0058】
環状シール7が弾性変形していない状態であるときの、当該環状シール7のポンプフランジ36のポンプフランジ面37からのはみ出し量は、特に限定されるものではなく、環状シール7の寸法や剛性、管フランジ23及びポンプフランジ36の寸法、環状溝39の寸法等に応じて適宜定めることができる。
【0059】
ただし、ポンプ3を吊り降ろし、管フランジ23とポンプフランジ36とが対面するまでや、ポンプ3を吊り上げ、管フランジ23とポンプフランジ36とが離間するまでに、当該ポンプ3の昇降動作の邪魔にならないような量であればよく、例えば管フランジ23やポンプフランジ36の直径が100mm~200mm程度であるときに、10mm程度であってもよいし、5mm程度以下であってもよい。
【0060】
吐出管2やポンプ3の製造上の寸法誤差による面粗さ等により管フランジ面25やポンプフランジ面37との間に設計よりも大きな隙間が生じたり、その隙間が不均一なものであったりすることがある。しかし、ポンプ3の自重による力が作用して環状シール7が圧縮されて弾性変形しながら、突出部72が管フランジ面25に接触し続けるため、管フランジ面25とポンプフランジ面37との隙間からの液体の漏れを抑制することができる。
【0061】
また、上述のようにポンプ3の駆動により、管フランジ面25やポンプフランジ面37との隙間が広がったとしても、環状シール7の弾性力により突出部72は管フランジ面25に接触し続けるため、当該隙間からの液体の漏れを抑制することができる。また、当該広がった隙間には、ポンプ3から吐出される液体が進入し、環状シール7には当該液体の吐出圧が加わる。この吐出圧により、環状シール7は軸方向に広がるように変形が促され、突出部72は管フランジ面25に押し付けられ、基部71は環状溝39の内壁面に押し付けられて強く密着する。これにより管フランジ面25とポンプフランジ面37との隙間のシール性が向上する。
【0062】
以上のように本発明に係る実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されない。すなわち、上述の実施形態に対して様々な変形を加えることが可能である。
【0063】
以下、図4から図7を参照しながら、変形の一例について説明する。なお、以下の説明及び図4から図7において、上述した実施形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0064】
図4から図7は、環状溝39と、当該環状溝39に配置された環状シール7を拡大して示す断面図であり、当該各図面においては、弾性変形していない状態の環状シール7を実線で示し、弾性変形している状態の環状シール7を二点鎖線で示す。
【0065】
図4に示す環状シール7は、基部71に対応する部分が、断面視において、矩形の角部に切欠部73を有する形状に構成されている。なお、切欠部73は、環状シール7の内向面に設けられている。
【0066】
環状シール7は、切欠部73を有する部分において剛性が低いため弾性変形がしやすく、突出部72の押圧に伴い環状シール7が形状変化をする際に、当該切欠部73により区画された空間に逃げることができる。なお、切欠部73は、後加工により環状シール7に形成されてもよいし、環状シール7の製造時に予め設けられてもよい。図5から図7に示される切欠部73においても同様である。
【0067】
切欠部73は環状シール7の内向面に設けられていることから、環状シール7と環状溝39との隙間は、当該切欠部73の部分において広く、ポンプ3の駆動時に液体が当該隙間に入り込むことにより、環状シール7は、突出部72が管フランジ面25に向けて突出する方向に変形を促されるため、突出部72は、管フランジ面25に対してより強く接触することとなる。図5から図7に示される環状シール7においても同様である。
【0068】
図5に示す環状シール7は、基部71に対応する部分が、前記断面視において、矩形の辺部に切欠部73を有する形状に構成されている。なお、切欠部73は、環状シール7の内向面に設けられている。図5においては、切欠部73の断面形状はコの字形状であるが、これに限定されるものではなく、例えばVの字形状やUの字形状であってもよい。
【0069】
図6に示す環状シール7は、突出部72に対応する部分が、前記断面視において、半円の一部に切欠部73を有する形状に構成されている。
【0070】
図7に示す環状シール7は、突出部72に対応する部分が、前記断面視において、矩形の角部に切欠部73を有する形状に構成されている。
【0071】
なお、図4から図7において、切欠部73は環状シール7の一箇所に設けられていたが、これに限定されるものではなく、例えば、切欠部73は環状シール7の複数箇所に設けられていてもよい。また、切欠部73は、環状シール7の内向面に設けられていたが、これに限定されるものではなく、例えば、環状シール7の外向面に設けられていてもよい。
【0072】
上述した実施形態においては、環状シール7は、ポンプフランジ面37に形成された環状溝39に配置されていたが、これに限定されるものでなく、管フランジ面25に形成された環状溝39に配置されていてもよい。ただし、メンテナンスの観点からポンプフランジ面37に形成された環状溝39に配置されることが好ましい。
【0073】
上述した実施形態においては、ポンプシステム1の一例として、マンホール100におけるものを説明したがこの限りではない。本発明に係るポンプシステム1は、例えば、建物に給水するためのものに適用してもよいし、浄水施設に設置されるものに適用してもよい。
【0074】
上述したいずれの実施形態も本発明の一例であり、当該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲において適宜変更設計可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 :ポンプシステム
2 :吐出管
3 :ポンプ
4 :ガイドレール
5 :ガイド部
6 :接続機構
7 :環状シール
21 :直管
22 :曲管
23 :管フランジ
24 :管側連結部
25 :管フランジ面
31 :電動機
32 :ポンプケーシング
33 :吸込口
34 :吐出口
35 :吊り具
36 :ポンプフランジ
37 :ポンプフランジ面
38 :ポンプ側連結部
39 :環状溝
71 :基部
72 :突出部
73 :切欠部
100 :マンホール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7