IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウーコン テック コマンディットゲゼルシャフトの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】柔軟手袋用ディスペンサーボックス
(51)【国際特許分類】
   A61B 42/40 20160101AFI20240329BHJP
   A41D 19/04 20060101ALI20240329BHJP
   A61B 42/10 20160101ALI20240329BHJP
【FI】
A61B42/40
A41D19/04 Z
A61B42/10
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021500317
(86)(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 AT2019060100
(87)【国際公開番号】W WO2019183653
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】A60047/2018
(32)【優先日】2018-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】520370072
【氏名又は名称】ウーコン テック コマンディットゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 大一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(72)【発明者】
【氏名】ウコヴニグ ジークフリート
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0215628(US,A1)
【文献】特開2017-218229(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0362242(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 42/00-42/60
A41D 19/00-19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質的に掌部(5)及び袖口部(6)から構成された柔軟手袋用のディスペンサーボックスであって、
前記ディスペンサーボックスは、1つ又はそれ以上の取出開口部(4)を有し、前記1つ又はそれ以上の取出開口部(4)は、本発明に係るディスペンサーボックス内に前記手袋が平行に積み重ねられた構成において、前記手袋が、取出しのために、前記手袋の袖口部(6)又は袖口縁部(7)又は前記手袋の袖口部(6)に配置された把持補助部においてのみ把持され得るように位置決めされており、
前記ディスペンサーボックスは、2つ又はそれ以上の手袋積層体を含み、各々の手袋積層体は、別の手袋積層体に対して、180度回転して平行に配置されており、
前記ディスペンサーボックスは、少なくとも2つの取出開口部(4)を備えており、
前記ディスペンサーボックスは、その内側空間に、前記手袋用の機械式位置決め補助部を有しておらず、
前記手袋を掌領域及び指領域における汚染から保護するために、柔軟な材料から成る少なくとも1つの分離サック(9)が前記ディスペンサーボックス内に設けられており、
記分離サック(9)は、少なくとも1つの手袋積層体の指部及び掌部(5)を、少なくとも1つの側面から覆っていることを特徴とする、柔軟手袋用ディスペンサーボックス。
【請求項2】
使い捨て用として定められており、且つ、天然又は合成ラテックス、ゴム、ポリオレフィン、又は、可塑化ポリ塩化ビニルから成る、非滅菌の作業又は診察用の手袋である、請求項1に記載の柔軟手袋用ディスペンサーボックス。
【請求項3】
前記ディスペンサーボックスは、少なくとも2つの手袋積層体を含み、各々の手袋積層体は、別の手袋積層体に対して、180度回転して平行に配置されており、
前記ディスペンサーボックスは、少なくとも2つの取出開口部(4)を備え、
前記手袋を掌領域及び指領域における汚染から保護するために、柔軟な材料から成る少なくとも1つの分離フィルム(8)が前記ディスペンサーボックス内に設けられており、
前記分離フィルム(8)は、ほぼ平行に向けられた前記手袋積層体の指部及び掌部(5)を、少なくとも一方側から覆っており、前記分離フィルム(8)は、固定されずに設けられており、
前記分離フィルム(8)の長さ及び幅は、前記ディスペンサーボックスの底面(1)又は上面(3)の長さ及び幅よりも大きく、
前記手袋積層体は、前記分離フィルム(8)によって完全に分離されて互いに接触しないように、前記ディスペンサーボックスの中に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の柔軟手袋用ディスペンサーボックス。
【請求項4】
前記ディスペンサーボックスは、少なくとも2つの手袋積層体を含み、各々の手袋積層体は、別の手袋積層体に対して、180度回転して平行に配置されており、
前記ディスペンサーボックスは、2つの取出開口部(4、あるいは4aおよび4b)を備え、前記取出開口部は、対角線上に向かい合って配置されているか、もしくはディスペンサーボックスの同一面の上で向かい合って配置されており、
前記手袋を掌領域及び指領域における汚染から保護するために、1つの手袋積層体が配置される柔軟な分離サック(9)が少なくとも1つ、前記ディスペンサーボックス内の中に挿入されており、
前記分離サック(9)は、ほぼ平行に向けられた前記手袋積層体の指部及び掌部(5)を覆い、前記手袋の袖口(6)及び/又は前記袖口縁部(7)に容易にアクセス可能にすることを特徴とする、請求項1に記載の柔軟手袋用ディスペンサーボックス。
【請求項5】
前記ディスペンサーボックスは、互いに分離された2つの手袋積層体を含み、各々の手袋積層体は、別の手袋積層体に対して、180度回転して平行に配置されており、
前記ディスペンサーボックスは、少なくとも2つの取出開口部(4)を備え、前記取出開口部は、対角線上に向かい合って配置されているか、もしくはディスペンサーボックスの同一面の上で向かい合って配置されており、
各手袋積層体は、別々に、指領域及び掌領域(5)を少なくとも一方側から覆う1つの短い分離フィルム(10)を備えており、
前記短い分離フィルム(10)の幅は、前記ディスペンサーボックスの底面(1)又は上面(3)の幅よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の柔軟手袋用ディスペンサーボックス。
【請求項6】
前記柔軟な分離フィルム(8)又は前記柔軟な短い分離フィルム(10)又は前記分離サック(9)は、紙又はプラスチックから成ることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の柔軟手袋用ディスペンサーボックス。
【請求項7】
前記ディスペンサーボックスは、2つの取出開口部(4)を備えており、前記取出開口部は、対角線上に向かい合って配置されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の柔軟手袋用ディスペンサーボックス。
【請求項8】
前記ディスペンサーボックスは、前記ディスペンサーボックスの同じ面の上に向かい合って配置された2つの取出開口部(4aおよび4b)を備えていることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の柔軟手袋用ディスペンサーボックス。
【請求項9】
前記ディスペンサーボックスの外表面(1,2,3)は、ボール紙から成ることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の柔軟手袋用ディスペンサーボックス。
【請求項10】
少なくとも1つの取出口(4あるいは、4a又は4b)は、前記ディスペンサーボックスに設けられた予めミシン目が施された平面を破ることによって、形成されることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の柔軟手袋用ディスペンサーボックス。
【請求項11】
前記手袋の内側及び/又は外側の表面に、追加的に、殺菌物質又は細菌増殖を妨げる物質のうちの1つを有する手袋と組み合わせて使用されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の柔軟手袋用ディスペンサーボックス。
【請求項12】
柔軟手袋用ディスペンサーボックスは、1つ又はそれ以上の取出開口部(4)を有し、使い捨て用であり、ボール紙から成り、
前記柔軟手袋は、使い捨て用であり、実質的に掌部(5)及び袖口部(6)から構成され、
前記手袋が、取出しのために、手袋の袖口部(6)又は袖口縁部(7)又は前記手袋の袖口部(6)に配置された把持補助部においてのみ把持され得るように位置決めされており、
記ディスペンサーボックスは、その内側空間に、前記手袋用の機械式位置決め補助部を有していない、柔軟手袋用ディスペンサーボックスにおいて、
前記ディスペンサーボックスの内側又は外側の表面に、殺菌物質又は細菌増殖を妨げる物質であって、手用消毒剤類からなる物質のうちの1つを有することを特徴とする、柔軟手袋用ディスペンサーボックス。
【請求項13】
汚染及び細菌汚染からの回避用の請求項1~12のいずれか1項に記載の柔軟手袋用ディスペンサーボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手袋、具体的には衛生領域の作業又は診察のための手袋用のディスペンサーボックスに関する。この手袋は、本発明に係るディスペンサーボックスから非滅菌で取り出される。本発明に係るディスペンサーボックスは、1つ、しかしながら好ましくは2つの取出開口部を有する。これらの開口部は、手袋が、袖口縁部だけに狙いを定めて把持され得るように、かつ、ユーザの汚染された手によって、外部から、ディスペンサーボックス内の未使用の手袋が掌及び指領域において汚染されないように配置されている。
【背景技術】
【0002】
米国では、現在、病院患者の10人に1人は、一般的に院内感染と呼ばれる病院感染に感染している。この年間2百万人の感染患者により、米国医療システムにおいて、45~110億ドルの追加費用が発生している。米国では、この「病院細菌」によって、毎年約90,000人の死者が発生しており、この感染症の少なくとも35%は容易に回避可能であると考えられている。欧州の状況も類似している。ドイツでは、毎年500,000件以上の院内感染が発生しており、何千人もの死者が出て、25億ユーロを遥かに超える追加費用が発生している。
【0003】
看護スタッフの保護必要性により、最近の20年間において、診察用手袋の消費は、世界中でほぼ100倍になった。しかしながら、同時にそしてあらゆる予想に反して、院内感染の数は増大し、病院のスタッフ自身の感染も度々起こっている。これは、ラテックス又は可塑化PVCから成る診察用手袋の使用によって、一方では、手袋の下で人の肌が閉鎖的に包囲されることによって細菌増殖が増大すること、他方では、感染患者や細菌が付着したごみと接触する看護スタッフはたいてい手袋をしているが、手自体は、それほど頻繁に洗浄及び消毒されていないと考えられ得ることが原因である。
【0004】
院内感染の大部分は、病院及び看護スタッフの汚染された手を介して拡散されている。ここでは、手の衛生の欠如に関連付けられる診察用手袋の不適切な着脱が、実質的に主な影響要因である。ここで細菌は、多くの場合、直前の作業により汚染された看護スタッフの手によって、未使用の手袋の外側に、そして続いて、医療機器及び患者の周辺にもたらされる。
【0005】
実際には、診察用手袋を外す際にいつも、パッケージに入った未使用の手袋又は新たに装着された手袋に決定的な細菌汚染が生じる。その後、例えばカテーテル又は点滴を取り付ける際に患者に感染することが不可避である。これは、具体的には、主にヒト組織の上で増殖する細菌及び病原菌が伝染するからである。この状況は、近年、天然又は合成ラテックスから成る手袋が、皮膚適合性の理由から、化学残留物をほとんど含まない傾向にあることにより悪化している。つまり、殺菌作用のあるジチオカルバメート促進剤といったゴム化学物質がゴム薄膜内にほとんど含まれておらず、ゴム表面上の細菌の残存率を著しく高めている。パウダーフリーの診察用手袋の割合が上昇しているため、手袋を外した後も、看護スタッフの手の上にはパウダー残留物が存在せず、手袋の中の手について、「清潔な無菌の」手という主観的に間違った印象が生じる。これが、手洗いのさらなる減少に繋がる。
【0006】
公衆衛生機構において使用される非滅菌手袋は、一般に非滅菌の形で、両手使用可能な手袋が100枚入ったいわゆるディスペンサーボックスパッケージで配送される。全自動製造設備やGMPを順守した製造及び包装方法により、一般に、手袋が事前に細菌で汚染されていることは、ほとんどあり得ない。従って目的は、細菌源から新たに装着される診察用手袋の表面までの汚染鎖を中断することである。
【0007】
上述の汚染鎖を中断するために最も適した方法は、看護スタッフの手を絶えず洗浄及び消毒することである。しかしこれは、実際には純粋に組織側の対策である。なぜなら、消毒剤含有の手袋内側表面に肌を閉鎖的に接触させてこれを使用することは、皮膚適合性の観点から、長期に渡る装着の場合に問題が生じないことはないからである。
【0008】
続いて、本発明は、未使用かつ新たに装着される包装された非滅菌手袋の汚染を、該手袋が患者又は医療機器と接触する前に回避することに関する。これについて、現状では、手袋をディスペンサーボックスから取り出し装着する際に、絶えず、手袋外表面に決定的な細菌汚染が発生する。
【0009】
さらに本発明では、本発明に係るディスペンサーボックスを、殺菌効果のある表面を有する使い捨て手袋で充填することが提案される。
【0010】
以下に、手袋用のディスペンサーボックスに関する数多くの特許文献のうちの幾つかについて説明する。しかしながら、これまでに知られている全ての実施形態は、取出口を1つだけ有するものであり、手袋を取り出す際に、手袋の外側の、掌及び/又は指という決定的な領域の汚染が発生する。さらに、公報の多くは、使用される手袋を、ユーザが使用の直前に初めて挿入しなければならないディスペンサー装置について記載するものである。
【0011】
US第5875962号には、ボール紙から成り、閉鎖可能な取出口を1つ有する手袋用ディスペンサーボックスが記載されている。
【0012】
WO第9948782号には、薄い使い捨て手袋を取り出すための固定されたディスペンサー装置が記載されている。
【0013】
US第20030057222号には、手袋が積み重ねられた、複数回使用するための典型的なディスペンサーボックスが記載されている。ここでは、ディスペンサーボックス上面の中心部にある取出点は、手袋の掌の領域に位置している。
【0014】
現在のところ、例えば診察用手袋といった柔軟な非滅菌手袋の包装技術の技術水準は、該手袋を平行に伸ばしてディスペンサーボックスの中に配置することである。平行に揃えることによって、手袋は、通常は直方体であるパッケージに均一に分配され、ディスペンサーボックスを小型にすることが可能である。これによって、包装及び搬送費用を安価に抑えられる。さらにこの構成によって、手袋を1つずつ良好に取り出すことが可能になり、ディスペンサーボックスから取り出す際に、別の手袋がもつれてパッケージから離脱しないことが確保される。ディスペンサーボックスは、多くの場合、ボール紙から成り、ディスペンサーボックスの上部にあるミシン目が施された領域を破ることによって形成される1つの取出口を有している。手袋は、通常は細長い取出口に平行に配置されていることが一般的であり、取出時には、外部から掌領域が把持され、この開口部を通って引き出される。この場合、実のところ、取出時にはいつも、取り出す人の細菌が付着した手によって手袋の外側が汚染されることになる。
【0015】
この事実に基づき、US第2007215628A1号は、ディスペンサーボックスが開いている場合であっても、衛生上決定的な領域である手袋の指及び掌領域が覆われてた状態で維持されるように、箱の縁部に2つの取出開口部を備えるディスペンサーボックスを記載している。ここでは、ディスペンサーボックスの中に手袋の2つの積層体が180度回転して入れられており、固定された挿入床部によって互いに分離されている。挿入床部は、各手袋をその取出開口部に押しやる機械式位置決め補助部に結合されている。ここで、挿入床部及び及び位置決め補助部を裁断することは手間がかかり、その費用は無視できない。さらに、このような挿入及び位置決め床部を使用する際には、より大型のディスペンサーボックスが必要となり、このため、極めて価格に敏感な使い捨て手袋の材料費及び搬送費用はさらに上昇する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ここで、本発明の課題は、冒頭部分に記載の種類の非滅菌手袋用のパッケージを、該手袋を使用前に詰め替える必要がないように、かつ、手袋をパッケージから取り出す際に、重要な部分である掌及び指領域が、汚染されているかもしれないユーザの手によって細菌汚染しないように規定することにある。こうして、院内感染及び外部からの手袋汚染にとって決定的な汚染鎖を中断することが実現されることになる。本発明に係るパッケージは、使い捨て用として想定されたものであり、その外寸は、従来の(中央に1つの取出口だけが設けられた)ディスペンサーボックスよりも大きくならず、比較可能な費用負担で製造可能及び充填可能であり、同時に、手袋をディスペンサーボックスから容易に取り出すことができる程度に十分大きな取出開口部を備えることになる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、この課題を、手袋を平行に積み重ねて、ディスペンサーパッケージ内に配置することによって解決する。ここで、取出開口部は、ディスペンサーパッケージの縁部に配置されており、手袋が、手袋の袖口縁部の領域においてのみ把持されて、ディスペンサーボックスから引出可能な寸法を有している。US第2007215628A1号のように、180度回転した2つの手袋積層体がディスペンサーボックスの中に配置されている。ここで、これらの手袋積層体は、第1の積層体の指領域が第2の積層体の袖口領域の上又は近傍にくるように、方向づけられている。しかしながら、これらの手袋積層体は、US第2007215628A1号とは異なり、固定された挿入床部によって分離されているのではなく、本発明によれば、手袋積層体を分離するために、柔軟な挿入フィルム、又は、好ましくは柔軟な材料から成る短いサックが使用される。挿入又は分離フィルムを使用する場合、このフィルムは、一般的に長方形のディスペンサーボックスの底部よりも長く及び/又は幅広く構成されていることが好まく、これによって、パッケージ縁部の近傍にくる手袋部分は確実に覆われた状態で維持される。このような設計により、US第2007215628号とは異なり、極めて小型及び従って安価なパッケージ寸法を実現できる。なぜなら、いかなる機械式位置決め補助部も省くことができ、柔軟な挿入フィルム又は分離サックによって、これら両方の手袋積層体が包装プロセスの間に圧縮されあい、手袋の間の空気が完全に押し出されるようにすることが可能になる。ここで、柔軟なフィルムは、個々の手袋積層体の外部寸法の曲線に適応する。このため、ここでは、分離フィルムの寸法は、両方向において、手袋ボックスの底面又は上面よりも大きい寸法を有している必要があり、こうすることによって、両方の手袋積層体間の分離面が平坦でない局面が生じた場合でも、手袋の指及び袖口領域への接触が生じ得ないことが確保される。本発明に係るレイアウトを用いる場合、100枚/パッケージ用の一般的なディスペンサーボックス設計の場合、さらに、手袋袖口をそれぞれのディスペンサー開口部の方向に押しやるいかなる装置も省くことが可能である。なぜなら、本発明に係る分離フィルムを使用する場合には、パッケージ寸法を非常に小さく維持可能であるため、例えばUS第2007215628号又はDE第29616735号に記載されるような装置を省いたとしても、取り出しは妨げられないからである。一般的には、ディスペンサーボックスに、向かい合って配置された2つの取出開口部を設ける必要がある。ここで、挿入された各積層体用に1つの取出口が設けられている。取出開口部は、対角線上に向かい合って配置されていてもよいし、ディスペンサーボックスの同一面の上で向かい合って配置されていてもよい。取出開口部のこの設計及び実施形態は、実質的には自由に構成可能であるが、その形状及び位置決めは、手袋が手袋袖口部においてのみ把持され得るように、かつ、取り出される前の手袋の指及び掌領域が、ディスペンサーボックス、又は、分離フィルム若しくは分離サックによって覆われ、それによって汚染されずに維持されるように選択される。
【0018】
本発明にしたがって包装プロセスの間に2つの手袋積層体を分離することは、上述のように、例えば、好ましくはディスペンサーボックスの底面よりも少々大きい寸法を有する、薄くて柔軟なプラスチックフィルム又は紙フィルムを挟み込むことによって、実現される。
【0019】
多くの自動化包装方法にとって利点であり得る一発展形態は、多数の分離フィルムを同時に使用することである。この場合、本発明によれば、各手袋積層体の指及び掌領域は、別々に、少なくとも一方側からこのようなフィルムによって包まれ又は覆われて、ディスペンサーボックスの中に挿入されている。ここで、好ましくは、両方の手袋積層体を確実に分離するために、個々の分離フィルムの幅は、ディスペンサーボックスの幅よりも大きくする必要がある。個々の分離フィルムの長さは、指及び掌領域が少なくとも一方から確実に覆われるような長さに選択される必要があるが、ここでは、好ましくは、対応する積層体の指領域がフィルムの中に包まれる必要がある。
【0020】
上述の説明からもたらされる、本発明に係る2つの積層体を空間分離する他の一実施形態は、一方側が開口した短いサックを使用することにある。ここで、各手袋積層体の少なくとも掌及び指領域は、別々に、プラスチックフィルム又は紙から成る柔軟なサックによって保護され、手袋袖口は、妨げられずにサックから取り出されるように突出している。ここで、本発明に係る分離サックは、少なくとも一側面に、手袋を挿入及び取出可能な開口部を有している。しかしながら、分離サックの二側面が開口した実施形態も可能であり、本発明によれば、これらの開口した両側面は、互いに直角に隣接して境界を形成していることが好ましく、これは、自動化された包装を行う場合に都合がよい。本発明に係る分離サックは、衛生上決定的な掌及び指領域が常に完全に覆われるため、ディスペンサーボックスの取出開口部は、極めて大きな寸法を有することができるという利点を有している。これによって、例えばUS第2007215628号といった他の実施形態に比べて、手袋を衛生的に取り出すことが極めて容易になる。さらに、包装プロセスにおいて、本発明に係る分離サックを使用すれば、前もって計数された手袋積層体を極めて容易に用意することが可能であり、手袋積層体の数を合わせて挿入することが非常に容易になる。この場合、従来のボール紙から成るディスペンサーボックスを使用することが可能であり、求められる唯一の設計変更は、取出開口部用のミシン目が施された領域の位置決めである。任意により、分離サックによって汚染から掌及び指領域が保護された手袋積層体は、単独で、又は、同一の方向に向けられて、ディスペンサーボックスの中に包装されることが可能である。この場合は、対応して寸法が規定されると共に位置決めされた1つの取出口だけで十分であろう。
【0021】
本発明の利点は、以下に説明する通りである。すなわち、本発明にしたがって柔軟手袋のディスペンサーボックスに取出開口部を位置決め及び設計することによって、取出時の、手袋の細菌汚染及び汚れが、決定的な掌及び指領域において著しく低減される。市販の妥当な価格のディスペンサーボックスの材料及び寸法を変更せずにそのまま採用することが可能であり、この場合、実質的に、取出開口部の位置、寸法、及び、数だけが新たに設定される。さらに、本発明にしたがって、パッケージの中に入った手袋積層体を(好ましくは、薄いプラスチックフィルム又は柔軟な紙若しくはボール紙を挿入することによって、又は、例えば一方側が開口したサックといった別の手段によって)分離することは、容易に、かつ、重要な変更若しくは費用、投入、又はパッケージ寸法無しに、既存の包装工程に一体化させることが可能である。本発明に係る分離フィルム又は手袋用サックの柔軟な形態により、柔軟手袋を、ディスペンサーボックスの寸法に完全に適合させることが可能になり、これによって、ディスペンサーボックスに一体化されるさらなる位置決め補助具を省くことが可能になり、極めて小型かつ安価なパッケージ寸法を得ることが可能である。本発明にしたがって実施される分離フィルム又は分離サックは、2つの取出開口部が、同一のディスペンサーボックス面において向かい合って位置決めされ得るように配置されていてもよい。これによって、半分の量の手袋を使用した後にディスペンサーボックスをひっくり返すことを省くことができ、例えば、市販の多くのディスペンサーボックス用壁固定具に取り付け可能となる。また、本発明に係る手袋積層体の柔軟な分離体によって、包装プロセスの間に、目標を定めて、両積層体を好ましくは同時に押さえることによって、空気を手袋の内部から押し出すこと、及び、積層体の体積を低減することが可能になる。これはまた、小型かつ安価なパッケージ寸法を得るため、及び、手袋の搬送コストの低減を実現するために重要である。
【0022】
本発明に係る柔軟な医療手袋用のディスペンサーボックスを使用することにより、公衆衛生機構における院内感染の低減に大きく貢献することができる。しかしながら、本発明に係る対応する保護手袋用のディスペンサーボックスの使用は、他の多くの分野においても推奨される。これは例えば、クリーンルーム技術、生物学、微生物実験室、及び、医療技術製品といった分野であり、ここでは、汚染の低減によって著しい費用節約及び技術的利点が実現可能である。
【0023】
上述のように、診察用手袋を使用する際には、手袋の下で人の肌が閉鎖的に包囲されることによって発汗及び細菌増殖が増大し、さらに、病院及び看護領域では、手袋をした手自体の洗浄及び消毒が十分頻繁に行われていないと想定され得る。
【0024】
したがって本発明では、本発明に係るディスペンサーボックスに使い捨て手袋を充填することがさらに提案される。使い捨て手袋は、その内側及び/又は外側の表面に、追加的に、1つ又は複数の殺菌物質又は細菌増殖を妨げる物質を含む。
【0025】
このような表面は、例えば、WO第2009/073907号に記載されている。ここで、使用可能な消毒剤としては、以下のものが提案される。
- クロルヘキシジン(非水溶性)
- エチル硫酸メセトロニウム(水溶性)
- トリクロサン(非水溶性)
- トリクロカルバン(非水溶性)
- オクテニジン(非水溶性)
- クロラミンT(水溶性)
- チモール(非水溶性)
- クロロキシレノール(非水溶性)
- キトサン(ポリマー、非水溶性)
- ポリヘキサニド(ポリマー、水溶性)
- 亜鉛塩、銅塩、銀塩、
など。
【0026】
ここに挙げた消毒剤は、健康装置において、既に、アルコール溶液又は水溶液の形で、手、肌、及び、医療用品の消毒のために使用されている。
【0027】
現在提示されている多くの公報及び病院衛生用指針により、本発明に係る、例えば非滅菌の使い捨て手袋用ディスペンサーボックスを導入すること、及び、手袋が消毒された表面を有するように構成することが、結果的に、院内感染を著しく低減させると想定することが可能である。
【0028】
また、殺菌又は細菌増殖を妨げるように作用する表面を有する手袋と、本発明に係るディスペンサーボックスとを組み合わせて同時に使用することは、院内感染を撲滅するための相乗作用的な新規の方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
以下に、本発明の詳細を、添付の図面を参照しながらより詳細に説明する。
図1a】ラテックスから成る一般的に両手使用可能な手袋、例えば診察用手袋の積層体を示す図である。
図1b】現在の技術水準に係る診察用手袋が、ディスペンサーボックスの中に配置されている様子を示す図である。
図2a】本発明に係る、柔軟なフィルム紙又は分離サックによって保護された手袋積層体用のディスペンサーボックスの一例を示す図である。
図2b】本発明に係る、柔軟なフィルム紙又は分離サックによって保護された手袋積層体用のディスペンサーボックスの別の例を示す図である。
図2c】本発明に係る、柔軟なフィルム紙又は分離サックによって保護された手袋積層体用のディスペンサーボックスのさらに別の例を示す図である。
図3】本発明に係る、手袋が充填されたディスペンサーボックスを示す図である。
図4a】両手使用可能な手袋の積層体を示す図である。
図4b】好ましい実施形態における、本発明に係る手袋が充填されたディスペンサーボックスの一例を示す図である。
図4c】好ましい実施形態における、本発明に係る手袋が充填されたディスペンサーボックスの別の例を示す図である。
図4d】好ましい実施形態における、本発明に係る手袋が充填されたディスペンサーボックスのさらに別の例を示す図である。
図5a】一例において、本発明に係る2つの短い分離フィルムの使用を示している。
図5b】同例における、本発明に係る2つの短い分離フィルムの使用を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1aは、ラテックスから成る一般的に両手使用可能な手袋、例えば診察用手袋の積層体を示す図である。これらの手袋は、通常は、技術水準に対応して、ディスペンサーボックス内に収納される。非滅菌の診察用手袋は、実質的には、掌、手の甲、及び、指を含む手部(5)と袖口部(6)とから成る。袖口部(6)は、手首、及び、場合によっては下方の前腕を覆い、袖口端部として、ロール縁部(7)を有している場合が多い。
【0031】
図1bは、どのように、現在の技術水準に係るこの診察用手袋がディスペンサーボックスの中に配置されている様子を示す図である。この図では、分かりやすいように、ディスペンサーボックスの図の手前部分を除去した。このディスペンサーボックスには、通常100枚の手袋が充填され、約50枚は指が左に向けられ、残りは指が右に向けられて、互いに積み重ねられている。この配置方法は、ディスペンサーボックスが極めて均一に充填され、このように配置された手袋が圧縮されることによって、手袋から空気が良好に除去され得るという利点を有し、これによってディスペンサーボックスの寸法を極めて小さくすることが可能になると共に、包装材料の費用及び保管や輸送用の費用を低く抑えることが可能になる。さらに、このように目標を定めて積み重ねることによって、個々の手袋を取出口(4)から取り出すことが極めて容易になる。図1bに良好に示されるように、ユーザが手袋を取り出す際に、掌(5)の領域が把持され、取出口(4)から引き出される。実際には、ここでいつも、手袋の決定的な掌領域(5)において、細菌による汚染が生じる。一般には、ディスペンサーボックス内の隣接する手袋にも細菌は伝染する。
【0032】
図2a、2b、及び、2cは、本発明に係る、柔軟なフィルム紙又は分離サックによって保護された手袋積層体用のディスペンサーボックスを示す図である。本発明によれば、2つの取出開口部(4)が、手袋の袖口(6)又はロール縁部(7)が存在する、パッケージの各領域内に配置されている。ここで、本発明に係るディスペンサーボックスは、好ましくはボール紙から製造されており、取出開口部(4)は、技術水準に対応して、予めミシン目が施された対応する平面を破ることによって形成されることが可能であり、又は、別の一実施形態では、再閉鎖可能に構成されていることも可能である。
【0033】
図3は、このような本発明に係る、手袋が充填されたディスペンサーボックスを示す図である。この図では、分かりやすくするために、ディスペンサーボックスの図の手前の部分を除去している。手袋を伸ばした状態で配置しているため、手袋は、容易に、袖口(6)又はロール縁部(7)において把持され、縦方向にパッケージから引き出されることが可能である。この場合、衛生的に決定的な領域である掌及び指(5)は、常に覆われた状態で維持され、取出時に汚染から保護される。
【0034】
ここで、手袋積層体は、プラスチック、紙、ボール紙、又は、他の材料から成る本発明に係る分離壁又は分離フィルム(8)によって分離されている。分離フィルムは、ディスペンサーボックスの床面又は上面よりも大きいことが好ましく、こうすることによって、決定的な指領域(5)がある程度包まれることが可能になり、手袋の確実な汚染保護が実現される。このフィルムの寸法の方を大きくすることによってはじめて、両方の手袋積層体を確実に分離することが実現される。分離フィルムは、ディスペンサーボックスの内側と連結されているだけでなく、手袋の包装プロセスにおいて追加的にのみ、これらの間に刺し込まれることが可能である。分離フィルム(8)は、空間的な分離を行うように、及び/又は、該分離フィルムの下にある手袋の掌及び指領域(5)を、取り出す際のユーザの手と接触することから保護するように作用する。さらに、分離フィルム(8)は、いつの時点でユーザが別の取出口(4)に変更すべきかを示す。
【0035】
図4aは、両手使用可能な手袋の積層体を示す図である。しかし、図1aとは異なり、ここに示される本発明では、手袋の掌及び指は、例えば柔軟なPEフィルム材料から成る短いサック(9)によって保護される。
【0036】
図4b及び図4cは、好ましい実施形態における、本発明に係る手袋が充填されたディスペンサーボックスを示す図である。これらの図では、分かりやすいように、ディスペンサーボックスの図の手前部分は除去した。ここでは、ディスペンサーボックスに配置された、異なる方向に向けられた手袋積層体も示されている。この手袋積層体は、図4aに示されるような本発明に係る分離サックによって分離されている。分離フィルム(9)をサック状に実施することによって、図4cにおいて例示的に示されるように、ディスペンサーボックスの取出開口部の寸法を、かなり大きくかつ広範囲に広がるようにすることが可能であり、このため手袋の取出しは、例えばUS第2007/215628号といった別の実施形態と比べてかなり容易になり、同時に、箱の寸法を極めて小さく維持することが可能になる。
【0037】
図4dでは、両方の取出開口部4aおよび4bが、ディスペンサーボックスの同一面上で向かい合った状態で配置されている。この図でも、ディスペンサーボックスの図の手前部分は除去されている。まず、上方の手袋積層体の手袋を、取出口4aから取り出し、その後、上方の分離サックを、両方の取出開口部4aおよび4bのうちの一方を介して除去する。その後、下方の手袋積層体の手袋を、取出口4bから取り出す。この手袋も、指及び掌領域における汚染から、別の手袋用サックによって保護された状態で維持されている。もちろんここでも、取出開口部4aおよび4bを、ディスペンサーボックスの同じ側であるが、図4cと同様に広範囲に広がるようにする構成も、本発明に当てはまる。
【0038】
図5aおよび図5bは、一例において、本発明に係る2つの短い分離フィルムの使用を示している。ここで、図5aに示されるように、手袋の掌領域は、分離フィルムによって包まれ、手袋袖口は、少なくとも一方の側面において自由にアクセス可能な状態で維持される。その後、短い分離フィルムが設けられた両方の手袋積層体は、図5bに示されるように、ディスペンサーボックスの中に挿入される。分かりやすいように、この図でも、ディスペンサーボックスの図の手前部分は除去した。
【符号の説明】
【0039】
1 ディスペンサーボックスの底面
2 ディスペンサーボックスの側面
3 ディスペンサーボックスの上面
4(あるいは4a又は4b) 取出開口部
5 指、掌、及び、手の甲から成る、手袋の手部
6 袖口部
7 袖口縁部又はロール縁部
8 分離壁又は分離フィルム
9 分離サック、又は、サックの形に形成された分離フィルム
10 短い分離フィルム
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b