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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】アナライトの定量
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20240329BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
G01N33/543 521
G01N33/543 581D
G01N21/27 A
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2021516411
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 AU2019051034
(87)【国際公開番号】W WO2020061632
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】2018903614
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】512089667
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・テクノロジー・シドニー
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF TECHNOLOGY SYDNEY
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ダヨン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,ハオ
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-230280(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0223197(US,A1)
【文献】He Hao, et al.,,Quantitative Lateral Flow Strip Sensor Using Highly Doped Upconversion Nanoparticles,Analytical Chemistry,ACS,2018年10月18日,90(21),12356-12360,ESR D1
【文献】LIANG Zhiqin, et al.,,Upconversion Nanocrystals Mediated Lateral-Flow Nanoplatform for in Vitro Detection,ACS Applied Materials & Interfaces,ACS,2017年02月01日,9(4),3497-3504,ESR D2
【文献】LIU Chunyan et al.,,Upconversion luminescence nanoparticles-based lateral flow immunochromatographic assay for cephalexin detection,Journal of Materials Chemistry C. Materials for Optical, Magnetic and Electronic Devices,The Royal Society of Chemistry,2014年12月07日,2(45),9637-9642
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 -33/98
G01N 21/27
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の少なくとも1種のアナライトの量を決定する方法であって、
キャプチャー部分を含み、且つ前記少なくとも1種のアナライトに結合可能な検出部分と、前記少なくとも1種のアナライトと前記キャプチャー部分との相互作用を可視化する高ドープアップコンバージョンナノ粒子と、を含むコンジュゲートを含む、ラテラルフローストリップを提供することと、
前記コンジュゲートが前記アナライトに結合して、前記キャプチャー部分により後続的にキャプチャーされる結合されたアナライトを提供するように、前記ラテラルフローストリップに前記サンプルを適用することと、
前記高ドープアップコンバージョンナノ粒子から検出可能シグナルを誘発するように構成された励起光源と、前記検出可能シグナルをキャプチャーする検出器と、を含む試験デバイスを提供することであって、前記試験デバイスが前記ラテラルフローストリップを受取り可能である、ことと、
前記サンプルが適用された前記ラテラルフローストリップを前記試験デバイスに挿入することと、
前記高ドープアップコンバージョンナノ粒子から検出可能シグナルを誘発するように、前記高ドープアップコンバージョンナノ粒子を含む前記ラテラルフローストリップの領域に光ビームを照射することと、
前記検出可能シグナルを検出して、前記検出可能シグナルに基づいて前記サンプル中の前記少なくとも1種のアナライトの量を決定することと、
を含み、
前記高ドープアップコンバージョンナノ粒子が、ホスト材料と、Yb3+である増感剤と、Er3+又はTm3+であるアクチベーターと、を含み、且つ前記増感剤が少なくとも30mol%の濃度で存在し、且つ前記アクチベーターが少なくとも3mol%の濃度で存在する、方法。
【請求項2】
前記アクチベーターが少なくとも4mol%の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ホスト材料が、アルカリフッ化物、酸化物、又はオキシ硫化物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ホスト材料が、NaGdF、CaF、NaYF、LiYF、NaLuF、LiLuF、KMnF、及びY、それらの組合せを含む、からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ホスト材料がNaYFである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記高ドープアップコンバージョンナノ粒子が不動態化された不活性シェルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記高ドープアップコンバージョンナノ粒子が、8%Er/60%Yb@NaYF、8%Tm/60%Yb@NaYF又は40%Er/60%Yb@NaYFである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記キャプチャー部分及び/又は前記検出部分が、抗体、アプタマー、エピトープ、核酸、又は分子インプリントポリマーの1つ以上を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記試験デバイスが、前記光ビームを前記ラテラルフローストリップにフォーカスするために、前記励起光源と前記ラテラルフローストリップとの間に介在するレンズ又はレンズアレイをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記試験デバイスが、前記シグナルを前記検出器にフォーカスするために、前記ラテラルフローストリップと前記検出器との間に介在するレンズ又はレンズアレイをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記レンズが半球レンズである、請求項又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記試験デバイスが、レーザー散乱を最小化又は防止するために、ショートパスフィルター、ロングパスフィルター、又はバンドパスフィルターをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記フィルターが熱線吸収ガラスの形態である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記検出器がカメラ又はシングルエレメント検出器である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記検出器がスマートフォンカメラである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記検出可能シグナルが可視光又は赤外光である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記検出可能シグナルが可視光である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記励起光源がレーザーダイオード又は近IR光源である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記励起光源がレーザーダイオードである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記レーザーダイオードが、980nm300mwレーザーダイオード、790nm100mwレーザーダイオード、又は1550nm100mwレーザーダイオードである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記光ビームが、少なくとも0.001MW/cm、又は少なくとも0.01MW/cm、又は少なくとも0.05MW/cm、又は少なくとも0.1MW/cm、又は少なくとも0.5MW/cm、又は少なくとも1.0MW/cm、又は少なくとも1.5MW/cmのパワー密度を有する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記光ビームが、0.001MW/cm~1.5MW/cm、又は0.01MW/cm~1.5MW/cmのパワー密度を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
記領域が、1μm~10000000μm、又は1μm~1000000μm、又は1μm~100000μm、又は1μm~10000μm、又は1μm~10000μm、又は1μm~1000μm、又は1μm~100μmである、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記サンプルが生物学的サンプルである、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記サンプルが体液である、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記アナライトがバイオマーカーである、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記アナライトが、癌診断又は心機能評価に使用されるバイオマーカーである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記アナライトが、癌診断に使用されるバイオマーカーである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記アナライトが、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、PSA、EphA2、HER-2タンパク質、EGFR、KRAS、UGT1A1、EML4、AL、TGF-β、IDH1、AFP、CEA、BCR-ABL、CEBPA、FLT3、KIT、NPM1、PML-RARα、CD20、JAK2、CD25、BRAF、NMP22、CA-125、HE4、HGF、CK-MB、LDH、AST、Mb、IMA、BNP、又はMETの1つ以上である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記方法が、複数のアナライトの量を決定することを含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ラテラルフローストリップが紙ベースラテラルフローストリップである、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記試験デバイスがプラスチックハウジングを含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記プラスチックハウジングが3Dプリンティングにより作製される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記サンプル中の前記少なくとも1種のアナライトの量が、前記検出器によりキャプチャーされた画像の強度を、前記アナライトに対してあらかじめ設定された強度-濃度曲線に当てはめることにより決定されうる、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
[0001] 本発明は、高ドープアップコンバージョンナノ粒子を含むラテラルフローストリップを用いてサンプル中のアナライトの量を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
開示の背景
[0002] 本明細書全体を通して、先行技術の考察はいずれも、かかる先行技術が広く知られているか又は当分野の共通一般知識の一部を形成することを容認するものとなんらみなされるべきではない。
【0003】
[0003] ラテラルフローストリップは、サンプル中のバイオマーカーなどのアナライトを検出及び定量する有望な技術である。紙ベースラテラルフローストリップは一般に安価であるが、現在のアッセイ技術は、早期癌診断に使用されるバイオマーカーなどの低濃度で存在するアナライトの検出及び定量に十分な感度を提供しない。既知のアッセイ技術を改善しようとするいくつかの試みがなされてきたが、かかる試みは大部分が失敗に終わっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004] これに関連して、サンプル中に低濃度で存在するアナライトを検出及び定量可能なラテラルフローストリップに基づく改善されたアッセイの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示の概要
[0005] 本開示の一態様では、サンプル中の少なくとも1種のアナライトの量を決定する方法であって、
キャプチャー部分を含み、且つ少なくとも1種のアナライトに結合可能な検出部分と、少なくとも1種のアナライトとキャプチャー部分との相互作用を可視化する高ドープアップコンバージョンナノ粒子と、を含むコンジュゲートを含む、ラテラルフローストリップを提供することと、
コンジュゲートがアナライトに結合して、キャプチャー部分により後続的にキャプチャーされる結合されたアナライトを提供するように、ラテラルフローストリップにサンプルを適用することと、
高ドープアップコンバージョンナノ粒子から検出可能シグナルを誘発するように構成された励起光源と、検出可能シグナルをキャプチャーする検出器と、を含む試験デバイスを提供することであって、試験デバイスがラテラルフローストリップを受取り可能である、ことと、
サンプルが適用されたラテラルフローストリップを試験デバイスに挿入することと、
高ドープアップコンバージョンナノ粒子から検出可能シグナルを誘発するように、高ドープアップコンバージョンナノ粒子を含むラテラルフローストリップの領域に光ビームを照射することと、
検出可能シグナルを検出して、検出可能シグナルに基づいてサンプル中の少なくとも1種のアナライトの量を決定することと、
を含む方法が提供される。
【0006】
[0006] 高ドープアップコンバージョンナノ粒子は、約10nm~約200nmのサイズを有しうる。
【0007】
[0007] 高ドープアップコンバージョンナノ粒子は、約50nmのサイズを有しうる。
【0008】
[0008] 高ドープアップコンバージョンナノ粒子は、不動態化された不活性シェルでありうる。
【0009】
[0009] キャプチャー部分及び/又は検出部分は、抗体、アプタマー、エピトープ、核酸、又は分子インプリントポリマーの1つ以上を含みうる。
【0010】
[0010] 照射領域は、約1μm~約10000000μmでありうる。
【0011】
[0011] 試験デバイスは、光ビームをラテラルフローストリップにフォーカスするために、励起光源とラテラルフローストリップとの間に介在するレンズ又はレンズアレイをさらに含みうる。
【0012】
[0012] 試験デバイスは、シグナルを検出器にフォーカスするために、ラテラルフローストリップと検出器との間に介在するレンズ又はレンズアレイをさらに含みうる。
【0013】
[0013] レンズは半球レンズでありうる。
【0014】
[0014] 試験デバイスは、レーザー散乱を最小化又は防止するために、ショートパスフィルター、ロングパスフィルター、又はバンドパスフィルターをさらに含みうる。
【0015】
[0015] フィルターは、たとえばKG-3熱線吸収ガラスなどの熱線吸収ガラスの形態でありうる。
【0016】
[0016] 検出器は、たとえばスマートフォンカメラなどのカメラでありうる。
【0017】
[0017] 検出器は、たとえば光子ダイオードなどのシングルエレメント検出器でありうる。
【0018】
[0018] 検出可能シグナルは、可視光又は赤外光でありうる。
【0019】
[0019] 励起光源は、レーザーダイオード又は近IR光源、たとえばLED近IR光源でありうる。
【0020】
[0020] レーザーダイオードは、980nm300mwレーザーダイオード、790nm100mwレーザーダイオード、又は1550nm100mwレーザーダイオードでありうる。
【0021】
[0021] 光ビームは、少なくとも約0.001MW/cm、又は少なくとも約0.01MW/cm、又は少なくとも約0.05MW/cm、又は少なくとも約0.1MW/cm、少なくとも約0.5MW/cm、又は少なくとも約1.0MW/cm、又は少なくとも約1.5MW/cmのパワー密度を有しうる。
【0022】
[0022] 光ビームは、約0.001MW/cm~約1.5MW/cm、又は約0.01MW/cm~約1.5MW/cmのパワー密度を有しうる。
【0023】
[0023] サンプルは、生物学的サンプルでありうる。
【0024】
[0024] サンプルは、たとえば尿、汗、血液、唾液などの体液でありうる。
【0025】
[0025] サンプルは、液状サンプル又はガスサンプルでありうる。
【0026】
[0026] ガスサンプルは、呼吸気でありうる。
【0027】
[0027] アナライトは、バイオマーカーでありうる。
【0028】
[0028] アナライトは、癌診断又は心機能評価に使用されるバイオマーカーでありうる。
【0029】
[0029] アナライトは、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、PSA、EphA2、HER-2タンパク質、EGFR、KRAS、UGT1A1、EML4、AL、TGF-β、IDH1、AFP、CEA、BCR-ABL、CEBPA、FLT3、KIT、NPM1、PML-RARα、CD20、JAK2、CD25、BRAF、NMP22、CA-125、HE4、HGF、CK-MB、LDH、AST、Mb、IMA、BNP、若しくはMET、又はそれらのいずれかの組合せである。
【0030】
[0030] 本方法は、複数のアナライトの量を決定することを含みうる。
【0031】
[0031] ラテラルフローストリップは、紙ベースラテラルフローストリップ又はマイクロ流体デバイスでありうる。
【0032】
[0032] 試験デバイスは、プラスチックハウジングを含みうる。
【0033】
[0033] プラスチックハウジングは、3Dプリンティングにより製造されうる。
【0034】
[0034] サンプル中の少なくとも1種のアナライトの量は、検出器によりキャプチャーされた画像の強度を、アナライトに対してあらかじめ設定された強度-濃度曲線に当てはめることにより決定されうる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図面の簡単な説明
図1】[0035]A)2%Er/20%Yb UCNP、B)8%Er/60%Yb@NaYF UCNP、C)0.5%Tm/20%Yb UCNP、及びD)8%Tm/60%Yb@NaYF UCNPのTEM写真。スケールバー:100nm。
図2】[0036]cPEG被覆UCNP及びIgG修飾UCNPのUV吸収スペクトル。A)2%Er/20%Yb B)8%Er/60%Yb@NaYF C)0.5%Tm/20%Yb及びD)8%Tm/60%Yb@NaYF
図3】[0037]低及び高励起パワー下の2%Er/20%Yb(左側)及び0.5%Tm/20%Yb(右側)のパワー依存スペクトル。
図4】[0038]単一光子計数検出器に基づくストリップ試験システムの光学レイアウト。
図5】[0039]A)光学レイアウトによるモバイルフォンベースリーダーの模式図。B)対応するTEM画像による高Er3+ドープコア-シェルUCNPの構造。C)対応するTEM画像による高Tm3+ドープコア-シェルUCNPの構造。D)PSA及びEphA2アナライトに対する2色LFSアッセイ。
図6】[0040]A)単一高ドープUCNPレポーター及びより低ドープのUCNPのパワー依存発光強度プロファイル。赤色矢印は0.5MW/cmのパワー密度を表す。B)高(0.5MW/cm)及び低(0.01MW/cm)励起パワー下の高Er3+ドープUCNPレポーターの発光スペクトル。C)高(0.5MW/cm)及び低(0.01MW/cm)励起パワー下の高Tm3+ドープUCNPレポーターの発光スペクトル。D)高Er3+ドープUCNPレポーター及びより低ドープのUCNPを用いてさまざまな濃度の標的PSAを検出したときのストリップ上の試験領域の蛍光シグナル強度。星印はLODを示す。
図7】[0041]A)光学素子を収容する3Dプリントボックス(左側)及び電話ベースLFSデバイスの動作状態(右側)の写真。B)電話カメラCMOS(Sony IMX-214)のスペクトル応答(着色ライン)及びKG-3吸収ガラスの透過曲線(灰色ライン)。C)試験領域、バックグラウンド、及び対照領域からのシグナルを示す典型的PSAアッセイの代表的結果。D)高Er3+ドープUCNPレポーター及びより低ドープのUCNPを用いたストリップ上のさまざまな濃度の標的PSAの検出。星印はLODを示す。
図8】[0042]A)さまざまな濃度のPSA及びEphA2を試験する2色LFSアッセイの写真。B)さまざまな濃度のPSAを検出するPSA試験領域の蛍光強度。C)さまざまな濃度のEphA2を検出するEphA2試験領域の蛍光強度。D)1ng/mL PSA、EphA2、及びBSAの2色LFSの特異性評価。星印はLODを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
詳細な説明
[0043] 本明細書及び特許請求の範囲では、「comprise(~を含む)」、「comprises(~を含む)」、「comprised(~が含まれる)」又は「comprising(~を含む)」、「including(~を含む)」又は「having(~を有する)」などという用語は、包括的意味で用いられる。すなわち、明記された特徴の存在を特定するが、追加の又はさらなる特徴の存在を除外するものではない。
【0037】
[0044] 「about(約)」という用語は、±10%、好ましくは±5%又は±1%、又はより好ましくは±0.1%の範囲を意味するものと理解される。
【0038】
[0045] 本開示によれば、サンプル中の少なくとも1種のアナライトの量を決定する方法であって、
キャプチャー部分を含み、且つ少なくとも1種のアナライトに結合可能な検出部分を含むコンジュゲートと、少なくとも1種のアナライトとキャプチャー部分との相互作用を可視化する高ドープアップコンバージョンナノ粒子と、を含む、ラテラルフローストリップを提供することと、
コンジュゲートがアナライトに結合して、キャプチャー部分により後続的にキャプチャーされる結合されたアナライトを提供するように、ラテラルフローストリップにサンプルを適用することと、
高ドープアップコンバージョンナノ粒子から検出可能シグナルを誘発するように構成された励起光源と、検出可能シグナルをキャプチャーする検出器と、を含む試験デバイスを提供することであって、試験デバイスがラテラルフローストリップを受取り可能である、ことと、
サンプルが適用されたラテラルフローストリップを試験デバイスに挿入することと、
高ドープアップコンバージョンナノ粒子から検出可能シグナルを誘発するように、高ドープアップコンバージョンナノ粒子を含むラテラルフローストリップの領域に光ビームを照射することと、
検出可能シグナルを検出して、検出可能シグナルに基づいてサンプル中の少なくとも1種のアナライトの量を決定することと、
を含む方法が提供される。
【0039】
[0046] 本方法は、ラテラルフローストリップ上に存在する高ドープアップコンバージョンナノ粒子を活性化して非常に明るい発光を生じさせる光のフォーカスビームの使用に基づく。発光の輝度は、非常に低い存在量で存在するアナライトの超高感度検出及び定量への道を開く。
【0040】
[0047] 本明細書に記載の方法は、一連のサンプル中に存在するアナライトの迅速で定量的な低コストの分析を可能にし、ポイントオブケア試験用途とりわけ診断にとくに好適であり、いくつかの実施形態では、本方法は、癌などの疾患の早期診断に使用されるバイオマーカーの検出及び定量に使用されうる。本発明者らは、pg/mL量で存在するバイオマーカーを本方法を用いて成功裏に検出及び定量可能であることを示した。
【0041】
[0048] ラテラルフロー試験ストリップは、バイオ医学、農業、食品、及び環境科学を含む分野でアナライトの検出に長年にわたり使用されてきており、いくつかの異なる形態をとることが可能である。一タイプでは、試験ストリップは、単一種類の材料又は複数の異なる種類の材料(たとえば、4つまでの異なる種類の材料)で作製可能な4つのドメインに分割される。第1のドメインは、サンプル添加用である。このドメインは、サンプル中に存在しうるなんらかの粘性又は微粒子状材料を除去するとともに、続くドメインで起こる反応のためにサンプルをコンディショニングするように機能する。第2のドメインは、可視カラーマーカー(たとえば、着色ビーズ、コロイド金、蛍光色素など)と抗体などの検出部分とのコンジュゲーションから作製されたカラーコンジュゲートを有する移動相である。検出部分は、サンプル中の特異的アナライト(たとえば抗原)に結合可能であり、アナライト-カラーコンジュゲート複合体を形成する。第3のドメインは、固定されたキャプチャー部分を有する固相である。キャプチャー部分は、アナライト-カラーコンジュゲート複合体のアナライトに結合してキャプチャーされたキャプチャー部分-アナライト-カラーコンジュゲート複合体サンドイッチを形成可能である。第4のドメインは、溶液吸収用であり、サンプル溶液をそれに連続的に吸引する。
【0042】
[0049] 本方法に使用するのに好適なラテラルフローストリップは、当業者に公知の標準的方法により作製されうる。ラテラルフローストリップは、少なくとも1種のアナライト(たとえば抗原など)に結合可能な検出部分(たとえば抗体など)と高ドープアップコンバージョンナノ粒子とを含むコンジュゲートを含む。ラテラルフローストリップはまた、アナライトがコンジュゲートに結合されるとアナライトとの相互作用を介してラテラルフローストリップ上にコンジュゲートを固定する働きをするキャプチャー部分を含む。次いで、アナライトの存在は、高ドープアップコンバージョンナノ粒子からの発光を用いて検出される。典型的には、ラテラルフローストリップは、紙ベースラテラルフローストリップである。
【0043】
[0050] ラテラルフローストリップは、一連の異なるアナライトタイプをアッセイするように適合化されうる。たとえば、ラテラルフローストリップは、バイオマーカー試験、血中グルコース試験、代謝試験(たとえば甲状腺刺激ホルモン)、血中ガス及び電解質分析、迅速凝固試験、迅速心マーカー診断、乱用薬物スクリーニング、尿試験、妊娠試験、便潜血分析、食品病原体スクリーニング、全血球数、ヘモグロビン診断、感染疾患試験(たとえば、マラリア感染を検出するマルチアナライト迅速診断試験)、コレステロールスクリーニング、及びホルモン試験に使用されうる。
【0044】
[0051] いくつかの実施形態では、アナライトはバイオマーカーでありうる。バイオマーカーは、薬剤又は薬剤代謝物、抗体又は抗体フラグメント、ハプテン、タンパク質又はペプチド、アミノ酸、レセプター、ステロイド、ビタミン、抗生物質、糖、ホルモン、抗原、RNA又はDNAなどの核酸、炭水化物、糖タンパク質、脂質、多糖、プロテオグリカン、組織特異的マーカー、細胞又は細胞型特異的マーカー、代謝物、ウイルス又はウイルスマーカー、細菌又は細菌マーカー、真菌又は真菌マーカー、毒素、アレルゲンなどでありうる。
【0045】
[0052] いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、癌診断又は心機能評価に使用されるバイオマーカーである。
【0046】
[0053] いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、たとえば、エストロゲンレセプター(ER)、プロゲステロンレセプター(PR)、PSA、EphA2、HER-2タンパク質、EGFR、KRAS、UGT1A1、EML4、AL IDH1、AFP、CEA、BCR-ABL、CEBPA、FLT3、KIT、NPM1、PML-RARα、CD20、JAK2、CD25、BRAF、NMP22、CA-125、HE4、HGF、CK-MB、LDH、TGF-β AST、Mb、IMA、BNP、又はMETでありうる。
【0047】
[0054] 適切なキャプチャー部分及び検出部分は、定量される1種又は複数種のアナライトに基づいて選択されうる。いくつかの実施形態では、キャプチャー部分及び検出部分は、抗体、アプタマー、エピトープ、核酸、及び/又は分子インプリントポリマーである。
【0048】
[0055] いくつかの実施形態では、ラテラルフローストリップは、単一サンプル中の複数のアナライトの検出に適合化されうる。これは、異なるアナライトに対する検出部分を有する複数のコンジュゲートと、対応する複数のキャプチャー部分と、を含むことにより達成されうる。各コンジュゲートは、異なる色を発する異なる高ドープアップコンバージョンナノ粒子を含む。図5は、マルチプレックスアッセイでPSAとEphA2とを同時に検出及び定量するように適合化されたラテラルフローストリップを示す。単一サンプル中の複数のアナライトを検出及び定量することは、悪性細胞の指標となる複数のバイオマーカーの存在の試験が有用である早期癌診断ではとくに興味深いだろう。
【0049】
[0056] 典型的には、サンプルは生物学的サンプルである。いくつかの実施形態では、サンプルは、体液、たとえば、尿、汗、血液、胆汁、血漿、血清、母乳、唾液、脳脊髄液、リンパ液、痰、滑液、涙、腹水、胸水、粘液、又はそれらのいずれかの組合せである。サンプルは、液体の形態でラテラルフローストリップに適用されうるが、代替的にガスとして適用されうる。ガスは呼吸気でありうる。
【0050】
[0057] 高ドープアップコンバージョンナノ粒子は、ホスト材料と増感剤とアクチベーターとを含みうる。
【0051】
[0058] 高ドープアップコンバージョンナノ粒子は、少なくとも約2.5mol%、少なくとも約3mol%、少なくとも約4mol%、少なくとも約5mol%、少なくとも約6mol%、少なくとも約7mol%、少なくとも約8mol%、少なくとも約9mol%、少なくとも約10mol%、少なくとも約11mol%、少なくとも約12mol%、少なくとも約13mol%、少なくとも約14mol%、少なくとも約15mol%、少なくとも約16mol%、少なくとも約17mol%、少なくとも約18mol%、少なくとも約19mol%、少なくとも約20mol%、少なくとも約25mol%、少なくとも約30mol%、少なくとも約35mol%、少なくとも約40mol%、又は少なくとも約50%のアクチベーター濃度を有しうる。
【0052】
[0059] 高ドープアップコンバージョンナノ粒子は、約2.5mol%~約75mol%、又は約2.5mol%~約70mol%、又は約2.5mol%~約65mol%、又は約2.5mol%~約60mol%、又は約2.5mol%~約55mol%、又は約2.5mol%~約50mol%、又は約2.5mol%~約45mol%、又は約2.5mol%~約40mol%、又は約2.5mol%~約35mol%、又は約2.5mol%~約30mol%、又は約2.5mol%~約25mol%、又は約2.5mol%~約20mol%、又は約2.5mol%~約15mol%、又は約2.5mol%~約10mol%、又は約3mol%~約75mol%、又は約3mol%~約70mol%、又は約3mol%~約65mol%、又は約3mol%~約60mol%、又は約3mol%~約55mol%、又は約3mol%~約50mol%、又は約3mol%~約45mol%、又は約3mol%~約40mol%、又は約3mol%~約35mol%、又は約3mol%~約30mol%、又は約3mol%~約25mol%、又は約3mol%~約20mol%、又は約3mol%~約15mol%、又は約3mol%~約10mol%、又は約4mol%~約75mol%、又は約4mol%~約70mol%、又は約4mol%~約65mol%、又は約4mol%~約60mol%、又は約4mol%~約55mol%、又は約4mol%~約50mol%、又は約4mol%~約45mol%、又は約4mol%~約40mol%、又は約4mol%~約35mol%、又は約4mol%~約30mol%、又は約4mol%~約25mol%、又は約4mol%~約20mol%、又は約4mol%~約15mol%、又は約4mol%~約10mol%、又は約6mol%~約75mol%、又は約6mol%~約70mol%、又は約6mol%~約65mol%、又は約6mol%~約60mol%、又は約6mol%~約55mol%、又は約6mol%~約50mol%、又は約6mol%~約45mol%、又は約6mol%~約40mol%、又は約6mol%~約35mol%、又は約6mol%~約30mol%、又は約8mol%~約25mol%、又は約6mol%~約20mol%、又は約6mol%~約15mol%、又は約6mol%~約10mol%、又は約8mol%~約75mol%、又は約8mol%~約70mol%、又は約8mol%~約65mol%、又は約8mol%~約60mol%、又は約8mol%~約55mol%、又は約8mol%~約50mol%、又は約8mol%~約45mol%、又は約8mol%~約40mol%、又は約8mol%~約35mol%、又は約8mol%~約30mol%、又は約8mol%~約25mol%、又は約8mol%~約20mol%、又は約8mol%~約15mol%、又は約8mol%~約10mol%、又は約8mol%のアクチベーター濃度を有しうる。
【0053】
[0060] 高ドープアップコンバージョンナノ粒子は、少なくとも約25mol%、少なくとも約26mol%、少なくとも約27mol%、少なくとも約28mol%、少なくとも約29mol%、少なくとも約30mol%、少なくとも約31mol%、少なくとも約32mol%、少なくとも約33mol%、少なくとも約34mol%、少なくとも約35mol%、少なくとも約36mol%、少なくとも約37mol%、少なくとも約38mol%、少なくとも約39mol%、少なくとも約40mol%、少なくとも約41mol%、少なくとも約42mol%、少なくとも約43mol%、少なくとも約44mol%、少なくとも約45mol%、少なくとも約46mol%、少なくとも約47mol%、少なくとも約48mol%、少なくとも約49mol%、少なくとも約50mol%、少なくとも約51mol%、少なくとも約52mol%、少なくとも約53mol%、少なくとも約54mol%、少なくとも約55mol%、少なくとも約56mol%、少なくとも約57mol%、少なくとも約58mol%、少なくとも約59mol%、少なくとも約60mol%、少なくとも約61mol%、少なくとも約62mol%、少なくとも約63mol%、少なくとも約64mol%、少なくとも約65mol%、少なくとも約66mol%、少なくとも約67mol%、少なくとも約68mol%、少なくとも約69mol%、少なくとも約70mol%、少なくとも約71mol%、少なくとも約72mol%、少なくとも約73mol%、少なくとも約74mol%、少なくとも約75mol%少なくとも約80mol%、又は少なくとも約85mol%の増感剤濃度を有しうる。
【0054】
[0061] 高ドープアップコンバージョンナノ粒子は、約25mol%~約90mol%、又は約25mol%~約85mol%、又は約25mol%~約80mol%、又は約25mol%~約75mol%、又は約25mol%~約65mol%、又は約30mol%~約90mol%、又は約30mol%~約85mol%、又は約30mol%~約80mol%、又は約30mol%~約75mol%、又は約30mol%~約65mol%、又は約35mol%~約90mol%、又は約35mol%~約85mol%、又は約35mol%~約80mol%、又は約35mol%~約75mol%、又は約35mol%~約65mol%、又は約40mol%~約90mol%、又は約40mol%~約85mol%、又は約40mol%~約80mol%、又は約40mol%~約75mol%、又は約40mol%~約65mol%、又は約45mol%~約90mol%、又は約45mol%~約85mol%、又は約45mol%~約80mol%、又は約45mol%~約75mol%、又は約45mol%~約65mol%、又は約50mol%~約90mol%、又は約50mol%~約85mol%、又は約50mol%~約80mol%、又は約50mol%~約75mol%、又は約50mol%~約65mol%、又は約55mol%~約90mol%、又は約55mol%~約85mol%、又は約55mol%~約80mol%、又は約55mol%~約75mol%、又は約55mol%~約65mol%、又は約60mol%~約95mol%、又は約60mol%~約90mol%、又は約60mol%~約85mol%、又は約60mol%~約80mol%、又は約60mol%~約70mol%、又は約60mol%の増感剤濃度を有しうる。
【0055】
[0062] 高ドープアップコンバージョンナノ粒子中のアクチベーター及び増感剤は、以上の濃度のいかなる組合せでも存在しうる。
【0056】
[0063] アクチベーターは、Yb3+、Er3+、Tm3+、Sm3+、Dy3+、Ho3+、Eu3+、Tb3+、又はPr3+でありうる(それらの組合せを含む)。一実施形態では、アクチベーターは、Er3+又はTm3+である。
【0057】
[0064] 増感剤は、Yb3+、Nd3+、Gd3+、又はCe3+でありうる(それらの組合せを含む)。一実施形態では、増感剤はYb3+である。
【0058】
[0065] ホスト材料は、アルカリフッ化物、酸化物、又はオキシ硫化物でありうる。好適なホスト材料としては、限定されるものではないが、アルカリフッ化物、たとえば、NaGdF、CaF、NaYF、LiYF、NaLuF及びLiLuF、KMnF、並びに酸化物、たとえば、Yが挙げられる。これらの材料の混合物も企図される。一実施形態では、ホスト材料はNaYFである。粒子が結晶性である場合、NaYFは、六方相又はいずれかの他の結晶相でありうる。
【0059】
[0066] 他の実施形態では、増感剤、アクチベーター、及びホスト材料は、シェルにより表面クエンチャーから保護され、結果的に、高ドープアップコンバージョンナノ粒子は、コアがアクチベーターと増感剤とホスト材料とを含み、且つシェルが表面クエンチングを防止、遅延、又は阻害する材料を含むか又はそれからなる、コア-シェル粒子である。シェルは、コアを部分的又は完全にカプセル化しうる。好ましくは、シェルは、ホスト材料と同一の材料を含むか又はそれからなるが、希土類金属ドーパントなしである。結晶の場合、これは相整合の必要性を回避する。
【0060】
[0067] 代替実施形態では、高ドープアップコンバージョンナノ粒子は、増感剤を省略しうるので、ホスト材料とアクチベーターとを含む。
【0061】
[0068] 高ドープアップコンバージョンナノ粒子は、約10nm~約200nmのサイズ、又は約10nm~約175nmのサイズ、又は約10nm~約165nmのサイズ、又は約10nm~約155nmのサイズ、又は約10nm~約145nmのサイズ、又は約10nm~約135nmのサイズ、又は約10nm~約125nmのサイズ、又は約10nm~約115nmのサイズ、又は約10nm~約105nmのサイズ、又は約10nm~約100nmのサイズ、又は約10nm~約95nmのサイズ、又は約10nm~約85nmのサイズ、又は約10nm~約75nmのサイズ、又は約10nm~約65nmのサイズ、又は約20nm~約160nmのサイズ、又は約20nm~約150nmのサイズ、又は約20nm~約140nmのサイズ、又は約20nm~約130nmのサイズ、又は約20nm~約120nmのサイズ、又は約20nm~約110nmのサイズ、又は約20nm~約100nmのサイズ、又は約20nm~約90nmのサイズ、又は約20nm~約80nmのサイズ、又は約20nm~約70nmのサイズ、又は約30nm~約160nmのサイズ、又は約30nm~約150nmのサイズ、又は約30nm~約140nmのサイズ、又は約30nm~約130nmのサイズ、又は約30nm~約120nmのサイズ、又は約30nm~約110nmのサイズ、又は約30nm~約100nmのサイズ、又は約20nm~約75nmのサイズ、又は約25nm~約70nmのサイズ、又は約30nm~約60nmのサイズ、又は約40nm~約60nmのサイズ、又は約50nmのサイズを有しうる。
【0062】
[0069] いくつかの実施形態では、高ドープアップコンバージョンナノ粒子は、8%Er/60%Yb@NaYF、8%Tm/60%Yb@NaYF、40%Er/60Yb@NaYF、又は100%Er@NaYFである。
【0063】
[0070] 本方法はまた、ラテラルフローストリップ用の試験デバイスの提供を含む。試験デバイスは、高ドープアップコンバージョンナノ粒子から検出可能シグナルを誘発するように光ビームを生じさせる励起光源を含み、且つビーム及び検出可能シグナルをフォーカスする集光光学素子を含みうる。励起光源は、高ドープアップコンバージョンナノ粒子から検出可能シグナルを誘発可能ないずれかの光源でありうる。いくつかの実施形態では、励起光源は、レーザーダイオード又は近IR光源、たとえばLED近IR光源である。検出可能シグナルは、可視光又は赤外光でありうる。
【0064】
[0071] 試験デバイスは、たとえばカメラ又はシングルエレメント検出器などの検出器と共に使用されるように適合化されうる。いくつかの実施形態では、検出器はスマートフォンカメラである。
【0065】
[0072] 光ビームは、少なくとも約0.001MW/cm、又は少なくとも約0.01MW/cm、又は少なくとも約0.05MW/cm、又は少なくとも約0.1MW/cm、少なくとも約0.5MW/cm、又は少なくとも約1.0MW/cm、又は少なくとも約1.5MW/cmのパワー密度を有しうる。いくつかの実施形態では、光ビームは、約0.001MW/cm~約1.5MW/cm、又は約0.01MW/cm~約1.5MW/cmのパワー密度を有する。
【0066】
[0073] いくつかの実施形態では、照射領域は、約1μm~約10000000μm、又は約1μm~約1000000μm、又は約1μm~約100000μm、又は約1μm~約10000μm、又は約1μm~約10000μm、又は約1μm~約1000μm、又は約1μm~約100μmである。ラテラルフローストリップの小領域への照射は、光散乱及び/又は自己蛍光を最小限に抑えるので、小サンプル体積を分析するときに感度を最適化する働きをしうる。
【0067】
[0074] 図5は、本発明の一実施形態に係る試験デバイスを示す。この実施形態では、低コスト980nmレーザーダイオードと集光光学素子とを包囲する3Dプリントプラスチックハウジングが提供される。集光光学素子は、一対の半球レンズを含み、一方は、レーザーダイオードとラテラルフローストリップとの間に介在し、他方は、ラテラルフローストリップと検出器との間に介在する。また、レーザー散乱を除去するショートパスフィルターとして作用するKG-3熱線吸収ガラスも含まれる。ハウジングはまた、ラテラルフローストリップを挿入可能なアパーチャー(図示せず)を含みうる。適宜、この試験デバイスは、A$100未満で製造可能である。高ドープアップコンバージョンナノ粒子からの発光は、カメラによる検出に十分な輝度であるので、スマートフォンが検出器として使用される。したがって、コストのかかる単一光子計数検出器は必要とされないため、実質的にコストが低下し、本方法の実施が単純になる。
【0068】
[0075] サンプル中の少なくとも1種のアナライトの量は、検出器によりキャプチャーされた画像の強度を、アナライトに対してあらかじめ設定された強度-濃度曲線に当てはめることにより決定されうる。試験領域、バックグラウンド領域、及び対照領域全体にわたり検出可能シグナルの強度を記録する一連の画像のビデオは、MATLABソフトウェアを用いたさらなる解析のためにスマートフォンからコンピューターに転送されうる。各画像の強度は、対応するカラーチャネルから各ピクセルの強度の和をとり、次いで、そのグループの少なくとも3つのフレームからさらに平均をとることにより計算される。このデータ解析プロセスは、スマートフォンが各画像の強度に基づいてアナライト濃度を直接報告できるように、アプリにプログラムされうる。
【実施例
【0069】
実施例
[0076] 下記実施例では、ラテラルフローストリップ(LPS)の多色レポーターとして、帯黄色アップコンバージョン発光を発するEr3+イオン及び紫色アップコンバージョン発光を発するTm3+イオンが高ドープされたアップコンバージョンナノ粒子(UCNP)を適用した。低コスト励起レーザーダイオードと集光光学素子とをアライメントするプラスチックホルダーをプリントした。紙基材上の小領域を特定的に照明するように励起ビームを厳密にフォーカス可能であるため、高ドープUCNPの輝度をアンロックして小サンプル体積を用いた高感度検出が実現可能になることは、分かるであろう。以下で実証されるように、高ドープUCNPは、従来のUCNPと比較して有意により高い輝度を提供し、定量的マルチプレックスアッセイでクロストークなく感度の良い検出を可能にする。
【0070】
1.UCNPの合成
[0077] Jin et al. Nature Communications 2018, 9 3290に記載のように、異なるドーピングレベル(2%Er/20%Yb、8%Er/60%Yb、0.5%Tm/20%Yb、及び8%Tm/60%Yb)のNaYF:Yb3+,Er3+/Tm3+ナノ結晶を合成した。典型的実験では、6mL OAと15mL ODEとを含有するフラスコに、所望のモル比の1mmol RECl・6HO(RE=Y、Yb、Tm)を添加した。アルゴンフロー下で混合物を160℃に30分加熱して透明溶液を得た後、約50℃に冷却した。次いで、NHF(4mmol)とNaOH(2.5mmol)との5mLメタノール溶液を添加し、溶液を30分撹拌した。アルゴンフロー下で混合物を150℃に20分加熱してメタノールを排除した後、さらに追加で310℃に90分加熱した。最後に、反応溶液を室温に冷却した。エタノールを用いて生成物を沈殿させ、9000rpmで5分遠心分離し、そしてシクロヘキサン、エタノール、及びメタノールで3回洗浄してナノ粒子を得た。
【0071】
[0078] レイヤーバイレイヤーエピタキシャル成長を採用してコア-シェル構造を有するナノ粒子を作製した。シェル前駆体を調製する手順は、反応溶液を150℃に徐々に20分加熱して20分保持する工程まで、コアナノ粒子に対して使用した手順に類似している。300℃にさらに加熱してナノ結晶成長をトリガーする代わりに、溶液を室温に冷却した。そうした条件下でシェル前駆体を作製した。エピタキシャル成長のために、0.15mmolの調製したままのコアナノ結晶を6ml OA及び6ml ODEに添加した。アルゴン下で混合物を170℃に30分加熱した後、さらに300℃に加熱した。次に、0.25mlの調製したままのシェル前駆体を反応混合物に注入して300℃で4分熟成した。同一の注入及び熟成サイクルを数回実施して所望のサイズを有するナノ結晶を得た。最後に、スラリーを室温に冷却し、そしてコアナノ結晶を得るのに使用したのと同一の手順を用いて、形成されたナノ結晶を精製した。
【0072】
2.UCNPと抗体とのバイオコンジュゲーション
[0079] 配位子交換を用いてOAキャップUCNPをcPEG(カルボキシ基で修飾されたポリエチレングリコール)被覆生成物に変換した。エタノールを用いてシクロヘキサン中の1.5mLの20mg/mL UCNPを沈殿させ、そして遠心分離後、ボルテクシング及び超音波処理によりUCNPを3mL THF中に再分散し、次いで、THF溶液中の1.5mLの200mg cPEGを添加し、そして混合溶液を室温で24時間撹拌した。次いで、3mLのMiliQ水を添加してシェイクしながら混合した。次いで、1mLのヘキサンを用いて溶液を抽出し、OA分子を除去した。油相を除去した後、溶液を真空中に一晩配置して有機溶媒を蒸発させた。次いで、1LのMiliQ水中で溶液を24時間透析して過剰のPEGを除去した。
【0073】
[0080] 変換後、遠心分離を用いてcPEG-UCNPをMES緩衝液(pH4.5)中1mg/mLの最終濃度に変更した。10μLのcPEG-UCNP、100μg EDC、及び100μg NHSを90μL MES緩衝液(pH4.5)に混合導入した。2時間の温和なシェーキングの後、サンプルをMES緩衝液で2回洗浄した(14,000rpmで20分遠心分離)。最終遠心分離工程後、沈殿物を50μL MES緩衝液中に懸濁させた。次いで、溶液を50μLのIgG抗体(ウサギで生成された0.1mg/mL抗PSAモノクローナル抗体/ウサギで生成された抗EphA2モノクローナル抗体、Sigma)と混合して、37℃シェーカー中で一晩インキュベートした。MES緩衝液で2回洗浄した後(14,000rpmで20分遠心分離)、サンプルを100μLのMES緩衝液中に懸濁させて5秒間超音波処理した。
【0074】
3.TEMによる特徴付け
[0081] 2%Er/20%Yb、8%Er/60%Yb@NaYF、0.5%Tm/20%Yb及び8%Tm/60%Yb@NaYF UCNPを透過電子顕微鏡法により特徴付けした。図1に示されるように、UCNPはきわめて均一であった。
【0075】
4.UV吸収スペクトル及び動的光散乱
[0082] Nanodrop2000を用いてcPEG被覆UCNP及びIgGコンジュゲートUCNPのUV吸収スペクトルを決定し、抗体がUCNPの表面にコンジュゲートされたことを確認した(図2)。
【0076】
[0083] 動的光散乱(DLS)を用いてMES緩衝液(pH6.8)中の各サンプルのサイズ分布を決定した。また、結果からCNP表面上のIgGの存在を確認した(表1)。
【0077】
【表1】
【0078】
5.パワー依存スペクトル
[0084] 低及び高励起パワー下の2%Er/20%Yb及び0.5%Tm/20%Ybのパワー依存スペクトルを決定した。結果を図3に示す。
【0079】
6.紙ベースストリップの作製
[0085] ストリップ構造は、接着PVCバックパッドと、ニトロセルロース膜(FF120HP膜、GE Life Science)と、サンプルパッド(CF4、GE Life Science)と、吸収パッド(CF5、GE Life Science)と、を含む。サンプルパッド、ニトロセルロース膜、及び吸収パッドは、2mmのオーバーラップを有してPVCバックパッド上に取り付けられた。アセンブルパッドは、3mmの幅を有するストリップにカットされた。試験領域及び対照領域は、マウスで生成された0.5μLの0.2mg/mL抗PSA/EphA2ポリクローナル抗体(Sigma)及び0.5μLの2mg/mL抗ウサギIgG抗体(Sigma)で個別に被覆され、約4℃未満で一晩インキュベートされた。
【0080】
7.ラテラルフローストリップ標的検出アッセイ
[0086] UCNPレポーターをワーキング緩衝液(pH6.8MBS緩衝液、0.5w/v%ツイーン20、1w/v%BSA)に移した。混合後、UCNPレポーターと共にサンプル溶液をストリップのサンプルパッドに適用した。10分後、洗浄緩衝液(pH6.8MBS緩衝液、0.5w/v%ツイーン20)をサンプルパッドに添加した。20分後、ストリップをリーダーにより検出した。
【0081】
8.単一光子アバランシュ検出器に基づくストリップ試験システム
[0087] ストリップ上のUCNPレポーターからの発光シグナルを読み取るために、専用スキャニング共焦点システムを構築した(図4)。半波長板と偏光子とを含む自家製パワー制御ユニットと共に976nmレーザーを用いて、UCNPを励起した。UCNPの発光を対物レンズ(60×、NA0.85Edmund)により集光し、次いで、単一光子アバランシュ検出器(SPAD)に連結された光ファイバーにチューブレンズによりフォーカスした。ステージのx-y移動を用いて、1つの試験領域の10個の異なるポイントを読み取った。
【0082】
9.LODの計算
[0088] 3σ法を用いて、ストリップ試験システムのLODを計算した。ノイズN=バックグラウンド+3SD(バックグラウンド)として、標的濃度を用いて線形当てはめS/Nを設定した。LODは、S/N=1のときの濃度である。
【0083】
実施例1
[0089] より小さくより明るいUCNPが得られるように、Er3+及びTm3+が高ドープされた2つのタイプの不動態化された不活性シェルUCNP(すなわち、8%Er/60%Yb@NaYF及び8%Tm/60%Yb@NaYF)を合成し、それらの性能を同一サイズの他のUCNP(すなわち、2%Er/20%Yb及び0.5%Tm/20%Yb)と対比して評価した。配位子交換を用いてカルボキシル基でUCNPの表面を修飾し、続いて、抗体をコンジュゲートするためにEDC/NHS技術を用いた。TEMによる特徴付けにより各UCNPサンプルの均一性を確認した(図1、5B、及び5C)。抗体のコンジュゲーションに成功したことは、280nmに特性ピーク出現を有するUV吸収スペクトル(図2)により及びサイズのわずかな増加を明らかにした動的光散乱(表1)により確認された。
【0084】
[0090] 単一ナノ粒子特徴付けシステムを用いて、調製したままのUCNPレポーターのパワー依存性をそれらの発光強度及びスペクトルプロファイルに関して試験した(Wang et al. (2018) Light Sci & Amp Appl 2018: 7, 18007)。励起パワー密度の増加に伴って、高ドープUCNPの輝度は、より低ドープのUCNPよりも実質的に増加した(図6A)。高Er3+及びTm3+ドープUCNPの発光輝度の増強比は、パワーが0.5MW/cmを超えたとき、より低ドープのUCNPの5倍及び12倍であった。図6Bに示されるように、高Er3+ドープUCNPレポーターの発光スペクトルは、より高い励起パワー下で約650nmに実質的により多くの赤色を発し、明るい帯黄色発光をもたらす。この塗料混合効果はまた、高Tm3+ドープUCNPレポーターでも起こり、電話カメラから紫色が現れる(より低ドープのUCNPレポーターのパワー依存スペクトルプロファイルは図3に示される)。
【0085】
実施例2
[0091] ラテラルフローストリップ上でさまざまな濃度の標的PSAを検出することにより、高Er3+ドープUCNPレポーターをより低ドープのUCNPと比較した。0.5MW/cmの励起パワー密度で、試験領域及びバックグラウンド領域からのシグナルを単一光子計数検出器により記録した。図6Dに示されるように、高ドープUCNPレポーターからのシグナルは、より低ドープのUNCPからのシグナルよりもかなり高く、輝度増強比は、単一ナノ粒子特徴付け結果と一致した。輝度差にもかかわらず、両方のレポーターは、50pg/mLの同一のPSA検出限界(LOD)を示す。高ドープUCNPレポーターのみは、通常の電話カメラに十分な輝度を提供する。
【0086】
実施例3
[0092] 図5A及び図7Aに示されるように、3Dプリント小型ハウジングにより包囲された小型デバイスを構築した。デバイスは、光源としての980nm300mwレーザーダイオードと、2つの半球レンズ(一方は、励起光ビームをストリップにフォーカスし、他方は、発光シグナルを電話カメラに集める)と、レーザー散乱を除去するショートパスフィルターとしての低コストKG-3熱線吸収ガラスと、を使用した。電話カメラCMOS(Sony IMX-214)のスペクトル応答及びKG-3ガラスの透過曲線は、電話カメラが高ドープUCNPレポーターからの可視発光シグナルのほとんどを読取り可能であり、励起散乱光の無視しうる量が検出されるにすぎないことを示唆する(図7B)。
【0087】
[0093] 実証目的で、光学素子及びカメラの設定は固定したが、ストリップは、一定速度で一方の側から他方の側に移動させ、試験領域、対照領域、及びバックグラウンド領域の平均蛍光強度値をビデオ解析から抽出可能にした(図7C)。図7Dを参照して、高ドープUCNPレポーターは、標的濃度が低いときに検出可能シグナルを提供したが、より低ドープのUCNPは提供しなかった。高Er3+ドープUCNPレポーターを用いたPSAのLODは61pg/mLであったが、より低ドープのUCNPを用いたLODは8.5ng/mLであった。
【0088】
実施例4
[0094] 次いで、PSA及びEphA2標的アナライトの同時試験のために、単一ストリップで高Er3+及びTm3+ドープUCNPレポーターを使用した。この目的のために、高Er3+ドープUCNPを抗PSA抗体で修飾し、高Tm3+ドープUCNPを抗EphA2抗体で修飾した。図8Aは、2つの標的の試験の結果を示す。帯黄色及び紫色は、それぞれ、PSA及びEphA2の存在の指標となり、輝度は、標的濃度の増加に伴って増加する。2色LFSシステムは、PSAに対して89pg/mLのLODを達成したことから(図8B)、このシステムが単色システムから達成される高感度を維持することが実証される。EphA2に対するLODは、400pg/mLであった(図8C)。高Tm3+ドープUCNPレポーターの発光エネルギーがおおよそ800nmであり(図6C)、検出光学素子及び電話カメラの範囲を超えているので(図7B)、シグナル強度はより低い。妨害アナライトとしてBSAを用いて、2つの標的PSA及びEphA2を個別に試験することにより、2色LFSシステムの特異性はさらに評価した。陽性グループはすべて、対照グループと比較してかなり高い強度を示した。交差相互作用は無視しうることが結果から示唆される。
【0089】
[0095] 特定の実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、多くの他の形態で本発明を具現化しうることは、当業者であれば分かるであろう。
図1
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図8