(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】圧迫衣類
(51)【国際特許分類】
A61H 7/00 20060101AFI20240329BHJP
A61F 13/06 20060101ALI20240329BHJP
A61F 13/14 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
A61H7/00 322E
A61F13/06 Z
A61F13/14 C
A61F13/14 Z
(21)【出願番号】P 2021517518
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2019064039
(87)【国際公開番号】W WO2019229160
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-04-25
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520468379
【氏名又は名称】ニューラルタイド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ベルテ,キャリーヌ
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/104861(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0120733(US,A1)
【文献】特表2009-501594(JP,A)
【文献】特開2004-201843(JP,A)
【文献】特開2016-189830(JP,A)
【文献】国際公開第2009/072011(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 7/00
A61F 13/06
A61F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の腹部(A)を取り囲むように意図された1つの腹部活性部(3)、および前記患者の下肢(L
1、L
2)のうちの一方をそれぞれ取り囲むように意図された2つの下部活性部(4、5)の3つの活性部(3、4、5)を備える、前記患者の身体を圧迫するための圧迫衣類(1)であって、前記活性部(3、4、5)の各々は、前記腹部(A)と前記下肢(L
1、L
2)との間の、前記患者の対応する身体部位全体に前記活性部によって均一な陽圧が加えられるように流体を充填可能な少なくとも1つのブラダ(31、41、51)を備え、前記圧迫衣類(1)は、
各々の活性部(3、4、5)に対して、前記活性部(3、4、5)と前記患者の対応する身体部位との間に位置決めされた状態で、前記活性部(3、4、5)と前記患者の対応する身体部位との間の界面における圧力を測定するように構成された少なくとも1つの界面圧力センサ(2)
であって、前記少なくとも1つの界面圧力センサ(2)は空気圧センサである、界面圧力センサ(2)と、
少なくとも1つの測定モジュール(72)であって、各々の界面圧力センサ(2)は、可撓性チューブによって前記少なくとも1つの測定モジュール(72)に密閉式に接続される、測定モジュール(72)と、
各々の活性部(3、4、5)の1つ以上の界面圧力センサ(2)から前記界面圧力測定値を受信するように構成された受信モジュール(70)、および各々の活性部について前記受信モジュールによって受信された界面圧力測定値に基づいて、前記腹部活性部(3)に対する所定の界面圧力値が前記各々の下部活性部(4、5)に対する所定の界面圧力値よりも小さくなるように各々の活性部に対する所定の界面圧力値を維持するために、前記活性部の1つ以上の充填可能なブラダ(31、41、51)に流体を注入するための少なくとも1つの注入装置(63、64、65)を駆動するように構成された駆動モジュール(71)を備える制御ユニット(7)
であって、前記制御ユニット(7)は、
前記腹部活性部(3)に対して、10~20mmHgの範囲にある第1の所定の界面圧力値と、
前記2つの下部活性部(4、5)の各々に対して、20~40mmHgの範囲にある第2の所定の界面圧力値と、
を維持するように構成される、制御ユニット(7)と、
を備える、圧迫衣類。
【請求項2】
前記少なくとも1つの界面圧力センサ(2)は、前記患者の身体部位に効果的に加えられる圧力を表す圧力測定値を提供するように構成される、請求項1に記載の圧迫衣類。
【請求項3】
前記少なくとも1つの測定モジュール(72)は、前記3つの活性部(3、4、5)の外側にある、請求項1または2に記載の圧迫衣類。
【請求項4】
前記少なくとも1つの測定モジュール(72)は、前記制御ユニット(7)のハウジング内に組み込まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載の圧迫衣類。
【請求項5】
前記制御ユニット(7)は、前記患者の血圧を表す測定値を受信し、前記患者の血圧値(SBP、DBP)を所定の閾値未満に保つように、前記下部活性部(4、5)の1つ以上の充填可能なブラダに流体を注入するための当該または各々の注入装置(64、65)を制御するように構成される、請求項
1~4のいずれか一項に記載の圧迫衣類。
【請求項6】
前記制御ユニット(7)は、前記患者の脳内血流を表す測定値を受信し、前記脳内血流を表す測定値の変化を前記圧迫衣類(1)によって前記患者の身体部位(A、L
1、L
2)に加えられた圧力勾配と相関させるように構成される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の圧迫衣類。
【請求項7】
各々の充填可能なブラダ(31、41、51)に関して、流体を受容するための容積(V)は、前記流体を通さない可撓性層(32-34、42-44、52-54)によって画定される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の圧迫衣類。
【請求項8】
各々の界面圧力センサ(2)は、前記患者の身体部位に向けられるように意図された活性部(3、4、5)の壁(33、43、53)に固定される、請求項1~
7のいずれか一項に記載の圧迫衣類。
【請求項9】
各々の充填可能なブラダ(31、41、51)に関して、前記ブラダに流体が充填される際の圧力を感知するための少なくとも1つの充填圧力センサ(60)を備える、請求項1~
8のいずれか一項に記載の圧迫衣類。
【請求項10】
各々の活性部(3、4、5)は、前記患者の対応する身体部位の周囲で前記活性部を調節するための調節手段(37、38、39、47、48、49、57、58、59)を備え、前記調節手段は、前記活性部の当該または各々の充填可能なブラダ(31、41、51)を充填するときに前記患者の対応する身体部位に対して前記活性部を当てることができる、前記活性部のパターニング要素(39、49、59)を備える、請求項1~
9のいずれか一項に記載の圧迫衣類。
【請求項11】
各々の活性部(3、4、5)は、前記患者の対応する身体部位の周囲で前記活性部を調節するための調節手段(37、38、39、47、48、49、57、58、59)を備え、前記調節手段は、前記患者の対応する身体部位の周囲で前記活性部の周長の調節を可能にする、前記活性部(3、4、5)の閉鎖要素(37(′)、38(′)、47(′)、48(′)、57(′)、58(′))を備える、請求項1~
10のいずれか一項に記載の圧迫衣類。
【請求項12】
前記下部活性部の少なくとも一方(4)は、前記活性部(4)が前記患者の下肢(L
1)の周囲の所定位置にあるときに、前記患者の大腿部を取り囲み、そこに締め付け力を加えることができる内側締め付け要素(40)を備える、請求項1~
11のいずれか一項に記載の圧迫衣類。
【請求項13】
前記圧迫衣類の使用ごとに交換することができる保護布(8)であって、前記患者の身体部位側を向くように意図された1つまたは各々の活性部(3、4、5)の壁(33、43、53)に取り外し可能に固定される保護布(8)を備える、請求項1~
12のいずれか一項に記載の圧迫衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の腹部および患者の下肢を圧迫するように意図された、患者の身体を圧迫するための圧迫衣類に関する。特に、本発明は、患者の下半身に含まれる血液の動員による脳の血行再建を可能にするために、「下半身陽圧負荷法」(LBPP)原理に従って患者の身体を圧迫するための圧迫衣類に関する。本発明はさらに、そのような圧迫衣類を患者に装着する方法、および患者の身体を圧迫する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「下半身陽圧負荷法」(LBPP)原理は、特に10~40mmHgの範囲にある一定の低圧レベルを患者の腹部および患者の下肢に加えることを含み、腹部に加えられる圧力は、下肢に加えられる圧力よりも厳密に小さい。この概念は、当初、特に微小重力飛行のために、大動脈下部領域および大動脈上部領域における適切な容積分布を確保するために開発されたものであった。LBPPは、血液を下半身から上半身へと移動させ、その結果、中心心肺血液量を増加させることが報告されている。
【0003】
国際公開第2008104861(A1)号は、身体の上部に影響を及ぼす血管不全、特に脳血管不全または眼障害を患っている個体を治療するためのLBPPの使用を開示している。この文献は、LIFE SUPPORT PRODUCTS社(米国、ミズーリ州、セントルイス)から市販されているような抗重力パンツまたは医療用ショックパンツ(MAST)を使用したLBPPの適用を記載している。このようなショックパンツは、患者の腹部および両方の下肢にそれぞれ陽圧を加えることを可能にする3つの独立したエアチャンバを備える。エアチャンバはそれぞれ、空気圧端に接続され、ポンプを使用して手動で膨張され、瞬間圧力値を提供するために圧力計が各エアチャンバに設けられる。
【0004】
ショックパンツは、硬い構造を有し、このことが、脳卒中または脳血管障害(CVA)に罹患した患者のような寝たきりの患者または四肢麻痺を患っている患者への装着を困難にしている。さらに、ショックパンツは、一般に、ワンサイズでの入手が可能であり、これは全ての形態に適合するわけではない。しかし、患者の形態がショックパンツのサイズに適合しない場合、圧力計で示されている圧力値が患者の身体部位に効果的に加えられる圧力に対応しない危険性がある。このことにより、患者の身体への圧迫が不確実なものとなる。ショックパンツを用いたLBPPの実施はさらに、患者に加えられる圧力が身体の各々の部位で一定のまま維持されることを保証するために、経時的な圧力の手動調節および監視を必要とし、これに時間がかかる作業である。
【0005】
本発明は、より詳細には、均一かつ一定の圧力レベルを、自動的に、確実に、かつ正確に、患者の身体部位に加えることを可能にする圧迫衣類を提案することによって、上述の欠点を克服することを目的とする
【発明の概要】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、患者の身体を圧迫するための圧迫衣類であり、患者の腹部を取り囲むように意図された1つの腹部活性部、および患者の下肢のうちの一方をそれぞれ取り囲むように意図された2つの下部活性部の3つの活性部を備え、各々の活性部は、腹部および下肢のうち患者の対応する身体部位全体に活性部によって均一な陽圧が加えられるように流体を充填可能な少なくとも1つのブラダを備える、圧迫衣類であって、
-各々の活性部に対して、活性部と患者の対応する身体部位との間に位置決めされた状態で、活性部と患者の対応する身体部位との間の界面における表面圧力を測定するように構成された少なくとも1つの界面圧力センサと、
-各々の活性部の1つ以上の界面圧力センサから界面圧力測定値を受信するように構成された受信モジュール、および各々の活性部について受信モジュールによって受信された界面圧力測定値に基づいて、腹部活性部に対する所定の界面圧力値が各々の下部活性部に対する所定の界面圧力値よりも厳密に小さくなるように各々の活性部に対する所定の界面圧力値を維持するために、活性部の1つ以上の充填可能なブラダに流体を注入するための少なくとも1つの注入装置を駆動するように構成された駆動モジュールを備える制御ユニットと、
を備える、圧迫衣類に関する。
【0007】
本発明は、各々の活性部に対して制御ユニットによって考慮される界面圧力(活性部と患者の対応する身体部位との間に位置決めされた少なくとも1つの界面圧力センサによって測定される)が活性部によって患者の対応する身体部位に実際に加えられる圧力を表し、このことにより、本発明の圧迫衣類を使用して、自動的に、確実に、かつ正確に圧迫することが可能になることに貢献する。一方、各々の活性部について制御ユニットによって考慮される圧力が、特にブラダと流体をブラダに注入するための注入装置との間の接続パイプ内に設置された圧力計を使用して測定された、活性部の各々のブラダの充填圧力のみである場合、ブラダの充填圧力は患者の対応する身体部位にブラダによって実際に加えられる圧力(患者の身体の周囲の衣類の調節の程度に依存する)を系統的に表さないので、加えられる圧力の制御は確実でない。
【0008】
1つの特徴によれば、制御ユニットは、
-腹部活性部に対して、10~20mmHgの範囲にあり、好ましくは約10mmHgである第1の所定の界面圧力値と、
-2つの下部活性部の各々に対して、20~40mmHgの範囲にあり、好ましくは約20mmHgである第2の所定の界面圧力値と、
を維持するように構成され、
腹部活性部に対する第1の所定の界面圧力値は、各々の下部活性部に対する第2の所定の界面圧力値よりも厳密に小さい。
【0009】
したがって、本発明の圧迫衣類は、「下半身陽圧負荷法」(LBPP)原理に従って患者の身体に圧力を自動的に加えて、患者の下半身に含まれる血液の動員による脳の血行再建を可能にするために、一方の腹部と他方の下肢との間に圧力勾配を生じさせるように構成される。より詳細には、本発明の圧迫衣類は、循環血漿量を増加させることによって、受動的な形で脳の血行再建を可能にする。制御ユニットは、界面圧力を自動的に制御することを可能にし、界面圧力測定値および界面圧力設定値に応じて各々の活性部の1つ以上のブラダへの流体の注入をサーボ制御することを可能にし、このことにより、人手を介さずにセッションの持続時間全体を通して一定の圧力を加えることが保証される。
【0010】
LBPP療法の適用のための治療通過帯域は、下肢において20~40mmHgの範囲内になければならず、40mmHgを超えないことに留意されたい。より具体的には、40mmHgを超えると、心前負荷(または心臓の充満圧)の増加が非常に大きいので、交感神経系を刺激し、このことは大型動脈ハイウェイの血管緊張に対する反射作用を有し、その結果、血管拡張ならびに動脈血圧低下をもたらすことが分かっている。これは、特に、脳卒中に罹患した患者については、脳自己調節が脳卒中により停止しているので、脳灌流の減少をもたらす。したがって、40mmHgを超える圧力値を下肢に加えることは有害である。これらの条件下では、本発明の圧迫衣類は、2つの下部活性部のそれぞれについて40mmHg以下の第2の所定の界面圧力値を維持するように構成される。
【0011】
1つの特徴によれば、制御ユニットは、患者の血圧を表す測定値(特に治療セッション中に継続的に取得される)を受信し、患者の血圧値を所定の閾値未満に保つように、特に収縮期血圧(SBP)を厳密に220未満に保ち、拡張期血圧(DBP)を厳密に120未満に保つように、下部活性部の1つ以上の充填可能なブラダに流体を注入するための各々の注入装置を制御するように構成される。
【0012】
1つの特徴によれば、制御ユニットは、患者の脳内血流を表す測定値(特に経頭蓋ドップラ法によって得られた)を受信し、脳内血流を表す測定値の変化を圧迫衣類によって患者の身体部位に加えられた圧力勾配と相関させるように構成される。この構成により、有利には、医師が治療目標を選択し、例えば、治療セッションの開始時と比較して脳内血流の30%の平均増加率を目指すことが可能になる。したがって、前記治療目標に達したときにアラートを発生させることができ、そのことにより、医師は、得られた機能結果に応じてセッションを継続するか否かを決定する。
【0013】
3つの活性部の各々に対して界面圧力センサを設けることにより、患者の腹部および下肢に効果的に加えられる圧力値を制御することが可能になり、そのため、各々の界面圧力センサは、活性部と患者の対応する身体部位との間に直接位置決めされる。特に、LBPPの場合、腹部に加えられる圧力は、有利には、10~20mmHgの範囲、好ましくは約10mmHgの値を有し、下肢それぞれに加えられる圧力は、有利には、20~40mmHgの範囲、好ましくは約20mmHgの値を有する。界面圧力センサを使用した制御は、圧迫セッションの持続時間全体を通して(特にLBPPの場合には約90分間持続する)、加えられる圧力が患者の身体部位それぞれにおいて一定のまま維持されることをさらに保証する。
【0014】
好ましくは、圧迫衣類の各々の活性部は、衣類の設計を単純化するために、単一の充填可能なブラダを備える。各々の活性部に対して、界面圧力センサの数および配置は、患者の身体部位に効果的に加えられる圧力を表す圧力測定値を提供すると同時に、特に、骨部分へのセンサの位置決めを回避するのに適している。
【0015】
一例として、特定の一実施形態では、
-圧迫衣類の腹部活性部は、腹部中央の前方に位置決めされるように意図された前方中央センサと、腹部の両側に位置決めされるように意図された2つの側方センサとを備える3つの界面圧力センサを備え、
-圧迫衣類の各々の下部活性部は、ふくらはぎ上に位置決めされるように意図された1つまたは2つの下部センサ、特にふくらはぎの後面上の後側下部センサ、場合によっては、ふくらはぎの内側面上の内側下部センサと、大腿部上に位置決めされるように意図された2つまたは3つの上部センサ、特に大腿部の後面上の後側上部センサ、大腿部の内側面上の内側上部センサ、場合によっては、大腿部の前内側面上の前内側上部センサとを備える、3~5個の界面圧力センサを備える。
【0016】
各々の界面圧力センサのサイズ、より具体的には測定表面積は、センサごとに異なり、特にセンサの位置に応じて異なり得る。したがって、一例として、腹部活性部に関して、前方中央センサは、側方センサの測定表面積よりも大きい測定表面積を有するように選択され得る。
【0017】
本発明の一態様によれば、各々の充填可能なブラダに関して、流体を受容するための容積は、特に織布および/またはプラスチック材料の基材を有する、前記流体を通さない可撓性層によって画定される。好ましくは、不浸透性層の材料は、例えば、層の材料にエラスタンを組み込むことによって、または織布を含む層の場合には、織布を織ることによって得られる弾性特性を有する。有利には、不浸透性層の材料は、その外面、すなわち、ブラダの外側表面が洗浄され得るように選択される。
【0018】
一実施形態では、各々のブラダに充填する流体は空気であり、したがって、各々のブラダの容積を画定する可撓性層は、患者の身体に必要な陽圧を加えるためにブラダ内に加えられる空気圧と一致する所与の圧力範囲で気密になる。このような気密層は、特に、自己支持形であるか、または基板上に堆積されたプラスチック材料の層であり得る。特に、気密層は、特にナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミドまたは綿の基材を有する織布層または不織布層と、特にポリウレタン、シリコーン、ポリ塩化ビニル(PVC)または他のプラスチック材料の基材を有するコーティング層との重ね合わせを備え得る。好ましくは、織布層の単位面積当たり重量は、150~250g/m2の範囲にある。本発明の範囲内の気密層を形成するために使用され得る材料の一例は、一方の面がポリウレタンコーティング層でコーティングされたナイロン編地層を含む。ブラダの各々を形成する可撓性層の気密性により、ブラダ自体がエアチャンバとしての機能を果たすので、エアチャンバは必要でない。このことにより、各々の充填可能なブラダの可撓性構造が形成され、圧迫衣類の装着快適さを改善し、寝たきりまたは麻痺状態の患者を含む患者への圧迫衣類の装着を容易にする。
【0019】
有利には、各々の活性部は、患者の対応する身体部位の周囲での装着を可能にする展開構成と、患者の対応する身体部位の周囲で調節される調節構成との間で変形することができる可撓性部分である。調節構成では、活性部は筒形状を有し、内側壁は患者の身体部位に陽圧を加えることができる。
【0020】
一実施形態によれば、各々の活性部は、互いに重ね合わされ、前記流体を通さない第1の部分および第2の部分であって、それらの間に、各々の充填可能なブラダの流体を受容するための容積を画定する第1の部分および第2の部分を備える織布および/またはプラスチック材料の基材を有する部分である。患者の対応する身体部位上の活性部の調節構成では、第1の部分は内側に向けられ、第2の部分は外側に向けられる。第1の部分および第2の部分は、有利には、前記流体を通さない周縁シームによって、または前記流体を通さない任意の他の周縁接続手段によって互いに接続される。
【0021】
1つの有利な特徴によれば、各々の界面圧力センサは、活性部の内壁、すなわち、患者の対応する身体部位に向けられるように意図された壁に堅固に固定される。特に、界面圧力センサは、収容目的のために活性部の内壁に設けられた区画内に収容され得る。あるいは、界面圧力センサは、任意の他の適切な手段によって、特に縫製または接着などによって、活性部の内壁に堅固に固定され得る。
【0022】
有利には、圧迫衣類の各々の充填可能なブラダは、流体注入装置に接続されるように設計された少なくとも1つの充填エンドピースを備える。各々の充填可能なブラダに対して、圧迫衣類は、ブラダに流体が充填される際の圧力を感知するための少なくとも1つの充填圧力センサ、例えば圧力計をさらに備える。特に、各々の充填可能なブラダに対して、前記充填圧力センサは、ブラダの充填エンドピースと対応する流体注入装置との間の接続パイプ内に設置され得る。有利には、圧迫衣類は、1つ以上の充填圧力センサと各々の活性部の1つ以上の界面圧力センサとの間に自動サーボ制御手段を備える。特に、各々の活性部の1つ以上の充填圧力センサは、圧迫セッションの持続時間全体を通して患者の身体部位それぞれに一定の制御された圧力を加えるために自動サーボ制御システムが充填圧力センサと各々の活性部の界面圧力センサとの間に設置され得るように、制御ユニットに接続され得る。LBPPの場合、その原理は、下半身における血液の動員を伴い、これは、損失を補うために一定であり、制御され、自動調節されなければならず、一方で、悪影響を防ぐために高すぎてはならない。このような血液の一定かつ制御された動員は、セッションの持続時間全体を通して、患者の各々の身体部位に対して、一定であり、制御され、自動調整された圧力を加える必要がある。
【0023】
本発明の範囲内で、圧迫衣類の各々の活性部の1つ以上の充填可能なブラダに流体を注入するための注入装置は、ポンプ、または病院で利用可能であるような圧縮空気供給システムであり得る。1つの有利な実施形態では、圧迫衣類の各々の活性部の1つ以上の充填可能なブラダに流体を注入するための注入装置は、患者の移送中の圧迫衣類の使用を可能にする、携帯型装置である。一実施形態では、圧迫衣類の各々の活性部の1つ以上の充填可能なブラダに流体を注入するための注入装置は、衣類に組み込まれた携帯型ポンプである。
【0024】
1つの有利な実施形態によれば、各々の界面圧力センサは、特に可撓性チューブによって、測定モジュールに密閉式に接続された空気圧センサである。このような空気圧センサの使用は、圧迫衣類の活性部に直接埋め込まなければならない電子機器を制限するという利点を有する。特に、空気圧センサは、国際公開第2009072011(A1)号に開示されているようなセンサであり得、該センサは、内容積内に既知の陽圧に対応する所定量の注入空気を受容することができる、例えばシリコーン製の可撓性ポリマーケーシングを有するクッションを備える。測定モジュールは、互いに、かつ空気圧センサと流体連通している圧力計および空気注入ピストンを備える。各々のセンサの測定モジュールは、界面圧力測定値を制御ユニットの受信モジュールに送信するように構成される。このデータ送信は、任意の手段によって、特に有線接続手段によって、またはBluetooth(登録商標)またはWiFiのような無線接続手段によって実行され得る。有利には、各々の圧力センサの測定モジュールは、制御ユニットのハウジング内に組み込まれる。
【0025】
代替的に、各々の界面圧力センサは、電子センサ(特に、活性部と患者の対応する身体部位との間の界面における表面に加えられる力を測定するセンサ)であり得、その力から界面圧力が計算される。各々の電子センサは、界面圧力値を制御ユニットの受信モジュールに送信するように構成される。このデータ送信は、好ましくは、BluetoothまたはWiFiのような無線接続手段によって実行される。
【0026】
本発明の一態様によれば、各々の活性部は、可能な限り最も望ましく患者の対応する身体部位の形状を成し、患者の対応する身体部位を可能な限り最も効果的かつ最も均一に圧迫することができるように、患者の対応する身体部位の周囲の活性部を調節するための調整手段を備える。
【0027】
1つの特徴によれば、各々の活性部に関して、調節手段は、活性部の当該または各々の充填可能なブラダを充填するときに患者の対応する身体部位に対して活性部を当てることが可能である、活性部のパターニング要素を備える。
【0028】
各々の活性部のパターニング要素は、活性部が患者の対応する身体部位に押圧され、制御された予測可能な表面圧力をその部位に加えるように、活性部を充填状態でパターニングすることができる。その結果、このことは、各々の活性部を充填するときに「ブイ」効果を防止し、そのため、活性部は、制御された均一な圧力を患者の身体部位に加えなくても膨張することになる。
【0029】
LBPPの特定の例では、本発明の圧迫衣類の特定のパターニングにより、必要な圧力値を確実に、かつ制御された方法で加えること、すなわち、有利には10~20mmHgの範囲内、好ましくは約10mmHgの値の圧力を腹部に加え、有利には20~40mmHgの範囲内、好ましくは約20mmHgの値の圧力をそれぞれの下肢に加えることが可能になる。
【0030】
圧迫衣類の各々の活性部が単一の充填可能なブラダを備える場合、各々の活性部のパターニング要素の存在は、活性部の充填可能なブラダの充填時に患者の対応する身体部位の形状を成し、特に大きな充填容積を有する下部活性部に対して、均一に圧力を加えるために、さらに重要である。
【0031】
1つの特徴によれば、圧迫衣類の各々の活性部に関して、パターニング要素は、活性部の各々の充填可能なブラダの流体受容容積を画定する層の少なくとも1つの彫刻的ライン、特にシームを備え、これには、患者の対応する身体部位の形状を成すために充填状態での活性部の成形が必要である。全体として、パターニング要素は、活性部の当該または各々の充填可能なブラダを充填するときに、活性部を患者の対応する身体部位に当てる、または押圧することができる、活性部の隆起パターンを含む。隆起パターンは、活性部の1つ以上のブラダを形成する織布ベースおよび/またはプラスチック材料ベースの可撓性層の彫刻的シームまたは熱融着であり得る。
【0032】
調節手段は、可能な限り最も望ましく患者の対応する身体部位の形状を成し、可能な限り最も効果的かつ最も均一に圧力を加えることができるように、患者の対応する身体部位の周囲の圧迫衣類の各々の活性部を調節するように設計される。調節構成では、活性部は、一般に、筒形状を有する。
【0033】
1つの特徴によれば、調節手段は、活性部の閉鎖要素を備え、好ましくは、筒状活性部の長さ全体にわたって適合する形で、患者の対応する身体部位の周囲の活性部の周長の調節を可能にする。1つの特定の実施形態によれば、閉鎖要素は、フックが設けられた第1のストリップとループが設けられた第2のストリップとを備える少なくとも1対の把持ストリップを備え、これらは活性部の長さ全体にわたって延在する。代替的に、またはそれと共に、閉鎖要素は、活性部の長さ全体にわたって分布している複数の締め付けストラップ・クリップシステムを備え得る。
【0034】
1つの特徴によれば、圧迫衣類の下部活性部は、患者の身体への衣類の装着を容易にするために、腹部活性部に接続される。本発明の1つの特徴によれば、各々の下部活性部は、腹部活性部の反対側の端部に、下部活性部の長さを患者の対応する下肢の長さに適合させるために、互いの上に折り返され得る複数のセグメントを備える。同様に、腹部活性部は、腹部活性部の長さを患者の腹部の長さに適合させるために、互いの上に折り返され得る複数のセグメントを一端に備え得る。好ましくは、各々の活性部に関して、セグメントが互いの上に折り返された状態で、折り返されたセグメントに対応する充填可能なブラダの部分には、流体は充填されない。各々の患者の形態に対する圧迫衣類の適合性をさらに高めるために、折り畳むまたは巻き上げることができるセグメントの存在は、異なる衣類サイズ、例えば、S、M、L、XLのサイズの提供と組み合わされ得る。
【0035】
本発明の一態様によれば、圧迫衣類の下部活性部の少なくとも一方は、下部活性部が患者の下肢の周囲の所定位置にあるときに、患者の大腿部を取り囲み、そこに締め付け力を加えることができる内側締め付け要素を備える。したがって、内側締め付け要素は、止血帯としての機能を果たし、患者の大腿部における静脈閉塞を引き起こすことができる。好ましくは、内側締め付け要素は、標準圧力(50mmHg)まで膨張するように意図されたカフである。動員可能な血液量(または「静脈床」)を評価するために、内側締め付け要素を使用した患者の大腿部における静脈閉塞の適用が、この閉塞および閉塞の解放により生じた下肢の容積変化の測定値と有利に組み合わされる。
【0036】
動員可能な血液量の推定値が0または所定値未満である場合、静脈網への液体(特に500mLの生理食塩水)の注入は、本発明の圧迫衣類を使用する圧迫セッションの前に行われ得る。
【0037】
下肢の容積変化を測定するのに、様々なプレチスモグラフィ技術が使用され、特に、例えば患者の下肢の周囲に空気で満たされたスリーブを形成する圧迫衣類の下部活性部における空気圧の変化を測定することによる、エアプレチスモグラフィが使用され得る。より具体的には、実施原理は以下の通りである。患者の大腿部を取り囲む内側締め付け要素が患者の大腿部における静脈閉塞を引き起こすように膨張し、ひいては、患者の下肢が静脈還流の閉塞により膨れ上がり、その後、大腿部止血帯が解放され、患者の下肢は、静脈還流が正常な流れを再開するので、その初期容積を回復する。下肢の容積変化は、リンパ液および静脈血を含む動員可能な液体容積の推定値になる。有利には、本発明の圧迫衣類は、下部活性部の内側締め付け要素によって静脈閉塞が得られることを可能にするだけでなく、患者の下肢の周囲にスリーブを形成する圧迫衣類の下部活性部を直接使用することによって、および静脈閉塞の適用の前後のこのスリーブ内の空気の容積を測定することによって、エアプレチスモグラフィにより安静時の下肢の容積と静脈閉塞の適用数分後の下肢の容積との差を測定することも可能にする。
【0038】
1つの有利な特徴によれば、圧迫衣類は、衣類の使用ごとに交換することができる保護布を含み、保護布は、衣類の1つまたは各々の活性部の内壁、すなわち、活性部が患者の対応する身体部位の周囲で調節される構成において内側を向く活性部の壁に、取り外し可能に固定される。保護布は、「第2の皮膚」としての機能を果たし、活性部との接触による患者の皮膚の刺激を防止する。保護布はさらに、活性部の汚れを防止する。好ましくは、保護布は、緊張状態で各々の活性部の内壁に配置され、把持ストリップまたは他の手段のような任意の適切な手段によって緊張状態で保持される。より具体的には、圧迫セッション(特にLBPP)の範囲において、保護布のしわを回避することが重要である。保護布としての使用に適した織布の例は、40~170g/m2の範囲にある単位面積当たり重量を有するマイクロファイバー織布である。
【0039】
本発明はさらに、上述のような圧迫衣類を患者に装着する方法であって、
-展開構成の圧迫衣類の各々の活性部が患者の対応する身体部位に面して位置決めされるステップと、
-展開構成の圧迫衣類の各々の活性部が患者の対応する身体部位の周囲で調節される調節構成へと移動されるステップと、
-各々の活性部に対して、活性部の各々の界面圧力センサから、前記活性部に対する所定の界面圧力値に実質的に等しい測定値が得られるまで、圧迫衣類の各々の充填可能なブラダに流体が充填されるステップと
を含む、装着方法に関する。
【0040】
圧迫衣類の装着が仰臥位のみで行われ得る患者の場合、上述のような圧迫衣類を装着する方法は、
-活性部の各々が展開構成にある状態で圧迫衣類がベッド上に置かれるステップと、
-患者の各々の身体部位を衣類の対応する活性部上に位置決めした状態で、患者が圧迫衣類の上で仰向けにされるステップと、
-展開構成の圧迫衣類の各々の活性部が患者の対応する身体部位の周囲で調節される調節構成へと移動されるステップと、
-各々の活性部に対して、活性部の各々の界面圧力センサから、前記活性部に対する所定の界面圧力値に実質的に等しい測定値が得られるまで、圧迫衣類の各々の充填可能なブラダに流体が充填されるステップと
を含む。
【0041】
本発明はさらに、患者の腹部を取り囲むように意図された1つの腹部活性部および患者の下肢のうちの一方をそれぞれ取り囲むように意図された2つの下部活性部の3つの活性部を備え、活性部の各々は、腹部および下肢のうち患者の対応する身体部位全体に活性部によって均一な陽圧が加えられるように流体を充填可能な少なくとも1つのブラダを備える圧迫衣類であり、各々の活性部に対して、活性部と患者の対応する身体部位との間に位置決めされた状態で活性部と患者の対応する身体部位との間の界面の圧力を測定するように構成された少なくとも1つの界面圧力センサを備える圧迫衣類を使用して、所定の持続時間の間、患者の腹部に加えられる第1の所定の圧力値および患者の下肢それぞれに加えられる第2の所定の圧力値を含む、所定のプロトコルに従って、患者の身体を圧迫する方法であって、
-展開構成の圧迫衣類の各々の活性部が患者の対応する身体部位に面して位置決めされるステップと、
-展開構成の圧迫衣類の各々の活性部が患者の対応する身体部位の周囲で調節される調節構成へと移動されるステップと、
-各々の活性部に対して、活性部の各々の界面圧力センサから、前記活性部に対応する患者の身体部位に加えられる所定の圧力値に実質的に等しい測定値が得られるまで、圧迫衣類の各々の充填可能なブラダに流体が充填されるステップと、
-所定の持続時間の間、各々の活性部に対して、各々の活性部について受信された界面圧力測定値が、活性部の1つ以上の充填可能なブラダに流体を注入するための少なくとも1つの注入装置を駆動するための基準として使用され、そのことにより、前記活性部に対応する患者の身体部位に加えられる所定の圧力値に実質的に等しい、活性部の各々の界面圧力センサからの測定値を維持するステップと
を含む、圧迫方法に関する。
【0042】
圧迫方法の一実施形態によれば、当該または各々の流体注入装置は、制御ユニットを使用して自動的に駆動される。
【0043】
圧迫方法の一実施形態によれば、所定のプロトコルは、LBPP治療であり、この場合、
-患者の腹部に加えられる第1の所定の圧力値は、10~20mmHgの範囲にあり、好ましくは約10mmHgであり、
-患者の下肢それぞれに加えられる第2の所定の圧力値は、20~40mmHgの範囲にあり、好ましくは約20mmHgであり、
-腹部活性部に対する第1の所定の圧力値は、各々の下部活性部に対する第2の所定の圧力値よりも厳密に小さく、
-所定の持続時間は、約90分である。
【0044】
一実施形態によれば、圧迫方法は、所定の圧力値を患者の身体部位に加えるために圧迫衣類の各々の充填可能なブラダに流体を充填するステップの前に、患者の下肢の一方に静脈閉塞を適用することと、前記閉塞およびその閉塞の解放による下肢の容積変化をプレチスモグラフィによって測定することとを含む、動員可能な血液量を測定するステップを含む。
【0045】
1つの特徴によれば、静脈閉塞は、圧迫衣類の下部活性部の一方の内側締め付け要素によって患者の下肢に適用され、前記内側締め付け要素は、下部活性部が患者の対応する下肢の周囲の所定位置にあるときに、患者の大腿部を取り囲み、そこに締め付け力を加えることができる。
【0046】
1つの特徴によれば、下肢の閉塞および閉塞の解放による下肢の容積変化の測定は、患者の下肢の周囲に空気で満たされたスリーブを形成する圧迫衣類の下部活性部における空気圧の変化を測定することによって、エアプレチスモグラフィにより行われる。
【0047】
1つの特徴によれば、測定された動員可能な血液量が所定の閾値未満である場合、動員可能な血液量を増加させるために、圧迫衣類によって所定の圧力値を患者の身体部位に加える前に、患者の静脈網への生理食塩水の注入が行われる。
【0048】
本発明の特徴および利点は、単なる例として、添付図面を参照して示されている、本発明の圧迫衣類および圧迫方法の実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る圧迫衣類の正面図である。
【
図3】活性部が展開構成にある、
図1の圧迫衣類の正面図である。
【
図4】
図3の平面IV-IVに沿った拡大断面図である。
【
図5】患者に装着され、空気注入装置に接続された
図1の圧迫衣類の正面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る圧迫衣類の
図1と同様の図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態に係る圧迫衣類の
図5と同様の図であり、より見やすくするために空気注入装置が省略された図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1~
図5に示されているように、第1の実施形態の圧迫衣類1は、3つの活性部、すなわち、患者の腹部Aを取り囲むように意図された1つの腹部活性部3と、患者の一方の脚または下肢L
1、L
2を取り囲むようにそれぞれ意図された2つの下部活性部4、5とを備える。圧迫衣類1の活性部3、4、5の各々は、気密材料で作られた可撓性の織布部分である。特に、この例では、各々の活性部3、4、5の気密材料は、一方の面がポリウレタンコーティング層でコーティングされたナイロン編織布層を含む。患者の身体への圧迫衣類1の装着を容易にするために、2つの下部活性部4、5は、接合要素9(特に弾性織布ストリップである)によって腹部活性部3に接続される。各々の活性部3、4、5は、患者の対応する身体部位の周囲への装着を可能にする
図3に示された実質的に平面の展開構成と、患者の身体の対応する部位を取り囲むことができ、身体の対応する部位の周囲で調節可能である
図1、
図2、または
図5に示された筒状構成との間で変形可能である。
【0051】
図4の断面図における活性部5について示されているように(活性部3、4は活性部5の断面と同様の断面を有することが理解される)、圧迫衣類1の各々の活性部3、4、5は、患者の身体側を向くように意図された内側織布部分33、43、53と、外側を向くように意図された外側織布部分34、44、54との重ね合わせを備え、これらの部分はいずれも、上述したように気密材料から作られる。各々の活性部3、4、5について、気密材料で作られた内側織布部分33、43、53および外側織布部分34、44、54は、同様に気密である周縁シーム32、42、52によって接続される。したがって、圧迫衣類1の各々の活性部3、4、5に対して、気密ブラダ31、41、51が、内側織布部分33、43、53と外側織布部分34、44、54との間に画定され、そのことにより、ブラダ31、41、51の内容積Vに空気を充填することが可能になる。
【0052】
この例では、各々の活性部3、4、5は、単一の充填可能なブラダ31、41、51を備え、このことは、圧迫衣類1の設計を単純化するという利点を有する。しかしながら、代替的に、各々の活性部3、4、5は、複数の充填可能なブラダを備え得る。圧迫衣類1の各々の充填可能なブラダ31、41、51は、空気が充填されるように意図され、そのことにより、患者の対応する身体部位上の活性部3、4、5の調節構成において、内側織布部分33、43、53が患者の対応する身体部位に陽圧を加える。
【0053】
圧迫衣類1の各々の充填可能なブラダ31、41、51は、その充填を最適化するために、ブラダの表面全体にわたって分布している複数の充填エンドピース36、46、56を備える。
図5に概略的に示されているように、活性部3、4、5の充填エンドピース36、46、56は、空気注入装置63、64、65に接続されるのに適している。本発明の範囲内で、異なるタイプの空気注入装置を使用することができる。特に、各々の空気注入装置63、64、65は、衣類1に組み込まれた携帯型ポンプ、または病院内の圧縮空気送り込み装置であり得る。各々の充填可能なブラダ31、41、51は、ブラダに空気が充填される際の圧力を測定するための少なくとも1つの圧力計60を備える。好ましくは、各々の充填可能なブラダ31、41、51の異なる領域内の充填圧力を測定するために、ブラダの充填エンドピース36、46、56と対応する空気注入装置63、64、65との間の各々の接続パイプ内に圧力計60が設置される。
【0054】
腹部活性部3によって患者の腹部Aに、および下部活性部4、5によって患者の下肢L1、L2に効果的に加えられる圧力を制御するために、衣類1は、各々の活性部3、4、5の内側織布部分33、43、53に取り付けられた界面圧力センサ2を備える。各々のセンサ2は、センサ2が取り付けられた活性部3、4、5と患者の対応する身体部位との間の界面における圧力を測定するように意図される。各々のセンサ2は、例えば、縫い付け用に、対応する内側織布部分33、43、53内に設けられた区画に縫い付けられ得る。代替的に、各々のセンサ2は、任意の他の適切な手段によって、特に縫製または接着などによって、対応する内側織布部分33、43、53に堅固に固定され得る。
【0055】
1つの例示的な実施形態では、各々の界面圧力センサ2は、国際公開第2009072011(A1)号に開示されているような空気圧センサであり、既知の陽圧に対応する所定量の注入空気を内容積内に受容することができる可撓性ポリマークッションであって、可撓性チューブ(図示せず)によって測定モジュール72に密閉式に接続される可撓性ポリマークッションを備える空気圧センサであり得る。各々のセンサ2の測定モジュール72は、特に、互いに流体連通し、かつ空気圧センサ2と流体連通する圧力計および空気注入ピストンを備える。このような空気圧センサを使用することにより、圧迫衣類1の活性部3、4、5上の電子部品の必要性を回避することができ、電子機器は、織布部分の外側の測定モジュール72内で補われる。これらの空気圧センサは、特に10~40mmHgの範囲内にある、LBPPの場合に求められる比較的低い界面圧力レベルに適合するという利点も有する。言うまでもなく、代替的に、圧迫衣類1は、電子界面圧力センサを備え得るが、ただし、これらの電子センサの感度は、求められる界面圧力レベルに適合するものとする。
【0056】
各々の活性部3、4、5について、界面圧力センサ2の数および配置は、患者の身体部位に効果的に加えられる圧力を表す圧力測定値を提供するのに適している。非限定的な例として、この実施形態では、圧迫衣類1の腹部活性部3は、3つの界面圧力センサ2、すなわち、患者の腹部の中央の前に位置決めされるように意図された前方中央センサ2と、腹部の両側に位置決めされるように意図された2つの側方センサ2とを備える。圧迫衣類1の各々の下部活性部4、5は、5つの界面圧力センサ2、すなわち、患者のふくらはぎの後ろに位置決めされるように意図された1つの後方下部センサ2と、ふくらはぎの内側面に位置決めされるように意図された1つの内側下部センサ2と、患者の大腿部の後面に位置決めされるように意図された1つの後方上部センサ2と、大腿部の内側面に位置決めされるように意図された1つの内側上部センサ2と、大腿部の前内側面に位置決めされるように意図された1つの前内側上部センサ2とを備える。
【0057】
圧迫衣類1は、
図5に示されている制御ユニット7を備え、制御ユニット7は、圧迫衣類1の織布部分の表面に、または衣類1を使用して圧迫セッションが実行される場所であるベッドのような家具の要素に取り付け可能なハウジングの形態を取り得る。空気圧式の界面圧力センサ2の場合、圧迫衣類1の各々の空気圧界面圧力センサに関連付けられた測定モジュール72は、有利には、制御ユニット7のハウジングに組み込まれ、制御ユニット7は、各々の空気圧界面圧力センサの測定モジュール72から界面圧力測定値を受信するように構成された受信モジュール70をさらに備える。したがって、各々の測定モジュール72と受信モジュール70との間の接続は、有線接続または無線接続であり得る。電子式の界面圧力センサ2の場合、各々の電子界面圧力センサは、特に無線接続手段によって、界面圧力測定値を制御ユニット7の受信モジュール70に直接送信するように構成される。さらに、各々の充填可能なブラダ31、41、51の1つ以上の充填圧力計60が制御ユニット7の受信モジュール70に接続される。したがって、充填圧力センサ60と各々の活性部3、4、5の界面圧力センサ2との間に自動サーボシステムが実現され得る。
【0058】
図5に示されているように、制御ユニット7の受信モジュール70はさらに、
-患者の腕に位置決めされたカフを備える張力計67を使用して、特に継続的に得られた、治療セッション中の患者の血圧を表す測定値であって、特に、収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、平均動脈圧を含む患者の血圧を表す測定値、
-コンピューティングユニットに関連付けられた、患者の頭上に位置決めされたプローブ、特に2MHzドップラプローブを備える装置68を使用して、経頭蓋ドップラ法によって、特に継続的に得られた、治療セッション中の患者の脳内血流を表す測定値であって、特に、収縮期最高血流速度(PSV)、拡張末期血流速度(EDV)、抵抗係数、曲線下面積を含む脳内血流を表す測定値
を受信するように構成される。
【0059】
制御ユニット7は、駆動モジュール71をさらに備え、駆動モジュール71は、
-各々の活性部3、4、5に対して所定の界面圧力設定値を維持するために、前記活性部について受信モジュール70によって受信された界面圧力測定値、
-患者の血圧値を所定の閾値未満に維持するために、特に、収縮期血圧(SBP)を厳密に220未満に維持し、拡張期血圧(DBP)を厳密に120未満に維持するために、受信モジュール70によって受信された患者の血圧を表す前記測定値、
-患者の脳内血流を表す測定値の変化を圧迫衣類によって患者の身体部位に加えられた圧力勾配と相関させるために、および/または患者の脳内血流を表す測定値を治療目標、例えば、治療セッションの開始時と比較した脳内血流の30%の平均増加率を前記治療目標が達成されたときにアラートを発生させる可能性に関連付けることにより、医師が得られた機能結果に応じてセッションを継続させるか否かを決定するために、受信モジュール70によって受信された患者の脳内血流を表す測定値
に応じて1つ以上の空気注入装置63、64、65を駆動するように構成される。
【0060】
制御ユニット7は、界面圧力の自動制御と、センサ2からの界面圧力測定値および各々の活性部に対する所定の界面圧力設定値に応じて、各々の活性部3、4、5のブラダ31、41、51内の空気注入のサーボ制御とを行う。したがって、人手を介さずに、圧迫衣類1を使用して圧迫セッションの持続時間全体を通して患者の身体部位それぞれに一定の制御された圧力を自動的に加えることが可能である。
【0061】
特に、一例によれば、圧迫衣類1を使用してLBPPを適用するためには、腹部活性部3に対する所定の界面圧力設定値は10mmHgであり、各々の下部活性部4、5に対する所定の界面圧力設定値は20mmHgであり、このことにより、衣類1は、約90分の持続時間の間、各々の活性部3、4、5に対する所定の界面圧力設定値を維持するように有利に構成される。
【0062】
より望ましく患者の各々の身体部位の形状を成し、身体の部位それぞれに可能な限り最も効果的かつ最も均一に圧力を加えるために、圧迫衣類1の各々の活性部3、4、5は、患者の対応する身体部位の周囲で活性部3、4、5を調節するための調整手段を備える。
図1~
図5に示されている例では、これらの調節手段は、各々の活性部3、4、5上に一対の把持ストリップを備え、活性部を患者の対応する身体部位A、L
1、L
2の周囲における調節構成で閉じることが可能になる。
【0063】
より具体的には、図示されている例では、各々の活性部3、4、5は、筒状構成における軸方向のその全長にわたって、外側織布部分34、44、54の側で活性部の第1の長手方向端部に位置するフック付きの第1の把持ストリップ37、47、57と、内側織布部分33、43、53の側で活性部の第2の長手方向端部に位置するループ付きの第2の把持ストリップ38、48、58とを備える。把持ストリップ37、38、47、48、57、58は、活性部3、4、5の周長を活性部の全長にわたって適合する形で患者の対応する身体部位A、L1、L2の周囲で調節できるようにする。
【0064】
2つの下部活性部4、5の各々は、腹部活性部3の反対側に、下部活性部4、5の長さを患者の下肢L
1、L
2の長さに適合させ、ひいては、可能な限り最も標的化した方法で下肢L
1、L
2に陽圧を加えるように意図された、巻き上げ可能部分45、55をさらに備える。
図1および
図5に示されているように、各々の巻き上げ部分45、55は、互いの上に折り返されるように構成された複数のセグメントSによって形成される。好ましくは、セグメントSが互いの上に折り返された状態では、折り返されたセグメントSに対応する充填可能なブラダ41、51の部分には、空気を充填することができない。
【0065】
図3に示されているように、患者の右脚または右下肢L
1を覆うように意図された圧迫衣類1の下部活性部4は、下部活性部4が患者の右下肢L
1の周囲の所定位置にあるときに、患者の右大腿部を取り囲んで、右大腿部に締め付け力を加えることができる内側カフ40を備える。締め付けカフ40は、特に、カフを患者の大腿部の周囲の所定位置に保持することができるように把持ストリップを備え、約50mmHgの標準圧力で空気が充填されるように意図された膨張可能なカフであり得る。締め付けカフ40は、圧迫衣類1を使用して、圧迫セッション(特にLBPP)を実行する前に、患者の動員可能な血液量(または「静脈床」)を評価することができるように意図される。
【0066】
動員可能な血液量を評価するための手順は、有利には、締め付けカフ40を使用して患者の右大腿部において静脈閉塞を適用することと、この閉塞および閉塞の解放によって生じた右下肢の容積の変化を、特に、患者の右下肢L1の周囲に空気で満たされたスリーブを形成する下部活性部4内の空気圧の変化を測定することによって、エアプレチスモグラフィにより測定することとを含み得る。
【0067】
LBPPの場合、圧迫衣類1を使用するLBPP差圧印加セッションの前の動員可能な血液量の評価は、この量が患者に対するLBPP治療の有効性を決定するので、重要である。特に、患者の下半身における動員可能な血液量が少ない場合、LBPPの適用の結果生じた患者の上半身への血液の移動が脳の効果的な血行再建を実現することができないというリスクがある。このような場合、動員可能な血液量を増加させるために、圧迫衣類1を使用してLBPPを適用する前に、患者の静脈網に液体、特に生理食塩水を「充填する」ことが有利である。上記で規定されているように評価された患者の動員可能な血液量が0または所定値未満である場合、患者の静脈網への500mLの生理食塩水の注入は、有利には、圧迫衣類1を使用するLBPPセッションの前に行われ得ると考えられる。
【0068】
好ましくは、
図5に示されているように、患者に装着されるときに、圧迫衣類1は、患者の身体と活性部3、4、5の各々との間に使い捨て保護布8を備える。例えば40~170g/m
2の範囲にある単位面積当たり重量を有するマイクロファイバー織布である保護布8は、「第2の皮膚」としての機能を果たし、活性部3、4、5との接触による患者の皮膚の刺激を防止する。有利には、保護布8は、各々の活性部3、4、5の内側織布部分33、43、53上に取り外し可能に当てられ、その一方で、患者の皮膚を刺激する可能性がある折り目ができないように、任意の適切な手段によって、例えば把持ストリップを使用して、緊張状態で保持される。保護布はさらに、活性部3、4、5の汚れを防止し、そのことにより、圧迫衣類1は、セッションの間に使用される保護布8がセッションの終わりに取り外され、その後のセッションのために新しい保護布8と交換される限りにおいて、衛生問題を生じさせることなく異なる圧迫セッションで再利用され得る。
【0069】
上記のような圧迫衣類1を使用して、患者の腹部Aおよび下肢L1、L2に「下半身陽圧負荷法」(LBPP)原理に従って圧迫する方法の一例は、以下のようなステップを含む。
【0070】
最初に、圧迫衣類1が、好ましくは圧迫衣類の非膨張状態、すなわち、衣類の充填可能なブラダ31、41、51のそれぞれに空気が充填されていない、または空気がほとんど充填されていない状態で、患者に装着される。
【0071】
そのためには、圧迫衣類1の各々の活性部3、4、5は、
図3に示されているように、その展開構成で位置決めされ、保護布8は、各々の活性部3、4、5の内側織布部分33、43、53上に当てられる。次に、圧迫衣類1の腹部活性部3が患者の腹部Aの位置で装着され、2つの下部活性部4、5がそれぞれ患者の一方の下肢L
1、L
2の位置で装着される。その後、各々の活性部3、4、5は、閉じられて、展開構成から患者の対応する身体部位の周囲の筒状構成へと移動し、把持ストリップ37、38、47、48、57、58を使用して患者の対応する身体部位の周囲で調節される。
【0072】
寝たきりの患者または四肢麻痺を患っている患者の場合、圧迫衣類1の設計により、圧迫衣類1を仰臥位の患者に装着することが可能になる。このような場合、圧迫衣類1は、その各々の活性部3、4、5が展開構成にあり、保護布8が取り付けられた状態でベッド上に位置決めされ、その後、患者は、患者の腹部Aを腹部活性部3の位置に位置決めし、患者の各々の下肢L1、L2を圧迫衣類の対応する下部活性部4、5の位置に位置決めした状態で、圧迫衣類1の上で仰向けにされる。次に、各々の活性部3、4、5は、その展開構成から、横たわっている患者の対応する身体部位の周囲の筒状構成へと移動することによって閉じられ、調節のために圧迫衣類の前部に設けられた把持ストリップ37、38、47、48、57、58を使用して、患者の対応する身体部位の周囲で調節される。
【0073】
その後、動員可能な血液量の測定が圧迫衣類1を装着した患者に対して行われ得る。そのためには、締め付けカフ40を使用して患者の右大腿部の付け根において静脈閉塞が適用され、この閉塞および閉塞の解放によって生じた右下肢L1の容積の変化がプレチスモグラフィによって測定される。これは、例えば、患者の右下肢L1の周囲において空気で満たされたスリーブを形成する下部活性部4内の空気圧の変動を測定するエアプレチスモグラフィであり得る。このように評価された動員可能な血液量の値に応じて、循環血液量が減少した静脈床の場合に動員可能な血液量を増加させ、LBPPの効果を高めるために、患者の静脈網への生理食塩水の注入が行われ得る。
【0074】
次に、圧迫衣類1の各々のブラダ31、41、51は、各々の活性部3、4、5に対して、活性部の各々の界面圧力センサ2によって前記活性部の所定の界面圧力設定値に実質的に等しい測定値が得られるまで、充填エンドピース36、46、56に接続された空気注入装置63、64、65を使用して充填される。特に、圧迫衣類1を使用するLBPPの適用の1つの有利な例によれば、腹部活性部3に対する所定の界面圧力設定値は10mmHgであり、各々の下部活性部4、5に対する所定の界面圧力設定値は20mmHgである。圧迫衣類1の制御ユニット7は、自動的に衣類のブラダ31、41、51を充填するように構成され得る。
【0075】
その後、決定された持続時間の間、各々のセンサ2が取り付けられた活性部3、4、5に対する所定の界面圧力設定値に等しい、前記センサ2によって測定された界面圧力値を維持するために、センサ2からの界面圧力測定値に応じて空気注入装置63、64、65を選択的に作動させるように構成された圧迫衣類1の制御ユニット7を利用することにより、決定された持続時間の間、例えば90分間、患者の腹部Aに10mmHg、患者の下肢L1、L2それぞれに20mmHgの一定かつ均一な圧力の印加が、圧迫衣類1によって自動的に行われる。
【0076】
図6に示されている第2の実施形態では、第1の実施形態の要素と同様の要素は、同じ参照符号で示されている。この第2の実施形態の圧迫衣類1は、患者の身体上の活性部3、4、5の調節手段が、把持ストリップ37、38、47、48、57、58の代わりに、締め付けストラップ37′、47′、57′および対応するクリップ38′、48′、58′を使用する複数の閉鎖システムによって形成されるという点で、第1の実施形態の圧迫衣類1とは異なる。
図6に示されているように、各々の活性部3、4、5に対して、締め付けストラップ37′、47′、57′およびクリップ38′、48′、58′を使用する閉鎖システムは、筒状構成において軸方向に活性部の全長にわたって分布しており、そのことにより、活性部の全長にわたって適合する形で患者の対応する身体部位A、L
1、L
2の周囲の活性部3、4、5の周長の調節を可能にする。
【0077】
図7および
図8に示されている第3の実施形態では、第1の実施形態の要素と同様の要素は、同じ参照符号で示されている。この第3の実施形態の圧迫衣類1は、患者の身体上の活性部3、4、5の調節手段が、長手方向に閉じる把持ストリップ37、38、47、48、57、58に限定されないという点で、第1の実施形態の圧迫衣類1とは異なる。この第3の実施形態では、調節手段は、各々の活性部3、4、5の織布の彫刻的シーム39、49、59をさらに備える。各々の活性部3、4、5のシーム39、49、59は、活性部の充填可能なブラダ31、41、51に空気を充填する間に、患者の対応する身体部位A、L
1、L
2に当てる活性部3、4、5の形状を付与するように構成される。各々の活性部3、4、5のシーム39、49、59により、活性部がより望ましく患者の対応する身体部位の形状を成すことが可能になる。さらに、
図8に示されているように、この第3の実施形態の圧迫衣類1は、患者の臀部を包囲する。患者の臀部を覆う部分は、この領域から血液を排出するために患者の臀部に一定の制御された圧力を加えることも有用であり得る限りにおいて、空気を充填することができる充填可能部分であり得、特に充填可能なブラダに対応し得る。代替的に、患者の臀部を覆う部分は、充填不可能であり得る。
【0078】
前述の例に示されているように、活性部の各々の内壁上に界面圧力センサを備える本発明の圧迫衣類は、均一かつ一定の圧力を患者の腹部および下肢に自動的に加えることを可能にする。特に、本発明の圧迫衣類は、患者の腹部および下肢に加えられる差圧を含む「下半身陽圧負荷法」(LBPP)原理に従う圧迫によく適している。圧迫衣類の活性部の各々を形成する織布の気密性および可撓性により、各々の活性部は、可撓性構造を保持しながらエアチャンバとしての機能を果たすことができ、このことは、高い装着快適性をもたらし、寝たきりまたは麻痺状態にある患者を含む患者への装着を容易にする。異なるサイズ(例えば、S、M、L、XL)の本発明の圧迫衣類を提供することができること、および身体の各々の部位上の圧迫衣類を調節するための調節手段が存在することにより、さらに衣類を各々の患者の形態に適合させることが可能になり、このことは、特にLBPP原理に従って、圧迫による治療に対する衣類の有効性に寄与する。
【0079】
本発明は、説明され図示されている例に限定されない。特に、前述の例では、圧迫衣類の各々の活性部3、4、5は、単一の充填可能なブラダ31、41、51を備える。代替的に、本発明の衣類の活性部はそれぞれ、任意の数の充填可能なブラダを備え得る。したがって、好ましくは、各々の活性部の各々の充填可能なブラダは、少なくとも1つの界面圧力センサを備える。さらに、本発明の圧迫衣類の各々の活性部上の界面圧力センサの数および配置は、前述の例で説明したものと異なり得る。使用される界面圧力センサは、その位置に合うように適合された異なるサイズ、異なるタイプの界面圧力センサであり得、特に空気圧センサ、電子センサ、または空気圧センサと電子センサとの組み合わせなどであり得る。最後に、本発明の圧迫衣類は、上記では「下半身陽圧負荷法」(LBPP)原理に対応する圧迫について説明されている。代替的に、圧迫衣類は、患者の腹部および/または下肢への全ての種類の圧力(例えば、経時的に変化する圧力)の自動的な印加のために使用され得、したがって、圧力の自動的な印加は、圧迫衣類の制御ユニットによって自動的に制御され得る。
【0080】
本発明の圧迫衣類を使用した「下半身陽圧負荷法」(LBPP)の適用は、以下の治療を含むが、これらに限定されない。
異なる臨床的状況における脳血管リクルートメントの改善
1-メカニズム(複数を含む)が何であれ、脳灌流の障害による脳虚血の急性期
-虚血性脳卒中
-血管痙攣
2-機能回復を向上させるための脳灌流の持続性障害による脳虚血の亜急性期
-虚血性脳卒中
3-脳灌流の慢性障害による慢性脳虚血
-血管性認知症
4-異なる臨床的状況における眼血管リクルートメントの改善
-頸動脈閉塞の急性期
-前部虚血性視神経症(AION)
-網膜動脈閉塞
-脈絡膜灌流の慢性障害
-加齢性黄斑変性(AMD)
5-低灌流身体領域における、抗凝血薬、線維素溶解薬、フリーラジカルトラップ剤、NOドナーを含む群から選択される脳血管不全用の治療剤の送達を補助するまたは増加させるためのLBPPの使用
6-低灌流身体領域における、抗酸化薬、抗炎症薬、栄養因子、アポトーシス阻害剤およびスタチンを含む群から選択される眼障害用の治療剤の送達を補助するまたは増加させるためのLBPPの使用