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特許7462628コーティング部品の射出成型のための手動の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】コーティング部品の射出成型のための手動の方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/64 20060101AFI20240329BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20240329BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20240329BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240329BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240329BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B29C33/64
B29C45/16
C09D183/04
C08L101/00
C08L83/04
C08L71/00 Y
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021527811
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2019080224
(87)【国際公開番号】W WO2020104185
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】18208045.7
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】ロイター,カリン
(72)【発明者】
【氏名】フェデラー,レア
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンツェン,ジモン
(72)【発明者】
【氏名】ノアチュク,イェンス-ヘンニンク
(72)【発明者】
【氏名】レンツ,イェルク
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】独国特許発明第19738192(DE,C1)
【文献】独国特許出願公開第19650076(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010031376(DE,A1)
【文献】特表2006-502025(JP,A)
【文献】特開2014-058055(JP,A)
【文献】特開昭52-123748(JP,A)
【文献】特開平07-329099(JP,A)
【文献】特開昭63-199719(JP,A)
【文献】特開平01-020801(JP,A)
【文献】特表2011-500905(JP,A)
【文献】特開2005-219465(JP,A)
【文献】国際公開第2016/028568(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00- 33/76
B29C 45/00- 45/84
C09D 1/00-201/10
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング部品の射出成型のための手動の方法であって、以下の工程:
(A)離型剤組成物を、閉鎖可能な成型ツールの少なくとも1個の成型部分の少なくとも1箇所の内部に塗布する工程、
(B)工程(A)で塗布された離型剤組成物をフラッシングする工程、
(C)任意に少なくとも1種の材料M1を挿入し、成型ツールを加熱する工程、
(D)組成物Z1を開いた成型ツールに射出する工程、
(E)成型ツールを手動で閉鎖する工程、
(F)離型剤組成物および方法工程(D)で塗布された組成物Z1を架橋する工程、
(G)任意に少なくとも1種のさらなる組成物Z2を射出し、組成物を架橋する工程、
(H)成型ツールを手動で開く工程、
(I)成型されたコーティング部品を手動で取り出す工程、ならびに
(J)任意に成型されたコーティング部品を後処理する工程
を示された順序で含み、離型剤組成物が、
(a)少なくとも1種の溶媒L、
(b)一般式(I)
-(C=O)-O-(AO)-R (I)
(式中、Rは6~30個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、
はH、PO(OH)ラジカル、または単糖もしくは二糖の任意に部分的にリン酸化されたラジカル、またはアルジトールの任意に部分的にリン酸化されたラジカルであり、
AOはエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドからなる群から選択される1種または複数のアルキレンオキシドラジカルを表し、
rは0または1であり、sは0~30である)
の少なくとも1種の化合物、
(c)任意に少なくとも1種のポリエーテル変性アルキルポリシロキサン、
(d)一般式(II)
-Si(R-[O-Si(R)(R)]-[O-Si(R-O-Si(R-R (II)
(式中、
およびR は互いに独立して、メチル基または(HO-CH-C(CH-CH)-CH-O-(CH-*ラジカルであり、
はメチル基であり、
aは0または1~10であり、
bは3~30である)
の少なくとも1種のポリシロキサン、ならびに
(e)任意に少なくとも1種のバインダーB
を含む、方法。
【請求項2】
離型剤組成物が、DIN EN ISO 2431(2012年3月)に従って測定して10~60秒(DIN4フローカップ)の粘度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一般式(I)において、Rが10~24個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、RがH、PO(OH)ラジカル、または単糖もしくは二糖の任意に部分的にリン酸化されたラジカル、またはアルジトールの任意に部分的にリン酸化されたラジカルであり、AOが、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドからなる群から選択される1種または複数のアルキレンオキシドラジカルを表し、rが0または1であり、sが0または1~25である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
離型剤組成物が、一般式(I)の少なくとも1種の化合物を、離型剤組成物の総質量に対して0.1~10wt%の総量で含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ポリエーテル変性アルキルポリシロキサンが、少なくとも1種の構造単位(R(OR)SiO1/2および少なくとも1種の構造単位(RSiO2/2を含み、Rがエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシド基であり、RがC~C10アルキル基である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
離型剤組成物が、少なくとも1種のポリエーテル変性アルキルポリシロキサンを、離型剤組成物の総質量に対して0wt%または0.1~6wt%の総量で含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
一般式(II)において、ラジカルRが(HO-CH-C(CH-CH)-CH-O-(CH-*ラジカルであり、ラジカルRがメチル基であり、ラジカルRがメチル基であり、aが0であり、bが7~14である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
離型剤組成物が、少なくとも1種の一般式(II)のポリシロキサンを、離型剤組成物の総質量に対して0.1~5wt%の総量で含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
離型剤組成物が、少なくとも1種のバインダーBを、組成物の総質量に対して20~50wt%の総量(固形分含有量)で含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
バインダーBが、(i)ポリ(メタ)アクリレート(ii)ポリウレタン(iii)ポリエステル(iv)ポリエーテル(v)述べられたポリマーのコポリマー、および(vi)これらの混合物からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
離型剤組成物が、方法工程(B)において20秒~120分の期間フラッシングされる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
方法工程(D)で塗布される組成物Z1が、ポリマー発泡体である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
方法工程(F)における架橋が、1~20分の期間行われる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
方法工程(I)においてコーティング部品を取り出した後に、成型ツールを洗浄するさらなる方法工程を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
さらなる方法工程が、方法工程(A)~(I)を20~100回繰り返した後に行われる、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング部品、とりわけプラスチック製コーティングソールの射出成型のための手動の方法であって、まず成型ツールを離型剤組成物でライニングし、この離型剤組成物のフラッシング後、部品を形成するための組成物を射出する方法に関する。これら2種の組成物の架橋後、生産されたコーティング部品を成型ツールから取り出し、任意に後処理に供す。
【背景技術】
【0002】
様々な層の厚さを有する多種多様な異なる部品は、近年ではほとんどが射出成型方法によって生産されている。しかし、特定の材料、特に低密度発泡体は、汚れやすい傾向、UV安定性および欠陥のない加工に関して問題を呈する場合があるため、部品の生産に適さない。しかし、特に履物ソール生産の分野または家具産業の分野では、履物または布張り家具を生産するために、この種類の部品に対する継続的な需要が存在する。そのような部品に向上した保護を与える1つの方法は、コーティングによるものである。コーティングは、一方で部品に対する効果的な接着性を有さなければならないが、他方でコーティング部品が高い機械的応力負荷を伴う分野でも利用可能になるように十分に可撓性かつ弾性でなければならない。
【0003】
現在のところ、部品は一般的に、例えばオーバーモールドプロセスにおいて、またはその後のラッカリングプロセスにより生産後にコーティングされる。しかし、そのようなプロセスは、生産後にさらなる方法工程を必要とするため非効率的である。さらに、例えばベースコートによるさらなるコーティングまたは他の部品への接着結合に先立ち、部品の生産時に使用され、損傷を伴わずに成型ツールから部品の脱型を可能にする外部離型剤を除去する必要があり、そのような除去は、高価かつ不都合な洗浄プロセスを伴う。さらに、使用されるツールはまた、継続的な洗浄に供されなければならない。
【0004】
外部金型離型剤の使用に伴うさらなる欠点として、離型剤と部品の生産に使用される組成物の、および/または離型剤と成型ツールの間の適合性が頻繁に欠如し、接着性の問題が生じることが挙げられる。加えて、外部離型剤が使用される場合、費用および方法の複雑性が増大し、したがって操作時間が延長する。さらに、外部離型剤の使用により、生産される部品の表面に艶が生じることが多く、これは特に履物産業において望ましくない。さらに、特に発泡体を使用して部品を生産する場合、不規則的な表面構造、特に粗い表面構造、また一部の場合では繊維または細孔が露出した表面構造が得られ、外部離型剤の使用、または一般的にサーフェーサーコート、ベースコートおよびクリアコートであるコーティング層によるその後のコーティングの利用のいずれによっても完全に排除されない可能性がある。
【0005】
したがって、コーティング部品を生産するための手動の方法であって、コーティングすることが部品の実際の生産中に行われ、さらに外部離型剤を使用する必要がない方法が有益である。しかし、外部離型剤が存在しないにもかかわらず、コーティング部品を損傷を伴わずに脱型できなければならない。さらに、この方法により生産されるコーティング部品は、不規則的な表面を有するべきではない。さらに、手動の方法を用いて、欠陥を生じることなく複雑な形状の部品が生産できなければならない。加えて、高価かつ不都合な洗浄および/または研削工程を伴わずに、生産されたコーティング部品を市販のベースコートおよびクリアコート材料を使用して再コーティングする、および/または接着剤を使用してそれらを結合させることができなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明が対処する課題は、コーティング部品、とりわけプラスチック製ソールの射出成型のための手動の方法であって、短い操作時間、さらに損傷のない脱型を可能にし、かつ高価かつ不都合な洗浄および/または研削工程を伴わずに、生産されたコーティング部品を市販のベースコートおよびクリアコート材料を使用して再コーティングできる、および/または接着剤を使用して結合できる方法を提供することであった。さらに、生産されたコーティング部品の表面は、不規則性を示すべきではない。その上、生産されたコーティング部品の機械的特性および環境的影響に対する耐性の両方が改善されるべきである。さらに、手動の方法はまた、欠陥を生じることなく複雑な形状の部品の生産を可能にすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
述べられた課題は、コーティング部品、とりわけプラスチック製ソールの射出成型のための新規の手動の方法であって、以下の工程:
(A)離型剤組成物を、閉鎖可能な成型ツールの少なくとも1個の成型部分の少なくとも1箇所の内部に塗布する工程、
(B)工程(A)で塗布された離型剤組成物をフラッシングする工程、
(C)任意に少なくとも1種の材料M1を挿入し、成型ツールを加熱する工程、
(D)組成物Z1を開いた成型ツールに塗布する工程、
(E)成型ツールを手動で閉鎖する工程、
(F)離型剤組成物および方法工程(D)で塗布された組成物Z1を架橋する工程、
(G)任意に少なくとも1種のさらなる組成物Z2を塗布し、前記組成物を架橋する工程、
(H)成型ツールを手動で開く工程、
(I)成型されたコーティング部品を手動で取り出す工程、ならびに
(J)任意に成型されたコーティング部品を後処理する工程
を示された順序で含み、離型剤組成物が、
(a)少なくとも1種の溶媒L、
(b)一般式(I)
-(C=O)-O-(AO)-R (I)
(式中、Rは6~30個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、
はH、PO(OH)ラジカル、または単糖もしくは二糖の任意に部分的にリン酸化されたラジカル、またはアルジトールの任意に部分的にリン酸化されたラジカルであり、
AOはエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドからなる群から選択される1種または複数のアルキレンオキシドラジカルを表し、
rは0または1であり、sは0~30である)
の少なくとも1種の化合物、
(c)任意に少なくとも1種のポリエーテル変性アルキルポリシロキサン、
(d)一般式(II)
-Si(R-[O-Si(R)(R)]-[O-Si(R-O-Si(R-R (II)
(式中、
およびRは各場合において互いに独立して、メチル基または(HO-CH-C(CH-CH)-CH-O-(CH-*ラジカルであり、
はメチル基であり、
aは0または1~10であり、
bは3~30である)
の少なくとも1種のポリシロキサン、ならびに
(e)任意に少なくとも1種のバインダーB
を含む、方法によって解決されることが見出された。
【0008】
上述の方法は、以下で本発明の方法とも称され、したがって本発明の主題である。本発明の方法の好ましい実施形態は、以下の記載および従属請求項から明らかである。
【0009】
短いフラッシングおよび架橋時間のために、本発明の方法で使用される離型剤は、短い操作時間を可能にするだけでなく、生産されるコーティング部品の損傷のない脱型をもたらす。さらに、この離型剤は、生産される部品に対して高い接着性を示し、高価かつ不都合な洗浄および/または研削工程を伴わずに、市販のベースコートおよびクリアコート材料による後コーティングならびに/または接着結合を可能にする。後コーティングを伴わない場合でも、離型剤により部品上に得られるコーティングは、高度に弾性または可撓性かつUV安定性であり、一貫した光沢度または艶消し性を示すため、コーティング部品の損傷のない脱型だけでなく、生産直後という早期に、言い換えると部品のさらなる処理を伴わずに、UV線、汚れなどの環境的影響に対する生産されるコーティング部品の効果的な保護をもたらす。その上、生産されるコーティング部品は、従来の離型剤との組合せで高度に不規則的な表面を有する部品を生じる発泡体を使用して生産される場合でも、規則的な表面を有する。さらに、複雑な形状を有する部品、例として履物ソールおよび数ミリメートル幅のストラットを有する部品も、欠陥を生じずに生産可能であった。離型剤の残留物はほんのわずかに成型ツールに残存するため、使用される成型ツールは、離型剤のさらなる塗布前に毎回洗浄される必要がない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
まず最初に、本発明の文脈で使用される多数の用語を説明する。
【0011】
本発明の方法は、手動の方法である。これは、本発明の文脈では、前記方法が各方法工程で厳密なサイクル時間に束縛されないことを意味する。それに応じて、方法を複数回繰り返す際、各方法工程を行うために必要とされる期間に著しいばらつきが存在する。したがって、これは、例えば方法を2回繰り返す場合、方法工程(C)に対してある場合では1分、ある場合では5分必要でありうることを意味する。したがって、本発明の意味の範囲内では、手動の方法は、個々の方法工程が厳密なサイクル時間に束縛される、言い換えると、方法を複数回繰り返す際に、方法工程に観察されなければならない期間が常に全く同じでなければならない、または期間のばらつきがごく最小限のみでなければならない方法を包含しない。
【0012】
しかし、本発明の意義での「手動の方法」という用語は、そのような方法が、自動化された方法工程、例としてロボットの使用を含むことができないことを意味するものでない。したがって、方法が、本発明の意味の範囲内の手動の方法として理解されるまたはされないことを左右する要因は、厳密なサイクル時間への束縛を伴わない方法レジームのみである。
【0013】
本発明による部品は、他の部品と連結してアセンブリーを形成する個々の部分を意味する。したがって、部品が、例えば自動車の車体の部分である場合、他の車体部品とアセンブルされて車体を形成してもよい。例えば、部品が履物ソールである場合、履物の物品の他の部品とアセンブルされ、そのような物品を形成してもよい。しかし、一般的に、部品として機能できるという材料の目的と独立に、本発明は概してコーティング部品の生産に関し、したがって上記の意義での部品に制限されない。結果として、以下で部品のコーティングに言及する場合、「部品」の機能を有さない材料のコーティングも一般的に包含する、言い換えると、そのような材料は、必ずしもアセンブリーを生産するための部品として使用される必要はない。
【0014】
本発明によるコーティング部品は、表面にコーティングを有する部品を意味する。本発明によると、コーティングは、前記部品の生産中に、離型剤組成物の架橋により部品の表面に塗布される。したがって、部品のコーティングは、架橋された離型剤組成物に関する。
【0015】
本発明による「内部」という用語は、部品の生産中に、離型剤組成物および組成物Z1、ならびに任意に方法で使用されるさらなる材料および組成物と接触する成型ツールの成型部分の表面を指す。
【0016】
本発明の方法の方法工程(B)では、塗布された離型剤組成物をフラッシングする。これは、本発明によると、通常周囲温度より高い、例えば40~90℃の温度での離型剤中の溶媒の能動的または受動的蒸発を意味する。したがって、フラッシングの間、塗布される離型剤中に存在する溶媒は蒸発する。離型剤は、フラッシング中に流れることができ、これは離型剤が、塗布直後およびフラッシング開始時は、いずれにせよ依然として流体であるためである。これは、少なくとも噴霧により塗布される離型剤は、一般的に液滴形態で塗布され、均一な厚さでないためである。しかし、存在する溶媒の結果として、離型剤は流体であり、したがって流れて均一の平滑なコーティング膜を形成することができる。それと同時に、溶媒は継続的に蒸発するため、フラッシング段階から得られるコーティング層は比較的平滑であり、塗布される離型剤より少ない溶媒を含む。しかし、フラッシング後の離型剤層は未だ使用可能な状態ではない。例えば、実際にはもはや流体ではないが、離型剤層は依然として軟質かつ粘着性であり、部分的にしか乾燥していない可能性がある。特に、離型剤層は、以下で後述されるように未だ架橋されていない。
【0017】
「ポリ(メタ)アクリレート」という用語は、ポリアクリレートとポリメタクリレートの両方を指す。したがって、ポリ(メタ)アクリレートは、アクリレートおよび/またはメタクリレートから構成されてもよく、例えばスチレンまたはアクリル酸などのさらなるエチレン性不飽和モノマーを含んでもよい。
【0018】
「脂肪族ラジカル」という用語は、本明細書で非環式または環式の飽和または不飽和炭素化合物のラジカルを指し、このラジカルは芳香族構造を含有しない。しかし、脂肪族ラジカルは、例えば酸素または窒素などのヘテロ原子を適宜含有してもよい。
【0019】
方法工程(F)および任意に(G)では、離型剤組成物、組成物Z1およびさらなる組成物を架橋する。これは、これらの組成物の硬化、言い換えるとこれらの組成物の使用可能な状態への、つまり離型剤層を備えた部品が輸送、保管および意図されたように使用可能である状態への変換を指す。したがって、架橋された離型剤層および架橋された部品は特に、もはや軟質でも粘着性でもなく、代わりに、それぞれ固体離型剤膜または固体部品へと調整されている。以下で後述される架橋条件にさらに曝露されても、膜または部品は、もはや硬度や基板への接着性などのその特性の実質的な変化を示さない。
【0020】
公知のように、部品の生産に使用される離型剤組成物および組成物(Z1、Z2など)は、原則としてバインダーおよび架橋剤などの含まれる成分に応じて、物理的および/または化学的に硬化されてもよい。組成物は、とりわけ化学的に硬化される。化学的硬化は、熱化学的硬化および化学線化学的硬化を包含する。離型剤および組成物(Z1、Z2など)は、熱化学的に硬化可能である限り、自己架橋性および/または外部架橋性であってもよい。本発明の文脈における「自己架橋性および/または外部架橋性」という用語は、バインダーおよびおそらく架橋剤として含まれるポリマーが、適宜互いに架橋できることを意味する。関与する機序ならびに使用できるバインダーおよび架橋剤(膜形成成分)は以下で後述される。
【0021】
本発明の文脈では、「熱化学的に硬化可能」および「熱化学的硬化」という用語は、それぞれ反応性官能基の化学反応により開始され、この化学反応の熱エネルギーによるエネルギー活性化の可能性を伴う組成物の架橋(硬化組成物の形成)を指す。ここで、互いに相補的である様々な官能基が互いと反応してもよく(相補的官能基)、および/または硬化組成物の形成は、それ自身の種類の基と反応する官能基である自己反応性基の反応に基づくものである。好適な相補的反応性官能基および自己反応性官能基の例は、例えばドイツ特許出願DE 199 30 665 A1、7ページ、28行目~9ページ、24行目から公知である。
【0022】
この架橋は、自己架橋であってもよくおよび/または外部架橋であってもよい。例えば、相補的反応性官能基が、バインダーとして使用される有機ポリマー、例えばポリエステル、ポリウレタンまたはポリ(メタ)アクリレート中に既に存在している場合、関与する架橋は自己架橋である。外部架橋は、(第1の)有機ポリマーまたは特定の官能基、例えばヒドロキシル基を含有する第1の化合物が、従来の架橋剤と、例えばポリイソシアネートおよび/またはメラミン樹脂と反応する場合に関与する。したがって、架橋剤は、バインダーとして使用される(第1の)有機ポリマー中に存在する反応性官能基に相補的である反応性官能基を含有する。
【0023】
特に外部架橋の場合、企図される系は、従来の多成分系、特に二成分系である。これらの系では、例えばバインダーとしての有機ポリマーとして架橋される成分および架橋剤は、塗布直前まで組み合わせられない少なくとも2種の成分中に互いから離れて存在する。この形態は、架橋される成分が、周囲温度または例えば40~90℃のわずかに上昇した温度でも互いと効果的に反応する場合に選択される。例として述べられてもよい組合せは、ヒドロキシ官能性ポリエステルおよび/またはポリウレタンおよび/またはポリ(メタ)アクリレートと、架橋剤としての遊離ポリイソシアネートのものである。
【0024】
バインダーとしての有機ポリマーは、自己架橋性官能基だけでなく外部架橋性官能基も有し、その後架橋剤と組み合わせることもできる。
【0025】
本発明の文脈では、「化学線化学的に硬化可能」または「化学線化学的硬化」という用語は、化学線の適用により硬化が可能であるという事実を指し、化学線は、近赤外線(NIR)およびUV線、特にUV線などの電磁線、ならびに電子ビームなどの微粒子線である。UV線による硬化は、慣例的に光ラジカル開始剤または光カチオン開始剤により開始される。典型的な化学線硬化可能官能基は炭素-炭素二重結合であり、この場合光ラジカル開始剤が一般的に利用される。このため、化学線硬化もまた化学的架橋に基づく。
【0026】
化学的に硬化可能とみなされる組成物の硬化では、当然ながら、ポリマー鎖のインターループを意味するある程度の物理的硬化が常に生じる。物理的硬化は、主要な割合を占めることさえありうる。それにもかかわらず、この種類の組成物は、化学的に硬化可能な膜形成成分を少なくとも比例的に含む場合、化学的に硬化可能であると称される。
【0027】
上記のことから、コーティング組成物およびそれが含む成分の性質に応じて、硬化は様々な機序によってもたらされ、これらの機序も当然、様々な硬化条件、特に様々な硬化温度および硬化時間を必要とする。
【0028】
原則として、かつ本発明の文脈では、熱化学的に硬化可能な2成分または3成分系の硬化は、例えば40~90℃、例えば、特に40~90℃の温度で5~80分、好ましくは4~6分の継続時間行われてもよいことが事実である。したがって、より低温のおよび/またはより短時間の硬化前フラッシング段階が存在することが事実である。硬化前フラッシング段階は、例えば15~90℃で、例えば0.2~2分の継続時間、しかし任意の場合ではその後の硬化より短時間および/または低温で実行されてもよい。
【0029】
本発明の文脈で説明される温度のすべては、組成物が配置される成型ツールの温度と理解されるべきである。したがって、組成物それ自体が対応する温度を有さなければならないことを意味するものではない。
【0030】
特定の特性変数を決定するために本発明の文脈で利用される測定方法は、実施例のセクションに見出すことができる。別段明示的に示されない限り、これらの測定方法は、それぞれの特性変数を決定するために利用される。本発明の文脈において、正式な有効期間の表示を伴わずに正式な規格に言及する場合、言及は、暗示的に出願日において有効な規格のバージョン、またはその時点で有効なバージョンが存在しない場合は最新の有効バージョンに対するものである。
【0031】
本発明の方法:
本発明の方法の範囲内では、コーティング部品は射出成型により生産される。本発明によるこのコーティング部品は、好ましくはソール、とりわけプラスチック製の履物ソールである。
【0032】
方法工程(A):
本発明の方法の工程(A)では、離型剤組成物を、閉鎖可能な成型ツールの成型部分の少なくとも1箇所の内部に塗布する。本発明によると、離型剤組成物が閉鎖可能な成型ツールのすべての成型部分のすべての内部に塗布されると好ましい。このことは、コーティング部品の生産に使用される組成物(Z1、Z2など)および材料M1が、取り出しの際に成型部分の内部に付着したままにならないことを確実にし、かつコーティング部品の損傷のない取り出しが確実になる。さらに、コーティング部品の損傷のない取り出しにより、成型ツールを毎回の生産サイクル後に洗浄する必要がない。
【0033】
本発明によると、離型剤組成物は、方法工程(A)で手動でまたは塗布ロボットを使用して塗布されると好ましい。この場合、本発明の方法で使用される離型剤組成物は、先行技術から公知の離型剤組成物と全く同様に塗布される。本発明の方法の自動化度は、塗布ロボットを使用することにより向上させることができる。ロボットは、ソール型の形状に合わせてプログラムされ、離型剤を成型ツールの成型部分の内部に空気圧によって自律的に塗布する。ロボットを使用することにより、塗布がより均一であるため、操作の安定性がさらに増大する。さらに、適切なプログラム化により塗布速度を速めることができる。
【0034】
塗布ロボットを用いて離型剤組成物を塗布する場合、本発明によると、塗布ロボットを配備して離型剤組成物を塗布する際、直径0.05~1.5mm、好ましくは0.08~1mm、とりわけ0.1~0.8mmのノズルが使用されると好ましい。上述の直径のノズルを使用することにより、成型ツールの成型部分の内部が十分な量の離型剤組成物で完全に湿潤されると同時に、多すぎる分量の離型剤組成物の塗布を防止することが確保される。
【0035】
方法工程(A)で使用される成型ツールは、室温であっても特定の温度に既に加熱されていてもよい。しかし、この温度は、塗布される離型剤組成物が事前に架橋を経るような高さであってはならず、これはこの場合、組成物がもはや部品の生産に使用される組成物Z1、Z2などに十分に接着しないためである。したがって本発明によると、好ましくは方法工程(A)における成型ツールは、20~100℃、より好ましくは30~90℃、非常に好ましくは40~80℃、とりわけ50~70℃の温度である。
【0036】
離型剤組成物:
本発明の組成物は、好ましくは組成物の総質量に対して30~60wt%、より好ましくは35~55wt%、非常に好ましくは40~50wt%、とりわけ42~48wt%の固形分含有量を有する。固形分含有量は、ASTM D2369(2015年)により110℃で60分間、2グラムの組成物試料を用いて決定された。
【0037】
さらに、本発明によると、DIN EN ISO 2431(2012年3月)に従って測定して、組成物が10~60秒、とりわけ20~30秒(DIN4フローカップ)の粘度を有すると好ましい。低粘度を確立することによって組成物の塗布が容易になり、したがって成型ツールの十分な湿潤および部品の均一なコーティングが確保される。
【0038】
離型剤組成物-溶媒L(a):
本発明により使用される離型剤組成物は、溶媒ベースの組成物または水性組成物であってもよい。溶媒ベースの離型剤組成物の場合、主要な構成要素として有機溶媒が含まれる。有機溶媒は、離型剤組成物の揮発性構成要素を構成し、それぞれ乾燥またはフラッシング時に完全または部分的な気化を経る。水性離型剤組成物の主要な構成要素は、水である。
【0039】
本発明によると、好ましくは少なくとも1種の溶媒Lは、有機溶媒、水およびこれらの混合物から選択され、各場合において組成物の総質量に対して40~70wt%、より好ましくは45~65wt%、非常に好ましくは50~60wt%、特に52~58wt%の総量で存在する。
【0040】
本発明の文脈で好ましい有機溶媒は、非プロトン性である。特に好ましくは、これらは極性非プロトン性有機溶媒である。非常に特に好ましくは、有機溶媒は、組成物の残りの構成要素に対して化学的に不活性である。
【0041】
本発明の文脈で好ましい有機溶媒は、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトンまたはジイソブチルケトンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、エチレングリコールジアセテート、ブチロラクトン、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、2-メトキシプロピルアセテート(MPA)およびエチルエトキシプロピオネートなどのエステル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンおよびN-エチルピロリドンなどのアミド、メチラール、ブチラール、1,3-ジオキソラン、グリセロールホルマールであり、非極性であるため幾分低い程度に好ましくは、ベンゼン、トルエン、n-ヘキサン、シクロヘキサンおよびソルベントナフサなどの炭化水素である。特に好ましい溶媒はエステルのクラスに属し、その中でも酢酸n-ブチルおよび1-メトキシプロピルアセテートが非常に特に好ましい。
【0042】
離型剤組成物-一般式(I)の化合物(b):
本発明により使用される離型剤組成物は、以下の式(I):
-(C=O)-O-(AO)-R (I)
(式中、Rは6~30個の炭素原子、好ましくは8~26個、より好ましくは10~24個、非常に好ましくは12~24個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、
はH、PO(OH)ラジカル、または単糖もしくは二糖の任意に部分的にリン酸化されたラジカル、またはアルジトールの、とりわけソルビトールの任意に部分的にリン酸化されたラジカルであり、
AOはエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドからなる群から選択される1種または複数のアルキレンオキシドラジカルを表し、
rは0または1であり、
sは0~30、好ましくは1~25または2~25、より好ましくは4~22または6~20、非常に好ましくは8~18である)
により示すことができる化合物をさらに含む。
【0043】
ラジカルRは、好ましくは非環式ラジカルである。
【0044】
ラジカルAOは同一であっても異なってもよく、sの範囲内で、ラジカルはランダム、ブロック状または傾斜様の配列を有してもよい。2種以上の異なる種類のAOが含まれる場合、エチレンオキシドの分率は、ラジカルAOの全モル量に対して50mol%超、より好ましくは少なくとも70mol%、非常に好ましくは少なくとも90mol%である。前述の場合、エチレンオキシドとは異なるラジカルは、好ましくはプロピレンオキシドラジカルである。
【0045】
r=0かつs>0である場合、式(I)の種は、任意に単糖もしくは二糖により、またはアルジトールのラジカルによりリン酸化された(R=PO(OH))またはエーテル化されたアルコキシル化脂肪アルコール、好ましくはエトキシル化脂肪アルコールである。r=1かつs>0である場合、式(I)の種は、任意に単糖もしくは二糖により、またはアルジトールのラジカルによりリン酸化された(R=PO(OH))またはエーテル化されたアルコキシル化脂肪酸、好ましくはエトキシル化脂肪酸である。
【0046】
s=0であり、Rが単糖もしくは二糖のラジカルまたはアルジトールのラジカルである場合、式(I)の種は、単糖もしくは二糖のまたはアルジトールの脂肪アルコールエーテル(r=0)であるか、あるいは単糖もしくは二糖のまたはアルジトールの脂肪酸エステル(r=1)である。
【0047】
特に好ましくは、一部もしくはすべての式(I)の種に関して、sは2~25、より良好には6~20、理想的には8~18であり、および/あるいは一部もしくはすべての式(I)の種に関して、sは0であり、Rは単糖もしくは二糖の任意に部分的にリン酸化されたラジカルであるか、またはアルジトールの任意に部分的にリン酸化されたラジカルである。この場合、特に好ましくは、Rは10~24個の炭素原子を有する飽和または不飽和の脂肪族炭化水素ラジカルである。
【0048】
特に、sが0である式(I)の種の混合物を少なくとも1つの種に使用することもできるが、少なくとも1つのさらなる種に関して、sは>0、好ましくは1~25または2~25、より好ましくは4~22または6~20、非常に好ましくは8~18である。
【0049】
特に好ましくは、一般式(I)において、Rは10~24個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、Rは、H、PO(OH)ラジカル、または単糖もしくは二糖の任意に部分的にリン酸化されたラジカル、またはアルジトールの、とりわけソルビトールの任意に部分的にリン酸化されたラジカルであり、AOはエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドからなる群から選択される1種または複数のアルキレンオキシドラジカルを表し、rは0または1であり、sは0または1~25である。
【0050】
さらに特に好ましくは、一般式(I)において、Rは10~24個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、RはH、PO(OH)ラジカル、または単糖の任意に部分的にリン酸化されたラジカル、またはアルジトールの、とりわけソルビトールの任意に部分的にリン酸化されたラジカルであり、AOは、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドからなる群から選択される1種または複数のアルキレンオキシドラジカルを表し、ラジカルAOの全モル量中のエチレンオキシドの分率は少なくとも70mol%であり、rは0または1であり、sは0であるかまたはs=6~20である。
【0051】
s>0である前述のアルコキシル化脂肪アルコールおよび/またはs>0である前述のアルコキシル化脂肪酸、ならびにr=s=0であり、R=H、PO(OH)、単糖ラジカル、二糖ラジカルまたはアルジトールラジカルである、任意にリン酸化またはエーテル化された脂肪アルコール、ならびにr=1であり、s=0であり、R=H、PO(OH)、単糖ラジカル、二糖ラジカルまたはアルジトールラジカルである任意にリン酸化またはエーテル化された脂肪酸を包含する群から選択される、少なくとも1つのさらなる種を含む混合物が特に好ましい。
【0052】
一般式(I)の化合物の総質量は、各場合において離型剤組成物の総質量に対して好ましくは0.1~10wt%、より好ましくは0.5~5wt%、とりわけ1.5~4wt%である。1種より多くの式(I)の化合物が使用される場合、上記で示された分量の数字は、式(I)の範囲内に入るすべての化合物の総量に対するものである。式(I)の化合物が特定の化合物(I-1)に限定される場合、上記で示された分量は、単に特定の化合物(I-1)に対するものではなく、式(I)の範囲内に入る化合物の総量に対するものである。例えば化合物(I-1)が5wt%の量で使用される場合、多くとも7wt%の式(I)の範囲内に入るさらなる化合物が離型剤組成物に存在してもよい。
【0053】
離型剤組成物-ポリエーテル変性アルキルポリシロキサン(c):
本発明により使用される離型剤組成物は、少なくとも1種のポリエーテル変性アルキルポリシロキサンをさらに含んでもよい。そのようなシロキサンの使用は、本発明により生産されるコーティング部品の汚れの捕捉を低減させる。
【0054】
好ましくは、ポリエーテル変性アルキルポリシロキサンは、少なくとも1種の構造単位(R(OR)SiO1/2および少なくとも1種の構造単位(RSiO2/2を含み、Rはエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシド基、とりわけエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシド基の混合物であり、RはC~C10アルキル基、とりわけメチル基である。
【0055】
この文脈では、ポリエーテル変性アルキルポリシロキサンの、シロキサンとエチレンオキシド基とプロピレンオキシド基とブチレンオキシド基のモル比が6:21:15:1~67:22:16:1であると好ましい。
【0056】
この文脈では、さらにポリエーテル変性アルキルポリシロキサンの構造単位(R(OR)SiO1/2と構造単位(RSiO2/2のモル比が1:10~1:15、とりわけ1:10~1:13であると好ましい。ここで、RおよびRは、上記で列挙された定義を有する。
【0057】
離型剤組成物は、各場合において離型剤組成物の総質量に対して0wt%または0.1~6wt%、好ましくは0.5~4wt%、とりわけ0.8~3wt%のポリエーテル変性アルキルポリシロキサン、とりわけ上記で列挙された特定のポリエーテル変性アルキルポリシロキサンを含んでもよい。そのような化合物が存在しない場合、組成物の粘着性が低くなる。結果として、生産されるコーティング部品の成型ツールからの脱型の効果が改善する。
【0058】
離型剤組成物-式(II)のポリシロキサン(d):
本発明により使用される離型剤組成物は、一般式(II)
-Si(R-[O-Si(R)(R)]-[O-Si(R-O-Si(R-R (II)
(式中、
およびRは各場合において互いに独立して、メチル基または(HO-CH-C(CH-CH)-CH-O-(CH-*ラジカルであり、
はメチル基であり、
aは0または1~10であり、
bは3~30である)
の少なくとも1種のポリシロキサンをさらに含む。ここで、(HO-CH-C(CH-CH)-CH-O-(CH-*ラジカルは、*記号を介してケイ素原子に結合される。
【0059】
本発明により好ましく使用されるものは、特定のラジカルRおよびRを有するポリシロキサンである。そのようなポリシロキサンの使用は、脱型性の改善に関して有利であるが、本発明の架橋された組成物の部品に対する接着性に悪影響を及ぼさないことが示されている。したがって、本発明の1つの好ましい実施形態では、一般式(II)において、ラジカルRは(HO-CH-C(CH-CH)-CH-O-(CH-*ラジカルであり、ラジカルRはメチル基であり、ラジカルRはメチル基であり、aは0であり、bは7~14である。
【0060】
本発明により有利には、離型剤組成物は、少なくとも1種の式(II)のポリシロキサン、とりわけ上記で列挙された特定のポリシロキサンを特定の総量で含む。したがって本発明によると、離型剤組成物が、少なくとも1種の一般式(II)のポリシロキサンを、各場合において離型剤組成物の総質量に対して0.1~5wt%、好ましくは0.5~4wt%、とりわけ0.8~2.5wt%の総量で含むと好ましい。1種より多くの式(II)のポリシロキサンが使用される場合、上記で示された分量の数字は、式(II)の範囲内に入るすべてのポリシロキサンの総量に対するものである。式(II)のポリシロキサンが特定のポリシロキサン(II-1)に限定される場合、上記で示された分量は、特定のポリシロキサン(II-1)だけでなく、式(II)の範囲内に入るポリシロキサンの総量に対するものである。例えば、特定のポリシロキサン(II-1)が2wt%の量で使用される場合、多くとも3wt%の式(II)の範囲内に入るさらなるポリシロキサンが離型剤組成物に存在してもよい。
【0061】
離型剤組成物-バインダーB(e):
本発明により好ましくは、離型剤組成物および上記に記載された構成要素は、少なくとも1種のバインダーBを含む。このバインダーBの使用により、部品上に可撓性かつ安定したコーティングが発生するが、部品の脱型性には悪影響が及ばない。
【0062】
驚くべきことに、バインダーBの性質は、離型剤組成物を用いて達成される脱型性に重要ではないことが判明した。さらに驚くべきことに、離型剤組成物はバインダーBとは無関係に、得られるコーティング、特にその表面の品質および可撓性に悪影響を及ぼさない。したがって、離型剤組成物は、生産される部品の脱型性、または組成物を用いて部品上に生成されるコーティングの顕著な特性に悪影響を及ぼすことなく、任意の所望のバインダーBを含むことができる。さらに、得られるコーティングは、高価かつ不都合な後処理工程を伴わずに、ベースコートおよび/またはクリアコート材料と接着結合することができおよび/またはそれらによりコーティングされてもよい。
【0063】
少なくとも1種のバインダーBは、各場合において組成物の総質量に対して好ましくは20~50wt%、より好ましくは25~40wt%、とりわけ25~35wt%の総量(固形分含有量)で存在する。バインダーが分散液または溶媒中溶液である場合、上記に列挙された総分量は、各場合においてバインダーの固形分含有量を使用して計算される。少なくとも1種のバインダーBを上記に列挙された分量範囲で使用することにより、可撓性かつ安定したコーティングが部品上に発生するが、部品の脱型性に悪影響が及ばないことが保証される。
【0064】
本発明により好ましくは、バインダーBは、(i)ポリ(メタ)アクリレート、とりわけヒドロキシ官能性および/またはカルボキシレート官能性および/またはアミン官能性ポリ(メタ)アクリレート、(ii)ポリウレタン、とりわけヒドロキシ官能性および/またはカルボキシレート官能性および/またはアミン官能性ポリウレタン、(iii)ポリエステル、とりわけポリエステルポリオール、(iv)ポリエーテル、とりわけポリエーテルポリオール、(v)述べられたポリマーのコポリマー、および(vi)これらの混合物からなる群から選択される。
【0065】
この文脈では、バインダーBは、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートおよび/またはポリエステルポリオール、とりわけ少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートと少なくとも1種のポリエステルポリオールの混合物から選択されることが好ましい。この混合物の使用により、高い可撓性および環境的影響に対する高い耐性を有するコーティングが得られる。さらに、部品の生産に使用される材料の表面性質とは無関係に平滑な表面が達成される。その上、得られるコーティングは、高価かつ不都合な後処理工程を伴わずに、ベースコートおよび/またはクリアコート材料と接着結合することができおよび/またはそれらによりコーティングされてもよい。
【0066】
少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、好ましくは65~100mg KOH/g、より好ましくは70~95mg KOH/g、とりわけ75~90mg KOH/gまたは80~85mg KOH/gのヒドロキシル価を有する。本発明の文脈におけるヒドロキシル価は、EN ISO4629-2:2016により決定することができ、各場合において固形分含有量に対するものである。
【0067】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、好ましくは25mg KOH/g未満の酸価、より好ましくは1~20mg KOH/g、非常に好ましくは4~16mg KOH/g、とりわけ6~14mg KOH/gまたは8~12mg KOH/gの酸価を有する。本発明の目的での酸価は、DIN EN ISO2114:2002-06(方法A)により決定することができ、各場合において固形分含有量に対するものである。
【0068】
数平均分子量Mおよび質量平均分子量Mは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリメチルメタクリレート標準(PMMA標準)(DIN55672-1:2016-03)を使用して決定されてもよい。ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの数平均分子量Mは、好ましくは4000~10000g/mol、より好ましくは5000~9000g/mol、非常に好ましくは5500~8000g/mol、とりわけ6000~7500g/molの範囲である。ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの質量平均分子量Mは、好ましくは8000~30000g/mol、より好ましくは10000~25000g/mol、非常に好ましくは12000~22000g/mol、とりわけ14000~20000g/molの範囲である。ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの多分散度P(=M/M)は、好ましくは2~3、とりわけ2.2~2.8の範囲である。
【0069】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、好ましくは5~15、より好ましくは6~14、とりわけ8~12のヒドロキシル官能価を有する。
【0070】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、当業者に常套的であり熟知される重合反応を用いて、エチレン性不飽和モノマー、好ましくはモノエチレン性不飽和モノマーから得ることができる。使用されてもよい開始剤は、例えばジ-tert-ブチルペルオキシドなどの過酸化物を含む。したがって、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、
(a1)少なくとも1種のヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル、とりわけ式HC=CR-COO-R-OH(式中、RはHまたはCHであり、Rは2~6個、好ましくは2~4個、より好ましくは2または3個の炭素原子を有するアルキレンラジカルである)の(メタ)アクリル酸エステル、
(a2)少なくとも1種のカルボキシ官能性エチレン性不飽和モノマー、とりわけ(メタ)アクリル酸、ならびに
(a3)少なくとも1種の(メタ)アクリル酸のヒドロキシル不含かつカルボキシル不含エステルおよび/または少なくとも1種のヒドロキシル不含かつカルボキシル不含ビニルモノマー、とりわけスチレン
の反応により製造可能であることが好ましい。
【0071】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレート中に存在するヒドロキシ基は、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートを製造する際にヒドロキシ官能性エチレン性不飽和モノマー(a1)、好ましくはヒドロキシ官能性アクリル酸エステルおよび/またはヒドロキシ官能性メタクリル酸エステルを介して導入される。ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートの例は、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルおよびアクリル酸ヒドロキシプロピルである。特に好ましく存在するものは、メタクリル酸ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸2-ヒドロキシプロピルである。ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの製造に使用されるヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル(a1)の量は、50~120mg KOH/gであるヒドロキシル価の目標範囲に対して計算される。
【0072】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、好ましくは少量のカルボキシル基を含有する。これらの基は、重合反応中に、例えばカルボキシ官能性モノマー(a2)、より好ましくはアクリル酸および/またはメタクリル酸を使用してポリ(メタ)アクリレートに導入される。これらのモノマー(a2)、特に(メタ)アクリル酸は、好ましくは各場合において、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの製造に使用されるすべてのモノマーの総質量に対して20~45wt%、より好ましくは25~40wt%、とりわけ30~35wt%の総量で存在する。
【0073】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートを製造する際、ヒドロキシ官能性(a1)およびカルボキシ官能性エチレン性不飽和モノマー(a1)の他に、エチレン性不飽和モノマー(a3)、とりわけモノエチレン性不飽和モノマー(a3)も使用され、これらのモノマーは、ヒドロキシル基とカルボキシル基の両方を有さない。ビニルモノマー(a3)として特に好ましく用いられるものはスチレンである。ビニルモノマー(a3)、とりわけスチレンは、好ましくは各場合において、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの製造に使用されるすべてのモノマーの総質量に対して30~60wt%、より好ましくは35~55wt%、とりわけ40~50wt%の総量で存在する。
【0074】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、有機溶媒、好ましくは非プロトン性溶媒中で使用されてもよい。この目的のために典型的な溶媒は、例えば酢酸n-ブチルであり、これは少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートを製造する際にも使用できる。ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが溶媒中で使用される場合、溶媒は、当然ながら構成要素の一部ではなく、溶媒Lの一部とみなされる。
【0075】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、好ましくは特定の総分量で使用される。したがって本発明によると、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが、各場合において組成物中に存在するすべてのバインダーの固形分含有量の総質量に対して10wt%~97wt%、好ましくは40~70wt%、とりわけ40~50wt%の総分量で存在すると有利である。
【0076】
ポリエステルポリオールは、好ましくは各場合において固形分含有量に対して100~200mg KOH/g、より好ましくは110~180mg KOH/g、非常に好ましくは120~160mg KOH/gのヒドロキシル価を有する。
【0077】
ポリエステルポリオールの酸価は、好ましくは各場合において固形分含有量に対して0~9mg KOH/g、とりわけ0.2~2mg KOH/gである。ポリエステルポリオールのヒドロキシル価および酸価は、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートに関連して上記のように決定されてもよい。
【0078】
ポリエステルポリオールの数平均分子量は、好ましくは800~3000g/mol、より好ましくは1000~2000g/mol、とりわけ1000~1600g/molの範囲である。ここでの決定は、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの分子量の決定に関係して行われる。
【0079】
ポリエステルポリオールは、好ましくは分岐状である。
【0080】
ポリエステルポリオールは、好ましくは2.2~4、より好ましくは2.5~3.6、非常に好ましくは2.7~3.6のヒドロキシル官能価を有する。
【0081】
ポリエステルポリオールは、好ましくは特定の総分量で使用される。したがって本発明によると、ポリエステルポリオールが、各場合において組成物中に存在するすべてのバインダーの固形分含有量の総質量に対して40wt%~97wt%、好ましくは40~70wt%、とりわけ50~65wt%の総分量で存在すると有利である。
【0082】
バインダーBは、代替的に水性アニオン安定化ポリウレタン分散液、水性カチオン安定化ポリウレタン分散液、水性ポリウレタン-ポリ尿素分散液およびこれらの混合物から選択されてもよい。好適な分散液は、例えば公開明細書EP 2 066 712 A1、EP 1 153 054 A1およびEP 1 153 052 A1に記載されている。
【0083】
離型剤組成物-架橋剤V(f):
本発明によると、離型剤組成物が、前述の構成要素および/または少なくとも1種のバインダーBだけでなく、架橋剤Vも含むと好ましい場合がある。特に好ましくは、本発明により使用される離型剤組成物は、上述のバインダーBと、以下に記載される架橋剤Vの組合せを含む。
【0084】
架橋剤Vは、好ましくはアミノ樹脂、ポリイソシアネート、ブロックポリイソシアネート、ポリカルボジイミド、UV光、熱、光開始剤およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0085】
架橋剤Vとして、ポリイソシアネートおよびポリカルボジイミドを使用することが特に好ましい。
【0086】
ポリイソシアネートの使用は、特に上述の少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートと少なくとも1種のポリエステルポリオールの混合物が、本発明の組成物中にバインダーBとして存在する場合に適切であることが見出された。
【0087】
この文脈では、ポリイソシアネートが、2.4超~5、好ましくは2.6~4、より好ましくは2.8~3.6のNCO基官能価を有すると特に好ましい。
【0088】
本発明の文脈で特に好ましく利用されるものは、少なくとも1個のイソシアヌレート環または少なくとも1個のイミノオキサジアジンジオン環を含むポリイソシアネートである。
【0089】
代替的な実施形態によると、互いと異なる2つのポリイソシアネートが架橋剤Vとして存在してもよく、第1のポリイソシアネートは、少なくとも1個のイソシアヌレート環を含み、第2のポリイソシアネートは、少なくとも1個のイミノオキサジアジンジオン環を含む。
【0090】
ポリイソシアネートは、好ましくはジイソシアネートのオリゴマー、好ましくはトリマーまたはテトラマーを含む。特に好ましくは、ポリイソシアネートは、イミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレート、アロファネートおよび/またはジイソシアネートのビウレットを含む。特に好ましくは、ポリイソシアネートは、脂肪族および/または脂環式、非常に好ましくは脂肪族ポリイソシアネートを含む。前述のオリゴマー、とりわけ前述のトリマーまたはテトラマーのジイソシアネート基盤として機能するものは、非常に好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはイソホロンジイソシアネートであり、特に好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートのみである。
【0091】
ポリカルボジイミドの使用は、特に水性アニオン安定化ポリウレタン分散液、水性カチオン安定化ポリウレタン分散液、水性ポリウレタン-ポリ尿素分散液およびこれらの混合物が、本発明の組成物中にバインダーBとして存在する場合に適切であることが見出された。
【0092】
ポリカルボジイミドは、好ましくは水性分散液の形態である。特に好ましく使用されるポリカルボジイミドは、ポリイソシアネートとポリカルボジイミドの反応、さらにそれに続く鎖延長ならびに/またはヒドロキシル基および/もしくはアミン基を含有する親水性化合物による停止により得ることができる。好適な分散液は、例えば公開明細書EP1644428A2およびEP1981922A2に記載されている。
【0093】
架橋剤Vにより、例えば得られる硬化コーティングの硬度、可撓性および弾性に影響を及ぼすことができる。特にイミノオキサジアジンジオン構造を含有するポリイソシアネートを使用すると、特定の硬度を有するコーティングが得られ、それにより基板構造が硬化コーティング表面まで伝播し、そこで望まれないうねりを生じることが防止される。そのようなポリイソシアネートは、例えばCovestroから名称DesmodurN3900で入手可能である。例えば、名称DesmodurN3800でCovestroから入手可能な、イソシアヌレート構造を含有するポリイソシアネートを用いて同様の結果が達成される場合があり、その場合コーティングは依然として硬性であるが、より可撓性である。
【0094】
好ましくは、組成物は少なくとも1種の架橋剤Vを特定の総分量で含む。したがって本発明によると、少なくとも1種の架橋剤Vが、各場合において組成物の総質量に対して10wt%~40wt%、好ましくは10~30wt%、とりわけ15~25wt%の総分量で存在すると好ましい。
【0095】
さらに、組成物が、架橋剤Vの官能基と架橋剤Vに対して反応性であるバインダーBの基との特定のモル比を含むと好ましい。これにより、本発明の組成物の架橋が十分であることが確保される。したがって、架橋剤Vの官能基、特にNCO基またはカルボジイミド基と、架橋剤Vの官能基に対して反応性である少なくとも1種のバインダーBの基、特にヒドロキシル基またはアニオン性基の合計とのモル比が0.4:1~1:1、好ましくは0.65:1~0.85:1、とりわけ0.7:1~0.8:1であると有利である。
【0096】
本発明の組成物中に存在する特定のバインダーBおよび架橋剤Vに応じて、本発明の組成物は、一成分系として構成される、または2種(二成分系)もしくはそれ以上(多成分系)の成分を混合することにより得ることができる。熱化学的に硬化可能な一成分系では、架橋される成分、言い換えるとバインダーおよび架橋剤は、互いとともに、言い換えると1つの成分として存在する。このための条件は、少なくとも時期尚早の比例した熱化学的硬化を防ぐために、架橋される成分が、例えば100℃を超える相対的に高い温度で初めて互いと効果的に反応することである。そのような組合せは、ヒドロキシ官能性ポリエステルおよび/またはポリウレタンと、架橋剤としてのメラミン樹脂および/またはブロックポリイソシアネートにより例示されてもよい。
【0097】
熱化学的に硬化可能な二成分または多成分系では、架橋される成分、言い換えるとバインダーおよび架橋剤は、塗布直前まで組み合わされない少なくとも2種の成分として、互いから離れて存在する。この形態は、架橋される成分が、周囲温度、または例えば40~90℃のわずかに上昇した温度であっても、互いと効果的に反応する場合に選択される。そのような組合せは、ヒドロキシ官能性ポリエステルおよび/またはポリウレタンおよび/またはポリ(メタ)アクリレートと、架橋剤としての遊離ポリイソシアネートによって例示されてもよい。混合は手動で行われてもよく、適切な量の成分1または2を別個の容器に導入し、対応する分量の成分2または1と混和し、その後混合する。しかし、2種の成分の混合が自動的に行われるように準備することもでき、本発明の文脈ではこれが好ましい。したがって、本発明の1つの好ましい実施形態では、2種の成分は、自動混合系で混合される。
【0098】
この文脈では、自動混合系が、混合装置、とりわけ静的混合機、さらに塗料ベース成分Aおよび硬化成分Bを供給するための少なくとも2つのデバイス、とりわけギアポンプおよび/または圧力弁を含むと特に好ましい。静的混合機は、市販のヘリカル混合機であってもよく、これはアトマイザーから約50~100cm先の材料供給ラインに設置される。好ましくは、12~18個の混合要素(各要素は長さ1cm、直径6~8mm)を使用し、2種の成分の十分な混合を得る。混合エネルギーに応じて、上述の12~18個の混合要素が使用される場合の離型剤組成物のポットライフ(粘度の倍加、DIN53211により決定される)は、10~20分である。材料供給ラインの詰まりを防止するために、ヘリカル混合機だけでなく下流のホースラインおよびアトマイザーが、塗料ベース成分Aで7~17分ごとにフラッシングされるように、混合装置をプログラムすると好ましい。ロボットを用いて離型剤組成物を塗布する場合、このフラッシング操作は、ロボットヘッドが予め規定されたレスト位置にある場合に行われる。ホースラインの長さに応じて、約50~200mlが捕捉容器に排出される。この手順の好ましい代替は、混合された離型剤組成物の半連続搬送である。離型剤組成物が規則的に(同様に7~17分ごとに捕捉容器に)押し出される場合、排出される材料の分量を最低限(約10~50ml)に低減することができる。さらに、混合機からアトマイザーにかけてのホースライン、さらにアトマイザーがフラッシングされるように準備されてもよい。このフラッシング操作は、特に系の長時間のダウンタイム後またはシフトの終了時であることが好ましく、それにより機器の長期寿命および離型剤組成物の持続的な品質が確実になる。
【0099】
原則として、3成分混合系を利用することもできる。これにより、費用およびプロセス設計に関する複雑性を増大させることなく、既に触媒された系の安定した保管を簡潔化することができる。
【0100】
手動混合の場合と、自動混合のための成分の供給の場合の両方において、2種の成分は、好ましくはそれぞれ15~70℃、より好ましくは15~40℃、とりわけ20~30℃の温度を有する。
【0101】
本発明の組成物が、2種以上の成分の混合により得ることができる場合、バインダー含有成分と架橋剤含有成分の質量比は、好ましくは100:10~100:100、より好ましくは100:20~100:80、とりわけ100:50~100:70である。上述の混合比を使用すると、離型剤組成物の十分な架橋が確実になり、それにより容易な脱型性および生産される部品の表面への高い接着性が保証される。
【0102】
離型剤組成物-架橋触媒VK(g):
さらに、本発明によると、離型剤組成物が少なくとも1種の架橋触媒VKを含むと有利である場合がある。架橋触媒VKは、特に組成物が少なくとも1種の架橋剤V、とりわけポリイソシアネートを含む場合に存在する。
【0103】
架橋触媒VKは、主に架橋剤Vの官能基と少なくとも1種のバインダーBの反応性基の間の反応を触媒するように機能する。
【0104】
架橋触媒は、好ましくはカルボン酸ビスマスの群から選択される。
【0105】
この文脈では、特定のカルボン酸ビスマスが存在すると好ましい。したがって、カルボン酸ビスマスは、好ましくは一般式(III)
Bi[OOC(C2n+1)] (III)
(式中、n=5~15、好ましくはn=7~13、とりわけn=9~11である)
を有する。
【0106】
カルボキレートラジカルは好ましくは分岐状であり、非常に好ましくは、これらはカルボキシレート基の炭素原子に対してアルファ位に、第三級または第四級、好ましくは第四級炭素原子を有する。カルボン酸ビスマスの中でも、とりわけトリネオデカン酸ビスマスが特に好適であることが判明した。
【0107】
カルボン酸ビスマスは、好ましくはカルボキシレートの親カルボン酸HOOC(C2n+1)(ここで、nは上記に示された定義を有する)との組合せで、安定化された形態で使用される。ここでの遊離カルボン酸は、本発明の目的では、それが安定剤効果を有しうるだけでなく、任意に触媒作用促進剤として機能しうる場合でも、正式には架橋触媒VKの構成要素とみなされるべきではない。代わりに、それは以下に記載されるさらなる添加剤に含まれる。
【0108】
組成物は、好ましくは少なくとも1種の架橋触媒VKを特定の総分量で含む。したがって本発明によると、少なくとも1種の架橋触媒VKが、各場合において組成物の総質量に対して0.01wt%~3.5wt%、好ましくは0.1~2wt%、とりわけ0.4~1.5wt%の総量で存在すると好ましい。
【0109】
離型剤組成物-カラーベースBF(h):
離型剤組成物は、少なくとも1種のカラーベースBFをさらに含んでもよい。ここでカラーベースBFは、明確に定義された色合いを有する着色剤を意味する。少なくとも1種のカラーベースBFは、特に部品上に着色コーティングが得られる場合に存在する。少なくとも1種のカラーベースBFを使用することにより、色合いの高い精度を達成することが可能である。さらに、色合いの高度な多様性が可能であり、これは様々な色合いを有する様々なカラーベースBFを互いと混合し、所望の色合いを達成することができるためである。
【0110】
少なくとも1種のカラーベースBFは、好ましくは特定の総分量で離型剤組成物中に存在する。したがって本発明によると、離型剤組成物が、組成物の総質量に対して5~40wt%、とりわけ10~20wt%の総分量で少なくとも1種のカラーベースBFを含むと有利である。少なくとも1種のカラーベースBFを上記に列挙された総分量で使用すると、色合いの高い強度が確保される。
【0111】
少なくとも1種のカラーベースBFは、少なくとも1種の効果顔料および/または少なくとも1種の着色顔料を含むことが特に好ましい。
【0112】
効果顔料は、コーティングに装飾効果をもたらし、排他的ではないが追加的に、着色効果をもたらすことができる顔料である。効果顔料は、特に小板様の組織構造が顕著である。好ましい効果顔料は、例えば小板状アルミニウム顔料、ゴールドブロンズ、酸化ブロンズおよび/または酸化鉄-アルミニウム顔料などの小板状金属効果顔料、真珠光沢顔料および/または酸化金属-マイカ顔料および/または小板状グラファイト、小板状酸化鉄などの他の効果顔料、PVD膜から構成される多層効果顔料および/または液晶ポリマー顔料である。特に好ましいものは、小板状金属効果顔料、とりわけ小板状アルミニウム顔料および/またはコーティングされた酸化金属-マイカ顔料および/または金属酸化物でコーティングされたボロシリケートである。
【0113】
無機着色顔料の例は、二酸化チタンなどの白色顔料、カーボンブラック、鉄マンガンブラックまたはスピネルブラックなどの黒色顔料、ウルトラマリングリーン、ウルトラマリンブルーまたはマンガンブルー、ウルトラマリンバイオレットまたはマンガンバイオレット、赤色酸化鉄、モリブデートレッドまたはウルトラマリンレッドなどの有彩顔料、褐色酸化鉄、混合ブラウン、スピネルおよびコランダム相、または黄色酸化鉄またはバナジン酸ビスマスである。好適な有機着色顔料の例は、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アントラキノン顔料、ベンズイミイダゾール顔料、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、インダントロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、アゾメチン顔料、チオインジゴ顔料、金属錯体顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、フタロシアニン顔料またはアニリンブラックである。
【0114】
少なくとも1種の効果顔料および/または少なくとも1種の着色顔料は、好ましくはカラーベースBFの総質量に対して0.5~70wt%の総量で存在する。
【0115】
さらに、カラーベースが少なくとも1種のバインダーを含むように準備されてもよい。このバインダーは、顔料の安定した分散のために機能し、それによりカラーベースBFの一部において色合いの高い強度および色合いの高い均質性を確実にする。
【0116】
カラーベースBFに使用されるバインダーは、好ましくはポリウレタンポリマー、とりわけアニオン安定化ポリウレタンポリマーである。アニオン安定化ポリウレタンポリマーは、中和剤によりアニオン性基に変換されうる(すなわち、潜在的にアニオン性基である)少なくとも1種の基を含むポリウレタンポリマーを意味する。中和剤によりアニオン性基に変換されうる潜在的にアニオン性の基の例として、カルボン酸、スルホン酸および/またはホスホン酸基、とりわけカルボン酸基が挙げられる。
【0117】
ポリウレタンポリマーは、イソシアネート基を含有するプレポリマーと、イソシアネート基に対して反応性の化合物の反応により得ることができる。成分は、好ましくは慣例的かつ公知の有機溶媒中で反応される。ここで有機溶媒の量は、幅広い制限内で変化してもよく、好適な粘度のプレポリマー溶液の形成に十分であるべきである。一般的に、固形分含有量に対して最大70wt%、好ましくは5~50wt%、より好ましくは20wt%未満の溶媒が使用される。それゆえ、反応は、例えば特に好ましくは、固形分含有量に対して10~15wt%の溶媒含有量で行われてもよい。
【0118】
この種類のポリウレタンポリマーは、好ましくは1000~30000g/mol、より好ましくは1500~20000g/molの数平均分子量(決定:ポリスチレンを標準として用いたゲル浸透クロマトグラフィー)、および5~70mg KOH/g、より好ましくは10~30mg KOH/g(固形分含有量に対して)の酸価を有し、イソシアネート基を含有するプレポリマーの反応、好ましくは鎖延長により製造可能である。
【0119】
イソシアネート基を含有するプレポリマーは、10~1800、好ましくは50~1200mg KOH/g(固形分含有量に対して)のヒドロキシル価を有するポリオールと過剰のポリイソシアネートを、最大150℃、好ましくは50~130℃の温度で、イソシアネートと反応することができない有機溶媒中で反応させることにより製造されてもよい。NCO基とOH基の当量比は2.0:1:0~>1.0:1.0の間、好ましくは1.4:1~1.1:1の間である。
【0120】
NCOプレポリマーを製造するために使用されるポリオールは、低および/または高分子質量のものであってもよい。アニオン安定化ポリウレタンポリマーを製造するために、ポリオールは、少なくとも1種のアニオン性基および/またはアニオンの形成に適した基を含有する。イソシアネート基を含有するプレポリマーを製造するために、60~400ダルトンの分子量を有する低分子量ポリオールを併用することもできる。
【0121】
高い可撓性を有するNCOプレポリマーを得るために、30~150mg KOH/g(固形分含有量に対して)の好ましいOH価を有する、添加される主に直鎖状のポリオールの分率が高くなければならない。全ポリオールの最大で97wt%が、400~5000ダルトンの数平均分子量Mを有する飽和および不飽和ポリエステルからなってもよい。ポリエステルジオールは、有機ジカルボン酸もしくはそれらの無水物の有機ジオールによるエステル化によって製造されるか、またはヒドロキシカルボン酸もしくはラクトンから誘導される。脂肪族および芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールの反応により得ることができる直鎖ポリエステルを使用することが特に好ましい。
【0122】
NCOプレポリマーは、ポリエステルの他にさらなるポリオールを使用して製造され、少なくとも1種のポリオールは、カルボキシル、スルホン酸および/またはホスホン酸基を有する。使用に好ましいものは、アルファ位の炭素原子上に2個のヒドロキシル基を有するアルカン酸である。これらのポリオールは、分子中に少なくとも1個、一般的には1~3個のカルボキシル基を有する。これらは、2~約25、好ましくは3~10個の炭素原子を有する。カルボキシル含有ポリオールは、NCOプレポリマー中のポリオール構成要素の全体の3~100wt%、好ましくは5~50wt%を占めてもよい。
【0123】
カルボキシル基の中和により塩の形態で入手可能なイオン化可能カルボキシル基の量は、NCOプレポリマーの固形分に対して少なくとも0.4wt%、好ましくは少なくとも0.7wt%である。上限は約12wt%である。中和されていないプレポリマー中のジヒドロキシアルカン酸の量は、10mg KOH/g~40mg KOH/g(固形分含有量に対して)の酸価をもたらす。
【0124】
カルボキシル、スルホン酸および/またはホスホン酸基を有さないさらなるポリオールは、好ましくはC~Cアルカンジオール、特に1,6-ヘキサンジオールから選択される。これらのジオールは、各場合においてアニオン安定化ポリウレタンポリマーの製造に使用される合成成分の総質量に対して、慣例的に0.5~15wt%、好ましくは1~7wt%の量で使用される。
【0125】
アニオン性ポリウレタンポリマーの製造に使用される典型的な多官能性イソシアネートは、分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環式および/または芳香族ポリイソシアネートである。有機ジイソシアネートの異性体または異性体混合物が好ましい。紫外光に対するそれらの高い安定性のために、脂肪族(脂環式)ジイソシアネートは、黄変する傾向が少ない生成物をもたらす。プレポリマーを形成するために使用されるポリイソシアネート成分はまた、ゲル化を引き起こさないことを条件として、わずかな高級ポリイソシアネートを含んでもよい。好適なトリイソシアネートは、ジイソシアネートの三量化もしくはオリゴマー化により、またはジイソシアネートとOHもしくはNH基を含有する多官能性化合物との反応により形成される生成物である。平均官能価は、モノイソシアネートの添加により任意に低減されてもよい。
【0126】
使用されてもよいポリイソシアネートの例として、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ビスフェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロブタンジイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネートおよびトリメチルヘキサンジイソシアネートが挙げられる。
【0127】
高固形分アニオン性ポリウレタンポリマー分散液を製造するために、一般式(IV)
【化1】
(式中、Xは二価の環式および任意に芳香族炭化水素ラジカル、好ましくは任意にハロゲン、メチルまたはメトキシ置換ジシクロヘキシルメチル、ナフチレン、ジフェニレンまたは1,2-、1,3-もしくは1,4-フェニレンラジカル、より好ましくはジシクロヘキシルメチルラジカルであり、RおよびRは、水素または1~4個の炭素を有するアルキルラジカル、好ましくは水素である)
のジイソシアネートが特に使用される。本発明の文脈で特に好ましく使用される式(IV)の1種のジイソシアネートは、4,4’-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(H12MDIとも称される)である。
【0128】
NCOプレポリマーは、固形分に対して少なくとも0.5wt%のイソシアネート基、好ましくは少なくとも1wt%のNCOを含有する。上限は15wt%、好ましくは10wt%、より好ましくは5wt%のNCOである。
【0129】
イソシアネート基を含有するプレポリマーのイソシアネート基は、変性剤または鎖延長剤と反応される。変性剤は、好ましくは鎖延長が生じ、それゆえ分子量が増加するような分量で添加される。使用される変性剤は、好ましくはヒドロキシル基ならびに/または第二級および/もしくは第一級アミノ基を含む有機化合物、特に2、3および/またはそれ以上の官能価を有するポリオールおよび/またはポリアミンである。使用されてもよいポリアミンの例は、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンまたはジエチレントリアミンである。使用されてもよいポリオールの例は、トリメチロールプロパン、1,3,4-ブタントリオール、グリセロール、エリスリトール、メソエリスリトール、アラビトール、アドニトールなどである。トリメチロールプロパンを使用することが好ましい。NCOプレポリマーと変性剤との当量比は、好ましくは2.0:1.0~1.0:2.0の間、とりわけ1.1:1~1:1.1の間である。
【0130】
本発明の文脈では、アニオン安定化ポリウレタンポリマーは、特に好ましくはNCOプレポリマーとポリオール、とりわけトリメチロールプロパンの形態の変性剤との反応により得ることができ、NCOプレポリマーは、
(i)化合物(i)~(iv)の総質量に対して55~70wt%の、固形分含有量に対して40~100mg KOH/gのOH価および1000~3000Daの数平均分子量Mを有する少なくとも1種のポリエステルポリオールであって、好ましくはオレフィン性二重結合を含有しないポリエステルポリオール、
(ii)化合物(i)~(iv)の総質量に対して3~7wt%の、3~8個の炭素原子を有し、かつアルファ位の炭素原子上に2個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のアルカン酸、とりわけジメチロールプロピオン酸、
(iii)化合物(i)~(iv)の総質量に対して0.5~3wt%の少なくとも1種のC~Cアルカンジオール、とりわけ1,6-ヘキサンジオール、ならびに
(iv)化合物(i)~(iv)の総質量に対して25~30wt%の、式(IV)(式中、X=ジシクロヘキシルチルラジカルであり、R=R=水素である)の少なくとも1種のジイソシアネート
の反応によって得ることができる。
【0131】
NCOプレポリマーと変性剤との当量比は、好ましくは2.0:1.0~1.0:2.0の間、とりわけ1.1:1~1:1.1の間である。
【0132】
アニオン安定化ポリウレタンポリマーは、塩基、好ましくは有機塩基、とりわけN,N’-ジメチルエタノールアミンにより中和され、塩基は50%~100%、好ましくは60%~80%の中和度を達成するような分量で添加される。
【0133】
少なくとも1種のバインダー、とりわけ前述のアニオン安定化ポリウレタンポリマーは、好ましくはカラーベースBFの総質量に対して10~80wt%の分量で存在する。
【0134】
カラーベースBFはまた、少なくとも1種の溶媒を含んでもよい。使用できる溶媒は、溶媒L(本発明の組成物の成分(a))との関連で既に上述されたものである。特に好ましく用いられるものは、ブチルグリコールおよび/またはメチルエチルケトンである。
【0135】
したがって、カラーベースBFの1つの特定の好ましい実施形態では、カラーベースBFは、その総質量に対して
(a1)0.5~70wt%の少なくとも1種の効果顔料および/または少なくとも1種の着色顔料、
(a2)10~80wt%のポリウレタンポリマー、アミノ樹脂ポリマー、ポリアクリレートポリマー、ポリエステルポリマーおよびこれらの混合物、とりわけ上記に列挙されたアニオン安定化ポリウレタンポリマーの群から選択される少なくとも1種のバインダー、ならびに
(a3)少なくとも1種の有機溶媒
を含む。
【0136】
離型剤組成物-さらなる構成要素(i)
本発明により使用される離型剤組成物は、上記に列挙された構成要素の他にさらなる構成要素を含んでもよい。さらなる構成要素の例は、添加剤である。
【0137】
少なくとも1種の添加剤は、好ましくは湿潤剤および/または分散剤、レオロジー助剤、流動制御剤、UV吸収剤およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0138】
少なくとも1種の添加剤は、好ましくは組成物の総質量に対して0wt%~10wt%の総分量で存在する。
【0139】
方法工程(B):
本発明の方法の方法工程Bでは、工程(A)で塗布される離型剤組成物をフラッシングする。しかし、上記で既に観察されたように、この工程ではこの組成物の架橋または硬化は行われない。本発明によると、方法工程(B)における離型剤組成物のフラッシングは、好ましくは20秒~120分、より好ましくは20秒~2分、とりわけ25秒~45秒の期間行われる。離型剤組成物の極めて短いフラッシング時間により、フラッシングゾーン領域における時間が節約される。1つの特に好ましい実施形態では、わずか25~45秒のフラッシング時間が必要とされ、その後さらなる方法工程が実行されてもよい。結果として、増産が可能になる。
【0140】
離型剤組成物は、好ましくは工程(B)のフラッシング後に既定の乾燥膜厚が得られるような分量で、工程(A)で塗布される。したがって、方法工程(B)でフラッシングされた離型剤組成物の乾燥膜厚が20~120μm、とりわけ25~100μmであると好ましい。これにより、部品上に生成されたコーティングが、機械的応力負荷および環境的影響への曝露から部品を効果的に保護することが確実になる。
【0141】
離型剤組成物のフラッシングを促進するために、成型ツールを加熱すると有利である。方法工程(B)において、離型剤組成物は、好ましくは20~100℃、より好ましくは30~90℃、非常に好ましくは40~80℃、とりわけ50~70℃の温度でフラッシングされる。前述の温度は、離型剤組成物に存在する溶媒の急速な蒸発、および成型ツールの成型部分の内部の表面上の膜の形成をもたらす。しかし、これらの温度では、離型剤組成物の十分な架橋または硬化は生じない。このようにして、離型剤層および組成物(Z1、Z2)およびさらなる工程で使用される材料(M1)の間の接着性が劣化しないことが確実になる。これは、離型剤と部品を形成する組成物が同時に架橋することで、離型剤により生じるコーティングの部品表面への高い接着性が達成されるためである。
【0142】
方法工程(C):
この方法工程は任意であり、したがって必ずしも実行する必要はない。この工程を実行する場合、少なくとも1種の材料M1を挿入し、成型ツールを加熱して挿入された材料を活性化する。特に好ましくは、方法工程(C)で挿入される材料M1は、アウトソール、とりわけ熱可塑性ポリウレタンから作製されるアウトソールである。熱可塑性ポリウレタンは、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールなどの、数平均分子量が500~10000g/molである高分子質量ポリオールと、ジイソシアネートおよび低分子質量ジオール(M50~499g/mol)との反応により製造されてもよい。しかし、加硫または非加硫ゴム、およびゴムとプラスチックの混合物などの他の材料から作製されたアウトソールを使用することもできる。
【0143】
特に熱可塑性材料M1を使用する場合、方法工程(C)において成型ツールを加熱し、材料を変形可能にすることにより、材料を成型ツールの成型部分に適合させると有利である。したがって、方法工程(C)で、成型ツールを20~100℃、より好ましくは30~90℃、非常に好ましくは40~80℃、とりわけ50~70℃で加熱すると好ましい。成型ツールは、例えば熱を供給すること、またはIR線の照射により加熱されてもよい。好ましくは、成型ツールはIR線を用いて加熱される。
【0144】
さらに、本発明によると、少なくとも1種の材料M1の挿入後に成型ツールを閉鎖し、加熱し、その後再び開くように準備されてもよい。
【0145】
方法工程(D):
方法工程(D)では、組成物Z1を、任意に事前に挿入された材料(M1)を含有する開いた成型ツールに塗布する。
【0146】
組成物Z1は、架橋可能組成物である。したがって、組成物は自己架橋性でなければならないか、または組成物は対応する架橋剤を含まなければならないかのいずれかである。特に好ましくは、方法工程(D)で塗布される組成物Z1は、ポリマー発泡体、とりわけポリウレタン発泡体材料である。
【0147】
本明細書におけるポリマー発泡体として、数ある中でもエラストマー発泡体、とりわけ可撓性発泡体だけでなく、熱硬化性発泡体、とりわけ硬質発泡体が挙げられる。発泡体は、連続気泡、独立気泡または混合気泡発泡体であってもよい。本明細書における発泡体は、一体発泡体として公知のものも含む。
【0148】
特に好ましい発泡体は、ポリウレタン発泡体材料である。これらは、1種または複数のポリオールおよび1種または複数のポリイソシアネートから慣例的に生産される。発泡体を形成するためにポリオール成分に添加される起泡剤は一般的に水であり、水はポリイソシアネートの一部と反応して二酸化炭素を形成するため、反応は発泡を伴う。軟質から弾性の発泡体、特に可撓性発泡体は、長鎖ポリオールを使用して得られる。短鎖ポリオールが使用される場合、高度に架橋された構造が形成され、一般的に硬質発泡体が形成される。ポリウレタン発泡体材料の生産に使用されるポリオールは、好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリエーテルポリオールを含み、したがって好ましくは前述のポリオールの群から選択される。
【0149】
繊維もまた、発泡体配合物に混和されてもよい。そのような配合物が発泡する場合、生成物は繊維強化発泡体として公知である。繊維は、好ましくは硬質発泡体の生産時に使用される。
【0150】
塗布は、原則的に公知のデバイスを用いて行われてもよい。特に好ましくは、組成物Z1は、方法工程(D)で自動的に塗布される。
【0151】
本発明によると、組成物Z1が複数の段階で成型ツールに射出されるように準備されてもよい。これは、特に成型ツールのソール型が複数のフィールドに分割されている場合に行われる。この場合、組成物Z1は第1の段階で第1のフィールドに射出され、第2の段階で第2のフィールドに射出される。この技術は、例えば第1のフィールドがアウトソールを表し、第2のフィールドがはめ込み型ソールフレームを表す場合に利用される。この場合、組成物Z1は、まずソール用の金型区画に射出され、次にはめ込み型ソールフレームの金型区画に射出される。
【0152】
方法工程(E):
本発明の方法の方法工程(E)では、成型ツールを手動で閉鎖する。この場合、閉鎖は液圧により行われてもよく、または機械的な閉鎖により行われてもよい。
【0153】
方法工程(F):
組成物Z1および事前に導入された離型剤組成物の架橋は、本発明による方法の方法工程(F)で行われる。2種の組成物の同時の架橋により、硬化された組成物Z1に対する架橋された離型剤コーティングの高レベルの接着性がもたらされ、それゆえ得られるコーティング部品の機械的および光学的特性が改善する。
【0154】
架橋を達成するために、方法工程(F)は、好ましくは上昇された温度で行われる。したがって、方法工程(F)における架橋が45~75℃、好ましくは50~70℃、とりわけ52~65℃の温度で行われると有利である。
【0155】
方法工程(F)における架橋は、好ましくは1~20分、より好ましくは3~15分、とりわけ4~10分の期間行われる。そのような期間により、離型剤組成物および組成物Z1の十分な架橋が確実になり、したがってコーティングされ硬化された組成物Z1の容易な脱型性も可能になる。
【0156】
方法工程(G):
本発明によると、少なくとも1種のさらなる組成物Z2を塗布し、同様に架橋するように準備されてもよい。方法工程(E)で塗布される組成物Z2は、好ましくはポリマー発泡体、とりわけ好ましくは組成物Z1と異なるポリウレタン発泡体材料である。この方法工程は、所望する回数繰り返されてもよい。したがって、好ましくは同様に互いと異なるさらなる組成物Z3、Z4などを塗布することもできる。組成物は、例えば密度、色または使用される材料が異なってもよい。このようにして多層プラスチックソールを生産することができ、ソールの特性は、組成物Z1、Z2などの選択によって適合される。この工程を行う場合、成型ツール内に組成物Z2が射出される中空区画が形成されるように、好ましくは組成物Z2の射出前に成型ツールの部分を移動させる。これは、例えばコアプレート、または頂部で成型ツールを閉鎖する成型部分を移動させることにより行われてもよい。
【0157】
工程(G)で塗布される組成物の硬化または架橋は、方法工程(F)について記載されたように行われる。
【0158】
方法工程(H):
本発明の方法の方法工程(H)では、成型ツールを手動で開く。本発明によると、成型ツールが開く前に、成型ツールの少なくとも1個の成型部分の位置が、特に液圧により変化するように準備されてもよい。さらに、成型ツールが開く前に、成型ツールを閉鎖するための閉鎖機構が開く必要があるように準備されてもよい。
【0159】
方法工程(I):
本発明の方法の方法工程(I)では、成型されコーティングされた部品を手動で取り出す。部品の取り出しは、助剤を使用して行われてもよい。
【0160】
方法工程(J):
本発明によると、コーティング部品の取り出しに続き、前記部品が後処理されるように準備されてもよい。後処理(J)は、好ましくは生産されたコーティング部品のトリミングおよび/またはポリッシングおよび/またはラッカリングを含む。生産されたコーティング部品を、所望であれば研削手順を伴わずに、任意に簡潔な洗浄後に、例えば1種または複数のベースコート材料および1種または複数のクリアコート材料などのさらなるコーティング用材料で直接コーティングし、それぞれ1種または複数のベースコート膜および1種または複数のクリアコート膜を形成してもよい。生産された部品は、好ましくはサーフェーサーコートでコーティングされない。代わりに、直接ベースコート膜またはトップコート膜、とりわけクリアコート膜が直接塗布される。この場合、ベースコート膜およびクリアコート膜が、別々にまたは一緒に硬化されるように準備されてもよい。
【0161】
ベースコートおよびトップコート、とりわけクリアコート材料として、原則的にラッカリングに従来用いられるすべてのベースコートおよびクリアコート材料をそれぞれ使用することができる。そのようなベースコートおよびクリアコート材料は、例えばBASF Coatings GmbHから入手可能であり、特に好適であることが見出されているクリアコート材料は、とりわけEverGlossの製品ラインのものである。
【0162】
さらなる方法工程:
本発明によると、方法が、必須の方法工程(A)、(B)および(D)から(I)ならびに任意の方法工程(C)および(J)に加え、さらなる方法工程を含むように準備されてもよい。方法は、好ましくは方法工程(I)においてコーティング部品を取り出した後に、成型ツールを洗浄する、とりわけ手動で洗浄するさらなる方法工程を含む。成型ツールは、サンドブラストまたは有機溶媒の使用により洗浄されてもよい。この洗浄工程は、成型ツールの成型部分の表面が、成型部分の表面に対する離型剤組成物の接着性を低下させ、それゆえ離型剤組成物の離型効果を低下させる望まれない汚染物質を有さないことを確実にする。
【0163】
この文脈では、さらなる方法工程が、方法工程(A)~(I)を20~100回、とりわけ20~50回繰り返した後に行われると有利である。20~100個の数のコーティング部品が生産された後に成型ツールを洗浄することにより、成型ツールを1回使用しただけで洗浄する必要がないため、効率的な方法レジームが可能になる。さらに、洗浄廃棄物の分量が低減する。
【0164】
本発明の方法は、射出成型されたコーティング部品を生産することを可能とし、部品は、高価かつ不都合な後処理をさらに伴うことなく加工可能である。再コーティングを伴わない場合でも、離型剤により部品上に得られるコーティングは高度に弾性または可塑性であり、さらにUV耐性であり艶がないため、コーティング部品の損傷のない脱型だけでなく、コーティング部品の生産直後という早期に、UV線、汚れなどの環境的影響に対する生産されるコーティング部品の効果的な保護をもたらす。本発明の方法に使用されるコーティング剤は、同時に離型効果を有するため、この薬剤は離型剤とコーティング剤の両方として使用することができる。したがって、部品の後処理前に高価かつ不都合な除去を要する別個の離型剤を使用する必要がない。さらに、生産されるコーティング部品は、従来の離型剤との組合せで、非常に不規則的な表面を有する部品を生じる発泡体を使用して生産される場合でも、規則的な表面を有する。離型剤のわずかな残留物しか成型ツールに残存しないため、使用される成型ツールは、離型剤のさらなる塗布前に毎回洗浄される必要がない。
【0165】
本発明は、特に以下の実施形態により説明される:
第1の実施形態によると、本発明は、コーティング部品、とりわけプラスチック製ソールの射出成型のための手動の方法であって、以下の工程:
(A)離型剤組成物を、閉鎖可能な成型ツールの少なくとも1個の成型部分の少なくとも1箇所の内部に塗布する工程、
(B)工程(A)で塗布された離型剤組成物をフラッシングする工程、
(C)任意に少なくとも1種の材料M1を挿入し、成型ツールを加熱する工程、
(D)組成物Z1を開いた成型ツールに塗布する工程、
(E)成型ツールを手動で閉鎖する工程、
(F)離型剤組成物および方法工程(D)で塗布された組成物Z1を架橋する工程、
(G)任意に少なくとも1種のさらなる組成物Z2を塗布し、前記組成物を架橋する工程、
(H)成型ツールを手動で開く工程、
(I)成型されたコーティング部品を手動で取り出す工程、ならびに
(J)任意に成型されたコーティング部品を後処理する工程
を示された順序で含み、離型剤組成物が、
(a)少なくとも1種の溶媒L、
(b)一般式(I)
-(C=O)-O-(AO)-R (I)
(式中、Rは6~30個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、
はH、PO(OH)ラジカル、または単糖もしくは二糖の任意に部分的にリン酸化されたラジカル、またはアルジトールの任意に部分的にリン酸化されたラジカルであり、
AOはエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドからなる群から選択される1種または複数のアルキレンオキシドラジカルを表し、
rは0または1であり、sは0~30である)
の少なくとも1種の化合物、
(c)任意に少なくとも1種のポリエーテル変性アルキルポリシロキサン、
(d)一般式(II)
-Si(R-[O-Si(R)(R)]-[O-Si(R-O-Si(R-R (II)
(式中、
およびRは各場合において互いに独立して、メチル基または(HO-CH-C(CH-CH)-CH-O-(CH-*ラジカルであり、
はメチル基であり、
aは0または1~10であり、
bは3~30である)
の少なくとも1種のポリシロキサン、ならびに
(e)任意に少なくとも1種のバインダーB
を含む、方法に関する。
【0166】
第2の実施形態によると、本発明は、離型剤組成物を方法工程(A)で手動でまたは塗布ロボットを使用して塗布する、実施形態1による主導の方法に関する。
【0167】
第3の実施形態によると、本発明は、塗布ロボットを使用する離型剤組成物の塗布の際、直径0.05~1.5mm、好ましくは0.08~1mm、とりわけ0.1~0.8mmのノズルが使用される、実施形態2による手動の方法に関する。
【0168】
第4の実施形態によると、本発明は、方法工程(A)における成型ツールの温度が20~100℃、より好ましくは30~90℃、非常に好ましくは40~80℃、とりわけ50~70℃である、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0169】
第5の実施形態によると、本発明は、離型剤組成物が自動混合系中で準備される、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0170】
第6の実施形態によると、本発明は、自動混合系が、混合装置、とりわけ静的混合機、さらに成分を供給するための少なくとも2つのデバイス、とりわけギアポンプおよび/または圧力弁を含む、実施形態5による手動の方法に関する。
【0171】
第7の実施形態によると、本発明は、離型剤組成物が、DIN EN ISO 2431(2012年3月)に従って測定して10~60秒、とりわけ20~30秒(DIN4フローカップ)の粘度を有する、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0172】
第8の実施形態によると、本発明は、離型剤組成物が、ASTM D2369(2015年)(110℃、60分間)に従って測定して30~60wt%、好ましくは35~55wt%、より好ましくは40~50wt%、とりわけ42~48wt%の固形分含有量を有する、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0173】
第9の実施形態によると、本発明は、少なくとも1種の溶媒Lが、有機溶媒、水およびこれらの混合物から選択され、各場合において組成物の総質量に対して40~70wt%、より好ましくは45~65wt%、非常に好ましくは50~60wt%、とりわけ52~58wt%の総分量で存在する、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0174】
第10の実施形態によると、本発明は、一般式(I)において、Rが10~24個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、RがH、PO(OH)ラジカル、または単糖もしくは二糖の任意に部分的にリン酸化されたラジカル、またはアルジトールの、とりわけソルビトールの任意に部分的にリン酸化されたラジカルであり、AOがエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドからなる群から選択される1種または複数のアルキレンオキシドラジカルを表し、rが0または1であり、sが0または1~25である、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0175】
第11の実施形態によると、本発明は、一般式(I)において、Rが10~24個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、RがH、PO(OH)ラジカル、または単糖の任意に部分的にリン酸化されたラジカル、またはアルジトールの、とりわけソルビトールの任意に部分的にリン酸化されたラジカルであり、AOがエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドからなる群から選択される1種または複数のアルキレンオキシドラジカルを表し、ラジカルAOの全体におけるエチレンオキシドの分率が少なくとも70mol%であり、rが0または1であり、sが0であるかまたはsが6~20である、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0176】
第12の実施形態によると、本発明は、一般式(I)の少なくとも1種の化合物が、各場合において離型剤組成物の総質量に対して0.1~10wt%、より好ましくは0.5~5wt%、とりわけ1.5~4wt%の総分量で存在する、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0177】
第13の実施形態によると、本発明は、ポリエーテル変性アルキルポリシロキサンが、少なくとも1種の構造単位(R(OR)SiO1/2および少なくとも1種の構造単位(RSiO2/2を含み、Rがエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシド基、とりわけエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドおよびブチレンオキシド基の混合物であり、RがC~C10アルキル基、とりわけメチル基である、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0178】
第14の実施形態によると、本発明は、ポリエーテル変性アルキルポリシロキサンの、シロキサンとエチレンオキシド基とプロピレンオキシド基とブチレンオキシド基のモル比が6:21:15:1~67:22:16:1である、実施形態13による手動の方法に関する。
【0179】
第15の実施形態によると、本発明は、ポリエーテル変性アルキルポリシロキサンの構造単位(R(OR)SiO1/2と構造単位(RSiO2/2のモル比が1:10~1:15、とりわけ1:10~1:13である、実施形態13または14のいずれかによる手動の方法に関する。
【0180】
第16の実施形態によると、本発明は、少なくとも1種のポリエーテル変性アルキルポリシロキサンが、各場合において離型剤組成物の総質量に対して0wt%または0.1~6wt%、好ましくは0.5~4wt%、とりわけ0.8~3wt%の総量で存在する、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0181】
第17の実施形態によると、本発明は、一般式(II)において、ラジカルRが(HO-CH-C(CH-CH)-CH-O-(CH-*ラジカルであり、ラジカルRがメチル基であり、ラジカルRがメチル基であり、aが0であり、bが7~14である、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0182】
第18の実施形態によると、本発明は、前記組成物が、少なくとも1種の一般式(II)のポリシロキサンを、各場合において離型剤組成物の総質量に対して0.1~5wt%、好ましくは0.5~4wt%、とりわけ0.8~2.5wt%の総量で含む、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0183】
第19の実施形態によると、本発明は、少なくとも1種のバインダーBが、各場合において組成物の総質量に対して20~50wt%、より好ましくは25~40wt%、とりわけ25~35wt%の総分量(固形分含有量)で存在する、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0184】
第20の実施形態によると、本発明は、バインダーBが、(i)ポリ(メタ)アクリレート、とりわけヒドロキシ官能性および/またはカルボキシレート官能性および/またはアミン官能性ポリ(メタ)アクリレート、(ii)ポリウレタン、とりわけヒドロキシ官能性および/またはカルボキシレート官能性および/またはアミン官能性ポリウレタン、(iii)ポリエステル、とりわけポリエステルポリオール、(iv)ポリエーテル、とりわけポリエーテルポリオール、(v)述べられたポリマーのコポリマー、および(vi)これらの混合物からなる群から選択される、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0185】
第21の実施形態によると、本発明は、バインダーBが、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートおよび/またはポリエステルポリオール、とりわけ少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートと少なくとも1種のポリエステルポリオールの混合物から選択される、実施形態20による手動の方法に関する。
【0186】
第22の実施形態によると、本発明は、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが、50~120mg KOH/g、好ましくは70~95mg KOH/g、とりわけ75~90mg KOH/gまたは80~85mg KOH/gのヒドロキシル価を有する、先行する実施形態20および21のいずれかによる手動の方法に関する。
【0187】
第23の実施形態によると、本発明は、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが1~20mg KOH/g、とりわけ6~14mg KOH/gまたは8~12mg KOH/gの酸価を有し、および/または4000~10000g/mol、好ましくは5000~9000g/mol、より好ましくは5500~8000g/mol、とりわけ6000~7500g/molの数平均分子量Mを有する、先行する実施形態20~22のいずれかによる手動の方法に関する。
【0188】
第24の実施形態によると、本発明は、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが5~15、好ましくは6~14、とりわけ8~12のヒドロキシル官能価を有する、先行する実施形態20~23のいずれかによる手動の方法に関する。
【0189】
第25の実施形態によると、本発明は、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが、
(a1)少なくとも1種のヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル、とりわけ式HC=CR-COO-R-OH(式中、RはHまたはCHであり、Rは2~6個、好ましくは2~4個、より好ましくは2または3個の炭素原子を有するアルキレンラジカルである)の(メタ)アクリル酸エステル、
(a2)少なくとも1種のカルボキシ官能性エチレン性不飽和モノマー、とりわけ(メタ)アクリル酸、および
(a3)少なくとも1種の(メタ)アクリル酸のヒドロキシル不含かつカルボキシル不含エステルおよび/または少なくとも1種のヒドロキシル不含かつカルボキシル不含ビニルモノマー、とりわけスチレン
の反応により製造可能である、先行する実施形態20~24のいずれかによる手動の方法に関する。
【0190】
第26の実施形態によると、本発明は、カルボキシ官能性エチレン性不飽和モノマー(a2)、とりわけ(メタ)アクリル酸が、各場合においてヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの製造に使用されるすべてのモノマーの総質量に対して20~45wt%、好ましくは25~40wt%、とりわけ30~35wt%の総分量で存在する、実施形態25による手動の方法に関する。
【0191】
第27の実施形態によると、本発明は、ビニルモノマー(a3)、とりわけスチレンが、各場合においてヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの製造に使用されるすべてのモノマーの総質量に対して30~60wt%、好ましくは35~55wt%、とりわけ40~50wt%の総分量で存在する、先行する実施形態25または26のいずれかによる手動の方法に関する。
【0192】
第28の実施形態によると、本発明は、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが、各場合において離型剤組成物中に存在するすべてのバインダーの固形分含有量の総質量に対して10wt%~97wt%、好ましくは40~70wt%、とりわけ40~50wt%の総分量で存在する、先行する実施形態20~27のいずれかによる手動の方法に関する。
【0193】
第29の実施形態によると、本発明は、ポリエステルポリオールが100~200mg KOH/g、好ましくは110~180mg KOH/g、とりわけ120~160mg KOH/gのヒドロキシル価を有する、先行する実施形態20~28のいずれかによる手動の方法に関する。
【0194】
第30の実施形態によると、本発明は、ポリエステルポリオールが、0~9mg KOH/g、とりわけ0.2~2mg KOH/gの酸価を有し、および/または800~3000g/mol、好ましくは1000~2000g/mol、とりわけ1000~1600g/molの数平均分子量を有する、先行する実施形態20~29のいずれかによる手動の方法に関する。
【0195】
第31の実施形態によると、本発明は、ポリエステルポリオールが分岐状である、先行する実施形態20~30のいずれかによる手動の方法に関する。
【0196】
第32の実施形態によると、本発明は、ポリエステルポリオールが2.2~4、好ましくは2.5~3.6、とりわけ2.7~3.6のヒドロキシル官能価を有する、先行する実施形態20~31のいずれかによる手動の方法に関する。
【0197】
第33の実施形態によると、本発明は、ポリエステルポリオールが、各場合において組成物中に存在するすべてのバインダーの固形分含有量の総質量に対して40wt%~97wt%、好ましくは40~70wt%、とりわけ50~65wt%の総分量で存在する、先行する実施形態20~32のいずれかによる手動の方法に関する。
【0198】
第34の実施形態によると、本発明は、離型剤組成物が少なくとも1種の架橋剤Vを追加的に含む、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0199】
第35の実施形態によると、本発明は、架橋剤Vがアミノ樹脂、ポリイソシアネート、ブロックポリイソシアネート、ポリカルボジイミド、UV光、熱、光開始剤およびこれらの混合物からなる群から選択される、実施形態34による手動の方法に関する。
【0200】
第36の実施形態によると、本発明は、ポリイソシアネートが2.4超~5、好ましくは2.6~4、より好ましくは2.8~3.6のNCO基官能価を有する、実施形態35による手動の方法に関する。
【0201】
第37の実施形態によると、本発明は、ポリイソシアネートが、少なくとも1個のイソシアヌレート環または少なくとも1個のイミノオキサジアジンジオン環を含む、先行する実施形態35および36のいずれかによる手動の方法に関する。
【0202】
第38の実施形態によると、本発明は、互いと異なる2つのポリイソシアネートが存在し、第1のポリイソシアネートが少なくとも1個のイソシアヌレート環を含み、第2のポリイソシアネートが少なくとも1個のイミノオキサジアジンジオン環を含む、先行する実施形態35および36のいずれかによる手動の方法に関する。
【0203】
第39の実施形態によると、本発明は、少なくとも1種の架橋剤Vが、各場合において離型剤組成物の総質量に対して10wt%~40wt%、好ましくは10~30wt%、とりわけ15~25wt%の総分量で存在する、先行する実施形態34~38のいずれかによる手動の方法に関する。
【0204】
第40の実施形態によると、本発明は、架橋剤Vの官能基、とりわけNCO基またはカルボジイミド基と、架橋剤Vの官能基に対して反応性である少なくとも1種のバインダーBの基、とりわけヒドロキシル基の合計とのモル比が0.4:1~1:1、好ましくは0.65:1~0.85:1、とりわけ0.7:1~0.8:1である、先行する実施形態20~39のいずれかによる手動の方法に関する。
【0205】
第41の実施形態によると、本発明は、離型剤組成物が、少なくとも1種の架橋触媒VKを追加的に含む、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0206】
第42の実施形態によると、本発明は、架橋触媒VKがカルボン酸ビスマスの群から選択される、実施形態41による手動の方法に関する。
【0207】
第43の実施形態によると、本発明は、カルボン酸ビスマスの群からの架橋触媒VKが、一般式(III)
Bi[OOC(C2n+1)] (III)
(式中、n=5~15、好ましくはn=7~13、とりわけn=9~11である)
を有する、実施形態42による手動の方法に関する。
【0208】
第44の実施形態によると、本発明は、少なくとも1種の架橋触媒VKが、各場合において離型剤組成物の総質量に対して0.01wt%~3.5wt%、好ましくは0.1~2wt%、とりわけ0.4~1.5wt%の総分量で存在する、先行する実施形態41~43のいずれかによる手動の方法に関する。
【0209】
第45の実施形態によると、本発明は、離型剤組成物が、少なくとも1種のカラーベースBFを追加的に含む、先行する実施形態のいずれかによる組成物に関する。
【0210】
第46の実施形態によると、本発明は、少なくとも1種のカラーベースBFが、組成物の総質量に対して5~40wt%、とりわけ10~20wt%の総量で存在する、実施形態45による組成物に関する。
【0211】
第47の実施形態によると、本発明は、カラーベースBFが、少なくとも1種の効果顔料および/または少なくとも1種の着色顔料を、好ましくはカラーベースBFの総質量に対して0.5~70wt%の総分量で含む、実施形態45および46のいずれかによる組成物に関する。
【0212】
第48の実施形態によると、本発明は、少なくとも1種の効果顔料(a1)が、小板状金属効果顔料、真珠光沢顔料、酸化金属-マイカ顔料、小板状グラファイト、小板状酸化鉄、PVD膜からの多層効果顔料、液晶ポリマー顔料およびこれらの混合物、とりわけ小板状アルミニウム顔料および/またはコーティングされた酸化金属-マイカ顔料および/または金属酸化物でコーティングされたボロシリケートの群から選択される、実施形態46による組成物に関する。
【0213】
第49の実施形態によると、本発明は、少なくとも1種の着色顔料(a1)が、白色顔料、黒色顔料、有彩顔料、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アントラキノン顔料、ベンズイミイダゾール顔料、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、インダントロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、アゾメチン顔料、チオインジゴ顔料、金属錯体顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、フタロシアニン顔料、アニリンブラックおよびこれらの混合物の群から選択される、実施形態47および48のいずれかによる組成物に関する。
【0214】
第50の実施形態によると、本発明は、カラーベースBFが、ポリウレタンポリマー、アミノ樹脂ポリマー、ポリアクリレートポリマー、ポリエステルポリマーおよびこれらの混合物、特にアニオン安定化ポリウレタンポリマーの群から選択される少なくとも1種のバインダーを、好ましくはカラーベースBFの総質量に対して10~80wt%の総分量で含む、実施形態45~49のいずれかによる組成物に関する。
【0215】
第51の実施形態によると、本発明は、アニオン安定化ポリウレタンポリマーが、NCOプレポリマーとポリオール、とりわけトリメチロールプロパンの形態の変性剤との反応により得ることができ、NCOプレポリマーが、
(i)化合物(i)~(iv)の総質量に対して55~70wt%の、固形分含有量に対して40~100mg KOH/gのOH価、および1000~3000Daの数平均分子量Mを有する少なくとも1種のポリエステルポリオールであって、好ましくはオレフィン性二重結合を含有しないポリエステルポリオール、
(ii)化合物(i)~(iv)の総質量に対して3~7wt%の、3~8個の炭素原子を有し、かつアルファ位の炭素原子上に2個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のアルカン酸、とりわけジメチロールプロピオン酸、
(iii)化合物(i)~(iv)の総質量に対して0.5~3wt%の少なくとも1種のC~Cアルカンジオール、とりわけ1,6-ヘキサンジオール、ならびに
(iv)化合物(i)~(iv)の総質量に対して25~30wt%の、式(IV)(式中、X=ジシクロヘキシルチルラジカルであり、R=R=水素である)の少なくとも1種のジイソシアネート
の反応によって得ることができ、
NCOプレポリマーと変性剤との当量比が2.0:1.0~1.0:2.0の間、とりわけ1.1:1~1:1.1の間である、実施形態50による組成物に関する。
【0216】
第52の実施形態によると、本発明は、アニオン安定化ポリウレタンポリマーが50%~100%、好ましくは60%~80%の中和度を有する、実施形態50および51のいずれかによる組成物に関する。
【0217】
第53の実施形態によると、本発明は、湿潤剤および/または分散剤、レオロジー助剤、流動制御剤、UV吸収剤およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤が追加的に存在する、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0218】
第54の実施形態によると、本発明は、少なくとも1種の添加剤が、組成物の総質量に対して0wt%~10wt%の総分量で存在する、実施形態53による手動の方法に関する。
【0219】
第55の実施形態によると、本発明は、離型剤組成物が、方法工程(B)において20秒~120分、好ましくは20秒~2分、とりわけ25秒~45秒の期間フラッシングされる、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0220】
第56の実施形態によると、本発明は、方法工程(B)でフラッシングされた離型剤組成物の乾燥膜厚が20~120μm、とりわけ25~100μmである、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0221】
第57の実施形態によると、本発明は、離型剤組成物が、方法工程(B)で20~100℃、より好ましくは30~90℃、非常に好ましくは40~80℃、とりわけ50~70℃の温度でフラッシングされる、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0222】
第58の実施形態によると、本発明は、方法工程(C)で挿入される材料M1が、アウトソール、とりわけ熱可塑性ポリウレタンから作製されるアウトソールである、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0223】
第59の実施形態によると、本発明は、成型ツールが、方法工程(C)で20~100℃、より好ましくは30~90℃、非常に好ましくは40~80℃、とりわけ50~70℃で加熱される、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0224】
第60の実施形態によると、本発明は、方法工程(D)で塗布される組成物Z1がポリマー発泡体、とりわけポリウレタン発泡体材料である、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0225】
第61の実施形態によると、本発明は、組成物Z1が方法工程(D)で自動的に塗布される、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0226】
第62の実施形態によると、本発明は、方法工程(F)における架橋が45~75℃、好ましくは50~70℃、とりわけ52~65℃の温度で行われる、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0227】
第63の実施形態によると、本発明は、方法工程(F)における架橋が1~20分の期間、好ましくは3~15分後、とりわけ4~10分後に行われる、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0228】
第64の実施形態によると、本発明は、方法工程(G)で塗布される組成物Z2がポリマー発泡体、とりわけ好ましくは組成物Z1とは異なるポリウレタン発泡体材料である、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0229】
第65の実施形態によると、本発明は、後処理(J)が、生産されコーティングされた部品のトリミングおよび/またはポリッシングおよび/またはラッカリングを含む、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0230】
第66の実施形態によると、本発明は、後処理(J)がラッカリングを含み、部品のコーティングに、中間の研削手順を伴わずに、少なくとも1種のベースコート膜および/または少なくとも1種のクリアコート膜が塗布され、ベースコート膜およびクリアコート膜が別々にまたは一緒に硬化される、実施形態65による手動の方法に関する。
【0231】
第67の実施形態によると、本発明は、方法工程(I)においてコーティング部品を取り出した後に、成型ツールを洗浄する、とりわけ手動で洗浄するさらなる方法工程を含む、先行する実施形態のいずれかによる手動の方法に関する。
【0232】
第68の実施形態によると、本発明は、さらなる方法工程が、方法工程(A)~(I)を20~100回、とりわけ20~50回繰り返した後に行われる、実施形態67による手動の方法に関する。
【実施例
【0233】
方法の説明:
1.固形分含有量(固形分、不揮発分率)
ASTM D2369(日付:2015年)により不揮発分率を決定する。この手順では、2gの試料を事前に乾燥したアルミニウム皿に量り入れ、試料を乾燥キャビネット中110℃で60分間乾燥し、乾燥器中で冷却して再度計量する。導入された試料の総量に対する残余が不揮発分率に相当する。
【0234】
2.脱型エネルギーの決定
この場合、寸法2.5×4cmの接着片(TESA4651、Tesa社データシートを参照されたい)を成型ツールの上側に結合させる。事前に接着テープの一端を一回折り返して輪を作り、それを通して穴を穿孔する。ばね秤をこの穴の中に吊るす。メスを使用してコーティング膜を接着テープの周りから切り取り、10cmの既定の領域を作る。取り出し方向は成型ツールに直交する。
【0235】
3.さらなる加工のための能力
それぞれの離型剤組成物を成型ツール表面に55℃で塗布した。塗布終了直後、爪先を使い、液体離型剤組成物を5秒間のサイクルで可能な限り均一に/一定の圧力で軽く叩いた。それぞれの離型剤組成物は、完全に乾燥するとすぐにさらなる加工のための能力を有したが、成型ツールから脱着できなかった。
【0236】
4.酸価の決定
酸価は、DIN EN ISO 2114(日付:2002年6月)により「方法A」を使用して決定する。酸価は、DIN EN ISO 2114に明記される条件下で、1gの試料を中和するのに必要とされるmg単位の水酸価カリウムの質量に相当する。ここで報告される酸価は、DIN規格に明記される全酸価に相当し、固形分含有量に対するものである。
【0237】
5.OH価の決定
OH価はDIN 53240-2により決定する。OH基をアセチル化により過剰の無水酢酸と反応させる。次に、水を添加して過剰の無水酢酸を分解し、酢酸を形成して、すべての酢酸をエタノールKOHで逆滴定する。OH価は、1gの試料のアセチル化で結合される酢酸の量に匹敵する、mg単位のKOHの分量を表す。OH価は、試料の固形分含有量に対するものである。
【0238】
6.数平均および質量平均分子量の決定
数平均分子量(M)は、DIN 55672-1(2016年3月)に従いゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定する。この方法は、数平均分子量の他に、質量平均分子量(M)および多分散度d(質量平均分子量(M)と数平均分子量(M)との比)を決定するためにも使用できる。溶離液としてテトラヒドロフランを使用する。決定はポリスチレン標準に対して行う。カラム材料は、スチレン-ジビニルベンゼンコポリマーからなる。
【0239】
作業実施例
本発明の実施例および比較例は、以下で本発明を明瞭にするために機能するが、制限を課すものと解釈されるべきではない。
【0240】
述べられる配合物の構成要素およびそれらの分量に関して以下のことが留意されるべきである:市販製品への言及は、構成要素のために選択された特定の主な名称とは無関係に、まさにその市販製品に対するものである。
【0241】
1.使用される離型剤組成物
表1に報告される構成要素を均質に混合することにより、離型剤組成物Z1~Z6のそれぞれを得る。
【0242】
【表1】
【0243】
1)82.5mg KOH/gのヒドロキシル価、10mg KOH/gの酸価、約6800g/molのMn、約17000g/molのMwを有するヒドロキシル官能性ポリ(メタ)アクリレート(BASF SE)、
2)115mg KOH/gのヒドロキシル価および約3.5のヒドロキシル官能価を有するポリエステルポリオール(Covestro)、
3)式R1-(C=O)r-O-(AO)s-R2の化合物の混合物であって、(a)R1=12~22個の炭素原子を有する飽和および不飽和炭化水素ラジカルの混合物であり、r=0であり、AO=主にエチレンオキシド単位とわずかなプロピレンオキシド単位の混合物であり、R2=H(Mn≒650g/mol)である、かつ(b)R1=21個の炭素原子を有する不飽和炭化水素ラジカルであり、s=0であり、R2=Hである、から構成される混合物(Muench Chemie International GmbH)、
4)ポリエーテル変性メチルポリシロキサン(Borchers GmbH)、
5)上記に列挙されたラジカルを有する式(III)のヒドロキシ変性ポリシロキサン(Siltec GmbH&Co.KG)、
6)UV吸収剤A8 (BASF Corporation)、
7)ネオデカン酸ビスマス(King Industries)、
8)NCO含有量が11.0wt%であるイソシアヌレート型のヘキサメチレンジイソシアネートトリマー(Covestro)、
9)ポレウレタンの水性分散液(Stahl Holdings B.V.製)、
10)ポリカルボジイミドの水性分散液(Stahl Holdings B.V.製)、
11)カラーベースBFは、55-M 1 1L Effect Additive、55-A 098 0.5Lストーンホワイト、55-M 141 0.5Lイエロー、55-M 306 1Lラストレッド、55-A 556 1Lオーシャンブルー2、55-A 640 1Lブルーグリーン、55-A 974 1L ティンティングブラック、55-M 99-21 1.0Lクリスタルシルバーコアース、55-M 800 1Lパールレッドブラウンから選択される。
【0244】
2.成型ツールの表面に対する離型剤組成物の接着力の決定
接着力を上述のように決定する。結果を表2に再現する。
【0245】
【表2】
【0246】
1)Acmosil 36-5645-19(水中のポリシロキサンと他の有効成分のエマルション)
【0247】
本発明により使用されない組成物Z1は、接着テープが5ニュートンにおいて層間剥離を生じたため、成型ツールから剥離できなかった。追加的に、組成物Z1の塗布前に外部離型剤(水性離型剤WT)を塗布すると、離型性が著しく改善した。本発明により使用される組成物Z2およびZ4は、追加的な外部離型剤を使用しない場合でも高い脱型性を示し、実際に組成物Z1およびZ3と外部離型剤(WT)の組合せより良好な脱型性が達成された。本発明により使用される組成物Z2およびZ4の脱型性は、追加的な外部離型剤(水性離型剤WT)を使用することでさらに改善しうる。さらに、少なくとも1種のカラーベースBFを添加しても接着力は増加せず、したがって組成物の容易な脱型性は、顔料による悪影響を受けない(組成物Z2およびZ6を参照されたい)。
【0248】
3.さらなる加工時間の決定
さらなる加工時間を上述のように決定する。結果を表3に再現する。
【0249】
【表3】
【0250】
表3では、本発明により使用される組成物Z2およびZ4が、本発明によらない組成物Z1およびZ3より短いフラッシング時間を有することが明らかである。さらに、カラーベースBFの添加は、フラッシング時間に悪影響を及ぼさない(組成物Z2およびZ6を参照されたい)。これらの短いフラッシング時間は、方法工程(B)の短い操作時間を可能にし、それゆえ効率的な方法レジームを可能にする。
【0251】
4.コーティング部品の生産および試験
4.1コーティング部品の生産
離型剤組成物Z1~Z6を、パネルの形態の成型ツール(金型はアルミニウム合金からなり、パネルサイズ:構築されていない状態で200mm×200mm×20mmである)の表面にそれぞれ手動で空気圧により塗布した(ノズル1.0を備えたSATA Jet 4000 B HVLP)(方法工程(A))。成型温度は55℃または65℃であった。次に、コーティング剤層をフラッシングする(フラッシング時間:20~90秒、乾燥膜厚:約80μm(光学顕微鏡検査による))(方法工程(B))。
【0252】
フラッシング操作後、ポリエステルベースのポリウレタン発泡体系を射出する(方法工程(D))。この系は、A成分(100wt%のポリオール混合物270/401)および10.6wt%のElastopan S 7429/155触媒2)を含有する)とB成分(Iso 187/683)を含有する)を100:84の比で混合することにより得ることができる。発泡体密度は280~320kg/mである。
51mg KOH/gのOH価を有するポリエステルポリオール混合物(BASF Italia S.p.A.)
18.7%のNCO含有量を有する4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートベースのイソシアネート(BASF Italia S.p.A.)
3.9wt%の水分含有量を有する脂肪族第三級アミン、グリコールおよび安定剤の混合物(BASF Italia S.p.A.)
【0253】
成型ツールを閉じた後(方法工程(E))、分離した材料の層の架橋または硬化を行い、さらにポリウレタン発泡体の形成を、閉鎖された金型中55℃または65℃で4分間にわたり行った(方法工程(F))。
【0254】
4分の硬化時間の経過後、金型を開く(方法工程(H))。コーティングされた発泡体材料を、開いたツールから助剤無しで容易かつ完全に手動で取り出すことができた(方法工程(I))。しかし、組成物Z2、Z4、Z5およびZ6(本発明)を使用して生産された部品の表面のみが、履物産業で要求される艶消し性に適合する。組成物Z1およびZ3(本発明によらない)を使用して生産された部品の表面は非常に艶やかである。
【0255】
4.2 耐屈曲疲労性試験
上記で生産された部品を使用して、ASTM D1052:2009に従い、60°の屈曲角度を用いて耐屈曲疲労性試験を行った。各場合において100000サイクルにわたり試験を行い、50000サイクル後、およびその後さらに10000サイクルごとに、コーティングの表面に対する損傷の存在について部品を検査する。
【0256】
100000サイクル後であっても、本発明の方法によりコーティングされた部品は表面の損傷を示さなかった。したがって、この方法により達成されるコーティングは、生産後の部品の顕著な脱型性をもたらすだけでなく、部品に対する高い接着性および高い可撓性を示す。このため、コーティングはまた極めて頑強であり、したがって真空ホイルプロセスで発生する種類の応力白化を生じない。
【0257】
4.3 摩擦堅牢度
離型剤組成物Z6を使用して生産される部品の摩擦堅牢度を、DIN EN ISO 11640:2017-05に基づいて試験した。この目的のために、それぞれの部品をSDL Atlas Crockmeter内にクランプした。市販のグレードP280の研磨紙を使用して、9Nの押圧力で、ストローク長を5cmとした前後25回のストロークにわたり部品のラッカリングされた面を摩擦した。その後、研磨紙上の着色残留物およびコーティングの表面を検査した。研磨紙はコーティングの残留物をわずかに有したが、コーティングに対する視認可能な損傷は存在しなかった。したがって、本発明の方法は、良好な摩擦堅牢度を示すコーティングをもたらす。
【0258】
4.4 移行堅牢度
圧力下での顔料の移行挙動を調査するために、DIN EN ISO 15701:2015-07に従い1-NOVOラッカー系を調査した。この場合、離型剤組成物Z6でコーティングされた部品のラッカリングされた面を、James Heal製PVC膜(EN ISO 15701に準拠する)で覆った。部品とPVC膜をJames Heal Perspirometer内で2枚のガラス板の間にクランプし、4.5kgの重りで加重した。その後、Perspirometerを50℃で16時間保管した。保管時間の終了時に、実験装置を再び取り外し、PVC膜を変色について検査した。試験された部品では、PVC膜の変色は見られなかった。したがって、コーティング部品の移行堅牢度は高い。
【0259】
4.5 色合いの精度、色合いの強度
部品B1(色付けされた離型剤組成物Z6でコーティングされた、色付けされていない発泡体系)の色合いの精度および強度を、部品B2(色付けされていない離型剤組成物Z2でコーティングされた、青色に色付けされた発泡体系)の色合いの強度とともに目視で評価した。得られた結果は以下であった(評定1:色合いの精度はOEM車両仕上げと同等である、すなわち色合いの強度が非常に高い、評定2:色合いの精度はOEM車両仕上げのものより低い、すなわち色合いの強度が高い、評定3:色合いの精度はOEM車両仕上げのものより著しく低い、すなわち色合いの強度が低い)。
【0260】
【表4】
【0261】
上記の表から明らかなように、色付けされた離型剤組成物を用いた本発明の方法による部品のコーティング(部品B1)は、発泡体材料の色付け(部品B2)よりも高い色合いの精度および色合いの強度をもたらす。
【0262】
4.6 適合性
コーティング用材料組成物と部品の生産に使用される発泡体組成物の適合性を決定するために、4.1に記載されるように部品を生産した。離型剤組成物Z2、ワックスベースの離型剤(Muench Chemie)およびシリコンベースの離型剤(Muench Chemie)を使用して部品を生産した。離型剤と部品の生産に使用される発泡体系の適合性を目視で評価し、不適合性は発泡体の膨らみおよびへこみによって現れる。得られた結果は以下の通りであった(評定1:非常に良好な適合性、評定2:良好な適合性、評定3:満足な適合性、評定4:十分な適合性)。
【0263】
【表5】
【0264】
表4から、本発明の方法に使用される離型剤組成物Z2は、部品の生産に使用される発泡体系との非常に良好な適合性を示すことが明らかである。本発明により生産された部品(B1)は、膨らみまたはへこみを有さない。対照的に、本発明によらず生産された部品(B2、B3)は、離型剤と発泡体系の間の単に満足なまたは十分な適合性のために、膨らみおよびへこみを有する。
【0265】
4.7 部品の生産に使用される組成物の流動特性に対する離型剤組成物の効果
部品の生産に使用される発泡体組成物に対する離型剤組成物の効果を決定するために、4.1に記載されるように部品を生産した。部品は、離型剤組成物Z2(本発明の部品B1)および水性離型剤(MP6032-5、Muench Chemie)(本発明によらない部品B2)を使用して生産した。使用した成型ツールは、単純な形状を有する成型ツール、履物ソールの形態のより複雑な形状を有する成型ツール、およびわずか数ミリメートル幅のストラットを含む、角度がついた形状を有する成型ツールであった。脱型および発泡体系による成型ツールの充填をそれぞれ目視で評価した。得られた結果は以下の通りであった(評定1:非常に良好な脱型または流動特性の非常に高い改善、評定2:良好な脱型または流動特性の高い改善、評定3:満足な脱型または最小限の部品の欠陥、評定4:十分な脱型または多数の部品の欠陥)。
【0266】
【表6】
【0267】
表5から、本発明の方法を用いると、非常に複雑な形状の成型ツールを使用した場合でも顕著な脱型性が達成されることが明らかである。さらに、本発明の方法を用いると発泡体系の流動特性が改善するため、成型ツールの狭い空洞であっても発泡体組成物により完全に充填することができる。これにより、複雑な形状の部品の欠陥のない生産が可能になる。対照的に、本発明によらない方法は、より複雑な成型ツールの場合により低い脱型性をもたらす。さらに、この方法を用いると、特に複雑な成型ツールの場合、空洞の不十分な充填のために欠陥が生じる。