(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】基材をコーティングするための自己離型性顔料着色インモールドコーティング(IMC)
(51)【国際特許分類】
C09D 183/04 20060101AFI20240329BHJP
C09D 7/41 20180101ALI20240329BHJP
C09D 171/02 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
C09D183/04
C09D7/41
C09D171/02
(21)【出願番号】P 2021527813
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2019080638
(87)【国際公開番号】W WO2020104214
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-11-07
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】ロイター,カリン
(72)【発明者】
【氏名】フェデラー,レア
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンツェン,ジモン
(72)【発明者】
【氏名】コック,アイレーン
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-144287(JP,A)
【文献】特開平08-217979(JP,A)
【文献】特開2000-265068(JP,A)
【文献】特開2011-099097(JP,A)
【文献】特開2010-144046(JP,A)
【文献】特開2009-154457(JP,A)
【文献】特開2017-186704(JP,A)
【文献】特開2016-016368(JP,A)
【文献】特開2018-028049(JP,A)
【文献】特開2000-103015(JP,A)
【文献】特開平03-159709(JP,A)
【文献】特開2001-018808(JP,A)
【文献】特開平07-329099(JP,A)
【文献】特開2009-155272(JP,A)
【文献】特開2000-178571(JP,A)
【文献】TSF451シリーズ,日本,モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社,1985年03月,p.1-20
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の溶媒L、
(b)一般式(I)
R
1-(C=O)
r-O-(AO)
s-R
2 (I)
(式中、R
1は、6から30個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、
R
2は、H、PO(OH)
2ラジカル、または単糖もしくは二糖の任意に部分的にリン酸化されたラジカル、またはアルジトールの任意に部分的にリン酸化されたラジカルであり、
AOは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドからなる群から選択される1種または複数のアルキレンオキシドラジカルを意味し、
rは0または1であり、sは0から30である
が、rとsが共に0であることは無い)
の少なくとも1種の化合物、
(c)任意に、少なくとも1種のポリエーテル変性アルキルポリシロキサン、
(d)一般式(II)
R
3-Si(R
4)
2-[O-Si(R
4)(R
5)]
a-[O-Si(R
4)
2]
b-O-Si(R
4)
2-R
3 (II)
(式中、
R
3
ラジカルが、(HO-CH
2
)
2
-C(CH
2
-CH
3
)-CH
2
-O-(CH
2
)
3
-
*
ラジカルであり、R
4
ラジカルがメチル基であり、
R
5はメチル基であり、
aは、
0であり、
bは
7から
14である)
の少なくとも1種のポリシロキサン、
(e)少なくとも1種のカラーベースBF、および
(f)任意に、少なくとも1種のバインダB
を含む顔料着色組成
物。
【請求項2】
一般式(I)において、R
1が、10から24個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、R
2が、H、PO(OH)
2ラジカル、または単糖の任意に部分的にリン酸化されたラジカル、もしくはアルジトー
ルの任意に部分的にリン酸化されたラジカルであり、AOが、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドからなる群から選択される1種または複数のアルキレンオキシドラジカルを意味し、AOラジカルの全体におけるエチレンオキシド画分が、少なくとも70mol%であり、rが0または1であり、sが0であるかまたはsが6から20である、請求項1に記載の顔料着色組成物。
【請求項3】
一般式(I)の少なくとも1種の化合物が、各場合において、前記組成物の合計質量に対して0.1から10wt
%の合計量で存在する、請求項1または2に記載の顔料着色組成物。
【請求項4】
前記ポリエーテル変性アルキルポリシロキサンが、少なくとも1つの構造単位(R
7)
2(OR
6)SiO
1/2および少なくとも1つの構造単位(R
7)
2SiO
2/2を含み、R
6が、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシド
基であり、R
7が、C
1~C
10アルキル
基である、請求項1から3のいずれか一項に記載の顔料着色組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のポリエーテル変性アルキルポリシロキサンが、各場合において、前記組成物の合計質量に対して0wt%、または0.1から6wt
%の合計量で存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載の顔料着色組成物。
【請求項6】
一般式(II)の少なくとも1種のポリシロキサンを、各場合において、前記組成物の合計質量に対して0.1から5wt
%の合計量で含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載の顔料着色組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種のカラーベースBFが、前記組成物の合計質量に対して5から40wt
%の合計量で存在する、請求項1から
6のいずれか一項に記載の顔料着色組成物。
【請求項8】
前記カラーベースBFが、その合計質量に対して、
(a1)0.5から70wt%の、少なくとも1種の効果顔料および/または少なくとも1種の着色顔料、
(a2)ポリウレタンポリマー、アミノ樹脂ポリマー、ポリアクリレートポリマー、ポリエステルポリマーおよびそれらの混合物の群から選択される、10から80wt%の少なくとも1種のバインダ、ならびに
(a3)少なくとも1種の有機溶媒
を含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載の顔料着色組成物。
【請求項9】
少なくとも1種のバインダBをさらに含む、請求項1から
8のいずれか一項に記載の顔料着色組成物。
【請求項10】
前記バインダBが、(i)ポリ(メタ)アクリレー
ト、(ii)ポリウレタ
ン、(iii)ポリエステル
、(iv)ポリエーテ
ル、(v)先述のポリマーのコポリマー、ならびに(vi)それらの混合物からなる群から選択される、請求項
9に記載の顔料着色組成物。
【請求項11】
少なくとも1種の架橋剤Vをさらに含む、請求項1から
10のいずれか一項に記載の顔料着色組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種の架橋剤Vが、各場合において、前記組成物の合計質量に対して10wt%から40wt
%の合計量で存在する、請求項
11に記載の顔料着色組成物。
【請求項13】
(A)請求項1から
12のいずれか一項に記載の顔料着色組成物を成形型の表面に適用して、コーティング材料フィルムを形成する工程、
(B)前記コーティング材料フィルムをフラッシュする工程、
(C)部品を形成する組成物を、フラッシュした前記コーティング材料フィルムに適用する工程、
(D)前記組成物および前記コーティング材料フィルムを架橋する工程、ならびに
(E)続いて、コーティングされた部品を取り出す工程
により、コーティング成形品を生成するための方法。
【請求項14】
部品の生成に使用される組成物の流動挙動を改善するための、請求項1から
12のいずれか一項に記載の顔料着色組成物を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールドコーティング法における部品のコーティングに好適な顔料着色組成物、部品をコーティングするための方法、および部品の生成に使用される組成物の流動挙動の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
層の厚さが様々な多種多様な部品は、今日では大半が射出成形法によって生成されている。しかし、ある材料、とりわけ低密度のフォームは、汚染しやすさ、UV安定性、および無欠陥加工の問題を呈し得るので、部品の生成に適さない。しかしながら、特に履物底を生成する分野、または家具産業の分野において、継続して、履物または張り椅子生成用のそのような部品の要望がある。そのような部品に向上した保護を付与する一手段は、コーティングによるものである。コーティングは、一方では部品に対して有効な接着性を有さなければならず、他方では、コーティングされた部品を、高い機械的応力を伴う場所においてさえ用いられるようにするのに十分なほど可撓性および弾性でなければならない。
【0003】
部品は現在のところ、通常生成された後で、例えばオーバーモールディング加工で、または後続のラッカー加工によりコーティングされる。しかしそのような加工は、生成後のさらなる加工工程が必要なので、非効率的である。さらに、例えば、ベースコートおよび/もしくはクリアコートを用いたさらなるコーティング、または他の部品に対する接着結合の前に、部品を生成する際に使用され、成形型からの部品の脱型を損傷なしで可能にする外部離型剤を除去する必要があり、そのような除去は、コストがかかり不便なクリーニングプロセスを伴う。さらに、使用される成形型も、継続してクリーニングを施さなければならない。外部離型剤の使用に関連するさらなる欠点は、離型剤と部品の生成に使用される組成物との間で、および/または離型剤と成形型との間で、頻繁に適合性を欠くことが挙げられ、これが接着性の問題を引き起こす。外部離型剤が使用される場合、さらに、プロセスのコストおよび複雑さ、ひいては作業時間が増大する。さらに、外部離型剤の使用により、生成された部品に頻繁に光沢面が生じ、これはとりわけ履物産業で望ましくない。とりわけ部品を生成するためにフォームを使用する場合、さらに凹凸表面構造、とりわけ粗い表面構造、またいくつかの場合ではファイバーまたは細孔が露出したものが得られ、外部離型剤を使用することにより、またはコーティングフィルム、一般に、サーフェーサーコート、ベースコートおよびクリアコートを用いた後続のコーティングによってのいずれかでは完全に排除できない。
【0004】
したがって、材料を生成中に直接コーティングすること、およびそれにより別々のコーティング工程なしで行うことが望ましい。生成中に部品のコーティングを可能にする有望な加工の1つは、インモールド加工である。この加工を用いて、成形を、成形型、例えば望ましい印刷または構造を有する布、紙、突板またはホイルに既に挿入された基材上で実行する。ここでも同様に、生成された部品の損傷を伴わない脱型を確実にするために、外部離型剤の適用が必要である。
【0005】
さらに、材料は、生成中に特定の色相に直接着色されること、それにより別々のラッカー工程なしで行うことが望ましい。これは、フォームをマスターバッチ加工で着色する、かつ/または、真空加工を使用して、それらを着色したホイルで被覆する従来技術において公知の実務である。しかしこれらの方法では、色相精度が高くならない。真空ホイルコーティングの場合では、さらに応力白化、皺、およびエッジマスキングに関する問題の事例もある。フォームが着色される場合、限定された色しか選択できない。さらに、多量の顔料画分をフォームに添加して、とりわけ濃い色相を得ると、フォームの性能が失われるおそれがある。
【0006】
したがって、部品のコーティングを顔料着色し、安定にし、かつ可撓性にすることを可能にするだけではなく、同時に生成された部品を損傷なしで離型させ、それにより外部離型剤の使用も避ける組成物が利点になり得る。組成物は、高い色相精度、色相安定性、色相強度、および色相均一性を有するコーティングを生じさせなければならず、かつ、さらに高い色相多様性を実現しなければならない。さらに、組成物から生じたコーティングは、凹凸および/または光沢表面を呈すべきではない。さらに、コーティングは、部品の生成に使用される材料の流動挙動をより良好にして、それにより、複雑な形状、例えば、履物底または数ミリメートル幅の支柱を有する部品の無欠陥生成さえ可能にすべきである。さらに、コストがかかり不便なクリーニングおよび/または粉砕工程なしで、商用のベースコートおよび/もしくはクリアコート材料を使用して、コーティングされた生成された部品の上塗りを可能にしなければならず、かつ/または、接着剤を使用してそれらを結合させなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明が取り組む問題は、外部離型剤を使用せずに、通常金属製の型面からの損傷なしの脱型を可能にする一方、同時に高い色相精度、色相安定性、色相強度、および色相均一性を呈し、高い色相多様性を確実にし、かつ基材に対して傑出した接着性を保証することを可能にする、顔料着色されたコーティング材料を提供することであった。さらに、コーティングは、後続するコストがかかり不便なクリーニングおよび/または粉砕工程なしで、例えばベースコートおよびクリアコートとしての別のコーティングフィルムで上塗りできなければならない。詳細には、フォームまたは多孔表面を有する他の材料さえも、高度に弾性、可撓性、さらにUV耐性の顔料着色された被覆を備えて継ぎ目なく提供できなければならない。作業時間を短くするために、さらに、顔料着色されたコーティング材料は、短いフラッシュ時間を呈さなければならない。さらに、顔料着色されたコーティング材料は、コーティング成形品の生成に使用される組成物の流動性も改善して、したがって、複雑な形状の無欠陥の部品の生成さえ可能にしなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
先述の問題は、
(a)少なくとも1種の溶媒L、
(b)一般式(I)
R1-(C=O)r-O-(AO)s-R2 (I)
(式中、R1は、6から30個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、
R2は、H、PO(OH)2ラジカル、または単糖もしくは二糖の任意に部分的にリン酸化されたラジカル、またはアルジトールの任意に部分的にリン酸化されたラジカルであり、
AOは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドからなる群から選択される1種または複数のアルキレンオキシドラジカルを意味し、
rは0または1であり、sは0から30である)
の少なくとも1種の化合物、
(c)任意に、少なくとも1種のポリエーテル変性アルキルポリシロキサン、
(d)一般式(II)
R3-Si(R4)2-[O-Si(R4)(R5)]a-[O-Si(R4)2]b-O-Si(R4)2-R3 (II)
(式中、
R3およびR4は、各場合において互いに独立して、メチル基または(HO-CH2)2-C(CH2-CH3)-CH2-O-(CH2)3-*ラジカルであり、
R5はメチル基であり、
aは、0または1から10であり、
bは3から30である)
の少なくとも1種のポリシロキサン、
(e)少なくとも1種のカラーベースBF、および
(f)任意に、少なくとも1種のバインダB
を含む顔料着色組成物、より詳細には顔料着色コーティング材料組成物により解決できることを見出した。
【0009】
さらに、問題は、
(A)本発明の顔料着色組成物を成形型の表面に適用して、コーティング材料フィルムを形成する工程、
(B)コーティング材料フィルムをフラッシュする工程、
(C)部品を形成する組成物を、フラッシュしたコーティング材料フィルムに適用する工程、
(D)組成物およびコーティング材料フィルムを架橋する工程、ならびに
(E)続いて、コーティングされた部品を取り出す工程
により、コーティング成形品を生成するための方法によって解決された。
【0010】
最後に、問題は、部品の生成に使用される組成物の流動挙動を改善するための、本発明の顔料着色組成物を使用する方法によって解決された。
【0011】
上述の顔料着色組成物は、以下で本発明の組成物とも称され、したがって本発明の主題である。本発明の組成物の好ましい実施形態は、以下の説明から、また従属請求項から明白である。
【0012】
フラッシュおよび架橋時間が短いため、本発明の顔料着色組成物は、短い作業時間を可能にするだけではなく、コーティングされた生成された部品の損傷なしの脱型にもつながる。さらに、本発明の顔料着色組成物は、色相精度、色相安定性、色相強度および色相均一性を高くし、高い色相多様性も確実にする。さらに、本発明の顔料着色組成物を用いて、金属、真珠、およびフリップフロップのような効果を生成すること、または異なる色相を有する組成物を適用することによりフェーディング効果を得ることも可能である。この組成物は、さらに、生成された部品への高い接着性を呈し、コストがかかり不便なクリーニングおよび/または粉砕工程なしで、商用のベースコートおよび/もしくはクリアコート材料での後コーティング、および/または接着結合を可能とする。組成物により部品上に得られたコーティングは、後コーティングなしでも、高度に弾性または可撓性、またUV-安定性であり、一定のつやまたはマット感を呈するので、生成直後に早くも、言い換えれば部品のさらなる処理なしで、コーティングされた部品を損傷なしで脱型させるだけではなく、コーティングされた生成された部品の、環境的影響、例えばUV照射、泥などに対する有効な保護も生じる。さらに、コーティングされた生成された部品は、際立って凹凸表面を有する部品を生じる従来の離型剤組成物と組み合わせたフォームを使用して生成された場合でさえも規則的な表面を有する。さらに、本発明の組成物により流動挙動が改善されるので、複雑な形状を有する部品を欠陥なしで生成することも可能であったが、履物底、また数ミリメートル幅の支柱を有する部品がその例である。このように、複雑な形状さえも組成物で完全に充填される。成形型には組成物の小さな残渣しか残らないので、使用される成形型は、組成物をさらに適用する前にその都度クリーニングする必要はない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
第一に、本発明に関して使用されるいくつかの用語を明瞭にする。
【0014】
本発明による「ポリエーテル変性アルキルポリシロキサン」という用語は、末端および/または主鎖においてポリエーテル基で変性したアルキルポリシロキサンを表す。これらのポリエーテル基は、アルキルポリシロキサンのケイ素原子に直接、および/またはアルキル基を経由して結合し得る。ポリエーテル基は、好ましくはアルキルポリシロキサンのケイ素原子に直接結合する。存在する好ましいポリエーテル基は、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシド基である。
【0015】
本発明の意味において、またDIN EN ISO 4618(ドイツ語版、2007年3月付け)に従って、「バインダ」という用語は、好ましくは、組成物中に含まれるある顔料およびフィラーを除いて、フィルム形成に寄与する本発明の組成物、より詳細には、フィルム形成に寄与するポリマー樹脂の非揮発性画分を指す。非揮発性画分は、実施例セクションに記載されている方法により判定され得る。
【0016】
「ポリ(メタ)アクリレート」という用語は、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートの両方を指す。ポリ(メタ)アクリレートは、したがって、アクリレートおよび/またはメタクリレートで構成され得、エチレン性不飽和モノマー、例えばスチレンまたはアクリル酸をさらに含み得る。
【0017】
「脂肪族ラジカル」という用語は、本明細書では、非環状または環状飽和または不飽和炭素化合物のラジカルを指し、このラジカルは、芳香族構造を含有しない。しかし脂肪族ラジカルは、ヘテロ原子、例えば酸素または窒素を適切に含有し得る。
【0018】
本発明による部品は、他の部品と繋がり、組立体を形成する個々のパーツを意味する。したがって、例えば部品が自動車の車体の一部である場合、これを他の車体部品と組み立てて、車体を形成することが可能である。例えば、部品が履物底である場合、これを履物商品の他の部品と組み立てて、そのような履物商品を形成することができる。しかし一般に、部品として役立つことが可能な材料の目的とは無関係に、本発明は一般的に、コーティングされた部品の生成に関し、したがって、上記の意味の部品に限定されない。結果として、部品のコーティングについて以下で言及される場合、これは一般的に、「部品」の機能を伴わない材料のコーティングも包含し、言い換えれば、そのような材料は、組立体を生成するための部品として使用されることを必ずしも必要としない。
【0019】
本発明によるコーティングされた部品は、表面にコーティングを有する部品を意味する。コーティングは、部品の生成中に本発明の組成物を架橋することにより、前記部品の表面に適用される。部品のコーティングは、したがって、本発明の架橋組成物に関わる。
【0020】
本発明の組成物をフラッシュすることは、通常周囲温度より高く、かつ例えば40から90℃の温度における、組成物中の溶媒Lの能動または受動蒸発を意味する。したがってフラッシュ中、適用された組成物に存在する溶媒Lが蒸発を施される。組成物は、適用直後およびフラッシュ開始時のいずれにせよ依然流体であるため、フラッシュ中に流れることが可能である。これは、噴霧により適用される少なくとも1種の組成物が、一般的に液滴形態で適用され、一様な厚さではないためである。しかし溶媒Lが存在する結果、組成物は流体であり、したがって流れて一様、平滑なコーティングフィルムを形成することが可能である。同時に、溶媒Lに連続蒸発を施し、その結果、フラッシュフェーズから生じた表面上の組成物層は比較的平滑になり、溶媒Lを適用された組成物よりも少なく含む。しかしこの層はフラッシュ後、すぐ使用可能な状態にはまだなっていない。これは、例えば、実際にもはや流体ではないが、依然として柔軟性または粘着性であり、部分的にのみ乾燥が施されていてよい。詳細には、この層はまだ架橋していない。
【0021】
架橋は、本発明の組成物および部品を形成する組成物の硬化、言い換えれば、これらの組成物のすぐ使用可能な状態への変換を指し、組成物を備えた部品を、意図するように運搬し、保存し、かつ使用できる状態を意味する。したがって架橋組成物、また架橋部品は、詳細にはもはや柔軟性または粘着性ではなく、その代わりそれぞれ固体コーティングフィルムまたは固体部品として調整されている。以下に記載されている架橋条件へのさらなる曝露でさえ、フィルムまたは部品は、性質、例えば硬度または基材への接着性に関する実質的変化をもはや一切呈さない。
【0022】
本発明の組成物、また部品の生成に使用される組成物は、原則として、含まれる成分、例えばバインダおよび架橋剤に応じて物理的および/または化学的に硬化され得る。組成物は、詳細には化学的に硬化される。化学的硬化は、熱化学的硬化および放射線化学的硬化を含む。本発明の組成物、また部品の生成に使用される組成物は、熱化学的に硬化可能な限り、自己架橋性および/または外部架橋性であり得る。本発明に関する「自己架橋性および/または外部架橋性」という用語は、ポリマーが、バインダ、および場合により架橋剤として含まれ、したがって互いに架橋することが可能であることを意味する。関与する機構、また、使用できるバインダおよび架橋剤(フィルム形成成分)は、以下に記載されている。
【0023】
本発明に関して、「熱化学的に硬化可能」、また、「熱化学的硬化」という用語はそれぞれ、反応性官能基の化学反応により開始される組成物の架橋(硬化組成物の形成)を指し、この化学反応のエネルギー活性化は、熱エネルギーによる可能性がある。この場合、互いを補完する異なる官能基は、互いに(相補的官能基)と反応することができ、かつ/または硬化組成物の形成は、自らの基と反応する官能基である自己反応性基の反応に基づく。好適な相補的反応性官能基および自己反応性官能基の例は、例えばドイツ特許出願DE19930665A1、7頁、28行から9頁、24行から公知である。
【0024】
この架橋は、自己架橋性および/または外部架橋性であり得る。例えば、相補的反応性官能基は、バインダとして使用される有機ポリマーに、例えば、ポリエステル、ポリウレタンまたはポリ(メタ)アクリレートに既に存在する場合、関与する架橋は自己架橋性である。外部架橋性は、例えば特定の官能基、例としてヒドロキシル基を含有する(第1の)有機ポリマーまたは第1の化合物が、従来の架橋剤、例としてポリイソシアネートおよび/またはメラミン樹脂と反応する場合に関与する。架橋剤は、したがって、バインダとして使用される(第1の)有機ポリマーに存在する反応性官能基を補完する反応性官能基を含有する。
【0025】
詳細には外部架橋の場合では、想定される系は、従来の多成分系、とりわけ二成分系である。これらの系では、バインダとして架橋される成分、例えば有機ポリマーおよび架橋剤は、適用の直前まで組み合わせられない、少なくとも2種の成分として互いに別々に存在する。この形態は、例えば周囲温度、または40から90℃のやや上昇した温度でさえ、架橋される成分が互いに効率的に反応する場合に選択される。例として述べられる組合せは、ヒドロキシ官能性ポリエステルおよび/またはポリウレタンおよび/またはポリ(メタ)アクリレートと、架橋剤としての遊離ポリイソシアネートのものである。
【0026】
バインダとしての有機ポリマーが、自己架橋性官能基となるだけではなく、外部架橋性官能基を有すること、次いで架橋剤と組み合わせることも可能である。
【0027】
本発明に関して、「放射線化学的に硬化可能な」または「放射線化学的硬化」という用語は、硬化が、放射線照射の適用によって可能であることを指し、放射線照射は、電磁波照射、例えば近赤外線(NIR)およびUV照射、とりわけUV照射、また微粒子照射、例えば電子ビームである。UV照射による硬化は、通例、ラジカルまたはカチオン性光開始剤により開始される。典型的に放射線化学的に硬化可能な官能基は、炭素-炭素二重結合であり、この場合では、ラジカル光開始剤が一般的に用いられる。放射線硬化は、同様に化学的架橋に基づく。
【0028】
化学的に硬化可能とラベル付けした組成物を硬化する際は、ポリマー鎖のインターループを指す物理的硬化がもちろん常にいくらか生じる。物理的硬化が大部分を占めることさえある。それでもこの種の組成物は、化学的に硬化可能なフィルム形成成分を少なくとも比例的に含む場合、化学的に硬化可能と称される。
【0029】
上記のことから、コーティング組成物およびそれが含む成分の性質に応じて、硬化は様々な機構により生じ、この機構は、もちろん様々な硬化条件、詳細には様々な硬化温度および硬化時間も必要である。
【0030】
本発明に関して明瞭にされているすべての温度は、組成物を入れる成形型の温度と理解されるべきである。したがって、組成物自体が対応する温度を有さなければならないことを意味しない。
【0031】
ある特徴的変数を判定するための、本発明に関して用いられる測定方法は、実施例セクションで見出される。別途明確に指し示されない限り、これらの測定方法は、それぞれの特徴的変数を判定するために用いられるべきである。本発明に関して、有効性の公式期間について何らかの指示なしで公式標準が言及される場合、出願日において有効な標準のバージョン、またはその時点でいずれかの有効なバージョンがない場合、最新の有効なバージョンが暗示的に言及される。
【0032】
本発明の組成物:
本発明の組成物は、好ましくは自己離型性コーティング材料組成物である。
【0033】
本発明の組成物は、好ましくは、組成物の合計質量に対して30から60wt%の、より好ましくは35から55wt%の、きわめて好ましくは40から50wt%、より詳細には42から48wt%の固形分を有する。固形分は、ASTM D2369(2015)に従って、組成物2グラムの試料、110℃にて60分で判定された。
【0034】
本発明によれば、さらに組成物が、DIN EN ISO 2431(2012年3月)に従って測定して10から60s、より詳細には20から30s(DIN4フローカップ)の粘度を有すれば好ましい。低粘度を確実にすることにより、組成物の適用が促進されるので、成形型、また部品の一様なコーティングを十分に湿らせることが確実になる。
【0035】
溶媒L:
第1の必須成分として、本発明の組成物は、少なくとも1種の溶媒Lを含む。
【0036】
本発明の組成物は、溶媒ベース組成物または水性組成物であり得る。溶媒ベース組成物の場合では、有機溶媒は、主要な構成成分として含まれる。有機溶媒は、本発明の組成物の揮発性成分を構成し、完全または部分的な蒸発を、それぞれ乾燥またはフラッシュで施す。水性組成物の主要な構成成分は、水である。
【0037】
好ましくは、本発明によれば、少なくとも1種の溶媒Lは、有機溶媒、水、およびそれらの混合物から選択され、各場合において、組成物の合計質量に対して40から70wt%、より好ましくは45から65wt%、きわめて好ましくは50から60wt%、とりわけ52から58wt%の合計量で存在する。
【0038】
本発明に関して好ましい有機溶媒は、非プロトン性である。特に好ましくは、これらは、極性非プロトン性有機溶媒である。特にきわめて好ましくは、有機溶媒は、組成物の残留構成成分に対して化学的に不活性である。
【0039】
本発明に関して好ましい有機溶媒は、例えばケトン、例としてアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトンまたはジイソブチルケトン;エステル、例として酢酸エチル、酢酸n-ブチル、エチレングリコールジアセテート、ブチロラクトン、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、酢酸2-メトキシプロピル(MPA)、およびエトキシプロピオン酸エチル;アミド、例としてN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、およびN-エチルピロリドン;メチラール、ブチラール、1,3-ジオキソラン、グリセロールホルマール(glycerol formal);ならびに、非極性であるため少々好ましくない炭化水素、例としてベンゼン、トルエン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、およびソルベントナフサである。とりわけ好ましい溶媒は、エステルの分類に属し、そのうち酢酸n-ブチルおよび酢酸1-メトキシプロピルがとりわけきわめて好ましい。
【0040】
一般式(I)の化合物(b)
本発明の組成物は、第2の必須成分として、式(I)
R1-(C=O)r-O-(AO)s-R2 (I)
(式中、R1は、6から30個の炭素原子、好ましくは8から26、より好ましくは10から24、きわめて好ましくは12から24個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、
R2は、H、PO(OH)2ラジカル、または単糖もしくは二糖の任意に部分的にリン酸化されたラジカル、またはアルジトール、より詳細にはソルビトールの任意に部分的にリン酸化されたラジカルであり、
AOは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドからなる群から選択される1種または複数のアルキレンオキシドラジカルを意味し、
rは0または1であり、
sは、0から30、好ましくは1から25または2から25、より好ましくは4から22または6から20、きわめて好ましくは8から18である)
の少なくとも1種の化合物を含む。
【0041】
R1ラジカルは、好ましくは非環状ラジカルである。
【0042】
AOラジカルは、同一であっても異なっていてもよく、s個のラジカル内でランダム、ブロック状または勾配状分布を有し得る。2つ以上の異なる種類のAOが含まれる場合、エチレンオキシドの画分は、AOラジカルの合計モル量に対して50mol%超、より好ましくは少なくとも70mol%、きわめて好ましくは少なくとも90mol%であれば好ましい。前述の場合では、エチレンオキシドと異なるラジカルは、好ましくはプロピレンオキシドラジカルである。
【0043】
r=0でありs>0である場合、式(I)の化学種は、アルコキシル化脂肪族アルコール、好ましくはエトキシ化脂肪族アルコールであり、これらは任意に、単糖もしくは二糖で、またはアルジトールのラジカルでリン酸化(R2=PO(OH)2)またはエーテル化される。r=1でありs>0である場合、式(I)の化学種は、アルコキシル化脂肪酸、好ましくはエトキシ化脂肪酸であり、これらは任意に、単糖もしくは二糖で、またはアルジトールのラジカルでリン酸化(R2=PO(OH)2)またはエーテル化される。
【0044】
s=0であり、R2が単糖もしくは二糖のラジカル、またはアルジトールのラジカルである場合、式(I)の化学種は、単糖もしくは二糖、またはアルジトールの脂肪族アルコールエーテル(r=0)、あるいは単糖もしくは二糖、またはアルジトールの脂肪酸エステル(r=1)である。
【0045】
特に好ましくは、式(I)の化学種の一部またはすべてで、sは2から25であり、さらに良好には6から20であり、理想的には8から18であり、かつ/または、式(I)の化学種の一部またはすべてで、sは0であり、R2は、単糖もしくは二糖の任意に部分的にリン酸化されたラジカルであり、またはアルジトールの任意に部分的にリン酸化されたラジカルである。特に好ましくは、R1は、この場合では、10から24個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族炭化水素ラジカルである。
【0046】
詳細には、少なくとも1種の化学種でsが0である一方、少なくとも1種のさらなる化学種でsが>0、好ましくは1から25または2から25、より好ましくは4から22または6から20、きわめて好ましくは8から18である、式(I)の化学種の混合物を使用することも可能である。
【0047】
特に好ましくは、一般式(I)において、R1は、10から24個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、R2は、H、PO(OH)2ラジカル、あるいは単糖もしくは二糖、またはアルジトール、より詳細にはソルビトールの任意に部分的にリン酸化されたラジカルであり、AOは、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドからなる群から選択される1種または複数のアルキレンオキシドラジカルを意味し、rは0または1であり、sは0または1から25である。
【0048】
さらに特に好ましくは、一般式(I)において、R1は、10から24個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、R2は、H、PO(OH)2ラジカル、または単糖の任意に部分的にリン酸化されたラジカル、もしくはアルジトール、より詳細にはソルビトールの任意に部分的にリン酸化されたラジカルであり、AOは、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドからなる群から選択される1種または複数のアルキレンオキシドラジカルを意味し、エチレンオキシド画分は、AOラジカルの合計モル量で少なくとも70mol%であり、r=0または1であり、s=0またはs=6から20である。
【0049】
s>0である前述のアルコキシル化脂肪族アルコール、および/またはs>0である前述のアルコキシル化脂肪酸と、
r=s=0であり、R2=H、PO(OH)2、単糖ラジカル、二糖ラジカルまたはアルジトールラジカルである任意にリン酸化またはエーテル化された脂肪族アルコール、ならびに
r=1であり、s=0であり、R2=H、PO(OH)2、単糖ラジカル、二糖ラジカルまたはアルジトールラジカルである任意にリン酸化またはエステル化された脂肪酸
を包含する群から選択される少なくとも1種のさらなる化学種を含む混合物がとりわけ好ましい。
【0050】
一般式(I)の化合物の合計質量は、各場合において、組成物の合計質量に対して好ましくは0.1から10wt%、より好ましくは0.5から5wt%、より詳細には1.5から4wt%である。1種超の式(I)の化合物が使用される場合、上記で指し示されている量の数値は、式(I)の範囲内にある化合物すべての合計量に対する。式(I)の化合物が特定の化合物(I-1)に限定される場合、上記で指し示されている量は、単に特定の化合物(I-1)だけではなく、式(I)の範囲内にある化合物の合計量にも対する。例えば、特定の化合物(I-1)が5wt%の量で使用される場合、本発明の組成物に存在する式(I)の範囲内にある、多くとも5wt%のさらなる化合物が存在し得る。
【0051】
ポリエーテル変性アルキルポリシロキサン(c):
本発明の組成物は、少なくとも1種のポリエーテル変性アルキルポリシロキサンをさらに含み得る。そのようなシロキサンの使用は、コーティングされた部品の吸塵性を低下させる。
【0052】
好ましくは、ポリエーテル変性アルキルポリシロキサンは、少なくとも1つの構造単位(R7)2(OR6)SiO1/2および少なくとも1つの構造単位(R7)2SiO2/2を含み、R6は、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシド基、より詳細にはエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドおよびブチレンオキシド基の混合物であり、R7は、C1~C10アルキル基、より詳細にはメチル基である。
【0053】
本文脈において、ポリエーテル変性アルキルポリシロキサンは、シロキサン対エチレンオキシド対プロピレンオキシド対ブチレンオキシド基が6:21:15:1から67:22:16:1のモル比を有すれば好ましい。
【0054】
本文脈においてさらに、ポリエーテル変性アルキルポリシロキサンは、構造単位(R7)2(OR6)SiO1/2対構造単位(R7)2SiO2/2が1:10から1:15、より詳細には1:10から1:13のモル比を有すれば好ましい。ここでR6およびR7は、上記で挙げられている定義を有する。
【0055】
組成物は、各場合において、組成物の合計質量に対して0wt%または0.1から6wt%、好ましくは0.5から4wt%、より詳細には0.8から3wt%のポリエーテル変性アルキルポリシロキサン、より詳細には、上記で挙げられている特定のポリエーテル変性アルキルポリシロキサンを含み得る。そのような化合物がないと、組成物の粘着性は低下する。結果として、コーティングされた生成された部品が成形型から脱型される効果は改善する。
【0056】
式(II)のポリシロキサン(d):
本発明の組成物は、一般式(II)
R3-Si(R4)2-[O-Si(R4)(R5)]a-[O-Si(R4)2]b-O-Si(R4)2-R3 (II)
(式中、
R3およびR4は、各場合において互いに独立して、メチル基または(HO-CH2)2-C(CH2-CH3)-CH2-O-(CH2)3-*ラジカルであり、
R5はメチル基であり、
aは、0または1から10であり、
bは3から30である)
の少なくとも1種のポリシロキサンをさらに含む。
【0057】
ここでの(HO-CH2)2-C(CH2-CH3)-CH2-O-(CH2)3-*ラジカルは、*記号を経由してケイ素原子に結合する。
【0058】
本発明によれば、特定のR3およびR4ラジカルを有するポリシロキサンが好ましく使用される。そのようなポリシロキサンの使用により、改善した脱型性について有利であるが、本発明の架橋組成物の部品への接着性に悪影響を与えないと証明された。したがって本発明の好ましい一実施形態では、一般式(II)において、R3ラジカルは、(HO-CH2)2-C(CH2-CH3)-CH2-O-(CH2)3-*ラジカルであり、R4ラジカルはメチル基であり、R5ラジカルはメチル基であり、aは0であり、bは7から14である。
【0059】
本発明によれば有利には、組成物は、式(II)の少なくとも1種のポリシロキサン、より詳細には上記で挙げられている特定のポリシロキサンを、特定の合計量で含む。したがって、本発明によれば、組成物が、一般式(II)の少なくとも1種のポリシロキサンを、各場合において、組成物の合計質量に対して0.1から5wt%、好ましくは0.5から4wt%、より詳細には0.8から2.5wt%の合計量で含めば好ましい。式(II)の1種超のポリシロキサンが使用される場合、上記で指し示されている量の数値は、式(II)の範囲内にあるポリシロキサンすべての合計量に対する。式(II)のポリシロキサンが特定のポリシロキサン(II-1)に限定される場合、上記で指し示されている量は、特定のポリシロキサン(II-1)だけではなく、式(II)の範囲内にあるポリシロキサンの合計量にも対する。例えば、特定のポリシロキサン(II-1)は、2wt%の量で使用される場合、本発明の組成物に存在する式(II)の範囲内にある多くとも3wt%のさらなるポリシロキサンが存在し得る。
【0060】
カラーベースBF(e):
本発明の組成物は、少なくとも1種のカラーベースBFをさらに含む。本明細書ではカラーベースBFは、正確に定義された色相を有する着色剤を意味する。少なくとも1種のカラーベースBFを使用することにより、高い色相精度が達成される。さらに、望ましい色相を達成するために、様々な色相を有する様々なカラーベースBFを互いに混合できるので、高い色相多様性が可能である。
【0061】
少なくとも1種のカラーベースBFは、好ましくは本発明の組成物に特定の合計量で存在する。したがって本発明によれば、顔料着色組成物は、少なくとも1種のカラーベースBFを、組成物の合計質量に対して5から40wt%、より詳細には10から20wt%の合計量で含めば有利である。少なくとも1種のカラーベースBFの上記で挙げられている合計量での使用により、高い色相強度が確実になる。
【0062】
特に好ましくは、少なくとも1種のカラーベースBFは、少なくとも1種の効果顔料および/または少なくとも1種の着色顔料を含む。
【0063】
効果顔料は、コーティングに装飾効果を生じ、さらに、着色効果を生じることが可能であるがそれに限定されない顔料である。効果顔料は、詳細にはプレートレット状の構造物で注目に値する。好ましい効果顔料は、例えばプレートレット形状の金属効果顔料、例としてプレートレット形状アルミニウム顔料、金青銅、酸化青銅および/または酸化鉄-アルミニウム顔料、真珠光沢顔料および/もしくは金属酸化物-マイカ顔料、ならびに/または他の効果顔料、例としてプレートレット形状グラファイト、プレートレット形状酸化鉄、PVDフィルムおよび/または液晶ポリマー顔料で構成される多層効果顔料である。プレートレット形状金属効果顔料、より詳細にはプレートレット形状アルミニウム顔料および/またはコーティング金属酸化物-マイカ顔料および/または金属酸化物コーティングボロシリケートが特に好ましい。
【0064】
無機着色顔料の例は、白色顔料、例えば二酸化チタン;黒色顔料、例えばカーボンブラック、鉄マンガンブラックまたはスピネルブラック;有彩顔料、例えばウルトラマリングリーン、ウルトラマリンブルーまたはマンガンブルー、ウルトラマリンバイオレットまたはマンガンバイオレット、赤色酸化鉄、モリブデンレッドまたはウルトラマリンレッド;褐色酸化鉄、混合褐色、スピネルおよびコランダム相;または黄色酸化鉄またはバナジン酸ビスマスである。好適な有機着色顔料の例は、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アントラキノン顔料、ベンズイミダゾール顔料、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、インダンスロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、アゾメチン顔料、チオインディゴ顔料、金属錯体顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、フタロシアニン顔料またはアニリンブラックである。
【0065】
少なくとも1種の効果顔料および/または少なくとも1種の着色顔料は、カラーベースBFの合計質量に対して、好ましくは0.5から70wt%の合計量で存在する。
【0066】
少なくとも1種のバインダを含むカラーベースも用意され得る。このバインダは、顔料の分散を安定させる役割を果たし、そのように、カラーベースBFの一部に対する高い色相強度および高い色相均一性を確実にする。
【0067】
カラーベースBFに使用されるバインダは、好ましくはポリウレタンポリマー、より詳細にはアニオン的に安定化されたポリウレタンポリマーである。アニオン的に安定化されたポリウレタンポリマーは、中和剤によりアニオン性基に変換され得る少なくとも1個の基(すなわち潜在的アニオン性基)を含むポリウレタンポリマーを意味する。中和剤によりアニオン性基に変換され得る潜在的アニオン性基の例は、カルボン酸、スルホン酸および/またはホスホン酸基、より詳細にはカルボン酸基を含む。
【0068】
ポリウレタンポリマーは、イソシアネート基を含有するプレポリマーと、イソシアネート基に対して反応性の化合物の反応により得ることができる。成分は、好ましくは、通例および公知の有機溶媒中で反応させる。有機溶媒の量は、本明細書では広い限界内で異なっていてよく、好適な粘度のプレポリマー溶液の形成に十分にすべきである。一般に、固形分に対して70wt%まで、好ましくは5から50wt%、より好ましくは20wt%未満の溶媒が使用される。したがって反応は、例えば、とりわけ好ましくは、固形分に対して10から15wt%の溶媒含有量で実行され得る。
【0069】
この種のポリウレタンポリマーは、好ましくは、1000から30000g/molの、より好ましくは1500から20000g/molの数平均分子量(判定:ポリスチレンを標準として用いたゲル浸透クロマトグラフィー)、また5から70mg KOH/g、より好ましくは10から30mg KOH/gの酸価(固形分に対して)を有し、イソシアネート基を含有するプレポリマーの反応、好ましくは鎖延長により製造可能である。
【0070】
イソシアネート基を含有するプレポリマーは、10から1800、好ましくは50から1200mg KOH/g(固形分に対して)のヒドロキシル価を有するポリオールを、過剰なポリイソシアネートと、150℃まで、好ましくは50から130℃の温度にて、イソシアネートと反応不可能な有機溶媒中で反応させることにより製造され得る。NCO基対OH基の当量比は、2.0:1.0から>1.0:1.0の間、好ましくは1.4:1から1.1:1の間である。
【0071】
NCOプレポリマーの製造に使用されるポリオールは、低および/または高分子量のものであり得る。アニオン的に安定化されたポリウレタンポリマーの製造では、ポリオールは、少なくとも1個のアニオン性基および/またはアニオン形成の影響を受けやすい基を含有する。イソシアネート基を含有するプレポリマーを製造するために、60から400ダルトンの分子量を有する低分子量ポリオールの使用を伴うことも可能である。
【0072】
高い可撓性を有するNCOプレポリマーを得るために、30から150mg KOH/gの(固形分に対して)好ましいOH価を有する、主に直鎖状ポリオールの添加される画分は、多くすべきである。全ポリオールの97wt%までは、400から5000ダルトンの数平均分子量Mnを有する飽和および不飽和ポリエステルからなり得る。ポリエステルジオールは、有機ジオールを用いた有機ジカルボン酸またはその無水物のエステル化により製造される、またはヒドロキシカルボン酸もしくはラクトンに由来する。脂肪族および芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールの反応により得ることができる直鎖状ポリエステルを使用することが特に好ましい。
【0073】
ポリエステル以外に、NCOプレポリマーは、さらなるポリオールと、カルボキシル、スルホン酸および/またはホスホン酸基を有する少なくとも1種のポリオールを使用して製造される。アルファ位における炭素原子上に2個のヒドロキシル基を有するアルカン酸が使用に好ましい。これらのポリオールは、分子中に少なくとも1個の、一般的に1から3個のカルボキシル基を有する。これらは、2から約25、好ましくは3から10個の炭素原子を有する。カルボキシル含有ポリオールは、NCOプレポリマー中における全ポリオール構成成分の3から100wt%、好ましくは5から50wt%を占め得る。
【0074】
カルボキシル基の塩形態での中和を通して利用できるイオン化可能なカルボキシル基の量は、NCOプレポリマーの固体に対して少なくとも0.4wt%、好ましくは少なくとも0.7wt%である。上限は約12wt%である。未中和のプレポリマー中のジヒドロキシアルカン酸の量は、10mg KOH/gから40mg KOH/g(固形分に対して)の酸価を示す。
【0075】
カルボキシル、スルホン酸および/またはホスホン酸基を有さないさらなるポリオールは、好ましくはC3~C8アルカンジオール、とりわけ1,6-ヘキサンジオールから選択される。これらのジオールは、通例、各場合において、アニオン的に安定化されたポリウレタンポリマーの製造に使用される合成成分の合計質量に対して0.5から15wt%、好ましくは1から7wt%の量で使用される。
【0076】
アニオン性ポリウレタンポリマーの製造に使用される典型的な多官能性イソシアネートは、分子1個当たり少なくとも2個のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環式および/または芳香族ポリイソシアネートである。有機ジイソシアネートの異性体または異性体混合物が好ましい。紫外線光に対する安定性の高さゆえに、(シクロ)脂肪族ジイソシアネートは、黄ばむ傾向が低い生成物を生じる。プレポリマーを形成するために使用されるポリイソシアネート成分は、いかなるゲル化も引き起こさないことを条件として高級ポリイソシアネートの画分も含み得る。好適なトリイソシアネートは、ジイソシアネートの三量化もしくはオリゴマー化、またはジイソシアネートと、OHもしくはNH基を含有する多官能性化合物の反応により生じる生成物である。平均官能価は、モノイソシアネートを添加することにより任意に低くてよい。
【0077】
使用され得るポリイソシアネートの例は、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビスフェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロブタンジイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネートおよびトリメチルヘキサンジイソシアネートを含む。
【0078】
高固形分アニオン性ポリウレタンポリマー分散体を製造するために、詳細には一般式(IV)
【0079】
【化1】
(式中、Xは、二価環状および任意に芳香族の炭化水素ラジカル、好ましくは任意にハロゲン-、メチル-またはメトキシ-置換されているジシクロヘキシルメチル、ナフチレン、ジフェニレンまたは1,2-、1,3-もしくは1,4-フェニレンラジカル、より好ましくはジシクロヘキシルメチルラジカルであり、R
3およびR
4は、水素または1から4個の炭素原子を有するアルキルラジカルであり、好ましくは水素である)のジイソシアネートが使用される。特に好ましくは、本発明に関して使用される式(IV)の1種のジイソシアネートは、4,4’-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(H
12MDIとも称される)である。
【0080】
NCOプレポリマーは、固体に対して少なくとも0.5wt%のイソシアネート基、好ましくは少なくとも1wt%のNCOを含有する。上限はNCOの15wt%、好ましくは10wt%、より好ましくは5wt%である。
【0081】
イソシアネート基を含有するプレポリマーのイソシアネート基は、改質剤または鎖延長剤と反応させる。改質剤は、好ましくは鎖延長が生じ、したがって分子量が増加するような量で添加される。使用される改質剤は、好ましくは、ヒドロキシル基および/または第二級および/または第一級アミノ基、とりわけ2、3および/またはそれ超の官能価を有するポリオールおよび/またはポリアミンを含む有機化合物である。使用され得るポリアミンの例は、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンまたはジエチレントリアミンである。使用され得るポリオールの例は、トリメチロールプロパン、1,3,4-ブタントリオール、グリセロール、エリトリトール、メソエリトリトール、アラビトール、アドニトールなどである。トリメチロールプロパンを使用することが好ましい。NCOプレポリマー対改質剤の当量比は、好ましくは2.0:1.0から1.0:2.0の間、より詳細には1.1:1から1:1.1の間である。
【0082】
本発明に関して、アニオン的に安定化されたポリウレタンポリマーは、特に好ましくは、NCOプレポリマーと、ポリオール、より詳細にはトリメチロールプロパンの形態の改質剤の反応により得ることができ、NCOプレポリマーは、
(i)固形分に対して40から100mg KOH/gのOH価、および1000から3000Daの数平均分子量Mnを有する、化合物(i)から(iv)の合計質量に対して55から70wt%の少なくとも1種のポリエステルポリオールであって、好ましくはオレフィン性二重結合を含有しないポリエステルポリオール、
(ii)3から8個の炭素原子、またアルファ位における炭素原子上に2個のヒドロキシル基を有する、化合物(i)から(iv)の合計質量に対して3から7wt%の少なくとも1種のアルカン酸、より詳細にはジメチロールプロピオン酸、
(iii)化合物(i)から(iv)の合計質量に対して0.5から3wt%の少なくとも1種のC3~C8アルカンジオール、より詳細には1,6-ヘキサンジオール、ならびに
(iv)化合物(i)から(iv)の合計質量に対して25から30wt%の、X=ジシクロヘキシルメチルラジカルであり、R3=R4=水素である、式(IV)の少なくとも1種のジイソシアネート
の反応により得ることができる。
【0083】
NCOプレポリマー対改質剤の当量比は、好ましくは2.0:1.0から1.0:2.0の間、より詳細には1.1:1から1:1.1の間である。
【0084】
アニオン的に安定化されたポリウレタンポリマーは、塩基で、好ましくは有機塩基で、より詳細にはN,N’-ジメチルエタノールアミンで中和され、塩基は、例えば50%から100%、好ましくは60%から80%の中性化度を達成する量で添加される。
【0085】
少なくとも1種のバインダ、より詳細には先述のアニオン的に安定化されたポリウレタンポリマーは、好ましくは、カラーベースBFの合計質量に対して10から80wt%の量で存在する。
【0086】
カラーベースBFは、少なくとも1種の溶媒も含み得る。使用され得る溶媒は、溶媒L(本発明の組成物の成分(a))に関連して上記で既に述べられているものである。特に好ましくは、ブチルグリコールおよび/またはメチルエチルケトンが用いられる。
【0087】
したがって、カラーベースBFの特に好ましい一実施形態では、カラーベースBFは、その合計質量に対して、
(a1)0.5から70wt%の、少なくとも1種の効果顔料および/または少なくとも1種の着色顔料、
(a2)ポリウレタンポリマー、アミノ樹脂ポリマー、ポリアクリレートポリマー、ポリエステルポリマーおよびそれらの混合物の群から選択される、10から80wt%の少なくとも1種のバインダ、より詳細には上記で挙げられているアニオン的に安定化されたポリウレタンポリマー、ならびに
(a3)少なくとも1種の有機溶媒
を含む。
【0088】
バインダB(f):
本発明によれば好ましくは、組成物、ならびに上記の必須成分は、少なくとも1種のバインダBを含む。このバインダBは、好ましくはカラーベースBFにおけるバインダ(a2)とは異なる。このバインダBの使用により、部品上で、可撓性かつ安定であるが部品の脱型性に悪影響を与えないコーティングが展開される。
【0089】
バインダBの性質は、本発明の組成物で達成される脱型性について重要ではないことが、驚くべきことに明らかになった。さらなる驚くべきことは、本発明の組成物は、バインダBと関係なく、生じたコーティングに対して、特にその表面の性質および可撓性に対して悪影響を有さない。したがって本発明の組成物は、生成された部品の脱型性、または組成物を用いて部品上に生成されたコーティングの傑出した性質に悪影響を与えることなく、いずれかの望ましいバインダBと組み合わせることができる。さらに、生じたコーティングは、コストがかかり、かつ不便な後処理工程なしで、接着剤で結合させてよく、かつ/またはベースコートおよび/またはクリアコート材料でコーティングしてよい。
【0090】
少なくとも1種のバインダBは、各場合において、組成物の合計質量に対して好ましくは20から50wt%の、より好ましくは25から40wt%、より詳細には25から35wt%の合計量(固形分)で存在する。バインダが溶媒中の分散体または溶液である場合、上記で挙げられている全量は、各場合におけるバインダの固形分を使用して計算される。上記で挙げられている量の範囲での少なくとも1種のバインダBの使用により、部品上で可撓性および安定であるが、部品の脱型性に悪影響を与えないコーティングの展開が確実になる。
【0091】
本発明によれば好ましくは、バインダBは、(i)ポリ(メタ)アクリレート、より詳細にはヒドロキシ官能性および/またはカルボキシレート官能性および/またはアミン官能性ポリ(メタ)アクリレート、(ii)ポリウレタン、より詳細にはヒドロキシ官能性および/またはカルボキシレート官能性および/またはアミン官能性ポリウレタン、(iii)ポリエステル、より詳細にはポリエステルポリオール、(iv)ポリエーテル、より詳細にはポリエーテルポリオール、(v)先述のポリマーのコポリマー、ならびに(vi)それらの混合物からなる群から選択される。
【0092】
本文脈において、バインダBは、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートおよび/またはポリエステルポリオールから、より詳細には少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートおよび少なくとも1種のポリエステルポリオールの混合物から選択されることが好ましい。この混合物の使用により、高い可撓性、また環境の影響に対する高い耐性を有するコーティングが生じる。さらに、部品の生成に使用される材料の表面性に関わりなく、平滑な表面が達成される。さらに、得られたコーティングは、コストがかかり、かつ不便な後処理なしで、接着剤で結合させてよく、かつ/またはベースコートおよび/またはクリアコート材料でコーティングしてよい。
【0093】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、好ましくは、65から100mg KOH/g、より好ましくは70から95mg KOH/g、より詳細には75から90mg KOH/gまたは80から85mg KOH/gのヒドロキシル価を有する。本発明に関して、ヒドロキシル価は、EN ISO 4629-2:2016に従って判定され得、各場合において固形分に対する。
【0094】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、好ましくは、25mg KOH/g未満の酸価、より好ましくは1から20mg KOH/gの酸価、きわめて好ましくは4から16mg KOH/g、より詳細には6から14mg KOH/g、または8から12mg KOH/gの酸価を有する。本発明の目的のための酸価は、DIN EN ISO 2114:2002-06(方法A)に従って判定され得、各場合において固形分に対する。
【0095】
数平均分子量Mnおよび質量平均分子量Mwは、ポリメタクリル酸メチル標準(PMMA標準)(DIN 55672-1:2016-03)を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって判定され得る。ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの数平均分子量Mnは、好ましくは4000から10000g/mol、より好ましくは5000から9000g/mol、きわめて好ましくは5500から8000g/mol、より詳細には6000から7500g/molの範囲である。ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの質量平均分子量Mwは、好ましくは8000から30000g/mol、より好ましくは10000から25000g/mol、きわめて好ましくは12000から22000g/mol、より詳細には14000から20000g/molの範囲である。
【0096】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの多分散性PD(=Mw/Mn)は、好ましくは2から3、より詳細には2.2から2.8の範囲である。
【0097】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、好ましくは5から15の、より好ましくは6から14、より詳細には8から12のヒドロキシル官能価を有する。
【0098】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、エチレン性不飽和モノマー、好ましくはモノエチレン性不飽和モノマーから、当業者には普通の、また馴染みの重合反応によって得られる。使用され得る開始剤は、過酸化物、例えば過酸化ジ-tert-ブチルを含む。したがって、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、
(a1)少なくとも1種のヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル、より詳細には式HC=CRx-COO-Ry-OH(式中、RxはHまたはCH3であり、Ryは、2から6、好ましくは2から4、より好ましくは2または3個の炭素原子を有するアルキレンラジカルである)の(メタ)アクリル酸エステル、
(a2)少なくとも1種のカルボキシ官能性エチレン性不飽和モノマー、より詳細には(メタ)アクリル酸と、
(a3)(メタ)アクリル酸の少なくとも1種のヒドロキシル不含およびカルボキシル不含エステル、ならびに/または少なくとも1種のヒドロキシル不含およびカルボキシル不含ビニルモノマー、より詳細にはスチレン
の反応により製造可能なことが好ましい。
【0099】
ヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル(a1)の例は、好ましくはメタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、およびアクリル酸ヒドロキシプロピル、特に好ましくは、メタクリル酸ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸2-ヒドロキシプロピルである。ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの製造に使用されるヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル(a1)の量は、50から120mg KOH/gのヒドロキシル価の標的範囲に基づいて計算される。
【0100】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、好ましくは、少量のカルボキシル基を含有する。これらの基は、例えば、カルボキシ官能性モノマー(a2)の使用を通して、より好ましくはアクリル酸および/またはメタクリル酸の使用を通して、重合反応中にポリ(メタ)アクリレートに導入される。これらのモノマー(a2)、とりわけ(メタ)アクリル酸は、各場合において、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの製造に使用されるモノマーすべての合計質量に対して好ましくは20から45wt%の、より好ましくは25から40wt%、より詳細には30から35wt%の合計量で存在する。
【0101】
ヒドロキシ官能性(a1)およびカルボキシ官能性(a2)エチレン性不飽和モノマー以外に、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートを製造する場合は、エチレン性不飽和モノマー(a3)、より詳細にはモノエチレン性不飽和モノマー(a3)も使用され、これらのモノマーは、ヒドロキシルおよびカルボキシル基のいずれも含まない。ビニルモノマー(a3)として特に好ましく用いられるのは、スチレンである。ビニルモノマー(a3)、より詳細にはスチレンは、各場合において、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの製造に使用されるモノマーすべての合計質量に対して好ましくは30から60wt%の、より好ましくは35から55wt%、より詳細には40から50wt%の合計量で存在する。
【0102】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、有機溶媒、好ましくは非プロトン性溶媒中で使用され得る。この目的のために典型的な溶媒は、例えば、少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートを製造する場合にも使用され得る酢酸n-ブチルである。ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが溶媒中に使用される場合、この溶媒は、溶媒Lの一部として計算される。
【0103】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、好ましくは特定の合計量で使用される。したがって本発明によれば、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、各場合において、組成物に存在するバインダすべての固形分の合計質量に対して10から97wt%、好ましくは40から70wt%、より詳細には40から50wt%の合計量で存在すれば有利である。
【0104】
ポリエステルポリオールは、各場合において、固形分に対して好ましくは100から200mg KOH/g、より好ましくは110から180mg KOH/g、きわめて好ましくは120から160mg KOH/gのヒドロキシル価を有する。
【0105】
ポリエステルポリオールの酸価は、各場合において、固形分に対して好ましくは0から9mg KOH/g、より詳細には0.2から2mg KOH/gである。ポリエステルポリオールのヒドロキシル価および酸価は、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートと共に上記のように判定され得る。
【0106】
ポリエステルポリオールの数平均分子量は、好ましくは800から3000g/mol、より好ましくは1000から2000g/mol、より詳細には1000から1600g/molの範囲である。本明細書での判定は、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの分子量の判定に関連して行われる。
【0107】
ポリエステルポリオールは、好ましくは分岐している。
【0108】
ポリエステルポリオールは、好ましくは2.2から4、より好ましくは2.5から3.5、きわめて好ましくは2.7から3.3のヒドロキシル官能価を有する。
【0109】
ポリエステルポリオールは、好ましくは特定の合計量で使用される。したがって本発明によれば、ポリエステルポリオールは、各場合において、組成物に存在するバインダすべての固形分の合計質量に対して40wt%から97wt%、好ましくは40から70wt%、より詳細には50から65wt%の合計量で存在すれば有利である。
【0110】
バインダBはあるいは、アニオン的に安定化された水性ポリウレタン分散体、カチオン的に安定化された水性ポリウレタン分散体、水性ポリウレタン-ポリ尿素分散体、およびそれらの混合物から選択され得る。好適な分散体は、例えば、出願公開EP第2066712A1号明細書、EP第1153054A1号明細書、およびEP第1153052A1号明細書に記載されている。
【0111】
本発明の顔料着色組成物は、好ましくは顔料対バインダが0.01から1.2の質量比を特徴とする。前述の質量比は、組成物中の顔料、またバインダ(a2)および/またはBの合計量に関連する。
【0112】
架橋剤V(f):
本発明によれば、組成物は、前述の構成成分および/または少なくとも1種のバインダBだけではなく、架橋剤Vも含めば好ましくなり得る。特に好ましくは、本発明の組成物は、上に記載されているバインダBおよび下に記載されている架橋剤Vの組合せを含む。
【0113】
架橋剤Vは、好ましくは、アミノ樹脂、ポリイソシアネート、ブロックポリイソシアネート、ポリカルボジイミド、UV光、熱、光開始剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0114】
ポリイソシアネート、またポリカルボジイミドを架橋剤Vとして使用することが特に好ましい。
【0115】
ポリイソシアネートの使用は、とりわけ上に記載されている少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートおよび少なくとも1種のポリエステルポリオールの混合物が、本発明の組成物中にバインダBとして存在する場合に、適切と見出された。
【0116】
本文脈において、ポリイソシアネートが、2.4超から5、好ましくは2.6から4、より好ましくは2.8から3.6のNCO基の官能価を有すれば特に好ましい。
【0117】
本発明に関して特に好ましくは、少なくとも1個のイソシアヌレート環または少なくとも1個のイミノオキサジアジンジオン環を含むポリイソシアネートが用いられる。
【0118】
代替実施形態によれば、互いに異なる2種のポリイソシアネートは、架橋剤Vとして存在し得、第1のポリイソシアネートは、少なくとも1個のイソシアヌレート環を含み、第2のポリイソシアネートは、少なくとも1個のイミノオキサジアジンジオン環を含む。
【0119】
ポリイソシアネートは、好ましくはジイソシアネートのオリゴマー、好ましくはトリマーまたはテトラマーを含む。特に好ましくは、これは、ジイソシアネートのイミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレート、アロファネートおよび/またはビウレットを含む。特に好ましくは、ポリイソシアネートは、脂肪族および/または脂環式、きわめて好ましくは脂肪族ポリイソシアネートを含む。前述のオリゴマー、より詳細には前述のトリマーまたはテトラマーをベースとするジイソシアネートとして作用するものは、きわめて好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはイソホロンジイソシアネート、とりわけ好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートのみである。
【0120】
ポリカルボジイミドの使用は、とりわけアニオン的に安定化された水性ポリウレタン分散体、カチオン的に安定化された水性ポリウレタン分散体、水性ポリウレタン-ポリ尿素分散体、およびそれらの混合物が、本発明の組成物中にバインダBとして存在する場合、適切と見出された。
【0121】
ポリカルボジイミドは、好ましくは水性分散体の形態である。使用されるポリカルボジイミドは、特に好ましくは、ポリイソシアネートとポリカルボジイミドの反応、ならびに、ヒドロキシル基および/またはアミン基を含有する親水性化合物による後続の鎖延長および/または停止により得ることができる。好適な分散体は、例えば出願公開EP第1644428A2号明細書およびEP第1981922A2号明細書に記載されている。
【0122】
架橋剤Vを通して、例えば、生じる硬化したコーティングの硬度、可撓性および弾性に影響を与えることが可能である。詳細にはイミノオキサジアジンジオン構造を含有するポリイソシアネートの使用により、特定の硬度のコーティングが生じ、それにより、硬化したコーティング表面までの基材構造の延び(substrate structures propagating)、およびそこに引き起こされる望ましくないうねりを防止する。そのようなポリイソシアネートは、例えばCovestroからDesmodur N3900という名で入手できる。同様の結果は、Covestroから例えばDesmodur N3800という名で入手できるイソシアヌレート構造を含有するポリイソシアネートを用いて達成され得、この場合では、コーティングが依然硬いがより可撓性である。
【0123】
組成物は、好ましくは少なくとも1種の架橋剤Vを特定の合計量で含む。したがって、本発明によれば、少なくとも1種の架橋剤Vは、各場合において、組成物の合計質量に対して10wt%から40wt%、好ましくは10から30wt%、より詳細には15から25wt%の合計量で存在すれば好ましい。
【0124】
さらに、組成物は、特定のモル比の架橋剤Vの官能基対架橋剤Vに対して反応性であるバインダBの基を含めば好ましい。これにより、本発明の組成物の架橋を十分にすることが確実になる。したがって、架橋剤Vの官能基、とりわけNCO基またはカルボジイミド基対、少なくとも1種のバインダBの基、とりわけ架橋剤Vの官能基に対して反応性であるヒドロキシル基またはアニオン性基の総計のモル比は、0.4:1から1:1、好ましくは0.65:1から0.85:1、より詳細には0.7:1から0.8:1であれば有利である。
【0125】
本発明の組成物に存在する特定のバインダBおよび架橋剤Vに応じて、本発明の組成物は、一成分系と設定される、または2種(二成分系)以上の(多成分系)成分を混合することにより得ることができる。熱化学的に硬化可能な一成分系において、架橋される成分、言い換えればバインダおよび架橋剤は、互いに協力して、言い換えれば1種の成分として存在する。このための条件は、架橋される成分は、例えば100℃超の比較的高温でのみ互いに効率的に反応して、時期尚早な、少なくとも比例的な熱化学的硬化を防止することである。そのような組合せは、ヒドロキシ官能性ポリエステルおよび/またはポリウレタンと、架橋剤としてのメラミン樹脂および/またはブロックポリイソシアネートにより例示され得る。
【0126】
熱化学的に硬化可能な二成分または多成分系において、架橋される成分、言い換えればバインダおよび架橋剤は、適用の直前まで組み合わせられない少なくとも2種の成分として、互いに別々に存在する。この形態は、架橋される成分が、周囲温度、または例えば40から90℃のやや上昇した温度でさえ、互いに効率的に反応する場合に選択される。そのような組合せは、ヒドロキシ官能性ポリエステルおよび/またはポリウレタンおよび/またはポリ(メタ)アクリレートと、架橋剤として遊離ポリイソシアネートにより例示され得る。
【0127】
本発明の組成物が、2種以上の成分を混合することにより得ることができる場合、バインダ含有成分対架橋剤含有成分の質量比は、好ましくは100:10から100:100、より好ましくは100:20から100:80、より詳細には100:50から100:70である。上に記載されている混合比を使用すると、組成物の十分な架橋が確実になり、そのようにして、即時脱型性、また生成された部品の表面への高い接着性が確実になる。
【0128】
架橋触媒VK(g):
さらに、本発明によれば、組成物は、少なくとも1種の架橋触媒VKを含めば有利になり得る。架橋触媒VKは、とりわけ組成物が、少なくとも1種の架橋剤V、より詳細にはポリイソシアネートを含む場合に存在する。
【0129】
架橋触媒VKは、主に、架橋剤Vの官能基と、架橋剤Vの官能基に対して反応性である少なくとも1種のバインダBの基との間の反応を触媒する役割を果たす。
【0130】
架橋触媒は、好ましくはカルボン酸ビスマスの群から選択される。
【0131】
本文脈において、本発明によれば、特定のカルボン酸ビスマスが存在すれば好ましい。したがってカルボン酸ビスマスは、好ましくは一般式(III)
Bi[OOC(CnH2n+1)]3(III)
(式中、n=5から15、好ましくはn=7から13、より詳細にはn=9から11である)を有する。
【0132】
カルボキシレートラジカルは、好ましくは分岐し、きわめて好ましくはこれらは、カルボキシレート基の炭素原子に対するアルファ位に第三級または第四級、好ましくは第四級の炭素原子を有する。カルボン酸ビスマスのうち、詳細にはトリネオデカン酸ビスマスが、とりわけ好適と明らかになった。
【0133】
カルボン酸ビスマスは、好ましくは、カルボキシレートの親カルボン酸、HOOC(CnH2n+1)と組み合わせて安定化した形態で使用される(式中、nは、上で指し示されている定義を有する)。本明細書では遊離カルボン酸は、本発明の目的に関して、安定剤の効果を有することができるだけではなく、任意に、触媒プロモーターとしての役割を果たすことができるとしても、形式的に架橋触媒VKの構成成分とみなすべきではないが、その代わり以下に記載するさらなる添加剤のうちに含まれる。
【0134】
組成物は、好ましくは、少なくとも1種の架橋触媒VKを特定の合計量で含む。したがって、本発明によれば、少なくとも1種の架橋触媒VKは、各場合において、組成物の合計質量に対して0.01wt%から3.5wt%、好ましくは0.1から2wt%、より詳細には0.4から1.5wt%の合計量で存在すれば好ましい。
【0135】
さらなる構成成分(h):
上記で挙げられている構成成分以外に、本発明の組成物は、さらなる構成成分を含み得る。さらなる構成成分の例は添加剤である。
【0136】
少なくとも1種の添加剤は、好ましくは湿潤剤および/または分散剤、レオロジー補助剤、流動制御剤、UV吸収剤、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0137】
少なくとも1種の添加剤は、好ましくは組成物の合計質量に対して0wt%から10wt%の合計量で存在する。
【0138】
本発明の方法:
本発明の第2の主題は、
(A)本発明の顔料着色組成物を成形型の表面に適用して、コーティング材料フィルムを形成する工程、
(B)コーティング材料フィルムをフラッシュする工程、
(C)部品を形成する組成物を、フラッシュしたコーティング材料フィルムに適用する工程、
(D)組成物およびコーティング材料フィルムを架橋する工程、ならびに
(E)続いて、コーティングされた部品を取り出す工程
により、コーティング成形品を生成するための方法である。
【0139】
該当する部品は、好ましくはフォームでできている部品である。本明細書のフォームは、とりわけエラストマーフォーム、より詳細には可撓性フォームを含むが、熱硬化性フォーム、より詳細には硬質フォームも含む。
【0140】
フォームは、連続気泡、独立気泡または混合気泡フォームであり得る。本明細書のフォームは、インテグラルフォームとして公知のものも含む。
【0141】
特に好ましいフォームは、ポリウレタンフォームである。これらは通例、1種または複数のポリオールおよび1種または複数のポリイソシアネートから生成される。フォームを形成するためにポリオール成分に添加される発泡剤は、通常水であり、これは、ポリイソシアネートの一部と反応して、二酸化炭素を形成するので、反応は発泡を伴う。弾性フォーム、とりわけ可撓性フォームに対する柔軟性は、長鎖ポリオールを使用して得られる。短鎖ポリオールが使用される場合、高度架橋構造が一般的に形成され、一般的に硬質フォームが形成される。ポリウレタンフォームの生成に使用されるポリオールは、好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリエーテルポリオールを含み、したがって好ましくは前述のポリオールの群から選択される。
【0142】
ファイバーも同様に、フォーム配合物に混和され得る。そのような配合物がフォーム化される場合、生成物は、ファイバー強化フォームとして公知である。ファイバーは、好ましくは硬質フォームを生成する場合に使用される。
【0143】
部品、より詳細にはフォームのコーティングは、部品の形成中に行われる。この目的のために、第一に、加工工程(A)では、本発明の組成物は、好ましくは例えば噴射または噴霧により、空気圧でまたは静電的に、成形型の表面すべてに適用される。本発明の組成物が二成分組成物である場合、別々の供給ラインを経由して成形型に供給される両成分が用意され得る。二成分は、供給中に好ましくは15から70℃、より好ましくは15から40℃、より詳細には20から30℃の間の温度を有する。供給は、圧力下で行ってよい。
【0144】
加工工程(B)では、形成されたコーティング材料のフィルムを、フラッシュする。フラッシュ時間は、好ましくは2分未満、より好ましくは1分未満、きわめて好ましくは30秒未満である。この場合では、成形型は、20から100℃、より好ましくは30から90℃、きわめて好ましくは40から80℃、より詳細には50から70℃の温度を有すれば有利である。乾燥フィルムの厚さは、好ましくは20から120μm、より好ましくは25から100μmである。フラッシュフェーズ中、溶媒Lは、組成物から除去されるが、組成物の完全な硬化または架橋は一切ない。
【0145】
加工工程(C)において、部品を形成する組成物は、コーティング材料のフラッシュしたフィルム上に噴霧する。これは、オープンまたはクローズドプロセスで起こり得る。オープンプロセスの場合では、形材を用いたオーバーモールドを実行する。好ましいクローズドプロセスの場合では、成形型は、コーティング材料のフィルムがフラッシュされた後で閉じ、次いで部品を形成するための組成物が、好ましくは注入により導入される。
【0146】
加工工程(D)では、コーティング材料フィルム、また部品を形成する組成物が架橋される。反応時間は一般に、好ましくは45から75℃、より好ましくは50から70℃、きわめて好ましくは52から65℃の範囲の成形型の温度にて、1から8分、典型的には2から6分の範囲で変化する。
【0147】
反応を起こして部品を形成し、コーティングが硬化した場合、形成された部品は、本発明の架橋組成物のコーティングでコーティングされ、加工工程(E)で成形型から除去できる。コーティングされた部品は、自動車OEM仕上げに匹敵するレベルの高い色相精度を呈する。さらに、高いレベルの色相安定性が達成され、応力白化はなく、部品の縁に起伏のある被覆もない。さらに、フォーム材料の着色の場合より高いレベルの色相強度および色相多様性が達成される。最終的に、生成された部品は、高い色相均一性も呈する。
【0148】
コーティングされた部品は、多くの分野で使用され得る。例は、自動車の内装および外装、より詳細にはシートクッションもしくは泥よけ、ステアリングホイール、シルトリムもしくはフェンダートリムとして、そうでなければ履物底として、または家具および椅子張りの分野として挙げられる。
【0149】
コーティングされた部品は、必要に応じて、サンディング作業なしで、および任意に簡単なクリーニング後に直接、さらなるコーティング材料、例えば、1種もしくは複数のベースコート材料および/または1種もしくは複数のクリアコート材料でコーティングして、1種もしくは複数のベースコートフィルムおよび/または1種もしくは複数のクリアコートフィルムを形成してよい。好ましくはプライマーサーフェーサーコートは、本発明に従ってコーティングされた部品に適用されないが、その代わり、ベースコートフィルムおよび/またはトップコートフィルム、より詳細にはクリアコートフィルムが、直接適用される。使用され得るベースコートおよびトップコート材料、とりわけクリアコート材料は、原則としてそれぞれ、OEM仕上げまたは再仕上げに従来使用されているあらゆるベースコートおよびクリアコート材料である。例えば、BASF Coatings GmbHからのそのようなベースコートおよびクリアコート材料は、詳細には、EverGloss製品ラインからのそれ自体が特に適正なものと証明されたクリアコート材料と共に利用できる。
【0150】
本発明の方法のさらなる好ましい実施形態に関して、特に本方法に使用される組成物に関係して、本発明の顔料着色組成物に関する上記の説明は、有効に準用される。
【0151】
本発明の使用する方法
最後に、本発明のさらなる主題は、コーティングされた部品、より詳細にはコーティングされたフォームを生成するための、本発明の顔料着色組成物を使用する方法である。
【0152】
本発明の顔料着色組成物、また本発明の方法におけるその使用により、コストがかかり、かつ不便な後処理なしでさらに加工できるコーティングされた部品の生成が可能となる。上塗りなしでも、組成物により部品上に得られたコーティングは、高度に弾性または可撓性、またUV-安定性および非光沢性であり、その結果、コーティングされた部品が損傷なしで脱型されるだけではなく、コーティングされた部品の早くも生成直後に、環境的な影響、例えばUV照射、汚れなどに対して、コーティングされた生成された部品が有効に保護される。同時に本発明の組成物は離型効果を有するので、この材料は、離型剤およびコーティング材料のいずれとしても使用され得る。したがって、部品が後処理される前に、コストをかけ、また不都合に除去されなければならない別々の離型剤を使用する必要はない。さらに、コーティングされた生成された部品は、際立って凹凸表面を有する部品が生じる従来の離型剤と組み合わせたフォームを使用して生成しても、規則的な表面を有する。成形型には組成物の小さい残渣しか残らないので、使用される成形型は、組成物をさらに適用する前にその都度クリーニングする必要はない。部品の生成に使用される材料の着色、または真空フィルム加工と比較して、本発明の使用により、色相精度、色相安定性、色相強度、色相多様性、および色相均一性が向上する。
【0153】
本発明の最後の主題は、部品の生成に使用される組成物の流動挙動を改善するための、本発明の組成物を使用する方法である。
【0154】
コーティングされた部品を生成するための本発明のコーティング材料組成物の使用により、驚くべきことに、部品の生成に使用される組成物の流動挙動における改善が生じる。このように、本発明の組成物を用いた成形型のコーティングにより、部品の生成に使用される組成物における流動挙動が向上し、これにより成形型の傾斜した、または狭い空隙の充填、より詳細には完全な充填も可能にするので、複雑な形状を有する部品さえも無欠陥生成を実行することが可能である。
【0155】
特に使用される組成物に関係した、本発明の使用のさらなる好ましい実施形態に関して、本発明の組成物、また本発明の方法に関する上記の説明は、有効に準用される。
【0156】
本発明は、以下の実施形態により詳細に記載されている。
【0157】
第1の実施形態によれば、本発明は、
(a)少なくとも1種の溶媒L、
(b)一般式(I)
R1-(C=O)r-O-(AO)s-R2 (I)
(式中、R1は、6から30個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、
R2は、H、PO(OH)2ラジカル、または単糖もしくは二糖の任意に部分的にリン酸化されたラジカル、またはアルジトールの任意に部分的にリン酸化されたラジカルであり、
AOは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドからなる群から選択される1種または複数のアルキレンオキシドラジカルを意味し、
rは0または1であり、sは0から30である)
の少なくとも1種の化合物、
(c)任意に、少なくとも1種のポリエーテル変性アルキルポリシロキサン、
(d)一般式(II)
R3-Si(R4)2-[O-Si(R4)(R5)]a-[O-Si(R4)2]b-O-Si(R4)2-R3 (II)
(式中、
R3およびR4は、各場合において互いに独立して、メチル基または(HO-CH2)2-C(CH2-CH3)-CH2-O-(CH2)3-*ラジカルであり、
R5はメチル基であり、
aは、0または1から10であり、
bは3から30である)
の少なくとも1種のポリシロキサン、
(e)少なくとも1種のカラーベースBF、および
(f)任意に、少なくとも1種のバインダB
を含む組成物、より詳細にはコーティング材料組成物に関する。
【0158】
第2の実施形態によれば、本発明は、組成物が、各場合において、組成物の合計質量に対して、かつASTM D236(2015年)(110℃、60分)に従って測定して30から60wt%、好ましくは35から55wt%、より好ましくは40から50wt%、より詳細には42から48wt%の固形分を有する、実施形態1による組成物に関する。
【0159】
第3の実施形態によれば、本発明は、組成物が、DIN 53211(2012年3月)に従って測定して10から60秒、より詳細には20から30秒(DIN4フローカップ)の粘度を有する、実施形態1および2による組成物に関する。
【0160】
第4の実施形態によれば、本発明は、少なくとも1種の溶媒Lが、有機溶媒、水、およびそれらの混合物から選択され、各場合において、組成物の合計質量に対して40から70wt%、より好ましくは45から65wt%、きわめて好ましくは50から60wt%、より詳細には52から58wt%の合計量で存在する、実施形態1から3のいずれか1つによる組成物に関する。
【0161】
第5の実施形態によれば、本発明は、一般式(I)において、R1が、10から24個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、R2が、H、PO(OH)2ラジカル、または単糖もしくは二糖の任意に部分的にリン酸化されたラジカル、またはアルジトール、より詳細にはソルビトールの任意に部分的にリン酸化されたラジカルであり、AOが、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドからなる群から選択される1種または複数のアルキレンオキシドラジカルを意味し、rが0または1であり、sが0または1から25である、実施形態1から4のいずれか1つによる組成物に関する。
【0162】
第6の実施形態によれば、本発明は、一般式(I)において、R1が、10から24個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、R2が、H、PO(OH)2ラジカル、または単糖の任意に部分的にリン酸化されたラジカル、もしくはアルジトール、より詳細にはソルビトールの任意に部分的にリン酸化されたラジカルであり、AOが、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドからなる群から選択される1種または複数のアルキレンオキシドラジカルを意味し、AOラジカルの全体におけるエチレンオキシド画分が、少なくとも70mol%であり、rが0または1であり、sが0であるかまたはsが6から20である、実施形態1から5のいずれか1つによる組成物に関する。
【0163】
第7の実施形態によれば、本発明は、一般式(I)の少なくとも1種の化合物が、各場合において、組成物の合計質量に対して0.1から10wt%、より好ましくは0.5から5wt%、より詳細には1.5から4wt%の合計量で存在する、実施形態1から6のいずれか1つによる組成物に関する。
【0164】
第8の実施形態によれば、本発明は、ポリエーテル変性アルキルポリシロキサンが、少なくとも1つの構造単位(R7)2(OR6)SiO1/2および少なくとも1つの構造単位(R7)2SiO2/2を含み、R6が、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシド基、より詳細にはエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドおよびブチレンオキシド基の混合物であり、R7が、C1~C10アルキル基、より詳細にはメチル基である、実施形態1から7のいずれか1つによる組成物に関する。
【0165】
第9の実施形態によれば、本発明は、ポリエーテル変性アルキルポリシロキサンが、シロキサン対エチレンオキシド基対プロピレンオキシド基対ブチレンオキシド基が6:21:15:1から67:22:16:1のモル比を有する、実施形態8による組成物に関する。
【0166】
第10の実施形態によれば、本発明は、ポリエーテル変性アルキルポリシロキサンが、構造単位(R7)2(OR6)SiO1/2対構造単位(R7)2SiO2/2が1:10から1:15、より詳細には1:10から1:13のモル比を有する、実施形態8および9による組成物に関する。
【0167】
第11の実施形態によれば、本発明は、少なくとも1種のポリエーテル変性アルキルポリシロキサンが、各場合において、組成物の合計質量に対して0wt%、または0.1から6wt%、好ましくは0.5から4wt%、より詳細には0.8から3wt%の合計量で存在する、実施形態1から10のいずれか1つによる組成物に関する。
【0168】
第12の実施形態によれば、本発明は、一般式(II)において、R3ラジカルが、(HO-CH2)2-C(CH2-CH3)-CH2-O-(CH2)3-*ラジカルであり、R4ラジカルがメチル基であり、R5ラジカルがメチル基であり、aが0であり、bが7から14である、実施形態1から11のいずれか1つによる組成物に関する。
【0169】
第13の実施形態によれば、本発明は、組成物が、一般式(II)の少なくとも1種のポリシロキサンを、各場合において、組成物の合計質量に対して0.1から5wt%、好ましくは0.5から4wt%、より詳細には0.8から2.5wt%の合計量で含む、実施形態1から12のいずれか1つによる組成物に関する。
【0170】
第14の実施形態によれば、本発明は、少なくとも1種のカラーベースBFが、組成物の合計質量に対して5から40wt%、より詳細には10から20wt%の合計量で存在する、実施形態1から13のいずれか1つによる組成物に関する。
【0171】
第15の実施形態によれば、本発明は、カラーベースBFが、少なくとも1種の効果顔料および/または少なくとも1種の着色顔料を、カラーベースBFの合計質量に対して好ましくは0.5から70wt%の合計量で含む、実施形態1から14のいずれか1つによる組成物に関する。
【0172】
第16の実施形態によれば、本発明は、少なくとも1種の効果顔料(a1)が、プレートレット形状金属効果顔料、真珠光沢顔料、金属酸化物-マイカ顔料、プレートレット形状グラファイト、プレートレット形状酸化鉄、PVDフィルムからの多層効果顔料、液晶ポリマー顔料、およびそれらの混合物の群から、より詳細にはプレートレット形状アルミニウム顔料および/またはコーティング金属酸化物-マイカ顔料および/または金属酸化物-コーティングボロシリケートから選択される、実施形態15による組成物に関する。
【0173】
第17の実施形態によれば、本発明は、少なくとも1種の着色顔料(a1)が、白色顔料、黒色顔料、有彩顔料、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アントラキノン顔料、ベンズイミダゾール顔料、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、インダンスロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、アゾメチン顔料、チオインディゴ顔料、金属錯体顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、フタロシアニン顔料、アニリンブラック、およびそれらの混合物の群から選択される、実施形態15および16による組成物に関する。
【0174】
第18の実施形態によれば、本発明は、カラーベースBFが、ポリウレタンポリマー、アミノ樹脂ポリマー、ポリアクリレートポリマー、ポリエステルポリマーおよびそれらの混合物の群から選択される少なくとも1種のバインダ、とりわけアニオン的に安定化されたポリウレタンポリマーを、カラーベースBFの合計質量に対して好ましくは10から80wt%の合計量で含む、実施形態1から17のいずれか1つによる組成物に関する。
【0175】
第19の実施形態によれば、本発明は、アニオン的に安定化されたポリウレタンポリマーが、ポリオール、より詳細にはトリメチロールプロパンの形態のNCOプレポリマーと改質剤の反応により得ることができ、NCOプレポリマーが、
(i)固形分に対して40から100mg KOH/gのOH価、および1000から3000Daの数平均分子量Mnを有する、化合物(i)から(iv)の合計質量に対して55から70wt%の少なくとも1種のポリエステルポリオールであって、好ましくはオレフィン性二重結合を含有しないポリエステルポリオール、
(ii)3から8個の炭素原子、またアルファ位における炭素原子上に2個のヒドロキシル基を有する、化合物(i)から(iv)の合計質量に対して3から7wt%の少なくとも1種のアルカン酸、より詳細にはジメチロールプロピオン酸、
(iii)化合物(i)から(iv)の合計質量に対して0.5から3wt%の、少なくとも1種のC3~C8アルカンジオール、より詳細には1,6-ヘキサンジオール、ならびに
(iv)化合物(i)から(iv)の合計質量に対して25から30wt%の、X=ジシクロヘキシルメチルラジカルであり、R3=R4=水素である、式(IV)の少なくとも1種のジイソシアネート
の反応により得ることができ、
NCOプレポリマー対改質剤の当量比が、2.0:1.0から1.0:2.0の間、より詳細には1.1:1および1:1.1の間である、実施形態18による組成物に関する。
【0176】
第20の実施形態によれば、本発明は、アニオン的に安定化されたポリウレタンポリマーが、50%から100%、好ましくは60%から80%の中和度を有する、実施形態17および18による組成物に関する。
【0177】
第21の実施形態によれば、本発明は、少なくとも1種のバインダBが、各場合において、組成物の合計質量に対して20から50wt%、好ましくは25から40wt%、より詳細には25から35wt%の合計量(固形分)で存在する、実施形態1から20のいずれか1つによる組成物に関する。
【0178】
第22の実施形態によれば、本発明は、バインダBが、(i)ポリ(メタ)アクリレート、より詳細にはヒドロキシ官能性および/またはカルボキシレート官能性および/またはアミン官能性ポリ(メタ)アクリレート、(ii)ポリウレタン、より詳細にはヒドロキシ官能性および/またはカルボキシレート官能性および/またはアミン官能性ポリウレタン、(iii)ポリエステル、より詳細にはポリエステルポリオール、(iv)ポリエーテル、より詳細にはポリエーテルポリオール、(v)先述のポリマーのコポリマー、ならびに(vi)それらの混合物からなる群から選択される、実施形態1から21のいずれか1つによる組成物に関する。
【0179】
第23の実施形態によれば、本発明は、バインダBが、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートおよび/またはポリエステルポリオールから、より詳細には、少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートおよび少なくとも1種のポリエステルポリオールの混合物から選択される、実施形態22による組成物に関する。
【0180】
第24の実施形態によれば、本発明は、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが、50から120mg KOH/g、好ましくは70から95mg KOH/g、より詳細には75から90mg KOH/g、または80から85mg KOH/gのヒドロキシル価を有する、実施形態22および23による組成物に関する。
【0181】
第25の実施形態によれば、本発明は、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが、1から20mg KOH/g、より詳細には6から14mg KOH/gもしくは8から12mg KOH/gの酸価を有し、かつ/または4000から10000g/mol、好ましくは5000から9000g/mol、より好ましくは5500から8000g/mol、より詳細には6000から7500g/molの数平均分子量Mnを有する、実施形態22から24のいずれか1つによる組成物に関する。
【0182】
第26の実施形態によれば、本発明は、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが、5から15、好ましくは6から14、より詳細には8から12のヒドロキシル官能価を有する、実施形態22から25のいずれか1つによる組成物に関する。
【0183】
第27の実施形態によれば、本発明は、
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが、
(a1)少なくとも1種のヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル、より詳細には式HC=CRx-COO-Ry-OH(式中、RxはHまたはCH3であり、Ryは、2から6、好ましくは2から4、より好ましくは2または3個の炭素原子を有するアルキレンラジカルである)の(メタ)アクリル酸エステル、
(a2)少なくとも1種のカルボキシ官能性エチレン性不飽和モノマー、より詳細には(メタ)アクリル酸と、
(a3)(メタ)アクリル酸の少なくとも1種のヒドロキシル不含およびカルボキシル不含エステル、ならびに/または少なくとも1種のヒドロキシル不含およびカルボキシル不含ビニルモノマー、より詳細にはスチレンの反応により製造可能である、実施形態22から26のいずれか1つによる組成物に関する。
【0184】
第28の実施形態によれば、本発明は、カルボキシ官能性エチレン性不飽和モノマー(a2)、より詳細には(メタ)アクリル酸が、各場合において、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの製造に使用されるモノマーすべての合計質量に対して20から45wt%、好ましくは25から40wt%、より詳細には30から35wt%の合計量で存在する、実施形態27による組成物に関する。
【0185】
第29の実施形態によれば、本発明は、ビニルモノマー(a3)、より詳細にはスチレンが、各場合において、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの製造に使用されるモノマーすべての合計質量に対して30から60wt%、好ましくは35から55wt%、より詳細には40から50wt%の合計量で存在する、実施形態27および28による組成物に関する。
【0186】
第30の実施形態によれば、本発明は、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが、各場合において、組成物に存在するバインダすべての固形分の合計質量に対して10wt%から97wt%、好ましくは40から70wt%、より詳細には40から50wt%の合計量で存在する、実施形態22から29のいずれか1つによる組成物に関する。
【0187】
第31の実施形態によれば、本発明は、ポリエステルポリオールが、100から200mg KOH/g、好ましくは110から180mg KOH/g、より詳細には120から160mg KOH/gのヒドロキシル価を有する、実施形態22から30のいずれか1つによる組成物に関する。
【0188】
第32の実施形態によれば、本発明は、ポリエステルポリオールが、0から9mg KOH/g、より詳細には0.2から2mg KOH/gの酸価を有し、かつ/または、800から3000g/mol、好ましくは1000から2000g/mol、より詳細には1000から1600g/molの数平均分子量を有する、実施形態22から31のいずれか1つによる組成物に関する。
【0189】
第33の実施形態によれば、本発明は、ポリエステルポリオールが分岐している、実施形態22から32のいずれか1つによる組成物に関する。
【0190】
第34の実施形態によれば、本発明は、ポリエステルポリオールが、2.2から4、好ましくは2.5から3.6、より詳細には2.7から3.6のヒドロキシル官能価を有する、実施形態22から33のいずれか1つによる組成物に関する。
【0191】
第35の実施形態によれば、本発明は、ポリエステルポリオールが、各場合において、組成物に存在するバインダすべての固形分の合計質量に対して40wt%から97wt%、好ましくは40から70wt%、より詳細には50から65wt%の合計量で存在する、実施形態22から34のいずれか1つによる組成物に関する。
【0192】
第36の実施形態によれば、本発明は、少なくとも1種の架橋剤Vをさらに含む、実施形態1から35のいずれか1つによる組成物に関する。
【0193】
第37の実施形態によれば、本発明は、架橋剤Vが、アミノ樹脂、ポリイソシアネート、ブロックポリイソシアネート、ポリカルボジイミド、UV光、熱、光開始剤およびそれらの混合物からなる群から選択される、実施形態36による組成物に関する。
【0194】
第38の実施形態によれば、本発明は、ポリイソシアネートが、2.4超から5、好ましくは2.6から4、より好ましくは2.8から3.6のNCO基の官能価を有する、実施形態37による組成物に関する。
【0195】
第39の実施形態によれば、本発明は、ポリイソシアネートが、少なくとも1種のイソシアヌレート環または少なくとも1種のイミノオキサジアジンジオン環を含む、実施形態37および38による組成物に関する。
【0196】
第40の実施形態によれば、本発明は、互いに異なる2種のポリイソシアネートが存在し、第1のポリイソシアネートが、少なくとも1種のイソシアヌレート環を含み、第2のポリイソシアネートが、少なくとも1種のイミノオキサジアジンジオン環を含む、実施形態37および38のいずれかによる組成物に関する。
【0197】
第41の実施形態によれば、本発明は、少なくとも1種の架橋剤Vが、各場合において、組成物の合計質量に対して10wt%から40wt%、好ましくは10から30wt%、より詳細には15から25wt%の合計量で存在する、実施形態36から40のいずれか1つによる組成物に関する。
【0198】
第42の実施形態によれば、本発明は、架橋剤Vの官能基、より詳細にはNCO基またはカルボジイミド基対少なくとも1種のバインダBにおける、架橋剤Vの官能基に対して反応性の基、より詳細にはヒドロキシル基の総計のモル比が、0.4:1から1:1、好ましくは0.65:1から0.85:1、より詳細には0.7:1から0.8:1である、実施形態22から41のいずれか1つによる組成物に関する。
【0199】
第43の実施形態によれば、本発明は、組成物が、少なくとも1種の架橋触媒VKをさらに含む、実施形態1から42のいずれか1つによる組成物に関する。
【0200】
第44の実施形態によれば、本発明は、架橋触媒VKが、カルボン酸ビスマスの群から選択される、実施形態43による組成物に関する。
【0201】
第45の実施形態によれば、本発明は、カルボン酸ビスマスの群からの架橋触媒VKが、一般式(III)
Bi[OOC(CnH2n+1)]3(III)
(式中、n=5から15、好ましくはn=7から13、より詳細にはn=9から11である)を有する、実施形態44による組成物に関する。
【0202】
第46の実施形態によれば、本発明は、少なくとも1種の架橋触媒VKが、各場合において、組成物の合計質量に対して0.01wt%から3.5wt%、好ましくは0.1から2wt%、より詳細には0.4から1.5wt%の合計量で存在する、実施形態43から45のいずれか1つによる組成物に関する。
【0203】
第47の実施形態によれば、本発明は、組成物が、少なくとも1種の顔料および/または少なくとも1種のフィラーをさらに含む、実施形態1から46のいずれか1つによる組成物に関する。
【0204】
第48の実施形態によれば、本発明は、湿潤剤および/または分散剤、レオロジー補助剤、流動制御剤、UV吸収剤ならびにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤が、さらに存在する、実施形態1から47のいずれか1つによる組成物に関する。
【0205】
第49の実施形態によれば、本発明は、少なくとも1種の添加剤が、組成物の合計質量に対して0wt%から10wt%の合計量で存在する、実施形態48による組成物に関する。
【0206】
第50の実施形態によれば、本発明は、
(A)実施形態1から49のいずれか1つによる組成物を成形型の表面に適用して、コーティング材料フィルムを形成する工程、
(B)コーティング材料フィルムをフラッシュする工程、
(C)部品を形成する組成物を、フラッシュしたコーティング材料フィルムに適用する工程、
(D)組成物およびコーティング材料フィルムを架橋する工程、ならびに
(E)続いて、コーティングされた部品を取り出す工程
により、コーティングされた部品を生成するための方法に関する。
【0207】
第51の実施形態によれば、本発明は、コーティングされた部品が、シートクッション、泥よけ、ステアリングホイール、シルトリムもしくはフェンダートリムとしての自動車の内装もしくは外装用部品、履物底、家具部品または椅子張りの形態である、実施形態50による方法に関する。
【0208】
第52の実施形態によれば、本発明は、中間サンディング作業なしで硬化させたコーティング材料フィルムを、少なくとも1種のベースコートフィルムおよび/または少なくとも1種のクリアコートフィルムでコーティングし、ベースコートフィルム(複数可)およびクリアコートフィルム(複数可)を別々に、または一緒に硬化させる、実施形態50および51のいずれかによる方法に関する。
【0209】
第53の実施形態によれば、本発明は、コーティングされた部品、より詳細にはコーティングされたフォームを生成するための、実施形態1から49のいずれか1つによる組成物を使用する方法に関する。
【0210】
第54の実施形態によれば、本発明は、部品の生成に使用される組成物の流動挙動を改善するための、実施形態1から49のいずれか1つによる組成物を使用する方法に関する。
【実施例】
【0211】
方法の説明
1.固形分(固体、非揮発性画分)
非揮発性画分は、ASTM D2369(2015年付け)に従って判定される。この手順では、2gの試料は、事前に乾燥させたアルミニウム皿中で秤量され、試料は乾燥棚で110℃にて60分乾燥させ、デシケーター中で冷却し、次いで再度秤量した。導入された試料の合計量に対する残渣は、非揮発性画分に相当する。
【0212】
2.脱型エネルギーの判定
この場合では、2.5×4cmの寸法を有する接着剤ストリップ(TESA 4651;Tesaデータシートを参照されたい)を、成形型の上面に結合させる。事前に、接着テープの一端を一度折り畳んでループを作り、これを通る孔を開ける。ばね秤をこの孔に懸垂させる。小刀を使用して、コーティングフィルムを接着テープの周囲で切断して、10cm2の規定面積を得る。離脱方向は、成形型に対して直角である。
【0213】
3.さらなる加工のための能力
それぞれの離型剤組成物を、55℃にて成形型表面に適用した。適用終了直後、指先を使用して、液体離型剤組成物を5秒サイクルで可能な限り一様に/同じ圧力で軽く塗った。それぞれの離型剤組成物は、完全に乾燥した時点でさらなる加工のための能力を有していたが、成形型から離型できなかった。
【0214】
4.酸価の判定
酸価は、DIN EN ISO 2114(2002年6月付け)に従って、「方法A」を使用して判定される。酸価は、DIN EN ISO 2114で指定されている条件下で、1gの試料の中和に必要とされるmg単位の水酸化カリウムの質量に相当する。本明細書で報告されている酸価は、DIN標準で指定され、固形分に対する全酸価に対応している。
【0215】
5.OH価の判定
OH価は、DIN 53240-2に従って判定される。OH基は、過剰な無水酢酸でのアセチル化により反応する。過剰な無水酢酸は、続いて水の添加により分解して酢酸を形成し、全体の酢酸をエタノール性KOHで逆滴定する。OH価は、mg単位のKOH量を指し示し、これは、1gの試料のアセチル化において結合する酢酸の量に等しい。OH価は、試料の固形分に対する。
【0216】
6.数平均および質量平均分子量の判定
数平均分子量(Mn)は、DIN 55672-1(2016年3月)に従ってゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により判定される。数平均分子量以外に、この方法は、質量平均分子量(Mw)、また多分散性d(質量平均分子量(Mw)対数平均分子量(Mn)の比)を判定するためにも使用できる。テトラヒドロフランは、溶離液として使用される。判定は、ポリスチレン標準に対して行われる。カラム材料は、スチレン-ジビニルベンゼンコポリマーからなる。
【0217】
作業例
本発明および以下の比較例は、本発明を明瞭にする役割を果たすが、いかなる限定を課すとも解釈されるべきではない。
【0218】
述べられた配合物の構成成分およびその量に関して、以下は、留意すべきである:商用の生成物へのある言及は、構成成分に関して選択される具体的な主要名に関わりなく、厳密にその商用の生成物である。
【0219】
1.使用される離型剤組成物
コーティング材料組成物Z1からZ5は、表1で報告されている構成成分の均質な混合によりそれぞれ得られる。
【0220】
【0221】
1)82.5mg KOH/g、10mg KOH/gの酸価、約6800g/molのMn、約17000g/molのMwのヒドロキシル価を有するヒドロキシル官能性ポリ(メタ)アクリレート(BASF SE)、
2)115mg KOH/gのヒドロキシル価および約3.5のヒドロキシル官能価を有するポリエステルポリオール(Covestro)、
3)式R1-(C=O)r-O-(AO)s-R2の化合物の混合物(Muench Chemie International GmbH)、(a)R1=12から22個の炭素原子を有する飽和および不飽和炭化水素ラジカルの混合物、r=0、AO=主にエチレンオキシド単位およびいくつかのプロピレンオキシド単位の混合物、およびR2=H(Mn≒650g/mol)、ならびに(b)R1=21個の炭素原子を有する不飽和炭化水素ラジカル、s=0、およびR2=Hで構成される、
4)ポリエーテル変性メチルポリシロキサン(Borchers GmbH)、
5)上記で挙げられているラジカルを有する式(III)のヒドロキシ変性ポリシロキサン(Siltec GmbH & Co.KG)、
6)UV吸収剤(BASF Corporation)、
7)ネオデカン酸ビスマス(King Industries)、
8) NCO含有量が11.0wt%のイソシアヌレートタイプのヘキサメチレンジイソシアネートトリマー(Covestro)、
9)カラーベースBFは、55-M 1 1L効果添加剤、55-A 098 0.5Lストーンホワイト、55-M 141 0.5Lイエロー、55-M 306 1Lラストレッド、55-A 556 1Lオーシャンブルー2、55-A 640 1Lブルーグリーン、55-A 974 1Lチンチングブラック、55-M 99-21 1.0Lクリスタルシルバーコース、55-M 800 1Lパールレッドブラウンから選択される。
【0222】
2.離型剤組成物の成形型の表面に対する接着力の判定
接着力は、上に記載したように判定する。結果を表2に再現する。
【0223】
【0224】
本発明によらない組成物Z1は、接着テープが5ニュートンで層間剥離をきたしたので、成形型から分離できなかった。対照的に、本発明の組成物Z2は、追加の外部離型剤を使用しなくても高い脱型性を呈する。さらに、少なくとも1種のカラーベースBFを添加しても、接着力の増加を引き起こさず、したがって組成物の即時脱型性は、顔料着色によって悪影響を受けない(組成物Z2およびZ3参照)。
【0225】
3.さらなる加工時間の判定
さらなる加工時間は、上に記載したように判定する。結果を表3に再現する。
【0226】
【0227】
表3から、本発明の組成物Z2は、本発明によらない組成物Z1より短いフラッシュ時間を有することが分かる。さらに、カラーベースBFを添加してもフラッシュ時間に対する悪影響を示さない(組成物Z2およびZ3参照)。これらの短いフラッシュ時間により、加工工程(B)で作業時間の短縮、ひいては効率的な加工レジームが可能となる。
【0228】
4.コーティングされた部品の生成およびテスト
4.1 コーティングされた部品の生成
本発明のコーティング材料組成物Z2およびZ4、また本発明によらないコーティング組成物Z3は、プレート形態の成形型(アルミニウム合金からなる型、プレートの大きさ:200mm×200mm×20mm、構造化されていない)の表面に、それぞれ手動で空気圧にて適用した(SATA Jet 4000 B HVLP、ノズル1.0)。成形温度は、55℃または65℃であった。次いでコーティング材料フィルムをフラッシュした(フラッシュ時間:20から25秒、乾燥フィルムの厚さ:約80μm(光学顕微鏡法による))。
【0229】
フラッシュ後、成形型を閉じ、ポリエステルベースのポリウレタンフォーム系を注入した。この系は、A成分(100wt%のポリオール混合物270/401)、また10.6wt%のElastopan S 7429/155触媒2)を含有する)とB成分(Iso 187/683)を含有する)を、100:84の比で混合することにより得ることができる。フォーム密度は、280から320kg/m3である。組成物Z3の場合では、1種のフォーム系を、青い顔料着色と使用した。
1 51mg KOH/gのOH価を有するポリエステルポリオール混合物(BASF Italia S.p.A.)
2 NCO含有量が18.7%の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートをベースとしたイソシアネート(BASF Italia S.p.A.)
3 3.9wt%の水含有量を有する脂肪族第三級アミン、グリコールおよび安定剤の混合物(BASF Italia S.p.A.)
【0230】
コーティング材料のフィルムの硬化、またポリウレタンフォームの形成は、閉じた型において、55℃にてまたは65℃にて4分間にわたって行った。
【0231】
4分の硬化時間が経過した後で、コーティングされたフォームは、補助剤がなくても型から手作業で、容易にかつ完全に除去できる。コーティングの表面は、履物産業で必要とされるマット感を有していた。
【0232】
4.2 Rossフレックステスト
上記で生成され、本発明の組成物Z2およびZ4を用いてコーティングした部品をそれぞれ使用して、RossフレックステストをASTM D1052:2009に従って、60°の屈曲角で実行した。テストは、各場合において100000サイクルにわたって実行し、50000サイクル後に部品を検査し、次いでそれぞれさらに10000サイクル後にコーティングの表面に対する損傷の存在について検査した。
【0233】
100000サイクル後でさえ、本発明の組成物Z2およびZ5でコーティングした部品は、表面の損傷を一切示さなかった。したがって、この組成物で達成されたコーティングは、生成後に部品の傑出した脱型性を生じるだけではなく、部品への強い接着性および高い可撓性も呈する。したがって顔料着色されたコーティングもきわめて頑丈であるので、例えば真空ホイル加工で発生する種類の応力白化を引き起こさない。
【0234】
4.3 耐擦過性
本発明の組成物Z2およびZ4でコーティングした部品の耐擦過性は、DIN EN ISO 11640:2017-05に基づいてテストした。この目的のために、それぞれの部品を、SDL Atlas Crockmeterに挟んだ。グレードP280の商用研磨紙を使用して、部品のラッカー面を、9Nの押圧力、ストローク長さ5cmで前後動ストローク25回摩擦した。研磨紙上の着色した残渣、またコーティングの表面を、次いで検査した。研磨紙はコーティングの小さい残渣を有していたが、コーティングに目に見える損傷はなかった。したがって本発明のコーティング材料は、良好な耐擦過性を呈するコーティングを生じる。
【0235】
4.4 移行抵抗性
圧力下での顔料の移動挙動を調査するために、1-NOVOラッカー系を、DIN EN ISO 15701:2015-07に従って調査した。この場合では、それぞれの部品のラッカー面を、James HealからのPVCホイルで被覆した(EN ISO 15701に従って)。部品およびPVCホイルを、James Healパースピロメーターにおいて2枚のガラスプレートの間に挟み、質量4.5kgと秤量した。パースピロメーターを続いて50℃にて16時間保存した。保存時間の終わりに、実験の構成を再度解除し、PVCホイルを変色について検査した。テストしたすべての部品で、PVCホイルの変色はなかった。したがって、コーティングされた部品の移行抵抗性は高い。
【0236】
4.5 色相精度、色相強度
生成された部品の色相精度および強度を視覚的に評価した。得られた結果は、以下の通りであった(評点1:OEM車仕上げに匹敵する色相精度、すなわちきわめて高い色相強度、評点2:OEM車仕上げより不十分な色相精度、すなわち高い色相強度、評点3:OEM車仕上げより著しく不十分な色相精度、すなわち低い色相強度)。
【0237】
【0238】
1)コーティング材料Z3(本発明によらない)でコーティングした
2)コーティング材料Z2(本発明によらない)でコーティングした
3)コーティング材料Z4(本発明によらない)でコーティングした
【0239】
上記の表から明白なように、本発明の組成物を用いた部品(部品B2およびB3)のコーティングにより、フォーム材料(成分B1)の顔料着色よりも色相精度および色相強度が向上する。
【0240】
4.6 適合性
部品の生成に使用されるフォーム組成物に対するコーティング材料組成物の適合性を判定するために、部品を4.1に記載されているように生成した。部品は、本発明の離型剤組成物Z2、ワックス系離型剤(Muench Chemie)、およびシリコーン系離型剤(Muench Chemie)を使用して生成した。部品を生成するために使用されるフォーム系に対する離型剤の適合性を視覚的に評価し、不適合性は、フォームの突起および陥凹により顕示される。得られた結果は、以下の通りであった(評点1:きわめて良好な適合性、評点2:良好な適合性、評点3:満足できる適合性、評点4:妥当な適合性)。
【0241】
【0242】
表4から、本発明のコーティング材料組成物は、部品の生成に使用されるフォーム系に対してきわめて良好な適合性を呈することが分かる。本発明の組成物Z2を使用して生成された部品は、突出または陥凹を有さない。対照的に、本発明によらない離型剤組成物は、部品の生成中に突出および陥凹を生じるので、満足すべきまたは十分な適合性を呈するに留まる。
【0243】
4.7 部品の生成に使用される組成物の流動性に対する離型剤組成物の効果
コーティング材料組成物の、部品の生成に使用されるフォーム組成物に対する効果を判定するために、部品を4.1に記載されているように生成した。部品は、本発明の離型剤組成物Z2、また水性離型剤(MP6032-5、Muench Chemie)を使用して生成した。使用される成形型は、単純な形状を有する成形板であり、より複雑な形状を有する履物底形態の成形型、およびわずか数ミリメートル幅の支柱を含む角度の付いた形状を有する成形型である。フォーム系による成形型の脱型および充填は、それぞれ視覚的に評価した。得られた結果は、以下の通りであった(評点1:流動性においてきわめて良好な脱型またはきわめて高い改善、評点2:流動性において良好な脱型または高い改善、評点3:満足すべき脱型または部品に最小限の欠陥、評点4:十分な脱型または部品に多数の欠陥)。
【0244】
【0245】
表5から、本発明のコーティング材料組成物は、高度に複雑な形状の成形型を使用する場合でさえも、傑出した脱型性を生じることが分かる。本発明のコーティング材料組成物を使用すると、さらに、フォーム系の流動性が改善され、したがって、成形型における狭い空隙でさえも、フォーム組成物で完全に満たすことができる。これにより、複雑な形状の部品の無欠陥生成が可能となる。反対に、本発明によらない離型剤組成物の使用は、より複雑な成形型の場合では、より不十分な脱型性となる。さらに、本発明によらない離型剤組成物の使用は、フォーム組成物の流動性に対して好影響をもたらさず、したがって、とりわけ複雑な成形型の場合では、空隙の充填が足りないため欠陥が生じる。