(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】耐食性を有する構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体
(51)【国際特許分類】
C09J 163/00 20060101AFI20240329BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240329BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240329BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240329BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/04
C09J11/06
C09J11/08
B32B27/00 D
(21)【出願番号】P 2021534271
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(86)【国際出願番号】 IB2019060623
(87)【国際公開番号】W WO2020128718
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-09
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】エルギミアビ, ソハイブ
(72)【発明者】
【氏名】ヤフス, ヌレッティン
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/197097(WO,A1)
【文献】特表2017-527645(JP,A)
【文献】特表2015-533867(JP,A)
【文献】特表2018-534388(JP,A)
【文献】特開平06-306345(JP,A)
【文献】特開2017-203117(JP,A)
【文献】特開2017-171922(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03170877(EP,A1)
【文献】特表2009-506169(JP,A)
【文献】特表2011-505478(JP,A)
【文献】特表2019-524474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 163/00
C09J 11/04
C09J 11/06
C09J 11/08
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体であって、
a)エポキシ化合物と、
b)エポキシ硬化剤と、
c)膨張剤と、
d)
5~10重量%のホスフェート金属錯体の群から選択される無機顔料と、
e)熱可塑性樹脂と、
を含む、前駆体。
【請求項2】
前記膨張剤が、膨張性剤及び既膨張剤、並びにこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の前駆体。
【請求項3】
前記膨張性剤が、非カプセル化発泡剤
、カプセル化発泡剤、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の前駆体。
【請求項4】
前記既膨張剤が、非球状無機既膨張粒子
である、請求項2に記載の前駆体。
【請求項5】
前記膨張剤が、膨張性微小球、既膨張パーライト粒子、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の前駆体。
【請求項6】
前記ホスフェート金属錯体が、オルトホスフェート金属錯体、ポリホスフェート金属錯体、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の前駆体。
【請求項7】
前記ホスフェート金属錯体が、カルシウムマグネシウムオルトホスフェート、ストロンチウムアルミニウムポリホスフェート、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の前駆体。
【請求項8】
水を吸収することがで
きる無機充填剤を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の前駆体。
【請求項9】
水を吸収することができる前記無機充填剤とは異なる二次充填材を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の前駆体。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定された際
、60℃~140
℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の前駆体。
【請求項11】
エポキシ化合物の硬化促進剤を更に含
む、請求項1~10のいずれか一項に記載の前駆体。
【請求項12】
前記熱硬化性前駆体の組成物の総重量に基づいて、
a)20~60重量
%の前記エポキシ化合物と、
b)0.1~20重量
%の前記エポキシ硬化剤と、
c)0.05~10重量
%の前記膨張剤と、
d
)5~10重量%の、ホスフェート金属錯体の群から選択される前記無機顔料と、
e)任意に、0.1~35重量
%の、水を吸収することができる前記無機充填剤と、
f)任意に、0.5~50重量
%の前記二次充填材と、
g)1~50重量%、2~40重量
%の前記熱可塑性樹脂と、
h)任意に、0.05~10重量
%の、前記エポキシ化合物の硬化促進剤と、
i)任意に、5~60重量
%の強靭化剤と、
を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の前駆体。
【請求項13】
2つの部品を結合させる方法であって、
a)第1の部品及び第2の部品を準備する工程と、
b)請求項1~12のいずれか一項に記載の熱硬化性前駆体を、前記第1の部品及び/又は前記第2の部品のうちの少なくとも1つの表面の少なくとも一部に適用する工程と、
c)前記第1の部品と前記第2の部品とを、前記エポキシ硬化剤の活性化温度よりも低い温度で固着させることにより、前記第1の部品と前記第2の部品との間に接合部を形成する工程と、
d)工程c)で形成された前記接合部を、前記エポキシ硬化剤の活性化温度よりも高い温度で加熱することにより、熱硬化された構造用接着剤組成物を得て、前記2つの部品を結合させる工程と、
を含む、方法。
【請求項14】
前記2つの部品が金属部品であり、前記方法が金属部品のヘムフランジ結合のための方法である、請求項13に記載の2つの部品を結合させる方法。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の熱硬化性前駆体の、産業用
途のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、接着剤の分野に関し、より具体的には、特に金属部品を結合させるために使用するための構造用接着剤組成物の分野に関する。より具体的には、本開示は、既膨張(expanded)構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体に関する。本開示はまた、2つの部品を結合させる方法及び複合材物品に関する。本開示は、建設及び自動車用途のための既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体の、特に自動車産業におけるホワイトボディ結合用途のための使用に更に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤は、多様な保持、封止、保護、マーキング、及び遮蔽目的のために使用されている。多くの用途に特に好ましい接着剤の1つのタイプは、構造用接着剤に代表される。構造用接着剤は、典型的には、ネジ、ボルト、釘、ステープル、リベット及び金属融合プロセス(例えば、溶接、ろう付け、及びはんだ付け)などの従来の接合技術に取って代わるか、又はこれを強化するために使用され得る熱硬化性樹脂組成物である。構造用接着剤は、汎用産業用途、並びに自動車産業及び航空宇宙産業における高性能用途を含む様々な用途で使用される。構造用接着剤として好適であるために、接着剤は、高い耐久性のある機械的強度、並びに高い耐衝撃性を呈するものとする。
【0003】
構造用接着剤は、特に、車両内の金属接合部に使用されてもよい。例えば、接着剤を用い、例えば屋根パネルといった金属パネルを、車両の支持構造又はシャーシに結合させる場合がある。更に、接着剤を、車両クロージャパネルの2つの金属パネルの接合に用いる場合がある。車両クロージャパネルは、典型的には、外側金属パネル及び内側金属パネルのアセンブリを含み、外側パネルの縁部を内側パネルの縁部の上に折り重ねることによってヘム構造が形成される。典型的には、接着剤がパネルの間にもたらされ、これらを共に結合させる。更に、典型的には、シーラントを金属パネルの接合部に適用し、十分な耐食性をもたらす必要がある。例えば、米国特許第6,000,118号(Biernatら)は、2つのパネルの対向面の間への流動性シーラントビーズの使用、及び外側パネル上のフランジと内側パネルの露出面との間への未硬化塗料様樹脂の薄いフィルムの使用を開示している。塗料フィルムは、完成したドアパネル上で実施される焼き付け作業により、固体不透過状態に硬化される。米国特許第6,368,008号(Biernatら)は、2つの金属パネルを一緒に固定するための接着剤の使用を開示している。接合部の縁部は、金属コーティングによって更に封止される。国際公開第2009/071269号(Morralら)は、ヘムフランジ用のシーラントとして、膨張性(expandable)エポキシペースト接着剤を開示している。更なるヘム付き構造が、米国特許第6,528,176号(Asaiら)に開示されている。2つの金属パネル、特に車両クロージャパネルの外側パネルと内側パネルとを、接合部を封止するための更なる材料を必要としない接着剤で接合できる、接着剤組成物を開発するための更なる取り組みが行われてきた。このように、十分な結合を提供する一方でまた、接合部を封止し、かつ耐食性を提供する接着システムを開発することが望ましいものとなった。部分的な解決方法が、例えば米国特許出願公開第2010/0120936(A1)号(Lamon)に記載されており、既膨張熱硬化発泡フィルムの、熱膨張性かつ硬化性のエポキシ系前駆体が開示されており、この前駆体は固体及び液体のエポキシ樹脂の混合物を含み、硬化時に、好ましいエネルギー吸収特性及び間隙充填特性をもたらすことが主張されている。他の部分的な解決策は、欧州特許第2700683(A1)号(Elgimiabiら)及び米国特許出願公開第2018/0282592(A1)号(Curaら)に記載されており、ヘムフランジ構造を形成するのに好適な構造用接着フィルムを開示している。更に部分的な解決策は、いわゆる構造用結合テープを開示する米国特許出願公開第2002/0182955(A1)号(Weglewskiら)に記載されている。構造用結合テープは、接着強度及び耐腐食性の点で概して不十分である。
【0004】
当該技術分野において既知の解決策に関連する技術的利点に反することなく、上記の欠点を克服する構造用接着剤組成物が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
一態様によれば、本開示は既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体に関する。本組成物は、エポキシ化合物と、エポキシ硬化剤と、膨張(expanding)剤と、ホスフェート金属錯体の群から選択される無機顔料と、を含む。
【0006】
別の態様では、本開示は、2つの部品を結合させる方法に関する。本方法は、第1の部品及び第2の部品を準備する工程と、上記のような熱硬化性前駆体を、第1の部品及び/又は第2の部品のうちの少なくとも1つの表面に適用する工程と、第1の部品及び第2の部品とを、エポキシ硬化剤の活性化温度よりも低い温度で固着することにより、第1の部品と第2の部品との間に接合部を形成する工程と、固着工程で形成された接合部を、エポキシ硬化剤の活性化温度よりも高い温度で加熱することにより、熱硬化された構造用接着剤組成物を得て、2つの部品を結合させる工程と、を含む。
【0007】
なお別の態様では、本開示は、上記のような熱硬化性前駆体の、産業用途、特に自動車産業用のホワイトボディ結合用途のための使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
第1の態様によれば、本開示は、エポキシ化合物と、エポキシ硬化剤と、膨張剤と、ホスフェート金属錯体の群から選択される無機顔料と、を含む、既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体に関する。
【0009】
本開示の文脈では、驚くべきことに、上記のような既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、膨張率(expansion rate)及び間隙充填性、並びに接着強度、特に重なり剪断強度、特に湿潤条件下での耐食性、及び老化安定性、特に、いわゆる(湿潤)カタプラズマ条件などの老化条件に曝されたときの老化安定性に関して優れた特性及び性能を備えた既膨張構造用接着剤組成物の製造に特に好適であることが見出された。
【0010】
このことは、本開示の文脈において、既膨張構造用接着剤組成物の製造に使用される一般的な膨張剤、例えば、非カプセル化発泡剤、カプセル化発泡剤(特に、液化ガスが充填され、ポリマー熱可塑性シェルにカプセル化された膨張性微小球)又は非球状無機既膨張粒子は、高腐食感受性化学物質の存在故に水によって誘発される腐食に特に敏感であることが更に見出されたため、特に驚くべき発見である。したがって、出願人は、優れた耐食性を確保しながら、一般的に利用可能な膨張剤を使用して既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体を配合する技術的困難に対峙した。
【0011】
本開示の文脈において、驚くべきことに、上記のような既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体が、既膨張構造用接着剤組成物を製造するのに特に好適であり、2つの金属部品を接合するために使用される場合、金属結合界面における腐食の形成を防止するか、又は少なくとも実質的に低減する優れた能力を有することが同様に見出された。
【0012】
上記のような熱硬化性前駆体は、ステンレス鋼及びアルミニウムなどの油性汚染基材への接着に関して優れた特性及び性能を備えた既膨張構造用接着剤組成物を製造するのに好適であることが更に見出された。
【0013】
理論に束縛されるものではないが、これらの優れた性質及び特性は、特に、とりわけホスフェート金属錯体の群から選択され、かつ特に湿潤条件下での老化安定性及び耐食性に関して優れた特性及び性能を有する上記のような熱硬化性前駆体及び得られる既膨張構造用接着剤組成物をもたらす優れた能力を有する無機顔料の存在に起因すると考えられる。なお理論に束縛されるものではないが、ホスフェート金属錯体は、金属腐食化学機構に関与する金属イオン(特に、第一鉄Fe(II)及び第二鉄Fe(III)のカチオン)の強力な捕捉剤として作用すると考えられる。
【0014】
したがって、本開示の熱硬化性前駆体は、金属部品の結合、特に自動車産業におけるホワイトボディ結合用途、より詳細には金属部品のヘムフランジ結合のために目立って好適である。更に有利ないくつかの態様では、熱硬化性前駆体は、自動化された処理及び用途、特に高速ロボット設備に好適である。
【0015】
「ガラス転移温度」及び「Tg」という用語は、互換可能に使用され、(コ)ポリマー材料又はモノマーとポリマーとの混合物のガラス転移温度を指す。特に指示がない限り、ガラス転移温度値は、示差走査熱量測定(DSC)により測定される。
【0016】
本開示による既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、エポキシ化合物を含む。本明細書で使用するためのエポキシ化合物は、特に限定されない。構造用接着剤の技術分野において公知の任意のエポキシ化合物を、本開示の文脈において使用することができる。本明細書で使用するのに好適なエポキシ化合物は、本開示を踏まえて、当業者によって容易に特定され得る。
【0017】
一般的にはエポキシ樹脂とも呼ばれるエポキシ化合物は、構造用接着剤組成物の当業者に周知である。本明細書で使用するのに好適なエポキシ樹脂及びそれらの製造方法は、例えば、欧州特許第2700683(A1)号(Elgimiabiら)及び米国特許出願公開第2018/0282592(A1)号(Curaら)に十分に記載されており、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
例示的な一態様によれば、本明細書で使用するためのエポキシ化合物は、フェノール性エポキシ樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂、水素化エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールエポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択されるエポキシ樹脂である。
【0019】
本開示の有利な一態様では、本明細書で使用するためのエポキシ化合物は、ノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂、特に、ビスフェノール-Aとエピクロロヒドリンとの反応から誘導されたもの(DGEBA樹脂)、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択されるエポキシ樹脂である。
【0020】
本開示の特に有利な態様によれば、本明細書で使用するためのエポキシ化合物は、250g/当量未満、230g/当量未満、220g/当量未満、又は更には200g/当量未満の平均エポキシ当量を有する。なお有利には、本明細書で使用するためのエポキシ化合物は、700g/mol未満、500g/mol未満、又は更には400g/mol未満の重量平均分子量を有する。
【0021】
本開示の好ましい実施では、本開示による既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、水素化ビスフェノールエポキシ樹脂、特に、水素化ビスフェノール-Aとエピクロロヒドリンとの反応から誘導されたもの(水素化DGEBA樹脂)、及びこれらの任意の混合物からなる群から好ましくは選択される第2のエポキシ樹脂を更に含む。本開示の文脈において、実に驚くべきことに、特に水素化ビスフェノールエポキシ樹脂の群から選択される第2のエポキシ樹脂の使用は、接着特性、特に、得られる構造用接着剤組成物の油性汚染基材への剥離接着特性を実質的に維持又は更に改善することが見出された。これらの特定の熱硬化性前駆体は、特に油性汚染金属基材に向かって目立って優れた耐油汚染性を有する構造用接着剤組成物をもたらすのに特に好適である。例示的な油性汚染物質は、例えば、鉱油、及び合成油である。典型的な鉱油としては、パラフィン系鉱油、中間鉱物油、及びナフテン系鉱油が挙げられる。好ましくは水素化ビスフェノールエポキシ樹脂からなる群から選択される第2のエポキシ樹脂を更に含む既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、有利な機械的特性、特に有利な材料柔軟性を備える構造用接着剤組成物をもたらすことも見出された。
【0022】
典型的な態様では、本開示による既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、熱硬化性前駆体の組成物の総重量に基づいて、20~60重量%、30~60重量%、30~50重量%、又は更に35~45重量%のエポキシ化合物を含む。
【0023】
本開示による既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、エポキシ硬化剤を更に含む。本明細書で使用するためのエポキシ硬化剤は、特に限定されない。構造用接着剤の技術分野において公知の任意のエポキシ硬化剤を、本開示の文脈において使用することができる。本明細書で使用するために好適なエポキシ硬化剤は、本開示を踏まえて、当業者によって容易に特定され得る。
【0024】
本開示の典型的な一態様によれば、本明細書で使用するためのエポキシ硬化剤は、急速反応エポキシ硬化剤、潜在性(latent)エポキシ硬化剤、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。より典型的には、本明細書で使用するためのエポキシ硬化剤は、急速反応熱開始エポキシ硬化剤、潜在性熱開始エポキシ硬化剤、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0025】
本開示の有利な態様によれば、エポキシ硬化剤は、第一級アミン、第二級アミン、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0026】
別の有利な態様によれば、エポキシ硬化剤として使用するためのアミンは、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、1つ以上のアミノ部分を有する芳香族構造、ポリアミン、ポリアミン付加物、ジシアンジアミド、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0027】
本開示の更に別の有利な態様によれば、本明細書で使用するためのエポキシ硬化剤は、ジシアンジアミド、ポリアミン、ポリアミン付加物、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。好ましい態様では、エポキシ硬化剤はジシアンジアミドであるように選択される。
【0028】
典型的な態様では、本開示による既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、熱硬化性前駆体の組成物の総重量に基づいて、0.1~20重量%、0.2~15重量%、0.2~10重量%、0.5~8重量%、1~6重量%、又は更には1~4重量%のエポキシ硬化剤を含む。
【0029】
有利な実施では、本開示による既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、硬化促進剤を更に含んでもよく、硬化促進剤が、特に、ポリアミン、ポリアミン付加物、尿素、置換尿素付加物、イミダゾール、イミダゾール塩、イミダゾリン、芳香族第三級アミン、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0030】
本明細書で使用するための硬化促進剤は、特に限定されない。構造用接着剤の技術分野において公知の任意の硬化促進剤を、本開示の文脈において使用することができる。本明細書で使用するために好適なエポキシ硬化促進剤は、本開示を踏まえて、当業者によって容易に特定され得る。
【0031】
エポキシ硬化剤及び硬化促進剤は、構造用接着剤組成物の当業者に周知である。本明細書で使用するのに好適なエポキシ硬化剤及び硬化促進剤、並びにそれらの製造方法は、例えば、欧州特許第2,700,683(A1)号(Elgimiabiら)、米国特許出願公開第2018/0282592(A1)号(Curaら)に記載されており、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
好ましい一実施では、本明細書で使用するための硬化促進剤は、ポリアミン付加物、置換尿素、特にN-置換尿素付加物の群から選択される。
【0033】
本開示の特に好ましい実施では、硬化促進剤は、置換尿素付加物、特に、N-置換(ビス)尿素付加物の群から選択される。
【0034】
典型的な態様では、本開示による既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、熱硬化性前駆体の組成物の総重量に基づいて、0.05~10重量%、0.1~10重量%、0.2~8重量%、0.2~6重量%、0.2~5重量%、0.5~5重量%、又は更には0.5~4重量%の、エポキシ化合物の硬化促進剤を含む。
【0035】
本開示による既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、膨張剤を更に含む。本明細書で使用するための膨張剤は、特に限定されない。構造用接着剤の技術分野において公知の任意の膨張剤を、本開示の文脈において使用することができる。本明細書で使用するのに好適な膨張剤は、本開示を踏まえて、当業者によって容易に特定され得る。
【0036】
本開示の典型的な一態様によれば、本明細書で使用するための膨張剤は、(熱)膨張性剤、(熱)既膨張剤((thermally)expanded agent)、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0037】
有利な態様では、使用するための(熱)膨張性剤は、非カプセル化発泡剤、特に化学発泡剤、カプセル化発泡剤、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0038】
本開示の特に有利な一態様では、本明細書で使用するためのカプセル化発泡剤は、膨張性微小球、特に液化ガスが充填され、特にポリマー熱可塑性シェルにカプセル化された膨張性微小球からなる群から選択される。
【0039】
例示的な態様では、膨張性微小球にカプセル化された液化ガスは、トリクロロフルオロメタン、及び炭化水素、特にn-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ブタン、及びイソブタン、並びにこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0040】
既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体において使用するためのカプセル化発泡剤は、例えば、Pierce&Stevens Chemical Corpより商標名Micropearl(商標)、Matsumotoより商標名Microsphere(商標)又はAkzo Nobelより商標名Expancel(商標)で市販されている。
【0041】
本開示の別の特に有利な態様では、本明細書で使用するための非カプセル化発泡剤は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボナミド、カルバジド、ヒドラジド、水素化ホウ素ナトリウム又は重炭酸ナトリウム/クエン酸を主成分とする非アゾ化学発泡剤、及びジニトロソペンタメチレンテトラミン、並びにこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。本明細書で使用するための非カプセル化発泡剤は化学発泡剤と呼ばれる場合もあり、加熱中、窒素、窒素酸化物、水素又は二酸化炭素などの気体化合物を放出する能力を有する。
【0042】
本開示の更に別の特に有利な態様では、(熱)既膨張剤は、非球状無機既膨張粒子、特に不規則形状又はフレーク形状を有する無機既膨張粒子からなる群から選択される。
【0043】
本開示の非常に有利な一態様では、(熱)既膨張剤は、既膨張パーライト粒子を含む。
【0044】
パーライトは、黒曜石の改質によって形成される天然に存在する水和された火山ガラスである。典型的には、パーライトは、二酸化ケイ素(70~75重量%)、酸化アルミニウム(12~17重量%)、酸化ナトリウム(3~4重量%)、酸化カリウム(3~5重量%)、酸化鉄(0.5~2重量%)、酸化マグネシウム(0.2~0.7重量%)、及び酸化カルシウム(0.5~1.5重量%)から構成される。天然パーライトは、3~5重量%の水を更に含有する。本開示で使用するためのパーライトは、前駆体材料中に非常に低密度の気泡を得るために膨張されることによって、既膨張構造用接着剤組成物を提供する。これらの気泡は、粗パーライト石中の水の存在により得られる。870℃を超える加速加熱の際、粗パーライト石は、ガラス鉱石粒子が火炎内で軟化し、鉱石中の水が蒸気になり、膨張して前述した多数の低密度気泡を形成するため、ポップコーンと同じようにして破裂する。パーライトを膨張させるためのこのプロセスは公知である。
【0045】
本開示で使用するための既膨張パーライトは、微粒子形態であるが、既膨張パーライト粒子は、特に、1~300マイクロメートル、特に10~150マイクロメートルの平均直径を有する。そのサイズの既膨張パーライト粒子は、市場で入手可能であり、上記のようにパーライト石の熱処理によって得られる既膨張パーライトを粉砕することによって製造することができる。
【0046】
有利な態様によれば、本明細書で使用するための既膨張パーライト粒子は、表面改質されており、これは、シラン表面改質のような疎水性の表面改質、及びエポキシ化、アミノ化又はアクリレート官能化のような親水性の表面改質から有利に選択される。
【0047】
非常に好ましい一実施によれば、本開示の熱硬化性前駆体で使用するための膨張剤が、膨張性微小球、既膨張パーライト粒子、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0048】
典型的な態様では、本開示による既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、熱硬化性前駆体の組成物の総重量に基づいて、0.05~10重量%、0.1~10重量%、0.2~8重量%、0.2~6重量%、0.5~6重量%、又は更には0.5~5重量%の膨張剤を含む。
【0049】
別の典型的な態様では、既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体中の膨張剤の量は、AECMA規格EN2667-3による試験方法のセクションに記載されているように自由膨張率を測定した際、硬化時に30~150%、40~120%、50~100%、60~100%、又は更には70~100%の範囲の自由膨張率を有する既膨張構造用接着剤をもたらすように選択される。
【0050】
本開示による既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、ホスフェート金属錯体の群から選択される無機顔料を更に含む。本明細書で使用するための無機顔料は、ホスフェート金属錯体の群から選択される限り、特に限定されない。本明細書で使用するのに好適な無機顔料は、本開示を踏まえて、当業者によって容易に特定され得る。
【0051】
有利な一態様によれば、本明細書で使用するためのホスフェート金属錯体が、オルトホスフェート金属錯体、ポリホスフェート金属錯体、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0052】
より有利な態様によれば、本明細書で使用するためのホスフェート金属錯体の金属は、アルミニウム、モリブデン、亜鉛、アルカリ土類金属、及び任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。より有利には、本明細書で使用するためのホスフェート金属錯体の金属は、アルカリ土類金属からなる群から、特にカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、及び任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0053】
本開示の別の有利な態様では、ホスフェート金属錯体は、(第三級)金属アルミニウムオルトホスフェート、(第三級)金属アルミニウムポリホスフェート、(第三級)金属マグネシウムオルトホスフェート、(第三級)金属マグネシウムポリホスフェート、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0054】
更に別の有益な態様では、本明細書で使用するためのホスフェート金属錯体は、(第三級)アルカリ土類アルミニウムオルトホスフェート、(第三級)アルカリ土類アルミニウムポリホスフェート、(第三級)アルカリ土類水素オルトホスフェート、(第三級)アルカリ土類水素ポリホスフェート、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0055】
更に別の有益な態様では、本明細書で使用するためのホスフェート金属錯体は、亜鉛(オルト)ホスフェート、亜鉛アルミニウムオルトホスフェート、亜鉛アルミニウムポリホスフェート、亜鉛モリブデン(オルト)ホスフェート、カルシウムマグネシウムオルトホスフェート、ストロンチウムアルミニウムポリホスフェート、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0056】
更により有利な態様によれば、ホスフェート金属錯体は亜鉛を含まない。
【0057】
本開示の特に好ましい態様によれば、既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体に使用するためのホスフェート金属錯体が、カルシウムマグネシウムオルトホスフェート、ストロンチウムアルミニウムポリホスフェート、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0058】
本明細書で使用するためのホスフェート金属錯体の群から選択される好適な無機顔料は、例えばHeubach GmbHから商標名Heucophos(登録商標)で市販されている。Heubach GmbHから市販され、本明細書での使用に好適な例示的無機顔料としては、Heucophos(登録商標)ZPA、Heucophos(登録商標)ZPO、Heucophos(登録商標)ZMP、Heucophos(登録商標)CMP、Heucophos(登録商標)ACP、Heucophos(登録商標)ZAPP、Heucophos(登録商標)SAPP、Heucophos(登録商標)SRPP、Heucophos(登録商標)CAPP、Heucophos(登録商標)ZAM、及びHeucophos(登録商標)ZCPが挙げられるが、これらに限定されない。Heubach GmbHから市販され、本明細書での使用に好適な有利な無機顔料としては、Heucophos(登録商標)CMP及びHeucophos(登録商標)SAPPが挙げられる。
【0059】
有利な態様では、本開示による既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、熱硬化性前駆体の組成物の総重量に基づいて、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、12重量%以下、又は更には10重量%以下の、ホスフェート金属錯体の群から選択される無機顔料を含む。
【0060】
別の有利な態様では、本開示による既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、熱硬化性前駆体の組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.25重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも1.0重量%、少なくとも1.5重量%、少なくとも2.0重量%、少なくとも2.5重量%、又は更には少なくとも3.0重量%の、ホスフェート金属錯体の群から選択される無機顔料を含む。
【0061】
更に別の有利な態様では、本開示による既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、熱硬化性前駆体の組成物の総重量に基づいて、0.5~50重量%、1~40重量%、2~30重量%、2~25重量%、3~20重量%、3~15重量%、又は更には5~10重量%の、ホスフェート金属錯体の群から選択される無機顔料を含む。
【0062】
本開示による既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、水を吸収することができる任意による無機充填剤を更に含んでもよい。本明細書で使用するための無機充填剤は、水を吸収することができる限り、特に限定されない。本明細書で使用するのに好適な無機充填剤は、本開示を踏まえて、当業者によって容易に特定され得る。
【0063】
本開示の典型的な態様では、水を吸収することができる無機充填剤は、水と化学的に反応することができ、それによって、そうしなければ既膨張構造用接着剤組成物の(非熱硬化性)前駆体又は得られる熱硬化性構造用接着剤のいずれかに浸透して接触し得る水を、効果的に捕捉する。水の存在は、構造用接着剤組成物の接着剤結合性能だけでなく、他の特性と共にその構造的一体性にも悪影響を及ぼし得る。
【0064】
本明細書で使用するための水を吸収することができる無機充填剤は、有利には、更に強化され、更なる構造強度を有する既膨張構造用接着剤を提供することができる。
【0065】
有利な一態様では、無機充填剤は、金属酸化物及び金属水酸化物からなる群から、特に、MgO、CaO、BaO、K2O、Li2O、Na2O、SrO、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0066】
より有利な態様によれば、本明細書で使用するための水を吸収することができる無機充填剤は、CaO、MgO、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択される。本開示の特に有利な態様では、本明細書で使用するための無機充填剤は、CaOを含むように選択される。
【0067】
典型的な態様では、本開示による既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、熱硬化性前駆体の組成物の総重量に基づいて、0.1~35重量%、0.5~30重量%、1~25重量%、1~20重量%、又は更には2~15重量%の、水を吸収することができる無機充填剤を含む。
【0068】
本開示による既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、水を吸収することができる無機充填剤とは異なる任意による二次充填材を更に含んでもよい。本明細書で使用するための二次充填材は、水を吸収することができる無機充填剤と異なるものであれば、特に限定されない。本明細書で使用するのに好適な二次充填材は、本開示を踏まえて、当業者によって容易に特定され得る。
【0069】
例示的な態様によれば、本明細書で使用するための二次充填材は、カーボンブラック、グラファイト、無機炭素源、ガラスビーズ、ガラスチップ、金属チップ、金属フレーク、グラスバブル、酸化ケイ素SiO2、金属シリケート、カーボネート、シリケート、水和シリケート(タルク)、ボレート、酸化物、水酸化物、サルフェート、チタネート、ジルコネート、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0070】
有利な一態様によれば、本明細書で使用するための二次充填材は、酸化ケイ素SiO2、金属シリケート、カーボネート、シリケート、水和シリケート(タルク)、ボレート、酸化物、水酸化物、サルフェート、チタネート、ジルコネート、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0071】
特に有利な態様では、本明細書で使用するための二次充填材は、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、シリカゲル、石英、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される酸化ケイ素SiO2である。
【0072】
さらに特に有利な態様では、本明細書で使用するための二次充填材は、ヒュームドシリカ及び溶融シリカからなる群から選択される酸化ケイ素SiO2であり、特に、二次充填材は溶融シリカである。本明細書で使用するのに好適な溶融シリカは、例えば、Minco Inc.から商標名Minsil 20で市販されている。本明細書で使用するのに好適なヒュームドシリカ、特に疎水性ヒュームドシリカは、例えばEvonikから商標名Aerosil(商標)で、又はCabotから商標名Cab-O-Sil(商標)で市販されている。
【0073】
有益な一態様によれば、本明細書で使用するための二次充填材は、1つ以上の充填材、特に1つ以上の二次充填材と、水を吸収することができる1つ以上の無機充填剤とのブレンドの形態で使用される。
【0074】
本開示の特定の態様によれば、既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、MgO、CaO、BaO、K2O、Li2O、Na2O及びSiO2を含むブレンド、特に、MgO、CaO及びSiO2、金属シリケート、カーボネート、シリケート、水和シリケート(タルク)、ボレート、酸化物、水酸化物、サルフェート、チタネート、ジルコネートを含むブレンドを更に含む。
【0075】
特に好ましい態様では、本開示の熱硬化性前駆体は、CaO及びSiO2を含むブレンドを含む。別の特に好ましい態様では、本開示の熱硬化性前駆体は、CaO及びSiO2からなるブレンドを含む。
【0076】
典型的な態様では、本開示による既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、熱硬化性前駆体の組成物の総重量に基づいて、0.5~50重量%、1~45重量%、2~40重量%、3~30重量%、又は更には5~25重量%の二次充填材を含む。
【0077】
有利な態様によれば、本開示による既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、任意による熱可塑性樹脂を更に含んでもよい。本明細書で使用するための熱可塑性樹脂は、特に限定されない。構造用接着剤の技術分野において公知の任意の熱可塑性樹脂を、本開示の文脈において使用することができる。本明細書で使用するために好適な熱可塑性樹脂は、本開示を踏まえて、当業者によって容易に特定され得る。
【0078】
熱可塑性樹脂は、構造用接着剤組成物の当業者に既知である。本明細書で使用するために好適な例示的な熱可塑性樹脂は、例えば、欧州特許第2700683(A1)号(Elgimiabiら)に記載されている。
【0079】
本開示の有利な一態様によれば、本明細書で使用するための熱可塑性樹脂は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定された際、60℃~140℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0080】
より有利な態様では、本明細書で使用するための熱可塑性樹脂は、70℃~120℃、好ましくは80℃~100℃、より好ましくは85℃~95℃の軟化点を有する。
【0081】
本開示の別の有利な態様によれば、本明細書で使用するための熱可塑性樹脂は、ポリエーテル熱可塑性樹脂、ポリプロピレン熱可塑性樹脂、ポリ塩化ビニル熱可塑性樹脂、ポリエステル熱可塑性樹脂、ポリカプロラクトン熱可塑性樹脂、ポリスチレン熱可塑性樹脂、ポリカーボネート熱可塑性樹脂、ポリアミド熱可塑性樹脂、ポリウレタン熱可塑性樹脂、及びこれらの混合物の任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0082】
本開示の更に別の有利な態様によれば、本明細書で使用するための熱可塑性樹脂は、ポリエーテル熱可塑性樹脂、及び特に、ポリヒドロキシエーテル熱可塑性樹脂の群から選択される。
【0083】
より有利な態様では、本明細書で使用するためのポリヒドロキシエーテル熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂、ポリエーテルジアミン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、特に、ポリビニルブチラール樹脂、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0084】
本開示の特に好ましい実施によれば、本明細書で使用するための熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂の群から選択される。
【0085】
本明細書で使用するための好適な熱可塑性樹脂は、InChem Corporationから、商標名PKHP、PKHH、PKHA、PKHB、PKHC、PKFE、PKHJ、PKHM-30又はPKHM-301、PKCP、PKH-200で市販されている。
【0086】
本開示の文脈において、実際に驚くべきことに、熱可塑性樹脂、特に、フェノキシ樹脂の群から選択される熱可塑性樹脂の使用は、接着特性、特に、剥離接着特性、並びに得られる構造用接着剤組成物の強靭化特性を実質的に改善することが見出された。これは、熱可塑性樹脂が概して、フィルム形成添加剤として認識され使用されるため、特に驚くべきことかつ直観に反することである。
【0087】
典型的な態様では、本開示による既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、熱硬化性前駆体の組成物の総重量に基づいて、1~50重量%、2~40重量%、3~35重量%、4~30重量%、4~25重量%、又は更には5~20重量%の熱可塑性樹脂を含む。
【0088】
既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体の有利な一態様によれば、エポキシ化合物と熱可塑性樹脂との重量比は、0.5~4、1~3、1.5~2.5、又は更には1.8~2.2の範囲である。
【0089】
別の有利な態様によれば、本開示による既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、任意による強靭化剤(toughening agent)を更に含んでもよい。本明細書で使用するための強靭化剤は、特に限定されない。構造用接着剤の技術分野において公知の任意の強靭化剤を、本開示の文脈において使用することができる。本明細書で使用するために好適な強靭化剤は、本開示を踏まえて、当業者によって容易に特定され得る。
【0090】
強靭化剤は、構造用接着剤組成物の当業者に既知である。本明細書で使用するのに好適な例示的な強靭化剤は、例えば、欧州特許第2700683(A1)号(Elgimiabiら)に記載されている。
【0091】
本開示の有利な一態様によれば、本明細書で使用するための強靭化剤は、コアシェル強靭化剤、CTBN(カルボキシル及び/又はニトリル末端ブタジエン/ニトリルゴム)、高分子量アミン末端ポリテトラメチレンオキシド、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0092】
より有利な態様では、本明細書で使用するための強靭化剤は、コアシェル強靭化剤からなる群から選択される。
【0093】
熱硬化性前駆体の組成物において有用なコア-シェル強靭化剤は、例えば、DOWから商標名Paraloid(商標)で、又はKanekaからKane Ace(商標)MX153で、又はArkemaからClearstrength(商標)製品で市販されている。代替のコアシェル材料はArkemaのアクリル系耐衝撃改質剤で、商標名Durastrengthによる製品がある。本開示において有用なCTBN強靭化剤は、例えば、Hanse Chemie AG(Hamburg,Germany)から商標名Albipox(商標)で市販されている。熱硬化性前駆体の組成物において有用な例示的高分子量アミン末端ポリテトラメチレンオキシドは、例えば、3M Company(St.Paul/MN,USA)から商標名「3M EPX(商標)Rubber」で市販されている。
【0094】
典型的な態様では、本開示による既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、熱硬化性前駆体の組成物の総重量に基づいて、5~60重量%、5~55重量%、10~50重量%、10~40重量%、又は更には15~40重量%の強靭化剤を含む。
【0095】
既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体の有利な一態様によれば、強靭化剤と熱可塑性樹脂との重量比は、1~4、1~3、1.5~2.5、又は更には1.8~2.2の範囲である。
【0096】
本開示の有利な態様によれば、既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、熱硬化性前駆体の組成物の総重量に基づいて、
a)20~60重量%、30~60重量%、30~50重量%、又は更には35~45重量%のエポキシ化合物と、
b)0.1~20重量%、0.2~15重量%、0.2~10重量%、0.5~8重量%、1~6重量%、又は更には1~4重量%のエポキシ硬化剤と、
c)0.05~10重量%、0.1~10重量%、0.2~8重量%、0.2~6重量%、0.5~6重量%、又は更には0.5~5重量%の膨張剤と、
d)0.5~50重量%、1~40重量%、2~30重量%、2~25重量%、3~20重量%、3~15重量%、又は更には5~10重量%の、ホスフェート金属錯体の群から選択される無機顔料と、
e)任意に、0.1~35重量%、0.5~30重量%、1~25重量%、1~20重量%、又は更には2~15重量%の、水を吸収することができる無機充填剤と、
f)任意に、0.5~50重量%、1~45重量%、2~40重量%、3~30重量%、又は更には5~25重量%の二次充填材と、
g)任意に、1~50重量%、2~40重量%、3~35重量%、4~30重量%、4~25重量%、又は更には5~20重量%の熱可塑性樹脂と、
h)任意に、0.05~10重量%、0.1~10重量%、0.2~8重量%、0.2~6重量%、0.2~5重量%、0.5~5重量%、又は更には0.5~4重量%の、エポキシ化合物の硬化促進剤と、
i)任意に、5~60重量%、5~55重量%、10~50重量%、10~40重量%、又は更には15~40重量%の強靭化剤と、
を含む。
【0097】
本開示の有利な態様では、熱硬化性前駆体の組成物は、(実質的に)極性溶媒を含まない、特に(実質的に)極性溶媒を含まない、より具体的には(実質的に)有機溶媒又は水を含まない。「実質的に溶媒を含まない」とは、本明細書では、既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体が、熱硬化性前駆体の組成物の総重量に基づいて、10重量%未満、5重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、又は更には0.5重量%未満の溶媒を含むことを意味する。
【0098】
本開示の有利な態様によれば、既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、少なくとも部分的に油で覆われたアルミニウム基材でのDIN EN 1465による試験方法のセクションに記載されているように23℃で測定された際、少なくとも10MPa、少なくとも12MPa、少なくとも14MPa、又は更には少なくとも16MPaの重なり剪断強度をもたらす。
【0099】
本開示の更に別の有利な態様によれば、既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、少なくとも部分的に油で覆われたアルミニウム基材でのDIN EN 1465による試験方法のセクションに記載されているようにカタプラズマ条件後に23℃で測定された際、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、又は更には5%以下の重なり剪断強度の低下をもたらす。
【0100】
有益な態様によれば、本開示の熱硬化性前駆体は、フィルム、特に伸長フィルムの形態で成形される。本明細書を通して使用される用語「フィルム」は、通常、ストリップ、箔、バンド、シート、シーティングなどと呼ばれる2次元物品を指すことを意味する。
【0101】
この特に有益な態様によれば、既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体は、引張試験DIN EN ISO527に従って測定された際、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも100%、少なくとも150%、又は更には少なくとも200%の破断点伸びを有する。この特定の特性は、既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体を、自動処理及び適用に好適な、特に高速ロボット設備によるものに好適にする。より具体的には、本開示の熱硬化性前駆体は、金属プレート間に金属接合部を形成するプロセスの効率的な自動化を可能にする。
【0102】
別の態様によれば、本開示は、上述の熱硬化性前駆体を完全に熱硬化させることによって得ることができる構造用接着剤組成物に関する。
【0103】
更に別の態様では、本開示は、物品の表面の少なくとも一部に適用された、上記のような熱硬化性前駆体又は構造用接着剤組成物を含む、複合材物品に関する。
【0104】
本明細書で使用するための好適な表面及び物品は、特に限定されない。構造用接着剤組成物と組み合わせて使用するのに好適であることが公知の任意の表面、物品、基材及び材料を、本開示の文脈において使用することができる。
【0105】
別の態様によれば、本開示は、上記のような熱硬化性前駆体又は構造用接着剤組成物を使用する工程を含む、複合材物品の製造方法に関する。
【0106】
更に別の態様によれば、本開示は、上記のような熱硬化性前駆体又は構造用接着剤組成物を使用する工程を含む、2つの部品を接合する方法を提供する。
【0107】
本開示の特定の態様によれば、2つの部品を結合させる方法は、
a)第1の部品及び第2の部品を準備する工程と、
b)上記の熱硬化性前駆体を、第1の部品及び/又は第2の部品のうちの少なくとも1つの表面の少なくとも一部に適用する工程と、
c)第1の部品と第2の部品とを、エポキシ硬化剤の活性化温度よりも低い温度で固着させることにより、第1の部品と第2の部品との間に接合部を形成する工程と、
d)工程c)で形成された接合部を、エポキシ硬化剤の活性化温度よりも高い温度で加熱することにより、熱硬化された構造用接着剤組成物を得て、2つの部品を結合させる工程と、を含む。
【0108】
この方法の特定の一態様では、第1の部品及び第2の部品のうちの少なくとも1つは、金属を含む。この方法の別の特定の態様では、第1の部品及び第2の部品のうちの少なくとも1つは、パネルである。この方法の更に別の特定の態様では、第1の部品及び第2の部品のうちの少なくとも1つは、金属パネルを含む。この方法の更に別の特定の態様では、第1の部品の材料は第2の部品の材料と同一である。代替的態様では、第1の部品の材料は、第2の部品の材料と異なる。
【0109】
本方法の有利な態様によれば、第1の部品及び/又は第2の部品の材料は、金属、炭素、ポリマー材料、複合材料、木材、ガラス、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0110】
本方法の特定の一態様によれば、第1の部品及び第2の部品の少なくとも1つの材料は金属を含まない。
【0111】
本方法の別の特定の態様によれば、金属は、鋼、ステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、ニッケルめっき鋼、チタン、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、及びこれらの合金、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0112】
本方法の更に別の特定の態様によれば、第1の金属部品の金属は第2の金属部品の金属と異なる。あるいは、第1の金属部品の金属は、第2の金属部品の金属と同一である。
【0113】
2つの部品を結合させる方法の有利な一態様では、第1の金属部品の金属は、鋼、ステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、及びニッケルめっき鋼からなる群から選択され、第2の金属部品の金属は、鋼、特にステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、ニッケルめっき鋼からなる群から選択される。
【0114】
2つの部品を結合させる方法の別の有利な態様では、第1の金属部品の金属は、鋼、ステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、及びニッケルめっき鋼からなる群から選択され、第2の金属部品の金属は、アルミニウム、チタン、又はアルミニウム若しくはチタンの一方若しくは両方を含む合金からなる群から選択される。
【0115】
2つの部品を結合させる方法の特に有利な態様では、当該第1の部品及び/又は第2の部品の少なくとも1つの表面の少なくとも一部は油で覆われている。本開示の文脈において、実に驚くべきことに、上記のような熱硬化性前駆体は、特に油性汚染金属基材に向け目立って優れた耐油汚染性を有する構造用接着剤組成物をもたらすのに特に好適であることが発見された。
【0116】
別の有利な態様によれば、2つの部品を結合させる方法は、金属部品のヘムフランジ結合のためのものであり、
熱硬化性前駆体が、伸長フィルムの形態で成形され、
熱硬化性前駆体フィルムが、当該前駆体フィルムの第1の端部付近の第1の部分と、当該前駆体フィルムの第1の端部の反対側の第2の端部付近の第2の部分と、を有し、
第1の金属部品が、第1の本体部分と、当該第1の本体部分の第1の端部に隣接する当該第1の本体部分の縁に沿う第1のフランジ部分と、を有する第1の金属パネルを含み、
第2の金属部品が、第2の本体部分と、当該第2の本体部分の第2の端部に隣接する当該第2の本体部分の縁に沿う第2のフランジ部分と、を有する第2の金属パネルを含み、
方法が、
1.熱硬化性前駆体フィルムを第1の金属パネル又は第2の金属パネルに固着させ、それにより、固着及び折り畳み後に、金属接合部が得られ、熱硬化性前駆体フィルムが折り畳まれていることにより、
i.熱硬化性前駆体フィルムの第1の部分が、第2の金属パネルの第2のフランジと第1の金属パネルの第1の本体部分との間に設けられ、
ii.熱硬化性前駆体フィルムの第2の部分が、第1の金属パネルの第1のフランジと第2の金属パネルの第2の本体部分との間に設けられる、工程と、
2.エポキシ化合物のエポキシ硬化剤を開始することにより、部分的に硬化した前駆体を熱硬化させ、それによって(実質的に完全に)熱硬化された構造用接着剤組成物を得て、金属接合部を結合させる工程と、を含む。
【0117】
2つの部品を結合させる方法の更に別の有利な態様によれば、第1の金属部品の第1の縁部の側が折り返され、第2の金属部品を挟むようにヘムフランジ構造が形成され、熱硬化性前駆体が、少なくとも第1の金属部品の第1の縁部及び第2の金属部品の第1の表面側を互いに固着させるように配置される。
【0118】
特に金属部品のヘムフランジ結合のために、2つの部品を結合させる方法は、構造用接着剤組成物の当業者に周知である。本明細書で使用するために好適な2つの部品を結合させる方法は、例えば、欧州特許第2700683(A1)号(Elgimiabiら)及び国際公開第2017/197087号(Aizawa)に十分に記載されている。
【0119】
本開示の特定の態様では、これらの方法で使用するための基材、部品、及び表面は、アルミニウム、鋼、鉄、及びこれらの任意の混合物、組み合わせ、又は合金からなる群から選択される金属を含む。より有利には、本明細書で使用するための基材、部品、及び表面は、アルミニウム、鋼、ステンレス鋼、及びこれらの任意の混合物、組み合わせ、又は合金からなる群から選択される金属を含む。本開示の特に有利な実施では、本明細書で使用するための基材、部品、及び表面は、アルミニウムを含む。
【0120】
別の態様によれば、本開示は、上述の方法によって得ることができる金属部品アセンブリに関する。
【0121】
更に別の態様によれば、本開示は、上記のような熱硬化性前駆体の、産業用途、特に建設及び自動車用途、特に自動車産業用のホワイトボディ結合用途のための使用に関する。
【0122】
なお別の態様によれば、本開示は、上記のような熱硬化性前駆体の、金属部品を結合させるための、特に自動車産業用における金属部品のヘムフランジ結合のための使用に関する。
【0123】
更に別の態様によれば、本開示は、構造用接着剤組成物、特に既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体に耐食性を付与するための、上記のようなホスフェート金属錯体の群から選択される無機顔料の使用を提供する。
【0124】
更に別の態様では、本開示は、上記のような既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体に耐食性を付与するための、上記のようなホスフェート金属錯体の群から選択される無機顔料の使用に関する。
【0125】
項目1は、既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体であって、
a)エポキシ化合物と、
b)エポキシ硬化剤と、
c)膨張剤と、
d)ホスフェート金属錯体の群から選択される無機顔料と、を含む、前駆体である。
【0126】
項目2は、膨張剤が、(熱)膨張性剤及び(熱)既膨張剤、並びにこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目1に記載の前駆体である。
【0127】
項目3は、(熱)膨張性剤が、非カプセル化発泡剤、特に化学発泡剤、カプセル化発泡剤、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目2に記載の前駆体である。
【0128】
項目4は、カプセル化発泡剤が、膨張性微小球、特に液化ガスが充填され、特にポリマー熱可塑性シェルにカプセル化された膨張性微小球からなる群から選択される、項目3に記載の前駆体である。
【0129】
項目5は、液化ガスが、トリクロロフルオロメタン、及び炭化水素、特にn-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ブタン、及びイソブタン、並びにこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目4に記載の前駆体である。
【0130】
項目6は、非カプセル化発泡剤が、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボナミド、カルバジド、ヒドラジド、水素化ホウ素ナトリウム又は重炭酸ナトリウム/クエン酸を主成分とする非アゾ化学発泡剤、及びジニトロソペンタメチレンテトラミン、並びにこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目3に記載の前駆体である。
【0131】
項目7は、(熱)既膨張剤が、非球状無機既膨張粒子、特に不規則形状又はフレーク形状を有する無機既膨張粒子からなる群から選択される、項目2に記載の前駆体である。
【0132】
項目8は、(熱)既膨張剤が既膨張パーライト粒子を含む、項目2又は7に記載の前駆体である。
【0133】
項目9は、膨張剤が、膨張性微小球、既膨張パーライト粒子、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目1~8のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0134】
項目10は、ホスフェート金属錯体が、オルトホスフェート金属錯体、ポリホスフェート金属錯体、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目1~9のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0135】
項目11は、ホスフェート金属錯体の金属が、アルミニウム、モリブデン、亜鉛、アルカリ土類金属、特にカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム及びバリウム、並びに任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目10に記載の前駆体である。
【0136】
項目12は、ホスフェート金属錯体が、(第三級)金属アルミニウムオルトホスフェート、(第三級)金属アルミニウムポリホスフェート、(第三級)金属マグネシウムオルトホスフェート、(第三級)金属マグネシウムポリホスフェート、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目10又は11に記載の前駆体である。
【0137】
項目13は、ホスフェート金属錯体が、(第三級)アルカリ土類アルミニウムオルトホスフェート、(第三級)アルカリ土類アルミニウムポリホスフェート、(第三級)アルカリ土類水素オルトホスフェート、(第三級)アルカリ土類水素ポリホスフェート、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目10~12のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0138】
項目14は、ホスフェート金属錯体が、亜鉛オルトホスフェート、亜鉛アルミニウムオルトホスフェート、亜鉛アルミニウムポリホスフェート、亜鉛モリブデンオルトホスフェート、カルシウムマグネシウムオルトホスフェート、ストロンチウムアルミニウムポリホスフェート、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目1~13のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0139】
項目15は、ホスフェート金属錯体が(実質的に)亜鉛を含まない、項目1~14のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0140】
項目16は、ホスフェート金属錯体が、カルシウムマグネシウムオルトホスフェート、ストロンチウムアルミニウムポリホスフェート、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目1~15のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0141】
項目17は、熱硬化性前駆体の組成物の総重量に基づいて、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、12重量%以下、又は更には10重量%以下の、ホスフェート金属錯体の群から選択される無機顔料を含む、項目1~16のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0142】
項目18は、熱硬化性前駆体の組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.25重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも1.0重量%、少なくとも1.5重量%、少なくとも2.0重量%、少なくとも2.5重量%、又は更には少なくとも3.0重量%の、ホスフェート金属錯体の群から選択される無機顔料を含む、項目1~17のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0143】
項目19は、熱硬化性前駆体の組成物の総重量に基づいて、0.5~50重量%、1~40重量%、2~30重量%、2~25重量%、3~20重量%、3~15重量%、又は更には5~10重量%の、ホスフェート金属錯体の群から選択される無機顔料を含む、項目1~18のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0144】
項目20は、水を吸収することができ、特に水と化学的に反応することができる無機充填剤を更に含む、項目1~19のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0145】
項目21は、無機充填剤が、金属酸化物及び金属水酸化物からなる群から選択され、特に、MgO、CaO、BaO、K2O、Li2O、Na2O、SrO、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択される、項目20に記載の前駆体である。
【0146】
項目22は、無機充填剤が、CaO、MgO、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択される、項目20又は21に記載の前駆体である。
【0147】
項目23は、無機充填剤がCaOを含むように選択される、項目20~22のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0148】
項目24は、水を吸収することができる無機充填剤とは異なる二次充填材を更に含む、項目1~23のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0149】
項目25は、二次充填材が、酸化ケイ素SiO2、金属シリケート、カーボネート、シリケート、水和シリケート(タルク)、ボレート、酸化物、水酸化物、サルフェート、チタネート、ジルコネート、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目24に記載の前駆体である。
【0150】
項目26は、二次充填材が、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、シリカゲル、石英、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される酸化ケイ素SiO2である、項目24又は25に記載の前駆体である。
【0151】
項目27は、二次充填材が、ヒュームドシリカ及び溶融シリカからなる群から選択される酸化ケイ素SiO2であり、特に二次充填材が溶融シリカである、項目24~26のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0152】
項目28は、MgO、CaO、BaO、K2O,Li2O、Na2O及びSiO2を含むブレンド、特に、MgO、CaO及びSiO2、金属シリケート、カーボネート、シリケート、水和シリケート(タルク)、ボレート、酸化物、水酸化物、サルフェート、チタネート、ジルコネートを含むブレンドを更に含む、項目24~26のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0153】
項目29は、CaO及びSiO2を含むブレンドを更に含む、項目24~28のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0154】
項目30は、エポキシ化合物が、特にフェノールエポキシ樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂、水素化エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールエポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択されるエポキシ樹脂である、項目1~29のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0155】
項目31は、エポキシ化合物が、ノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂、特に、ビスフェノール-Aとエピクロロヒドリンとの反応から誘導されたもの(DGEBA樹脂)、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択されるエポキシ樹脂である、項目1~30のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0156】
項目32は、エポキシ化合物が、250g/当量未満、230g/当量未満、220g/当量未満、又は更には200g/当量未満の平均エポキシ当量を有する、項目1~31のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0157】
項目33は、エポキシ化合物が、700g/当量未満、500g/当量未満、又は更には400g/当量未満の重量平均分子量を有する、項目1~32のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0158】
項目34は、特に、水素化ビスフェノールエポキシ樹脂からなる群から、より詳細には、水素化ビスフェノール-Aとエピクロロヒドリンとの反応から誘導されたもの(水素化DGEBA樹脂)、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択される第2のエポキシ樹脂を更に含む、項目1~33のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0159】
項目35は、エポキシ硬化剤が、第一級アミン、第二級アミン、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目1~34のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0160】
項目36は、アミンが、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、1つ以上のアミノ部分を有する芳香族構造、ポリアミン、ポリアミン付加物、ジシアンジアミド、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目35に記載の前駆体である。
【0161】
項目37は、エポキシ硬化剤が、ジシアンジアミド、ポリアミン、ポリアミン付加物、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目1~36のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0162】
項目38は、エポキシ硬化剤が、ジシアンジアミドであるように選択される、項目1~37のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0163】
項目39は、エポキシ化合物の硬化促進剤を更に含み、硬化促進剤が、特に、ポリアミン、ポリアミン付加物、尿素、置換尿素付加物、イミダゾール、イミダゾール塩、イミダゾリン、芳香族第三級アミン、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目1~38のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0164】
項目40は、硬化性モノマーの硬化促進剤が、ポリアミン付加物、置換尿素、特に、N-置換(ビス)尿素付加物の群から選択される、項目39に記載の硬化性前駆体である。
【0165】
項目41は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定された際、特に、60℃~140℃、70℃~120℃、80℃~100℃、又は更には85℃~95℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する熱可塑性樹脂を更に含む、項目1~40のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0166】
項目42は、熱可塑性樹脂が、ポリエーテル熱可塑性樹脂、ポリプロピレン熱可塑性樹脂、ポリ塩化ビニル熱可塑性樹脂、ポリエステル熱可塑性樹脂、ポリカプロラクトン熱可塑性樹脂、ポリスチレン熱可塑性樹脂、ポリカーボネート熱可塑性樹脂、ポリアミド熱可塑性樹脂、ポリウレタン熱可塑性樹脂、及びこれらの混合物の任意の組み合わせからなる群から選択される、項目41に記載の前駆体である。
【0167】
項目43は、熱可塑性樹脂が、ポリエーテル熱可塑性樹脂、特に、ポリヒドロキシエーテル熱可塑性樹脂の群から選択される、項目41又は42に記載の前駆体である。
【0168】
項目44は、ポリヒドロキシエーテル熱可塑性樹脂が、フェノキシ樹脂、ポリエーテルジアミン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、特に、ポリビニルブチラール樹脂、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目43に記載の硬化性前駆体である。
【0169】
項目45は、熱可塑性樹脂が、フェノキシ樹脂の群から選択される、項目41~44のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0170】
項目46は、エポキシ化合物と熱可塑性樹脂との重量比が、0.5~4、1~3、1.5~2.5、又は更には1.8~2.2の範囲である、項目41~45のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0171】
項目47は、特にコアシェル強靭化剤からなる群から選択される強靭化剤を更に含む、項目1~46のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0172】
項目48は、熱硬化性前駆体の組成物の総重量に基づいて、
a)20~60重量%、30~60重量%、30~50重量%、又は更には35~45重量%のエポキシ化合物と、
b)0.1~20重量%、0.2~15重量%、0.2~10重量%、0.5~8重量%、1~6重量%、又は更には1~4重量%のエポキシ硬化剤と、
c)0.05~10重量%、0.1~10重量%、0.2~8重量%、0.2~6重量%、0.5~6重量%、又は更には0.5~5重量%の膨張剤と、
d)0.5~50重量%、1~40重量%、2~30重量%、2~25重量%、3~20重量%、3~15重量%、又は更には5~10重量%の、ホスフェート金属錯体の群から選択される無機顔料と、
e)任意に、0.1~35重量%、0.5~30重量%、1~25重量%、1~20重量%、又は更には2~15重量%の、水を吸収することができる無機充填剤と、
f)任意に、0.5~50重量%、1~45重量%、2~40重量%、3~30重量%、又は更には5~25重量%の二次充填材と、
g)任意に、1~50重量%、2~40重量%、3~35重量%、4~30重量%、4~25重量%、又は更には5~20重量%の熱可塑性樹脂と、
h)任意に、0.05~10重量%、0.1~10重量%、0.2~8重量%、0.2~6重量%、0.2~5重量%、0.5~5重量%、又は更には0.5~4重量%の、エポキシ化合物の硬化促進剤と、
i)任意に、5~60重量%、5~55重量%、10~50重量%、10~40重量%、又は更には15~40重量%の強靭化剤と、
を含む、項目1~47のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0173】
項目49は、(実質的に)溶媒を含まない、特に(実質的に)極性溶媒を含まない、より詳細には(実質的に)有機溶媒又は水を含まない、項目1~48のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0174】
項目50は、膨張剤の量が、AECMA規格EN2667-3による試験方法のセクションに記載されているように自由膨張率を測定した際、硬化時に30~150%、40~120%、50~100%、60~100%、又は更には70~100%の範囲の自由膨張率を有する既膨張構造用接着剤をもたらすように選択される、項目1~49のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0175】
項目51は、少なくとも部分的に油で覆われたアルミニウム基材でのDIN EN 1465による試験方法のセクションに記載されているように23℃で測定された際、少なくとも10MPa、少なくとも12MPa、少なくとも14MPa、又は更には少なくとも16MPaの重なり剪断強度をもたらす、項目1~50のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0176】
項目52は、少なくとも部分的に油で覆われたアルミニウム基材でのDIN EN 1465による試験方法のセクションに記載されているようにカタプラズマ条件後に23℃で測定された際、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、又は更には5%以下の重なり剪断強度の低下をもたらす、項目1~51のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0177】
項目53は、フィルム、特に伸長フィルムの形態で成形される、項目1~52のいずれか一項に記載の前駆体である。
【0178】
項目54は、引張試験DIN EN ISO527に従って測定された際、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも100%、少なくとも150%、又は更には少なくとも200%の破断点伸びを有する、項目53に記載の前駆体である。
【0179】
項目55は、項目1~54のいずれか一項に記載の熱硬化性前駆体を、(実質的に)完全に硬化させることにより得ることができる(熱硬化された)構造用接着剤組成物である。
【0180】
項目56は、物品の表面の少なくとも一部に適用された、項目1~54のいずれか一項に記載の熱硬化性前駆体又は項目55に記載の構造用接着剤組成物を含む、複合材物品である。
【0181】
項目57は、項目1~54のいずれか一項に記載の熱硬化性前駆体又は項目55に記載の構造用接着剤組成物を使用する工程を含む、複合材物品の製造方法である。
【0182】
項目58は、項目1~54のいずれか一項に記載の熱硬化性前駆体又は項目55に記載の構造用接着剤組成物を使用する工程を含む、2つの部品を結合させる方法である。
【0183】
項目59は、
a)第1の部品及び第2の部品を準備する工程と、
b)項目1~54のいずれか一項に記載の熱硬化性前駆体を、第1の部品及び/又は第2の部品のうちの少なくとも1つの表面の少なくとも一部に適用する工程と、
c)第1の部品と第2の部品とを、エポキシ硬化剤の活性化温度よりも低い温度で固着させることにより、第1の部品と第2の部品との間に接合部を形成する工程と、
d)工程c)で形成された接合部を、エポキシ硬化剤の活性化温度よりも高い温度で加熱することにより、(実質的に完全に)熱硬化された構造用接着剤組成物を得て、2つの部品を結合させる工程と、を含む、項目58に記載の2つの部品を結合させる方法である。
【0184】
項目60は、第1の部品及び第2の部品の少なくとも1つが金属を含む、項目59に記載の方法である。
【0185】
項目61は、第1の部品及び第2の部品の少なくとも1つがパネルである、項目59又は60に記載の方法である。
【0186】
項目62は、第1の部品及び第2の部品の少なくとも1つが金属パネルを含む、項目59~61のいずれか一項に記載の方法である。
【0187】
項目63は、第1の部品の材料が第2の部品の材料と同一である、項目59~62のいずれか一項に記載の方法である。
【0188】
項目64は、第1の部品の材料が第2の部品の材料と異なる、項目59~62のいずれか一項に記載の方法である。
【0189】
項目65は、第1の部品の材料及び/又は第2の部品の材料が、金属、炭素、ポリマー材料、複合材料、木材、ガラス、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目59~64のいずれか一項に記載の方法である。
【0190】
項目66は、第1の部品及び第2の部品の少なくとも1つの材料が金属を含まない、項目59~65のいずれか一項に記載の方法である。
【0191】
項目67は、金属が、鋼、ステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、ニッケルめっき鋼、チタン、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、及びこれらの合金、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、項目59~66のいずれか一項に記載の方法である。
【0192】
項目68は、第1の金属部品の金属が第2の金属部品の金属と異なる、項目59~67のいずれか一項に記載の方法である。
【0193】
項目69は、第1の金属部品の金属が第2の金属部品の金属と同一である、項目59~67のいずれか一項に記載の方法である。
【0194】
項目70は、第1の金属部品の金属が、鋼、ステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、及びニッケルめっき鋼からなる群から選択され、第2の金属部品の金属が、鋼、特にステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、ニッケルめっき鋼からなる群から選択される、項目59~69のいずれか一項に記載の方法である。
【0195】
項目71は、第1の金属部品の金属が、鋼、ステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、及びニッケルめっき鋼からなる群から選択され、第2の金属部品の金属が、アルミニウム、チタン、又はアルミニウム若しくはチタンの1つ若しくは両方を含む合金からなる群から選択される、項目59~69のいずれか一項に記載の方法である。
【0196】
項目72は、当該第1の部品及び/又は第2の部品の少なくとも1つの表面の少なくとも一部が油で覆われている、項目59~71のいずれか一項に記載の方法である。
【0197】
項目73は、2つの部品が金属部品であり、方法が金属部品のヘムフランジ結合のための方法である、項目59~71のいずれか一項に記載の2つの部品を結合させる方法である。
【0198】
項目74は、
熱硬化性前駆体が、伸長フィルムの形態で成形され、
熱硬化性前駆体フィルムが、前駆体フィルムの第1の端部付近の第1の部分と、当該前駆体フィルムの第1の端部の反対側の第2の端部付近の第2の部分と、を有し、
第1の金属部品が、第1の本体部分と、当該第1の本体部分の第1の端部に隣接する当該第1の本体部分の縁に沿う第1のフランジ部分と、を有する第1の金属パネルを含み、
第2の金属部品が、第2の本体部分と、当該第2の本体部分の第2の端部に隣接する当該第2の本体部分の縁に沿う第2のフランジ部分と、を有する第2の金属パネルを含み、
方法が、
1.熱硬化性前駆体フィルムを第1の金属パネル又は第2の金属パネルに固着させ、それにより、固着及び折り畳み後に、金属接合部が得られ、熱硬化性前駆体フィルムが折り畳まれていることにより、
iii.熱硬化性前駆体フィルムの第1の部分が、第2の金属パネルの第2のフランジと第1の金属パネルの第1の本体部分との間に設けられ、
iv.熱硬化性前駆体フィルムの第2の部分が、第1の金属パネルの第1のフランジと第2の金属パネルの第2の本体部分との間に設けられる、工程と、
2.エポキシ化合物のエポキシ硬化剤を開始することにより、部分的に硬化した前駆体を(実質的に完全に)熱硬化させ、それによって(実質的に完全に)熱硬化された構造用接着剤組成物を得て、金属接合部を結合させる工程と、を含む、項目73に記載の方法である。
【0199】
項目75は、第1の金属部品の第1の縁部の側が折り返され、第2の金属部品を挟むようにヘムフランジ構造が形成され、熱硬化性前駆体が、少なくとも第1の金属部品の第1の縁部及び第2の金属部品の第1の表面側を互いに固着させるように配置される、項目74に記載の方法である。
【0200】
項目76は、項目59~75のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる金属部品アセンブリである。
【0201】
項目77は、項目1~54のいずれか一項に記載の熱硬化性前駆体の、産業用途、特に建設及び自動車用途、特に自動車産業用のホワイトボディ結合用途のための使用である。
【0202】
項目78は、金属部品、特に自動車産業における金属部品のヘムフランジ結合のための、項目77に記載の使用である。
【0203】
項目79は、構造用接着剤組成物、特に既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体に耐食性を付与するための、項目1~16のいずれか一項に記載のホスフェート金属錯体の群から選択される無機顔料の使用である。
【0204】
項目80は、既膨張構造用接着剤組成物の熱硬化性前駆体が項目1~54のいずれか一項に記載のものである、項目79に記載の使用である。
【実施例】
【0205】
以下の実施例により本開示を更に説明する。これらの実施例は、単に例示目的のみのものであり、添付の特許請求の範囲を限定することを意味するものではない。
【0206】
適用する試験方法:
少なくとも部分的に油で覆われた基材の調製
使用前に、アルミニウム基材(NOVELIS Sierreから入手可能なAC 170PXTiZrパネル)を、アセトンでの溶媒拭き取りによって洗浄する。次いで、油性乾性潤滑剤(Zeller&Gmelin,Germanyから入手可能なHot Melt Dry lube Multi Draw)を、所定のコーティング重量を達成するために適切な量の油を分配し、次いで、パネル表面全体を覆うように油を手で塗りつけることによって基材表面の一部に堆積させる。次いで、Al基材を一晩静置して、油の流れ及びレベルを均一な厚さの層にする。
【0207】
重なり剪断強度
重なり剪断強度は、100mm×25mm×0.8mmの寸法を有し、3g/m2の乾性潤滑剤(Zeller&Gmelin,Germanyから入手可能なHot Melt Dry lube Multi Draw)でコーティングされた基材上、10mm/分のクロスヘッド速度で動作するZwick Z050引張試験機(Zwick GmbH&Co.KG,Ulm,Germanyにから市販されている)を使用して、DIN EN 1465(2009年発行)に従って測定する。重なり剪断断強度試験アセンブリの調製のため、試験するエポキシフィルム(厚さが0.4mmである)を、第1の鋼ストリップの一端上に適用し、第2の鋼ストリップで覆い、10mmの重なり接合部を形成する。次いで、2つのバインダークリップを用い、重なり接合部を共に挟持固定し、試験アセンブリを、最低焼き付けサイクルが175℃で25分間である空気循環炉に入れる。硬化後、試験前に試験片を23±2℃及び相対湿度50±2%の周囲条件で24時間コンディショニングする。重なり剪断強度を23℃で少なくとも3つの異なる試験片から測定し、結果を平均し、MPaで報告した。
【0208】
膨張比
試料を、AECMA標準EN2667-3に従って膨張範囲について測定する。結果は、元の厚さに対する百分率変化として報告する。
【0209】
カタプラズマ試験
重なり剪断試験について上記した試験片を調製し、水を含ませた脱脂綿で包んだ後、ポリエチレン袋中に気密密閉する。次いで、これらの試料を、70℃及び相対湿度100%で7日間保存する。開包後、試験片を23℃で2時間保存した後、-28℃で2時間保存した。続いて、標準的な雰囲気下で再コンディショニングした後、上記のように、重なりせん断試験を実施する。その後、試験結果を、本明細書に記載のカタプラズマ状態に付さなかった開始時の調製試料と比較する。
【0210】
使用した原材料:
使用した原材料を下記の表1にまとめる。
【0211】
【0212】
実施例の調製(実施例1~実施例3及び比較例1~比較例3)
実施例1~実施例3及び比較例1~比較例3の熱硬化性前駆体は、3500rpmで撹拌する高速ミキサー(Hauschild EngineeringによるDAC 150 FVZ Speedmixer)内で表2に挙げる成分を混合することによって調製される。
【0213】
第1の工程では、エポキシ樹脂及びコアシェル強靭化剤を1分間一緒に混合する。混合物を、90℃~100℃の温度で60分間、送風式オーブンに入れる。次いで、混合物を3500rpmで1分間混合した後、フェノキシ樹脂を添加する。フェノキシ樹脂の完全な分散を確実にするために、混合物を130℃の温度でオーブンに入れ、均質な透明混合物が得られるまで数回混合する。混合物を60℃~75℃まで放冷した後、ホスフェート金属錯体及び他の充填剤を添加し、3500rpmで2分間混合する。
【0214】
混合物全体を70℃まで冷却し、次いで、硬化剤及び膨張剤を添加する。混合は、2500rpmで30分間行う。混合物全体を2000rpmで混合しながら1分間脱気する。次に、ナイフコータを使用して、脱気された組成物を2つのシリコーン処理ポリエステルライナーの間のポリエステル不織布上にコーティングする。ナイフコータは、約0.4mmの厚さを有する接着フィルム層を得るように調整する。試料は175℃で25分間硬化し、上記の試験方法で指定されるように、初期及びカタプラズマ試験後の膨張率、重なり剪断強度について試験する。試験結果を表3及び4に見出すことができる。
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
表4の結果は、本開示による既膨張構造用接着剤(実施例1~実施例3)が、カタプラズマ試験下で優れた耐食性を有することを実証している。カタプラズマ試験後の重なり剪断強度の低下は、本開示によらない既膨張構造用接着剤(比較例1~比較例3)と比較してかなり小さい。
【0219】
実施例の調製(実施例4及び比較例4~比較例5)
実施例4及び比較例4~比較例5の熱硬化性前駆体は、実施例1~実施例3について上述したものと同様に調製する。成分を表5に列挙する。試料は175℃で25分間硬化し、上記の試験方法で指定されるように、初期及びカタプラズマ試験後の膨張率、重なり剪断強度について試験する。試験結果を表6及び7に見出すことができる。
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
表7の結果は、本開示による既膨張構造用接着剤(実施例4)が、本開示によらない既膨張構造用接着剤(比較例4及比較例5)と比較したときに、カタプラズマ試験下で改善された耐食性を有することを実証している。