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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】銅表面に酸化銅を形成する方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/63 20060101AFI20240329BHJP
   C23C 22/78 20060101ALI20240329BHJP
   C23F 15/00 20060101ALI20240329BHJP
   C23G 1/10 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
C23C22/63
C23C22/78
C23F15/00
C23G1/10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021540865
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2020050859
(87)【国際公開番号】W WO2020148308
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】19151935.4
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511188635
【氏名又は名称】アトテック ドイチェランド ゲーエムベーハー ウント コ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニール・ウッド
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ハールマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ヒュルスマン
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許発明第01294742(FR,A)
【文献】特開平03-153879(JP,A)
【文献】特開平07-216564(JP,A)
【文献】特開平04-180581(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0186221(US,A1)
【文献】特開2017-115183(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1431939(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C22/00-22/86
C23C26/00-30/00
H05K3/10-3/38
C23F11/00-11/18
C23F15/00
C23C14/00-17/00
C23G1/00-5/06
C23F1/00-4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅表面上に酸化銅を形成する方法であって、
a)銅表面を含む基板を提供するステップと、
b)銅表面を任意に予備洗浄するステップと、
c)銅表面を、
-芳香族スルホン酸化合物、その塩、
-芳香族スルホン酸エステル化合物、その塩、
-芳香族ニトロ化合物、及びその塩、
からなる群から選択される1種以上の酸化性化合物を含むアルカリ性の水性酸化性溶液と接触させるステップと、を含み、
前記酸化銅が、銅表面に形成され
ステップc)において、酸化性溶液が、銅イオンを錯化するための1つ以上の錯化剤をさらに含む、方法。
【請求項2】
ステップb)の予備洗浄は、ステップc)で定義されたものとは異なる酸化性化合物を含む水性予備洗浄溶液に銅表面を接触させることによって行われ、予備洗浄溶液のpHは4以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸化性化合物が、1種以上の過酸化物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップc)において、
-芳香族スルホン酸化合物及びその塩は、1個以上のニトロ基を含む
及び/又は
-芳香族スルホン酸エステル化合物及びその塩は、1個以上のニトロ基を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップc)において、芳香族ニトロ化合物及びその塩が、ニトロベンゼン、その塩、置換ニトロベンゼン及び/又はその塩を含む、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップc)において、
-芳香族スルホン酸化合物、その塩、
-芳香族スルホン酸エステル化合物、その塩、
-芳香族ニトロ化合物、及びその塩、
からなる群から選択される1種以上の酸化性化合物が、
酸化性溶液中の全芳香族化合物の96モル%以上の総モル量を構成る、
及び/又は
-芳香族スルホン酸化合物、その塩、
-芳香族スルホン酸エステル化合物、その塩、
-芳香族ニトロ化合物、及びその塩、
からなる群から選択される1種以上の酸化性化合物が、
酸化性溶液中の全酸化性化合物の96モル%以上の総モル量を構成して銅表面を酸化る、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップc)において、酸化性溶液が、ニトロベンゼンスルホン酸及び/又はその塩を含、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップc)において、酸化性溶液との接触時間が、3秒以上5分以下の範囲である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップc)において、酸化性溶液の温度が、20℃から80℃の範囲である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
銅イオンを錯化するための1つ以上の錯化剤は、グルコン酸及び/又はその塩を含、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップa)において、銅表面を含む基板は、非導電性基板であるか、又は非導電性基板を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップa)において、基板は、鉄及びスズの表面を含まない、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップc)の後に、酸化銅が、10~50μg/cmの範囲の量で銅表面に形成される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップc)において、アルカリ性の水性酸化性溶液中の1種以上の酸化性化合物の総濃度が、酸化性溶液の総容量に基づいて、5mmol/Lから500mmol/Lの範囲である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
銅表面に均一な酸化銅を形成するための、アルカリ性の水性酸化性溶液における、
-芳香族スルホン酸化合物、その塩、
-芳香族スルホン酸エステル化合物、その塩、
-芳香族ニトロ化合物、及びその塩、
からなる群から選択される酸化性化合物の使用であって、
前記酸化性溶液が、銅イオンを錯化するための1つ以上の錯化剤をさらに含む、使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅表面に酸化銅を形成する方法、及び、銅表面に均一な酸化銅を形成するために、アルカリ性の水性酸化性溶液中で特定の酸化性化合物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅表面を含む電子物品の製造においては、不動態化がしばしば望まれる。不動態化は、保護のために、例えば、酸化銅の層によって行うことができる。酸化銅は、典型的には、後に、電子物品の製造におけるさらなるプロセスステップのために、部分的に完全に除去される。
【0003】
主に洗浄溶液として働く強い水性のアルカリ性溶液は、しばしば不動態化酸化銅の形成にもつながる。しかしながら、酸化プロセスはしばしば非常に遅く、比較的薄く及び/又は不均質な酸化銅をもたらすことが示されている。
【0004】
さらに、このような水性のアルカリ性溶液を使用すると、周囲空気からの二酸化炭素の可溶化は、典型的には、pHの低下をもたらし、それによって、洗浄及び酸化物形成の観点で溶液の性能を損なう。これは溶液中で炭酸塩が生成するためである。
【0005】
水性のアルカリ性溶液が知られている。例えば、DE1546162A1は、鉄、鋼、亜鉛(zink)及びそれらの合金のワークピースを洗浄するためのこのような溶液を開示している。
【0006】
DE2507056A1は、鉄を含む金属片を洗浄するための溶液を開示している。
【0007】
US4,720,332Aは、水性のアルカリ性溶液を利用して金属及び非金属基板からニッケル及びニッケル合金を化学的に剥離することに関する。
【0008】
US6,036,758Aは、銅の表面処理、特に銅表面の接着特性を向上させるための銅表面の微細粗化に有用な組成物を開示しており、銅に対する酸化剤と芳香族スルホン酸又はその塩とを含む。しかし、この溶液は強酸性であり、酸化物を直ちに除去する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、銅表面に均一な酸化銅を形成する方法を提供することであり、酸化物はさらに迅速に得られ、十分に厚く、炭酸塩の存在によって悪影響を受けない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の概要
上記課題は、銅表面に酸化銅を形成する方法によって解決され、本方法は、
a)銅表面を含む基板を提供するステップと、
b)銅表面を任意に予備洗浄するステップと、
c)銅表面を、
-芳香族スルホン酸化合物、その塩、
-芳香族スルホン酸エステル化合物、その塩、
-芳香族ニトロ化合物、及びその塩、
からなる群から選択される1種以上の酸化性化合物を含むアルカリ性の水性酸化性溶液と接触させるステップと、を含み、
前記酸化銅が、銅表面に形成される。
【0011】
好ましい実施形態は、従属クレームにおいて定義され、以下の明細書において開示される。
【0012】
本発明はさらに、銅表面に均一な酸化銅を形成するための、アルカリ性の水性酸化性溶液における、
-芳香族スルホン酸化合物、その塩、
-芳香族スルホン酸エステル化合物、その塩、
-芳香族ニトロ化合物、及びその塩、
からなる群から選択される酸化性化合物の使用、に関する。
【0013】
以下の有益な効果の1つ以上、好ましくはすべてが、本発明の方法又はその好ましい実施形態によって達成されることが、独自の実験によって示されている:
-数分以内に20μg/cmまでのような妥当な接触時間で銅表面に十分な厚さの酸化銅(典型的には酸化銅(II)の層)の形成、
-均一な酸化銅の形成、
-酸化銅の形成は、接触後に迅速に開始される(すなわち、不都合な遅延なく)。これにより、既存の製造プロセスの最適化が可能になる、
-二酸化炭素の存在は、水性のアルカリ性の酸化性溶液の性能又は上記の有益な効果に悪影響を及ぼすことが少ないか又は影響を及ぼさないため、エージングした酸化性溶液も良好に機能する、
-理想的には、銅表面に存在する不純物を酸化銅に輸送して、洗浄性能をさらに向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本発明の方法では、均一な酸化銅が銅表面に形成される。本発明の文脈において、「均一」とは、実質的に一定の厚さを有する高度に均一な酸化銅及び規則的/均一な酸化銅表面を意味する。従って、本発明の方法は、銅表面に均一な酸化銅を形成する方法であることが好ましい。
【0015】
ステップa)、基板を提供するステップ:
本発明の方法のステップa)では、銅表面を含む基板が提供される。最も好ましくは、銅表面は、銅堆積物の、好ましくは銅層の表面である。銅堆積物及び銅層はそれぞれ、銅堆積物及び銅層中の総原子数に対してそれぞれ95原子%以上の銅を含むことが好ましく、より好ましくは97原子%以上、さらに好ましくは99原子%以上であり、最も好ましくは純粋な金属銅である。これは、銅表面にも同様に適用することが好ましい。従って、場合によっては、本発明の方法が好ましく、ここで、銅表面は、銅以外の元素を少量含む。
【0016】
本発明の方法は好ましくは、ステップa)において、銅表面を含む基板は、非導電性基板であるか、又は非導電性基板を含み、好ましくは、樹脂、ガラス、セラミック、プラスチック、ウェハ、若しくはこれらの組み合わせであるか、又は樹脂、ガラス、セラミック、プラスチック、ウェハ、若しくはこれらの組み合わせを含み、さらに好ましくは、基板は、樹脂であるか、又は樹脂を含み、最も好ましくは、エポキシ樹脂であるか、又はエポキシ樹脂を含む。
【0017】
本発明の方法は好ましくは、ステップa)において、基板は、鉄及びスズの表面を含まず、好ましくは、鉄及びスズを全く含まない。
【0018】
好ましくは、基板は、電子物品、部品、又はそれらの前製品であるか、又は最終的に電子物品、部品、又はそれらの製品となる基板である。
【0019】
本発明の方法は好ましくは、銅表面が、パターン化された銅表面であり、最も好ましくはパターン化された銅層である。本発明の文脈において、「パターン化された」は、構造化された、すなわち、銅表面が三次元表面を有することを含む。したがって、ある場合には、銅表面をパターン化することが好ましく、他の場合には、銅表面は銅層であり、多くの場合にはパターン化された銅表面が好ましい。
【0020】
ステップb)、銅表面を予備洗浄するステップ:
本発明の方法の好ましい実施形態において、本方法は、ステップc)の前に、
ステップb)銅表面を予備洗浄するステップを含む。
【0021】
一般に、ステップb)は任意である。しかしながら、多くの場合、本発明の方法が好ましく、方法は、前記予備洗浄を含む。
【0022】
本発明の文脈において、「予備洗浄」は、銅表面からの不純物の除去を意味する。不純物は金属銅以外の全ての物質であることが好ましい。したがって、予備洗浄は、好ましくは、本発明の方法のステップc)の前に、銅表面を、その表面が金属銅、すなわちCuのみである、又は主として金属銅、すなわちCuを含む状態にすることを意味する。
【0023】
本発明の方法は好ましくは、ステップb)の予備洗浄は、ステップc)で定義されたものとは異なる酸化性化合物を含む水性予備洗浄溶液に銅表面を接触させることによって行われ、予備洗浄溶液のpHは4以下である。
【0024】
本発明の方法は好ましくは、予備洗浄溶液において、酸化性化合物が、1種以上の過酸化物、好ましくは1種以上のペルオキソ二硫酸塩を含む。好ましくは、予備洗浄溶液中で、過酸化物、好ましくは1種以上のペルオキソ二硫酸塩が、唯一の非金属酸化性化合物である。
【0025】
本発明の方法は好ましくは、予備洗浄溶液中の酸化性化合物の総濃度は、予備洗浄溶液の総容量に対して0.1mol/L~1.5mol/Lの範囲であり、好ましくは0.2mol/L~1.2mol/Lの範囲であり、より好ましくは0.3mol/L~1.0mol/Lの範囲であり、さらに好ましくは0.4mol/L~0.9mol/Lの範囲であり、最も好ましくは0.5mol/L~0.7mol/Lの範囲である。上記の濃度は、上記の好ましい過酸化物に好ましく適用でき、ペルオキソ二硫酸塩に最も好ましく適用できる。
【0026】
本発明の方法は好ましくは、ステップb)において、予備洗浄溶液のpHが4以下であり、好ましくは-2.0~4.0、より好ましくは-1.0~3.9、さらに好ましくは0~3.8の範囲である。このような酸性環境では、ステップc)の前に、望ましくない酸化銅などの不純物を除去して、十分に洗浄された金属銅表面を得る。
【0027】
本発明の方法は好ましくは、ステップb)において、予備洗浄は、スプレー、浸漬又はリンスによって行われる。
【0028】
ステップc)、アルカリ性の水性酸化性溶液と接触させるステップ:
本発明の方法のステップc)で用いられる酸化性溶液は、アルカリ性水性溶液である。本発明の文脈において、「水性」は、酸化性溶液が水を含むことを意味する。本発明の方法において用いられる酸化性溶液は好ましくは、酸化性溶液の総容量の50体積%以上が水であり、好ましくは70体積%以上、より好ましくは80体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上、最も好ましくは95体積%以上である。最も好ましくは、酸化性溶液は水を含み、ただし、水が唯一の溶媒である。
【0029】
「アルカリ性」という用語は、酸化性溶液のpHがより大きい、好ましくは9以上、さらに好ましくは11以上、最も好ましくは12.5以上であることを意味する。本発明の方法のステップc)における酸化性溶液は好ましいは、pHが8~14の範囲、より好ましくは9~14の範囲、さらに好ましくは10~14の範囲、さらにより好ましくは11~14の範囲、最も好ましくは12~14の範囲である。pHが十分にアルカリ性でない場合、酸化銅は溶解するが、これは望ましくない。本発明の目的は、本発明の方法のステップc)中に酸化銅を形成し、維持することである。
【0030】
アルカリ性pHを得るためには、酸化性溶液は、酸化性溶液の総容量に対して、好ましくは0.1mol/L~2.0mol/Lの範囲の濃度で、好ましくは0.2mol/L~1.8mol/Lの範囲で、さらに好ましくは0.3mol/L~1.6mol/Lの範囲で、さらに好ましくは0.4mol/L~1.5mol/Lの範囲で、最も好ましくは0.5mol/L~1.2mol/Lの範囲で、水酸化物イオンを含む。このような濃度は、好ましくは強アルカリ性の酸化性溶液、例えばpH13以上をもたらす。
【0031】
好ましくは、1つ以上の水酸化物イオン源、好ましくは1つの水酸化物イオン源を含む酸化性溶液である。
【0032】
水酸化物イオンの好ましい供給源は、無機水酸化物、有機水酸化物、又はそれらの混合物である。無機水酸化物は、好ましくは水酸化アンモニウム及びアルカリ性水酸化物からなる群より選択され、好ましくは水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選択される。好ましい有機水酸化物は、水酸化アルキルアンモニウム、好ましくは水酸化テトラアルキルアンモニウム、より好ましくは水酸化テトラメチルアンモニウムである。
【0033】
本発明の方法のステップc)において、接触は、好ましくは、銅表面が酸化性溶液と部分的又は完全に接触するように、スプレー、浸漬又はリンスによって行われる。
【0034】
本発明の方法は好ましくは、ステップc)において、銅表面は、(実質的に)水平又は(実質的に)垂直配向を有する。これは、それぞれの電子デバイスを製造する際に共通する典型的なプロセス設計、すなわち、それぞれの垂直及び水平プロセスに対処する。水平プロセスでは、銅表面は、酸化性溶液と接触したときに水平に、又は実質的に水平に配向される。このような場合、ステップc)は、銅表面に酸化性溶液をスプレーすることにより行うことが好ましい。垂直プロセスでは、銅表面は垂直に配向されるか、又は酸化性溶液と接触すると実質的に垂直に配向される。このような場合、ステップc)は、銅表面を酸化性溶液に浸漬することにより行うことが好ましい。
【0035】
酸化性化合物:
本発明の方法のステップc)において、アルカリ性の水性酸化性溶液は、
-芳香族スルホン酸化合物、その塩、
-芳香族スルホン酸エステル化合物、その塩、
-芳香族ニトロ化合物、及びその塩、
からなる群から選ばれる1種以上の、好ましくは1種の酸化性化合物を含む。
【0036】
したがって、形成された酸化銅は、アルカリ性の水性酸化性溶液中の前記酸化性化合物によって引き起こされる酸化の直接的な結果である。これはまた、アルカリ性の水性酸化性溶液が、前記1つ以上の、好ましくは1つの酸化性化合物の存在の結果として、その酸化能力を有することを意味する。
【0037】
芳香族スルホン酸化合物は、1個以上、好ましくは1個のスルホン酸基を含む。芳香族スルホン酸エステル化合物は、1個以上、好ましくは1個のエステル化されたスルホン酸基を含む。
【0038】
上記各芳香族化合物は、少なくとも1つの芳香環を含む。酸化性溶液は好ましくは、各芳香族化合物が1個の芳香環のみ、好ましくは炭素環原子のみを有する1個の芳香環のみを含む。このことは、好ましくは酸化性溶液がヘテロ芳香族化合物を含まないこと、最も好ましくはヘテロ芳香族化合物が本発明の方法では使用されないことを意味する。好ましくは、前記芳香族化合物はベンゼン部分を含み、最も好ましくは、唯一の芳香環はベンゼン部分である。
【0039】
前記芳香族化合物の好ましい塩は、アルカリ金属塩及びアンモニウム塩、好ましくはナトリウム塩及びカリウム塩である。
【0040】
いくつかの場合において、前記芳香族化合物は、1以上の置換基で置換されることが好ましく、1以上の置換基は、少なくとも1つの芳香環及び/又はスルホン酸基と結合している。好ましい置換基は、ニトロ基、スルホン酸基、アルコキシ基、ハロゲン基及びアルキル基からなる群より選択される。より好ましくは、置換基は、ニトロ基、スルホン酸基、アルコキシ基、ハロゲン基及びアルキル基からなる群より選択される。ただし、芳香族ニトロ化合物及びその塩は、スルホン酸基で置換されていない。したがって、芳香族ニトロ化合物及びその塩は、好ましくはスルホン酸基を含まず、より好ましくは硫黄を含まない。
【0041】
好ましいアルキル基は、C1~C6アルキル基であり、好ましくはC1~C4であり、より好ましくはC1~C3である。
【0042】
好ましいハロゲン基は塩化物及び臭化物である。場合によっては、1つ以上の酸化性化合物が-SOCl基を含むことが好ましい。これは、置換芳香族化合物、好ましくは置換芳香族スルホン酸化合物の好ましい代表である。
【0043】
好ましいアルコキシ基は、C1~C3のアルコキシ、好ましくはメトキシである。場合によっては、1つ以上の酸化性化合物が-SOOCH基を含むことが好ましい。これは、置換芳香族化合物、好ましくは置換芳香族スルホン酸化合物の好ましい代表である。
【0044】
芳香族スルホン酸化合物、その塩、芳香族スルホン酸エステル化合物及びその塩の好ましい置換基は、ニトロ基であり、最も好ましくは芳香族スルホン酸化合物及びその塩である。本発明の方法は好ましくは、ステップc)において、
-芳香族スルホン酸化合物及びその塩は、1個以上の(好ましくは1個の)ニトロ基を含み、好ましくは、芳香環に直接結合している少なくとも1個のニトロ基を含む、
及び/又は
-芳香族スルホン酸エステル化合物及びその塩は、1個以上の(好ましくは1個の)ニトロ基を含み、好ましくは、芳香環に直接結合している少なくとも1個のニトロ基を含む。
【0045】
本発明の方法は好ましくは、ステップc)において、芳香族ニトロ化合物及びその塩が、ニトロベンゼン、その塩、置換ニトロベンゼン及び/又はその塩、好ましくはニトロベンゼン及びその塩を含む。置換ニトロベンゼン及びその塩は、好ましくは上記で定義されたような置換基を含む。ただし好ましくは、置換ニトロベンゼン及びその塩はスルホン酸基を含まず、より好ましくは硫黄を含まない。
【0046】
本発明の方法は好ましくは、ステップc)において、
-芳香族スルホン酸化合物、その塩、
-芳香族スルホン酸エステル化合物、その塩、
-芳香族ニトロ化合物、及びその塩、
からなる群から選択される1種以上の酸化性化合物が、
酸化性溶液中の全芳香族化合物の96モル%以上の総モル量を構成し、好ましくは97モル%以上、より好ましくは98モル%以上、さらに好ましくは99モル%以上であり、最も好ましくは酸化性溶液中の唯一の芳香族化合物である、
及び/又は
-芳香族スルホン酸化合物、その塩、
-芳香族スルホン酸エステル化合物、その塩、
-芳香族ニトロ化合物、及びその塩、
からなる群から選択される1種以上の酸化性化合物が、
酸化性溶液中の全酸化性化合物の96モル%以上の総モル量を構成して銅表面を酸化し、好ましくは97モル%以上、より好ましくは98モル%以上、さらに好ましくは99モル%以上であり、最も好ましくは酸化性溶液中で溶存分子状酸素以外の唯一の酸化性化合物である。
【0047】
好ましくは、溶解した分子状酸素は、周囲空気からの酸素であり、典型的には低濃度である。この酸素は通常、酸化性溶液中に不可避的に溶解する。
【0048】
本発明の方法は好ましくは、ステップc)において、酸化性溶液は、置換ベンゼンスルホン酸及び/又はその塩を含み、好ましくは、酸化性溶液中の全芳香族化合物の96モル%以上が、置換ベンゼンスルホン酸及びその塩であり、より好ましくは97モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上、最も好ましくは99モル%以上である。
【0049】
本発明の方法は好ましくは、ステップc)において、酸化性溶液が、ニトロベンゼンスルホン酸及び/又はその塩を含み、好ましくは酸化性溶液中の全芳香族化合物の96モル%以上がニトロベンゼンスルホン酸及びその塩であり、より好ましくは97モル%以上、さらにより好ましくは98モル%以上、最も好ましくは99モル%以上である。ニトロ基は好ましくはオルト位、メタ位又はパラ位にあり、最も好ましくはメタ位にある。
【0050】
ステップc)において酸化性溶液は好ましくは、前記1種以上の酸化性化合物の総濃度が、酸化性溶液の総容量に基づいて、5mmol/Lから500mmol/Lの範囲であり、好ましくは10mmol/Lから400mmol/Lの範囲であり、より好ましくは15mmol/Lから300mmol/Lの範囲であり、さらに好ましくは20mmol/Lから200mmol/Lの範囲であり、さらにより好ましくは25mmol/Lから100mmol/Lの範囲であり、最も好ましくは30mmol/Lから70mmol/Lの範囲である。これは、これらの化合物の1つ以上が存在する場合、濃度はこれらの化合物すべての総濃度に関連することを意味する。このことは、好ましくは、前記1つ以上の酸化性化合物が、酸化性溶液において、溶存した分子状酸素以外の唯一の酸化性化合物であるという条件で適用される。
【0051】
ステップc)において酸化性溶液は好ましくは、芳香族スルホン酸化合物及びその塩(好ましくは置換ベンゼンスルホン酸化合物及びその塩)からなる群より選択される1種以上の、好ましくは1種の酸化性化合物を含み、前記1種以上の酸化性化合物の総濃度が、好ましくは、酸化性溶液の総容量に基づいて、5mmol/Lから500mmol/Lの範囲であり、好ましくは10mmol/Lから400mmol/Lの範囲であり、より好ましくは15mmol/Lから300mmol/Lの範囲であり、さらに好ましくは20mmol/Lから200mmol/Lの範囲であり、さらにより好ましくは25mmol/Lから100mmol/Lの範囲であり、最も好ましくは30mmol/Lから70mmol/Lの範囲である。このことは、好ましくは、前記1つ以上の酸化性化合物が、酸化性溶液において、溶存した分子状酸素以外の唯一の酸化性化合物であるという条件で適用される。
【0052】
ステップc)において酸化性溶液は最も好ましくは、ニトロベンゼンスルホン酸及びその塩からなる群より選択される1種以上の、好ましくは1種の酸化性化合物を含み、前記1種以上の酸化性化合物は、好ましくは酸化性溶液の総容量に対して5mmol/L~500mmol/Lの範囲、好ましくは10mmol/L~400mmol/Lの範囲、より好ましくは15mmol/L~300mmol/Lの範囲、さらに好ましくは20mmol/L~200mmol/Lの範囲、さらにより好ましくは25mmol/L~100mmol/Lの範囲、最も好ましくは30mmol/L~70mmol/Lの範囲の総濃度を有する。このことは、好ましくは、前記1つ以上の酸化性化合物が、酸化性溶液において、溶存した分子状酸素以外の唯一の酸化性化合物であるという条件で適用される。ニトロベンゼンスルホン酸及びその塩は、非常に好ましい酸化性化合物である。ニトロ基は好ましくはオルト位、メタ位又はパラ位にあり、最も好ましくはメタ位にある。
【0053】
酸化性溶液はさらに最も好ましくは、1種以上の酸化性化合物として3-ニトロベンゼンスルホン酸及び/又はその塩を含み、好ましくは3-ニトロベンゼンスルホン酸及び/又はその塩は、酸化性溶液において、溶存した分子状酸素を除いて、唯一の酸化性化合物であり、酸化性溶液の総容量に基づいて、好ましくは5mmol/Lから500mmol/Lの範囲の総濃度であり、好ましくは10mmol/Lから400mmol/Lの範囲であり、より好ましくは15mmol/Lから300mmol/Lの範囲であり、さらに好ましくは20mmol/Lから200mmol/Lの範囲であり、さらにより好ましくは25mmol/Lから100mmol/Lの範囲であり、最も好ましくは30mmol/Lから70mmol/Lの範囲である。
【0054】
酸化性溶液は好ましくは、芳香族スルホン酸エステル化合物及びその塩がアルキルエステルであり、好ましくは独立してメチルエステル、エチルエステル又はプロピルエステルである。2個以上のスルホン酸基が存在する場合には、1個以上がエステル化される。
【0055】
酸化性溶液中のさらなる化合物:
いくつかの場合には、本発明の方法が好ましく、ステップc)において、酸化性溶液は、1つ以上の錯化剤をさらに含む。錯化剤は、典型的には、銅表面に酸化性溶液を適用する際に可溶化される銅イオンを錯体化する働きをし、不溶性の水酸化銅の形成を回避する。典型的には、銅イオンのための錯化剤は、そのような水酸化物形成を防止するか、又は少なくとも有意に減少させる。従って、本発明の方法は好ましくは、ステップc)において、酸化性溶液が、銅イオンを錯化するための1つ以上の錯化剤、好ましくは、少なくとも1つのカルボキシル基及び少なくとも1つのヒドロキシル基を含む1つ以上の錯化剤をさらに含む。
【0056】
本発明の方法はより好ましくは、酸化性溶液において、1種以上の錯化剤が、糖、好ましくはモノマー糖を含む。
【0057】
本発明の方法はよりさらに好ましくは、銅イオンを錯化するための1つ以上の錯化剤は、グルコン酸及び/又はその塩を含み、最も好ましくは、酸化性溶液中の銅イオンを錯化するための唯一の錯化剤が、グルコン酸及び/又はその塩である。
【0058】
本発明の方法は好ましくは、酸化性溶液において、1種以上の錯化剤の総濃度が、酸化性溶液の総容量に対して5mmol/Lから400mmol/Lの範囲であり、好ましくは10mmol/Lから300mmol/Lの範囲であり、より好ましくは15mmol/Lから200mmol/Lの範囲であり、さらに好ましくは20mmol/Lから100mmol/Lの範囲であり、さらにより好ましくは25mmol/Lから80mmol/Lの範囲であり、最も好ましくは30mmol/Lから60mmol/Lの範囲である。上記の濃度は、好ましくは上記の好ましい錯化剤に適用でき、最も好ましくはグルコン酸及びその塩に適用できる。
【0059】
本発明の方法は好ましくは、酸化性溶液がベンズイミダゾールを実質的に含まないか又は含まない、好ましくはアゾールを実質的に含まないか又は含まない。
【0060】
本発明の方法は好ましくは、酸化性溶液がポリエチレン化合物を実質的に含まないか又は含まない、好ましくはポリアルキレン化合物を実質的に含まないか又は含まない。
【0061】
本発明の方法は好ましくは、酸化性溶液が界面活性剤を実質的に含まないか又は含まない。
【0062】
本発明の方法は好ましくは、酸化性溶液が過酸化水素を実質的に含まないか又は含まない、より好ましくは過酸化物を実質的に含まないか又は含まない。多くの場合、このような強すぎる酸化性化合物は、不十分な均一な酸化銅層中に望ましくない針状の酸化銅を生成する。
【0063】
本発明の方法は好ましくは、酸化性溶液が亜塩素酸イオンを実質的に含まないか又は含まない、好ましくは亜塩素酸イオン及び次亜塩素酸イオンを実質的に含まないか又は含まない、最も好ましくは塩素-酸素アニオンを実質的に含まないか又は含まない。
【0064】
本発明の方法は好ましくは、酸化性溶液が次亜リン酸イオンを実質的に含まないか又は含まない。
【0065】
本発明の方法は好ましくは、ステップc)において、酸化性溶液との接触時間が、3秒以上5分以下の範囲、好ましくは4秒以上4分以下の範囲、より好ましくは5秒以上3分以下の範囲、さらに好ましくは6秒以上2分以下の範囲、最も好ましくは7秒以上1分以下の範囲である。
【0066】
本発明の方法は好ましくは、ステップc)において、酸化性溶液の温度が、20℃から80℃の範囲、好ましくは25℃から75℃の範囲、より好ましくは30℃から70℃の範囲、さらに好ましくは35℃から65℃の範囲、最も好ましくは40℃から60℃の範囲である。
【0067】
本発明の方法は好ましくは、ステップc)の後に、酸化銅が、10~50μg/cmの範囲、好ましくは11~45μg/cmの範囲、より好ましくは12~40μg/cmの範囲、さらにより好ましくは13~35μg/cmの範囲、最も好ましくは14~32μg/cmの範囲の量で銅表面に形成される。
【0068】
本発明の方法は好ましくは、ステップc)の後、酸化銅は、酸化銅(II)に基づいて、4nmから100nmの範囲である、好ましくは5nmから80nmの範囲、より好ましくは6nmから60nmの範囲である、層厚を好ましくは有する均一な酸化銅層を形成する。
【0069】
本発明の方法は好ましくは、銅表面に形成された酸化銅が、針状の酸化銅を実質的に含まないか又は含まない。さらに、本発明の方法は好ましくは、銅表面に形成される酸化銅は、黒色酸化物に相当する酸化銅では(実質的に)ない。
【0070】
本発明の方法は好ましくは、ステップc)の後に、酸化銅(i)が追加のステップで除去されるか、又は(ii)が維持され、追加のステップで除去されない。
【0071】
場合によっては、本発明の方法は好ましくは、ステップc)の後にさらに以下を含む:
d)好ましくは、酸化銅を酸性溶液と接触させることによって、酸化銅を除去するステップ。
【0072】
ステップd)の後、典型的には、非常に完全に洗浄された銅表面が得られる。
【0073】
使用及び製品:
本発明はまた、銅表面に均一な酸化銅を形成するための、アルカリ性の水性酸化性溶液における、
-芳香族スルホン酸化合物、その塩、
-芳香族スルホン酸エステル化合物、その塩、
-芳香族ニトロ化合物、及びその塩、
からなる群から選択される酸化性化合物の使用、に関する。本発明の方法に関する前述のことは、本発明の使用にも同様に適用されることが好ましい。
【0074】
本発明はまた、好ましくは、本発明の方法によって得られるか又は得ることが可能な製品に関する。製品は、好ましくは上記の特性を有する。本発明の方法に関する前述のことは、本発明の製品にも同様に適用されることが好ましい。
【0075】
好ましくは、本発明の製品は電子物品であり、好ましくはプリント回路基板又はウェハである。
【0076】
実施例
A)酸化性溶液:
本発明のアルカリ性の水性酸化性溶液:
0.5mol/L~1mol/LのNaOH(pH13~14)と錯化剤としてのグルコン酸塩とを含むアルカリ性の水性溶液に、酸化性化合物としての3-ニトロベンゼンスルホン酸塩10mmol/L~50mmol/Lを添加することにより、本発明の酸化性溶液(以下、単に「inv」という)が製造される。
【0077】
アルカリ性の水性酸化性溶液(比較例1):
比較のために、3-ニトロベンゼンスルホン酸塩を含まない「inv」について上述したように溶液(以下、単に「comp1」という)を調製する。この溶液において、酸化銅を形成するための銅の酸化は、主に、強アルカリ性溶液中に溶存した周囲空気酸素によって促進される。
【0078】
非アルカリ性(酸性)水性酸化性溶液(比較例2):
また、比較のために、pH4.0~4.5の範囲の水性溶液中に0.4mol/L~0.6mol/LのHを含む非アルカリ性の酸化性溶液(以下、単に「comp2」という)を調製した。この溶液において、酸化銅を形成するための銅の酸化は、主に、Hによって促進され、pHは、形成された酸化銅の激しい溶解を回避するためにあまり酸性ではない。
【0079】
B)実験
以下の特性をテストするために実験を行う:
(i)ステップc)後の光学的外観、
(ii)酸化銅形成の開始時間、
(iii)形成された酸化銅の量、
(iv)形成された酸化銅の均質性
(v)炭酸塩濃度を異にした場合における(酸化物の重量増加によって決定される)酸化銅形成。
【0080】
本発明の方法のステップa)によれば、銅表面を有する銅張り積層板(CCL,EM-825(I),Elite Material社;非導電性樹脂上に35μm銅箔、7.5cm×15cm)が各実験用基板として提供される。
【0081】
本発明の方法のステップb)によれば、ペルオキシ二硫酸ナトリウム(SPS)、硫酸及び硫酸銅を含む水性予備洗浄溶液(35℃)中で銅表面を予備洗浄した後、水で洗浄するステップが続く。結果として、純粋な金属銅表面を示す予備洗浄された銅表面が得られる。
【0082】
本発明の方法のステップc)によれば、予備洗浄された銅表面は、50℃で3分間の接触時間(「inv」及び「comp1」)又は35℃で1分間の接触時間(「comp2」)でそれぞれの酸化性溶液と接触される。その後、特性(i)~(iv)を決定する。結果の概要を以下の表Aに示す。
【0083】
特性(v)をテストするために、一組の実験において、酸化性溶液「inv」及び「comp1」を、ガス状COを直接導入することによって人工的に炭化させ、最終的に所定の炭酸塩濃度(体積流量約0.5L/min)を得る。そのために含有水酸化物のほぼ完全な炭化が行われる。その後、炭酸塩の所望の濃度をpHメータ滴定し、各実験を行う前に注意深くチェックする。このようにして、周囲空気からの二酸化炭素によって促進される自然に発生する炭化がシミュレートされる。酸化物の重量増(酸化物の混入)は炭酸塩濃度に依存して決定される。結果は、ステップc)において、それぞれ3分及び5分の接触時間について得られる。以下の炭酸塩濃度(g/L)をテストする:それぞれの酸化性溶液中の炭酸塩及び炭酸水素塩の総量に基づいて、0(参照)、5、15及び30。これは、典型的には周囲空気による二酸化炭素吸収の結果である、アルカリ性の水性酸化性溶液の自然なエージングをシミュレートする。このシミュレーションは、このようなエージングされた酸化性溶液中で酸化銅の有利な形成が依然として起こるかどうかを評価することを可能にする。結果を以下の表Bにまとめる。
【0084】
ステップc)の後、各基板を水ですすぎ、約65℃で乾燥させる。
【0085】
C.結果とまとめ
特性(i)から(iv)の結果を以下の表Aにまとめる。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
特性の詳細に関して:
(i):
「inv」と接触した銅表面は、緑色がかった色合いを有する有意な金色を有する酸化銅を生じる(表A参照)。この色は本発明の方法に特徴的であり、比較的高い炭酸塩濃度に達しない限り、基本的には均一にエージングされた酸化性溶液中でも形成される(表B、「inv」、3分の接触時間、30g/Lの炭酸塩濃度を参照)。3分の接触時間で、特徴的な色は、0g/Lから少なくとも15g/Lまでの炭酸塩濃度に対して維持される。対照的に、接触時間が5分であれば、30g/Lの炭酸塩濃度を含む特徴的な色も維持される(表B、「inv」、5分の接触時間を参照)。
【0089】
しかしながら、「comp1」と接触した銅表面は、くすんだ及び/又はかすんだ外観を含む未定義の銅色を有する酸化銅をもたらす。
【0090】
この色差は、本発明の方法に従って処理された銅表面の簡単な光学的検査を可能にし、所望の酸化銅が存在することを容易に示す。
【0091】
「comp2」と接触した基板は強いオレンジ色を示し、これは炭酸塩の存在下ではさらに研究されていない。Hによる酸化は比較的速い(4秒)が、我々の実験ではいくつかの欠点が明らかに観察されている:
-酸化銅は弱酸性の酸化性溶液には許容できないほど溶解する;pHは弱酸性であるが、この段階では望ましくない溶解を完全に排除することはできない。
-酸化銅の望ましくない溶解は、酸化性溶液中の銅イオンの濃度を酸化性溶液「inv」及び「comp1」よりも著しく増加させるが、これは望ましくないため、銅イオンに対して比較的高濃度の錯化剤を必要とする。
-「comp2」中のH濃度は、「comp2」がHを安定化させるために好ましくはより酸性のpHを必要とするために安定ではないが、酸化銅の安定性の観点から有害であり;したがって、「comp2」の長期安定性は悪影響を受ける。
【0092】
(ii):
表Aは、「inv」との接触による酸化銅の形成が、「comp1」との接触と比較して有意に早期に開始されることを示す。従って、「inv」は、「comp1」と比較して、酸化銅形成の開始を有意に加速し、開始時間を有意に低下させる。
【0093】
対照的に、「comp2」との接触は、酸化銅形成の最も速い開始(わずか4秒)をもたらす。しかし、「comp2」については、時間の経過と共に、この値は、望ましくない銅イオン溶解のために有意に変化する(データは示されていない)。「inv」及び「comp1」については、このような有意な変化は経時的に観察されない。
【0094】
(iii):
表Aは、「inv」との接触が、形成される酸化銅の量の増加を示しており、これは「comp1」との接触と比較して約3倍である(表A、「comp1」、6μg/cm2対「inv」、18μg/cmを比較)。さらに、表Bは、各場合において、「inv」と接触すると、「comp1」と接触する場合と比較して、より多くの酸化銅が形成されることを示す。
【0095】
(iv):
均質性は目視検査によって決定された。均一に分布した色(より暗い/より明るい領域、スポット、ぼやけ及びしみがない)は、均一な酸化銅層を示す。対照的に、スポット、ぼやけ及びしみを含む色のより暗い/より明るい領域を有する表面は、有意に異なる厚さ及び明らかな不均質性を有する酸化物層を強く示す。
【0096】
それぞれの場合において、「inv」と接触すると、均質性は「comp1」と接触する場合と比較してかなり改善された。「inv」と接触すると、炭酸塩の存在下でさえも、緑がかった色合いを有する均一に分布した金色が得られる。これは、銅表面が銅表面全体にわたって等しくかつ均一に酸化され、非常に均一で高度に均質な酸化銅が得られることを意味する。
【0097】
対照的に、「comp1」と接触すると、不均質な酸化銅層が生じ、これは、不均一に分布した色(くすんだ及び/又はかすんだ外観を含む)によって特徴付けられる。「comp1」に対して同じ不均質性が炭酸塩の存在下で観測された。
【0098】
(v):
表Bは、それぞれの場合において、「inv」との接触が酸化銅の形成をもたらすことを示す。さらに、いずれの場合も、形成される酸化銅の量は、「comp1」と接触するよりも多い。結果として、酸化銅の形成は炭酸塩の存在によって負に影響されず、酸化銅形成の増加はエージングした酸化性溶液中でも起こる。