(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】非整列カニューレを備える医療装置
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
A61M25/06 500
(21)【出願番号】P 2021545960
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(86)【国際出願番号】 IB2020050495
(87)【国際公開番号】W WO2020161553
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】102019000001685
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521345534
【氏名又は名称】ソル-ミレニアム スイス アールアンドディー センター エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【氏名又は名称】横井 大一郎
(72)【発明者】
【氏名】デ ゾルト ダリオ
(72)【発明者】
【氏名】ラガーナ マッテオ
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-166992(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103301528(CN,A)
【文献】米国特許第05456668(US,A)
【文献】特開2016-154617(JP,A)
【文献】特開2000-140122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に流体を投与する又は患者から流体を採取するための、経皮アクセス又は静脈アクセス用の医療装置(1)であって、
長手方向軸線(K)及び内部空洞(25)を有する管状本体(2)を備え、前記管状本体は、近位端(2B)と、第1の動作位置においてカニューレ(4)が延びる遠位端(2A)とを有し、前記カニューレは、カニューレホルダ(8)の遠位端(7)によって支持され、前記カニューレホルダ(8)は近位端(9)を有し、前記カニューレホルダ(8)は、前記カニューレ(4)を、前記カニューレが前記管状本体(2)内に位置する第2の動作位置に設置するように、弾性の推進要素(26)の作用下で前記医療装置(1)の前記管状本体(2)の前記
内部空洞(25)内を移動可能であり、前記管状本体(2)と一体化された停止部(32)が設けられており、前記停止部(32)は、前記カニューレホルダ(8)の前記移動を阻止することが可能であり、作動手段(24)が前記移動を可能にするために設けられており、前記作動手段(24)は、前記医療装置(1)の管状本体(2)に取り付けられており、前記カニューレホルダ(8)と一体化された作動無効化手段(35)と協働する医療装置(1)において、
前記作動手段(24)は、前記医療装置(1)の前記管状本体(2)の前記長手方向軸線(K)に平行に前記カニューレホルダの非作用部(88)の上をスライドする突起部(53)を含み、前記スライドは、前記作動手段(24)と前記作動無効化手段との間の協働が開始される際に行われ、前記カニューレホルダ(8)は、前記協働の間の力が印加された状態では変形せず、前記カニューレホルダは、実質的に剛体材料からなり、曲がりやすい部分又は屈曲部を備えないことを特徴とする医療装置(1)。
【請求項2】
前記動作位置のうちの少なくとも1つにおいて、前記カニューレ(4)は、前記管状本体(2)の長手方向軸線(K)に対して傾斜して配置された長手方向軸線(W)を有していることを特徴とする、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記カニュー
レ(4)は、
-20°乃至20°の間に含まれる角度(α)を形成するように、前記カニューレホルダ(8)の前記長手方向軸線(K)に対して傾斜した長手方向軸線
(W)を有していることを特徴とする、請求項2に記載の医療装置。
【請求項4】
前記カニュー
レ(4)は、
+10°乃至-10°の間、好ましくは-3°乃至+3°の間に含まれる角度で、前記カニューレホルダ(8)の前記長手方向軸線(K)に対して傾斜した長手方向軸線を有していることを特徴とする、請求項3に記載の医療装置。
【請求項5】
前記カニューレホルダ(8)の前記遠位端(7)は、前記カニューレ(4)の近位端(4F)を収容可能な座部(81)を備え、前記座部の軸線は、前記カニューレ(4)の長手方向軸線(W)と一致していることを特徴とする、請求項2に記載の医療装置。
【請求項6】
前記医療装置は微小灌流針である前記医療装置において、
前記カニューレホルダ(8)は、前記近位端(9)において、前記流体が循環する管(10)用の座部(90)を備え、前記座部(90)は、前記カニューレホルダ(8)の長手方向軸線を前記カニューレの長手方向軸線(W)に一致させて位置決めするように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の医療装置。
【請求項7】
前記カニューレホルダ(8)の前記遠位端(7)に設けられた前記座部(81)の軸線は、前記管(10)を収容する前記座部(90)の軸線とは一致しないことを特徴とする、請求項
6に記載の医療装置。
【請求項8】
前記管状本体(2)は、その内部空洞(25)において、前記カニューレホルダ(8)用の推進手段(26)を備え、前記推進手段(26)は、前記カニューレホルダ(8)の長手方向軸線を、前記管状本体(2)の長手方向軸線(K)に対して傾斜した位置にある前記カニューレ(W)の長手方向軸線と一致するように位置決め可能であることを特徴とする、請求項1に記載の医療装置。
【請求項9】
前記カニューレホルダ(8)は、前記カニューレホルダ(8)が移動可能である前記管状本体(2)の空洞(25)に存在する可撓性フィ
ンと協働可能な部分(42)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の医療装置。
【請求項10】
前記カニューレホルダ(8)の前記部分(42)は、前記カニューレホルダ(8)内に設けられた凹部(42)、又は、前記カニューレホルダ(8)から突出した部分であることを特徴とする、請求項9に記載の医療装置。
【請求項11】
前記医療装置は、カテーテル針である、又は、類似の医療装置であることを特徴とする、請求項1に記載の医療装置。
【請求項12】
前記カニューレホルダ(8)の遠位端(7)に設けられた前記座部(81)の軸線は、前記カニューレホルダ(8)の近位端に存在する逆流チャンバの軸線に一致していないことを特徴とする、請求項5に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、請求項1の前提部分に記載の医療装置である。
【背景技術】
【0002】
患者に流体を投与する又は患者から流体を採取するための、経皮アクセス又は静脈アクセス用の多くの医療装置が知られている。これらの医療装置の例としては、微小灌流針、瘻孔針、及び、カテーテル針が挙げられる。
【0003】
この種の医療装置は、切口としての自由端を有する剛性部品、通常は、カニューレホルダの第1の端部に固定される金属カニューレを有する。カニューレホルダは、該装置の本体の中に挿入され、患者に供給される流体、又は、患者から採取した流体が流れる(プラスチックの)管が固定される第2の端部を有する。この管(及びこれに接続されたコネクタ)により、体液が対応する装備品から又は装備品へ移送されること、例えば真空下での試料収集が可能になる。また他方で、医療装置がカテーテル針である構成も可能であるが、この場合には、柔軟な管は存在しない(しかしこのカテーテル針は当業者に公知の他の部品を含む)。
【0004】
上述の可能な構成のうちの1つでは、カニューレが患者の皮膚を刺し通し、当該装置の、通常はプラスチック製の他の部品を、採取又は注入する部位と水圧連通させる。
【0005】
これらの装置のうちの幾つか、例えば、瘻孔針又は微小灌流針では、カニューレを注入部位に容易かつ正確に挿入することに寄与する、極めて柔軟なプラスチック部品(ソフトプラスチック製のフィン等)が設けられる。通常、これらの部品又は柔軟なフィンは、当該装置の本体に取り付けられており、患者にカニューレを挿入することを容易にするために、垂直位置において結合可能である。
【0006】
フィンには、これを掴むことを容易にする特殊な表面加工が施されている。この特殊な表面加工により、カニューレよりも幅の広いこれらのフィンを、取り外し可能な適切な取付要素によって患者に固定すると、皮膚の通気性が向上する。
【0007】
これらの装置では、当該装置を患者に使用した後に、医療従事者が(切口先端を有する)カニューレと接触してしまう可能性があることに関連する問題がある。これは、例えば、エイズやウイルス性肝炎といった、極めて深刻で生命を脅かす感染病の感染源となり得る。このため、偶発的な穿刺を防止するための安全システムを備える、上述の種類の医療装置が知られている。
【0008】
例えば、十分な剛性を有するプラスチック材料から成る保護用管状体の使用が知られている。使用後、この保護用管状体を手動でカニューレ上を前進させて、金属カニューレの先端を保護する阻止位置まで移動させる。これらのシステムはアクティブタイプとして分類される(なぜなら、装置の使用の通常手順に加えて、安全装置を作動させるために特定の動作を行うからである)。
【0009】
他の装置では、保護用のプラスチック体を移動させること、又は、その逆でカニューレを後退させることは、ユーザが意図的に作動させることが可能である適切な自動化機構によって行われる。多くの場合、これらのシステムは、動作ドライバとして、圧縮された又は引っ張られた弾性バネ等の、予荷重をかけた弾性要素を使用している。
【0010】
安全システムを備えるこれらの装置のうちの1つが、欧州公開第1306097号公報に記載されている。この公知の解決方法は、カニューレホルダに、突出した柔軟アームを備えている。この柔軟アームは、当該装置が、カニューレを患者の身体に挿入する位置にある時に、当該装置の本体の開口部から延びる。このアームは、カニューレホルダの近傍に、当該装置の本体の開口部の縁部に支持された段差状の端部を有している。
【0011】
カニューレホルダは、装置の本体内でカニューレホルダを移動させようとする圧縮バネの推力を受ける。しかしながら、この動きは、好適な形状を有する手段によって、アームがカニューレの軸線に対して直行する方向に上述の開口部の内側に向かって押されるまで、上述の突出した柔軟アームの段差状の端部との協働により妨げられる。この場合、段差を有する端部は、装置の本体内に押し込まれ、開口部の縁部から分離し、これによって、バネが、カニューレホルダを装置の本体の内側に移動させることを可能にする。その結果、カニューレは完全に上述の本体内に戻ってくる。
【0012】
類似の解決方法が、国際公開第2016007438号公報に記載されている。
【0013】
しかしながら、カニューレホルダに作用する弾性要素を備えるシステム、すなわち解決方法は、カニューレが戻ってくる速度が速くなり過ぎることにより、例えば、患者からカニューレを過度に迅速に取り外すことによって生じる不都合を有し得ることが知られている。この不都合とは、体液がわずかに噴出する可能性、患者が痛みを感じる可能性、大きな雑音、及び、弾性要素が先端を阻止する過程の終わりに生じる振動である。
【0014】
加えて、これらの公知の解決方法では、カニューレの移動が、カニューレの移動を生じさせることが望ましくない場合であるカニューレ自体を患者の体内に導入する間に、望ましくない方法で生じてしまう場合もあり得る。
【0015】
国際公開第2014/201709号公報には、独立請求項の前提部分に記載の医療装置が開示されている。
【0016】
この従来技術では、医療装置は、支持用カニューレホルダが移動可能な内部空洞を有する管状本体と、その遠位端にカニューレとを有している。
【0017】
近位端において、カニューレホルダは、径方向の凸部を有している。凸部は、当該装置の管状本体から延びており、この管状本体内に設けられたスライドガイド内を、バネの作用下において移動可能である。このバネは、当該管状本体内でカニューレホルダの遠位端に作用する。
【0018】
カニューレホルダの径方向の凸部は、当該装置の管状本体に取り付けられた振動部の近位端のフックと協働する。このフックと凸部との協働が存在する場合、カニューレホルダは、当該装置の管状本体において阻止される。
【0019】
他方で、フックが径方向の凸部から上に持ち上がると、バネは、カニューレホルダを推進してこの管状本体内をスライドさせ、これによって、使用のために元々この管状本体の外側に配置されていたカニューレを、管状本体内に戻すようにする。
【0020】
したがって、上記した従来技術は、上述の近位のフックと凸部との間を実質的にオン/オフする種類の協働について記載したものである。実際、フックは、この振動部の遠位端に作用することによって凸部から上に持ち上げられ、ほぼ同時にバネがカニューレホルダを当該装置の管状本体内で推進する。
【0021】
この解決方法は、カニューレ自体を静脈内に導入する段階で、望ましくないカニューレホルダの解放が起こる可能性があり、結果的に、カニューレが医療装置の管状本体に戻ってきて、当該装置の使用が不可能となるという重大な欠点を有している。
【0022】
これは、公知の上述の解決方法及びシステムによって引き起こされる問題と同様である。
【0023】
上述の種類の医療用安全装置は、同じ出願人による(及び本願の独立請求項の前提特徴部分を構成する)先行特許出願、つまり国際公開第2019/053568号公報から公知である。この文献では、バネが、使用後のカニューレを当該装置の管状本体内に回収することが可能である。しかしながら、この公知の解決方法によれば、カニューレの動きを解放するための手段が設けられており、この手段は、対応する阻止手段と協働し、すぐに干渉せず、操作者又はユーザが解放手段を操作した時にカニューレホルダ及びカニューレの当該装置の管状本体に対する運動を解放する。すなわち、この干渉、つまり、カニューレの運動の解放は、該解放手段と阻止手段との間の第1の軸線方向の相対運動の後に行われる。これにより、例えばカニューレ自体を患者の静脈内に導入する段階の間に、この動作を行う医者や医療従事者が単に解放手段に接触したために、意図せずにカニューレが動いてしまうことが回避される。
【0024】
上述の解決方法では、カニューレホルダは、柔軟である(又は曲げやすい)ように製造される。これは、このカニューレホルダを、解放手段がカニューレホルダの効果的な運動を可能にする状態である変形した状態にするために、ユーザは解放手段に対して力を発生させる必要があることも意味している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的は、上述の種類の医療用安全装置であって、類似の公知の解決方法と比べて有効な代替手段であり、同時に、カニューレを患者の体内(例えば、患者の静脈のうちの1つ)に導入することを容易にすることが可能な医療用安全装置を提供することにある。
【0026】
特に、本発明の目的は、カニューレホルダが可撓性を有しておらず、カニューレホルダの自由運動を解放することなくカニューレホルダの初期制御運動を得るため、及び、その後この運動を解放してカニューレが該管状本体に戻ることを可能にするために、操作者が解放手段に対して抑制された力を生成することを可能にする、上述の種類の医療装置を提供することにある。
【0027】
本発明のもう一つの目的は、カニューレの先端が医療従事者に接触し得ないためだけでなく、体液が保護要素から出て医療従事者に接触し得る可能性が低減されるために、高水準の安全性も提供する、上述の種類の装置を提供することにある。
【0028】
本発明のさらなる目的は、(安全性に関する限り)全く望ましくない安全装置の起動を避けることが求められる場合に、及びその場合にのみ、動作する上述の種類の安全装置を提供することにある。
【0029】
もう一つの目的は、カニューレが患者の静脈から抽出され、カテーテル装置の管状本体の安全位置についた後に、カニューレの先端がどんなことがあっても操作者に接触しない、かつ、この抽出の後にこの先端を意図的に接触可能にできない、上述の種類の安全装置を提供することにある。
【0030】
もう一つの目的は、その保護特性が長期にわたって失われず、この特性が、当該装置自体の製造後にも長期にわたって不変で維持される、上述の種類の安全装置を提供することにある。
【0031】
さらなる目的は、限られた数の部品を有し、製造及び組み立てが単純で、高水準の使用信頼性及び低減されたコストを得ることが可能な、安全装置を提供することにある。
【0032】
これらの目的、及び当業者であれば明らかとなる他の目的は、請求項1に記載の医療装置によって実現される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明をより良く理解するために、非限定的な例として、以下の図面を添付する。
【
図1】
図1は、微小灌流針の形態に製造された、本発明に係る安全装置を示す側面図である。
【
図3】
図3A及び
図3Bは、カニューレを患者の身体から取り出す様々な段階における、本発明に係る安全装置の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明に従って得られたカテーテル針の、一側面から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5に似た断面図であるが、使用後のカテーテル針の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
これらの図面を参照すると、本発明に係る医療装置は、全体として符号1として示されており、管状本体2を含み、管状本体2は、(管状本体2から分離可能又は該管状本体と一体に形成可能な)フィン3と協働し、該管状本体から、カニューレ4が(該管状本体の第1の端部、すなわち遠位端2Aに存在する孔又は開口部28から)延びている。当該装置が使用中でない時には、カニューレは、取り外し可能な保護要素(図示しない)によって覆われている。後述のように、カニューレ4は、使用後に、管状本体2の中に格納可能である。
【0035】
カニューレ4は、(カニューレを引っ込める時に管状本体2の中に移動可能である)カニューレホルダ8の第1の部分、すなわち(遠位)端部7の内側に、公知の方法で固定されており、第2の部分、すなわち(近位)端部9には、従来型の管10が一体化されている。この管10は、体液が公知の適切な装備品から及び装備品に移送されることを可能にする。カニューレホルダ8は、剛性又はほぼ剛性の材料からなり(つまり、構成材であるプラスチック材料に関連付けられた剛性、又は、脆弱性を有さない特定の幾何学的形状による独自の剛性を有している)、その長手方向軸線に沿って(有意に)屈折しない。したがって、このカニューレホルダは、国際公開第2019/053568号公報に記載の、安全装置の作動中に解放部によって印加される力の作用下で変形可能であるカニューレホルダのように、曲がりやすい部分を有していない。
【0036】
管状本体2は、単一の部品であってもよく、又は、図示されるように複数の部品を組み合わせたものによって形成されてもいてもよい。すなわち、この管状本体2は、閉鎖された第2の端部、すなわち近位端2Bを含む。微小灌流針の場合、第2の端部2Bには、管10が管状本体2から出ていくための貫通孔11が設けられているが、貫通孔11は、カニューレホルダ8がこの管状本体から脱出しないようにすることも可能である。
【0037】
医療装置がカテーテル針の場合は、この管10を設ける必要はない。
【0038】
カニューレが管状本体2の中に格納される際に、カニューレホルダ8がこの第2の端部2Bから脱出しないようにすることが可能な他の構成を設けてもよいことは明らかであろう。この例としては、第2の端部2Bを適切に狭めた構成、又は、恒常的に変形させた構成が挙げられ、これらは、医療装置1の組み立て中に、及び、カニューレホルダ8を管状本体2の中に挿入した後に得られる。
【0039】
図示される実施形態では、管状本体2は、2つの部品又は筐体20及び21、すなわち、(孔28を備える)第1の遠位筐体20及び第2の筐体21(又は管10が延びる近位筐体)から形成される。この管状本体2上、特に第1の筐体20上には、スライダ24が存在する。スライダ24は、この管状本体2の内部空洞、すなわちチャンバ25において、カニューレ4が管状本体2の中(図示の場合では、第1の筐体20の中)に戻る運動を作動させることが可能である。この運動は、第1の筐体20の第1の端部2Aとカニューレホルダ8の第1の端部7に設けられたカラー29との間に配置された圧縮バネ26によって生成される。
【0040】
図示の場合では、内部空洞、すなわちチャンバ25は、両筐体20及び21によって構成される。
【0041】
第1の筐体20は、剛性材料(例えばポリプロピレン、又はこの目的に適したMABSといった他の材料)から成り、透明であってもよい。好ましくは、この第1の筐体20は、第1の端部2Aの近傍に、望ましくは断面が一定ではない内部ガイド(図示しない)を有している。このガイドにより、特に初期運動段階において、カニューレホルダ8がチャンバ25内にガイドされて格納されることが可能となる。空洞、すなわちチャンバ25内に存在する他のガイド(図示しない)は、カニューレホルダ8が管状本体2の中に移動すること又は引き出されることを支援し、その回転を阻害する。
【0042】
第1の筐体、すなわち遠位筐体20は、傾斜面によって構成される側面32を備える窓31も有している。この(カニューレホルダを阻止するためのユニットとして機能する)側面又は傾斜面32は、空洞、すなわちチャンバ25内に突出し、カニューレホルダ8の阻止歯35に干渉する。これについては後で説明する。
【0043】
さらに、第1の筐体20は、円筒形の前部凸部30を有しており、前部凸部30は、孔28の境界を構成し、カニューレ4を保護する要素を収容可能であると同時に、カニューレを管状本体2(又は安全機構)の中に回収するための機構が作動された後に、カニューレの切口先端4Kを確実に覆って、結果的にカニューレをこの管状本体2の中に戻すことが可能である。上述の回収機構は、バネ26、スライダ24、側面又は傾斜面32、及び、カニューレホルダ8自体を含む。
【0044】
この前部凸部30の近傍において、チャンバ、すなわち空洞25内には、このバネの第1の端部38が支持される段差部37が存在し、このバネの第2の端部39は、カニューレホルダ8のカラー29上に支持されている。
【0045】
チャンバ、すなわち空洞25の内部において、第2の筐体21(、すなわち近位筐体)は、突出部又はフィン40を含むことが可能である。突出部又はフィン40は、弾性的に変形可能であり、カニューレホルダ8が、バネ26によって押されると管状本体2の第2の端部2Bに向かって移動することを可能にする。以下で説明するように、このフィン40は、カニューレホルダ8に設けられた環状凹部42の段差部41と協働することが可能であり、環状凹部42は、部分7及び9をカニューレホルダから分離させる。
【0046】
筐体20及び21は、公知の方法、例えば嵌め込みによって互いに結合されている。この結合部は、こうする代わりに、溶接(例えば熱又は超音波溶接)によって、又は、接着や他の公知のシステムによって、形成可能又は補強可能である。
【0047】
既述のように、作動スライダ24は、カニューレ4を管状本体2(つまり、この例では、第1の筐体20)の中に「回収する機構」の一部品である。この機構は、バネ26及び(剛性又はほぼ剛性の)カニューレホルダ8を含む。バネ26及びカニューレホルダ8は、管状本体2(又は第1の筐体20)の第1の端部2Aに向かって変位された位置、又は、この管状本体(又は第2の筐体21)の第2の端部2Bに向かって変位された位置を選択可能である。後者の位置では、カニューレ4は、該管状本体の内部に位置し、偶発的な接触に対して保護される。
【0048】
この作動スライダ24は、半円筒体(又はほぼ半円筒体)46を含む。半円筒体46は、第1の筐体20に沿って配置及びスライド可能である。この半円筒体46は、その外側に、医療装置1を使用する操作者の指を収容可能な突出した形状の凸部50を有している。
【0049】
内側には、カニューレホルダ8の部分88の上をスライドする突起部53が、管状本体2の長手方向軸線Kに平行に設けられている。以下において、この部分88は「非作用」であると規定する。なぜなら、突起部53がその上をスライドしても、管状本体2内のカニューレホルダ8本体にいかなる実質的な運動も生じさせないからである。
【0050】
突起部53は、カニューレホルダ8の阻止歯35と協働することが可能な壁又は側面54を備えている。スライダ24のこの形状は、(突起部53を上述の非作用の部分88上をスライドさせることによって)スライダ24自体がカニューレホルダ8上で初期相対滑動を行うことを可能にし、結果的に、カニューレホルダ8が直ちに筐体20内に移動することはない。
【0051】
阻止歯35については、スライダ24の壁54がスライド可能な傾斜壁56を有していることにも留意されたい。スライダ24の壁54は、カニューレホルダ8の部分88上を移動し、その終端で傾斜壁56をスライド可能である。この壁56及び壁54間の協働は、スライダの筐体20に対する軸線方向の変位力を垂直成分に変換し、この阻止歯35を第1の筐体20の傾斜側面32から分離させる(傾斜側面32は、管状本体2用の停止部として機能し、カニューレホルダ8の運動を、必要となるまで、つまり突起部53が非作用部分88に移動するまで、阻害可能である)。
【0052】
カニューレホルダは、剛性又はほぼ剛性であり、国際公開第2019/053568号公報に記載されるカニューレホルダのように可撓性を有していないので、操作者によってスライダ24上に生成される軸線方向の力は、完全にカニューレホルダに転移され、カニューレホルダは、ほぼ即座に空洞、すなわちチャンバ25の中に変位し、その中において、該空洞25の、スライダ24が存在する側とは反対側に向かって実質的に回転する。
【0053】
カニューレホルダ8が空洞、すなわちチャンバ25の中に即座に変位することは、可撓性カニューレホルダの場合には生じない。実際、国際公開第2019/053568号公報に記載の可撓性カニューレホルダの場合には、作動エネルギーの一部が、この部品を変形させて必要とされる変位を実現するために消費される。他方、本発明に係る剛性のカニューレホルダの場合、この変位は変形無しに直接得られるので、同じ形状、材料、及び、質量の場合、エネルギーの消費は少ない。
【0054】
結果的に、カニューレホルダが剛性を有するために、本発明は、スライダのカニューレホルダ上の運動をより直接的に制御することが可能になり、最終的にカニューレが管状本体2の中に戻る運動が解放される。
【0055】
上述のように(及び、国際公開第2014/201709号公報の記載内容とは異なり)、阻止歯35を解放する前に、スライダ24は、荷重無しに(つまり、阻止歯35と相互作用して阻止歯35を傾斜側面32から変位させることを行わずに)短距離を移動する必要があり、このことは、これらの傾斜面、使用される(剛性又はほぼ剛性の)材料、及び、得られる摩擦と協働して、偶発的な作動のリスクを低減することに寄与し(なぜなら、スライダへの偶発的な接触が回収機構の作動を引き起こすことが困難であるため)、同時に容易かつ単純な作動を維持する。
【0056】
また、本発明によれば、カニューレ4又はより正確に言えばその長手方向軸線Wは、管状本体2の長手方向軸線Kと共に、-20乃至+20°の間の角度αを形成する。ここで負の値は、軸Wに対して反時計周りの方向において測定された角度の値、又はより正確に言えば、(実質的に
図3A及び
図3Bに示されるように)カニューレをこの軸Kよりも上方に回転させた位置に配置する際に軸Wが軸Kと共に形成する角度であると考えられる。
図1のカニューレが配置されている位置は、正の角度αを形成している。
【0057】
この角度は、上述の範囲内の任意の値を取ることができる。
【0058】
これによって、カニューレホルダ8が、管状本体2のチャンバ、すなわち空洞25の中に移動することが容易になる。
【0059】
好ましくは、角度αは、+10°乃至-10°の間、さらに好ましくは-3°乃至+3°の間の角度である。これは、安全装置の作動中に、患者がカニューレの垂直方向への運動を知覚する可能性を低減するためである。
【0060】
ここで、図示される安全装置が使用中であると想定する。
【0061】
本発明の使用は、以下の通りである。すなわち、微小灌流針の使用を例として参照すると、医療装置1を、公知の方法で、すなわち金属のカニューレ4を静脈(又は進行中の医療処置に応じた別の好適な部位)の中に挿入することや、流体を患者に投与及び/又は患者から採取することによって使用した後に、折りたたんだガーゼ(又はその同等物)をカニューレ4の近傍の注入部位に配置し、カニューレ自体を引っ込めた後に体液が出てくることを回避する。この回収機構は、スライダ24を管状本体2上に軸方向に変位させること、つまり、管状本体2の長手方向軸線Kに平行に直線状に動かすことによって作動される。これによって、スライダ24の突起部53がカニューレホルダ8の傾斜壁56に向かう初期変位が引き起こされる。しかしながら、この変位は、カニューレホルダ8自体の阻止歯35に対するいかなる推力も生じさせない。したがって、この阻止歯は、当該装置の管状本体2の第1の筐体20の傾斜側面32上をスライドしない。
【0062】
この変位を続けると、突起部53が、阻止歯35の壁56の上をスライドし、この阻止歯をチャンバ25の内側に向かって押し始める。
【0063】
突起部53が阻止歯35上で動いている間、剛性のカニューレホルダ8は、医療装置1のチャンバ25の内側に移動し、その近位部9は、このチャンバの窓31の反対側70に向かって降下する。これに対応して、このカニューレホルダ8の第1の部分又は遠位部7が上昇し(
図3Aの矢印F)、その結果、(まだ管状本体2の外側にある)カニューレ4が軸Kに対して変位する。実質的に、カニューレの軸線Wは、軸線Kに対して矢印Fの方向に回転し、回転が終わった際にも依然としてこの軸線から距離を置いた状態で軸線と共に角度βを形成する。
【0064】
阻止歯35が傾斜側面32の下方に変位すると、バネ26は、カニューレホルダ8を管状本体2の第2の端部2Bに向かって自由に推進して、カニューレ4がこの管状本体2の中(つまり管状本体の内部空洞25の中)に完全に戻ってくるようにすることが可能である。この位置において、カニューレは、軸線Wが軸線Kに対して角度を有する位置にある状態で、回動し、又は、回動可能であり、したがって、その遠位端又は先端4Kは、管状本体2の開口部28から出てくることができない位置に配置される。
【0065】
したがって、微小灌流針のカニューレは、管状本体2の内側で安全に保持されるので、医療装置1に所要の安全性を提供することが可能になる。
【0066】
この(カニューレホルダ8が管状本体2の第2の端部2Bに向かって完全に変位した)位置では、突出部分又はフィン40は、カニューレホルダ8の凹部42内に配置される。これによって、カニューレホルダ8が管状本体2の開口部28に向かうあらゆる運動(意図的な運動又は偶発的な運動に関わらず)も、フィン40がこの凹部42の段差部41で停止することによって妨害及び回避される。
【0067】
この凹部を、例えばカニューレホルダ8上で突出するカラーといった凸部や、この目的に適した他の任意の構成に置き換えることも可能であることは明らかであろう。いずれの場合も、上述のフィン40は、上述のカニューレホルダ上へのバネの作用によりカニューレ4が管状本体2内に回収される時に、カニューレホルダ8が管状本体2の端部2Bに向かう運動を可能にする。
【0068】
カテーテル針や他の類似の医療装置(図示しない)の場合には、カニューレの運動は、記載した方法と同じ方法によって行われる。このカテーテル針は、
図4乃至
図6に示されており、符号100を付して示されている。これらの図では、図中の既に説明した部品に対応する部品は、同一の参照番号によって示されている。このカテーテル針100は、管状本体2から分離可能な、カテーテル102に取り付けられたカテーテルホルダ101を備え、使用後にカニューレ4及び(バネ26の作用を受ける)対応するカニューレホルダ8を収容可能である。
【0069】
カニューレを管状本体2の中に戻すためのカテーテル針の使用は、既に記載した使用に類似している。カニューレが管状本体2の中に戻ってくると、バネ26は、カニューレホルダ8に作用することによって、カニューレをその管状本体内で保持する。通常、このカテーテル針は、カニューレホルダ8の近位端9に、血液逆流チャンバ130を備える。この逆流チャンバは、カニューレホルダの遠位端7に設けられた座部81の軸線に一致しない軸線を有することが可能であり、カニューレ4と協働することが可能である。
【0070】
安全微小灌流針若しくはカテーテル針、又は、記載した医療装置に類似の他の医療装置は、比較的単純に実施できる。実際、カニューレが(軸線Kに対して)傾斜した長手方向軸線Wを有する構成を、様々な手段によって得ることが可能である。例えば、カニューレ4の(先端4Kの反対側の)近位端4Fのために、カニューレホルダの遠位部7に設けられる座部81を、管状本体2の長手方向軸線Kの上に重ねられるカニューレホルダ8の長手方向軸線に対して(軸線Kに対する軸線Wの同じ角度で)傾斜した状態で形成することが可能である。あるいは、カニューレホルダ8を、これを収容した管状本体2の空洞25内に、長手方向軸線を傾斜させて(軸線Wの上に重ねて)配置する。すなわち、これは、スライダ24の突起部53と、該突起部が阻止歯35上をスライドする前に協働するカニューレホルダ8の表面56とを適切に構成することによって得ることが可能である。
【0071】
あるいは、(微小灌流針の場合、管10を収容可能である)カニューレホルダ8の近位部9において、カニューレホルダ8全体を軸線Wに沿って傾斜させるように、座部90を形成することが可能であり、すなわち、この座部90の軸線と上述のカニューレ用の座部81の軸線とは一致している必要はない。
【0072】
本発明により、単純、かつ、使用が容易で信頼性を有する、安全な医療装置が得られる。
【0073】
本発明の様々な実施形態について説明したが、当業者が上述の説明を考慮すれば他の実施形態も可能である。したがって、本明細書は、本発明を限定するものではなく、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。