(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】ブレード閉鎖プロセス中に適切なペースト流を確実にするための接着剤障壁の設計
(51)【国際特許分類】
F03D 1/06 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
F03D1/06 A
(21)【出願番号】P 2021547063
(86)(22)【出願日】2019-10-22
(86)【国際出願番号】 US2019057463
(87)【国際公開番号】W WO2020086600
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-20
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520005303
【氏名又は名称】ティーピーアイ コンポジッツ,インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サリミ,アミール
(72)【発明者】
【氏名】レイン,クリストファー
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/220596(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/220665(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0073237(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0024457(US,A1)
【文献】特開2017-129091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の外周と前記第1の外周に沿って延びる第1の界面とを画定する第1のシェルを備える第1のタービンブレードハーフと、
第2の外周と前記第2の外周に沿って延びる第2の界面とを画定する第2のシェルと、前記外周から延びるボンドキャップとを備え、前記第1の界面が前記第2の界面に位置合わせされると前記第1のシェルと前記ボンドキャップとの間に第1のギャップが形成される第2のタービンブレードハーフと、
前記第1のシェルに対応する第1の金型表面を備える第1の金型ハーフと、
前記第2のシェルに対応する第1の金型表面を備える第2の金型ハーフであって、前記第1の金型
ハーフが前記第2の金型
ハーフに位置合わせされると前記第1の金型
ハーフと前記第2の金型
ハーフとの間に第2のギャップが形成されて前記第1のギャップが前記第2のギャップに流体連通する第2の金型ハーフと、
前記第1のギャップ内に配設された第1の障壁と、
前記第2のギャップ内に配設され、前記第1のギャップ及び前記第2のギャップによって画定されたボリュームを流体封止する第2の障壁と、を備
え、
前記第2の障壁上には、選択的に開放又は閉鎖するように動作可能なベントが設けられており、
前記ベントは、前記第1の金型ハーフ又は前記第2の金型ハーフのうちの一方の少なくとも一部と、前記第2の障壁の少なくとも一部とによって形成され、
前記第1の金型ハーフ及び前記第2の金型ハーフの閉鎖時に、ペーストが前記ベントから出る、
組立体。
【請求項2】
前記第1の界面及び/又は前記第2の界面上に配設された
前記ペーストを更に備える、請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
前記第1のギャップの幅は、約2mm~15mmである、請求項1に記載の組立体。
【請求項4】
前記第2のギャップの幅は、約2mm~15mmである、請求項1に記載の組立体。
【請求項5】
前記ベントは、前記第2の障壁上の複数のベントのうちの一つである、請求項
1に記載の組立体。
【請求項6】
前記複数のベントは、互いに所定の距離に配置される、請求項
5に記載の組立体。
【請求項7】
複数の
前記第1及び前記第2の障壁が、前記ブレードの前縁及び後縁に沿って均一に離間される、請求項1に記載の組立体。
【請求項8】
前記第1の障壁は、前記第1のタービンブレードハーフ及び前記第2のタービンブレードハーフのうちの少なくとも一方に恒久的に取り付けられる、請求項1に記載の組立体。
【請求項9】
前記第2の障壁は、前記第1の金型ハーフ及び前記第2の金型ハーフのうちの少なくとも一方に取り外し可能に取り付けられる、請求項1に記載の組立体。
【請求項10】
風力タービンブレードを形成する方法であって、
第1の外周と前記第1の外周に沿って延びる第1の界面とを画定する第1のシェルを備える第1のタービンブレードハーフを準備することと、
第2の外周と前記第2の外周に沿って延びる第2の界面とを画定する第2のシェルと、前記外周から延びるボンドキャップとを備え、前記第1の界面が前記第2の界面に位置合わせされると前記第1のシェルと前記ボンドキャップとの間に第1のギャップが形成される第2のタービンブレードハーフを準備することと、
前記第1のシェルに対応する第1の金型表面を備え、内部に前記第1のタービンブレードハーフが配設される第1の金型ハーフを準備することと、
前記第2のシェルに対応する第1の金型表面を備え、内部に前記第2のタービンブレードハーフが配設される第2の金型ハーフを準備することであって、前記第1の金型
ハーフが前記第2の金型
ハーフに位置合わせされると前記第1の金型
ハーフと前記第2の金型
ハーフとの間に第2のギャップが形成されて前記第1のギャップが前記第2のギャップに流体連通する、第2の金型ハーフを準備することと、
前記第1の界面及び/又は前記第2の界面にペーストを塗布することと、
前記ボンドキャップ上に第1の障壁を位置決めし、前記第2の金型
ハーフ上に第2の障壁を位置決めすることと、
前記第1の外周及び前記第2の外周を接触させることと、
前記第1の金型
ハーフを前記第2の金型
ハーフに接触させることと、を含み、
前記第1の金型
ハーフを前記第2の金型
ハーフに接触させることは、前記第1のギャップ及び前記第2のギャップによって画定されたボリュームを流体封止し、
前記第2の障壁上には、選択的に開放又は閉鎖するように動作可能なベントが設けられており、
前記ベントは、前記第1の金型ハーフ又は前記第2の金型ハーフのうちの一方の少なくとも一部と、前記第2の障壁の少なくとも一部とによって形成され、
前記第1の金型ハーフ及び前記第2の金型ハーフの閉鎖時に、前記ペーストが前記ベントから出る、
方法。
【請求項11】
前記第2の障壁上の前記ベントは、円筒形状である、請求項1に記載の組立体。
【請求項12】
前記第2の障壁上の前記ベントは、非対称形状である、請求項1に記載の組立体。
【請求項13】
前記第2の障壁上の前記ベントは、塗布された前記ペーストにボイドがないことを視覚的に確認するための検査窓を含む、請求項1に記載の組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月22日出願の米国仮出願第62/748,835号の米国特許法第119条(e)に基づく優先権の利益を主張するものであり、その全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、風力タービンブレードの製造中のペースト流を改善するデバイス、システム及び方法に関する。特に、本開示のデバイス、システム及び方法は、ブレード閉鎖プロセス中に、適切なペースト流を確実にし、ペースト内のボイドの形成を阻止することに関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
開示される主題の目的及び利点は、以下の説明に記載されるとともにそこから明らかとなるものであり、また開示される主題の実践からも学習される。開示される主題の更なる利点は、明細書及びその請求項において、また添付図面からも特に指摘される方法及びシステムによって、実現及び達成される。
【0004】
具体化され、幅広く説明されるように、これら及び他の利点を実現するため、及び開示される主題の目的に従って、開示される主題は、第1の外周と第1の外周に沿って延びる第1の界面とを画定する第1のシェルを備える第1のタービンブレードハーフと、第2の外周と第2の外周に沿って延びる第2の界面とを画定する第2のシェルと、外周から延びるボンドキャップとを備え、第1の界面が第2の界面に位置合わせされると第1のシェルとボンドキャップとの間に第1のギャップが形成される第2のタービンブレードハーフと、第1のシェルに対応する第1の金型表面を備える第1の金型ハーフと、第2のシェルに対応する第1の金型表面を備える第2の金型ハーフであって、第1の金型が第2の金型に位置合わせされると第1の金型と第2の金型との間に第2のギャップが形成されて第1のギャップが第2のギャップに流体連通する第2の金型ハーフと、第1のギャップ内に配設された第1の障壁と、第2のギャップ内に配設され、第1のギャップ及び第2のギャップによって画定されたボリュームを流体封止する第2の障壁と、を備える組立体を含む。いくつかの実施形態では、ベーストが、第1の界面及び/又は第2の界面上に配設される。いくつかの実施形態では、第1のギャップの幅は、約2mm~15mmである。いくつかの実施形態では、第2のギャップの幅は、約2mm~15mmである。いくつかの実施形態では、第2の障壁上にベントが含まれる。いくつかの実施形態では、ベントは、第2の障壁上の複数のベントのうちの一つである。いくつかの実施形態では、複数のベントは、互いに所定の距離に配置される。いくつかの実施形態では、複数の障壁が、ブレードの前縁及び後縁に沿って均一に離間される。いくつかの実施形態では、第1の障壁は、第1のタービンブレードハーフ及び第2のタービンブレードハーフのうちの少なくとも一方に恒久的に取り付けられる。いくつかの実施形態では、第2の障壁は、第1の金型ハーフ及び第2の金型ハーフのうちの少なくとも一方に取り外し可能に取り付けられる。本開示の別の態様によれば、風力タービンブレードを形成する方法であって、第1の外周と第1の外周に沿って延びる第1の界面とを画定する第1のシェルを備える第1のタービンブレードハーフを準備することと、第2の外周と第2の外周に沿って延びる第2の界面とを画定する第2のシェルと、外周から延びるボンドキャップとを備え、第1の界面が第2の界面に位置合わせされると第1のシェルとボンドキャップとの間に第1のギャップが形成される第2のタービンブレードハーフを準備することと、第1のシェルに対応する第1の金型表面を備え、内部に第1のタービンブレードハーフが配設される第1の金型ハーフを準備することと、第2のシェルに対応する第1の金型表面を備え、内部に第2のタービンブレードハーフが配設される第2の金型ハーフを準備することであって、第1の金型が第2の金型に位置合わせされると第1の金型と第2の金型との間に第2のギャップが形成されて第1のギャップが第2のギャップに流体連通する、第2の金型ハーフを準備することと、第1の界面及び/又は第2の界面にペーストを塗布することと、ボンドキャップ上に第1の障壁を位置決めし、第2の金型上に第2の障壁を位置決めすることと、第1の外周及び第2の外周を接触させることと、第1の金型を第2の金型に接触させることと、を含み、第1の金型を第2の金型に接触させることは、第1のギャップ及び第2のギャップによって画定されたボリュームを流体封止する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1A】本開示の実施形態による、例示的な風力タービンブレードを示す図。
【
図1B】本開示の実施形態による、
図1Aの風力タービンブレードの断面図。
【
図2A】本開示の実施形態による、ブレード閉鎖中の例示的な風力タービンブレードの断面図。
【
図2B】本開示の実施形態による、ブレード閉鎖中の
図2Aの風力タービンブレードの前縁の断面図。
【
図2C】本開示の実施形態による、ブレード閉鎖中の
図2Aの風力タービンブレードの前縁の断面図。
【
図3】本開示の実施形態による、ブレード閉鎖中の例示的な風力タービンブレードの前縁の断面図の拡大部分を示す図。
【
図4】本開示の実施形態による、ブレード閉鎖中の例示的な風力タービンブレードの上面図。
【
図4A】本開示の実施形態による、外部障壁及びベント設計の断面図。
【
図5】本開示の実施形態による、風力タービンブレード根元部の取り付け方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
繊維強化プラスチックが高い強度重量比を有するため、現代の風力タービンロータブレードは、繊維強化プラスチックから構築される。ロータブレードは、通常、丸められた前縁及び鋭い後縁を有する翼形状を含み、ブレードは、タービンのハブに接続するブレード根元部を含む。複数のロータブレードがそれぞれのブレード根元部においてハブに接続され、風力タービンを生成する。ブレード根元部は、ブレードの強化をもたらす繊維強化ポリマー内にセットされた複数の根元部ブッシングを備える。根元部ブッシングにおいてボルトがねじと係合し、ブレード根元部をハブに接続する。
【0007】
通常のタービンブレードは、一対の金型内で二つのハーフシェルを成形することによって作製される。(航空機翼におけるスパーと類似した)スパーキャップ、ウェブ補剛材(リブ)、及び他の細部が任意選択でブレードハーフのうちの一方に設置されてもよい。第1のシェルの結合外周/縁部に接着剤が例えば等しく離間されたビーズとして塗布される。次に、第2のハーフシェルが依然としてその金型工具内にある状態で裏返され、第1のハーフシェル上に降下される。金型は、共に押圧され、接着剤が二つのブレードハーフを共に接合して硬化することを可能にする。二つのブレードハーフがペーストにより共に接合されるこのプロセスは、ブレード閉鎖と呼ばれる。
【0008】
二つのブレードハーフが接合される際に沿う継ぎ目は、完全なタービンブレードの構造的完全性にとって重要な接合部である。ブレード閉鎖中、ペースト(通例、ブレードハーフの外周に沿って離間されたビーズの形態で塗布される)は、製造欠陥を回避するために、二つのブレードハーフ間で全てのボイド空間を充填しなくてはならない。しかしながら、二つのブレードハーフが共に押圧されるとき、ペーストが概ね粘性の液体であることに起因して、ペーストが二つのブレードハーフ間の空間全体を充填せず、これにより、構造的完全性を損なう場合があり、結合継ぎ目におけるエアボイドを形成する場合がある。エアボイドが存在していないことを確実にするための品質管理として、超音波試験が実施される場合があり、エアボイドが存在すると判断される場合、ボイドを埋めるために、追加のペーストをボイド空間に注入することができる。しかしながら、結合継ぎ目全体をスクリーニングするこのプロセスは、コストが高く(技術者の時間及び高価な試験機器の双方を必要とする)、非常に時間がかかる。したがって、ブレード閉鎖中のペースト流を改善し、ペースト内のエアボイドの形成を阻止するシステムが必要とされている。
【0009】
様々な実施形態において、金型及び/又は障壁は、当該技術分野において知られている任意の適切な金属から作製することができる。様々な実施形態において、金型及び/又は障壁は、例えば、アルミニウム、鋼、ステンレス鋼、チタン、タンタル、タングステン等の金属、又は金属の任意の適切な組合せ(例えば、金属合金)を含むことができる。様々な実施形態において、金型及び/又は障壁は、ポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等を含むことができる。様々な実施形態において、金型及び/又は障壁は、機械加工(例えば、CNC機械加工)、3D印刷(例えば、直接金属レーザー焼結法(DMLS)及び熱溶解積層法(FDM)を用いる)、開放型成形、閉鎖型成形、樹脂注入、圧縮成形、複合ハンドレイアップ、射出成形、引き抜き成形、自動繊維配置、管圧延、自動テープ敷設、フィラメントワインディング、樹脂トランスファー成形、又は当該技術分野において既知の任意の適切な製造技法によって作製することができる。当業者であれば、任意の適切な3D印刷技法を用いて本明細書に記載の構成要素を製造することができることを認識するであろう。
【0010】
図1Aは、本開示の実施形態による例示的な風力タービンブレード102を示す。風力タービンブレード102は、前縁104及び後縁106を有するシェルを含む。任意の適切な数のブレード102(例えば、三つ)をブレードの根元部108において風力タービンのハブに接続することができ、それによって、風がブレード102の上を通過すると、ブレード102はハブを回転させ、それによって電力を生成する。
【0011】
図1Bは、本開示の実施形態による、
図1Aの風力タービンブレード102の断面図を示す。風力タービンブレード102の断面は、全体的に翼として成形され、上述したように前縁104及び後縁106を含む。
【0012】
図2Aは、本開示の実施形態によるブレード閉鎖中の例示的な風力タービンブレード202の断面図を示す。風力タービンブレード202は、全体的に、前縁204及び後縁206を有する翼として成形され、ポリマー強化複合体から製造される。ブレード202の製造中、ブレード202は、二つのハーフ(第1のハーフ202a及び第2のハーフ202b)として製造し、その後、例えば界面部に塗布された接着剤ペーストによって互いに固定される。第1のブレードハーフ202aを第2のブレードハーフ202bに貼るために、一方又は双方のブレードハーフ202a、202bの外周にペーストが塗布される。いくつかの実施形態では、接着剤は、ブレードスパンに沿って選択された位置に塗布され、いくつかの実施形態では、接着剤は、ブレードスパン全体に沿って連続して塗布される。各ブレードハーフ202a、202bは、それぞれの金型ハーフ210a、210bの内部に位置決めされ、金型ハーフ210a、210b及びブレードハーフ202a、202bがまとめられる。
【0013】
図2Aに示すように、本開示は、せん断ウェブ250及び対応するスパーキャップ260を有するものを含む、多岐にわたるブレード設計に適用可能である。上側及び下側の金型スキンは、例えば、中点からブレードの後縁まで増大する厚みを有するコア材料も含むことができる。
【0014】
図2Bは、本開示の実施形態による、ブレード閉鎖中の
図2Aの風力タービンブレード202の前縁204の断面図を示す。窓Aは、風力タービンブレード202の前縁204の拡大部分を示す。
図2Bに示すように、ブレードハーフ202aは、外側シェル203aと、コア203bと、内側シェル203cとを含む。内側及び外側シェル203a、203cは、ガラス繊維強化エポキシ樹脂等の繊維強化ポリマーから作製される。例えば、炭素繊維(単方向及び/又は二方向)、ケブラー、ガラス繊維(単方向及び/又は二方向)等の他の適切な繊維強化を他の繊維と共に又は独立して組み込むことができる。更に、内側及び外側シェル203a、203cは、部品の所望の厚み及び特性のための任意の適切な数の繊維強化層を含むことができる。コア203bは、例えば、ポリマー発泡体(例えば、ポリウレタン、ディビニルセル、ポリイソシアヌレート等)、サンドイッチコア(例えば、ノーメックスハニカム、アルミハニカム、バルサ等)、及び/又はポリマーハニカム材料等の任意の適切な材料から作製される。
【0015】
第1のブレードハーフ202aと類似して、第2のブレードハーフ202bは、外側シェル205aと、コア205bと、内側シェル205cとを含む。内側及び外側シェル205a、205cは、同様に、繊維強化ポリマーから作製され、コア205bは、同様に、例えばポリマー発泡体等の適切なコア材料から作製される。第2のブレードハーフ202bは、第1のブレードハーフ202a及び第2のブレードハーフ202bが合わせられると(ペースト212が外周に塗布された後)、ボンドキャップ207と第1のブレードハーフ202aとの間にギャップ209aが形成されるように、ブレードハーフ202bの外周/縁部から延びるボンドキャップ207を更に含む。ボンドキャップの長さは、特定のブレードタイプ(サイズ、材料等)に依拠し、いくつかの実施形態では、ボンドキャップ207は、前縁の長さの全てでないにしても大部分に沿って位置決めされるのに対し、後縁側では、ボンドキャップは、根元部から、概ねブレードスパンの20メートルマークまで延びることができる。更に、第1の金型ハーフ210a及び第2の金型ハーフ210bが合わせられるとき、二つの金型ハーフ210a、210b間にギャップ209bが形成され、二つの金型ハーフ210a、210bを合わせて押圧する圧力が加えられる際、その中にペースト212が流れることができる。
【0016】
図2Cは、本開示の実施形態による、ブレード閉鎖中の
図2Aの風力タービンブレードの前縁の断面図を示す。金型ハーフ210a、210bが、ブレード閉鎖中に合わせられる際、ペースト212は、ボンドキャップ207と第1のブレードハーフ202aとの間、及び二つの金型ハーフ210a、210b間でギャップ209a内に自由に流れる。しかしながら、様々なシナリオにおいて、内部エアボイド214b及び/又は外部エアボイドがペースト212内に形成され、ペーストが硬化する際にペースト内に留まる場合がある。エアボイドの多くの原因が存在するが、一つの一般的な原因は、二つのブレードハーフ202a、202b間の不完全なペースト流である。そのようなエアボイド214bの存在により、ブレードの構造的完全性が脅かされ、ブレード性能に悪影響を与える可能性がある。図示するように、これらのエアボイドは、ブレードの内部214a及び外部214bに塗布されるペーストの部分の双方に存在する可能性がある。
【0017】
図3は、本開示の実施形態による、ブレード閉鎖中の例示的な風力タービンブレードの前縁の断面図の拡大部分300を示す。上記の
図2A~
図2Cと同様に、風力タービンブレードは、第1の金型ハーフ310aの内側の第1のブレードハーフ302aと、第2の金型ハーフ310bの内側の第2のブレードハーフ302bとを含む。第2のブレードハーフ302bは、第1のブレードハーフ302a及び第2のブレードハーフが互いに位置合わせされるとき、これらの間にギャップ309aが形成されるように、第2のブレードハーフ302bの外周から延びるボンドキャップ307を含む。更に、第1の金型ハーフ310a及び第2の金型ハーフ310bが位置合わせされるとき、ギャップ309aと流体連通するギャップ309bがそれらの間に形成される。例示的な実施形態において、ギャップ309bは、概ね2mm~15mmのサイズにすることができる。
【0018】
図3において、第1の障壁316aが、ボンドキャップ307及び第1のブレードハーフ309によって画定されたギャップ309aに挿入され、第2の障壁316bが、第1の金型ハーフ310a及び第2の金型ハーフ310bによって画定されたギャップ309bに挿入される。第1の障壁316aがブレード内部に位置決めされるのに対し、第2の障壁316bはブレードの外部に配置される。第1の障壁316a及び第2の障壁316bは、ペーストをギャップ309a、309b内に流体封止し、ギャップ309a、309bからのペーストの任意の漏れを防ぐ。これらの障壁316a、316bを設けることは、ペーストが二つのブレードハーフ302a、302bの外周の周りの空間を充填するような、ペーストの制御された流れを可能にし、これによって、ペースト内のボイド(外部及び内部双方)の形成を防ぐ。換言すれば、ペーストは、内部/外部方向に流れることを制約され、代わりに、ブレードスパンに沿った方向に向かう。様々な実施形態において、第1の障壁316aは、第1のブレードハーフ302aのスキン表面に設置することができる。加えて又は代替的に、第1の障壁316aは、ボンドキャップ307上に設置することができる。様々な実施形態において、第2の障壁316bは、金型フランジ310a、310bのいずれかに設置することができる。加えて、第1の障壁316aは、ブレードの内部に恒久的に取り付ける(例えば、接着する)ことができるのに対し、外部障壁316bは、反復使用のために、金型表面310a又は310bに(固定具、例えばねじ等によって)取り外し可能に取り付けることができる。
【0019】
第1及び第2の障壁は、例えば、ポリエチレン発泡体等の任意の適切なプラスチック又は発泡体から作製することができる。
図3に示すように、第1の障壁316aは、障壁316aの正面の縁部がボンドキャップを超えて延び、重複領域を生成するように位置決めすることができる。この位置に障壁316aを位置決めすることは、
図2Bに示すように、ペーストがボンドキャップ307を超えて流れること、及び、球状体(bulbous)/ビーズに集積すること(これは、ブレード設計に好ましくない形で重量を加え、ブレード性能に悪影響を及ぼす可能性がある)を防ぐという点で有利である。
【0020】
図3に示すように、第2の外部障壁316bを、ブレードの前縁から距離「D」に設置することができる。図示するように障壁316bを位置決めすることは、これにより金型ハーフ210a、210b間の球状体/ビーズ212の形成がなくなるため、塗布されるペースト量を低減するという点で有利である。したがって、障壁316bは、可能な限り、前縁の近くに位置決めすることができる。したがって、本明細書に開示されるデバイス及び技法は、製造サイクル時間を改善し、浪費/コストを低減する。障壁316bは、上側金型ハーフ及び下側金型ハーフ310a、310b間の空間を充填するように延びることができる。結果として、いくつかの実施形態において、ブレードの内側に塗布されるペーストの量は、ブレードの外側に塗布されるペーストの量よりも多い。
【0021】
いくつかの実施形態では、障壁は、ブレードの外周全体の周りに延びることができる。いくつかの実施形態では、障壁は、ボンドキャップに沿って延びることができる。ブレードのいくつかの部分、例えば後縁において、ボンドキャップは存在しない。したがって、内部障壁316aは、ブレードの上側/負圧側、及びブレードの下側/正圧側の双方の内部表面と接触する。障壁の寸法及び形状は、それらが、接着剤がそれらの位置を超えて流れることを阻止するのに十分な質量/剛性を提示すると仮定して、変更することができる。
【0022】
図4は、本開示の実施形態による、ブレード閉鎖中の例示的な風力タービンブレード402を示す。上記で説明したように、風力タービンブレード402は、
図1~
図3に示すブレードに類似し、前縁404と、後縁406と、それぞれの金型ハーフ内に配設された二つのブレードハーフとを含むことができる。ブレード402の各ハーフは、互いに位置合わせされると、完全なブレードを形成する、実質的にブレード全体の周りに延びる外周を含む。上記で説明したように、ブレード402は、ボンドキャップと第1のブレードハーフとの間に配設された第1の障壁416aと、第2の障壁416bとを更に備えることができる。
図4において、第2の障壁416b(すなわち、二つの金型ハーフ間の外部障壁)は、ブレード402の長さに沿って配設された複数のベント418a、418bを含む。ベントは、所望に応じて、例えば、ペーストを根元部から先端に引き出し、接着を促進するために、操作者が各ベントを独立して操作して圧力を調整するようにすることができるように、選択的に開放/閉鎖するように動作可能とすることができる。ベント418a、418bは、任意の適切な形状(例えば、円形)を有することができる。いくつかの実施形態では、ベントは、ペーストがベントに移り、ベントを充填することを可能にし、そこに塗布された(すなわち、内部障壁からその特定のベントまでの)ペーストにいかなるエアポケット/ボイドもないことの視覚的確認を提供する検査フィーチャ(例えば、窓、開口部、壊れやすい膜)を含む。加えて又は代替的に、
図4Aに示すように、ベントは、障壁自体の開口とすることができる。
【0023】
ベント418a、418bは、第2の障壁内の任意の適切な位置に位置決めすることができ、それによって、閉鎖プロセス中にエア(及び/又はペースト)を放出することができる。複数のベント418a、418bの各々は、ブレード寸法に基づいて所望に応じて、均等に離間されてもよく又は不均等に離間されてもよい所定の距離でブレードの外周に沿って離間することができる。例えば、更なるベントをブレードのエリア内に配置することができ、これは二つのブレードハーフを共に付着させるために更なるペーストを必要とする。
図4の拡大図に示すように、ベント418は、障壁416のいずれかの側に位置決めすることができる。
【0024】
本開示の態様によれば、ベントを出るペーストの形状は、任意の内部エアボイドが二つのブレードハーフを押す間に充填されたか否かを明らかにすることができる。例えば、ベントを出るペーストが、
図4において418aに近接して示す均一な(例えば円筒)形状を有する場合、その塗布点からベントを出るまで進行する間にペーストが内部ボイドに遭遇していないと判断することができる。逆に、ベントを出るペーストが、
図4において418bに近接して示すように不均一な(例えば、非対称)形状を有する場合、その塗布点からベントを出るまで進行する間にペーストが内部ボイドに遭遇したと判断することができる。
【0025】
図5は、本開示の実施形態による、風力タービンブレード製造中のペースト流を改善する方法500を示す。502において、第1の外周と第1の外周に沿って延びる第1の界面とを画定する第1のシェルを有する第1のタービンブレードハーフが準備される。504において、第2の外周と第2の外周に沿って延びる第2の界面とを画定する第2のシェルを有する第2のタービンブレードハーフが準備される。第2のブレードハーフは、外周から延びるボンドキャップを含み、第1の界面が第2の界面に位置合わせされると、第1のシェルとボンドキャップとの間に第1のギャップが形成される。506において、第1のシェルに対応する第1の金型表面を有する第1の金型ハーフが準備され、第1のタービンブレードハーフが、第1の金型ハーフ内に配設される。508において、第2のシェルに対応する第1の金型表面を有する第2の金型ハーフが準備され、第1の金型が第2の金型に位置合わせされると、第1の金型と第2の金型との間に第2のギャップが形成され、第1のギャップが第2のギャップに流体連通し、第2のタービンブレードハーフが第2の金型ハーフ内に配設される。510において、第1の外周及び/又は第2の外周にペーストが塗布される。512において、第1の障壁がボンドキャップ上に位置決めされ、第2の障壁が第2の金型上に位置決めされる。514において、第1の金型が第2の金型に接触され、第1の外周が第2の外周に接触される。それによって、第1のギャップ及び第2のギャップによって画定されるボリュームを流体封止する。
【0026】
本発明の様々な実施形態の説明が例示の目的で提示されたが、包括的であることも、開示される実施形態に限定されることも意図したものではない。記載の実施形態の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には多くの修正及び変更が明らかであろう。本明細書において用いられる用語は、実施形態の原理、実際の用途、若しくは市場で得られる技術を上回る技術的改善を最も良好に説明するか、又は他の当業者が本明細書に開示される実施形態を理解することを可能にするように選択された。