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特許7462664ガラスの製造方法、および工業用ガラス製造設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】ガラスの製造方法、および工業用ガラス製造設備
(51)【国際特許分類】
   C03C 1/02 20060101AFI20240329BHJP
   C03B 1/02 20060101ALI20240329BHJP
   C03B 5/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
C03C1/02
C03B1/02
C03B5/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021547920
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 EP2019079487
(87)【国際公開番号】W WO2020089206
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】1860020
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519417805
【氏名又は名称】アーエールセー フランス
【氏名又は名称原語表記】ARC FRANCE
【住所又は居所原語表記】104 avenue du General de Gaulle, 62510 ARQUES, FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャルル,エルヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ドンゼ,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】イブレ,グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ファムション,フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ボナング,ジャン-マリー
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-505811(JP,A)
【文献】国際公開第2012/161275(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/001586(WO,A1)
【文献】特表2009-527455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C1/00-14/00
C03B1/00-1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体状態にある原料混合物をガラス製造炉に供給するステップを含むガラスの製造方法であって、
前記原料混合物は、1重量%未満の含水量を有する粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムを含み、前記原料混合物は、粉末状の酸化カルシウムを含む、
方法。
【請求項2】
前記粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムは、0.1mm~30mmの粒径を有し、周囲温度にある、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムを保管する事前のステップを含み、保管される前記粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムは、ボール状またはプレート状の形態を有し、0.1mm~30mmの粒径を得るように粉砕を実施するステップを含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムは、1NaOに対して、2.5~5SiOの範囲、好ましくは2.5~3.5SiOの範囲のモル比を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ソーダ石灰ガラスの場合、カルシウムの少なくとも17重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも99重量%が粉末状の酸化カルシウムによって供給され、フルオロケイ酸ガラスの場合、カルシウムの少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも99重量%が粉末状の酸化カルシウムによって供給される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ソーダ石灰ガラスまたはフルオロケイ酸ガラスの場合、ナトリウムの1%超が、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの形態で、好ましくは4%~25%、より好ましくは5%~20%、または10%~15%供給される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムは、特にナトリウム、カルシウム、マグネシウム、ホウ素、カリウム、ケイ素、アルミニウムおよびフッ素のうちの少なくとも1種を含む他の原料と混合される、
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記原料混合物は、投入前に混合され、前記酸化カルシウムは、前記他の原料の後に供給され、前記混合物は、液体状態の部分を有していない、
請求項に記載の方法。
【請求項9】
ソーダ石灰ガラスの場合、前記粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムは、ガラスのナトリウムの2%~50%、好ましくは4%~15%を添加し、残りは、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、カレットおよび長石の形態で供給され、前記酸化カルシウムは、前記ガラスのカルシウムの1%~100%を添加し、残りは、炭酸カルシウム、カレット、ドロマイトおよび長石の形態で供給される、
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記原料混合物は、全体の10重量%~20重量%のNaOを含むガラスを得るように、シリカ砂、炭酸ナトリウムおよびカレット、またはケイ砂、カレット、フルオロケイ酸ナトリウムおよび長石を含む、
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記炉の加熱は、実質的に水平な火炎を含むバーナーおよび/または少なくとも1つの横型バーナーによって50%超が実施され、残りは、電極によって供給される、
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法を実現するための工業用ガラス製造設備であって、溶融ガラスのためのタンクと、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムを供給するための部材が設けられた、原料混合物を供給するためのシステムと、を含む炉を備え、前記粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムを供給するための部材は、バッファ貯蔵部を介して前記炉の入口に接続された出口を有するケイ酸ナトリウム粉砕機と、前記粉砕機の入口に接続された、ボール状またはプレート状の形態のケイ酸ナトリウムの貯蔵部と、を備える、
ガラス製造設備。
【請求項13】
前記炉からの燃焼ガスを排出するための少なくとも1つの煙管を備え、前記煙管は、ガラス製造の原料混合物を焼成するための炉に開口する、
請求項12に記載のガラス製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス製造産業の分野に関する。ガラスを構成する材料を溶融するには、大量のエネルギーを投入する必要がある。ガラス浴の温度は、約1300℃~1500℃である。ガラスは、その組成に応じて、飲料用グラス(コップ)、ボトル、容器や窓ガラスなどの家庭での直接的な使用、またはセラミックコンロなどの家庭での間接的な使用、または工業用での使用を目的としている。
【背景技術】
【0002】
炉は、非常に高い熱的および機械的応力を受ける。炉は、高品質の耐火性コーティングを有するように構築される。この耐火性コーティングは高価であり、化学反応を受けやすいガラスの特定の成分に敏感である。耐火性コーティングは熱伝導性が低いため、ガラス浴の加熱は上方から実施される。
【0003】
ガラス浴と、天端と呼ばれる炉の上部との間には、液体燃料やガス燃料の火炎バーナーが配置される。ガラス浴は、主に放射によって加熱される。ガスの出口温度は、ガラス族に応じて1300℃~1600℃である。
【0004】
また、ガラスの製造では、大量のガスが放出される。ガラス中の気泡の形成を防ぐために、ガラス浴は数時間脱気される。脱気を促進するために、硫酸塩のような精製添加物を使用する場合がある。炉は、一端で原料が供給され、他端で精製されたガラスが回収されるように、連続的に稼働する。
【0005】
脱気および燃焼からの出口ガスは、煙突を介して排出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人は、作製されたガラスの重量に対してエネルギー消費量を大幅に削減するという目的を追求した。
【0007】
ソーダ石灰ガラスの主な出発原料は、石灰と、例えば炭酸ナトリウムNaCOの形態のソーダと、石英砂の形態のシリカである。石灰および炭酸ナトリウムは、ガラスの精製中にCOを放出する。
【0008】
米国特許第3967943号には、水ガラスとも呼ばれるケイ酸ナトリウムの水溶液の実現方法が記載されている。ここでは、多量の水を蒸発させる必要がある。
【0009】
米国特許出願第2005/0022557号には、NaCOとSiOの予備混合物、および並行してCaCOとSiOの予備混合物が記載されており、予備反応のステップと、その後の2つの予備混合物およびSiOの補体を混合するステップと、ガラス製造炉への導入のステップとが記載されている。
【0010】
米国特許出願第2012/0216574号は、CaCOをか焼してCaOを形成するステップと、NaSiOガラスを液相で形成するステップと、CaOとNaSiOを液相で混合してソーダ石灰ガラスを形成するステップと、を含むガラスの製造方法に関する。
【0011】
欧州特許出願第2668139号には、SiOコアと、SiOおよびNaOの内層と、CaCOおよびNaCOの外層と、を含むペレットの製造方法が記載されている。ペレットは、ガラス製造炉に投入される。
【0012】
本出願人は、複数の試験を実施した。粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムは高価であるため、NaCOを粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムで置き換えることは、経済的に不利な結果をもたらす。また、多くの要件を考慮する必要がある。危険なくユーザが原料を操作できなければならない。したがって、無水苛性ソーダの導入は困難である。原料は、-20℃~+50℃の範囲の周囲温度と、大きく変化する周囲湿度の中で保管される。炉内で混合を実施するのが困難であるため、投入前に原料を混合する。一部の材料は吸湿性が非常に高く、特にその粒径および/または化学的配合に反して吸湿性が高い。しかしながら、原料の固化(caking)を避ける必要がある。ペレットや顆粒にするには、追加の作業が必要である。また、キャリーオーバーは原料の損失に繋がり、特に炉の通気(draft)を減少させて、大変な作業である清掃を実施するために生産を停止させる煙道ガスダクトの目詰まりを引き起こす。シリカは、溶融温度が高く、溶融速度(kinetics)が遅いため、溶融が困難である。
【0013】
これらの問題にも関わらず、本出願人は試験を継続して、高いエネルギー性能を提供し、炉の壁の摩耗が少なく、ガラスの溶融および精製が速い、ガラスの製造方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本出願人は、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムを使用したガラスの製造方法を開発した。このような粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムによって、COの排出量を5%超削減し、煙道ガス中のダストを15%超削減し、エネルギー消費量を5%超削減し、特定の負荷(生産性)を15%超向上させ、加熱期間(campaign)を20%以上延長することができる。ここで、加熱期間とは、炉の耐火壁を2回完全に再構築するまでの時間を意味し、これは数年間に相当する。驚くべきことに、シリカの溶融速度が向上し、著しく異なる溶融温度を有する材料間の分離の危険性が減少した。また、粘度が減少して、溶解したガスの放出を伴うより迅速な精製を得ることができた。
【0015】
本発明は、固体状態にある原料をガラス製造炉に供給するステップを含むガラスの製造方法を提案する。ここでは、原料は、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムを含み、含水量が1重量%未満であり、粉末状の酸化カルシウムを含む。
【0016】
粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムと無水酸化カルシウム粉末(生石灰)とを同時に供給することで、キャリーオーバーにおける酸化カルシウムの損失を防ぎ、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの粒径が主にミリ単位またはセンチ単位であるにも関わらず、炉内の浴の表面において迅速な溶融を実現することができる。
【0017】
「粒状のガラス質ケイ酸ナトリウム」という用語は、例えば薬局で販売されている医薬部外品に使用される化学的に(塩化カルシウムと苛性ソーダとをフレーク状にして、圧力をかけて高温で処理して)得られた高価なケイ酸ナトリウムとは異なり、シリカと、特に炭酸ナトリウムを含むソーダ源とを溶融する方法を使用して得られたケイ酸ナトリウムを意味する。
【0018】
粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの粒と酸化カルシウムの粉末とを混合してから投入する。
【0019】
一実施形態において、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの含水量は、0%である。
【0020】
一実施形態において、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムは、0.1mm~30mmの粒径を有する。粒径が0.1mmを下回ると、キャリーオーバーおよび投入前の固化の危険性が増大する。粒径が30mmを超えると、原料の溶融が遅くなり、不均質性が大きくなり、精製時間が長くなる。意外にも、粒径の範囲が広いので、不具合率の低い粉砕機を使用することができる。
【0021】
一実施形態において、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムは、周囲温度にある。予熱はされない。
【0022】
一実施形態において、該方法は、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムを保管する事前のステップを含む。
【0023】
一実施形態において、保管される粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムは、例えば約40mm~60mmのボール状、または例えば長さと幅が100mmを超えるプレート状の形態を有する。
【0024】
一実施形態において、該方法は、0.1mm~30mmの粒径を得るように粉砕を実施するステップを含む。
【0025】
一実施形態において、粉砕ステップは、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの投入前7日以内実行される。これにより、固化の危険性が非常に低い。
【0026】
一実施形態において、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムは、1NaOに対して2.5~5SiOのモル比を有する。これにより、低い融点を得ることができる。2.5を下回ると、融点が高くなり、ケイ酸ナトリウムの安定性が低下する。5を超えると、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの溶融がより困難になる。1NaOに対して2.5~5SiOの比率を有する粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムは、少なくとも温帯気候では周囲湿度にあまり影響されず、固化することなく保管することができる。好ましくは、モル比は、1NaOに対して2.5~3.5SiOである。
【0027】
一実施形態において、ソーダ石灰ガラスの場合、カルシウムの少なくとも17%が粉末状の酸化カルシウムによって供給される。
【0028】
一実施形態において、ソーダ石灰ガラスの場合、カルシウムの少なくとも80%が粉末状の酸化カルシウムによって供給される。
【0029】
一実施形態において、ソーダ石灰ガラスの場合、カルシウムの少なくとも99%が粉末状の酸化カルシウムによって供給される。
【0030】
一実施形態において、フルオロケイ酸ガラスの場合、カルシウムの少なくとも80%が粉末状の酸化カルシウムによって供給される。
【0031】
一実施形態において、フルオロケイ酸ガラスの場合、カルシウムの少なくとも99%が粉末状の酸化カルシウムによって供給される。
【0032】
一実施形態において、ソーダ石灰ガラスの場合、ナトリウムは、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの形態で1%超供給される。
【0033】
一実施形態において、フルオロケイ酸ガラスの場合、ナトリウムは、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの形態で1%超供給される。
【0034】
一実施形態において、ナトリウムは、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの形態で4%~25%、より好ましくは5%~20%、さらにより好ましくは10%~15%供給される。
【0035】
一実施形態において、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムは、特に炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ホウ素、酸化カリウムおよびフルオケイ酸ナトリウムのうちの少なくとも1種を含む他の原料と混合される。
【0036】
一実施形態において、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムは、特にナトリウム、カルシウム、マグネシウム、ホウ素、カリウム、ケイ素、アルミニウムおよびフッ素のうちの少なくとも1種を含む他の原料と混合される。
【0037】
一実施形態において、原料は、投入前に混合される。これにより、溶融浴はより均質になる。
【0038】
一実施形態において、酸化カルシウムおよび/または酸化マグネシウムは、他の原料の後に供給される。これにより、他の原料の少なくとも1種が、特に砂中に存在する水を捕捉するのに十分な親水性を有することができ、その結果、ダストを生じさせる水とカルシウムおよび/または酸化マグネシウムとの反応を防止することができる。また、砂を乾燥させずに実施することができる。
【0039】
一実施形態において、鉛は、原料に自発的に供給されない。
【0040】
一実施形態において、原料の混合物は、液体状態の部分を有していない。混合物は、粒状のままである。
【0041】
一実施形態において、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムは、ガラスのナトリウムの2%~50%を添加し、残りは、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、カレットおよび長石の形態で供給される。
【0042】
一実施形態において、ソーダ石灰ガラスの場合、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムは、ガラスのナトリウムの4%~15%を添加し、残りは、炭酸ナトリウムの形態で供給される。約10%では、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムが融点、精製速度、炉の壁の摩耗の削減およびキャリーオーバーの削減に及ぼす影響は、非常に興味深いものである。
【0043】
一実施形態において、酸化カルシウムは、ガラスのカルシウムの1%~100%を添加し、残りは、カレット炭酸カルシウム、ドロマイトおよび長石の形態で供給される。粉末状の生石灰を少しでも添加することは、興味深いものである。
【0044】
一実施形態において、原料は、全体の10重量%~20重量%のNaOを含むガラスを得るように、シリカまたはケイ砂、炭酸ナトリウム、およびカレットを含む。これにより、高品質のソーダ石灰ガラスを得ることができる。一実施形態において、原料は、シリカまたはケイ砂、カレット、特にフルオケイ酸ナトリウムのようなフッ素源、および特に長石のようなアルミナ源を含む。これにより、特にプレートや皿の製造に適したフルオロケイ酸ガラスを得ることができる。
【0045】
一実施形態において、ソーダ石灰ガラスの場合、炉の加熱は、実質的に水平な火炎を含む少なくとも1つのバーナー、特にループおよび/または横型バーナーによって50%超が実施され、残りは、電極によって供給される。これにより、窒素酸化物の濃度を低くすることができる。
【0046】
一実施形態において、バーナーには、空気、および特に天然ガスのような燃焼ガス、または燃料油が供給される
一実施形態において、バーナーには、酸素、および特に天然ガスのような任意のタイプの燃焼ガス、または燃料油が供給される。
【0047】
一実施形態において、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの形態でナトリウムの4%~30%、好ましくは10%~20%が供給され、酸化カルシウムの形態でカルシウムの0%が供給され、カルシウムは、特に、酸化カルシウムの代わりに、炭酸カルシウム、ドロマイトおよび長石の形態で供給される。
【0048】
一実施形態において、ループガス/エアバーナーと天端ガス/酸素バーナーを有する炉において、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの形態でナトリウムの10%が供給される。
【0049】
本発明は、固体状態にある原料をガラス製造炉に供給するステップを含むガラスの製造方法を提案する。ここでは、原料は、ナトリウムの4%~30%、好ましくは10%~20%の粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムを含み、1重量%未満の含水量を有し、酸化カルシウムが供給されない。
【0050】
一実施形態において、酸化カルシウムの形態でカルシウムの10%~50%、好ましくは20%~40%が供給され、ケイ酸ナトリウムの形態でナトリウムの0%が供給される。
【0051】
本発明は、固体状態にある原料をガラス製造炉に供給するステップを含むガラスの製造方法を提案する。ここでは、原料は、1重量%未満の含水量を有し、酸化カルシウムの形態でカルシウムの10%~50%、好ましくは20%~40%が供給され、ケイ酸ナトリウムの形態でナトリウムの0%が供給される。本発明は、溶融ガラスのためのタンクと、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムを供給する部材が設けられた、原料を供給するためのシステムと、を含む炉を備える工業用ガラス製造設備に関する。ケイ酸ナトリウムを供給するための部材は、直接またはバッファ貯蔵部を介して炉の入口に接続された出口を有するケイ酸ナトリウム粉砕機と、粉砕機の入口に接続された、ボール状またはプレート状の形態のケイ酸ナトリウムの貯蔵部と、を備える。
【0052】
焼成、粉砕または堆積物からの除去によって得られた凝集体と、造粒作業によって得られる顆粒との間には違いがある。ここでは、凝集体が使用される。凝集体は、外観がカレットに類似する。
【0053】
一実施形態において、原料を供給するためのシステムは、炉と粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムを供給するための部材との間に配置された、原料のミキサーを備える。混合は、原料を受容して下流に落下させるコンベアベルトによって実施することができる。
【0054】
これにより、炉への投入前に高い均質性を得ることができる。これは、溶融速度に有利に働く。
【0055】
一実施形態において、ガラス製造設備は、炉からの燃焼ガスを排出するための少なくとも1つの煙管を備える。煙管は、ガラス製造原料、特に石灰石および/またはドロマイト、より広範には鉱石を焼成するための炉に開口する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面から明らかになるであろう。
図1】本発明の一態様による複合設備の断面図である。
図2】本発明の別の態様による複合設備の断面図である。
図3図2の代替例を示す図である。
図4】一実施形態によるガラス製造炉の模式的な斜視図である。
図5】石灰石および4つの石灰の時間に関する加熱曲線を示す図である。
図6】石灰を含む3つの混合物の時間に関する加熱曲線を示す図である。
図7】原料の温度、含水量、予混合から生石灰の導入までの遅延、および炭酸ナトリウムの粒径に関連して、10回の試験における時間に関する加熱曲線を複数示す図である。
図8】含水量パラメータに基づく図7に示す曲線の一部を示す図である。
図9】温度パラメータに基づく図7に示す曲線の一部を示す図である。
図10】炭酸ナトリウムの粒径パラメータに基づく図7に示す曲線の一部を示す図である。
図11】一実施形態によるガラス製造設備の模式的な斜視図である。
図12】一実施形態によるガラス製造設備の模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
添付の図面は、本発明を構成するのに役立つだけでなく、必要に応じてその定義にも貢献する。
【0058】
本出願人は、溶融速度の現象を理解し、生産における実際の変化を測定するために、連続生産炉で協業試験を実施した。バッチ式の実験炉では、大容量であっても、詳細に理解することはできなかったであろう。この炉は、過去に、横型バーナーでソーダ石灰ガラスを生産しており、主材料として炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムおよびシリカを供給し、副材料、精製剤、染料および脱色剤としてアルミナおよびドロマイトを供給する。アルミナおよびドロマイトは、主材料よりも割合が少ないため、副材料として認定される。長石は、アルミナやSi、NaおよびKを添加することができる。鉛は、原料に自発的に供給されない。混合物には、液体状態の部分を有していない。
【0059】
以下に報告する試験では、粉砕機に通したチップまたはボールから粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムを調製した。チップの寸法は、10×10×10mm~20×200×200mmであった。ボールの寸法は、各方向で40mm~70mmであった。粉砕機の出口では、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの粒径は、0.1mm~最大30mmであった。そのため、スクリーニングが容易であり、不合格率も非常に低い。粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムは、無水である。粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムは、1%未満、実際には0%の含水量を有していた。粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムは、1NaOに対して約3SiOのモル比をしていた。好ましくは、モル比は、1NaOに対して2.5~3.5SiOである。取り扱いや保管の条件によって、特定の状況下では、1%未満の含有量のままで、非常にわずかな水分を取り込むことができた。
【0060】
砂の組成は、SiOが少なくとも99%、Alが1%未満、KOが0.1%未満、TiOが0.03%未満、およびFeが0.015%未満であった。その他の要素は微量であった。砂は、0.20mm~0.25mmの粒径D50を有していた。砂は、3%以下が0.355mmスクリーンを通過しない、且つ1%以下が0.125mmスクリーンを通過するような粒径を有していた。
【0061】
炭酸ナトリウムの組成は、NaCOが99.75%、NaClが0.03%、およびHOが0.1%未満であった。その他の要素は微量であった。炭酸ナトリウムは、0.15mm~0.25mmの粒径D50を有していた。炭酸ナトリウムは、0.5%以下が0.600mmスクリーンを通過しない、且つ少なくとも90%が0.150mmスクリーンを通過しない、且つ2%以下が0.075mmスクリーンを通過するような粒径を有していた。
【0062】
酸化カルシウムの組成は、CaOが少なくとも93%、MgOが2%未満、COが2%未満、Feが0.1%未満、およびSが0.06%未満であった。その他の要素は微量であった。酸化カルシウムは、0.08mm~0.12mmの粒径D50を有していた。酸化カルシウムは、1.6%以下が5.00mmスクリーンを通過しない、且つ55%以下が0.090mmスクリーンを通過するような粒径を有していた。
【0063】
カレットは、68%~75%のSiO、10%~15%のNaO、8%~12%のCaO、0%~3%のMgO、および0%~1%のAlを有していた。
【0064】
原料は、数日間で平均した、5℃~20℃の周囲温度であった。投入される準備が整った混合物の含水量は、0%超~4%未満であった。
【0065】
ループガス/エアバーナーおよび天端ガス/酸素バーナーで実施した試験Aでは、炭酸ナトリウムおよびシリカの部分的な代替として、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの形態でナトリウムの10%を供給し、NaおよびSiのモル数を維持した。その他の原料は変更していない。作製されたガラスの組成は維持された。期待される効果は、部分的な代替と比較してCOの排出量が削減されること、すなわち損失の3%が削減されることであった。この削減を得ることができた。また、キャリーオーバーおよびコンデンセートの削減量は、代替なしの以前の生産と比較して15.5%であり、これは、炭酸カルシウムおよびドロマイトの形態で供給されたカルシウムの100%、および炭酸ナトリウムおよび/または長石の形態で供給されたナトリウムの100%に相当する。ガラス1トンあたりのエネルギー消費量は、最大生産時に2.6%減少した。1日あたりの炉の生産量は、19%増加した。この増加は、使用されたケイ酸ナトリウムの溶融温度が低いために共晶混合物が変化したことに起因する。シリカや、特に石灰石やアルミナなどの他の元素の融点よりも低い融点を有する分子でケイ素の一部が供給されると、溶融の開始を早め、エネルギー消費量を削減することができた。炭酸ナトリウムとは異なり、ケイ酸の形態のソーダは、既にガラス状になっていた。
【0066】
ループガス/エアバーナーおよび天端ガス/酸素バーナーで実施した試験Bでは、炭酸カルシウムの100%を生石灰の形態の酸化カルシウムで置き換え、Caのモル数を維持し、炭酸ナトリウムおよびシリカの部分的な代替として、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの形態で最終的なガラスのナトリウムの9%を供給し、NaおよびSiのモル数を維持した。期待される効果は、部分的な代替と比較してCOの排出量が削減されることであった。この削減を得ることができた。また、キャリーオーバーの削減量は、14.3%であった。ガラス1トンあたりのエネルギー消費量は、トン数が一定の場合、10.7%減少した。1日あたりの炉の生産量は、26%増加した。生石灰は多量のキャリーオーバーを発生させるとされているが、この結果は非常に興味深いものであると考えられる。
【0067】
30天端ガス/酸素バーナーを使用せずにループガス/エアバーナーのみで実施した試験Cでは、炭酸カルシウムの100%を生石灰/酸化カルシウムで置き換え、Caのモル数を維持し、炭酸ナトリウムおよびシリカの部分的な代替として、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの形態で最終的なガラスのナトリウムの9%を供給し、NaおよびSiのモル数を維持した。期待される効果は、部分的な代替と比較してCOの排出量が削減されることであった。この削減を得ることができた。また、キャリーオーバーの削減量は、14.5%であった。ガラス1トンあたりのエネルギー消費量は、12.7%減少した。1日あたりの炉の生産量は、20.7%増加した。正面吹き出し炉(end-firing furnace)では生石灰は多量のキャリーオーバーを発生させるとされているが、この結果は注目に値すると考えられる。
【0068】
粉末状の酸化カルシウムは、790kgの袋(大袋)で提供され、その大きさは0mm~5mmであった。酸化カルシウムの組成は、CaOが少なくとも93%、MgOが2%未満、COが2%未満、Feが0.1%未満、およびSが0.06%未満であった。その他の要素は微量であった。酸化カルシウムは、0.08mm~0.12mmの粒径D50を有していた。酸化カルシウムは、1.6%以下が5.00mmスクリーンを通過しない、且つ55%以下が0.090mmスクリーンを通過するような粒径を有していた。酸化カルシウムを、他の原料を供給してから少なくとも10分後に、その混合物に供給した。投入混合物の含水量は、2.5%であった。
【0069】
粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの溶融開始は、他の材料の溶融を促進する。粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの溶融開始によって、湿潤効果が生じて、特に炭酸ナトリウム、アルミナおよび酸化カルシウムなどの煙道ガス中の原料の微粒子の飛散が制限され、キャリーオーバーが削減される。試験BとCを比較すると、石灰石の100%を酸化カルシウムで置き換え、最終的なガラス中のNaOの9%を粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの形態で比例的に置き換えた場合、天端バーナーは任意選択であり得ることが示されている。試験AおよびCは、前述の置き換えを除いた同じ原料および同じ生産期間で、同じ炉で実施された。試験は、安定した結果を得るのに十分な時間をかけて実施された。
【0070】
試験D~Gは、試験A~Cと同様に、ループガス/エアバーナーを有する第2の炉で実施された。試験D~Gでは、酸化カルシウムは、所望の重量に調整された袋(大袋)で納入された。酸化カルシウムは、試験A~Cと同じものである。試験D~Gは、前述の置き換えを除いた同じ原料および同じ生産期間で、同じ炉で実施された。試験は、安定した結果を得るのに十分な時間をかけて実施された。
【0071】
酸化カルシウムを、他の混合原料を供給してから少なくとも10分後に、その紺の愚物に供給した。投入混合物の含水量は、2.5%であった。
【0072】
試験Dでは、炭酸カルシウムの部分的な代替として、石灰石の21%を生石灰/酸化カルシウムで比例的に置き換え、Caのモル数を維持し、最終的なガラスのNaOの14%を粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの形態で比例的に供給し、炭酸ナトリウムおよびシリカの部分的な代替として、NaおよびSiのモル数を維持した。期待される効果は、部分的な代替と比較してCOの排出量が削減されることであった。溶融温度は、代替なしの以前の生産と比較して25℃~30℃低下した。これは、炭酸カルシウムの形態で供給されたカルシウムの100%、および炭酸ナトリウムまたは長石の形態で供給されたナトリウムの100%に相当する。炉の摩耗は、約25%減少した。エネルギー消費量は、5%減少した。ガラス中のガスの介在物に大きな変化はなかった。
【0073】
試験Eでは、炭酸カルシウムの部分的な代替として、石灰石の21%を生石灰/酸化カルシウムで比例的に置き換え、Caのモル数を維持し、炭酸ナトリウムおよびシリカの部分的な代替として、最終的なガラスのNaOの9%を粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの形態で比例的に供給し、NaおよびSiのモル数を維持した。期待される効果は、部分的な代替と比較してCOの排出量が削減されることであった。溶融温度は、代替なしの以前の生産と比較して25℃~30℃低下した。これは、炭酸カルシウムの形態で供給されたカルシウムの100%、および炭酸ナトリウムまたは長石の形態で供給されたナトリウムの100%に相当する。炉の摩耗は、少なくとも30%減少した。エネルギー消費量は、5%減少した。種(seeds)とも呼ばれるガラス中のガスの介在物は、45%減少し、0.10mm超のガラス中のガスの介在物は、40%減少した。
【0074】
試験Fでは、炭酸カルシウムの部分的な代替として、石灰石の21%を生石灰/酸化カルシウムで比例的に置き換え、Caのモル数を維持し、炭酸ナトリウムおよびシリカの部分的な代替として、最終的なガラスのNaOの4.5%を粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの形態で比例的に供給し、NaおよびSiのモル数を維持した。期待される効果は、部分的な代替と比較してCOの排出量が削減されることであった。溶融温度は、代替なしの以前の生産と比較して約25℃~30℃低下した。これは、炭酸カルシウムの形態で供給されたカルシウムの100%、および炭酸ナトリウムまたは長石の形態で供給されたナトリウムの100%に相当する。炉の摩耗は、少なくとも35%減少した。エネルギー消費量は、3%~5%減少した。種とも呼ばれるガラス中のガスの介在物は、45%~50%減少し、0.10mm超のガラス中のガスの介在物はなくなった。
【0075】
試験Gでは、炭酸カルシウムの部分的な代替として、生石灰/酸化カルシウムの形態で最終的なガラスのカルシウムの21%を供給し、Caのモル数を維持した。期待される効果は、部分的な代替と比較してCOの排出量が削減されることであった。溶融温度の低下が確認された。炉の摩耗は、少なくとも35%減少した。エネルギー消費量は、3%減少した。種とも呼ばれるガラス中のガスの介在物は、55%減少し、0.10mm超のガラス中のガスの介在物は、70%減少した。生石灰/酸化カルシウムの形態で供給された最終的なガラスのカルシウムの濃度が10%~30%であることは、興味深いものである。粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの形態で供給された最終的なガラスのナトリウムの濃度が1%~15%、好ましくは4%~15%、より好ましくは4%~10%であることは、興味深いものである。
【0076】
また、試験B~Gでは、製造されたガラス中の炉の耐火性コーティングから生じる特にジルコンを含む耐火性酸化物の濃度から推定して、炉の摩耗が少なくとも20%減少したことが確認された。同じ年間生産量で2回の耐火性コーティングの再構築の間の時間を増加させることができ、または炉の同じ耐用年数で生産トン数を増加させることができる。試験D~Gでは、生成期間の75%を超えた炉では、ガラスの品質の向上が確認された。
【0077】
一般に、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの形態でナトリウムを部分的に供給することは、カレット以外の材料によるナトリウムの供給および/またはカレット以外の材料によるケイ素の供給がある限り、広範囲に及ぶガラス中のナトリウムの濃度に対してプラスに働くことがわかった。供給量が非常に多いと、表面で急速に溶融した層の断熱効果によって、得られる性能が低下する危険性がある。粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの形態で供給されるナトリウムの濃度は、2%~50%である。ソーダ石灰ガラスの場合、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムの形態で供給されるナトリウムの濃度は、好ましくは4%~15%である。残りは、炭酸ナトリウム、長石またはカレットの形態で5%~95%供給される。
【0078】
酸化カルシウムは、ガラスのカルシウムの1%~100%を添加し、残りは、例えば石灰石やドロマイトなどの炭酸カルシウムの形態で供給される。酸化カルシウムは、炭酸ナトリウム、石灰石(炭酸カルシウム)、ドロマイト(炭酸マグネシウムおよび炭酸カルシウム)、酸化ホウ素、炭酸カリウム、砂(シリカ)、長石(シリカ、ソーダ、アルミナ)、霞石(シリカ、ソーダ、アルミナ、カリウム)、アルミナおよびフルオケイ酸ナトリウムから選択される他の材料を混合するステップの後に、混合される。第1の混合ステップと第2の混合ステップとの間には、少なくとも10分の遅延時間が設けられる。
【0079】
一実施形態において、原料は、
・ 粉末状の生石灰、
・ 粒状のガラス質ケイ酸ナトリウム、
・ ケイ砂、
・ 炭酸ナトリウム、および
・ 全体の10重量%~20重量%のNaOを含むガラスを得るための粒状のカレット
を含む。
【0080】
一実施形態において、原料は、
・ 粉末状の生石灰、
・ 粒状のガラス質ケイ酸ナトリウム、
・ ケイ砂、
・ 粒状のカレット、
・ 粉末状または粒状のフルオケイ酸ナトリウムおよび
・ 粉末状または粒状の長石
を含む。
【0081】
ここで、粉末状とは、粒径の中央値が1mm未満のものを意味し、粒状とは、粒径の中央値が5mm超のものを意味する。
【0082】
原料は、ガラスを連続的に作製するための工業用炉に投入される。一実施形態において、炉には、実質的に水平な火炎を含むバーナーまたはループバーナーが設けられる。火炎および煙道ガスは、溶融されたまたは溶融されているガラスの浴の表面の上方で、壁からU字経路を移動する。ガス/空気または燃料/油のループバーナーは、ガス/酸素または燃料/油/酸素の天端バーナー、または少なくとも2つの埋め込まれた加熱電極によって完成させることができる。炉の加熱は、ループバーナーによって50%超が確保される。
【0083】
一実施形態において、炉には、炉の側壁の一方または両方から、溶融されたまたはあ溶融されているガラスの浴の表面の上方で、空気または酸素ガスまたは燃料油の燃焼横型バーナーが設けられる。補体は、少なくとも2つの埋め込まれた加熱電極によって供給することができる。炉の加熱は、横型バーナーによって50%超が確保される。
【0084】
一実施形態において、ガラス製造設備は、炉の出口において、炉からの燃焼ガスを排出するための少なくとも1つの煙管を備える。煙管は、ガラス製造原料を焼成するための炉に開口する(図1図3参照)。
【0085】
一実施形態において、ガラス炉と石炉との複合炉が提供される。「石炉」とは、特にガラスの組成に入る原料を焼成の出口に提供することができる、石灰石、ドロマイト、火打ち石または水和アルミナのような石を焼成するための炉を意味する。
【0086】
一実施形態において、設備は、溶融ガラスのためのタンクと、タンクの上方に位置する燃焼加熱チャンバと、加熱チャンバと連通する煙道ガスを排出するためのダクトと、焼成される石を焼成するための領域を有する石炉と、を含む工業用ガラス製造炉を備え、煙道ガスを排出するためのダクトは、焼成される石を焼成するための領域に接続され且つ焼成される石を焼成するための領域に高温で煙道ガスを供給する煙道ガス出口を備える。
【0087】
石炉は、クロスフロー状態で動作する。焼成される石は、石炉の上部から投入され、熱の効果で変形しながら降下する。石炉の下部では、石灰、マグネシア、シリカ片および脱水アルミナ等が回収される回収。熱いガスが石炉内に導入される。熱いガスの熱エネルギーは、焼成されている石に伝達する。ガスの出口温度は、低くすることができる。致命的なエネルギーを回収することで、優れたエネルギー回収を実施することができる。
【0088】
石炉内で提供される温度において、
・ 石灰石は、COの放出を伴うか焼によって、石灰に変換される。
・ また、ドロマイトは、COの放出を伴うか焼によって、酸化マグネシウムと酸化カルシウムとの組み合わせに変換される。
・ また、火打ち石は、一般に約90%のシリカと、約10%のMg、Ca、Alおよび/またはNaの化合物と、を含む。これらの種は、ガラスの製造に関与する。高温になった火打ち石は、脆くて砕けやすい。その一方で、焼成されていない火打ち石は、硬度が高くて砕きにくい。しかしながら、迅速な溶融には、数ミリメートルの粒径が必要となる。川、海または採石場の火打ち石を焼成に使用することができる。
・ また、水和アルミナは、高温で脱水される。
【0089】
また、出口ガスの一部を石炉に送り、残りを単独の交互復熱器に送ることができる。これにより、石灰の生産を、需要に応じて実施することができる。
【0090】
別の予期しない利点が明らかになった。本設備では、煙道ガス中に存在する塩素は、焼成される石の表面上に堆積され、ガラス製造炉で再利用され得る。塩素は、塩化カルシウムの形態で石灰や、塩化マグネシウムの形態のマグネシアと関連して存在することができる。塩素は、溶融ガラスの脱気を促す精製剤である。
【0091】
硫黄は、塩素よりも良好な精製剤である。煙道ガス中に存在する硫黄は、焼成される石の表面上に堆積され、ガラス製造炉で再利用され得る。硫黄は、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウムまたは硫酸ナトリウムの形態で存在することができる。硫黄を焼成された石に関連する硫酸塩に再利用することで、ガラス製造炉への硫酸塩、特に硫酸カルシウムの供給を約50%削減することができる。また、大気中に放出される前の煙道ガスの処理がより容易になるか、不要になる。
【0092】
この設備は、(i)煙道ガス中に存在する酸性種の自己中和、および(ii)煙道ガスダクトのメンテナンス作業を削減する自己洗浄という設備の特性を介して、再利用を行うことができる。
【0093】
また、石炉または追加の石炉は、マグネシウムおよびカルシウムの酸化物の生成に使用することができる。そのため、この混合物は、ドロマイトのか焼によって作製される。マグネシウムおよびカルシウムの酸化物の混合物を使用することで、損失、特にCOの放出を削減することができる。
【0094】
一実施形態において、煙道ガス出口は、煙道ガスを排出するためのダクトの煙管内に配置される。これにより、煙道ガス出口における煙道ガスの流量を制御することができる。
【0095】
一実施形態において、ガラス製造炉の容量は、ガラス1日あたり10トンよりも大きい。炉は、工業用のタイプである。
【0096】
一実施形態において、設備は、少なくとも2つのガラス製造炉と、1つの石炉と、を備える。ガラス製造炉の停止をずらすことで、石炉の加熱の連続性を確保することができる。また、酸化空気を使用する場合、設備は、煙道ガスからのエネルギーの復熱器を備えることができる。
【0097】
一実施形態において、設備は、ガラス製造炉と、石炉と、石炉を加熱することができる補助バーナーと、を備える。これにより、石炉による持続的且つ一定の生産量を得ることができる。
【0098】
一実施形態において、焼成領域は、管状であり、その上方には、焼成される石を供給するための領域が配置され、下方には、焼成された石を取り出すための領域が配置される。従来の炉では、焼成された石は、下方から導入される酸化空気によって冷却される。ここで、焼成された石を取り出すための領域においてわずかな真空が調整されて、下部を介した煙道ガスの排出が防止される。これにより、上昇気流が提供される。例えば石炉のコーティングに対して煙道ガスが高温すぎる場合、より大きな真空が調整される。これは、焼成領域内の煙道ガスの希釈と温度の低下をもたらす。
【0099】
その一方で、焼成領域の温度を高く維持することが望ましい場合、焼成された石を取り出すための領域を介して入った空気のための待避部が、焼成領域の下部に配置される。ガラス製造炉の空気入口に、待避部を向けることができる。また、再生器の入口に待避部を向けて、ガラス製造炉への供給のために動作する際に冷却を制限することができる。焼成領域の上方に位置する石炉の領域に、待避部を向けることもできる。
【0100】
一実施形態において、焼成される石を焼成するための方法が提供される。該方法は、
・ 焼成される石を焼成するための領域に、焼成される石を導入するステップと、
・ ガラス製造炉の加熱中に加熱チャンバと連通する煙道ガスを排出するためのダクトと、を備える工業用ガラス製造炉の燃焼加熱チャンバの下流に取り付けられた煙道ガスを排出するためのダクトからの燃焼煙道ガスを焼成領域に供給するステップと、
を含む。
【0101】
一実施形態において、焼成される石は、石灰石、ドロマイト、火打ち石または水和アルミナから選択される。石灰石およびドロマイトの焼成方法は、か焼であり、すなわち、COの放出または脱炭素化である。火打ち石の焼成方法は、熱分裂である。水和アルミナの焼成方法は、結合水の除去による乾燥である。
【0102】
焼成される石の温度が上昇している間に遊離水が除去され、次に結合水が除去され、次に炭酸塩が酸化物とCOとに分離される。天然ガス燃焼を使用する石灰炉では、石灰炉の1つまたは複数の燃焼領域に燃料が導入され、下部を介して、石灰を取り出すための領域および/または燃焼領域に酸化空気が導入される。
【0103】
ここで、石炉は、熱いガスを使用する。熱いガスは、石炉の高さの約2/3の高さに位置する領域に導入される。
【0104】
高さ20m~30m、内径3m~5m、および高さ3m~4mの焼成領域を有する石炉を設けることができる。
【0105】
一実施形態において、焼成される石を焼成するための領域内の最大温度は、900℃超、好ましくは1000℃超である。これにより、脱炭素化が急速になる。
【0106】
一実施形態において、焼成される石を焼成することで、煙道ガスの温度を300℃未満、好ましくは200℃未満に下げることができる。煙道ガスは、100℃またはそれよりもわずかに高い温度で、石炉のスロート部(throat)を介して排出される。これにより、エネルギー損失を非常に低くすることができ、煙道ガスおよび焼成される石の乾燥に起因する水蒸気の凝縮を回避することができる。
【0107】
一実施形態において、煙道ガスの温度は、900℃超、好ましくは1100℃超、より好ましくは1200℃超低減される。煙道ガスは、1300℃超、例えば約1500℃で石炉に入ることができる。炉で回収される電力は、1日のガラス生産量1トンあたりトン10kW~30kWであり得る。
【0108】
一実施形態において、焼成される石は、焼成される石を焼成するための領域内に1時間~4時間置かれ、石炉内に12時間~36時間置かれる。
【0109】
一実施形態において、焼成される石は、燃焼ガスの流れに逆らって移動される。
【0110】
一実施形態において、煙道ガスは、塩素化成分を含む。塩素化成分は、ドロマイトおよび石灰石を使用する場合、焼成される石で捕捉される。出口では、ガラス製造での使用に適合する塩化物の濃度を有する、マグネシウムおよびカルシウムの酸化物または石灰の混合物が得られる。
【0111】
一実施形態において、煙道ガスは、硫化成分を含む。硫化成分は、特にドロマイトおよび石灰石を使用する場合、焼成される石で捕捉される。石炉の出口では、ガラス製造での使用に適合する硫酸塩の濃度を有する、特にマグネシウムおよびカルシウムの酸化物または石灰から構成された石が得られる。
【0112】
したがって、石炉は、通常の条件下で特定の処理を必要とするSおよびClの濃度を有する煙道ガスに対して、自己中和および自己洗浄を実施する。煙道ガスの中和処理は、必要とされない。
【0113】
一実施形態において、工業用ガラス製造炉で得られるガラスは、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノフルオロケイ酸ガラス、石英、またはガラスセラミックである。
【0114】
本出願人は、稼働中の工業用ガラス製造炉の煙管において、石灰石のか焼試験を実施した。石灰石の試料の質量は、396グラム~633グラムだった。か焼開始時の温度は、1240℃~1340℃の範囲だった。か焼終了時の温度は、1290℃~1380℃の範囲だった。CaCO CaO+COのか焼反応による理論上の質量損失は、43%であった。か焼時間が1時間未満の場合、質量損失が低すぎた。これは、か焼が不完全であることを示す。か焼時間が1時間の場合、42.1%の質量損失が生じた。か焼時間が1.75時間~2.25時間の場合、43.7%~44%の質量損失が生じた。これは、完全なか焼および試料の回収時において材料のわずかな孫膣を示す。この損失は、試験条件に関連しており、産業的な手段において防止することができる。ガラス製造炉からの出る煙道ガスによって、石灰石のか焼が実施される。焼成される他の石は、ドロマイト、火打ち石および水和アルミナを含むことができる。
【0115】
ガラス製造炉1は、バッチ生産される溶融ガラス33のためのタンク2を備える。ガラス製造炉1は、溶融ガラス33の浴の上方に位置する燃焼チャンバ3と、上壁5と、を備える。上壁5は、天端5aと、燃焼チャンバ3を画定する、側壁(長さ方向)または壁(幅方向)5bとも呼ばれる垂直部分と、から構成される。ガラス製造炉1は、燃料油またはガスが供給される少なくとも1つのバーナー6と、酸化剤入口7と、を備える。酸化剤は、空気であってもよく(図1参照)、酸素であってもよい(図2参照)。
【0116】
タンク2および上壁5は、高温領域から離間する外部金属構造体によって補強された耐火性材料から形成される。バーナー6は、燃焼チャンバ3内で水平方向に向けられた火炎を含む。ガラス製造炉1は、溶融ガラスの浴の上方の垂直壁5bのうちの1つに配置された煙道ガス出口8を備える。バーナー6および煙道ガス出口8は、燃焼チャンバ3内で火炎および煙道ガスがU字経路を辿るように設けられ得る。ガラス製造炉1は、正面吹き出し炉であり得る。
【0117】
設備は、煙道ガスの移動の方向でガラス製造炉1の下流において、煙管10を備える。煙管10は、実質的に水平な煙道ガスのためのダクトである。煙管10は、煙道ガス出口8を介して、燃焼チャンバ3と流体連通する。煙管10は、高温領域から離間する外部金属構造体によって補強された耐火性材料から形成される。煙管10には、分岐部が設けられ、2つの出口を有する。煙管10は、バルブを有していない。
【0118】
設備は、煙道ガスが流れる方向でガラス製造炉1の下流において、石炉11を備える。石炉11は、石灰炉であり得る。石炉11は、垂直方向に向けられた構造を有する。石炉11は、円形である。石炉11は、高温領域から離間する外部金属構造体によって補強される。石炉11は、例えば25mの高さおよび4mの直径を有することができる。石炉11は、垂直軸、下部開口部13および上部開口部14またはスロート部を有するチャンバ12を備える。下部開口部13によって、焼成された石を取り出すことができ、また、下部開口部13を介した煙道ガスの流出を防止する量の空気を導入することができる。
【0119】
上部開口部14によって、扉15を介して焼成される石を導入することができ、また、煙道ガスを排出することができる。上部開口部14には、フィルタ16内でダストを取り除くように煙道ガスを処理する一方で、焼成される石を石炉11に供給するためのセパレータが設けられ得る。フィルタ16の下流には、ダストが取り除かれて冷却された煙道ガスを排出することができる煙突17が設けられる。フィルタ16の下流では、煙道ガスは大気中に放出され、フィルタは、石炉11またはエネルギー復熱器からの煙道ガスを直接受容する。
【0120】
チャンバ12は、全体として密閉された構造を有する。チャンバ12は、上部開口部14に隣接する予熱領域20と、予熱領域20の下方に位置する焼成領域21と、焼成領域21の下方に位置し、下部開口部13に隣接する冷却領域22と、を備える。焼成領域21と冷却領域22との間において、チャンバは、煙管10の出口のうちの1つと流体連通する開口部23を備える。冷却領域22は、チャンバ12の高さに対して55%~75%の高さを有する。焼成領域21は、チャンバ12の高さに対して5%~20%の高さを有する。予熱領域20は、チャンバ12の高さに対して10%~25%の高さを有する。
【0121】
また、設備は、煙管10の他の出口と流体連通する熱交換器25を備える。熱交換器25は、煙道ガスからの熱エネルギーを、ガラス製造炉1に供給される空気に変換する。変換は、復熱器の場合、熱伝導プレートを介して実施され得る。また、変換は、再生器の場合、高い熱容量を有する材料の中間熱貯蔵部を介して実施され得る。煙道ガスおよび酸化空気は、可動式シャッターを介して交互に流れ、一方で再生器を加熱し、他方で再生器を冷却する。
【0122】
熱交換器25には、周囲空気の入口26と、熱い空気の出口27と、が設けられる。熱い空気の出口27は、パイプ28を介して、酸化剤入口7に接続される。熱交換器25には、煙管10の他方の出口から供給される熱い煙道ガスの入口29と、フィルタ16に向けて開口する、冷却された煙道ガスの出口30と、が設けられる
図2に示す実施形態において、ガラス製造炉は、ガス/酸素炉、すなわち一般にメタンを含む燃料ガスと酸化性酸素とを使用する炉である。空気中に窒素がないため、入口および出口におけるガスの流量は、特に酸化剤の入口で80%減少する。したがって、NOの濃度を3で割ることができる。煙道ガスは、ガスの燃焼から生じる水蒸気と、ガスの燃焼およびガラスの脱気から生じる二酸化炭素と、その他の脱気されたガスと、から実質的に構成される。煙道ガスの流量が上述した実施形態よりも低いため、少なくとも2つのガラス製造炉1と1つの石炉11とを結合することができる。
【0123】
図3に示す実施形態において、石炉11には、補助バーナー35が設けられる。補助バーナー35は、冷却領域22内または石炉11の隣で上昇する空気を消費して、高温で煙道ガスの追加の流れを提供する。
【0124】
上述した実施形態において、ガラス製造炉の出口で塩化物および硫酸塩の大部分を失った煙道ガスは、低温で石炉を出る。したがって、煙道ガスは、さらに下流での煙道ガスの中和が不要になるまで、中和および洗浄される。中和することで、焼成された石中に、石灰の場合はCaClおよびCaSOが生成され、ドロマイトの場合はMgClおよびMgSOが生成される。これらの化合物は、ガラス浴に塩化物および硫酸塩を供給する。
【0125】
本発明は、特にパイレックス(登録商標)を含むホウケイ酸ガラス、または15ガラスセラミックなどの高温を必要とするガラスのグレードをガラス製造炉で製造する場合、より興味深い。
【0126】
換言すると、焼成される石は、石灰石、ドロマイト、火打ち石および水和アルミナのうちの少なくとも1つを含む。焼成される石は、上部を介して石炉内に導入され、焼成後に降下を開始し、チャンバを通過し、石炉の下部を介して排出される。チャンバは、石が降下する方向に順に予熱領域、焼成領域および冷却領域を備える。
【0127】
ガスは、チャンバを上向きに通過する。このガスは、下部から入り、製キロの上部または冷却領域の上部から出る周囲空気を含むことができる。また、ガスは、燃焼煙道ガスを含む。燃焼煙道ガスは、焼成される石を焼成するための領域の下部から入る。燃焼煙道ガスは、焼成領域および予熱領域を通過する。燃焼煙道ガスは、工業用ガラス製造炉の燃焼加熱チャンバの下流にある煙道ガスを排出するためのダクトからのガスである。工業用ガラス製造炉は、溶融ガラスのためのタンクと、ガラス製造炉を加熱している間の加熱チャンバの出口における煙道ガスを排出するためのダクトと、を備える。燃焼煙道ガスは、加熱チャンバの出口において1300℃~1500℃の温度を有する。石炉の出口における煙道ガスは、100℃~200℃、好ましくは100℃~150℃の温度を有する。
【0128】
炭酸カルシウムに置き換えて混合物への酸化カルシウムの導入の効果を、以下で説明する。
【0129】
本出願人は、複数の試験を実施した。ガラスを製造するための材料において石灰石を生石灰で置き換えることは、特に石灰と大気中の水分との反応性に関連して困難である。石灰の経済的結果は、輸送および取り扱いトン数が減少しているにもかかわらず、石灰石の経済的結果よりも劣る。また、ガラス浴内での大きい粒径を有する石灰の溶融には時間がかかり、バッチストーンが残る場合がある。小さい粒径を有する石灰は、燃焼ガスに伴うキャリーオーバーを生じさせる。これにより、石灰の一部が失われ、炉の下流の煙道ガスダクトが目詰まりする。
【0130】
これらの問題にも関わらず、本出願人は試験を継続して、ガラス前駆体混合物を開発した。ここでは、混合物を調製している間に問題が生じた。水が不在の場合、粉末状の混合物を保つことができず、大量のキャリーオーバーが生じる。しかしながら、水と石灰は互いに発熱反応する。達した温度が混合物の取り扱いを困難にする。
【0131】
本出願人は、キャリーオーバーの発生が少ない低温で加熱した混合物を提供する、前駆体混合物を調製するための方法を開発した。混合物に供給した成分の粒径は、機械的移動作業が粉砕効果を生じさせて粒径をわずかに減少させることを除いて、実質的に維持される。ガラス製造炉に導入した混合物によって、ガラスの作製に必要なエネルギーを削減することができ、放出されるCOの量を約3%~6%削減することができる。また、混合物の溶融期間は、炭酸カルシウムを使用した場合の期間よりも短い。これにより、炉の生産性が向上し、エネルギー消費量をさらに約4%~6%削減することができる
一実施形態において、ガラスの製造方法は、ガラス製造炉のためのガラス前駆体混合物を調製するステップを含む。ここで、水、砂および炭酸ナトリウムを、それぞれ0%~5%、40%~65%および0%超~25%以下の重量割合で混合して、少なくとも10分~1時間未満の遅延の後に、全体の1%~20%の重量割合で酸化カルシウムを供給する。
【0132】
一実施形態において、ガラスの製造方法は、ガラス製造炉のためのガラス前駆体混合物を調製するステップを含む。ここで、水、砂および炭酸ナトリウムを、それぞれ0%~5%、40%~65%および0%超~25%以下の質量割合で混合して、少なくとも1時間の遅延の後に、全体の1%~20%の重量割合で酸化カルシウムを供給する。前駆体混合物の調製において、重大な自然発熱は発生せず、少なくとも欠陥となり得るような加熱は生じない。酸化カルシウムの供給を遅延させることで、炭酸ナトリウムが利用可能な水、特に砂に含まれる水を吸収する時間を捕獲することができる。本出願人は、投入前に石灰に関連する化学反応省略できるという利点を認識した。
【0133】
一実施形態において、水の重量割合は、1.5%~3%である。これにより、小さい粒径を有する混合物であっても、キャリーオーバーが発生する危険性が低減される。
【0134】
一実施形態において、遅延は、少なくとも1時間である。
【0135】
一実施形態において、含水量が4.1%以下の水、砂および炭酸ナトリウムの混合物について、遅延は、少なくとも10分~1時間未満である。
【0136】
一実施形態において、炭酸ナトリウムは、5%未満が0.075mmスクリーンを通過し、且つ15%未満が0.150mmスクリーンを通過し、且つ5%未満が0.600mmスクリーンを通過しないような粒径を有する。
【0137】
一実施形態において、水、砂および炭酸ナトリウムの混合物は、含水量が3%以下であり、炭酸ナトリウムは、主に0.500mm超~1.000mm未満の粒径を有する。
【0138】
一実施形態において、水、砂および炭酸ナトリウムの混合物は、含水量が2%以下であり、炭酸ナトリウムは、主に0.250mm未満の粒径を有する。
【0139】
一実施形態において、遅延は、72時間未満である。
【0140】
一実施形態において、原料の初期温度は、少なくとも30℃である。これにより、炭酸ナトリウムの水和速度が速くなる。
【0141】
一実施形態において、酸化カルシウムは、70重量%~90重量%が0.1mmスクリーンを通過しないような粒径を有し、好ましくは30重量%~80重量%が0.5mmスクリーンを通過しないような粒径を有し、より好ましくは30重量%~70重量%が2mmスクリーンを通過しないような粒径を有する。これにより、キャリーオーバーの発生が少なくなる。
【0142】
一実施形態において、酸化カルシウムは、90重量%超が0.1mmスクリーンを通過しない、且つ5重量%未満が4mmスクリーンを通過しないような粒径を有し、好ましくは95重量%超が0.1mmスクリーンを通過しない、且つ1重量%未満が4mmスクリーンを通過しないような粒径を有する。これにより、混合物と共に炉に導入される空気の量が少なくなり、バッチストーンが稀になる。
【0143】
一実施形態において、酸化カルシウムは、1mm~1.5mmの範囲の平均粒径を有する。
【0144】
一実施形態において、90重量%以上が0.1mmスクリーンを通過するような粒径を有するように前駆体混合物を調製してから1時間未満で、ガラス製造炉に前駆体混合物を導入し、好ましくは、70重量%~90重量%が0.1mmスクリーンを通過するような粒径を有するように前駆体混合物を調製してから2時間未満で、ガラス製造炉に前駆体混合物を導入する。細かい粒径は、高い反応性および迅速な処理に関連する。このため、溶融が迅速になる。
【0145】
一実施形態において、70重量%以上が2mmスクリーンを通過するような粒径を有するように前駆体混合物を調製してから8時間未満で、ガラス製造炉に前駆体混合物を導入する。平均粒径によって、工業的に有利な保管時間で様々に対応することができる。
【0146】
一実施形態において、砂は、乾燥している。これにより、供給する水の量を十分に制御することができる。好ましくは中程度または大きい粒径に関連して水を供給しない変形例において、エネルギー消費量を削減することができる。砂は、0.1%未満の含水量で乾燥しているとみなされる。砂は、周囲温度よりも15℃~20℃高い温度に加熱することで乾燥することができる。
【0147】
一実施形態において、水は、砂中に好ましくは3重量%~4重量%存在する。これにより、水を意図的に供給するためのコストを回避することができる。
【0148】
一実施形態において、酸化カルシウムには、意図的な酸化アルミニウムの供給がない。水、砂および炭酸ナトリウムを混合している間に、酸化アルミニウムを供給することができる。
【0149】
一実施形態において、酸化カルシウムの供給前または供給後に、全体の5%~40%の重量割合で、ガラス前駆体混合物にカレットを供給する。カレットは、廃棄ガラスのバッチを供給源にすることができる。バッチは既知の組成であるため、所望のガラスの品質に合わせてその他の原料の量を調整することができる。
【0150】
一実施形態において、固体状態でガラス前駆体混合物を調製する。これにより、スラリーの場合の水の蒸発を回避することができ、原料の予備溶融によるエネルギーの消費を回避することができる。一実施形態において、周囲温度と、周囲温度よりも20℃高い温度との間の温度で、ガラス前駆体混合物を調製する。
【0151】
一実施形態において、水、砂、炭酸ナトリウムおよび酸化カルシウムの以前の温度から+0℃~+20℃の温度で、ガラス前駆体混合物を調製する。重量平均を以前の温度として取得することができる。
【0152】
一実施形態において、熱エネルギーを供給することなく、ガラス前駆体混合物を調製する。これにより、微粉すなわちキャリーオーバーを生成する混合物の乾燥を回避することができる。
【0153】
一実施形態において、混合物を電気炉に投入する。
【0154】
一実施形態において、水、砂、ソーダおよび全体の1%~20%の重量割合で含まれる酸化カルシウムの混合物をガラス製造炉に導入し、混合物に向けられた少なくとも1つの火炎バーナーを使用して混合物を溶融する。バーナーは、良好な収率と、溶融中または溶融後のガラス浴の表面に対するキャリーオーバーにおけるつや出し効果を提供する。
【0155】
一実施形態において、バーナーに導入する酸化剤は、酸素である。これにより、キャリーオーバーにおけるつや出し効果を増大させることができる。
【0156】
一実施形態において、水、砂、炭酸ナトリウムおよび酸化カルシウムは、それぞれ0%~5%、40%~65%、1%~25%および1%~20%の重量割合で存在する。
【0157】
一実施形態において、NaCOの脱炭素化を、液相においてガラス製造炉内で実施する。
【0158】
一実施形態において、溶融ガラスのためのタンクと、タンクの上方に配置され且つ胸壁、側壁および天端によって画定される燃焼加熱チャンバと、加熱チャンバと連通する煙道ガスを排出するためのダクトと、煙道ガスを排出するためのダクトに平行な方向に配置されたループバーナーと、溶融ガラスのためのタンクに向けられた火炎バーナーと、を備える工業用ガラス製造炉を提案する。
【0159】
一実施形態において、火炎バーナーは、炉の天端に配置される。
【0160】
一実施形態において、ガラス製造炉は、静止している。これにより、回転炉の脆弱性を回避することができる。
【0161】
以下に記載する試験を実施した。
【0162】
(1)ソーダ石灰ガラス前駆体混合物のバッチに対する温度試験
20kgの前駆体混合物のための原料を秤量した。砂を乾燥させた後に、水の濃度が再現できるように再湿潤した。その他の原料を、時間tにおいて同時に添加した。コンクリートミキサーで100秒間混合を実施した。16kgを取り出し、密閉容器に入れた。密閉容器内のバッチの中央に配置された熱電対を使用して、温度を2時間にわたって上げた。水は、5つのバッチにおいて同じである。砂および炭酸ナトリウムは、同じサプライヤーの同じ工業バッチから納入したものである。以下の5つのカルシウム源を比較した。
・ 石灰石。
・ ホワイト生石灰A、バルクで納入、D50は0.1mm。
・ ブラウン生石灰B、バルクで納入、D50は0.1mm。
・ 生石灰C、約1トンの大袋で納入、直径(calibre)は4-8mm。
・ 生石灰D、D50は1.2mm。
【0163】
50という表記は、材料の50重量%がより小さい粒径を有し、残りの50重量%がより大きい粒径を有することを意味する。直径(calibre)とは、粒径が主に4mm~8mmの範囲にあることを示す商用的表記である。
【0164】
図5の曲線は、容器を満たし、熱電対を設置して、容器を閉鎖するまでの時間を考慮して、時間t=t+5分から開始する。曲線は、石灰石の場合は5℃未満の温度上昇を示し、大袋で納入した生石灰Cの場合は約15℃の温度上昇を示し、生石灰Dの場合はt=t+35分において約75℃の温度上昇を示し、バルクで納入したホワイト生石灰Aの場合はt=t+12分において約75℃の温度上昇を示し、バルクで納入したブラウン生石灰Bの場合はt=t+30分において90℃超の温度上昇を示している。
【0165】
生石灰Cにおける温度上昇の低さは、非常に大きい粒径と、予備的な水分の吸収が早くなって石灰が部分的に水和したことでエネルギーゲインが失われたことに起因する。ガラス製造炉に導入した消石灰は、熱の影響で脱水された。ここでは、脱水に必要なエネルギーと、追加の水を炉の温度まで加熱するためのエネルギーとが、エネルギーバランスに影響を与えた。ただし、大きい粒径を有する石灰は、意図しない水和の影響を受けにくく、小さい粒径を有する石灰よりも水和が遅くなる。
【0166】
バルクで納入したホワイト生石灰Aおよびブラウン生石灰Bの加熱方法および加熱時間の違いは、異なる組成に起因するものであるが、これはあまり重要な事項ではない。
【0167】
試験において3つのバッチを高温で加熱して、混合物を生成した。この混合物の生成において大量のキャリーオーバー、すなわち煙突の吸引によって部分的に失われ且つ得られたガラスに含まれないダストが生じた。また、高温で加熱すると、混合物を数時間扱うことが困難になる。この高温を利用して熱い混合物を投入して、ガラス製造炉の熱バランスを改善することができる。これによるゲインは、約1%~1.5%であった。
【0168】
(2)同じ混合物の位相試験
予期せずに処理が中断された後に、石灰を混合物に遅れて導入した。水、砂および炭酸ナトリウムの混合を実施した。砂および炭酸ナトリウムは、1回目の試験と同様に同じ工業バッチに由来するものであった。石灰は、0-5(0/5)mmの直径を有した。5時間後に石灰を添加して、以降の試験を上記のように実施した。図6の下の曲線に示すように、温度上昇は認められなかった。
【0169】
この結果を考慮して、本出願人は、2つの別の試験を実施した。これらの試験において、一方には、水、砂および炭酸ナトリウムの予備混合物に同じ石灰を取り入れ、他方には、予備混合物の製造と取り入れとの間に遅延なく、水、砂および炭酸ナトリウムの予備混合物に同じ石灰を取り込んだ(図6の上の曲線を参照)。ここで、約40℃の高温でそれぞれを加熱した。ここでいう「同じ」石灰は、同じ製造業者から同時に納入した石灰であるため、直径0-3(0/3)mmの同様の粒径を有し、同様の保管条件を有する。石灰は、本明細書の第4章の表に記載した試料No.1からなる。石灰の導入の遅延に伴う混合物の調製における待機時間は、加熱を回避するために有利である。次いで、混合物のバッチを加熱せずにガラス製造炉に投入した。キャリーオーバーの割合は、石灰石から作製されたガラスの割合に匹敵した。
【0170】
(3)投入試験
本出願人は、同じソーダ石灰ガラスの組成を使用して、同じ炉で異なる粒径を有する石灰を比較した。その他の原料は、試験ごとに同一であった。0-5(0/5)mmの直径を有する石灰は、1日あたり23トンのガラスを生産し、同じサプライヤーからの2-6(2/6)mmの直径を有する石灰は、1日あたり20.5トンのガラスを生産した。これらの石灰は、それぞれ第4章の表に記載した試料No.4および6からなる。細かい石灰は、粗い石灰よりも炉内でより速く溶融したが、空気をより多く取り込んだ。この場合、溶融ガラスから空気を排出するために必要な脱気の時間が長くなった。
【0171】
また、本出願人は、キャリーオーバーを回避するために0.1mmよりも大きい且つ急速な溶融のために4mm~6mmの最大値未満の粒径を有し、投入され且つガラスから脱気する必要がある空気の量を減少させるようにこの範囲内で相対的にばらついている粒子を最大量含む石灰を推奨する。
【0172】
混合物は、ガラス製造炉内で、石灰石を含む同等の粒子サイズを有する混合物よりも速く溶融して、実質的に同一の組成を有するガラスになった。この加速によって、炉の1日あたりの生産量が約22%増加した。
【0173】
同じ実験炉で実施したドロマイトが不在の試験において、30分間隔で炉内から溶融ガラスの試料を採取した。同じ石灰石を含む同じ組成を有するガラスの2つのバッチは、正しい溶融を示すように2時間半~3時間の加熱を必要とした。これらの期間よりも前の試料には、冷却後に粉末になるバッチストーンがあった。43.5%の強熱減量で1000℃で事前にか焼した同じ石灰石を含む同じ組成を有するガラスのバッチは、0.1-2(0.1/2)mmの粒径を有し、生石灰Cを含む同じ組成を有するガラスのバッチであった。生石灰Cは、CaOを97.1重量%、MgOを1.8重量%、SiOを0.5重量%、Alを0.2重量%、およびFeを0.16ppm含む。生石灰Cは、50重量%超が3.15mmスクリーンを通過しない、且つ3.15mmスクリーンを通過した後に18重量%が2mmスクリーンを通過しない、且つ3.15mmスクリーンを通過した後に18重量%が2mmスクリーンを通過しない、且つ2mmスクリーンを通過した後に5重量%未満が1.6mmスクリーンを通過しない、且つ1.6mmスクリーンを通過した後に5重量%未満が0.8mmスクリーンを通過しない、且つ0.8mmスクリーンを通過した後に5重量%未満が0.5mmスクリーンを通過しない、且つ0.5mmスクリーンを通過した後に5重量%未満が0.315mmスクリーンを通過しない、且つ0.315mmスクリーンを通過した後に5重量%未満が0.2mmスクリーンを通過しない、且つ0.2mmスクリーンを通過した後に5重量%未満が0.1mmスクリーンを通過しない、且つ0.1mmスクリーンを通過した後に10重量%未満が0.08mmスクリーンを通過しない、且つ5重量%未満が0.8mmスクリーンを通過するような粒径を有する。最後の2つのガラスのバッチは、2時間の加熱後に適切な品質のガラスを提供した。
【0174】
ドロマイトの不在によって単純化されたが、溶融の短縮に関する変化を観察することができなかった。
【0175】
(4)粒径の測定
【0176】
【表1】
【0177】
【表2】
【0178】
これらの粒径の測定値は、石灰の状態(大袋、バルク等)、石灰の取り扱いや移動、ならびに保管時間および状態に応じてそのパラメータが変化したことを示している。望ましい粒径は、0.1mm~4mmの範囲の可能な限り最大数の粒子を含み、これは、例えば90重量%が0.1mmスクリーンを通過しない、且つ5重量%未満が4mmスクリーンを通過しないような粒径である。好ましい粒径は、95重量%超が0.1mmスクリーンを通過しない、且つ1重量%未満が4mmスクリーンを通過しないような粒径である。
【0179】
(5)キャリーオーバーの量
工業用ガラス製造炉の煙管には、キャリーオーバーの一部を回収して秤量するための待避部が設けられた。試験期間中に同じ待避装置を使用した。石灰石をCaOに変化させたことと出口で24時間にわたって同じ組成のガラスを得たことを除いて、入口では同じ原料を使用して試験を実施した。1つ目の一連の試験を、石灰石を含む従来の混合物および天端バーナーを有する正面吹き出し炉を使用して実施した。2つ目の一連の試験を、石灰No.4を含む混合物および天端バーナーを有する正面吹き出し炉を使用して実施した。混合物の組成は、砂が1367kg、ドロマイトが112kg、炭酸ナトリウムが416kg、硫酸ナトリウムが4kg、生石灰が160kg、およびアルミナが30kgであった。回収したキャリーオーバーの量は、相互比較を行うための相対的な測定値を構成する。これらは、作製されたガラスのトンごとに示されるものではなく、グラム単位の生の値である。
【0180】
1つ目の一連の試験:平均43.15、標準偏差14.65。収集したダストは、粒子の飛散と、ダストを回収するために煙管に置かれたコールドフィンガーのガス種の気化および再凝縮の2つの効果によるものである。本出願人は、この2つ目の効果を特定した。
【0181】
2つ目の一連の試験:平均45.2、標準偏差7.85。1つ目の一連の試験の分析を適用した。11カ月間にわたって、煙管を洗浄する必要がなかった。回収したダストは、主に硫酸ナトリウムを含み、通常煙管に生じる硫酸カルシウムよりも洗浄が容易である。これにより、キャリーオーバーによるCaの損失が減少したことが推測できる。
【0182】
結論として、煙管内の粒子の量を測定するのは困難であり、推測が必要である。これらの試験条件下において、石灰石のか焼から得られたCaOを使用すると、天端バーナーでのCaCOの使用のように炉内における同じ粒子のキャリーオーバーが生じない。
【0183】
本出願人は、試験の後に、ガラス製造炉のためのガラス前駆体混合物の調製方法を開発した。この方法において、まず、水、砂および炭酸ナトリウムを、それぞれ0%~5%、40%~65%および0%超~25%以下の重量割合で混合し、次いで、酸化カルシウムを全体の1%~20%の重量割合で添加した。このCaOの供給は、最初の混合から少なくとも1時間が経過した後に実施された。材料は、周囲温度にあった。水は、炭酸ナトリウムに吸収され、CaOが利用できる量はわずかとなった。
【0184】
水は、微粒子への凝集の効果によって、キャリーオーバーに対する感度を低下させる。
【0185】
前駆体混合物は、ソーダ石灰ガラスの場合、水を0%~3%、砂を65%~75%、炭酸ナトリウムを10%~15%、石灰を10%~25%、マグネシアを0%~6%、ならびに精製剤、染料および脱色剤を0%~2%含有した。
【0186】
ホウケイ酸ガラスは、三酸化ホウ素(B)を7%~13%、アルカリ性酸化物(NaO、KO)を4%~8%、アルミナ(Al)を2%~7%、およびその他のアルカリ性酸化物(CaO、MgO等)を0%~5%含有した。CaOを含有するホウケイ酸ガラスは、本発明による前駆体混合物から製造することができる。
【0187】
図4に示すガラス製造炉1は、少なくとも1つのループバーナーと、少なくとも1つの天端バーナーと、を有する。ループバーナーは、酸化剤入口の近傍で実質的に水平に配向される。火炎は、浴の上方で実質的に水平に広がる。浴は、溶融される原料、すなわちガラス前駆体混合物、さらには所望の品質を有する工業用ガラスに徐々に変換される作製中の溶融ガラスの加熱開始時に構成される。天端バーナーは、炉の上壁に実質的に垂直に配向される。火炎は、浴に向けて実質的に垂直に伸びる。
【0188】
ガラス製造炉1は、溶融ガラスのためのタンク2を備える。ガラス製造炉1は、溶融ガラスの浴の上方に位置する燃焼チャンバ3と、上壁4と、を備える。上壁4は、天端5aと、燃焼チャンバ3を画定する胸壁(長さ方向)または側壁(幅方向)5bとも呼ばれる垂直部分と、から構成される。ガラス製造炉1は、燃料油またはガスが供給される少なくとも1つのループバーナー6を備える。また、ガラス製造炉1は、燃料油またはガスが供給される少なくとも1つの天端バーナー38を備える。ガラス製造炉1は、酸化剤入口7も備える。酸化剤は、空気および/または酸素であり得る。
【0189】
バーナー38は、天端5aに設置される。バーナー38は、上から下方に浴の上面に向けられた火炎を含む。バーナー38は、バーナー6によって生成されたガスの動きが最大になる領域の外側に火炎がくるように配置される。バーナー38は、実質的に天端5aの上部に配置される。バーナー38は、炉の幅方向において実質的に中央に配置される。
【0190】
胸壁のうちの1つには、溶融される原料、特に前駆体混合物を炉1に供給するように配置された開口部または隙間36が設けられる。精製したガラスを取り除くための部材は図示していない。
【0191】
タンク2および上壁4は、耐火性材料から形成されており、高温領域から離間する外部金属構造体によって補強される。バーナー6は、燃焼チャンバ3内で水平に配向された火炎を含む。バーナー6は、酸化剤入口7の下方に設置される。
【0192】
ガラス製造炉1は、溶融ガラスの浴の上方の壁30の垂直壁5bのうちの1つに配置された煙道ガス出口8を備える。バーナー6および煙道ガス出口8は、同じ小さい側に設けられ得る。これにより、バーナー6の火炎と煙道ガスとが、燃焼チャンバ3内のU字形経路をたどることができる。U字形経路は、通常、ループと呼ばれるものである。バーナー6および煙道ガス出口8は、互いに平行であり得る。バーナー6および煙道ガス出口8は、燃焼チャンバ3と連通する。
【0193】
煙道ガスの移動方向における煙道ガス出口8の下流において、設備は煙管を備えることができる。煙管は、実質的に水平な煙道ガスのためのダクトである。煙管は、煙道ガス出口8を介して燃焼チャンバ3と流体連通する。煙管は、高温領域から離間する外部金属構造体によって補強される。煙管は、バルブを有していない。煙管は、煙道ガスを煙突または復熱器または酸化剤を加熱する再生器に誘導する。
【0194】
ループバーナー6と天端バーナー38とを組み合わせて使用することで、浴の表面における高い収率およびつや出し効果を提供することができる。つや出しとは、天端バーナー38の火炎の作用を受ける浴の表面領域の急速な溶融を指す。急速に溶融することで、その領域からダストが放出されることを防止することができる。天端バーナー38および粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムが不在の場合よりも迅速につや出し効果を得ることができる。
【0195】
また、水、砂および炭酸ナトリウムの混合(混合動作)と酸化カルシウム(生石灰)の供給との間の遅延時間Dに関する試験を、測定した砂/ソーダ混合物の平均周囲保管温度および含水量Hに対応する原料の温度Tmpに関連して、実施した。例えば長石、准長石および/またはか焼アルミナの形態を有するアルミナも、水、砂および炭酸ナトリウムと混合した。これらの試験は、図7図10に示されている。測定した温度をY軸に示し、時間をX軸に示している。曲線を、予備混合物を事前に含むミキサーに生石灰を導入した瞬間における共通の基準点でX軸に設定した。遅延時間Dは、試験番号1、5および6における20分間から、試験番号7における60分間までの範囲とした。
【0196】
ここで、乾燥砂に水を供給し、3分間混合した。次いで、炭酸ナトリウムおよびアルミナを湿潤砂と2分間混合した。予備混合物の含水量Hおよび温度Tの測定を実施した。炭酸ナトリウムおよびアルミナの導入前に存在した水は、炭酸ナトリウムの水和反応を介して、数度の温度上昇を伴って炭酸ナトリウムと反応した。炭酸ナトリウムは、少なくとも曲線1~3を示す試験において、水と反応した。曲線4が示す試験において、後に供給される酸化カルシウムの添加が強くて激しい温度上昇を引き起こすため、遊離水が残った。曲線1~3が示す試験において、その後の酸化カルシウムの供給が温度上昇を引き起こさないため、遊離水が実質的に残らなかった。また、確認のために、酸化カルシウムを添加してから1時間以上が経過した後に水を供給した際に、強くて激しい温度上昇が引き起こされた。
【0197】
その後、酸化カルシウムを添加して混合した。混合動作は、容積が150リットルのコンクリートミキサーで実施した。各試験で使用した量は、19kg~20kgであった。試験番号1~10において、原料の性質および供給源は同じであった。また、試験番号1~10において、同一人物が同じプロトコルに従って同じコンクリートミキサーを同じ回転速度で使用して、実施した。測定作業および測定の精度は、基本的な研究室よるも実際の製造作業に近い、且つ工業規模で生じる現象を特定する目的で実施される準工業用試験に対応する。使用した質量は、砂が13kg、炭酸ナトリウムが4kg、酸化カルシウムが2kg、アルミナが0.24kg、および望ましい割合に達するための水であった。
【0198】
砂の組成は、SiOが少なくとも99%、Alが1%未満、KOが0.1%未満、TiOが0.03%未満、およびFeが0.015%未満であった。その他の要素は微量であった。砂は、0.20mm~0.25mmの粒径D50を有していた。砂は、3%以下が0.355mmスクリーンを通過しない、且つ1%以下が0.125mmスクリーンを通過するような粒径を有していた。
【0199】
炭酸ナトリウムの組成は、NaCOが99.75%、NaClが0.03%、およびHOが0.1%未満であった。その他の要素は微量であった。炭酸ナトリウムは、0.15mm~0.25mmの粒径D50を有していた。炭酸ナトリウムは、0.5%以下が0.600mmスクリーンを通過しない、且つ少なくとも90%が0.150mmスクリーンを通過しない、且つ2%以下が0.075mmスクリーンを通過するような粒径を有していた。
【0200】
酸化カルシウムの組成は、CaOが少なくとも93%、MgOが2%未満、COが2%未満、Feが0.1%未満、およびSが0.06%未満であった。その他の要素は微量であった。酸化カルシウムは、0.08mm~0.12mmの粒径D50を有していた。酸化カルシウムは、1.6%以下が5.00mmスクリーンを通過しない、且つ55%以下が0.090mmスクリーンを通過するような粒径を有していた。
【0201】
酸化カルシウムを添加してから1時間以内に到達した最高温度Tmaxを測定した。ミキサーを停止し、温度プローブをミキサー内の混合物に挿入して、温度測定を実施した。図7のすべての曲線が示す最初の温度低下は、温度プローブを取り出し、酸化カルシウムを添加し、ミキサーを2分間作動させ、温度プローブを再び挿入するステップに対応する。曲線1、2および3が示す2回目の温度低下は、酸化カルシウムの導入から1時間以上が経過した後に酸化カルシウムの存在を確認するために規定の量を超えた過剰な水を添加する追加のステップに対応する。水を添加することで、酸化カルシウムの発熱水和反応が引き起こされて、水酸化カルシウムに変換された。過剰な水を添加した後に観察された温度上昇によって、混合物中に酸化カルシウムが事前に存在していたと推測することができる。
【0202】
また、酸化カルシウムを添加する前のすべての曲線を詳細に観察すると、水と炭酸ナトリウムとの反応を示す温度上昇が見られる。特に、曲線1、2、3、7および4と曲線6および5とを比較すると、到達した温度は水の割合に応じて上昇した。
【0203】
酸化カルシウムを添加する前に、最高温度に到達した。つまり、曲線4において混合動作の終了から約1分後、すなわち炭酸ナトリウムおよびアルミナと砂および水とを接触させてから約3豊後に、非常に急速に最高温度に到達し、その他の曲線において混合動作の終了から約10分後に、より遅く最高温度に到達した。最高温度に到達した後の温度低下は、水と炭酸ナトリウムとの反応が停止したことを示している。反応の停止は、利用可能な水がすべて捕捉されたか、利用可能な炭酸ナトリウムがすべて水和されて遊離水が残ったことを示している。したがって、曲線4が示す急速な反応は、過剰な水による炭酸ナトリウムの水和に対応する。
【0204】
酸化カルシウムを添加した後に、温度を測定した。
(1)D=20分、Tmp=30℃、H=1%。Tmax<Tmp+15℃。
(2)D=30分、Tmp=30℃、H=2%。Tmax<Tmp+15℃。
(3)D=30分、Tmp=30℃、H=3%。Tmax<Tmp+15℃。
(4)D=30分、Tmp=30℃、H=5%。Tmax>100℃。
(5)D=20分、Tmp=1℃、H=2.7%。Tmax<Tmp+15℃。
(6)D=20分、Tmp=1℃、H=1.8%。Tmax<Tmp+15℃。
(7)D=60分、Tmp=30℃、H=4.1%。Tmax<Tmp+15℃。
(8)D=25分、Tmp=30℃、H=3.44%。Tmax<Tmp+15℃。
(9)D=30分、Tmp=30℃、H=5.1%。Tmax>100℃。
(10)D=30分、Tmp=30℃、H=3.8%。Tmax>60℃。
【0205】
試験番号2~4および7において、10℃未満の加熱を水、砂および炭酸ナトリウムの混合(混合動作)の際に実施した。試験番号4、9および10は、酸化カルシウムの導入時の過度の加熱によって不十分であった。試験番号2および6と、試験番号3および5とを比較すると、原料の初期温度Tmpが最高温度Tmaxにほとんど影響を与えないことが示されている。試験番号2、3および4と、試験番号5および6とを比較すると、含水量が特定のしきい値以下ではほとんど影響を与えないことが示されている。しきい値は、D=30分の場合、4.1%超5%未満の範囲にあった。ただし、期間Dの影響は、利用可能な遊離水を吸収する炭酸ナトリウムの能力によって制限される。しかしながら、試験は、水の量が理論上の最大しきい値よりもはるかに少なくなければならないことを示している。また、炭酸ナトリウムの粒径は、期間Dに影響を与える。粒径がある程度細かい方が、水がより迅速に吸収されるが、固化を誘発する危険性がある。固化した場合、水は生石灰によって利用可能となるため、加熱を避けることが望ましい。
【0206】
本出願人は、炭酸ナトリウムの粒径が大きい場合、水との反応が制限されると仮定した。該反応は、粒状の炭酸ナトリウムの表面で生じて、粒子内ではほとんど生じない。砂の粒径は、SiOの水和能力が存在しないため、ほとんど影響を与えない。
【0207】
試験番号2を、コールドコンクリートミキサーで約0℃で実施した。ここでは、炭酸ナトリウムの水和反応が遅くなった。試験番号2は、酸化カルシウムの供給前の曲線部分に完全に示されていない。一般に、コンクリートミキサーの加熱および/または例えば火炎バーナー、電気加熱または混合物への蒸気の注入等を用いた周囲温度よりも高い且つ47℃未満の混合温度での混合の形態で、エネルギーの供給が実施され得る。
【0208】
したがって、一般的な炭酸ナトリウムの粒径において、少なくとも1時間の期間Dにおける生石灰を添加する前の混合物中の含水量が4.1%での試験と、少なくとも10分間の期間Dにおける含水量が3%での試験とが、満足のいく結果を得ることができた。最高温度に10分よりも前に到達したため、10分を過ぎた期間Dへの影響はわずかである。これは、10分間の期間Dにおける生石灰を添加する前の混合物中の最大含水量が4.1%の場合が有利であり、測定の不正確さや工業公差に対して汎用性があることを示している。曲線の左側部分の分析は、様々な情報を提供している。時間0とCaOを供給するためにプローブを取り出した時間(試験に応じて20分、30分、60分)との間の温度の変化は、湿潤砂との接触による炭酸ナトリウムの水和反応を示している。これらの時間の間には、局所的な最高温度TNaが発現する期間が特定される。
【0209】
局所的な最高温度TNaは、炭酸ナトリウムの水和反応が実質的に停止したことを示している。
(1)D=20分、Tmp=30℃、H=1%。TNaは5分~7分。
(2)D=30分、Tmp=30℃、H=2%。TNaは13分~15分。
(3)D=30分、Tmp=30℃、H=3%。TNaは5分~7分。
(4)D=30分、Tmp=30℃、H=5%。TNaは1分~2分。
(5)D=20分、Tmp=1℃、H=2.7%。TNaは11分~13分。
(6)D=20分、Tmp=1℃、H=1.8%。TNaは約15分。
(7)D=60分、Tmp=30℃、H=4.1%。TNaは17分~19分。
(8)D=25分、Tmp=30℃、H=3.44%。TNaは7分~9分。
(9)D=30分、Tmp=30℃、H=5.1%。TNa>25分。
(10)D=30分、Tmp=30℃、H=3.8%。TNaは25分~27分。
【0210】
原料の初期温度Tmpは、水と炭酸ナトリウムとの反応速度に影響を与える。試験番号2および6と、試験番号3および5とを比較すると、Tmp=30℃では、反応がTmp=1℃のときよりも速くなる。試験番号4における反応速度は、過剰な水の存在を裏付けており、これにより、炭酸ナトリウムの水和が速くなる。試験番号7における反応速度の相対的な遅さは、水と炭酸ナトリウムとの平衡状態を示している。試験番号1と試験番号3との間の安定性は、30℃以上の初期温度で原料を使用した場合に、約10分間の期間Dが十分且つ堅牢であることを示している。このような試験番号1と試験番号3との間の安定性および試験番号6と試験番号5との間の安定性は、水に対して炭酸ナトリウムが過剰である場合、反応速度が水の濃度に大きく依存しないことを示している。
【0211】
また、試験番号2および3におけるその後の過剰な水の添加中、ならびに試験番号4における酸化カルシウムの添加中に、温度が非常に急速に上昇して、同時に多くのダストが放出された。試験番号1における1:49:20から開始する曲線の右側部分は、試験番号1固有の理由から代表的ではない。このような反応は、生石灰の水和反応としては典型的なものであり、高い発熱性の反応である。このようにして、水を5%含む混合物に添加した生石灰の即時水和と、水を2%~3%含む混合物に添加した生石灰の水和の不在とを確認することができる。また、水をそれぞれ3%および4.1%含む試験番号3および7の温度曲線は、生石灰の添加前と添加後で非常に類似した形状を有する。この強い類似性は、水を4.1%含む混合物には遊離水が含まれていないことを示している。
【0212】
試験番号8および9を、0.250mmスクリーンを通過する炭酸ナトリウムの微粉を使用して実施した。また、試験番号10を、0.500mmスクリーンを通過しない且つ1.000mmスクリーンを通過する炭酸ナトリウムの大きい粒子を使用して実施した。試験番号1~7において、炭酸ナトリウムの供給源およびバッチは同じであった。スクリーニングを実施した。
【0213】
試験番号8および10では、満足できる結果が得られると予測される含水量を選択したが、試験番号9では、最大含水量に対する粒径の影響を確認するために、高い含水量を選択した。試験番号8の曲線は、試験番号3の曲線と類似する。試験番号8において、10分未満の比較的短い時間および初期温度Tmpに対して15℃未満の温度上昇で、炭酸ナトリウムによる遊離水の完全な消費をもたらすと解釈することができた。含水量が3.44%の場合、細かい粒径は大きな影響を与えない。高い含水量である試験番号9では、試験番号4よりもはるかに遅い炭酸ナトリウムの水和反応が見られた。これは、反応を遅らせる硬化現象を伴う前駆体混合物の固化に起因するものである。
【0214】
大きな粒径を含み、含水量が3.8%である試験番号10では、炭酸ナトリウムの水和ステップにおいて、他の試験とは異なる曲線が得られた。温度は25分以上上昇し続けた。これは、炭酸ナトリウムの水和反応が継続していたことを示している。酸化カルシウムを導入するために温度プローブを取り出している間に最高温度に到達したか否かは不確実である。炭酸ナトリウムの水和の遅さは、炭酸ナトリウムの粒子の大きさによって炭酸ナトリウムの利用可能な活性表面が減少することに起因する。
【0215】
試験番号8において、酸化カルシウムを添加している間の温度上昇は、試験番号3および7が示すものに匹敵し、すなわち満足のいくものであった。酸化カルシウムを水和するために利用可能な水は非常に少ない。試験番号9における温度上昇は、試験番号4が示すものに匹敵し、すなわち高すぎた。粒径が減少しても、酸化カルシウムを添加するステップにおいて有利な効果が得られず、また、固化の危険性を示した。このような危険性は、2%以下の含水量を選択することで軽減することができる。
【0216】
試験番号10において、酸化カルシウムを添加している間に、温度Tmpを約30℃~35℃上回る温度上昇が見られた。この上昇によって、Tmp=30℃から開始した温度が60℃よりも高くなった。60℃では、刺激性ダストが放出される危険性が高くなる。粒径を大きくすると、特に温度Tmpが15℃よりも高い場合、酸化カルシウムを添加する際に過剰な加熱が生じる危険性がある。このような危険性は、3%以下の含水量を選択することで軽減することができる。
【0217】
試験番号8~10から、専ら細かい粒子サイズと専ら大きい粒径の利点の欠如および特定の欠点を推測することができる。したがって、0.250mm~0.500mmを中心とした粒径を有する炭酸ナトリウム源を提供することが好ましい。これには、試験番号1~7に示すように、0.250mm未満の粒子と0.500mm超の他の粒子とが小さな割合で含まれる。したがって、5%未満が0.075mmスクリーンを通過する、且つ15%未満が0.150mmスクリーンを通過する、且つ5%未満が0.600mmスクリーンを通過しないような粒径を有する炭酸ナトリウムが適切である。
【0218】
大きい粒径を有する炭酸ナトリウムを供給する場合、含水量は3%に制限される。これにより、炭酸ナトリウムの水和が試験番号10の場合よりも速くなり、酸化カルシウムの導入後の温度が周囲温度に対して+0℃~+15℃の範囲に留まるようになる。
【0219】
上記酸化カルシウムの試験を、炭酸ナトリウムを使用して実施した。その内容は、炭酸ナトリウムや粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムにも応用することができる。
【0220】
図11に示す実施形態では、工業用ガラス製造設備は、溶融ガラスのためのタンクを有する炉1と、供給システムと、を備える。ケイ酸ナトリウムは、ボール状またはプレート状の形態で保管される。ケイ酸ナトリウム粉砕機57が、第1の貯蔵ホッパー51の下流に配置される。第1の貯蔵ホッパー51は、粉砕機57への供給を行う。粉砕機57が実施する粉砕によって、0.1mm~30mmの粒径を有する凝集体が生成される。粉砕機57の出口では、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムが第2の貯蔵ホッパー58に保管される。第2の貯蔵ホッパー58の出口は、第1のミキサー59に接続される。第1のミキサー59は、酸化カルシウムを除く他の原料の個別供給の出口に取り付けられる。前述の他の原料は、例えば砂、炭酸ナトリウム、石灰石およびアルミナなどの貯蔵ホッパー52~55から供給される。第1のミキサー59の出口は、少なくとも10分間の生産に適した第3の貯蔵ホッパー60に開口する。第3の貯蔵ホッパー60の出口は、第2のミキサー61への供給を行う。第2のミキサー61は、第3の貯蔵ホッパー60の出口とは異なる第4の貯蔵ホッパー56の出口を介して、酸化カルシウムを受容する。第2のミキサー61は、複数のコンベアベルトから形成することができる。運転中のコンベアベルト上の原料の動きと、コンベアベルトの端部での動きとによって、満足のいく混合が得られる。第1のミキサー59への水の供給は、そこで混合される原料の含水量に応じて任意である。
【0221】
図12に示す実施形態は、第2の貯蔵ホッパー58の出口が第2のミキサー61に接続される点を除いて、上述したものと類似する。第1のミキサー59は、酸化カルシウムおよび粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムを除く他の原料の個別供給の出口に取り付けられる
代替的に、粉砕機57の出口は、第1のミキサー59に接続される。そのため、中間ホッパー58の必要がない。
【0222】
したがって、本発明は、固体状態にある原料の混合物をガラス製造炉に供給するステップを含むガラスの製造方法を提案する。ここでは、原料は、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムを含み、1重量%未満の含水量を有し、粉末状の酸化カルシウムを含み、炭酸カルシウムの自主的な供給がない。粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムは、NaOの供給量に対して0%超~100%の範囲であり得る。
【0223】
別の実施形態では、固体状態にある原料の混合物をガラス製造炉に供給するステップを含むガラスの製造方法を提案する。ここでは、原料は、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムを含み、1重量%未満の含水量を有し、ドロマイトおよび粉末状の酸化カルシウムを含み、炭酸カルシウムの自主的な供給がない。
【0224】
本発明は、固体状態にある原料の混合物をガラス製造炉に供給するステップを含むガラスの製造方法を提案する。ここでは、原料は、粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムを含み、1重量%未満の含水量を有し、粉末状の酸化カルシウムを有し、炭酸マグネシウムの自主的な供給がない。粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムは、NaOの供給量に対して0%超~100%の範囲であり得る。
【0225】
本発明は、固体状態にある原料の混合物をガラス製造炉に供給するステップを含むガラスの製造方法を提案する。ここでは、原料は、ガラス中に存在するCaOの0%超~100%未満を添加する粉末状の酸化カルシウムを含み、1重量%未満の含水量を有する粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムを含むことができる。粒状のガラス質ケイ酸ナトリウムは、NaOの供給量に対して0%超~100%の範囲であり得る。残りのカルシウムは、石灰石やドロマイトなどによって供給され得る。
【0226】
ガラス製造炉での数日間にわたる安定した工業用生産試験では、石灰石を100%酸化カルシウムで置き換え、供給されるナトリウムの20%であるケイ酸ナトリウムで炭酸ナトリウムを部分的に置き換えることによって、ケイ酸ナトリウムによって供給されたナトリウムが0%、および石灰石によって供給されたカルシウムが0%であった以前の生産量に対して、生産量が最大になることなく、1日あたりの炉の生産量を15%増加させることができた。これは、ケイ酸ナトリウムによって供給されたナトリウムが0%、および酸化カルシウムによって供給されたカルシウムが0%であった以前の生産量に対して、生産量が最大になっていない状態での1日あたりの炉の生産量が40%超増加したことに相当する。その他の原料は、以前と同じであった。作製されたソーダ石灰ガラスは、以前の生産と同様の品質を有し、下流の生産工程に組み込まれた。
【0227】
別のガラス製造炉での数日間にわたる安定した工業用生産試験では、石灰石を20%および40%酸化カルシウムで置き換えることで、ガラス1トンあたりのエネルギー消費量が2.3%および5%減少した。その他の原料は、以前と同じであった。作製されたソーダ石灰ガラスは、以前の生産と同様の品質を有し、下流の生産工程に組み込まれた。
【0228】
別のガラス製造炉での数日間にわたる安定した工業用生産試験では、炭酸ナトリウムを10%および20%ケイ酸ナトリウムで置き換えることで、ガラス1トンあたりのエネルギー消費量が3%超および4%超減少した。その他の原料は、以前と同じで、石灰石を供給した。作製されたソーダ石灰ガラスは、以前の生産と同様の品質を有し、下流の生産工程に組み込まれた。
【0229】
電気加熱式の別のガラス製造炉での数日間にわたる安定した工業用生産のフルオロケイ酸ガラスの試験では、ナトリウムをケイ酸ナトリウムの形態で10%~100%供給した。その他の原料は、以前と同じで、石灰石の形態でカルシウムを供給した。フルオロケイ酸ガラス中のCaOの重量濃度は、1%~3%であった。作製された1トンあたりのガラスのエネルギー消費量は減少し、炉内の温度は10℃超低下し、100%ケイ酸ナトリウムの形態でナトリウムを供給した場合は、平均で約25%低下した。作製されたフルオロケイ酸ガラスは、以前の生産と同様の品質を有し、下流の生産工程に組み込まれた。
【0230】
電気加熱式の別のガラス製造炉では、ケイ酸ナトリウムの形態でナトリウムを10%供給し、石灰石を酸化カルシウムで100%置き換え、商業品質のガラスを一定量生産したところ、炉の摩耗の減少と、炉の出口での温度の減少が確認された。ケイ酸ナトリウムの形態で提供されるNaOを5%、10%、15%または20%含む炉の耐用年数は、約20か月~36か月の耐用年数に対して数か月延長された。好ましい値は、4%~20%であった。すなわち、耐火性材料の摩耗が約11%減少した。その結果、炉の2回の再構築の間に生産されるガラスの総トン数が著しく増加した。また、精製が改善されたことで、ガラスの品質が向上した。原料の溶融も速くなった。これらの結果は、耐用年数が終了した炉でも耐用年数の途中や開始時の炉でも確認された。1トンあたりのエネルギー消費量の増加は、以前の生産期間のものよりも少なくなった。したがって、エネルギー消費量の変化は緩やかで、炉の2回の再構築の間の生産期間の開始から終了まで増加する傾向にあった。生産期間の開始からの経過時間が同じであれば、エネルギー消費量は、前回の生産期間と今回の生産期間との間で4%減少した。
【0231】
酸化カルシウムの形態でカルシウムを供給し、炭酸ナトリウムの形態でナトリウムを100%供給することで、ケイ酸ナトリウムを供給した場合よりもさらにエネルギー消費量が減少する。
【0232】
また、炉の摩耗が減少し、これは、フルオロケイ酸ガラスの生産において非常に興味深いものである。酸化カルシウムの供給による効果は、フルオロケイ酸ガラス中のCaOの重量濃度が低いにも関わらず、目に見えて好ましいものとなっている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12