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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング音響シールド
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
A61B5/055 390
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021557158
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 EP2020057731
(87)【国際公開番号】W WO2020193389
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】19165915.0
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】アムソー トーマス エリック
(72)【発明者】
【氏名】フォースマン ピーター
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-232966(JP,A)
【文献】Lee Fok, et al.,Acoustic Metamaterials,MRS BULLETIN,2008年,VOLUME 33,pp.931-934
【文献】F. Langfeldt, et al.,A membrane-type acoustic metamaterial with adjustable acoustic properties,Journal of Sound and Vibration,2016年,1-44
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリ音響シールドを備える磁気共鳴イメージングシステムコンポーネントであって、
前記音響シールドは、前記磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリのボアに挿入され、磁気共鳴イメージングシステムのボアを完全にカバーする円筒部分を備え、前記円筒部分が、前記磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリから離れる側に面した滑らかな露出した表面を備え、前記円筒部分が、装着面を更に備え、前記音響シールドが、前記装着面に装着された音響メタマテリアルの層を更に含み
前記磁気共鳴イメージングシステムコンポーネントが、前記音響メタマテリアルの層と前記磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリとの間に空隙を含み、
前記磁気共鳴イメージングシステムコンポーネントが、前記音響シールドによる音響吸収の周波数依存性を調節するように前記空隙の空気圧を制御する空気圧制御システムを更に備える、磁気共鳴イメージングシステムコンポーネント。
【請求項2】
前記音響シールドが、前記磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリから出射する音から前記磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリを音響的に封止する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージングシステムコンポーネント。
【請求項3】
前記音響シールドが、前記円筒部分と前記磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリとの間の気密封止を形成する端部キャップを更に備える、請求項1に記載の磁気共鳴イメージングシステムコンポーネント。
【請求項4】
前記音響メタマテリアルが、
音響位相操作構造物と、
局所的に共鳴する音響メタマテリアルと、
長さ方向に沿って分布した一連のヘルムホルツ共鳴器と、
有孔ハニカムコルゲーションハイブリッド音響メタマテリアルと、
ハニカムハイブリッド音響メタマテリアルと、
コルゲーションハイブリッド音響メタマテリアルと
のうちの少なくとも1つを備える、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージングシステムコンポーネント。
【請求項5】
前記音響シールドが、アクチュエータを備え、前記音響メタマテリアルが、セルを備え、以下の何れか、すなわち、
前記セルが、可変なボリュームをもち、前記アクチュエータが、前記可変なボリュームを変更し、前記セルが、前記可変なボリュームを変更するために以下の何れか、すなわち、蛇腹部と、調節可能なコンサーティナ型構造物と、上層と下層との間の可動な横ずれ運動部とのうちの何れかを備えることと、
前記セルの少なくとも一部の各々が、前記滑らかな露出した表面から離れる側に向けられた開口を含み、前記音響シールドが、前記開口のサイズを調節する可動カバー層を備え、前記アクチュエータが、前記開口の前記サイズを制御するように前記可動カバー層を調節することと、
これらの組み合わせと、
のうちの何れかである、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージングシステムコンポーネント。
【請求項6】
イメージングゾーンから磁気共鳴イメージングデータを取得する磁気共鳴イメージングシステムであって、前記磁気共鳴イメージングシステムが、
請求項に記載の前記磁気共鳴イメージングシステムコンポーネントと、
前記空隙の前記空気圧を表す空気圧データを取得するための圧力監視器であって、前記圧力監視器が、前記空気圧制御システムを少なくとも部分的に制御する制御ループを形成する、圧力監視器と、
を備える、磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項7】
前記磁気共鳴イメージングシステムが、
マシン実行可能命令とパルスシーケンスコマンドとを記憶するメモリと、
前記磁気共鳴イメージングシステムを制御するためのプロセッサであって、前記マシン実行可能命令の実行が、前記パルスシーケンスコマンドを使用して前記磁気共鳴イメージングシステムを制御することにより前記磁気共鳴イメージングデータを取得することを前記プロセッサにさせる、プロセッサと、
を更に備える、請求項に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項8】
前記パルスシーケンスコマンドが、前記パルスシーケンスコマンドの実行中に前記空気圧制御システムを動的に制御する空気圧コマンドを含む、請求項に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項9】
前記マシン実行可能命令の実行が、
前記パルスシーケンスコマンドを使用して勾配コイル音響周波数を計算することと、
前記勾配コイル音響周波数を使用して前記空気圧コマンドを計算することと、
を前記プロセッサに更にさせる、請求項に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項10】
前記磁気共鳴イメージングシステムが、前記磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリから出射する音響ノイズの前記ボア内の音響ノイズデータを測定するマイクロホンシステムを更に備え、前記マシン実行可能命令の実行が、
前記磁気共鳴イメージングデータの取得中に前記音響ノイズデータを取得することと、
前記音響ノイズデータのフーリエ変換を計算することによりノイズスペクトルを計算することと、
前記ノイズスペクトルと音響シールドの音響モデルとを使用して圧力設定値を計算することと、
前記圧力設定値を使用して前記空気圧制御システムを制御することと、
を前記プロセッサに更にさせる、請求項に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項11】
前記マシン実行可能命令の実行が、前記マシン実行可能命令の実行中に空気圧ログに前記圧力設定値を記録することと、
前記空気圧ログを使用して前記空気圧コマンドを変更することと、
を前記プロセッサに更にさせる、請求項10に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項12】
請求項に記載の磁気共鳴イメージングシステムを制御するプロセッサによる実行のための非一時的コンピュータ可読媒体に記憶されたマシン実行可能命令を含むコンピュータプログラムであって、前記磁気共鳴イメージングシステムが、前記磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリから出射する音響ノイズの前記ボア内の音響ノイズデータを測定するマイクロホンシステムを更に備え、前記マシン実行可能命令の実行が、
パルスシーケンスコマンドを使用して前記磁気共鳴イメージングシステムを制御することにより磁気共鳴イメージングデータを取得することであって、前記パルスシーケンスコマンドが、前記パルスシーケンスコマンドの実行中に前記空気圧制御システムを動的に制御する空気圧コマンドを含む、取得することと、
前記磁気共鳴イメージングデータの前記取得中に前記音響ノイズデータを取得することと、
前記音響ノイズデータのフーリエ変換を計算することによりノイズスペクトルを計算することと、
前記ノイズスペクトルと前記音響シールドの音響モデルとを使用して圧力設定値を計算することと、
前記圧力設定値を使用して前記空気圧制御システムを制御することと、
を前記プロセッサにさせる、コンピュータプログラム。
【請求項13】
前記マシン実行可能命令の実行が、
前記マシン実行可能命令の実行中に空気圧ログに前記圧力設定値を記録することと、
前記空気圧ログを使用して前記空気圧コマンドを変更することと、
を前記プロセッサに更にさせる、請求項12に記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージングに関し、特に、磁気共鳴イメージングシステムの動作中における生成されるノイズの低減に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の体内の画像を生成するための工程の一部として原子の核スピンを整列させるために、大きい静磁場が磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナにより使用される。この大きい静磁場はB0場又は主磁場と称される。B0場を生成するために使用される磁石又は主磁石に加えて、勾配磁場を生成するために使用される勾配コイルが更に存在する。
【0003】
これらの勾配コイルは、対象者に近接して、又は対象者の周辺に配置され、勾配磁場を一時的に生成するために電流を供給される。勾配コイルがB0場内に配置されるので、勾配コイル内における電流の流れが、勾配コイルに印加される力学的な力をもたらす。これらの力学的な力の結果は、場合によっては非常に騒々しい音響ノイズの生成である。
【0004】
Tangらの学術論文、「Hybrid acoustic metamaterial as super absorber for broadband low-frequency sound」、Sci Rep.2017;7:43340、doi:10.1038/srep43340は、低周波音を吸収するためのメタマテリアルの使用を開示している。有孔ハニカムコルゲーションハイブリッドメタマテリアル(PHCH)及び他のタイプのメタマテリアルが開示されている。
【0005】
Maらの学術論文、「Acoustic Metamaterials:From local resonances to broad horizons」、Sci.Adv.2016;2:e1501595は、種々の音響メタマテリアルを開示している。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、独立請求項において、磁気共鳴イメージングシステムコンポーネント、磁気共鳴イメージングシステム、及びコンピュータプログラムプロダクトを提供する。
【0007】
磁気共鳴イメージングシステムを音響シールディングする幾つかの困難さが存在する。第1の困難さは、音響ノイズが大きい低周波成分を含むことである。典型的には、ノイズは数百Hzから数千Hzの周波数をもつ。低周波をシールドすることは典型的には、磁気共鳴イメージングシステム内に適合しない大きい構造物を必要とする。別の困難さは、ノイズの周波数が、異なる磁気共鳴イメージングプロトコルにおいて、又は更には同じ磁気共鳴イメージングプロトコル内において使用される勾配パルスが変わり得るものだということである。低周波ノイズは一定の周波数スペクトルをもたない。
【0008】
本発明の実施形態は、小型であるが、依然として、勾配コイルにより生成された低周波ノイズを吸収することができる音響シールドを提供するために音響メタマテリアルを使用する。これは、音響メタマテリアルを含む音響シールドを使用して円筒磁石のボアの内側をカバーすることにより実現される。
【0009】
幾つかの実施形態は、音響メタマテリアルが勾配コイルからのノイズを吸収する周波数を調節するために、音響メタマテリアルの構造、又は、音響メタマテリアル内の、又は音響メタマテリアル周辺の空気圧を変更する。音響メタマテリアルによる音の吸収が勾配コイルにより生成されたノイズに合わせて調整されるように、圧力の調節は動的に行われ得る。
【0010】
一態様において、本発明は、磁気共鳴イメージングシステムコンポーネントを提供する。磁気共鳴イメージングシステムコンポーネントは、磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリのための音響シールドを備える。音響シールドは、磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリのボアに挿入されるために、及び、磁気共鳴イメージングシステムのボアを完全にカバーするように構成された円筒部分を備える。円筒部分は、磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリから離れる側に面するように構成された滑らかな露出した表面を備える。すなわち、滑らかな露出した表面は、磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリのボアから離れる側に面する。
【0011】
円筒部分は装着面を更に備える。音響シールドは、装着面に装着された音響メタマテリアルの層を更に含む。磁気共鳴イメージング中には典型的には大きい音響ノイズが生成されるので、この実施形態は有益である。特に、磁石のボア内には、騒々しい反復的なラッピング又はタッピングノイズを生成し得る勾配コイルが存在する。音響シールドの使用は、この音響ノイズを低減し、イメージングされる対象者に対してこの音響ノイズをより快適なものにする。
【0012】
磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリは、例えば、磁石、磁石のためのシム又は磁気シム、勾配コイル、及び他の機器を備える。
【0013】
別の実施形態において、音響シールドは、磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリから出射する音から磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリを音響的に封止するように構成される。幾つかの例において、これは、単に磁石のボア内の音響シールドである。他の例において、音響シールドは、より大きい部分、又は更には磁石全体をカバーする。この場合において、磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリ全体が、音響メタマテリアルの層を使用して音響的にシールドされる。これは、例えば、磁石の外側における音響メタマテリアルを含む端部キャップを含む。
【0014】
別の実施形態では、音響シールドは、円筒部分と磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリとの間の気密封止を形成するように構成された端部キャップを更に備える。音響メタマテリアルに対する音の吸収が圧力に依存することが示されているので、端部キャップの使用は有益である。端部キャップを使用することにより、これは、圧力の制御、ひいてはメタマテリアルが音を吸収するための周波数の調整を可能にする。
【0015】
別の実施形態では、音響メタマテリアルは、音響位相操作構造物を備える。
【0016】
別の実施形態では、音響メタマテリアルは、局所的に共鳴する音響メタマテリアルを含む。
【0017】
別の実施形態では、音響メタマテリアルは、長さに沿って分布した一連のヘルムホルツ共鳴器を備える。例えば、長さは、磁石の円筒ボアと同軸の方向に分布する。
【0018】
別の実施形態では、音響メタマテリアルは、有孔ハニカムコルゲーションハイブリッド音響メタマテリアルを含む。これらの種類のメタマテリアルは、磁気共鳴イメージングシステムにより典型的に生成される低周波音を吸収することが非常に得意であるので、これは有益である。
【0019】
別の実施形態では、音響メタマテリアルは、ハニカムハイブリッド音響メタマテリアルを含む。
【0020】
別の実施形態では、音響メタマテリアルは、コルゲーションハイブリッド音響メタマテリアルを含む。
【0021】
別の一態様では、音響シールドは、アクチュエータを備える。音響メタマテリアルは、個々のセルを含む。セルは、可変なボリュームをもつ。すなわち、セルの空隙又はサイズは変えられる。アクチュエータは、可変なボリュームを変更するように構成される。セルは、可変なボリュームを変更するための以下のうちの任意の1つ、すなわち、蛇腹部、調節可能なコンサーティナ型(折り畳み式)構造物、及び、上層と下層との間の運動部のうちの任意の1つを備える。アクチュエータは、ボリュームを制御するために、ひいては音響メタマテリアルに対する共鳴周波数又は主吸収音響周波数を調整するために使用される。
【0022】
別の実施形態では、音響シールドはアクチュエータを備える。音響メタマテリアルはセルを備え、セルの少なくとも一部の各々が滑らかな露出した表面から離れる側に向けられた開口を含む。音響シールドは、開口の寸法を調節するように構成された可動層を備える。アクチュエータは、開口の寸法を制御するために可動層を調節するように構成されている。開口の寸法を調節することは音響メタマテリアルが結果的に音を吸収する周波数又は周波数範囲を変えるので、これは有益である。
【0023】
別の実施形態では、磁気共鳴イメージングシステムコンポーネントは、磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリを更に備える。磁気共鳴イメージングシステムコンポーネントは、音響メタマテリアルの層と磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリとの間の空隙を備える。
【0024】
別の実施形態では、磁気共鳴イメージングシステムコンポーネントは、音響シールドによる周波数に依存する音響吸収を調節するために、空隙における空気圧を制御するように構成された空気圧制御システムを更に備える。音響シールドは、動作中に磁気共鳴イメージングシステムにより最も生成された音周波数を吸収するように調節され得るので、これは有益である。
【0025】
空気圧制御システムは、例えば異なる手法により実現されてもよい。一例において、空気圧制御システムは、ポンプ、又は空気圧を提供することができる他のシステムを備える。幾つかの例において、空気が捕獲されるように、音響シールドが磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリに対して封止される。他の例では、音響シールドは漏れがあってもよく、空隙に気体を吹き込んで空隙の空気圧を依然として制御するために、強力なポンプ又は圧縮空気が使用されてもよい。
【0026】
別の一態様では、本発明は、イメージングゾーンから磁気共鳴イメージングデータを取得するように構成された磁気共鳴イメージングシステムを提供する。磁気共鳴イメージングシステムは、一例による磁気共鳴イメージングシステムコンポーネントを備える。磁気共鳴イメージングシステムは、空隙の空気圧を表す空気圧データを取得するための圧力監視器を更に備える。圧力監視器は、空気圧制御システムを部分的に制御するための制御ループを形成する。この実施形態は、空隙における空気圧の精密な制御、ひいては、音響シールドにより吸収される音響ノイズの1つ又は複数の周波数の精密な制御を可能にするので、この実施形態は有益である。
【0027】
別の実施形態では、磁気共鳴イメージングシステムは、マシン実行可能命令及びパルスシーケンスコマンドを記憶するためのメモリを更に備える。本明細書において使用されるパルスシーケンスコマンドは、磁気共鳴イメージングシステムの制御及び動作を可能にするコマンドに変換されるコマンド又はデータである。磁気共鳴イメージングシステムは、磁気共鳴イメージングシステムを制御するためのプロセッサを更に備える。
【0028】
マシン実行可能命令の実行は、パルスシーケンスコマンドを使用して磁気共鳴イメージングシステムを制御することにより磁気共鳴イメージングデータを取得することをプロセッサにさせる。幾つかの例では、磁気共鳴イメージングデータは、1つ又は複数の磁気共鳴画像に更に再構成される。
【0029】
別の実施形態では、パルスシーケンスコマンドは、パルスシーケンスコマンドの実行中に空気圧制御システムを動的に制御するように構成された空気圧コマンドを含む。例えば、パルスシーケンスは、パルスシーケンスコマンドが実行されるときに空隙における選択された空気圧を指定するために使用され得るデータのための特別なフィールド又は位置を含む。パルスシーケンスコマンドの実行を通して、磁気共鳴イメージングシステムの勾配コイルにより生成される音響ノイズが経時的に変化するので、これは有益である。空隙における空気圧を動的に変えることにより、音響シールドは、磁気共鳴イメージングシステムにより現在生成されているノイズに適応され得る。空気圧制御システムの動的な制御は、パルスシーケンスコマンドを使用して空気圧を動的に制御する。
【0030】
別の実施形態では、マシン実行可能命令の実行は、パルスシーケンスコマンドを使用して勾配コイル音響周波数を計算することをプロセッサに更にさせる。マシン実行可能命令の実行は、勾配コイル音響周波数を使用して空気圧コマンドを計算することをプロセッサに更にさせる。勾配コイルはパルス状電流を供給される。勾配パルスからノイズの周波数スペクトルを計算することは簡単である。これは、前もって、又はオンザフライで空気圧コマンドを計算するために使用され得る。
【0031】
別の実施形態において、磁気共鳴イメージングシステムは、磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリから出射する音響ノイズのボア内の音響ノイズデータを測定するために構成されたマイクロホンシステムを更に備える。マシン実行可能命令の実行は、磁気共鳴イメージングデータの取得中に音響ノイズデータを取得することをプロセッサに更にさせる。マシン実行可能命令の実行は、音響ノイズデータのフーリエ変換を計算することによりノイズスペクトルを計算することをプロセッサに更にさせる。マシン実行可能命令の実行は、ノイズスペクトルと音響シールドの音響モデルとを使用して圧力設定値を計算することをプロセッサに更にさせる。
【0032】
音響モデルは、異なる例において異なる形態である。一例において、所与のノイズ周波数に対する圧力値を提供する参照テーブルが単に存在する。音響シールドによりシールドされるノイズ範囲をより完全にモデル化する数学モデルが使用されてもよい。マシン実行可能命令の実行は、圧力設定弁を使用して空気圧制御システムを制御することをプロセッサに更にさせる。この実施形態は独立して使用されてもよく、又は、パルスシーケンスにおける空気圧コマンドと共に使用されてもよい。空気圧コマンドと共に使用されるとき、圧力設定値は、パルスシーケンスコマンドにおいて設定された値を変更するために使用される。これは、音響ノイズの低減のためのより正確な、及びより動的な制御を提供する。
【0033】
別の実施形態では、マシン実行可能命令の実行は、マシン実行可能命令の実行中に空気圧ログに圧力設定値を記録することをプロセッサに更にさせる。マシン実行可能命令の実行は、空気圧ログを使用して空気圧コマンドを変更することをプロセッサに更にさせる。これは、例えば、パルスシーケンスコマンドに空気圧コマンドを自動的に追加するために使用される。これは、磁気共鳴イメージングシステムからのノイズのより一定の、及び効果的な低減を可能にする。
【0034】
別の一態様では、本発明は、一実施形態による磁気共鳴イメージングシステムを制御するプロセッサによる実行のためのマシン実行可能命令を含むコンピュータプログラムプロダクトを提供する。磁気共鳴イメージングシステムは、磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリのボア内における音響ノイズデータを測定するように構成されたマイクロホンシステムを更に備える。マシン実行可能命令の実行は、パルスシーケンスコマンドを使用して磁気共鳴イメージングシステムを制御することにより磁気共鳴イメージングデータを取得することをプロセッサにさせる。パルスシーケンスコマンドは、パルスシーケンスコマンドの実行中に空気圧制御システムを動的に制御するように構成された空気圧コマンドを含む。
【0035】
別の実施形態では、マシン実行可能命令の実行は、磁気共鳴イメージングデータの取得中にマイクロホンシステムを使用して音響ノイズデータを取得することをプロセッサに更にさせる。マシン実行可能命令の実行は、音響ノイズデータのフーリエ変換を計算することによりノイズスペクトルを計算することをプロセッサに更にさせる。マシン実行可能命令の実行は、ノイズスペクトルと音響シールドの音響モデルとを使用して圧力設定値を計算することをプロセッサに更にさせる。マシン実行可能命令の実行は、圧力設定弁を使用して空気圧制御システムを制御することをプロセッサに更にさせる。
【0036】
別の一態様では、マシン実行可能命令の実行は、マシン実行可能命令の実行中に空気圧ログに圧力設定値を記録することをプロセッサに更にさせる。マシン実行可能命令の実行は、空気圧ログを使用して空気圧コマンドを変更することをプロセッサに更にさせる。
【0037】
本発明の上述の実施形態のうちの1つ又は複数は、組み合わせられた実施形態が相互排他的でない限り、組み合わせられることを理解されたい。
【0038】
当業者には理解されるように、本発明の態様は、装置、方法又はコンピュータプログラムプロダクトとして具体化され得る。従って、本発明の態様は、全面的にハードウェア実施形態、全面的にソフトウェア実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を含む)又は本明細書において全て一般的に「回路」、「モジュール」若しくは「システム」と称され得るソフトウェア及びハードウェア態様を組み合わせた実施形態の形態をとり得る。更に、本発明の態様は、コンピュータ可読媒体上で具現化されたコンピュータ実行可能コードを有する1つ又は複数のコンピュータ可読媒体において具体化されたコンピュータプログラムプロダクトの形態をとり得る。
【0039】
1つ又は複数のコンピュータ可読媒体の任意の組み合わせが利用されてもよい。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体又はコンピュータ可読ストレージ媒体でもよい。本明細書で使用される「コンピュータ可読ストレージ媒体」は、コンピューティングデバイスのプロセッサによって実行可能な命令を保存することができる任意の有形ストレージ媒体を包含する。コンピュータ可読ストレージ媒体は、コンピュータ可読非一時的ストレージ媒体と称される場合もある。コンピュータ可読ストレージ媒体はまた、有形コンピュータ可読媒体と称される場合もある。一部の実施形態では、コンピュータ可読ストレージ媒体はまた、コンピューティングデバイスのプロセッサによってアクセスされることが可能なデータを保存可能であってもよい。コンピュータ可読ストレージ媒体の例は、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ハードディスクドライブ、半導体ハードディスク、フラッシュメモリ、USBサムドライブ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、光ディスク、磁気光学ディスク、及びプロセッサのレジスタファイルを含むが、これらに限定されない。光ディスクの例は、例えば、CD-ROM、CD-RW、CD-R、DVD-ROM、DVD-RW、又はDVD-Rディスクといったコンパクトディスク(CD)及びデジタル多用途ディスク(DVD)を含む。コンピュータ可読ストレージ媒体という用語は、ネットワーク又は通信リンクを介してコンピュータデバイスによってアクセスされることが可能な様々な種類の記録媒体も指す。例えば、データは、モデムによって、インターネットによって、又はローカルエリアネットワークによって読み出されてもよい。コンピュータ可読媒体上で具現化されたコンピュータ実行可能コードは、限定されることはないが、無線、有線、光ファイバケーブル、RF等を含む任意の適切な媒体、又は上記の任意の適切な組み合わせを用いて送信されてもよい。
【0040】
コンピュータ可読信号媒体は、例えばベースバンドにおいて又は搬送波の一部として内部で具体化されたコンピュータ実行可能コードを備えた伝搬データ信号を含む。このような伝搬信号は、限定されることはないが電磁気、光学的、又はそれらの任意の適切な組み合わせを含む様々な形態の何れかをとり得る。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読ストレージ媒体ではない及び命令実行システム、装置、若しくはデバイスによって又はそれと関連して使用するためのプログラムを通信、伝搬、若しくは輸送できる任意のコンピュータ可読媒体でもよい。
【0041】
「コンピュータメモリ」又は「メモリ」は、コンピュータ可読ストレージ媒体の一例である。コンピュータメモリは、プロセッサに直接アクセス可能な任意のメモリである。「コンピュータストレージ」又は「ストレージ」は、コンピュータ可読ストレージ媒体の更なる一例である。コンピュータストレージは、任意の不揮発性コンピュータ可読記憶媒体である。幾つかの実施形態において、コンピュータストレージはコンピュータメモリであってもよく、逆も同様である。
【0042】
本明細書で使用される「プロセッサ」は、プログラム、マシン実行可能命令、又はコンピュータ実行可能コードを実行可能な電子コンポーネントを包含する。「プロセッサ」を含むコンピューティングデバイスへの言及は、場合により、2つ以上のプロセッサ又は処理コアを含むと解釈されるべきである。プロセッサは、例えば、マルチコアプロセッサである。プロセッサは、また、単一のコンピュータシステム内の、又は複数のコンピュータシステムの中へ分配されたプロセッサの集合体も指す。コンピュータデバイスとの用語は、各々が1つ又は複数のプロセッサを有するコンピュータデバイスの集合体又はネットワークを指してもよいと理解されるべきである。コンピュータ実行可能コードは、同一のコンピュータデバイス内の、又は複数のコンピュータデバイス間に分配された複数のプロセッサによって実行される。
【0043】
コンピュータ実行可能コードは、本発明の態様をプロセッサに行わせるマシン実行可能命令又はプログラムを含んでもよい。本発明の態様に関する動作を実施するためのコンピュータ実行可能コードは、Java(登録商標)、Smalltalk、又はC++等のオブジェクト指向プログラミング言語及び「C」プログラミング言語又は類似のプログラミング言語等の従来の手続きプログラミング言語を含む1つ又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで書かれてもよい及びマシン実行可能命令にコンパイルされてもよい。場合によっては、コンピュータ実行可能コードは、高水準言語の形態又は事前コンパイル形態でもよい及び臨機応変にマシン実行可能命令を生成するインタプリタと共に使用されてもよい。
【0044】
コンピュータ実行可能コードは、完全にユーザのコンピュータ上で、部分的にユーザのコンピュータ上で、スタンドアローンソフトウェアパッケージとして、部分的にユーザのコンピュータ上で及び部分的にリモートコンピュータ上で、又は完全にリモートコンピュータ若しくはサーバ上で実行することができる。後者の場合、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)若しくは広域ネットワーク(WAN)を含む任意の種類のネットワークを通してユーザのコンピュータに接続されてもよい、又はこの接続は外部コンピュータに対して(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用したインターネットを通して)行われてもよい。
【0045】
本発明の態様は、本発明の実施形態による方法、装置(システム)及びコンピュータプログラムプロダクトのフローチャート、図及び/又はブロック図を参照して説明される。フローチャート、図、及び/又はブロック図の各ブロック又は複数のブロックの一部は、適用できる場合、コンピュータ実行可能コードの形態のコンピュータプログラム命令によって実施され得ることが理解されよう。相互排他的でなければ、異なるフローチャート、図、及び/又はブロック図におけるブロックの組み合わせが組み合わせられてもよいことが更に理解される。これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ又は他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサを介して実行する命令がフローチャート及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックにおいて指定された機能/行為を実施するための手段を生じさせるようにマシンを作るために、汎用コンピュータ、特定用途コンピュータ、又は他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサへと提供されてもよい。
【0046】
これらのコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ可読媒体に保存された命令がフローチャート及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックにおいて指定された機能/行為を実施する命令を含む製品を作るように、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、又は他のデバイスにある特定の方法で機能するように命令することができるコンピュータ可読媒体に保存されてもよい。
【0047】
コンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ又は他のプログラム可能装置上で実行する命令がフローチャート及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックにおいて指定された機能/行為を実施するためのプロセスを提供するように、一連の動作ステップがコンピュータ、他のプログラム可能装置又は他のデバイス上で行われるようにすることにより、コンピュータ実施プロセスを生じさせるために、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、又は他のデバイス上にロードされてもよい。
【0048】
本明細書で使用される「ユーザインタフェース」は、ユーザ又はオペレータがコンピュータ又はコンピュータシステムとインタラクトすることを可能にするインタフェースである。「ユーザインタフェース」は、「ヒューマンインタフェースデバイス」と称される場合もある。ユーザインタフェースは、情報若しくはデータをオペレータに提供することができる及び/又は情報若しくはデータをオペレータから受信することができる。ユーザインタフェースは、オペレータからの入力がコンピュータによって受信されることを可能にしてもよい及びコンピュータからユーザへ出力を提供してもよい。つまり、ユーザインタフェースはオペレータがコンピュータを制御する又は操作することを可能にしてもよい、及びインタフェースはコンピュータがオペレータの制御又は操作の結果を示すことを可能にしてもよい。ディスプレイ又はグラフィカルユーザインタフェース上のデータ又は情報の表示は、情報をオペレータに提供する一例である。キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、指示棒、グラフィックタブレット、ジョイスティック、ゲームパッド、ウェブコム、ヘッドセット、ペダル、有線グローブ、リモコン、及び加速度計を介したデータの受信は、オペレータから情報又はデータの受信を可能にするユーザインタフェース要素の全例である。
【0049】
本明細書で使用される「ハードウェアインタフェース」は、コンピュータシステムのプロセッサが外部コンピューティングデバイス及び/又は装置とインタラクトする及び/又はそれを制御することを可能にするインタフェースを包含する。ハードウェアインタフェースは、プロセッサが外部コンピューティングデバイス及び/又は装置へ制御信号又は命令を送ることを可能にしてもよい。ハードウェアインタフェースはまた、プロセッサが外部コンピューティングデバイス及び/又は装置とデータを交換することを可能にしてもよい。ハードウェアインタフェースの例は、ユニバーサルシリアルバス、IEEE1394ポート、パラレルポート、IEEE1284ポート、シリアルポート、RS-232ポート、IEEE488ポート、ブルートゥース(登録商標)接続、無線LAN接続、TCP/IP接続、イーサネット(登録商標)接続、制御電圧インタフェース、MIDIインタフェース、アナログ入力インタフェース、及びデジタル入力インタフェースを含むが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書で使用される「ディスプレイ」又は「ディスプレイデバイス」は、画像又はデータを表示するために構成された出力デバイス又はユーザインタフェースを包含する。ディスプレイは、視覚、音声、及び/又は触覚データを出力する。ディスプレイの例は、コンピュータモニタ、テレビスクリーン、タッチスクリーン、触覚電子ディスプレイ、点字スクリーン、陰極線管(CRT)、蓄積管、双安定ディスプレイ、電子ペーパー、ベクターディスプレイ、平面パネルディスプレイ、真空蛍光ディスプレイ(VF)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、エレクトロルミネッセントディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)、プロジェクタ、及びヘッドマウントディスプレイを含むが、これらに限定されない。
【0051】
磁気共鳴(MR)データは、本明細書においては、磁気共鳴イメージングスキャン中に磁気共鳴装置のアンテナによって原子スピンにより発せられた無線周波数信号の記録された測定結果として定義される。MRF磁気共鳴データは磁気共鳴データである。磁気共鳴データは、医療画像データの例である。磁気共鳴イメージング(MRI)画像又はMR画像は、本明細書においては、磁気共鳴イメージングデータ内に含まれる解剖学的データの再構成された2次元又は3次元の可視化として定義される。この可視化はコンピュータを使用して行うことができる。
【0052】
以下において、本発明の好適な実施形態が、単なる例として次の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】磁気共鳴イメージングシステムの例を示す図である。
図2図1の磁気共鳴イメージングシステムを動作させる方法の例を示すフローチャートを示す図である。
図3】機械的に調節可能な音響メタマテリアルの例を示す図である。
図4】機械的に調節可能な音響メタマテリアルの更なる例を示す図である。
図5】機械的に調節可能な音響メタマテリアルの更なる例を示す図である。
図6】音響シールドを示す図である。
図7】磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリの音響シールディングを示す図である。
図8】音響シールドを動作させる方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図において似通った参照番号を付された要素は、等価な要素であるか、同じ機能を実行するかの何れかである。先に考察された要素は、機能が等価である場合は、後の図においては必ずしも考察されない。
【0055】
図1は、磁気共鳴イメージングシステム100の例を示す。磁気共鳴イメージングシステムは、磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリ102を備える。円筒磁石アセンブリ102は、磁石104、勾配コイル、及びシムコイルといったものを備える。
【0056】
磁石104は、超伝導円筒型磁石であって、その超伝導円筒型磁石を通るボア106を含む超伝導円筒型磁石である。円筒磁石104のボア106内には、磁場が、磁気共鳴イメージングを実行するのに十分に強く均一であるイメージングゾーン108がある。関心領域109はイメージングゾーン108内に示される。取得される磁気共鳴データは、典型的には関心領域に対して取得される。対象者118の少なくとも一部がイメージングゾーン108及び関心領域109内に位置するように、対象者118が対象者支持体120により支持されたものとして示される。
【0057】
磁石のボア106内には、磁石104のイメージングゾーン108内で磁気スピンを空間的に符号化するために、予備的磁気共鳴データの取得のために使用される磁場勾配コイル110のセットもある。磁場勾配コイル110は磁場勾配コイル電源112に接続される。磁場勾配コイル110は代表的なものであることが意図される。典型的に、磁場勾配コイル110は、3つの直交空間方向で空間的に符号化するためのコイルの3つの別個のセットを含む。磁場勾配電源は、電流を磁場勾配コイルに供給する。磁場勾配コイル110に供給される電流は、時間の関数として制御され、傾斜化されるか又はパルス化される。
【0058】
イメージングゾーン108に隣接するのは、イメージングゾーン108内の磁気スピンの配向を操作するための及び同じくイメージングゾーン108内のスピンから無線伝送を受信するための無線周波数コイル114である。無線周波数アンテナは複数のコイル素子を含む。無線周波数アンテナは、チャネル又はアンテナとも呼ばれる。無線周波数コイル114は、無線周波数トランシーバ116に接続される。無線周波数コイル114及び無線周波数トランシーバ116は、別個の送信及び受信コイル並びに別個の送信機及び受信機と置き換えられる。無線周波数コイル114及び無線周波数トランシーバ116は代表的なものであることを理解されたい。無線周波数コイル114は、専用送信アンテナ及び専用受信アンテナをも表すように意図される。同様に、トランシーバ116は、別個の送信機及び受信機をも表す。無線周波数コイル114は、複数の受信/送信素子を有し、無線周波数トランシーバ116は、複数の受信/送信チャネルを有する。例えばSENSEなどのパラレルイメージング技法が実施される場合、無線周波数コイル114は複数のコイル素子を含み得る。
【0059】
磁気共鳴イメージングシステム100は、空気圧制御システム122を備えるものとして更に示される。空気圧制御システム122は、例えば空気又は他の加圧された気体を提供する。空気圧制御システム122は音響シールド124に接続されている。音響シールドは磁石104のボア106の内部にある。音響シールドは勾配コイル110をカバーする。音響シールド124は、磁石104のボア106に挿入された円筒部分125を含む。音響シールド124は、ボア106内の空間に接する滑らかな露出した表面126を含む。装着面127に装着された音響メタマテリアルの層128が、ボア106の中心から離れる側に面している。音響メタマテリアルの層128と磁場勾配コイル110との間に空隙130が存在している。空隙130内の圧力を測定するための圧力センサー132が存在する。空隙は、端部キャップ136により周辺の大気から封止され、又は部分的に封止される。
【0060】
ボア106内の音響ノイズ又は音響空気圧を測定するために使用されるマイクロホン又は空気圧センサー134が更に存在する。これは、例えば、磁気共鳴イメージングシステム100の動作中に勾配コイル110により生成されたノイズを特定するために使用される。
【0061】
トランシーバ116及び勾配コントローラ112は、コンピュータシステム140のハードウェアインタフェース144に接続されるものとして示される。コンピュータシステムは更に、ハードウェアシステム144、メモリ148、及びユーザインタフェース146と通信するプロセッサ142を備える。メモリ148は、プロセッサ142によりアクセス可能であるメモリの任意の組み合わせである。これは、メインメモリ、キャッシュメモリ、及び、更に、不揮発性メモリ、例えば、フラッシュRAM、ハードドライブ、又は他のストレージデバイスといったものを包含する。幾つかの例では、メモリ148は非一時的なコンピュータ可読媒体と考えられてもよい。
【0062】
メモリ148はマシン実行可能命令150を含むものとして示される。マシン実行可能命令150は、磁気共鳴イメージングシステム100の動作及び機能をプロセッサ142が制御することを可能にする。マシン実行可能命令150は、様々なデータ分析及び計算機能をプロセッサ142が実施することを更に可能にする。コンピュータメモリ148はパルスシーケンスコマンド152を含むものとして更に示される。パルスシーケンスコマンドは、磁気共鳴イメージングプロトコルに従って、対象者118から一連の磁気共鳴データを取得するように磁気共鳴イメージングシステム100を制御するように構成される。
【0063】
メモリ148は空気圧コマンド154を含むものとして更に示される。空気圧コマンド154は、パルスシーケンスコマンド152に統合され、パルスシーケンスコマンド152が実行されるときに空気圧制御システム122を動的に制御するために使用される。メモリ148はパルスシーケンスコマンド152の実行中に圧力センサー132を使用して測定された空気圧データ156を含むものとして更に示される。パルスシーケンスコマンド152が実行されるとき、特に勾配コイル110が音響ノイズをもたらす。異なる勾配パルスが変わるとき、任意の音響ノイズの周波数成分が変えられる。空気圧コマンド154は、音響メタマテリアルの層128の周波数吸収特性を変えるために、空隙130内の空気圧を変えるために使用される。
【0064】
メモリ148は、マイクロホン134を使用して取得された音響ノイズデータ158を含むものとして更に示される。マイクロホンは、音及び/又は空気圧を測定すると理解される。メモリ148は、音響ノイズデータ158のフーリエ変換160を含むものとして更に示される。これは、例えば、磁石のボア106内における音響ノイズの周波数成分を特定する場合に有用である。メモリ148は、フーリエ変換160からのデータを音響シールド124の音響モデル164に入力することにより使用された圧力設定値162を含むものとして更に示される。圧力設定値162は、パルスシーケンスコマンド152を実行する過程において繰り返し取得され、又は特定される。これらは、例えば、メモリ148に更に示される空気圧ログ166に記録される。空気圧ログ166は、後に、空気圧コマンド154を生成するために、及び/又は変えるために使用される。
【0065】
メモリ148は、パルスシーケンスコマンド152を使用して磁気共鳴イメージングシステム100を制御することにより取得された磁気共鳴イメージングデータ168を含むものとして更に示される。メモリ148は、磁気共鳴イメージングデータ168から再構成された磁気共鳴画像170を含むものとして更に示される。
【0066】
図2は、図1の磁気共鳴イメージングシステム100を動作させる方法を示すフローチャートを示す。最初に、ステップ200において、磁気共鳴イメージングシステム100が、磁気共鳴イメージングデータ168を取得するためにパルスシーケンスコマンド152を使用して制御される。パルスシーケンスコマンド152は、空隙130内の空気圧を動的に制御するように空気圧制御システム122を制御する空気圧コマンド154を含む。ステップ202において、マイクロホンシステム134は、パルスシーケンスコマンド154の実行中に音響ノイズデータ158を測定するように制御される。
【0067】
次に、ステップ204において、音響ノイズデータ158のフーリエ変換をすることにより、ノイズスペクトル160が計算される。次に、ステップ206において、ノイズスペクトル160と音響シールドの音響モデル164とを使用して、圧力設定値162が計算される。次に、ステップ208において、空気圧制御システム122が、圧力設定値162を使用して制御される。幾つかの場合において、空気圧制御システム122は圧力設定値162を使用して制御され、及び/又は、空気圧制御システム122は空気圧コマンド154からの値を使用して制御される。次に、ステップ210において、圧力設定値162が空気圧ログ166に記録される。更に最後に、ステップ212において、空気圧コマンド154が空気圧ログ166を使用して変更される。
【0068】
図3は、音響メタマテリアルの層128の1つのセル300の2つの図を示す。この1つのセル300は、蛇腹部308により形成された空気ボリューム304を含む。一端部に、空隙130への開口302が存在する。蛇腹部308は、アクチュエータ306に接続されている。下側の図では、アクチュエータが蛇腹部308を収縮させた状態にあり、蛇腹部308はこの段階で小さくされた空気ボリューム310をもつ。空気ボリューム304から310までの変化は、音響メタマテリアルの層128の音吸収特性の変化をもたらす。
【0069】
図4は、代替的な音響メタマテリアルの個々のセル400の2つの図を示す。アクチュエータ306に接続された可動層402が存在する。上側の図では、可動層402は、空気ボリューム304を最大化する緩和された位置にある。下側の図では、可動層402は306におけるアクチュエータにより移動させられた状態にある。これは、空気ボリュームが小さくされた空気ボリューム310になることをもたらす。同様に、304から310までの空気ボリュームの変化は、音響メタマテリアルの層128の音響的な性質の調整を可能にする。
【0070】
図5は、更なるセル500を示す。この例では、セルは固定されており、及び硬質である。ボリュームを変える代わりに、開口302が調節される。更なる孔をもつ可動カバー層502が存在する。アクチュエータ306は、開口302’の有効サイズを変えるために、上図の位置と下図の位置との間で位置をスライドさせることができる。これは、音響メタマテリアルの層128の吸収特性の更なる調整を可能にする。
【0071】
例は、音吸収MRカバー(音響シールド124)を提供する。音吸収MRカバーは、場合によっては3D印刷された、音響メタマテリアルの層を含んで製造される。この高効率な広帯域の吸収は、患者により体験される音圧を下げ、以て患者の快適さを高める。
【0072】
吸収スペクトルは、幾つかの例において、全てのスキャニング条件のもとで最適な吸収を提供するために、現在有効なMRシーケンスに動的に適応される。吸収スペクトルの適応は、磁石とカバーとの間の空隙内における空気圧を調節することにより実現される。
【0073】
近年、音響メタマテリアルは科学界で益々関心を集めている。これらの材料は、連成振動子を形成する波長より小さい幾何学的構造物からなる。例えば3D印刷技法を使用して特別な構造物を設計することにより、他の受動材料において観測されるものとは異なる非常に独特な音響的な性質をもつ音響メタマテリアルが構築され得る。これらの材料の1つの用途は、低周波(100Hz~2000Hz)における非常に高効率な広帯域の音吸収である。
【0074】
上述のように、MRスキャナを動作させるとき、勾配コイルを通る電流をスイッチングすることが、音波に変換される機械的振動を生成する。従って、MRボア内の患者は、非常に騒々しいノイズを体験する。MRシーケンスの実行に依存して、これらのノイズは異なる周波数におけるものであり得る。
【0075】
本発明は、プラスチックカバーを調整可能な吸収特性をもつ音吸収性にするという手法により、勾配コイルと患者との間のプラスチックカバーを変更するための手法を示し、以てボア内におけるノイズを低減し、及び患者の快適さを高める。
【0076】
例は、
1.音響メタマテリアルを使用してMRカバーを構築する手法
2.メタマテリアルの音吸収特性を変更するシステム
3.MRシーケンスの実行に基づいて音吸収変更を制御するシステム
を提供する。
【0077】
図6は、設置された音響シールド124の拡大図を示す。音響シールド124と勾配コイル110との間に空隙130が存在するように、音響シールド124がボア内に搭載されている。音響シールド124は、患者又はボアの内側を向いた滑らかな露出した表面126を含む。これは支持層を形成し、この支持層に音響メタマテリアルの層128が搭載される。この図は、カバー及び勾配コイルの装着面の断面を示す。カバー(音響シールド124)は、硬質材料、例えば、硬質プラスチック、又は炭素繊維材料から作られた外側(患者側)を向いた支持層を備える。音響メタマテリアルは支持層の上に構築されている。メタマテリアルは、特定の周波数範囲(典型的には、数百ヘルツから数千ヘルツまで)における音を吸収するように設計された幾何学的構造物からなる。
【0078】
図7は、音響シールド124の代替的な実施形態を示す。図1に示される例では、音響シールドは磁石のボア106内のみに存在していた。この例では、ボア106、及び、磁石又は磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリ102の外部の両方が示されている。従って、これは、磁石102を通して実際に透過された音響ノイズも吸収する。空気圧制御システム122として機能する、及び両方の空隙130における空気圧を制御する圧縮器が存在する。この図は、周辺カバーと共にMR磁石の断面を示す。磁石とカバーとの間の空隙は、空気圧を調節するための圧縮器/ポンプユニット122に接続されている。この例では、カバー124が勾配コイル110及び磁石104構成体を完全に囲んでいるので、メタマテリアルと勾配コイル又は磁石表面との間の空隙が空気の閉じたボリュームを表す。
【0079】
メタマテリアルは、広帯域音吸収体である。それにもかかわらず、MRスキャナは非常に広い周波数範囲にわたって音を生成するように構成され得るので、メタマテリアルの吸収特性は勾配コイルの電流動作特性に対して調整されなければならない。音響メタマテリアルの吸収係数は幾何学的構成に依存するだけでなく、空気の密度にも依存するので、ピーク吸収周波数は、磁石とカバーとの間の空隙内における空気圧を変えることにより調整され得る。
【0080】
圧縮器及び/又はポンプ(圧力制御システム122)は、現在実行されているMRシーケンスに応じて、カバーと磁石との間の圧力を上げる、及び下げる(以て吸収周波数を変更する)ために空隙ボリュームに接続されている。実用上の理由から、空隙は完全に封止されることができないので、一定の事前選択された空気圧を生成するためにポンプは連続的に動作しなければならない。現在のPhilips MRシステムは、この目的ために再使用される空気流のための出口を既に提供している。
【0081】
メタマテリアル吸収を調節するための工程が、後述の図8に示されている。MRスキャンの選択(開始)後に、想定されるノイズ周波数スペクトルが知られた勾配波形から計算される。この情報は、圧力ポンプを動作させることにより空隙内の圧力を設定するために使用される。スキャン中に、圧力は、空気圧の測定結果、及び/又は、カバーを通して透過された音レベルの測定結果に基づいて継続的に再調節される。
【0082】
図8は、図1の磁気共鳴イメージングシステム100を動作させる方法の更なる例を示す。最初に、ステップ800において本方法が始まる。次に、ステップ802において、磁気共鳴イメージングシーケンスが選択される。次に、ステップ804において、選択された磁気共鳴シーケンス802から勾配コイル周波数が計算され、最良の吸収のための理想的な空気圧が特定される。次に、ステップ806において、空隙の圧力及び/又は透過された音圧が測定される。ステップ808においてこの情報を使用して、空隙内における空気圧が調節される。810は判定ボックスであり、判定内容は、「スキャン又はMRプロトコルが終了したか?」であり、判定結果が「いいえ(no)」である場合、本方法はステップ806にループバックする。スキャンが終了した場合、本方法はステップ812に進み、本方法が終了する。
【0083】
本発明は、図面及び前述の記載において詳細に図示及び説明されたが、このような図示及び記載は、説明的又は例示的であって限定するものではないと見なされるべきである。すなわち本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。
【0084】
開示された実施形態のその他の変形が、図面、本開示及び添付の請求項の検討から、請求項に係る発明を実施する当業者によって理解されて実現され得る。請求項において、「含む、備える」という単語は、他の要素又はステップを除外するものではなく、単数形は、複数を除外するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが請求項に記載された幾つかのアイテムの機能を果たす。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に用いられないことを示すものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に若しくは他のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体等の適当な媒体に保存/分配されてもよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線の電気通信システムを介して等の他の形式で分配されてもよい。請求項における任意の参照符号は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0085】
100 磁気共鳴イメージングシステム
102 磁気共鳴イメージング円筒磁石アセンブリ
104 磁石
106 磁石のボア
108 イメージングゾーン
109 関心領域
110 磁場勾配コイル
112 磁場勾配コイル電源
114 無線周波数コイル
116 トランシーバ
118 対象者
120 対象者支持体
122 空気圧制御システム
124 音響シールド
125 円筒部分
126 滑らかな露出した表面
127 装着面
128 音響メタマテリアルの層
130 空隙
132 圧力センサー
134 マイクロホン
136 端部キャップ
140 コンピュータシステム
142 プロセッサ
144 ハードウェアインタフェース
146 ユーザインタフェース
148 コンピュータメモリ
150 マシン実行可能命令
152 パルスシーケンスコマンド
154 空気圧コマンド
156 空気圧データ
158 音響ノイズデータ
160 ノイズスペクトル
162 圧力設定値
164 音響シールドの音響モデル
166 空気圧ログ
168 磁気共鳴イメージングデータ
170 磁気共鳴画像
200 パルスシーケンスコマンドを使用して磁気共鳴イメージングシステムを制御することにより磁気共鳴イメージングデータを取得する
202 磁気共鳴イメージングデータの取得中に音響ノイズデータを取得する
204 音響ノイズデータのフーリエ変換を計算することによりノイズスペクトルを計算する
206 ノイズスペクトルと音響シールドの音響モデルとを使用して圧力設定値を計算する
208 圧力設定値を使用して空気圧制御システムを制御する
210 マシン実行可能命令の実行中に空気圧ログに圧力設定値を記録する
212 空気圧ログを使用して空気圧コマンドを変更する
300 セル
302 開口
302’ 有効開口サイズ
304 空気ボリューム
306 アクチュエータ
308 蛇腹部
310 小さくされた空気ボリューム
400 セル
402 可動層
406 孔
500 セル
502 可動カバー層
800 開始
802 磁気共鳴パルスシーケンスを選択する
804 最良の吸収のための勾配コイル周波数及び理想的な圧力を計算する
806 空隙空気圧及び/又は透過された音圧を測定する
808 空気圧を調節する
810 スキャンが終了した?
812 終了
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8