(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】補綴手術用切削装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/16 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
A61B17/16
(21)【出願番号】P 2021559330
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 IT2020050065
(87)【国際公開番号】W WO2020202227
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】102019000005272
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】515326022
【氏名又は名称】リマコルポラーテ エッセ.ピ.ア.
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】フィードラー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】セッコーニ,マッシモ
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0125154(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0320428(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/16
A61B 17/56-17/92
A61F 2/00
A61F 2/02-2/80
A61F 3/00-4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削ツール(11)と、
前記切削ツール(11)を回転させるために前記切削ツール(11)に接続された、回転の長手方向軸線(Z)に沿って延びる回転駆動軸(22)を有するハンドラー本体(14)とを備える補綴手術用切削装置であって、
前記回転
駆動軸(22)は、前記長手方向軸線(Z)に対する前記切削ツール(11)の複数の傾斜位置を選択的に定義するように、前記切削ツール(11)に回転可能に結合された
アンギュラージョイント(18)を備えることを特徴とし、および前記ハンドラー本体(14)は
、前記長手方向軸線(Z)に対して偏心配置されたスタビライザー本体(21)を備えるガイド部材(20)を備え、
前記スタビライザー本体(21)は、前記複数の傾斜位置の中から、前記切削ツール(11)の単一の特定の傾斜位置を選択的に定義するために前記切削ツール(11)と協働するように構成され、前記切削ツール(11)それ自体は、前記長手方向軸線(Z)に対して傾斜している特定の切削軸(R)周りに回転することができることを特徴とする補綴手術用切削装置。
【請求項2】
前記スタビライザー本体(21)は、前記長手方向軸線(Z)に対する偏心性に従って、前記長手方向軸線(Z)に対する前記切削ツール(11)の前記単一の特定
の傾斜位置を定義するために、前記切削ツール(11)と
嵌り合うように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ハンドラー本体(14)は、取外し可能な方法で前記
回転駆動軸(22)と同軸結合され、且つ前記ガイド部材(20)を備えている管状ハンドル(23)を備えることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記切削ツール(11)の凹状結合座部(12)の内部に設けられた結合座部(35)と操作可能に結合された、前記
回転駆動軸(22)の遠位端(16)の廻り止め制限要素(19)を備え
、前記廻り止め制限要素(19)は、前記結合座部(35)と嵌り合う形状の剛性伝達タブ(41)を備えることを特徴とする、請求項1、請求項2または請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記
アンギュラージョイント(18)は、前記長手方向軸線(Z)の周りに設けられた一つ以上の凸状湾曲部(24)を有
し、
前記凸状湾曲部(24)は、前記切削ツール(11)の軸方向位置を決定する弾性的なスナップ方式の結合を可能にする凹部(36)と取外し可能に結合することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記一つ以上の凸状湾曲部(24)は球状部分であることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記
アンギュラージョイント(18)は、前記長手方向軸線(Z)に対して直径方向の反対側に設けられた少なくとも二つの凸状湾曲部(24)を有することを特徴とする、請求項5または請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記
アンギュラージョイント(18)は、各々が、前記凸状湾曲部(24)のうちの一つを備えている弾性の楔止タブ(37)を備えることを特徴とする、請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記廻り止め制限要素(19)は、前記凸状湾曲部(24)と交互に、前記長手方向軸線(Z)の周りに設けられることを特徴とする、請求項5乃至請求項8のいずれか一項と組合せた請求項4に記載の装置。
【請求項10】
前記廻り止め制限要素(19)は、回転運動を前記切削ツール(11)に伝えるために、前記切削ツール(11)上に存在している対応する結合座部(35)と嵌り合う形状の
前記剛性伝達タブ(41)を備えることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記スタビライザー本体(21)は、前記切削ツール(11)の前記凹状結合座部(12)の内側面(33)とスライド結合している外側面(32)を有し、前記外側面(32)は円筒形の部分によって画定され、且つ長手方向軸線(Z)に対する前記切削軸(R)の角度を実質的に定義する傾斜の角度(α)だけ、前記長手方向軸線(Z)に対して傾斜され、前記凹状結合座部(12)の前記内側面(33)は、前記外側面(32)を画定する前記円筒形の部分の直径よりもわずかに大きい直径を有する円筒形の輪郭を有することを特徴とする、
請求項4を直接又は間接的に引用する請求項1乃至10のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨ボイドフィラー用の座部を準備するのに適した、または、人工補綴物を収容するための骨座部を準備するのに適した、補綴手術用切削装置に関する。
【0002】
具体的には、該切削装置は、特に、人工膝関節のための骨ボイドフィラー用座部を形成するのに、または、上腕骨プロテーゼとも呼ばれる人工肩関節用または人工股関節用の骨座部を準備するのに適している。
【背景技術】
【0003】
人工補綴物を埋め込むための整形外科手術においては、骨ボイドフィラー用座部の準備、または、人工補綴物用の収容座部の該準備が必要な場合、所望の輪郭を備えた該座部を形成するために、該骨に穴を形成するおよび/または切削を実行することが必要であることが知られている。
【0004】
実際には、多くの場合、先天性または外傷性の変形性病状、例えば、一次関節症、外傷による、または、感染によって引き起こされる二次関節症、関節リウマチ、炎症性関節炎、骨壊死、または骨腫瘍、またはその他の同様の問題は、健康な関節の動きと似ている全体的な動きを再現することができる人工補綴物の埋め込みを必要とする。
【0005】
また、上記のような病状により、海綿骨が該人工補綴物を支持することができない場合には、該人工補綴物用の支持体として作用する骨または金属ボイドフィラーの該埋め込み用の適切な骨座部を形成することが必要であることも知られている。この問題は、特に人工膝関節の場合、および人工股関節や人工肩関節の場合に重要になる可能性がある。
【0006】
該人工膝関節は、典型的には、大腿骨の遠位端に取付けられる大腿骨コンポーネントと、脛骨の近位端に取付けられる脛骨コンポーネントとを備えている。
【0007】
特に、以前に埋め込んだ人工膝関節の補正を実行することが必要な場合に、適切な支持円錐体を適用するための骨座部を最初に形成するには、一つ以上のリーマーを用いて、漸増直径を有する穴を形成することと、その後に、適切な切削装置を用いてそれを整形することとを要する。
【0008】
この目的のために、上記のような該座部を準備するために補綴手術中に用いることができる該切削装置が知られている。
【0009】
それらの切削装置は、典型的には、症状により、該脛骨または大腿骨の髄内管の軸線と実質的に一致している長手方向軸線に沿って延びる軸が設けられ、および駆動部材への取付部を有する近位端と、該駆動部材によって回転させられる、切削ツールに接続された遠位端とが設けられているハンドラー本体を備えている。
【0010】
脛骨および大腿骨はともに、非対称の細長い構造を有しているため、骨座部の準備中に直面する主な問題のうちの一つは、該脛骨および大腿骨の皮質ゾーンの穿孔を回避することである。
【0011】
公知の切削装置の欠点の一つは、それらの装置が、該症状により、該脛骨および大腿骨の該髄内管の軸線と実質的に一致している切削軸線の方向に該骨座部を整形するように構成されているため、該脛骨および大腿骨の解剖に追従できないということである。
【0012】
場合により、該皮質ゾーンの穿孔を避けるために、外科医は、骨座部を限定されたサイズに形成するように強制されるが、このことは、特に補綴物から成る以前のインプラントが該海綿骨の拡張領域を損傷させた場合、または、該拡張領域を使えないものにした場合はどんな場合であっても、該補綴物の適切な関節の安定性を十分に保証できない可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、先行技術の該欠点のうちの少なくとも一つを克服することができる補綴手術用切削装置を完全なものにする必要性がある。
【0014】
具体的には、該本発明の一つの目的は、該骨の皮質ゾーンに対する損傷を回避する切削を実行することができる補綴手術用切削装置を提供することである。
【0015】
該本発明の別の目的は、該髄内管の該軸線とは異なる、すなわち、髄内管の内部に挿入されているガイドされた軸の該軸線とは異なる切削軸線に対して安定した切削を生じることができる補綴手術用切削装置を提供することである。
【0016】
該本発明の別の目的は、使いやすい、および限定された数の部品から成る補綴手術用切削装置を提供することである。
【0017】
該本発明の別の目的は、組立てが簡単であり、外科手術がしやすく、およびそのクリーニングおよび滅菌を実行するための分解もしやすい補綴手術用切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本出願人は、先行技術の欠点を克服するために、およびこれらおよびその他の目的および利点を得るために、該本発明を考案し、テストし、および具体化した。
【0019】
該本発明は、独立項に記載されており、および該独立項で特徴付けられている。従属項には、該本発明の他の特徴、または、主な発明力のある着想に対する変形例が記載されている。
【0020】
上記の目的によれば、該補綴手術用切削装置は、切削ツールと、長手方向軸線に沿って延びる回転駆動軸を有するハンドラー本体とを備えている。該回転軸は、該切削ツールを該長手方向軸線周りに回転させるように、該切削ツールに接続されている。
【0021】
該本発明の一つの態様によれば、該回転軸は、該長手方向軸線に対して、該切削ツールの複数の傾斜位置を選択的に定義するように、該切削ツールに回転可能に結合されたアンギュラージョイントを備えている。
【0022】
該本発明の別の態様によれば、該ハンドラー本体は、上記のような該複数の傾斜位置の中から、該切削ツールの、該長手方向軸線に対する単一の特定の安定した傾斜位置を選択的に定義するように、該切削ツールと協働するように構成された、該長手方向軸線に対して偏心配置されたスタビライザー本体を備えているガイド部材を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
該本発明の別のこれらおよびその他の態様、特徴および利点は、添付図面に関連した非限定的な実施例として与えられたいくつかの実施形態に関する以下の説明から明らかになるであろう。
【0024】
【
図1】本願明細書に記載されている実施形態による、特に脛骨に対する適用のための、補綴手術用切削装置の分解斜視図を示す。
【
図5】該補綴手術用切削装置の可能な適用、およびそれが解決する問題の概略図を示す。
【
図6】本願明細書に記載されている実施形態による、特に該脛骨に対する適用のための、補綴手術用切削装置の側面図を示す。
【
図8】
図6の線VIII-VIIIに沿った断面である。
【
図10】本願明細書に記載されている実施形態による、特に該大腿骨に対する適用のための、補綴手術用切削装置の分解斜視図を示す。
【
図12】本願明細書に記載されている実施形態による、特に該大腿骨に対する適用のための、補綴手術用切削装置の側面図を示す。
【
図14】本願明細書に記載されている実施形態による、特に該肩関節に対する適用のための、特に関節窩のための補綴手術用切削装置の分解斜視図を示す。
【
図16】本願明細書に記載されている実施形態による、特に該肩関節に対する、具体的には関節窩に対する適用のための、補綴手術用切削装置の側面図を示す。
【0025】
理解を容易にするため、可能な場合には、図面における同一の共通の要素を識別するために同じ参照番号が用いられている。一つの実施形態の要素および特徴を、さらなる説明を要することなく、他の実施形態に都合良く組み込むことができることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明者等は、一つ以上の実施例が該添付図面に図示されている本発明のさまざまな実施形態に関して詳細に言及する。各実施例は、本発明の例証として提供されており、および本発明の限定として理解すべきではない。例えば、図示されているまたは記載されている該特徴は、それらが一つの実施形態の一部である限り、別の実施形態を提示するために、他の実施形態に採用することができ、または、他の実施形態と関連付けることができる。該本発明は、すべてのこのような変更例および変形例を含むことになることを理解されたい。
【0027】
該実施形態を説明する前に、本発明者等は、その適用において、該説明が、該添付図面を用いて以下の説明に記載されているような構成要素の構造および配置の詳細に限定されないことも明確にしなければならない。該説明は、他の実施形態を提供することができ、およびさまざまな他の方法で達成または実行することができる。また、本発明者等は、ここで用いる表現や専門用語は、説明のためのものにすぎず、および限定的と見なすことはできないことも明確にしなければならない。
【0028】
該添付図面を用いて説明する実施形態は、該添付図面において全体として参照数字10で示されている補綴手術用切削装置に関するものである。
【0029】
該添付図面を個別に参照すると、
図1から
図9は、該脛骨のための骨ボイドフィラー用座部を形成するのに適した切削装置10に関し、
図10から
図13は、該大腿骨のための骨ボイドフィラー用座部を形成するのに適した切削装置10に関し、および
図14から
図17は、上腕骨プロテーゼとも呼ばれる、人工肩関節用座部の形成に適している切削装置10に関する。
【0030】
以後、装置10と呼ぶ、補綴手術用切削装置10は、切削ツール11と、該切削ツール11を長手方向軸線Z周りに回転させるように該切削ツール11に接続された、該長手方向軸線Zに沿って延びる回転駆動軸22を有するハンドラー本体14とを備えている。
【0031】
該本発明の一つの態様によれば、該回転軸22は、該長手方向軸線Zに対する該切削ツール11の複数の傾斜位置を選択的に定義するために、該切削ツール11に回転可能に結合されたアンギュラージョイント18を備えている。
【0032】
該本発明の別の態様によれば、該ハンドラー本体14は、該複数の傾斜位置の中から、該切削ツール11の、該長手方向軸線Zに対する単一の特定の安定した傾斜位置を選択的に定義するように、該切削ツール11と協働するように構成された、該長手方向軸線Zに対して偏心配置されたスタビライザー本体21を備えているガイド部材20を備えている。
【0033】
該特定の安定した傾斜位置は、該切削ツール11が、手術用途(該脛骨に対する、該大腿骨に対する、または該肩関節に対する用途)に従って変化する傾斜の角度αだけ、該回転軸22の回転の該長手方向軸線Zに対して傾斜した切削軸Rに対して回転することを可能にする。そのため、該切削ツール11は、該回転軸22に対しておよび該ハンドラー本体14に対して傾斜すると言える。
【0034】
具体的には、該ガイド部材20は、該軸22が該長手方向軸線Zに対して回転したときに、該切削ツールが該切削軸Rに対して回転するように、該傾斜の角度αを定義する。
【0035】
図5に概略的に図示されているように、該装置10のこの構成の場合、該骨の皮質ゾーン110を損傷させることなく骨座部を形成することが可能である。実際には、該装置10全体は、該長手方向軸線Zが脛骨切除に対して実質的に直交するように、すなわち、該髄内管に実質的に平行であるように用いられるが、該装置10は、該特定の安定した傾斜位置に対応する該傾斜の角度αに対して該骨座部を整形する。該切削ツール11は、可能な限り、所望の曲線の回転によって得られる回転体のプロファイルを、例えば、該脛骨または大腿骨の内部形態に近いプロファイルを有することができる。具体的には、公知の切削装置は、破線で概略的に図示されており、本願明細書に記載されている実施形態による該装置10は、実線で図示されている。該公知の切削装置は、明らかに、該皮質ゾーン110を損傷させるリスクを伴って、該皮質ゾーンのかなり近くを動く。
【0036】
さらに、このことは、ユーザが、特に該海綿骨の深刻な変性の症例時に、該補綴物の適切な関節安定性を保証できる、より深部の座部を形成することを可能にする。
【0037】
該切削ツール11は、結合極性開口13を有する凹状結合座部12を有している。
【0038】
該軸22には、該凹状結合座部12の内部で該切削ツール11に接続された遠位端16と、該切削ツール11を該長手方向軸線Z周りに回転させるための、駆動部材への取付部17を有する近位端15とが設けられている。
【0039】
ここでは、および以下の説明において、該切削装置10の該軸22を説明するときの「近位」および「遠位」という相対語は、該切削装置10に関する見方に関連して定義される。したがって、「近位」は、該取付部17との結合の方向を指し、また、「遠位」は、該切削ツール11との結合の方向を指す。
【0040】
具体的には、該アンギュラージョイント18は、該軸22の該遠位端16に配置され、および該切削ツール11が、該長手方向軸線Zに対する複数の傾斜位置を選択的に採用することを可能にする自由度で、該結合極性開口13と回転可能に結合されている。
【0041】
実施形態によれば、該ハンドラー本体14は、取外し可能な方法で該軸22と同軸結合され、および該ガイド部材20が設けられている管状ハンドル23を備えている。
【0042】
該管状ハンドル23には、それぞれ該軸22の該遠位端16および該近位端15と関連付けられている遠位開口25および近位開口26が設けられている。
【0043】
該管状ハンドル23は、該軸22との回転結合のための、該遠位開口25から該近位開口26までの長手方向貫通チャネル27を有している。有利には、該長手方向チャネル27は、該軸22のサイズよりも大きい、該長手方向軸線Zに直交する方向におけるサイズを有しており、このことは、不必要なスライドを防ぐことができる。
【0044】
可能な解決法によれば、該管状ハンドル23は、一体構成で形成することができ、または、該軸22を収容するように選択的に組合せ可能な二つの別々のシェル状部材で形成することができる。有利には、該管状ハンドル23は、該軸22および該切削ツール11との可能性のある摩擦を最小限まで低減するために、プラスチック材料で形成することができる。
【0045】
本願明細書に記載されている実施形態によれば、特に
図8、
図9および
図13および
図17を参照すると、該近位開口26の該サイズは、該軸22の周方向の保持縁部30と協働するように、および該長手方向軸線Zの該方向において該軸22の所望の位置決めを保証するように、該長手方向チャネル27の該サイズよりもわずかに小さくなっている。
【0046】
有利には、該管状ハンドル23は、該ユーザが管状ハンドル23を握って取り扱うのを補助するために、人間工学的で滑らないグリップ28を外側に有することができる。この目的のために、該管状ハンドル23は、少なくともその中央ゾーンに延在し、場合によってはギザギザのある表面を有している長手方向溝29を有している。さらに、該グリップ28は、その保持をさらに改善するために、丸みの付いた形状を有することができる。
【0047】
本願明細書に記載されている実施形態によれば、該軸22は挿管され、すなわち、軸22は内部が中空であり、手術中に、所望の切削位置において、該装置10を軸方向に配置するのに必要なガイド要素を収容するのに適している、長手方向軸線Zに平行であるガイドチャネル42を有している。
【0048】
少なくとも大腿骨および/または脛骨用の切削装置10の場合、該ガイド要素は、一般に、漸増直径の一つの第一の穴または複数の第一の穴を形成するために該装置10の前に使用されるリーマー装置とすることができる。一旦、該穴の適切な直径に達すると、該装置10は、該ガイド要素が該ガイドチャネル42に挿入され、その結果、該切削操作のための軸方向ガイドとして作用するように準備される。
【0049】
該ガイド部材20、および具体的には該スタビライザー本体21は、該凹状結合座部12と協働するように構成されている。
【0050】
実施形態によれば、該スタビライザー本体21は、該長手方向軸線Zに対する偏心性に基づいて、該長手方向軸線Zに対する該切削ツール11の特定の安定した傾斜位置を定義するために、該切削ツール11の該凹状結合座部12との同じ形状の結合を形成するように構成されている。
【0051】
該ガイド部材20は、該長手方向軸線Zの該方向において、該軸22の所望の位置決めを保証するために、該遠位開口25と、該軸22の整形された部分40を収容するように構成されたスライド結合座部31とを備えている。具体的には、該座部31は、該長手方向軸線Zに対して偏心されている。
【0052】
該座部31は、該周方向の保持縁部30によって実行される該位置決め動作と協働して、該軸22の位置決め動作を実行するように構成されている。このようにして、一旦、該軸22が動作可能なように該長手方向チャネル27に挿入されると、該長手方向軸線Zの該方向におけるその位置決めが実質的に決定される。具体的には、該整形された部分40は、該座部31と回転結合される。この結合は、機能的な動きを可能にするために、該座部31の表面と、該整形された部分40の表面との間に最小限の空間があることを前提としている。
【0053】
例えば、
図1から
図3および
図10、
図11に示す実施形態によれば、該整形された部分40は、実質的に円筒形の形状を有している。該スタビライザー本体21は、該切削ツール11の該凹状結合座部12の内側面33とスライド結合している外側面32を有している。該外側面32は、円筒形部分によって画定され、および該長手方向軸線Zに対する該切削軸Rの角度形成を実質的に定義する傾斜の角度αだけ、該長手方向軸線Zに対して傾斜している。該凹状結合座部12の該内側面33は、上記のような該スライド結合を確保するために、該外側面32を画定する該円筒形の部分の該直径よりもわずかに大きい直径を有する、有利には円筒形の輪郭を有している。該スライド結合は、該長手方向軸線Zに対する該切削ツール11の該単一の特定の安定した傾斜位置を保証する。
【0054】
該スタビライザー本体21は、該座部31へのアクセスを可能にする該遠位開口25が設けられたベース面34も有している。該座部31の面と、該外側面32とは該ベース面34に接続され、該遠位開口25に対して第一の面は外側に、第二の面は内側に接続されている。具体的には、該スタビライザー本体は、該長手方向軸線Zに対して偏心して配置されているため、該遠位開口25は、該ベース面34に対して中心が合わせられていないが、該長手方向軸線Zと同心になっている。
【0055】
図4に概略的に図示されているように、該ベース面34は、該長手方向軸線Zに対して全体的に偏心しており、および該長手方向軸線Zに対する、単に例証のために点線で境界が定められている第一の同心部分34aによって、および該長手方向軸線Zに対して偏心している第二の部分34bによって画定され、該部分34a、34bは、本質的に連続している。該第二の部分34bが大きければ大きいほど、その結果として、該ベース面34の偏心性は大きく、該安定した傾斜位置における該長手方向軸線Zに対する該切削ツール11の該傾斜の角度は大きくなる。
【0056】
該ベース面34は、該長手方向軸線Zに対する該切削ツール11の該単一の特定の安定した傾斜位置の該傾斜の角度αに一致する傾斜の角度αだけ、該長手方向軸線Zに対して傾斜している。該膝関節の補綴物用の骨座部の準備のための切削装置10の場合、該傾斜の角度αは、該脛骨の場合の該切削装置10の場合は約5°であり、該大腿骨の場合の該切削装置10の場合は約3°である。
【0057】
図14、
図15に示す実施形態によれば、該整形された部分40は、実質的に円錐形の形状を有している。さらに、該切削ツール11には、該長手方向軸線Zに対する該切削ツール11の該単一の特定の安定した傾斜位置の該傾斜の角度αに一致する傾斜の角度αだけ傾斜した座部45とスライド結合している接続冠部44が設けられている。該スライド結合は、該長手方向軸線Zに対する該切削ツール11の該単一の特定の安定した傾斜位置を保証する。肩関節の補綴物用の骨座部の該準備のための切削装置10の場合、該傾斜の角度αは、約25°である。
【0058】
実施形態によれば、廻り止め制限要素19が、該軸22の該遠位端16に存在し、および該切削ツール11の該凹状結合座部12内に設けられた結合座部35と操作可能に結合されている。該廻り止め制限要素19は、ハンドラー本体14及び切削ツール11が該長手方向軸線Z周りに一体的に回転できるように、該ハンドラー本体14に対して該切削ツール11を角度的に制限するように構成されている。
【0059】
該廻り止め制限要素19は、回転運動を該切削ツール11に伝えるために、該切削ツール11上に存在している対応する結合座部35と嵌り合う形状を有している剛性伝達タブ41を備えている。
【0060】
該廻り止め制限要素19は、一つ以上存在している場合、有利には、互いに対して直径方向の対向位置において、該軸22の輪郭から径方向に突出している。有利には、実際には、該軸22から該切削ツール11への回転トルクの良好な伝達を保証するために、二つの廻り止め制限要素19がある。該二つの廻り止め制限要素19のこの直径方向の対向配置は、該長手方向軸線Zに対して傾斜した複数の位置を選択的に採用するために、および具体的には、該切削ツールの該凹状結合座部12を有する該スタビライザー本体21の該同じ形状の結合によって定義される単一の特定の安定した傾斜位置を採用するために、該切削ツールが、該廻り止め制限要素19を通過する面に直交する面上で水平方向に旋回することを可能にする。
【0061】
該廻り止め制限要素19は、該切削ツール11の該極性結合開口13に対応して形成された該結合座部35に取外し可能に楔止されている。
【0062】
該結合座部35は、該長手方向軸線Zに対して実質的に放射状になっており、および該回転トルクを該軸22から該切削ツール11に伝えるのに必要な該制限を保証するように構成されている。
【0063】
有利には、該結合座部35の数は、廻り止め制限要素19の数と一致している。このことは、該軸22への該切削ツール11の間違えようのない明確な接続を保証し、潜在的な組立てエラーを防止する。
【0064】
実施形態によれば、該アンギュラージョイント18は、該長手方向軸線Zの周りに設けられた一つ以上の凸状湾曲部24を有している。
【0065】
有利には、該アンギュラージョイント18は、該長手方向軸線Zに対して直径方向に対向して設けられた少なくとも二つの凸状湾曲部24を有している。
【0066】
本願明細書に記載されている実施形態によれば、該廻り止め制限要素19は、該凸状湾曲部24と交互に該長手方向軸線Zの周りに設けられている。
【0067】
該凸状湾曲部24は、該廻り止め制限要素19の位置に対して直径方向の反対側の位置において、該軸22の該輪郭から半径方向に突出しており、および該凸状湾曲部24の形状に嵌り合う形状を有している、それぞれの整形された凹部36と結合するように構成されている。
【0068】
有利には、該整形された凹部36は、該切削ツール11の軸方向位置を間違いなく決定する弾性的なスナップ方式の結合を可能にする。実際には、該切削ツール11が該軸22に結合された場合、該凸状湾曲部24は、強制的に、該整形された凹部36と取外し可能に結合される。
【0069】
有利には、該一つ以上の凸状湾曲部24は、球状部分である。
【0070】
実施形態によれば、該アンギュラージョイント18は、各々に該凸状湾曲部24のうちの一つが設けられている弾性の楔止タブ37を備えている。
【0071】
各楔止タブ37は、該長手方向軸線Zの該方向に延長部を有し、および該凸状湾曲部24が設けられている先端39と、該先端39の反対側の、該軸22にしっかりと取付けられたベース38とを有している。有利には、該ベース38のみが該軸22にしっかりと取付けられ、その結果、該楔止タブ37は、該先端39に圧力が加えられたときに、該ベース38に対して撓むことができる。
【0072】
該楔止タブ37は、該長手方向軸線Zに対して直交方向に撓むことができる。この目的のために、該アンギュラージョイント18は、該軸22内を直交して貫通する空洞43を有し、および該楔止タブ37が、少なくとも該切削ツール11との結合中に撓むことを可能にするように構成されている。
【0073】
該本発明の分野および/または範囲から逸脱することなく、これまで説明してきたような補綴手術用切削ツールに関して変更および/または追加を行えることは明白である。
【0074】
また、該本発明をいくつかの具体的な実施例に関連して説明してきたが、当業者は、クレームに記載されているような特徴、さらには、それによって定義される保護の領域の範囲内にあるすべてを有する補綴手術用切削ツールに関する他の多くの同等構成を確実に得ることができるであろうことも明白である。
【0075】
以下のクレームにおいて、括弧内の参照符号の唯一の目的は、読解を容易にすることであり、すなわち、それらは、特定のクレームにおいてクレームされている保護の領域に関する限定的要素として考えるべきではない。