IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サントリーホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-身体活動量低下の抑制又は改善用組成物 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】身体活動量低下の抑制又は改善用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/352 20060101AFI20240329BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240329BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240329BHJP
   C07D 311/30 20060101ALN20240329BHJP
【FI】
A61K31/352
A61P21/00
A23L33/105
C07D311/30
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021567129
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2020044979
(87)【国際公開番号】W WO2021131568
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2019234803
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】有江 秀行
(72)【発明者】
【氏名】小南 優
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0209307(US,A1)
【文献】特開2013-181005(JP,A)
【文献】特開2019-112328(JP,A)
【文献】特開2015-189672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソキサントフモールを有効成分として含む身体活動量低下の抑制又は改善用組成物。
【請求項2】
イソキサントフモールの含有量が0.1~70重量%である、請求項1に記載の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物。
【請求項3】
身体活動量低下が、加齢に伴う身体活動量低下である請求項1又は2に記載の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物。
【請求項4】
概日リズムを改善して身体活動量低下を抑制又は改善する請求項1~3のいずれか一項に記載の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物。
【請求項5】
経口用組成物である請求項1~のいずれか一項に記載の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物。
【請求項6】
飲食品である請求項1~のいずれか一項に記載の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物。
【請求項7】
イソキサントフモールを投与する身体活動量低下を抑制又は改善する方法(但し、ヒトに対する医療行為を除く)
【請求項8】
身体活動量低下を抑制又は改善するための、イソキサントフモールの使用(但し、ヒトに対する医療行為を除く)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体活動量低下の抑制又は改善用組成物に関する。また、本発明は、身体活動量低下を抑制又は改善する方法に関する。また、本発明は、身体活動量低下を抑制又は改善するための、イソキサントフモールの使用等に関する。
【背景技術】
【0002】
日本などの国においては、人口構成における高齢者比率が増加し、健康寿命の延長や高齢者の日常生活の質(QOL)の向上が課題となっている。健康寿命の短縮の要因の一つとして、加齢に伴う身体活動量の低下が挙げられる。このため、経口摂取等によって身体活動量の低下を抑制又は改善することができる成分の探索が行われている。特許文献1には、カプシノシド化合物が、加齢に伴い低下した身体活動量を回復させる作用を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/179225号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、身体活動量低下の抑制又は改善用組成物、特に、概日リズムを改善して身体活動量の低下を抑制又は改善することができる身体活動量低下の抑制又は改善用組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、身体活動量低下を抑制又は改善する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究した結果、イソキサントフモールが身体活動量低下の抑制又は改善に有用であることを見出した。
【0006】
すなわち、これに限定されるものではないが、本発明は以下の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物、身体活動量低下を抑制又は改善する方法などに関する。
〔1〕イソキサントフモールを有効成分として含む身体活動量低下の抑制又は改善用組成物。
〔2〕身体活動量低下が、加齢に伴う身体活動量低下である上記〔1〕に記載の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物。
〔3〕概日リズムを改善して身体活動量低下を抑制又は改善する上記〔1〕又は〔2〕に記載の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物。
〔4〕経口用組成物である上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物。
〔5〕飲食品である上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物。
〔6〕イソキサントフモールを投与する身体活動量低下を抑制又は改善する方法。
〔7〕身体活動量低下を抑制又は改善するための、イソキサントフモールの使用。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、概日リズムを改善して身体活動量の低下を抑制又は改善することができる身体活動量低下の抑制又は改善用組成物を提供することができる。本発明によれば、身体活動量低下を抑制又は改善する方法を提供することができる。本発明によれば、身体活動量低下を抑制又は改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、Bmal1遺伝子の発現リズムの振幅に対するイソキサントフモールの影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物は、イソキサントフモールを有効成分として含む。本発明の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物を、以下では単に本発明の組成物ともいう。本発明の組成物は、イソキサントフモールを有効成分として含むことにより、身体活動量低下を抑制又は改善することができる。
【0010】
イソキサントフモールは、ポリフェノールの一種である。イソキサントフモールは、アサ科の植物であるホップ(学名:Humulus lupulus)に含まれるポリフェノールであるキサントフモールが異性化した化合物である。
イソキサントフモールは、その製造方法等に何ら制限されない。イソキサントフモールは、例えば、ホップ抽出物から加熱等のプロセスを経て調製することができる。ホップ抽出物を加熱することにより、該抽出物中にイソキサントフモールを生成させることができる。ホップ抽出物は、通常、ホップの毬花を溶媒で抽出し、必要に応じて精製に係るプロセスを介して調製され、公知のホップ抽出物の調製方法により得ることができる。抽出方法として、例えば、ビール醸造に用いられるホップ抽出物の調製法として用いられる、エタノール溶媒による抽出法が挙げられる。ホップ抽出物は市販されており、市販のホップ抽出物を使用することもできる。イソキサントフモールを生成させるためのホップ抽出物の加熱は、80~140℃(より好ましくは85~100℃)で15分~5時間(より好ましくは20分~3時間)行うことが好ましい。イソキサントフモールを調製するためのホップ抽出物の精製は、公知の方法で実施される。精製方法として、例えば、HPLCや吸着カラム等の使用や、溶解度の変化を利用した析出などの方法が挙げられる。また、イソキサントフモールは、キサントフモールを加熱することによって製造することもできる。この際の加熱温度は、好ましくは80~140℃(より好ましくは85~100℃)で15分~5時間(より好ましくは20分~3時間)を採用することができる。異性化処理により得られたイソキサントフモールは、必要に応じて、公知の方法(例えば、ろ過、減圧濃縮、凍結乾燥等)により濃縮したり、精製したりすることができる。
イソキサントフモールは、市販品を使用することもできる。本発明においては、本発明の効果を奏することになる限り、精製されたイソキサントフモールを使用してもよく、イソキサントフモールを豊富に含む植物由来原料等を本発明の組成物に含有させてもよい。一態様において、本発明の組成物は、イソキサントフモールのみを有効成分として含むものであってよい。
【0011】
イソキサントフモールは、天然物や飲食品に含まれ、食経験がある化合物である。このため安全性の観点から、イソキサントフモールは、例えば毎日摂取することにも問題が少ないと考えられる。従って本発明によれば、安全性が高い成分を有効成分として含む身体活動量低下の抑制又は改善用組成物を提供することができる。また、例えばイソキサントフモールは、例えば100℃の高温条件でも安定であることが報告されている。食品衛生法においては清涼飲料水等の規格基準として殺菌条件が定められているが、例えばpH4.0以上のもの(pH4.6以上で、かつ、水分活性が0.94を超えるものを除く)においては85℃において30分間の加熱が必要である。このような殺菌工程においても、イソキサントフモールは安定的に飲料中に含まれるため、飲料に配合しやすいという利点もある。
本発明の一態様によれば、身体活動量低下を抑制又は改善する作用を示し、熱に安定であり、健康の維持、増進に資する種々の機能性食品、機能性飲料等を提供することが可能となる。
またイソキサントフモールは、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により公知の方法で定量することが可能である。イソキサントフモールは、簡便に定量分析が可能であり、有効成分の定量分析及び規格化が必要となる機能性表示食品等の有効成分として使用しやすいという利点もある。
【0012】
本発明において、身体活動は、日本の厚生労働省から発行されている「健康づくりのための運動指針2006」における身体活動の定義と同一の意味である。
身体活動とは、安静にしている状態より多くのエネルギーを消費するすべての営みのことである。
本発明において、身体活動量低下の抑制は、身体活動量の維持、身体活動量の低下の進行を遅延させること、身体活動量の低下を停止させること等を含む。身体活動量低下の改善は、身体活動量の低下の程度の軽減(緩和)、身体活動量の回復、身体活動量の増加等を含む。身体活動量の回復は、身体活動量を少なくとも部分的に回復させることを含む。身体活動量は、通常、活動期(例えばヒトであれば、通常昼間)における身体活動量である。
本発明において、身体活動量は、身体活動量及び/又は身体活動時間として測定することができる。すなわち、身体活動量低下の抑制又は改善は、身体活動量及び/又は身体活動時間の低下(減少)の抑制又は改善を意味する。身体活動量は、例えば、ヒトにおいては三軸加速度センサー内蔵活動量計等を用いて測定することができる。動物においては運動量計測装置等を用いて測定することができる。
【0013】
In vivoマウスを用いた研究により、加齢に伴い概日リズムが障害されると、活動のメリハリが失われ、活動期における活動量が低下することが知られている。またヒトにおいても、時差ボケ状態、つまり概日リズムが乱れた状態では、日中の身体活動量が低下することが知られている。
【0014】
イソキサントフモールは、概日リズムを改善する作用を有する。イソキサントフモールは、時計遺伝子の発現リズムの振幅を増幅する作用を有する。
時計遺伝子の発現リズムとは、時計遺伝子の発現量を経時的に測定した際に観察される周期的な発現量の変動をいう。時計遺伝子の発現リズムのリズム性の指標として、周期長(1周期の長さ。およそ24時間)、位相(発現のピーク時間で示される発現のピーク位置)、振幅(発現量の変動幅)がある。時計遺伝子の発現リズムの振幅を増幅するとは、時計遺伝子の発現量が最も高いときの発現量と、時計遺伝子の発現量が最も低いときの発現量との差を大きくする、すなわち、時計遺伝子の発現量の変動幅を大きくすることをいう。
時計遺伝子の発現リズムの振幅を増幅することにより、概日リズムを改善することができ、昼夜のメリハリが改善されて身体活動量低下を抑制又は改善することができる。時計遺伝子の発現リズムの振幅の増幅は、少なくとも1つの時計遺伝子の発現リズムの振幅を増幅させればよい。
【0015】
イソキサントフモールは、時計遺伝子の発現リズムの振幅を増幅して概日リズムを改善することができる。一態様において、本発明の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物は、概日リズムを改善して身体活動量低下を抑制又は改善するために使用することができる。一態様において、本発明の組成物は、時計遺伝子の発現リズムの振幅を増幅することにより、概日リズムを改善して身体活動量低下を抑制又は改善するために使用することができる。
概日リズムの改善には、乱れた概日リズム(概日リズムの異常)を正常に近づけること又は戻すこと、概日リズムの乱れ(異常)を抑制すること等が含まれるが、これに限定されない。
【0016】
時計遺伝子は、概日リズムの調節に働く一群の遺伝子をいう。時計遺伝子には、Bmal遺伝子、Period遺伝子等がある。本発明において、時計遺伝子は、好ましくはBmal遺伝子、より好ましくはBmal1遺伝子である。本発明の組成物は、Bmal1遺伝子の発現リズムの振幅を増幅することができる。
【0017】
本発明の組成物は、例えば、加齢に伴う身体活動量低下を抑制又は改善するために使用することができる。加齢に伴う身体活動量の低下は、中高年者における加齢に伴う身体活動量の低下であってよい。中高年者は、高齢者を含む。本発明において、中高年者は、例えば、40歳以上のヒトであってよい。高齢者は、例えば、60歳以上又は65歳以上のヒトであってよい。
【0018】
イソキサントフモールは概日リズムを改善する作用を有することから、概日リズムの乱れに起因する身体活動量低下、加齢に伴う概日リズムの乱れに起因する身体活動量低下等を抑制又は改善するために有効である。
一態様において、本発明の組成物は、概日リズムの乱れに起因する身体活動量低下を抑制又は改善するため、例えば加齢に伴う概日リズムの乱れに起因する身体活動量低下を抑制又は改善するために使用することができる。身体活動量低下は、中高年者(好ましくは高齢者)の身体活動量低下であってよい。
【0019】
本発明の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物は、治療的用途(医療用途)又は非治療的用途(非医療用途)のいずれにも適用することができる。非治療的とは、医療行為、すなわち人間の手術、治療又は診断を含まない概念である。
本発明の組成物は、飲食品、化粧料、医薬品、医薬部外品、飼料等の形態とすることができる。本発明の組成物は、それ自体が身体活動量低下を抑制又は改善するために用いられる飲食品、化粧料、医薬品、医薬部外品、飼料等であってもよく、これらに配合して使用される素材又は製剤等であってもよい。
本発明の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物は、一例として、剤の形態で提供することができるが、本形態に限定されるものではない。当該剤をそのまま組成物として、又は、当該剤を含む組成物として提供することもできる。一態様において、本発明の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物は、身体活動量低下の抑制又は改善剤ということもできる。
本発明の組成物は、経口用組成物、非経口用組成物のいずれであってもよいが、好ましくは経口用組成物である。経口用組成物としては、飲食品、経口用の医薬品、医薬部外品、飼料が挙げられ、好ましくは飲食品又は経口用医薬品であり、より好ましくは飲食品である。非経口用組成物として、化粧料、非経口用医薬品、非経口用医薬部外品が挙げられる。
【0020】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない限り、イソキサントフモールに加えて、任意の添加剤、任意の成分を含有することができる。これらの添加剤及び成分は、組成物の形態等に応じて選択することができ、一般的に飲食品、化粧料、医薬品、医薬部外品、飼料等に使用可能なものが使用できる。本発明の組成物を、飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等とする場合、その製造方法は特に限定されず、一般的な方法により製造することができる。
【0021】
例えば本発明の組成物を飲食品とする場合、イソキサントフモールに、飲食品に使用可能な成分(例えば、食品素材、必要に応じて使用される食品添加物等)を配合して、種々の飲食品とすることができる。飲食品は特に限定されず、例えば、一般的な飲食品、健康食品、健康飲料、機能性表示食品、特定保健用食品、健康補助食品、病者用飲食品等が挙げられる。上記健康食品、機能性表示食品、特定保健用食品、健康補助食品等は、例えば、細粒剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル剤、ドライシロップ剤、シロップ剤、液剤、飲料、流動食等の各種製剤形態として使用することができる。
【0022】
本発明の組成物の好ましい形態の一例として、飲料が挙げられる。イソキサントフモールは熱に安定であることから、一態様において、イソキサントフモールを含む身体活動量低下の抑制又は改善用組成物は、飲料に適している。
飲料は、ノンアルコール飲料、アルコール飲料のいずれであってもよい。ノンアルコール飲料として、例えば、茶系飲料、コーヒー飲料、ノンアルコールビールテイスト飲料、炭酸飲料、機能性飲料、果実・野菜系飲料、乳性飲料、豆乳飲料、フレーバーウォーター等が挙げられる。
【0023】
本発明の組成物が飲料である場合、茶系飲料、コーヒー飲料、アルコール飲料、ノンアルコールビールテイスト飲料、炭酸飲料、機能性飲料、果実・野菜系飲料、乳性飲料、豆乳飲料又はフレーバーウォーターであることが好ましい。
本発明の組成物が茶系飲料である場合、紅茶飲料又は無糖茶飲料であることが好ましい。無糖茶飲料として、緑茶飲料、ウーロン茶飲料、麦茶飲料、玄米茶飲料、ハト麦茶飲料、無糖の紅茶飲料等が挙げられる。
本発明の組成物がコーヒー飲料である場合、容器詰コーヒー又はリキッドコーヒーであることが好ましい。
【0024】
アルコール飲料としては、ビール、ビール系飲料、ビール及びビール系飲料以外のアルコール飲料が挙げられる。
本発明の組成物がビール系飲料である場合、発泡酒又は第三のビールであることが好ましい。
本発明の用組成物がビール及びビール系飲料以外のアルコール飲料である場合、焼酎、チューハイ、リキュール、カクテル、スピリッツ、ウイスキーであることが好ましい。
【0025】
本明細書における「ノンアルコールビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつ炭酸飲料を意味し、通常非発酵のノンアルコールタイプのものであり、これはアルコールを実質的に含まない。ここで、ノンアルコールビールテイスト飲料は、検出できない程度の極く微量のアルコールを含有する飲料を除くものではない。
【0026】
本発明の組成物が炭酸飲料である場合、コーラフレーバー飲料、透明炭酸飲料、ジンジャエール、果汁系炭酸飲料、乳類入炭酸飲料又は無糖炭酸飲料であることが好ましい。
本発明の組成物が機能性飲料である場合、スポーツドリンク、エナジードリンク、健康サポート飲料又はパウチゼリー飲料であることが好ましい。
【0027】
本発明の組成物が果実・野菜系飲料である場合、100%果実飲料、果実入飲料、低果汁入清涼飲料、果粒含有果実飲料又は果肉飲料であることが好ましい。
本発明の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物が乳性飲料である場合、牛乳、ドリンクヨーグルト、乳酸菌飲料又は乳類入清涼飲料であることが好ましい。
本発明の組成物が豆乳飲料である場合、豆乳又は大豆飲料であることが好ましい。
【0028】
飲料の形態は特に限定されず、容器詰飲料とすることができる。容器詰飲料の容器は特に限定されず、いずれの形態及び材質の容器を用いてもよく、例えば、アルミ缶、スチール缶等の金属製容器;ペットボトル等の樹脂製容器;紙パック等の紙容器;ガラス瓶等のガラス製容器;樽等の木製容器等の通常用いられる容器のいずれも用いることができる。このような容器に飲料を充填及び密閉することにより、容器詰飲料が得られる。
【0029】
本発明の組成物を医薬品又は医薬部外品とする場合、例えば、イソキサントフモールに、薬理学的に許容される担体、必要に応じて添加される添加剤等を配合して、各種剤形の医薬品又は医薬部外品とすることができる。そのような担体、添加剤等は、医薬品又は医薬部外品に使用可能な、薬理学的に許容されるものであればよく、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色剤等の1又は2以上が挙げられる。医薬品又は医薬部外品の投与(摂取)形態としては、経口又は非経口(経皮、経粘膜、経腸、注射等)投与の形態が挙げられる。本発明の組成物を医薬品又は医薬部外品とする場合、経口用医薬品又は経口用医薬部外品とすることが好ましい。経口投与のための剤形としては、例えば、液剤、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、糖衣錠、カプセル剤、懸濁液、乳剤、チュアブル剤等が挙げられる。非経口投与のための剤形としては、例えば、注射剤、点滴剤、軟膏剤、ローション剤、貼付剤、坐剤、経鼻剤、経肺剤(吸入剤)等が挙げられる。医薬品は、非ヒト動物用医薬であってもよい。
【0030】
本発明の組成物を飼料とする場合には、イソキサントフモールを飼料に配合すればよい。飼料には飼料添加剤も含まれる。飼料としては、例えば、牛、豚、鶏、羊、馬等に用いる家畜用飼料;ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料;犬、猫、小鳥等に用いるペットフードなどが挙げられる。
【0031】
本発明の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物に含まれるイソキサントフモールの含有量は特に限定されず、その形態等に応じて設定することができる。
本発明の組成物中のイソキサントフモールの含有量は、例えば、0.01重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましく、また、99重量%以下が好ましく、70重量%以下がより好ましい。上限及び下限は、いずれの組み合わせによる範囲としてもよい。一態様において、イソキサントフモールの含有量は、本発明の組成物中に0.01~99重量%が好ましく、0.01~70重量%がより好ましく、0.1~70重量%がさらに好ましい。
【0032】
本発明の組成物は、対象の身体活動量低下を抑制又は改善するために使用される。本発明の組成物は、経口で摂取(経口投与)されることが好ましい。本発明の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物の投与量(摂取量ということもできる)は特に限定されない。本発明の組成物の投与量は、身体活動量低下の抑制又は改善効果が得られるような量であればよく、投与形態、投与方法、対象の体重等に応じて適宜設定すればよい。
【0033】
一態様において、本発明の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物をヒト(成人)を対象に経口で摂取させる又は投与する場合、その投与量は、イソキサントフモールの投与量として、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.01mg以上、より好ましくは0.1mg以上、また、好ましくは250mg以下、より好ましくは200mg以下である。一態様において、本発明の組成物の投与量は、イソキサントフモールの投与量として、ヒト(成人)であれば、1日当たり体重60kgで、好ましくは0.01~250mg、より好ましくは0.1~200mgである。上記量を、1日1回以上、例えば、1日1回又は数回(例えば2~3回)に分けて、摂取させる又は投与することが好ましい。一態様においては、上記量のイソキサントフモールを、ヒトに経口で摂取させる又は投与することが好ましい。一態様において、本発明の組成物は、ヒトに、体重60kgあたり、1日あたり上記量のイソキサントフモールを経口で摂取させる又は投与するために使用することができる。
【0034】
本発明の組成物は、継続して摂取又は投与されるものであることが好ましい。イソキサントフモールを継続的に摂取又は投与することによって、上記の効果が高まることが期待される。一態様において、本発明の組成物は、好ましくは3日以上、より好ましくは1週間以上、さらに好ましくは4週間以上、特に好ましくは8週間以上継続して摂取又は投与されることが好ましい。
【0035】
本発明の組成物を摂取させる又は投与する対象(投与対象ということもできる)は、特に限定されない。好ましくはヒト又は非ヒト哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
一態様において、本発明の組成物の投与対象として、身体活動量低下の抑制又は改善を必要とする又は希望する対象が挙げられ、例えば、身体活動量が低下した対象等が挙げられる。本発明の組成物の投与対象として、加齢に伴う身体活動量低下の抑制又は改善を必要とする又は希望する対象(例えば、加齢に伴い身体活動量が低下した対象)、概日リズムの乱れに起因する身体活動量低下の抑制又は改善を必要とする又は希望する対象(概日リズムの乱れに起因して身体活動量が低下した対象)等が挙げられる。概日リズムの乱れは、加齢によるものであってよい。このような対象として、中高年者が挙げられる。中でも、高齢者が好ましい。一態様において、本発明の組成物は、中高年者(好ましくは高齢者)用の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物として使用することができる。本発明の組成物は、身体活動量低下の抑制又は改善により予防が期待できる状態又は疾患の予防等を目的として、健常者に対して使用することもできる。
【0036】
本発明の組成物には、身体活動量低下の抑制又は改善により発揮される機能の表示が付されていてもよい。本発明の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物には、例えば、「加齢とともに低下する身体活動量を改善する」、「加齢とともに低下する身体活動時間を改善する」、「日常生活における歩行などの身体活動量を維持または改善する」、「活動的な生活をサポートする」等の1又は2以上の機能の表示が付されていてもよい。本発明の一態様において、本発明の組成物は、上記の表示が付された飲食品であることが好ましい。また上記の表示は、上記の機能を得るために用いる旨の表示であってもよい。当該表示は、組成物自体に付されてもよいし、組成物の容器又は包装に付されていてもよい。
【0037】
本発明は、以下の方法及び使用も包含する。
イソキサントフモールを投与する身体活動量低下を抑制又は改善する方法。
身体活動量低下を抑制又は改善するための、イソキサントフモールの使用。
上記方法は、治療的な方法であってもよく、非治療的な方法であってもよい。上記使用は、治療的な使用であってもよく、非治療的な使用であってもよい。イソキサントフモールは、対象の身体活動量低下を抑制又は改善するために使用することができる。イソキサントフモールを投与することにより、身体活動量の低下を抑制又は改善することが可能となる。身体活動量低下は、上記と同じであり、加齢に伴う身体活動量の低下であってよい。イソキサントフモールは、概日リズムを改善して身体活動量低下を抑制又は改善するために使用することができる。
【0038】
上記方法及び使用においては、1日に1回以上、例えば、1日1回~数回(例えば2~3回)、イソキサントフモールを対象に投与する(摂取させる)ことが好ましい。上記方法及び使用においては、イソキサントフモールを経口投与することが好ましい。上記の使用は、好ましくはヒト又は非ヒト哺乳動物、より好ましくはヒトにおける使用である。
【0039】
上記方法及び使用においては、所望の作用が得られる量(有効量ということもできる)のイソキサントフモールを使用すればよい。イソキサントフモールの好ましい投与量や投与対象等は、上述した本発明の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物と同じである。イソキサントフモールは、そのまま投与してもよく、これを含む組成物として投与してもよい。例えば、本発明の身体活動量低下の抑制又は改善用組成物を投与してもよい。
【0040】
本発明は、身体活動量低下の抑制又は改善用組成物を製造するための、イソキサントフモールの使用も包含する。身体活動量低下の抑制又は改善用組成物及びその好ましい態様等は、上記の本発明の組成物と同じである。
なお、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全ては、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例
【0041】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、これにより本発明の範囲を限定するものではない。
【0042】
<実施例1>
イソキサントフモールの身体活動量に対する作用を調べた。本動物実験は、動物愛護管理法他関連法令を遵守し、社内動物実験委員会の審査を経て機関の長が承認した計画に基づき実施した。
【0043】
55週齢の雄性C57BL/6Jマウスを使用した。マウスは12時間明暗サイクル下で飼育した。群構成は媒体対照群(4匹)、イソキサントフモール群(4匹)の2群を設定した。媒体対照群には、オリーブオイルを5mL/kg、Day0から経口投与した。イソキサントフモール群には、1日あたり、体重あたりのイソキサントフモール(Hopsteiner社製)の投与量が60mg/kgになるように、オリーブオイルで濃度を調節したイソキサントフモール溶液を5mL/kg、Day0から経口投与した。投与開始2日前からnano tag(運動量計測装置、キッセイコムテック(株)製)による身体活動量の指標である活動量の測定を行い、投与開始日(Day0)に8時間の時差環境負荷(明暗サイクルを8時間前進させる)を行った。投与は、新規明暗サイクルの消灯直前に行った。この測定では、振動数を計測し、活動量とした。
【0044】
Day0(投与開始日)、Day1及びDay7の活動量の測定結果を表1に示す。表1の暗期活動量(%)の各値は、1日の総活動量に占める暗期での活動量の比率(暗期活動量/総活動量)を、投与開始1日前(Day-1)の値(暗期活動量/総活動量)を100%としたときの相対値(%)として示している。Day1(投与2日目)、つまり時差環境負荷すると、一過性に暗期活動量比率が落ち込んだ。つまり、Day1には、活動期に活動できていない、時差ぼけ状態にあることが分かる。また、Day7(投与8日目)では新規明暗サイクルに同調している、つまり負荷前の状態に戻っていることが分かる。Day9の暗期活動量を表2に示す。表1の有意差検定は、対応のあるt検定で行った(有意水準:p<0.05 vsDay0)。表2の有意差検定は対応のないt検定で行った(有意水準:p<0.05 vs媒体対照群)。表1及び表2に示す結果は、平均値±標準誤差であり、*は有意差があった(p<0.05)ことを示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
イソキサントフモール群では、媒体対照群と比較し有意に暗期活動量が多かった、つまり、イソキサントフモールは、身体活動量を増加させることが示された。
【0048】
<実施例2>
イソキサントフモール調製
ホップ抽出物(アサマ化成(株)製)から、以下の方法でイソキサントフモールを精製した。すなわち、順相カラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、分取HPLC精製によりホップ抽出物を原料に、イソキサントフモールを精製し、HPLC分析により純度が95%以上であることを確認した。なおHPLC分析においては、カラムとしてDevelosil C30-UG-5(野村化学(株))を使用し、検出器の紫外線吸収測定波長は280nmとした。得られたイソキサントフモールを、標品(純度95%以上)として実験で使用した。
【0049】
<培養細胞におけるBmal1遺伝子の発現リズムに対するイソキサントフモールの影響>
細胞株はBmal1-ELucマウスから調製した胚性線維芽細胞を用いた。Bmal1-ELucマウスとは、時計遺伝子Bmalのプロモーターとレポーターであるルシフェラーゼ遺伝子のレポーター配列が導入されているトランスジェニックマウスである。したがって、Bmal1-ELucマウス由来胚性線維芽細胞株では、時計遺伝子の周期的な発現に合わせてルシフェラーゼ遺伝子が発現する。Bmal1-ELucマウス由来胚性線維芽細胞をルシフェラーゼの基質であるルシフェリン含有培地にて培養すると、細胞は周期的に化学発光するため、その発光をモニターすることで、時計遺伝子Bmal1の発現リズムを評価することが可能になる。
【0050】
まず、Bmal1-ELucマウス由来胚性線維芽細胞株約3×10個を24ウェルプレートに播種した後、200nMデキサメタゾンで2時間処理することにより、細胞の生体リズムを一旦リセット(同調)した。その後、発光基質ルシフェリンを含む培地へ培地交換し、被験物質であるイソキサントフモールを30μg/mL添加して細胞培養を続けながら、ルミノメーター(LumiCycle、Actimetrics社製)を用いて、リアルタイムでレポーター遺伝子の化学発光を10分毎に1分間測定し、それを5日間継続した。得られた波形から、振幅を算出し、被験物質の影響を評価した。有意差検定は、対応のないt検定で行った(有意水準:p<0.05 vs無処置群)。その結果を図1に示す。
【0051】
図1は、Bmal1遺伝子の発現リズムの振幅に対するイソキサントフモールの影響を調べた結果(N=3の平均±標準誤差)を示すグラフである(*:p<0.05 vs無処置群)。無処置は、被験物質を添加しなかった細胞である。
【0052】
イソキサントフモールは、Bmal1遺伝子発現の概日リズムの振幅を大きくすることが確認された。

図1