(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】瞬時電圧低下検出回路及び車載診断システム
(51)【国際特許分類】
G01R 19/165 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
G01R19/165 J
(21)【出願番号】P 2021577536
(86)(22)【出願日】2020-04-13
(86)【国際出願番号】 CN2020084508
(87)【国際公開番号】W WO2021031584
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】201910777986.6
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511151662
【氏名又は名称】中興通訊股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZTE CORPORATION
【住所又は居所原語表記】ZTE Plaza,Keji Road South,Hi-Tech Industrial Park,Nanshan Shenzhen,Guangdong 518057 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,チエン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジエン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジエンフア
(72)【発明者】
【氏名】シー,ジージエ
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10205375(US,B1)
【文献】米国特許第5570258(US,A)
【文献】特開昭60-067864(JP,A)
【文献】国際公開第2004/109303(WO,A1)
【文献】特開2008-268084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのRC回路と、コンパレータと、判断ユニットと、を含み、
前記RC回路の各々は、第1抵抗、第2抵抗、及びエネルギー蓄積コンデンサを含み、
前記第1抵抗の第1端子は、被測定電圧を受け、前記第1抵抗の第2端子は、前記第2抵抗の第1端子に接続され、前記第2抵抗の第2端子は接地され、前記エネルギー蓄積コンデンサは、前記第2抵抗と並列に接続されており、前記第2抵抗の第1端子は、前記RC回路の出力端子を構成し、
2つの前記RC回路の出力端子は、前記コンパレータの2つの入力端子にそれぞれ対応して接続され、前記コンパレータの出力端子は、前記判断ユニットに接続されており、
2つの前記RC回路は、前記第2抵抗と前記第1抵抗との抵抗値比率が異なり、前記エネルギー蓄積コンデンサの容量が異なり、前記第2抵抗と前記第1抵抗との抵抗値比率が大きいほうの前記RC回路における前記エネルギー蓄積コンデンサの容量が小さく、
前記判断ユニットは、少なくとも、前記コンパレータが反転したことを検出した場合、前記被測定電圧が瞬間的に低下したと判定する、瞬時電圧低下検出回路。
【請求項2】
前記被測定電圧は、点火装置に電力を供給する電池電源から出力される電圧であり、
前記点火装置の点火時に、前記被測定電圧は瞬間的に低下する、請求項1に記載の瞬時電圧低下検出回路。
【請求項3】
前記判断ユニットは、さらに、前記点火装置の位置するシステムからの信号であって、前記点火装置の点火前と点火後で変化する補助検出信号を受信し、
前記判断ユニットは、前記コンパレータが反転し、かつ前記補助検出信号が変化したことを検出した場合、前記被測定電圧が瞬間的に低下したと判定する、請求項2に記載の瞬時電圧低下検出回路。
【請求項4】
2つのダイオードをさらに含み、2つの前記RC回路における前記第1抵抗の第1端子は、2つの前記ダイオードにそれぞれ対応して接続されて、前記ダイオードを介して前記被測定電圧を受ける、請求項1に記載の瞬時電圧低下検出回路。
【請求項5】
2つの前記RC回路は、それぞれ第1のRC回路及び第2のRC回路とし、
前記第1のRC回路における前記エネルギー蓄積コンデンサは、並列に接続された第1サブコンデンサ及び第2サブコンデンサを含み、前記第1サブコンデンサの容量は、前記RC回路における前記エネルギー蓄積コンデンサの容量と等しく、前記第1のRC回路における前記第2抵抗の抵抗値は、前記第2のRC回路における前記第2抵抗の抵抗値と等しく、前記第1のRC回路における前記第1抵抗の抵抗値は、前記第2のRC回路における前記第1抵抗の抵抗値よりも大きい、請求項1に記載の瞬時電圧低下検出回路。
【請求項6】
電圧変換ユニットをさらに含み、
前記判断ユニットは、前記電圧変換ユニットを介して前記補助検出信号を受信する、請求項3に記載の瞬時電圧低下検出回路。
【請求項7】
前記電圧変換ユニットは、第3抵抗、第4抵抗、電子スイッチ、プルアップ抵抗、及びプルアップ電源を含み、
前記第3抵抗の第1端子は、前記補助検出信号を受信し、前記第3抵抗の第2端子は、前記第4抵抗の第1端子に接続され、前記第4抵抗の第2端子は接地され、前記電子スイッチの制御端子は、前記第4抵抗の第1端子に接続され、前記電子スイッチの第1導通端子は、前記プルアップ抵抗を介して前記プルアップ電源に接続されるとともに、前記判断ユニットに接続されており、前記電子スイッチの第2導通端子は接地されている、請求項6に記載の瞬時電圧低下検出回路。
【請求項8】
前記電子スイッチは、トライオードである、請求項7に記載の瞬時電圧低下検出回路。
【請求項9】
前記判断ユニットは、前記点火装置の位置するシステムの主制御チップである、請求項
2に記載の瞬時電圧低下検出回路。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のうちのいずれか1項に記載の瞬時電圧低下検出回路を備えた車載診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、出願番号が201910777986.6で、2019年8月22日にて出願された中国特許出願に基づき出願されたものであり、この中国特許出願に基づく優先権を主張し、その内容の全てを参照により本願に組み込むものとする。
【0002】
本願の実施例は、検出の技術分野に関し、特に、瞬時電圧低下検出回路及び車載診断システムに関する。
【背景技術】
【0003】
車載診断システム(On-Board Diagnostics、単にOBDと称する)とは、エンジンの運転状態や排気ガス後処理システムの稼働状態を常時監視し、排出基準超過が発生する可能性があることを発見すると、直ちに警告を発するシステムである。例えば、OBDは、車両が点火されているか否か、速度超過しているか否か、燃費が高すぎるか否かなどの運行データをリアルタイムで監視し、故障が発生しているかどうかを分析することができる。システムが故障した場合、故障ランプ又はエンジンチェック警告ランプが点灯すると同時に、OBDシステムは、故障情報をメモリに格納し、標準的な診断機器と診断インターフェースを通じて関連情報を故障コードの形で読み取ることができる。サービスマンは、提示された故障コードに基づいて、故障の性質と部位を迅速かつ正確に特定することができる。OBDは、車両の走行の安全性を確保し、車両の状況を記録する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の実施形態は、瞬時電圧低下検出回路及び車載診断システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の実施形態は、2つのRC回路と、コンパレータと、判断ユニットと、を含み、前記RC回路の各々は、第1抵抗、第2抵抗、及びエネルギー蓄積コンデンサを含み、前記第1抵抗の第1端子は、被測定電圧を受け、前記第1抵抗の第2端子は、前記第2抵抗の第1端子に接続され、前記第2抵抗の第2端子は接地され、前記エネルギー蓄積コンデンサは、前記第2抵抗と並列に接続されており、前記第2抵抗の第1端子は、前記RC回路の出力端子を構成し、2つの前記RC回路の出力端子は、前記コンパレータの2つの入力端子にそれぞれ対応して接続され、前記コンパレータの出力端子は、前記判断ユニットに接続されており、2つの前記RC回路は、前記第2抵抗と前記第1抵抗との抵抗値比率が異なり、前記エネルギー蓄積コンデンサの容量が異なり、前記第2抵抗と前記第1抵抗との抵抗値比率が大きいほうの前記RC回路における前記エネルギー蓄積コンデンサの容量が小さく、前記判断ユニットは、少なくとも、前記コンパレータが反転したことを検出した場合、前記被測定電圧が瞬間的に低下したと判定する、瞬時電圧低下検出回路を提供する。
【0006】
本願の実施形態は、上述した瞬時電圧低下検出回路を備えた車載診断システムをさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
1つ又は複数の実施例について、それに対応する図面中のピクチャを用いて例示的に説明しており、これらの例示的な説明は、実施例を限定するものではなく、図面における同一の符号を有する要素は類似した要素として示されており、特に明記されていない限り、図面内の図は比例について何ら制限するものではない。
【
図1】本願の第1の実施例による瞬時電圧低下検出回路の模式図である。
【
図2】本願の第1の実施例による検出回路の変形構造の模式図である。
【
図3】本願の第1の実施例によるコンパレータの2つの入力端子で受ける電圧の変化の一例の模式図である。
【
図4】本願の第1の実施例によるコンパレータの2つの入力端子で受ける電圧の変化の別の例の模式図である。
【
図5】本願の第1の実施例によるコネクタ、ESD及びEMI保護回路を含む回路の模式図である。
【
図6】本願の第2の実施例による瞬時電圧低下検出回路の模式図である。
【
図7】本願の第3の実施例による瞬時電圧低下検出回路の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本願の実施例の目的、技術案及び利点をより明確にするために、図面を参照しながら本願の各実施形態を詳細に説明する。なお、当業者であれば、本願の各実施形態において、本願を読者によりよく理解させるために多くの技術的詳細が提示されていることを理解することができる。
【0009】
ただし、これらの技術的詳細及び以下の実施形態に基づく種々の変更や修正がなくても、本願が保護を求める技術案を実現することができる。以下の各実施例の分けは、説明を容易にするためになされたものとして、本願の具体的な実施形態を何ら限定するものではない。また、各実施例は、矛盾しない限り、互いに組み合わせたり互いに参照したりすることができる。
【0010】
本願の第1の実施形態は、電圧が瞬間的に低下する可能性のあるあらゆる場面での電圧検出に適用可能な瞬時電圧低下検出回路に関する。例えば、車両が点火されると、点火装置に電力を供給する電源電圧が瞬間的に低下するため、本願に係る回路は、車両が点火されたか否かを検出することができる。ただし、本実施例は、これについて何ら限定せず、本願の瞬時電圧低下検出回路は、電圧が瞬間的に低下したか否かを検出する必要のあるあらゆる場面に適用可能である。
【0011】
図1に示すように、瞬時電圧低下検出回路は、第1のRC回路11及び第2のRC回路12とそれぞれ記される2つのRC回路と、コンパレータ13と、判断ユニット14と、を含む。RC回路の各々は、第1抵抗、第2抵抗、及びエネルギー蓄積コンデンサを含む。本実施例では、説明の便宜上、2つのRC回路における第1抵抗をそれぞれ符号R1、R2で示し、以下、それぞれ単に抵抗R1、抵抗R2と称する。2つのRC回路における第2抵抗をそれぞれ符号R3、R4で示し、以下、それぞれ単に抵抗R3、抵抗R4と称する。2つのRC回路におけるエネルギー蓄積コンデンサをそれぞれ符号C1、C2で示し、以下、それぞれ単にコンデンサC1、コンデンサC2と称する。
【0012】
具体的には、第1のRC回路11において、抵抗R1の第1端子は、被測定電圧VBATTを受け、抵抗R1の第2端子は、抵抗R3の第1端子に接続され、抵抗R3の第2端子は接地されている。コンデンサC1は、抵抗R3と並列に接続されている。抵抗R3の第1端子は、第1のRC回路11の出力端子OUT1を構成する。第2のRC回路12において、抵抗R2の第1端子は、被測定電圧VBATTを受け、抵抗R2の第2端子は、抵抗R4の第1端子に接続され、抵抗R2の第2端子は接地されている。
【0013】
コンデンサC2は、抵抗R4と並列に接続されている。抵抗R4の第1端子は、第2のRC回路12の出力端子OUT2を構成する。2つのRC回路の出力端子OUT1、OUT2は、コンパレータ13の2つの入力端子にそれぞれ対応して接続され、コンパレータ13の出力端子は、判断ユニット14に接続されている。
【0014】
ここで、2つのRC回路における第2抵抗と第1抵抗との抵抗値比率が異なるとは、第1のRC回路11における抵抗R3と抵抗R1との抵抗値比率と、第2のRC回路12における抵抗R4と抵抗R2との抵抗値比率とが異なることを意味する。第1のRC回路11において、抵抗R1及び抵抗R3はともに分圧の役割を果たし、かつ出力端子OUT1から出力される電圧は、抵抗R3の両端の電圧である。
【0015】
同様に、第2のRC回路12において、出力端子OUT2から出力される電圧は、抵抗R4の両端の電圧である。抵抗R1の第1端子、抵抗R2の第1端子には、それぞれ被測定電圧VBATTが入力され、つまり、第1のRC回路11と第2のRC回路12の入力電圧は、同じである。抵抗R3と抵抗R1との抵抗値比率と、抵抗R4と抵抗R2との抵抗値比率とが異なるとは、第1のRC回路11と第2のRC回路12の入力電圧が同じである場合、第1のRC回路11における抵抗R3に割り当てられる電圧と、第2のRC回路12における抵抗R4に割り当てられる電圧とが異なることを意味し、このため、コンパレータ13の2つの入力端子で受ける電圧も異なることになる。
【0016】
ここで、2つのRC回路におけるエネルギー蓄積コンデンサの容量が異なるとは、第1のRC回路11におけるコンデンサC1と、第2のRC回路12におけるコンデンサC2の容量とが異なることを意味し、このため、第1のRC回路11のRC放電曲線と第2のRC回路12のRC放電曲線は異なり、つまり、放電時は、コンデンサ容量が大きいほうのRC回路が速く放電することになる。
【0017】
第2抵抗と第1抵抗との抵抗値比率が大きいほうのRC回路におけるエネルギー蓄積コンデンサの容量が小さいとは、第1のRC回路11における抵抗R3と抵抗R1との抵抗値比率が、第2のRC回路12における抵抗R4と抵抗R2との抵抗値比率よりも大きければ、第1のRC回路11におけるエネルギー蓄積コンデンサの容量が第2のRC回路12におけるエネルギー蓄積コンデンサの容量よりも小さくなり、第1のRC回路11における抵抗R3と抵抗R1との抵抗値比率が、第2のRC回路12における抵抗R4と抵抗R2との抵抗値比率よりも小さければ、第1のRC回路11におけるエネルギー蓄積コンデンサの容量が第2のRC回路12におけるエネルギー蓄積コンデンサの容量よりも大きくなることを意味する。
【0018】
判断ユニット14は、コンパレータ13が反転したことを検出した場合、被測定電圧が瞬間的に低下したと判定する。本実施例における判断ユニット14は、例えば、点火装置の位置する車載診断システムの主制御チップのような処理チップであってもよい。ただし、これに限らず、判断ユニット14は、ハードウェア回路により実現されてもよい。
【0019】
図1の例では、第1のRC回路11の出力端子OUT1は、コンパレータ13の正相入力端子に接続され、第2のRC回路12の出力端子OUT1は、コンパレータ13の逆相入力端子に接続されている。そして、抵抗R3と抵抗R1との抵抗値比率は、抵抗R4と抵抗R2との抵抗値比率よりも小さく、コンデンサC1の容量は、コンデンサC2の容量よりも大きい。
【0020】
一例では、製造中における抵抗、コンデンサの選択をより容易にするために、
図2に示すように、コンデンサC1を、第1サブコンデンサC1_1、第2サブコンデンサC1_2が並列に接続されたものとして設計し、第1サブコンデンサC1_1が、コンデンサC2と同じ容量を持たせることで、コンデンサC1の容量がコンデンサC2の容量よりも大きいことを満たすようにしてもよい。
【0021】
同時に、抵抗R3、抵抗R4を同じ抵抗値の2つの抵抗とし、抵抗R1の抵抗値を抵抗R2の抵抗値よりも大きくすることで、抵抗R3と抵抗R1との抵抗値比率が抵抗R4と抵抗R2との抵抗値比率よりも小さいことを満たすようにしてもよい。各抵抗、コンデンサの値としては、例えば、R1=100Ω、R2=90Ω、R3=R4=30Ω、C1_1=C2=0.1μF、C1_2=10μFとしてもよい。コンデンサC1_2の容量は、出力端子OUT1から出力される電圧の低下速度が、出力端子OUT2から出力される電圧の低下速度に対して大きく遅くなるように、コンデンサC1_1の容量よりも遥かに大きくされてもよい。
【0022】
以下、
図1における検出回路の作動原理について具体的に説明する。
【0023】
抵抗R3と抵抗R1との抵抗値比率は、抵抗R4と抵抗R2との抵抗値比率よりも小さく、第1のRC回路11及び第2のRC回路12の入力電圧はいずれも被測定電圧VBATTであるため、第1のRC回路11における抵抗R3に割り当てられる電圧は、第2のRC回路12における抵抗R4に割り当てられる電圧よりも小さくなる。
【0024】
また、コンパレータ13の正相入力端子で受ける電圧V+は、出力端子OUT1から出力される電圧であり、逆相入力端子で受ける電圧V-は、出力端子OUT2から出力される電圧であるため、車両が点火されていない場合、即ち、被測定電圧V
BATTが安定状態にある場合、コンパレータ13の正相入力端子で受ける電圧V+は、逆相入力端子で受ける電圧V-よりも小さいため、コンパレータ13の出力端子の出力電圧W1は、
図3に示すように、ローレベル信号となる。
【0025】
車両が点火されると、即ち、
図3における時刻T0において、被測定電圧V
BATTが瞬間的に低下すると、抵抗R3及び抵抗R4の両端の電圧はともに急速に低下するが、それぞれ並列に接続されたコンデンサの放電の影響を受けて、抵抗R3及び抵抗R4の両端の電圧の低下速度が遅くなる。
【0026】
コンデンサC1の容量は、コンデンサC2の容量よりも大きく、車両点火前においては、コンデンサC1に蓄えられる電気量は、コンデンサC2に蓄えられる電気量よりも大きいため、コンデンサC1の放電持続時間は、コンデンサC2の放電持続時間よりも長くなり、それゆえ、抵抗R3の両端の電圧が低下する速度は、抵抗R4の両端の電圧が低下する速度よりも低速度であり、コンパレータ13の正相受け端で受ける電圧V+の低下速度は、逆相受け端で受ける電圧V-の低下速度よりも小さいため、
図3に示される時間T1から、コンパレータ13の正相入力端子で受ける電圧V+は、逆相入力端子で受ける電圧V-よりも大きくなり、この場合、コンパレータ13の出力端子OUTの出力電圧W1は、ハイレベル信号となり、つまり、コンパレータ13が反転する。
【0027】
判断ユニット14は、コンパレータ13が反転したことを検出していれば、被測定電圧VBATTが瞬間的に低下した、即ち、車両が点火されたと判定することができる。
【0028】
点火が完了した後、点火装置の給電電源の電圧は再び上がり、即ち、被測定電圧V
BATTは再び安定状態まで上がるため、出力端子OUT1及び出力端子OUT2から出力される電圧も徐々に上昇して、安定状態となっていく。出力端子OUT1から出力される電圧(即ち、コンパレータ13の正相入力端子で受ける電圧V+)は、再び出力端子OUT2から出力される電圧(即ち、コンパレータ13の逆相入力端子で受ける電圧V-)よりも小さくなり、
図3に示される時刻T2、即ち、電圧V+が電圧V-よりも小さくなるように回復する時刻において、コンパレータ13の出力端子の出力電圧W1は、ローレベル信号となる。
【0029】
別の例では、第1のRC回路11の出力端子OUT1は、コンパレータ13の逆相入力端子に接続され、第2のRC回路12の出力端子OUT1は、コンパレータ13の正相入力端子に接続されており、各抵抗の抵抗値、コンデンサの容量はいずれも上述した
図3の例と同じである。すると、その実現原理は、
図3の例の実現原理とほぼ同じであり、相違点は、以下の点のみである。
【0030】
図4に示すように、車両が点火されていない場合、即ち、被測定電圧V
BATTが安定状態にある場合、コンパレータ13の逆相入力端子で受ける電圧V-は、コンパレータ13の正相入力端子で受ける電圧V+よりも小さく、コンパレータ13の出力端子の出力電圧W1は、ハイレベル信号である。
【0031】
車両点火後の時間帯T1~T2において、コンパレータ13の逆相入力端子で受ける電圧V-は、コンパレータ13の正相入力端子で受ける電圧V+よりも大きくなり、コンパレータ13の出力端子の出力電圧W1は、ローレベル信号となり、即ち、反転する。判断ユニット14は、コンパレータ13が反転したことを検出していれば、被測定電圧VBATTが瞬間的に低下した、即ち、車両が点火されたと判定することができる。一方、点火完了後、被測定電圧VBATTが安定するまで再び上がると、即ち、時刻T2以降、コンパレータ13の出力端子の出力電圧W1は、ハイレベル信号となる。
【0032】
本実施例では、2つのRC回路における第2抵抗と第1抵抗との抵抗値比率が異なるため、分圧後にコンパレータの2つの入力端子に入力される電圧の大きさが異なり、安定状態での相対的な大きさは変化せず、第2抵抗と第1抵抗との抵抗値比率が大きいほうのRC回路からコンパレータに入力される電圧が大きくなる。また、2つのRC回路におけるエネルギー蓄積コンデンサの容量が異なるため、2つのRC回路におけるエネルギー蓄積コンデンサの放電持続時間が異なる。
【0033】
そして、第2抵抗と第1抵抗との抵抗値比率が大きいほうのRC回路におけるエネルギー蓄積コンデンサの容量が小さいため、被測定電圧が瞬間的に低下した時に、コンパレータに入力される電圧が大きいほうのRC回路の放電持続時間が短く、コンパレータに入力される電圧が小さいほうのRC回路の放電持続時間が長くなるので、被測定電圧が瞬間的に低下した後のある時刻において、コンパレータに入力される2つの入力端子の電圧の相対的な大きさが変化し、コンパレータが反転することになる。
【0034】
従って、コンパレータが反転したか否かに基づいて、被測定電圧が瞬間的に低下したか否かを判断することができる。さらに、本願における検出回路は、構造が簡単で、レイアウトが小さく、低コストであり、検出速度が高い。
【0035】
点火されたか否かの検出中に、コンパレータが反転したことを検出していれば、被測定電圧が瞬間的に低下したと判定することができ、即ち、
図3及び
図4に示される時刻T1において、コンパレータが反転したことを検出することができる。
【0036】
これに対して、異なる時刻における電池電圧を検出し、ある時刻の電池電圧よりもその直後の時刻の電池電圧の方が高いことを検出すると、点火されたと判定する従来技術の解決策の場合、従来技術によって、電池電圧がより高いと検出された直後の時刻とは、点火後に電池電圧が再び上がる時刻、即ち、
図3及び
図4に示される時刻T2以後を意味する。このことから、本願ではコンパレータの反転は、必然的に、点火後に電池電圧が再び上がる前に発生することが分かる。
【0037】
従って、従来技術に比べて、本願では、点火されたか否かの検出をよりタイムリーに行うことができ、適時性が優れている。
【0038】
また、本実施例における回路は、コネクタ15をさらに含んでもよい。
図5に示すように、コネクタ15は、電源から被測定電圧V
BATTを取得し、この被測定電圧V
BATTを2つのRC回路に入力する。本実施例の回路が、車両が点火されたか否かの検出に用いられる場合、この被測定電圧V
BATTは、点火装置の給電電源から取得される必要があり、コネクタ15は、例えば、車両のOBDインターフェースである。コネクタ15のタイプを設定する必要がある。また、本実施例における回路は、コネクタ15とRC回路との間に設けられ、静電や電磁による妨害を遮蔽するように機能するESD(静電)及びEMI(電磁)保護回路16をさらに含んでもよい。
【0039】
本願の第2の実施形態は、瞬時電圧低下検出回路に関する。第2の実施形態は、第1の実施形態とほぼ同様であり、主な相違点は、本願の第2の実施形態では、
図6に示すように、検出回路は、2つのダイオードVT1、VT2をさらに含み、2つのRC回路における第1抵抗の第1端子は、2つのダイオードにそれぞれ対応して接続されて、ダイオードを介して被測定電圧を受けることである。
【0040】
具体的には、第1のRC回路11における抵抗1の第1端子は、ダイオードVT1のカソードに接続され、第2のRC回路12における抵抗2の第1端子は、ダイオードVT2のカソードに接続されている。ダイオードVT1、VT2のアノードは、いずれも
図6におけるESD及びEMI保護回路16に接続されている。
【0041】
なお、
図6は、
図5に改良を加えたものであるが、これに限らず、
図6は、
図1又は
図2に改良を加えたものであってもよく、即ち、コネクタ15とESD及びEMI保護回路16とを設ける必要がない場合、ダイオードVT1、VT2のアノードを電源の正極に直接接続して、被測定電圧V
BATTを取得するようにしてもよい。
【0042】
本実施例では、RC回路と被測定電圧VBATTを出力する電池電源との間にダイオードが増設されることで、後段の電流が逆流して電池電源が破損することを防止できるだけでなく、電池電源と検出回路との配線ミスによる本願における検出回路の破損を回避できるため、製品の安全性を大幅に向上させる。配線ミスとしては、例えば、RC回路における抵抗R1の第1端子及び抵抗R2の第1端子に電源の負極が接続されてしまう場合が挙げられる。
【0043】
本願の第3の実施形態は、瞬時電圧低下検出回路に関する。第3の実施形態は、第1又は第2の実施形態とほぼ同様であり、主な相違点は、本願の第3の実施形態では、
図7に示すように、判断ユニット14は、さらに、点火装置の位置するシステムから出力される補助検出信号W2を受信し、判断ユニット14は、コンパレータ13が反転し、かつ補助検出信号W2が変化したことを検出した場合、被測定電圧V
BATTが瞬間的に低下したと判定することである。補助検出信号W2は、点火装置の点火前と点火後で変化する信号である。
【0044】
本実施例では、点火装置の位置するシステムは、車両システムであり、補助検出信号W2は、例えば、車両の速度制御信号であってもよい。速度制御信号の電圧の大きさは、判断ユニット14で受ける電圧の大きさと一致しないため、
図7の例では、この検出回路は、電圧変換ユニット17をさらに含み、判断ユニット14は、電圧変換ユニット17を介して補助検出信号W2を受信する。
【0045】
ただし、これに限らず、他の例では、選択された補助検出信号W2が判断ユニット14の電圧の大きさと一致すれば、判断ユニット14は、補助検出信号W2を直接受信してもよい。また、他の例では、補助検出信号W2の具体的なタイプは、実際の適用場面に応じて選択されてもよい。
【0046】
一例では、
図7に示すように、電圧変換ユニット17は、第3抵抗R5、第4抵抗R6、電子スイッチVT3、プルアップ抵抗R7、及びプルアップ電源VCCを含む。具体的には、第3抵抗R5の第1端子は、補助検出信号W2を受信し、第3抵抗R5の第2端子は、第4抵抗R6の第1端子に接続され、第4抵抗R6の第2端子は接地されている。
【0047】
電子スイッチVT3の制御端子は、第4抵抗R6の第1端子に接続され、電子スイッチVT3の第1導通端子は、プルアップ抵抗R7を介してプルアップ電源VCCに接続されるとともに、判断ユニット14に接続されており、電子スイッチVT3の第2導通端子は接地されている。本実施例では、電子スイッチVT3は、例えば、トライオードであり、電子スイッチVT3の制御端子、第1導通端子、第2導通端子は、それぞれ、トライオードのベース、コレクタ及びエミッタとなる。
【0048】
点火されていない場合、システムは、補助検出信号W2を出力せず、この時、電子スイッチVT3はオフ状態にあるが、プルアップ抵抗R7の作用により、電子スイッチVT3の第1導通端子は、ハイレベルの信号を判断ユニット14に出力し、このハイレベルの信号は、点火前の補助検出信号W2とみなすことができる。点火後、システムは、補助検出信号W2を出力するようになり、この時、電子スイッチVT3はオンにされ、電子スイッチVT3の第1導通端子は、ローレベルの信号を出力し、このローレベルの信号は、点火後の補助検出信号W2とみなすことができる。
【0049】
このため、判断ユニット14は、コンパレータ13が反転したことを検出した際に、補助検出信号W2がハイレベルからローレベルに変化したか否かを判定することができ、補助検出信号W2がハイレベルからローレベルに変化したことを検出していれば、被測定電圧が瞬間的に低下したと判定し、補助検出信号W2がハイレベルからローレベルに変化したことを検出していなければ、被測定電圧が瞬間的に低下したことはないと判定する。なお、他の例では、補助検出信号W2のハイレベルからローレベルへの変化が、点火後の状況を示すものに限定されず、補助検出信号W2が変化するものであれば、補助検出信号W2の具体的なタイプ及び電圧変換ユニット17の具体的な構造に応じて判定することができる。
【0050】
本実施例では、補助検出信号W2の検出を追加して、被測定電圧が瞬間的に低下したか否かの判定を補助することにより、検出の正確さを高め、外的要因による誤判定を回避することができる。
【0051】
本願の第4の実施形態は、上述したいずれかの実施例に記載の瞬時電圧低下検出回路を備えた車載診断システムに関する。
【0052】
本実施形態は、第1~第3の実施形態のいずれか1つに対応するシステム実施例であり、本実施形態は、第1~第3の実施形態のいずれか1つと組み合わせて実施可能であることが容易に分かる。第1~第3の実施形態のいずれか1つで言及された関連する技術的詳細は、本実施形態においても有効であり、重複を減らすために、ここでは説明を省略する。従って、本実施形態で言及された関連する技術的詳細は、第1~第3の実施形態のいずれか1つにも適用可能である。