(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】飲料用缶の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 25/20 20060101AFI20240329BHJP
B65D 25/34 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B65D25/20 Q
B65D25/34 B
(21)【出願番号】P 2022033678
(22)【出願日】2022-03-04
(62)【分割の表示】P 2017240900の分割
【原出願日】2017-12-15
【審査請求日】2022-03-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521469760
【氏名又は名称】アルテミラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100113310
【氏名又は名称】水戸 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】小島 真一
(72)【発明者】
【氏名】池田 和紀
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 明日美
(72)【発明者】
【氏名】増田 和久
(72)【発明者】
【氏名】松島 妃美
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-205924(JP,A)
【文献】特開平09-029367(JP,A)
【文献】特開昭58-052039(JP,A)
【文献】特開平10-015632(JP,A)
【文献】特開平11-124142(JP,A)
【文献】特開2012-086870(JP,A)
【文献】特表2004-509766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/20
B65D 25/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成され、外周面を有し、一端に開口を有し他端に底部を有する缶本体の当該一端に対し、当該開口に向かうに従い外径が小さくなる縮径部を形成する形成工程と、
前記形成工程による前記縮径部の形成が行われる前に、前記缶本体のうちの当該縮径部となる部分の外周面に対して塗料の付着を行う形成前塗料付着工程と、
前記縮径部が前記缶本体に形成された後に、当該缶本体のうちの当該縮径部よりも前記底部側に位置する部分である缶胴部の外周面に対して塗料の付着を行う形成後塗料付着工程と、
前記形成後塗料付着工程による前記缶胴部への塗料の付着後、当該缶胴部の外周面への画像の形成を行う画像形成工程と、
を備え
、
前記形成前塗料付着工程では、前記縮径部となる前記部分を一部に有し前記缶胴部となる部分を一部に有する前記缶本体のうちの当該縮径部となる当該部分の外周面に対する塗料の付着を行い、当該缶本体のうちの当該缶胴部となる当該部分の外周面への塗料の付着を行わず、
前記形成工程による前記縮径部の形成が行われた後に、前記形成後塗料付着工程により、塗料が付着した状態にある当該縮径部を一部に有する前記缶本体の前記缶胴部の外周面への塗料の付着が行われる、
飲料用缶の製造方法。
【請求項2】
前記形成前塗料付着工程では、前記縮径部となる前記部分の外周面に対して、有色の塗料の付着を行う、
請求項
1に記載の飲料用缶の製造方法。
【請求項3】
前記形成前塗料付着工程では、前記縮径部となる前記部分の外周面に対して、有彩色の塗料の付着を行う、
請求項
2に記載の飲料用缶の製造方法。
【請求項4】
前記画像形成工程では、前記缶本体の前記缶胴部の外周面のみならず、当該缶本体の
前記開口側に設けられた前記縮径部の外周面への画像の形成も行う、
請求項
1に記載の飲料用缶の製造方法。
【請求項5】
前記画像形成工程では、前記缶本体の軸方向に沿って延び当該缶本体の前記縮径部および前記缶胴部の両者に対向した状態で配置されたインクジェットヘッドを用いて、当該缶本体の外周面への画像
の形成を行い、当該外周面への画像の形成に際し、当該缶胴部の外周面への画像の形成を行い当該縮径部の外周面への画像の形成を行わない、
請求項
1に記載の飲料用缶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用缶、飲料缶、および、飲料用缶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属缶の胴部外面に焼付温度より低い軟化温度を持つ熱膨脹性マイクロカプセルを含有する熱硬化型塗料を塗布する工程を備えた飲料用金属缶の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飲料用缶では、缶本体の表面に下地層を形成し、この下地層の上に画像を形成することがある。下地層の形成にあたっては、缶本体の外周面の全体に亘って塗料を塗布することが一般的であり、この場合、下地層は、缶本体の外周面上に一様に形成される。
また、飲料用缶では、開口側の端部に縮径部を形成することがあるが、缶本体に画像を形成した後に、この縮径部を形成する場合、縮径部の形成の際に、この画像が損傷等するおそれがある。この損傷等は、例えば、画像の強度等を増すことで抑制可能となるが、この場合、形成可能な画像の種類に制約が生じやすくなる。
本発明の目的は、飲料用缶の外周面に対してより多様な画像を形成できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が適用される飲料用缶は、筒状に形成され、外周面を有し、一端に開口を有し他端に底部を有し、当該開口に向かうに従い外径が小さくなる縮径部を当該一端に有する缶本体と、前記縮径部が前記缶本体に形成された後に前記外周面に形成された画像である縮径部形成後画像と、を備える飲料用缶である。
【0006】
ここで、前記缶本体の前記縮径部よりも前記底部側に缶胴部が設けられ、前記縮径部形成後画像は、前記缶胴部の外周面に少なくとも設けられていることを特徴とすることができる。
また、前記縮径部が形成される前に前記外周面の表面に形成された層である縮径部形成前層をさらに備えることを特徴とすることができる。
また、前記縮径部形成前層は、前記縮径部の外周面に少なくとも設けられていることを特徴とすることができる。
【0007】
また、本発明を飲料缶と捉えた場合、本発明が適用される飲料缶は、飲料用缶と、当該飲料用缶の内部に入れられた内容物と、を備え、当該飲料用缶が、上記の何れかに記載の飲料用缶により構成された飲料缶である。
また、本発明を飲料缶の製造方法と捉えた場合、本発明が適用される飲料缶の製造方法は、筒状に形成され、外周面を有し、一端に開口を有し他端に底部を有する缶本体の当該一端に対し、当該開口に向かうに従い外径が小さくなる縮径部を形成する形成工程と、前記縮径部が前記缶本体に形成された後、当該缶本体の外周面に画像を形成する画像形成工程と、を備える飲料用缶の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、飲料用缶の外周面に対してより多様な画像を形成できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】ネック処理が行われた後の缶体を示している。
【
図4】プリンターにおける処理を説明する図である。
【
図5】拡径するマンドレルの一例を示した図である。
【
図6】拡径するマンドレルの他の一例を示した図である。
【
図7】拡径するマンドレルの他の一例を示した図である。
【
図8】飲料缶の製造工程の他の実施形態を示した図である。
【
図10】マンドレルによる缶体の他の支持例を示した図である。
【
図11】缶体を支持する機構の他の構成例を示した図である。
【
図12】缶体を支持する機構の他の構成例を示した図である。
【
図13】(A)~(G)は、下地層の具体例を模式的に示した図である。
【
図14】(A)~(D)は、プリンターによる処理が行われた後の缶体の状態を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る飲料用缶の製造工程を示した図である。
図1にて示す製造工程は、いわゆる2ピース缶の製造工程を示した図である。
本実施形態における、2ピース缶(缶体)の製造工程では、アルミニウムまたはアルミニウム合金などをドローアンドアイアニング(DI)成形により成形した後、缶体の高さが一定になるよう開口端がトリムされる。次に、缶体の洗浄が行われ、その後、内面塗装(塗装工程)などが行われる。
【0011】
次いで、開口部13を漸次縮径させるネック加工によりネック部を形成し、ネック部の開口部13にフランジ加工によってフランジの成形を行う(縮径工程)。その後、印刷装置を用い、外面印刷(画像形成)を行う。これにより、有底円筒状且つ金属製であって、外周面に画像が形成された飲料用缶が製造される。
なお、
図1および
図1以降の各図における記号(アルファベットにより表されている記号)は、2ピース缶の製造工程を構成する各工程の工程名を表す。各工程には、各工程に対応した装置が設けられ、この装置により、各工程における処理が行われる。
また、以下では、「工程名」と、その工程での「装置名(設備名)」とを同じ名称で呼ぶことがある。
【0012】
ここで、缶体(飲料用缶)に充填される飲料は、特に限られず、缶体には、例えば、ビールやチューハイ等のアルコール系飲料や、清涼飲料(非アルコール系飲料)が充填される(飲料充填工程)。なお、充填後は、缶体に対して蓋部材が取り付けられ、飲料が充填された飲料缶が完成する。
なお、以下の説明においては、飲料が充填される前の缶体を飲料用缶と称し、飲料が充填された後の缶体を飲料缶と称することがある。
【0013】
図1と
図2に示すように、本実施形態の製造工程には、缶体の搬送方向における上流側から順に、アンコイラー(UC)、ルブリケーター(LU)、カッピングプレス(CP)、ボディメーカー(BM)、トリマー(TR)、ウォッシャー(WS)が設けられている。
アンコイラー(UC)では、コイルに巻いたアルミニウム薄板を巻き解く。ルブリケーター(LU)では、このアルミニウム薄板に潤滑油を塗布する。カッピングプレス(CP)では、円形のブランク材を打ち抜き、さらに絞り加工を行い、カップ状素材を成形する。
【0014】
成形工程の一例としてのボディメーカー(BM)では、カップ状素材に対して絞り加工およびしごき加工を施して、周壁を予め定められた厚さにする。さらに底部をドーム状に成形する。これにより、一方に開口部13を有し他方に底部を有する円筒状の缶体が成形される(DI成形)。
その後、トリマー(TR)では、缶体の周壁上部の耳部を切り揃える。ウォッシャー(WS)では、缶体を洗浄し、潤滑油やその他の付着物を除去し、必要に応じて化成皮膜処理を行う。
【0015】
ウォッシャー(WS)の下流側には、塗料付着工程としてのオーバーバーニッシュ(OV)が設けられている。オーバーバーニッシュ(OV)では、無色透明の塗料を、缶体の外周面19Aに塗布する。これにより、缶体の外周面19Aに、下地層が形成される。ここで、下地層とは、後のプリンター(PR)にて形成される画像と、缶体との間に形成される層を指す。
さらに、オーバーバーニッシュ(OV)の下流側には、ピンオーブン(PO)が設けられている。ピンオーブン(PO)では、缶体を加熱し、オーバーバーニッシュ(OV)により形成された下地層を缶体に焼き付ける。
【0016】
ここで、ピンオーブン(PO)における焼き付けは、既知の方法により行われる。
焼き付けは、一般的には、熱風乾燥が用いられる。また、焼き付けは、赤外線を缶体に照射することで行ってもよい。また、熱風乾燥と赤外線照射を併用してもよい。
焼付けの条件としては、例えば、加熱温度200℃、加熱時間30秒が一例として挙げられる。
【0017】
ウォッシャー(WS)の下流側には、オーバーバーニッシュ(OV)の他に、塗料付着工程の他の一例としてのベースコーター(BC)が設けられている。
有色の下地層が形成される缶体の場合には、オーバーバーニッシュ(OV)の代わりに、このベースコーター(BC)にて、缶体への塗料の付着が行われる。これにより、この場合も、缶体の外周面19Aに、下地層が形成される。
ベースコーター(BC)では、缶体の外周面19Aに、有色の塗料を塗布する。具体的には、例えば、白色の塗料を塗布する。
【0018】
なお、ベースコーター(BC)にて形成される下地層の色は、後に行われる印刷により形成される画像の発色を鮮やかにするために、白色とするのが一般的であるが、他の色であってもよい。また、ベースコーター(BC)にて缶体に付着させる塗料の色は、無色透明としてもよく、この場合は、オーバーバーニッシュ(OV)と変わりがなくなる。
ベースコーター(BC)の下流側には、ピンオーブン(PO)が設けられており、ピンオーブン(PO)では、缶体が加熱され、下地層が缶体に焼き付けられる。
【0019】
本実施形態では、ウォッシャー(WS)の下流側において、缶体の搬送経路が分岐しており、ウォッシャー(WS)を経た後の缶体は、オーバーバーニッシュ(OV)、ベースコーター(BC)の何れかに搬送される。
また、本実施形態では、ベースコーター(BC)にて、缶体への下地層の形成を行った場合、後の工程に位置するもう一つのベースコーター(BC)(後述)では、下地層の形成が省略される。
【0020】
ウォッシャー(WS)を経た後の缶体は、外面の摩擦係数が大きく、このままでは、缶体の搬送不良が生じやすい。また、缶体の表面に傷が生じやすく、外観不良が生じやすくなる。
オーバーバーニッシュ(OV)や、ベースコーター(BC)を設け、缶体の表面に下地層を形成すると、缶体がより円滑に搬送され、さらに、缶体に傷が生じにくくなる。
【0021】
また、ウォッシャー(WS)を経た後の缶体を、そのまま、ネッカー・フランジャー(SDN)(後述)に供給すると、不具合が生じるおそれがある。
具体的には、缶体と、ネッカー・フランジャーに用いる金型との間における摩擦力が大きいことに起因して、缶体が、座屈変形をしてしまうおそれがある。また、この金型を傷つけるおそれもある。
【0022】
そこで、本実施形態では、少なくとも、ネック部に対しては、オーバーバーニッシュ(OV)、ベースコーター(BC)の何れかにて、下地層(下地塗装部)を形成する。
これにより、缶体の座屈変形や金型の損傷などが抑制されるようになる。また、下地層を全く形成しない場合に比べ、缶体がより円滑に搬送されるようになる。
【0023】
[塗装工程]
ピンオーブン(PO)の下流側には、塗料付着工程の他の一例としてのインサイドスプレー(INS)、ベークオーブン(BO)が設けられている。
インサイドスプレー(INS)では、缶体の内面への塗料の付着(吹き付け)を行い、内面塗装を行う。ベークオーブン(BO)では、缶体を加熱し、この塗料の焼き付けを行う(塗装工程)。
【0024】
なお、本実施形態では、オーバーバーニッシュ(OV)、ベースコーター(BC)、ピンオーブン(PO)の処理が先に行われ、インサイドスプレー(INS)、ベークオーブン(BO)の処理が後に行われる場合を説明した。
但し、これに限らず、インサイドスプレー(INS)、ベークオーブン(BO)の処理を先に行い、後に、オーバーバーニッシュ(OV)、ベースコーター(BC)、ピンオーブン(PO)の処理を行ってもよい。
【0025】
なお、より好ましい処理は、オーバーバーニッシュ(OV)、ベースコーター(BC)、ピンオーブン(PO)の処理を先に行い、後に、インサイドスプレー(INS)、ベークオーブン(BO)の処理を行うことである。
インサイドスプレー(INS)、ベークオーブン(BO)の処理の方を後に行うと、オーバーバーニッシュ(OV)やベースコーター(BC)の後に、缶体の内面が塗料により覆われるため、缶体の内面をより衛生的なものにできる。
【0026】
具体的には、オーバーバーニッシュ(OV)、ベースコーター(BC)などの処理においては、缶体の内側に、缶体を支持するためのマンドレル(支持部材)が挿入され、缶体の内周面にマンドレルが接触する。
インサイドスプレー(INS)、ベークオーブン(BO)を後に行う場合は、缶体の内周面のうちのマンドレルが触れた部分が、塗料により覆われるようになり、缶体の内面がより衛生的なものになる。
【0027】
[縮径工程]
ベークオーブン(BO)の下流側には、形成工程の一例としてのネッカー・フランジャー(SDN)が設けられている。ネッカー・フランジャー(SDN)では、缶体の開口部13を縮径するとともに、缶蓋を取り付けるためのフランジを成形する。
なお、以下では、ネッキング加工(缶体の開口部13を縮径する加工)と、フランジング加工(缶蓋を取り付けるためのフランジを形成する加工)とを併せて以下、「ネック処理」と呼ぶ。
【0028】
図2は、ネック処理が行われた後の缶体を示している。
本実施形態の缶体では、缶本体19が設けられている。缶本体19は、筒状に形成され、外周面19Aを有する。さらに、缶本体19は、一端19Cおよび他端19Bを有する。さらに、缶本体19は、一端19Cに開口部13を有し、他端19Bに底部14を有する。さらに、缶本体19には、縮径部(ネック部)11と、缶胴部12とが設けられている。
【0029】
縮径部11は、缶本体19の開口部13側に位置している。付言すると、縮径部11は、缶本体19の一端19Cに設けられている。縮径部11は、開口部13に近づくに従い外径が次第に小さくなるように形成されている。
缶胴部12は、円筒状に形成され、縮径部11よりも底部14側に位置している。ここで、缶胴部12とは、缶体の軸方向における長さが縮径部11よりも大きく、且つ、縮径していないかあるいは縮径割合が縮径部11における縮径割合よりも小さい部分を指す。
本実施形態の缶胴部12は、接続箇所18にて、縮径部11に接続している。また、缶胴部12は、縮径部11に接続されている箇所の外径(接続箇所18における外径)と、底部14側における外径とが略等しくなるように形成されている。即ち、本実施形態の缶胴部12は、缶体の軸方向において、外径が略一定となっている。なお、缶胴部12の縮径を排除するものではなく、缶胴部12は、縮径部11の縮径割合よりも小さい縮径割合で縮径させてもよい。
【0030】
ネッキング加工は、既存の方法により行えばよく、一般的には、金型の内部に缶体を押し込むいわゆる「ダイネック」方式や、回転金型90を回転させて行ういわゆる「スピンフロー」方式等により行われる。
また、フランジング加工も、既存の方法により行えばよく、例えば、特開2016-016419号公報に記載の技術により行うことができる。
特開2016-016419号公報に記載のこの技術では、
図3(フランジング加工を説明する図)に示すように、スピナーと呼ばれる回転金型90を用いて、フランジング加工を行う。
【0031】
ところで、ネッカー・フランジャー(SDN)では、金型を缶体に押し当てるため、缶体や金型に傷が付くおそれがある。
本実施形態では、このネッカー・フランジャー(SDN)よりも前に、ベースコーター(BC)やオーバーバーニッシュ(OV)が設けられ、さらに、インサイドスプレー(INS)が設けられている。これにより、本実施形態では、缶体の外面および内面に、保護層としての役割を果たす下地層が形成された後に(下地塗装部が設けられた後に)、ネック処理が行われるようになる。この場合、缶体および金型に傷が生じにくくなる。
【0032】
より具体的には、本実施形態では、無地の金属製の缶体(缶本体19)に、例えば、無色透明または有色(例えば、白色)の塗料を付着させ、さらにこの塗料を硬化させる。これにより、缶体の外周面19Aに保護層が形成された状態となる。
さらに、本実施形態では、インサイドスプレー(INS)により、缶体の内面に保護層が形成される。これにより、缶体の内面および外面における傷が生じにくくなる。また、この場合、金型にも傷が生じにくくなる。
【0033】
図1に示すように、ネッカー・フランジャー(SDN)の下流側には、一時貯蔵工程が設けられている。
一時貯蔵工程では、例えば、パレタイザー(PT)を用い、缶体を段積みして貯蔵する。また、その他に、例えば、アキュームレーター(ACC)を用いて、缶体を貯蔵してもよい。
【0034】
一時貯蔵工程では、縮径部11(
図2参照)を有する複数の缶体が、軸方向に並べられた状態で上下方向に積載される。
より具体的には、一時貯蔵工程では、水平方向に複数の缶体を並べた後(水平方向に二次元的に缶体を並べた後)、この複数の缶体の上にシートなどを置き、このシートの上に、複数の缶体を二次元的にさらに並べる。以後、この処理を繰り返す。これにより、複数の缶体が、水平方向および上下方向に並べられた状態となる。
ここで、縮径部11が無い缶体(縮径処理が施されていない缶体)を積みあげると、缶体が変形しやすくなるが、本実施形態では、缶体に縮径部11が有り、缶体の変形が生じにくくなる。
【0035】
その後、本実施形態では、缶体の出荷指示があった場合など、予め定められた条件が満たされると、一時貯蔵工程からの缶体の供給が開始される(一時貯蔵工程からの缶体の払い出しが開始される)。
言い換えると、デパレタイザー(DPL)にて段積みを崩して、缶体が缶体製造工程へ再投入される。なお、図示していないが、既存のデパレタイザー(DPL)に限らず、他の「金属缶払い出し工程」を用いても良い。
【0036】
デパレタイザー(DPL)の下流側には、ベースコーター(BC)、ピンオーブン(PO)が設けられている。
なお、以下、本明細書では、このベースコーター(BC)を、下流側ベースコーター(BC)と称し、ネッカー・フランジャー(SDN)よりも上流側に設けられた上述のベースコーター(BC)を、上流側ベースコーター(BC)と称する場合がある。
【0037】
供給が開始された缶体が、オーバーバーニッシュ(OV)のみが行われている缶体の場合には、必要に応じ、下流側ベースコーター(BC)によって、缶体の外周面19Aに、有色の下地層が形成される。さらに、ピンオーブン(PO)にて、この下地層の焼き付けが行われる。
【0038】
なお、下流側ベースコーター(BC)による缶体への下地層の形成が行われる際、この缶体は縮径部11を既に有しており、下流側ベースコーター(BC)では、缶体の缶胴部12の部分に対して、下地層が形成される。
具体的には、下流側ベースコーター(BC)では、缶体の軸方向に沿った円柱状又は円筒状のロール部材を、缶体の外周面19Aに押し当てるが、この際、このロール部材は縮径部11には接触しない。このため、下流側ベースコーター(BC)では、缶体の缶胴部12の部分に、下地層が形成される。
【0039】
また、本実施形態では、上流側ベースコーター(BC)による処理が行われている缶体であっても、必要に応じ、下流側ベースコーター(BC)による下地層の形成を行う。
具体的には、例えば、上流側ベースコーター(BC)にて、縮径部11のみに、下地層が形成された場合には、下流側ベースコーター(BC)にて、缶胴部12に対して下地層を形成する。
【0040】
また、上流側ベースコーター(BC)にて、縮径部11のみではなく缶胴部12にも下地層が形成された場合には、下流側ベースコーター(BC)による処理は行わない。
この場合、下流側ベースコーター(BC)、ピンオーブン(PO)による処理は行われず、符号1Aに示す経路に沿って缶体は搬送される。
また、オーバーバーニッシュ(OV)のみが行われている缶体であっても、下流側ベースコーター(BC)による処理が不要な場合には、同様に、符号1Aに示す経路に沿って缶体は搬送される。
【0041】
なお、本実施形態では、焼き付けを行うことで下地層(オーバーバーニッシュ(OV)、ベースコーター(BC)により形成された下地層)を硬化させたが、これは一例である。
下地層が、紫外線等の照射により硬化する塗料で形成されている場合には、紫外線等を照射することで下地層を硬化させる。
【0042】
[画像形成工程]
その後、画像形成工程の一例としてのプリンター(PR)での処理が開示される。
具体的には、本実施形態では、
図4(プリンター(PR)における処理を説明する図)に示すように、プリンター(PR)にインクジェットヘッド300が設けられている。そして、このインクジェットヘッド300から、下方に位置する缶体に向けてインクを吐出する。これにより、缶体の外周面19Aへの画像形成が行われる。言い換えると、本実施形態では、非接触の画像形成方式が用いられて、缶体への画像形成が行われる。
【0043】
ここで、本実施形態では、缶体に縮径部11が設けられており、缶体の外周面19Aのうちの縮径部11が設けられている箇所は、インクジェットヘッド300の下面301(インク吐出口が設けられている面)から離れるようになる。
この場合、缶体の外周面19Aのうちの縮径部11が設けられている箇所では、形成される画像の質が低下するおそれがある。
【0044】
このため、プリンター(PR)での画像形成処理では、例えば、縮径部11への画像形成を行わずに、缶胴部12のみへの画像形成を行ってもよい。
このように、缶胴部12のみへの画像形成を行う場合は、縮径部11には、無地で単色の画像又は無色の下地層が形成され、缶胴部12には、複数の色により構成された画像が形成されるようになる。
【0045】
付言すると、縮径部11には、オーバーバーニッシュ(OV)により形成された無色の下地層のみが形成され、又は、ベースコーター(BC)により形成された単色の下地層のみが形成され、缶胴部12には、多色の図柄が形成された状態となる。
なお、縮径部11への画像形成を排除するものではなく、縮径部11の外周面に対し、インクジェットヘッド300を用いて画像形成を行ってもよい。
【0046】
インクジェットヘッド300を用いて縮径部11に形成する画像は、特に制限されず、例えば、複数色のインクを用いたカラーの画像を形成してもよいし、1色のインクを用いた単色の画像(ベタ画像)を形成してもよい。また、例えば、缶体の周方向に沿った帯状の画像を形成してもよい。
また、縮径部11の外形形状が、4段ネックなど段状になっている場合(開口部13に向かうに従い段階的に縮径する場合)は、形成する画像の色を各段毎に異ならせ、例えば、缶体の周方向に沿った4色分の帯状の画像を、縮径部11に形成してもよい。
【0047】
さらに、プリンター(PR)における画像形成処理では、インクジェットヘッド300による画像形成後に、缶体の外周面19Aに対して塗料が塗布されて、保護層(オーバーコート層)が形成される。
言い換えると、プリンター(PR)による印刷処理では、インキを液滴としてノズルから噴射して、このインクを缶体の外周面19Aに付着させて、缶体の外周面19Aに画像を形成する。次いで、この画像の上に塗料を塗布して、保護層を形成する。
【0048】
ここで、プリンター(PR)では、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y),ブラック(K)の4色のインクを基本のインクとして用い、さらに、必要に応じて、銘柄毎に用意した特別な色のインク(特色インク)を用いる。
また、この場合、色毎にインクジェットヘッド300を用意し、複数のインクジェットヘッド300を用いて缶体への画像形成を行う。
また、用いるインクとしては、活性放射線硬化型インクが望ましい。ここで、活性放射線硬化型インクには、例えば、紫外線(UV)硬化型インクが含まれる。
【0049】
さらに、プリンター(PR)では、缶体の内部に、支持部材の一例である筒状のマンドレル(
図4では不図示)を挿入し、マンドレルで缶体を内側から支持する。さらに、インクジェットヘッド300の対向位置に、缶体を配置する。さらに、インクジェットヘッド300の長手方向に対して、缶体の軸方向が沿うように缶体を配置する。そして、缶体を周方向に回転させながら、インクを吐出して印刷する。
ここで、プリンター(PR)では、画像データに基づく印刷であるいわゆるデジタル印刷を行う。
【0050】
プリンター(PR)での印刷解像度は、高い方がより好ましいが、費用や生産性等を考慮すると、印刷解像度は、例えば、600dpi程度とすることが好ましい。
また、形成される画像の質を向上させる観点からは、缶体とインクジェットヘッド300との距離を小さくすることがより好ましいが、小さすぎると、缶体とインクジェットヘッド300とが干渉するおそがある。缶体とインクジェットヘッド300との離間距離は、例えば、1mm程度とすることができる。
【0051】
また、缶体の回転数は、大きい方が生産性に寄与するが、大きすぎると、缶体にインクが着弾した際に、インクが缶体の周方向に延び、解像度が低下するおそれがある。このため、回転数を大きくしつつ、缶体の周方向へのインクの延びを抑えられる回転数で、缶体を回転させることが望ましい。
また、紫外線硬化型インクを用いる場合には、1つの色のインクを缶体に吐出する毎に紫外線を照射してインクを硬化させてもよいし、複数色のインクを吐出した後に、紫外線を照射して、一括でインクを硬化させてもよい。
【0052】
なお、プリンター(PR)では、缶体に挿入するとその一部が拡径するマンドレルを用いることが好ましい。言い換えると、缶体への挿入後に一部が拡径してこの一部が缶体の内周面に接触するマンドレルを用いることが好ましい。
付言すると、缶体の内周面から離間した箇所からこの内周面に接近してこの内周面に接触する部位を備えたマンドレルを用いることが好ましい。
【0053】
本実施形態では、ネック処理により、缶体の開口部13(
図2参照)が縮径しており、画像形成時における缶体では、缶体の缶胴部12よりも開口部13の径の方が小さい。
このため、円筒状のマンドレルを缶体に挿入しただけでは、缶体とマンドレルとの間に隙間が生じ、缶体の支持が不安定となる。拡径するマンドレルを用い、マンドレルの一部を缶体の内周面に接触させるようにすれば、缶体がより安定的に支持される。
【0054】
図5は、拡径するマンドレルの一例を示した図であり、このマンドレルでは、缶体(
図5では不図示)へマンドレルを挿入すると、円盤状の接触部材40が、缶体の開口縁13A(
図2参照)に接触する。その後、マンドレル(シャフト41)を缶体の底部14(
図2参照)に向けてさらに移動させる。
これにより、シャフト41に取り付けられた取り付け部材42のテーパ面42Aが、移動部材43を、缶体の内周面に向けて押圧するようになり、移動部材43が、缶体の内周面に押し付けられる。
【0055】
ここで、このマンドレルは可逆的となっており、缶体の外部に取り出す方向へマンドレルを移動させると、ばね部材44によって、接触部材40へ近づくように取り付け部材42が移動する。これにより、取り付け部材42による移動部材43の押圧が解除され、缶体の内周面から離れる方向へ、移動部材43が移動できるようになる。
【0056】
また、
図6は、拡径するマンドレルの他の一例を示した図であり、このマンドレルでは、圧縮空気を用い、移動体51をマンドレル本体52の軸方向に移動させ、この移動体51で、マンドレル本体52の外周部に取り付けられた環状の弾性部材53を圧縮する。これにより、マンドレルの径方向における外側に向かって、弾性部材53が突出し、この弾性部材53が、缶体の内周面に押し当てられる。
マンドレルを取り外す際には、例えば、マンドレル本体52の内部の空気を吸引する。これにより、移動体51が逆方向に移動し、弾性部材53が復元する。弾性部材53が復元すると、缶体の内周面から弾性部材53が離れる。
【0057】
図7は、拡径するマンドレルの他の一例を示した図である。
このマンドレルでは、缶体の内周面に対して進退する進退部材81が設けられている。このマンドレルでは、圧縮空気が供給され、この圧縮空気により進退部材81が押圧されて、進退部材81が缶体の内周面に接触する。なお、このマンドレルも可逆的になっており、圧縮空気の供給を停止すると、コイルスプリング82によって、缶体の内周面から離れる方向へ進退部材81が移動する。
【0058】
図1をさらに参照して、製造工程についてさらに説明する。
プリンター(PR)の下流側には、ボトムコーター(BTC)、ピンオーブン(PO)、ディフェクティブキャンテスター(DCT)、ライトテスター(LT)、パレタイザー(PT)が設けられている。
【0059】
ボトムコーター(BTC)では、缶体の底部14のうちの接地部分に対し、塗装を行う。
ピンオーブン(PO)では、缶体を加熱し、缶体の外周面上の画像および底部14の塗装の焼き付けを行う。
ここで、本実施形態では、ボトムコーター(BTC)、ピンオーブン(PO)は、2種類のプリンター(PR)(符号1B、1Cで示す2種類のプリンター(PR))の各々に対応するように2組設けられている。但し、これに限らず、ボトムコーター(BTC)、ピンオーブン(PO)は、1組だけ設け、設備の共用化を図ってもよい。
【0060】
ディフェクティブキャンテスター(DCT)では、缶体の外観の状態、および、印刷の状態を検査し、不良品があれば取り除く。
ライトテスター(LT)では、缶体の穴あきの有無を検査し、不良品があれば取り除く。
パレタイザー(PT)では、検査に合格した缶体をパレットに積載(段積み)する。
その後、缶体は、例えば、飲料缶製造工場(飲料の充填を行う工程)に出荷され、飲料缶製造工場では、缶体への飲料の充填、蓋の取り付けが行われる。これにより、飲料缶が完成する。
【0061】
なお、
図1にて示した製造工程は、一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各工程を入れ替えてもよい。
また、缶体の製造工程では、缶体の搬送にあたり、コンベアを主に用いるが、コンベア以外の他の搬送機構を用いて缶体の搬送を行ってもよい。
また、缶体の搬送にあたり、コンベアを用いる場合、例えば、マスコンベアやシングルコンベアを用いる。ここで、
図1にて、1本の線で示す搬送経路は、シングルコンベアにより缶体が搬送される搬送経路を示し、2本の線で示す搬送経路は、マスコンベアにより缶体が搬送される搬送経路を示している。
【0062】
また、各工程では、一つの設備を設けてもよいし、複数台の設備を設けてもよい。
複数の設備を設ける場合には、この複数の設備の各々に缶体が供給されるように、缶体の搬送経路を分岐させて、各設備に缶体を供給する。また、この場合、各設備の下流側にて、搬送経路を合流させる。
【0063】
〔第2実施形態〕
図8は、飲料缶の製造工程の他の実施形態を示した図である。なお、
図1にて示した実施形態と同様の機能を有する工程については、同一の符号を付すことで説明を省略する。
図1にて示した実施形態では、飲料用缶の製造工程(製缶工場における製造工程)を示した。
図8では、飲料用缶の製造工程(製缶工場における製造工程)のみならず、飲料用缶の内部に飲料等の内容物を充填する内容物充填工程(飲料缶製造工場における製造工程)も図示している。
【0064】
図8では、上段に、製缶工場における製造工程を示している。
製缶工場における製造工程では、ネッカー・フランジャー(SDN)までは、
図1にて示した実施形態と同じ製造工程となっている。具体的には、アンコイラー(UC)から始まってネッカー・フランジャー(SDN)までの各工程が設けられている。
一方、この実施形態における製造工程(製缶工場における製造工程)では、プリンター(PR)は設けられておらず、この製造工程には、ディフェクティブキャンテスター(DCT)、ライトテスター(LT)、パレタイザー(PT)が設けられている。
【0065】
この実施形態における製造工程(製缶工場での製造工程)では、ネック処理が行われた後、画像形成処理を行わずに、缶体の検査を行う。具体的には、缶体の外観および印刷の状態の検査、さらに、缶体の穴あきの有無の検査を行う。
その後、パレタイザー(PT)にて、缶体の段積みが行われ、複数の缶体が収容されたパレットが生成される。そして、このパレットが、飲料缶製造工場へ出荷される。
【0066】
本実施形態では、製缶工場では、上記と同様、少なくとも縮径部11に、下地層(下地塗装部)が形成された缶体が製造される。また、製缶工場では、缶体への画像形成を行わずに、画像形成が行われていない缶体が製造される。具体的には、内面塗装、外面塗装(下地層形成)、ネック処理は行われているが、画像形成は行われていない缶体が製造される。そして、画像形成が行われていない缶体が、飲料缶製造工場へ出荷される。
【0067】
なお、この実施形態では、パレタイザー(PT)で段積みしたうえで出荷を行う場合を一例に示したが、出荷の形態はどのようであっても良い。
また、ディフェクティブキャンテスター(DCT)およびライトテスター(LT)は、不必要であれば省略しても良い。
【0068】
飲料缶製造工場では、まず、デパレタイザー(DPL)が行われて、缶体の払い出しが開始される。
デパレタイザー(DPL)の下流側には、下流側ベースコーター(BC)、ピンオーブン(PO)が設けられおり、上記と同様、オーバーバーニッシュ(OV)のみが行われている缶体や、上流側ベースコーター(BC)にて、縮径部11のみに下地層が形成された缶体に対して、下地層の形成および焼き付けが行われる。
【0069】
なお、上流側ベースコーター(BC)にて、缶体の外周面の全面に亘って下地層を形成した缶体や、オーバーバーニッシュ(OV)のみが行われている缶体であっても、下地層の形成が不要な缶体については、下流側ベースコーター(BC)、ピンオーブン(PO)は不要であり、下流側ベースコーター(BC)での下地層の形成、焼き付けは省略される。この場合、缶体は、符号8Aで示す搬送経路に沿って搬送される。
【0070】
その後、上記と同様、プリンター(PR)による画像形成が行われる。具体的には、上記と同様、プリンター(PR)に設けられたインクジェットヘッド300から缶体に向けてのインクの吐出が行われて、缶体の外周面に画像が形成される。
プリンター(PR)の下流側には、ボトムコーター(BTC)、ピンオーブン(PO)が設けられており、缶体の底部14の接地部分に対して塗装が行われ、さらに、缶体の加熱が行われる。これにより、缶体の外周面上の画像および缶部の底部14の塗装が、缶体に焼き付けられる。
その後、リンサー(RN)にて、缶体の水洗いを行う。なお、プリンター(PR)は、このリンサー(RN)の後に設けてもよい。
【0071】
[飲料充填工程]
次いで、飲料充填工程の一例としてのフィラー(FL)にて、缶体への飲料の充填を行い、次いで、シーマー(SM)で、缶体への缶蓋の取り付けを行う。缶体への缶蓋の取り付けでは、いわゆる二重巻締により行う。
缶蓋は、一般的に、パネル状に形成され、さらに、中央部に、スコア(飲み口)が形成されている。さらに、缶蓋には、開封用のタブが固定され、また、缶蓋は、カウンターシンク部、チャックウォール部、カール部を有する。また、缶蓋は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金により形成される。
なお、フィラー(FL)での処理は、既存の技術で行えばよく、例えば、特開2009-026009号公報に記載の処理により行うことができる。
【0072】
その後、各種の検査機(DT)を用い、充填量の検査や異物の検査等を行う。なお、この検査は、後述のケーサー(CS)での箱詰めまでに行えば良い。また、この検査は、品質の向上のため何度行っても良い。
その後、ウォーマー(WM)にて内容物を常温に戻す。ここで、茶系飲料やコーヒー飲料等の充填である、いわゆるホットパックと呼ばれる高温充填では、ウォーマー(WM)は不要となる。
なお、殺菌が必要な内容物については、後述のケーサー(CS)での箱詰めまでに殺菌を行う。ここで、殺菌方法には、低温殺菌(パストライズ)や高温高圧蒸気殺菌(レトルト)等がある。
【0073】
その後、缶底印字機(BIP)で、缶体(飲料缶)の底部14に、インクジェットヘッドを用い、製造年月旬、ロット番号、賞味期限等の必要な情報を印字する。また、不図示の検査機で、印字内容を検査する。
ここで、缶底印字機(BIP)による印字にあたっては、缶体の底部14の水滴を高圧空気で吹き飛ばしてから印字を行うことが好ましい。ウォーマー(WM)を出た後は、缶体の底部14に水滴が付着しており、この水滴を高圧空気で吹き飛ばしてから印字を行うことで、印字品質が向上する。
【0074】
なお、缶底印字機(BIP)は、ウォーマー(WM)の下流側に限らず、フィラー(FL)とウォーマー(WM)との間に設置してもよい。但し、この場合は、缶体が低温であり、高圧空気で水滴を吹き飛ばしてもすぐに結露が生じてしまう。このため、缶底印字機(BIP)は、ウォーマー(WM)の下流側に設置することがより好ましい。
また、缶底印字機(BIP)による印字は、ケーサー(CS)での箱詰めまでの何れかのタイミングまでに行えばよく、例えば、デパレタイザー(DPL)の直後に行ってもよい。
【0075】
その後、ケーサー(CS)にて、缶体(飲料缶)の箱詰めが行われる。ここで、箱詰めでは、一般的に、1箱に、24缶、箱詰めされる。ここで、6缶パック(シックスパック)で箱詰めを行う場合には、1箱に、4パック分の缶体が詰められることになる。
その後、パレタイザー(PT)にて、缶体が収容された箱を、パレット上に積載する。
【0076】
ここで、この実施形態では、飲料缶製造工場にて、缶体への画像形成を行うため、用意した内容物の量(総量)に合わせて、印刷済みの缶体を用意できるようになる。
この場合、内容物および缶体を、過不足なく用いることができるようになり(消費できるようになり)、無駄な内容物の発生、無駄な缶体の発生を抑えられる。
【0077】
図9は、従来の缶体の製造工程を示した図である。なお、上記にて説明した実施形態と同様の機能を有する工程については、同一の符号を付すことで説明を省略する。
この従来の製造工程では、プリンター(PR)における印刷方式が、刷版印刷方式となっている。さらに、この従来の製造工程では、缶体の搬送方向において、プリンター(PR)の方が、ネッカー・フランジャー(SDN)よりも上流側に位置している。
【0078】
さらに、この従来の製造工程では、プリンター(PR)、ネッカー・フランジャー(SDN)の下流側に、パレタイザー(PT)(一時貯蔵工程)が設けられている。このため、缶体が保管状態にあるときには、缶体には、すでに画像が形成されまたネック処理が施された状態となっている。
このため、この従来の製造工程では、缶体の出荷にあたっては、画像が形成されまたネック処理が施された状態の缶体が出荷されるようになる。
【0079】
ここで、この従来の製造工程では、印刷方式が刷版印刷方式となっている。この刷版印刷方式では、印刷の準備のための時間をより多く要し、急ぎの注文に対応することが難しい。
具体的には、刷版印刷方式では、デザイン画を入手してから製版し、さらに、印刷版を印刷機に配置し、さらに、色合わせなどの準備が必要となり、印刷を開始するまでに多くの時間を要する。
【0080】
時間の短縮化を図るには、注文を受ける前に予め製缶をしておき、印刷済みの缶体を在庫として予め保管しておくことが好ましくなる。
ところで、この場合、在庫の置き場所を確保する必要があり、倉庫費がかかる等の問題がある。また、最近では、デザインが変更されるまで、または、一つの銘柄が廃版となるまでの時間が短くなってきており、予め製缶をして在庫としておくと、無駄な缶体が発生しやすくなる。さらに、デザインの一部が変更される場合もあり、この場合も、廃棄対象となる無駄な缶体が発生する。
このように、従来の製造工程では、在庫の確保が必要となり、さらに、この在庫の廃棄が生じやすい状況にあった。
【0081】
これに対し、本実施形態では、缶体への印刷を施さないで、缶体を在庫として保持しておく。この場合、デザインの変更などがあったとしても、変更後のデザインで印刷を行えるようになるため、無駄な缶体が生じにくくなる。
さらに、本実施形態では、インクジェットヘッド300を用いたデジタル印刷を行うため、印刷版などを用意せずにすみ、より短い時間で印刷を開始できる。
また、インクジェット方式を用いる場合、高精彩での印刷が可能であり、しかも非接触での印刷を行える。
【0082】
ここで、印刷版を用いる場合であっても、注文を受けてから、ネック処理済みの缶体に対して印刷を行うようにすれば、上記のような在庫の無駄の発生を抑えることができる。
しかしながら、刷版印刷では、インクを缶体上に転写させなければならないため、印刷時に、缶体と印刷機のブランケット(缶体に接触しインクを缶体に転写する接触部材)との間に大きな圧力がかかる。
【0083】
この場合、缶体が内部側へ凹むように変形してしまい、実質的に印刷が困難となる。
より具体的には、ネック処理を行った缶体は、上記のとおり、開口部13(
図2参照)の径よりも缶胴部12の径の方が大きく、一般的なマンドレルを缶体に挿入しただけでは、缶体とマンドレルとの間に隙間が生じてしまう。この状態にて、印刷機のブランケットを缶体に押し当てると、缶体が内部側へ凹んでしまう。
【0084】
これに対し、本実施形態にて採用しているインクジェット方式では、インクジェットヘッド300と缶体とが非接触であり、印刷時に、缶体に対して圧力が加わらない。この場合、マンドレルと缶体との間に隙間があっても、缶体への印刷を行える。
なお、より好ましくは、
図5~7にて示したとおり、拡径するマンドレルを用い、缶体の缶胴部12の内周面に、マンドレルを接触させることが望ましい。これにより、缶体がより安定的に支持される。
【0085】
ここで、マンドレルの拡径は必須ではなく、例えば、缶体の底部14(
図2参照)をマンドレルの先端部で吸引して缶体を保持するようにすれば、缶体の振れを抑えられるようになり、この場合は、マンドレルの拡径は不要となる。
図10(マンドレルによる缶体の他の支持例を示した図)では、缶体の底部14をマンドレルで吸引する場合を例示している。マンドレルは、円筒状に形成され、缶体に挿入される際の挿入方向における先端部に開口71を備える。さらに、この構成例では、不図示の吸引機構によって、マンドレルの根本72側からマンドレル内の空気が吸引されている。
【0086】
この構成例では、缶体の開口部13からマンドレルが挿入され、そして、開口部13とは反対側に位置する底部14が、マンドレルにより吸引され、この底部14がマンドレルにより支持されるようになる。
さらに、この例では、缶体の開口部13の部分も、マンドレルにより支持されるようになる。これにより、缶体がマンドレルにより安定的に支持される。
【0087】
さらに、この構成例では、底部14が、缶体の内部側に向かって凸となっており(缶体の内部側に向かってドーム状に突出しており)、この凸となった部分が、マンドレル内に入り込んでいる。これにより、マンドレルの軸心と、缶体の底部14の中心位置(径方向における中心位置)とが一致するようになる。
【0088】
また、缶体の支持は、他の機構を用いて行ってもよい。
具体的には、例えば、
図11(缶体を支持する機構の他の構成例を示した図)に示すように、缶体の縮径部11などを、缶体の内側および外側から挟むことで、缶体の支持を行ってもよい。より具体的には、この構成例では、缶体の内側に配置されるとともに缶体の内周面に対して進退する内側部材95、および、缶体の外側に配置される外側部材96の両者で、缶体の縮径部11の部分を挟み、缶体を保持している。
【0089】
また、缶体の支持は、
図12(缶体を支持する機構の他の構成例を示した図)に示すように、缶体の底部14を、缶体の外側からパッド部材400で吸引することで行っても良い。
パッド部材400は、缶体の底部14に設けられた凹部98(缶体の内部側に凹む凹部98)に嵌る凸部401を有する。さらに、パッド部材400は、径方向における中央に位置する孔402を通じて缶体を吸引して保持する。さらに、パッド部材400は、凸部401の台座となる平板部403を備える。
なお、平板部403のうちの缶体側に配置される面であって、凸部401の周囲に位置する箇所に、缶体の接地部分の形状に合わせた円環状の溝を設けると、缶体の保持性能が向上する。
【0090】
次に、ネッカー・フランジャー(SDN)の前に形成される上記下地層(
図1、
図8にて示したネッカー・フランジャー(SDN)の前に形成される上記下地層)についての詳細に説明する。
本実施形態では、上記のとおり、ネッカー・フランジャー(SDN)における処理が行われる前に、オーバーバーニッシュ(OV)-ピンオーブン(PO)、又は、上流側ベースコーター(BC)-ピンオーブン(PO)の何れかの処理が行われる。
これにより、缶体の外周面19Aに、下地層が形成される(下地塗装部が設けられる)。具体的には、缶体の外周面19Aのうちの、少なくとも縮径部11の部分に、下地層が形成される。
【0091】
ここで、下地層については、様々な形成態様が考えられる。
具体的には、下地層を、縮径部(ネック部)11のみに形成する態様が考えられる。また、下地層を、縮径部11および缶胴部12の両者に形成する態様が考えられる。
また、下地層を、縮径部11および缶胴部12の両者に形成する場合には、縮径部11に形成される下地層の色と、缶胴部12に形成される下地層の色とを同じとする態様が考えられる。また、下地層を、縮径部11および缶胴部12の両者に形成する場合、縮径部11に形成される下地層の色と、缶胴部12に形成される下地層の色とを異ならせる態様が考えられる。
【0092】
ここで、缶胴部12に形成される下地層を有色とする場合は、この下地層は、例えば、白色とすることが考えらえる。この場合、この下地層の上に形成される画像(プリンター(PR)にて形成される画像)の発色性(彩度)が向上する。
また、縮径部11に形成される下地層は、例えば、青色系の色など、有彩色とすることが考えられる。下地層の色を、青色系の色とすると、ユーザに清涼感を感じさせることができるようになる。なお、缶胴部12に形成される下地層についても、有彩色としてもよい。
【0093】
また、縮径部11や缶胴部12に、金属光沢を残したい場合(光沢を付与したい場合)には、縮径部11に形成される下地層や、缶胴部12に形成される下地層を、透明とすることが考えられる。具体的には、この場合、例えば、オーバーバーニッシュ(OV)にて、縮径部11に、又は、缶体の外周面19Aの全体に亘って、透明の塗料を付着させる。
これにより、縮径部11や缶胴部12に形成される下地層は、透明となり、下地層の上に形成される画像に、金属光沢に起因する光沢を付与することができる。
【0094】
また、縮径部11の下地層の色と缶胴部12の下地層の色とを、例えば、有色とし且つ同じ色としてもよい。この場合の下地層は、例えば、上流側ベースコーター(BC)にて、缶体の外周面19Aの全体に亘って、有色の塗料を付着させることで形成する。
この場合、縮径部11と缶胴部12とで、塗料の塗り分けを行う必要が無くなり、下地層をより簡易に形成できる。
【0095】
図13(A)~(G)は、下地層の具体例を模式的に示した図である。
なお、
図13(A)~(G)では、缶体の開口部13(
図2参照)側の状態を示している。また、
図13(A)~(G)では、缶体の軸心を挟んで缶体の両側に位置する部分のうちの、一方の側の部分のみを表示している。
また、
図13(A)~(G)では、ネック処理を行う前の状態を示している。さらに、
図13(A)~(G)では、下地層を実際よりも厚くした状態で表示している。
【0096】
図13(A)~(G)に示すように、下地層の形成態様としては、例えば、第1形成態様~第7形成態様の7つの形成態様が考えらえる。
ここで、第1形成態様~第3形成態様では、何れも、縮径部11の下地層が有色となっている。
具体的には、
図13(A)に示すように、第1形成態様では、縮径部11の外周面19Aに、有色の下地塗装部500が設けられている。なお、
図13(A)にて示す形成態様では、缶胴部12には、下地塗装部は設けられていない。
このように、縮径部11の下地塗装部500を有色とすると、縮径部11の下地塗装部500が無色である場合に比べ、ユーザへの訴求性のある缶体を提供できる。
【0097】
なお、縮径部11の下地塗装部500の色は、特に制限されず、例えば白色とすることとができる。ここで、縮径部11にも、画像が形成される場合があり、縮径部11の下地塗装部500を白色とすると、縮径部11に形成される画像の発色性が向上する。
また、この第1形成態様では、上記のとおり、缶胴部12には、下地塗装部500が設けられていない。この場合、缶胴部12では、金属光沢が残るようになり、後にプリンター(PR)により形成される画像に、光沢感を与えることができる。
【0098】
次に、
図13(B)を参照し、第2形成態様について説明する。
第2形成態様では、縮径部11および缶胴部12の両者に、有色の下地塗装部500が設けられている。この下地塗装部500は、例えば、上流側ベースコーター(BC)にて、缶体の外周面19Aの全面に亘って有色の塗料を付着させることで形成される。
ここで、この下地塗装部500の色は、特に制限されないが、例えば白色とされる。この場合、この下地塗装部500の上に形成される画像(後にプリンター(PR)により形成される画像)の発色性が向上する。
【0099】
なお、
図13(B)では、縮径部11の外周面19Aに設けられた下地塗装部500の厚さと、缶胴部12の外周面19Aに設けられた下地塗装部500の厚さとが等しくなっているが、縮径部11の下地塗装部500の厚さと、缶胴部12の下地塗装部500の厚さとを異ならせてもよい。
より具体的には、縮径部11の下地塗装部500の厚さよりも、缶胴部12の下地塗装部500の厚さの方を大きくしてもよい。
【0100】
この場合、缶胴部12における金属の地の部分が、より確実に遮蔽され、後に、プリンター(PR)により形成される画像の発色性が更に向上する。
また、縮径部11の下地塗装部500の厚さと、缶胴部12の下地塗装部500の厚さとを異ならせる場合、縮径部11に形成される画像の発色性と、缶胴部12に形成される画像の発色性とを異ならせることが可能になり、缶体の外周面19Aに対してより多様な画像を形成できるようになる。
【0101】
なお、缶胴部12の下地塗装部500の厚さを大きくするには、例えば、上流側ベースコーター(BC)に、塗料塗布用のロール部材を2本設ける。
そして、例えば、まず、1本目のロール部材を用い、缶体の外周面19Aの全面に亘って塗料を付着させる。その後、缶胴部12のみに、2本目のロール部材を押し当てる。これにより、缶胴部12の下地塗装部500の厚さが、縮径部11の下地塗装部500の厚さよりも大きくなる。
【0102】
図13(C)は、第3形成態様を示している。
この第3形成態様では、縮径部11に、有色の第1下地塗装部500Aが設けられ、缶胴部12には、透明の第2下地塗装部500Bが設けられている。
この第3形成態様では、第1下地塗装部500Aの色と第2下地塗装部500Bの色とが異なっている。
【0103】
また、この第3形成態様でも、缶胴部12に形成される第2下地塗装部500Bの厚みの方が、縮径部11に形成される第1下地塗装部500Aの厚みよりも大きくなっている。
この形成態様では、縮径部11に形成された、有色の第1下地塗装部500Aにより、訴求性を生じさせることができる。より具体的には、縮径部11に形成された第1下地塗装部500Aが無色透明である場合に比べ、ユーザが、缶体をより注目するようになる。
また、この第3形成態様では、缶胴部12に金属光沢が残るようになり、後にプリンター(PR)により形成される画像に、光沢感を与えることができる。
【0104】
なお、第1下地塗装部500Aの色、第2下地塗装部500Bの色は、特に制限されず、様々な組み合わせとしてよい。
例えば、第1下地塗装部500Aの色、および、第2下地塗装部500Bの色の一方の色を、白色とし、他方の色を、白色以外の他の色とすることができる。ここで、この他の色には、無色透明や有色透明なども含まれる。
【0105】
また、第1下地塗装部500Aの色、および、第2下地塗装部500Bの色の一方の色を、有色透明や無色透明などの透明とし、他方の色を、透明以外の色としてもよい。
さらにまた、第1下地塗装部500Aの色、および、第2下地塗装部500Bの色の少なくとも一方の色を、有彩色とし、他方の色を、この一方の色とは異なる他の色としてもよい。この他の色には、他の有彩色、無彩色、有色透明や無色透明などの透明が含まれる。
【0106】
次に、第4形成態様~第6形成態様について説明する。
第4形成態様~第6形成態様では、何れも、縮径部11に設けられた下地塗装部500が無色透明となっている。
図13(D)に示す第4形成態様では、縮径部11に、透明の第1下地塗装部500Aが設けられ、缶胴部12には、下地塗装部500が設けられていない。
第4形成態様では、第1下地塗装部500Aは透明であり、縮径部11に金属光沢を付与することができる。また、缶胴部12にも、下地塗装部が設けられていない部分が存在し、缶胴部12にも、金属光沢を付与することができる。
【0107】
図13(E)にて示す第5形成態様では、縮径部11に、透明の第1下地塗装部500Aが設けられ、缶胴部12には、有色の第2下地塗装部500Bが設けられている。言い換えると、この形成態様では、第1下地塗装部500Aの色と第2下地塗装部500Bの色とが異なっている。
この形成態様でも、第1下地塗装部500Aは透明であり、縮径部11に金属光沢を付与することができる。また、缶胴部12に設けられた第2下地塗装部500Bは、有色であり、この場合は、後に形成される画像の発色性を高めたり、ユーザの注意をひくデザインを缶体に付与したりすることができる。言い換えると、この場合も、ユーザへの訴求性のある缶体を提供できる。
【0108】
なお、
図13(E)にて示す、第1下地塗装部500Aおよび第2下地塗装部500Bは、上記と同様、例えば、上流側ベースコーター(BC)により形成される。
具体的には、例えば、上流側ベースコーター(BC)に、塗料塗布用のロール部材を2本設ける。そして、例えば、まず、1本目のロール部材を用い、縮径部11に、第1下地塗装部500Aを形成する。また、2本目のロール部材を用い、缶胴部12に、第2下地塗装部500Bを形成する。
【0109】
図13(F)にて示す第6形成態様では、縮径部11および缶胴部12の両者に、透明の下地塗装部500が設けられている。言い換えると、この第6形成態様では、第1下地塗装部500Aの色と第2下地塗装部500Bの色とが同じとなっている。この第6形成態様では、縮径部11および缶胴部12の両者に、金属光沢を付与することができる。
ここで、この第6形成態様にて示す下地層500(第1下地塗装部500A、第2下地塗装部500B)は、例えば、オーバーバーニッシュ(OV)にて形成される。より具体的には、例えば、オーバーバーニッシュ(OV)にて、缶体の外周面19Aの全面に亘って透明な塗料を塗布することで、縮径部11および缶胴部12の両者に、透明の下地塗装部500が形成される。
【0110】
また、
図13(G)にて示す第7形成態様では、第1下地塗装部500Aの色と第2下地塗装部500Bの色とが異なっているとともに、第1下地塗装部500A、第2下地塗装部500Bの色は、何れも有色となっている。
第7形成態様における第1下地塗装部500A、第2下地塗装部500Bは、例えば、上流側ベースコーター(BC)により形成される。
具体的には、例えば、上流側ベースコーター(BC)に、塗料塗布用のロール部材を2本設ける。そして、例えば、まず、1本目のロール部材を用い、縮径部11に、一色目の第1下地塗装部500Aを形成する。また、2本目のロール部材を用い、缶胴部12に、2色目の第2下地塗装部500Bを形成する。
【0111】
ここで、上記の各形成態様にて説明した、有色の下地塗装部500を形成するための塗料は、特に制限されず、既存のものを用いることができる。
有色の塗料には、有色の顔料などが含まれるが、この顔料についても、既存のものを用いることができる。より具体的には、例えば、白色の下地塗装部500を形成する場合には、例えば、酸化チタンを用いることができる。
【0112】
また、透明の下地塗装部500を形成するための塗料についても、特に制限されず、既存のものを用いることができる。
具体的には、例えば、上記にて説明したオーバーコート(保護層)の形成に用いる透明な塗料と同じ塗料を用いることができる。
より具体的には、エポキシ/アクリル系、エポキシ/フェノール系、エポキシ/ユリア系等の塗料を用いることができる。エポキシ/アクリル系の塗料は、水性塗料であるので、環境負荷を低減できる。
【0113】
また、透明の下地塗装部500は、オーバーコート用の塗料とは異なる塗料を用いて形成してもよい。この場合は、下地塗装部500に特化した塗料を用いることができるようになる。
具体的には、例えば、ネッカー・フランジャー(SDN)における処理により適した塗料を用いることができるようになる。より具体的には、例えば、既存の塗料におけるワックス添加量を増加させ、滑性を向上させた塗料を用いることができるようになる。
【0114】
また、縮径部11の下地塗装部500(第1下地塗装部500A)の色と、缶胴部12の下地塗装部500(第2下地塗装部500B)の色とを同じにする場合には、縮径部11の下地塗装部500と、缶胴部12の下地塗装部500とを同時に形成してもよい。
具体的には、例えば、上流側ベースコーター(BC)にて、缶体の外周面19Aであって缶体の軸方向における全域に亘って、塗料塗布用のロール部材を押し当てて、縮径部11および缶胴部12の両者に、共通の下地塗装部500を形成してもよい。
また、下地塗装部500は、ロール部材を用いた形成方法に限らず、インクジェット印刷方式など、他の方式により形成してもよい。
【0115】
また、縮径部11の下地塗装部500の色と、缶胴部12の下地塗装部500の色とを異ならせる場合には、混色が起きても影響が少なくなるように、淡い色の下地塗装部500を、濃い色の下地塗装部500よりも先に形成することが好ましい。
具体的には、例えば、白色の下地塗装部500と透明の下地塗装部500とを形成する場合には、透明の下地塗装部500を先に形成し、後に、白色の下地塗装部500を形成することが好ましい。
【0116】
さらに具体的に説明すると、
図13(C)、(E)の形成態様のように、有色の下地塗装部500と透明の下地塗装部500とを形成する場合には、透明の下地塗装部500を先に形成し、後に、有色の下地塗装部500を形成することが好ましい。
また、
図13(G)の形成態様のように、互いに異なる色の下地塗装部500を形成する場合も、淡い色の下地塗装部500を先に形成し、濃い色の下地塗装部500を後に形成することが好ましい。
【0117】
また、縮径部11、缶胴部12に対し、別々に、下地塗装部500を形成するにあたっては、縮径部11に形成される下地塗装部500と、缶胴部12に形成される下地塗装部500とを突合状態(重ね合わせがなく且つ隙間が無い状態)で形成することが好ましい。
なお、誤差などに起因して、縮径部11に形成される下地塗装部500と、缶胴部12に形成される下地塗装部500とを突合状態で形成することは難しいことも多い。このため、例えば、縮径部11に形成される下地塗装部500と、缶胴部12に形成される下地塗装部500とが重なるように、この2つの下地塗装部500を形成してもよい。
【0118】
また、縮径部11の下地塗装部500と、缶胴部12の下地塗装部500との間に、隙間が形成されるように、縮径部11の下地塗装部500、缶胴部12の下地塗装部500を形成してもよい。言い換えると、第1下地塗装部500Aと第2下地塗装部500Bとを、互いに離れた状態で設けるようにし、第1下地塗装部500Aと第2下地塗装部500Bとが重なっていない態様としてもよい。
なお、この場合は、第1下地塗装部500Aと第2下地塗装部500Bとの間に位置する間隙の部分に、上記保護層(画像の上に形成され、画像を保護する上記オーバーコート層)を載せるようにする。これにより、缶体の地の部分が露出すること起因する、缶体の腐食が抑制される。
【0119】
また、第1下地塗装部500Aと第2下地塗装部500Bとを重ねる場合には、第1下地塗装部500Aと第2下地塗装部500Bとが重なる重なり部が設けられることになる。
この重なり部は、縮径部11と缶胴部12との接続箇所18(
図2参照)よりも底部14側に位置させることが好ましい。この場合、ネック加工用の金型(ネッカー・フランジャー(SDN)にて縮径部11の形成に用いる金型)内に、この重なり部が入る可能性が減り、縮径部11をより確実に形成できる。
【0120】
重なり部が縮径部11の形成予定箇所に設けられると、この重なり部に起因して、缶本体19(
図2参照)の開口部13側が、上記の金型(縮径部11の形成に用いる金型)の内部に入らなくなるおそれがある。この場合、縮径部11の形成が困難になる。
重なり部が、接続箇所18よりも底部14側に位置する場合、缶本体19の開口部13側が、上記の金型内に入りやすくなり、縮径部11がより確実に形成される。
なお、縮径部11に形成される第1下地塗装部500A、缶胴部12に形成される第2下地塗装部500Bは、その厚さを、2~10μmとすることが好ましい。また、上記のとおり、第2下地塗装部500Bの厚さを、第1下地塗装部500Aの厚さよりも大きくすることが好ましい。
【0121】
図14(A)~(D)は、
図1、
図8にて示したプリンター(PR)による処理が行われた後の缶体の状態を模式的に示した図である。
なお、
図14(A)~(D)では、缶体の開口部13(
図2参照)側の状態を示している。また、
図14(A)~(D)では、缶体の軸心を挟んで缶体の両側に位置する部分のうちの、一方の側の部分のみを表示している。
また、
図14(A)~(D)では、缶体、下地層、保護層の厚さを、実際の厚さとは異なる厚さで表示している。
【0122】
本実施形態では、プリンター(PR)にて、縮径部11の第1下地塗装部500Aや、缶胴部12の第2下地塗装部500Bの上に、画像Gが形成される。
さらに、プリンター(PR)では、この画像Gの上に、塗料が塗布される(外面塗装が行われて、透明な保護層OL(オーバーコート層)が形成される)。
【0123】
本実施形態では、
図14(A)~(D)に示すように、少なくとも缶胴部12の外周面19Aに、画像Gが形成され、さらに、少なくとも缶胴部12の最上層に、透明の保護層OLが形成される。言い換えると、形成された画像Gの上に、透明な保護層OLが形成される。
より具体的には、本実施形態では、インクジェットヘッド300(
図4参照)を用いて、缶体の外周面19Aに画像Gを形成する。次いで、缶体の軸方向に沿うロール部材であって塗料を外周面上に保持したロール部材を、缶体の外周面19Aに押し当てて、透明の保護層OLを形成する。
【0124】
図14(A)は、透明な第1下地塗装部500A、および、有色の第2下地塗装部500Bを有する缶体のうちの、第2下地塗装部500Bの上に(缶胴部12の部分に)、カラーの画像Gを形成した場合を例示している。さらに、この画像Gの上に、透明な保護層OLを形成した場合を例示している。
また、
図14(B)は、単一且つ有色の下地塗装部500を有する缶体のうちの、缶胴部12の部分に、カラーの画像Gを形成し、さらに、透明な保護層OLを形成した場合を例示している。
【0125】
また、
図14(C)は、第1下地塗装部500Aのみを有する缶体のうちの、缶胴部12の部分に、カラーの画像Gを形成した場合を例示している。さらに、この画像Gの上に、透明な保護層OLを形成した場合を例示している。
なお、
図14(A)、(C)における第1下地塗装部500Aは、透明の場合もあるし、有色の場合もある。
また、
図14(D)は、単一且つ有色の下地塗装部500を有する缶体のうちの、縮径部11および缶胴部12の部分に、カラーの画像Gを形成し、さらに、透明な保護層OLを形成した場合を例示している。
【0126】
ここで、
図14(A)~(D)にて示した画像Gは、何れも、縮径部11が形成された後に、缶体の外周面19Aに形成された画像Gであり、縮径部形成後画像として捉えることができる。また、第1下地塗装部500A、第2下地塗装部500B(塗料が硬化して層となっている部分)は、縮径部11が形成される前に外周面19Aの表面に形成された層である縮径部形成前層として捉えることができる。
【0127】
ここで、縮径部11が形成された後に画像Gを形成する場合、形成する画像Gの多様化を図ることができる。
ここで、縮径部11を形成する前に画像Gを形成する場合、縮径部11を形成するための金型が、形成済みのこの画像Gに押し当てられ、この画像Gが損傷等するおそれがある。この損傷等は、例えば、画像Gの強度等を増すことで抑制可能となるが、この場合、形成可能な画像Gの種類に制約が生じやすくなる。
これに対し、本実施形態のように、縮径部11を形成した後に、画像Gを形成する場合、このような制約が生じにくくなり、形成する画像Gの多様化を図れる。
【0128】
なお、保護層OLの色は、特に制限はないが、一般的には、無色透明(クリアー)とされる。なお、保護層OLの色を有色とする場合には、有色透明とすることが好ましく、この場合、この保護層OLの下の画像Gが透けて見えるようになる。
また、保護層OLは、艶消し(マット)となる塗料を用いてもよい。
保護層OLを形成すると、画像Gが保護される。また、缶体の外周面19Aに滑性が付与されるようになり、製造ラインにて、缶体がより円滑に移動する。
【0129】
また、保護層OLは、
図14(D)に示すように、缶胴部12に限らず、縮径部11にも形成することができる。
なお、縮径部11に対しては、ロール部材(保護層OLを構成する塗料を付着させるためのロール部材)を押し当てることが難しい場合も想定される。このため、縮径部11に対しては、例えば、インクジェットヘッドを用いて塗料を付着させて、保護層OLを形成してもよい。
【0130】
また、缶体の外周面19Aへの画像形成は、缶胴部12に限らず、
図14(D)に示すように、縮径部11に対しても行ってもよい。
なお、縮径部11は、インクジェットヘッド300(
図4参照)から離れて配置されるため、缶胴部12に比べ、画像Gを形成しにくいが、例えば、缶体の周方向に沿う帯状の画像等は形成できる。
【0131】
ここで、画像Gが形成されない部分に対しては、保護層OL(外面塗装)は、必ずしも必要ではなく、例えば、
図14(A)~(C)に示すように、縮径部11に画像Gが形成されない場合には、縮径部11への保護層OLの形成を省略してもよい。
また、外面塗装は、缶体の外周面19Aの全体に亘って一様に形成するのに限らず、縮径部11に対して行う外面塗装と、缶胴部12に対して行う外面塗装とを異ならせてもよい。
【0132】
また、画像Gが形成されていない部分に対して外面塗装を行う場合には、この外面塗装は、透明に限らず不透明(有色)としてもよい。
また、上記のとおり、画像Gが形成されていない部分に対しては、外面塗装を省略してもよい。付言すると、画像Gが形成されていない部分であって、下地塗装部500が既に形成されている部分については、缶体の地の部分を保護する層が実質的に形成されているため、外面塗装を省略することができる。
【0133】
また、上記にて説明したように、第1下地塗装部500Aと第2下地塗装部500Bとが、互いに離れた状態で設けられ、第1下地塗装部500Aと第2下地塗装部500Bとが重なっていない場合には、両者の間に形成される隙間の部分に外面塗装を行うことが好ましい。これにより、第1下地塗装部500Aと第2下地塗装部500Bとの間に位置する部分にて、缶体の地が現れることが防止される。
【符号の説明】
【0134】
11…縮径部、12…缶胴部、13…開口部、14…底部、19…缶本体、19A…外周面、19B…他端、19C…一端、500…下地塗装部、500A…第1下地塗装部、500B…第2下地塗装部、G…画像